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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1369379
審判番号 不服2019-6706  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-22 
確定日 2020-12-09 
事件の表示 特願2014-553485「リソグラフィ及び他の用途における極端紫外線放射で使用する材料、成分及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月25日国際公開、WO2013/109986、平成27年 4月 9日国内公表、特表2015-510688〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)1月18日(パリ条約による優先権主張2012年1月19日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成28年 9月30日付け:拒絶理由通知書
平成29年 3月 6日 :意見書・手続補正書
平成29年 5月26日付け:拒絶理由通知書
平成29年12月 6日 :意見書・手続補正書
平成30年 3月 8日付け:拒絶理由通知書
平成30年 9月20日 :意見書・手続補正書
平成31年 1月10日付け:拒絶査定
令和 元年 5月22日 :審判請求書
令和 元年 7月 4日 :手続補正書(審判請求書の補正)
令和 元年 8月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 2月 6日 :意見書・手続補正書

第2 当審における拒絶の理由
当審が令和元年8月2日付け拒絶理由通知書において通知した拒絶理由は、次のものを含む。
1 令和2年2月6日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)前の請求項1?3に記載された発明は、その課題解決原理が不明であり、しかも、本願の発明の詳細な説明又は図面は、実施例その他の具体的な構造(材料、寸法、製法等)を一切開示しないため、当該各請求項に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、よって、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2 本件補正前の請求項1?3に記載された発明は、その課題解決原理が不明であり、しかも、本願の発明の詳細な説明又は図面は、実施例その他の具体的な構造(材料、寸法、製法等)を一切開示しないため、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該各請求項に記載された発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、よって、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
3 仮に、本願が実施可能要件及びサポート要件を満たしているとしても、本件補正前の請求項1?3に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用例:特開2003-318094号公報
周知例:野田進、「フォトニック結晶」、光学、2001年、30巻1号、56頁?64頁

第3 当審の判断
当審は、以下のとおり、上記第2のいずれの理由によっても、本願は拒絶されるべきものであると判断する。
1 本願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本願明細書等」という。)の記載
本願明細書等(本件補正後のもの。)には、次の記載がある。
(1)「特許請求の範囲
【請求項1】
露光システムで用いられるように構成されるエレメントであって、
前記露光システムは、波長を有する光を送信するように構成される光源を備え、
前記エレメントは、250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備え、
前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して前記エレメントの反射率が70%超になるように構成される、
エレメント。
【請求項2】
露光システムで用いられるように構成されるエレメントであって、
前記露光システムは、波長を有する光を送信するように構成される光源を備え、
前記エレメントは、250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備え、
前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して前記エレメントの透過率を4%超になるように構成される、
エレメント。
【請求項3】
露光システムで用いられるように構成されるエレメントであって、
前記露光システムは、波長を有する光を送信するように構成される光源を備え、
前記エレメントは、250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備え、
前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して電磁放射吸収を制御するように構成される、
エレメント。
【請求項4】
前記露光システムは、フォトリソグラフィツール、バイオテクノロジーシステム、スキャニング又はイメージングシステム、アストロノミカルシステム、材料処理システム、又は印刷システムを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の露光システム。
【請求項5】
前記複数のナノ構造的な特徴は、第1のサイズを有し、前記第1のサイズは、前記ターゲット波長と実質的に相関する、請求項1から4のいずれか一項に記載のエレメント。
【請求項6】
前記複数のナノ構造的な特徴は、1、2又は3次元である、請求項1から5のいずれか一項に記載のエレメント。
【請求項7】
前記複数のナノ構造的な特徴は、前記材料において周期性を有し、前記周期性は、1、2又は3次元である、請求項1から6のいずれか一項に記載のエレメント。
【請求項8】
前記複数のナノ構造的な特徴は、半周期性、非周期性、段階的、部分段階的、対称的、フラクタル、ジャイロイド、スイスロール、非平坦、セグメント、反復ユニット、パターン形成、又は材料のランダム又はセミランダムな順序の1つで配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載のエレメント。
【請求項9】
前記複数のナノ構造的な特徴は、金属、誘電体、気体、液体、化合物、半導体、ポリマー、有機材料、生体材料、単原子材料、空気、炭素、モリブデン、ベリリウム、ランタン、炭化ボロン、シリコン、SiO_(2)、TiO_(2)、ルテニウム、ニオビウム、ロジウム、金、銀、銅、白金、パラジウム、ゲルマニウム、DNA、プロテイン、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、MoS、O_(2)、N_(2)、He、H2、Ar、CO_(2)の一又はそれ以上を含有している、請求項1から8のいずれか一項に記載の露光システム。
【請求項10】
前記エレメントは、基板、ミラー、レンズ、表面、窓、ファセット、フィルタ、カバーエレメント、キャップ層、保護層、障壁層、薄膜、コレクタ、液滴生成器、パネル、ウェーブガイド、キャビティ、ファイバー、反射素子、透過素子、検出器、波長モニタ、帯域又はパワーモニタ、センサ、フォトマスク、フォトレジスト、冷却機構、熱管理機構、光源、ランプ、レーザー、光学素子、マスクアライナー、インテグレータ、光学デバイス又は電子デバイスを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のエレメント。
【請求項11】
前記複数のナノ構造的な特徴は、層、膜、球体、ブロック、ピラミッド型、リング型、円筒形、貝殻形状、半球体又はセグメントを含む形状を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のエレメント。」

(2)「【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2012年1月10に提出され、発明の名称が“Materials, Components, and Methods for Use with Extreme Ultraviolet Radiation in Lithography & Other Applications,”である米国仮出願第61/588601号の非仮出願であり、その開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。」

(3)「【背景技術】
【0002】
背景
光学リソグラフィシステムは、例えば、デバイスの製造用に共通に用いられる。このようなシステムの分解能は、露光波長に比例する。よって、短波長は、製造時の解像度を向上させることができる。極端紫外線リソグラフィ(Extreme ultraviolet lithography (EUVL))は、極端紫外線(extreme ultraviolet (EUV))波長(約120ナノメートルから0.1ナノメートル)での電磁放射を使用する。したがって、これらの波長のフォトンは、約10エレクトロンボルト(eV)から12.4keV(それぞれ、124nm及び0.1nmに対応)の範囲のエネルギーを有する。極端紫外線波長は、プラズマ及びシンクロトロン光源のようなデバイスにより人為的に生成されることができる。リソグラフィ用のEUV波長の使用は、ポリマーエレクトロニクス、太陽電池、バイオテック、医療技術のような他の用途と共に、半導体チップのようなデバイスの加工寸法を小さくすることの潜在的な利点を有する。EUV波長では、ミラー、レンズ、フォトレジスト等のようなリソグラフィの構成要素を形成するために用いられる材料が重要となる。しかし、多くの材料は、EUV波長での放射のために高い吸収率を有する。EUV波長でのこれらの材料の高い吸収性は、EUVリソグラフィシステムの性能を低下させる。例えば、EUVリソグラフィシステムは、この吸収性を克服するためにより大きな電源を必要とする。」

(4)「【発明の概要】
【0003】
本開示は、一般的に、紫外線(UV)、極端紫外線(EUV)及び軟X線で使用するリソグラフィ(EUVL)又は他の用途における材料、デバイス、装置及び方法に関する。より具体的には、本開示は、EUV放射を用いる装置、デバイス及びシステムにおけるこのような材料及び構成要素の製造及び使用方法と共に、UV、EUV及び軟X線用途で使用する材料及び構成要素に関するものである。
【0004】
特定の実施形態では、本開示は、露光システムで使用されることができるエレメントに関するものであり、システム又はサブシステムは、波長を有する光を送信する光源を備える。エレメントは、複数の構造的な特徴(structural features)を有する材料を備えることができる。複数の構造的な特徴は、選択された波長に対してエレメントの反射率を70%を超えて向上させることができる。
【0005】
別の実施形態では、本開示は、露光システムで用いることができるエレメントに関するものである。システム又はサブシステムは、波長を有する光を送信する光源を備えることができる。エレメントは、複数の構造的な特徴を有する材料を備えることができる。複数の構造的な特徴は、選択された波長に対してエレメントの透過率を4%を超えて向上させることができる。
【0006】
別の実施形態では、本開示は、露光システムで用いられることができるエレメントに関する。システム又はサブシステムは、波長を有する光を送信する光源を備えることができる。エレメントは、複数の構造的な特徴を有する材料を備えることができる。複数の構造的な特徴は、選択された波長に対する電磁放射吸収を制御することができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、露光システムは、フォトリソフラフィツール、スキャニング又はイメージングシステム、天文システム、材料処理システム、又は印刷システムを含むことができる。
【0008】
一実施形態では、波長は、250nm以下である。複数の構造的な特徴は、波長と実質的に相関する第1のサイズを有することができる。一実施形態では、複数の構造的な特徴は、250nmから0.01nmの第1のサイズを有する複数の構造的な特徴は、1、2又は3次元であることができ、複数の構造的な特徴は、材料において周期性を有することができる。周期性は、1、2又は3次元であってもよい。複数の構造的な特徴は、半周期性、非周期性、擬似周期性、段階的、部分段階的、対称的、フラクタル、ジャイロイド、スイスロール、非平坦、セグメント、反復ユニット、パターン形成、又は材料のランダム又はセミランダムな順序の1つで配置されることができる。材料は、金属、誘電体、気体、液体、化合物、半導体、ポリマー、有機材料、生体材料、単原子材料、空気、炭素、モリブデン、ベリリウム、ランタン、炭化ボロン、シリコン、SiO_(2)、TiO_(2)、ルテニウム、ニオビウム、ロジウム、金、銀、銅、白金、パラジウム、ゲルマニウム、DNA、プロテイン、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、MoS、O_(2)、N_(2)、He、H_(2)、Ar、CO_(2)の一又はそれ以上を備えることができる。複数の構造的な特徴は、金属、誘電体、気体、液体、化合物、半導体、ポリマー、有機材料、生体材料、単原子材料、空気、炭素、モリブデン、ベリリウム、ランタン、炭化ボロン、シリコン、SiO_(2)、TiO_(2)、ルテニウム、ニオビウム、ロジウム、金、銀、銅、白金、パラジウム、ゲルマニウム、DNA、プロテイン、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、MoS、O_(2)、N_(2)、He、H_(2)、Ar、CO_(2)、真空又はボイドの一又はそれ以上を備えることができる。複数の構造的な特徴は、層、膜、球体、ブロック、ピラミッド型、リング型、多孔質構造、円筒形、リンク形状、貝殻形状、フリーフォーム形状、キラル構造、半球体又はセグメントを含む形状又は大きさを有することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、エレメントは、基板、ミラー、レンズ、表面、窓、ファセット、フィルタ、カバーエレメント、キャップ層、保護層、障壁層、薄膜、コーティング、内部表面領域、コレクタ、液滴生成器、相互分散材料、パネル、ウェーブガイド、キャビティ、ファイバー、構造的要素、反射素子、透過素子、検出器、波長モニタ、帯域又はパワーモニタ、センサ、フォトマスク、フォトレジスト、冷却機構、熱管理機構、光源、ランプ、レーザー、光学素子、マスクアライナー、インテグレータ、構造的な構成、光学デバイス又は電子デバイスを備えることができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、材料又は構造的な特徴は、化学エッチング、レーザー照射又は加熱処理の1つにより洗浄又は前処理されることができる。
【0011】
一実施形態では、材料、前記材料のサブセット又は材料のアスペクトは、セルフアセンブリ、ダイレクトアセンブリ、ソフトテンプレーティング、電鋳、電気めっき、犠牲又は足場材料、ブロックコポリマー、ボトムアップ技術、EUV又はXUVリソグラフィ、集中電子又はイオンビーム、ナノインプリント、原子間力又は走査プローブ顕微鏡、2又はそれ以上のフォトンリソグラフィ、レーザー照射、脱合金、化学エッチング、化学的界面活性剤、表面処理の1つにより製造されることができる。
【0012】
特定の実施形態では、本開示は、波長の70%を超える反射率を有することができる材料を製造する方法を提供する。方法は、ホスト層を研磨するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、方法は、さらに、ポリマー又は足場構造をアセンブリするステップを備えることができる。また、方法は、足場構造に亘ってメイン層を成長することを備えることができる。方法は、また、メイン層の表面を研磨することを備えることができる。さらに、方法は、材料の反射率が0.1nmから250nmの波長で70%を超えるように、ポリマー又は足場構造を除去するステップを備えることができる。いくつかの実施形態では、方法は、レーザー照射又は化学エッチングにより一又はそれ以上の層を平滑化するステップを備えることができる。ポリマー又は足場構造は、一又はそれ以上のブロックコポリマーであることができる。一実施形態では、方法は、さらに、キャッピング又は基板を適用するステップを備えることができる。」

(5)「【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示は、添付の図面と共に、以下の発明の詳細な説明に関して、より完全に理解されることができる。
【図1】図1は、本明細書に記載される材料の構造と比べたEUV波長におけるMo/Siマルチレイヤーの反射特性の詳細を示す。
【図2】図2は、構造的な特徴を含む三次元構造の実施形態及びEUV波長においてボイドを含む構造から反射率プロファイルの例を示す。
【図3】図3は、本明細書に記載される材料によるフォトリソグラフィマスクの実施形態を示す。
【図4】図4は、本明細書に記載される材料によるフォトレジストの実施形態を示す。
【図5】図5は、本明細書に記載される材料による光学素子又は表面の実施形態を示す。
【図6】図6は、ポリマーテンプレートを用いて、本明細書に記載される材料を製造するための製造プロセスの実施形態を示す。」

(6)「【発明を実施するための形態】
【0014】
極端紫外線照射を用いるリソグラフィは、より小さい加工寸法によるデバイスの製造を可能にすることができる。しかし、多くの材料は、EUVスペクトルにおける電磁放射に対して高い吸収性を有している。EUVスペクトルにおいて低吸収率を有する天然素材の選択肢は限られている。したがって、多くの材料の高い吸収性は、EUVリソグラフィ(EUVL)システムの性能に影響を与える。例えば、EUVLシステムの動作のために高レベルの光強度が要求される。システムは、増加した光強度のために、高額な熱管理システムも必要とする。
【0015】
本開示は、EUVLシステムの性能を向上させることができる材料について説明する。本開示は、さらに、これらの材料及びこれらの材料を用いたEUVLシステムの構成要素、装置及びデバイスの製造について説明する。本明細書で説明される材料、方法及びシステムは、電磁放射が極端紫外線及び軟X線波長で行われるシステムでも使用可能である。
【0016】
材料は、さらに、UV、EUV又は軟X線波長を使用する非リソグラフィシステムでも性能を向上させることができる。例えば、ランプ及び光源、生物学的なもの(例えば、バイオアッセイ及びアレイ開発)、植物学的システム、イメージング及び顕微鏡システム、センサアクティベーション、蛍光物質、量子ドット、アストロノミカルシステム(astronomical system)、材料処理システム及び原子、核粒子放出照射、加速システム、スペースシステム。
【0017】
本明細書で使用されるように、UV照射は、約400ナノメートルから120ナノメートルの波長範囲での電磁照射であり、EUV照射は、約120ナノメートルから1ナノメートルの波長範囲の電磁照射であり、軟X線照射は、約1ナノメートル0.01ナノメートルの波長範囲の電磁照射である。選択された波長範囲は、UV、EUV又はX線範囲の励起と同等である2又はそれ以上のフォトンプロセスの一部であってもよい。一般的な文献との定義のいくつかの差異が存在するが、意図する領域は、ほぼ同一である。また、意図する範囲は、XUV照射として定義される照射を拡張することを意図する。
【0018】
本開示は、また、生体材料開発、印刷及びパターニング、顕微鏡、材料処理、天文学的システム、露光、イメージング及びスキャニングシステムの用途のためのUV、EUV、XUV、軟X線照射を用いるシステム、装置及び方法について説明する。より具体的には、用途は、3D印刷、選択的生体材料パターニング、バイオセンサアクティベーション、DNA/ペプチドパターニング、量子ドットアクティベーション、蛍光顕微鏡、選択的生体材料アクティベーションを含むことができる。
【0019】
本開示は、極端紫外線波長用途で使用されることができる材料について説明する。材料は、一又はそれ以上の電磁波長範囲での動作を要求する用途で使用できる特徴を含んでもよい。一実施形態では、構造的な特徴の大きさは、極端紫外線用途で使用される波長とほぼ同一の大きさである。例えば、構造的な特徴は、約13.5nmの大きさを有することができる。いくつかの実施形態では、特徴は、10から20nmのオーダーの大きさを有する構造的な特徴であってもよい。別の実施形態では、材料は、0.001nmから10nmの範囲の構造的な特徴を有することができる。さらに別の実施形態では、材料は、10nmから250nmの範囲の構造的な特徴を有することができる。これらの特徴は、ナノメートルの特徴として示されることができる。ナノメートルの特徴は、1次元、2次元又は3次元であってもよい。構造的な特徴は、材料のバルク電磁吸収を低減することができる。例えば、いくつかの用途では、ナノメートルの特徴は、当該用途で使用される照射の波長とほぼ相関することができる。材料は、サブ波長特徴を有してもよい。
【0020】
材料は、また、極端紫外線(UV)波長範囲を使用する用途での吸収を低減するように設計されることができる。例えば、構造的な特徴の大きさは、UV波長に相関することができる。別の実施形態では、構造的な特徴の大きさは、軟X線波長範囲と相関することができる。選択された波長範囲は、UV、EUV又はX線範囲を置き換える2又はそれ以上のフォトン(マルチフォトン)の一部であってもよい。
【0021】
ナノメートルの特徴は、例えば、周期的、半周期的、擬似周期的、又は非周期的構造又は繰り返し又は繰り返された要素を含んでもよい。周期的な構造は、1、2又は3次元構造であってもよい。構造は、積層構造又は基板の一部であってもよい。基板は、平坦、非平坦又はフリーフォームであってもよい。周期的な構造の例は、ナノ粒子の2D又は3Dアレイ、ジャイロイド構造、スイスロール構造を含む。ナノメートルの特徴は、任意の大きさの任意の形状であることができ、例えば、層、膜、球体、ブロック、ピラミッド型、リング状、多孔質構造、円筒形、リンクされた形状、貝殻状、フリーフォーム形状、キラル構造、半球体、セグメント又はそれらの任意の組合せであってもよいが、これらに限定されない。
【0022】
材料は、例えば、段階的な構造を含んでもよい。例えば、材料内にいくつかの層がある任意の大きさの積層構造は、前の層から増加又は減少する、長さ、深さ、厚さ、周期又は繰り返しユニットを有する。一実施形態では、層が段階的な屈折率を生成するためにこのような態様で配置される場合には、カスタマイズされた光学応答は、波長又は角度のより広い範囲に対して生成される。構造は、積層構造又は基板の一部であってもよい。基板は、平坦、非平坦、又はフリーフォームであってもよい。
【0023】
図2は、ボイドを有する3Dアレイの実施形態を示す。材料は、任意の形状のギャップ又はボイド220を含んでもよい。ギャップ又はボイドは、任意の大きさで材料全体に分布してもよく、0.01nmからミクロンサイズの範囲のサイズを有することができる。ギャップ又はボイドは、流体、液体ガス、単原子材料、有機材料、ポリマー又は真空で充填されてもよい。材料は、メンブレン、独立構造又は素子、又は部分的に支持された構造又は特徴又は支持構造210を含んでもよい。特徴は、構造又は構成要素により支持されても良い。ギャップは、周期的又はランダムな分布であってもよい。ギャップは、O_(2)、H_(2)、He、N_(2)、Ar、CO_(2)又は非活性ガスを含む他の気体を含んでもよい。1つの例は、エアギャップを有する金属球体の3D周期アレイである。システムが真空下にある場合、ボイドも真空を含んでもよい。図2は、また、ボイドを含んでもよい材料からの反射率プロファイルを示す。図2に示されるように、反射率は、約13.5nmの波長で70%を超える。

【0024】
材料は、さらに、単原子材料のマイクロ又はナノ構造を含んでもよい。単原子材料のいくつかの例は、グラフェン、グラファイト、硫化モリブデン、及びカーボンナノチューブを含む。単原子材料は、光学素子、熱管理又は冷却機構要素として機能してもよい。単原子材料は、例えば、金属、誘電体、半導体のような他の材料との組み合わせで用いられてもよい。積層構造、周期的構造、マルチディメンショナル又はフリーフォーム構造の一部を形成してもよく、又は基板であってもよい。
【0025】
材料は、有機材料又は生体材料であってもよい。材料は、さらに、有機材料又は生体材料のマイクロ又はナノ構造特徴を備えてもよい。有機材料又は生体材料の例は、DNA、プロテイン、又は波長において低吸収性を有する他の分子又はゲノム材料を含む。有機材料又は生体材料は、また、犠牲材料、ソフトテンプレーティング材料又は足場構造であってもよい。有機材料又は生体材料は、他の材料でカプセル化されてもよく、他の材料は、ポリマー、誘電体又は半導体を含むが、排他的なものではない。有機材料又は生体材料は、光学素子、熱管理又は冷却機構要素として機能してもよい。有機材料又は生体材料は、例えば、金属、誘電体、半導体のような他の材料との組み合わせで用いられてもよい。積層構造、周期的構造、マルチディメンショナル又はフリーフォーム構造の一部を形成してもよく、又は基板であってもよい。
【0026】
材料は、また、ポリマーを含むこともできる。材料は、さらに、ポリマーのマイクロ又はナノ構造の特徴を備えてもよい。ポリマーは、また、犠牲材料、ソフトテンプレーティング又は足場構造であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーは、材料のギャップ又はボイドを残し、除去されてもよい。これらのギャップ又はボイドは、材料の構造的な特徴を形成してもよい。他の実施形態では、ポリマーは、材料に残っていてもよい。ポリマーは、フォトレジストであってもよい。ポリマーは、また、1つのレーザー又は2又はそれ以上のフォトンレーザープロセスにより照射又は露出されてもよい。
【0027】
材料は、金属、半導体、合金、誘電体、化合物、気体、液体又はこれらの組み合わせを用いて製造されるナノスケール特徴(nanoscale features)を含んでもよい。これらのナノスケール構造は、波長の一又はそれ以上の帯域で材料による吸収を低減するように設計されることができる。金属は、例えば、金、銀、白金、モリブデン、ベリリウム、ルテニウム、ロジウム、ニオビウム、パラジウム、銅、ランタンを含んでもよい。合成された材料は、例えば、シリコン、二酸化シリコン、炭化ボロン、炭素、有機物、生体材料、ゲルマニウム、ポリマー、又は単原子材料、液体、気体、又は他の要素、合金又は化合物、又は真空を含んでもよい。この場合、いずれかの材料は、屈折率の虚数部により記述されるような少量の吸収性を有することができ、ここで一方の材料は、他方の材料以上の吸収性を有する。
【0028】
材料は、アレイを形成する、又は1、2又は3次元の周期性があるナノサイズ化された構造及び特徴を有してもよく、例えば、フォトニック結晶、プラズモニック結晶、メタ材料、キラル構造又はサブ波長構造であってもよいが、これらに限定されない。アレイの特徴は、波長、スペクトル帯域、フォトニックバンドギャップ受け入れ角度、(スペクトル範囲で平均化された)平均反射率を含む反射率、透過率、吸収率、散乱及び電磁促進係数、共振又はインタラクションモードを最適化するようにチューニングされてもよい。構造は、電磁相互作用を増大するために光の群速度を低下するキャビティを提供してもよく、又は特定の電磁ノードが促進され、かつ特定のノードが禁止されるウェーブガイド又はキャビティを形成してもよい。禁止モードの伝搬の場合には、これは、チューニング可能なピーク波長及びスペクトル帯域特性を有する選択的又は全方向ミラーを形成するために用いられてもよい。キャビティは、また、2又はそれ以上のフォトンプロセス又は赤外線励起からEUV照射を放出する光源が必要な場合、赤外からEUVへの光の変換を促進するために用いられることもできる。
【0029】
材料のナノスケール特徴(nanoscale features)は、例えば、3Dの六角形にパックされたアレイとして構成されてもよい。3Dの六角形にパックされたアレイは、金属を含む。金属は、例えば、金、銀、ルテニウム、モリブデン、シリコン、ゲルマニウム、又は白金、パラジウム、又は他の帰属であってもよい。図2を参照。
【0030】
材料のナノスケール特徴は、例えば、ジャイロイド構造を含んでもよい。ジャイロイド構造は、金属、例えば、金、銀、ルテニウム、モリブデン、シリコン、ゲルマニウム又は白金であってもよい。
【0031】
材料のナノスケール特徴は、例えば、グラフェン又はモリブデングラフェン(Mo-Graphene)であってもよい。ナノスケール特徴は、グラフェンダブルジャイロイド構造を含んでもよい。
【0032】
ナノフォトニック材料は、UV、EUV又は軟X線波長のような選択された波長での電磁照射の低バルク吸収性を有するように設計された周期的な1、2又は3次元構造を含んでもよい。
【0033】
本開示は、さらに、材料を製造するために使用される方法、装置及び技術についても説明する。EUV材料は、トップダウン型製造工程を用いて製造されることができ、ここで、材料は、制御された真空環境において電着(electrodeposition)により平坦な基板に堆積される。堆積された材料は、約5nm以下の厚さ及びλ/20以下の粗さ係数を有することができる。低い粗さ係数は、材料の全体の反射率及び透過率を低減する異常からのミー散乱によって好ましい場合もある。十分に粗さが低い超平坦な材料を堆積することは困難となりうる。複数の材料又は積層構造が使用されるとき、各材料及び層は、個別に平滑化又は研磨されることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、EUV材料は、ボトムアップアプローチを用いて製造されることができる。ボトムアップ製造のアプローチでは、バルク材料は、構造のボトムエンドから物質を挿入することにより段階的に成長されることができ、それにより、平滑化のために1つの表面(最外上面層)のみを要求する。ボトムアップアプローチは、波長のUV、EUV及び軟X線範囲での使用のために、リソグラフィベースの材料を製造するために用いられることができる。
【0035】
一実施形態では、特定波長用に最適化された材料は、ソフトテンプレーティングアプローチを用いて製造されることができる。ソフトテンプレーティングアプローチでは、特定のポリマー、犠牲材料、又は一時的な材料は、電着及び他の材料堆積技術と共に一時的に使用されてもよいが、他を排除するものではない。犠牲材料又はポリマーは、ソフトテンプレート又は足場構造を形成し、これは、実際の材料が適切な位置に配置された後に除去されてもよい。犠牲材料又は一時的な材料は、化学エッチング又は他の方法により除去されてもよい。犠牲材料の一例は、フォトレジストであってもよい。一時的な材料の別の例は、ナノ球体である。ソフトテンプレーティングアプローチは、UV、EUV及び軟X線の波長の一又はそれ以上又は波長範囲用の吸収率を低減するように最適化されたリソグラフィベースの材料を製造するために用いられることができる。これらのEUV材料は、さらに、リソグラフィシステム用のエレメントを製造するために用いられることができる。図6は、ポリマーベースのソフトテンプレーティングアプローチを用いて本明細書に記載される材料の製造のための方法の実施形態を示す。方法500は、ホスト層を研磨するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、方法は、さらに、ポリマー又は足場構造をアセンブリするステップを含むことができる。また、方法は、足場構造に亘って主要層を成長することを含むことができる。方法は、また、主要層の表面を研磨することを含むことができる。さらに、方法は、材料の反射率が0.1nmから250nmの波長で70%を超えるようにポリマー又は足場構造を除去するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、方法は、レーザー照射又は化学エッチングにより一又はそれ以上の層を平滑化するステップを含むことができる。ポリマー又は足場構造は、一又はそれ以上のブロックコポリマーでありうる。一実施形態では、方法は、キャッピング又は基板を適用するステップをさらに含むことができる。

【0036】
EUV材料は、また、電鋳又は他の同様のプロセスを用いて製造されることができる。電鋳では、材料、例えば、金属は、化学、電気又は磁気手段により別の材料により成長される。この方法は、金属のモリブデン及びルテニウムの電鋳で用いられることができ、これは、通常の電鋳された金属ではない。電鋳プロセスは、UV、EUV及び軟X線範囲でリソグラフィベースの材料の製造に用いられることができる。
【0037】
EUV材料は、さらに、セルフアセンブリ又は他の同様のプロセスを用いて製造されることができる。セルフアセンブリでは、材料の特定の態様、例えば、ナノスケール特徴は、全体のバルク構造を形成するために共にアセンブリされる。アセンブリ形成は、セルフアセンブリ又はダイレクトアセンブリのいずれかであってもよい。一実施形態では、特徴は、化学、電気又は磁気手段により与えられたリジッド構造を保持してもよい。この一例は、化学的に分極された材料である。別の実施形態では、材料の基板は、好ましい構造又はその上部に配置されるバルク材料の実施形態を確実にするために、予めパターンニングされてもよい。別の実施形態では、基板は、好ましい又は選択的構造又はその上部に配置されるバルク材料の実施形態を確実にするために、有機又は生体材料で表面処理されてもよく、又は化学的に処理されてもよい。セルフアセンブリアプローチは、波長のUV、EUV及び軟X線範囲での使用のためにリソグラフィベースの材料を製造するために用いられることができる。
【0038】
材料は、また、折り曲げプロセスを用いて製造されてもよい。折り曲げプロセスでは、材料又は材料のサブセットは、より大きな寸法を材料構造全体に追加するために折り曲げ、曲げ又はヒンジで動かされてもよい。例えば、メタロ誘電体2Dアレイ(metallo-dielectric 2D array)は、バルク材料全体が、元の材料の複数のユニットの積層構造を明らかにする3Dの階層物を形成するために折り曲げられてもよいが、これに限定されない。
【0039】
材料は、また、ビルディングブロックプロセスを用いて製造されてもよい。ビルディングブロックプロセスでは、材料又は材料のサブセットは、バルク材料構造全体を形成するためにアセンブリ又は積層されてもよい。例えば、金属半導体の3Dアレイは、バルク材料全体が、元の材料の複数のユニットの積層構造を明らかにする3Dバルク材料物を形成するために、任意の構成で積層されてもよいが、これに限定されない。
【0040】
材料は、例えば、化学エッチングプロセスにより製造されてもよい。化学エッチャント(例えば、酸性)は、また、半導体、ポリマー又は金属の材料を選択的に除去するために用いられてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、材料は、脱合金化プロセスを用いて製造されてもよい。この方法では、材料は、金属を含んでもよい。金属は、インゴットを形成するために、例えば、加熱/溶融プロセスにより別の補助的な金属と混合されてもよい。腐食性となりうる酸は、元の材料の多孔質構造を残し、例えば、金又は銀のような補助的な金属を選択的に除去するために用いられることができる。残る構造は、原子レベルで均一かつ平坦な表面を形成してもよい。
【0042】
EUV材料又は材料のサブセット又はエレメントは、さらに、レーザーを用いて研磨又は平滑化されることができる。レーザーは、フェムト秒又はピコ秒レンジのパルス持続時間を有してもよい。レーザーは、製造の前、製造中又は製造後に使用されてもよい。レーザーは、また、欠陥、異常又は非均一物を削除、除去、清浄又は除去するために、製造後の材料を照射するために用いられることもできる。これは、製造プロセスに直接的には含まれない欠陥の除去を含む。例えば、フォトマスクの材料の実施形態が挙げられる。フォトマスクは、その製造プロセスの別のパートからの欠陥粒子、又はリソグラフィ又は光源系の漂遊イオン/エレメントからの欠陥粒子を受け付ける。フォトマスクは、続いて、レーザー照射プロセスにより浄化されることができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、ナノスケール構造特徴又はビルディングブロック又は材料のエレメントは、さらに、レーザーにより製造されてもよい。レーザーは、製造前、製造中又は製造後に用いられてもよい。レーザーのアプローチは、2又はそれ以上のフォトンプロセスアプローチの一部であってもよい。
【0044】
材料又は任意のサブセット又は材料のエレメントは、さらに、制御された濃度による化学エッチャントを用いて研磨又は平滑化されてもよい。一実施形態では、材料又は任意のサブセット又は材料のエレメントは、材料の形成中に、界面活性剤又は化学処理された表面を用いてさらに平滑化されることができる。界面活性剤は、後に除去されてもよい。化学的な界面活性剤のアプローチは、UV、EUV及び軟X線の範囲で使用するフォトニック構造形成物を製造するために用いられることができる。
【0045】
材料又は任意のサブセット又は材料のエレメント又はナノスケール特徴は、また、リソグラフィ又は印刷又はパターニングプロセスにより製造されてもよい。リソグラフィ又は印刷プロセスは、例えば、電子ビームリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ、UV、EUV又はX線リソグラフィ、2D又は3Dリソグラフィ、ステレオリソグラフィ、集中電子又はイオンビーム、走査トンネル顕微鏡、走査プローブリソグラフィ、原子間力顕微鏡、ソル-ゲルナノファブリケーション、2又はそれ以上のフォトンリソグラフィ、ディップペンリソグラフィ、近接場リソグラフィ、レーザーアシストインプリンティング、温度ベースのパターニング、レーザーベースのパターニングを含んでもよい。また、エッチング又はデポジション又は温度プロセスは、リソグラフィ又は印刷プロセスと組み合わせて用いられてもよい。リソグラフィ又は印刷のアプローチは、UV、EUV及び軟X線範囲でのリソグラフィベースの材料を製造するために用いられることができ、リソグラフィデバイス、システム又は装置で用いられることができる。
【0046】
別の態様では、本開示は、選択された電磁波長範囲で使用するナノスケール特徴を含む材料を製造する方法に関する。材料は、リソグラフィ又は他の光学用途で用いられるエレメント又はデバイスのための本明細書で説明されるような材料であってもよい。材料は、また、ブロックコポリマー足場プロセスを用いて製造されることもできる。方法は、例えば、少なくとも第1のブロック及び第2のブロックを有するブロックコポリマー構造を製造することを含んでもよい。方法は、さらに、第1のブロックを除去し、第1のブロックにより占有された構造の体積の少なくとも一部を、金属、半導体、ポリマー、誘電体又は単原子材料で置き換えることを含んでもよい。ブロックコポリマーのアプローチは、波長のUV、EUV及び軟X線範囲で使用するリソグラフィベースの材料を製造するために用いられることができる。
【0047】
第1のブロックは、例えば、選択的に分解可能なブロックであってもよい。方法は、さらに、第2のブロックを除去すること、及び/又は全体又は部分的に別のブロックを除去することを含んでもよい。第2のブロック及び別のブロックは、プラズマエッチングのようなプロセスを用いて除去されてもよい。
【0048】
体積の少なくとも一部分の置換えは、例えば、金属又は半導体を電気化学的に堆積することを含んでもよい。体積の少なくとも一部分の置換えは、金属又は半導体の電着又は電鋳を含んでもよい。
【0049】
別の実施形態では、材料は、スイスロール又はラミネートプロセスを用いて製造されることもできる。スイスロールプロセスでは、材料又は材料のサブセットは、全体の材料構造に、より高い大きさを加えるために一端からロールされ、全体材料の断面は、材料の複数の形成物として見える。例えば、メタロ-誘電体(metallo- dielectric)2Dアレイは、3D円筒状物を形成するために一端からロールされてもよく、軸に直交する、円筒状物の断面が、元の材料の複数のユニットの積層構造を示すことができるが、これに限定されない。
【0050】
別の態様では、本開示は、システム又はサブシステムのエレメントに関する。エレメントは、選択された電磁波長範囲での電磁放射又は電磁相互エンハンスメントに対して少なくとも部分的に反射又は透過するように設計されたナノスケール特徴を有する材料を含んでもよい。材料は、本明細書で前述又は後述するような材料であってもよい。材料は、選択された波長範囲において、エレメント上に配置されてもよく、エレメント内に埋め込まれてもよく、照射放出システム内又は照射放出システム又は照射モニタシステムのエレメント内に埋め込まれてもよい。
【0051】
一実施形態では、システム又はサブシステムは、リソグラフィシステムである。エレメントは、リソグラフィシステムの構成要素の1つであってもよい。例えば、エレメントは、フォトマスク、検出器、波長モニタ、帯域幅又はパワーモニタ、センサ、フォトレジスト、基板、冷却機構、熱管理機構、光源、ランプ、レーザー、光学素子、マスクアライナー、インテグレータ、構造的な構成要素、電子デバイス、光学デバイス又はシステム内に含まれる他の構成要素を含むことができるが、これらに限定されない。システム又はサブシステムは、また、半導体製造デバイス又は装置を含んでもよい。図3は、材料316を含むことができるエレメント300(この例ではフォトマスク)を示す。マスク300は、選択された波長の照射320を受け付けることができる。一実施形態では、材料316は、図2に対して記載されるような3Dアレイでありうる。他の実施形態では、材料316は、エレメント300の反射性を増加させることができる本明細書に記載された材料のいずれかであることができる。いくつかの実施形態では、エレメント300の反射率は選択された波長に対して70%を超えて増加することができる。波長は、0.1nmから250nmの間であることができる。材料316は、図3に示されるようにマスク300に集積されることができる。一実施形態では、材料は、マスク310の上層と下層との間に挟まれる。材料316を取り付ける他の方法が用いられることもできる。

【0052】
なお、リソグラフィシステムに加えて、上述した材料は、バイオテックシステム、2D又は3D印刷又はパターニングシステム、又は材料処理システムで使用されることもできる。これらのシステムは、性能を向上させるために、EUV材料を使用することができる材料を含むこともできる。エレメントは、例えば、フォトマスク、検出器、波長モニタ、帯域幅又はパワーモニタ、センサ、フォトレジスト、基板、冷却機構、熱管理機構、光源、ランプ、レーザー、光学素子、マスクアライナー、インテグレータ、構造的な構成要素、システム内に含まれる他のエレメント又は構成要素を含むことができる。いくつかの実施形態では、EUV材料は、投射レンズシステムで使用されることができる。例えば、このシステムでは、器具は、選択された波長範囲において複数の光学素子、例えば、望遠鏡又は衛星を含んでもよい。
【0053】
EUV材料が使用されうるシステムの別の例は、選択された電磁波長範囲での例えば、X線検出、イメージング及びスキャニングシステム、核粒子からの放射、加速度計システム及びバイオテクノロジーシステムを含む検出を含むシステムである。EUV材料は、スキャニング及びイメージングシステムで使用されることもできる。EUV材料は、動作波長の一又はそれ以上の範囲で低減された吸収性を必要とするシステムで使用されることもできる。
【0054】
一実施形態では、エレメントは、光学素子である。光学素子は、光学基板、ミラー、レンズ、表面、ウィンドウ、ファセット、フィルタ、カバーエレメント、キャッピング層、障壁層、薄膜、コーティング、内部表面領域、コレクタ、液滴生成器、相互分散材料、パネル、ウェーブガイド、キャビティ、ファイバー、構造的要素、反射素子、透過素子、検出器、波長モニタ、帯域幅又はパワーモニタ、センサ、フォトマスク、フォトレジスト、冷却機構、熱管理機構、光源、ランプ、レーザー、光学素子、マスクアライナー、インテグレータ、構造的な構成、電子装置又は光学装置、又は上述したシステムで使用されうる任意の他の光学素子を含んでもよい。光学基板は、溶融シリカ、フッ化カルシウム又はフッ化マグネシウムであることができる。光学素子は、また、透過性又は反射性のいずれかであってもよいが、特定領域で電磁相互作用を増加するように機能する。例えば、放射、キャビティを形成する、又は相互作用のために利用可能な内部表面積を増加させるために、特定の電磁モードを向上させる。図5は、材料510が光学素子500の表面上に配置される光学素子500の実施形態を示す。材料は、本明細書に示されない他の方法を用いて光学素子500に取り付けられることができる。光学素子500は、選択された波長の放射530を受け付けることができる。一実施形態では、材料510は、図2について説明されたような3Dアレイであることができる。別の実施形態では、材料510は、光学素子500の反射率を増大させることができる本明細書で説明される材料のいずれかであることができる。いくつかの実施形態では、光学素子500の反射率は、選択された波長の70%以上に増大させることができる。波長は、0.1nmから250nmの間であることができる。光学素子は、本明細書で記載されるシステムのいずれかで使用されることができる。

【0055】
図4は、材料-フォトレジスト複合物400の実施形態を示す。材料410は、ホスト材料、例えば、フォトレジスト420に埋め込まれる又は相互分散されることができる。材料は、ホスト材料420の性能を向上させることができる。フォトレジストの場合には、電磁相互作用の増大、つまり、ポリマー又は有機材料による散乱及び吸収は、フォトレジストの感度を増大させることができる。

【0056】
別の態様では、本開示は、反射素子に関する。反射素子は、選択された電磁波長範囲での電磁放射に対して少なくとも部分的に反射するように構成されるナノスケール特徴を有する材料を含んでもよい。材料は、本明細書で前述又は後述するような材料であってもよい。
【0057】
反射素子は、例えば、光学部品又は光学部品の構成要素であってもよい。光学部品は、例えば、ミラー、レンズ、光学窓、フィルタ又はコーティング、薄膜、メンブレン又は基板又は他の光学素子であってもよい。それに替えて、反射素子は、マスクの構成要素、コーティング又はマスクの材料の層であってもよい。マスクは、フォトリソグラフィマスクであってもよい。それに替えて、反射素子は、フォトレジスト又はフォトレジストの要素であってもよい。フォトレジストは、フォトリソグラフィフォトレジストであってもよい。反射素子は、例えば、EUVLシステム又は軟X線システムのようなリソグラフィデバイス又はシステムの構成要素又は要素であってもよい。
【0058】
反射素子は、例えば、光学部品、フォトレジスト、マスク又は他の構成要素又はデバイス上、又はその内部に配置されるコーティング又は材料の層であってもよい。光学部品は、溶融シリカ又はフッ化カルシウム光学部品であってもよい。
【0059】
反射素子は、例えば、フォトリソグラフィデバイスの構成要素として構成されてもよい。反射素子は、電磁放射源デバイスの構成要素として構成されてもよい。反射素子は、UV、EUV又は軟X線電磁放射を用いる半導体製造装置又は他の装置として構成されてもよい。反射素子は、UV、EUV又はX線光源の構成要素であってもよい。
【0060】
反射素子は、選択された電磁波長範囲で部分的に反射するように構成されるナノスケール特徴を有する材料を含んでもよい。それに替えて、又は加えて、反射素子は、選択された電磁波長範囲でほぼ全てを反射するように構成されるナノスケール特徴を有する材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、反射素子は、70%以上の反射率を有するように構成されるナノスケール特徴を有する材料を含んでもよい。
【0061】
反射素子は、材料が、70%以上の反射率を有するように一貫して製造されることができる選択された電磁波長範囲で反射されるように構成されるナノスケール特徴を有する材料を含んでもよい。
【0062】
反射素子は、電磁波長範囲でのスペクトル帯域幅を増大させるように構成されるナノスケール特徴を有する材料を含んでもよい。この例は、段階的な構造でありうる。
【0063】
反射素子は、電磁波長範囲での角度許容(angular acceptance)を増大させるように構成されるナノスケール特徴を有する材料を含んでもよい。この例は、2D又は3Dの対称的な構造でありうる。
【0064】
反射素子は、電磁波長範囲での(スペクトル範囲にわたって統合又は平均化された)平均反射率を増大させるように構成されるナノスケールフィーチャーを有する材料を含んでもよい。
【0065】
別の態様では、本開示は、透過性/透過素子に関する。透過素子は、選択された電磁波長範囲で少なくとも部分的に透過(4%以上)するように構成されるナノスケール特徴を有する材料を含んでもよい。材料は、本明細書で前述又は後述するような材料であってもよい。透過素子は、例えば、EUVLシステム又は軟X線システム又はバイオテクノロジー又は材料処理システムのようなリソグラフィデバイス又はシステムの構成要素又は要素であってもよい。
【0066】
透過素子は、例えば、光学部品又は光学部品の構成要素であってもよい。光学部品は、例えば、ミラー、レンズ、光学窓、又は他の光学素子であってもよい。それに替えて、透過素子は、マスクの構成要素、又はマスクの材料のコーティング又は層であってもよい。マスクは、フォトリソグラフィマスクであってもよい。それに替えて、透過素子は、フォトレジスト又はフォトレジストの要素であってもよい。フォトレジストは、フォトリソグラフィフォトレジストであってもよい。
【0067】
透過素子は、例えば、光学部品、フォトレジスト、マスク又は他の構成要素又はデバイス上、又はその内部に配置されるコーティング又は材料の層であってもよい。光学部品は、溶融シリカ又はフッ化カルシウム光学部品であってもよい。
【0068】
透過素子は、フォトリソグラフィデバイスの構成要素であってもよい。いくつかの実施形態では、透過素子は、電磁放射源デバイスの構成要素であってもよい。透過素子は、また、UV、EUV又は軟X線電磁放射を用いる半導体製造装置又は他の装置の構成要素として構成されてもよい。透過素子は、UV、EUV又は軟X線光源の構成要素であってもよい。透過素子は、光学窓の構成要素、又は光学窓上に配置される又はその内部に配置される材料のコーティング又は層であってもよい。
【0069】
別の態様では、本開示は、上述したナノフォトニクス材料及び関連する方法の全部又は一部を製造及び使用する手段に関する。
【0070】
別の態様では、本開示は、極端紫外線リソグラフィ(EUVL)又は軟X線リソグラフィのようなシステム又は他のシステムでのナノフォトニック材料を用いる方法に関する。
【0071】
別の態様では、本開示は、上述したナノフォトニクス材料の全部又は一部を含む構成要素、デバイスシステムに関する。
【0072】
様々な追加の態様、特徴及び機能は、添付の図面とともに以下に、より詳細に説明される。
【0073】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、パイプ、コンジット及び他のボイドの内部を検査する装置、方法及びシステムの様々な態様、詳細及び機能の例を示すことを目的として提供されるが、説明された実施形態は、如何なる限定を意図するものではない。様々な態様が本開示の趣旨及び範囲内の別の実施形態に実施されてもよいことが当業者にとって明らかである。
【0074】
なお、本明細書で用いられるように、用語“例示的(exemplary)”は、“一実施例、例又実例として提供する”ことを意味する。“例示”として本明細書で説明され
る任意の態様、詳細、機能、実施及び/又は実施形態は、他の態様及び/又は実施形態に亘って好ましい又は有利であるとして構築される必要はない。
【0075】
極端紫外線リソグラフィは、今日、通常に使用される深紫外線リソグラフィ技術のような他の紫外線(UV)リソグラフィとは大きく逸脱している。EUV照射は、すべての材料により非常に吸収され、よって、EUVリソグラフィは、通常、真空中で行われる。このようなシステムでの光学素子は、EUV、照射の吸収を最小化するように構成されるべきであるが、これは、実装することが困難である。例えば、ミラーのような構成要素は、通常、入射光の35-40%を吸収する。
【0076】
典型的な量産試作EUVLシステムは、現在、少なくとも2つのコンデンサマルチレイヤーミラー、6つの投影マルチレイヤーミラー、及び1つのマルチレイヤーオブジェクト(マスク)を含むように構築する。光学部品が既に使用可能なEUV光の約96%を吸収しているため、適切なEUV光源は、この照射損失を解消するために、十分な明るさを必要とする。EUV源開発は、レーザー又は放電パルスにより生成されるプラズマに集中している。光を収集することを担当するミラーは、プラズマに直接的に晒され、したがって、熱のダメージ、高エネルギーイオンからダメージ及び他のデブリに対して脆弱である。EUV照射を生成する高エネルギープロセスと関連付けられるこのダメージは、リソグラフィ用のEUV光源の実装を制限する。
【0077】
したがって、光学部品、ミラー、光学窓、マスク、フォトレジスト、及び他のエレメント又は構成要素のようなエレメントのための従来の材料を用いるEUVリソグラフィのこれらの吸収特性のため、既存のEUVリソグラフィスキャナーユニットは、効率が良くない。
【0078】
一次元構造は、いくつかの潜在的な利点を示すが、これらもまた、制限を含む。例えば、モリブデン/シリコンマルチレイヤー積層構成の初期シミュレーション分析は、50層で90ナノメートルの周期性の1次元モリブデン/シリコンマルチレイヤースタックから得ることが可能な最大反射率が、図1に示されるようなゼロ度の入射角度で70.6%の理論最大値であることを示す。実際には、反射率は、製造プロセス及びミー散乱での欠陥によって低くなる。

【0079】
したがって、いくつかの実施形態では、約13.5nmの波長範囲で動作し、約80%以上の反射率を有する、2又は3次元ナノメートル構造を有するEUV反射素子(及び関連するデバイス)は、本明細書で記載されるような技術を用いてEUVLのような用途で製造及び使用されてもよい。また、同様の透過特性を有する材料(例えば、EUV透過材料及び関連する構成要素及びデバイス)は、本明細書で記載されるような技術を用いて同様に製造されてもよい。
【0080】
別の態様では、本明細書で説明される又は類似又は均等な材料のようなナノ構造化された(ナノフォトニクス)2又は3次元材料は、例えば、レーザー及びレーザーシステム、光源、スキャナー、マスク、レジスト材料、又は半導体又は他のデバイスの製造に使用する他のデバイス又はシステムのような構成要素及びデバイスで用いられてもよい。
【0081】
他の用途は、プラズマ源、シンクロトロン放射源又は他の電磁放射源を含んでもよい。さらに別の用途は、産業用レーザーのようなエキシマ又は他のレーザーと共に、X線電磁放射デバイス又は赤外線、可視光、UV、EUV又はX線波長での電磁放射を生成又は用いる他のデバイスを含んでもよい。ナノフォトニック材料を用いる構成要素及びデバイスは、また、バイオメディカルデバイス又は他のデバイス又はシステムのような別の用途で使用されてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、3次元グラフェンフォトニック結晶は、UV、EUV及びX線波長で動作するデバイス及びシステム用のナノフォトニクスとして用いられてもよい。グラフェンは、高い熱伝導率を有し、透過性となるように構成されることができ、積層、層状にする又は他の複合的な構成の使用を通じて、反射性又は吸収性となる近年開発された材料である。同様に、いくつかの実施形態では、グラフェンと同様の特性を有するカーボンナノチューブは、透過又は反射性ナノフォトニクス材料を製造するために用いられてもよい。例えば、グラフェン又はカーボンナノチューブ材料は、例えば、コーティング又は層状材料としてリソグラフィデバイスで使用されてもよい。これらの材料の高い熱伝導性は、熱を生成する高い伝導性を必要とする(例えば、光スキャニングツール、ウェーハパターニング用のマシーン、ツーフォトン(two-photon)デバイス、又はフォトレジストをパターンニングするようなUV、EUV及び/又は軟X線が用いられる他の装置又はシステムのようなデバイスの高い熱発散)と共に、透過性又は反射性が必要とされる用途(例えば、UV、EUV及び/又は軟X線波長)に有利となる。
【0083】
別実施形態では、ナノ構造化された材料は、ダブルジャイロイド構造で製造されてもよい。ダブルジャイロイド構造は、例えば、金(Au)及び/又はモリブデン(Mo)を含んでもよい。ダブルジャイロイド構造は、本明細書で前述したようなブロックコポリマー技術を用いて製造されてもよい。このような材料は、間隔内の周囲空気によって低金属密度を有してもよい。例えば、金属の密度は、例えば、10又はそれ以上の因数により対応するバルク材料以下であってもよい。
【0084】
この開示の他の実施形態及び変形例は、これらの教示を考慮した当業者にとって容易に想起することができる。したがって、この開示に与えられる保護は、以下の特許請求の範囲によってのみ制限され、これは、上記の発明の詳細な説明及び添付の図面と共に閲覧されたときにこのような実施形態及び変形例のすべてを含む。
【0085】
理解される。本明細書で開示されるプロセス及び方法のステップ及びステージの特定の順序又はヒエラルキーは、例示的なアプローチの例である。デザインの嗜好に基づいて、本開示の範囲内を維持する一方で、プロセス及び方法のステップ及びステージの特定の順序又はヒエラルキーは、特に言及しない限り、再配置されてもよいことが理解される。
【0086】
開示された実施形態の前述した説明は、当業者が本開示を行う又は使用することができるように提供される。これらの態様への様々な変更は、当業者にとって容易に明らかであり、本明細書で定義される包括的な原理は、本開示の趣旨又は範囲を逸脱しない他の態様に適用されてもよい。よって、本開示は、本明細書で示された態様に限定されることを意図するものではないが、本明細書で開示された原理及び新規な特徴と整合する最も広い範囲を与えることを意図するものである。
【0087】
本開示は、本明細書で示された態様に限定されることを意図するものではないが、発明の詳細な説明及び図面と整合する全ての範囲に与えられることを意図するものであり、ここで、単一の要素に対する参照番号は、特に言及しない限り、“一又はそれ以上の”ではなく、“1つかつ1つのみ”(“one and only one”)を意味するのではない。特に言及しない限り、文言“いくつか(some)”は、一又はそれ以上を示す。アイテムのリストの少なくとも1つを示すフレーズは、単一の部材を含むこれらのアイテムの任意の組み合わせを示す。一例として、“a、b又はcの少なくとも1つ”は、a、b、c、a及びb、a及びc、b及びc、a、b及びcに及ぶことを意味する。
【0088】
開示された態様の前記の説明は、当業者が本開示を行う又は使用することが可能となるように提供される。これらの態様への様々な変更は、当業者にとって容易に明らかであり、本明細書で定義される包括的な原理は、本開示の趣旨又は範囲を逸脱しない他の態様に適用されてもよい。よって、本開示は、本明細書で示された態様に限定されることを意図するものではないが、本明細書で開示された原理及び新規な特徴と整合する最も広い範囲を与えることを意図するものである。
【0089】
本明細書で用いられる“can” “might”、“may”、“e.g.,”等条件付きの文言(conditional language)は、特に言及しない限り、特定の実施形態が含むが、他の実施形態が特定の特徴、要素及び/又は状態を含まないことを伝えるために意図されるように通常用いられる文脈内で理解される。よって、このような文言は、特徴、エレメント及び/又は状態が、一又はそれ以上の実施形態に必要とされる任意の手法、又は一又はそれ以上の実施形態が、創作者が入力又は促したかそうでないか、これらの特徴、要素及び/又は状態が特定の実施形態に含まれる又は行われるかどうかを決定するためのロジックを必然的に含むことを伝えるように通常意図されるものではない。文言“備える”、“含む”、“有する”(“comprising”、“including” “having”)等は、同じ意味を表し、オープン・エンド型で全てを含んで使用され、追加の要素、特徴、動作、操作等を除外するものではない。また、文言“又は”(“or”)は、例えば、要素のリストを結合するために使用されたとき、文言“又は”が、リストの要素の1つ、いくつか又は全てを意味するように、その全てを含む意味で用いられる(かつその排他的な意味では用いられない)。また、冠詞1つ(“a”及び“an”)は、特に指定しない限り、“一又はそれ以上の”又は“少なくとも1つ”を意味するように解釈される。
【0090】
特に言及しない限り、“X、Y及びZの少なくとも1つ”のような接続的な文言(conjunctive language)は、アイテム、ターム等がX、Y又はZのいずれかであることを伝えるために通常用いられるような文脈で理解される。よって、このような接続的な文言は、通常、特定の実施形態がXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ及びZの少なくとも1つがそれぞれ存在することを必要とすることを意図するものではない。
【0091】
上記で詳述した記載は、様々な実施形態に適用されるような新規な特徴を示し、記載し、かつ指摘したが、説明されたデバイス又はアルゴリズムの形態及び詳細に様々な省略、代用及び変更が、本開示の趣旨から逸脱しない範囲でなされることが理解されるであろう。よって、前述した記載は、任意の特性の特徴、特性、ステップ、モジュール又はブロックが必要又は不可欠であることを意味するものではない。理解されるように、本明細書で記載されたプロセスは、本明細書で説明する特徴及び利益の全てを提供するものではない形態に埋め込まれることができる。本発明の保護は、前述した説明ではなく添付の特許請求の範囲により規定される。」

2 サポート要件適合性の判断
(1)特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)上記1で認定した本願明細書等の記載によれば、本願明細書等には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
ア 本開示は、一般的に、紫外線(UV)、極端紫外線(EUV)及び軟X線で使用するリソグラフィ(EUVL)又は他の用途における材料、デバイス、装置及び方法に関する。(【0003】)

イ 極端紫外線リソグラフィ(EUVL)は、極端紫外線(EUV)波長(約120ナノメートルから0.1ナノメートル)での電磁放射を使用する。リソグラフィ用のEUV波長の使用は、デバイスの加工寸法を小さくすることの潜在的な利点を有する。(【0002】・【0014】)

ウ EUV波長では、ミラー、レンズ、フォトレジスト等のようなリソグラフィの構成要素を形成するために用いられる材料が重要となる。しかし、多くの材料は、EUV波長での放射のために高い吸収率を有する。EUV波長でのこれらの材料の高い吸収性は、EUVリソグラフィシステムの性能を低下させる。(【0002】・【0014】)

エ 特定の実施形態では、本開示は、露光システムで使用されることができるエレメントに関するものであり、エレメントは、複数の構造的な特徴を有する材料を備えることができる。複数の構造的な特徴は、選択された波長に対してエレメントの反射率を70%を超えて向上させることができる。(【0004】)
別の実施形態では、複数の構造的な特徴は、選択された波長に対してエレメントの透過率を4%を超えて向上させることができる。(【0005】)
別の実施形態では、複数の構造的な特徴は、選択された波長に対する電磁放射吸収を制御することができる。(【0006】)

オ 複数の構造的な特徴は、金属、誘電体、気体、液体、化合物、半導体、ポリマー、有機材料、生体材料、単原子材料、空気、炭素、モリブデン、ベリリウム、ランタン、炭化ボロン、シリコン、SiO_(2)、TiO_(2)、ルテニウム、ニオビウム、ロジウム、金、銀、銅、白金、パラジウム、ゲルマニウム、DNA、プロテイン、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、MoS、O_(2)、N_(2)、He、H_(2)、Ar、CO_(2)、真空又はボイドの一又はそれ以上を備えることができる。(【0008】)
材料は、また、ポリマーを含むこともでき、いくつかの実施形態では、ポリマーは、材料のギャップ又はボイドを残し、除去されてもよい。これらのギャップ又はボイドは、材料の構造的な特徴を形成してもよい。(【0026】)

カ 一実施形態では、波長は、250nm以下である。複数の構造的な特徴は、波長と実質的に相関する第1のサイズを有することができる。(【0008】)
一実施形態では、構造的な特徴の大きさは、極端紫外線用途で使用される波長とほぼ同一の大きさである。構造的な特徴は、材料のバルク電磁吸収を低減することができる。例えば、いくつかの用途では、ナノメートルの特徴は、当該用途で使用される照射の波長とほぼ相関することができる。材料は、サブ波長特徴を有してもよい。(【0019】)
材料は、また、極端紫外線(UV)波長範囲を使用する用途での吸収を低減するように設計されることができる。例えば、構造的な特徴の大きさは、UV波長に相関することができる。別の実施形態では、構造的な特徴の大きさは、軟X線波長範囲と相関することができる。選択された波長範囲は、UV、EUV又はX線範囲を置き換える2又はそれ以上のフォトン(マルチフォトン)の一部であってもよい。(【0020】)
材料は、アレイを形成する、又は1、2又は3次元の周期性があるナノサイズ化された構造及び特徴を有してもよく、例えば、フォトニック結晶、プラズモニック結晶、メタ材料、キラル構造又はサブ波長構造であってもよいが、これらに限定されない。アレイの特徴は、波長、スペクトル帯域、フォトニックバンドギャップ受け入れ角度、(スペクトル範囲で平均化された)平均反射率を含む反射率、透過率、吸収率、散乱及び電磁促進係数、共振又はインタラクションモードを最適化するようにチューニングされてもよい。構造は、電磁相互作用を増大するために光の群速度を低下するキャビティを提供してもよく、又は特定の電磁ノードが促進され、かつ特定のノードが禁止されるウェーブガイド又はキャビティを形成してもよい。禁止モードの伝搬の場合には、これは、チューニング可能なピーク波長及びスペクトル帯域特性を有する選択的又は全方向ミラーを形成するために用いられてもよい。キャビティは、また、2又はそれ以上のフォトンプロセス又は赤外線励起からEUV照射を放出する光源が必要な場合、赤外からEUVへの光の変換を促進するために用いられることもできる。(【0028】)

キ 図2は、ボイドを有する3Dアレイの実施形態を示す。材料は、任意の形状のギャップ又はボイド220を含んでもよい。ギャップ又はボイドは、任意の大きさで材料全体に分布してもよく、0.01nmからミクロンサイズの範囲のサイズを有することができる。ギャップ又はボイドは、流体、液体ガス、単原子材料、有機材料、ポリマー又は真空で充填されてもよい。材料は、メンブレン、独立構造又は素子、又は部分的に支持された構造又は特徴又は支持構造210を含んでもよい。特徴は、構造又は構成要素により支持されても良い。ギャップは、周期的又はランダムな分布であってもよい。ギャップは、O_(2)、H_(2)、He、N_(2)、Ar、CO_(2)又は非活性ガスを含む他の気体を含んでもよい。1つの例は、エアギャップを有する金属球体の3D周期アレイである。システムが真空下にある場合、ボイドも真空を含んでもよい。図2は、また、ボイドを含んでもよい材料からの反射率プロファイルを示す。図2に示されるように、反射率は、約13.5nmの波長で70%を超える。(【0023】)

(3)検討
ア 本願明細書等に記載された課題(以下「本件課題」という。)は、上記(2)ウによれば、リソグラフィの構成要素を形成するために用いられる材料が、EUV波長での放射のために高い吸収率を有することであると認められる。
そして、本件課題を解決する手段(以下「本件課題解決手段」という。)として、独立項である請求項1?3には、次の内容、すなわち、
請求項1には、「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備え、前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して前記エレメントの反射率が70%超になるように構成される」エレメントが記載されており、
請求項2には、「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備え、前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して前記エレメントの透過率を4%超になるように構成される」エレメントが記載されており、
請求項3には、「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備え、前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して電磁放射吸収を制御するように構成される」エレメントが記載されていると認められる。

イ 上記アによれば、請求項1?3に記載された発明は、少なくとも、EUV波長における吸収率を低減した材料を得ることによって、本件課題を解決しようとするものであると解される。しかしながら、本願明細書等の記載をみても、以下のとおり、本件課題解決手段により、本件課題を解決することができる原理(以下「本件課題解決原理」という。)を理解することができない。
(ア)まず、本件課題解決手段には、「前記複数のナノ構造的な特徴」は、「…単一のターゲット波長に対して前記エレメントの反射率が70%超になるように構成される」(請求項1)、「…単一のターゲット波長に対して前記エレメントの透過率を4%超になるように構成される」(請求項2)及び「…単一のターゲット波長に対して電磁放射吸収を制御するように構成される」(請求項3)との特定があるけれども、当該特定は、達成すべき結果そのものであり、その結果を得るためにどのような具体的構造を採用すればよいのかを明記するものではない。そして、当該具体的構造が何らか存在するとしても、その構造によって、なぜ、EUV波長における吸収率を低減した材料を得ることができるのかは不明である。
また、材料が「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する」ことが、EUV波長における吸収率を低減した材料を得ることにつながるとも考え難い。
よって、当業者が、本件課題解決手段そのものから、本件課題解決原理を理解することができるとはいえない。

(イ)【0008】には、波長は、250nm以下であり、複数の構造的な特徴は、波長と実質的に相関する第1のサイズを有することができる旨記載されており、【0019】には、構造的な特徴の大きさは、極端紫外線用途で使用される波長とほぼ同一の大きさであり、構造的な特徴は、材料のバルク電磁吸収を低減することができる旨記載されている。この点、「複数の構造的な特徴は、波長と実質的に相関する第1のサイズを有する」との技術的事項や「構造的な特徴の大きさは、極端紫外線用途で使用される波長とほぼ同一の大きさであ」るとの技術的事項は、本件課題解決手段に明記されていないが、従属項である請求項5に、複数のナノ構造的な特徴が有する第1のサイズが、ターゲット波長と実質的に相関する旨の特定があることにも照らせば、当該技術的事項は、本件課題解決手段に含まれるものと解される。
しかしながら、当該技術的事項がEUV波長における吸収率を低減した材料を得ることにつながるとは考え難い。

(ウ)【0023】には、材料が、任意の形状のギャップ又はボイドを含んでいてもよく、ギャップ又はボイドは、任意の大きさで材料全体に分布してもよく、0.01nmからミクロンサイズの範囲のサイズを有することができる旨記載されており、【0008】及び【0026】にも、複数の構造的な特徴は、ボイドを備えることができる旨記載されている。
しかしながら、【0023】によれば、「ギャップ又はボイド」は、真空で充填されていることのほか、単原子材料、有機材料又はポリマー等で充填されてもよい旨記載されている。このように、本願明細書等においては、「ギャップ又はボイド」といっても、幅広い範囲のサイズを有するものであるとともに、多様な材質が充填され得るものとされているのであり、よって、このような「ギャップ又はボイド」を本件課題解決手段として特定しても、EUV波長における吸収率を低減した材料を得ることにつながるとは考え難い。

(エ)【0028】には、材料が、例えば、フォトニック結晶、プラズモニック結晶、メタ材料、キラル構造又はサブ波長構造であってもよい旨記載されている。
しかしながら、同段落には、材料はこれらに限定されない旨記載されているのであり、本件課題解決手段にも、これらの構造である旨の限定はない。また、それを措くとしても、これらの構造はそれぞれ異なるのであり、このような異なる構造を包含する本件課題解決手段によって、EUV波長における吸収率を低減した材料を得ることにつながるとは考え難い。よって、当該記載によっても、本件課題解決手段により、EUV波長における吸収率を低減した材料を得ることができるとは、考え難い。

(オ)さらに、請求項1に記載された発明においては、本件課題解決手段が「複数のナノ構造的な特徴は、…単一のターゲット波長に対して前記エレメントの反射率が70%超になるように」されているところ、そのような条件を満たしつつ、EUV波長における吸収率を低減する必要がある。
また、請求項3に記載された発明においては、本件課題解決手段が「複数のナノ構造的な特徴は、…単一のターゲット波長に対して電磁放射吸収を制御するように構成される」とされているところ、そのような条件を満たしつつ、EUV波長における吸収率を低減する必要がある。
このように、請求項1又は3に記載された発明は、EUV波長における吸収率を低減するのみならず、他の条件をも満足しなければならないのであるから、その課題解決原理は、ますます、理解し難いと言わざるを得ない。

(カ)そして、本願明細書等の他の記載及び技術常識を考慮しても、本件課題解決手段により、EUV波長における吸収率を低減した材料を得ることができるとは、理解できない。

(キ)よって、当業者は、本願明細書等の記載及び技術常識に照らして、本件課題解決手段により本件課題を解決できる原理を、理解することはできない。

ウ しかるところ、本願明細書等は、実施例その他の具体的な構造を一切開示しない。
この点、図1及び図2は、材料の波長に対する反射率を示したグラフを記載するものの、当該材料の構造に関して説明されている内容は、図1内の「Mo/Air」との記載及び図2内の「13.5nmにおいて、ボイドで構成される材料」との記載にとどまる。そのため、いずれの記載についても、具体的にいかなる構造を意味しているのかは不明であるし、図2に至っては、その構造がいかなる物質から構成されているのかすら不明である。また、そのことを措き、上記各記載から具体的な物質や構造を理解できるとしても、実際に得られたエレメントがそのような構造であることがどのようにして確認されたのかが不明である。したがって、図1及び図2を、具体的な裏付けをもつものであると評価することはできない。

エ 上記イ及びウのとおり、当業者は、本願明細書等の記載及び技術常識に照らして、本件課題解決手段により本件課題を解決できる原理を、理解することはできないのであり、それにもかかわらず、本願明細書等は、実施例その他の具体的な構造を一切開示していない。
よって、当業者が、請求項1?3に記載された発明について、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして、当該発明の課題を解決できると認識できるとはいえない。

オ これに対し、請求人は、次のとおり主張するけれども、いずれも、採用できない。
(ア)a 請求人は、【0028】によれば、請求項1?3に記載された発明は、ターゲット波長での電磁相互作用が増加するように、キャビティ、すなわちボイド又はギャップの構造を定義及び構築することで、反射率若しくは透過率の増加、又は電磁放射吸収の抑制を図るものである旨主張する。
しかしながら、【0028】に記載された「キャビティ」が本件課題解決手段の「ボイド又はギャップ」を意味することは、本願明細書等には記載されていない。また、それを措くとしても、ボイド又はギャップの構造を本件課題解決手段のようにすることにより、なぜ、反射率若しくは透過率の増加、又は電磁放射吸収の抑制を図ることができるのか、その原理は、不明である。

b さらに、請求人は、請求項1?3に記載された発明が、電磁放射が基材とのサブ波長相互作用を有するという原則に基づいて動作する旨主張する。
しかしながら、「サブ波長相互作用」という用語は、本願明細書等には記載されていない。この点、本願明細書等には、「サブ波長構造」という用語が記載されているけれども、上記イ(エ)のとおり、本件課題解決手段は、サブ波長構造であるとの限定をもつものではなく、むしろ、それ以外の構造であってよいものである。
よって、請求人の主張は、本願明細書等の記載に基づいたものではない。

(イ)請求人は、請求項1?3に記載された発明が、上記(ア)bでいう原則に基づいて、ボイド又はギャップの構造によって、改善された電磁相互作用を誘発し、材料の反射、透過又は吸収特性を制御及び改善するものであり、マクスウェル方程式を用いたシミュレーションにより見いだされたものである旨主張する。併せて、請求人は、図2に示す3次元構造について、球体で構成・成形されており、それによって、請求項1?3に規定の直径を有し、球体は3次元の周期性を持ち、各球体はその行と列の両方で接線方向に他の球体に接触しており、ギャップ又はボイド220は大気で満たされているものであり、図2に示すチャート230は、上記のシミュレーションを使用して作成されたものである旨主張する。
しかしながら、上記(ア)bのとおり、電磁放射が基材とのサブ波長相互作用を有するという原則に基づいて動作することは、本願明細書等の記載に基づいたものではない。また、請求人が主張する作用が、マクスウェル方程式を用いたシミュレーションにより見いだされたことは、本願明細書等には記載されていないし、図2に示すチャート230が上記のシミュレーションを使用して作成されたものであることも、本願明細書等に記載されていない。よって、請求人の主張は、本願明細書等の記載に基づいたものではない。
仮に、請求人が主張する作用がマクスウェル方程式を用いたシミュレーションにより見いだされたことが本願明細書等の記載から理解できるのだとしても、当該シミュレーションとして、具体的にどのような構造のものを対象にして、具体的にどのようなシミュレーションを行ったのかは、本願明細書等には一切記載されていない。この点、図2は、単なる模式図にすぎず、具体的にどのような物質や構造(寸法等)からなるのかが、本願明細書等に記載されていない以上、当該シミュレーションが具体的に開示されていない旨の上記認定を左右しない。このようにみてくると、当該シミュレーションに係る構造が本件課題解決手段に相当するのかすら不明であるし、また、それを措くとしても、当該シミュレーションは、第三者が再現できるものではなく、信用性があるとはいえない。
さらに、図2が、マクスウェル方程式を用いたシミュレーションにより得られたものであり、その具体的な物質や構造が本願明細書等の記載から理解でき、しかも、このシミュレーション結果に信用性があるのだとしても、上記イのとおり、本件課題解決原理が不明である中で、このような1件のみのシミュレーション結果をもって、上記エの判断が左右されることはないし、さらに図1を考慮したとしても、当該判断は左右されない。
加えて、マクスウェル方程式を用いたシミュレーションにより、ボイド又はギャップの構造によって、改善された電磁相互作用を誘発し、材料の反射、透過又は吸収特性を制御及び改善することが見いだされることがあるのだとしても、本件課題解決手段に係る構造のような微細かつ高い精度を要求されると考えられる構造が、シミュレーション通りに現実に得られるとは言い難い。よって、シミュレーションのみをもって、請求人が主張する作用の存在が裏付けられたことにはならない。
したがって、請求人の主張は、採用できない。

(ウ)請求人は、本願明細書等には、構造的特徴210のサイズ、配置、材料、具体的形状が記載されており、ボイド又はギャップの構成も明確である旨主張する。
しかしながら、請求人が提示する各段落の記載は、一般的、抽象的なものにとどまるため、実施例その他の具体的な構造を明らかにするものではないし、本件課題解決原理を明らかにするものでもない。よって、請求人の主張によって、上記エの判断が左右されることはない。

(4)サポート要件適合性の判断の小括
以上によれば、請求項1?3に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

3 実施可能要件適合性の判断
(1)検討
ア 上記2のとおり、当業者は、本願明細書等の記載及び技術常識に照らして、本件課題解決手段により本件課題を解決できる原理を、理解することはできないのであり、また、それにもかかわらず、本願明細書等は、実施例その他の具体的な構造を一切開示していない。
さらに、本願明細書等をみても、請求項1?3に記載された発明を具体的にどのように製造すればよいのかが不明である。すなわち、本願明細書等には、エレメントの製造方法に関し、トップダウン型製造工程(【0033】)、ボトムアップアプローチ(【0034】)、ソフト添付レーティングアプローチ(【0035】、図6)、電鋳又は他の同様のプロセス(【0036】)、セルフアセンブリ又は他の同様のプロセス(【0037】)、折り曲げプロセス(【0038】)、ビルディングブロックプロセス(【0039】)、化学エッチングプロセス(【0040】)、脱合金化プロセス(【0041】)、レーザーによる製造(【0043】)、リソグラフィ又は印刷又はパターニングプロセス(【0045】)、ブロックコポリマー足場プロセス(【0046】?【0048】)、スイスロール又はラミネートプロセス(【0049】)等が記載されているけれども、いずれも、一般的、抽象的な記載にとどまり、具体的に、どのような物質を、どのような条件下で、どのような手順で処理することにより、請求項1?3に記載されたエレメントを得ることができるのかは不明である。
そして、請求項1?3に記載されたエレメントは、「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有」するというきわめて微細かつ精密な構造であると解される。
このように、本願明細書等からは、課題解決原理、具体的な実施例及び具体的な製造方法のいずれも不明である一方、請求項1?3に記載されたエレメントは、きわめて微細かつ精密な構造であり、しかも、そのような構造がたやすく実現可能であることを示す技術常識があるとはいえない。
よって、当業者が、本願明細書等の記載及び技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、請求項1?3に記載されたエレメントに係る物を製造することができるとはいえない。

イ これに対し、請求人は、次のとおり主張するけれども、いずれも、採用できない。
(ア)請求人は、図2に係る構造について、上記2(3)オ(イ)における主張と同様に、球体で構成・成形されており、それによって、請求項1?3に規定の直径を有し、球体は3次元の周期性を持ち、各球体はその行と列の両方で接線方向に他の球体に接触しており、ギャップ又はボイド220は大気で満たされているものである旨主張する。
しかしながら、上記項目でも認定したとおり、図2は、単なる模式図にすぎず、具体的にどのような物質・構造からなっているのかは、本願明細書等に記載されていない。また、仮に、図2が具体的にどのような物質・構造からなっているのかが本願明細書等の記載から理解できるとしても、当該構造を具体的にどのように製造すればよいのかが不明である。

(イ)請求人は、実際のミラーデバイスがシミュレーション結果に従って動作していることを確認した旨主張する。
しかしながら、請求人が主張するところの「実際のミラーデバイス」が、具体的にどのような構造のものであって、どのように製造されたのかは、不明である。また、仮にそれが明らかになるとしても、本願明細書等に記載されていない以上、請求人の主張は参酌できるものではない。

(2)実施可能要件適合性の判断の小括
以上によれば、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1?3に記載された発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

4 進歩性の判断
仮に、「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する」ことにより、EUV波長での放射のために高い吸収率を有するという本件課題を解決できることが、技術常識にすぎないものであり、しかも、請求項1?3に記載されたような「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有」するというきわめて微細かつ精密な構造を技術常識に基づき製造できるならば、本願は、サポート要件と実施可能要件の双方を満足することになるけれども、そうであるならば、請求項1?3に記載された発明は、以下のとおり、進歩性を欠如する。
(1)本願発明の認定
本願の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであって、上記1(1)で摘記したところであるが、これを再掲すると以下のとおりである。
ア 本願発明1
「露光システムで用いられるように構成されるエレメントであって、
前記露光システムは、波長を有する光を送信するように構成される光源を備え、
前記エレメントは、250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備え、
前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して前記エレメントの反射率が70%超になるように構成される、
エレメント。」

イ 本願発明2
「露光システムで用いられるように構成されるエレメントであって、
前記露光システムは、波長を有する光を送信するように構成される光源を備え、
前記エレメントは、250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備え、
前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して前記エレメントの透過率を4%超になるように構成される、
エレメント。」

ウ 本願発明3
「露光システムで用いられるように構成されるエレメントであって、
前記露光システムは、波長を有する光を送信するように構成される光源を備え、
前記エレメントは、250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備え、
前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して電磁放射吸収を制御するように構成される、
エレメント。」

(2)引用発明の認定
ア 当審がした令和元年8月2日付け拒絶理由通知で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記第2の3で述べた引用例(特開2003-318094号公報)には、次の記載がある(下線は当審が付した。)。
(ア)「【特許請求の範囲】」、
「【請求項1】光源より得られる露光光を、照明光学系を介して、マスクパターンをなすマスクパターン層が形成された第一基板上に照明し、該マスクパターンの像を、投影光学系を介して第二基板上に縮小転写させる露光装置において、該露光装置を構成する前記マスクパターン層、前記照明光学系および前記投影光学系のうち少なくともいずれかに、多層膜反射鏡として用いられる露光装置用反射鏡であって、
前記露光光に対する屈折率の違う2種以上の媒質を周期的に配列させた複数の周期構造体が、基体上に積層された積層体を有してなり、かつ、該周期構造体は、前記露光光に対して一次元フォトニック結晶となるように、その1周期の層厚が調整されてなることを特徴とする露光装置用反射鏡。」、
「【請求項4】前記積層体は、基体上に単一の前記周期構造体が積層されたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の露光光装置用反射鏡。」、
「【請求項6】前記露光光の波長は、少なくとも500nm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の露光装置用反射鏡。」

(イ)「【0010】【課題を解決するための手段および作用・効果】上記課題を解決するための本発明の露光装置用反射鏡は、光源より得られる露光光を、照明光学系を介して、マスクパターンをなすマスクパターン層が形成されたマスクステージとなる第一基板上に照明し、該マスクパターンの像を、投影光学系を介してウエーハステージとなる第二基板上に縮小転写させる露光装置において、該露光装置を構成する前記マスクパターン層、前記照明光学系および前記投影光学系のうち少なくともいずれかに、多層膜反射鏡として用いられるものであって、前記露光光に対する屈折率の違う2種以上の媒質を周期的に配列させた複数の周期構造体が、基体上に積層された積層体を有してなり、かつ、該周期構造体は、前記露光光に対して一次元フォトニック結晶となるように、その1周期の層厚が調整されてなることを特徴とする。
【0011】上記本発明の露光装置用反射鏡は、縮小投影型の露光装置を構成するマスクパターン層、照明光学系および投影光学系のいずれかに用いられる多層膜反射鏡とされる。従来、このような用途に用いられる多層膜反射鏡としては、露光光に対する屈折率の違う2種の媒質が交互に基体上に積層されるとともに、多層膜反射鏡の表面で露光光が多重反射するように、各媒質より形成される層の層厚が調整されたものであった。上記多重反射を利用した多層膜反射鏡においては、基体上に金属薄膜の単層を被膜させたものに比べて露光光に対する反射率が高められる利点があった。しかし、近紫外波長領域(500nm程度)以下における露光光の短波長化に伴い、その多重反射による反射率は、多層膜反射鏡を構成する各媒質の露光光に対する反射率低下等に起因して急激に低下してしまう。
【0012】そこで、本発明の露光装置用反射鏡は、従来の多重反射を利用した多層膜反射鏡に比べて露光光、特に、近紫外波長領域以下の露光光に対する反射率を高める観点より、以下の構成要件を有する。第一に、本発明の露光装置用反射鏡は、屈折率の違う2種以上の媒質を周期的に配列させた複数の周期構造体を基体上に積層させた積層体を有する。第二に、該周期構造体は、露光光に対して一次元フォトニック結晶となるように、その1周期の層厚が調整されてなる。
【0013】上記本発明の露光装置用反射鏡が有する周期構造体の一例を図5に示す。図5における周期構造体100は、露光光に体する屈折率の違う2種の媒質を交互に周期的に配列するように積層させた場合である。このように積層させることで、高屈折率層10と低屈折率層11が周期的に積層されることとなり、また、高屈折率層10と低屈折率層11との一対が1周期に対応してなる。さらに該1周期の層厚は、露光光の各々高屈折率層10と低屈折率層11における媒質内波長を平均化した媒質内平均波長λaの半波長(λa/2)の整数倍に対応するように調整されてなる。
【0014】上記のように構成される周期構造体100においては、図4の模式図に示すように、屈折率が積層方向に対して周期的に変化することになる。該屈折率の周期的変化における1周期の長さが、周期構造体100内を積層方向に伝播しようとする伝播光の半波長、つまりは、上記媒質内平均波長の半波長(λa/2)の整数倍に対応する場合、そのような伝播光は周期構造体100内を伝播することができず完全反射(反射率が1)に近い形で反射されることとなる。このように、ある一定波長領域の光を反射させる現象は、半導体などにおける電子の固体結晶内の分散関係より説明されるバンドギャップと同じ概念であることから、一般的にフォトニックバンドギャップと呼ばれる。特に、周期構造体100のように、積層方向への伝播光に対してのみフォトニックバンドギャップを有するものは、一次元フォトニック結晶と呼ばれる。
【0015】図5においては、露光光に対する屈折率の違う2種の媒質を用いた場合であったが、露光光に対する屈折率の違う3種以上の媒質を周期的に積層させることで、周期構造体を露光光に対する一次元フォトニック結晶とすることも勿論可能である。その1例となる図7の周期構造体100は、露光光に対する屈折率の違う3種の媒質を用いた場合である。高屈折率層10、中屈折率層12および低屈折率層11の一対を1周期とし、該一周期の層厚は、露光光のそれぞれ高屈折率層10、中屈折率層12および低屈折率層11における媒質内波長の媒質内平均波長λaの半波長(λa/2)の整数倍に対応するように調整されてなる。このように構成することで、図6に示すように、屈折率は、積層方向に対して周期的に変化するとともに、その1周期の長さが、媒質内平均波長λaの半波長の整数倍に対応する。その結果、図7に示す周期構造体100を、露光光に対する一次元フォトニック結晶とすることができる。
【0016】上記のように、本発明の露光装置用反射鏡が有する周期構造体は、フォトニックバンドギャップにより反射される波長領域が、露光光の波長領域を含む領域に対応した一次元フォトニック結晶とされる。その結果、本発明の露光装置用反射鏡においては、露光光に対する反射率を、従来の多重反射を利用した多層膜反射鏡に比べて、大幅に向上させることが可能となる。また、周期構造体における1周期の層厚は、媒質内平均波長の半波長の整数倍に対応するように調整すればよいが、1周期の層厚が増加するに従い、光の減衰率が高まる。そこで、特に、周期構造体における1周期の層厚を、媒質内平均波長の1波長または半波長に対応するように調整することで、さらに、本発明の露光装置用反射鏡の露光光に対する反射率を向上させることが可能となる。このような観点から言えば、周期構造体における1周期の層厚を、媒質内平均波長の半波長に対応するように調整した場合、最も、本発明の露光装置用反射鏡の露光光に対する反射率を向上させることが可能となる。」、
「【0019】次に、本発明の露光装置用反射鏡により反射される露光光の波長幅について述べる。該波長幅は、周期構造体の1周期を構成する各媒質の露光光に対する屈折率に依存する。具体的には、1周期を構成する各媒質において、露光光に対する屈折率が最大となるものと、最小となるものとの屈折率差Δnに依存する。このΔnが大きくなるに従い、反射される露光光の波長幅つまりは、反射される露光光の波長領域は増加する。よって、ある特定波長領域の露光光を反射させる場合、複数の周期構造体を用いることも可能であるし、単一の周期構造体を用いることも可能である。図8の模式図は、複数の周期構造体を用いた例として、周期構造体を2つ組み合わせた場合を示す。第一周期構造体101と第二周期構造体102は、反射させる波長領域を異にするように、一方の1周期の層厚が中心波長λ1の露光光を反射させるように、他方が中心波長λ2の露光光を反射させるように調整されてなる。このような周期構造体を2つ組み合わせることにより、全体として反射される露光光の波長幅Δλは、第一周期構造体101および第二周期構造体102にてそれぞれ反射される露光光の波長幅Δλ1およびΔλ2とを合わせたものとなる。他方、同じ波長幅Δλとなる波長領域の露光光を、単一の周期構造体にて反射させることも可能である。その場合、周期構造体の1周期内における屈折率差Δnを、図8における第一周期構造体101および第二周期構造体102の1周期内における各々の屈折率差Δnを足し合わせた程度に大きくするように、その1周期を構成する各媒質の材質を適宜選択すればよい。
【0020】上記のように、本発明の露光装置用反射鏡は、複数または単一の周期構造体のいずれを用いた場合においても、ある特定波長領域の露光光を効果的に反射させることが可能である。しかしながら、露光光の短波長化に伴い、周期構造体の1周期内における屈折率差を大きくとることが、困難とされる場合が生じる。そのような場合、特に、複数の周期構造体とすることで、反射させる波長領域を広げることは有効な手段と言える。一方、単一の周期構造体にて、十分に露光光を反射させることが可能である場合は、特に、単一の周期構造体とすることが望ましい。単一の周期構造体は、複数の周期構造体に比べて、総積層数が少なくてすむ。このように積層数を減少させることで、周期構造体内を伝播する露光光の減衰率を抑制することができる。その結果、単一の周期構造体を用いた露光装置用反射鏡とすることで、さらに露光光に対する反射率を高めることができる。また、周期構造体は、基体上に積層されてなるので、単一の周期構造体を用いた場合、基体に集中する歪応力等の応力を低減することができる、その結果、基体および周期構造体に発生する変形を低減することが可能である。」、
「【0032】ここまでに、従来の多層膜反射鏡に比べて、露光光に対する反射率の向上を可能とする本発明の露光装置用反射鏡の構成要件について述べてきた。このような露光装置用反射鏡において、対象とする露光光の波長領域は、特に限定されるものではない。しかしながら、近年の半導体デバイスにおける素子パターンの細密化に対応するために、近紫外波長領域以下の露光光に対する反射率の向上が可能な多層膜反射鏡が必要とされている。そこで、本発明の露光装置用反射鏡を、波長が500nm以下の近紫外波長領域以下となる露光光に対して用いることで、その有用性を、特に高めることが可能となる。また、500nm以下の近紫外波長領域以下とされる露光光において、その波長領域の下限値は、使用可能な露光光の光源により左右されるが、例えば、レーザプラズマX線源等を光源とした軟X線波長領域の光源を用いた場合、その露光光の波長は、10nm程度とされる。」

イ 上記アによれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明の認定に使用した段落番号等を、参考までに、括弧内に付してある。
「光源より得られる露光光を、照明光学系を介して、マスクパターンをなすマスクパターン層が形成された第一基板上に照明し、該マスクパターンの像を、投影光学系を介して第二基板上に縮小転写させる露光装置において、該露光装置を構成する前記マスクパターン層、前記照明光学系および前記投影光学系のうち少なくともいずれかに、多層膜反射鏡として用いられる露光装置用反射鏡であって、
前記露光光に対する屈折率の違う2種以上の媒質を周期的に配列させた複数の周期構造体が、基体上に積層された積層体を有してなり、かつ、該周期構造体は、前記露光光に対して一次元フォトニック結晶となるように、その1周期の層厚が調整されてなる露光装置用反射鏡であり、(【請求項1】)
前記積層体は、基体上に単一の前記周期構造体が積層されたものであり、(【請求項4】)
前記露光光の波長は、少なくとも500nm以下であり、(【請求項6】)
その波長領域の下限値は、使用可能な露光光の光源により左右されるが、例えば、レーザプラズマX線源等を光源とした軟X線波長領域の光源を用いた場合、その露光光の波長は、10nm程度とされ、(【0032】)
周期構造体における1周期の層厚を、媒質内平均波長の1波長または半波長に対応するように調整することで、さらに、露光光に対する反射率を向上させることが可能となる、(【0016】)
露光装置用反射鏡。」

(3)本願発明1について
ア 対比
(ア)本願発明1の「露光システムで用いられるように構成されるエレメントであって、」との特定事項について
a 引用発明の「露光装置用反射鏡」は、本願発明1の「露光システムで用いられるように構成されるエレメント」に相当する。

b よって、引用発明は、本願発明1の上記特定事項を備える。

(イ)本願発明1の「前記露光システムは、波長を有する光を送信するように構成される光源を備え、」との特定事項について
引用発明は、「光源より得られる露光光を、照明光学系を介して、マスクパターンをなすマスクパターン層が形成された第一基板上に照明」するものであるから、本願発明1の「前記露光システムは、波長を有する光を送信するように構成される光源を備え、」との特定事項を備える。

(ウ)本願発明1の「前記エレメントは、250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備え、」との特定事項について
a 引用発明の「露光装置用反射鏡」は、「前記露光光に対する屈折率の違う2種以上の媒質を周期的に配列させた複数の周期構造体が、基体上に積層された積層体を有してなり、かつ、該周期構造体は、前記露光光に対して一次元フォトニック結晶となるように、その1周期の層厚が調整されてな」り、「基体上に単一の前記周期構造体が積層されたものもので」あるところ、「前記露光光の波長は、少なくとも500nm以下であり」、「その波長領域の下限値は、使用可能な露光光の光源により左右されるが、例えば、レーザプラズマX線源等を光源とした軟X線波長領域の光源を用いた場合、その露光光の波長は、10nm程度とされ」、「周期構造体における1周期の層厚を、媒質内平均波長の1波長または半波長に対応するように調整する」ものである。そして、この技術的事項を「周期構造体」の観点から整理すると、当該「周期構造体」は、「前記露光光に対して一次元フォトニック結晶となるように、その1周期の層厚が調整されてな」り、「前記露光光の波長は、少なくとも500nm以下であり」、「例えば、レーザプラズマX線源等を光源とした軟X線波長領域の光源を用いた場合、その露光光の波長は、10nm程度とされ」るものである。そうすると、引用発明の当該「周期構造体」は、本願発明1でいう「250nmから0.01nmの第1のサイズを有する」「複数のナノ構造的な特徴」に該当するといえる。

b よって、引用発明は、本願発明1とは、「前記エレメントは、250nmから0.01nmの第1のサイズを有する」「複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備え、」との特定事項を備える点で共通する。
しかしながら、引用発明は、「複数のナノ構造的な特徴」が、「ボイド又はギャップを形成している」ものではない。

(エ)本願発明1の「前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して前記エレメントの反射率が70%超になるように構成される、」との特定事項について
引用発明は、「前記露光光の波長は、少なくとも500nm以下であり」、「その波長領域の下限値は、使用可能な露光光の光源により左右されるが、例えば、レーザプラズマX線源等を光源とした軟X線波長領域の光源を用いた場合、その露光光の波長は、10nm程度とされ」、「周期構造体における1周期の層厚を、媒質内平均波長の1波長または半波長に対応するように調整することで、さらに、露光光に対する反射率を向上させることが可能となる」ものであるから、本願発明1とは、「前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して前記エレメントの反射率が」所定の反射率の値「になるように構成される」点で共通する。
しかしながら、引用発明の所定の反射率の値が、「70%超」であるのかは不明である。

(オ)本願発明1の「エレメント」との特定事項について
上記(ア)のとおり、引用発明は、本願発明1の上記特定事項を備える。

イ 一致点及び相違点の認定
上記アによれば、本願発明1と引用発明とは、
「露光システムで用いられるように構成されるエレメントであって、
前記露光システムは、波長を有する光を送信するように構成される光源を備え、
前記エレメントは、250nmから0.01nmの第1のサイズを有する複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備え、
前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して前記エレメントの反射率が所定の反射率の値になるように構成される、
エレメント。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]「250nmから0.01nmの第1のサイズを有する」「複数のナノ構造的な特徴」が、本願発明1は、「ボイド又はギャップを形成している」のに対し、引用発明は、そうではない点。
[相違点2]所定の反射率の値が、本願発明1は、「70%超」であるのに対し、引用発明は不明である点。

ウ 相違点1の判断
(ア)まず、引用発明においていかなる変更を加えると相違点1に係る構成に至るかについてみると、引用発明の「露光光に対して一次元フォトニック結晶となるように、その1周期の層厚が調整されてなる」周期構造体を、「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する」構造に代えればよいことになる。

(イ)次に、引用例の【0014】には、「…ある一定波長領域の光を反射させる現象は、半導体などにおける電子の固体結晶内の分散関係より説明されるバンドギャップと同じ概念であることから、一般的にフォトニックバンドギャップと呼ばれる。特に、周期構造体100のように、積層方向への伝播光に対してのみフォトニックバンドギャップを有するものは、一次元フォトニック結晶と呼ばれる」と記載されている。
上記記載は、引用発明が反射鏡として機能する物理的原理を、フォトニックバンドギャップの観点をもって説明しているものである。そこで、この物理的原理を、フォトニックバンドギャップの観点をもって改めて整理すると、引用発明は、一次元フォトニック結晶としてのフォトニックバンドギャップを有しているから、ある一定波長領域の光を反射させることができるものであるとともに、当該フォトニックバンドギャップは積層方向への伝播光に対してのみ存在しているから、その方向についてのみ反射鏡として機能するものということができる。

(ウ)他方、フォトニック結晶の技術分野において一次元フォトニック結晶と三次元フォトニック結晶はいずれも例示するまでもなく周知であり、これらは、「フォトニック結晶」という概念の中で、横並びで理解されるものでもある。さらに、当該技術分野において、三次元フォトニック結晶であって、ボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する構造が、光がどの方向に伝搬する場合でも、バンドギャップが存在するようになることが、周知である(例えば、野田進、「フォトニック結晶」、光学、2001年、30巻1号、56頁?64頁(上記第2の3で述べた周知例である。)の57頁の図2及び図3を参照。以下に摘記する。)。


(エ)a ところで、周知例に記載された三次元フォトニック結晶に関して、周知例の57頁右欄末行?58頁左欄2行などには、中赤外域及び光通信波長域である旨の記載がある。
しかしながら、周知例の図2及び図3(上記(ウ))に記載された技術的事項は、波長の大きさとは関係しないと解される。また、本理由では、その冒頭で説示したとおり、請求項1?3に記載されたような「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有」するというきわめて微細かつ精密な構造を、当業者は技術常識に基づき製造することができると仮定されている。
そうすると、上記記載は、周知例に記載された三次元フォトニック結晶を、引用発明の露光装置用反射鏡に適用することを阻害するものとはならない。

b また、周知例には、その図2及び図3(上記(ウ))に記載された三次元フォトニック結晶が反射手段である旨の明記はない。
しかしながら、当該図2及び図3には、バンドギャップの存在が明記されており、他方で、上記(イ)のとおり、引用発明は、一次元フォトニック結晶としてのフォトニックバンドギャップを有しているから、ある一定波長領域の光を反射させることができるものである。
そうすると、引用例に接した当業者であれば、周知例の図2及び図3に記載された三次元フォトニック結晶が反射手段たり得ることを認識できるといえる。

(オ)そして、引用発明の露光装置用反射鏡は、積層方向への伝播光についてのみ反射鏡として機能する(上記(イ))ものであるから、より広い方向からの伝播光に対しても反射できるようにすること(広角化)が、当然に望まれるといえる。
そうすると、引用発明において、広角化を図るべく、一次元フォトニック結晶からなる構造を、次の構造、すなわち、上記周知な三次元フォトニック結晶であって、ボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する構造に、置換することは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、引用発明において想定されている露光光の波長を踏まえれば、当該置換により、当業者は、相違点1に係る構成に至るといえる。

エ 相違点2の判断
フォトニックバンドギャップを有する構造において十分な反射率が確保できることは自明であるから、引用発明に周知技術を採用した構造において、相違点2のような「エレメントの反射率」の値に至ることは、格別なことではない。

オ 本願発明1の効果について
本願発明1の効果は、本理由では、その冒頭で説示したとおり、「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する」ことにより、EUV波長での放射のために高い吸収率を有するという本件課題を解決できることが技術常識にすぎないと仮定されていることも踏まえれば、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。

カ 本願発明1についての判断の小括
以上によれば、本願発明1は、引用発明、引用例の記載及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本願発明2について
ア 対比、一致点及び相違点の認定
本願発明2と引用発明とは、上記(3)アと同様に対比をすることにより、
「露光システムで用いられるように構成されるエレメントであって、
前記露光システムは、波長を有する光を送信するように構成される光源を備え、
前記エレメントは、250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備え、
前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して前記エレメントの透過率が所定の透過率の値になるように構成される、
エレメント。」である点で一致し、次の点で相違すると認められる。

[相違点3]「250nmから0.01nmの第1のサイズを有する」「複数のナノ構造的な特徴」が、本願発明2は、「ボイド又はギャップを形成している」のに対し、引用発明は、そうではない点。
[相違点4]所定の透過率の値が、本願発明2は、「4%超」であるのに対し、引用発明は不明である点。

イ 相違点3の判断
相違点1の判断と同様である。

ウ 相違点4の判断
本願発明2における所定の透過率の値がさほど大きくないことを踏まえれば、相違点4に係る構成は、引用発明に周知技術を採用した構造においても満足している蓋然性が高い。また、それを措くとしても、本理由では、その冒頭で説示したとおり、「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する」ことにより、EUV波長での放射のために高い吸収率を有するという本件課題を解決できることが技術常識にすぎないと仮定されていることも踏まえれば、当業者は、適宜、そのようにすることが可能であるといえる。

エ 本願発明2の効果について
本願発明2の効果は、本理由では、その冒頭で説示したとおり、「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する」ことにより、EUV波長での放射のために高い吸収率を有するという本件課題を解決できることが技術常識にすぎないと仮定されていることも踏まえれば、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。

オ 本願発明2についての判断の小括
以上によれば、本願発明は、引用発明、引用例の記載及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本願発明3について
ア 対比、一致点及び相違点の認定
本願発明3と引用発明とは、上記(3)アと同様に対比をすることにより、
「露光システムで用いられるように構成されるエレメントであって、
前記露光システムは、波長を有する光を送信するように構成される光源を備え、
前記エレメントは、250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する材料を備える、
エレメント。」である点で一致し、次の点で相違すると認められる。

[相違点5]「250nmから0.01nmの第1のサイズを有する」「複数のナノ構造的な特徴」が、本願発明3は、「ボイド又はギャップを形成している」のに対し、引用発明は、そうではない点。
[相違点6]本願発明3は、「前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して電磁放射吸収を制御するように構成される」ものであるのに対し、引用発明は、そうではない点。

イ 相違点5の判断
相違点1の判断と同様である。

ウ 相違点6の判断
相違点6に係る構成である「前記複数のナノ構造的な特徴は、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して電磁放射吸収を制御するように構成される」ことの意味についてみると、本願発明3の対象が「エレメント」であって、本願明細書等には、「制御」としていわゆる動的な制御について何ら記載されていないことに照らせば、複数のナノ構造的な特徴をもつエレメントが、0.1nmから250nmの単一波長となるように選択をされた単一のターゲット波長に対して、何らかの吸収率をもっていることを特定しているにすぎないと解される。
そして、引用発明に周知技術を採用して得られる構造においても、何らかの吸収率をもつことは自明である。
よって、相違点6は、「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する」ことにより、EUV波長での放射のために高い吸収率を有するという本件課題を解決できることが技術常識であると仮定するまでもなく、格別のものではない。

エ 本願発明3の効果について
本願発明3の効果は、「250nmから0.01nmの第1のサイズを有するボイド又はギャップを形成している複数のナノ構造的な特徴を有する」ことにより、EUV波長での放射のために高い吸収率を有するという本件課題を解決できることが技術常識にすぎないと仮定するまでもなく、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。

オ 本願発明3についての判断の小括
以上によれば、本願発明は、引用発明、引用例の記載及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)進歩性の判断の小括
以上のとおり、本願発明1?3は、引用発明、引用例の記載及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1?3に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願の請求項1?3に記載された発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本願発明1?3は、引用発明、引用例の記載及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-07-01 
結審通知日 2020-07-07 
審決日 2020-07-22 
出願番号 特願2014-553485(P2014-553485)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H01L)
P 1 8・ 536- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 彰  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 山村 浩
近藤 幸浩
発明の名称 リソグラフィ及び他の用途における極端紫外線放射で使用する材料、成分及び方法  
代理人 青木 篤  
代理人 胡田 尚則  
代理人 関根 宣夫  
代理人 鶴田 準一  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 三橋 真二  
代理人 南山 知広  

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