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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  D04B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  D04B
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D04B
審判 全部無効 2項進歩性  D04B
審判 全部無効 利害関係、当事者適格、請求の利益  D04B
管理番号 1369861
審判番号 無効2018-800153  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-12-21 
確定日 2020-01-16 
事件の表示 上記当事者間の特許第5079926号発明「チューブ状ひも本体を備えたひも」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る主な手続の経緯は,以下のとおりである。なお,本件においては,請求人である株式会社ツインズは,4人の被請求人のうちの1人でもあるところ,被請求人として手続に関与してはいないことから,以下,単に「被請求人」と記載した場合は,株式会社ツインズを除く3人(「長田 真和」,「ヤン、リーミン」及び「シェエ、ジョンレン」)を指すものとする。

平成24年 7月 4日 本件特許出願(特願2012-150880号)
平成24年 9月 7日 設定登録(特許第5079926号)
平成30年12月21日 審判請求書提出(請求人)
令和 元年 5月 7日 審判事件答弁書提出(被請求人)
令和 元年 7月 8日付け 審理事項通知
令和 元年 8月 7日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
令和 元年 8月 7日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
令和 元年 8月21日 口頭審理陳述要領書(2)提出(請求人)
令和 元年 8月21日 第1回口頭審尋及び第1回口頭審理

以下,「甲第1号証」,「乙第1号証」等を,「甲1」,「乙1」等と略記する。また,請求人又は被請求人が提出した「口頭審理陳述要領書」又は「口頭審理陳述要領書(2)」を,「請求人陳述要領書」,「被請求人陳述要領書」又は「請求人陳述要領書(2)」という。
書面における行数は,行数を示す記載があるときはそれに従い,そのような記載がないときは空白行を除いて数えた行数により示すこととする。摘記事項における「・・・・・・」は,記載の省略を表す。

第2 本件発明
特許第5079926号(以下「本件特許」という。)の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明5」という。)は,本件特許の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
間隔をあけて繰返し配置され、自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶを有する伸縮性素材からなるチューブ状ひも本体と、
ひも本体のチューブ状構造によって構成される中心の管部分に非伸縮性素材からなり、こぶのコアを構成し、こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するようこぶ対応部分にて丸められた中心ひもと、を備えたひも。
【請求項2】
伸縮性素材は、ゴム状素材と非伸縮性の通常素材との編み込みによって構成されている請求項1に記載のひも。
【請求項3】
ひも本体の前記こぶは軸方向張力がゼロの状態でこぶがない部分のひも本体の径の1.5倍以上の径を有する請求項1又は2に記載のひも。
【請求項4】
ひも本体の前記こぶは軸方向張力が加えられた状態でこぶがない部分のひも本体の径の1.3倍以下の径となる請求項1から3のいずれか一に記載のひも。
【請求項5】
ひも本体の前記編み込みは、軸方向に対して略45度の角度をもって編み込まれている請求項2ならびに請求項2に従属する請求項3又は4に記載のひも。」

第3 当事者の主張の要旨及び証拠
1 請求人の主張の要旨及び証拠
(1)請求人は,「特許第5079926号の特許請求の範囲の請求項1ないし5についての特許を無効にする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めている。

(2)請求人が主張する無効理由は,以下の無効理由1?4のとおりである。なお,無効理由が,以下の無効理由1?4のみであることについて当事者間に争いはない(審理事項通知書の「2.」及び第1回口頭審理調書の「両当事者」欄の「1」)。

[無効理由1]
本件発明1?5は,甲1に記載されたものであるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,本件発明1?5に係る特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

[無効理由2]
本件発明1は,甲1並びに甲2?甲7に代表される当業者の技術常識に基づいて,本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。また,本件発明2?5は,甲1並びに甲2?甲8,甲10及び甲11に代表される当業者の技術常識に基づいて,本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって,本件発明1?5は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件発明1?5に係る特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

[無効理由3]
本件特許の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明1?5の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから,本件特許は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。

[無効理由4]
本件発明1?5は,本件特許の発明の詳細な説明において当業者が発明の課題を解決できることを認識できるように記載された範囲を超えているから,本件特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。

(3)請求人は,請求人が「利害関係人」であることは明らかであり,請求人適格を有する旨主張している。

(4)請求人が提出した証拠は以下のとおりである。
甲1:特許第3493002号公報
甲2:米国特許第4426908号明細書
甲3:米国特許第6202263号明細書
甲4:実願昭54-182896号(実開昭56-97970号)のマイクロフィルム
甲5:米国特許第4694541号明細書
甲6:米国特許第6419135号明細書
甲7:実願昭48-34226号(実開昭49-135390号)のマイクロフィルム
甲8:特公昭56-21862号公報
甲9:登録実用新案第3160573号公報
甲10:米国特許出願公開第2012/0144631号明細書
甲11:実願昭57-146705号(実開昭59-63098号)のマイクロフィルム
甲12:フリー百科事典Wikipediaにおける「スパンデックス」のウェブページ
甲13:中山信弘編著,注解特許法[第三版]下巻,1342?1343頁
甲14:判決(大審院 大正6年(オ)第565号 商標登録無効請求ノ件)
甲15:特許庁総務部総務課制度審議室編,平成26年特許法等の一部改正 産業財産権法の解説,120?121頁
甲16:中間判決(知的財産高等裁判所 平成29年(ネ)第10049号 損害賠償請求控訴事件)抜粋(1?3,53,70?72頁)
甲17:判決(東京高等裁判所 昭和31年(行ナ)第48号 特許無効審判抗告審判審決取消請求事件)
甲18:控訴人第9準備書面(知的財産高等裁判所 平成29年(ネ)第10049号 損害賠償請求控訴事件)抜粋(1,9頁)
甲19:被告ら第1準備書面(東京地方裁判所 平成31年(ワ)第4944号 特許権侵害差止等請求事件)抜粋(1,4頁)
甲20:判決(知的財産高等裁判所 平成26年(行ケ)第10131号 審決取消請求事件)

甲1?12は審判請求書に添付して提出されたものであり,甲13?20は請求人陳述要領書に添付して提出されたものである。なお,甲13?20は請求人適格に関するものである。
甲1?20の成立につき当事者間に争いはない(第1回口頭審理調書の「被請求人」欄の「2」)。

2 被請求人の主張の要旨及び証拠
(1)被請求人は,「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め,無効理由1?4は存在しないと主張している。

(2)被請求人は,請求人が「利害関係人」に当たらない上,請求人が本件特許権についての無効審判を請求すること自体が禁反言の原則に反するから本件無効審判請求は不適法であるとして,請求人は請求人適格を欠く旨主張している。(ただし,被請求人は,上記(1)のとおり,本件審判請求は成り立たないとの審決を求めており,本件審判請求を却下するとの審決を求めてはいない。)

(3)被請求人が提出した証拠は以下のとおりである。
乙1:知財高裁平成29年(ネ)第10049号判決書(平成30年12月26日中間判決)

乙1は被請求人陳述要領書に添付して提出されたものであり,請求人適格に関するものである。
乙1の成立につき当事者間に争いはない(第1回口頭審理調書の「請求人」欄の「2」)。

第4 本案前の抗弁(請求人適格)について
被請求人は,本案前の抗弁として請求人が請求人適格を欠く旨主張しているので,本案審理の前に,請求人適格について検討する。

1 当事者の主張
(1)被請求人の主張
ア 「特許無効審判は、「利害関係人」に限り請求することができると定められている(特許法第123条第2項)ところ、請求人は、本件特許の共有者である。
特許権の権利者は、あくまで特許権が存在することによって利益を受ける立場にあるのであって、特許権が存在することによって何らかの不利益を被るという立場にない。このことは、特許権の共有者であっても、原則として単独で当該特許発明の実施ができる(特許法第73条第2項)以上、変わりない。確かに、各共有者間において契約で別段の定をしたときには、当該特許発明の実施が制限される場合もあり得るが、これは、あくまで「別段の定」が存在することによって被る不利益であり、特許権が存在することによって不利益を被るという関係が成立する訳ではない。また、「別段の定」によって何らかの不利益を被るとしても、特許発明の内容を十分に知りつつ、当該「別段の定」について、自由な意思に基づき合意した以上は、その不利益を甘受すべきであることはいうまでもない。したがって、特許権の共有者は、自身が持分を有する特許権を無効とすることについて何らの利害関係も有しない。」(審判事件答弁書3頁20行?4頁12行)

イ 「また、仮に、特許権の共有者のうち1名による無効審判請求を認めてしまうと、無効請求に対する訂正は共有者の全員が共同して請求しなければならないとされている(特許法第134条の2第9項、同第132条第3項)ことから、無効審判請求を行った共有者が訂正に同意しないことにより、他の共有者が行おうとした訂正請求を一方的に妨害することができることになり、不当である。仮に、他の共有者が行おうとした訂正請求について無効審判請求を行った共有者の同意は不要であるとの解釈を採用すると、今度は、無効審判請求を行った共有者の意向が反映されない訂正請求が認められることにもなりかねない。このような種々の問題点を処理する規定が特許法に置かれていないということは、特許法は、特許権の共有者による無効審判請求を予定していないと解するほかない。」(審判事件答弁書4頁13?24行)

ウ 「以上のとおり、特許権の共有者は自身が持分を有する特許権を無効とすることに何らの利害関係も有しない上、特許法上も特許権の共有者による無効審判請求は予定されていないのであるから、特許権の共有者は「利害関係人」に当たらないといわざるを得ない。
したがって、本件特許権の共有者である請求人は、本件特許権の無効審判を請求できる「利害関係人」に当たらず、請求人適格を欠く。」(審判事件答弁書4頁25行?5頁1行)

エ 「さらに、請求人は、本件特許出願の審査過程において、特許庁に対し、特許の成立に向けた種々の主張を行っていた者である上、本件特許権が有効であることを前提に、被請求人長田真和及び同人が代表取締役を務める会社に対して、本件特許権の侵害を理由として損害賠償、差止や持分の移転登録手続等を求める訴訟を提起している(係属部:東京地方裁判所民事第46部C係、事件番号:平成31年(ワ)第4944号)。請求人は、本件特許権が有効であることを自認するのみならず、積極的な権利行使にまで及んでいるのである。
したがって、請求人が本件特許権についての無効審判を請求すること自体が、禁反言の原則に反し、認められる余地がないことは明らかである。」(審判事件答弁書5頁2?12行)

オ 「以上のとおり、請求人は「利害関係人」に当たらない上、請求人が本件特許権についての無効審判を請求すること自体が禁反言の原則に反するのであるから、本件無効審判請求は不適法であり、成り立つ余地はない。」(審判事件答弁書5頁13?16行)

(2)請求人の主張の概要
ア 現行法の下で「実際に特許権侵害で訴えられている者」が利害関係人であることに疑いはなく,請求人は被請求人から特許権侵害を理由として平成29年(ネ)第10049号事件を提起されているから,請求人が利害関係人であることは明らかである。(請求人陳述要領書13頁7?17行)

イ 請求人は,平成29年(ネ)第10049号事件において,本件特許に関する特許法第73条第2項の別段の定に違反したことから,本件特許を侵害すると判断されたところ,仮に本件特許が遡って対世的に無効となれば,請求人の行為は特許権侵害ではないこととなり,被請求人に対する損害賠償義務も失われるのであるから,請求人が利害関係人であることに疑いはない。(請求人陳述要領書13頁18行?14頁11行)

通常実施権者は,特許無効審判を請求するにつき利害関係を有する者として認められているところ,特許法は,通常実施権者があるときは当該実施権者の承諾を得なければ,訂正請求を行うことができないと規定している(特許法第134条の2第9項で準用する同法第127条)のであるから,特許法は,無効審判の請求人の承諾が得られないために特許権者が訂正の請求を行うことができないという状況を許容したものであるということができる。したがって,特許権者の訂正請求が妨害されることを理由とする被請求人の主張には理由がない。(請求人陳述要領書14頁12行?15頁12行)

エ 被請求人は,平成29年(ネ)第10049号事件及び平成31年(ワ)第4944号事件において,請求人と被請求人との間の関係においては,請求人の特許権持分はすでに剥奪されたものとして扱うべきであるとの主張を繰り返しているのであるから,本件において,請求人が登録された共有特許権者であることを前提として,利害関係人に該当しないなどと主張することが認められるはずはなく,被請求人が本件において請求人の利害関係を争うことこそが,禁反言ないし信義則に反するものとして許されないことは明らかである。(請求人陳述要領書15頁13行?16頁11行)

オ 本件において,請求人が特許権者であることを理由に利害関係がないとして無効審判の請求を認めないこととしても,直ちに請求人から本件特許の実施品を購入している取引業者により無効審判が提起されることとなり,かかる無効審判においても,被請求人が訂正請求を行えないことは本件無効審判と変わるところはないのであるから,本件において請求人の利害関係を認め,本件特許の有効無効を争いうることとしたほうが,紛争の解決に結びつくものということができる。(請求人陳述要領書16頁12?21行)

2 当審の判断
(1)利害関係について
ア 平成26年法律第36号による改正によって,特許無効審判は,「利害関係人」のみが行うことができるものとされ,代わりに「何人も」行うことができるところの特許異議申立制度が導入されたことにより,現在においては,特許無効審判請求をすることができるのは,特許を無効にすることについて利害関係を有する者のみに限定されたものと解さざるを得ない。しかし,特許権侵害を問題にされる可能性が少しでも残っている限り,そのような問題を提起されるおそれのある者は,当該特許を無効にすることについて利害関係を有し,特許無効審判請求を行う利益を有する。
知財高裁平成29年(ネ)第10049号事件は,被請求人の一人である長田真和が控訴人となり,請求人である株式会社ツインズを被控訴人として,被控訴人商品の製造・販売の差止等を求めている訴訟であり,知的財産高等裁判所において,平成30年12月26日に,主文を「本訴請求のうち,特許権(控訴人の共有持分権)侵害の不法行為に基づく損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)は理由がある。・・・・・・。」とする中間判決(甲16,乙1)が言渡され,なお審理中のものである(被請求人陳述要領書5頁13行?6頁17行)。
そうすると,審理終結時において,請求人は,本件特許権について被請求人との間で訴訟が係属している関係にある者であり,本件特許権の侵害を問題にされるおそれにとどまらず,現に本件特許権の侵害を問題にされている状況にあり,よって同人は本件特許を無効とすることについて法律上の利益がある(上記1(2)イ参照)のであるから,本件特許について無効審判を請求する利害関係を有するといえる。

イ 被請求人は,概略,特許権の共有者である請求人は,自身が持分を有する特許権を無効とすることについて何らの利害関係も有しない旨主張している(上記1(1)ア参照)。
しかしながら,平成29年(ネ)第10049号事件の中間判決において,特許権(控訴人の共有持分権)侵害の不法行為に基づく損害賠償請求の原因は理由があるとされている以上,請求人が本件特許権の共有者であるとしても,本件特許を無効とすることについて法律上の利益があるのであるから,請求人は,本件特許について無効審判を請求する利害関係を有するというべきである。
よって,被請求人の上記主張は採用できない。

(2)特許権の共有者による無効審判請求と訂正請求との関係について
ア 被請求人は,概略,無効審判における訂正の請求は,共有者の全員が共同して請求しなければならないものであるところ(特許法第134条の2第9項で準用する同法第132条第3項),無効審判請求を行った共有者が他の共有者が行おうとする訂正請求を一方的に妨害できるとすれば不当であり,他方で訂正の請求に無効審判請求を行った共有者の同意が不要であるとすれば,その共有者の意向が反映されない訂正が認められることにもなりかねない旨主張している(上記1(1)イ参照)ので,以下,検討する。

イ 特許法第132条第3項は,共有に係る権利についての審決は共有者の全員につき合一に確定する必要があることから,「特許権又は特許を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは,共有者の全員が共同して請求しなければならない。」と規定したものである。
そして,無効審判における訂正の請求について,特許法は、第134条の2第9項で準用する同法第132条第3項により,共有者の全員が共同して請求しなければならないと規定している。
本件については,既に共有者の全員が共同して本件特許の扱いに関し行動することが不可能な状態にあると解されるが,審理終結時点では,本件特許が請求人及び被請求人の共有に係るものであることに変更はない。
したがって,本件についても,仮に,訂正の請求をする場合には,共有者の全員が共同して請求しなければならないことになる。
被請求人は,無効審判請求を行った共有者が他の共有者が行おうとする訂正請求を一方的に妨害できるとすれば不当である旨主張するが,本件のように特許権の共有者が無効審判を請求した場合でなくとも,共有者間で訂正請求の合意がなされない場合は普通に想定されるものであり,共有者の協力が得られない場合に,訂正による利益が得られないこと自体は特許法の予定するところであるから,このことのみをもって,無効審判請求を行った共有者の請求人適格を否定することは困難である。

(3)禁反言について
ア 被請求人は,概略,請求人は本件特許出願の審査過程において,特許の成立に向けた種々の主張を行っていた者である上,本件特許権が有効であることを前提に被請求人である長田真和及び同人が代表取締役を務める会社に対して,本件特許権の侵害を理由として損害賠償,差止や持分の移転登録手続等を求める訴訟(平成31年(ワ)第4944号)を提起しているのであるから,請求人が本件特許権についての無効審判を請求すること自体が禁反言の原則に反し,認められる余地がない旨主張している(上記1(1)エ参照)ので,以下,検討する。

イ 本件審理終結時における請求人の利害状況は,被請求人との間で訴訟が係属している関係にある点で審査過程とは大きく異なっており,特に,平成29年(ネ)第10049号事件の中間判決において,特許権(控訴人の共有持分権)侵害の不法行為に基づく損害賠償請求の原因は理由があるとされている以上,この特許権(被請求人の共有持分権)侵害の不法行為を回避するために本件特許を無効とすべく請求人が行動することは不合理なものではない(上記1(2)イ参照)。そうすると,請求人が本件特許出願の審査過程において特許の成立に向けた種々の主張を行っていた者でありながら本件無効審判を請求したとしても,その間における本件特許の存在に対する利害の変遷に鑑みれば,直ちに,請求人の態度が信義にもとり禁反言の法理に反するとはいえない。
また,請求人が,被請求人に対して本件特許権の侵害を理由とする損害賠償や持分の移転登録手続等を求める訴訟を提起しているとしても,特許権(被請求人の共有持分権)侵害の不法行為を回避するために被請求人の共有持分権を攻撃する点においては,当該訴訟と本件無効審判は軌を一にするものであると解されるから,当該訴訟を提起する一方で本件無効審判を請求することが信義にもとる態度であるとまではいえず,これをもって禁反言の法理に反するともいえない。
以上のとおりであるから,被請求人の上記主張は採用できない。

(4)請求人適格についてのむすび
以上のとおり,請求人は,特許権の共有者ではあるけれども,特許法第123条第2項に規定する「利害関係人」に該当する。そして,請求人が本件特許について無効審判を請求すること自体が禁反言の原則に反するものでもないから,請求人は,本件無効審判に関し,請求人適格を有する。

第5 無効理由1(特許法第29条第1項第3号)及び無効理由2(特許法第29条第2項)についての当審の判断
1 各甲号証の記載
(1)甲1の記載,甲1発明
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲1には,以下の記載がある。
ア 【0001】
「本発明は、一般に、物を適所に締結または保持するための弾性コードに関する。特に、本発明は、アイレットのような開口部に通すための弾性コードに関し、靴、帽子、シャツ、ズボン、コート、ベルト、時計バンド等を含む衣料品、バッグ、バックパック、肩掛けかばん等のようなパッケージング、およびロープ、ひも、糸、布、バンジーコード等によって、都合良く保持されまたは締結される様々な他の品目、のような様々な物を締結または保持するのに使用するための弾性コードに関する。」
イ 【0008】
「図1乃至図4は、本発明の一つの好ましい実施形態による引き締め弾性コードを全体的に10で図示する。コード10は、細長い弾性コア12に可撓性シース14を嵌めたものからなる。コードが、靴のような衣料物品の、開口部17を有するアイレット16用である図示した実施形態では、コアは、図3に断面で示すように、中実円筒形状に形成することができる。所望されるとき、コードに他の形状を採用してもよい。かくして、コアは、管状でもよいし、あるいはコアが横断面楕円形状または矩形形状を有する平らなバンドでもよい。従来のプラスチックデザインのものでも金属デザインのものでもよい靴ひも先端部18を、コードの両端に取付けられることもできる。」
ウ 【0009】
「シース14は、複数の端と端を接したセグメント20、22で形成されている。各セグメントは、中間部分28、28’および中間部分をまたぐ一対の端部分30、32を有する。図2に示すように、隣接したセグメントは端部分を共有する。例えば、端部分30は、セグメント20および中間部分28’を示す隣接したセグメント22によって共有されている。端部分は、コアに固定されており、一方、中間部分は、図1および図4に示すように、トーラス形態の拡大部36、38への外向きの柔軟な膨らみまたは膨張を可能にするためにコアから分離されている。」
エ 【0010】
「コア12は、コードの一端または両端に使用者が引張りを加えることによって張力下の応力を受けたときに伸びる、弾性材料、例えば、ゴムまたは適当な合成重合体で形成されている。例は、ゴムで形成されているコアである。図1乃至図4の実施形態では、可撓性シース14は、コットン、ポリエステル、ナイロン、アクリルまたは登録商標スパンデックス(Spandex)のような弾性ゴムのような適当な材料の糸から成る編組マトリックスで形成される。」
オ 【0011】
「図1乃至図4の実施形態のコード10は、加えられる応力が材料の臨界応力より下となるように、第1伸張コア12を含む工程によって製造することができる。これは、回復できない塑性変形が起らないようにする。伸張により、コアの一部分を図2に示すように、長さL_(2)まで伸ばす。また、応力状態では、コアは、外径D_(2)を有している。次いで、在来設計のものでよい編組機を用いて、コアの周りに糸またはストランドを織り、または編組みする。この機械を、コアの長さに沿って第1および第2の編組パターンを交互に作るように作動する。それぞれの端部分30、32のための第1編組パターン40、42は、コアが緩められるときに、コアで摩擦的につかみ、または固定するほど、十分にきつい編組で形成される。それぞれの中間部分28、28’のための第2編組パターン44および46は、シースをコアから分離させることができるほど十分に緩い編組で形成される。これらの編組パターンにより、コードに沿って延びるセグメント20-26は、コアに固定された端部分とコアから分離された中間部分との間で互い違いにする。」
カ 【0012】
「編組作業が完了した後、引張り応力を取り除いて、コードが図1乃至図4に示すようにその弛緩状態を呈することを可能にする。この状態では、コアセグメントの長さはL_(1)に縮み、コアの外径はD_(1)に膨張する。各セグメントでは、コアの収縮により、シースの両端部分を互いの方に移動させ、該両端部分は、中間部分を押して、中間部分をこぶ状にし、かつ直径D_(3)まで外方に膨張させまたは曲げさせる。コアおよびシースの材料の種類、寸法および比率の適切な選択により、D_(3)はアイレット開口部17の内径に対して十分に大きくなり、その結果、こぶ状になった中間部分が、開口部の中での一方向におけるコードの移動に抵抗する。かくして、図1に示すように、拡張部36を形成するこぶ状になった中間部分は、、開口部17の内径より大きく、アイレットの中でのコードの内向き移動に抵抗する。図1のアイレットの他の側にも、同様にこぶ状になった他の中間部分(図示せず)がある場合には、該中間部分は、コードが反対方向に引き抜かれるのを防止する。ここに使用されているように、”抵抗”は、拡張された中間部分が、通常の使用では移動を阻止するが、その場合は、アイレットから、拡張された中間部分を圧迫する異常な力があるときに、中間部分を押しつぶして、開口部を通過させることができる場合を意味する。これは、コードが弛緩状態、即ち応力を受けていない状態にある限り、靴の甲皮または衣服、パックまたは他の装置の部分を縛り、さもなければ固定する。」
キ 【0013】
「コードを外すことが望まれるときには、使用者は、コードの一端または両端を単に引張って、コアが、その長さL_(2)>L_(1)に向って伸び、コアが直径D_(2)<D_(1)に向って収縮するように十分な張力を付与する。各セグメントにおけるコアの伸びは、シースの端部分を引き離す。これは、中間部分を引き伸ばし、該中間部分は、直径D_(3)から、開口部17より小さい寸法まで縮む。すると、コードは、締められまたは縛られる物品または装置を、解放するか、調整し直すかのいずれかのために、開口部の中に通すことができる。」
ク 【0014】
「靴ひもとして使用するための本発明による例は、応力を受けていない状態では、靴の甲皮のアイレットの各々に通すのに必要な長さ、例えば、靴の甲皮の各側に6つのアイレットを備えた成人向きの靴では650mmの長さを有するコードである。応力を受けていない状態では、コアの直径D_(1)=4mm、かつ、こぶ状になった拡大部38は、外径D_(3)=8mmを有する。一方の側の甲皮アイレットに通されたコードの一端は、例として、長さL_(1)=100mmを有することができる。この端部に加えられた引く引張応力により、コアを長さL_(2)=200mmに伸ばし、直径D_(2)=3mmに収縮させる。コードのこの端部における中間部分の各々は、伸ばされたコアの周りに厳密に嵌まり、すると、コードをアイレットに通させるのに十分である寸法まで縮む。」
ケ 【図1】



コ 【図2】



サ 【図3】



シ 【図4】




以上を総合すると,甲1には,次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「開口部17に通すための弾性コード10であって,
細長いコア12に可撓性シース14を嵌めたものからなり,
可撓性シース14は,複数の端と端を接したセグメント20,22で形成され,
各セグメント20,22は,中間部分28,28’及び中間部分28,28’をまたぐ一対の端部分30,32を有し,
端部分30,32は,コア12に固定されており,
中間部分28,28’は,拡大部36,38への外向きの膨張を可能にするためにコア12から分離されており,
コア12は,コード10の一端又は両端に使用者が引張りを加えることによって張力下の応力を受けたときに伸びる弾性材料で形成されており,
可撓性シース14は,登録商標スパンデックスのような弾性ゴムのような糸から成る編組マトリックスで形成されており,
コード10の弛緩状態では,中間部分28,28’がこぶ状になり,開口部17の内径より大きい直径D_(3)まで外方に膨張した拡大部36,38が形成され,
使用者がコード10の一端又は両端を引張って,コア12の長さが伸び,その直径が収縮するように十分な張力を付与すると,各セグメント20,22におけるコア12の伸びが可撓性シース14の端部分30,32を引き離し,これが中間部分28,28’を引き伸ばして,中間部分28,28’が直径D_(3)から開口部17より小さい寸法まで縮む,
開口部17に通すための弾性コード10。」

(2)甲2の記載
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲2には以下の記載がある。なお,翻訳は,請求人の提出した甲2部分訳をもとに,当審が作成したものである。
ア 2欄23?27行
「The core 2 consists of a non-continuous, non-stretchable line 3, having a thickness to be selected depending on the application and on the tension load it is meant to be subjected to. 」
(翻訳:コア2は,用途及び適用されるべき張力負荷に応じて選択される厚さを有する,不連続の,非伸縮性ライン3からなる。)
イ 2欄40?41行
「The segments 3' of the line 3 arranged between the mounting joints 6 ・・・・・・」
(翻訳:設置ジョイント6の間に配置されたライン3のセグメント3’・・・・・・)
ウ 2欄46?56行
「If a tension force is caused to act upon the tension member, the jacket 1 and the core 2 are extended and brought from the state of FIG. 1 into the state of FIG. 2. Applying tension onto the elastic members 5 causes the segments 3' to be pulled along. As soon as elastic members 5 reach their predetermined load limit the segments 3' become subjected to tension and the tension force becomes transferred to the line 3. After surpassing the load limit of the elastic members, the line 3, together with the tightly stretched segments 3', takes over the entire load. 」
(翻訳:引っ張り部材に引っ張り力を作用させると,ジャケット1とコア2が伸びて図1の状態から図2の状態になる。弾性部材5に張力を加えると,セグメント3’が引かれる。弾性部材5が所定の負荷限界に達すると,セグメント3’は張力を受け,引っ張り力がライン3に伝達される。弾性部材の負荷限界を越えた後,ライン3は緊張したセグメント3’とともに負荷全体を支持する。)
エ 2欄64?66行
「The jacket 1 is produced by means of known machines in operations like plaiting, twisting, and the like, as is customary in ropemaking.」
(翻訳:ジャケット1は,ロープ製造の際に通常行われているように,編み,撚り合わせ等の作業で公知の機械によって製造される。)
オ 図1?3




(3)甲3の記載
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲3には以下の記載がある。なお,翻訳は,請求人の提出した甲3部分訳をもとに,当審が作成したものである。
ア 6欄56行?7欄3行
「Referring to FIG. 13, an alternative embodiment for the device 10 is shown. In this embodiment, the elastic member 12 is embodied as a latex or rubber tube. The elastic member 12 has an inner cavity 14 running along the longitudinal length of the member 12 as in previous embodiments. An inner member 54 is disposed within the inner cavity 14. The inner member 54 has less elasticity than the elastic member 12. In one embodiment, the inner member 54 may be embodied as a rope or string.
The inner member 54 is secured at both ends proximate to the ends of the elastic member 12. The inner member 54 may also have a greater longitudinal length than the elastic member 12. The inner member 54 provides the stretchable limitation to the elastic member 12.」
(翻訳:図13を参照すると,装置10の別の実施形態が示されている。この実施形態では,弾性部材12は,ラテックスまたはゴムチューブとして具体化される。弾性部材12は,先の実施形態のように,部材12の長手方向の長さに沿って延びる内部キャビティ14を有する。内側部材54は,内部キャビティ14内に配置される。内側部材54は,弾性部材12よりも弾性が小さい。一実施形態では,内側部材54は,ロープまたはストリングとして具体化されてもよい。
内側部材54は,弾性部材12の両端に近接した両端で固定されている。内側部材54は,弾性部材12よりも長手方向の長さも大きくてもよい。内側部材54は,弾性部材12に対して伸長可能な制限を提供する。)
イ 図13




(4)甲4の記載
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲4には以下の記載がある。
ア 3頁10行?4頁11行
「・・・・・・心線(1)をうねり加工(3)等により長さを縮め、弾性体の被覆(4)に埋入したものであるから、この緩衝紐を鮪釣縄の要所に挟んで釣りを行えば、釣縄にかかる力が通常の場合には、心線(1)がたるみを保有した範囲内において弾性体の被覆(4)が伸び縮みして緩衝動作を行っているが、釣縄にかかる力が増大して心線(1)のたるみがなくなる迄被覆(4)を伸長させるときは、力を心線(1)が受けて被覆を保護する・・・・・・、ワイヤの心線をコイル状に丸めたり、・・・・・・。」

(5)甲5の記載
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲5には以下の記載がある。なお,翻訳は,請求人の提出した甲5部分訳をもとに,当審が作成したものである。
ア 3欄5?19行
「Referring to FIG. 2, a pair of enlargements, such as knots 11 are formed in the rope 9. A sleeve 13 of elastic material is slid over the rope. The length of the sleeve 13 is preferably about 3 to 4 inches, and the distance between the two knots is greater than the length of the sleeve. The sleeve is positioned over the rope such that the two knots and the rope slack portion 15 between the knots lie within the sleeve. Both sleeve ends are then crimped tightly over the rope, as with split rings 17. As a result, the knots and slack 15 are captured inside the sleeve, and the rope is divided into a first standing end 19 and a second standing end 11 that extend in opposite directions from the sleeve. To aid the tie-down 1 grip a member 3, the second standing end 21 is fastened to a conventional hook 23, ・・・・・・」
(翻訳:図2に示すように,ロープ9には,結び目11のような一対の拡大部が形成されている。弾性材料のスリーブ13がロープ上を摺動する。スリーブ13の長さは,好ましくは約3?4インチであり,2つの結び目の間の距離はスリーブの長さよりも長い。スリーブは,2つの結び目と2つの結び目の間のロープ弛緩部15がスリーブ内に位置するように,ロープの上に配置される。そして,両スリーブ端部は,分割リング17と共に,ロープの上にしっかりと圧着される。その結果,結び目および弛緩部15がスリーブ内に捕捉され,ロープは,スリーブから互いに反対方向に向かって延びる第1端19および第2端11に分割される。タイダウン1が部材3をつかむのを助けるために,第2端21は従来のフック23に固定されている。・・・・・・)
イ 図2?3




(6)甲6の記載
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲6には以下の記載がある。なお,翻訳は,請求人の提出した甲6部分訳をもとに,当審が作成したものである。
ア 5欄39?43行
「The support cord has an outer sheath 50 housing an inner cord 52 within it. The outer sheath is preferably a rubber-like type of flexible tubular material. This outer sheath of flexible tubing stretches under increasing tension to approximately double its unstretched length.」
(翻訳:サポートコードは,内部コード52を格納した外部シース50を有する。外部シースは,好ましくはゴムのようなタイプの柔軟なチューブ状材料である。柔軟なチューブ構造の外部シースは,増加する張力の下で未伸長の長さの約2倍まで伸長する。)
イ 6欄21?25行
「Within the outer sheath 50, an inner cord 52 is included in the support cord 20, of the present invention, as shown in FIGS. 5 and 7, and detailed in FIGS. 8 through 11. The non-stretchable inner cord limits the stretching of the outer sheath to a specific and preset length.」
(翻訳:図5及び7,そして詳細には図8ないし11に示すように,外部シース50の中に,内部コード52が本発明のサポートコード20において含まれている。非伸縮性の内部コードは外部シースの伸長を特定のプリセット長さに制限する。)
ウ 図5




(7)甲7の記載
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲7には以下の記載がある。
ア 3頁20行?4頁14行
「・・・・・・、伸縮自在のゴム管内部にゴム管の破断長さより短かい釣糸を螺旋状に内装し、この釣糸の両端を上記ゴム管の両端に固着したフツクに結び付けた魚釣用ハリス・・・・・・、魚を釣り上げるとき釣針の糸に衝撃的な力が加わつた場合、ゴム管(1)が伸びてこの力を緩衝し、釣針の糸が切れることがないことは勿論、この力でゴム管(1)が伸びても内装してある螺旋状釣糸が直線状に伸びてゴム管(1)自身が破断するのを防止することができる。」
イ 第1?2図




2 本件発明1について
(1)本件発明1の「こぶのコアを構成」の解釈について
本件発明1の「こぶのコアを構成」の解釈について,当事者間に争いがあるので,まずこの点について検討する。

ア 本件特許明細書の記載
本件特許明細書には,こぶのコアに関して,以下の記載がある。
(ア)【0028】
「図7は、本実施形態のひもの概要を示す図である。この図にあるように、本実施形態のひもは、基本的に実施形態1で説明したひもと同様であるが、ひも本体のチューブ状構造によって構成される中心の「管部分」0703に非伸縮性素材からなり、こぶのコアを構成し、こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するよう「こぶ対応部分」0704にて丸められた「中心ひも」0705を有することを特徴とする。このような特徴を備える構成とすることにより、ひもを繰り返し使用した結果ひも本体のこぶ部分が復元しづらくなることを防ぐ効果をもたらす。・・・・・・」

(イ)【0030】
「「中心ひも」は、こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随する機能を有しており、こぶ対応部分にて丸められてこぶのコアを構成している。「こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化」とは、ひも本体に対し大小の軸方向張力が加わることによりこぶの径変化が生じ、当該径変化に対応するようにこぶの両端距離も変化する本発明のひもの特徴のことを指している。そして、このような変化に「追随する機能」とは、例えば、前記こぶの両端距離が短くなれば中心ひもの後記丸められた部分がさらに収縮するように丸まり、両端距離が広くなれば中心ひもの丸められた部分が伸びる機能のことを意味している。
ここで、中心ひものうち丸められている部分はひも本体のこぶに対応する部分に設けられている。当該構成のもとでは、ひも本体を構成する伸縮性素材は張力が加えられていない間は、中心ひものこぶ対応部分を沿うようにこぶを形成することになるため、前記こぶ対応部分がこぶを形成するためのコアとして機能する。そして、内側にてコアとして機能する中心ひもを有することにより、当該こぶは繰返しの利用にも耐えうるだけの固さを保持することが可能になる。なお、中心ひもをこぶのコアとして機能させるためには、当該こぶ対応部分の位置がずれないでおく必要がある。そのようなこぶのコアとしての機能を確保するため、中心ひもはそれぞれのこぶの対応部分をつなぎ、例えばひもの端部などでひもと固定されているひも状構造をとる必要がある。」

イ 請求人の主張の概要
本件発明1の「こぶのコアを構成し」との要件は,「こぶ対応部分にて丸められた中心ひも」との要件に加えて,更に別個の構成要件としての意義を有するものではない(請求人陳述要領書4頁16行?6頁12行)。

ウ 被請求人の主張の概要
本件発明1において中心ひもが「こぶのコアを構成」するというためには,中心ひものこぶ対応部分がこぶを形成するためのコアとして機能すること,こぶが繰返しの利用にも耐えうるだけの固さを保持することを可能にすること及び中心ひものこぶ対応部分の位置がずれないことを要する(被請求人陳述要領書3頁5行?5頁8行)。

エ 検討
段落【0030】の「なお、中心ひもをこぶのコアとして機能させるためには、当該こぶ対応部分の位置がずれないでおく必要がある。」との記載(上記ア(イ)参照)から,中心ひもがこぶ対応部分にて丸められているとしても,そのこぶ対応部分の位置がずれるようであると,中心ひもがこぶのコアとして機能しないことを理解できる。そして,こぶ対応部分にて丸められている中心ひもが,こぶのコアとして機能しないのであれば,「こぶのコアを構成」するといえないことは明らかであるから,本件発明1の「こぶのコアを構成し」との要件は,「こぶ対応部分にて丸められた」との要件に加えて,「中心ひも」をさらに特定するものとして把握すべきものであるといえる。したがって,請求人の主張(上記イ参照)は採用できない。
また,中心ひもがこぶの「コアとして機能」するとは,段落【0030】の「ここで、中心ひものうち丸められている部分はひも本体のこぶに対応する部分に設けられている。当該構成のもとでは、ひも本体を構成する伸縮性素材は張力が加えられていない間は、中心ひものこぶ対応部分を沿うようにこぶを形成することになるため、前記こぶ対応部分がこぶを形成するためのコアとして機能する。」との記載(上記ア(イ)参照)から,中心ひものこぶ対応部分がこぶを形成するためのコアとして機能することを意味していると解するのが相当である。
さらに,段落【0030】の「そして、内側にてコアとして機能する中心ひもを有することにより、当該こぶは繰返しの利用にも耐えうるだけの固さを保持することが可能になる。」との記載(上記ア(イ)参照)から,こぶのコアとして機能する中心ひもは,こぶが繰返しの利用にも耐えうるだけの固さを保持することを可能にするものであると理解できる。

そうすると,本件発明1において,中心ひもが「こぶのコアを構成」するというためには,被請求人も主張するとおり(上記ウ参照),以下の(ア)?(ウ)を要するというべきである。
(ア)中心ひものこぶ対応部分がこぶを形成するためのコアとして機能すること。
(イ)こぶが繰返しの利用にも耐えうるだけの固さを保持することを可能にすること。
(ウ)中心ひものこぶ対応部分の位置がずれないこと。

(2)対比
上記(1)の解釈を踏まえて,本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「中間部分28,28’」は,可撓性シース14に複数設けられ,コード10の弛緩状態ではこぶ状になって外方に膨張した拡大部36,38を形成し,使用者がコード10の一端又は両端を引張ると開口部17より小さい寸法まで縮むものであるから,本件発明1の「こぶ」と,「間隔をあけて繰返し配置され」「径の大きさが変化する」ものである限りにおいて一致する。

イ 甲1発明の「可撓性シース14」は,細長いコア12に嵌められた,登録商標スパンデックスのような弾性ゴムのような糸から成る編組マトリックスで形成されたものであるから,本件発明1の「伸縮性素材からなるチューブ状ひも本体」に相当する。

ウ 甲1発明の「コア12」は,本件発明1の「中心ひも」と,「ひも本体のチューブ状構造によって構成される中心の管部分に」備えられたものである限りにおいて一致する。

エ 甲1発明の「弾性コード10」は,本件発明1の「ひも」に相当する。

オ 以上を踏まえると,本件発明1と甲1発明とは以下の<一致点>で一致し,また,以下の<相違点1>?<相違点3>で相違する。

<一致点>
「間隔をあけて繰返し配置され,径の大きさが変化するこぶを有する
伸縮性素材からなる
チューブ状ひも本体と,
ひも本体のチューブ状構造によって構成される中心の管部分に
中心ひもと,を備えた
ひも。」

<相違点1>
「こぶ」の径の大きさの変化が,本件発明1は,「チューブ状ひも本体のこぶ」「自身に加えられる軸方向張力の大小によって」もたらされ「径の大きさが変化する」ものであるのに対し,甲1発明は,「コア12の伸びが可撓性シース14の端部分30,32を引き離し,これが中間部分28,28’を引き伸ばして,中間部分28,28’が直径D_(3)から開口部17より小さい寸法まで縮むもの」であって,本件発明1の「中心ひも」に対応する「コア12」に付与される張力の大小によってもたらされるものである点。
<相違点2>
本件発明1は,中心ひもが「非伸縮性素材」からなるのに対し,甲1発明は,コア12が「弾性材料」からなる点。
<相違点3>
本件発明1は,中心ひもが「こぶのコアを構成し、こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するようこぶ対応部分にて丸められた」ものであるのに対し,甲1発明は,コア12が,こぶのコアを構成せず,こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するものでもなく,こぶ対応部分にて丸められたものでもない点。

カ 請求人の主張について
(ア)請求人は,請求人陳述要領書の7頁12行?9頁19行において,甲1発明においても「コア12の伸びが可撓性シース14の端部分30、32を引き離し、これが中間部分28、28’を引き伸ばして、中間部分28、28’が直径D_(3)から開口部17より小さい寸法まで縮む」との具体的構成により,結果として「こぶが『自身に加えられる軸方向張力の大小によって』径の大きさが変化する」のであるから,上記相違点1は存在しない旨主張する。
しかしながら,甲1発明は,コード10の弛緩状態で可撓性シース14の中間部分28,28’が,緩むことで,こぶ状になる一方,コア12の伸びが可撓性シース14の端部分30,32を引き離し,これが前記可撓性シース14の中間部分28,28’を引き伸ばすものであるため,弛緩状態から前記可撓性シース14の中間部分28,28’が張った状態になるまでは,前記可撓性シース14の中間部分28,28’自身に「軸方向張力」が「加えられる」ものではない。
そして,本件特許明細書の段落【0015】の「なお、こぶについて「自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化する」とは、具体的には、軸方向張力が大きくなればなるほど径が小さくなり、当該張力が弱くなればなるほど小さくなった径が戻るように大きくなることを指している。」との記載からみて,本件発明1の「自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶ」は,自身に加えられる軸方向張力が大きくなればなるほど径が小さくなり,当該張力が弱くなればなるほど小さくなった径が戻るように大きくなるこぶを意味するものであると解されるところ,上記したように,甲1発明は,可撓性シース14にこぶが存在している間である,弛緩状態から前記可撓性シース14の中間部分28,28’が張った状態となるまでの間は,中間部分28,28’自身に「軸方向張力」が「加えられる」ことのない間であるから,この間のこぶの径は,「自身に加えられる軸方向張力」とは無関係に変化するものである。
さらに,甲1発明において,前記可撓性シース14の中間部分28,28’が張った状態となった時は,こぶが無くなった時であって,この時点で,中間部分28,28’自身に「軸方向張力」が「加えられる」ことになるところ,前記時点後は,前記「軸方向張力」が増大したとしても,既にこぶは無くなっており,こぶの径は,「自身に加えられる軸方向張力」に応じて変化するとはいえない。
ゆえに,甲1発明は,「自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶ」を有するものとはいえない。
よって,請求人の上記主張は採用できない。

(イ)請求人は,請求人陳述要領書の10頁1?5行において,上記相違点3に関連して,「こぶのコアを構成し」との要件を「こぶ対応部分にて丸められた」との要件に加えて独自の構成要件として考えるべきではないから,この点は相違点とはならない旨主張している。
しかしながら,上記(1)エで示したとおり,本件発明1の「こぶのコアを構成し」との要件は,「こぶ対応部分にて丸められた」との要件に加えて,「中心ひも」をさらに特定するものとして把握すべきものであるから,請求人の上記主張は採用できない。

(ウ)請求人は,請求人陳述要領書の10頁6行?12頁6行において,上記相違点3に関連して,甲1発明では,コードを伸縮させることでこぶの径がD_(2)からD_(3)まで変化し,この径変化に応じてこぶの端部分30と端部分32との両端距離が変化するとともに,これに追随して弾性コアが伸縮することが記載されているから,「こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随する」との点は相違点とならない旨主張する。
ところで,本件発明1は「自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶ」を有する「ひも本体」を備えたものであるから,本件発明1の「こぶの径変化」とは,こぶ自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するときのその変化,を意味するものと解釈するのが相当である。このような解釈は,本件特許明細書の段落【0030】の「「こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化」とは、ひも本体に対し大小の軸方向張力が加わることによりこぶの径変化が生じ、当該径変化に対応するようにこぶの両端距離も変化する本発明のひもの特徴のことを指している。」との記載とも整合するものであるといえる。
そうすると,上記(ア)で示したとおり,甲1発明は「自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶ」を有するものとはいえないのであるから,本件発明1の「こぶの径変化」が生じているものとはいえず,それゆえ,中心ひも(コア12)が「こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随する」ものともいえない。
よって,請求人の上記主張は採用できない。

(3)相違点についての検討
ア 相違点1について
相違点1は,本件発明1と甲1発明との間のこぶの径の大きさの変化をもたらす原因についての相違であるから,実質的な相違点である。
そして,甲1発明は,コア12の伸びを原因として,可撓性シース14の端部分30,32を引き離すという結果が生じるものであり,また,甲1の段落【0012】の「各セグメントでは、コアの収縮により、シースの両端部分を互いの方に移動させ、該両端部分は、中間部分を押して、中間部分をこぶ状にし、かつ直径D_(3)まで外方に膨張させまたは曲げさせる。」との記載(上記1(1)カ参照)からみて,コア12の収縮を原因として,可撓性シース14の両端部分が互いの方に移動するという結果が生じるものであると解されるところ,甲1発明のこぶ(中間部分28,28’)を「自身に加えられる軸方向張力の大小によって」径の大きさが変化するものとしてしまうと,前述の原因と結果の関係が損なわれてしまうから,甲1発明において,甲2?7の記載を考慮しても,こぶ(中間部分28,28’)を「自身に加えられる軸方向張力の大小によって」径の大きさが変化するものとすることが動機付けられることはないというべきである。
よって,甲1発明において,甲2?7の記載を考慮しても,こぶ(中間部分28,28’)を「自身に加えられる軸方向張力の大小によって」径の大きさが変化するものとすることに当業者が容易に想到し得たとはいえない。

イ 相違点2について
相違点2は,本件発明1の中心ひもと甲1発明のコア12との間の材料の特性についての相違であるから,実質的な相違点である。
そして,上記アで示したとおり,甲1発明は,コア12の伸びを原因として,可撓性シース14の端部分30,32を引き離すという結果が生じるものであり,また,コア12の収縮を原因として,可撓性シース14の両端部分が互いの方に移動するという結果が生じるものであると解されるところ,甲1発明のコア12を,伸縮性に乏しい「非伸縮性素材」としてしまうと,前述の結果をもたらすコア12の伸び及び収縮が妨げられ,甲1発明のもともとの機能が損なわれかねないから,甲1発明において,甲2?7の記載を考慮しても,コア12の弾性材料を,伸縮性に乏しい「非伸縮性素材」とすることが動機付けられることはないというべきである。
よって,甲1発明において,甲2?7の記載を考慮しても,コア12の弾性材料を,伸縮性に乏しい「非伸縮性素材」とすることに当業者が容易に想到し得たとはいえない。

ウ 相違点3について
相違点3は,本件発明1の中心ひもと甲1発明のコア12との間の明らかな構成上の相違であるから,実質的な相違点である。
そして,甲1?7のいずれにも「こぶのコアを構成」(上記(1)エ参照)する「中心ひも」については,記載も示唆もされていない。
さらに,上記アで示したとおり,甲1発明は,コア12の収縮を原因として,可撓性シース14の両端部分が互いの方に移動するという結果が生じるものであると解されるところ,甲1発明において,コア12を「こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するようこぶ対応部分にて丸められた」ものとしてしまうと,前述の結果をもたらすコア12の収縮が妨げられ,甲1発明のもともとの機能が損なわれかねないから,甲1発明において,甲2?7の記載を考慮しても,コア12を「こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するようこぶ対応部分にて丸められた」ものとすることが動機付けられることはないというべきである。
よって,甲1発明において,甲2?7の記載を考慮しても,コア12を「こぶのコアを構成し、こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するようこぶ対応部分にて丸められた」ものとすることに当業者が容易に想到し得たとはいえない。

エ 小括
以上のとおり,相違点1?3はいずれも実質的な相違点であるから,本件発明1は,甲1発明と同一ではない。また,本件発明1は,甲1発明及び甲2?甲7の記載に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)請求人の主張する甲1発明1を前提とした場合の予備的検討
請求人は,甲1には,次の<甲1発明1>が記載されており(審判請求書17頁9?21行),本件発明1と甲1発明1との相違点は,以下の<相違点1’>及び<相違点2’>である(審判請求書28頁13?18行)旨主張しているので,この甲1発明1を前提とした場合についても予備的に検討しておく。ただし,請求人の主張する「相違点1」を「相違点1’」と,「相違点2」を「相違点2’」とそれぞれ言い換えている。

<甲1発明1>
a-1 間隔をあけて繰返し配置され,
a-2 自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶを有する
a-3 弾性ゴムからなる可撓性シースと,
b-1 可撓性シースのチューブ状構造によって構成される中心の管部分に弾性材料からなり,
b-2 こぶのコアを構成し,
b-3 こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するように構成されたコアと,を備えた
c ひも。

<相違点1’>
本件発明1では,中心ひもが「非伸縮性素材」からなるのに対して,甲1発明1では「弾性材料」からなる点。

<相違点2’>
本件発明1では,中心ひもが「こぶ対応部分にて丸められた」構成であるのに対して,甲1発明1ではそのような限定がなされていない点。

なお,「こぶのコアを構成」について,請求人の主張する上記(1)イの解釈を採用するならば,甲1発明1は,コアが「こぶ対応部分にて丸められた」ものではないから,「こぶのコアを構成」するものであるともいえず,「こぶのコアを構成」の相違も相違点2’に加えるべきではあるものの,この点はひとまずおいておく。

ア 相違点1’について
請求人は,審判請求書30頁5行?37頁5行,45頁1?6行において,甲2?7の記載から,「自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶを有する部材において,当該部材のチューブ状構造によって構成される中心の管部分に,こぶのコアを構成し,こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するように構成されたコアとして,非伸縮性の部材を配置すること」が周知技術(以下「周知技術1」という。なお,審判請求書では1は丸付き数字である。)であるとした上で,周知技術1によれば,甲1発明1のコアを構成する「弾性材料」を,非伸縮性に変更することは,当業者の技術常識にすぎないものであるから,相違点1’は実質的相違点ではない旨,又は,相違点1’は周知技術1に基づく設計変更にすぎない旨主張しているので,以下,検討する。

まず,甲3,甲4及び甲6には,こぶを有する部材が記載されていないから,甲3,甲4及び甲6が周知技術1の根拠となるものでないことは明らかである。なお,請求人も,甲2,甲5及び甲7については,こぶを有するものであるとしている(審判請求書31頁5?10行,33頁11?15行,35頁1?5行)一方,甲3,甲4及び甲6については,こぶを有するものとはしていない(審判請求書32頁6?10行,33頁1?5行,34頁7?11行)。
また,甲3,甲4及び甲6はともかく,甲2,甲5及び甲7の記載から,周知技術1を認定することができたとし,この周知技術1が無効理由2における「甲2?甲7に代表される当業者の技術常識」を構成するものと解したとしても,甲1発明1のコアを構成する「弾性材料」を非伸縮性に変更することが当業者の技術常識にすぎないものであることまでは立証されておらず,これが当業者にとって自明なものであるとも認められない。
そして,甲1発明1も,甲1発明について上記(3)イで示したのと同様に,コアの伸びを原因として,可撓性シースを引き離すという結果が生じるものであり,また,コアの収縮を原因として,可撓性シースが互いの方に移動するという結果が生じるものであると解されるところ,甲1発明1のコアを構成する「弾性材料」を,「非伸縮性」としてしまうと,前述の結果をもたらすコアの伸び及び収縮が妨げられ,甲1発明1のもともとの機能が損なわれかねないから,周知技術1を考慮しても,甲1発明1において,コアを構成する「弾性材料」を非伸縮性に設計変更することが動機付けられることはないというべきである。
したがって,周知技術1を前提としても,甲1発明1において,コアを構成する「弾性材料」を非伸縮性に変更することが,当業者の技術常識であるとはいえないから,相違点1’は実質的な相違点である。また,甲1発明1において,コアを構成する「弾性材料」を非伸縮性に変更することが,周知技術1に基づく設計変更にすぎないものであるともいえない。
よって,請求人の相違点1’についての上記主張は採用できない。

イ 相違点2’について
請求人は,審判請求書37頁6行?40頁8行,45頁1?6行において,甲2,甲5及び甲7の記載から,「自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶを有する部材において,当該部材のチューブ状構造によって構成される中心の管部分に非伸縮性の部材を配置し,当該非伸縮性部材を,こぶのコアを構成し,こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するようにこぶ対応部分にて丸められた構成とすること」が周知技術(以下「周知技術2」という。なお,審判請求書では2は丸付き数字である。)であるとした上で,周知技術2によれば,甲1発明1のコアを,こぶ対応部分にて丸められた構成とすることは,当業者の技術常識にすぎないものであるから,相違点2’は実質的相違点ではない旨,相違点2’はそもそも相違点1’にかかる構成について周知技術1の構成を採用することのみによって自ずから達成されるものであるから,この意味においても相違点2’は実質的相違点ではない旨,又は,相違点2’は周知技術2に基づく設計変更にすぎない旨主張しているので,以下,検討する。

まず,甲2,甲5及び甲7の記載から,周知技術2を認定することができたとし,この周知技術2が上記無効理由2における「甲2?甲7に代表される当業者の技術常識」を構成するものと解したとしても,甲1発明1のコアを,こぶ対応部分にて丸められた構成とすることが当業者の技術常識にすぎないものであることまでは立証されておらず,これが当業者にとって自明なものであるとも認められない。
また,甲1発明1も,甲1発明について上記(3)ウで示したのと同様に,コアの収縮を原因として,可撓性シースが互いの方に移動するという結果が生じるものであると解されるところ,甲1発明1のコアを「こぶ対応部分にて丸められた」ものとしてしまうと,前述の結果をもたらすコアの収縮が妨げられ,甲1発明1のもともとの機能が損なわれかねないから,周知技術2を考慮しても,甲1発明1において,コアを「こぶ対応部分にて丸められた」ものに設計変更することが動機付けられることはないというべきである。
したがって,周知技術2を前提としても,甲1発明1において,コアを「こぶ対応部分にて丸められた」ものとすることが,当業者の技術常識であるとはいえないから,相違点2’は実質的な相違点である。また,甲1発明1において,コアを「こぶ対応部分にて丸められた」ものとすることが,周知技術2に基づく設計変更にすぎないものであるともいえない。
さらに,上記アで示したとおり,周知技術1を考慮しても,甲1発明1において,コアを構成する「弾性材料」を非伸縮性に設計変更することが動機付けられることはないのであるから,相違点2’はそもそも相違点1’にかかる構成について周知技術1の構成を採用することのみによって自ずから達成されるものである旨の請求人の主張は,前提を欠くものであって失当である。
よって,請求人の相違点2’についての上記主張は採用できない。

ウ 小括
以上のとおり,相違点1’及び相違点2’はいずれも実質的な相違点であるから,本件発明1は,甲1発明1と同一ではない。また,本件発明1は,甲1発明1及び甲2?甲7に代表される当業者の技術常識に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明1についてのまとめ
以上のとおりであるから,本件発明1は,甲1に記載された発明ではなく,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明1は,甲1発明及び甲2?7の記載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでなく,また,甲1発明1及び甲2?甲7に代表される当業者の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでもないから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

3 本件発明2?5について
本件発明2?5は,本件発明1を直接的又は間接的に引用し,本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから,本件発明1と同様に,甲1に記載された発明ではなく,甲1発明及び甲2?7の記載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでなく,また,甲1発明1及び甲2?甲7に代表される当業者の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって,本件発明2?5も,特許法第29条第1項第3号に該当せず,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。

4 無効理由1及び無効理由2についてのむすび
以上のとおりであるから,無効理由1及び無効理由2のいずれによっても,本件発明1?5に係る特許を無効にすることはできない。

第6 無効理由3(特許法第36条第4項第1号)についての当審の判断
1 実施可能要件の考え方について
特許法第36条第4項第1号は,明細書の発明の詳細な説明の記載は,「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定める。
特許制度は,発明を公開する代償として,一定期間発明者に当該発明の実施につき独占的な権利を付与するものであるから,明細書には,当該発明の技術的内容を一般に開示する内容を記載しなければならない。特許法第36条第4項第1号が上記のとおり規定する趣旨は,明細書の発明の詳細な説明に,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に発明が記載されていない場合には,発明が公開されていないことに帰し,発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことにあると解される。
そして,物の発明における発明の実施とは,その物の生産,使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号),同法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」とは,その物を作ることができ,かつ,その物を使用できることであり,物の発明については,明細書にその物を生産する方法及び使用する方法についての具体的な記載が必要であるが,そのような記載がなくても,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき,当業者がその物を作ることができ,かつ,その物を使用できるのであれば,上記の実施可能要件を満たすということができる。

以上の観点から,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が,実施可能要件を満たすか否かについて検討する。請求人は,無効理由3として,具体的には無効理由3-1と無効理由3-2があると主張しているので,無効理由3-1と無効理由3-2のそれぞれについて検討する。

2 本件特許明細書の記載
本件特許明細書には,以下の記載がある。
(1)【0016】
「ここで、図5は、本実施形態のひもを固定させるための流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは、以下のステップからなる。最初にステップS0501は、ひもに軸方向張力を加え、こぶの径が小さくなるよう収縮させる。次にステップS0502は、張力を加えた状態のままひもをひも穴に通す。次にステップS0503は、ひも穴に通されたひもの長さが固定関係の維持に好適な長さとなっているかどうかを判断する。好適な長さになっていなければステップS0502の作業を繰り返し引き続きひもをひも穴に通す作業を行う。好適な長さであると判断すればステップS0504に移行する。ステップS0504は、ひもに加えた軸方向張力を弱め、こぶの径が大きくなるように膨張させる。このような作業を行うことにより、最後にひもを結ぶ作業を経ることなく、こぶをひも穴にひっかけることで固定関係を維持することが可能になる。」
(2)【0018】
「「伸縮性素材からなる」とは、ひもが伸び縮みする性質を有する素材からなることを意味している。伸縮性素材としては、天然ゴムや合成ゴムなどを用いることが考えられ、これらの素材を単独で用いてひも全体を図12で示すようなゴムチューブ状に構成してもよいし、これらの素材とポリエステルやナイロン、アクリル、ポリウレタンなどの非伸縮性素材とを組み合わせて用いてもよい。いずれにしても、ひも本体全体が伸縮性素材からなる本構成をとることによって、軸方向張力を加えることで伸縮性素材からなるひも全体が伸び縮むため、ひもの各部分にひずみが生じにくくなり、ひも本体に強い張力を繰り返し加えても、断裂しにくいひもを提供することが可能となる。・・・・・・」
(3)【0020】
「図6は、本実施形態のひもの全体を示す斜視図である。この図にあるように、本実施形態のひもは、基本的に実施形態1で説明したひもと同様であるが、伸縮性素材は、ゴム状素材と非伸縮性の通常素材との編み込みによって構成されていることを特徴とする。・・・・・・」
(4)【0022】
「「ゴム状素材」とは、ゴムのように伸縮性に優れた糸状素材のことを指しており、軸方向に対し力を加えることによって良く伸びる効果を生じさせる機能を有する。ここで、「ゴム状」とはあくまで素材の性質を示す表現であって、対象となる素材としてゴムそのものを排除する意図ではない。したがって、天然ゴムや合成ゴムなどの種類を問わず、ゴムそのものもここでいう「ゴム状素材」に当然に含まれる。ゴム状素材を編み込む構造をとることによって、ひもに対し軸方向張力を加えた場合、少ない力で十分に伸びることが可能となる。」
(5)【0023】
「「非伸縮性の通常素材」とは、前記ゴム状素材との比較において伸縮性に乏しい繊維素材のことを指す。すなわち、「非伸縮性」とは、「伸縮性に乏しい」ことを意味する技術用語であって、「伸縮性を有さない」ことを意味するものではない。非伸縮性の通常素材としては、例えば前記ポリエステルやナイロン、アクリル、ポリウレタンなどの繊維素材が挙げられる。線密度の高い繊維素材であるこれらの通常素材を編み込む構造をとることによって、丈夫で断裂しにくいひもを形成することが可能になる。また、通常素材を用いることにより、ゴム状素材のみでは成形が困難な様々な形状のこぶを成形することも可能となる。」
(6)【0024】
「なお、ゴム状素材と通常素材とは、互いの編み込みによって本実施形態の伸縮性素材を構成する。・・・・・・」
(7)【0026】
「ここで、伸縮性素材からなるひも本体を編み込みによって構成する本実施形態のひもにおいて、ひも本体に設けられるこぶの形成方法について説明する。既に説明したように、こぶはひもに軸方向張力を加える際に径の大きさが変化するように形成されている必要があり、このようなひもの機能を編み込み構造のもとでも確保する必要がある。具体的には、こぶの部分については軸方向張力による径の変化に対応できるよう、ひもの他の部分に比べて編み方を緩くするなどひもの編み込みに部分的な緩急をつける方法が考えられる。このような編み方をとることによりこぶ部分を伸縮可能となるよう撓ませることが可能となるため、ひも本体においてこぶの中心部分と端部分とで別々に編み込んだ素材を継接ぎするのではなく、一連のゴム状素材および通常素材とで構成することが可能となる。・・・・・・」
(8)【0030】
「「中心ひも」は、こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随する機能を有しており、こぶ対応部分にて丸められてこぶのコアを構成している。「こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化」とは、ひも本体に対し大小の軸方向張力が加わることによりこぶの径変化が生じ、当該径変化に対応するようにこぶの両端距離も変化する本発明のひもの特徴のことを指している。そして、このような変化に「追随する機能」とは、例えば、前記こぶの両端距離が短くなれば中心ひもの後記丸められた部分がさらに収縮するように丸まり、両端距離が広くなれば中心ひもの丸められた部分が伸びる機能のことを意味している。
ここで、中心ひものうち丸められている部分はひも本体のこぶに対応する部分に設けられている。当該構成のもとでは、ひも本体を構成する伸縮性素材は張力が加えられていない間は、中心ひものこぶ対応部分を沿うようにこぶを形成することになるため、前記こぶ対応部分がこぶを形成するためのコアとして機能する。そして、内側にてコアとして機能する中心ひもを有することにより、当該こぶは繰返しの利用にも耐えうるだけの固さを保持することが可能になる。なお、中心ひもをこぶのコアとして機能させるためには、当該こぶ対応部分の位置がずれないでおく必要がある。そのようなこぶのコアとしての機能を確保するため、中心ひもはそれぞれのこぶの対応部分をつなぎ、例えばひもの端部などでひもと固定されているひも状構造をとる必要がある。」
(9)【0031】
「なお、中心ひもはひもを伸縮させるために機能させる必要はないので、伸縮性素材を用いる必要はなく、非伸縮性素材からなっていればよい。即ち、ひも本体に軸方向の張力を加え伸縮させる場合でも、中心ひもは前記ゴム状素材のようには伸縮しない。中心ひもは、ひも本体よりもやや長い長さで構成されており、「丸められた部分」とは、例えばらせん形状をなしている。当該構成をとることにより、ひもを繰り返し伸縮して使用しても、当該丸められた部分が絡まってこぶの復元が困難になる事態を回避することが可能になる。・・・・・・」
(10)【0041】
「「軸方向張力が加えられた状態」とは、ひも本体を引っ張った状態のことを指している。当該状態においては、図2で示したようにこぶの中心部分の径は軸方向張力がゼロの状態に比して小さくなり、このこぶが通し穴にひっかかることなく通るように機能する。したがって、こぶが前記機能を果たすためには、軸方向張力が加えられた状態においても通し穴を通るに十分な小ささの径であることが必要となる。「軸方向張力が加えられた状態においても通し穴を通るに十分な小ささの径」とは、究極的には、こぶの両端部分の径と同じの大きさであることが最も望ましい。しかし、本発明のひもは、ひも本体に伸縮性素材を用いており、かつチューブ状となっている。すなわち、チューブ内側にあそび部分があるので、こぶの中心部分の径が両端部分の径よりもやや大きくても、通し穴を通す際にこぶ部分がチューブ内側のあそび部分に向けて収縮することにより、結果として両端部分の径と同径程度の通し穴を通ることが可能となる。」

3 無効理由3-1について
ア 請求人の主張の概要
本件発明1の「中心ひも」の「非伸縮性素材」は,本件特許明細書の段落【0023】及び【0031】の記載によれば,ポリウレタン繊維を含むものであり,ポリウレタン繊維は弾性ゴムである(甲1,甲12)ところ,弾性ゴムであるポリウレタン繊維は「伸縮性素材」に該当してしまうのであるから,本件特許明細書及び技術常識をどのように参酌しても,弾性ゴムであるポリウレタン繊維を用いて「非伸縮性素材」からなる中心ひもを構成することはできない(審判請求書45頁8行?47頁17行)。

イ 検討
(ア)請求人の主張する無効理由3-1は,本件発明1の「中心ひも」の「非伸縮性素材」が,ポリウレタン繊維を含むことを前提としたものであり,ポリウレタン繊維は「非伸縮性素材」ではなく「伸縮性素材」に該当するから,「中心ひも」にポリウレタン繊維を用いる場合には,「中心ひも」が「非伸縮性素材」である本件発明1を作ることができないということであると解される。本件発明1の「中心ひも」の「非伸縮性素材」がポリウレタン繊維を含むことの根拠としては,段落【0023】の「ポリウレタンなどの繊維素材」との記載が示されている。
しかしながら,段落【0018】,【0020】,【0023】及び【0024】の記載(上記2(2),2(3),2(5)及び2(6)参照)からみて,段落【0023】の「ポリウレタンなどの繊維素材」は,「中心ひも」の「非伸縮性素材」として例示されたものではなく,ゴム状素材と非伸縮性の通常素材との編み込みによって構成されている伸縮性素材からなる「ひも本体」におけるその「非伸縮性の通常素材」として例示されたものであることが明らかである。そして,「非伸縮性素材」と「非伸縮性の通常素材」とでは文言が相違する上,「中心ひも」の「非伸縮性素材」について,ゴム状素材と編み込まれる繊維素材であると解する理由もないから,「中心ひも」の「非伸縮性素材」が,ゴム状素材と編み込まれる「非伸縮性の通常素材」として例示された「ポリウレタンなどの繊維素材」を含むものであるとは,直ちにはいえない。
よって,請求項の主張する無効理由3-1は,本件発明1の「中心ひも」の「非伸縮性素材」がポリウレタン繊維を含むという前提において誤りである。

(イ)上記(ア)で示したとおり,本件発明1について,「中心ひも」の「非伸縮性素材」がポリウレタン繊維を含むものであるとは,直ちにはいえないけれども,本件発明1の「中心ひも」の「非伸縮性素材」がポリウレタン繊維である場合に,本件発明1を作ることができるか否かという点についても,念のため検討する。
段落【0031】の記載(上記2(9)参照)からみて,本件発明1の「中心ひも」の「非伸縮性素材」は,ひも本体に軸方向の張力を加え伸縮させる場合に,ゴム状素材のようには伸縮しない素材のことであると解釈すべきものである。このような解釈は,段落【0023】の「「非伸縮性」とは、「伸縮性に乏しい」ことを意味する技術用語であって、「伸縮性を有さない」ことを意味するものではない。」との記載とも整合するものである。
そして,同段落【0031】には「なお、中心ひもはひもを伸縮させるために機能させる必要はないので、伸縮性素材を用いる必要はなく、非伸縮性素材からなっていればよい。」と記載されていることから,ポリウレタン繊維が,弾性ゴムであって,段落【0018】の「伸縮性素材」(上記2(2)参照)に該当することがあり得るとしても,例えば,本件発明1の「ひも本体」が「ゴム状素材」からなるものであって,ポリウレタン繊維が「ひも本体」の「ゴム状素材」のようには伸縮しないものであれば,そのポリウレタン繊維は「中心ひも」を構成するものとすることができると,当業者は理解し得るものである。
したがって,「中心ひも」にポリウレタン繊維を用いる場合であっても,「中心ひも」が「非伸縮性素材」である本件発明1を作ることができるといえる。本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2?5についても同様である。
よって,請求人の主張する無効理由3-1は,理由がない。

4 無効理由3-2について
ア 請求人の主張の概要
本件発明1の中心ひもが「こぶのコアを構成」するとの構成要件は,以下の(ア)?(ウ)の条件を充足することを意味するものと解される。
(ア)中心ひものこぶ対応部分がこぶを形成するためのコアとして機能すること。
(イ)こぶが繰返しの利用にも耐えうるだけの固さを保持することを可能にすること。
(ウ)中心ひものこぶ対応部分の位置がずれないこと。
しかし,本件特許明細書は,中心ひもをこぶ対応部分にて丸めた構成とすることのほかに何ら具体的な手段を開示していない。(ア)?(ウ)の条件を満たし,丸められた中心ひもをこぶのコアとして構成するためには,ひも本体のこぶに対応する部分の内部が丸められた中心ひもによって充填され,中心ひもが丸められた部分とひも本体のこぶに対応する部分との間に中空の領域が存在しない状態とする等の工夫が不可欠であるところ,本件特許明細書には,かかる内容がまったく記載されていない。
ひも本体のこぶに対応する部分の内部が丸められた中心ひもによって充填され,中心ひもが(ア)?(ウ)の条件を満たしたコアとして機能する構成とするためには,様々な素材の中心ひもを用いて様々な製法により試験を繰り返す必要があり,当業者に過度の試行錯誤を強いる(審判請求書47頁18行?50頁8行,請求人陳述要領書24頁21行?27頁15行,請求人陳述要領書(2)1頁8行?3頁12行)。

なお,請求人は,第1回口頭審理において,「無効理由3-2は、「こぶのコアを構成し」を「こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するようこぶ対応部分にて丸められた」以上の何かを特定するものとして解釈した場合に主張するものである。」と陳述(第1回口頭審理調書の「請求人」欄の「5」)したものであるところ,当審は,本件発明1の「こぶのコアを構成」について,「こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するようこぶ対応部分にて丸められた」以上の何かを特定するものとして,第5の2(1)エのとおり解釈すべきと判断するものであるから,請求人の主張する無効理由3-2について検討することとする。請求人の主張する上記(ア)?(ウ)の条件は,第5の2(1)エで当審が示した(ア)?(ウ)と同じである。

イ 検討
(ア)段落【0030】の「なお、中心ひもをこぶのコアとして機能させるためには、当該こぶ対応部分の位置がずれないでおく必要がある。そのようなこぶのコアとしての機能を確保するため、中心ひもはそれぞれのこぶの対応部分をつなぎ、例えばひもの端部などでひもと固定されているひも状構造をとる必要がある。」との記載(上記2(8)参照)から,それぞれのこぶの対応部分をつないだ中心ひもを,例えばひもの端部などでひも本体と固定することによって,上記ア(ウ)の条件を満たすものを作ることができるといえる。

(イ)その一方で,本件特許明細書には,上記ア(ア)及び(イ)の条件を満たすものを生産する方法についての具体的な記載はない。この点,被請求人は,被請求人陳述要領書7頁14行?8頁23行において,上記ア(ア)?(ウ)の条件を満たすこぶの形成方法が段落【0026】に記載されている旨主張する。しかしながら,段落【0026】の記載(上記2(7)参照)は,中心ひもを有する実施形態に関するものではなく,中心ひもが「こぶのコアを構成」することの直接的な根拠となるものではないから,被請求人の主張は当を得たものではない。そこで,本件特許明細書の記載及び技術常識に基づき,当業者が,上記ア(ウ)の条件に加えて,上記ア(ア)及び(イ)の条件を満たすものを作ることができるか否かについてさらに検討する。

(ウ)段落【0030】の「ここで、中心ひものうち丸められている部分はひも本体のこぶに対応する部分に設けられている。当該構成のもとでは、ひも本体を構成する伸縮性素材は張力が加えられていない間は、中心ひものこぶ対応部分を沿うようにこぶを形成することになるため、前記こぶ対応部分がこぶを形成するためのコアとして機能する。そして、内側にてコアとして機能する中心ひもを有することにより、当該こぶは繰返しの利用にも耐えうるだけの固さを保持することが可能になる。」との記載(上記2(8)参照)から,ひもに張力が加えられていないときに,例えばひも本体が中心ひもの丸められた部分を沿うような形状となるものであれば,上記ア(ア)及び(イ)の条件を満たすことを理解することができる。
そして,ひもを作るにあたって,丸められた部分を有する状態の中心ひもを先に作成しておけば,その丸められた部分の位置及び形状にあわせて,丸められた部分を沿うような形状となるように,チューブ状構造であるひも本体の管部分の内径を設定して,ひも本体を成形すれば,上記ア(ア)及び(イ)の条件を満たすものを作ることができることは技術常識に照らして明らかである。
また,ひもを作るにあたって,例えば段落【0026】の記載(上記2(7)参照)に基づいてひも本体を形成すること等により,ひも本体のこぶの位置及び形状が先に定まっている場合であっても,中心ひもの径を,チューブ状構造であるひも本体の管部分の内径より若干小さな径とし,ひも本体に張力を加えた状態でひも本体に中心ひもを固定し,その後に張力を除けば,中心ひもがひも本体のこぶに対応する部分で丸まり得ることは技術常識に照らして明らかであり,中心ひもの長さ等を適宜変更することによって,丸まった後の形状等を調整できると考えられるから,当業者であれば,過度の試行錯誤を要することなく,上記ア(ア)及び(イ)の条件を満たすものを作ることができるというべきである。

(エ)したがって,当業者であれば,本件特許明細書の記載及び技術常識に基づいて,上記ア(ア)?(ウ)の条件を満たす本件発明1を,過度の試行錯誤を要することなく作ることができるといえる。本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2?5についても同様である。
よって,請求人の主張する無効理由3-2は,理由がない。

(オ)なお,被請求人は,無効理由3-2に関し,審判事件答弁書30頁11?24行及び被請求人陳述要領書7頁7?13行において,段落【0041】の記載からも分かるように,本件発明1は,ひも本体と中心ひもとの間に中空の領域が存在することをも想定したものであり,本件発明1の実施にあたって,中空の領域が存在しないものをあえて作る必要はない旨主張する。
しかしながら,段落【0041】の記載(上記2(10)参照)は,中心ひもを備えない実施形態についてのものであり,同段落には「すなわち、チューブ内側にあそび部分があるので、こぶの中心部分の径が両端部分の径よりもやや大きくても、通し穴を通す際にこぶ部分がチューブ内側のあそび部分に向けて収縮することにより、結果として両端部分の径と同径程度の通し穴を通ることが可能となる。」と記載されているにすぎず,上記主張の根拠には,直ちにはならない。
そして,被請求人は,第1回口頭審理において,「無効理由3-2に関し、「中空の領域」が存在するという主張について、中心ひもがこぶのコアとして機能する程度のものである。」とも陳述(第1回口頭審理調書の「被請求人」欄の「3」)しているところ,ひも本体が中心ひもの丸められた部分を沿うような形状であり,上記ア(ア)及び(イ)の条件が満たされる場合にあっても,ひも本体と中心ひもの丸められた部分との間に全く隙間がないということはあり得ないから,被請求人の上記主張は,本件発明1について,上記ア(ア)?(ウ)の条件が満たされるのであれば,ひも本体と中心ひもの丸められた部分との間に,若干の隙間があることは許容されるという程度の趣旨であるのならば,当審が示した上記(ウ)の判断に反するものではない。

5 本件発明1?5を使用できるか否かについて
請求人の主張する無効理由3-1及び3-2では争点とされてはいないものの,本件発明1?5を使用できるか否かについても検討すると,本件発明1?5は,段落【0016】に記載された実施形態の「ひもを固定させるための流れ」(上記2(1)参照)と同じように,使用できるものであると理解できる。

6 無効理由3についてのむすび
以上のとおり,請求人の主張する無効理由3-1及び3-2はいずれも理由がなく,当業者であれば,本件特許明細書の記載及び技術常識に基づいて,本件発明1?5を作ることができ,かつ,本件発明1?5を使用できるといえるから,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たすものである。
よって,無効理由3によっては,本件発明1?5に係る特許を無効にすることはできない。

第7 無効理由4(特許法第36条第6項第1号)についての当審の判断
1 請求人の主張
無効理由3において述べたことと同様,本件発明1?5は,当業者がその課題を解決できることを認識できる範囲のものではなく,サポート要件に違反し,特許法123条1項4号,及び同36条6項1号により無効である(審判請求書50頁15?17行)。

なお,請求人陳述要領書27頁21行?33頁1行による無効理由4の具体的理由を追加する主張は,請求理由の要旨を変更する補正に該当し,審判請求時の請求書に記載しなかったことに合理的な理由はないので,第1回口頭審理において,特許法第131条の2第2項に基づき,当該主張の追加は許可しないと決定した(第1回口頭審理調書の「審判長」欄の「2」)。

2 検討
上記1のとおり,請求人は,本件発明1?5がサポート要件に違反することについて「無効理由3において述べたことと同様」以上の主張をしておらず,無効理由3についての請求人の主張を考慮しても,本件発明1?5について当業者がその課題を解決できることを認識できる範囲のものではないことが具体的に説明されているとはいえない。
そうすると,請求人の上記主張を前提とする限り,上記第6のとおり無効理由3によっては本件発明1?5に係る特許を無効にすることはできないのであるから,無効理由4によっても,本件発明1?5に係る特許を無効にすることはできないと判断するほかない。

3 予備的検討
(1)特許法第36条第6項第1号は,特許請求の範囲の記載は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したもの」でなければならないと定める。同号は,いわゆるサポート要件を規定したものであって,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)上記第6の1と上記(1)とから明らかであるように,実施可能要件とサポート要件とは検討すべき観点が違うものであるから,実施可能要件を満たしているからといって,ただちにサポート要件を満たしているといえるものではない。また,請求人も,具体的な説明はさておき,無効理由4について「本件発明1?5は,当業者がその課題を解決できることを認識できる範囲のものではな」い旨主張するものではある。そこで,上記(1)の観点から,本件特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たすか否かについても,予備的に検討しておく。

(3)本件特許請求の範囲の記載は,上記第2で示したとおりである。

(4)本件特許明細書には以下の記載がある。
ア 【0002】
「従来から、靴ひものように固定のために穴通しが必要なひもに関し、ゴムなどの弾性を有する線状素材を中心となるコアとし、そのコアの外周を繊維で覆って形成されたひもであって、外周の繊維部分には、ひも靴などの通し穴にいったん通した後はその穴に引っ掛かるこぶを編んで備えることによって、結ばなくとも緩みが生じないひもに関する技術が知られている。」
イ 【0003】
「ひも靴の通し穴にいったん通すことができる上にその後はその穴に引っかかるように編まれたこぶの動作原理は、そのひもに対して加えられる張力に応じて自在にその径を変化するこぶの構造にある。すなわち、当該ひもはコアとしてのゴムとこのコアとなるゴムに両端が固定され、その中心が固定されない非弾性(可撓性)のこぶを複数編んで配置した構造を有する。コアとなるゴムに張力を与えることでゴムは伸び、従ってこぶの両端間距離が伸びるのでこれに挟まれたこぶの中心部分は平坦化してその径は小さくなる。
さらに、その張力が消えるとゴムは再び元の長さに戻り、従ってこぶの両端間距離はもとに戻るのでこぶは再び元のこぶ形状に復元し、その径は大きくなる。
このようにしてこぶの平坦化と復元、すなわちこぶの径の小大をひもに対して与える張力によって操ることができるので、前述のとおり、ひも通しの際にはこぶを平坦化して径小とし、穴に通りやすくし、ひも通しが終了したさいにひもに対する張力を小さくすることでこぶを復元し径大とし、結ばなくとも緩まない靴ひもを実現できる。」
ウ 【0006】
「しかしながら、上記従来の技術では、非弾性のこぶの両端をコアとなるゴムに固定するためこぶの両端と固定関係にあるゴムの部分はひもに高い張力がかかっても伸びることはない。なぜなら、こぶは非弾性の繊維を編んだものであり、このゴムの部分は逆に非弾性の繊維に固定されている関係にあるためである。
また、こぶの中心部分に対応するゴムの部分はひもに繰り返し高い張力が加えられるたびに伸び縮みを繰り返す。
つまり、同じ弾性のコアであっても伸び縮みが激しい部分とまったく伸び縮みしない部分とが共存し、その境界領域に高いひずみが蓄積され、ひずみが限界に達すると最終的には断裂に至る。ゴムのような比較的弱い素材に対してひずみが蓄積するような動作を必須とする点でこの技術には問題があった。」
エ 【0007】
「以上のような課題を解決するために、本件発明は、間隔をあけて繰返し配置され、自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶを有する伸縮性素材からなるチューブ状ひも本体を備えたひもなどを提案する。」
オ 【0008】
「主に以上のような構成をとる本件発明によって、断裂しにくくかつ結ばなくとも緩みや弛みが生じにくい経済的および効率的に優れたひもを提供することが可能となる。」
カ 【0011】
「図1は、本発明のひもの一部を示す図である。この図にあるように、本実施形態のひもは、間隔をあけて繰返し配置され、自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶを有する伸縮性素材からなるチューブ状ひも本体を備えることを特徴とする。当該構成とすることにより、ひも本体に強い張力を繰返し加えても断裂などしにくいひもを実現できた。」
キ 【0013】
「図1が示すように、本実施形態の「ひも」0100は、間隔を開けて繰返し配置されるこぶを有するチューブ状ひも本体からなる。具体的には、こぶは「中心部分」0101と「端部分」0102を繰り返すことにより配置されている。いっぽう、図2は本実施形態の軸方向張力を加えた状態のひもを示す図である。この図で示すように、軸方向張力を加えることによってこぶ部分の径は収縮するように変化する。そして軸方向に加えられていた張力が除かれると、ひも本体が収縮することに伴い、ふたたびこぶ部分の径が膨張するように変化する。」
ク 【0017】
「なお、本発明のひもが有する「こぶ」とは、ひものうち何らの軸方向張力も加えられていない状態のもとで、こぶがない部分の径に比して大きな径を有している部分のことを指している。すなわち、こぶはひも本体の一部であって、当然にひも本体と同様、後に詳しく説明する伸縮性素材からなる。」
ケ 【0018】
「「伸縮性素材からなる」とは、ひもが伸び縮みする性質を有する素材からなることを意味している。伸縮性素材としては、天然ゴムや合成ゴムなどを用いることが考えられ、これらの素材を単独で用いてひも全体を図12で示すようなゴムチューブ状に構成してもよいし、これらの素材とポリエステルやナイロン、アクリル、ポリウレタンなどの非伸縮性素材とを組み合わせて用いてもよい。いずれにしても、ひも本体全体が伸縮性素材からなる本構成をとることによって、軸方向張力を加えることで伸縮性素材からなるひも全体が伸び縮むため、ひもの各部分にひずみが生じにくくなり、ひも本体に強い張力を繰り返し加えても、断裂しにくいひもを提供することが可能となる。」
コ 【0019】
「当該構成をとる本実施形態のひもにより、ひも本体に強い張力を加えてもこぶ形状を維持したまま繰返し使用することが可能となり、前記従来技術が抱えていた課題を解決することが可能になる。」

(5)上記(4)ア?カ及びコの記載から,本件特許は,結ばなくとも緩みが生じない従来のひもについて,コアとしてのゴムとこのコアとなるゴムに両端が固定され,その中心が固定されない非弾性(可撓性)のこぶを複数編んで配置した構造を有するものであることから,ひも本体に強い張力を繰返し加えると弾性のコアにおける伸び縮みが激しい部分(こぶの中心部分に対応するゴムの部分)とまったく伸び縮みしない部分(こぶの両端と固定関係にあるゴムの部分)との境界領域に高いひずみが蓄積され,ひずみが限界に達すると最終的には断裂に至るという問題に着目したものであり,ひも本体に強い張力を繰返し加えても,断裂しにくいひもを提供することを発明の課題としたものであると理解できる。

(6)上記(4)ウ?コの記載から,間隔をあけて繰返し配置され,自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶを有する伸縮性素材からなるチューブ状ひも本体を備えることにより,従来のひもと異なり,伸縮性素材からなるひも本体全体が伸び縮むため,ひもの各部分にひずみが生じにくくなり,ひも本体に強い張力を繰返し加えても,断裂しにくいひもを実現できることを理解できる。

(7)本件発明1?5は,間隔をあけて繰返し配置され,自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶを有する伸縮性素材からなるチューブ状ひも本体を備えたものであり,また,本件発明1?5が備える「中心ひも」についても,「こぶのコアを構成し、こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するようこぶ対応部分にて丸められた」ものであって,伸縮性素材からなるひも本体全体が伸び縮むことを特段妨げるものではないと理解できるから,本件発明1?5は,発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

(8)したがって,本件特許請求の範囲の記載は,サポート要件を満たすものである。

4 無効理由4についてのむすび
以上のとおり,請求人の主張する無効理由4には理由がなく,また,本件特許請求の範囲の記載は,サポート要件を満たすものである。
よって,無効理由4によっては,本件発明1?5に係る特許を無効にすることはできない。

第8 むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張する無効理由1?4及び提出した証拠によっては,本件発明1?5に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。

第9 付言
本件無効審判請求は,請求人と被請求人の共有に係る本件特許に対する審判請求であって,請求人のみによるものであるから,そもそも,特許法第132条第3項の規定との関係が問題となり得る。
しかし,本件無効審判請求の背景にある事情,すなわち,
(1)甲16の中間判決(知的財産高等裁判所 平成29年(ネ)第10049号 損害賠償請求控訴事件)及び甲19(東京地方裁判所 平成31年(ワ)第4944号 特許権侵害差止等請求事件)から明らかなように,請求人及び被請求人(3者)が相互に侵害訴訟を提起しており,両者間で本件特許の有効性に対する利害に背反があること,
(2)前記中間判決から明らかなとおり,本件請求人の特許権共有持分権の有無自体が争われていること,
(3)被請求人が,本件無効審判請求自体が特許法第132条第3項の規定に違反する旨を全く主張していないこと,及び,
(4)特許法第132条第3項について,「特許権の共有者の1人は,共有に係る特許の取消決定がされたときは,特許権の消滅を防ぐ保存行為として,単独で取消決定の取消訴訟を提起することができると解するのが相当」であり,「特許法132条3項の「特許権の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するとき」とは,特許権の存続期間の延長登録の拒絶査定に対する不服の審判(同法67条の3第1項,121条)や訂正の審判(同法126条)等の場合を想定しているのであって,一般的に,特許権の共有の場合に常に共有者の全員が共同して行動しなければならないことまで予定しているものとは解されない」との最高裁判所判決例(最高裁判決平成13年(行ヒ)154号)があり,当該判決例は,特許権の共有者間で特許権の存続意欲に差異がある場合に共有者の一人が単独で特許権の保存行為を行うことを是認したものであって,消滅行為を行う本件の場合とは逆ではあるが,上記(1)及び(2)のとおり特許権の存在による利害に共有者間で背反がある点では共通すること,
を踏まえ,請求人が主張する無効理由について審理を進め,上記結論のとおり審決をしたことを付言する。
 
審理終結日 2019-09-27 
結審通知日 2019-10-10 
審決日 2019-12-06 
出願番号 特願2012-150880(P2012-150880)
審決分類 P 1 113・ 02- Y (D04B)
P 1 113・ 536- Y (D04B)
P 1 113・ 113- Y (D04B)
P 1 113・ 121- Y (D04B)
P 1 113・ 537- Y (D04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 斎藤 克也  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 石井 孝明
白川 敬寛
登録日 2012-09-07 
登録番号 特許第5079926号(P5079926)
発明の名称 チューブ状ひも本体を備えたひも  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 石戸 孝則  
復代理人 梶井 啓順  
代理人 石橋 良規  
代理人 浜崎 翔多  
代理人 石橋 良規  
代理人 浜崎 翔多  
代理人 山内 貴博  
代理人 奥 和幸  
代理人 森下 梓  
代理人 浜崎 翔多  
代理人 奥 和幸  
代理人 石橋 良規  
代理人 山内 貴博  
代理人 石戸 孝則  
代理人 奥 和幸  
代理人 山内 貴博  
代理人 石戸 孝則  
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