ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25D 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 F25D |
---|---|
管理番号 | 1369829 |
審判番号 | 不服2020-2829 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-03-02 |
確定日 | 2021-01-07 |
事件の表示 | 特願2018-214589「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月14日出願公開、特開2019- 23563〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年7月23日に出願された特願2014-149737号の一部を、平成30年11月15日に新たな特許出願としたものであって、令和1年8月20日付けで拒絶の理由が通知され、令和1年10月21日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和1年11月28日付け(発送日:令和1年12月3日)で拒絶査定がなされ、それに対して、令和2年3月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和2年3月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年3月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 (1)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和1年10月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 前面開口部を有する貯蔵室と、 前記前面開口部の左右端にヒンジ部により回動可能に支持され、前記前面開口部を開閉する観音開き式に構成された第1及び第2の扉と、 前記第1の扉の内側に設けられたカメラと、 前記第2の扉の内側に設けられたドアポケットと、 前記第1の扉の内面と前記カメラの光軸とのなす傾斜角度を調整可能であって、前記ドアポケットを撮影可能な傾斜角度で前記カメラを前記第1の扉に固定可能な取付機構と、 を備える冷蔵庫。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 前面開口部を有する貯蔵室と、 前記前面開口部の左右端にヒンジ部により回動可能に支持され、前記前面開口部を開閉する観音開き式に構成された第1及び第2の扉と、 前記第1の扉の内側に設けられたカメラと、 前記第2の扉の内側に設けられたドアポケットと、 前記第1の扉の内面と前記カメラの光軸とのなす傾斜角度を調整可能であって、前記ドアポケットを撮影可能な傾斜角度で前記カメラを前記第1の扉に固定可能な取付機構と、 を備え、 前記第2の扉の内側にはカメラが設けられていない、 冷蔵庫。」 2 補正の適否について 本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第2の扉」に関して、「前記第2の扉の内側にはカメラが設けられていない」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 3 独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する(下線は当審にて付した。以下同様。)。 (1)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の出願日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2013-140508号(特開2015-14401号公報)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1-a)「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 このような特許文献1に記載の技術は確かに冷蔵庫の在庫管理においては人手を省略するといった効果は期待できるものの以下に述べるような課題を有している。 【0006】 例えば、外出した際に冷蔵庫に収納すべき食品を購入しようとする場合、購入すべき食品を失念したりする場合があり、特許文献1に記載の技術では冷蔵庫の庫内の状況を確認できず不便であるという課題を有している。 【0007】 更に、住居に複数の住人が住んでいる場合は、在宅の住人が冷蔵庫の貯蔵室から夫々必要に応じて食品を取り出したり、収納したりしている。このため、外出先で必要とする食品を購入しようと考えていた住人は、この住人が留守中にどのような食品が取り出され、どのような食品が収納されたかを知ることができないものであった。したがって、外出している住人は不必要な食品を購入したり、逆に必要な食品を購入できないという恐れがあった。 【0008】 本発明の目的は、冷蔵庫から離れた位置である外出先や遠隔の事務所においても貯蔵室の内部に収納されている食品を正確に確認することができる冷蔵庫を提供することにある。」 (1-b)「【0013】 図1において、冷蔵庫は、箱状の冷蔵庫本体10と冷蔵庫本体10の前面開口部に開閉可能に取り付けられる複数の開閉扉を備えている。冷蔵庫本体10は、鋼板製の外箱と樹脂製の内箱と、外箱と内箱の間に充填されるウレタン発泡断熱材及び真空断熱材とを備えて構成される。 【0014】 冷蔵庫本体10には、上から冷蔵室12、冷凍室14、16、野菜収納室18の順に複数の貯蔵室が設けられている。換言すれば、最上段に冷蔵室12が形成され、最下段に野菜収納室18が形成され、この冷蔵室2と野菜収納室5との間には、これらの両室と断熱的に仕切られた冷凍室14、16が配設されている。冷蔵室12及び野菜収納室18は冷蔵温度帯の貯蔵室(例えば、5℃程度)である。冷凍室14、16は、0℃以下の冷凍温度帯(例えば、約-20℃?-18℃の温度帯)の貯蔵室である。これらの貯蔵室は図示しない仕切壁により区画されている。 【0015】 そして、冷蔵庫本体10の前面には、これらの貯蔵室の前面開口部を開閉する開閉扉が設けられている。 【0016】 まず、冷蔵室扉12a、12bは冷蔵室12の前面開口部を開閉する開閉扉であり、ヒンジによって片持ちされた観音開き方式の開閉扉である。次に冷凍室扉14aは冷凍室14の前面開口部を開閉する開閉扉であり、冷凍室扉14bは冷凍室14に形成されている製氷室の前面開口部を開閉する開閉扉である。更に、冷凍室扉16aは冷凍室16の前面開口部を開閉する開閉扉である。最後に、野菜収納室扉18aは野菜収納室5の前面開口部を開閉する開閉扉である。冷凍室扉14a、14b、冷凍室扉16a、野菜収納室扉18aは引き出し式の扉として構成され、引き出し扉とともに貯蔵室内の貯蔵容器が引き出されるようになっている。」 (1-c)「【0023】 そして、図2にあるように冷蔵室12は仕切棚で仕切られているので、各仕切棚の間の貯蔵空間に食品が貯蔵される。このため各貯蔵空間の側面壁に第1の撮像装置30が設けられている。また、各貯蔵空間に対応した位置の冷蔵室扉12a、12bの内側には第2の撮像装置32が設けられている。この例では各貯蔵空間に対応して第1の撮像装置30と第2の撮像装置32を設けているが、各撮像装置30、32に広い範囲を撮影できる広角撮影機能を備えた撮像装置を用いれば、第1の撮像装置30と第2の撮像装置32はそれぞれ1個とすることができる。尚、以下の説明では最下段の仕切棚に設けた第1の撮像装置30(黒丸で表示)と第2の撮像装置32(黒丸で表示)について説明する。」 (1-d)「【0028】 図3には第2の撮像装置32の撮像形態を示しているが、第2の撮像装置32は冷蔵室扉12aが締められる直前に前面開口部側を撮影するようにその位置が固定されている。冷蔵室扉12aは回転して冷蔵室12の前面開口部の開口面を開閉するものであるため、冷蔵室扉12aの回転によって撮影領域が移動するようになる。ここで、本実施例では画像蓄積装置20の画像制御装置24は冷蔵室扉12aの閉じ方向の動きを開閉方向検出センサの信号から検出すると、所定の撮影タイミング、例えば、所定の単位時間、或いは所定の単位角度で複数回に亘り撮影するように第2の撮像装置32を制御する。尚、最も冷蔵室12の前面開口部の開口面を明瞭に撮影するために、第2の撮像装置32は冷蔵室扉12aが締められる直前の前面開口部側を撮影するように画像制御装置24によって制御されている。このように、冷蔵室扉12a、12bを閉じる時に画像を撮影するのは、冷蔵室扉12a、12bを閉じることは食品の出し入れや収納が終了したことを意味するからである。よって、この時に画像を撮影すれば正確な食品の収納状況を把握することが可能となる。 【0029】 また、ここで、第2の撮像装置32は図3にあるように、冷蔵室扉12a、12bが開かれた状態においては冷蔵室扉12aの開放面側(紙面で左側)を撮影できるので、冷蔵庫10の食品を出し入れ、或いは収納している住人を映し出すことができ、この住人を撮影した画像情報も活用することができる。そして、住人を撮影した後に冷蔵室扉12a、12bは閉じられていくが、閉じるにしたがって第2の撮像装置32は冷蔵室12の前面開口部と対向するようになって、冷蔵室12内の食品の正確な画像を撮影することが可能となる。」 (1-e)「 (破線及びAは当審にて付与したものである。) 」 (1-f)図3には、冷蔵庫扉12bの内側に略長方形状の突出部分が設けられていることが示されている。 また、段落【0029】には「第2の撮像装置32は図3にあるように、冷蔵室扉12a、12bが開かれた状態においては冷蔵室扉12aの開放面側(紙面で左側)を撮影できる」と記載されているから、「冷蔵庫扉12aの開放面側」とは、概略Aで示される破線の箇所を意味するといえる。 上記(1-a)?(1-f)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「先願明細書等に記載された発明」という。)。 「箱状の冷蔵庫本体10と冷蔵庫本体10の前面開口部に開閉可能に取り付けられる複数の開閉扉を備え、 冷蔵庫本体10には、上から冷蔵室12、冷凍室14、16、野菜収納室18の順に複数の貯蔵室が設けられ、 冷蔵室扉12a、12bは冷蔵室12の前面開口部を開閉する開閉扉であり、ヒンジによって片持ちされた観音開き方式の開閉扉であり、 冷蔵室12の各貯蔵空間の側面壁に第1の撮像装置30が設けられ、各貯蔵空間に対応した位置の冷蔵室扉12a、12bの内側には第2の撮像装置32が設けられ、 冷蔵庫扉12bの内側に略長方形状の突出部分が設けられ、 第2の撮像装置32は冷蔵室扉12aが締められる直前に前面開口部側を撮影するようにその位置が固定され、冷蔵室扉12a、12bが開かれた状態においては冷蔵室扉12aの開放面側を撮影できるものであり、 各撮像装置30、32に広い範囲を撮影できる広角撮影機能を備えた撮像装置を用いれば、第1の撮像装置30と第2の撮像装置32はそれぞれ1個とすることができる、 冷蔵庫。」 (2)対比 本願補正発明と先願明細書等に記載された発明とを対比する(以下「前者」と「後者」ということがある。)。 ア 後者は、「冷蔵庫本体10には、上から冷蔵室12、冷凍室14、16、野菜収納室18の順に複数の貯蔵室が設けられ」、「箱状の冷蔵庫本体10と冷蔵庫本体10の前面開口部に開閉可能に取り付けられる複数の開閉扉を備え」ているから、後者の冷蔵庫は、前面開口部を有する貯蔵室を備えていることは明らかである。 イ 後者の「冷蔵室扉12a」、「冷蔵庫扉12b」は、それぞれ、前者の「第1の扉」、「第2の扉」に相当する。また、後者の「ヒンジによって方持ちされた」態様は、前者の「ヒンジ部により回動可能に支持され」た態様に相当することは明らかである。 よって、後者の「冷蔵室扉12a、12bは冷蔵室12の前面開口部を開閉する開閉扉であり、ヒンジによって片持ちされた観音開き方式の開閉扉」は、前者の「前面開口部の左右端にヒンジ部により回動可能に支持され、前面開口部を開閉する観音開き式に構成された第1及び第2の扉」に相当する。 ウ 後者の「冷蔵室扉12a」の内側に設けられた「第2の撮像装置32」は、前者の「第1の扉の内側に設けられたカメラ」に相当する。 エ 冷蔵室の扉の内側にドアポケットを設けることは、冷蔵庫における通常の態様であるから、後者の「略長方形状の突出部分」は、その形状からみてドアポケットであるといえる。 よって、後者の「冷蔵庫扉12bの内側に」設けられた「略長方形状の突出部分」は、前者の「第2の扉の内側に設けられたドアポケット」に相当する。 オ 後者において、「冷蔵室扉12a、12bが開かれた状態」における「冷蔵室扉12aの開口部側」(図3のAで示される破線)は、第2の撮像装置32の撮影方向から見ると、その先に「略長方形状の突出部分」(ドアポケット)が配置されており、その位置関係から、第2の撮像装置32は、「略長方形状の突出部分」(ドアポケット)も撮像可能であるといえる。 そして、後者は、「第2の撮像装置32は冷蔵室扉12aが締められる直前に前面開口部側を撮影するようにその位置が固定され」ているから、第2の撮像装置32は、固定するための取付機構を備えているといえる。 よって、後者の「第2の撮像装置32は冷蔵室扉12aが締められる直前に前面開口部側を撮影するようにその位置が固定され、冷蔵室扉12a、12bが開かれた状態においては冷蔵室扉12aの開放面側を撮影できるものであ」る点と、前者の「第1の扉の内面とカメラの光軸とのなす傾斜角度を調整可能であって、ドアポケットを撮影可能な傾斜角度で前記カメラを前記第1の扉に固定可能な取付機構」を備える点とは「ドアポケットを撮影可能な傾斜角度で前記カメラを前記第1の扉に固定可能な取付機構」を備える点で共通する。 カ 後者は、「冷蔵室12の各貯蔵空間に対応した位置の冷蔵室扉12a、12bの内側には第2の撮像装置32が設けられ」るものを前提とするが、「各撮像装置30、32に広い範囲を撮影できる広角撮影機能を備えた撮像装置を用いれば、第1の撮像装置30と第2の撮像装置32はそれぞれ1個とすることができる」から、広角撮影機能を備えた撮像装置の場合には、冷蔵庫扉12a、又は冷蔵庫扉12bのどちらか一方の冷蔵庫扉の内側に撮像装置を設け、他の冷蔵庫扉の内側には撮像装置を設けない点が記載されている。 よって、後者の「各撮像装置30、32に広い範囲を撮影できる広角撮影機能を備えた撮像装置を用いれば、第1の撮像装置30と第2の撮像装置32はそれぞれ1個とすることができる」点は、前者の「第2の扉の内側にはカメラが設けられていない」点に相当する。 したがって、本願補正発明と先願明細書等に記載された発明とは、 「前面開口部を有する貯蔵室と、 前記前面開口部の左右端にヒンジ部により回動可能に支持され、前記前面開口部を開閉する観音開き式に構成された第1及び第2の扉と、 前記第1の扉の内側に設けられたカメラと、 前記第2の扉の内側に設けられたドアポケットと、 前記ドアポケットを撮影可能な傾斜角度で前記カメラを前記第1の扉に固定可能な取付機構と、 を備え、 前記第2の扉の内側にはカメラが設けられていない、 冷蔵庫。」 である点で一致し、以下の点で一応相違する。 [相違点] カメラの取付機構に関し、本願補正発明では、「前記第1の扉の内面と前記カメラの光軸とのなす傾斜角度を調整可能」であるのに対し、先願明細書等に記載された発明では、そのように特定されていない点。 (3)判断 ア 上記[相違点]について検討する。 冷蔵庫におけるカメラの取付機構において、カメラの光軸のなす傾斜角度を調整可能にカメラを固定することは、周知技術である(例えば、特開2003-4336号公報の段落【0011】、図6、特開2006-84132号公報の段落【0011】、図2、特開平8-49958号公報の段落【0017】、図3、特開2003-42626号公報の段落【0017】、図5を参照のこと。)。 一方、先願明細書等に記載された発明の「第2の撮像装置32」(カメラ)は「冷蔵庫扉12a」(第1の扉)の内側に設けられているから、先願明細書等に記載された発明において、第1の扉の内面と光軸とのなす傾斜角度を調整可能な取付機構とすることは、上記周知技術を付加したものといえる。 ここで、上記周知技術を付加しなくとも、先願明細書等に記載された発明は、「第2の撮像装置32」は「冷蔵室扉12aが締められる直前に前面開口部側を撮影するようにその位置が固定され」(すなわち、図3で示すような傾斜角度で固定され)ているから、第2の撮像装置は前面開口部側を撮影できる傾斜角度に調整されて固定されたものである。 そうすると、該周知技術の付加により、新たな効果を奏するものではないから、上記相違点に係る本願補正発明の構成は、冷蔵庫の貯蔵室の内部に収納されている食品を正確に確認する(段落【0008】)という課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。 よって、本願補正発明は、先願明細書等に記載された発明と実質同一である。 イ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、「引用文献1には、原審審査官が指摘した段落[0029]の続きの箇所に「冷蔵庫10の食品を出し入れ、或いは収納している住人を映し出すことができ、この住人を撮影した画像情報も活用することができる。」と記載されている。つまり、引用文献1には「ドアポケット」との文言が一度も明示されていないことからも明らかなように、ドアポケットを撮影するという技術的思想が開示も示唆もされていない。 ここで、冷蔵庫10の食品を出し入れ或いは収納している住人を映し出す場合について考える。住人は、冷蔵庫10の食品を出し入れ或いは収納する際、冷蔵室扉12a、12bの回動による軌跡の外側、つまり冷蔵室扉12a、12bの反ヒンジ側部分よりも冷蔵庫10に対して外側の離れた位置に立っているはずである。住人が軌跡の内側に立ってしまうと、冷蔵室扉12a、12bは回動する際に住人に当たってしまい、前面開口部を開放することができない。 そうであるならば、第2の撮影装置32は、住人を映す場合にはその撮影領域は冷蔵室扉12b側よりも外側を向いていると考えられることから、・・・住人を映す場合には、冷蔵室扉12bのドアポケットはほとんど映らないか、映ったとしても撮影された画像は不完全な情報にしかならない。逆に、冷蔵室扉12bのドアポケットを映そうとすると、住人はほとんど映らないか、映ったとしても撮影された画像は不完全な情報にしかならない。」と主張する。 しかしながら、上記(2)エで検討したとおり、冷蔵室の扉の内側にドアポケットを設けることは、冷蔵庫における通常の態様であるから、先願明細書等に記載された発明の「略長方形状の突出部分」は、その形状からみてドアポケットであるといえ、他のものを想定することはできない。 また、上記(2)オで検討したとおり、第2の撮像装置32が撮影できる、「冷蔵室扉12aの開放面側」(図3のAで示される破線)は、第2の撮像装置32の撮影方向から見ると、その先に「略長方形状の突出部分」(ドアポケット)が配置されており、その位置関係から、第2の撮像装置32は、「略長方形状の突出部分」(ドアポケット)を撮像可能であるといえる。そして、図3の第2の撮像装置32の撮像方向を示す矢印(←)の推移をみても、「略長方形状の突出部分」(ドアポケット)の方向を撮影可能であることは明らかである。 さらに、住人を映し出す場合においては、冷蔵庫の食品の出し入れ或いは収納の際に、住人は冷蔵室扉の回動による軌跡の内側まで近づく必要があり、その後、冷蔵室扉を閉める場合には、冷蔵室扉の回動による軌跡の外側まで離れればよいから、住人を映す撮影領域は、冷蔵室扉の回動による軌跡の外側でなければならないとする理由はない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (4)まとめ 以上のように、本願補正発明は、先願明細書等に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る本願補正発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明は、令和1年10月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1(1)」に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 この出願の請求項1?7に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2013-140508号(特開2015-14401号公報)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特願2013-140508号(特開2015-14401号公報) 2.特開2003-4366号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2003-42626号公報(周知技術を示す文献) 3 引用例 引用例1及びその記載事項は、前記「第2[理由]3(1)」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「第2の扉」に関して、「前記第2の扉の内側にはカメラが設けられていない」との限定を削除するものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]3(3)」で検討したとおり、先願明細書等に記載された発明と実質同一であるから、本願発明も先願明細書等に記載された発明と実質同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-10-29 |
結審通知日 | 2020-11-04 |
審決日 | 2020-11-19 |
出願番号 | 特願2018-214589(P2018-214589) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(F25D)
P 1 8・ 575- Z (F25D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 笹木 俊男 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
後藤 健志 平城 俊雅 |
発明の名称 | 冷蔵庫 |
代理人 | 特許業務法人 サトー国際特許事務所 |