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審決分類 審判 全部無効 一時不再理  A41D
審判 全部無効 産業上利用性  A41D
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A41D
審判 全部無効 2項進歩性  A41D
審判 全部無効 1項2号公然実施  A41D
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A41D
管理番号 1369851
審判番号 無効2018-800085  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-07-10 
確定日 2021-01-20 
事件の表示 上記当事者間の特許第4213194号発明「下肢用衣料」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
特許第4213194号(以下「本件特許」という。)は、2005年8月22日を国際出願日とする特許出願に係り、平成20年11月7日に請求項1?5に係る発明についての特許権が設定登録されたものであり、本件無効審判請求以降の手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
なお、請求項1?5に係る発明を以下「本件発明1」などといい、本件発明1?5をまとめて「本件発明」ということもある。また、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面を「本件特許請求の範囲」、「本件特許明細書及び図面」などという。

平成30年 7月10日:審判請求書
(差出日:平成30年7月10日)
平成30年 7月27日:証人尋問申出書、尋問事項書(請求人)
平成30年10月18日:審判事件答弁書
平成30年11月29日付け:審理事項(1)通知
平成30年12月28日:口頭審理陳述要領書(1)(請求人)
平成30年12月28日:口頭審理陳述要領書(1)及び別紙1?2(被請求人)
平成31年 1月11日:尋問事項書(請求人)
平成31年 1月22日付け:審理事項(2)通知
平成31年 2月 7日:口頭審理陳述要領書(2)及び別紙1?6(請求人)
平成31年 2月 7日:口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
平成31年 2月 7日:口頭審理陳述要領書(3)(請求人)
平成31年 2月 7日:口頭審理・証人尋問
平成31年 3月13日:上申書(1)(請求人)
平成31年 3月25日:上申書(2)(請求人)
平成31年 4月16日:上申書(被請求人)
令和元年 5月27日:上申書(3)(請求人)
令和元年 7月 4日:上申書(2)及び別紙1?2(被請求人)
令和元年 7月22日:上申書(4)及び別紙1?4(請求人)
令和元年11月18日:上申書(3)(被請求人)
令和元年12月13日:上申書(5)(請求人)

以下、審判請求書及び審判事件答弁書をそれぞれ、「請求書」及び「答弁書」と略記する。また、請求人あるいは被請求人が提出した上申書(1)、口頭審理陳述要領書(2)等を、「請求人上申書(1)」、「被請求人要領書(2)」等と略記する。
また、「甲第1号証」等を「甲1」等と略記し、甲第1号証等に記載された事項及び発明をそれぞれ、「甲1事項」等及び「甲1発明」等と略記する。
さらに、本審決において、書証等の記載箇所を行数により特定する場合、書証等自体に行番号が付されているときはそれに従い、付されていないときは空白行を含まない行数による。
そして、書証の摘記において、原文が○で囲まれた数字や文字の場合は、「○1」、「○2」、「○R」等と代用記載する。


第2.本件発明
本件発明1?5の各々は、本件特許請求の範囲の【請求項1】?【請求項5】に各々記載された以下のとおりのものである。
各段落の先頭のアルファベットは、分説記号であり、請求人が付したものを採用する。なお、分説ごとに改行する(以下、各分説を「構成要件A」などという。)。

「【請求項1】
A.大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部を備えた前身頃と、
B.この前身頃に接続され臀部を覆うとともに前記前身頃の足刳り形成部に連続する足刳り形成部を有した後身頃と、
C.前記前身頃と前記後身頃の各足刳り形成部に接続され大腿部が挿通する大腿部パーツとを有し、
D.前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し、
E.前記後身頃の足刳り形成部の下端縁は臀部の下端付近に位置し、
F.前記大腿部パーツの山の高さを前記足刳り形成部の前側の湾曲深さよりも低い形状とし、
G.前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し、
H.取り付け状態で筒状の前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状となることを特徴とする
I.下肢用衣料。
【請求項2】
J.前記後身頃のウエスト部から股部までの長さは、前記前身頃のウエスト部から股部までの長さよりも長く形成され、前記大腿部パーツに大腿部を挿入した状態において、大腿部が前身頃に対して前方に突出した状態で、前記後身頃に大きな張力が掛からない形状であることを特徴とする請求項1記載の下肢用衣料。
【請求項3】
K.前記足刳り形成部は、身体の転子点付近から腸骨棘点付近を通り股底点脇付近に至る湾曲した足刳り部分と、前記転子点付近から股底点脇まで膨らんだ曲線で臀部裾ラインを包み込み、且つ臀部裾部分に密着する形状であることを特徴とする請求項1記載の下肢用衣料。
【請求項4】
L.前記大腿部パーツは、裾部で折り返された1枚の生地の両側縁部が互いに重ねられ、前記前身頃の足刳り形成部と前記後身頃の足刳り形成部とに積層状態で接続され、前記大腿部パーツの折り重ねられた生地同士が相対的に摺動可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載の下肢用衣料。
【請求項5】
M.前記大腿部パーツは、股下から踝付近までの間の適宜の長さに形成されていることを特徴とする請求項1記載の下肢用衣料。」


第3.請求人の主張
1.無効理由の概要
請求人は、本件発明1?5についての特許を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めている。
その理由の概要は以下のとおりである。(口頭審理調書の両当事者の欄1)
なお、甲6の4(パターン)、甲6の12の1(マチ部以外のパターン)と甲6の12の2(マチ部のパターン)、甲6の21の1(パターン)から、それぞれ導かれる製品(以下「先行製品A」?「先行製品C」という。)に係る発明を、以下それぞれ「先行発明A」?「先行発明C」という。

(1)無効理由1(特許法第29条第1項第2号及び第29条第2項)について
ア.先行製品A(株式会社タカギ品番GT5681/UN5681)に基づく無効理由1について
(ア)無効理由1-A1(特許法第29条第1項第2号)
本件発明1?3、5は、その特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた先行発明A(GT5681/UN5681 Mサイズ)であり、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(イ)無効理由1-A2(特許法第29条第2項)
本件発明1?3、5は、その特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた先行発明A及び従来周知の事項に基いて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(ウ)無効理由1-A3(特許法第29条第2項)
本件発明4は、その特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた先行発明A及び従来周知の事項(甲7、甲8)に基いて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

イ.先行製品B(株式会社タカギ品番D296ON)に基づく無効理由1について
(ア)無効理由1-B1(特許法第29条第2項)
本件発明1?3、5は、その特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた先行発明B(D2960N Mサイズ)に基いて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(イ)無効理由1-B2(特許法第29条第2項)
本件発明4は、その特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた先行発明B及び従来周知の事項(甲7、甲8)に基いて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

ウ.先行製品C(株式会社タカギ品番D346UN)に基づく無効理由1について
(ア)無効理由1-C1(特許法第29条第1項第2号)
本件発明1?3、5は、その特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた先行発明C(D346UN Mサイズ))であり、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(イ)無効理由1-C2(特許法第29条第2項)
本件発明1?3、5は、その特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた先行発明C及び従来周知の事項に基いて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(ウ)無効理由1-C3(特許法第29条第2項)
本件発明4は、その特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた先行発明C及び従来周知の事項(甲7、甲8)に基いて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)無効理由2(特許法第36条第6項第2号)について
ア.無効理由2-1(構成要件Dについて)
本件発明1の「腸骨棘点付近」(構成要件D)は、多義的に解釈されるものであるため、本件特許に係る請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確でなく、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

イ.無効理由2-2(構成要件F、Gについて)
本件発明1の「前記大腿部パーツの山の高さを前記足刳り形成部の前側の湾曲深さよりも低い形状とし」(構成要件F)、及び「前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し」(構成要件G)は、不明確かつ多義的に解釈されるものであるため、本件特許に係る請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確でなく、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(3)無効理由3(特許法第36条第6項第1号)について
本件発明1の「山」は、「前側」を超えて延びる膨出部の一部である場合を含むのに対して、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、その場合について記載されていないため、本件発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(4)無効理由4(特許法第36条第6項第1号)について
本件発明1は、臀部ダーツ等を設けない場合を含むのに対して、本件特許明細書は、臀部ダーツ等を必須とする記載となっているため、本件発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(5)無効理由5(特許法第36条第6項第1号及び第36条第6項第2号)について
ア.無効理由5-1(構成要件F、Gとパターン配置について)(特許法第36条第6項第2号)
本件発明1の「湾曲」(構成要件F)及び「湾曲部分」(構成要件G)は、前身頃と後身頃のパターン配置を発明特定事項として規定していないから、その「深さ」、及び「幅」を特定することができないため、本件特許に係る請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確でなく、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

イ.無効理由5-2(前身頃と後身頃に前側の「湾曲」、「湾曲部分」がわたって延びるとき、かつ前身頃と後身後がパターン図において隙間なく合致しない場合の構成要件F、Gについて)(特許法第36条第6項第1号)
本件発明1の「湾曲」(構成要件F)及び「湾曲部分」(構成要件G)は、前身頃と後身頃に前側の「湾曲」、「湾曲部分」がわたって延びるとき、かつ前身頃と後身後がパターン図において隙間なく合致しない場合を含むのに対して、その場合の前身頃と後身頃のパターン配置を発明特定事項として規定しておらず、一方、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、その場合についての説明が記載されていないため、本件発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(6)無効理由6(特許法第36条第4項第1号)について
本件発明1の「前側」の「山」の「高さ」と「湾曲」の「深さ」(構成要件F)、「前側」の「山」の「幅」と「湾曲部分」の「幅」(構成要件G)をどのように設ければよいかが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には記載されていないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないため、その特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(7)無効理由7(特許法第29条第1項柱書及び特許法第36条第4項第1号)について
ア.無効理由7-1(構成要件F、GによってHが得られる場合(F、GがHの十分条件の場合))(特許法第29条第1項柱書)
本件発明1の「取り付け状態で筒状の前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状となること」(構成要件H)は、「前記大腿部パーツの山の高さを前記足刳り形成部の前側の湾曲深さよりも低い形状とし」(構成要件F)、及び「前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し」(構成要件G)によって得られるとされており、本件特許明細書にもそのように記載されているが、実際には、構成要件F、Gによって必ず構成要件Hが得られるものではない。
そうすると、本件発明1は、少なくともその一部に実施不能であって未だ完成していない発明を包含することは明らかであるから、全体として発明は未完成である。
したがって、本件発明1は、「産業上利用することができる発明」に該当せず、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

イ.無効理由7-2(構成要件F、GによってHが得られる場合(F、GがHの十分条件の場合))(特許法第36条第4項第1号)
本件発明1の構成要件Hは、構成要件F及びGによって得られるとされており、本件特許明細書にもそのように記載されているが、実際には、構成要件F、Gによって必ず構成要件Hが得られるものではない。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、構成要件F、Gによって構成要件Hが得られる原理が記載されておらず、技術常識を考慮しても当業者にとって自明とはいえない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないため、その特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

ウ.無効理由7-3(構成要件F、GによらずHが得られる場合(F、GがHの十分条件でない場合))(特許法第36条第4項第1号)
本件発明1の構成要件Hは、構成要件F及びG以外のどのような条件を満たせば得られるものであるのか、本件特許明細書の発明の詳細な説明には記載されておらず、技術常識を考慮しても当業者にとって自明とはいえない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないため、その特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

2.証拠方法
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
また、請求人の申出により、株式会社タカギの従業者である中村彰男を証人とする証人尋問を行った(証人尋問申出書)。

甲1 :特許第4213194号公報
甲2 :先行製品A(GT5681/UN5681 Mサイズ)説明書
甲3 :先行製品B(D2960N Mサイズ)説明書
甲4 :先行製品C(D346UN Mサイズ)説明書
甲5 :中村彰男陳述書
甲6の1 :中村彰男陳述書添付資料1 商品設計書
甲6の2 :中村彰男陳述書添付資料2 サンプル写真
甲6の3 :中村彰男陳述書添付資料3 パターンファイルシート
甲6の4 :中村彰男陳述書添付資料4 パターン
甲6の5 :中村彰男陳述書添付資料5 製品規格書
甲6の6 :中村彰男陳述書添付資料6 縫製仕様書
甲6の7 :中村彰男陳述書添付資料7 販売実績
甲6の8 :中村彰男陳述書添付資料8 商品設計書
甲6の9 :中村彰男陳述書添付資料9 サンプル写真
甲6の10の1:中村彰男陳述書添付資料10の1 業務進捗メモ
甲6の10の2:中村彰男陳述書添付資料10の2 マーキング仕様書
甲6の11 :中村彰男陳述書添付資料11 パターンファイルシート
甲6の12の1:中村彰男陳述書添付資料12の1 パターン
甲6の12の2:中村彰男陳述書添付資料12の2 パターン
甲6の13 :中村彰男陳述書添付資料13 レース裁断指示書
甲6の14 :中村彰男陳述書添付資料14 製品規格書
甲6の15 :中村彰男陳述書添付資料15 縫製仕様書
甲6の16 :中村彰男陳述書添付資料16 仕様変更通知書
甲6の17の1:中村彰男陳述書添付資料17の1 商品設計書
甲6の17の2:中村彰男陳述書添付資料17の2 商品設計書
甲6の18 :中村彰男陳述書添付資料18 サンプル写真
甲6の19 :中村彰男陳述書添付資料19 業務進捗メモ
甲6の20 :中村彰男陳述書添付資料20 パターンファイルシート
甲6の21の1:中村彰男陳述書添付資料21の1 パターン
甲6の21の2:中村彰男陳述書添付資料21の2 パターン
甲6の22 :中村彰男陳述書添付資料22 レース裁断指示書
甲6の23 :中村彰男陳述書添付資料23 製品規格書
甲6の24 :中村彰男陳述書添付資料24 縫製仕様書
甲7 :実公平3-43201号公報
甲8 :特開昭62-243808号公報
甲9 :特開昭50-118852号公報
甲10 :判決正本(大阪地方裁判所:平成26年(ワ)第7604号)
甲11 :無効2015-800152号の審決謄本
甲12 :実願昭61-89151号(実開昭62-203204号)のマイクロフィルム
甲13の1 :中村彰男陳述書 サンプル1?3について
甲13の2 :中村彰男陳述書添付書類1 写真撮影報告書
甲13の3 :中村彰男陳述書添付書類2 写真撮影報告書
甲13の4 :中村彰男陳述書添付書類3 パターンファイルシート
甲13の5 :中村彰男陳述書添付書類4 マーキング仕様書
甲13の6 :中村彰男陳述書添付書類5 パターン検討図
甲13の7 :中村彰男陳述書添付書類6 パターンファイルシート
甲13の8 :中村彰男陳述書添付書類7 マーキング仕様書
甲13の9 :中村彰男陳述書添付書類8 パターン検討図
甲13の10 :中村彰男陳述書添付書類9 パターンファイルシート
甲13の11 :中村彰男陳述書添付書類10 マーキング仕様書
甲13の12 :中村彰男陳述書添付書類11 パターン検討図
甲14 :「図学入門 コンピュータ・グラフィックスの基礎」120?133ページ、168?169ページ 財団法人東京大学出版会 2002年10月31日第8刷発行
甲15の1 :「裁縫の曲率的解釈と縫合の式」422?429ページ 繊消誌 vol.37 No.8(1996)
甲15の2 :甲15の1のインターネットによる国立国会図書館ホームページ検索結果(http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I4021216-00)
甲16の1 :「被服の運動機能性と快適性」438?444ページ 繊消誌 vol.25 No.9(1984)
甲16の2 :甲16の1のインターネットによる国立国会図書館ホームページ検索結果(http://iss.ndl.go.jp/books/R000000016-I004414023-00)
甲17の1 :「人体腰部形状の特徴と類型」121?126ページ
甲17の2 :甲17の1のインターネットによる国立国会図書館ホームページ検索結果(http://iss.ndl.go.jp/books/R000000016-I002423362-00)
甲18の1 :「布帛の曲面形成能に関する研究(第1報)-曲面形成能評価試験装置の試作と検討-」344?350ページ 繊消誌 vol.26 No.8(1985)
甲18の2 :甲18の1のインターネットによる国立国会図書館ホームページ検索結果(http://iss.ndl.go.jp/books/R000000016-I004414116-00)
甲19の1 :「力学的面展開手法を用いた自動型紙作成法」427?434ページ SEN-I GAKKAISHI(報文)Vol.45 No.10(1989)
甲19の2 :甲19の1のインターネットによる国立国会図書館ホームページ検索結果(http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I3260778-00)
甲20の1 :「スポーツ用ガードルに関する研究」301?307ページ
甲20の2 :甲20の1のインターネットによる財団法人 石本記念デサントスポーツ科学振興財団ホームページ検索結果(http://www.descente.co.jp/ishimoto/IDXV6.htm)
甲20の3 :甲20の1のインターネットによる財団法人 石本記念デサントスポーツ科学振興財団ホームページ検索結果(http://www.descente.co.jp/ishimoto/zdtop.html)
甲21の1 :「被服設計のための数学入門(3) 曲面論(続き)」648?654ページ 繊維機械学会誌(繊維工学)Vol.28 No.11(1975)
甲21の2 :甲21の1のインターネットによる国立国会図書館ホームページ検索結果(http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I1627844-00)
甲22の1 :「世界地図を活用するときの注意点は?」15?16ページ
甲22の2 :甲22の1のインターネットによる帝国書院ホームページ検索結果(http://www.teikokushoin.co.jp/journals/child_map/index_201309.html)
甲23 :中村彰男陳述書(2)
甲24の1 :中村彰男陳述書(2)添付資料25 品質検査報告書
甲24の2 :中村彰男陳述書(2)添付資料26 縫製検査報告書
甲24の3 :中村彰男陳述書(2)添付資料27 品質検査報告書
甲25 :小田木治樹陳述書
甲26 :税理士松嶋秀樹陳述書
甲27 :写真撮影報告書
甲28 :特開2003-105602号公報
甲29 :特開2003-239105号公報
甲30 :特開平9-95805号公報
甲31 :大阪地方裁判所 平成26年(ワ)第7604号特許権侵害差止等請求事件において被請求人が提出した甲第21号証
甲32 :平成30年12月19日付ご協力依頼書
甲33 :平成30年12月26日付回答書
甲34 :平成30年12月25日付報告書
甲35 :平成27年3月10日付ご協力依頼書
甲36の1 :平成27年3月26日付回答書
甲36の2 :AGMS株式会社 回答書添付資料1
甲36の3 :AGMS株式会社 回答書添付資料2
甲36の4 :AGMS株式会社 回答書添付資料3
甲36の5 :AGMS株式会社 回答書添付資料4
甲36の6 :AGMS株式会社 回答書添付資料5
甲36の7 :AGMS株式会社 回答書添付資料6
甲36の8 :AGMS株式会社 回答書添付資料7
甲37の1 :5681GT_UNのMサイズパターン 前身頃
甲37の2 :5681GT_UNのMサイズパターン 脇身頃
甲37の3 :5681GT_UNのMサイズパターン 後身頃
甲37の4 :5681GT_UNのMサイズパターン 足口レース
甲37の5 :5681GT_UNのMサイズパターン 表マチ
甲37の6 :5681GT_UNのMサイズパターン 裏マチ
甲38の1 :D296ONのMサイズパターン 前身頃
甲38の2 :D296ONのMサイズパターン 後身頃
甲38の3 :D296ONのMサイズパターン 足口レース
甲38の4 :D296ONのMサイズパターン 表マチ
甲38の5 :D296ONのMサイズパターン 裏マチ
甲39の1 :D346UNのMサイズパターン 前身頃
甲39の2 :D346UNのMサイズパターン 後身頃
甲39の3 :D346UNのMサイズパターン 足口レース
甲39の4 :D346UNのMサイズパターン 上前身頃
甲39の5 :D346UNのMサイズパターン 上後身頃
甲39の6 :D346UNのMサイズパターン 裏マチ
甲40 :GT5681/UN5681のMサイズ試作品
甲41 :D296ONのMサイズ試作品
甲42 :D346UNのMサイズ試作品
甲43 :中村彰男陳述書(3)
甲44 :販売実績(品番+サイズ別)
甲45 :販売実績(品番+サイズ+カラー別)
甲46 :大阪地方裁判所 平成26年(ワ)第7604号特許権侵害差止等請求事件において被請求人が提出した平成27年5月7日付原告第3準備書面
甲47 :リーフレット「MT40、MP40」
甲48 :特開平8-311703号公報
甲49 :特公昭57-1601号公報
甲50 :実願昭49-146404号(実開昭51-73224号)のマイクロフィルム
甲51 :登録実用新案第3045836号公報
甲52 :特開2010-144307号公報
甲53 :特願2008-325808号に係る平成24年10月16日付け拒絶理由通知書
甲54 :判決(知的財産高等裁判所 平成24年(行ケ)第10135号審決取消請求事件)
甲55の1 :報告書
甲55の2 :添付資料1(大阪地方裁判所 平成26年(ワ)第7604号特許権侵害差止等請求事件において被請求人が提出した甲第14号証の1)
甲55の3 :添付資料2(大阪地方裁判所 平成26年(ワ)第7604号特許権侵害差止等請求事件において被請求人が提出した甲第14号証の2)
甲56 :先行製品Aにおける湾曲部分と山の幅の比較
甲57 :中村彰男陳述書(4)
甲58の1 :中村彰男陳述書(4)添付別紙1
甲58の2 :中村彰男陳述書(4)添付別紙2
甲59の1 :ファイル名「5681GT」のMサイズパターン(縫い代部分あり) 前身頃
甲59の2 :ファイル名「5681GT」のMサイズパターン(縫い代部分あり) 脇身頃
甲59の3 :ファイル名「5681GT」のMサイズパターン(縫い代部分あり) 後身頃
甲59の4 :ファイル名「5681GT」のMサイズパターン(縫い代部分あり) 足口レース
甲59の5 :ファイル名「5681GT」のMサイズパターン(縫い代部分あり) 表マチ
甲59の6 :ファイル名「5681GT」のMサイズパターン(縫い代部分あり) 裏マチ
甲60の1 :ファイル名「5681-SYUSEIGO」のMサイズパターン(縫い代部分あり) 前身頃
甲60の2 :ファイル名「5681-SYUSEIGO」のMサイズパターン(縫い代部分あり) 脇身頃
甲60の3 :ファイル名「5681-SYUSEIGO」のMサイズパターン(縫い代部分あり) 後身頃
甲60の4 :ファイル名「5681-SYUSEIGO」のMサイズパターン(縫い代部分あり) 足口レース
甲60の5 :ファイル名「5681-SYUSEIGO」のMサイズパターン(縫い代部分あり) 表マチ
甲60の6 :ファイル名「5681-SYUSEIGO」のMサイズパターン(縫い代部分あり) 裏マチ
甲61の1 :ファイル名「5681GT」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 前身頃
甲61の2 :ファイル名「5681GT」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 脇身頃
甲61の3 :ファイル名「5681GT」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 後身頃
甲61の4 :ファイル名「5681GT」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 足口レース
甲61の5 :ファイル名「5681GT」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 表マチ
甲61の6 :ファイル名「5681GT」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 裏マチ
甲62の1 :ファイル名「5681-SYUSEIGO」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 前身頃
甲62の2 :ファイル名「5681-SYUSEIGO」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 脇身頃
甲62の3 :ファイル名「5681-SYUSEIGO」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 後身頃
甲62の4 :ファイル名「5681-SYUSEIGO」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 足口レース
甲62の5 :ファイル名「5681-SYUSEIGO」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 表マチ
甲62の6 :ファイル名「5681-SYUSEIGO」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 裏マチ
甲63の1 :ファイル名「5681GT_UN」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 前身頃
甲63の2 :ファイル名「5681GT_UN」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 脇身頃
甲63の3 :ファイル名「5681GT_UN」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 後身頃
甲63の4 :ファイル名「5681GT_UN」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 足口レース
甲63の5 :ファイル名「5681GT_UN」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 表マチ
甲63の6 :ファイル名「5681GT_UN」のMサイズパターン(縫い代部分なし) 裏マチ
甲64の1 :5681GT_UN-検証再現 パターン検証図1再現
甲64の2 :5681GT_UN-検証再現 [M]単位:cm パターン検証図1再現
甲65の1 :5681GT_UN-検証再現 パターン検証図2再現
甲65の2 :5681GT_UN-検証再現 [M]単位:cm パターン検証図2再現

以上の証拠方法のうち、甲1?甲22の2は請求書に添付され、甲23?甲36の8は請求人要領書(1)に添付され、甲37の1?甲53は請求人要領書(2)に添付され、甲54は請求人要領書(3)に添付され、甲55の1?甲56は請求人上申書(1)に添付され、甲57?甲63の6は請求人上申書(2)に添付され、甲64の1?甲65の2は請求人上申書(4)に添付されたものである。

甲10に示される大阪地方裁判所 平成26年(ワ)第7604号を、以下「関連侵害訴訟1審」という。
甲11に示される無効2015-800152号を、以下「無効審判1」という。


第4.被請求人の主張
1.要点
これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。(答弁書5.答弁の趣旨)

2.証拠方法
被請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。

乙1 :判決正本(知的財産高等裁判所 平成29年(行ケ)第10164号 審決取消請求事件)
乙2 :判決正本(知的財産高等裁判所 平成30年(ネ)第10031号 特許権侵害差止等請求控訴事件)
乙3 :財団法人日本繊維製品品質技術センターのウェブサイトにおける衣料品試験に関するページのプリントアウト(URL)https://www/qtec.or.jp/article/衣料品
乙4 :ウェブサイト「楽天市場」において名古屋タカギが運営するインターネット通販サイト「ティコレクション」中の「ガードルショーツ」(Gショーツ)に関するページのプリントアウト(URL)https://item.rakuten.co.jp/t-colle/d074huku/
乙5 :無効2016-800097号における甲第10号証の7、先行製品2(品番D048PO)の製品規格書
乙6 :関連侵害訴訟1審において、請求人が提出した訴訟記録閲覧等制限申立書
乙7 :関連侵害訴訟1審において、請求人が提出した訴訟記録閲覧等制限申立の訂正申立書
乙8 :関連侵害訴訟1審において、請求人が提出した訴訟記録閲覧等制限申立の訂正申立書(2)
乙9 :関連侵害訴訟1審における、訴訟記録閲覧等制限申立の決定
乙10:知的財産高等裁判所 平成30年(ネ)第10031号の上告及び上告受理申立に係る調書(決定)

以上の証拠方法のうち、乙1は答弁書に添付され、乙2は被請求人要領書(1)に添付され、乙3及び乙4は被請求人要領書(2)に添付され、乙5?乙9は被請求人上申書に添付され、乙10は被請求人上申書(3)に添付されたものである。
また、乙1、乙2の成立について、当事者間に争いはない。
(請求人要領書(1)5.(1)、請求人要領書(2)5.(1))

乙2に示される知的財産高等裁判所 平成30年(ネ)第10031号を、以下「関連侵害訴訟控訴審」という。


第5.無効理由2(特許法第36条第6項第2号)についての当審の判断
事案に鑑み、無効理由2から検討する。
1.証拠について
以下の証拠には、次の記載がある。
(1)甲11(無効審判1審決)
ア.『2.「腸骨棘点付近」について
本件の特許請求の範囲の請求項1には、「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し」と記載されているが、「腸骨棘点付近」の定義が記載されていない。
・・・
(1)「腸骨棘点」について
(a)「腸骨棘点」について、本件の特許請求の範囲の請求項1には、「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し」と記載されているが、「腸骨棘点」の定義が記載されていない。
・・・
以上から、本件請求項1の「腸骨棘点」は、「腸棘点(上前腸骨棘の最も下縁の点)」に相当するとの解釈と、本件特許明細書の記載及び図面は、整合する。
よって、本件請求項1の「腸骨棘点」は、「腸棘点(上前腸骨棘の最も下縁の点)」に相当する。
・・・
(2)「腸骨棘点付近」について
本件特許の属する衣料(衣服)分野において、「衣料(衣服)のある部分」の位置を「着用者の体のある部位」と関連づけて説明する際に、・・・(中略)・・・本件発明1における「腸骨棘点付近」とは、立位での着用者の「腸棘点(上前腸骨棘の最も下縁の点)」及びその近辺であって、「腸棘点(上前腸骨棘の最も下縁の点)」に近い位置にある場所と解するのが相当である。
・・・
(3)小括
以上述べてきたように、本件発明1における「腸骨棘点付近」は、本件発明1の「下肢用衣料」を立位着用状態での、着用者の「腸棘点(上前腸骨棘の最も下縁の点)」及びその近辺であって、「腸棘点(上前腸骨棘の最も下縁の点)」に近い位置にある場所を意味することが明らかであり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
したがって、本件発明1における「腸骨棘点付近」の意味は、明確である。』
(9ページ下から10行?13ページ下から4行)

イ.『4.「前記大腿部パーツの山の高さを前記足刳り形成部の前側の湾曲深さよりも低い形状とし」(発明特定事項5-1)及び「前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し」(発明特定事項5-2)について
・・・
ゆえに、「大腿部パーツの山」とは、「大腿部パーツ18」の「裾部36とは反対側の縁部」に位置し、「外側になだらかに膨出する山40a」を意味し、それは、「足刳り形成部24,25に取り付け」られる部分であると解すべきであり、「大腿部パーツの山の高さ」とは、「山40aの高さ」である「h1」を意味すると解すべきである。
同様に、「足刳り形成部の湾曲部分の幅」、「前記山の幅」とは、各々、「足刳り前部24,25の湾曲部分の幅」である「w2」、「足付根部40の山の幅」である「w1」を意味すると解すべきである。
また、「足刳り形成部の前側の湾曲深さ」は、「足刳り形成部24,25の湾曲深さ」に対応する語句であり、その意味するところは当該「足刳り形成部24,25の湾曲深さ」である「h2」を意味すると解するのが相当である。
そして、本件の特許明細書及び図面の記載からは、これらの語句の意味を上記した意味以外の意味に解すべき理由を見いだせない。

(3)小括
以上述べてきたように、「大腿部パーツの山の高さ」、「足刳り形成部の前側の湾曲深さ」、「足刳り形成部の湾曲部分の幅」、「前記山の幅」の各々の意味は、本件の特許明細書及び図面の記載から明確である。
そして、本件発明1における上記発明特定事項5-1は、図3、図6?8に示される形状の「大腿部パーツ18」の「山40a」の「高さh1」が、「足刳り形成部24,25の湾曲深さh2」よりも低い形状であることを意味することが明らかであり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
また、本件発明1における上記発明特定事項5-2は、図3、図6?8に示される形状の「大腿部パーツ18」の「足付根部40の山の幅」である「w1」を、「足刳り前部24,25の湾曲部分の幅」である「w2」よりも広く形成することを意味することが明らかであり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
したがって、本件発明1における上記発明特定事項5-1及び5-2の意味は、明確である。』
(15ページ下から11行?17ページ下から4行)

(2)甲10(関連侵害訴訟1審判決)
ア.『(1)「腸骨棘点付近」の意義
ア 構成要件Dは,「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し」というものである。
・・・
そして,前記のような本件発明の作用効果は,足刳り形成部の頂点が屈曲した股関節の付け根部分付近に設定されることにより実現されるものであるところ,足刳り形成部の湾曲の頂点が,上前腸骨棘付近又は下前腸骨棘付近のいずれかに位置すれば,少なくとも,浅い屈曲姿勢をとった場合又は深い屈曲姿勢をとった場合のいずれかにおいて,股関節の屈曲に伴う筋肉の動きに沿うこととなり,それによって,股関節の屈伸運動に対する抵抗が少なくなり,屈曲姿勢に適合する形状が実現されるというべきである。
したがって,「腸骨棘点付近」とは,上前腸骨棘付近及び下前腸骨棘付近のいずれをも含むものと解すべきである。』
(71ページ14行?73ページ下から6行)

イ.『6 争点2(無効理由(明確性要件違反)の有無)について
(1)前記のとおり、・・・
また,構成要件F「大腿部パーツの山の高さを前記足刳り形成部の前側の湾曲の深さよりも低い形状とし」とは,足刳り形成部のうち,股部パーツと前身頃の境界部分から臀部の隆起に対応させる位置部分の手前までの範囲と,それに対応する大腿部パーツの範囲において,大腿部パーツの山の高さが足刳り形成部の湾曲の深さよりも低い形状となることを指すものと解され,構成要件G「前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し」とは,足刳り形成部のうち,股部パーツと前身頃の境界部分から臀部の隆起に対応させる位置部分の手前までの範囲と,それに対応する大腿部パーツの範囲において,足刳り形成部の湾曲の幅よりも山の幅が広く形成されることを指すものと解される。
(2)このように,構成要件D,E,F,Gの文言は,それぞれ上記のように理解することができるものであり,それらが不明確であるということはできない。
よって,被告らの明確性要件違反による無効主張には理由がないから,これを採用することはできない。』
(85ページ下から2行?86ページ下から10行)

(3)乙2(関連侵害訴訟控訴審判決)
『(1)「腸骨棘点付近」の意義
ア 「腸骨棘点」について
構成要件Dの「腸骨棘点」については,・・・構成要件Dの「腸骨棘点」は「上前腸骨棘」を意味するものと解するのが相当である。
イ 「腸骨棘点付近」について
本件発明の下肢用衣料は,・・・他方,下前腸骨棘も,鼠径溝に沿った位置にあるといえるとともに,上前腸骨棘とは2?3cm程度離れているにとどまる(甲57)。
また,下肢用衣料の形状は,・・・本件発明の下肢用衣料につき「大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形状」とするに当たっては,腸骨棘点「付近」につき限定的に解するのではなく,一定程度の広がりを有するものと解するのが相当である。
これらの事情を総合的に考慮すると,「腸骨棘点付近」とは,上前腸骨棘を中心としつつ,下前腸骨棘付近をも含むものと解される。これに反する1審被告らの主張は採用できない。』
(31ページ下から8行?33ページ下から5行)


2.無効理由2:無効理由2-1(構成要件Dについて)、無効理由2-2(構成要件F、Gについて)
(1)一事不再理について
被請求人は、無効理由2について以下のように主張している。
「無効理由2は、明確性要件違反をいうものであり、・・・の不明確性に関するものであるところ、かかる点は請求人が別途請求した無効審判1(無効2015-800152)の審決においてすべて明確と判断されており(甲11)、当該審決は不服申し立てがなされずにすでに確定しているものである。
・・・
よって、無効理由2は、確定審決に対する蒸し返しに等しく、信義則上許されないとともに、特許法167条の1事不再理により最早無効を主張することはできないものである。」
(答弁書 第2 1)

ア.そこで検討すると、特許法第167条は、「特許無効審判・・・の審決が確定したときは、当事者及び参加人は、同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない」旨規定する。
そして、無効審判請求においては、「同一の事実」とは、同一の無効理由に係る主張事実を指し、「同一の証拠」とは、当該主張事実を根拠づけるための実質的に同一の証拠を指すものと解するのが相当である。そして、同一の事実(同一の立証命題)を根拠づけるための証拠である以上、証拠方法が相違することは、直ちには、証拠の実質的同一性を否定する理由にはならないと解すべきである(平成25年(行ケ)第10226号参照。)。

イ.「同一の事実」について
無効審判1における無効理由は、本件特許に係る請求項1に記載の「腸骨棘点付近」(構成要件D)、「前記後身頃の足刳り形成部の下端縁は臀部の下端付近に位置し、」(構成要件E)、「前記大腿部パーツの山の高さを前記足刳り形成部の前側の湾曲深さよりも低い形状とし、」(構成要件F)及び「前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し、」(構成要件G)の各々の意味が不明であるから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当するというものである。
そして、無効審判1は、平成28年2月16日に審決がなされ、同審決は平成28年3月30日に確定した。
一方、本件無効審判の無効理由2は、本件特許に係る請求項1の構成要件Dの「腸骨棘点付近」、構成要件Fの「前記大腿部パーツの山の高さを前記足刳り形成部の前側の湾曲深さよりも低い形状とし、」及び構成要件G「前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し、」はいずれも明確とはいえないから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当するというものである。
そうすると、本件無効審判の無効理由2は、無効審判1における無効理由と同一であるから、同一の無効理由に係る主張事実といえ、特許法第167条の「同一の事実」に基づくものと認められる。

ウ.「同一の証拠」について
請求人は、本件無効審判の無効理由2において、本件特許請求の範囲の記載が明確でない理由として、新たに無効審判1審決(甲11)及び関連侵害訴訟1審判決(甲10)を提出しているところ、これらの証拠が、無効審判1の無効理由を基礎づける証拠と同一といえるか検討する。
まず、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そうすると、無効審判1の無効理由を基礎づける証拠は、本件特許に係る願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の内容を示す特許第4213194号(無効審判1乙1)と、技術常識の根拠となるJIS Z 8500 「人間工学-設計のための基本人体測定項目」(無効審判1甲4)である。
一方、本件無効審判の無効理由2を基礎づける証拠は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の内容を示す特許第4213194号(甲1)である。
以上から、本件無効審判の無効理由2を基礎づける証拠は、無効審判1の無効理由を基礎づける証拠と実質的に同一であるから、本件無効審判の無効理由2は、特許法第167条の「同一の証拠」に基づくものである。
この点、請求人は、本件無効審判の無効理由2において、本件特許請求の範囲の記載が明確でない理由として、無効審判1審決における解釈と、関連侵害訴訟1審判決における解釈は異なるから、構成要件Dが多義的に解釈され、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であり、構成要件F、Gの解釈は関連侵害訴訟1審判決と無効審判1審決とで各々不明確である上、両解釈が全く異なる事実こそ、構成要件F、Gが、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である旨主張しているが、無効審判1審決及び関連侵害訴訟1審判決の解釈により、本件特許請求の範囲の請求項1の記載の内容や願書に添付した明細書の記載及び図面並びに出願当時における技術常識の内容が変わるものではなく、これらの主張や証拠は、本件無効審判の無効理由2を基礎づける事実や証拠に当たらない。
以上によると、本件無効審判の無効理由2は、確定した無効審判1審決と「同一の事実及び同一の証拠」に基づくものであるから、特許法第167条の規定によりその審判を請求することができないものである。

(2)請求人の主張について
上述のとおり、本件無効審判の無効理由2は、特許法第167条の規定によりその審判を請求することができないものであるが、念のために、請求人の主張について検討する。

ア.請求人は、無効理由2-1(構成要件Dについて)に関して、以下のように主張している。
構成要件Dの「腸骨棘点付近」につき、関連侵害訴訟1審判決は、「上前腸骨棘付近及び下前腸骨棘付近のいずれをも含むもの」と解し、無効審判1審決は『立位での着用者の「腸棘点(上前腸骨棘の最も下縁の点)」及びその近辺であって、「腸棘点(上前腸骨棘の最も下縁の点)」に近い位置にある場所』と解する。
このように、「腸骨棘点付近」の解釈が関連侵害訴訟1審判決と無効審判1審決とで全く異なる事実こそ、構成要件Dが多義的に解釈され、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であることを示す。
よって、構成要件Dは明確とはいえない。
(請求書 第5 1)

そこで検討すると、甲10(関連侵害訴訟1審判決)では、上記1.(2)ア.で摘記したように、『・・・したがって,「腸骨棘点付近」とは,上前腸骨棘付近及び下前腸骨棘付近のいずれをも含むものと解すべきである。』と判示され、その控訴審の判決である乙2では、上記1.(3)で摘記したように『「腸骨棘点付近」とは,上前腸骨棘を中心としつつ,下前腸骨棘付近をも含むものと解される。』と判示されている。一方、甲11(無効審判1審決)では、上記1.(1)ア.で摘記したように『「腸骨棘点付近」とは、立位での着用者の「腸棘点(上前腸骨棘の最も下縁の点)」及びその近辺であって、「腸棘点(上前腸骨棘の最も下縁の点)」に近い位置にある場所と解するのが相当である。』と説示しており、「下前腸骨棘付近」を含まない等とは説示していないところ、「上前腸骨棘の最も下縁の点」に近い位置であって、立位での下方向に「下前腸骨棘」が存在することは技術常識である。
したがって、無効審判1審決における解釈と、関連侵害訴訟1審判決及び関連侵害訴訟控訴審判決における解釈とは、何ら齟齬するものではないから、請求人の主張は、その前提において誤っているといわざるを得ない。

イ.また、請求人は、無効理由2-2(構成要件F、Gについて)に関して、以下のように主張している。
(ア)請求人は、関連侵害訴訟1審判決の解釈は不明確である旨、主張している。

しかしながら、関連侵害訴訟1審判決に関する請求人の解釈は、本件発明1の構成要件F及び構成要件Gの明確性には影響しないことであるから、請求人の主張は当を得たものではない。

(イ)また、請求人は、無効審判1審決の解釈は不明確である旨、以下のように主張している。

無効審判1審決は、本件特許の図3に示されている足刳り形成部24,25全体が構成要件F,Gに係る「前側の湾曲」ないし「湾曲部分」に相当すると解釈しているが、この解釈は、臀部ダーツ31の無い本件特許の図6の例における「前側の湾曲」ないし「湾曲部分」の範囲を特定することができないという点で不十分であるし、仮に、図6の例における「前側の湾曲」ないし「湾曲部分」の範囲を、図3の臀部ダーツ31の位置に照らして把握することができるとしても、図6の例における湾曲部分24,25の形状が図3の湾曲部分24,25と異なるように変更された場合における「前側の湾曲」ないし「湾曲部分」の範囲の把握の仕方は不明であり、構成要件F,Gに係る「前側の湾曲」ないし「湾曲部分」の範囲を普遍的な基準で把握することができないから、「前側の湾曲」ないし「湾曲部分」は不明確である。
そして、構成要件F,Gに係る「湾曲部分」が不明確であるので、「足刳り形成部24,25に取り付け」られる部分であると解する「大腿部パーツの山」も不明確となっている。
(請求書16ページ15行?17ページ12行)

しかしながら、本件発明1は、「下肢用衣料」という物の発明であるから、「前側の湾曲」の「前側」は、「下肢用衣料」の設計にあたり、その着用状態における人体に対する前後方向を特定する用語であるといえる。
すなわち、「前側の湾曲」は、本件発明1の「下肢用衣料」の設計にあたり、その着用状態における人体の「前側」に位置する「湾曲」を意味している。
そうすると、請求人の主張する臀部ダーツの有無や、湾曲の形状変更が行われたとしても、その着用状態における人体の「前側」に位置する「湾曲」が「前側の湾曲」であることは明確である。

(ウ)そして、請求人は、構成要件F、Gの解釈について、関連侵害訴訟1審判決と無効審判1審決の両解釈が、各々不明確である上、全く異なる事実こそ、構成要件F、Gが、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である旨、主張(請求書17ページ13?17行)している。

そこで検討すると、請求人は、構成要件F、Gについて、甲10(関連侵害訴訟1審判決)での解釈と甲11(無効審判1審決)での解釈が共に不明確であると主張しているところ、不明確であってその内容が理解できないはずの甲10での解釈と甲11での解釈が全く異なると主張しており、そもそも、この主張は論理的に矛盾する主張である。
さらに、主張内容について検討するに、上記1.(2)イ.に摘記した甲10の「足刳り形成部のうち,股部パーツと前身頃の境界部分から臀部の隆起に対応させる位置部分の手前までの範囲と,それに対応する大腿部パーツの範囲」は、上記1.(1)イ.で摘記した甲11の説示における「足刳り前部24,25」の一部範囲であり、この一部範囲において、「大腿部パーツの山の高さが足刳り形成部の湾曲の深さよりも低い形状となること」及び「足刳り形成部の湾曲の幅よりも山の幅が広く形成されること」を述べている甲10の上記1.(2)イ.の判示は、甲11の上記1.(1)イ.の説示とは何ら齟齬するものではない。
したがって、請求人の主張は、その前提において誤っているといわざるを得ない。
そして、上記(イ)で述べたとおり、「前側の湾曲」は、明確である。

(エ)さらに、請求人は、構成要件F、Gに係る「前側の湾曲」ないし「湾曲部分」が明確といえるためには、仮に山を拡大した場合でも、どの範囲が「前側の湾曲」ないし「湾曲部分」といえるのかが明らかにされなければならない旨、主張(請求書17ページ18行?19ページ2行)している。

しかしながら、上記(イ)で述べたとおり、「前側の湾曲」は、本件発明1の「下肢用衣料」の設計にあたり、その着用状態における人体の「前側」に位置する「湾曲」を意味している。
そうすると、山を拡大した場合でも、その着用状態における人体の「前側」に位置する「湾曲」が「前側の湾曲」であることは明確である。

ウ.したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。

3.小括
以上のとおりであるから、本件特許に係る無効理由2(特許法第36条第6項第2号:無効理由2-1(構成要件Dについて)、無効理由2-2(構成要件F、Gについて))を根拠とする本件無効審判は、無効審判1の審決の確定効たる一事不再理効に反する請求として許されず、無効理由2についての請求人の請求を却下すべきものである。


第6.無効理由3(特許法第36条第6項第1号)、及び無効理由4(特許法第36条第6項第1号)についての当審の判断
無効理由3と無効理由4は、いずれも特許法第36条第6項第1号違反を問うものであるから、合わせて検討する。

1.特許法第36条第6項第1号の判断手法
特許請求の範囲の記載が、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。

2.本件発明が解決しようとする課題
本件発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」ということもある)の段落【0006】の記載から「股関節の屈伸運動が円滑に行われ、運動に適した下肢用衣料を提供すること」である。

3.本件発明1が、発明の詳細な説明に記載された発明であるか否かについて
(1)発明の詳細な説明の段落【0018】には、「足刳り形成部32は、スパッツ10を縫製したときに前身頃12の足刳り形成部24に連続して大腿部が挿通する開口部を形成するものである。」と記載されており、前身頃12の足刳り形成部24は、湾曲した足刳りとなることは明らかであるから、構成要件Aに対応する事項が記載されている。

(2)同段落【0023】には、「前身頃12と後身頃14の、左右の腰部前側縁22と腰部前側縁30を縫い合わせる。」と記載されているから、前身頃と後身頃は接続されることが開示されているといえる。
また、同段落【0017】には、「後身頃14は、大きく開いた略V字形に形成された縁部のウエスト部28が設けられ」と記載され、同段落【0026】には、「縫製されたスパッツ10を着用したとき、前身頃12の足刳り形成部24は・・・後身頃14の足刳り形成部32に連続する。後身頃14の足刳り形成部32は、臀部の下端部に沿って股底点付近に達している。」と記載されているから、前身頃の足刳り形成部と後身頃の足刳り形成部とは連続しており、後身頃は臀部の下端部からウエストまでを覆っている、すなわち、臀部を覆っていることが開示されているといえる。
したがって、発明の詳細な説明には、構成要件Bに対応する事項が記載されている。

(3)同段落【0020】には、「大腿部パーツ18は・・・足付根部40が設けられている。足付根部40は、スパッツ10を縫製したときに前身頃12の足刳り形成部24、後身頃14の足刳り形成部25,32、股部パーツ16も足刳り形成部46が連続して形成する開口部に縫い合わされるものである。」と記載されており、大腿部パーツに大腿部が挿通することは明らかであるから、構成要件Cに対応する事項が記載されている。

(4)同段落【0026】には、「縫製されたスパッツ10を着用したとき、前身頃12の足刳り形成部24は、図1に示すように、股底点脇から上方に延出して足の付け根の腸骨棘点a付近を通過し、大腿部外側上方の転子点b付近の上方を通過して湾曲し、後側下向きに延出して、後身頃14の足刳り形成部32に連続する。・・・足刳り形成部24の一番高いところは腸骨棘点a付近である。」と記載されているから、構成要件Dに対応する事項が記載されている。

(5)同段落【0026】には、「後身頃14の足刳り形成部32は、臀部の下端部に沿って股底点付近に達している。」と記載されているから、構成要件Eに対応する事項が記載されている。

(6)同段落【0020】には、「大腿部パーツ18は、僅かに内側に湾曲する曲線で形成された裾部36が設けられ、裾部36の両端部から裾部36に対してほぼ直角に離れる方向に延出するほぼ直線の大腿部後側縁38が形成されている。各大腿部後側縁38間の、裾部36とは反対側の縁部には、外側になだらかに膨出する山40aが形成された足付根部40が設けられている。足付根部40は、スパッツ10を縫製したときに前身頃12の足刳り形成部24、後身頃14の足刳り形成部25,32、股部パーツ16も足刳り形成部46が連続して形成する開口部に縫い合わされるものである。足付根部40の山40aの縁部は、前身頃12の足刳り形成部24と等しい長さに形成され、足刳り形成部24に縫い合わされる部分である。ここで、足付根部40の、足刳り形成部24,25に取り付ける山40aの高さをh1とし、足刳り形成部24,25の湾曲深さをh2とすると、h1はh2よりも低い形状である。また、足付根部40の山の幅をw1とし、足刳り前部24,25の湾曲部分の幅をw2とすると、互いに縫い付けられる同じ位置間で、w1はw2よりも広い形状となっている。」と記載されているから、大腿部パーツの山の高さh1を、足刳り形成部24,25の湾曲深さh2よりも低い形状とすることが開示されているといえる。
ここで、本件発明1の「足刳り形成部の前側の湾曲深さ」については、確定した無効審判1審決(甲11)では、上記第5.1.(1)イ.で摘記したように、『「大腿部パーツの山の高さ」とは、「山40aの高さ」である「h1」を意味すると解すべきである。』、『「足刳り形成部の前側の湾曲深さ」は、「足刳り形成部24,25の湾曲深さ」に対応する語句であり、その意味するところは当該「足刳り形成部24,25の湾曲深さ」である「h2」を意味すると解するのが相当である。』とされている。
したがって、発明の詳細な説明には、構成要件Fに対応する事項が記載されている。

(7)上記(6)に摘記した段落【0020】の記載から、足刳り前部24,25の湾曲部分の幅w2よりも、足付根部40の山の幅w1よりも広く形成することが開示されているといえる。
ここで、本件発明1の「足刳り形成部の湾曲部分の幅」及び「前記山の幅」については、確定した無効審判1審決(甲11)では、上記第5.1.(1)イ.で摘記したように、『「足刳り形成部の湾曲部分の幅」、「前記山の幅」とは、各々、「足刳り前部24,25の湾曲部分の幅」である「w2」、「足付根部40の山の幅」である「w1」を意味すると解すべきである。』とされている。
したがって、発明の詳細な説明には、構成要件Gに対応する事項が記載されている。

(8)同段落【0025】には、「縫い合わされたスパッツ10は、後身頃14の足刳り形成部32が丸く下方に回り込み、筒状に形成された大腿部パーツ18が前方の斜め下方に突出する立体形状となる。」と記載されており、上記「前方」とは、前身頃に対して前方であることは明らかであるから、構成要件Hに対応する事項が記載されている。

(9)同段落【0001】には、「この発明は、大腿部を覆う形状のインナーやスポーツウエア等の下肢用衣料に関する。」と記載されているから、構成要件Iが記載されている。

(10)上記(1)?(9)によれば、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

4.本件発明1が、課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて
構成要件F及び構成要件Gについて、発明の詳細な説明の段落【0020】には、「足付根部40の山40aの縁部は、前身頃12の足刳り形成部24と等しい長さに形成され、足刳り形成部24に縫い合わされる部分である。ここで、足付根部40の、足刳り形成部24,25に取り付ける山40aの高さをh1とし、足刳り形成部24,25の湾曲深さをh2とすると、h1はh2よりも低い形状である。また、足付根部40の山の幅をw1とし、足刳り前部24,25の湾曲部分の幅をw2とすると、互いに縫い付けられる同じ位置間で、w1はw2よりも広い形状となっている。」との記載がある。
ここで、h1、h2、w1、w2の相互の関係につき、仮に「h1=h2」とし、互いに縫い付けられる同じ位置間で「w1=w2」として足付根部40と前身頃12及び後身頃14とを縫い付けた場合、足付根部40は、前身頃12及び後身頃14に対して、下肢用衣料としての前側にも内側にも突出せず、同じ平面になることは、【図3】を参照すれば明らかである。
そうすると、構成要件F及びGが規定するように、「h1<h2」とし、互いに縫い付けられる同じ位置間で「w1>w2」とすれば、足付根部40は、前身頃12及び後身頃14に対して、下肢用衣料としての前側ないし内側のいずれかに突出することも明らかである。
そして、そのように縫い付けられた場合に、足付根部40が下肢用衣料としての前側に突出することを規定しているのが、構成要件Hであると理解される。
以上より、発明の詳細な説明の記載によれば、構成要件Fと構成要件Gとによって構成要件Hを可能とし、これら構成要件F?Hによって、「本発明の下肢用衣料は、大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形状に作られ、股関節の屈伸運動に対して生地の伸張が少なく、生地にかかる張力が小さい状態で運動を行うことができる。これにより、屈伸運動等の際に生地による抵抗が少なく、体にかかる負担が少なく円滑に運動することができる。」(段落【0011】)との効果を奏するものと理解される。
よって、発明の詳細な説明の記載によれば、本件発明1は、構成要件F?Hによって、上記2.に示した「股関節の屈伸運動が円滑に行われ、運動に適した下肢用衣料を提供すること」という課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
また、本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明1と同様に、上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

5.請求人の主張について
(1)無効理由3に関する請求人の主張
ア.請求人は、『本件特許の明細書及び図面には膨出部が「前側」を超えて延びる旨の記載は皆無であり、出願時の技術常識に照らしても、「山」が「前側」を超えて延びる膨出部の一部として構成されている場合にまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない』と主張(請求書 第6)している。

しかしながら、本件発明1の構成要件F及び構成要件Gにおいては、足刳り形成部の「前側の湾曲」深さ及び「湾曲部分」の幅と大腿部パーツの「山」の高さ及び幅との関係を定めるものの、「山」すなわち大腿部パーツの裾部とは反対側の縁部に形成された膨出部分が「前側」のみに位置し、これを超えて延びない旨を明示的に定めるものではない。また、発明の詳細な説明にも、上記膨出部分が「前側」のみに位置し、これを超えて延びないものと解すべき記載は見当たらない。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。

イ.また、請求人は、『膨出部が「前側」を超えて延びている場合、「山」の下側部分を不合理に無視せざるを得ない点が問題であり、無視した「山」の下側部分の影響により、「山」が前方に突出しなければ、発明の効果を奏することはできない。そして、無視した「山」の下側部分の影響を受けても、「山」は構成要件F,Gを充足すれば必ず前方に突出するということを当業者は本件明細書及び図面の記載から理解することはできない。』と主張(請求人要領書(1) 5.(5-1))している。

そこで検討すると、『「山」は構成要件F,Gを充足すれば必ず前方に突出する』という請求人の上記主張は、構成要件F、Gが構成要件Hの十分条件であることを意味する。
しかしながら,上記4.で述べたとおり、構成要件F及びGが規定するように、「h1<h2」とし、互いに縫い付けられる同じ位置間で「w1>w2」とすれば、足付根部40は、前身頃12及び後身頃14に対して、下肢用衣料としての前側ないし内側のいずれかに突出することは明らかであり、そのように縫い付けられた場合に、足付根部40が下肢用衣料としての前側に突出することを規定しているのが、構成要件Hであると理解されるから、構成要件F、Gは、構成要件Hの十分条件ではない。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。

(2)無効理由4に関する請求人の主張
請求人は、本件特許明細書及び図面には臀部ダーツ等を設けない場合を開示・示唆するような記載が皆無であり、しかも、臀部ダーツ等は構成要件Gに密接に関わり、その成否に影響するものであることからすると、構成要件Gは臀部ダーツ等が設けられていることを前提として採用されるものと理解されるところ、請求項には臀部ダーツ等を設けることが反映されていない旨、主張(請求書 第3 4、第7、請求人要領書(1) 5.(6-2))している。

しかしながら、上記3.及び4.で述べたとおり、本件発明は、臀部ダーツの有無にかかわらず、構成要件F?Hによって、上記2.に示した「股関節の屈伸運動が円滑に行われ、運動に適した下肢用衣料を提供すること」という課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、請求人の上記主張は、採用することができない。

6.小括
以上のとおり、本件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であり、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているから、その特許は、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由3及び4によっては、無効とすることはできない。


第7.無効理由5(特許法第36条第6項第1号及び第36条第6項第2号)についての当審の判断
1.無効理由5-1(構成要件F、Gとパターン配置について)(特許法第36条第6項第2号)
(1)本件発明1の構成要件F、Gは、確定した無効審判1審決(甲11の15ページ下から11行?17ページ下から4行:上記第5.1.(1)イ.)のとおり明確であり、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているから、その特許は、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由5-1によっては、無効とすることはできない。

(2)請求人の主張について
ア.請求人は、構成要件F,Gの「湾曲(部分)」が前身頃と後身頃にわたり、かつ、前身頃及び後身頃がパターン図において隙間なく合致しない場合の前身頃及び後身頃のパターンの配置の仕方が、本件特許明細書の記載に照らしても不明であり、その結果、前身頃及び後身頃のパターンの配置の仕方が一義的に定まらず、構成要件F,Gの「湾曲(部分)」の深さや幅を一義的に特定することができないため、ある配置で構成要件F,Gを充たさない製品が、別の配置で構成要件F,Gを充たすことにより、本件発明の技術的範囲に属すると判断される可能性があることからすれば、本件発明は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である旨、主張(請求書 24ページ2?13行)している。

イ.そこで検討する。
構成要件Fの「前記足刳り形成部の前側の湾曲深さ」は、同じく構成要件Fの「前記大腿部パーツの山の高さ」に対応するものであるから、「湾曲深さ」は、「山」の頂点までの高さに対応する、湾曲の頂点までの深さを意味する。
そして、湾曲の頂点は、構成要件Dに「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点」と記載されているから、前身頃にあることが記載されている。
そうすると、「湾曲深さ」は、前身頃において特定されるものであるから、後身頃とのパターン配置を一義的に特定する必要はない。

ウ.構成要件Gの「前記足刳り形成部の湾曲部分の幅」は、同じく構成要件Gの「前記山の幅」に対応するものである。
そして、両者の関係について、本件特許明細書には「また、足付根部40の山の幅をw1とし、足刳り前部24,24の湾曲部分の幅をw2とすると、互いに縫い付けられる同じ位置間で、w1はw2よりも広い形状となっている。」(段落【0020】)との記載があるから、構成要件Gにおける「幅」が「広く」とは、「互いに縫い付けられる同じ位置間」の関係であると理解できる。
すなわち、「湾曲部分の幅」は、互いに縫い付けられる同じ位置間それぞれの箇所ごとに特定されればよいものであって、前身頃と後身頃のパターン配置を一義的に定めることによって全ての箇所の幅を一義的に特定する方法に限られるものではない。

エ.上記イ.及びウ.のとおり、「湾曲深さ」、「湾曲部分の幅」は、パターン配置によることなく特定が可能であるから、本件発明1は明確でないとはいえず、上記請求人の主張は失当である。


2.無効理由5-2(前身頃と後身頃に前側の「湾曲」、「湾曲部分」がわたって延びるとき、かつ前身頃と後身後がパターン図において隙間なく合致しない場合の構成要件F、Gについて)(特許法第36条第6項第1号)
(1)上記「第6.無効理由3(特許法第36条第6項第1号)、及び無効理由4(特許法第36条第6項第1号)についての当審の判断」で述べたとおり、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているから、その特許は、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由5-2によっては、無効とすることはできない。

(2)請求人の主張について
ア.請求人は、前身頃及び後身頃が隙間なく合致せず、前身頃及び後身頃の腰部前側縁が縫合後に立体化されるように前身頃及び後身頃にわたって構成要件F,Gの「湾曲(部分)」が延びる場合であっても、構成要件F,Gの関係を適用可能であるのか否か(構成要件F,Gの関係が立体化した縫合部分等にどのように反映されるのか)、適用可能であるならどのように適用すればよいのか(構成要件F,Gの「湾曲(部分)」をどのように設ければよいのか)、といったことを当該発明の詳細な説明から理解することができない旨、主張(請求書 24ページ14?23行)している。

そこで検討すると、上記「第6.無効理由3(特許法第36条第6項第1号)、及び無効理由4(特許法第36条第6項第1号)についての当審の判断」で述べたとおり、本件発明1における構成要件Fは、【図3】、【図6】?【図8】に示されるような形状の「大腿部パーツ18」の「山40a」の「高さh1」が、「足刳り形成部24,25の湾曲深さh2」よりも低い形状であることを意味するものであり、また、構成要件Gは、【図3】、【図6】?【図8】に示されるような形状の「大腿部パーツ18」の「足付根部40の山の幅」である「w1」を、「足刳り前部24,25の湾曲部分の幅」である「w2」よりも広く形成することを意味するものである。
すなわち、本件発明1の構成要件F及びGは、【図3】、【図6】?【図8】に示されるような、パターン図上(縫合前)での「山の高さ」、「前側の湾曲深さ」、「山の幅」、「湾曲部分の幅」の関係を特定するものである。
そして、上記1.(2)のとおり、「湾曲深さ」、「湾曲部分の幅」は、パターン配置によることなく特定が可能である。
そうすると、請求人が主張するような、前身頃と後身頃が隙間なく合致せず縫合後に立体化される前身頃及び後身頃にわたって「湾曲(部分)」が延びる場合であっても、パターン図上(縫合前)で構成要件F、Gの関係を適用可能であることは、下肢用衣料技術分野の当業者であれば、本件特許明細書及び図面の記載から理解できる。
よって、請求人の上記主張は、採用することができない。

イ.請求人は、本件特許の【図3】に記載の臀部ダーツ31は足刳り形成部24,25の湾曲部分に含まれず、湾曲部分に含めようとしてもどのように含めて良いかが分からないから、含めることを想定できないことを立体化の例として挙げつつ、これと同様に、前後身頃が隙間なく合致せず、湾曲(部分)が前後身頃にわたる場合の記載が本件特許明細書及び図面にないため、この場合に構成要件F,Gの関係を適用することが想定できないと主張(請求人要領書(1) 5.(7-2-2))している。

しかしながら、上記ア.で述べたとおり、構成要件F、Gは、パターン図上(縫合前)での「山の高さ」、「前側の湾曲深さ」、「山の幅」、「湾曲部分の幅」の関係を特定するものであり、また、「湾曲深さ」、「湾曲部分の幅」は、パターン配置によることなく特定が可能なものである。
そうすると、前後身頃が隙間なく合致せず、湾曲(部分)が前後身頃にわたる場合の記載が本件特許明細書及び図面になくとも、当業者は、パターン図上(縫合前)における構成要件F、Gを理解することができるから、請求人の上記主張は、採用することができない。

ウ.請求人は、前後身頃を隙間なく合致させず、甲12の第2図、第4図と同様のダーツを形成することによって前後身頃に盛り上がりを付与すると、腸骨棘点a付近よりも上方から前方の生地の立体的方向性が確保されることになる結果、構成要件Dの技術的意義が損なわれることになる上、下肢用衣料が腸骨棘点a付近よりも上方の部分でだぶつき、大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形状ではなくなり、発明の効果が得られず、発明の課題を解決することができなくなるとも主張(請求人要領書(1) 5.(7-2-2))している。

そこで検討すると、本件発明は、大腿部を覆う形状のインナーやスポーツウエア等のスパッツ類に代表される下肢用衣料(段落【0001】?【0002】)に関するものであるところ、請求人が主張するような「だぶつき」のある下肢用衣料は、身体に密着することを特長とするスパッツ類とはいえないものであるし、「従来のスパッツ類は、臀部には生地が伸びて張力が発生して圧力がかかり、大腿部にも押さえられる方向に力がかかり、運動を妨げる抵抗が身体に生じていた。」(段落【0005】)という従来のスパッツ類の問題点もないものである。
そうすると、請求人が主張するような「だぶつき」のある下肢用衣料は、本件発明の下肢用衣料とは異なるものであって、そのような下肢用衣料が本件発明の課題を解決していないことをもって、本件発明1の構成要件F、Gが特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていないことの根拠にはなり得ない。
よって、請求人の上記主張は、採用することができない。

3.小括
以上のとおり、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしているから、その特許は、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由5によっては、無効とすることはできない。


第8.無効理由6(特許法第36条第4項第1号)についての当審の判断
1.特許法第36条第4項第1号の判断手法
物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号)、物の発明についての実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。

2.前記第6.3.で述べたとおり、本件発明1の構成要件A?Iは、いずれも、発明の詳細な説明に記載されたものである。
また、本件発明2?5の構成要件J?Mについては、構成要件Jは段落【0019】及び段落【0027】の記載、構成要件Kは段落【0009】及び段落【0026】の記載、構成要件Lは段落【0032】の記載、構成要件Mは段落【0034】の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて、いずれも発明の詳細な説明に記載されているといえる。
そして、段落【0023】?【0024】には、下肢用衣料の一実施形態であるスパッツ10の製造方法が記載されており、また、段落【0027】には、図4、図5を用いてスパッツ10の使用状態について説明されている。
そうすると、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件発明の下肢用衣料を製造し、使用することができるといえる。

3.請求人の主張について
請求人は、如何にして構成要件F,Gの「山」及び「湾曲(部分)」を設ければよいのか、また、これらの高さ・深さや幅をどのように特定すればよいのかが、発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されていない旨、主張(請求書 第3 6)している。

しかしながら、上記2.で述べたとおり、発明の詳細な説明の記載から、「前記足刳り形成部の前側の湾曲深さ」、「前記足刳り形成部の湾曲部分の幅」、「大腿部パーツの山の高さ」、「前記山の幅」がどのようなものであるのか理解できるし、「前記大腿部パーツの山の高さを前記足刳り形成部の前側の湾曲深さよりも低い形状とし」(構成要件F)、「前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し」(構成要件G)とすることを実施できる。
よって、請求人の上記主張は、採用することができない。

4.小括
以上のとおり、本件発明について、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているから、その特許は、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由6によっては、無効とすることはできない。


第9.無効理由7(特許法第29条第1項柱書及び特許法第36条第4項第1号)についての当審の判断
1.無効理由7-1(構成要件F、GによってHが得られる場合(F、GがHの十分条件の場合))(特許法第29条第1項柱書)
(1)特許法第29条第1項柱書の判断手法
特許法第29条第1項柱書は、産業上利用することができる発明をした者がその発明について特許を受けることができることを規定しているところ、その特許要件は、「発明」であること、及び 「産業上利用することができる発明」であることの二つである(審査基準第III部第1章 発明該当性及び産業上の利用可能性を参照)。
そして、上記二つの特許要件を満たすか否かは、以下のように判断される。
A.発明該当性
発明該当性の要件については、請求項に係る発明が以下のいずれかの類型に該当する場合は、発明該当性の要件を満たさないと判断される(審査基準第III部第1章2.発明該当性の要件についての判断を参照)。
(i)自然法則自体
(ii)単なる発見であって創作でないもの
(iii)自然法則に反するもの
(iv)自然法則を利用していないもの
(v)技術的思想でないもの
(vi)発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの

B.産業上の利用可能性
産業上の利用可能性の要件については、請求項に係る発明が以下のいずれかの類型に該当する場合は、産業上の利用可能性の要件を満たさないと判断される(審査基準第III部第1章3.産業上の利用可能性の要件についての判断を参照)。
(i)人間を手術、治療又は診断する方法の発明
(ii)業として利用できない発明
(iii)実際上、明らかに実施できない発明

(2)そこで、本件発明が上記二つの特許要件を満たすか否かについて検討する。
本件発明は、「下肢用衣料」という物の発明に関し、上記「第8.無効理由6(特許法第36条第4項第1号)についての当審の判断」に示したとおりその実施が可能なものであり、上記「第6.無効理由3(特許法第36条第6項第1号)、及び無効理由4(特許法第36条第6項第1号)についての当審の判断」に示したとおり本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、上記「第5.無効理由2(特許法第36条第6項第2号)についての当審の判断」に示したとおり、その記載は、明確なものである。
そうすると、本件発明が、上記(1)A.の(i)?(vi)、及び上記(1)B.の(i)?(iii)のいずれにも該当しないことは、明らかである。

(3)請求人の主張について
請求人は、『発明の詳細な説明は、構成要件F,Gによって構成要件Hが得られるとするが、実際のところ、構成要件F,Gによって構成要件Hは得られない。従って、本件発明とされるものは、発明として未完成であり、特許法第29条第1項柱書きにいう「発明」に当たらず、特許を受けることができない』と主張(審判請求書 10ページ6?10行)している。

そこで検討すると、上記請求人の主張は、構成要件F、Gが構成要件Hの十分条件であることを前提としている。
しかしながら、上記第6.5.(1)イ.で述べたとおり、構成要件F、Gは構成要件Hの十分条件ではないから、請求人の上記主張は、その前提において誤りである。
よって、請求人の上記主張は、採用することができない。

(4)以上のとおり、本件発明は、「発明」であること、及び 「産業上利用することができる発明」であることの二つの特許要件を満たすものである。
よって、本件発明は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反して特許されたとはいえず、本件特許が同法第123条第1項第2号に該当することを理由とする無効理由7-1によっては、無効とすることはできない。


2.無効理由7-2(構成要件F、GによってHが得られる場合(F、GがHの十分条件の場合))(特許法第36条第4項第1号)
上記第6.5.(1)イ.で述べたとおり、構成要件F及びGは構成要件Hの十分条件ではないから、構成要件F及びGが構成要件Hの十分条件である場合を前提とする請求人の無効理由7-2についての主張(請求書 10ページ11?15行)は失当である。
そして、上記「第8.無効理由6(特許法第36条第4項第1号)についての当審の判断」で述べたとおり、本件発明について、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているから、その特許は、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由7-2によっては、無効とすることはできない。


3.無効理由7-3(構成要件F、GによらずHが得られる場合(F、GがHの十分条件でない場合))(特許法第36条第4項第1号)
(1)本件特許明細書及び図面の記載について
上記第6.5.(1)イ.で述べたとおり、構成要件F、Gは構成要件Hの十分条件ではない。
そして、上記「第8.無効理由6(特許法第36条第4項第1号)についての当審の判断」で述べたとおり、本件発明について、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているから、その特許は、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由7-3によっては、無効とすることはできない。

(2)請求人の主張について
請求人は、本件発明1が、構成要件F,Gによって構成要件Hを得るものではなく、構成要件F,Gを満たすもののうち、構成要件Hが得られるもののみに限ったものであるとの解釈は、構成要件F,Gによって構成要件Hが得られるとする本件特許の明細書【0020】、【0027】の記載に反することになるし、この場合、構成要件F,Gの技術的意義が無いことは明白となる旨、主張(請求書 第10 2)している。

請求人の上記主張は、「構成要件F,Gによって構成要件Hが得られるとする本件特許の明細書【0020】、【0027】の記載」を前提とするものであり、これは、構成要件F、Gが構成要件Hの十分条件であることを意味する。
しかし、上記第6.5.(1)イ.で述べたとおり、そもそも構成要件F、Gは構成要件Hの十分条件ではないから、請求人の上記主張は、前提において誤りである。
よって、請求人の上記主張は、採用することができない。

4.小括
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反して特許されたとはいえず、また、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているから、その特許は、同法第123条第1項第2号及び第4号に該当せず、無効理由7によっては、無効とすることはできない。


第10.無効理由1(特許法第29条第1項第2号及び第29条第2項)についての当審の判断
1.先行製品A(株式会社タカギ品番GT5681/UN5681)に基づく無効理由1-A1(先行製品Aを主とする特許法第29条第1項第2号)、無効理由1-A2(先行製品Aを主とする特許法第29条第2項)及び無効理由1-A3(先行製品Aを主とする特許法第29条第2項)について
(1)証拠
以下の証拠には、次の記載がある。
ア.甲6の4(パターン)
(ア)甲6の4は、GT5681/UN5681のパターンである。
(イ)「前身頃」には、「5681GT,UN」、「M」、「00/08/08」の記載がある。
(ウ)「脇身頃」には、「5681GT,UN」、「M」、「00/08/08」の記載がある。
(エ)「後身頃」には、「5681GT,UN」、「M」、「00/08/08」の記載がある。
(オ)「表マチ」には、「5681GT,UN」、「M」、「00/08/08」の記載がある。
(カ)「裏マチ」には、「5681GT,UN」、「M」、「00/08/08」の記載がある。
(キ)「足口レース」には、「SYUSEIGO」、「M」、「00/08/08」の記載がある。

イ.甲5(陳述書)
(ア)「・・・製品番号GT5681/UN5681(GTとUNの記号は包装形態が異なる仕向先の記号であり、GT5681とUN5681は、各々包装は異なりますが製品内容は同じです)、・・・」
(2(1)(ア))

(イ)『(エ)パターン(資料4)
平成12年8月8日にAGMSシステムから出力した、GT5681/UN5681のMサイズのパターンです。AGMSシステムは、出力したパターン上に、品番、パーツ名、サイズ、出力した日付が印字される設定になっています。本パターン上には、品番「5681GT_UN」のほか、日付「00/08/08」が印字されておりますので、2000年(平成12年)8月8日当時に出力した品番GT5681/UN5681のパターンに間違いありません。』
(2(1)(エ))

ウ.甲6の7(販売実績)
(ア)表のタイトルとして「販売実績」の記載がある。
(イ)「GT5681/UN5681」と記載された上段の表には、以下の記載がある。
a.列のタイトル「品番」が「5681GT」の行には、
「年度」に「2002」、
「名称」に「株式会社タカハタ」、
「月数量(枚)」に「44」、
「月金額(円)」に「12320」、
「4月数量」に「44」、
「4月金額」に「12320」
の記載がある。
b.列のタイトル「品番」が「5681UN」の行には、
「年度」に「2002」、
「名称」に「(株)ベイシア」、
「月数量(枚)」に「60」、
「月金額(円)」に「18900」、
「2月数量」に「60」、
「2月金額」に「18900」
の記載がある。

エ.甲25(GT5681/UN5681、D296ON、D346UNの各商品販売実績について)
「私は、1992年に・・・
平成30年4月3日付中村彰男氏の陳述書添付資料7販売実績の表部分は、2018年(平成30年)3月頃、私が、社内の売上実績データベース(マイクロソフト社のデータベース管理システムソフトウェアであるマイクロソフト・オフィス・アクセスにてプログラミングしたデータベース)から抽出したものです。

当社が販売する商品は、オンラインまたはFAXによる方法で受注していますが、オンライン受注の場合、受注日、得意先名、商品の品番、数量等の受注情報は、得意先から受信したデータがそのまま売上実績データベースに取り込まれるしくみになっており、FAX受注の場合は、FAX受領の都度当社の担当従業員が受注情報を売上実績データベースに手入力しております。・・・このように受注データが取り込まれまたは入力された売上実績データベースにより、当社は、商品の売上を日々集計・管理しております。・・・なお、2001年以前は、このような売上実績データベースによる管理を行っておりませんでしたので、2001年以前のデータは存在しません。当社商品品番GT5681/UN5681、D296ON、D346UNについても、当社のその他の商品と同様、上記のようにオンラインまたはFAXにて受注し、売上実績データベースに、受注データが取り込まれまたは入力されて、受注日、得意先名、商品の品番、数量等の受注情報が集計・管理されております。

私は、上記売上実績データベースにおいて、品番(GT5681、UN5681、D296ON、D346UN)別、得意先別、年度別、月別の抽出条件を指定して抽出を試み、平成30年4月3日付中村彰男氏の陳述書添付資料7販売実績の表部分を抽出しました。具体的には、別紙1画像のようにマイクロソフト・オフィス・アクセスの販売実績データベースで、条件を指定して抽出クエリを作成し、実行すると、別紙2画像のように、指定した条件での抽出結果が表示されますので、この抽出データをマイクロソフト・オフィス・エクセルにコピーする(別紙3画像)という手順です。・・・」

オ.甲44(販売実績 品番+サイズ別)
(ア)表のタイトルとして「販売実績 品番+サイズ別」の記載がある。
(イ)「GT5681/UN5681」と記載された上段の表には、以下の記載がある。
a.列のタイトル「品番」が「5681GT」、かつ列のタイトル空白が「M」の行には、
「年度」に「2002」、
「名称」に「株式会社タカハタ」、
「月数量(枚)」に「22」、
「月金額(円)」に「6160」、
「4月数量」に「22」、
「4月金額」に「6160」
の記載がある。
b.列のタイトル「品番」が「5681UN」、かつ列のタイトル空白が「M」の行には、
「年度」に「2002」、
「名称」に「(株)ベイシア」、
「月数量(枚)」に「28」、
「月金額(円)」に「8820」、
「2月数量」に「28」、
「2月金額」に「8820」
の記載がある。

カ.甲26(株式会社タカギ商品の販売実績について)
「私は昭和57年2月に税理士登録を行い、・・・
タカギでは、平成14年から、現在使用されている売上実績データベースで売上の管理を行っているとの報告を受けています。私は、平成17年9月にタカギの顧問税理士に就任以降、この売上実績データベースから抽出したタカギの売上を毎月定期的に確認し、その数字をもとに、決算書類の作成や税務申告を行っていますが、この売上実績データベースでの売上の管理は正確に行われております。・・・上記のとおり、タカギの売上実績データベースでの売上の管理は正確に行われていますので、別紙抽出結果も、売上の事実を正確に反映していると判断することができると考えます。」

キ.甲6の1(商品設計書)
(ア)左上部に「年度/シーズン 2000F/W」の記載とともに、「製品品番」として「GT」、「UN」、「5681」の記載がある。
(イ)「使用素材」の表に、「主素材」、「副素材」の各種記載とともに、「容量(正)」の「M」として「0.60」、「0.54」の記載がある。
(ウ)「規格寸法」の表に、「サイズ」「M」として各種寸法が記載されている。
(エ)左側に各パターンが接続された様子が図示されている。

ク.甲6の5(製品規格書)
(ア)上部に、「品番」として「GT5681」の記載がある。
(イ)左側に「採寸図」が記載されている。
(ウ)中央の「採寸寸法」表には、「M」の各部採寸寸法と採寸方法が記載されている。
(エ)下部の「素材」表には、各パーツの素材と「M」の容量が記載されている。
(オ)上部には、「シーズン」として「2000年 F/W」と記載されている。

ケ.甲6の6(縫製仕様書)
(ア)上部に「品番」として「GT5681」の記載がある。
(イ)左側に、パターン同士が縫製により接続されていることの図示と共に、各部の縫製情報が記載されている。
(ウ)右側に、縫製情報や糸の指定が記載されている。
(エ)左下部に、「サイズ展開」として「M」が記載されている。
(オ)中央上部に「シーズン」として「2000年 F/W」と記載されている。

コ.甲24の1(品質検査報告書)
(ア)右中央部に「品名・品番」として「UN5681」の記載がある。
(イ)中央上部に「サイズ表示」として「M」の記載がある。
(ウ)右上部の「納入先」の「会社名」として「ユニー(株)」の記載がある。
(エ)右中央部の「判定」の「適用規格」として「ユニー(株)基準」、「製品検査」として「合格」に丸印、「生地検査」の「染色堅牢度」の「合格」に「2色」、「ホルマリン」の「合格」に丸印の記載がある。
(オ)右下部の「(備考)」に「○合」の押印がある。

サ.甲24の2(縫製検査報告書)
(ア)中央上部に「品番」として「UN5681」、「サイズ表示(代表)」として「M」の記載がある。
(イ)左上部の「ユニー担当者」として「新山」の記載がある。
(エ)右下部には、「不合格枚数」として「0枚」、「判定」の「表示」として「適正」に丸印、「外観」として「合格」に丸印の記載がある。

シ.証人中村彰男の証言
証人中村彰男は、平成31年2月7日、特許庁審判廷において宣誓の上、以下のとおり述べた。なお、段落番号は、反訳書面による。
(ア)「請求人代理人弁護士 富永 夕子
甲第6号証の1を示す。
010 では、GTUN5681はいつごろの販売を予定した商品でしたか。
左上にあります年度シーズン欄、2000FWとありますので、2000年の秋冬の販売を予定していたものだと思います。」

(イ)「被請求人ら復代理人弁護士 今西 康訓
甲第6号証の7を示す。
140 この販売実績の集計は、データベースからの抽出ということですけれども、もとになるデータが、その当時、例えば2002年に入力されたということを証明する方法は何かあるんでしょうか。
ちょっと私のほうではわかりません。
141 この先行製品Aについては、平成12年の秋ごろから販売を開始したということですが、平成14年度に2月に60枚、4月に44枚販売をして、販売を終了したということでよろしいんでしょうかね。
はい、そういうことだと思います。
142 そうすると、ほとんどの販売は平成13年度ということになりますでしょうか。
平成13年度といいますと、何年になりますか。そうですね、2002年、2001年・・・。
143 前の年にそこに出ている。
はい。
144 累計で何枚ぐらい販売をされたかって、わかりますでしょうか。
いえ、ちょっとわかりません。
145 通常の、この手の新規の商品というのは何枚ぐらい製造されるものですか。
どうでしょう。5,000枚から2万枚程度ではないでしょうか。
・・・
148 この先行製品Aについては、大部分はユニーが仕入れられたと、こういう理解でいいんでしょうか。
はい、そういう理解でいいと思います。
149 そのユニーのほうにはこの商品仕入れましたよというような資料は残ってなかったんでしょうか。
残ってなかったんだと思います。
150 その点は確認されてます。
一応、営業には、当時の資料があればということで確認はしています。
151 で、ないという回答だったんで。
回答はちょっとなかったんですけど、回答がないということはないもんだと思って。
152 問い合わせたけど回答ないんで、そのままになっていると、こういう状態ですかね。
はい。」

(ウ)「被請求人ら復代理人弁護士 今西 康訓
甲第6号証の1はそのままで、甲第6号証の2を示す。
226 この販売される製品そのものを手元に置いておくというようなシステムはないんですか。
それは私どものところではないですけど、企画担当者、営業のほうではあるのかもしれないです。
227 この先行製品Aが残っているかどうかは確認されました。
した、はい、したはずです。
228 したはず。
はい。あと、僕も指示をしただけなので、自分で探したわけじゃないので、はい。
229 回答はありましたか。
回答としては、残っているものを全部出したということなので、それが回答だと思います。なかったということはありますけど、それが回答だと思います。
230 販売する商品を手元に置いておくかどうかというのは、誰が判断するんですか。
企画担当者、営業担当者の個々の判断だと思います。
231 そういう判断をしたときに、残しておくのはどういう保管をされるんでしょうか。
いや、それはちょっと保管している人に聞いてみないとわからないです。
232 それと、この先行製品Aに関しては、カタログなんかは作成されておられないんですか。
作成の実績はわからないんですけど、残っているカタログを探したところによると、ちょっと残ってなかったので、作成したかどうかも、ちょっとわかりません。
233 通常は作成するものですか、しないものですか。
いえ、うちのプライベートブランドということであれば、作成した時期はあるんですけど、必ず毎年、作成していったということでもないので、そこのところはちょっとわかりません。
234 客先のほうではカタログとかチラシは作成されていませんか。
いや、それはちょっとわかりません。
235 その点は確認されてます。
いえ、していません。」

(エ)「被請求人ら復代理人弁護士 今西 康訓
甲第27号証(2頁ないし4頁)を示す。
241 この写真に写っているサンプルというのは、甲の現在が40号証で出されているものと同じものでしょうか。それと写真のものは同じものという理解でいいんでしょうか。
はい、同じものというか、同じときに製作した中の一つです。
242 これ、吊ってるのとトルソーに着せてるので何か色が違うように見えるんですけど、同じものですか。
まあ、光線の加減で違うだけで同じものです。
243 同じものですか。
はい。
244 この写真に写っているサンプルと、実際に販売されておられたという、先行製品Aとの違いというのは、どこでしょうか。
ちょっと生地のほうはどこまで近い生地なのかというのはわかりませんけども、レース自体は当時のものではありません。
245 まず、生地が同じかどうかは、どうでしょうか。
生地が同じかどうかは、ちょっと近い生地を用意してくれという指示の出し方をしましたので、そこまでの確認はしていません。
246 使われている型紙は、先ほどの2000年8月8日の型紙を使われているのか、あるいは最近打ち出した041001の型紙。
最近の、はい、最近の型紙です。
247 最近の型紙を使われているんですね。縫製に使われている糸というのは、商品設計書なり縫製仕様書なりで出てくる糸が使われているんでしょうか。
基本的にはそういう指示をしていますが、色に関してはもう仕様書変わってもいいという指示はしました。
248 縫製の方法というのは、縫製仕様書のとおり縫製されてますか。
はい。
249 このサンプルの制作のために、新たに生地とか糸とか購入されているんでしょうか。
いえ、それはありません。
250 手元にあるので似たもので作ったと、こういうことでしょうか。
はい、そういう理解でいいと思います。」

(オ)「被請求人ら復代理人弁護士 今西 康訓
322 最後に1点だけ、ちょっと聞き忘れたんですけど、先行製品Aの関係で、商品名がGTUN5681が5681GTUNみたいな表示で、このUNというのはユニーというのはわかるんですけど、GTというのはどういう意味があるんでしょう。
これは弊社のオリジナルの、プライベートブランドのGTというのことですね。だからGS、同じGSなんですけれども、特にGS、Gショーツの、大阪で販売するものと東京で販売するもので管理上分けたいということで、GTのTは東京だったような気がします。」

(カ)「請求人代理人弁護士 藤本 英二
331 あと、ちょっと先ほどユニーの話が出ましたけど、販路の話ですね。ユニー向け製品というのは、基本的には名古屋タカギ経由で売られるものということですか。
はい、そうです。
332 タカギから名古屋タカギ、それからユニーに売られ、そういう商流で流れていくということですか。
はい。
333 名古屋タカギはユニー向け製品について、ユニー以外にも販売するんですか。
販売する可能性はあります。
334 最初はユニー向けに開発して、ユニーにたくさん卸したけれども、あと、例えば残った在庫を別のところに売るとか、そういうこともあるわけですか。
はい。ネーム自体はタカギの商品ということですけれども、他に売ることは十分考えられます。」

(2)先行製品Aについて
ア.先行製品A
(ア)請求人の主張する先行製品Aは、請求人である株式会社タカギが製造、販売したとされる品番GT5681/UN5681製品であるが、製品そのものは、証拠として提出されていない。

(イ)先行製品Aのような下肢用衣料において、製品は、型紙(パターン)と、各パターンをもとに裁断された生地をどのように縫製して仕上げるかの設計、規格、縫製仕様等により製造されることが技術常識であるところ、先行製品Aの型紙として甲6の4(パターン)が提出されている。
そして、甲6の4(パターン)をみると、上記(1)ア.(イ)?(カ)に示したように、「5681GT,UN」、「M」の記載がある(甲6の4(パターン)のうち、足口レース(上記(1)ア.(キ))を除く。)。
この「5681GT,UN」、「M」は、甲5(陳述書)(上記(1)イ.(イ))によると、「5681GT,UN」は品番を、「M」はMサイズを意味している。
したがって、先行製品Aは、株式会社タカギの品番「GT5681/UN5681」のMサイズの下肢用衣料である。

(ウ)また、品番について、請求書では「GT5681/UN5681」、甲6の3(パターン ファイルシート)、甲6の4(パターン)では「5681GT,UN」、甲6の5(製品規格書)、甲6の6(縫製仕様書)では「GT5681」、甲6の7(販売実績)では、「GT5681/UN5681」、「5681GT」、「5681UN」、甲37の1?甲37の6では「5681GT_UN」のように、その表記が不統一であるが、それについては、甲5(陳述書)(上記(1)イ.(ア))によれば、GTとUNの記号は仕向先の記号であること、請求人の主張(請求人要領書(2) 5.(4-1-2-4))によれば、品番中のアルファベット2文字は、販売先を区別するために請求人が事務処理上付しているコードであることからみて、アルファベット2文字は仕向先・販売先を示す記号であり、その前後に表記される数字は製品を区別するためのものであると解するのが相当である。

(エ)さらに、甲6の3、甲6の4における「5681GT,UN」の表記と、甲37の1?甲37の6における「5681GT_UN」の表記については、甲23(陳述書(2))、甲32(ご協力依頼書)?甲36の8(甲36の1AGMS株式会社回答書添付資料7)、及び請求人要領書(1)(5.(3-1-1-2))によれば、請求人がパターン作成・管理に使用しているCADシステムであるAGMSシステムにおいて、旧型システムで使用していた「5681GT,UN」が、新しいPC型AGMSシステムを導入した際のデータ変換により「5681GT_UN」に変換されたことによるものであると理解できる。
また、甲6の7(販売実績)における「5681GT」、「5681UN」の表記は、請求人要領書(2)(5.(4-1-2-4))によれば、販売実績データのデータベース入力の都合によるものであると理解できる。
そうすると、甲6の3(パターン ファイルシート)、甲6の4(パターン)では「5681GT,UN」、甲6の5(製品規格書)、甲6の6(縫製仕様書)では「GT5681」、甲6の7(販売実績)では、「GT5681/UN5681」、「5681GT」、「5681UN」、甲37の1?甲37の6では「5681GT_UN」と表記されているものは、いずれも株式会社タカギの品番GT5681/UN5681のMサイズの下肢用衣料であるといえる。

以上をふまえ、先行製品Aとして「GT5681/UN5681 Mサイズ」について、以下に検討する。

イ.公然実施
(ア)先行製品Aが販売された事実を直接的に立証するための伝票、領収書といった証拠は、提出されていない。
請求人要領書(1)(5.(3-1-1-1))によると、「先行製品Aが販売されたのは、15年以上も前の時期であることから、当時の伝票等は保管されていない。」ものである。
また、先行製品Aが掲載されたカタログ、チラシ等の配布物についても、証拠は提出されていない。
証人中村彰男の証言(上記(1)シ.(ウ)段落番号232?235)によると、先行製品Aが掲載されたカタログ等が作成されたか否かは、不明である。
そして、先行製品Aを販売した相手方による、先行製品Aを購入したことを示す証拠も提出されていない。
証人中村彰男の証言(上記(1)シ.(イ)段落番号148?152)によると、先行製品Aの大部分を販売した相手先であるユニー株式会社における、購入した事実を立証する資料の存在は、不明である。
そうすると、先行製品Aが販売された事実を直接的に立証するに足りる証拠はない。

(イ)次に、甲6の7(販売実績)(上記(1)ウ.)は、請求人である株式会社タカギ社内の売上実績データベースから抽出され、マイクロソフト・オフィス・エクセルにコピーされた(上記(1)エ.)、GT5681/UN5681の販売実績を示す証拠であるが、Mサイズに関する記載がないため、先行製品A(GT5681/UN5681 Mサイズ)の販売実績を直接示すものではない。

(ウ)そこで、甲44(販売実績 品番+サイズ別)(上記(1)オ.)をみると、請求人要領書(2)(4-1-2-7)によれば、「先行製品AないしCの各販売数量のうち、サイズ別に細分化したデータ一覧表」であり、列のタイトル空白に記載された「M」は、Mサイズを意味するものである。
また、請求人要領書(2)(4-1-2-3)によれば、「販売実績データ一覧表の各年度は請求人の決算月で区切られており、毎年2月から翌年の1月までが同一年度である。」から、先行製品A(GT5681/UN5681 Mサイズ)について、上記(1)オ.(イ)a.の「5681GT」、「M」は、「株式会社タカハタ」に対して2002年4月に22枚、6160円の販売があったことを、上記(1)オ.(イ)b.の「5681UN」、「M」は、「(株)ベイシア」に対して2002年2月に28枚、8820円の販売があったことをそれぞれ意味するものである。

(エ)ここで、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)は、甲25(GT5681/UN5681、D296ON、D346UNの各商品販売実績について)(上記(1)エ.)によると、以下のようなものである。
a.マイクロソフト・オフィス・アクセスの売上実績データベースにおいて、条件を指定して抽出クエリを作成・実行することで、抽出結果が表示され、抽出データをマイクロソフト・オフィス・エクセルにコピーすることで作成されたもの。
b.売上実績データベースへの入力は、オンライン受注の場合、得意先から受信したデータがそのまま売上実績データベースに取り込まれ、FAX受注の場合、FAX受領の都度、担当従業員が受注情報を売上実績データベースに手入力している。
c.「5681GT」、「M」及び 「5681UN」、「M」の受注が、オンライン受注であったかFAX受注であったかが不明であるから、売上実績データベースへの入力が、得意先から受信したデータがそのまま売上実績データベースに取り込まれたものであるのか、担当従業員による手入力であったのかは、不明である。

(オ)甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)は、上記(エ)a.?c.のように、売上実績データベースにおける抽出作業という加工段階、マイクロソフト・オフィス・エクセルへのコピー段階がある上、売上実績データベースへの入力が手入力だった可能性もあるから、手入力段階、加工段階、コピー段階という情報の正確性に影響を及ぼす可能性のある段階が複数存在しているものである。

(カ)次に、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)について、甲26(株式会社タカギ商品の販売実績について)では、請求人である株式会社タカギの顧問税理士による意見が述べられている。
これは、上記(1)カ.に示したように、「売上実績データベースから抽出したタカギの売上を毎月定期的に確認」するにとどまるものであって、販売された製品自体の確認や、製品ごとに販売先に対して販売が事実であったかの確認が行われていたか否かは明らかでなく、特に、先行製品A(GT5681/UN5681 Mサイズ)の販売に関して確認が行われたか否かも明らかでない。
さらに、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)のデータは、2002年(平成14年)2月及び4月のものであるが、顧問税理士就任の平成17年(2005年)9月以前で3年以上前のデータであるから、少なくとも、販売があった当時に顧問税理士によって確認がなされたものではない。

(キ)また、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)のデータは、「5681GT」及び「5681UN」に関するものである。
ここで、上記ア.(ウ)に示したように、品番中のアルファベット2文字は、仕向先・販売先を区別するためのものであり、証人中村彰男の証言(上記(1)シ.(オ)段落番号322)によると、「GT」は東京向けプライベートブランドを、「UN」は「ユニー株式会社」向けであることを意味する。
そして、上記(ウ)で示したとおり、「5681UN」は、「(株)ベイシア」へ販売されたデータであるが、「UN」は「ユニー株式会社」向けの製品であるから両者は整合しないし、「5681GT」は、「株式会社タカハタ」へ販売されたデータであるが、「GT」は東京向けプライベートブランドであるから販売先との整合性が不明である。
ここで、証人中村彰男の証言(上記(1)シ.(カ)段落番号331?334)によると、在庫を他に売ることがあり得るとのことであるが、これは、名古屋タカギがユニー以外にも販売することがあり得るということであって、請求人(株式会社タカギ)が実際に、他に販売したことまでをも意味するものではない。
また、請求人上申書(3)(5.第4 1)によると、「時期をずらして複数の販売先で販売することが決定した場合には、販売先決定の都度パターンデータが作成されることになる」とのことであるから、「(株)ベイシア」及び「株式会社タカハタ」への販売があったのであれば、「(株)ベイシア」及び「株式会社タカハタ」を示す英文字2文字をパターン名に追加したデータが追加登録されることとなるはずであるものの、請求人上申書(2)(5.(2))によると、『先行製品Aについては、・・・試作時の仮品番以外のパターンデータが3つ存在する。AGMSシステムに保存されている、この3つのデータのファイル名は、「5681GT」、「5681GT_UN」、「5681-SYUSEIGO」である。』から、「(株)ベイシア」及び「株式会社タカハタ」への販売があったことを示すパターンデータはない。
そうすると、証人中村彰男の証言を鑑みても、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)のデータは、この点で販売先との整合性があるとはいえない。

(ク)甲6の1(商品設計書)には「2000F/W」(上記(1)キ.(ア))、甲6の5(製品規格書)には「2000年 F/W」(上記(1)ク.(オ))、甲6の6(縫製仕様書)には「2000年 F/W」(上記(1)ケ.(オ))と記載されており、証人中村彰男の証言(上記(1)シ.(ア)段落番号010)によると、「F/W」は秋冬の販売を予定していたものであるから、先行製品Aは、秋冬物衣料である。
一方、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)によると、上記(ウ)で述べたとおり「5681GT」は2002年4月に、「5681UN」は2002年2月に販売したとされている。
ここで、衣料の販売時季は、秋冬物であれば秋前、夏の終わり頃から販売が開始され、冬の終わり頃には、次の春夏物に入れ替えて販売されることが一般的であるから、秋冬物衣料である先行製品Aの販売時季として、4月は時季外れであるし、2月にしてもかなり遅い時季である。そして、そのような時季外れに販売された事情は明らかではない。
そうすると、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)のデータは、一般的な販売時季とも整合しているとはいえない。

(ケ)そのほか請求人は、請求人要領書(1)(5.(3-1-1-1))、請求人上申書(2)(5.(2))において、甲6の4(パターン)、甲6の5(製品規格書)、甲6の6(縫製仕様書)の存在や、甲6の1(商品設計書)への容量の記入、甲24の1(品質検査報告書)及び甲24の2(縫製検査報告書)の検査合格などをもって、先行製品Aが販売されたものであることを主張している。
しかしながら、甲6の1(商品設計書)、甲6の4(パターン)、甲6の5(製品規格書)、甲6の6(縫製仕様書)は、先行製品Aである「GT5681/UN5681」の製造準備が整ったことを示すものであって、実際に製造されたことを示すものではないし、ましてや「GT5681/UN5681」が販売されたことを示すものではない。
さらに、品番の「UN」は「ユニー株式会社」向け、「GT」は東京向けプライベートブランドであるから、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)に記載された販売先である「(株)ベイシア」、「株式会社タカハタ」向け製品の製造準備が整ったことを示すものではない。そうすると、甲6の1(商品設計書)、甲6の4(パターン)、甲6の5(製品規格書)、甲6の6(縫製仕様書)と、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)との結びつきは、不明であるといわざるを得ない。
また、甲24の1(品質検査報告書)(上記(1)コ.)、甲24の2(縫製検査報告書)(上記(1)サ.)は、いずれも「UN5681」が検査に合格したことを示すことにとどまり、本格的な生産が開始されたことを示すものではないし、ましてや先行製品Aである「GT5681/UN5681」が販売されたことまでもを示すものではない。
そもそも、「ユニー株式会社」向け製品としての「UN5681」の検査であるから、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)に記載された販売先である「(株)ベイシア」、「株式会社タカハタ」向け製品の検査が合格したことを示すものでもない。

(コ)そうすると、先行製品Aが本件特許に係る出願前に販売されたことを直接示す証拠は、上記(ア)のとおり提出されておらず、先行製品Aが実際に甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)のデータのとおりに販売されたとまではいえない。さらに、請求人が示した証拠は、上記(イ)?(ケ)のとおり、各証拠のデータの信頼性や、その内容に不整合、不明な点があり、また各証拠の間の結びつきが不明なところもあるから、それらを総合しても、先行製品Aが販売されたもの、すなわち、公然と実施されたものとはいえない。

(サ)小括
以上のとおり、先行製品A(GT5681/UN5681 Mサイズ)は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然と実施されたものといえない。
よって、本件発明1は、特許法第29条第1項第2号に該当せず、また、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-A1、及び無効理由1-A2によっては、無効とすることはできない。
また、本件発明2、3及び5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定するものであるから、本件発明2、3及び5についても同様に、特許法第29条第1項第2号に該当せず、また、本件発明2、3及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-A1、及び無効理由1-A2によっては、無効とすることはできない。
さらに、本件発明4は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明4に係る特許についても同様に、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-A3によっては、無効とすることはできない。

(3)予備的検討
上記(2)において検討したとおり、先行製品Aは、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において公然と実施されたものといえない。
しかし、念のために、請求人が主張するとおり、先行製品Aが本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において公然と実施されたものであって、その構成が甲6の4(パターン)の各パターンを甲6の6(縫製仕様書)に示されるように縫製することによって得られた品番GT5681/UN5681のMサイズの下肢用衣料であるとして、以下に検討する。

ア.先行発明A(GT5681/UN5681 Mサイズ)の認定
甲6の4(パターン)の各パターンを甲6の6(縫製仕様書)に示されるように縫製することを考慮すると、品番GT5681/UN5681のMサイズの下肢用衣料について、以下の事項が認められる。
(ア)前身頃と脇身頃が接続されて大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部が、前身頃と脇身頃によって構成されている。
(イ)脇身頃と後身頃が接続されている。後身頃は、足刳り形成部が構成されておらず、脇身頃と共に臀部を覆うものである。
(ウ)足口レースは、前身頃と脇身頃の各足刳り形成部に接続され、大腿部が挿通するものである。
(エ)前身頃と脇身頃によって構成される足刳り形成部の上部が湾曲しており、湾曲の頂点が存在する。
(オ)脇身頃の足刳り形成部の下端縁は、臀部の下端付近に位置している。
(カ)足口レースには山がある。
(キ)足口レースは取り付け状態で筒状となっている。
(ク)下肢用衣料としてのショーツである。

上記(ア)?(ク)の事項を整理すると、以下の先行発明Aが認定できる。
なお、各段落の先頭の記号は、分説記号であり、本件発明1に付した分説記号に倣って当審が付した。

a-1:大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部を備えた前身頃と、
b-1:前身頃に接続され臀部を覆うとともに、前身頃の足刳り形成部に連続する足刳り形成部を有した脇身頃と、脇身頃に接続され臀部を覆う後身頃と、
c-1:前身頃と脇身頃の各足刳り形成部に接続され大腿部が挿通する足口レースを有し、
d-1:前身頃及び脇身頃によって構成される足刳り形成部の湾曲した頂点があり、
e-1:脇身頃の足刳り形成部の下端縁は臀部の下端付近に位置し、
f-1:足口レースには山があり、
h-1:足口レースは取り付け状態で筒状である、
i-1:ショーツ(GT5681/UN5681 Mサイズ)。

イ.本件発明1について
本件発明1は、上記第2.に示したとおりのものである。

ウ.本件発明1と先行発明Aの対比
先行発明Aの「開口部」は、本件発明1の「開口部」に相当し、以下同様に「前身頃」は「前身頃」に、「足刳り形成部」は「足刳り形成部」に、「足口レース」は「大腿部パーツ」に、「足刳り形成部の湾曲した頂点」は「足刳り形成部の湾曲した頂点」に、「ショーツ(GT5681/UN5681 Mサイズ)」は「下肢用衣料」に相当する。
先行発明Aの構成b-1は、脇身頃と後身頃が接続されて一体となり脇から後ろを覆う「身頃パーツ」としてみれば、「前身頃に接続され臀部を覆うとともに前記前身頃の足刳り形成部に連続する足刳り形成部を有した身頃パーツ」の限りにおいて、本件発明1の構成要件Bと一致する。
先行発明Aの構成c-1は、脇身頃と後身頃を上記「身頃パーツ」としてみれば、「前記前身頃と身頃パーツの各足刳り形成部に接続され大腿部が挿通する大腿部パーツとを有」する限りにおいて、本件発明1の構成要件Cと一致する。
先行発明Aの構成e-1は、脇身頃と後身頃を上記「身頃パーツ」としてみれば、「身頃パーツの足刳り形成部の下端縁は臀部の下端付近に位置」する限りにおいて、本件発明1の構成要件Eと一致する。

上記第5.1.(1)ア.のとおり、本件発明1の構成要件Dにおける「腸骨棘点付近」は、本件発明1の「下肢用衣料」を立位着用状態での、着用者の「腸棘点(上前腸骨棘の最も下縁の点)」及びその近辺であって、「腸棘点(上前腸骨棘の最も下縁の点)」に近い位置にある場所を意味するものである。
この点につき、先行発明Aの構成d-1は、甲6の4(パターン)における前身頃及び脇身頃の足刳り形成部の形状、及び甲6の6(縫製仕様書)における左側のパターン同士が縫製により接続されていることの図示からでは、足刳り形成部の湾曲した頂点が前身頃にあるのか脇身頃にあるのか、また、立位着用状態での足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係がどのようになっているかは、明らかではない。そして、甲6の5(製品規格書)等、本件特許出願前における先行製品Aの製造販売当時のそのほかの証拠をみても、不明である。
したがって、先行発明Aの構成d-1は、前身頃と脇身頃で構成される足刳り形成部全体をみれば、「足刳り形成部の湾曲した頂点がある」限りにおいて、本件発明1の構成要件Dと一致する。

先行発明Aの構成f-1について、甲6の4(パターン)からでは、足口レースの山の高さと、前身頃及び脇身頃で形成される足刳り形成部の前側の湾曲深さがどのような関係になっているかは、明らかではない。そして、甲6の5(製品規格書)等、本件特許出願前における先行製品Aの製造販売当時のそのほかの証拠をみても、不明である。
したがって、先行発明Aの構成f-1は、「大腿部パーツに山がある」限りにおいて、本件発明1の構成要件Fと一致する。

本件発明1における構成要件Gの「前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し、」について、本件特許明細書には「また、足付根部40の山の幅をw1とし、足刳り前部24,24の湾曲部分の幅をw2とすると、互いに縫い付けられる同じ位置間で、w1はw2よりも広い形状となっている。」(段落【0020】)との記載があるから、上記「幅」が「広く」とは、「互いに縫い付けられる同じ位置間」の関係であると理解できる。そして、本件発明1は、「前身頃の足刳り形成部」と「後身頃の足刳り形成部」が連続して「足刳り形成部」を形成するもので、それに対して「大腿部パーツ」の「山」を接続するものであるから、互いに縫い付けられない、「足刳り形成部」と「山」の部分は存在しない。したがって、「足刳り形成部の湾曲部分の幅」よりも「山の幅」を「広く形成」するのは、全ての箇所においてであると解される。
この点につき、先行発明Aは、甲6の4(パターン)からでは、足刳り形成部の湾曲部分の幅と、足口レースの山の幅の関係が、縫い付けられる全ての箇所においてどのようになっているかは、明らかではない。そして、甲6の5(製品規格書)等、本件特許出願前における先行製品Aの製造販売当時のそのほかの証拠をみても、不明である。

先行発明Aの構成h-1について、取り付け状態を示す甲6の6(縫製仕様書)の左側の図示からでは、足口レースが前身頃に対して前方に突出する形状となっているか否かは、明らかではない。そして、甲6の5(製品規格書)等、本件特許出願前における先行製品Aの製造販売当時のそのほかの証拠をみても、不明である。
したがって、先行発明Aの構成h-1は、「取り付け状態で筒状の大腿部パーツである」限りにおいて、本件発明1の構成要件Hと一致する。

そうすると、本件発明1と先行発明Aは、以下の点で一致し、かつ相違する。

<一致点A>
「A-1:大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部を備えた前身頃と、
B-1:前身頃に接続され臀部を覆うとともに前記前身頃の足刳り形成部に連続する足刳り形成部を有した身頃パーツと、
C-1:前記前身頃と前記身頃パーツの各足刳り形成部に接続され大腿部が挿通する大腿部パーツとを有し、
D-1:足刳り形成部の湾曲した頂点があり、
E-1:前記身頃パーツの足刳り形成部の下端縁は臀部の下端付近に位置し、
F-1:大腿部パーツに山があり、
H-1:取り付け状態で筒状の大腿部パーツである、
I-1:下肢用衣料。」

<相違点A-1>
本件発明1の構成要件Bにつき、本件発明1は、「後身頃」が「足刳り形成部」を有したものであるのに対して、先行発明Aは、足刳り形成部は脇身頃に形成されており、後身頃には足刳り形成部が形成されていない点。

<相違点A-2>
本件発明1の構成要件Cにつき、本件発明1は、大腿部パーツが「前記前身頃と前記後身頃の各足刳り形成部に接続され」るものであるのに対して、先行発明Aは、足口レースが前身頃と脇身頃の各足刳り形成部に接続されるものである点。

<相違点A-3>
本件発明1の構成要件Dにつき、本件発明1は、「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し」ているのに対して、先行発明Aは、足刳り形成部の湾曲した頂点が前身頃にあるのか脇身頃にあるのかが不明であり、また、立位着用状態での足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係がどのようになっているかが不明である点。

<相違点A-4>
本件発明1の構成要件Fにつき、本件発明1は、「前記大腿部パーツの山の高さを前記足刳り形成部の前側の湾曲深さよりも低い形状とし」ているのに対して、先行発明Aは、足口レースの山の高さと、前身頃及び脇身頃で形成される足刳り形成部の前側の湾曲深さがどのような関係になっているか不明である点。

<相違点A-5>
本件発明1の構成要件Gにつき、本件発明1は、「前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し」ているのに対して、先行発明Aは、前身頃及び脇身頃で形成される足刳り形成部の湾曲部分の幅と、足口レースの山の幅の関係が、縫い付けられる全ての箇所においてどのようになっているか不明である点。

<相違点A-6>
本件発明1の構成要件Hにつき、本件発明1は、「前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状」となっているのに対して、先行発明Aは、足口レースが前身頃に対して前方に突出する形状となっているか否かが不明である点。

エ.相違点についての検討
まず、<相違点A-3>について検討する。
(ア)特許法第29条第1項第2号を理由とする無効理由1-A1について
a.<相違点A-3>は、先行発明Aの足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係についての相違点であるから、形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。
よって、先行発明Aは、本件発明1ではない。

b.そうすると、上記<相違点A-1>、<相違点A-2>、<相違点A-4>?<相違点A-6>について検討するまでもなく、先行発明Aは、本件発明1ではない。

c.小括
以上のとおりであるから、請求人主張のとおり、先行製品Aが本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において公然と実施されたものであって、その構成が甲6の4(パターン)の各パターンを甲6の6(縫製仕様書)に示されるように縫製することによって得られたものであったとしても、本件発明1は、特許法第29条第1項第2号に該当しないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-A1によっては、無効とすることはできない。

d.本件発明2、3及び5について
また、本件発明2、3及び5は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明2、3及び5についても同様に、特許法第29条第1項第2号に該当しないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-A1によっては、無効とすることはできない。

e.請求人の主張について
(a)請求人は、請求人要領書(1)(5.(3-1-1-4)ア)において、甲27(写真撮影報告書)を示しつつ先行製品Aの足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置するように例えば先行製品Aを引き上げる等して着用することが可能であるのは自明であると主張している。
また、請求人は、請求人要領書(2)(5.(4-1-3-1)ウ)において、甲40(GT5681/UN5681のMサイズ試作品)のサンプルAとともに請求人要領書(2)別紙1(トルソーに穿かせたサンプルAの写真及び検証図)を示しつつ、先行製品Aの足刳り形成部の湾曲した頂点が上前腸骨棘点付近に位置していることが確認された旨主張し、さらに上申書(1)(5.(7))において、甲55の1(報告書)を示しつつ、先行製品Aの足刳り形成部の湾曲した頂点は腸骨棘点付近にある旨主張している。
そして、甲27(写真撮影報告書)、請求人要領書(2)別紙1(トルソーに穿かせたサンプルAの写真及び検証図)、甲55の1(報告書)には、足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置するように引き上げられて着用した状態のサンプルAの写真が掲載されている。

(b)しかし、本件特許に係る出願前における先行製品Aの足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置するか否かを示す証拠、例えば先行製品Aを着用した状態の当時のカタログ等はない。

(c)そして、証人中村彰男の証言(上記(1)シ.(エ)段落番号241?250)によると、甲40(GT5681/UN5681のMサイズ試作品)のサンプルAは、先行製品Aと比較して、少なくとも生地が同一か否か不明で、足口レースが異なるものであり、手元にある似たもので作ったものであるから、サンプルAは、明らかに先行製品Aの構成を完全に再現したものではない。
そして、各パーツの生地が異なれば、引き上げる等して着用する際の各パーツの生地の伸び具合が異なるため、引き上げ可能な程度や、引き上げた際の足刳り形成部の変形度合いが異なることは明らかである。
そうすると、先行製品Aの構成を完全に再現したものではないサンプルAに基づく確認結果は、先行製品Aの確認結果とはいえない。

(d)さらに、サンプルAに基づく確認結果をみても、サンプルAを引き上げる等して着用するという条件を満たすことによって初めて足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置するものであるから、これを先行製品Aに当てはめると、先行製品Aが、引き上げる等して着用するという条件を満たすことが求められる製品であったことが必須の構成となる。
しかしながら、先行製品Aが、通常どのように着用すべき製品であるのか、特に、引き上げる等して着用すべき製品であるのかを示す証拠はない。

(e)また、サンプルAの着用状態につき、請求人は、請求人上申書(3)(5.第1 1)において、サンプルAを引き上げて着用した状態は、乙2判決の判断に則ったものである旨主張している。
しかしながら、乙2(関連侵害訴訟控訴審判決)の判断対象である「被告製品」は、甲10(関連侵害訴訟1審判決)の被告タカギにつきイ号製品(D830、D944、D951)、ロ号製品(D831、D952)、ハ号製品(D968)、ニ号製品(D965)、ホ号製品(D966)、ヘ号製品(D964)、被告名古屋タカギにつきイ号製品(D830、D944)、ロ号製品(D831)であり、先行製品A(GT5681/UN5681)とは、判断対象の製品が異なるものであるから、サンプルAの着用状態とは関係がない。

(f)そうすると、請求人が主張するサンプルAに基づく確認結果は、先行製品Aにおける通常の着用状態のものといえず、引き上げる等して着用するという操作を加えれば、足刳り形成部の湾曲した頂点を腸骨棘点付近に位置させることが可能であるという程度のものであって、先行製品Aが、本件発明1の構成要件Dを備えたものであることまでをも示すものではない。

(g)以上のとおりであるから、請求人の上記主張は、採用できない。

(イ)特許法第29条第2項を理由とする無効理由1-A2について
a.上記(ア)で述べたとおり、本件発明1と先行発明Aは、少なくとも、上記<相違点A-3>の中でも、立位着用状態での足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係がどのようになっているかが不明である点において相違するものである。

b.そして、本件発明1は、構成要件Dの「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し」ていることによって、「足刳りのパターンの形状の工夫により、身体の腸骨棘点a付近から前方の生地の立体的方向性が確保されるため、着用時に股関節の前方への屈伸抵抗が少なく運動しやすく、疲れにくいものである。」(段落【0027】)という作用効果を、構成要件Hの「取り付け状態で筒状の前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状となること」との関連性によって奏するものである。
一方、先行発明Aは、足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係がどのようになっているかが不明であるばかりでなく、<相違点A-6>のとおり、足口レースが前身頃に対して前方に突出する形状となっているか否かが不明であるとともに、身体の腸骨棘点付近から前方の生地の立体的方向性を確保するという構成との関連性を示唆する証拠はない。また、着用時に股関節の前方への屈伸抵抗が少なく運動しやすく、疲れにくくするという作用効果を想起させるような証拠もない。

c.さらに、下肢用衣料において、足刳り形成部の湾曲した頂点を腸骨棘点付近に位置するような形状とすることが技術常識であることを示す証拠はなく、下肢用衣料の技術常識を勘案しても、そのような形状が一般的であるともいえない。
また、先行発明A自体は、ショーツという製品自体であり、足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係に関する設計思想を示す書類等がなければ、製品自体のみから、上記<相違点A-3>に係る構成である「湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置」することについての技術的思想を把握することは困難である。さらに、足刳り形成部の湾曲した頂点を腸骨棘点付近に位置するような形状に変更する動機付けを示唆する証拠は、ない。

d.そして、上記b.で述べたとおり、本件発明1は、構成要件Dの「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し」ていることと、構成要件Hの「取り付け状態で筒状の前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状となること」との関連性によって、「足刳りのパターンの形状の工夫により、身体の腸骨棘点a付近から前方の生地の立体的方向性が確保されるため、着用時に股関節の前方への屈伸抵抗が少なく運動しやすく、疲れにくいものである。」(段落【0027】)という格別の作用効果を奏するものである。

e.よって、先行発明Aにおいて、足刳り形成部の湾曲した頂点を腸骨棘点付近に位置するような形状に変更することは、当業者が容易になし得たものということはできない。
そうすると、上記<相違点A-1>、<相違点A-2>、<相違点A-4>?<相違点A-6>について検討するまでもなく、先行発明Aにおいて、上記<相違点A-3>に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

f.小括
以上のとおりであるから、請求人主張のとおり、先行製品Aが本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において公然と実施されたものものであって、その構成が甲6の4(パターン)の各パターンを甲6の6(縫製仕様書)に示されるように縫製することによって得られたものであったとしても、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-A2によっては、無効とすることはできない。

g.本件発明2、3及び5について
また、本件発明2、3及び5は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明2、3及び5に係る特許についても同様に、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-A2によっては、無効とすることはできない。

(ウ)特許法第29条第2項を理由とする無効理由1-A3について
上記(イ)のとおり、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものではない。
そして、本件発明4は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明4に係る特許についても同様に、特許法第29条第2項に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-A3によっては、無効とすることはできない。


2.先行発明B(株式会社タカギ品番D296ON)に基づく無効理由1-B1(先行製品Bを主とする特許法第29条第2項)及び無効理由1-B2(先行製品Bを主とする特許法第29条第2項)について
(1)証拠
以下の証拠には、次の記載がある。
ア.甲6の12の1(パターン)
(ア)甲6の12の1は、D296ONのパターンである。
(イ)「前身頃」には、「D296ON」、「M」、「03/01/14」の記載がある。
(ウ)「後身頃」には、「D296ON」、「M」、「03/01/14」の記載がある。
(エ)「足口レース」には、「D296ON」、「M」、「03/01/14」の記載がある。

イ.甲6の12の2(マチ部パターン)
(ア)甲6の12の2は、B-1291のパターンである。
(イ)「マチ」には、「M」、「02/05/16」の記載と共に、「B-1291」の記載がある。

ウ.甲5(陳述書)
『(エ)パターン(資料12の1、資料12の2)
パターン中央にD296ONの印字があるものは、平成15年1月14日当時にAGMSシステムから出力した、D296ONのMサイズのパターンです。パターン上に「03/01/14」と印字されておりますので、2003年(平成15年)1月14日当時に出力したD296ONのパターンに間違いありません。
パターンにB-1291と記入があるものは、平成14年の開発当初に手作業で作成されたパターンです。資料8にあるように、B-1291というのはD296ONの試作No.になります。なお弊社では、まず試作No.で開発、試作がスタートし、採用決定後、正式な品番が付きます。』
(2(2)(エ))

エ.甲6の7(販売実績)
(ア)表のタイトルとして「販売実績」の記載がある。
(イ)「D296ON」と記載された中段の表には、以下の記載がある。
a.列のタイトル「品番」は全て「D296ON」である。
b.「年度」が「2003」、「名称」が「株式会社 大西」の行には、「月数量(枚)」に「1569」、「月金額(円)」に「566816」の記載がある。
c.「年度」が「2004」、「名称」が「株式会社 大西」の行には、「月数量(枚)」に「620」、「月金額(円)」に「222000」の記載がある。
d.「年度」が「2005」、「名称」が「株式会社 大西」の行には、「月数量(枚)」に「360」、「月金額(円)」に「124571」の記載がある。
e.「年度」が「2006」、「名称」が「株式会社 大西」の行には、「月数量(枚)」に「314」、「月金額(円)」に「57893」の記載がある。
f.「年度」が「2004」、「名称」が「(株)ヒゼン」の行には、「月数量(枚)」に「6」、「月金額(円)」に「1680」の記載がある。
g.「年度」が「2005」、「名称」が「ホワード(株)」の行には、「月数量(枚)」に「72」、「月金額(円)」に「14400」の記載がある。
h.「年度」が「2006」、「名称」が「ホワード(株)」の行には、「月数量(枚)」に「240」、「月金額(円)」に「36000」の記載がある。

オ.甲44(販売実績 品番+サイズ別)
(ア)表のタイトルとして「販売実績 品番+サイズ別」の記載がある。
(イ)「D296ON」と記載された中段の表には、以下の記載がある。
a.列のタイトル「品番」は全て「D296ON」である。
b.列のタイトル空白が「M」、「年度」が「2003」、「名称」が「株式会社 大西」の行には、
「月数量(枚)」に「504」、「月金額(円)」に「175666」、
「3月数量」に「105」、「3月金額」に「36150」、
「4月数量」に「150」、「4月金額」に「52500」、
「5月数量」に「10」、「5月金額」に「3500」、
「6月数量」に「30」、「6月金額」に「10500」、
「8月数量」に「40」、「8月金額」に「14000」、
「9月数量」に「60」、「9月金額」に「21000」、
「10月数量」に「49」、「10月金額」に「17016」、
「11月数量」に「30」、「11月金額」に「10500」、
「12月数量」に「30」、「12月金額」に「10500」、
の記載がある。
c.列のタイトル空白が「M」、「年度」が「2004」、「名称」が「株式会社 大西」の行には、
「月数量(枚)」に「200」、「月金額(円)」に「70000」、
「2月数量」に「10」、「2月金額」に「3500」、
「3月数量」に「20」、「3月金額」に「7000」、
「4月数量」に「30」、「4月金額」に「10500」、
「5月数量」に「20」、「5月金額」に「7000」、
「6月数量」に「10」、「6月金額」に「3500」、
「7月数量」に「10」、「7月金額」に「3500」、
「8月数量」に「30」、「8月金額」に「10500」、
「9月数量」に「40」、「9月金額」に「14000」、
「10月数量」に「10」、「10月金額」に「3500」、
「11月数量」に「10」、「11月金額」に「3500」、
「12月数量」に「10」、「12月金額」に「3500」、
の記載がある。
d.列のタイトル空白が「M」、「年度」が「2005」、「名称」が「株式会社 大西」の行には、
「月数量(枚)」に「120」、「月金額(円)」に「39681」、
「3月数量」に「10」、「3月金額」に「3500」、
「5月数量」に「20」、「5月金額」に「7000」、
「6月数量」に「10」、「6月金額」に「3500」、
「7月数量」に「20」、「7月金額」に「7000」、
「10月数量」に「48」、「10月金額」に「14713」、
「11月数量」に「12」、「11月金額」に「3968」、
の記載がある。
e.列のタイトル空白が「M」、「年度」が「2006」、「名称」が「株式会社 大西」の行には、
「月数量(枚)」に「160」、「月金額(円)」に「29502」、
「2月数量」に「60」、「2月金額」に「9734」、
「3月数量」に「104」、「3月金額」に「20624」、
の記載がある。
f.列のタイトル空白が「M」、「年度」が「2004」、「名称」が「(株)ヒゼン」の行には、
「月数量(枚)」に「1」、「月金額(円)」に「280」、
「3月数量」に「1」、「3月金額」に「280」、
の記載がある。
g.列のタイトル空白が「M」、「年度」が「2005」、「名称」が「ホワード(株)」の行には、
「月数量(枚)」に「48」、「月金額(円)」に「9600」、
「8月数量」に「48」、「8月金額」に「9600」、
の記載がある。
h.列のタイトル空白が「M」、「年度」が「2006」、「名称」が「ホワード(株)」の行には、
「月数量(枚)」に「150」、「月金額(円)」に「22500」、
「3月数量」に「150」、「3月金額」に「22500」、
の記載がある。

カ.甲6の8(商品設計書)
(ア)左上部に「年度/シーズン 2003 S/S」の記載とともに、「製品品番」として「D296ON」との記載がある。
(イ)「使用素材」の表に、「主素材」、「副素材」、「容量(正)」の「M」について各種の記載がある。
(ウ)「規格寸法」の表に、「サイズ」「M」として各種寸法が記載されている。
(エ)左側に各パターンが接続された様子が図示されている。
(オ)上部に「ブランド/仕向先」として「大西衣料」と記載されている。
(カ)左上部に「試作NO」として、「B-1291」と記載されている。

キ.甲6の14(製品規格書)
(ア)上部に、「品番」として「D296ON」、「試作No.」として「1257」の記載がある。
(イ)左側に「採寸図」が記載されている。
(ウ)中央の「採寸寸法」表には、「M」の各部採寸寸法と採寸方法が記載されている。特に、「マチ巾」、「マチ丈」の寸法と採寸方法が記載されている。
(エ)下部の「素材」表には、各パーツの素材と「M」の容量が記載されている。
(オ)上部には、「シーズン」として「2003 S/S」と記載されている。
(カ)上部に「仕向先」として「大西衣料(株)」と記載されている。

ク.甲6の15(縫製仕様書)
(ア)上部に「品番」として「D296ON」、「試作No.」として「1257」の記載がある。
(イ)左側に、パターン同士が縫製により接続されていることの図示と共に、各部の縫製情報が記載されている。特に、「マチ」前後の縫製情報が記載されている。
(ウ)右側に、縫製情報や糸の指定が記載されている。特に、「マチ」前後の縫製情報が記載されている。
(エ)左下部に、「サイズ展開」として「M」が記載されている。
(オ)中央上部に「シーズン」として「2003 S/S」と記載されている。
(カ)上部に「仕向先」として「大西衣料(株)」と記載されている。

ケ.甲6の11(パターンファイルシート)
(ア)上部に「品番」として「D296ON」、「サイズ」として「M」の記載がある。
(イ)「表マチ」、「裏マチ」、「前身頃」、「後身頃」、「足口レース」が図示されている。

コ.証人中村彰男の証言
証人中村彰男は、平成31年2月7日、特許庁審判廷において宣誓の上、以下のとおり述べた。なお、段落番号は、反訳書面による。
(ア)「請求人代理人弁護士 富永 夕子
甲第6号証の8を示す。
055 では、次に先行製品Bについてお伺いします。上部に製品品番D296ON商品設計書の記載がありますが、これはタカギで保管されていたD296ONの商品設計書ですね。
はい。
056 このD296ONの商品設計書が最初に記入されたのはいつですか。
ここに記入日に書いています平成14年11月28日だと思います。
057 D296ONは、いつごろの販売を予定していた商品ですか。
左上の年度シーズンから2003年の春夏商品だと思います。

甲第6号証の12の1(原本)を示す。
058 これは何ですか。
弊社で保管していましたD296ONの当時のパターンです。
059 この紙のパターンが出力されたのはいつですか。
2003年1月14日です。

甲第6号証の12の1(原本)はそのままで、甲第38号証の1ないし5を示す。
060 これは何ですか。
これは現在のCADシステムの中に保存されていますD296ONのパターンデータを紙に出力したものです。
061 現在のCADシステムでAGMSシステムに保存されていた最新のパターンということでよろしいですか。
はい。
062 あなたが最新のD296ONのパターンデータを出力されたんですか。
はい、そうです。
063 出力時にデータを修正したり、変更したりしていませんか。
はい、していません。
064 2003年1月14日に出力した甲6の12の1のパターン上には、03/01/14の日付が印字されていますが、これに対して、甲38のパターン上には04.10.01の数字が印字されてますが、なぜ、このような日付が印字されるのですか。
先ほどと同じように、2004年にCADシステムを新しくするに当たって、古いパターンデータをデータ変換する必要がありまして、そのデータ変換した日付に登録日が変更されるということで、04年10月1日という表示になっているものだと確認しています。
065 甲6の12の1のパターンと、甲38のパターンの形状を比較して、異なるところはありますか。
マチのパターンが紛失しておりますが、他のパターンに関しては同じものです。

甲第6号証の12の1及び甲第38号証の1ないし5はそのままで、甲第6号証の12の2(原本)を示す。
066 これは何ですか。
これはD296ONの開発時のパターンになります。
067 先ほどの甲6の12の1と、その後から出した甲6の12の2では、どちらが先に作成されたものですか。
甲6の12の2が試作段階にものですので、こちらが先に作成されたものです。
068 甲6の12の2にはマチ部がありますけれども、甲6の12の2のマチ部のパターンと、その最新の甲38のマチ部のパターンの形状を比較して、異なるところはありますか。
いえ、ありません。
069 では、このAGMSシステムに保存されていた最新データの出力分である甲38と、同じ甲6の12の1、甲6の12の2のマチ部が示す形状というのは、D296ON製品の最終パターンということで間違いないですか。
はい、間違いないです。
070 では、パターンが確定していた時点はいつごろなんですか。
甲6の12の1、2のパターンに、印字のある2003年1月の14日だと思われます。

甲第6号証の14を示す。
071 製品規格書、品番、D296ONとありますが、タカギで保管されていたものですか。
はい。
072 左下の改訂の最初の行に、H15.2.17運針変更とありますけれども、これはどういう意味ですか。
平成15年2月17日に運針の変更を行ったものだと思います。
073 平成15年2月17日にパターンは修正されていませんか。
はい、していません。

甲第6号証の10の1及び甲第6号証の10の2を示す。
074 平成15年1月14日から15日にかけて、D296ONのマーキング作業が行われていますが、この日付とパターン確定時期との関係について、どのように考えられますか。
マーキング作業というのは、実際に生地にパターンをどのように配置して裁断するかを決める作業ですので、このマーキング作業を行う1月15日以前に本番のパターンは確定しているものだと思います。

甲第6号証の15を示す。
075 これはD296ONの縫製仕様書ですね。
はい。
076 この甲6の15の縫製仕様書に基づいて製品の製造を開始したんですか。
はい、そうです。
077 D296ON製品については、品質検査と縫製検査を行っていないのですか。
はい。対象になってなかったので、行っていません。
078 D296ONは、どちらの取引先向けの製品ですか。
株式会社大西です。
079 株式会社大西向けの製品は検査対象ではなかったということですか。
はい。卸売りをされている会社ですので、基本的に卸売業者に対しての検査というのは行っていません。」

(イ)「被請求人ら復代理人弁護士 今西 康訓
甲第6号証の8はそのままで、甲第6の7を示す。
255 前回の無効審判の際に、ポーラ向けに販売されていた商品について、得意先別商品登録書という書類を提出されてたんですけれども、この大西衣料向けの商品について、得意先別の商品登録書みたいなのは存在するんでしょうか、しないんでしょうか。
多分、存在しないです。というのは、D296というのはONという、一応、管理上大西向けというのが確定がついてますけれども、その他一般の卸売先にも販売することが可能な商品ということで、一般向けということで作っていますので、そういう登録自体がないものと思います。」

(ウ)「被請求人ら復代理人弁護士 今西 康訓
甲第6号証の12の1ないし2(原本)を示す
257 甲6の12の1が販売した製品の型紙で、12の2が試作品の型紙ということですけれども、それぞれ違う番号をつけるのはどういう意味からでしょう。
これは甲6の12の2は試作段階ですので、試作品番がついています。
258 だから、製品と違う試作番号をつける理由というのは何ですかという質問です。
販売が決定した後でないと、本品番というか、正式な品番が決まらないからです。
259 試作段階ではまだ販売は決まってないという理解でよろしいですか。
決まっているものもあるかもわからないですが、基本的には決まってないです。
・・・
263 甲6の12の2のマチと足口レースの型紙に、ちょっと薄くて読めないんですけれども、SO36何とかというような表示がありますね。
はい。
264 これは何と書いてあるか、わかりますか。
これはG。
265 SOはいいですか。
SOじゃないですね。Gですね。
266 Gですか。
G03・・・、036ですかね。
267 その後も2文字ぐらいありますよね。G036何とかかんとか。
はい。多分ですけど。GSじゃないですか。これを見るとまあ、同じだと思いますので、G036GSではないかと思います。
268 そのもとになる型紙というのは、AGMSシステムからの出力ということでいいんでしょうか。
はい、そうだと思います。
269 その品番みたいなのは表示されてますけど、日付が印字されてないのはなぜでしょう。
日付、印字されてますね。
270 ああ、日付もありますか。
はい。02,06ですかね。2002年6月ですね。6月じゃない、5月です。020516じゃないですか。02/05/16です。
271 甲6の12の1のほうの、マチの部分は紛失されたということでしょうか。
はい。残っていないということは紛失したものだと思います。
272 こういう型紙って、どういう形で保管されているんでしょう。
設計書で、そのときの設計書と残っているパターンと、あと、サンプルが残っていたらサンプルと、あと、先ほどあったメモであるとか、その辺のものを一つのビニール袋に一つにまとめて保存していることが多いです。
273 本来なくなるはずのない保管状況でしょうか。
いえ。古いものであると捨てることはあるかなと思います。
274 中からマチだけ抜いて捨てることってあるんですか。
いや、それはないですね。だから、保管するときに既になかったものだと思います。
・・・
280 先ほどのマチと足口のレースの型紙は、既存のGの036GSかな、を使われていると思うんですけど、何か先行製品の改良版というような位置づけになるんでしょうか。
どうでしょう。ただ、ほかの前身頃とか後身頃はもとのパターンを使っていないので、そこんところは何とも言えません。
281 商品番号の後ろにGSというのは何かの略ですか。
これはうちのブランドで、先ほども言いましたGショーツの略かなと思います。」

(エ)「被請求人ら復代理人弁護士 今西 康訓
甲第6号証の10の2を示す。
302 この先行製品Bについては、カタログは作成されましたか。
いえ、これは作成していないと思います。
303 お客さんのほうのカタログとかチラシには掲載されていませんか。
それは確認してないんで、わかりません。
304 今回作成された現物のサンプルですけれども、これの型紙はどちらを使用されているんでしょう。当時のものなのか、最近出力されたものなのか。
最近出力をしたものです。
305 使われている生地とか糸とかについては、先ほどの先行製品と同じでしょうか。新たに仕入れて、同じもので再現したというわけではないという理解でよろしいですか。
生地だけは同じものが残ってましたので、それを使用しました。あとは先行製品Aと同じと考えてもらっていいと思います。」

(オ)「請求人代理人弁護士 藤本 英二
甲第6号証の12の1(原本)及び甲第38号証の1を示す。
367 それと甲6の12の1の前身頃の同一性はどう判断されたんですか。
これもパターンを重ねて、確認しました。
368 重ね合わされて同一ということですか。
はい。
369 周りのコメントはどうなっていますか。
上から0.6四点千鳥、0.7二本針オーバー、0.5袋縫い、もう一つのほうが0.5二本針オーバー袋縫いというふうになっています。
370 今、コメントが変わっているということですね、今おっしゃっているのは。
はい、コメントが変わっています。
371 甲38の1のほうのコメントはどう書いてあるんですか、そこは。
二本針オーバー袋縫いで0.5というふうになっています。
372 甲6の12の1の原本のほうのそこの部分、袋縫いの部分はどう書いてあるんですか。
0.5袋縫いとしか書いてないです。
373 そこは、じゃ、縫い方が。
そうですね。縫い方が書かれて追加されてますね。
374 それはどういうふうに考えられますか。なぜそうなっているんですか。
多分、縫い代が、パターンが一緒で、それは縫い代を変えたんじゃないですか。
375 すると、パターンは全く同一ということですか。
うん、パターンは同一ですね。

甲第6号証の12の1(原本)及び甲第38号証の2を示す。
376 甲38の2の後身頃と甲6の12の1の後身頃の同一性はどうやって判断されたんですか。
これもパターンを重ねる形で判断しました。
377 全く同一ということですか。
はい。
378 外側のコメントは、甲6の12号証の周囲はどう書いてあるんですか。
上から0.6四点千鳥、後中心0.7二本針オーバー、0.5一本針ロック、筒二本飾り無し。0.5一本針ロック、筒二本飾り有り、括弧して朱子糸。次に弧の部分1.2センチ伸ばす、そして0.5袋縫い、片一方にはコメントありませんけど、もう一方のほうには二本針オーバーのコメント。そして0.7、2本針オーバーということで、一部コメントの違いはありますが、パターンは同じ。
379 甲6の12号証の1の後身頃のコメントは、0.5袋縫いと左下に書いてあるけれども、甲38号証の2の左下の部分には二本針オーバーとともに0.5と書いてあるということですか。
はい。
380 パターンは同一なんですか。
パターンは同一です。

甲第6号証の12の1(原本)及び甲第38号証の3を示す。
381 甲38の3と甲6の12号証の1の足口レースについて、どういうふうにされて確認されたんですか。
これもパターンを重ねる形で確認しました。
382 重ね合わせられていますけれども、同一ですね。
はい。
383 外側のコメントは上からどういうふうになりますか。
前から0.5、次に0.5一本針ロック、筒二本飾り有り、括弧して朱子糸。後ろに0.5、足口にレース谷。内部に形状左右対称で柄無視というコメントが入っていますが、コメント内容も一緒です。
384 そうすると、甲38の3の足口レースのパターンと甲6の12の1の足口レースのパターンは同一だと判断されたということですね。
はい。

甲第6号証の12の2(原本)及び甲第38号証の4を示す。
385 これは同一性はどういうふうに確認されたんですか。
これもパターンを重ねる形で確認しました。
386 甲38の4のパターンと甲6の12の2にあるマチのパターンが同じということですね。
はい。

甲第6号証の12の2(原本)及び甲第38号証の5を示す。
387 それは裏マチになっていると思うんですが、甲38の5と甲6の12の2のマチのパターンも同一だということですか。重ね合わせてもらえますか。重ね合わせたところ、同一ですね。
同一です。
388 甲38の4と甲38の5は同じパターンということですね。
はい、同じパターンです。
389 そこに甲6の12の2にあるマチのパターンと足口レースのパターンには、先ほど話が出たG036GSとある、これはどういうふうに、なぜこういうパターンを使われたんですか。
G036GSのパターンをベースにしてこのB1291のパターンを作ったということだと思いますけど。
390 それはG038GSという既存の製品のパターンを流用されたと、そういう理解ですか。
はい。」

(2)先行製品Bについて
ア.先行製品B
(ア)請求人の主張する先行製品Bは、請求人である株式会社タカギが製造、販売したとされる品番D296ON製品であるが、製品そのものは、証拠として提出されていない。

(イ)先行製品Bのような下肢用衣料において、製品は、型紙(パターン)と、各パターンをもとに裁断された生地をどのように縫製して仕上げるかの設計、規格、縫製仕様等により製造されることが技術常識であるところ、先行製品Bの型紙として甲6の12の1(パターン)及び甲6の12の2(マチ部パターン)が提出されている。
そして、甲6の12の1(パターン)をみると、上記(1)ア.(イ)?(エ)に示したように、「D296ON」、「M」の記載がある。
この「D296ON」、「M」は、甲5(陳述書)(上記(1)ウ.)によると、「D296ON」は品番を、「M」はMサイズを意味している。
したがって、先行製品Bは、株式会社タカギの品番D296ONのMサイズの下肢用衣料である。
なお、品番が「B-1291」となっている甲6の12の2(マチ部パターン)については、後述する。

以上をふまえ、先行製品Bとして「D296ON Mサイズ」について、以下に検討する。

イ.公然実施
(ア)先行製品Bが販売された事実を直接的に立証するための伝票、領収書といった証拠は、提出されていない。
請求人要領書(1)(5.(3-2-1-1))によると、「先行製品Bが販売されたのは、約15年以上も前の時期であることから、当時の伝票等は保管されていない。」ものである。
また、先行製品Bが掲載されたカタログ、チラシ等の配布物についても、証拠は提出されていない。
証人中村彰男の証言(上記(1)コ.(エ)段落番号302?303)によると、先行製品Bが掲載されたカタログ等は作成されていない。
そして、先行製品Bを販売した相手方による、先行製品Bを購入したことを示す証拠も提出されていない。
そうすると、先行製品Bが販売された事実を直接的に立証するに足りる証拠はない。

(イ)次に、甲6の7(販売実績)(上記(1)エ.)は、請求人である株式会社タカギ社内の売上実績データベースから抽出され、マイクロソフト・オフィス・エクセルにコピーされた(上記1.(1)エ.)、D296ONの販売実績を示す証拠であるが、Mサイズに関する記載がないため、先行製品B(D296ON Mサイズ)の販売実績を直接示すものではない。

(ウ)そこで、甲44(販売実績 品番+サイズ別)(上記(1)オ.)をみると、請求人要領書(2)(4-1-2-7)によれば、「先行製品AないしCの各販売数量のうち、サイズ別に細分化したデータ一覧表」であり、列のタイトル空白に記載された「M」は、Mサイズを意味するものである。
また、請求人要領書(2)(4-1-2-3)によれば、「販売実績データ一覧表の各年度は請求人の決算月で区切られており、毎年2月から翌年の1月までが同一年度である。」から、先行製品B(D296ON Mサイズ)について、上記(1)オ.(イ)に示した「D296ON」、「M」は、「株式会社 大西」に対して2003年3月?2006年3月の間に販売があったこと、「(株)ヒゼン」に対して2004年3月に販売があったこと、「ホワード(株)」に対して2005年8月と2006年3月に販売があったことをそれぞれ意味するものである。

(エ)ここで、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)については、先行製品Aについて上記1.(2)イ.(エ)及び(オ)で述べたとおり、手入力段階、加工段階、コピー段階という情報の正確性に影響を及ぼす可能性のある段階が複数存在しているものである。

(オ)次に、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)について、甲26(株式会社タカギ商品の販売実績について)では、請求人である株式会社タカギの顧問税理士による意見が述べられている。
これは、先行製品Aについて上記1.(2)イ.(カ)で述べたのと同様に「売上実績データベースから抽出したタカギの売上を毎月定期的に確認」するにとどまるものであって、販売された製品自体の確認や、製品ごとに販売先に対して販売が事実であったかの確認が行われていたか否かは明らかでなく、特に、先行製品B(D296ON Mサイズ)の販売に関して確認が行われたか否かも明らかでない。
また、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)のデータのうち、上記(1)オ.(イ)d.の2005年10月及び11月、上記(1)オ.(イ)e.の2006年2月及び3月、上記(1)オ.(イ)h.の2006年3月については、本件特許の出願日である平成17年(2005年)8月22日以降のものであるから、先行製品Bが本件特許出願前に公然実施をされたか否かの判断に影響を与えない。
さらに、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)のデータのうち、本件特許の出願日である平成17年(2005年)8月22日以前のものについてみると、特に2003年、2004年のデータは、顧問税理士就任の平成17年9月以前で一年以上前のデータであるから、少なくとも、販売があった当時に顧問税理士によって確認がなされたものではない。
ここで、顧問税理士就任は平成17年(2005年)9月であるが、年度単位で税務処理を行うという税理士の業務に鑑みれば、就任した平成17年度内である上記(1)オ.(イ)d.の2005年(平成17年)3月?7月のデータについては、9月から年度頭まで遡って確認が行われた可能性がある。
しかしながら、仮にそのような確認を行っていたとしても、販売があった当時に確認がなされたものではないし、上述したように、販売された製品自体の確認や、製品ごとに販売先に対して販売が事実であったかの確認が行われていたか否かは明らかでなく、特に、先行製品B(D296ON Mサイズ)の販売に関して確認が行われたか否かも明らかでない。

(カ)次に、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)のデータは、「D296ON」が「株式会社 大西」、「(株)ヒゼン」、「ホワード(株)」へ販売されたことを示すデータである。
ここで、上記1.(2)ア.(ウ)に示したように、品番中のアルファベット2文字は、販売先を区別するためのものであり、証人中村彰男の証言(上記(1)コ.(イ)段落番号255)によると、「D296というのはONという、一応、管理上大西向けというのが確定がついてます」とのことであるから、「D296ON」の「ON」は、「株式会社 大西」向けであることを意味する。
また、甲6の8(商品設計書)(上記(1)カ.(オ))の「ブランド/仕向先」として「大西衣料」、甲6の14(製品規格書)(上記(1)キ.(カ))の「仕向先」として「大西衣料(株)」、甲6の15(縫製仕様書)(上記(1)ク.(カ))の「仕向先」として「大西衣料(株)」と記載されている。
この「株式会社 大西」と「大西衣料(株)」が同一の会社を意味するものであるのか否かは明らかでないけれども、証人の証言と、甲6の8(商品設計書)、甲6の14(製品規格書)、甲6の15(縫製仕様書)の記載をあわせみれば、「D296ON」が「大西」の名称を持つ会社向けの製品であったことはわかる。
ここで、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)の販売先のうち「(株)ヒゼン」、「ホワード(株)」は、「大西」の名称を持つ会社ではなく、甲6の8(商品設計書)、甲6の14(製品規格書)、甲6の15(縫製仕様書)の仕向先との関連を示す証拠は、ない。
また、請求人上申書(3)(5.第4 1)によると、「時期をずらして複数の販売先で販売することが決定した場合には、販売先決定の都度パターンデータが作成されることになる」とのことであるから、「(株)ヒゼン」及び「ホワード(株)」への販売があったのであれば、「(株)ヒゼン」及び「ホワード(株)」を示す英文字2文字をパターン名に追加したデータが追加登録されることとなる。しかしながら、「(株)ヒゼン」及び「ホワード(株)」への販売があったことを示すパターンデータはない。
一方、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)の販売先のうち「株式会社 大西」と、甲6の8(商品設計書)、甲6の14(製品規格書)、甲6の15(縫製仕様書)の仕向先は、「大西」の名称を持つ会社である点で共通している。

(キ)そこで、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)のデータのうち、販売先が「株式会社 大西」であって、本件特許の出願日である平成17年(2005年)8月22日以前のデータである、上記(1)オ.(イ)b.の2003年3月?12月のデータ、上記(1)オ.(イ)c.の2004年2月?12月のデータ、上記(1)オ.(イ)d.の2005年3月?7月のデータについてさらに検討する。
甲6の8(商品設計書)には「年度/シーズン 2003 S/S」(上記(1)カ.(ア))、甲6の14(製品規格書)には「2003 S/S」(上記(1)キ.(オ))、甲6の15(縫製仕様書)には「2003 S/S」(上記(1)ク.(オ))と記載されており、証人中村彰男の証言(上記(1)コ.(ア)段落番号057)によると、年度シーズンの記載から春夏商品であることがわかるから、先行製品Bは、春夏物衣料である。
一方、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)のデータは、3月?12月、2月?12月、3月?7月のものであり、春夏物衣料の販売時季として時季外れなものと、妥当な時季が混在している。

(ク)上記(イ)?(キ)を整理すると、以下のようになる。
a.「D296ON」は、大西衣料(株)向けの製品である。
b.甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)には、「株式会社 大西」に販売したとされるデータがあるが、先行製品Bが実際に当該データのとおりに販売されたとはいえない。
c.当該データは、顧問税理士が直接、事実の確認をしたものではなく、実際の販売実績を示すものであるとまではいえない。
d.春夏物衣料の販売時季として時季外れなものと、妥当な時季が混在している。
上記a.?d.を総合しても、『大西衣料(株)向けの製品を株式会社大西に販売したとされるデータがあり、「大西」の名称を持つ会社である点で共通はしているものの、実際に当該データのとおりに販売されたとはいえない。当該データの販売時季は時季外れなものと、妥当な時季が混在している。そして当該データは、顧問税理士が直接、事実の確認したものではなく、実際の販売実績を示すものであるとまではいえないものである。』ことが示されているにとどまる。

(ケ)そうすると、先行製品Bが本件特許に係る出願前に販売されたことを直接示す証拠は、上記(ア)のとおり提出されておらず、また、請求人が示した証拠は、上記(イ)?(ク)のとおり、それらを総合しても、先行製品Bが販売されたもの、すなわち、公然と実施されたものといえない。

(コ)小括
以上のとおり、先行製品B(D296ON Mサイズ)は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然と実施されたものといえない。
よって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-B1によっては、無効とすることはできない。
また、本件発明2、3及び5は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明2、3及び5に係る特許についても同様に、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-B1によっては、無効とすることはできない。
さらに、本件発明4は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明4に係る特許についても同様に、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-B2によっては、無効とすることはできない。

(3)予備的検討1
上記(2)において検討したとおり、先行製品Bは、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において、公然と実施されたものといえない。
しかし、念のために、請求人が主張するとおり、先行製品Bが本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において公然と実施されたものであるとして、以下に検討する。

まず、先行製品Bの構造について検討する。
ア.先行製品Bのような下肢用衣料(ショーツ)において、製品は、型紙(パターン)と、各パターンをもとに裁断された生地をどのように縫製して仕上げるかの設計、規格、縫製仕様等により製造されることが技術常識であるところ、先行製品Bのパターンについては、甲6の11(パターンファイルシート)(上記(1)ケ.)には、「表マチ」、「裏マチ」、「前身頃」、「後身頃」、「足口レース」で構成されることが記載されている。
また、甲6の14(製品規格書)(上記(1)キ.(ウ))には、「マチ巾」、「マチ丈」の寸法と採寸方法が、甲6の15(縫製仕様書)(上記(1)ク.(イ)及び(ウ))には、「マチ」前後の縫製情報が、それぞれ記載されている。
そうすると、先行製品Bのパターンは、「表マチ」、「裏マチ」、「前身頃」、「後身頃」、「足口レース」で構成されるものであることが明らかであるところ、証拠としては、甲6の12の1(パターン)及び甲6の12の2(マチ部パターン)が提出されている。

イ.これら、先行製品Bのパターンのうち、甲6の12の1(パターン)については、上記(1)ア.(イ)?(エ)に示したように「D296ON」、「M」の記載があるものの、甲6の12の2(マチ部パターン)については、上記(1)イ.(イ)に示したように、品番が「B-1291」と記載されており、先行製品B(D296ON Mサイズ)のものではない。
そして、証人中村彰男の証言(上記(1)コ.(ウ)段落番号271)によると、「残っていないということは紛失したものだと思います。」とのことであるから、先行製品Bのマチ部パターンは、紛失したものである。

ウ.そうすると、先行製品Bを構成するパターンのうち、マチ部パターンが不足しているから、先行製品Bの当該部分についての構造を特定することができない。

エ.甲6の12の2(マチ部パターン)について、さらに検討する。
請求人上申書(2)(5.(3))によると、甲6の12の2(マチ部パターン)は、先行製品Bの試作品である試作ナンバー「B-1291」のものであると主張している。
この試作ナンバーについて、甲6の8(商品設計書)には、上記(1)カ.(カ)に示したように「試作NO」として、「B-1291」との記載がある。
一方、甲6の14(製品規格書)には、上記(1)キ.(ア)に示したように「試作No.」として「1257」が、甲6の15(縫製仕様書)には、上記(1)ク.(ア)に示したように「試作No.」として「1257」がそれぞれ記載されており、上記「B-1291」と整合していない。
この不整合の理由は定かでないが、甲6の12の2(マチ部パターン)の「B-1291」は、甲6の8(商品設計書)段階の試作ナンバーと一致するものであって、甲6の14(製品規格書)及び甲6の15(縫製仕様書)段階の試作ナンバーと異なるのだから、少なくとも、甲6の12の2(マチ部パターン)「B-1291」と、先行製品B(D296ON Mサイズ)の製造に用いられる甲6の14(製品規格書)及び甲6の15(縫製仕様書)段階の「D296ON」のマチ部パターンや、その試作品ナンバー「1257」のマチ部パターンとの関係は不明であるといわざるを得ない。
仮に、開発途中で試作ナンバーの変更があったとしても、甲6の12の2(マチ部パターン)の「B-1291」パターンは、開発初期の甲6の8(商品設計書)段階のものであって、製造に用いられる甲6の14(製品規格書)及び甲6の15(縫製仕様書)段階のものではないと理解するのが自然である。

オ.そうすると、甲6の12の2(マチ部パターン)は、製造に用いられるものではなく、やはり、先行製品Bを構成するパターンのうち、マチ部パターンが不足しているから、先行製品Bの当該部分についての構成を特定することができない。
ゆえに、先行製品Bに具現化された発明、すなわち先行発明Bを認定することができない。

カ.請求人の主張について
(ア)請求人は、請求人上申書(2)(5.(3))において、「請求人がパターン作成・管理に使用しているCADシステムであるAGMSシステムに保存されていた最新データの出力分である甲38と同じ甲6の12の1及び甲6の12の2のマチ部パーツ(甲6の12の1より前に作成された)が示す形状は、D296ON製品の最終パターンであり、請求人が製造販売した先行製品Bの根拠となったパターンである(証人調書発言058?063、066?070)。甲6の12の2のマチ部パーツは、甲6の12の2に記載されている開発段階の試作ナンバー(正式に品番を決定するまで、開発中の製品を特定するために使用する番号)「B-1291」が、D296ONの商品設計書(甲6の8)の左上に記載されていることから、D296ONのものであると判断できる(証人調書発言421?424)。新旧パターンは、証人中村彰男によって実際に重ね合わせて形状の同一性が確認されており、また両パターン上に記載されている縫い代幅に関するコメントが同じであることから、縫い代部分を除いた両パターンの形状も同じである(証人調書発言153?163、367?390)。」と主張している。

(イ)しかしながら、上記イ.で述べたとおり、品番が「B-1291」である甲6の12の2(マチ部パターン)は、先行製品B(D296ON Mサイズ)のものではなく、先行製品Bのマチ部パターンは、紛失したものであるのだから、先行製品Bを構成するパターンのうち、マチ部パターンが不足しているといわざるを得ない。
よって、請求人の上記主張は、採用することができない。

(ウ)さらに上記主張について検討しても、上記エ.で述べたとおり、製造に用いられる甲6の14(製品規格書)及び甲6の15(縫製仕様書)段階の品番は「D296ON」であるし、試作ナンバーは「1257」であるのだから、開発初期の甲6の8(商品設計書)段階のものであって試作ナンバーが異なる「B-1291」である甲6の12の2(マチ部パターン)と、現在のAGMSシステムに保存されている最新データとの形状比較がいかなるものであれ、実際の製造に用いられたマチ部パターンとの関係は、不明であるといわざるを得ない。
そうすると、やはり請求人の上記主張は、採用することができない。

キ.小括
以上のとおり、先行製品B(D296ON Mサイズ)は、先行製品Bを構成するパターンのうちマチ部パターンが不足しているから、先行製品Bの当該部分についての構成を特定することができず、ゆえに、先行製品Bに具現化された発明、すなわち先行発明Bを認定することができない。
よって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることができないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-B1によっては、無効とすることはできない。
また、本件発明2、3及び5は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明2、3及び5に係る特許についても同様に、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることができないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-B1によっては、無効とすることはできない。
さらに、本件発明4は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明4に係る特許についても同様に、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることができないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-B2によっては、無効とすることはできない。

(4)予備的検討2
上記(2)において検討したとおり、先行製品Bは、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然と実施されたものといえない。
さらに、上記(3)において予備的に検討したとおり、先行製品B(D296ON Mサイズ)は、先行製品Bを構成するパターンのうちマチ部パターンが不足しているから、先行製品Bの当該部分についての構成を特定することができず、ゆえに、先行製品Bに具現化された発明、すなわち先行発明Bを認定することができない。
しかし、念のために、請求人が主張するとおり、先行製品Bが本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において公然と実施されたものであって、先行製品Bのマチ部パターンが甲6の12の2(マチ部パターン)であり、その構成が甲6の12の1(パターン)及び甲6の12の2(マチ部パターン)の各パターンを甲6の15(縫製仕様書)に示されるように縫製することによって得られた品番D296ONのMサイズの下肢用衣料であるとして、以下に検討する。

ア.先行発明B(D296ON Mサイズ)の認定
甲6の12の1(パターン)及び甲6の12の2(マチ部パターン)の各パターンを甲6の15(縫製仕様書)に示されるように縫製することを考慮すると、品番D296ONのMサイズの下肢用衣料について、以下の事項が認められる。
(ア)後身頃には、大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部がある。
(イ)後身頃は、臀部を覆うものであり、前身頃に接続される。
(ウ)足口レースは、後身頃の足刳り形成部に接続され、大腿部が挿通するものである。
(エ)後身頃の足刳り形成部の上部が湾曲しており、湾曲の頂点が存在する。
(オ)後身頃の足刳り形成部の下端縁は臀部の下端付近に位置している。
(カ)足口レースには山がある。
(キ)足口レースは取り付け状態で筒状となっている。
(ク)下肢用衣料としてのショーツである。

上記(ア)?(ク)の事項を整理すると、以下の先行発明Bが認定できる。
なお、各段落の先頭の記号は、分説記号であり、本件発明1に付した分説記号に倣って当審が付した。

a-2:前身頃と、
b-2:後身頃は、大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部を備えるとともに前身頃に接続され臀部を覆い、
c-2:後身頃の足刳り形成部に接続され大腿部が挿通する足口レースを有し、
d-2:後身頃によって構成される足刳り形成部の湾曲した頂点があり、
e-2:後身頃の足刳り形成部の下端縁は臀部の下端付近に位置し、
f-2:足口レースには山があり、
h-2:足口レースは取り付け状態で筒状である、
i-2:ショーツ(D296ON Mサイズ)。

イ.本件発明1について
本件発明1は、上記第2.に示したとおりのものである。

ウ.本件発明1と先行発明Bの対比
先行発明Bの「開口部」は、本件発明1の「開口部」に相当し、以下同様に「前身頃」は「前身頃」に、「後身頃」は「後身頃」に、「足刳り形成部」は「足刳り形成部」に、「足口レース」は「大腿部パーツ」に、「足刳り形成部の湾曲した頂点」は「足刳り形成部の湾曲した頂点」に、「ショーツ(D296ON Mサイズ)」は「下肢用衣料」に相当する。

本件発明1における構成要件Dは、上記1.(3)ウ.で示したとおりのものであるところ、先行発明Bの構成d-2について、甲6の12の1(パターン)における後身頃の足刳り形成部の形状、及び甲6の15(縫製仕様書)における左側のパターン同士が縫製により接続されていることの図示からでは、立位着用状態での足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係がどのようになっているかは、明らかではない。そして、甲6の14(製品規格書)等、本件特許出願前における先行製品Bの製造販売当時のそのほかの証拠をみても、不明である。
したがって、先行発明Bの構成d-2は、「足刳り形成部の湾曲した頂点がある」限りにおいて、本件発明1の構成要件Dと一致する。

先行発明Bの構成f-2について、甲6の12の1(パターン)からでは、足口レースの山の高さと、足刳り形成部の前側の湾曲深さがどのような関係になっているかは、明らかではない。そして、甲6の14(製品規格書)等、本件特許出願前における先行製品Bの製造販売当時のそのほかの証拠をみても、不明である。
したがって、先行発明Bの構成f-2は、「大腿部パーツに山がある」限りにおいて、本件発明1の構成要件Fと一致する。

本件発明1における構成要件Gは、上記1.(3)ウ.で示したとおりのものであるところ、先行発明Bについて、甲6の12の1(パターン)からでは、足刳り形成部の湾曲部分の幅と、足口レースの山の幅の関係が、縫い付けられる全ての箇所においてどのようになっているかは、明らかではない。そして、甲6の14(製品規格書)等、本件特許出願前における先行製品Bの製造販売当時のそのほかの証拠をみても、不明である。

先行発明Bの構成h-2について、取り付け状態を示す甲6の15(縫製仕様書)の左側の図示からでは、足口レースが前身頃に対して前方に突出する形状となっているか否かは、明らかではない。そして、甲6の14(製品規格書)等、本件特許出願前における先行製品Bの製造販売当時のそのほかの証拠をみても、不明である。
したがって、先行発明Bの構成h-1は、「取り付け状態で筒状の大腿部パーツである」限りにおいて、本件発明1の構成要件Hと一致する。

そうすると、本件発明1と先行発明Bは、以下の点で一致し、かつ相違する。

<一致点B>
「A-2:前身頃と、
B-2:この前身頃に接続され臀部を覆うとともに足刳り形成部を有した後身頃と、
C-2:足刳り形成部に接続され大腿部が挿通する大腿部パーツとを有し、
D-2:足刳り形成部の湾曲した頂点があり、
E-2:前記後身頃の足刳り形成部の下端縁は臀部の下端付近に位置し、
F-2:大腿部パーツに山があり、
H-2:取り付け状態で筒状の大腿部パーツである、
I-2:下肢用衣料。」

<相違点B-1>
本件発明1の構成要件Aにつき、本件発明1は、「大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部を備えた前身頃」であるのに対して、先行発明Bは、足刳り形成部は後身頃のみに形成されており、前身頃には足刳り形成部が形成されていない点。

<相違点B-2>
本件発明1の構成要件Bにつき、本件発明1は、「前記前身頃の足刳り形成部に連続する足刳り形成部を有した後身頃」であるのに対して、先行発明Bは、前身頃に足刳り形成部がないため連続していない点。

<相違点B-3>
本件発明1の構成要件Cにつき、本件発明1は、大腿部パーツが「前記前身頃と前記後身頃の各足刳り形成部に接続され」るものであるのに対して、先行発明Bは、前身頃に足刳り形成部がなく、足口レースが後身頃の足刳り形成部にのみ接続されるものである点。

<相違点B-4>
本件発明1の構成要件Dにつき、本件発明1は、「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し」ているのに対して、先行発明Bは、前身頃に足刳り形成部がなく、また、立位着用状態での足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係がどのようになっているかが不明である点。

<相違点B-5>
本件発明1の構成要件Fにつき、本件発明1は、「前記大腿部パーツの山の高さを前記足刳り形成部の前側の湾曲深さよりも低い形状とし」ているのに対して、先行発明Bは、足口レースの山の高さと、足刳り形成部の前側の湾曲深さがどのような関係になっているか不明である点。

<相違点B-6>
本件発明1の構成要件Gにつき、本件発明1は、「前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し」ているのに対して、先行発明Bは、足刳り形成部の湾曲部分の幅と、足口レースの山の幅の関係が、縫い付けられる全ての箇所においてどのようになっているか不明である点。

<相違点B-7>
本件発明1の構成要件Hにつき、本件発明1は、「前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状」となっているのに対して、先行発明Bは、足口レースが前身頃に対して前方に突出する形状となっているか否かが不明である点。

エ.相違点についての検討
まず、<相違点B-4>について検討する。
(ア)特許法第29条第2項を理由とする無効理由1-B1について
a.本件発明1は、構成要件Dの「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し」ていることによって、「足刳りのパターンの形状の工夫により、身体の腸骨棘点a付近から前方の生地の立体的方向性が確保されるため、着用時に股関節の前方への屈伸抵抗が少なく運動しやすく、疲れにくいものである。」(段落【0027】)という作用効果を、構成要件Hの「取り付け状態で筒状の前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状となること」との関連性によって奏するものである。
一方、先行発明Bは、足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係がどのようになっているかが不明であるばかりでなく、<相違点B-7>のとおり、足口レースが前身頃に対して前方に突出する形状となっているか否かが不明であるとともに、身体の腸骨棘点付近から前方の生地の立体的方向性を確保するという構成との関連性を示唆する証拠もない。また、着用時に股関節の前方への屈伸抵抗が少なく運動しやすく、疲れにくくするという作用効果を想起させるような証拠もない。

b.さらに、下肢用衣料において、足刳り形成部の湾曲した頂点を腸骨棘点付近に位置するような形状とすることが技術常識であることを示す証拠はなく、下肢用衣料の技術常識を勘案しても、そのような形状が一般的であるともいえない。
また、先行発明B自体は、ショーツという製品自体であり、足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係に関する設計思想を示す書類等がなければ、製品自体のみから、上記<相違点B-4>に係る構成である「湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置」することについての技術的思想を把握することは困難である。さらに、足刳り形成部の湾曲した頂点を腸骨棘点付近に位置するような形状に変更する動機付けを示唆する証拠は、ない。

c.そして、上記a.で述べたとおり、本件発明1は、構成要件Dの「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し」ていることと、構成要件Hの「取り付け状態で筒状の前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状となること」との関連性によって、「足刳りのパターンの形状の工夫により、身体の腸骨棘点a付近から前方の生地の立体的方向性が確保されるため、着用時に股関節の前方への屈伸抵抗が少なく運動しやすく、疲れにくいものである。」(段落【0027】)という格別の作用効果を奏するものである。

d.よって、先行発明Bにおいて、足刳り形成部の湾曲した頂点を腸骨棘点付近に位置するような形状に変更することは、当業者が容易になし得たものということはできない。
そうすると、上記<相違点B-1>?<相違点B-3>、<相違点B-5>?<相違点B-7>について検討するまでもなく、先行発明Bにおいて上記<相違点B-4>に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

e.小括
以上のとおりであるから、請求人が主張するとおり、先行製品Bが本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において公然と実施されたものであって、先行製品Bのマチ部パターンが甲6の12の2(マチ部パターン)であり、その構成が甲6の12の1(パターン)及び甲6の12の2(マチ部パターン)の各パターンを甲6の15(縫製仕様書)に示されるように縫製することによって得られたものであったとしても、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-B1によっては、無効とすることはできない。

f.本件発明2、3及び5について
本件発明2、3及び5は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明2、3及び5に係る特許についても同様に、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-B1によっては、無効とすることはできない。

g.請求人の主張について
(a)請求人は、請求人要領書(1)(5.(3-2-1-4)ア)において、甲27(写真撮影報告書)を示しつつ先行製品Bの足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置するように例えば先行製品Bを引き上げる等して着用することが可能であるのは自明であると主張している。
また、請求人は、請求人要領書(2)(5.(4-2-3-1)イ)において、甲41(D296ONのMサイズ試作品)のサンプルBとともに請求人要領書(2)別紙2(トルソーに穿かせたサンプルBの写真及び検証図)を示しつつ、先行製品Bの足刳り形成部の湾曲した頂点が下前腸骨棘点付近に位置していることが確認された旨主張し、さらに上申書(1)(5.(7))において、甲55の1(報告書)を示しつつ、先行製品Bの足刳り形成部の湾曲した頂点は腸骨棘点付近にある旨主張している。
そして、甲27(写真撮影報告書)、請求人要領書(2)別紙2(トルソーに穿かせたサンプルBの写真及び検証図)、甲55の1(報告書)には、足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置するように引き上げられて着用した状態のサンプルBの写真が掲載されている。

(b)しかし、本件特許に係る出願前における先行製品Bの足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置するか否かを示す証拠、例えば先行製品Bを着用した状態の当時のカタログ等はない。

(c)そして、証人中村彰男の証言(上記(1)コ.(エ)段落番号304?305)によると、甲41(D296ONのMサイズ試作品)のサンプルBは、上記1.(3)エ.(ア)e.(c)で述べたサンプルAと同様に少なくとも足口レースが異なるものであって、手元にある似たもので作ったものであるから、先行製品Bの構成を完全に再現したものではない。
そして、足口レースが異なれば、引き上げる等して着用する際の足口レースの伸び具合が異なるため、引き上げ可能な程度や、引き上げた際の足刳り形成部の変形度合いが異なることは明らかである。
そうすると、先行製品Bの構成を完全に再現したものではないサンプルBに基づく確認結果は、先行製品Bの確認結果とはいえない。

(d)さらに、サンプルBに基づく確認結果をみても、サンプルBを引き上げる等して着用するという条件を満たすことによって初めて足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置するものであるから、これを先行製品Bに当てはめると、先行製品Bが、引き上げる等して着用するという条件を満たすことが求められる製品であったことが必須の構成となる。
しかしながら、先行製品Bが、通常どのように着用すべき製品であるのか、特に、引き上げる等して着用すべき製品であるのかを示す証拠はない。

(e)また、サンプルBの着用状態につき、請求人は、請求人上申書(3)(5.第1 1)において、サンプルBを引き上げて着用した状態は、乙2判決の判断に則ったものである旨主張している。
しかしながら、乙2(関連侵害訴訟控訴審判決)の判断対象である「被告製品」は、甲10(関連侵害訴訟1審判決)の被告タカギにつきイ号製品(D830、D944、D951)、ロ号製品(D831、D952)、ハ号製品(D968)、ニ号製品(D965)、ホ号製品(D966)、ヘ号製品(D964)、被告名古屋タカギにつきイ号製品(D830、D944)、ロ号製品(D831)であり、先行製品B(D296ON)とは、判断対象の製品が異なるものであるから、サンプルBの着用状態とは関係がない。

(f)そうすると、請求人が主張するサンプルBに基づく確認結果は、先行製品Bにおける通常の着用状態のものといえず、引き上げる等して着用するという操作を加えれば、足刳り形成部の湾曲した頂点を腸骨棘点付近に位置させることが可能であるという程度のものであって、先行製品Bが、本件発明1の構成要件Dを備えたものであることまでをも示すものではない。

(g)以上のとおりであるから、請求人の上記主張は、採用できない。

(イ)特許法第29条第2項を理由とする無効理由1-B2について
上記(ア)のとおり、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、本件発明4は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明4に係る特許についても同様に、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-B2によっては、無効とすることはできない。


3.先行製品C(株式会社タカギ品番D346UN)に基づく無効理由1-C1(先行製品Cを主とする特許法第29条第1項第2号)、無効理由1-C2(先行製品Cを主とする特許法第29条第2項)及び無効理由1-C3(先行製品Cを主とする特許法第29条第2項)について
(1)証拠
以下の証拠には、次の記載がある。
ア.甲6の21の1(パターン)
(ア)甲6の21の1は、D346UNのパターンである。
(イ)「上前身頃」には、「D346UN」、「M」、「03/11/14」の記載がある。
(ウ)「前身頃」には、「D346UN」、「M」、「03/11/14」の記載がある。
(エ)「上後身頃」には、「D346UN」、「M」、「03/11/14」の記載がある。
(オ)「後身頃」には、「D346UN」、「M」、「03/11/14」の記載がある。
(カ)「裏マチ」には、「D346UN」、「M」、「03/11/14」の記載がある。
(キ)「足口レース」には、「D346UN」、「M」、「03/11/14」の記載がある。

イ.甲5(陳述書)
(ア)「(ア)商品設計書(資料17の1、2)
本商品設計書は、平成15年9月26日に最初に記入されたものです。記載に基づきますと、左上の年度/シーズンとして2004S/Sとありますので、2004年(平成16年)のSpring/Summer(春・夏)向け商品として開発したものと示されています。製品品番D346UN、ブランド/仕向先はユニー、販売計画数は5,100枚、・・・カラー・サイズ展開は、クロ、モカ、ピンクについて各々M、L、記載のような規格寸法を予定していたことが示されています。」
(2(3)(ア))

(イ)『(エ)パターン(資料21の1、資料21の2)
パターン中央にD346UNの印字があるものは、平成15年11月14日当時にAGMSシステムから出力した、D346UNのMサイズのパターンです。パターン上に「03/11/14」と印字されておりますので、2003年(平成15年)11月14日当時に出力したD346UNのパターンに間違いありません。
パターンにキ023(-A)と記入があるものは、平成15年の開発当初に手作業で作成されたパターンです。資料17にあるように、キ023-AはD346UNの試作No.になります。』
(2(3)(エ))

ウ.甲6の7(販売実績)
(ア)表のタイトルとして「販売実績」の記載がある。
(イ)「D346UN」と記載された下段の表には、以下の記載がある。
a.列のタイトル「品番」は全て「D346UN」である。
b.「年度」が「2004」、「名称」が「(株)名古屋タカギ」の行には、「月数量(枚)」に「3524」、「月金額(円)」に「1365138」の記載がある。
c.「年度」が「2005」、「名称」が「(株)ヒゼン」の行には、「月数量(枚)」に「2」、「月金額(円)」に「500」の記載がある。
b.「年度」が「2006」、「名称」が「ホワード(株)」の行には、「月数量(枚)」に「90」、「月金額(円)」に「13500」の記載がある。

エ.甲44(販売実績 品番+サイズ別)
(ア)表のタイトルとして「販売実績 品番+サイズ別」の記載がある。
(イ)「D346UN」と記載された下段の表には、以下の記載がある。
a.列のタイトル「品番」は全て「D346UN」である。
b.列のタイトル空白が「M」、「年度」が「2004」、「名称」が「(株)名古屋タカギ」の行には、
「月数量(枚)」に「1525」、「月金額(円)」に「590175」、
「3月数量」に「400」、「3月金額」に「154800」、
「4月数量」に「560」、「4月金額」に「216720」、
「5月数量」に「197」、「5月金額」に「76239」、
「6月数量」に「100」、「6月金額」に「38700」、
「7月数量」に「268」、「7月金額」に「103716」、
の記載がある。
c.列のタイトル空白が「M」、「年度」が「2006」、「名称」が「ホワード(株)」の行には、
「月数量(枚)」に「30」、「月金額(円)」に「4500」、
「3月数量」に「30」、「3月金額」に「4500」、
の記載がある。

オ.甲6の17の1(商品設計書)
(ア)左上部に「年度/シーズン 2004 SS」の記載とともに、「製品品番」として「D346UN」との記載がある。
(イ)「使用素材」の表に、「主素材」、「副素材」、「容量(正)」の「M」について各種の記載がある。
(ウ)「規格寸法」の表に、「サイズ」「M」として各種寸法が記載されている。
(エ)左側に各パターンが接続された様子が図示されている。
(オ)上部に「ブランド/仕向先」として「ユニー」と記載されている。

カ.甲6の17の2(商品設計書)
(ア)左上部に「年度/シーズン 2004 SS」の記載とともに、「製品品番」として「D346UN」との記載がある。
(イ)「使用素材」の表に、「主素材」、「副素材」、「容量(正)」の「M」について各種の記載がある。
(ウ)「規格寸法」の表に、「サイズ」「M」として各種寸法が記載されている。
(エ)左側に各パターンが接続された様子が図示されている。
(オ)上部に「ブランド/仕向先」として「ユニー」と記載されている。

キ.甲6の23(製品規格書)
(ア)上部に、「品番」として「D346UN」の記載がある。
(イ)左側に「採寸図」が記載されている。
(ウ)中央の「採寸寸法」表には、「M」の各部採寸寸法と採寸方法が記載されている。
(エ)下部の「素材」表には、各パーツの素材と「M」の容量が記載されている。
(オ)上部には、「シーズン」として「2004年 S/S」と記載されている。
(カ)上部に「仕向先」として「名古屋タカギ」と記載されている。

ク.甲6の24(縫製仕様書)
(ア)上部に「品番」として「D346UN」の記載がある。
(イ)左側に、パターン同士が縫製により接続されていることの図示と共に、各部の縫製情報が記載されている。
(ウ)右側に、縫製情報や糸の指定が記載されている。
(エ)左下部に、「サイズ展開」として「M」が記載されている。
(オ)中央上部に「シーズン」として「2004年 S/S」と記載されている。
(カ)上部に「仕向先」として「名古屋タカギ」と記載されている。

ケ.甲24の3(品質検査報告書)
(ア)右中央部に「品名・品番」として「D346UN」の記載がある。
(イ)中央上部に「サイズ表示」として「M」の記載がある。
(ウ)右上部の「納入先」の「会社名」として「ユニー(株)」の記載がある。
(エ)右中央部の「判定」の「適用規格」として「ユニー(株)基準」、「製品検査」として「合格」に丸印、「生地検査」の「染色堅牢度」の「合格」に「3色」の記載がある。
(オ)右下部の「(備考)」に「合格」の押印がある。

コ.証人中村彰男の証言
証人中村彰男は、平成31年2月7日、特許庁審判廷において宣誓の上、以下のとおり述べた。なお、段落番号は、反訳書面による。
(ア)「請求人代理人弁護士 富永 夕子
甲第6号証の17の1及び甲第6号証の17の2を示す。
084 では、次に、先行製品Cに関してお尋ねします。上部に製品品番D346UN商品設計書と記載がありますけれども、これはタカギで保管されているものですか。
はい。
・・・
甲第6号証の21の1(原本)を示す。
089 これは何ですか。
これはD346UNの当時のパターンで、弊社に保管されていたものです。
090 この紙のパターンが出力されたのはいつですか。
ここに記載のある2003年11月14日です。」

(イ)「請求人代理人弁護士 富永 夕子
第24号証の3を示す。
108 右中段の品名・品番の欄にショーツD346UNとありまして、D346UN製品の品質検査報告書ですね。
はい。
109 D346UNは、どちらの取引先向けの製品ですか。
ユニー株式会社です。」

(ウ)「請求人代理人弁護士 富永 夕子
甲第44号証を示す。
117 下段にD346UNの表がありますけれども、これは何の表ですか。
これは品番、サイズ、年度、月別に、あと、売り先別に販売実績を集計した表だと思います。
118 これもタカギの売り上げを管理しているデータベースから抽出されたものですね。
はい、そうです。
119 D346UNの表の項目のすぐ下の行を左から見ていきますと、品番D346UN、Mサイズの製品について、2004年度に株式会社名古屋タカギに対し1,525枚、59万175円の売り上げがあったということで間違いないですか。
はい、間違いありません。
120 2行目以下の行も、記載どおりの販売実績があったということで間違いないですか。
はい、間違いないです。」

(エ)「被請求人ら復代理人弁護士 今西 康訓
306 先行製品Cの関係でお聞きしますけれども、これも商品設計書に書かれている販売計画数、これは確定だったと思うんですけど、それと実際の販売数に乖離があるんですけど、その理由というのはおわかりになりますか。
いえ、理由はわかりません。
・・・
311 この先行製品Cに関してはカタログは作成されましたか。
作ってないと思います。
312 お客さんのところに、お客さんのところでカタログとかチラシ、作成されたかどうか、確認されましたか。
いえ、していません。
313 それと、この先行商品Cについてもサンプル作成のもとになっている型紙というのは、最近出力された型紙ということでよろしいですか。
はい、そうです。
314 生地とか糸とかはどうでしょう。
生地は色は別にしても同じもので、ほかのものは先行製品Aと同じように、材料でもオッケーということで進めました。」

(2)先行製品Cについて
ア.先行製品C
(ア)請求人の主張する先行製品Cは、請求人である株式会社タカギが製造、販売したとされる品番D346UN製品であるが、製品そのものは、証拠として提出されていない。

(イ)先行製品Cのような下肢用衣料において、製品は、型紙(パターン)と、各パターンをもとに裁断された生地をどのように縫製して仕上げるかの設計、規格、縫製仕様等により製造されることが技術常識であるところ、先行製品Cの型紙として甲6の21の1(パターン)が提出されている。
そして、甲6の21の1(パターン)をみると、上記(1)ア.(イ)?(キ)に示したように、「D346UN」、「M」の記載がある。
この「D346UN」、「M」は、甲5(陳述書)(上記(1)イ.(ア))によると、「D346UN」は品番を、「M」はMサイズを意味している。
したがって、先行製品Cは、株式会社タカギの品番D346UNのMサイズの下肢用衣料である。

以上をふまえ、先行製品Cとして「D346UN Mサイズ」について、以下に検討する。

イ.公然実施
(ア)先行製品Cが販売された事実を直接的に立証するための伝票、領収書といった証拠は、提出されていない。
請求人要領書(1)(5.(3-3-1-1))によると、「先行製品Cが販売されたのは、約15年以上も前の時期であることから、当時の伝票等は保管されていない。」ものである。
また、先行製品Cが掲載されたカタログ、チラシ等の配布物についても、証拠は提出されていない。
証人中村彰男の証言(上記(1)コ.(エ)段落番号311?312)によると、先行製品Cが掲載されたカタログ等が作成されたか否かは、不明である。
そして、先行製品Cを販売した相手方による、先行製品Cを購入したことを示す証拠も提出されていない。
そうすると、先行製品Cが販売された事実を直接的に立証するに足りる証拠はない。

(イ)次に、甲6の7(販売実績)(上記(1)ウ.)は、請求人である株式会社タカギ社内の売上実績データベースから抽出され、マイクロソフト・オフィス・エクセルにコピーされた(上記1.(1)エ.)、D346UNの販売実績を示す証拠であるが、Mサイズに関する記載がないため、先行製品C(D346UN Mサイズ)の販売実績を直接示すものではない。

(ウ)そこで、甲44(販売実績 品番+サイズ別)(上記(1)エ.)をみると、請求人要領書(2)(4-1-2-7)によれば、「先行製品AないしCの各販売数量のうち、サイズ別に細分化したデータ一覧表」であり、列のタイトル空白に記載された「M」は、Mサイズを意味するものである。
また、請求人要領書(2)(4-1-2-3)によれば、「販売実績データ一覧表の各年度は請求人の決算月で区切られており、毎年2月から翌年の1月までが同一年度である。」から、先行製品C(D346UN Mサイズ)について、上記(1)エ.(イ)に示した「D346UN」、「M」は、2004年3月?7月、及び2006年3月に販売があったことをそれぞれ意味するものである。
このうち、上記(1)エ.(イ)c.の2006年3月のデータは、本件特許の出願日である平成17年(2005年)8月22日以降のものであるから、先行製品Cが本件特許出願前に公然実施をされたか否かの判断に影響を与えない。

(エ)甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)のうち、本件特許の出願日である平成17年(2005年)8月22日以前のデータである、上記(1)エ.(イ)b.の2004年3月?7月のデータについてさらに検討すると、当該データは、「D346UN」が「(株)名古屋タカギ」へ販売されたことを示すデータである。
ここで、上記1.(2)ア.(ウ)に示したように、品番中のアルファベット2文字は、販売先を区別するためのものであり、甲5(陳述書)(上記(1)イ.(ア))、甲6の17の1(商品設計書)(上記(1)オ.(オ))、甲6の17の2(商品設計書)(上記(1)カ.(オ))、及び証人中村彰男の証言(上記(1)コ.(イ)段落番号109)によると、「D346UN」の「UN」は、「ユニー株式会社」向けであることを意味する。
一方、甲6の23(製品規格書)(上記(1)キ.(カ))及び甲6の24(縫製仕様書)(上記(1)ク.(カ))には、「仕向先」として「名古屋タカギ」が記載されている。
この点につき、証人中村彰男の証言(上記1.(1)シ.(カ)段落番号331?334)によると、ユニー向け製品は、基本的に、請求人である株式会社タカギから名古屋タカギに販売され、その後、名古屋タカギからユニーに販売されることになっているが、名古屋タカギがユニー以外に販売する可能性もあるものである。
そうすると、「D346UN」は、ユニー向けの製品として開発されたものであって、ユニーへの販売ルートが基本的に名古屋タカギ経由であるため、甲6の23(製品規格書)及び甲6の24(縫製仕様書)の仕向先としては、名古屋タカギが記載されているものと一応理解できる。
このことは、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)の2004年3月?7月のデータが「(株)名古屋タカギ」への販売を示すことと、「D346UN」がユニー向けの製品であることとも一応整合する。

(オ)次に、甲6の17の1(商品設計書)及び甲6の17の2(商品設計書)には「年度/シーズン 2004 SS」(上記(1)オ.(ア)、上記(1)カ.(ア))、甲6の23(製品規格書)には「シーズン」として「2004年 S/S」(上記(1)キ.(オ))、甲6の24(縫製仕様書)には「シーズン」として「2004年 S/S」(上記(1)ク.(オ))と記載されていること、また、甲5(陳述書)(上記(1)イ.(ア))によれば、先行製品Cは、春夏物衣料である。
一方、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)のデータのうち、2004年3月?7月のデータは、春夏物衣料の販売時季として妥当な時季である。

(カ)ここで、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)については、先行製品Aについて上記1.(2)イ.(エ)及び(オ)で述べたとおり、手入力段階、加工段階、コピー段階という情報の正確性に影響を及ぼす可能性のある段階が複数存在しているものである。

(キ)次に、甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)について、甲26(株式会社タカギ商品の販売実績について)では、請求人である株式会社タカギの顧問税理士による意見が述べられている。
これは、先行製品Aについて上記1.(1)イ.(カ)で述べたのと同様に「売上実績データベースから抽出したタカギの売上を毎月定期的に確認」するにとどまるものであって、販売された製品自体の確認や、製品ごとに販売先に対して販売が事実であったかの確認が行われていたか否かは明らかでなく、特に、先行製品C(D346UN Mサイズ)の販売に関して確認が行われたか否かも明らかでない。
また、上記(1)エ.(イ)b.の2004年3月?7月のデータは、顧問税理士就任の平成17年(2005年)9月以前で一年以上前のものであるから、少なくとも、販売があった当時に顧問税理士によって確認がなされたものではない。

(ク)そのほか請求人は、請求人要領書(1)(5.(3-3-1-1))、請求人上申書(2)(5.(4))において、甲6の21の1(パターン)、甲6の23(製品規格書)、甲6の24(縫製仕様書)の存在や、甲6の17の1(商品設計書)、甲6の17の2(商品設計書)への容量の記入、甲24の3(品質検査報告書)の検査合格などをもって、請求人から株式会社名古屋タカギを通じてユニー株式会社へ先行製品Cが販売されたものであることを主張している。
しかしながら、甲6の17の1(商品設計書)、甲6の17の2(商品設計書)、甲6の21の1(パターン)、甲6の23(製品規格書)、甲6の24(縫製仕様書)は、先行製品Cである「D346UN」の製造準備が整ったことを示すものであって、実際に製造されたことを示すものではないし、ましてや「D346UN」が、請求人の主張する経緯で販売されたことを示すものではない。
また、甲24の3(品質検査報告書)(上記(1)ケ.)は、「D346UN」が検査に合格したことを示すものであって、本格的な生産が開始されたことを示すものではないし、ましてや「D346UN」が販売されたことを示すものではない。

(ケ)上記(イ)?(ク)を整理すると、以下のようになる。
a.「D346UN」は、ユニー株式会社向けの製品である。
b.ユニー株式会社への販売は、基本的に(株)名古屋タカギを通じて行われる。
c.甲6の7(販売実績)及び甲44(販売実績 品番+サイズ別)には、(株)名古屋タカギに販売したとされるデータがあるが、先行製品Cが実際に当該データのとおりに販売されたとはいえない。
d.当該データは、顧問税理士が直接、事実の確認したものではなく、実際の販売実績を示すものであるとまではいえない。
e.3月?7月は、春夏物の販売時季として妥当な時季である。
上記a.?e.を総合しても、「ユニー向けの製品が、ユニーに販売するであろう名古屋タカギに対して販売したとされるデータがあるが、実際に当該データのとおりに販売されたとはいえない。当該データの販売時季は妥当な時季である。しかし、当該データは、顧問税理士が直接、事実の確認したものではなく、実際の販売実績を示すものであるとまではいえないものである。」ことが示されているにとどまる。

(コ)そうすると、先行製品Cが本件特許に係る出願前に販売されたことを直接示す証拠は、上記(ア)のとおり提出されておらず、また、請求人が示した証拠は、上記(イ)?(ケ)のとおり、それらを総合しても、先行製品Cが販売されたもの、すなわち、公然と実施されたものであるといえない。

(サ)小括
以上のとおり、先行製品C(D346UN Mサイズ)は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然と実施されたものであるといえない。
よって、本件発明1は、特許法第29条第1項第2号に該当せず、また、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-C1、及び無効理由1-C2によっては、無効とすることはできない。
また、本件発明2、3及び5は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明2、3及び5についても同様に、特許法第29条第1項第2号に該当せず、また、本件発明2、3及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-C1、及び無効理由1-C2によっては、無効とすることはできない。
さらに、本件発明4は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明4に係る特許についても同様に、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-C3によっては、無効とすることはできない。

(3)予備的検討
上記(2)において検討したとおり、先行製品Cは、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において、公然と実施されたものであるといえない。
しかし、念のために、請求人が主張するとおり、先行製品Cが本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において公然と実施されたものであって、その構成が甲6の21の1(パターン)の各パターンを甲6の24(縫製仕様書)に示されるように縫製することによって得られた品番D346UNのMサイズの下肢用衣料であるとして、以下に検討する。

ア.先行発明C(D346UN Mサイズ)の認定
甲6の21の1(パターン)の各パターンを甲6の24(縫製仕様書)に示されるように縫製することを考慮すると、品番D346UNのMサイズの下肢用衣料について、以下の事項が認められる。
(ア)前身頃には、大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部がある。
(イ)後身頃は、臀部を覆うもので、前身頃に接続される。また、後身頃には、大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部がある。
(ウ)前身頃の足刳り形成部と、後身頃の足刳り形成部は連続している。
(エ)足口レースは、前身頃と後身頃の各足刳り形成部に接続されて、大腿部が挿通する。
(オ)前身頃と後身頃によって構成される足刳り形成部の上部が湾曲しており、湾曲の頂点が存在する。
(カ)後身頃の足刳り形成部の下端縁は臀部の下端付近に位置している。
(キ)足口レースには山がある。
(ク)足口レースは取り付け状態で筒状となっている。
(ケ)下肢用衣料としてのショーツである。

上記(ア)?(ケ)の事項を整理すると、以下の先行発明Cが認定できる。
なお、各段落の先頭の記号は、分説記号であり、本件発明1に付した分説記号に倣って当審が付した。

a-3:大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部を備えた前身頃と、
b-3:この前身頃に接続され臀部を覆うとともに前記前身頃の足刳り形成部に連続する足刳り形成部を有した後身頃と、
c-3:前記前身頃と前記後身頃の各足刳り形成部に接続され大腿部が挿通する足口レースとを有し、
d-3:前身頃及び後身頃によって構成される足刳り形成部の湾曲した頂点があり、
e-3:後身頃の足刳り形成部の下端縁は臀部の下端付近に位置し、
f-3:足口レースには山があり、
h-3:足口レースは取り付け状態で筒状である、
i-3:ショーツ(D346UN Mサイズ)。

イ.本件発明1について
本件発明1は、上記第2.に示したとおりのものである。

ウ.本件発明1と先行発明Cの対比
先行発明Cの「開口部」は、本件発明1の「開口部」に相当し、以下同様に「前身頃」は「前身頃」に、「足刳り形成部」は「足刳り形成部」に、「後身頃」は「後身頃」に、「足口レース」は「大腿部パーツ」に、「足刳り形成部の湾曲した頂点」は「足刳り形成部の湾曲した頂点」に、「ショーツ(D346UN Mサイズ)」は「下肢用衣料」に相当する。

本件発明1における構成要件Dは、上記1.(3)ウ.で示したとおりのものであるところ、先行発明Cの構成d-3について、甲6の21の1(パターン)における前身頃と後身頃の足刳り形成部の形状、及び甲6の24(縫製仕様書)における左側のパターン同士が縫製により接続されていることの図示からでは、足刳り形成部の湾曲した頂点が前身頃にあるのか後身頃にあるのか、また、立位着用状態での足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係がどのようになっているかは、明らかではない。そして、甲6の23(製品規格書)等、本件特許出願前における先行製品Cの製造販売当時のそのほかの証拠をみても、不明である。
したがって、先行発明Cの構成d-3は、「足刳り形成部の湾曲した頂点がある」限りにおいて、本件発明1の構成要件Dと一致する。

先行発明Cの構成f-3について、甲6の21の1(パターン)からでは、足口レースの山の高さと、前身頃及び後身頃で形成される足刳り形成部の前側の湾曲深さがどのような関係になっているかは、明らかではない。そして、甲6の23(製品規格書)等、本件特許出願前における先行製品Cの製造販売当時のそのほかの証拠をみても、不明である。
したがって、先行発明Cの構成f-3は、「大腿部パーツに山がある」限りにおいて、本件発明1の構成要件Fと一致する。

本件発明1における構成要件Gは、上記1.(3)ウ.で示したとおりのものであるところ、先行発明Cについて、甲6の21の1(パターン)からでは、前身頃及び後身頃で形成される足刳り形成部の湾曲部分の幅と、足口レースの山の幅の関係が、縫い付けられる全ての箇所においてどのようになっているかは、明らかではない。そして、甲6の23(製品規格書)等、本件特許出願前における先行製品Cの製造販売当時のそのほかの証拠をみても、不明である。

先行発明Cの構成h-3について、取り付け状態を示す甲6の24(縫製仕様書)の左側の図示からでは、足口レースが前身頃に対して前方に突出する形状となっているか否かは、明らかではない。そして、甲6の23(製品規格書)等、本件特許出願前における先行製品Cの製造販売当時のそのほかの証拠をみても、不明である。
したがって、先行発明Cの構成h-3は、「取り付け状態で筒状の大腿部パーツである」限りにおいて、本件発明1の構成要件Hと一致する。

そうすると、本件発明1と先行発明Cは、以下の点で一致し、かつ相違する。

<一致点C>
「A-3:大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部を備えた前身頃と、
B-3:この前身頃に接続され臀部を覆うとともに前記前身頃の足刳り形成部に連続する足刳り形成部を有した後身頃と、
C-3:前記前身頃と前記後身頃の各足刳り形成部に接続され大腿部が挿通する大腿部パーツとを有し、
D-3:足刳り形成部の湾曲した頂点があり、
E-3:前記後身頃の足刳り形成部の下端縁は臀部の下端付近に位置し、
F-3:大腿部パーツに山があり、
H-3:取り付け状態で筒状の大腿部パーツである、
I-3:下肢用衣料。」

<相違点C-1>
本件発明1の構成要件Dにつき、本件発明1は、「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し」ているのに対して、先行発明Cは、足刳り形成部の湾曲した頂点が前身頃にあるのか後身頃にあるのかが不明であり、また、立位着用状態での足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係がどのようになっているかが不明である点。

<相違点C-2>
本件発明1の構成要件Fにつき、本件発明1は、「前記大腿部パーツの山の高さを前記足刳り形成部の前側の湾曲深さよりも低い形状とし」ているのに対して、先行発明Cは、足口レースの山の高さと、前身頃及び後身頃で形成される足刳り形成部の前側の湾曲深さがどのような関係になっているか不明である点。

<相違点C-3>
本件発明1の構成要件Gにつき、本件発明1は、「前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し」ているのに対して、先行発明Cは、前身頃及び後身頃で形成される足刳り形成部の湾曲部分の幅と、足口レースの山の幅の関係が、縫い付けられる全ての箇所においてどのようになっているか不明である点。

<相違点C-4>
本件発明1の構成要件Hにつき、本件発明1は、「前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状」となっているのに対して、先行発明Cは、足口レースが前身頃に対して前方に突出する形状となっているか否かが不明である点。

エ.相違点についての検討
まず、<相違点C-1>について検討する。
(ア)特許法第29条第1項第2号を理由とする無効理由1-C1について
a.<相違点C-1>は、先行発明Cの足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係についての相違点であるから、形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。
よって、先行発明Cは、本件発明1ではない。

b.そうすると、上記<相違点C-2>?<相違点C-4>について検討するまでもなく、先行発明Cは、本件発明1ではない。

c.小括
以上のとおりであるから、請求人主張のとおり、先行製品Cが本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において公然と実施されたものであって、その構成が甲6の21の1(パターン)の各パターンを甲6の24(縫製仕様書)に示されるように縫製することによって得られたものであったとしても、本件発明1は、特許法第29条第1項第2号に該当しないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-C1によっては、無効とすることはできない。

d.本件発明2、3及び5について
また、本件発明2、3及び5は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明2、3及び5についても同様に、特許法第29条第1項第2号に該当しないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-C1によっては、無効とすることはできない。

e.請求人の主張について
(a)請求人は、請求人要領書(1)(5.(3-3-1-4)ア)において、甲27(写真撮影報告書)を示しつつ先行製品Cの足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置するように例えば先行製品Cを引き上げる等して着用することが可能であるのは自明であると主張している。
また、請求人は、請求人要領書(2)(5.(4-3-3-1)ア)において、甲42(D346UNのMサイズ試作品)のサンプルCとともに請求人要領書(2)別紙3(トルソーに穿かせたサンプルCの写真及び検証図)を示しつつ、先行製品Cの足刳り形成部の湾曲した頂点が下前腸骨棘点付近に位置していることが確認された旨主張し、さらに上申書(1)(5.(7))において、甲55の1(報告書)を示しつつ、先行製品Cの足刳り形成部の湾曲した頂点は腸骨棘点付近にある旨主張している。
そして、甲27(写真撮影報告書)、請求人要領書(2)別紙3(トルソーに穿かせたサンプルCの写真及び検証図)、甲55の1(報告書)には、足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置するように引き上げられて着用した状態のサンプルCの写真が掲載されている。

(b)しかし、本件特許に係る出願前における先行製品Cの足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置するか否かを示す証拠、例えば先行製品Cを着用した状態の当時のカタログ等はない。

(c)そして、証人中村彰男の証言(上記(1)コ.(エ)段落番号313?314)によると、甲42(D346UNのMサイズ試作品)のサンプルCは、上記1.(3)エ.(ア)e.(c)で述べたサンプルAと同様に少なくとも足口レースが異なるものであって、手元にある似たもので作ったものであるから、先行製品Cの構成を完全に再現したものではない。
そして、足口レースが異なれば、引き上げる等して着用する際の足口レースの伸び具合が異なるため、引き上げ可能な程度や、引き上げた際の足刳り形成部の変形度合いが異なることは明らかである。
そうすると、先行製品Cの構成を完全に再現したものではないサンプルCに基づく確認結果は、先行製品Cの確認結果とはいえない。

(d)さらに、サンプルCに基づく確認結果をみても、サンプルCを引き上げる等して着用するという条件を満たすことによって初めて足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置するものであるから、これを先行製品Cに当てはめると、先行製品Cが、引き上げる等して着用するという条件を満たすことが求められる製品であったことが必須の構成となる。
しかしながら、先行製品Cが、通常どのように着用すべき製品であるのか、特に、引き上げる等して着用すべき製品であるのかを示す証拠はない。

(e)また、サンプルCの着用状態につき、請求人は、請求人上申書(3)(5.第1 1)において、サンプルCを引き上げて着用した状態は、乙2判決の判断に則ったものである旨主張している。
しかしながら、乙2(関連侵害訴訟控訴審判決)の判断対象である「被告製品」は、甲10(関連侵害訴訟1審判決)の被告タカギにつきイ号製品(D830、D944、D951)、ロ号製品(D831、D952)、ハ号製品(D968)、ニ号製品(D965)、ホ号製品(D966)、ヘ号製品(D964)、被告名古屋タカギにつきイ号製品(D830、D944)、ロ号製品(D831)であり、先行製品C(D346UN)とは、判断対象の製品が異なるものであるから、サンプルCの着用状態とは関係がない。

(f)そうすると、請求人が主張するサンプルCに基づく確認結果は、先行製品Cにおける通常の着用状態のものといえず、引き上げる等して着用するという操作を加えれば、足刳り形成部の湾曲した頂点を腸骨棘点付近に位置させることが可能であるという程度のものであって、先行製品Cが、本件発明1の構成要件Dを備えたものであることまでをも示すものではない。

(g)以上のとおりであるから、請求人の上記主張は、採用できない。

(イ)特許法第29条第2項を理由とする無効理由1-C2について
a.上記(ア)で述べたとおり、本件発明1と先行発明Cは、少なくとも、上記<相違点C-1>の中でも、立位着用状態での足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係がどのようになっているかが不明である点において相違するものである。

b.そして、本件発明1は、構成要件Dの「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し」ていることによって、「足刳りのパターンの形状の工夫により、身体の腸骨棘点a付近から前方の生地の立体的方向性が確保されるため、着用時に股関節の前方への屈伸抵抗が少なく運動しやすく、疲れにくいものである。」(段落【0027】)という作用効果を、構成要件Hの「取り付け状態で筒状の前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状となること」との関連性によって奏するものである。
一方、先行発明Cは、足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係がどのようになっているかが不明であるばかりでなく、<相違点C-4>のとおり、足口レースが前身頃に対して前方に突出する形状となっているか否かが不明であるとともに、身体の腸骨棘点付近から前方の生地の立体的方向性を確保するという構成との関連性を示唆する証拠はない。また、着用時に股関節の前方への屈伸抵抗が少なく運動しやすく、疲れにくくするという作用効果を想起させるような証拠もない。

c.さらに、下肢用衣料において、足刳り形成部の湾曲した頂点を腸骨棘点付近に位置するような形状とすることが技術常識であることを示す証拠はなく、下肢用衣料の技術常識を勘案しても、そのような形状が一般的であるともいえない。
また、先行発明C自体は、ショーツという製品自体であり、足刳り形成部の湾曲した頂点の位置と腸骨棘点との位置関係に関する設計思想を示す書類等がなければ、製品自体のみから、上記<相違点C-1>に係る構成である「湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置」することについての技術的思想を把握することは困難である。さらに、足刳り形成部の湾曲した頂点を腸骨棘点付近に位置するような形状に変更する動機付けを示唆する証拠は、ない。

d.そして、上記b.で述べたとおり、本件発明1は、構成要件Dの「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し」ていることと、構成要件Hの「取り付け状態で筒状の前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状となること」との関連性によって、「足刳りのパターンの形状の工夫により、身体の腸骨棘点a付近から前方の生地の立体的方向性が確保されるため、着用時に股関節の前方への屈伸抵抗が少なく運動しやすく、疲れにくいものである。」(段落【0027】)という格別の作用効果を奏するものである。

e.よって、先行発明Cにおいて、足刳り形成部の湾曲した頂点を腸骨棘点付近に位置するような形状に変更することは、当業者が容易になし得たものということはできない。
そうすると、上記<相違点C-2>?<相違点C-4>について検討するまでもなく、先行発明Cにおいて、上記<相違点C-1>に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

f.小括
以上のとおりであるから、請求人主張のとおり、先行製品Cが本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において公然と実施されたものであって、その構成が甲6の21の1(パターン)の各パターンを甲6の24(縫製仕様書)に示されるように縫製することによって得られたものであったとしても、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-C2によっては、無効とすることはできない。

g.本件発明2、3及び5について
また、本件発明2、3及び5は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、更に限定するものであるから、本件発明2、3及び5に係る特許についても同様に、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-C2によっては、無効とすることはできない。

(ウ)特許法第29条第2項を理由とする無効理由1-C3について
上記(イ)のとおり、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものではない。
そして、本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定するものであるから、本件発明4に係る特許についても同様に、特許法第29条第2項に違反してされたものではないから、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1-C3によっては、無効とすることはできない。

4.まとめ
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第1項第2号に該当せず、また、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項に規定して違反してされたものではないから、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1によっては、無効とすることはできない。


第11.むすび
以上のとおりであるから、請求人主張の理由及び証拠方法によっては、本件発明1?5の各々に係る特許を無効にすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-12-23 
結審通知日 2019-12-25 
審決日 2020-01-16 
出願番号 特願2007-514943(P2007-514943)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A41D)
P 1 113・ 112- Y (A41D)
P 1 113・ 07- Y (A41D)
P 1 113・ 14- Y (A41D)
P 1 113・ 537- Y (A41D)
P 1 113・ 536- Y (A41D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渋谷 善弘  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 横溝 顕範
渡邊 豊英
登録日 2008-11-07 
登録番号 特許第4213194号(P4213194)
発明の名称 下肢用衣料  
代理人 富永 夕子  
代理人 渡辺 容子  
代理人 吉村 哲郎  
代理人 藤本 英二  
代理人 渡辺 容子  
代理人 西村 幸城  
代理人 藤本 英夫  
代理人 吉村 哲郎  
代理人 木村 俊之  
代理人 鈴江 正二  
代理人 鈴江 正二  
代理人 金 順雅  
代理人 木村 俊之  
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