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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F
管理番号 1369507
審判番号 不服2019-9748  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-23 
確定日 2020-12-16 
事件の表示 特願2017-501271「ソレノイド曲線形状化のための曲線形シャント」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月14日国際公開、WO2016/007159、平成29年 9月14日国内公表、特表2017-527106〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2014年7月10日を国際出願日とする出願であって、平成29年1月11日に手続補正書が提出され、平成30年3月30日に手続補正書が提出され、同年6月25日付けで拒絶理由が通知され、同年12月28日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年3月20日付けで拒絶査定されたところ、令和1年7月23日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正されたものである。


第2 令和1年7月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和1年7月23日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の概要
令和1年7月23日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成30年12月28日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された発明特定事項により特定される、

「【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内に位置されたコイルと、
前記ケーシングと磁気的に連結され、前記コイルによって取り囲まれた磁束管と、
前記磁束管と軸方向に整列され、前記磁束管から軸方向に分離され、前記コイルによって取り囲まれ、前記ケーシングと磁気的に連結される磁極片と、
前記磁束管と前記磁極片とが摺動可能に取り付けられる電機子と、
前記磁極片から前記磁束管を分離させる磁束チョークと、そして、
前記磁極片と前記磁束チョークとを並置し、大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さにテーパーされ、外径に沿って前記大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さまで曲線形状を有し、
前記磁束管と、前記磁極片と、前記電機子との間に磁気ループを完成するように構成され、そして、
前記コイルが電流を受けた場合に、前記電機子が摺動するように磁気力を向けるよう構成された、コアシャントと、を含む、ソレノイドアクチュエータ。
【請求項2】
前記コアシャント曲線形状は、円錐形状である、請求項1に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項3】
前記コアシャント曲線形状は、半径である、請求項1または請求項2に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項4】
前記コアシャント曲線形状は、凸である、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項5】
前記コアシャント曲線形状は、凹である、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項6】
前記磁束チョークは、前記磁極片及び前記磁束管に一体的に連結された、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項7】
前記磁束チョークは、軸方向ギャップである、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項8】
ケーシングと、
前記ケーシング内に位置されたコイルと、
前記ケーシングと磁気的に連結され、前記コイルによって取り囲まれた磁束管と、
前記磁束管と軸方向に整列され、前記磁束管から軸方向に分離され、前記コイルによって取り囲まれ、磁気的に前記ケーシングと連結される磁極片と、
前記磁束管及び前記磁極片と摺動可能に取り付けられる電機子と、
前記電機子によって移動される弁部材と、
前記磁極片から前記磁束管を分離させる磁束チョークと、そして、
前記磁極片と前記磁束チョークとを並置し、大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さにテーパーされ、外径に沿って前記大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さまで曲線形状を有し、
前記磁束管と、前記磁極片と、前記電機子との間に磁気ループを完成するように構成され、そして、
前記コイルが電流を受けた場合に、前記電機子が摺動するように磁気力を向けるよう構成された、コアシャントとを含む、ソレノイドアクチュエータ。
【請求項9】
前記コアシャント曲線形状は、角をなすように連結された複数の線形セグメントから形成された、請求項8に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項10】
前記コアシャント曲線形状は、少なくとも3つまたはそれより多くの線形セグメントから形成された、請求項8または請求項9に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項11】
前記ソレノイドアクチュエータは、ノーマリーローである、請求項8乃至請求項10のいずれか一項に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項12】
前記ソレノイドアクチュエータは、ノーマリーハイである、請求項8乃至請求項10のいずれか一項に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項13】
前記ソレノイドアクチュエータは、ノーマリーローであり、
前記コアシャントは、凸状を有する、請求項8乃至請求項10のいずれか一項に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項14】
前記ソレノイドアクチュエータは、ノーマリーハイであり、
前記コアシャントは、凹状を有する、請求項8乃至請求項10のいずれか一項に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項15】
ケーシングと、
前記ケーシング内に位置されたコイルと、
前記ケーシングに磁気的に連結され、前記コイルによって取り囲まれた磁束管と、
前記磁束管と軸方向に整列され、前記磁束管から軸方向に分離され、前記コイルによって取り囲まれ、磁気的に前記ケーシングと連結される磁極片と、
前記磁束管及び前記磁極片と摺動可能に取り付けられる電機子と、
前記ケーシングと連結され、制御圧力連結部、供給圧力連結部、及び、排気圧力連結部を有する油圧ハウジングと、
制御圧力を供給圧力または排気圧力と選択的に連結するように前記電機子によって移動される弁部材と、
前記制御圧力が軸方向に前記弁部材に対して反応し、前記制御圧力を前記供給圧力及び排気圧力のうち、一つと連結する好ましい位置に前記弁部材を付勢させるばねと、
前記磁極片から前記磁束管を分離させる磁束チョークと、そして、
前記磁極片と前記磁束チョークとを並置し、大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さにテーパーされ、外径に沿って前記大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さまで曲線形状を有し、
前記磁束管と、前記磁極片と、前記電機子との間に磁気ループを完成するように構成され、
前記コイルが電流を受けた場合に、前記電機子が摺動するように磁気力を向けるよう構成された、コアシャントとを含む、ソレノイドアクチュエータ。」

との発明(以下、請求項15に係る発明を「本願発明」という。)を、

「 【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内に位置されたコイルと、
前記ケーシングに磁気的に連結され、前記コイルによって取り囲まれた磁束管と、
前記磁束管と軸方向に整列され、前記磁束管から軸方向に分離され、前記コイルによって取り囲まれ、磁気的に前記ケーシングと連結される磁極片と、
前記磁束管及び前記磁極片と摺動可能に取り付けられる電機子と、
前記ケーシングと連結され、制御圧力連結部、供給圧力連結部、及び、排気圧力連結部を有する油圧ハウジングと、
制御圧力を供給圧力または排気圧力と選択的に連結するように前記電機子によって移動される弁部材と、
前記制御圧力が軸方向に前記弁部材に対して反応し、前記制御圧力を前記供給圧力及び排気圧力のうち、一つと連結する好ましい位置に前記弁部材を付勢させるばねと、
前記磁極片から前記磁束管を分離させる磁束チョークと、そして、
前記磁極片と前記磁束チョークとを並置し、大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さにテーパーされ、外径に沿って前記大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さまで曲線形状を有し、
前記磁束管と、前記磁極片と、前記電機子との間に磁気ループを完成するように構成され、
前記コイルが電流を受けた場合に、前記電機子が摺動するように磁気力を向けるよう構成された、コアシャントとを含む、ソレノイドアクチュエータ弁であって、
前記制御圧力を前記排気圧力に連結するように前記弁部材が付勢されるように、当該ソレノイドアクチュエータ弁はノーマリーローであり、そして、
前記コアシャントは凸状を有する、ソレノイドアクチュエータ弁。
【請求項2】
前記電機子にかかる力と、前記コイルに印加される電流との関係が、線形比例関係となるように、比例ソレノイドアクチュエータ弁として構成される、請求項15に記載のソレノイドアクチュエータ弁。
【請求項3】
前記コアシャント曲線形状が、複数の線形セグメントから形成された、請求項15に記載のソレノイドアクチュエータ弁。
【請求項4】
前記コアシャント曲線形状が、少なくとも3つまたはそれより多くの線形セグメントから形成された、請求項15に記載のソレノイドアクチュエータ弁。」
との発明(以下、請求項1に係る発明を「本件補正発明」という。)とする補正を含むものである。(下線部は、補正箇所を示す。)


2 補正の適否
上記補正後の請求項1に係る補正について検討する。
上記補正後の請求項1に係る補正は、補正前の請求項15の「ソレノイドアクチュエータ」を「ソレノイドアクチュエータ弁」に限定し、さらに、ソレノイドアクチュエータ弁が「前記制御圧力を前記排気圧力に連結するように前記弁部材が付勢されるように」「ノーマリーローであ」ること、及び「コアシャント」が「凸状を有する」ことを限定する補正であるから、上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
したがって、補正後の請求項1に係る補正は特許法17条の2第5項2号(補正の目的)に規定された事項を目的とするものであり、また、同法17条の2第3項(新規事項)、第4項(シフト補正)に違反するところはない。

次に、上記補正後の請求項2?4に係る補正について検討する。
補正後の請求項2?4は、いずれも引用形式で記載されているものの、存在しない請求項15を引用するように補正されており、当該補正は本件補正前の請求項15に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものでないから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。また、上記補正後の請求項2?4に係る補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明に該当しないことも明らかである。よって、上記補正の目的は特許法17条の2第5項(目的要件)に規定された何れの事項にも該当しない。
仮に、補正後の請求項2?4の「・・・請求項15に記載のソレノイドアクチュエータ弁。」が「・・・請求項1に記載のソレノイドアクチュエータ弁。」の誤記であり、請求項1を引用するものであると仮定した場合についても検討する。
本件補正後の請求項2?4は、補正前単一の請求項であった請求項15を複数の請求項に増加させる補正であるから特許請求の範囲を限定的に減縮する補正には該当しない。
更に、本件補正後の請求項2についてみても、補正後の請求項2は「ソレノイドアクチュエータ弁」が「前記電機子にかかる力と、前記コイルに印加される電流との関係が、線形比例関係となるように、比例ソレノイドアクチュエータ弁として構成される」ことを特定するものであるが、補正前のいずれかの請求項における発明特定事項を概念的により下位の発明特定事項とする補正とはいえないから、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする補正とはいえず、また、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明に該当しないことも明らかである。よって、上記補正の目的は特許法17条の2第5項(目的要件)に規定された何れの事項にも該当しない。

したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3 独立特許要件について
上記のとおり、本件補正は特許法17条の2第5項(目的要件)の規定に違反するので却下すべきものであるが、更に進め、仮に本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものか否か(特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に適合するか否か)について検討する。

(1)補正後の請求項2?4に係る発明について
補正後の請求項2?4は、いずれも存在しない請求項15を引用する引用形式で記載されており、発明の構成を特定できない。したがって、補正後の請求項2?4に係る発明は明確ではない。したがって、特許法36条6項2号の規定によって、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2)補正後の請求項1に係る発明について

ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記「1 補正の概要」の項において、補正後の請求項1に係る発明として記載したとおりのものと認める。

イ 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に公開された文献である特開2014-041995号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。

a「【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状コイルと、この筒状コイルの径方向内側に配置され、内面が有底筒状に形成されたコアと、このコアの軸方向に沿って筒状コイルへの通電量に応じて変位可能な状態でコアの径方向内側に配置されてプランジャとを備えたソレノイド駆動装置に関する。」

b「【0024】
1.第一の実施形態
以下、本発明のソレノイド駆動装置を電磁弁に適用した例を用いて、本発明の第一の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、ソレノイド駆動装置10を含む電磁弁20の軸方向断面図であり、図2は、図1において符号“8”で示され、後述する径拡大部の近傍の部分拡大図である。図1に断面図を示す電磁弁20は、例えばオートマチックトランスミッションに組み込まれたクラッチやブレーキの油圧制御に用いられるリニアソレノイドバルブとして構成されている。電磁弁20は、図1に示すように、ソレノイド駆動装置10と、このソレノイド駆動装置10により駆動され、入力した油圧を調圧して出力する調圧バルブ部40とを備えて構成されている。本実施形態では、この調圧バルブ部40が、本発明における油圧制御弁に相当する。
【0025】
ソレノイド駆動装置10は、底付き円筒部材(有底筒状部材)としてのケース1と、ケース1の径方向Rの内側に配置された筒状コイル2と、筒状コイル2の径方向Rの内側に配置されたコア3と、コア3の径方向R内側に配置されたプランジャ6と、プランジャ6と同軸上に備えられるシャフト38とを備えて構成されている。ケース1とコア3とプランジャ6とは、いずれも純度の高い鉄などの強磁性材料により形成されている。尚、プランジャ6は、外表面に例えばニッケルやリンなどの非磁性材を用いてメッキが施されており、これにより非磁性層が形成されている。
【0026】
筒状コイル2は、絶縁性のボビン2aに被覆導線が巻き回されて構成されている。コア3は、内面が有底筒状に形成されており、筒状部分の内部空間は、プランジャ6の収容空間としてのプランジャ収容部3cとなる。プランジャ6は、コア3の軸方向Lに沿って変位可能であると共に、軸方向Lに沿ってコア3の底面部3a(図2参照)から離間する方向(付勢方向FF)の付勢力を受けている。プランジャ6は、底面部3aに対向するプランジャ6の先端面6a(図2参照)が、筒状コイル2への非通電時に付勢力によって底面部3aから最も離間した位置である最大ストローク位置Pmaxと、筒状コイルへ2の通電により底面部3aに最も近づいた位置である最小ストローク位置Pminとの間で、筒状コイル2への通電量に応じて変位可能に構成されている。筒状コイル2は、ケース1の外周部に形成されたコネクタ部39に接続されており、このコネクタ部39を介して筒状コイル2への通電が行われる。
【0027】
コア3の底面部3aには、コア3の底を軸方向Lに貫通する貫通孔が設けられている。コア3の底は、軸方向Lにおいて、プランジャ収容部3cの長さと同等の長さを有して形成されており、当該貫通孔は、シャフト38を収容するシャフト収容部34dとなる。シャフト38は、シャフト収容部34dの内周面を摺動面として、軸方向Lに変位可能である。シャフト38の一端はプランジャ6に当接しており、シャフト38とプランジャ6とは一体的に摺動する。言い換えると、シャフト38とプランジャ6とは連動するように構成されている。
【0028】
調圧バルブ部40は、筒状のスリーブ50と、スリーブ50の径方向Rの内側に配置されて軸方向Lの端部がシャフト38の軸方向Lの端部に当接するスプール60と、スリーブ50の軸方向Lの端部においてスリーブ50に固定されたエンドプレート42と、エンドプレート42とスプール60との間に配置されたスプリング44と備えて構成されている。スプリング44は、スプール60をソレノイド駆動装置10の側へ付勢する(付勢方向FF)。軸方向Lにおいてスリーブ50に対してエンドプレート42を固定する位置は、調整可能であり、エンドプレート42の固定位置の調整によって付勢力を調整することができる。スプール60は、ソレノイド駆動装置10の側の軸方向Lの端部においてシャフト38に当接する。上述したように、シャフト38は、ソレノイド駆動装置10のプランジャ6に当接している。従って、スプリング44による付勢力は、軸方向Lに沿ってプランジャ6に作用する。これにより、プランジャ6とスプール60とが連動するように構成されている。図1は、スプリング44の付勢力によって、プランジャ6が軸方向Lに沿った付勢方向FFに付勢されて、最大変位している状態(プランジャ6の先端面6aが最大ストローク位置Pmaxとなる状態)を示している。
【0029】
上述したように、筒状コイル2への通電により、プランジャ6は付勢方向FFとは反対方向の反付勢方向FRへ変位する。プランジャ6が、反付勢方向FRへ最大変位した場合に、先端面6aがコア3に直接当接しないよう非磁性材料により形成されたリング状のスペーサ37が配置されている。このスペーサ37は、筒状コイル2への通電を遮断したときに作用する残留磁気によりコア3からプランジャ6が離間しなくなるのを防止する。筒状コイル2への通電により生じた吸引力によって、プランジャ6が付勢力に対抗して最大に反付勢方向FRに変位し、先端面6aがスペーサ37に当接している状態の時の先端面6aの位置が最小ストローク位置Pminである(図2参照)。
【0030】
上述したように、最大ストローク位置Pmax及び最小ストローク位置Pminは、それぞれプランジャ6が、プランジャ6の軸方向Lへの変位を規制する部材に当接する位置である。従って、機械的誤差等によってコア3における最大ストローク位置Pmax及び最小ストローク位置Pminの位置は、個体ごとに異なる可能性がある。本発明において定義される最大ストローク位置Pmax及び最小ストローク位置Pminはこのような誤差範囲を含む位置である。
【0031】
スリーブ50には、その内部空間の開口部として、入力ポート52と、出力ポート54と、ドレインポート56と、フィードバックポート58とが設けられている。入力ポート52は、作動油が入力されるポートである。出力ポート54は、作動油を吐出するポートである。ドレインポート56は、スリーブ50から作動油を抜くためのポートである。フィードバックポート58は、出力ポート54から吐出される作動油を、電磁弁20が備えられるバルブボディの内面とスリーブ50の外面とにより形成されたフィードバック油路58aを介してスプール60に入力するポートである。また、スリーブ50の軸方向Lの両端部には、スプール60の摺動に伴ってスリーブ50の内周面とスプール60の外周面との間から漏れ出た作動油を排出するための排出孔59a,59bも形成されている。
【0032】
スプール60は、スリーブ50の内部に挿入される軸状部材として形成されている。図1に示すように、スプール60は、スリーブ50の内径とほぼ同一の外径の円柱状の3つのランド62,64,66と、これらのランドとの間を連通する連通部68と、フィードバック室70を形成する連結部69とを備えて構成される。連通部68は、ランド62とランド64との間を連結し、入力ポート52と出力ポート54とドレインポート56の各ポート間を連通する。連通部68は、ランド62及びランド64の外径よりも小さな外径で且つ互いのランド62及びランド64から軸方向Lに沿って近づくほど小さな外径となるようなテーパ状に形成されている。連結部69は、ランド62とランド66との間を連結し、スリーブ50の内壁と共にスプール60にフィードバック力を作用させるためのフィードバック室70を形成する。
【0033】
筒状コイル2への通電が遮断されている状態(非通電時)では、スプール60は、図1に実線で示されているように、スプリング44の付勢力により付勢方向FFへ最大変位している。このとき、連通部68を介して入力ポート52と出力ポート54とが連通すると共に、ランド64により出力ポート54とドレインポート56とが遮断される。従って、出力ポート54に油圧が作用する。
【0034】
一方、筒状コイル2に通電されると、通電量、即ち筒状コイル2に印加される電流の大きさに応じた吸引力で反付勢方向FRにプランジャ6が吸引される。これに伴って、プランジャ6に当接するシャフト38が反付勢方向FRに変位し、シャフト38に当接するスプール60も反付勢方向FRに変位する。この際、スプール60は、プランジャ6の吸引力とスプリング44のバネ力とフィードバックポート58からスプール60に作用するフィードバック力とが釣り合う位置で停止する。スプール60が反付勢方向FRに変位するほど、入力ポート52の開口面積が狭くなり、ドレインポート56の開口面積が広がる。図1に一部のランドの位置を二点鎖線で示しているように、スプール60が最も反付勢方向FRに移動したとき、ランド62により入力ポート52が完全に塞がれると共に、出力ポート54とドレインポート56とが連通する。これにより、出力ポート54には油圧が作用しなくなる。
【0035】
上述したように、プランジャ6は、筒状コイル2の通電量に応じた吸引力で反付勢方向FRに吸引される。従って、ソレノイド駆動装置10の磁気効率を向上させることにより、より小型のソレノイド駆動装置10を用いて、必要な吸引力を確保することができる。その結果、より小型の電磁弁20を得ることができる。或いは、より少ない消費電力で動作する電磁弁20を得ることができる。
【0036】
(略)
【0037】
上述したように、図2は、図1において符号“8”で示される径拡大部の近傍の部分拡大図である。図1及び図2に示すように、コア3は、磁束制限部7と、径拡大部8と、基底部9とを備えている。磁束制限部7は、磁気回路においてコア3によるプランジャ6の吸引力を確保するために、所定の位置でコア3の磁気抵抗が大きくなるように構成されている。」

c「【0049】
2.第二の実施形態
次に、本発明の第二の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、コア3に設けられた径拡大部8の具体的構成が、上記第一の実施形態と相違している。図8は、本実施形態における径拡大部8の近傍の部分拡大図である。以下、上記第一の実施形態との相違点を中心に説明する。特に説明しない点については、上記第一の実施形態と同様である。
【0050】
径拡大部8の具体的構成を除いて、図1に示すようなソレノイド駆動装置10を含む電磁弁20の全体の構成は、上記第一の実施形態と同様である。従って、油圧制御弁としての調圧バルブ部40の構成も、上記第一の実施形態と同様である。但し、上記第一の実施形態では特に説明しなかったが、図1に示すように、調圧バルブ部40は、スプール60のストローク範囲における反付勢方向FR側の端部領域に、スプール60の位置に関係なく出力油圧が一定状態となる非制御領域D1を有すると共に、非制御領域D1より付勢方向FF側にスプール60の位置に応じて出力油圧が変化する制御領域D2を有している。なお、本願において「油圧が一定状態」とは、油圧が厳密に一定であることを指すものではなく、積極的に制御した結果ではない多少の油圧の変化は含まれる。例えばスプール60とスリーブ50との隙間から洩れる油圧による微小な油圧変動等がある場合も「油圧が一定状態」に含まれる。
【0051】
本実施形態では、調圧バルブ部40は、制御領域D2に対して反付勢方向FR側に隣接して第一の非制御領域D1を有すると共に、制御領域D2に対して付勢方向FF側に隣接して第二の非制御領域D3を有している。そして、第一の非制御領域D1、制御領域D2、及び第二の非制御領域D3を合わせた領域がスプール60のストローク範囲の全体に相当する。制御領域D2では、スプール60の軸方向Lの位置に応じて、出力ポート54に作用する油圧(出力油圧)が変化する。図1に示す例では、スプール60が反付勢方向FRに変位するに従って、入力ポート52の開口面積が狭くなると共にドレインポート56の開口面積が広がり、出力油圧が低くなる。第一の非制御領域D1では、ランド62により入力ポート52が完全に塞がれると共に出力ポート54とドレインポート56とが十分に広い開口面積で連通する状態となり、出力油圧はゼロで一定状態となる。第二の非制御領域D3では、ランド64によりドレインポート56が完全に塞がれると共に入力ポート52と出力ポート54とが十分に広い開口面積で連通する状態となり、出力油圧は入力ポート52に作用する油圧と一致する油圧で一定状態となる。即ち、第一の非制御領域D1及び第二の非制御領域D3では、スプール60の位置に関係なく出力油圧が一定状態となる。
【0052】
なお、図1に示す調圧バルブ部40の構成は単なる一例である。従って、図1に示す例とは逆に、スプール60が反付勢方向FRに変位するに従って、入力ポート52の開口面積が広くなり、出力油圧が高くなるように、調圧バルブ部40(油圧制御弁)を構成してもよい。
【0053】
上記のとおり、コア3の形状は、第一仮想境界面V1及び第二仮想境界面V2を用いて規定されている。図8に示すように、本実施形態では、第一仮想境界面V1は、軸方向Lにおける最大ストローク位置Pmaxよりも付勢方向FF側に設定され、第二仮想境界面V2は、軸方向Lにおける最小ストローク位置Pminよりも付勢方向FF側かつ最大ストローク位置Pmaxよりも反付勢方向FR側に設定されている。そして、磁束制限部7は、第一仮想境界面V1よりも付勢方向FF側の領域にあって第一仮想境界面V1よりも反付勢方向FR側の領域に比べて、径方向Rの肉厚が薄くなるように形成されている。径拡大部8は、第一仮想境界面V1から反付勢方向FRの側に向かって径方向Rの肉厚が連続的又は段階的に厚くなるように形成されている。従って、ここでは、第一仮想境界面V1が磁束制限部7と径拡大部8との境界となる。基底部9は、有底筒状に形成されたコア3の底面部3aから反付勢方向FRの側の部位である。コア3は、軸方向Lにおいて、磁束制限部7及び径拡大部8を除く領域では、ほぼ同一の外径を有して構成されている。基底部9は、径方向Rにおいて、径拡大部8の平均的な肉厚、及び磁束制限部7の肉厚よりも厚い肉厚を有して形成されている。
【0054】
また、径拡大部8は、径拡大基準線Lrefよりも外面が径方向Rの内面側に窪んだ凹部8cを有して形成されている。また、本実施形態では、径拡大部8は、径拡大基準線Lrefよりも外面が径方向Rの外面側に突出した凸部8vも有している。図8に例示する形態では、径拡大部8は、磁束制限部7の反付勢方向FR側の端部に位置する第一仮想境界面V1から反付勢方向FRの側に向かって、第1凹部21、第1凸部24、第2凹部22、第2凸部25、第3凹部23、第3凸部26が順に形成されて構成されている。ここで、第1凹部21、第2凹部22、及び第3凹部23がいずれも凹部8cであり、第1凸部24、第2凸部25、及び第3凸部26が、いずれも凸部8vである。また、図8に例示する形態では、第3凹部23は、軸方向断面において、最小ストローク内面点Q4から径拡大基準線Lrefへの垂線Lpと、径拡大基準線Lrefとの交点Q5を含む位置に形成されている。さらに、図8に例示する形態では、第二仮想境界面V2に対して付勢方向FF側に隣接する凸部8v(ここでは第3凸部26)が、第二仮想境界面V2よりも反付勢方向FR側におけるコア3(基底部9)の径方向外面(9a)と連なる第1外面8v1と、第1外面8v1の付勢方向FF側の端部に接続され、径拡大基準線Lrefよりも軸方向Lに対する傾斜角度が大きい円錐台面状に形成された第2外面8v2と、を有して形成されている。即ち、図8から明らかなように、第3凸部26は、軸方向断面において2本の直線により形成されている。一方、その他の凸部8vである第1凸部24及び第2凸部25、並びに、凹部8cである第1凹部21、第2凹部22、及び第3凹部23は、軸方向断面において、曲線状に形成されている。従って、第1凸部24から反付勢方向FRの側に向かって第3凹部23までは、軸方向断面の形状が曲線の波状に形成されている。
(略)
【0061】
図9に示すように、最小ストローク位置Pmin付近においては、凹部8cを設けたことによって、プランジャ6からコア3を通る磁束の経路が狭くなる。具体的には、軸方向Lに直交する方向への磁束の経路が抑制され、軸方向Lに近い方向へと偏向される。その結果、吸引力に占める、軸方向Lに沿った反付勢方向FRの成分の割合が高くなり、吸引力が高くなる。一方、最大ストローク位置Pmax付近においては、凸部8vを設けたことによって、プランジャ6の近傍の磁気抵抗が低くなり、プランジャ6からコア3へと流れる磁束が増加する。その結果、最大ストローク位置Pmax付近における吸引力も高くなる。」

d 図1として以下の図面が記載されている


e 図8として以下の図面が記載されている


f 図9として以下の図面が記載されている


上記a?fの記載によれば、引用文献1には次の事項が記載されている。

・上記cの段落【0049】?【0050】の記載によれば、コア3に設けられた径拡大部8の具体的構成を除くと、第二の実施形態は、第一の実施形態と同様である。したがって、第二の実施形態の構成を特定する上で第一の実施形態についての記載も参照する。

・上記bの段落【0024】によれば、引用文献1にはソレノイド駆動装置10と調圧バルブ部40とを含む「電磁弁20」について記載されている。

・上記bの段落【0025】によれば、「ソレノイド駆動装置10は、底付き円筒部材(有底筒状部材)としてのケース1と、ケース1の径方向Rの内側に配置された筒状コイル2と、筒状コイル2の径方向Rの内側に配置されたコア3と、コア3の径方向R内側に配置されたプランジャ6」により構成されている。そして、図1を参照すると、筒状コイル2はケース1の内部に位置していることが見てとれる。
そして、「ケース1とコア3とプランジャ6とは、いずれも純度の高い鉄などの強磁性材料により形成されている。」。
また、図1によれば、断面図上でコア3のFF方向の端部とFR方向の端部はそれぞれケース1に接続され、筒状コイル2を囲むようにコア3とケース1とが環状に構成されていることが見てとれる。

・上記c、図1、8及び図9によれば、コア3の形状は磁気制限部7において径方向Rの肉厚が薄くなるように形成されており、磁気制限部7において括れた構成を有していることが見てとれる。

・上記bの段落【0026】によると、「コア3は、内面が有底筒状に形成されており、筒状部分の内部空間は、プランジャ6の収容空間としてのプランジャ収容部3cとなる。プランジャ6は、コア3の軸方向Lに沿って変位可能」に構成されている。

・上記bの段落【0028】によると、「調圧バルブ部40は、筒状のスリーブ50と、スリーブ50の径方向Rの内側に配置されて軸方向Lの端部がシャフト38の軸方向Lの端部に当接するスプール60と、スリーブ50の軸方向Lの端部においてスリーブ50に固定されたエンドプレート42と、エンドプレート42とスプール60との間に配置されたスプリング44と備えて構成されている。」。そして、「プランジャ6とスプール60とが連動するように構成されている。」。
さらに、上記bの段落【0031】によると「スリーブ50には、その内部空間の開口部として、入力ポート52と、出力ポート54と、ドレインポート56と、フィードバックポート58とが設けられている。入力ポート52は、作動油が入力されるポートである。出力ポート54は、作動油を吐出するポートである。ドレインポート56は、スリーブ50から作動油を抜くためのポートである。」。また、図1をみると、スリーブ50がケース1と接続されていることが見てとれる。

・上記bの段落【0033】?【0034】、及び上記cの段落【0051】によれば、スプール60の動作は次のようである。「筒状コイル2への通電が遮断されている状態(非通電時)では、スプール60は、・・・スプリング44の付勢力により付勢方向FFへ最大変位している。このとき、連通部68を介して入力ポート52と出力ポート54とが連通すると共に、ランド64により出力ポート54とドレインポート56とが遮断される。従って、出力ポート54に油圧が作用する。
一方、筒状コイル2に通電されると、通電量、即ち筒状コイル2に印加される電流の大きさに応じた吸引力で反付勢方向FRにプランジャ6が吸引される。これに伴って、プランジャ6に当接するシャフト38が反付勢方向FRに変位し、シャフト38に当接するスプール60も反付勢方向FRに変位する。この際、スプール60は、プランジャ6の吸引力とスプリング44のバネ力とフィードバックポート58からスプール60に作用するフィードバック力とが釣り合う位置で停止する。スプール60が反付勢方向FRに変位するほど、入力ポート52の開口面積が狭くなり、ドレインポート56の開口面積が広がる。・・・スプール60が最も反付勢方向FRに移動したとき、ランド62により入力ポート52が完全に塞がれると共に、出力ポート54とドレインポート56とが連通する。これにより、出力ポート54には油圧が作用しなくなる。」。

・上記cの段落【0053】及び図8によれば、「磁束制限部7は、第一仮想境界面V1よりも付勢方向FF側の領域にあって第一仮想境界面V1よりも反付勢方向FR側の領域に比べて、径方向Rの肉厚が薄くなるように形成されている。径拡大部8は、第一仮想境界面V1から反付勢方向FRの側に向かって径方向Rの肉厚が連続的又は段階的に厚くなるように形成され」、「第一仮想境界面V1が磁束制限部7と径拡大部8との境界となる。基底部9は、有底筒状に形成されたコア3の底面部3aから反付勢方向FRの側の部位である。コア3は、軸方向Lにおいて、磁束制限部7及び径拡大部8を除く領域では、ほぼ同一の外径を有して構成されている。」。
そして、段落【0054】及び図8によれば、「径拡大部8は、磁束制限部7の反付勢方向FR側の端部に位置する第一仮想境界面V1から反付勢方向FRの側に向かって、第1凹部21、第1凸部24、第2凹部22、第2凸部25、第3凹部23、第3凸部26が順に形成されて構成されて」おり、「第3凸部26は、軸方向断面において2本の直線により形成されている。一方、その他の凸部8vである第1凸部24及び第2凸部25、並びに、凹部8cである第1凹部21、第2凹部22、及び第3凹部23は、軸方向断面において、曲線状に形成されている。」。

・上記bの段落【0037】によれば、コア3は磁束制御部7において磁気抵抗が大きくなるように構成されており、このため、上記cの段落【0061】に「プランジャ6からコア3を通る磁束」との記載があり、図9の楕円で囲まれた拡大図に示された矢印からも読み取れるように、径拡大部8において、磁束はプランジャ6からコア3のFR方向側に向うように通っている。

以上を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 ソレノイド駆動装置10は、底付き円筒部材(有底筒状部材)としてのケース1と、ケース1の径方向Rの内側に配置された筒状コイル2と、筒状コイル2の径方向Rの内側に配置されたコア3と、コア3の径方向R内側に配置されたプランジャ6により構成されており、前記筒状コイル2は前記ケース1の内部に位置し、前記ケース1と前記コア3と前記プランジャ6とは、いずれも純度の高い鉄などの強磁性材料により形成され、
前記ケース1と前記コア3の両端部が接続され、前記筒状コイル2を囲むように環状に構成され、
前記コア3の形状は磁気制限部7において径方向Rの肉厚が薄くなるように形成されており、前記磁気制限部7において括れた構成を有し、
前記コア3は、内面が有底筒状に形成されており、筒状部分の内部空間は、前記プランジャ6の収容空間としてのプランジャ収容部3cとなり、前記プランジャ6は、前記コア3の軸方向Lに沿って変位可能に構成されており、
調圧バルブ部40は、筒状のスリーブ50と、前記スリーブ50の径方向Rの内側に配置されて軸方向Lの端部がシャフト38の軸方向Lの端部に当接するスプール60と、前記スリーブ50の軸方向Lの端部において前記スリーブ50に固定されたエンドプレート42と、前記エンドプレート42と前記スプール60との間に配置されたスプリング44とを備えて構成され、前記プランジャ6と前記スプール60とが連動するように構成され、
前記スリーブ50には、その内部空間の開口部として、入力ポート52と、出力ポート54と、ドレインポート56と、フィードバックポート58とが設けられ、前記入力ポート52は、作動油が入力されるポートであり、前記出力ポート54は、作動油を吐出するポートであり、前記ドレインポート56は、前記スリーブ50から作動油を抜くためのポートであり、前記スリーブ50が前記ケース1と接続されるように構成され、
前記筒状コイル2への通電が遮断されている状態(非通電時)では、前記スプール60は、前記スプリング44の付勢力により付勢方向FFへ最大変位し、このとき、連通部68を介して前記入力ポート52と前記出力ポート54とが連通すると共に、ランド64により前記出力ポート54と前記ドレインポート56とが遮断され、前記出力ポート54に油圧が作用し、
一方、前記筒状コイル2に通電されると、通電量、即ち前記筒状コイル2に印加される電流の大きさに応じた吸引力で反付勢方向FRに前記プランジャ6が吸引され、これに伴って、前記プランジャ6に当接するシャフト38が反付勢方向FRに変位し、前記シャフト38に当接する前記スプール60も反付勢方向FRに変位し、この際、前記スプール60は、前記プランジャ6の吸引力と前記スプリング44のバネ力とフィードバックポート58から前記スプール60に作用するフィードバック力とが釣り合う位置で停止し、前記スプール60が反付勢方向FRに変位するほど、入力ポート52の開口面積が狭くなり、前記ドレインポート56の開口面積が広がり、スプール60が最も反付勢方向FRに移動したとき、ランド62により前記入力ポート52が完全に塞がれると共に、前記出力ポート54と前記ドレインポート56とが連通し、前記出力ポート54には油圧が作用しなくなり、
前記磁束制限部7は、第一仮想境界面V1よりも付勢方向FF側の領域にあって第一仮想境界面V1よりも反付勢方向FR側の領域に比べて、径方向Rの肉厚が薄くなるように形成され、径拡大部8は、第一仮想境界面V1から反付勢方向FRの側に向かって径方向Rの肉厚が連続的又は段階的に厚くなるように形成され、
第一仮想境界面V1が磁束制限部7と径拡大部8との境界となり、基底部9は、有底筒状に形成されたコア3の底面部3aから反付勢方向FRの側の部位であり、コア3は、軸方向Lにおいて、磁束制限部7及び径拡大部8を除く領域では、ほぼ同一の外径を有して構成され、
前記径拡大部8は、前記磁束制限部7の反付勢方向FR側の端部に位置する第一仮想境界面V1から反付勢方向FRの側に向かって、第1凹部21、第1凸部24、第2凹部22、第2凸部25、第3凹部23、第3凸部26が順に形成されて構成され、第3凸部26は、軸方向断面において2本の直線により形成され、一方、その他の凸部8vである第1凸部24及び第2凸部25、並びに、凹部8cである第1凹部21、第2凹部22、及び第3凹部23は、軸方向断面において、曲線状に形成され、
前記径拡大部8において磁束はプランジャ6からコア3に向かうように通っている、
前記ソレノイド駆動装置10と前記調圧バルブ部40とを含む電磁弁20。」

ウ 対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比する。

a 引用発明において、「ケース1」の径方向Rの内側に「筒状コイル2」が配置されており、「筒状コイル2」は「ケース1」内に位置しているということができるから、引用発明の「ケース1」「筒状コイル2」は、それぞれ本件補正発明の「ケーシング」「コイル」に相当し、引用発明の「ケース1と、ケース1の径方向Rの内側に配置された筒状コイル2と」が本件補正発明の「ケーシングと、前記ケーシング内に位置されたコイルと、」に相当する。

b 引用発明において、「コア3」は、筒状コイル2の径方向Rの内側に配置され、ケース1とともに強磁性材料により形成され、両端部がケース1と接続されて、ケース1とともに筒状コイル2を囲むように環状に構成されている。そうしてみると「コア3」はケース1と磁気的に連結し、筒状コイル2の周りに磁気回路を形成することは技術常識からみて明らかである。また、「コア3」は、筒状コイル2の径方向Rの内側に配置されており、筒状コイル2によって取り囲まれているということができる。
ここで、引用発明における「コア3」は、「磁気制限部7」において径方向Rの肉厚が薄く括れた構成を有しているから、「コア3」は「磁気制限部7」によってソレノイドの長手方向に分離されているということができ、「磁気制限部7」を挟んで分離されたコア3のそれぞれを、「コア3」の一方と「コア3」の他方ということができる。ここで「コア3」の一方と「コア3」の他方とはソレノイドの長手方向に整列しているといえる。
そうしてみると、引用発明の「コア3」の一方が、本件補正発明の「前記磁束管と軸方向に整列され、前記磁束管から軸方向に分離され、前記コイルによって取り囲まれ、磁気的に前記ケーシングと連結される」「磁極片」に、「コア3」の他方が、本件補正発明の前記ケーシングに磁気的に連結され、前記コイルによって取り囲まれた「磁束管」に、それぞれ相当するといえる。
そして、引用発明において「コア3」の一方と「コア3」の他方とを分離する「磁気制限部7」が、本件補正発明において、前記磁極片から前記磁束管を分離させる「磁束チョーク」に相当する。

c 引用発明において、「コア3」の内面は有底筒状に形成され、当該筒状部分の内部空間が、プランジャ6の収容空間となり、プランジャ6がコア3の軸方向Lに沿って変位可能に構成されている。したがって、「プランジャ6」は「コア3」の一方と「コア3」の他方とに対して変位可能に構成されているから、本件補正発明の前記磁束管及び前記磁極片と摺動可能に取り付けられる「電機子」に相当する。

d 引用発明の「スリーブ50」には、その内部空間の開口部として、「入力ポート52」と、「出力ポート54」と、「ドレインポート56」とが設けられ、「入力ポート52」は作動油が入力されるポートであり、「出力ポート54」は作動油を吐出するポートであり、「ドレインポート56」は、前記スリーブ50から作動油を抜くためのポートである。
そうしてみると、引用発明の「入力ポート52」「出力ポート54」及び「ドレインポート56」は、それぞれ本件補正発明の「供給圧力連結部」「制御圧力連結部」及び「排気圧力連結部」に相当し、引用発明の「入力ポート52」「出力ポート54」及び「ドレインポート56」における「油圧」が本件補正発明の「供給圧力」「制御圧力」及び「排気圧力」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「スリーブ50」は「ケース1」と接続されるように構成されているから、本件補正発明のケーシングと連結される「油圧ハウジング」に相当する。

e 引用発明の「スプール60」は、非通電時ではスプリング44の付勢力により付勢方向FFへ最大変位し、入力ポート52と出力ポート54とが連通し、出力ポート54とドレインポート56とが遮断され、通電時には、スプール60は反付勢方向FRに変位し、入力ポート52の開口面積が狭くなるのに対して、ドレインポート56の開口面積が広がり、スプール60が最も反付勢方向FRに移動したとき、ランド62により前記入力ポート52が完全に塞がれると共に、前記出力ポート54と前記ドレインポート56とが連通し、出力ポート54には油圧が作用しなくなるものである。
したがって、「スプール60」は、出力ポート54を入力ポート52又はドレインポート56に連通させており、通電時にプランジャ6の吸引によって変位しているから、本件補正発明の「制御圧力を供給圧力または排気圧力と」「連結するように前記電機子によって移動される弁部材」に対応するといえるものの、本件補正発明のように「選択的に」連結しているかどうかは明らかではない。

f 引用発明では、上記eでも検討したようにスプール60の軸方向の変位によって出力ポート54の連通先が変わり出力ポート54の油圧もこれに対応して変化するといえる。そして、引用発明では、非通電時に、スプール60はスプリング44の付勢力により付勢方向FFへ最大変位し、出力ポート54が入力ポート52と連通するから、引用発明の「スプリング44」は、スプール60の軸方向の変位に反応する出力ポート54の油圧を、入力ポート52の油圧と接続する位置に付勢しているといえる。ここで、本件補正発明の「ばね」は「前記制御圧力を前記供給圧力及び排気圧力のうち、一つと連結する」ように弁部材を付勢する構成であり、当該構成は「前記制御圧力」を「前記供給圧力」のみに連結するように付勢するものも含むから、引用発明の「スプリング44」は、本件補正発明の、前記制御圧力が軸方向に前記弁部材に対して反応し、前記制御圧力を前記供給圧力及び排気圧力のうち、一つと連結する好ましい位置に前記弁部材を付勢させる「ばね」に含まれる。

g 引用発明では、磁束制限部7は、第一仮想境界面V1よりも付勢方向FF側の領域にあって第一仮想境界面V1よりも反付勢方向FR側の領域に比べて、径方向Rの肉厚が薄くなるように形成され、径拡大部8は、第一仮想境界面V1から反付勢方向FRの側に向かって径方向Rの肉厚が連続的又は段階的に厚くなるように形成され、基底部9は、有底筒状に形成されたコア3の底面部3aから反付勢方向FRの側の部位であり、コア3は、軸方向Lにおいて、磁束制限部7及び径拡大部8を除く領域では、ほぼ同一の外径を有して構成されている。
したがって、引用発明は、コア3の一方の径方向Rの肉厚は基底部9から磁束制御部7へむけては連続的又は段階的に薄くなるように形成されていることとなり、当該構成は本件補正発明の「大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さにテーパーされ」ることに相当する。また、「コア3」の一方と「磁束制限部7」とは、径拡大部8を介して並んで形成されているといえるから、「コア3」の一方と「磁束制限部7」とは並置されているということができ、当該構成は本件補正発明の「前記磁極片と前記磁束チョークとを並置」することに相当する。

h 引用発明では、「前記径拡大部8は、前記磁束制限部7の反付勢方向FR側の端部に位置する第一仮想境界面V1から反付勢方向FRの側に向かって、第1凹部21、第1凸部24、第2凹部22、第2凸部25、第3凹部23、第3凸部26が順に形成されて構成され、第3凸部26は、軸方向断面において2本の直線により形成され、一方、その他の凸部8vである第1凸部24及び第2凸部25、並びに、凹部8cである第1凹部21、第2凹部22、及び第3凹部23は、軸方向断面において、曲線状に形成され」ている。このように、径拡大部8は軸方向断面において曲線状に形成された部分を含むから、本件補正発明のように「外径に沿って前記大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さまで曲線形状を有し」ているといえる。なお、本件補正発明の「外径に沿って前記大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さまで曲線形状を有し」なる記載では直線を含む構成を排除しているようにも見えるが、本件補正後の請求項3、4にはコアシャントの曲線形状が線形セグメントで構成されることが記載されていることを踏まえれば、引用発明は第3の凸部26の頂点付近に一部直線が含まれて構成されているものの、本件補正発明の線形セグメントで構成される曲線形状に含まれると解されるから、本件補正発明と実質的な相違はない。

i 引用発明では、径拡大部8において磁束はコア3からプランジャ6に向かっているから、磁束はコア3の一方、プランジャ6、及びコア3の他方を通るように構成され、更にケース1を介して磁気ループを構成していることは明らかである。そうしてみると、引用発明のコア3の一方、プランジャ6、及びコア3の他方によりなる構成は、本件補正発明の「前記磁束管と、前記磁極片と、前記電機子との間に磁気ループを完成するように構成され」る構成に相当する。

j 引用発明では、筒状コイル2に電流を流したとき、径拡大部8において磁束がプランジャ6からコア3に向かうように構成することで、プランジャ6が変位するための吸引力を与えていることが技術常識に照らして明らかであるから、引用発明の「径拡大部8」は本件補正発明の「前記コイルが電流を受けた場合に、前記電機子が摺動するように磁気力を向けるよう構成された、コアシャント」に相当する。

k 引用発明は「前記筒状コイル2への通電が遮断されている状態(非通電時)では、前記スプール60は、前記スプリング44の付勢力により付勢方向FFへ最大変位し、このとき、連通部68を介して前記入力ポート52と前記出力ポート54とが連通すると共に、ランド64により前記出力ポート54と前記ドレインポート56とが遮断され、前記出力ポート54に油圧が作用し」、非通電時に入力ポート52と出力ポート54が連通するからノーマリーハイといえる。これに対して、本件補正発明は「前記制御圧力を前記排気圧力に連結するように前記弁部材が付勢されるように、当該ソレノイドアクチュエータ弁はノーマリーローであ」る点で相違している。

l 引用発明では、径拡大部8には、第1の凸部24、及び第2の凸部25が形成されており、凸部を有するといえ、本件補正発明の「コアシャントは凸状を有する」ことに相当する。
また、引用発明の「電磁弁20」は本件補正発明の「ソレノイドアクチュエータ弁」に対応する。

したがって、本件補正発明と引用発明とは以下の点で一致し、相違する。

(一致点)
「ケーシングと、
前記ケーシング内に位置されたコイルと、
前記ケーシングに磁気的に連結され、前記コイルによって取り囲まれた磁束管と、
前記磁束管と軸方向に整列され、前記磁束管から軸方向に分離され、前記コイルによって取り囲まれ、磁気的に前記ケーシングと連結される磁極片と、
前記磁束管及び前記磁極片と摺動可能に取り付けられる電機子と、
前記ケーシングと連結され、制御圧力連結部、供給圧力連結部、及び、排気圧力連結部を有する油圧ハウジングと、
制御圧力を供給圧力または排気圧力と連結するように前記電機子によって移動される弁部材と、
前記制御圧力が軸方向に前記弁部材に対して反応し、前記制御圧力を前記供給圧力及び排気圧力のうち、一つと連結する好ましい位置に前記弁部材を付勢させるばねと、
前記磁極片から前記磁束管を分離させる磁束チョークと、そして、
前記磁極片と前記磁束チョークとを並置し、大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さにテーパーされ、外径に沿って前記大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さまで曲線形状を有し、
前記磁束管と、前記磁極片と、前記電機子との間に磁気ループを完成するように構成され、
前記コイルが電流を受けた場合に、前記電機子が摺動するように磁気力を向けるよう構成された、コアシャントとを含む、ソレノイドアクチュエータ弁であって、
前記コアシャントは凸状を有する、ソレノイドアクチュエータ弁。」


(相違点1)
本件補正発明では、弁部材は制御圧力を供給圧力又は排気圧力に選択的に連結するように前記電機子によって移動されるのに対して、引用発明ではこれに対応する構成が明らかではない点。

(相違点2)
本件補正発明は、前記制御圧力を前記排気圧力に連結するように前記弁部材が付勢されるように、当該ソレノイドアクチュエータ弁はノーマリーローであるのに対して、引用発明はノーマリーハイである点。


相違点1について検討する。
引用発明において、少なくともスプール60がFR方向及びFF方向に最大変位することにより、出力ポートは入力ポートとドレインポートのいずれか一方に連通するから、引用発明も選択的に連通しているものといえ、この点は実質的な相違点とはいえない。
なお、仮に、本件補正発明が、制御圧力連結部が供給圧力連結部と排気圧力連結部に同時に連通する状態を排除していると解されるとしても、引用発明において、出力ポートが入力ポートとドレインポートに同時に連通した場合、入力ポートに入力される油圧がドレインポートにそのまま漏れてしまうことは明らかであるから、これを回避するため、制御圧力連結部が供給圧力連結部と排気圧力連結部に同時に連通しない構成とすることは、当業者が容易に想到できた事項に過ぎない。

相違点2について検討する。
引用発明は本件補正発明と異なり、ノーマリーハイの電磁弁として特定されている。しかしながら、上記(2)イcに摘記したように、引用文献1の段落【0052】に「図1に示す例とは逆に、スプール60が反付勢方向FRに変位するに従って、入力ポート52の開口面積が広くなり、出力油圧が高くなるように、調圧バルブ部40(油圧制御弁)を構成してもよい」と記載されており、当該記載によればノーマリーローとして動作させることも示唆されている。また、そもそも電磁弁としてノーマリーロー及びノーマリーハイはともに周知の技術に過ぎない(例えば、国際公開第2013/192003号5ページ14?21行、特開2005-140277号公報段落【0013】参照。)。そうしてみると、引用発明の電磁弁をノーマリーローに変更することは、電磁弁の用途に応じて適宜実施できる程度の事項にすぎず、相違点2とした本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に成しえた事項である。

そして、本件補正発明の奏する効果は、引用発明の作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定によって、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(請求人の主張について)
審判請求人は、令和1年7月23日に提出された審判請求書(令和1年9月5日に提出された手続補正書を参照。)において、「・・・図8のコアシャントの径拡大部8には凹部と凸部が混在し、図10-12の径拡大部8には円と凹部とが混在することが示されています。これに対して、本願発明のコアシャントは、大きい管状の断面厚さから小さい管状の断面厚さまで曲線形状はコアシャントの外径に沿ったもの、例えば、本願の図5に示す一様な凸状であって、引用文献1に係る、凹部と凸部が混在したもの、又は、円と凹部とが混在した、複数の別個のはっきり区別できる形状からなるものとは異なります。さらに引用文献1に係るコアシャントは、テーパーされてもおらず、そして、曲がってもいない平面部分を有してさえいます」と主張している。
しかしながら、本件補正発明では「コアシャントは凸状を有する」と特定されているのみであり、凸状以外の部分を有さないことは特定されていないから、この点に関して引用発明との間に格別の相違は認められない。したがって、請求人の主張は採用できない。


(3)小括
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合していない。

したがって、本件補正は、特許法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明
令和1年7月23日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成30年12月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項15に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項15に記載された事項により特定される、上記「第2」[理由]の「1 補正の概要」の「本願発明」のとおりのものと認める。


2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、
この出願の請求項1-6、8-10、12、14、15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、及び、
この出願の請求項1-15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものであり、請求項15に対して引用文献1が引用されている。


3 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記「第2」[理由]の「3(2)イ」に記載したとおりである。


4 対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本件補正発明から、「ソレノイドアクチュエータ弁であって、前記制御圧力を前記排気圧力に連結するように前記弁部材が付勢されるように、当該ソレノイドアクチュエータ弁はノーマリーローであり、そして、前記コアシャントは凸状を有する、ソレノイドアクチュエータ弁。」という限定、すなわち相違点2に係る構成を省いたものである。そして、上記「第2」で判断したとおり、相違点1は実質的な相違点とはいえず、仮に、相違点と解されたとしても相違点1の構成は引用発明から当業者が容易に想到できた事項に過ぎない。
したがって、本件補正発明から相違点2に係る構成を省いた本願発明は、引用発明と実質的に同一であり、仮に同一ではないとしても、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号、同法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。



 
別掲
 
審理終結日 2020-07-13 
結審通知日 2020-07-14 
審決日 2020-07-28 
出願番号 特願2017-501271(P2017-501271)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01F)
P 1 8・ 575- Z (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木下 直哉池田 安希子  
特許庁審判長 五十嵐 努
特許庁審判官 山本 章裕
井上 信一
発明の名称 ソレノイド曲線形状化のための曲線形シャント  
代理人 大賀 眞司  
代理人 百本 宏之  

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