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審決分類 審判 一部無効 1項3号刊行物記載  G06Q
管理番号 1369648
審判番号 無効2019-800101  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-11-22 
確定日 2020-12-24 
事件の表示 上記当事者間の特許第5775663号発明「ホワイトカード使用限度額引上げシステム、およびその動作方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判は、特許第5775663号の請求項1に係る特許(以下、「本件特許」という。)に係る無効審判であり、本件特許及び本件審判に係る手続の経緯は、次のとおりである。

平成21年9月16日 特許出願(特願2009-215054号)
平成27年7月10日 設定登録(特許第5775663号)
令和元年11月22日 無効審判請求、甲1?4
令和2年 2月 7日 答弁書、乙1?2
令和2年 3月 5日 営業秘密に関する申し出(請求人)
令和2年 3月26日付 審理事項通知(1)
令和2年 4月17日 口頭審理陳述要領書(1)(両当事者)甲5
令和2年 4月20日付 審理事項通知(2)
令和2年 5月22日付 口頭審理陳述要領書(2)(両当事者)
甲1の2、乙3
令和2年 5月29日付 手続中止通知
令和2年 6月 9日 上申書(請求人)、甲6
令和2年 8月 4日付 手続中止解除通知
令和2年 8月20日 上申書(1)(2)(被請求人)
令和2年 8月27日 口頭審理
令和2年 8月27日 上申書(請求人)、甲7
令和2年10月22日付 審理終結通知

なお、両当事者間での侵害事件(東京地裁平成30年(ワ)第13927号。以下、「関連侵害事件」という。)とその控訴事件(知財高裁令和2年(ネ)第10023号、同「関連侵害控訴事件」)があり、令和2年8月26日に関連侵害控訴事件の判決言渡しがなされた。

第2 本件特許発明
本件特許に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、次のとおりである。(分節記号は、審判請求書記載のとおりである。)

A 使用限度額をホワイトカードに紐づけられた入金額に応じて引き上げることが可能で、受金にのみ利用可能な受金IDと、消費使用に利用可能な消費使用IDとの二種類のIDがあらかじめ紐付けられているホワイトカードに対する入金システムであって、
B1-1 ホワイトカードに対する入金に際して、入金すべきホワイトカードの受金IDを取得する受金ID取得部と、
B1-2 そのホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報である入金受付情報を取得する入金受付情報取得部と
B1-3 取得した受金IDと、入金受付情報とを関連付けて出力する出力部と、
B2 を有するホワイトカード使用限度額引上指示装置と、
C1-1 受金IDと関連付けられた入金受付情報をホワイトカード使用限度額引上指示装置から受信する受信部と、
C1-2 受信した入金受付情報に関連付けられたホワイトカード受金IDと紐付けられている消費使用IDをホワイトカードID管理装置から取得する消費使用ID取得部と、
C1-3 取得した消費使用IDと関連付けた使用限度額引上額を含む引上命令を送信する引上命令送信部と、
C2 を有する引上命令装置と、
D1-1 消費使用IDと受金IDとを紐付けた紐付テーブルを保持する紐付テーブル保持部と、
D1-2 引上命令装置から受金IDを受信する受金ID受信部と、
D1-3 受信した受金IDに紐付けられている消費使用IDを紐付テーブルから取得して引上命令装置に送信する消費使用ID送信部と、
D2 を有するホワイトカードID管理装置と、
E からなるホワイトカード使用限度額引き上げシステム。

第3 無効理由
請求人の主張する無効理由は、次のとおりである。

本件特許発明は、特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、同法29条の規定に違反してされたものであって同法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。

第4 当事者の主張と証拠方法
1 請求人の主張
(1)争点1(甲1の送金システム(メルマネ)における「イーバンクカード」は、本件特許発明の「ホワイトカード」に相当するか。)について
ア 本件特許発明の「ホワイトカード」は「契約時に設定されてある程度固定される、所定期間内で使用可能な金額」が設定されたカード、すなわち、クレジットカードを指し、これを前提とすれば、本請求は成り立たない。(口頭審理陳述要領書(1)3?8頁、同(2)3、14頁。以下、「侵害事件の主位的主張」という。)

イ 本件特許発明の「ホワイトカード」は「商品購入などに際して決済のために使用されるカード」であるとの被請求人主張は、それ自体を争うものでない。(口頭審理陳述要領書(1)8頁)
甲1には、イーバンク銀行に口座を開設した者が口座に係るキャッシュカードであるイーバンクカードの発行を受けること、インターネットショッピングの際、当該口座の口座番号その他の情報を入力することで決済が可能であることが記載されている。(審判請求書17?18頁)
甲1にはインターネットショッピングにおいて、イーバンクカードに記載されている口座番号を入力することにより書籍購入の決済ができることが記載されている。(口頭審理陳述要領書(1)9頁)
本件明細書【0002】の「商品購入などに際して決済のために使用されるカード」との記載からみて、カードの店頭での提示に限られず、「ネットショップにてカード番号を入力」することも含まれ、カード番号の入力による決済が、クレジットカードの「使用」にあたることは明らかである。本件明細書【0027】の「安全」な消費は、「カード所有の確認」と何ら関係がない。(口頭審理陳述要領書(1)9?10頁、同(2)3?4頁)

(2)争点2(甲1の送金システム(メルマネ)は、本件特許発明の「使用限度額をホワイトカードに紐づけられた入金額に応じて引き上げることが可能」である「ホワイトカードに対する」「入金」システムに相当するか。)について
ア 甲1送金システムは、イーバンクカードに対応するイーバンク銀行の口座の残高を、送金者からの送金に応じて引き上げるシステムである。(審判請求書18頁)
甲1送金システムにおいて、送金者は、受取人のイーバンクカードに紐付けられたEメールアドレスと送金金額を入力し、これにより、イーバンクカードに紐付けられたイーバンクの口座残高(使用限度額)が引き揚げられる。当該送金金額は、イーバンクカードに「紐付けられた」入金額であり、当該送金は「ホワイトカードに対する」入金に相当する。(口頭審理陳述要領書(2)4?5頁)

イ 受取人がイーバンクカードを持っている場合における甲1記載のシステムを引用発明としており、受取人がイーバンクカードを持っていない場合の構成は、引用発明の認定に影響しない。(口頭審理陳述要領書(1)10頁、同(2)5頁)

(3)争点3(甲1の送金システムには、本件特許発明の「入金受付情報」に相当する「送金指示受付情報」が存在するか。)について
ア 本請求は、本件発明が「イーバンク銀行」のメルマネに係る公然実施された発明であることを理由とするものではなく「ネットバンキング完璧利用法」(甲1)という刊行物に記載された発明であって特許法第29条1項3号を主張するものであり、同項2号を主張するものでない。
乙1、乙2に記載されている事項は出願時の技術常識ではないから、甲1記載発明の認定にあたって参酌することは許されない。(口頭審理陳述要領書(1)12頁、同(2)6頁)
乙1の記載は乙2の記載と整合しておらず、相互に矛盾する乙1、乙2を参酌して、甲1記載発明を認定することは許されない。(口頭審理陳述要領書(2)8?9頁)


(ア)甲1の送金システムの受金者Eメールアドレス及び送金金額の入力及び確認ボタン押下げにより、口座間の金銭価値の移動を行う一連の処理が実行され、送金者はこの一連の処理を取り消すことができない。この確認ボタン押下げに伴う「送金指示受付情報」は、本件特許発明の「入金受付情報」に相当する。(審判請求書17?19、23頁)
「メルマネ」は、受取人のEメールアドレスを用いることにより、受取人の口座番号を知らなくても送金ができるようにし、これによって安全な送金を可能としたものであり、このような技術思想は、「受金のみ利用可能な受金IDと、消費使用に利用可能な消費使用IDとを別々のIDとし、両者を関連付けて管理することで安全に受金と消費を行うことができる」(本件明細書【0006】)という本件特許発明の技術思想と同じである。仮に「メルマネ」が被請求人の主張するとおりに構成されているとしても、被請求人の主張する構成は、送金者と受取人のそれぞれの側に最終確認手段を設けたというものにすぎず、それによって「メルマネ」の技術思想が異なるものとなることはない。(口頭審理陳述要領書(1)12?14頁)
受取人側の手続き(受信した通知メールのURLへアクセスして、ログインするという手続)は、受取人側の口座残高(「使用限度額」に相当)に入金が反映されるために必要とされるものにすぎない。受取人側の口座残高は「使用限度額」に相当するところ、本件発明の「入金受付情報」は「使用限度額」が引き上げられたことを示す情報でなく、受取人側の手続は、送金指示受付情報が「入金受付情報」に相当するかどうかとは関係がない。(口頭審理陳述要領書(1)14?15頁)

(イ)乙2には、「ユーザが当該口座名を確認して送金指示の実行ボタンを押した以降は、取得した口座名(及び口座番号)を用いて勘定処理を行う」ことなど記載されていない。乙2の「受取人がイーバンク口座開設者の場合、送金手続きの作業時に、受取人が登録したメールアドレスに対応する口座名が自動的に表示される」との記載があることは、実行ボタンを押した後の「勘定処理」をどのようにして行うかとは関係がない。(口頭審理陳述要領書(1)15頁)
仮に乙2から被請求人主張の構成が把握されるとしても、それは、「送金指示受付情報」がEメールアドレスと関連付けて出力されていない理由にならない。「送金指示受付情報」は、送金者が受金者のEメールアドレスと送金金額を入力して「確認」ボタンを押したことを示す情報であり、「確認」ボタンを押すと、送金指示受付情報が受金者のEメールアドレスと送金金額とともに甲1送金システムに出力され、送金指示受付情報が受金者のEメールアドレスと関連付けられて出力されることは自明。(口頭審理陳述要領書(1)15?16頁)

(ウ)甲1をみれば、当業者は同号証に「相手の名前とEメールアドレスだけで送金できるサービス」であって、確認ボタンの押下により送金が完了し、受取人はイーバンク銀行の口座にて送金金額を受け取ることができるシステムが記載されていると理解する。甲1には「メルマネ」は「相手の名前とEメールアドレスだけで送金できるサービス」であること(39頁、57頁)、送金者は「「送金内容:入力」の画面が表示されたら、送金先のEメールアドレスと金額を打ち込みます」とされ、送金者が送金する際の表示画面には、確認ボタンとリセットボタンのアイコンが表示され(58頁)、続く59頁(甲1の2)には「送金」とは無関係の「請求」に関する説明がなされているから、甲1に接した当業者は、確認ボタンの押下により、受取人の口座に送金額が振り込まれるシステム構成(技術思想)が採用されていると理解する。加えて、「受取人がイーバンク銀行の口座を持っていて、そこで受け取る場合の手数料は無料。それ以外で受け取る場合の手数料は受取人負担」と記載されている(58頁)から、甲1に接した当業者は、受取人がイーバンク銀行の口座を持っている場合には、特段の手続を経ることなく、同口座にて送金額を受け取ることができるシステム構成(技術思想)が採用されているものと理解する。(口頭審理陳述要領書(2)7頁)

(エ)甲1(58頁)の「受取人は送られたEメールからアクセスして自身の銀行口座に振り込み現金化します」との記載は、その直前の記載からみて「受取人がイーバンク銀行の口座を持っていて、そこで受け取る場合」の記載ではなく「自身の(すなわち他行の)銀行口座を持っていて、当該自身の銀行口座で受け取る場合」に関する記載であると理解するのが自然である。(口頭審理陳述要領書(2)8頁)

(4)争点4(甲1の送金システムには、本件特許発明の「ホワイトカードID管理装置」に相当する構成が存在するか。)について
送金者が受金者のEメールアドレスと送金額を入力して、確認ボタンを押すと、受金者の口座の口座残高が増加する。これは甲1送金システムが、受金者の口座番号を取得する前提として、受金者のEメールアドレスを取得しているからである。よって、甲1送金システムは、受金者の口座番号を取得する前提として、受金者のEメールアドレスを受信する構成を有する。受金者の口座の口座残高を引き上げるためには、送金者が入力したEメールアドレスに対応する口座番号を取得しなければならない。よって、甲1送金システムが、当該口座番号を取得してシステム内部に送信する構成を有することは自明である。(審判請求書21頁)
甲1によれば、送金者は受取人のEメールアドレスを入力してイーバンク銀行のシステムに送信し、同システムは当該Eメールアドレスと紐づく口座番号により特定される口座に向けた送金処理を行うのであるから、甲1送金システムが、○1当該Eメールアドレスを送信する構成と、○2当該Eメールアドレスを○1から受信する構成と、○3受信したEメールアドレスに紐付けられている口座番号を紐付けテーブルから取得して送信する構成と、○4口座番号を○3から受信する構成を備えていることは明らか。○2、○3が「ホワイトカードID管理装置」の「受金ID受信部」「消費使用ID送信部」に対応する。(口頭審理陳述要領書(2)12?13頁。(○1、○2等は、原文では丸数字の1、2等である。以下、同様。))
本件明細書【0029】【0030】のとおり、本件特許発明の各「装置」はハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの両方として実現され得る「機能ブロック」にすぎず、甲1送金システムが全体として各構成要件の定める機能を備えていることが甲1に開示されていれば、甲1送金システムは本件特許発明と同一である。(口頭審理陳述要領書(2)12?13頁)

2 被請求人の主張
(1)争点1(甲1の送金システム(メルマネ)における「イーバンクカード」は、本件特許発明の「ホワイトカード」に相当するか。)について
ア 本件特許発明の「ホワイトカード」は「商品購入などに際して決済のために使用されるカード」であるのに対し、甲1のイーバンクカードは、単なる銀行のキャッシュカードであって、商品購入などに際して決済のために使用されるカードではない。甲1では、イーバンクカードを用いることなく、イーバンク銀行の口座からの支払いで、書籍購入の決済を行っている。(答弁書5?6、13頁)
甲1に示されるような、ユーザがイーバンクカードを所有していなくても決済できる態様は、イーバンク銀行の口座を拠り所とする性質のものであるから、ユーザがイーバンクカードを「使用」して支払っているとはいえないため、本件特許発明における「使用」に含まれない。(口頭審理陳述要領書(1)4頁)

イ 本件特許発明のホワイトカードを実際に店舗などで提示して支払いをする際、店舗側は利用者から実際にホワイトカードの提示を受けることで、ホワイトカードの発行を受けた者であることを確認でき(I Have認証)、このことはネットショップにおいてカード番号を入力する場合についても同様である。消費使用IDがカードから遊離した状態で使用できるとするならば、カード所有を前提とする本人認証というセキュリティゲートが存在せず、安全な消費(本件明細書【0027】【0047】)も脅かされる。甲1発明では、インターネットバンキング口座へのログインによって本人認証がなされており(I Know認証)、「イーバンクカード」の発行を受けていないイーバンク銀行口座開設者であっても、銀行口座へのログインを行うことで本人認証がなされ、商品の購入が可能になる。(口頭審理陳述要領書(1)5?6頁)

(2)争点2(甲1の送金システム(メルマネ)は、本件特許発明の「使用限度額をホワイトカードに紐づけられた入金額に応じて引き上げることが可能」である「ホワイトカードに対する」「入金」システムに相当するか。)について
甲1送金システムは、イーバンクカードの存在を前提とすることなく、口座に対して送金する、イーバンクカードと無関係の送金サービスであり、イーバンクカードに対する送金システムであるとはいえない。(答弁書13頁)
本件特許発明の「使用限度額」を引き上げる「入金額」は「ホワイトカードに紐付けられ」いるところ、甲1発明のメルマネを使用するにあたって、送金者も受金者も、イーバンクカードを現に所有することを要しないのであり、送金にあたって入力される送金金額は、イーバンクカードに紐付けられた「入金額」であるとはいえない。(口頭審理陳述要領書(1)7頁)

(3)争点3(甲1の送金システムには、本件特許発明の「入金受付情報」に相当する「送金指示受付情報」が存在するか。)について
ア 乙1及び乙2は、甲1に明示的に開示されていないが、本件発明との対比において不可欠な技術内容を正確に理解するための間接証拠であり、甲1の認定や本件発明との対比においてこれを参酌することに問題はない。(口頭審理陳述要領書(2)6頁)

イ 本件発明の「入金受付情報」は、「ホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報」であり、当該「入金受付情報」は、実際に入金のための支払いがあった情報でなければならない(【0040】)。甲1送金システムで送金者が確認ボタンを押して送金の指示が確定的に行われ(送金指示受付情報が発出され)、イーバンク銀行のシステムが当該送金指示受付情報を取得した時点では、受取人の口座で実際に現金の入金(振込)が受け付けられたわけではなく、受金者がログインすることでようやく入金(振込)がなされるから、甲1発明の「送金指示受付情報」は、本件特許発明の「入金受付情報」に相当しない。(口頭審理陳述要領書(1)8?9頁)
乙1の記載によれば、甲1の送金システムでは、受取人が受信した通知メールのURLへアクセスしてログインする手続きをしなければ振込が実行されない。このことは甲1(58頁)の「受取人は送られたEメールからアクセスして自身の銀行口座に振り込み現金化します」との記載とも整合する。受取人が受信した通知メールのURLへアクセスし、ログインすることで振込が完了し、この時点でようやく、受取人の銀行口座に入金が受け付けられる。
送金の指示が確定的になされた時点で自動的に受取人口座に実際に入金のための支払いがあったわけでなく、振込実行時点で、入金を受け付けた旨の情報を認識し得るから、甲1発明の「送金指示受付情報」は本件発明の「入金受付情報」に相当しない。(答弁書7、14頁、口頭審理陳述要領書(2)7頁)
乙2の記載から明らかなように、メルマネでは、受取人のEメールアドレスと送金金額の入力後、受取人がイーバンク口座開設者の場合であれば、受取人が登録したEメールアドレスに対応する口座名が確認画面に表示され、送金者は、その確認画面で口座名を確認して、実行ボタンを押す。この時点で、口座番号も当然に一緒に取得されていると考えられる。ユーザが当該口座名を確認して送金指示の実行ボタンを押した以降は、取得した口座名(及び口座番号)を用いて勘定処理を行うのであり、Eメールアドレスと送金指示受付情報ないし送金者残高引下完了情報を関連付けて引上命令装置に向けて出力するものではない。甲1では、送金指示に関する実行ボタンを押す段階ですでに受取人は口座名(及び口座番号)で特定されおり、その段階の後にEメールアドレスと「送金指示受付情報」が関連付けて出力されたりEメールアドレスと紐付けられた口座番号が改めて取得されるような無意味なステップを経由することはない。(答弁書8?10、14?15頁、口頭審理陳述要領書7頁)
「送金指示受付情報」が送金者が受金者のEメールアドレスと送金金額を入力して「確認」ボタンを押したことを示す情報であると解釈しても、他の構成要件との連関性を正しく理解していれば、その論理が破綻することは明白である。すなわち、甲1発明には確認画面が存在する以上、この時点で、Eメールアドレスに紐付けられた口座番号は既に取得されていると考えられるから、振込を実行する構成が、再度Eメールアドレスに紐付けられた口座番号を取得すると解釈するのは不自然である。(口頭審理陳述要領書(2)8?9頁)

(4)争点4(甲1の送金システムには、本件特許発明の「ホワイトカードID管理装置」に相当する構成が存在するか。)について
甲1は、本件特許発明の「ホワイトカードID管理装置」に相当する構成を開示していない。(口頭審理陳述要領書(1)11?12頁)
甲1において、受取人のログインをトリガとして振込を実行する構成が本件特許発明の引上命令装置に対応付けられるとすると、イーバンク銀行のシステムは、送金画面で送金者が「確認」ボタンを押すことで受取人のEメールアドレスに紐づけられた口座名及び口座番号を取得しているにも拘わらず、受取人のログインによる振込実行時点で改めて受取人の口座名及び口座番号の取得を目的としてイーバンク銀行のシステムの内部で、当該構成から受取人のEメールアドレスを再度受信しようとすることなどあり得ない。甲1にそのような振込を実行する構成からEメールアドレスを受信するという記載は見当たらない。(口頭審理陳述要領書(1)12頁)
メルマネでは、確定的な送金指示による「送金指示受付情報」が送信される前に、受取人のEメールアドレスから、これに紐付けられた口座名が取得される(乙2)。イーバンク銀行のシステムは、送金者が確認ボタンを押下げし(甲1、58頁)、実行ボタンを押下する前(送金指示受付情報を取得する前)に、Eメールアドレスに紐付けられた口座名と口座番号を取得しているといえる。甲1には、Eメールアドレスに紐付けられた口座番号を取得した後に、改めて、Eメールアドレスを受信して、これに紐付けられた口座番号を取得するといった記載は存在しない。また、請求人のいう「システム内部」とは何を指すのか不明であって、対比を前提とする上で、イーバンク銀行のどの構成が、取得した講座番号をどの構成に送信するのかが明確でない。甲1には、「受取人のログインにより振込を実行する構成」に口座番号を送信するという記載は見当たらない。(口頭審理陳述要領書(1)13頁)

3 証拠方法
甲1 「ネットバンキング完璧利用法」の写し
表紙、39?48、57?58、62?73頁、裏表紙
甲1の2 同59頁
甲2 関連侵害事件の原告第7準備書面
甲3 関連侵害事件の原告第1準備書面
甲4 関連侵害事件の訴状
甲5 関連侵害事件の判決
甲6 関連侵害控訴事件の控訴答弁書
甲7 関連侵害控訴事件の判決

乙1 (株)インプレスのウェブページ(URL略)の写し
乙2 アイティメディア(株)のウェブページ(URL略)の写し
乙3 関連侵害控訴事件の控訴理由書


第5 無効理由についての当審の判断
1 甲号証及び乙号証の記載
(1)甲第1号証(甲第1号証の2を含む。以下同じ。)
ア「イーバンク銀行
インターネットショッピング(通販)やネットオークションで買い物を楽しむ人が増えていますが、代金の支払いなどで手数料が余分にかかっているケースも多分に見られます。また、クレジットカードを利用することでクレジット番号を盗まれ、本人の知らないところで利用されるケースも横行しています。
インターネットを利用して買い物をするのはとても便利で生活を豊かにしますが、「手数料をなんとかしたい」、「もっと安全に決済したい」と思っている人も多いのではないでしょうか。
そこでお勧めなのが、インターネット上で誰もがお金のやり取りを簡便に、しかも安全に行なえるようにと設立されたネット専業銀行のイーバンク銀行です。ネットバンキングの中でも、数百のネットショップ(通販会社)やネットオークションサイトと提携しているので振込み手数料がかかりませんし、口座番号を知らせる必要がないので安全確実に決済が行なえます。」(39頁1?13行)

イ「他のネットバンキングに先駆けて、「メルマネ」というサービスも魅力になっています。「メルマネ」とは、相手のEメールアドレスと名前が分かっていればメッセージを付けて簡単に送金ができるシステムです。送り先の人は、既存の銀行口座や郵便貯金口座で現金を受け取ることができます。」(39頁14?16行)

ウ「イーバンク銀行 トップページ
(図略)
イーバンク銀行のサイトヘは、インターネットの検索サイト(例えばYahoo!JAPAN、gooなど)で『イーバンク銀行』と入力し検索をするか、ブラウザ(IEなどのソフト)の『アドレス』欄に
http://www.ebank.co.jp/
と入力して「ENTER」を押してください。
●口座を開設するときは『口座開設申込』をクリックしてください。
●振込み、送金、残高照会などネットバンキングを行なう場合は必ず『ログイン』(スタートボタン)をクリックしてから始めます。
●ショッピングサイトに入るときは『shopping』をクリックしてください。」(40頁1?10行)

エ「サービスと手数料の概要
・・・(中略)・・・
メルマネ手数料 送金する人と受取人がイーバンク銀行の口座を持っている場合はどちらも無料になりますが、受取人が他行や郵便貯金口座で受け取る場合は、受取人負担で250円(銀行口座)または100円(郵便貯金口座)の手数料がかかります。」(40頁11?24行)

オ「口座開設3
(図略)
「口座開設申込完了」画面。本人確認書類送付方法にFAXを指定した場合は、運転免許証などをコピーした用紙にこの画面の赤色文字で掲載された「お客様登録番号」を必ず記入してから、画面に記載されたFAX番号に送信します。
イーバンクカードの申込みをしない場合は、このまま画面を閉じてください。
支店番号、口座番号、仮ログインパスワードが掲載されたカードは1週間程度で郵送されます。
注意ポイント クレジット機能付きのイーバンクカードも、同時に申込み可能です。希望する場合は、画面の下部にある「次へ」をクリックします。「カード発行:注意事項確認」画面になりますので、画面の指示に従って手続きを進めます。」(43頁1行?10行)

カ「口座開設4
(図略)
トップページの「ログイン」をクリックします。「イーバンク銀行へようこそ」の画面の空欄に、郵送されてきたカードの裏面に掲載されている支店番号、口座番号、仮ログインパスワードを入力し、「ログイン」をクリックしてください。」(44頁1?4行)

キ「メルマネ登録1
(図略)
イーバンク銀行では、相手先の名前とEメールアドレスだけで簡単に送金できるメール送金サービス『メルマネ』があります。このサービスを利用する場合は、口座開設時に手続きを必要としますので『口座開設約款同意』画面の『同意』をクリックした後、数分後に送られてくる『メールアドレスの仮登録』のEメールに掲載されている『登録』リンクのアドレスをクリックしてください。」(46頁4?9行)

ク「メルマネ登録2
(図略)
仮登録された名前とメールアドレス(口座開設に記入した本人の名前とEメールアドレス)の下段の空欄に先ほど設定した正式のログインパスワードを入力し、『承認する』をクリックしてください。」(47頁1?4行)

ケ「メルマネ登録3
(図略)
「メール送金サービス」の「メールアドレスの登録承認」画面が表示された時点で口座開設がすべて完了します。メール送金サービスを利用する場合はトップ画面からログインし「メルマネ」をクリックしてください。」(47頁5?8行)

コ「各種機能をチェック
残高照会
(図略)
「残高照会」画面。トップ画面から『ログイン』をクリックし、支店番号、口座番号、ログインパスワードを入力し『ログイン』をクリック。
画面上のサービスメニューの『残高照会』をクリックするとリアルタイムで残高が表記されます。」(48頁1?6行)

サ「メルマネで送金 1
(図略)
相手の名前とEメールアドレスだけで送金できるサービスです。ログイン後「メニュー」画面の『メルマネ』をクリックします。」(57頁5?7行)

シ「メルマネで送金 2
(図略)
『送金内容:入力』の画面が表示されたら、送金先のEメールアドレスと金額を打ち込みます。最大500文字のメッセージも同時に送付可能です。
受取人がイーバンク銀行の口座を持っていて、そこで受け取る場合の手数料は無料。それ以外で受け取る場合の手数料は受取人負担で250円(銀行口座)または100円(郵便貯金口座)。受取人は送られたEメールからアクセスして自身の銀行口座に振り込み現金化します。」(58頁1?7行)

ス「請求
(図表略)
請求相手がイーバンク銀行口座を開設している場合には、請求書を送付することができます。請求された側は、その請求内容を了解したときは、クリックするだけで送金されます。」(59頁(甲1の2)1?4行)

セ「買い物にチャレンジ
イーエスブックス 1
(図略)
イーバンク銀行は書籍、ファッション、インテリア、パソコン、フードなど多くのネットショッピングサイト、ネットオークションサイト、懸賞サイトと提携しています。なので、振込み・送金手数料をかけずにショッピンクが楽しめ、クレジットカードを利用しないのでカード番号を盗用される心配もありません。
では、実際に『イーエスブックス』を利用して書籍を購入してみましょう。
イーバンク銀行のトップページの『ショッピング』をクリックするとショッピング専用のトップページが表示されます。」(62頁1?9行)

ソ「イーエスブックス 10
(図略)
『ご注文確認』画面。注文内容、配送先、利用ネット銀行を確認して誤りがないときは『注文確定』をクリック。修正したい場合は『前の画面へ』をクリックします。」(68頁1?3行)

タ「イーエスブックス 11
(図略)
『イーバンク銀行での手続き』画面。画面の上段の『ネット銀行で決済する』をクリックするとイーバンク銀行のログイン画面になります。」(69頁1?3行)

チ「イーエスブックス 12
(図略)
口座開設の際に登録した、支店番号、口座番号、ログインパスワードを打ち込み『ログイン』をクリック。」(69頁4?6行)

ツ「イーエスブックス 13
(図略)
『支払内容:確認』画面。誤りがない場合は『実行』をクリック。」(70頁1?2行)

テ「イーエスブックス 14
(図略)
『支払内容:完了』画面。これで注文は完了です。『イーエスブックスお届け状況へ』をクリックすると、現在の配送状況が確認できます。」(70頁1?3行)

ト「携帯電話でのご利用について 1
(図略)
イーバンク銀行では、iモード(NTTドコモ)、EZweb(au)、J-スカイ(J-フォン)の3機種の携帯電話からも口座取引きなどが行なえます。」(72頁1?5行)

ナ「携帯電話でのご利用について 2
(図略)
『モバイルバンキング』画面の指示に従って携帯電話から入力操作をしてください。『ログイン・残高照会』、『ショッピング』、『支払う』、『出金』方法については、画面上部に表示されているそれぞれの項目をクリックしてください。詳しい手順と画面が表示されます。モバイルバンキングの実行は、入力操作に慣れるまで、本書のパソコンの手順画面を参照しながら行なうと便利です。」(73頁1?6行)

(2)乙第1号証
「イーバンク銀行株式会社は、電子メールを使った送金サービス「メルマネ」を開始した。今年7月から提供していた「メール送金」のサービス内容を拡充し、本格開始する形となる。

「メルマネ」は、イーバンク口座から同行および他行の口座宛てへの送金を行うサービスで、送る相手のメールアドレスと氏名が分かれば、口座番号を知らなくても送金することができる。具体的な手順は、まずイーバンクのサイトへログインし、専用フォームから送金したい相手のメールアドレス、氏名、金額を入力する。入力完了後、受け取る相手に通知メールが到着する。相手がイーバンクの口座を持っている場合は、通知メールのURLへアクセス、ログインすることで送金が完了する。口座を持っていない場合は、イーバンクの口座を開設するか、他行へ振り込むかを選べるという流れだ。イーバンク口座への送金の場合、受け取り側が手続きをした時点で振り込まれ、他行口座へは手続きを行った翌営業日に振り込まれる。メールアドレスの間違いなどによる送金ミスは、「入力した氏名が相手口座の氏名と一致しないと送金されないため、相手の氏名を正確に入力することで防げる」(イーバンク 松尾泰一社長)という。」

(3)乙第2号証
「友人に借りたお金は携帯メールで返済する--ネット専業銀行のイーバンク銀行は、そんなことが可能になるサービスをこのほどスタートさせた。

新サービスの名称は「メルマネ」。同社はこの7月、メールアドレスを使って送金できる「メール送金」サービスを開始したが、同サービスはこれを拡充させたものだ。主な拡張のポイントは2つあり、1つはイーバンク口座を開設していない相手にも送金できるようにしたこと。もう1つは携帯メールにも対応したことだ。これまでは受取人がイーバンク銀行に口座を開設している人に限られ、携帯電話も対象外だったが、これ汎用性がぐんと高まった。手数料は当面、受取人がイーバンク口座を開設していても、いなくても無料(他行口座への振込みは将来的には有料化する)。」

「送金方法も簡単で、送金する人はイーバンクのサイトで自分のアカウントにログイン後、「送金する」メニューを選択。送金内容の「入力」画面で受取人のメールアドレスと送金金額を、「確認」画面で受取人の名前と暗唱番号を入力するだけだ。受取人の口座番号などを入力する必要(知る必要も)はない。あとは「実行」ボタンを押せば、送金手続きは完了する。

送金が行われると、受取人にはその旨の通知メールが行く。この中に送金サービスのURLの記載があり、そこにアクセスして受け取りの手続きを行う。その際、受け取り方法は、1)既存のイーバンク銀行で受け取る、2)新規にイーバンク口座を開設して受け取る、3)他行の口座で受け取る、の3つから選択できる。

このうち、イーバンク口座で受け取る場合は、支店番号や口座番号、ログインパスワードを入力するだけで、すぐに受け取り可能。一方、他行口座の場合は、振込先の金融機関名、口座番号、電話番号などを入力する。振込みは当該金融機関の翌営業日に行われる。

1つ注意しなくてはならないのは、送金先の確認を受取人名で行っている点だ。送金作業が非常に簡単にできてしまうため、その分、誤送金の生じる可能性がある。これを防ぐ手段として、送金者の指定した「受取人名」と受取人の「口座名」が一致するかどうかを見ているのである。

これが一致しない場合、送金は実行されない。受取人がイーバンク口座開設者の場合、送金手続きの作業時に、受取人が登録したメールアドレスに対応する講座名が自動的に表示されるが、他行振込みの場合は、送金者は最低限、受取人のフルネームなどを正確に知っている必要はあるわけだ。また、存在しないメールアドレスを指定した場合も、送金は行われず、送金者に不達通知が送られる。」

2 当審の判断
(1)各争点について
ア 争点1(甲1の送金システム(メルマネ)における「イーバンクカード」は、本件特許発明の「ホワイトカード」に相当するか。)について

(ア)本件明細書には、次の記載がある。
「【0001】本発明は、商品購入などに際して決済のために使用されるカードに関して、その使用限度額を適宜変更可能とし、さらにその変更を安全に行うための技術に関する。」
「【0002】従来、ユーザは信販会社と契約し交付されるいわゆる「クレジットカード」を利用することで、現金を持たずに買い物をすることができる。このクレジットカードは、契約時に例えばユーザの支払能力などに応じて所定期間内で使用可能な金額( 使用限度額) が設定され、その使用限度額の中であれば、このクレジットカードを店頭で提示したり、ネットショップにてカード番号を入力したりすることで自由に買い物を行うことができるようになっている。」
これらの記載によれば、本件特許発明の「ホワイトカード」は、インターネットでの商品購入も含めた商品購入などに際して決済のために使用されるカード」である。
そして、店舗での決済にあたってカードの所持を要するとしても、インターネットでの商品購入のための決済にあたっては、使用する決済手段を示すためにクレジットカードの番号を入力する等によって、入力した番号のクレジットカードを所持することなく決済が可能であるから、インターネットでの商品購入のための決済のための「ホワイトカード」の使用にあたって「ホワイトカード」の所持は要件とされていない。
よって、本件特許発明の「ホワイトカード」の「使用」にあたってカードの所持を要するとはいえない。

(イ)これに対し、甲第1号証の記載(この節では、以下、「1(1)」の「ア」「イ」等を単に「ア」、「イ」と表記する。)によれば、甲第1号証には、「イーバンクカード」が「イーバンク銀行のキャッシュカード」として利用でき「郵便局、アイワイバンク銀行のATM」で利用可能なカードである旨(オの「口座開設 3」の図示省略した図における画面中の表示)、「イーバンクカードの申込みをしない場合」に画面を閉じる旨(オ)の記載がある。これらの記載によれば、イーバンクカードは、イーバンク銀行の口座のキャッシュカードとして利用できるカードであって、申込みに応じて口座開設者に交付される、つまり、口座開設者の任意により交付されるカードであることが記載されている。このことから、交付されたイーバンクカードは、その口座番号によって識別される特定の口座を示すキャッシュカードとして、口座番号によって識別されるカードとなるから、その場合の口座番号は、その口座そのもののみならず口座を示すイーバンクカードをも示すものとならざるを得ないものである。
さらに、上記した甲第1号証の記載においては、「書籍」の「ネットショッピングサイト」である「イーエスブックス」において、「書籍」の「購入」にあたって「ネット銀行」である「イーバンク銀行」の口座を用いた決済が可能であること(セ?テ)、その際、決済を行おうとする者における、支店番号、口座番号、ログインパスワードを打ち込んでのログインを含む所定の手続が行われること(チ)も示されている。この書籍購入の際の決済にあたって打ち込まれるイーバンク銀行の口座番号は、イーバンクカードの交付後にあっては、イーバンク銀行の口座のみならずこの口座番号を示すイーバンクカードをも識別し、これを示すものとならざるを得ないものである。

(ウ)してみると、甲第1号証には、書籍購入の際の決済にあたって、口座のみならずイーバンクカードをも示す番号を入力する旨が記載されているものである。
そして、(ア)で上記したとおり、本件特許発明におけるカードの「使用」というためには、カードを示す番号の入力等を要するといえるものの、カードの「所持」を要するとはいえず、カードを「所持」していないままでのカードの番号の入力もカードの「使用」となるのであるから、甲第1号証には、イーバンクカードの「使用」を行う旨が記載されており、甲第1号証の「イーバンクカード」は、書籍の購入に際して決済のために使用されるカードであるから、本件特許発明の「ホワイトカード」に相当するといえる。

(エ)被請求人の主張のうち、本件特許発明の「ホワイトカード」の「使用」にはカードの「所持」を要する旨の主張(「第4」の「2(1)ア」)は、上記(イ)に照らして、本件特許の明細書の記載に即したものでなく、採用することができない。
また、被請求人は、甲1発明におけるインターネットバンキング口座へのログインによる本人認証(I Know認証)は、店舗での認証(I Have認証)と異なる旨を主張する(「第4」の「2(1)イ」)。

しかし、一般に、店舗でのクレジットカードの使用に際して「I Know認証」のためのパスワードが要求されることがあり得、このことからしても、「使用」と認証方法とは関係がない。よって、カードの「使用」というために「I Know認証」ではなく「I Have認証」を用いることが必要であるとはいえないのであって、甲1発明が「I Know認証」を採用しているとしても、そのことは甲1発明における決済が「ホワイトカード」の「使用」に相当しないことの根拠にならない。
なお、請求人の主張のうち、侵害事件の主位的主張(「第4」の「1(1)ア」)は、無効理由に係る事実の主張でないから、本件審判の請求に係る主張として失当である。

イ 争点2(甲1の送金システム(メルマネ)は、本件特許発明の「使用限度額をホワイトカードに紐づけられた入金額に応じて引き上げることが可能」である「ホワイトカードに対する」「入金」システムに相当するか。)について

(ア)本件特許発明の「ホワイトカード」に対する「入金システム」においては、「ホワイトカード」の「使用限度額」を「入金額」に応じて引き上げるものであるところ、この「入金額」は、特許請求の範囲の文言上、「ホワイトカードに紐づけられた入金額」であると明示されているのであるから、使用限度額引上額を含む引上命令が含む消費使用IDが紐付けられているホワイトカードへの入金である。

(イ)
a これに対し、甲第1号証の記載(この節では、以下、「1(1)」の「ア」「イ」等を単に「ア」、「イ」と表記する。)によれば、甲第1号証には、「メルマネ」が「相手のEメールアドレスと名前が分かっていればメッセージを付けて簡単に送金ができるシステム」であり、「メール送金サービス」であること(イ、キ?ケ、サ)、送り先の人が「既存の銀行口座や郵便貯金口座」で現金を受け取ることができること(イ)、メール送金サービスを利用する場合、イーバンク銀行の口座開設時に口座開設に記入した本人の名前とEメールアドレス等の入力を含む手続を必要とすること(キ)が記載されているところ、争点1について上記したとおり、イーバンクカードの申込は、口座開設者の任意であるから、メール送金サービスの申込にあたって、イーバンクカードの申込が必須となっていないものである。
また、甲第1号証には、「メルマネで送金」するにあたっては、『送金内容:入力』の画面において、送金先のEメールアドレスと金額を打ち込むこと(シ)、イーバンク銀行の口座を持っている受取人がそのイーバンク銀行の口座で受け取る場合の手数料が無料であり、「それ以外で受け取る場合」のうち、銀行口座での受け取りにあたっては250円、郵便貯金口座での受け取りにあたっては100円の手数料が発生し、これを受取人が負担すること(シ)、受取人は送られたEメールからアクセスして自身の銀行口座に振り込み現金化すること(シ)が記載されている。さらに、シの「メルマネで送金 2」の画面を示す図(図示省略)には、画面上に「送金内容:入力 送金内容を入力してください。・・・※受取人が他行口座・郵便貯金口座での受け取りを選択された場合、受取人に振込手数料がかかります。(送金金額から振込手数料を差し引いた金額が受取人に振込まれます。)」との表示がなされた上で、「受取人のメールアドレス」「送金金額」「送金内容」「メッセージ」「送金人のメールアドレス」の各入力欄、「送金日」の日付、メッセージの種類についてのプルダウン入力、確認ボタン、リセットボタン等が表示されるとともに、「※ 受取人が他行口座での受け取りを希望し、正しく受け取れなかった場合は、組戻しとなることがあります。組戻しの場合、送金金額から組戻手数料、および振込手数料を差し引き、お客様の口座にご返金いたします。」等の注意書きが併せて表示される旨が示されている。
これらの記載と図中の表示によれば、受取人は、自身に送られたEメールからアクセスして自身の銀行口座に振り込み現金化を行うのであって、送金のための受取人口座への振込みにあたって受取人によるEメールからのアクセスという手続が必須となっていることが明らかである。
この点、乙第1号証、乙第2号証の記載でも、受取人がイーバンク口座の開設者である場合も「通知メール」の「URL」からアクセス、ログイン等の手続を経た上で送金が完了する旨が記載されているから、受取人における「通知メール」の「URL」からの手続の詳細は不明であるものの、少なくともアクセス、ログイン等の手続が必須となっていることが示されているものである。
b さらに、甲第1号証には、シの「メルマネで送金 2」の画面上に「※受取人が他行口座・郵便貯金口座での受け取りを選択された場合・・」「※ 受取人が他行口座での受け取りを希望し、正しく受け取れなかった場合・・」と表示される旨が図示されており、これらの図示によれば、送金画面上において、受取人において「他行口座・郵便貯金口座での受け取り」を「希望」し「選択」できる旨が表示されている。このことに照らせば、受取人において「他行口座・郵便貯金口座での受け取り」が「選択」できることを前提として送金がなされること、いうなれば、送金にあたってイーバンク銀行の口座での受け取りを強制することはできないこと、が示されていることが明らかである。
この点、乙第2号証において、受取人に通知されたメールの送金サービスのURLにアクセスする際、受け取り方法を「1)既存のイーバンク銀行で受け取る、2)新規にイーバンク口座を開設して受け取る、3)他行の口座で受け取る、の3つ」から「選択できる」と記載されており、甲第1号証の「メルマネで送金 2」の画面の図示と整合している。
なお、乙第1号証の「相手がイーバンクの口座を持っている場合は、通知メールのURLへアクセス、ログインすることで送金が完了する。口座を持っていない場合は、イーバンクの口座を開設するか、他行へ振り込みかを選べるという流れだ」との記載は、この甲第1号証の図示及び乙第2号証の記載と整合しないものの、このことは、甲第1号証における送金の際の画面の表示(「メルマネで送金 2」の画面の表示)に誤りがあることを示すものとまではいえない。
(ウ)以上を踏まえれば、甲1システム(メルマネ)について、次のことがいえる。まず、送金者においては、イーバンク銀行の口座開設時にメルマネのメール送金サービスの利用の登録が必須であるもの、イーバンクカードの作成は必須とされていない。また、受金者においては、受取りのためにイーバンク銀行の口座開設やメール送金サービスの登録が必須とされておらず、送金された金額の受取りにあたって、イーバンク銀行の口座に限らず、それ以外の銀行の口座や郵便貯金口座を用いて送金を受け取って現金化することを選択できる。そして、受金者がイーバンクカードを有する口座開設者であり、さらにはメール送金サービスの利用登録をしている場合であっても、受金者がイーバンク銀行の口座開設者でない場合と同様に、送金者が送金先のEメールアドレスと金額を打ち込んで送金した時点では、受金者がイーバンク口座以外の銀行の口座や郵便貯金口座を用いて受取りを行う可能性があるから、送金者において、受取人のイーバンクカードの口座を指定した送金はできない。
してみると、甲1システム(メルマネ)における送金にあたって入力される送金金額は、受金者のイーバンクカードの存在を前提としておらず、受金者のイーバンクカードの口座残高を増加させる金額として入力されるものでないから、本件特許発明の「使用限度額引上額を含む引上命令が含む消費使用IDが紐付けられているホワイトカード」に対応する受金者のイーバンクカード」に「紐づけられ」た「入金額」であるとはいえない。よって、甲1システム(メルマネ)は「使用限度額をホワイトカードに紐づけられた入金額に応じて引き上げることが可能」である「ホワイトカードに対する」「入金」システムに相当しない。

(エ)請求人の主張は、いずれも甲第1号証の記載に即したものでなく、採用することができない。
a 請求人は、甲第1号証における、送金者は、受取人のイーバンクカードに紐付けられたEメールアドレスと送金金額を入力し、これにより、イーバンクカードに紐付けられたイーバンクの口座残高(使用限度額)が引き揚げられる旨の記載における、送金金額は、イーバンクカードに「紐付けられた」入金額であり、当該送金は「ホワイトカードに対する」入金に相当する、と主張している。(「第4」の「2(2)ア」)
しかし、(イ)に示したとおり、メルマネを使用して送金する際、受金者がイーバンクカードを所有することを要しないから、メルマネにおける「送金」について、「受金者」のイーバンクカードに「紐づけられた」ものと認定することはできない。

b 請求人は、本件審判では、受取人がイーバンクカードを持っている場合における甲1記載のシステムを引用発明としており、受取人がイーバンクカードを持っていない場合の構成は、引用発明の認定に影響しないとも主張している。(「第4」の「2(2)イ」)
しかし、(イ)に示したとおり、甲第1号証には、受金者がイーバンク銀行の口座を開設済みであるか否か、イーバンクカードが交付されているか否か、又は送金者としてメール送金サービスの利用の登録をしているか否かに応じて受取りにあたっての手続が異なることは記載されていない。この点、乙第1号証は、受金者がイーバンク銀行の口座を開設済みであるか否かに応じて受け取りの手続が異なる旨を記載しているが、この記載は、甲第1号証及び乙第2号証の記載と矛盾する内容であって、甲第1号証に記載された甲1システム(メルマネ)の認定にあたって、採用することができない。
よって、甲1システム(メルマネ)において、受取人がイーバンクカードを所有するか所有しないかによって送金の手続は異ならず、受取人がイーバンクカードを所有する場合であっても、受取人がイーバンクカードを所有しない場合と同様に、イーバンク銀行の口座以外の口座を用いて受け取ることができるものと認められる。
このことを踏まえれば、受取人がイーバンクカードを持っていない場合を除いた、受取人がイーバンクカードを持っている場合のみを捉えたシステムが甲第1号証に記載されていると認定することはできないし、甲第1号証における受取人がイーバンクカードを持っている場合の送金が受取人のイーバンクカードに「紐づけられた」ものに相当するともいえない。

ウ 争点3(甲1の送金システムには、本件特許発明の「入金受付情報」に相当する「送金指示受付情報」が存在するか。)について
(ア)本件特許発明の「入金受付情報」は、「ホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報」であり、「ホワイトカード使用限度額引上指示装置(の出力部)」において「受金ID」と関連付けられて出力され、これを「使用限度額引上額」を含む「引上命令」を送信する「引上命令指示装置(の受信部)」において受信するものである。

(イ)これに対し、甲第1号証には、イ(イ)において上記したとおりの記載があり、特に「受取人は送られたEメールからアクセスして自身の銀行口座に振り込み現金化します」との記載(1(1)シ)、「メルマネで送金 2」の画面における「※受取人が他行口座・郵便貯金口座での受け取りを選択された場合、受取人に振込手数料がかかります。(送金金額から振込手数料を差し引いた金額が受取人に振込まれます。)」との表示や「※ 受取人が他行口座での受け取りを希望し、正しく受け取れなかった場合は、組戻しとなることがあります。組戻しの場合、送金金額から組戻手数料、および振込手数料を差し引き、お客様の口座にご返金いたします。」等の注意書きの表示(1(1)シの図(図示省略))に照らせば、甲1システムにおいては、「確認」ボタンの押し下げによって自動的に受取人口座に振り込みがなされるのではなく、受け取りに用いる口座の選択を含む受取人における「Eメールアドレス」からの「アクセス」という手続を経た上で受取人の口座への振り込みがなされることが明らかである。
以上を踏まえれば、甲1システムにおける「確認」ボタンの押し下げに伴って「送金指示」が「受付」られた旨を示す「送金指示受付情報」が生ずるということはできないし、甲1システムにおいて、本件特許発明の「入金受付情報」に相当する情報が存在するということもできない。

(ウ)請求人の主張は、以下のとおり、いずれも採用することができない。
a 請求人は、甲1記載発明の認定にあたって乙第1号証及び乙第2号証(いずれも成立について争いはない)を参酌することは許されないと主張している。(「第4」の「1(3)ア」)
しかし、甲第1号証は、そのタイトルや記載内容からみて、甲1システム(メルマネ)を含む「ネットバンキング」の「利用法」を説明した文献であって、いわば、甲1システム(メルマネ)の公然実施を前提としてこれを記載した文献であるから、甲第1号証に記載された甲1システム(メルマネ)をより正確に把握するために公然実施された甲1システム(メルマネ)を記載した他の文献を参酌することは、当然に許容される。そして、乙第1号証、乙第2号証は、これらのタイトル、体裁等に照らせば、それぞれ、インターネットで技術記事を配信する(株)インプレス及びアイティメディア(株)によるイーバンク銀行株式会社の社長等の記者会見の内容等を報道する記事の写しであって、公然実施された甲1システム(メルマネ)に関する内容を記載した文献であることが明らかである。よって、甲1システム(メルマネ)の認定にあたって、乙第1号証及び乙第2号証を参酌することは許容される。
なお、請求人は、乙第1号証と乙第2号証の間の不整合があるとも主張しているが、このことも、甲1記載発明の認定にあたって参酌できない理由にならない。

b 請求人は、甲1システムの「確認」ボタンの押し下げに伴う「送金指示受付情報」が本件特許発明の「入金受付情報」に相当するものであると主張し、さらに、「メルマネ」の技術思想は本件明細書段落【0009】に示された技術思想と同一であって、送金者と受取人において最終確認手段を設けたことで技術思想が異なることにならず、受取人側の手続は、甲1システムの「送金指示受付情報」が本件特許発明の「入金受付情報」に相当するかどうかと関係がない、とも主張している。(「第4」の「1(3)イ(ア)」)
しかし、(イ)において上記したとおり、甲1システムにおいては、「確認」ボタンの押し下げによって自動的に受取人口座に振り込みがなされるのではなく、受け取りに用いる口座の選択を含む受取人における「Eメールアドレス」からの「アクセス」という手続を経た上で受取人の口座への振り込みがなされるのであるから、確認ボタン押下げによって口座間での金銭移動を行うための一連の処理が行われるものではないし、甲1システム(メルマネ)は、単に「受取人のEメールアドレス」を用いることで受取人の「口座番号」を知らなくても「安全」に送金できるという技術思想を示すものでなく、このような「受取人」の「Eメールアドレス」を用いた「送金」を「受取人」における「Eメールアドレス」からの「アクセス」や受取人による口座の選択を含む手続によって実現するという技術思想を示すものである。
この点、請求人は、甲1に接した当業者は、確認ボタンの押し下げにより受取人の口座に送金額が振り込まれ、受取人がイーバンク銀行の口座を持っている場合、特段の手続を経ることなく、同口座にて送金額を受け取ることができるシステム構成(技術思想)が採用されていると理解するとも主張している(「第4」の「1(3)イ(ウ)」)。しかし、これらの主張は、イ(エ)bにおいて上記したとおり、甲1の記載に基づくものでなく、失当である。
さらに、請求人は、甲1の58頁における「受取人は送られたEメールからアクセスして自身の銀行口座に振り込み現金化します」との記載(1(1)シ)は、他行の口座での受け取りの場合についての記載であってイーバンク銀行の口座による受け取りの場合ではないとも主張している(「第4」の「1(3)イ(エ)」)。しかし、文理上、「自身の銀行口座」に自身のイーバンク銀行の口座が含まれないと解すべき理由はないし、甲1号証においても、イーバンク銀行の口座以外の口座については「他行」乃至「郵便貯金」の「口座」等と表現されているから、「自身の銀行口座」がイーバンク銀行の口座を含まないと認定することはできない。イ(ウ)において上記したとおり、受金者がイーバンクカードを有する口座開設者である場合であっても、送金者は受取人のイーバンクカードの口座を指定した送金はできず、受金者がイーバンク銀行の口座で受金するにあたっても「Eメールからアクセス」する手続は必要となるのであり、甲1の58頁における当該記載は、このことを示しているものである。
以上を踏まえれば、甲1システム(メルマネ)において、受取人における「Eメールアドレス」からの「アクセス」という手続は、課題解決手段として必須のものであって、これを除いた技術思想が記載されていると認定することはできないし、本件特許発明と甲1システム(メルマネ)とが技術思想において同一であるともいえない。

エ 争点4(甲1の送金システムには、本件特許発明の「ホワイトカードID管理装置」に相当する構成が存在するか。)について
(ア)甲第1号証は、イーバンクカードやメルマネに係る操作方法を示す文献であって、送金に係る口座番号とメールアドレスをどのような構成を用いてどのように管理しているかを示す記載は見当たらず、本件特許発明の「ホワイトカードID管理装置」に相当する構成を記載していない。

(イ)請求人は、甲1送金システムが、○1当該Eメールアドレスを送信する構成と、○2当該Eメールアドレスを○1から受信する構成と、○3受信したEメールアドレスに紐付けられている口座番号を紐付けテーブルから取得して送信する構成と、○4口座番号を○3から受信する構成を備えていることは明らかである等と主張するが、甲第1号証には、送金に係るEメールアドレスと口座番号とをどのような構成を用いてどのように管理しているかを示す記載は見当たらず、受取人口座の残高を更新する際、残高を更新する主体とこれと異なる管理主体との間で「送信」や「受信」がなされていることが明らかであるということはできず、甲第1号証の記載から上記○1?○4の構成の存在を認定することはできない。
また、請求人は、本件特許発明の各「装置」はハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの両方として実現され得る「機能ブロック」にすぎず、甲1送金システムが全体として各構成要件の定める機能を備えていることが甲1に開示されていれば、甲1送金システムは本件特許発明と同一であるとも主張している。
しかし、本件特許発明の各「装置」がそれぞれ他の「装置」に対して果たす機能について分担、とりわけ、「引き下げ装置」と「ホワイトカードID管理装置」との機能分担、については、特許請求の範囲に明確に示されているから、これらの機能分担に対応する対比を行うことなく本件特許発明と甲1送金システムとが同一であるとすることはできない。

(2)甲1発明の認定
ア 甲第1号証の記載からみて、甲第1号証には、下記のシステムに係る発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。(a’、b’、c’は、それぞれ、本件特許発明のA、B1-1?B2、C1-1?c2に対応するものとして当審において付与した。)

a’ イーバンクの口座、他行口座又は郵便貯金口座の残高を、メール送金サービスの申込を行ったイーバンク口座の口座開設者である送金者からの送金額に応じて引き上げるシステムであって、
ここで、イーバンク口座は、その口座開設時に、イーバンクカードの交付の申込及びEメールアドレスの登録が可能であり、また、その口座番号を用いてインターネットショッピングの際の決済が可能なものであり、
b’ 送金者により入力される受取人のEメールアドレス及び送金金額を取得し、さらに確認ボタンの押下操作がなされたことを示す情報(以下、「確認操作信号」という。)を取得し、受取人のEメールアドレス、送金金額、確認操作信号を出力し、
c’ 出力された、送金金額、受取人のEメールアドレス及び確認操作情報を受信し、
受取人は送られたEメールアドレスからアクセスして自身の銀行口座に振り込み現金化することが可能であり、その際、受取人において、イーバンク口座、他行口座又は郵便貯金口座のいずれを振込先とするかを選択でき、
イーバンク口座が選択された場合には、受取人の名前とEメールアドレスに対応する口座番号のイーバンク口座に手数料無料で送金金額の振込がなされ、
他行口座又は郵便貯金口座が選択された場合には、指定された他行口座又は郵便貯金口座に送金金額から所定の手数料を差し引いた金額の振込がなされる、
システム

(3) 本件特許発明と甲1発明との対比
ア 本件特許発明のAについて
(ア)甲1発明の、イーバンクカードの交付がなされたイーバンク口座は、本件特許発明の「ホワイトカード」に相当する。また、甲1発明のイーバンク口座の残高は、決済のためにホワイトカードを使用するにあたっての使用限度額を示すものでもあるから、本件特許発明の「使用限度額」に相当する。
そして、(1)アで示したことに照らせば、その口座番号は、本件特許発明の「消費使用ID」に相当する。また、登録された「Eメールアドレス」は、本件特許発明の「受金ID」に相当するといえる。
(イ)本件特許発明のAと甲1発明のa’とは、使用限度額を入金額に応じて引き上げることが可能で、受金にのみ利用可能な受金IDと、消費使用に利用可能な消費使用IDとの二種類のIDがあらかじめ紐付けられているホワイトカードに対する入金システムである点で共通している。
(ウ)(1)イに示したことに照らせば、本件特許発明の「入金」は、「ホワイトカードに紐づけられた」ものであるのに対し、甲1発明の「入金」は、受取人において、イーバンク口座、他行口座又は郵便貯金口座のいずれを振込先とするかを選択できるものであり、イーバンクカードの交付がなされたイーバンク口座に「紐づけられた」ものではない点において、相違している。(相違点1)

イ 本件特許発明のB1-1?B2、C1-1?C2について
(ア)本件特許発明のB1-1?B2と甲1発明のb’とは、ホワイトカードに対する入金に際して、入金すべきホワイトカードの受金IDを取得する受金ID取得部と、入金情報を取得する入金情報取得部と、取得した受金IDと入金情報を関連付けて出力する出力部とを有する、使用限度額引上指示装置の点で、共通している。
また、本件特許発明のC1-1?C2と甲1発明のc’とは、受金IDと関連付けられた入金情報を使用限度額引上装置から受信する受信部と、受信した入金情報に関連付けられたホワイトカード受金IDと紐付けられている消費使用IDと関連付けた使用限度額引上額を含む引上げ命令を送信する引上命令送信部とを有する引上命令送信部とを有する引上命令装置の点で、共通している。
(イ)(1)ウに示したことに照らせば、本件特許発明の入金情報は「そのホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報である入金受付情報」であるのに対し、甲1発明の入金情報は、送金者により入力される受取人のEメールアドレス及び送金金額を取得し、さらに確認ボタンの押下操作がなされたことを示す情報であるもののイーバンク口座以外の振込先が選択可能であるから、「ホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金」を受け付けた旨の情報であるといえない点で、相違している。(相違点2)
さらに、(1)エに示したことに照らせば、本件特許発明は「受信した入金受付情報に関連付けられたホワイトカード受金IDと紐付けられている消費使用IDをホワイトカードID管理装置から取得する消費使用ID取得部」(C1-2)を備えるのに対し、甲1発明はこれを備えない点でも、相違している。(相違点3)

ウ 本件特許発明のD1-1?D2について
(1)エにおいて争点4について示したことに照らせば、甲1発明には、本件特許発明のD1-1?D2に対応する構成はないから、これらは全て相違点となる。(相違点4)

エ よって、本件特許発明と甲1発明とは、上記相違点1?相違点4において、相違しているから、両者は同一ではない。

3 小括
してみると、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明でなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
よって、請求人が主張する同法第123条第1項第2号の無効理由によって本件特許を無効とすることはできない。

第6 むすび
以上のとおり、請求人が主張する無効理由によって本件特許を無効とすることはできない。
よって結論のとおり審決する。
審判に係る費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
 
審理終結日 2020-10-22 
結審通知日 2020-10-26 
審決日 2020-11-12 
出願番号 特願2009-215054(P2009-215054)
審決分類 P 1 123・ 113- Y (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小島 哲次  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 佐藤 聡史
相崎 裕恒
登録日 2015-07-10 
登録番号 特許第5775663号(P5775663)
発明の名称 ホワイトカード使用限度額引上げシステム、およびその動作方法  
代理人 服部 誠  
代理人 ▲高▼▲崎▼ 仁  
代理人 塩谷 英明  
代理人 小林 浩  
代理人 大西 ひとみ  
代理人 相田 義明  
代理人 岩間 智女  
代理人 中村 佳正  
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