• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09D
管理番号 1369976
異議申立番号 異議2019-701009  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-02-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-11 
確定日 2020-10-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6528068号発明「切削油または潤滑油を用いる機械を塗装するために用いられる粉体塗料組成物、当該粉体塗料組成物により形成された塗膜、および、当該塗膜を備えた機械」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6528068号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?17]について訂正することを認める。 特許第6528068号の請求項1、3?16に係る特許を維持する。 特許第6528068号の請求項2、17に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6528068号の請求項1?17に係る特許についての出願は、平成30年5月1日になされたものであって、令和1年5月24日にその特許権の設定登録がなされ、同年6月12日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許についての異議申立ての経緯は、以下のとおりである。

令和1年12月11日 特許異議申立人である松木奈保美(以下、「特許 異議申立人」という。)による特許異議の申立て
令和2年3月23日付け 取消理由通知
同年5月22日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年6月3日付け 訂正請求があった旨の通知
同年7月6日 意見書の提出(特許異議申立人)

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和2年5月22日になされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、一群の請求項を形成する請求項1?17に対して請求されたものであって、その「請求の趣旨」は、「特許第6528068号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?17について訂正することを求める。」というものである。また、その内容は、以下の訂正事項1?14からなるものである。

訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「切削油または潤滑油を用いる機械を塗装するために用いられる粉体塗料組成物。」
とあるのを、
「切削油または潤滑油を用いる機械を塗装するために用いられる粉体塗料組成物であって、
前記ポリエステル樹脂(A)の水酸基価は20?150mgKOH/g、酸価は0?10mgKOH/gであり、
前記イソシアネート化合物(B)は、多官能イソシアネート化合物であり、
組成物中の前記イソシアネート化合物(B)の量は、前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量を100質量%としたとき、10?40質量%であり、
前記エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量は、200?3000g/eqであり、
組成物中のヒドロキシ基に対する、組成物中のイソシアネート基およびブロックドイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、0.5?1.5である、粉体塗料組成物。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項3?16も同様に訂正する)。

訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1または2に記載の粉体塗料組成物であって、」
とあるのを、
「請求項1に記載の粉体塗料組成物であって、」
に訂正する。

訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1?3のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
とあるのを、
「請求項1または3に記載の粉体塗料組成物であって、」
に訂正する。

訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1?4のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
とあるのを、
「請求項1、3または4に記載の粉体塗料組成物であって、」
に訂正する。

訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1?5のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
とあるのを、
「請求項1および3?5のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
に訂正する。

訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1?6のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
とあるのを、
「請求項1および3?6のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
に訂正する。

訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1?7のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
とあるのを、
「請求項1および3?7のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
に訂正する。

訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1?8のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
とあるのを、
「請求項1および3?8のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
に訂正する。

訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に
「請求項1?10のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
とあるのを、
「請求項1および3?10のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
に訂正する。

訂正事項11
特許請求の範囲の請求項13に
「請求項1?12のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
とあるのを、
「請求項1および3?12のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
に訂正する。

訂正事項12
特許請求の範囲の請求項14に
「請求項1?13のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
とあるのを、
「請求項1および3?13のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、」
に訂正する。

訂正事項13
特許請求の範囲の請求項15に
「請求項1?14のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物により形成された塗膜。」
とあるのを、
「請求項1および3?14のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物により形成された塗膜。」
に訂正する。

訂正事項14
特許請求の範囲の請求項17を削除する。

2 訂正の適否
(1) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について

訂正事項1は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「ポリエステル樹脂(A)」について、発明の詳細な説明の【0029】の「ポリエステル樹脂(A)の水酸基価は、例えば10?200mgKOH/g、好ましくは20?150mgKOH/g」及び【0031】の「ポリエステル樹脂(A)の酸価は、例えば0?10mgKOH/g」との記載に基づいて、「前記ポリエステル樹脂(A)の水酸基価は20?150mgKOH/g、酸価は0?10mgKOH/gであり」と限定し、
また、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「イソシアネート化合物(B)」について、発明の詳細な説明の【0038】の「イソシアネート化合物(B)は、多官能であること、すなわち、1分子中に2以上のイソシアネート基(ブロックされたイソシアネート基を含む)を有する化合物であることが好ましい。」との記載に基づいて、「前記イソシアネート化合物(B)は、多官能イソシアネート化合物であり」と限定し、
また、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「イソシアネート化合物(B)」の組成物中の量について、発明の詳細な説明の【0050】の「組成物中のイソシアネート化合物(B)の量は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂(A)、イソシアネート化合物(B)およびエポキシ樹脂(C)の合計量を100質量%としたとき、例えば10?40質量%、好ましくは15?35質量%、より好ましくは18?30質量%である。」との記載に基づいて、その量を「組成物中の前記イソシアネート化合物(B)の量は、前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量を100質量%としたとき、10?40質量%であり」と限定し、
また、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「エポキシ樹脂(C)」について、発明の詳細な説明の【0059】の「エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量(g/eq)は、特に限定されないが、例えば200?3000、好ましくは500?2500である。」との記載に基づいて、「前記エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量は、200?3000g/eqであり」と限定し、
また、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「組成物」について、発明の詳細な説明の【0080】の「具体的には、組成物中のヒドロキシ基に対する、組成物中のイソシアネート基およびブロックドイソシアネート基の当量比(NCO/OHとも記載する)が、好ましくは0.5?1.5、より好ましくは0.7?1.3、特に好ましくは0.9?1.1である。」との記載に基づいて、「組成物中のヒドロキシ基に対する、組成物中のイソシアネート基およびブロックドイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、0.5?1.5である」と限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。

イ 訂正事項2、14について

訂正事項2、14は、それぞれ、請求項2、17を削除することを目的とするものである。
したがって、訂正事項2、14は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。

ウ 訂正事項3?13について

訂正事項3は、請求項3が請求項2を引用する記載を含むものであったところ、訂正事項2によって請求項2が削除されることにともなって、その引用する請求項から2を削除することを目的とするものである。
また、訂正事項4?13も、訂正事項3と同様に、請求項4?9、11、13?15がそれぞれ請求項2を引用する記載を含むものであったところ、訂正事項2によって請求項2が削除されることにともなって、その引用する請求項から2を削除することを目的とするものである。
したがって、訂正事項3?13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。

(2) 小括

以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?17]について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明

上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?17に係る発明(以下、それぞれその請求項の番号により「本件訂正発明1」などといい、まとめて、「本件訂正発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ヒドロキシ基含有ポリエステル樹脂(A)と、
イソシアネート基またはブロックドイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(B)と、
エポキシ樹脂(C)と
を含み、
前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量に対する前記エポキシ樹脂(C)の量が、8.3質量%以上26.7質量%以下であり、
切削油または潤滑油を用いる機械を塗装するために用いられる粉体塗料組成物であって、
前記ポリエステル樹脂(A)の水酸基価は20?150mgKOH/g、酸価は0?10mgKOH/gであり、
前記イソシアネート化合物(B)は、多官能イソシアネート化合物であり、
組成物中の前記イソシアネート化合物(B)の量は、前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量を100質量%としたとき、10?40質量%であり、
前記エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量は、200?3000g/eqであり、
組成物中のヒドロキシ基に対する、組成物中のイソシアネート基およびブロックドイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、0.5?1.5である、粉体塗料組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の粉体塗料組成物であって、
前記イソシアネート化合物(B)が、脂環構造を含む粉体塗料組成物。
【請求項4】
請求項1または3に記載の粉体塗料組成物であって、
前記イソシアネート化合物(B)が、イソホロンジイソシアネートの3量体構造を有する化合物を含む粉体塗料組成物。
【請求項5】
請求項1、3または4に記載の粉体塗料組成物であって、
前記エポキシ樹脂(C)が、ヒドロキシ基を有する粉体塗料組成物。
【請求項6】
請求項1および3?5のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
前記エポキシ樹脂(C)が、下記一般式(EP)で表されるエポキシ樹脂を含む粉体塗料組成物。
【化1】


一般式(EP)において、複数のRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、nは1以上の整数である。
【請求項7】
請求項1および3?6のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
組成物中のヒドロキシ基に対する、組成物中のイソシアネート基およびブロックドイソシアネート基の当量比が、0.7?1.3である粉体塗料組成物。
【請求項8】
請求項1および3?7のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量に対する前記エポキシ樹脂(C)の量が、13.5質量%以上である粉体塗料組成物。
【請求項9】
請求項1および3?8のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
さらに顔料(D)を含む粉体塗料組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の粉体塗料組成物であって、
前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量を100質量部としたときの、前記顔料(D)の量が、70?150質量部である粉体塗料組成物。
【請求項11】
請求項1および3?10のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
当該粉体塗料組成物を180℃で20分間焼き付けて形成した塗膜を、周波数1.0Hz、温度40?200℃の範囲で粘弾性測定したときの損失正接の最大値tanδ_(max)が0.8?1.5である粉体塗料組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の粉体塗料組成物であって、
前記tanδ_(max)を示す温度をT_(g)℃としたとき、T_(g)-20℃における損失正接tanδ_(Tg-20℃)が、0.1tanδ_(max)以上である粉体塗料組成物。
【請求項13】
請求項1および3?12のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
安息角が30?40°である粉体塗料組成物。
【請求項14】
請求項1および3?13のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
粉体粒子のメディアン径が10?70μmである粉体塗料組成物。
【請求項15】
請求項1および3?14のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物により形成された塗膜。
【請求項16】
請求項1に記載の粉体塗料組成物により形成された塗膜を備える、切削油または潤滑油を用いる機械。
【請求項17】
(削除)」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について

当審が令和2年3月23日付けで通知した取消理由は、以下の取消理由1、2である。また、取消理由1は、刊行物として以下の甲1?3、6を引用するものである。

<取消理由>
取消理由1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1?17に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

<刊行物>
甲1:特開平2-218766号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
甲2:特開2-24365公報(特許異議申立人が提出した甲第2号証)
甲3:特公昭54-1335号公報(特許異議申立人が提出した甲第3号証)
甲6:特開2003-82279号公報(特許異議申立人が提出した甲第6号証)

第5 当審の判断
1 取消理由1について
(1) 刊行物の記載事項
ア 甲6の記載事項
(ア)
「【請求項1】酸末端ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂を基剤樹脂として含有する粉体塗料であって、ブロックイソシアネート硬化剤を基剤樹脂100重量部に対して2?20重量部、好ましくは3?15重量部含有し、且つ、前記のブロックイソシアネート硬化剤にはイソシアネート基(NCO)の含有量が9?17重量%のものを用いることを特徴とする粉体塗料組成物。」
(イ)
「【0002】
【従来の技術】例えば工作機械のように、溶剤や切削油を使用する機械や、これらに接触する器具等の塗装に用いられる粉体塗料として、従来、酸末端ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂から作製された粉体塗料が使用され、エポキシ樹脂としてはビスフェノール型エポキシ樹脂を用い、酸末端ポリエステル樹脂の成分や組成などを変えることにより耐溶剤性や耐切削油性の改良を行って来た。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した改良方法では、溶剤や切削油により軟化、艶引けなどの塗膜欠陥が発生し、充分な性能が得られなかった。そこで、従来の酸末端ポリエステル樹脂とビスフェノール型エポキシ樹脂からなる粉体塗料の物理性能や作業性をそのまま保持して、充分な耐溶剤性や耐切削油性を満足する塗料を開発するために検討を重ねた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、現行の酸末端ポリエステル樹脂とビスフェノール型エポキシ樹脂からなる粉体塗料において、更に、ポリエステル樹脂の内容を変更して検討したが、充分な耐溶剤性や耐切削油性を得ることが出来なかった。そこで、酸末端ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂の粉体塗料では一般に使用しない、ブロックイソシアネート硬化剤を一定量加え、塗膜形成時に塗膜の架橋密度を上げることにより、耐溶剤性、耐切削油性を大幅に改良でき、その他の各種性能も満足できる事を見出し本発明を完成させた。」
(ウ)
「【0022】[評価方法の説明]
(1)耐切削油性
試験板を、60℃加熱した切削油に60日間浸漬し、塗膜の艶引け・軟化・剥離などの状態を目視で評価し総合判定で合格を○、少し良好を△、不合格を×として表示した。試験に用いた切削油は次の5種類である。
NC-11 :タイユ株式会社製の水溶性・シンセティックソリュブル型、JISW2-3
EX-435A :タイユ株式会社製の水溶性・エマルション型、JISW1-2
シンタイロ9954 :カストロール株式会社製の水溶性・ケミカルソリューション(シンセティック)型
シンセティック870:ユシロ化学工業株式会社製の水溶性・シンセティック型、JISW2-1
ネオス・クリアカットH-1:株式会社ネオス製の水溶性・エマルション型」

イ 甲1の記載事項
(ア)
「2.特許請求の範囲
1.ポリカルボン酸、多価アルコール、および必要によりそれらの一部に代えて用いられるオキシ酸より得られ、樹脂の水酸基価が30?250であって酸価が10?100である、室温で固体のポリエステル樹脂(A)と、室温で固体のブロックポリイソシアネートおよびポリエポキシ化合物よりなる架橋剤(B)とよりなることを特徴とする粉体塗料組成物。
(中略)
4.ポリシロキサン微粉末をさらに配合してなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の粉体塗料組成物。」(1頁左下欄4行?右下欄4行)
(イ)
「本発明者らは、上記問題点を解決した耐熱性、電気絶縁性、膜強度、塗膜外観に優れた粉体塗料を開発する為に、鋭意研究した結果、塗膜の耐熱性を上げる為には、主体樹脂自体の耐熱性を高くするよう考慮すると同時に、塗料の架橋反応性を十分高めることが非常に重要であること、また良好な塗膜外観、塗膜強度、耐熱性を得るためには、ある制限された硬化剤の組合せの選択と制限された硬化剤量が重要であることを突き止めた。即ち、ある制限された水酸基量とカルボキシル基量を共に有するポリエステル樹脂にブロックポリイソシアネートとポリエポキシ化合物を併用して架橋剤とする組合せにより、問題解決の手段を見いだし、本発明を完成するに至った。」(2頁左下欄3?16行)
(ウ)
「この様にして製造されるポリエステル樹脂は、前記のように、水酸基価30?250および、酸価10?100の両方を有することが必要である。水酸基価30未満、及び/または、酸価10未満では架橋反応性が低いため、得られた塗膜の塗膜強度、耐熱性が低く、好ましくない、一方、水酸基価が250より大きい場合は、樹脂合成の際に樹脂のゲル化が起こったり、樹脂が合成できたとしても、粉体塗料の吸湿性が高くなりすぎ、粉体塗料が粉体流動性を失って塗装に適さなくなる。また、酸価が100より大きい場合は、樹脂合成の際に、樹脂のゲル化が起こったり、ゲル化を起こさなくとも、粉体塗料に供した時に、粉体塗料の溶融流動性が低下して、満足な塗膜が得られなくなる。」(3頁右下欄7?4頁左上欄1行)
(エ)
「この時使用するブロックポリイソシアネートは室温で固体のものが用いられる。例えば、・・・4.4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H_(12)MDI) 、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(HTDI) 、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H_(6)XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI) ・・・・などが挙げられる。」(4頁左上欄13行?右上欄10行)
(オ)
「これらブロックポリイソシアネートは、主体樹脂ポリエステルの水酸基に対してイソシアネート基が0.05?1.5当量となるごとく配合するのが好ましく、イソシアネート基が0.05当量未満の場合、塗料の硬化度が不足し、密着性、塗膜硬度、耐薬品性等の塗膜性能が劣る。一方、1.5当量を越えると、塗膜が脆くなり、しかも、過剰のイソシアネート化合物の影響で、耐熱性、耐薬品性、耐湿性等が劣るともに、ブロックポリイソシアネート自身が高価なため、コスト的にも不利となる。」(4頁左下欄末行?右下欄9行)
(カ)
「又、架橋剤として用いられるポリエポキシ化合物とは1分子当りエポキシ基を2個以上有する化合物でビスフェノールA系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、脂環族系エポキシ樹脂、その他の通常市販のポリエポキシ化合物を用いることが出来、具体的には、・・・変性エポキシ化合物、具体例としてEHP3150(ダイセル社;商品名)等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、あるいは2種類以上の混合物として用いることができる。・・・
これらのポリエポキシ化合物の中でトリグリシジルイソシアヌレート(TGICとして略称する)、あるいは脂環族固形エポキシ樹脂を使用した場合は特に耐熱性の優れた粉体塗料組成物が得られる。
これらポリエポキシ化合物はポリエステル樹脂のカルボキシル基に対してエポキシ基が0.2?2.5当量となる如く配合することが好ましい。エポキシ基が0.2当量未満では得られた硬化塗膜の架橋密度が不足し、十分な塗膜性能が得られない。」(5頁左上欄6行?右上欄11行)
(キ)
「本発明の粉体塗料組成物を塗装した塗装物品として、例えば、電子レンジ部品、給湯器、ストーブ、電磁コイル、被覆電線、耐圧素子などがあげられ、特に耐熱被覆電線等の耐熱性、絶縁性が求められるものなどが好適である。」(5頁右下欄13?17行)

ウ 甲2の記載事項
(ア)
「2. 特許請求の範囲
(1)
(A)水酸基含有ポリエステル樹脂
(B)カルボキシル基含有ブロックポリイソシアネート化合物
(C)エピ・ビス型または水添エピ・ビス型エポキシ樹脂、および
(D)オキシラン基を有するアクリル樹脂、オキシラン基と水酸基を有するアクリル樹脂、あるいは、それら両者の組み合わせからなり、ブロックポリイソシアネート化合物のカルボキシル基とエポキシ樹脂およびアクリル樹脂のオキシラン基の当量比が0.3以上であり、アクリル樹脂をポリエステル樹脂に対し固形分重量比で0.15?15重量%含有せしめたことを特徴とする粉体塗料用樹脂組成物。」(1頁左下欄4?19行)
(イ)
「従来技術
電気製品、OA機器等の金属製品、建築外装用パネル、内装パネル、フェンス等の建材その他の塗装においてポリエステル系の粉体塗料を適用し、焼付により硬化塗膜を得ることが広く実用化されており」(1頁右下欄17行?2頁左上欄2行)
(ウ)
「尚、これら必須成分は、ブロックポリイソシアネート化合物のカルボキシル基と、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂のオキシラン基の当量比が、0.3以上、通常0.3?2、0であり、またアクリル樹脂をポリエステル樹脂に対し、固形分重量比で0.15?15重量%となるよう配合することが必要である。というのはカルボキシル基とオキシラン基の当量比が0.3未満だと十分なツヤケシ効果が得られず、また15をこえると塗膜性能(物理的、化学的)が低下する問題を生じ、またアクリル樹脂がポリエステル樹脂の0.15重量%未満では十分なツヤケシ効果が得られず、また15重量%をこえると、塗膜物性が低下する問題があり、いずれも本発明目的に対し望ましくない結果を与えるからである。」(2頁右下欄20行?3頁左上欄14行)
(エ)
「本発明の樹脂組成物は通常の粉体塗料製造条件下、即ち、樹脂組成物に例えば有機スズ等の反応触媒、表面調整剤、顔料その他の所望により加えられる添加剤を加え溶融混練、造粒、粉砕等により粉体塗料を得る際の条件下では安定で各樹脂成分の反応は認められないが、粉体塗料を適用した後、焼付条件下には、ポリエステル樹脂中の水酸基とブロックイソシアネートから生成するイソシアネート基との反応、ブロックイソシアネート化合物の有するカルボキシル基とエポキシ樹脂およびアクリル樹脂の有するエポキシおよび水酸基との反応アクリル樹脂の有する水酸基とイソシアネート基との反応等が生じ、充分な架橋反応が進行し、強固な被膜を生じると共に極めて驚くべきことに良好なツヤ消し効果の得られることが判明した。」(3頁左上欄15行?右上欄10行)
(オ)
「実施例
ポリエステル樹脂(日本エステル社製の“エステルレジンER-6610”)60部、ブロックイソシアネート(バイエル社製の“フレランKL5-2668”)13.5部、エポキシ樹脂(油化シェル社製の“エピコート1004”) 14.9部、アクリル樹脂(三井東圧社製の“アルマテックスAP-1648“)3部、反応触媒の有機スズ化合物(日東化成社製の゛ネオスタンU-100”)0.2部、表面調整剤(バスフ社製の“アクロナール4F”)1.0部酸化チタン(石原産業社製の“チタンCR-50”)15部を乾式混合機(川田製作所製の”スーパーミキサー“)で2500rpmで約2分間乾式混合し、ついで溶融混練機(ブス社製の“ブスコニーダ-PLK-46”)にて溶融混練後プレスローラーにて圧延冷却後、粗粉砕して平均粒径5mm、厚み1mm程度の白色ペレットを得た。」(3頁左下欄2?19行)

エ 甲3の記載事項
(ア)
「特許請求の範囲
1(イ) 分子中に水酸基を有するポリエステル樹脂とブロックイソシアネートとの合計が80?99.5重量%。
(ロ) エポキシ樹脂がその残部の均質な混合物よりなる、熱硬化型ポリエステル粉体塗料組成物。」(1頁左欄20?25行)
(イ)
「本発明は熱硬化型ポリエステル粉体塗料組成物に関する。更に詳しくは、貯蔵安定性が良好で薄膜塗装に適し、塗膜の耐食性、耐湿及び耐水性、耐薬品性等の諸物性が優れた粉体塗料組成物に関する。」(1頁右欄9?13行)
(ウ)
「本発明に於て、前記ポリエステル樹脂とブロックイソシアネートとの合計とエポキシ樹脂の混合割合は、重量%で80?99.5/20?0,5の範囲にする。
前記に於てエポキシ樹脂が20重量%以上になると、塗膜の平滑性が悪くなり、又逆に0.5重量%以下の場合には塗膜の耐食性、耐沸とう水試験後及び耐湿試験後の密着性ならびに耐アルカリ性等の向上に寄与しない。」(3頁左欄22?30行)

(2) 刊行物に記載されている発明

甲6には、特許請求の範囲の請求項1の記載((1)ア(ア)参照。)に基づき、以下の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。

<甲6発明>
「酸末端ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂を基剤樹脂として含有する粉体塗料であって、ブロックイソシアネート硬化剤を基剤樹脂100重量部に対して2?20重量部含有し、且つ、前記のブロックイソシアネート硬化剤にはイソシアネート基(NCO)の含有量が9?17重量%のものを用いることを特徴とする粉体塗料組成物。」

(3) 本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と甲6発明の対比

甲6発明の「ポリエステル樹脂」は、本件訂正発明1の「ポリエステル樹脂(A)」に相当する。
甲6発明の「ブロックイソシアネート硬化剤」は、本件訂正発明1の「イソシアネート基またはブロックドイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(B)」に相当する。
甲6発明の「エポキシ樹脂」は、本件訂正発明1の「エポキシ樹脂(C)」に相当する。

そうすると、本件訂正発明1と甲6発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「ポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート基またはブロックドイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(B)と、エポキシ樹脂(C)とを含む粉体塗料組成物。」

<相違点1>
粉体塗料組成物の用途について、本件訂正発明1は、「切削油または潤滑油を用いる機械を塗装するために用いられる」と特定されているのに対し、甲6発明は、そのような特定を有していない点。

<相違点2>
ポリエステル樹脂(A)について、本件訂正発明1は、「ヒドロキシ基含有」のものに特定されているのに対し、甲6発明は、そのような特定を有していない点。

<相違点3>
粉体塗料組成物に含まれている成分の配合割合について、本件訂正発明1は、「前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量に対する前記エポキシ樹脂(C)の量が、8.3質量%以上26.7質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲6発明は、そのような特定を有していない点。

<相違点4>
ポリエステル樹脂(A)について、本件訂正発明1は、「ポリエステル樹脂(A)の水酸基価は20?150mgKOH/g、酸価は0?10mgKOH/g」であるものに特定されているのに対し、甲6発明は、そのような特定を有していない点。

<相違点5>
イソシアネート化合物(B)について、本件訂正発明1は、「多官能イソシアネート化合物であり」、及び、「組成物中の前記イソシアネート化合物(B)の量は、前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量を100質量%としたとき、10?40質量%」であるものに特定されているのに対し、甲6発明は、そのような特定を有していない点。

<相違点6>
エポキシ樹脂(C)について、本件訂正発明1は、「エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量は、200?3000g/eqであり」と特定されているのに対し、甲6発明は、そのような特定を有していない点。

<相違点7>
「組成物中のヒドロキシ基に対する、組成物中のイソシアネート基およびブロックドイソシアネート基の当量比(NCO/OH)」について、本件訂正発明1は、「0.5?1.5である」と特定されているのに対し、甲6発明は、当該当量比に関する特定を有していない点。

イ 相違点の検討
相違点1?7をまとめて検討する。
甲6には、甲6発明の粉体塗料組成物の用途について、例えば工作機械のように、溶剤や切削油を使用する機械や、これらに接触する器具等の塗装に用いられる粉体塗料の耐溶剤性や耐切削油性の改良を行ってきたことや、充分な耐溶剤性や耐切削油性を満足する塗料を開発するために検討を重ねたことや、実施例において、NC-11などの水溶性の切削油を用いて塗膜の艶引け・軟化・剥離などの評価を行ったことが記載されている((1)ア(イ)、(ウ)を参照。)。
また、甲6発明について、酸末端ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂の粉体塗料に、ブロックイソシアネート硬化剤を一定量加え、塗膜形成時に塗膜の架橋密度を上げることにより、耐溶剤性、耐切削油性を大幅に改良でき、その他の各種性能も満足できる事を見出して完成したものであるとも記載されている((1)ア(イ)の【0004】を参照。)。

一方、「ポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート基またはブロックドイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(B)と、エポキシ樹脂(C)とを含む粉体塗料組成物。」は、具体的な用途に応じて、ポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート化合物(B)と、エポキシ樹脂(C)のそれぞれについて、種類や含有量を最適化されるものであると解することが合理的であるところ、当該用途として、切削油または潤滑油を用いる機械を塗装するために用いることとした場合(相違点1を備えるものとした場合)に、具体的にはどのような最適化をすべきであるのかに関する記載はないし、ポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート化合物(B)と、エポキシ樹脂(C)を含む組成物について、相違点2?7に係る構成を同時に備えるものとすることについても、記載も示唆も無い。
また、甲1?3をみても、ポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート化合物(B)と、エポキシ樹脂(C)を含む組成物について、相違点1?7に係る構成を同時に備えるものとすることについて、記載も示唆も無い。
そして、本件訂正発明1は、相違点1?7に係る構成を同時に備えるものとしたことにより、各種の切削油に対する良好な耐性や、耐切削油性評価後の光沢保持率が良好である(【0139】、【0140】)などの所定の効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、令和2年7月6日提出の意見書(2頁15?21行)において、「しかしながら、甲6の【0008】の記載は「本発明に用いる酸末端ポリエステル樹脂としては、酸価が25?100の物が使用できる」というものであり、これは発明の実施の形態の好ましい実施形態の範囲であることが理解できる。甲6の特許請求の範囲では、酸末端ポリエステルの酸価は限定されておらず、文字通り酸末端ポリエステルであればよいのであって、酸末端ポリエステルの酸価25よりも低い値であると甲6発明の設計思想に反する改変であるとは言えない。」などと主張するが、仮に当該改変が容易になし得るものだとしても、せいぜい、相違点4に係る構成のうち、ポリエステル樹脂(A)の酸価を0?10mgKOH/gに特定することを容易になし得たといえるに過ぎず、依然として、相違点1?7に係る構成を同時に備えるものとすることを容易に想到し得たとはいえない。

以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、当業者が甲1?3、6に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(4) 本件訂正発明3?16について

本件訂正発明3?16は、いずれも、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定した発明であるが、上記(3)のとおり、本件訂正発明1は、当業者が甲1?3、6に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。
そうすると、さらに検討するまでもなく、本件訂正発明3?16も、本件訂正発明1と同様の理由により、当業者が甲1?3、6に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(5) 取消理由1についての小括

以上のとおりであるから、本件訂正発明1、3?16は、いずれも、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められないので、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるとはいえない。

2 取消理由2について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、上記観点に沿って検討する。

(1) 取消理由2の概要
当審が、令和2年3月23日付けで通知した取消理由2の概要は、以下のとおりである。なお、「本件特許発明」とは、本件特許の本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?17に係る発明のことである。

本件特許発明が解決しようとする課題は、「塗膜としたときに切削油または潤滑油に対する耐性が改善された粉体塗料組成物を提供すること」であると認められる。
また、発明の詳細な説明には、本件特許発明について、粉体塗料組成物がエポキシ樹脂(C)を含むことで、切削油または潤滑油を用いる機械の塗装面(典型的には金属基材)に対する高い密着性が得られ、また、これが架橋反応することで切削油または潤滑油に対する高い耐性が得られるものと考えられる(【0018】、【0019】)と説明されていることに加え、樹脂(A)、化合物(B)および樹脂(C)を含む本実施形態の粉体塗料組成物(実施例1?24)が、エポキシ樹脂を含まない比較例1および2の粉体塗料組成物に比べ、各種の切削油に対する良好な耐性を示していること(【00139】)が確認できる。

一方、本件特許発明において、ポリエステル樹脂(A)の水酸基価が小さい場合や、イソシアネート化合物(B)のイソシアネート基の含量やエポキシ樹脂(C)のエポキシ当量が十分でない場合や、NCO/OH比やエポキシ基/OH比が適切でない場合や、ポリエステル樹脂(A)がカルボキシ基等の酸基を有する場合については、各種の切削油に対する良好な耐性を示さず、その課題を解決することができないと認められるところ、このような態様においても、課題を解決することができると理解することができるような説明や、実施例などの具体的な裏付けを本件明細書に見いだせないし、そのような記載がなくても課題を解決することができるといえる技術常識もない。
したがって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。

(2) 本件訂正発明1についての判断

本件訂正発明が解決しようとする課題は、「塗膜としたときに切削油または潤滑油に対する耐性が改善された粉体塗料組成物を提供すること」であると認められる。
また、本件特許の願書に添付した明細書には、本件訂正発明の実施例が24個記載されており、かつ、その塗膜評価の結果が記載されている(【0135】?【0140】)。そして、これらの記載によれば、実施例がいずれもエポキシ樹脂を含まない比較例1および2の粉体塗料組成物に比べ、各種の切削油に対する良好な耐性を示していることが確認できるから、実施例はいずれも「塗膜としたときに切削油または潤滑油に対する耐性が改善された粉体塗料組成物を提供すること」(本件訂正発明が解決しようとする課題を解決すること)ができるものであると認められる。

また、上記第3のとおり、本件訂正発明1は、ポリエステル樹脂(A)の水酸基価について「20?150mgKOH/g」に特定されているから、当該水酸基価が小さい態様を含まないものであり、
また、イソシアネート化合物(B)のイソシアネート基の含量について「組成物中の前記イソシアネート化合物(B)の量は、前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量を100質量%としたとき、10?40質量%であり」と特定されているから、当該含量が十分でない態様を含まないものであり、
また、エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量について「200?3000g/eqであり」と特定されているから、当該含量が十分でない態様を含まないものであり、
また、「組成物中のヒドロキシ基に対する、組成物中のイソシアネート基およびブロックドイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、0.5?1.5である」と特定されているから、NCO/OH比が適切でない態様を含まないものであり、
また、前記ポリエステル樹脂(A)の酸価について、「0?10mgKOH/gであり」と特定されているから、ポリエステル樹脂(A)がカルボキシ基等の酸基を有する場合を実質的に含まないものである。
そうすると、本件訂正発明は、発明の詳細な説明の記載により、その課題を解決することができると認識できる範囲のものであると認められる。

なお、特許異議申立人は、令和2年7月6日提出の意見書(5頁下から3行?6頁1行)において、「しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明では、エポキシ樹脂の有無による実施例と比較例との対比しかないため、公知の効果しか確認されておらず、訂正発明1,3?16が従来技術に解決できない課題を解決できると当業者が認識できるか判別することができない。」などと主張するが、上記(1)に説示したとおり、そもそも、特許請求の範囲の記載が、いわゆるサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そして、上述のとおり、本件訂正発明が解決しようとする課題は、「塗膜としたときに切削油または潤滑油に対する耐性が改善された粉体塗料組成物を提供すること」であると認められるのであって、特許異議申立人のいう「従来技術に解決できない課題」(その具体的な内容が不明であるが、いずれにしても)ではないし、「公知の効果しか確認」されていないことに基づいて判断すべきものでもないから、特許異議申立人の主張は、さらに検討するまでもなく採用できない。
そして、本件訂正発明が、その課題を解決することができると認識できる範囲のものであることは上述のとおりである。

(3) 本件訂正発明3?16についての判断

本件訂正発明3?16は、いずれも、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定した発明であるが、上記(2)のとおり、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明の記載により、その課題を解決することができると認識できる範囲のものであると認められるものである。
そうすると、さらに検討するまでもなく、本件訂正発明3?16も、本件訂正発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明の記載により、その課題を解決することができると認識できる範囲のものであると認められる。

(4) 取消理由2についての小括

以上のとおりであるから、本件訂正発明1、3?16は、いずれも、特許法第36条第6項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められないので、本件特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるとはいえない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立人が申し立てた取消理由

特許異議申立人が申し立てた取消理由は、以下の取消理由3?5である。また、取消理由3は、刊行物として上記甲1?3、6及び以下の甲4、5、7、8を引用するものである。
なお、本件特許の本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?17に係る発明を「本件特許発明1」などといい、まとめて「本件特許発明」ともいう。

<取消理由>
取消理由3
本件特許の特許請求の範囲の請求項1?17に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由4
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由5
本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第4項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

<刊行物>
(甲1?3、6は省略。)
甲4:特開平10-1639号公報(特許異議申立人が提出した甲第4号証)
甲5:特開平10-88034号公報(特許異議申立人が提出した甲第5号証)
甲7:日本パウダーコーティング協同組合監修「粉体塗装技術要覧 第4版」、18?21及び46?59頁、株式会社塗料報知新聞社、2013年11月30日発行(特許異議申立人が提出した甲第7号証)
甲8:河合宏紀監修「最新・工業塗装ハンドブック」、472?477頁、株式会社テクノシステム、2008年2月29日第1刷発行(特許異議申立人が提出した甲第8号証)


2 当審の判断
(1) 取消理由3(進歩性)について
ア 取消理由3の概要
特許異議申立人が主張する取消理由3の概要は、要するに、まず本件特許発明1の発明特定事項をA?Fに分節するとともに、甲1?3には、それぞれ、A?D及びFを備える発明(ヒドロキシ基含有ポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート基またはブロックドイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(B)と、エポキシ樹脂(C)とを含み、前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量に対する前記エポキシ樹脂(C)の量が、8.3質量%以上26.7質量%以下である粉体塗料組成物。)が記載されており、また、E(切削油または潤滑油を用いる機械を塗装するために用いられる)は、甲6、7によれば、周知であり、また、効果(耐切削油性)も、甲6、8によれば周知であるから、本件特許発明1は、甲1?3の記載と、甲6、7に記載された周知技術と、甲6、8に記載された周知技術との組み合わせに対して進歩性を有しないというものであり、また、これが認められるものであることを前提として、本件特許発明1を直接又は間接的に引用する、請求項3?16に係る発明も進歩性を有しないというものである。
なお、甲4、5は、独立請求項である請求項2及び請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3?15、17に係る発明について引用されたものであるが、本件訂正によりこれらの発明は全て削除されている。

イ 取消理由3の検討及び判断

上記第2のとおり、本件訂正が認められたので、上記第3のとおり、本件訂正発明1は、特許異議申立人のいう発明特定事項A?F(以下、単に「構成A」などという。)に加えて、
「前記ポリエステル樹脂(A)の水酸基価は20?150mgKOH/g、酸価は0?10mgKOH/gであり、
前記イソシアネート化合物(B)は、多官能イソシアネート化合物であり、
組成物中の前記イソシアネート化合物(B)の量は、前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量を100質量%としたとき、10?40質量%であり、
前記エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量は、200?3000g/eqであり、
組成物中のヒドロキシ基に対する、組成物中のイソシアネート基およびブロックドイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、0.5?1.5である」
という構成を備えるものである。
そして、上記第5 1で説示したとおり、甲1?3、6のいずれにも、「ポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート基またはブロックドイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(B)と、エポキシ樹脂(C)とを含む粉体塗料組成物。」において、構成E(相違点1に係る構成)及び上記構成(相違点4?7に係る構成)を同時に備えるものとすることについて、記載も示唆も無い。
また、甲4,5、7、8にも、構成E及び上記構成を同時に備えるものとすることについて、記載も示唆も無い。
そして、本件訂正発明1は、構成E及び上記構成に加え、相違点に係る構成(すなわち、相違点1?7に係る構成)を同時に備えるものとしたことにより、各種の切削油に対する良好な耐性や、耐切削油性評価後の光沢保持率が良好である(【0139】、【0140】)などの所定の効果を奏するものである。

そうすると、本件訂正発明1は、当業者が甲1?8に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

また、本件訂正発明3?16は、いずれも、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定した発明であるから、さらに検討するまでもなく、本件訂正発明3?16も、本件訂正発明1と同様の理由により、当業者が甲1?8に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(2)取消理由4(サポート要件)について
ア 取消理由4の概要

本件特許発明は、その実施例が水性切削油を用いるもののみであるので、油性である切削油や潤滑油を含めた全ての切削油又は潤滑油で効果を奏することが確認されていない。
また、実施例において「ブラソカット4000ストロング」については実施例と比較例の間で差異が認められないので、全ての水溶性切削油に対して耐切削油性の効果を奏するわけではない。
したがって、発明の詳細な説明は、本件特許発明がその課題を解決できると当業者が認識できるように記載されているとは言えない。

イ 取消理由4の検討及び判断

上記第5 2(1)で説示したとおり、本件訂正発明が解決しようとする課題は、「塗膜としたときに切削油または潤滑油に対する耐性が改善された粉体塗料組成物を提供すること」であり、上記第5 2(2)で説示したとおり、本件訂正発明は、発明の詳細な説明の記載により、その課題を解決することができると認識できる範囲のものであると認められる。
そして、特許異議申立人は、当技術分野において、水性切削油を用いる場合に耐性が改善されたとしても、油性である切削油や潤滑油を含めた全ての切削油又は潤滑油で耐性が改善されるとはいえないことを示す証拠を提出していないし、そのようなことが技術常識であるとも認められない。
そうすると、その実施例が水性切削油を用いるもののみであっても、油性である切削油や潤滑油を含めた全ての切削油又は潤滑油でその課題を解決することができると解することが合理的であると認められる。

また、実施例1?24において「ブラソカット4000ストロング」に対する耐切削油性は、2?5であるのに対し、比較例1?2では耐切削油性が1?2であるから、実施例の方が比較例よりも優れていると認められる。

以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は、いずれも採用できず、したがって、取消理由4は、採用できない。

(3)取消理由5(実施可能要件)について
ア 取消理由5の概要

本件特許発明は、油性である切削油や油性である潤滑油を含めた、すべての切削油又は潤滑油で、加水分解に対する体制の発明の効果を奏するわけではなく、また、全ての水溶性切削油に対して耐切削油性の効果を奏するわけではないから、発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明1が水性ではない切削油や潤滑油を用いる機械を塗装する場合まで、発明の課題を解決できると当業者が認識できるように記載されていない。

イ 取消理由5の検討及び判断

特許法36条4項1号は、明細書の発明の詳細な説明の記載は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定めるところ、この規定にいう「実施」とは、物の発明においては、その物を作ることができ、かつ、その物を使用できることである。また、明細書の記載が実施可能要件を満たすといえるためには、明細書にその物を生産する方法及び使用する方法についての具体的な記載が必要であるが、そのような記載がなくても、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を作ることができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。また、「使用できる」といえるためには、特許発明に係る物について、例えば発明が目的とする作用効果等を奏する態様で用いることができることを要するというべきである。

そして、本件訂正発明は物の発明であり、発明の詳細な説明には、本件訂正発明の粉体塗料組成物を製造しその評価をした実施例が24例も記載されているなど、その物を作ることができ、使用でき、かつ、所定の作用効果を奏することが確認されている。
これに対し、特許異議申立人の主張は、要するに、本件訂正発明がその課題を解決できると当業者が認識できるように記載されていないと主張するものであるから、いわゆるサポート要件違反と混同している内容のものであって、実施可能要件違反を主張する内容を含んでいない。
したがって、取消理由5は、採用できない。

第7 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1、3?16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、3?16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項2、17は訂正により削除されたので、本件特許の請求項2、17に対する特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ基含有ポリエステル樹脂(A)と、
イソシアネート基またはブロックドイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(B)と、
エポキシ樹脂(C)と
を含み、
前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量に対する前記エポキシ樹脂(C)の量が、8.3質量%以上26.7質量%以下であり、
切削油または潤滑油を用いる機械を塗装するために用いられる粉体塗料組成物であって、
前記ポリエステル樹脂(A)の水酸基価は20?150mgKOH/g、酸価は0?10mgKOH/gであり、
前記イソシアネート化合物(B)は、多官能イソシアネート化合物であり、
組成物中の前記イソシアネート化合物(B)の量は、前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量を100質量%としたとき、10?40質量%であり、
前記エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量は、200?3000g/eqであり、
組成物中のヒドロキシ基に対する、組成物中のイソシアネート基およびブロックドイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、0.5?1.5である、粉体塗料組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の粉体塗料組成物であって、
前記イソシアネート化合物(B)が、脂環構造を含む粉体塗料組成物。
【請求項4】
請求項1または3に記載の粉体塗料組成物であって、
前記イソシアネート化合物(B)が、イソホロンジイソシアネートの3量体構造を有する化合物を含む粉体塗料組成物。
【請求項5】
請求項1、3または4に記載の粉体塗料組成物であって、
前記エポキシ樹脂(C)が、ヒドロキシ基を有する粉体塗料組成物。
【請求項6】
請求項1および3?5のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
前記エポキシ樹脂(C)が、下記一般式(EP)で表されるエポキシ樹脂を含む粉体塗料組成物。
【化1】

一般式(EP)において、複数のRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、nは1以上の整数である。
【請求項7】
請求項1および3?6のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
組成物中のヒドロキシ基に対する、組成物中のイソシアネート基およびブロックドイソシアネート基の当量比が、0.7?1.3である粉体塗料組成物。
【請求項8】
請求項1および3?7のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量に対する前記エポキシ樹脂(C)の量が、13.5質量%以上である粉体塗料組成物。
【請求項9】
請求項1および3?8のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
さらに顔料(D)を含む粉体塗料組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の粉体塗料組成物であって、
前記ポリエステル樹脂(A)、前記イソシアネート化合物(B)および前記エポキシ樹脂(C)の合計量を100質量部としたときの、前記顔料(D)の量が、70?150質量部である粉体塗料組成物。
【請求項11】
請求項1および3?10のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
当該粉体塗料組成物を180℃で20分間焼き付けて形成した塗膜を、周波数1.0Hz、温度40?200℃の範囲で粘弾性測定したときの損失正接の最大値tanδ_(max)が0.8?1.5である粉体塗料組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の粉体塗料組成物であって、
前記tanδ_(max)を示す温度をT_(g)℃としたとき、T_(g)-20℃における損失正接tanδ_(Tg-20℃)が、0.1tanδ_(max)以上である粉体塗料組成物。
【請求項13】
請求項1および3?12のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
安息角が30?40°である粉体塗料組成物。
【請求項14】
請求項1および3?13のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物であって、
粉体粒子のメディアン径が10?70μmである粉体塗料組成物。
【請求項15】
請求項1および3?14のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物により形成された塗膜。
【請求項16】
請求項1に記載の粉体塗料組成物により形成された塗膜を備える、切削油または潤滑油を用いる機械。
【請求項17】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-10-13 
出願番号 特願2018-88127(P2018-88127)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C09D)
P 1 651・ 537- YAA (C09D)
P 1 651・ 121- YAA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小久保 敦規  
特許庁審判長 天野 斉
特許庁審判官 蔵野 雅昭
日比野 隆治
登録日 2019-05-24 
登録番号 特許第6528068号(P6528068)
権利者 ナトコ株式会社
発明の名称 切削油または潤滑油を用いる機械を塗装するために用いられる粉体塗料組成物、当該粉体塗料組成物により形成された塗膜、および、当該塗膜を備えた機械  
代理人 速水 進治  
代理人 速水 進治  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ