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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) H04L
管理番号 1369036
判定請求番号 判定2019-600018  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2021-01-29 
種別 判定 
判定請求日 2019-07-22 
確定日 2020-12-21 
事件の表示 上記当事者間の特許第3796528号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「内容証明を行う通信システムおよび内容証明サイト装置」は,特許第3796528号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨と手続の経緯
本件判定の請求の趣旨は,イ号は特許3796528号(以下,「本件特許」という。)の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。

また,本件に係る手続の経緯は,以下のとおりである。
平成11年12月28日 本件特許に係る特許出願
平成18年 4月28日 本件特許登録
令和 1年 7月22日 本件判定請求
令和 1年10月11日 答弁書(被請求人)
令和 1年11月28日 弁駁書(請求人) :
令和 2年 2月 7日 弁駁書に対する答弁書(被請求人)
令和 2年 3月18日 審尋
令和 2年 6月 8日 回答書(請求人)

第2 本件特許発明
請求人は,本件特許の特許請求の範囲の請求項8を「本件特許」としているから,本件特許発明は,特許明細書の記載からみて,特許請求の範囲の請求項8に記載された,次のとおりのものである。

「【請求項8】
A 発信者の装置から暗号化された状態で送信された伝達情報が,ネットワークを介して受信者の装置に受信されて復号化されたことを証明する内容証明サイト装置であって,
B 前記発信者装置から,該発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該発信者が電子署名した発信者署名データを受け取る第1の受信手段と,
C 前記受信者装置から,該受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該受信者が電子署名した受信者署名データを受け取る第2の受信手段と,
D 前記発信者装置から受け取った前記発信者署名データと前記受信者装置から受け取った前記受信者署名データとを内容証明を行うために保管する保管手段と,
E 前記内容証明の一環として,前記発信者署名データのうち,前記発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータと,前記受信者署名データのうち,前記受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータとを照合する手段と,を備え,
F 前記発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが,該発信者装置が送信した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られ,
G 前記受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが,該受信者装置が受け取って復号化した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られている,
H ことを特徴とする内容証明サイト装置。」

(当審注:「A」?「H」の符号は,分説のために判定請求人が付した記号であるが,便宜上そのままこれを利用する。)

第3 イ号物件
1.イ号物件(以下,これを「イ号」という)についての請求人の主張
請求人は,イ号について,令和1年7月22日付けの判定請求書において,概略,
『イ号は,原本性を証明する,「電子契約導入のすすめ」の100?101頁と104?105頁と138?139頁に記載の「第三者機関」である。』
と主張し,更に,令和2年6月8日付けの審尋に対する回答書(以下,これを「回答書」という)において,
『2. 判定請求書を補足するかたちで,次のとおりイ号の特定と根拠を示す。
構成(a) 送信者Aから暗号化された状態で送信された伝達情報が,ネットワークを介して受信者Bに受信されて復号化されたことを証明する第三者装置であって,
構成(b) 前記送信者Aから,該送信者Aが送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータを該送信者が電子署名した送信者署名データを受け取る第1の受信手段と,
構成(c) 前記受信者Bから,該受信者Bが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該受信者が電子署名した受信者署名データを受け取る第2の受信手段と,
構成(d) 前記送信者Aから受け取った前記送信者署名データと前記受信者Bから受け取った前記受信者署名データとを内容証明を行うために登録する登録手段と,
構成(e) 前記内容証明の一環として,前記送信者署名データのうち,前記送信者Aが送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータと,前記受信者署名データのうち,前記受信者Bが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータとを照合する手段と,を備え,
構成(f) 前記送信者Aが送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが,前記送信者Aが送信した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られ,
構成(g) 前記受信者Bが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが,該受信者Bが受け取って復号化した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られている,
構成(h) ことを特徴とする第三者装置。

(1)構成(a)「送信者Aから暗号化された状態で送信された伝達情報が,ネットワークを介して受信者Bに受信されて復号化されたことを証明する第三者装置であって,」
根拠
i イ号はASPサービスであると記載がある(甲1号証104頁17行目)。ASP(Application Service Provider)とは,サービスを提供する情報システムを中央のサーバで一元管理し,クライアントはWebブラウザなどからこのサービスを利用する。
イ号の重要部分は,https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/cectrust_contract/が入り口になっている。https(Hypertext Transfer Protocol Secure)はどんな通信手段を用いるかというルールであり,URLの始まりが「https://」だと通信内容が暗号化されるから,イ号は甲4号証図1の送信者Aと受信者BとサーバC間の暗号化通信の通信手段を備えている。(以下「暗号化通信」という。)
つまりASPサービスであるイ号のプログラムが,甲4号証図1のAとBとC間の暗号化通信の通信手段を備えている。
そしてイ号は,「原本性の証明に至っては・・改ざんされていないことを速やかに証明する」手段を備える構成である記載がある。(甲1号証100頁17?23行目)
これよりイ号は,暗号化通信手段で,甲4号証図1に,送信者A,受信者B,サーバC間で,ネットワークを介して,Aから暗号化された状態で送信された文書Dと,Bに受信されて復号化された文書Dとの内容の同一性に基づいて,検証文書との,三者の内容の同一性を確認する((6)照合及び(13)照合){当審注;システムの都合上,原本の表記を一部変更している。以下同じ。}手段を備える構成である記載がある。(後記(5)参照)
ii 甲4号証図1の送信者Aに記載の送達する文書Dと,受信者Bに記載の送達された文書Dと,検証文書との,三者の内容の同一性を確認する手段を備える構成である記載がある(甲1号証101頁図5.1に「送達確認」と記載がある。)。

これより甲4号証の,送信者Aが「送信者A」に,受信者Bが「受信者B」に,サーバCが「第三者装置」に,送信者Aに記載の文書Dと受信者Bに記載の文書D,暗号化通信が「暗号化された状態で送信された伝達情報が,ネットワークを介して受信者Bに受信されて復号化された」に,‘(6)照合及び(13)照合’,甲1号証の‘原本性の証明に至っては・・改ざんされていないことを速やかに証明する’,‘送達確認’が「証明する」に,それぞれ該当する。

(2)構成(b)「前記送信者Aから,該送信者Aが送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該送信者が電子署名した送信者署名データを受け取る第1の受信手段と,」

根拠
イ号は,甲4号証の(3)送信に,サーバCが,送信者Aから,送信者Aが送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ(D)aに送信者Aが電子署名した送信者署名データ[(D)a]SKaを受け取る第1の受信手段を,備える構成であることが記載されている。

これより送信者Aが「送信者A」に,(D)aが「該送信者Aが送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」に,[(D)a]SKaが「該送信者が電子署名した送信者署名データ」に,(3)送信が「受け取る第1の受信手段」に,それぞれ該当する。

(3)構成(c)「前記受信者Bから,該受信者Bが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該受信者が電子署名した受信者署名データを受け取る第2の受信手段と,」

根拠
イ号は,甲4号証の(10)送信に,サーバCが,受信者Bから,受信者Bが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ(D’)bに
受信者Bが電子署名した受信者署名データ[(D’)b]SKbを受け取る第2の受信手段を,備える構成であることが記載されている。

これより受信者Bが「受信者B」に,(D’)bが「該受信者Bが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」に,[(D’)b]SKbが「該受信者が電子署名した受信者署名データ」に,(10)送信が「受け取る第2の受信手段」に,それぞれ該当する。

(4)構成(d)「前記送信者Aから受け取った前記送信者署名データと前記受信者Bから受け取った前記受信者署名データとを内容証明を行うために登録する登録手段と,」

根拠
i イ号は,「原本性の証明に至っては」,「電子契約サービスを利用して原本性証明サービスへ原本を登録」する手段を備えて,「原本性の証明を受けたいときには・・改ざんされていないことを速やかに証明する」と記載がある(甲1号証100頁17?23行目)。
イ号は,原本性の確保に,[(D)a]SKaと[(D’)b]SKbを用いている(甲4号証)。そして「原本性の証明を受けたいときには」,[(D)a]SKaと[(D’)b]SKbからそれぞれ復号化した(D)aと(D’)bで,原本性を確認している((6)照合及び(13)照合)。その「改ざんされていないことを速やかに証明する」ために,「原本性証明サービスへ原本を登録」している必要十分の情報は,[(D)a]SKaと[(D’)b]SKbである記載がある(甲4号証)。
つまり,イ号は,内容証明を行うために,送信者Aから受け取った送信者署名データ[(D)a]SKaと,受信者Bから受け取った受信者署名データ[(D’)b]SKbとを,登録する(甲1号証100頁17?23行目)手段の備えが必須である構成である。【後記4.2の(1)と(2)惨照】
ii 甲1号証105頁図5.4に,「原本保管」と記載がある(契約書の原本は,一方の契約者Aの電子署名[(D)a]SKaと他方の契約者Bの電子署名[(D’)b]SKbとを必須として含む(甲4号証処理ステップ))とおり,イ号は,Aの電子署名[(D)a]SKaと,Bの電子署名[(D’)b]SKbとを保管する手段を備えている構成である記載がある。

これより甲4号証の,[(D)a]SKaが「前記送信者Aから受け取った前記送信者署名データ」に,[(D’)b]SKbが「前記受信者Bから受け取った前記受信者署名データ」に,‘(6)照合及び(13)照合’,‘原本性の証明に至っては,‥電子契約サービスを利用して原本性証明サービスへ原本を登録し,‥原本性証明を受けたいときには‥改ざんがされていないことを速やかに証明できるようになっている’(甲1号証の,100頁17?23行目)が「内容証明」に,‘登録’が「登録」に,それぞれ該当する。

(5)構成(e)「前記内容証明の一環として,前記送信者署名データのうち,前記送信者Aが送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータと,前記受信者署名データのうち,前記受信者Bが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータとを照合する手段と,を備え,」

根拠
i イ号は,「原本性の証明に至っては・・改ざんがされていないことを速やかに証明できる」(甲1号証100頁17?23行目)手段を備える構成である記載がある。
ii また,イ号は,甲4号証に,Aの署名データ[(D)a]SKaから復号化した照合値(D)aと,Bの署名データ[(D’)b]SKbから復号化した照合値(D’)bとに基づいて,検証文書から作成した照合値(D)c及び(D')cと照合して((6)照合と(13)照合),AとBの署名がされ合致する契約事項の確認に基づいて,三者の内容の同一性を確認する手段を備える構成である記載がある。
つまり,Aが署名した伝達情報と,Bが署名した伝達情報との内容の同一性に基づいて,検証文書との,内容の同一性を照合値同士を照合し確認する手段を備える構成である記載がある。【後記4. 2 (1)(2)(3)(4)参照】
iii (6)照合と(13)照合はイ号が一元管理しているASPサービスと記載がある。
(6)照合に,送信者Aが電子署名した文書Dと,検証文書との,照合値による照合確認手段を備える構成である記載がある。
そして,(13)照合に,受信者Bが電子署名した‘文書DへのAの電子署名付き文書D’と,‘文書DへのAの電子署名付き検証文書’との,照合値による照合で(照合する文書Dと検証文書とに,同じデータ(文書DへのAの電子署名)を加えて照合しても,文書Dと検証文書とが照合される),受信者Bが電子署名した中の文書Dと,検証文書との,照合値による照合確認手段を備える構成である記載がある。
この照合値(ダイジェスト)は,2つの文書に同じデータを加えても,
「2つの文書が異なれば,それから計算した2つの照合値も異なる」,
「2つの照合値が同じであれば,元の2つの文書は同じ。」という関係が成立し,「伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」と同義である。
これより,(6)照合と(13)照合は,Aが署名した文書Dと,Bが署名した中の文書Dとの照合値照合に基づいて,原本性を確認している記載である。
iv イ号は,契約した事項の「原本性証明サービス」をしている(甲1号証100頁17?23行目)。Aが署名した事項と,Bが署名した事項との,内容の同一性の確認を,仮に欠くと,AとBが署名して合致した契約事項の原本性に基づいて証明できない。これよりイ号は,契約事項の原本性を証明することにおいて,Aが署名した事項と,Bが署名した事項との,内容の同一性を確認する手段の備えが必須である構成である。
v 上記i?ivに示すとおり,イ号は,内容証明の一環として,送信者Aの署名データ[(D)a]SKaのうち,送信者Aが送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ(D)aと,受信者Bの署名データ[(D’)b]SKbのうち,受信者Bが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ(D’)bとを照合する手段の備えが必須である構成である。

これより,‘原本性の証明に至っては・・改ざんがされていないことを速やかに証明することができるようになっている’,‘(6)照合及び(13)照合’が 「内容証明の一環」に,(D)aが「前記送信者署名データのうち,前記送信者Aが送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」に,
(D’)bが「前記受信者署名データのうち,前記受信者Bが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」に,‘(6)照合及び(13)照合’が「照合する」に,それぞれ該当する。

(6)構成(f)「前記送信者Aが送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが,該送信者Aが送信した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られ,」
根拠
イ号は,甲4号証によると,送信者Aが署名して送信した伝達情報のダイジェスト(D)aをAの秘密鍵で暗号化してAの署名データ[(D)a]SKaの中に含み,原本性の確認((6)照合及び(13)照合)に用いることができ,ダイジェストは,「伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」と同義である。
イ号は,甲4号証によると,送信者Aが送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ(D)aが,該送信者Aが送信した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られる構成である((6)照合及び(13)照合)ことが記載されている。

これより(D)aが「前記送信者Aが送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」に,(D)aが「該送信者Aが送信した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェスト」に,それぞれ該当する。

(7)構成(g)「前記受信者Bが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが,該受信者Bが受け取って復号化した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られている,」

根拠
イ号は,甲4号証の記載によると,受信者Bが受信して復号化した伝達情報のダイジェスト(D’)bをBの秘密鍵で暗号化してBの署名データ[(D’)b]SKbの中に含み,原本性の確認((6)照合及び(13)照合)に用いることができ,ダイジェストは,「伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」と同義である。
イ号は,甲4号証に,受信者Bが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ(D’)bが,該受信者Bが受け取って復号化した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られる構成である((6)照合及び(13)照合)ことが記載されている。

これより(D’)bが「前記受信者Bが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」に,(D’)bが「該受信者Bが受け取って復号化した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェスト」に,それぞれ該当する。

(8)構成(h)「ことを特徴とする第三者装置。」

根拠
「電子契約サービスユーザ事例1」(甲1号証100?101頁)。
「電子契約サービスユーザ事例2」(甲1号証104?105頁)。
「原本性の証明に至っては,第三者機関から証明をうけることが必要であるため,電子契約サービスを利用して原本性証明サービスへ原本を登録し,原本性保証の証明書のみを電子契約サービスへ預けている。そして,原本性証明を受けたいときには,電子契約サービスを利用して原本に対応する原本性証明の証明書を検索し,自社で保管している原本の情報を提出することにより改ざんがされていないことを速やかに証明することができるようになっている」(甲1号証100頁17?23行目)。
「電子契約は契約相手あっての業務であり,契約者双方が同じサービスを利用することで成り立つ」(甲1号証101頁2?3行目)。
「国土交通省が示した,建設業法施行規則第13条の2の第2項に規定する「技術的基準」に係るガイドラインに忠実に従っているASPサービスである」(甲1号証104頁16?17行目)。
「NTTデータがシステムの運用を行なっている」(甲1号証104頁25行目)。
甲4号証の図1の処理ステップ。

これより甲1号証の,‘原本性の証明に至っては・・改ざんがされていないことを速やかに証明することができるようになっている'装置,‘電子契約サービス'装置,‘電子契約サービス'装置と一体不可分の‘原本性証明サービス'装置,甲4号証の‘サーバC'装置が「第三者装置」に,該当する。』(3頁5行?12頁17行)
旨主張している。

2.イ号についての被請求人の主張
被請求人は,イ号について,特に,令和1年11月28日付け判定請求人の弁駁書に対する令和2年2月7日付けの答弁書(以下,これを「弁駁答弁書」という)において,概略,次のように主張している。
『(2)とは言え,判定被請求人は,本判定請求手続の早期の終了を望むので,仮に,判定請求人の上記主張を,判定請求人に有利に善解し,
判定請求人は,

甲1の100?101頁記載から,「第三者機関」は,「CECTRUST」(以下,CECサーバともいう)かSecureSealであると主張し;
甲1の104?105頁の中には,「第三者機関」の文言は存在しないが,
甲1の105頁の図5.4から,「第三者機関」は,CECTRUSTとSecureSealとCECSIGNであると主張し;
甲1の139頁の(2)記載から,「第三者機関」は,CECSIGNであり,かつ甲1の139頁の(3)記載から,「第三者機関」は,CECサーバであると主張している

と審判官が判断する場合に備え,上記(1)の判定請求人の主張に対して,以下,反論する。

ア CECSIGN:
(ア)特許庁事件番号判定2018-600018号について,御庁は,令和1年5月16日,イ号物件である「CECSIGN(認証局)は本件特許発明の技術的範囲に属しない旨の判定を下した(但し,当事者および書証(甲第1号証及び同2号証)は,本判定請求のそれらと同じである)(特許庁判定2018-600018 令和1.5.16 乙1)。
同令和1.5.16判定書(以下,同判定書ともいう)の「第3 イ号物件」(同判定書第3頁)によれば,判定請求人は,甲1第100?101頁,同138?139頁の各記載で特定される「CECSIGN(認証局)」たる「第三者機関」をイ号物件であると特定している(但し,判定被請求人は,ここで,【上記各頁の中に,『契約者の意思(契約事項)の合致を示す原本性を証明する,「CECSIGN(認証局)」』旨の文言又は,同旨の文言が,存在しないこと】を指摘する)。

(イ)同判定書は,イ号物件たる「CECSIGN(認証局)は,本件特許発明の技術範囲に属しない,と判定済である。

イ CECTRUST
東京地判平25.3.13(平24(ワ)第10734号)は,CECTRUSTは,本件特許の技術範囲に属しない,と判決し(乙2);
その控訴審・知高判平25.8.22も,CECTRUSTは,本件特許の技術的範囲に属しない,と判決し(乙3);
その上告審・最決平26.1.31も,上告を棄却し,上告受理申立を不受理とした(乙4)。

ウ SecureSeal:
東京地決平28.10.12(平27(ヨ)第22106号)は,「SecureSeal」と称される装置は,本件特許の技術的範囲に属しないと判示し,仮処分の申立を却下した(乙5)。

(2)の小括
上記ア?ウに示したとおり,「第三者機関」が,ア CECSIGN,イ CECTRUST,ウ SecreSealと認められるとしても,それらのいずれも,本件特許の構成要件を充足しない。』「(2頁17行?4頁12行)」

3.イ号についての当審の判断
(1)甲4号証に開示された図からは,次の事項が読み取れる。

「a 送信者Aは,文書Dより,当該文書Dのダイジェスト(D)aを作成し,
前記(D)aを,送信者Aの秘密鍵SKaで暗号化して,
署名[(D)a]SKaを作成し,
前記署名[(D)a]SKaを付加した前記文書Dを,サーバCに送信する。
b サーバCは,前記署名[(D)a]SKaが付加された前記文書Dを受信し,
前記文書Dのダイジェスト(D)cを作成し,
前記署名[(D)a]SKaを,送信者Aの公開鍵PKaで復号して,
前記ダイジェスト(D)aを取り出し,
前記(D)cと,前記(D)aとを照合して,
前記文書Dが改ざんされていないかを検証すると共に,
前記署名[(D)a]SKaが付加された前記文書Dを,受信者Bに送信する。
c 受信者Bは,前記署名[(D)a]SKaが付加された前記文書Dを,
サーバCを介して受信し,
前記署名[(D)a]SKaが付加された前記文書Dを,新たに文書D’として,
前記文書D’のダイジェスト(D’)bを作成し,
前記(D’)bを,受信者Bの秘密鍵SKbで暗号化して,
署名[(D’)b]SKbを作成し,
前記署名[(D’)b]SKbを付加した前記文書D’を,サーバCに送信する。
d サーバCは,前記署名[(D’)b]SKbが付加された前記文書D’を受信し,
前記文書D’のダイジェスト(D’)cを作成し,
前記署名[(D’)b]SKbを,受信者Bの公開鍵PKbで復号して,
前記ダイジェスト(D’)bを取り出し,
前記文書D’が改ざんされていないかを検証すると共に,
前記署名[(D)b]SKbを付加した文書D’を,送信者Aに送信する。
e 送信者Aは,前記署名[(D)b]SKbが付加された前記文書D’を受信する。」

(2)上記(1)において,当審が,甲4号証から読み取った構成と,上記「1.イ号物件(以下,これを「イ号」という)についての請求人の主張」,及び,上記「2.イ号についての被請求人の主張」を,総合勘案して,当審は,イ号を,次のとおりの構成を具備するものと認定する(以下,「構成a」などと言う)。

「a 送信者Aから,受信者Bに送信される文書Dの改ざんの有無を検証し,受信者Bから,送信者Aに送信される文書D’の改ざんの有無を検証する第三者装置であって,
b 前記第三者装置は,前記送信者Aが,文書Dより,当該文書Dのダイジェスト(D)aを作成し,前記(D)aを,送信者Aの秘密鍵SKaで暗号化して,署名[(D)a]SKaを作成し,前記署名[(D)a]SKaを付加した前記文書Dを,前記送信者Aから受信する第1の受信手段と,
c 前記文書Dのダイジェスト(D)cを作成し前記署名[(D)a]SKaを,送信者Aの公開鍵PKaで復号して,前記ダイジェスト(D)aを取り出し,前記(D)cと,前記(D)aとを照合して,前記文書Dが改ざんされていないかを検証すると共に,前記署名[(D)a]SKaが付加された前記文書Dを,受信者Bに送信する第1の送信手段と,
d 受信者Bが,前記署名[(D)a]SKaが付加された前記文書Dを,サーバCを介して受信し,前記署名[(D)a]SKaが付加された前記文書Dを,新たに文書D’として,前記文書D’のダイジェスト(D’)bを作成し,前記(D’)bを,受信者Bの秘密鍵SKbで暗号化して,署名[(D’)b]SKbを作成し,前記署名[(D’)b]SKbを付加した前記文書D’を,前記受信者Bから受信する第2の受信手段と,
e 前記文書D’のダイジェスト(D’)cを作成し,前記署名[(D’)b]SKbを,受信者Bの公開鍵PKbで復号して,前記ダイジェスト(D’)bを取り出し,
前記文書D’が改ざんされていないかを検証すると共に,前記署名[(D)b]SKbを付加した文書D’を,送信者Aに送信する第2の送信手段と,
f 「文書D」の原本性保証の証明書,及び,「文書D’」の原本性保証の証明書を保存する保存手段を有し,
g 前記「文書D」の原本性保証の証明書は,「ダイジェスト(D)a」,或いは,「署名「[(D)a]SKa」であり,
h 前記「文書D’」の原本性保証の証明書は,「ダイジェスト(D’)b」,或いは,「署名「[(D’)b]SKb]である,第三者装置。」

4.請求人の回答書における主張の採否に関して
(1)請求人は回答書の2.(1)において,
『(1)構成(a)「送信者Aから暗号化された状態で送信された伝達情報が,ネットワークを介して受信者Bに受信されて復号化されたことを証明する第三者装置であって,」
根拠
i イ号はASPサービスであると記載がある(甲1号証104頁17行目)。ASP(Application Service Provider)とは,サービスを提供する情報システムを中央のサーバで一元管理し,クライアントはWebブラウザなどからこのサービスを利用する。
イ号の重要部分は,https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/cectrust_contract/が入り口になっている。https(Hypertext Transfer Protocol Secure)はどんな通信手段を用いるかというルールであり,URLの始まりが「https://」だと通信内容が暗号化されるから,イ号は甲4号証図1の送信者Aと受信者BとサーバC間の暗号化通信の通信手段を備えている。(以下「暗号化通信」という。)
つまりASPサービスであるイ号のプログラムが,甲4号証図1のAとBとC間の暗号化通信の通信手段を備えている。
そしてイ号は,「原本性の証明に至っては・・改ざんされていないことを速やかに証明する」手段を備える構成である記載がある。(甲1号証100頁17?23行目)
これよりイ号は,暗号化通信手段で,甲4号証図1に,送信者A,受信者B,サーバC間で,ネットワークを介して,Aから暗号化された状態で送信された文書Dと,Bに受信されて復号化された文書Dとの内容の同一性に基づいて,検証文書との,三者の内容の同一性を確認する((6)照合及び(13)照合)手段を備える構成である記載がある。(後記(5)参照)
ii 甲4号証図1の送信者Aに記載の送達する文書Dと,受信者Bに記載の送達された文書Dと,検証文書との,三者の内容の同一性を確認する手段を備える構成である記載がある(甲1号証101頁図5.1に「送達確認」と記載がある。)。

これより甲4号証の,送信者Aが「送信者A」に,受信者Bが「受信者B」に,サーバCが「第三者装置」に,送信者Aに記載の文書Dと受信者Bに記載の文書D,暗号化通信が「暗号化された状態で送信された伝達情報が,ネットワークを介して受信者Bに受信されて復号化された」に,‘(6)照合及び(13)照合’,甲1号証の‘原本性の証明に至っては・・改ざんされていないことを速やかに証明する’,‘送達確認’が「証明する」に,それぞれ該当する。』
と主張しているが,上記「3.イ号についての当審の判断」の(1)において示したとおり,甲4号証において読み取れる事項は,「送信者A」から送信された「文書D」が,「サーバC」で受信された段階で改ざんされていないか否かを示す(甲4号証の「(6)照合」に相当)にとどまり,第三者信用機関等である「サーバC」の段階で,「文書D」が改ざんされていないのであれば,「受信者B」が,「サーバC」から受信した「文書D」も改ざんされていないと言えるに過ぎず,甲1号証に記載の「原本性の証明に至っては・・改ざんされていないことを速やかに証明する」(甲1号証100頁17?23行)とは,同じく,甲1号証における「電子契約サービスを利用して原本性証明サービスへ原本を登録し」(100頁17行?18行)における「原本性証明サービスへ原本を登録」が,“原本性証明サービスへ原本を保管する”態様を含むものであるとしても,甲1号証に記載の「送達確認」とは,単に,“文書が送達されたことを確認する”と言う程度の意味であって,このことと,上記「3.イ号についての当審の判断」において検討した事項を踏まえると,上記引用の回答書における主張の根拠としている,甲4号証,及び,甲1号証に開示の事項からは,“「文書D」が,「原本性証明サービス」に保管されるのであれば,前記「原本性証明サービス」に保管された「文書D」を用いて,当該「文書D」が改ざんされていないことを証明すること”,及び,「文書D’」が「原本性証明サービス」に保管されるのであれば,前記「原本性証明サービス」に保管された「文書D’」を用いて,当該「文書D’」が改ざんされていないことを証明すること”が行える点が読み取れるに過ぎず,
結果,甲1号証,及び,甲4号証に開示の事項を検討しても,当該回答書における,上記主張を採用することはできない。

(2)回答書における,
『甲4号証の,送信者Aが「送信者A」に,受信者Bが「受信者B」に,サーバCが「第三者装置」に・・・該当する』,
と言う主張と,甲1号証の「2003年10月より電子契約サービスCECTRUSTの利用を開始した。」(104頁2行?3行)と言う記載,及び,甲4号証から,請求人の言う「第三者装置」とは,「電子契約サービスCECTRUST」における「サーバC」を指すものと解される。

(3)請求人は,回答書において,
『イ号はASPサービスであると記載がある(甲1号証104頁17行目)。ASP(Application Service Provider)とは,サービスを提供する情報システムを中央のサーバで一元管理し,クライアントはWebブラウザなどからこのサービスを利用する。
イ号の重要部分は,https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/cectrust_contract/が入り口になっている。https(Hypertext Transfer Protocol Secure)はどんな通信手段を用いるかというルールであり,URLの始まりが「https://」だと通信内容が暗号化されているから,イ号は甲4号証図1の送信者Aと受信者BとサーバC間の暗号化通信の通信手段を備えている』,
旨主張しているが,上記引用の主張における「イ号の重要部分は,https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/cectrust_contract/が入り口になっている」は,甲1号証,甲4号証に開示の内容に基づかないものであり,甲1号証,甲4号証には,「文書D」,或いは,「文書D’」を暗号化して送信する点は開示されておらず,上記引用の請求人の主張は証拠に基づくものではないので,採用できない。

(4)請求人は,回答書(5)において,
『i イ号は,「原本性の証明に至っては・・改ざんがされていないことを速やかに証明できる」(甲1号証100頁17?23行目)手段を備える構成である記載がある。
ii また,イ号は,甲4号証に,Aの署名データ[(D)a]SKaから復号化した照合値(D)aと,Bの署名データ[(D’)b]SKbから復号化した照合値(D’)bとに基づいて,検証文書から作成した照合値(D)c及び(D’)cと照合して((6)照合及び(13)照合),AとBの署名がされ合致する契約事項の確認に基づいて,三者の内容の同一性を確認する手段を備える構成である記載がある』,
旨主張しているが,上記(1)で示したとおり,甲4号証において,「受信者B」においては,「ダイジェスト」は,「文書D」と,「文書D」の「ダイジェスト(D)a」に,「送信者の秘密鍵SKa」で署名した,「署名[(D)a]SKa」とを組み合わせた,「文書D’」(=D+[(D)a]SKa)の「ダイジェスト(D’)b」であって,「送信者A」の送信した,「文書D」の「ダイジェストD」とは異なるものであり,「サーバC」で行っているのは,「送信者A」の送信した「文書D」の改ざん有無の確認((6)照合),及び,「受信者B」が送信した「文書D’」の改ざんの有無の確認((13)照合)であって,ここで言う,改ざんの有無の確認を,同一性の確認と読み替えたとしても,甲1号証の上記指摘の記載箇所の内容,及び,甲4号証からは,「三者の内容の同一性を確認する手段を備える構成」を読み取ることはできない。

(5)上記(1)で引用されている甲1号証に記載の内容から,
“電子契約サービスCECTRUSTのサーバCは,原本性保証の証明書を預かる”
ものであることが読み取れ,上記「3.イ号についての当審の判断」の(1)において示した甲4号証における「ダイジェスト(D)a」,及び,「ダイジェスト(D’)b」,或いは,「署名[(D)a]SKa」,及び,「[(D’)b]SKb」が,甲1号証における「原本性保証の証明書」に対応するものであると認められるから,
甲1号証,及び,甲4号証から,「サーバC」が,“文書Dの原本性保証の証明書”,及び,“文書D’の原本性保証の証明書”を保存する態様を有することが,読み取れる。

(6)上記「3.イ号についての当審の判断」の(1)において示したとおり,甲4号証の「サーバC」において,「受信者B」から送信された「文書D’」は,「送信者A」が送信した「文書D」に,当該「文書D」の「ダイジェスト(D)a」に,「送信者A」の秘密鍵「SKa」で署名した「署名[(D)a]SKa」を加えた「文書D+署名[(D)a]SKa」である。
ここで,上記に引用した回答書(6)における主張において,「伝達情報」とは,「送信者A」から,「サーバC」に送信した「署名[(D)a]SKa]付きの「文書D」から,署名を取り除いた,「文書D」のみであるとしている。
この主張に従えば,上記(3)での指摘のとおり,甲4号証においては,送信する文書の暗号化については,読み取れないものの,「受信者Bが受け取って復号化した伝達情報」とは,「送信者A」から,「サーバC」を介して,「受信者B」に受信された,「文書D」のはずである。
しかしながら,上記引用の回答書(7)の主張によれば,「受信者B」における「伝達情報」とは,「文書D’」=「文書D」+「署名[(D)a]SKa」と解され,上記引用の回答書(6)における「伝達情報」と,上記引用の回答書(7)の「伝達情報」とは,定義が一致しない。
そして,甲4号証からは,「伝達情報」として,「送信者A」から「サーバC」を介して「受信者B」に送信されるものは「文書D」であり,また,「受信者B」から「サーバC」を介して「送信者A」に送信されるものは「文書D’」であると解するのが妥当である。
したがって,上記引用の回答書(7)における請求人の主張は,採用できない。

(7)請求人は,上物件記引用の回答書(8)において,
『(8)構成(h)「ことを特徴とする第三者装置。」
・・・(中略)・・・
これより甲1号証の,‘原本性の証明に至っては・・改ざんがされていないことを速やかに証明することができるようになっている'装置,‘電子契約サービス'装置,‘電子契約サービス'装置と一体不可分の‘原本性証明サービス'装置,甲4号証の‘サーバC'装置が「第三者装置」に,該当する。』
旨主張しているが,甲1号証,及び,甲4号証に開示の事項からは,「サーバC」が,「電子契約サービス」,即ち,「CECTRUST」の構成要素であることは読み取れるものの,前記「電子契約サービス」と「原本性証明サービス」が,一体不可分の1つの装置を形成することを読み取ることはできない。

第4 本件特許発明の各構成要件の充足について
1.構成要件Aについて
イ号は,「送信者A」から送信される「文書D」の改ざんの有無,及び,「受信者B」から送信される「文書D’」の改ざんの有無を検証するものであって,「発信者の装置から暗号化された状態で送信された伝達情報が,ネットワークを介して受信者の装置に受信されて復号化されたことを証明する」ものではない。
したがって,イ号は,本件特許発明の構成要件Aを充足しない。

2.構成要件Bについて
イ号の構成bにおける「文書Dのダイジェスト(D)a」は,本件特許発明の「発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」に相当し,同じく,構成bにおける「署名[(D)a]SKa」が,本件特許発明における「発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該発信者が電子署名した発信者署名データ」に相当し,同じく,構成bにおける「第1の受信手段」が,本件特許発明における「第1の受信手段」に相当するので,
イ号の構成bは,本件特許発明の構成要件Bを充足する。

3.構成要件Cについて
構成要件Cは、「受信者装置が受け取って複合化した伝達情報」について、特定するものである。
これに対し、イ号について、甲4を参照すると、サーバCから受信者Bに送信される「文書D」は暗号化されていない。
さらに,イ号について,甲4を参照すると,「伝達情報」として,「送信者A」から「サーバC」を介して「受信者B」に送信されるものは「文書D」であり,また,「受信者B」から「サーバC」を介して「送信者A」に送信されるものは「文書D’」である。そうすると,イ号における「送信者A」に係る「文書D」が,本件特許発明における「伝達情報」に相当するものと解され,イ号における「受信者B」において新たに作成される「文書D’」は,前記「文書D」とは異なるものである。
以上から,イ号は,本件特許発明の構成要件Cを充足しない。

4.構成要件Dについて
本件特許発明における「内容証明」とは,上記1.において検討したとおり,「発信者の装置から暗号化された状態で送信された伝達情報が,ネットワークを介して受信者の装置に受信されて復号化されたことを証明する」ことである。
一方,イ号においては,構成fにおける「「文書D」の原本性保証の証明書」とは,「ダイジェスト(D)a」,或いは,署名「[(D)a]SKa」であり,「「文書D’」の原本性保証の証明書」とは,「ダイジェスト(D’)b」,或いは,署名「[(D’)b]SKb」であって,これらの情報を用いても,「発信者の装置から暗号化された状態で送信された伝達情報が,ネットワークを介して受信者の装置に受信されて復号化されたことを証明する」ことができないことは,明らかである。
よって,イ号は,本件特許発明の構成要件Dを充足しない。

5.構成要件Eについて
甲3号証である本件特許公報の,例えば,段落【0022】の,
「また,図3?図5は発信側端末A,受信側端末B,内容証明サーバCにおいて各々実行される処理手順をフローチャートの形で示したものである。これらの図では,発信者たる発信側端末Aが伝達情報Dを受信者たる受信側端末Bに内容証明サイト1の内容証明サーバC経由で送り,内容証明サイト1ではその伝達情報Dを受け渡すにあたりその内容証明を行うものとする。」
と言う記載から,本件特許発明おいては,
「発信者装置が送信した伝達情報」における「伝達情報」と,「受信者装置が受け取って復号化した伝達情報」における「伝達情報」とは同じものである。
そして,イ号における「文書D」が,本件特許発明における「伝達情報」に相当する。
一方,上記3.において指摘したとおり,イ号における「文書D」と,「文書D’」は,異なるものであって,イ号において,署名「[(D)a]SKa」は,「送信者A」が送信した「文書D」が改ざんされていないことを確認するために用いられるものであり,また,署名「[(D’)b]SKb」は,受信者Bから送信される「文書D’」が改ざんされていないことを確認するために用いられるものであって,「送信者A」が送信した「データ」と,「受信者B」した「データ」とが「同一」であることを確認するために用いられるものでないことは,明らかである。
加えて,イ号においては,署名「[(D)a]SKa」と,署名「[(D’)b]SKb」との照合,或いは,「ダイジェスト(D)a」と,「ダイジェスト(D’)b」との照合は行っておらず,その他,「送信者A」の送信した「文書D」の「同一性を確認できるデータ」と,「受信者B」の受信した「文書」の「同一性を確認できるデータ」との「照合」を示唆する構成は存在しない。
なお,上記「第3 イ号物件」の「3.イ号についての当審の判断」において検討したとおり,イ号における「第三者装置」は,「電子契約サービスCECTRUST」における「サーバC」,即ち,「CECサーバ」であるところ,「CECサーバ」が,本件特許発明における構成要件Eを充足しないことは,確定した東京地裁平成24年(ワ)第10734号判決(乙第2号証)の11頁ないし22頁において認定・判示されているとおりであり,それを覆すに足る証拠は提出されていない。
よって,イ号は,本件特許発明の構成要件Eを充足しない。

6.構成要件Fについて
イ号の「文書D」の「ダイジェスト(D)a」が,本件特許発明における「発信者装置が送信した伝達情報のダイジェスト」に相当する。
よって,イ号の構成gは,本件特許発明の構成要件Fを充足する。

7.構成要件Gについて
上記5.において検討したとおり,イ号における「文書D」が,本件特許発明における「伝達情報」に相当するものであり,イ号における「文書D’」は,前記「文書D」とは異なるものであるから,
イ号は,本件特許発明における「受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」に相当する構成を有していない。
よって,イ号は,本件特許発明の構成要件Gを充足しない。

8.構成要件Hについて
上記1.,及び,上記4.において検討したとおり,イ号は,本件特許発明において言うところの「内容証明」を行うものではない。
よって,イ号は,本件特許発明の構成要件Hを充足しない。

第5 むすび
以上のとおり,イ号物件は,本件特許発明の構成要件A,構成要件C?構成要件E,構成要件G,及び,構成要件Hを充足しないから,本件特許発明の技術的範囲に属さない。

よって,結論のとおり判定する。

 
判定日 2020-12-09 
出願番号 特願平11-372997
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (H04L)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 石井 茂和
須田 勝巳
登録日 2006-04-28 
登録番号 特許第3796528号(P3796528)
発明の名称 内容証明を行う通信システムおよび内容証明サイト装置  
代理人 升永 英俊  
代理人 佐藤 睦  
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