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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
管理番号 1370007
異議申立番号 異議2019-701070  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-02-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-27 
確定日 2020-11-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6539425号発明「架橋性エラストマー組成物、成型品、シール材、該シール材を含むプラズマ処理装置及び半導体製造装置、並びに、成型品の硬度低下剤、成型品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6539425号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、8、9について訂正することを認める。 特許第6539425号の請求項1-9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯及び証拠方法
1 手続の経緯
特許第6539425号(請求項の数9。以下、「本件特許」という。)は、平成28年11月19日(優先権主張:平成27年11月30日)を国際出願日とする特許出願(特願2017-553867号)の一部を、平成31年4月12日に新たな出願とした特許出願(特願2019-076659号)に係るものであって、令和1年6月14日に特許権の設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は、令和1年7月3日である。)。
その後、令和1年12月27日に、本件特許の全請求項(請求項1?9)に係る特許に対し、竹原尚彦(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は以下のとおりである。

令和1年12月27日 特許異議申立書
令和2年 3月24日付け 取消理由通知書
同年 5月25日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 7月13日 通知書(訂正請求があった旨の通知)
同年 8月12日 意見書(申立人)

2 証拠方法
申立人が異議申立書に添付した証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証:特開2006-206874号公報
甲第2号証:特開平01-193349号公報
甲第3号証:特開2004-250520号公報
甲第4号証:特開2008-195947号公報
甲第5号証:特開2010-235906号公報
(以下、「甲第1号証」?「甲第5号証」を、「甲1」?「甲5」という。)


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和2年5月25日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?9について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、



とあるのを、



に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8に、



とあるのを、



に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に、



とあるのを、



に訂正する。

(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0016】に、



とあるのを、



に訂正する。

(5)訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0076】に
「〔架橋性エラストマー成分を変えた場合の硬度変化の評価〕
《実施例32、33、比較例8》
架橋性エラストマーとして、パーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合の硬度変化を評価した。各原料の配合は表7に示すとおりで、パーフロエラストマー(A)は《実施例24?29》で用いた製品と同様で、その他の原料は《実施例1?10》と同様である。次に、実施例1?10と同様の手順で、シール材を製造し、耐プラズマ性の評価を行った。また、硬度については、上記〔フッ素オリゴマー(a)の添加量と硬度の関係〕と同様の手順で行った。評価結果も表7に示す。」
とあるのを、
「〔架橋性エラストマー成分を変えた場合の硬度変化の評価〕
《実施例32、33、比較例8》
架橋性エラストマーとして、パーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合の硬度変化を評価した。各原料の配合は表7に示すとおりで、パーフロエラストマー(A)は《実施例24?29》で用いた製品と同様で、その他の原料は《実施例1?10》と同様である。次に、実施例1?10と同様の手順で、シール材を製造し、耐プラズマ性の評価を行った。また、硬度については、上記〔フッ素オリゴマー(a)の添加量と硬度の関係〕と同様の手順で行った。」
と訂正する。

(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0077】の【表7】を、



とあるのを、



と訂正する。

(7)訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0078】に
「表7に示すように、架橋性エラストマーとしてパーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合でも、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下できることが明らかとなった。なお、パーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合、フッ素オリゴマー(a)を添加しても耐プラズマ性はほぼ同じであった。これは、パーフルオロエラストマー(A)が耐プラズマ性に特に優れている材料であるため、耐プラズマ性が変化しなかったと考えられる。」
とあるのを、
「架橋性エラストマーとしてパーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合でも、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下できることが明らかとなった。なお、パーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合、フッ素オリゴマー(a)を添加しても耐プラズマ性はほぼ同じであった。これは、パーフルオロエラストマー(A)が耐プラズマ性に特に優れている材料であるため、耐プラズマ性が変化しなかったと考えられる。」
と訂正する。

(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0079】に
「《実施例34、比較例9》
次に、架橋性エラストマーとして、エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)以外の、架橋性エラストマーを用いた場合の硬度変化を評価した。各原料の配合は表8に示すとおりで、架橋性エラストマーとして用いたエチレンプロピレンゴム(EPDM、LUNXESS社製 Keltan 8340A)以外の原料は、《実施例1?10》と同様である。次に、実施例1?10と同様の手順で、シール材を製造した。また、硬度については、上記〔フッ素オリゴマー(a)の添加量と硬度の関係〕と同様の手順で行った。評価結果も表に示す。」
とあるのを、
「《実施例34、比較例9》
次に、架橋性エラストマーとして、エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)以外の、架橋性エラストマーを用いた場合の硬度変化を評価した。各原料の配合は表8に示すとおりで、架橋性エラストマーとして用いたエチレンプロピレンゴム(EPDM、LUNXESS社製 Keltan 8340A)以外の原料は、《実施例1?10》と同様である。次に、実施例1?10と同様の手順で、シール材を製造した。また、硬度については、上記〔フッ素オリゴマー(a)の添加量と硬度の関係〕と同様の手順で行った。」
と訂正する。

(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0080】の【表8】を、



とあるのを、



と訂正する。

(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0081】を
「表8に示すように、エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)以外の架橋性エラストマーを用いた場合でも、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下できることが明らかとなった。」
とあるのを、
「エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)以外の架橋性エラストマーを用いた場合でも、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下できることが明らかとなった。」
と訂正する。

(11)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1について、請求項2?7はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
よって、訂正前の請求項1?7に対応する訂正後の請求項1?7は、一群の請求項である。
したがって、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求がなされたものである。

(12)願書に添付した明細書の訂正に係る請求項について
訂正事項4?10は、願書に添付した明細書の訂正を含むものであるところ、本件訂正は、該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行われたものである。
したがって、願書に添付した明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-7〕、8、9について行われたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1?3について
訂正事項1?3は、それぞれ、訂正前の請求項1,8,9に記載された式(7)において、繰り返し単位を意味する「( )」があるものの、繰り返し単位数が存在せず、化学構造式として正しくないことが技術的に明らかである不明瞭な記載に対して、その繰り返し単位数としての下付の「n」を追加するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項1?3は、それぞれ、訂正前の請求項1,8,9に記載された式(7)において、もともと記載されていた繰り返し単位「( )」の繰り返し数を追加して、化学構造式の記載を明瞭にするものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(2)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項1?3において請求項1,8,9を訂正したことと同様に、願書に添付した明細書の段落【0016】を訂正するものである。してみると、この訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項4は、訂正事項1?3における請求項1,8,9の訂正と同様に、願書に添付した明細書の該当段落の記載を訂正したものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)訂正事項5?7について
訂正事項5?7は、訂正前の願書に添付した明細書の段落【0078】の「表7に示すように、架橋性エラストマーとしてパーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合でも、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下できることが明らかとなった。」という記載と【表7】の硬度の数値が矛盾し、その内容が不明瞭であったものを、矛盾を解消し、明瞭とするものである。
具体的には、訂正事項6に係る訂正により、【表7】中の硬度数値を削除し、それに伴い訂正事項5,7に係る訂正により、それぞれ、段落【0076】における「評価結果も表7に示す。」との記載、段落【0078】における「表7に示すように、」との記載を削除し、願書に添付した明細書の記載を整合させるものである。してみると、これらの訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると認められる。
そして、願書に添付した明細書には以下の記載がある。下線は当審が付した。
「【0018】
基本骨格に水素を含むフッ素オリゴマーとしては、例えば、3M社製のノベック等が知られている。しかしながら、後述する実施例及び比較例に示すとおり、基本骨格に水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を架橋性エラストマーに添加した場合には、成型品の硬度を下げるとともに、架橋性エラストマーの種類によっては、成型品の耐プラズマ性を向上することができる。また、耐プラズマ性が優れている架橋性エラストマーに水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を添加した場合も成型品の硬度を下げることができ、架橋性エラストマーが元々有している耐プラズマ性を損なうことはない。つまり、架橋性エラストマーを架橋した成型品の硬度を低下するとともに、耐プラズマ性を向上または維持することができる。一方、基本骨格に水素を含むフッ素オリゴマーを添加した場合には、成型品の耐プラズマ性を向上させることはできない。したがって、基本骨格に水素を含まないフッ素オリゴマー(a)のほうが好ましい。」
「【0024】
フッ素オリゴマー(a)をエラストマー(B)に加えることで、エラストマー(B)から得られた成型品の硬度を低下するとともに、更に、耐プラズマ性を向上することもできる。したがって、耐プラズマ性が求められる成型品の架橋性エラストマー成分としては、エラストマー(B)のみでもよい。一方、耐プラズマ性能に加え、耐薬品性能及び/又は耐熱性能が求められる場合は、架橋性エラストマー成分として、未架橋のパーフルオロエラストマー(A)のみを用いてもよい。又は、未架橋のパーフルオロエラストマー(A)と未架橋のエラストマー(B)とを混合してもよい。」
そうすると、願書に添付した明細書には、一般に、架橋性エラストマーにフッ素オリゴマー(a)を添加することで成型品の硬度を低下できること、さらに、耐プラズマ性、耐薬品性、耐熱性の求めに応じて架橋性エラストマーとして、エラストマー(B)やパーフルオロエラストマー(A)を用いることができ、エラストマー(B)のみだけでなく、パーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合でも成型品の硬度を低下できることが記載されているといえ、表7に限らず、パーフルオロエラストマー(A)にフッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下できることが記載されているといえるから、訂正事項5?7は、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(4)訂正事項8?10について
訂正事項8?10は、訂正前の願書に添付した明細書の段落【0081】の「表8に示すように、エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)以外の架橋性エラストマーを用いた場合でも、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下できることが明らかとなった。」という記載と【表8】の硬度の数値が矛盾し、その内容が不明瞭であったものを、矛盾を解消し、明瞭とするものである。
具体的には、訂正事項9に係る訂正により、【表8】中の硬度数値を削除し、それに伴い訂正事項8,10に係る訂正により、それぞれ、段落【0079】における「評価結果も表に示す。」との記載、段落【0081】における「表8に示すように、」との記載を削除し、願書に添付した明細書の記載を整合させるものである。してみると、これらの訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると認められる。
そして、願書に添付した明細書には以下の記載がある。下線は当審が付した。
「【0018】
基本骨格に水素を含むフッ素オリゴマーとしては、例えば、3M社製のノベック等が知られている。しかしながら、後述する実施例及び比較例に示すとおり、基本骨格に水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を架橋性エラストマーに添加した場合には、成型品の硬度を下げるとともに、架橋性エラストマーの種類によっては、成型品の耐プラズマ性を向上することができる。また、耐プラズマ性が優れている架橋性エラストマーに水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を添加した場合も成型品の硬度を下げることができ、架橋性エラストマーが元々有している耐プラズマ性を損なうことはない。つまり、架橋性エラストマーを架橋した成型品の硬度を低下するとともに、耐プラズマ性を向上または維持することができる。一方、基本骨格に水素を含むフッ素オリゴマーを添加した場合には、成型品の耐プラズマ性を向上させることはできない。したがって、基本骨格に水素を含まないフッ素オリゴマー(a)のほうが好ましい。」
そうすると、願書に添付した明細書には、一般に、架橋性エラストマーにフッ素オリゴマー(a)を添加することで成型品の硬度を低下できることが記載されているといえ、表8に限らず、エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)以外の架橋性エラストマーにフッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下できることが記載されているといえるから、訂正事項8?10は、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。


第3 訂正後の本件発明
上記第2で述べたように、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された請求項1?9に係る発明(以下、「本件訂正発明1」?「本件訂正発明9」といい、これらをまとめて「本件訂正発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?9に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである(以下、本件訂正後の明細書を「本件明細書」という。)。
「【請求項1】
水素を含まないフッ素オリゴマー(a)、及び、架橋性エラストマー、
を少なくとも含み、
前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)は、
分子量が3830?8200であり、
下記式(1)乃至(8)で表される基本骨格を含むフッ素オリゴマーから選択され、

前記架橋性エラストマーが、
ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン系共重合体、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体、テトラフロロエチレン/プロピレン系共重合体、これらの共重合体にエチレンまたはパーフロロアルキルビニルエーテルを共重合させたもの、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体とテトラフロロエチレン/エチレン交互共重合体またはポリビニリデンフロライドとのブロック共重合体、シリコーンゴムから選ばれる少なくとも1種のエラストマー(B)、及び、
パーフルオロオレフィンと、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル及びその混合物からなる群より選択されたパーフルオロビニルエーテルと、硬化部位モノマーとの共重合単位を含有するパーフルオロエラストマー(A)、
を含み、
前記架橋性エラストマーに対する前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の割合が、0.1?30重量%である、
架橋性エラストマー組成物。
【請求項2】
前記架橋性エラストマーの合計重量を100とした時、前記パーフルオロエラストマー(A)の割合が99.5以下である、
請求項1に記載の架橋性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記架橋性エラストマーに対する前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の割合が1?15重量%である、
請求項1に記載の架橋性エラストマー組成物。
【請求項4】
請求項1?3の何れか一項に記載の架橋性エラストマー組成物を架橋して得られる成型品。
【請求項5】
請求項4に記載の成型品の形状がシール状であるシール材。
【請求項6】
請求項5に記載のシール材を含むプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項5に記載のシール材を含む半導体製造装置。
【請求項8】
水素を含まないフッ素オリゴマー(a)、及び、架橋性エラストマーを少なくとも含む架橋性エラストマー組成物を架橋する工程を含み、
前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)は、
分子量が3830?8200であり、
下記式(1)乃至(8)で表される基本骨格を含むフッ素オリゴマーから選択され、

前記架橋性エラストマーが、
ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン系共重合体、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体、テトラフロロエチレン/プロピレン系共重合体、これらの共重合体にエチレンまたはパーフロロアルキルビニルエーテルを共重合させたもの、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体とテトラフロロエチレン/エチレン交互共重合体またはポリビニリデンフロライドとのブロック共重合体、シリコーンゴムから選ばれる少なくとも1種のエラストマー(B)、及び、
パーフルオロオレフィンと、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル及びその混合物からなる群より選択されたパーフルオロビニルエーテルと、硬化部位モノマーとの共重合単位を含有するパーフルオロエラストマー(A)、
を含み、
前記架橋性エラストマーに対する前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の割合が、0.1?30重量%である、
成型品の製造方法。
【請求項9】
ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン系共重合体、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体、テトラフロロエチレン/プロピレン系共重合体、これらの共重合体にエチレンまたはパーフロロアルキルビニルエーテルを共重合させたもの、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体とテトラフロロエチレン/エチレン交互共重合体またはポリビニリデンフロライドとのブロック共重合体、シリコーンゴムから選ばれる少なくとも1種のエラストマー(B)、及び、
パーフルオロオレフィンと、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル及びその混合物からなる群より選択されたパーフルオロビニルエーテルと、硬化部位モノマーとの共重合単位を含有するパーフルオロエラストマー(A)、
を含む架橋性エラストマーを架橋して得られる成型品の硬度低下および耐プラズマ性向上
のための、
分子量が3830?8200であり、下記式(1)乃至(8)で表される基本骨格を含む、
水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の使用。




第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)取消理由1
本件訂正前の請求項1?9の記載は、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項に規定する要件を満たしておらず、それらの請求項に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(2)取消理由2
本件訂正前の請求項1?9の記載は、下記の点で、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同法同条同項に規定する要件を満たしておらず、それらの請求項に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

本件訂正前の請求項1,8,9の「式(7)」で表される化学構造式は、「水素フッ素オリゴマー(a)」として適切でない。

2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書で申立てた取消理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)申立理由1
本件訂正前の請求項1?9に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2?5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、これらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由2
本件訂正前の請求項1?9の記載は、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項に規定する要件を満たしておらず、それらの請求項に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由3
本件訂正前の請求項1?9の記載は、下記の点で、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同法同条同項に規定する要件を満たしておらず、それらの請求項に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

表7、表8のデータは、フッ素オリゴマーを添加していない組成物よりもフッ素オリゴマーを添加した組成物の方が硬度が高くなっており、フッ素オリゴマーを添加することによって硬度が低下するとの効果を発現していない。
式(1)?(8)に示された化学構造式には、基本骨格にエーテル結合を含まないものが記載されている。

第5 当審の判断
当審は、当審が通知した取消理由1及び2、並びに、特許異議申立人が申し立てた申立理由1?3によっては、いずれも、本件訂正発明1?9に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
なお、取消理由1と申立理由2は、いずれも特許法第36条第6項第1号に適合するものではないというものであるから、併せて検討する。

1 取消理由について
(1)取消理由1について
ア 特許法第36条第6項第1号について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。そこで、この点について、以下に検討する。

イ 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、成型品の一例であるシール材はプラズマ処理装置や半導体製造装置に装着した時に、弾性変形することで装置の密閉性を高めることができる。特許文献3に記載されている架橋物は、耐プラズマ性、耐薬品性に優れ、かつ耐熱性や機械的強度を兼備するシール材を提供することができるが、硬度が比較的高い。そのため、耐プラズマ性等の性能を有し、より硬度が低く柔軟性があるシール材等の成型品が望まれているが、現在のところ、そのような成型品を形成するための材料は知られていない。
【0007】
本願は、上記問題を解決する為になされたものであり、鋭意研究を行ったところ、水素を含まないフッ素オリゴマー(以下、単に「フッ素オリゴマー」と記載することがある。)(a)を架橋性エラストマーに加えると、架橋性エラストマーを架橋して得られる成型品の硬度を低くできること、を新たに見出した。
【0008】
すなわち、本願の目的は、成型品の硬度を低くする機能を有するフッ素オリゴマーを含む架橋性エラストマー組成物、架橋性エラストマー組成物を架橋して得られる成型品、シール材、該シール材を含むプラズマ処理装置及び半導体製造装置、並びに、成型品の硬度低下剤、成型品の製造方法を提供することである。
・・・
【発明の効果】
【0011】
本願で開示する架橋性エラストマー組成物は、水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を添加しなかった組成物と比較して、成型品の硬度を低下することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1?10及び比較例1のシール材の耐プラズマ性能の評価結果を表すグラフである。
【図2】図2は、MDRで算出したTc90を基に決定した、実施例1?10及び比較例1のシール材の成型時間のグラフである。
【図3】図3は、図面代用写真で、実施例5の試験片の透過電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例5、11?19及び比較例1のシール材の耐プラズマ性能の評価結果を表すグラフである。
【図5】図5は、実施例24?29及び比較例3のシール材の耐プラズマ性能の評価結果を表すグラフである。
【図6】図6は、図面代用写真で、実施例27の試験片の透過電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、シール材の硬度の変化率を示すグラフである。」

(イ)「【0018】
基本骨格に水素を含むフッ素オリゴマーとしては、例えば、3M社製のノベック等が知られている。しかしながら、後述する実施例及び比較例に示すとおり、基本骨格に水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を架橋性エラストマーに添加した場合には、成型品の硬度を下げるとともに、架橋性エラストマーの種類によっては、成型品の耐プラズマ性を向上することができる。また、耐プラズマ性が優れている架橋性エラストマーに水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を添加した場合も成型品の硬度を下げることができ、架橋性エラストマーが元々有している耐プラズマ性を損なうことはない。つまり、架橋性エラストマーを架橋した成型品の硬度を低下するとともに、耐プラズマ性を向上または維持することができる。一方、基本骨格に水素を含むフッ素オリゴマーを添加した場合には、成型品の耐プラズマ性を向上させることはできない。したがって、基本骨格に水素を含まないフッ素オリゴマー(a)のほうが好ましい。
・・・
【0024】
フッ素オリゴマー(a)をエラストマー(B)に加えることで、エラストマー(B)から得られた成型品の硬度を低下するとともに、更に、耐プラズマ性を向上することもできる。したがって、耐プラズマ性が求められる成型品の架橋性エラストマー成分としては、エラストマー(B)のみでもよい。一方、耐プラズマ性能に加え、耐薬品性能及び/又は耐熱性能が求められる場合は、架橋性エラストマー成分として、未架橋のパーフルオロエラストマー(A)のみを用いてもよい。又は、未架橋のパーフルオロエラストマー(A)と未架橋のエラストマー(B)とを混合してもよい。」

(ウ)「【0063】
〔エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)を混合した場合の影響〕
《実施例24?29、比較例3》
次に、架橋性エラストマーとして、エラストマー(B)と、耐薬品性能を付与することができるパーフルオロエラストマー(A)を混合した実験を行った。
原料は、実施例1?10と同様の原料に加え、
・パーフルオロエラストマー(A):ダイキン工業社製、ダイエルパーフロGA-15
を用いた。各原料の配合は表4のとおりで、実験手順は、上記<混練組成物>、<成型温度、成型時間>、<成型、2次架橋(Oリングの製造)>と同様に行い、耐プラズマ性の評価も、上記「(1)耐プラズマ性評価」と同様の手順で行った。
【0064】
【表4】

・・・
【0067】
〔水素を含むフッ素オリゴマーを添加した時の耐プラズマ性能〕
《比較例1、4?7》
次に、水素を含まないフッ素オリゴマー(a)に代え、水素を含むフッ素オリゴマーを添加した場合の影響について実験を行った。実験は、下記表5に示す配合及び原料とした以外は、上記《実施例1?10、比較例1》と同様の手順で耐プラズマ性能を調べた。各比較例の重量減少率(重量%)についても、表5に示す。
【0068】
【表5】

【0069】
上記表5に示すように、水素を含むフッ素オリゴマーを添加した場合には、硬度の低下は見られるものの、耐プラズマ性能の向上は見られず、フッ素オリゴマーを添加しなかった場合とほぼ同様の結果となった。以上の結果より、フッ素オリゴマーが水素を含む場合、エラストマー(B)をプラズマから保護する機能を発揮しないことが明らかとなった。したがって、成型品の硬度を低下するとの観点に加え、耐プラズマ性を向上するとの観点からは、水素を含むフッ素オリゴマーより、水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の方が好ましいことを確認した。
【0070】
〔フッ素オリゴマー(a)の添加量と硬度の関係〕
実施例1?10で作製したシール材の硬度は、成型体(Oリング)をBAREISS製マイクロゴム硬度計(型式:HPEII shoreAM/M)に設置して測定した。なお、比較のため、パーフルオロエラストマー(A)の添加量を変えたシール材も複数作製し、同様の手順で硬度を調べた。
【0071】
図7は、シール材の硬度の変化率を示すグラフである。なお、グラフはエラストマー(B)のみの硬度を100とし、そして、パーフルオロエラストマー(A)を添加した各シール材と同じ添加量のフッ素オリゴマー(a)を添加した時の硬度を、エラストマー(B)のみの硬度(100)に対する比で表している。図7から明らかなように、エラストマー(B)に対してパーフルオロエラストマー(A)を添加した場合、エラストマー(B)の硬度は殆ど変化しなかった。一方、エラストマー(B)にフッ素オリゴマー(a)を添加した場合、エラストマー(B)の硬度は低くなった。
【0072】
〔充填材を変えた場合の耐プラズマ性の評価〕
《実施例30、31》
図7に示したように、架橋性エラストマーにフッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を下げられることを確認した。次に、実施例1?10において充填材として用いたカンカーブに換え、耐プラズマ性能に優れるSiCを用いた。原料には、以下の製品を用いた。
・フッ素オリゴマー(a):デュポン社製、Krytox 143AD、分子量7480
・パーフルオロエラストマー(A):ダイキン工業社製、ダイエルパーフロGA-15
・エラストマー(B):ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン株式会社、フッ素ゴム P959
・共架橋剤:日本化成社製、TAIC
・架橋剤:日本油脂社製、25B
・充填材:SiC(ナノメーカーズ社製)、かさ密度:0.6g/cm^(3)
なお、充填材のかさ密度は、100mlメスシリンダー(内径28mm)に5gの粉末を投入し、2cmの高さから20回タッピングした後の目盛りをよみ、その体積から算出した。
【0073】
各原料を表6に示す配合とし、実施例1?10の<成型、2次架橋(Oリングの製造)>において、160℃で15分成型した以外は、実施例1?10と同様の手順で、シール材を製造し、耐プラズマ性の評価を行った。評価結果も表6に示す。
【0074】
【表6】

【0075】
表6に示すように、充填材としてSiCを添加することで、耐プラズマ性が著しく向上した。フッ素オリゴマー(a)を添加することで成型品の硬度が下げられる。したがって、従来と同じ硬度の成型品を製造する場合、硬度の低下分を所期の特性を持つ充填材を添加できるので、充填材の種類や添加量等、原料の配合の自由度が大きくなることが明らかとなった。
【0076】
〔架橋性エラストマー成分を変えた場合の硬度変化の評価〕
《実施例32、33、比較例8》
架橋性エラストマーとして、パーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合の硬度変化を評価した。各原料の配合は表7に示すとおりで、パーフロエラストマー(A)は《実施例24?29》で用いた製品と同様で、その他の原料は《実施例1?10》と同様である。次に、実施例1?10と同様の手順で、シール材を製造し、耐プラズマ性の評価を行った。また、硬度については、上記〔フッ素オリゴマー(a)の添加量と硬度の関係〕と同様の手順で行った。
【0077】
【表7】

【0078】
架橋性エラストマーとしてパーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合でも、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下できることが明らかとなった。なお、パーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合、フッ素オリゴマー(a)を添加しても耐プラズマ性はほぼ同じであった。これは、パーフルオロエラストマー(A)が耐プラズマ性に特に優れている材料であるため、耐プラズマ性が変化しなかったと考えられる。
【0079】
《実施例34、比較例9》
次に、架橋性エラストマーとして、エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)以外の、架橋性エラストマーを用いた場合の硬度変化を評価した。各原料の配合は表8に示すとおりで、架橋性エラストマーとして用いたエチレンプロピレンゴム(EPDM、LUNXESS社製 Keltan 8340A)以外の原料は、《実施例1?10》と同様である。次に、実施例1?10と同様の手順で、シール材を製造した。また、硬度については、上記〔フッ素オリゴマー(a)の添加量と硬度の関係〕と同様の手順で行った。
【0080】
【表8】

【0081】
エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)以外の架橋性エラストマーを用いた場合でも、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下できることが明らかとなった。
【0082】
上記実施例1?34、及び比較例1?9の結果より、水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を架橋性エラストマーに添加することで、得られた成型品の硬度を低くできることが明らかとなった。更に、架橋性エラストマーの種類によるが、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の耐プラズマ性を向上することができた。したがって、架橋性エラストマーにフッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下することができ、成型品の柔軟性が高くできる。また、充填材の添加等、組成物・成型品の原料の配合の自由度が大きくできることが明らかとなった。」

(エ)「【図5】



(オ)「【図7】



ウ 本件訂正発明の課題について
本件明細書の段落【0006】には、「耐プラズマ性等の性能を有し、より硬度が低く柔軟性があるシール材等の成型品が望まれているが、現在のところ、そのような成型品を形成するための材料は知られていない。」と記載され、同【0007】には、「本願は、上記問題を解決する為になされたものであ」る旨記載されている。そして、同【0008】には、「本願の目的は、成型品の硬度を低くする機能を有するフッ素オリゴマーを含む架橋性エラストマー組成物、架橋性エラストマー組成物を架橋して得られる成型品、シール材、該シール材を含むプラズマ処理装置及び半導体製造装置、並びに、成型品の硬度低下剤、成型品の製造方法を提供することである。」と記載されている。また、同【0018】には、「基本骨格に水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を架橋性エラストマーに添加した場合には、成型品の硬度を下げるとともに、架橋性エラストマーの種類によっては、成型品の耐プラズマ性を向上することができる。・・・(中略)・・・つまり、架橋性エラストマーを架橋した成型品の硬度を低下するとともに、耐プラズマ性を向上または維持することができる。」と記載されている(摘記イ(ア)、(イ))。
これらの記載から、本件訂正発明が解決しようとする課題は、「架橋した成型品の硬度を低下するとともに、耐プラズマ性を向上または維持することができる」「架橋性エラストマー組成物、架橋性エラストマー組成物を架橋して得られる成型品、シール材、該シール材を含むプラズマ処理装置及び半導体製造装置、並びに、成型品の硬度低下剤、成型品の製造方法を提供すること」であると解される。

エ 本件訂正発明1について
本件訂正により、【表7】と段落【0078】の記載、【表8】と段落【0081】の記載に矛盾はなくなり、取消理由1における「架橋性エラストマーの種類によって、「水素を含まないフッ素オリゴマー(a)」を添加しても、成型品の硬度が低下せず、むしろ上昇する場合もある」、「架橋性エラストマーとして、パーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合に、「水素を含まないフッ素オリゴマー(a)」を添加すると硬度が上昇することが示されている」という根拠はなくなった。
そして、本件訂正発明1においては、架橋性エラストマーが「エラストマー(B)」及び「パーフルオロエラストマー(A)」を含むことが特定されるところ、本件明細書の段落【0018】,【0024】には(摘記イ(イ))、「基本骨格に水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を架橋性エラストマーに添加した場合には、成型品の硬度を下げるとともに、架橋性エラストマーの種類によっては、成型品の耐プラズマ性を向上することができる。また、耐プラズマ性が優れている架橋性エラストマーに水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を添加した場合も成型品の硬度を下げることができ、架橋性エラストマーが元々有している耐プラズマ性を損なうことはない。」、「フッ素オリゴマー(a)をエラストマー(B)に加えることで、エラストマー(B)から得られた成型品の硬度を低下するとともに、更に、耐プラズマ性を向上することもできる。・・・(中略)・・・耐プラズマ性能に加え、耐薬品性能及び/又は耐熱性能が求められる場合は、架橋性エラストマー成分として、未架橋のパーフルオロエラストマー(A)のみを用いてもよい。又は、未架橋のパーフルオロエラストマー(A)と未架橋のエラストマー(B)とを混合してもよい。」と記載されている。
これらの記載から、フッ素オリゴマー(a)を架橋性エラストマーに添加することで、上記ウの課題である成型品の硬度を下げることができ、架橋性エラストマーの種類によっては、上記ウの課題である耐プラズマ性の向上もでき、耐薬品性能や耐熱性能の付与も行えるものと解される。
そして、本件明細書の実施例の記載を検討すると、架橋性エラストマーが「エラストマー(B)」及び「パーフルオロエラストマー(A)」を含むものである実施例24?29及び実施例30?31について、それらの実施例の評価結果である表4、図5及び表6には、耐プラズマ性の評価(重量減少率)が示されている(摘記イ(ウ)、(エ))。そして、これらの結果から、「エラストマー(B)」及び「パーフルオロエラストマー(A)」を含む架橋性エラストマーに対し、フッ素オリゴマー(a)を加えた場合に、得られた成型品の耐プラズマ性が向上することは、具体的なデータとともに示されている。
さらに、図7は、本件明細書の段落【0071】の記載によれば、架橋性エラストマーとして、エラストマー(B)のみを用い、「水素を含まないフッ素オリゴマー(a)」を添加した場合の成型品(シール材)の硬度の変化率を示したグラフある(摘記イ(ウ)、(オ))。このグラフから、エラストマー(B)に対して該フッ素オリゴマー(a)を添加することにより、成型品の硬度が低下することが読み取れる。
そうすると、本件明細書の実施例には、パーフルオロエラストマー(A)とエラストマー(B)とを混合した架橋性エラストマー成分に、フッ素オリゴマー(a)に加えることで、得られる成型品の硬度を低下することは記載されていないものの、上述のとおり、架橋性エラストマーの種類は、硬度への影響ではなく、耐プラズマ性、耐薬品性、耐熱性に影響するものであるから、エラストマー(B)に対してフッ素オリゴマー(a)を添加することにより成型品の硬度が低下することが示されていれば、パーフルオロエラストマー(A)とエラストマー(B)とを混合した架橋性エラストマー成分に、フッ素オリゴマー(a)に加えることで、得られる成型品の硬度が低下することが、本件明細書の記載から理解できるものといえる。
したがって、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
よって、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。

オ 本件訂正発明2?7について
本件訂正発明2?7は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記エで述べたのと同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

カ 本件訂正発明8について
本件訂正発明8は、特定の「架橋性エラストマー組成物」「を架橋する工程を含」む「成型品の製造方法」であり、該「架橋性エラストマー組成物」は、本件特許の請求項1に記載された事項で特定された「架橋性エラストマー組成物」と同一のものである。
そして、上記発明が解決しようとする課題は、上記ウで示したとおりのものであるといえるから、上記エで述べたのと同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

キ 本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、「エラストマー(B)」及び「パーフルオロエラストマー(A)」を含む架橋性エラストマーを架橋して得られる成型品の硬度低下及び耐プラズマ性向上のための、「水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の使用。」である。
そして、上記発明が解決しようとする課題は、上記ウで示したとおりのものであるといえるから、上記エで述べたのと同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

ク 申立人の主張
申立人は、「本件特許発明では、本件発明1の構成をすべて充足する実施例の開示が極めて少ない。すなわち、本件明細書には、本件発明1に相当する実施例は、表4(図5)と表6のみである。・・・具体的には、(1)各成分は、それぞれ1種類の物質のみしか実験を行っていない。(2)フッ素オリゴマーの分子量は、7480しか開示がない。(3)フッ素オリゴマーの含有量は、1?10質量%しか開示がない。」旨主張している。
しかしながら、上記エに示したとおり、本件明細書の一般的な記載の箇所には、パーフルオロエラストマー(A)とエラストマー(B)とを混合した架橋性エラストマー成分に、フッ素オリゴマー(a)に加えることで、得られる成型品の硬度が低下すること、耐プラズマ性が向上することが理解できるように記載されているし、フッ素オリゴマー(a)の分子量が「3830?8200」以外の場合やフッ素オリゴマー(a)の含有量が「0.1?30重量%」以外の場合には課題を解決しない例や、その技術的根拠を申立人は示していないので、申立人の主張のみでは、サポート要件を満足しない理由にはならない。
また、申立人は、「効果についても、限られた結果しか開示されていない。」旨も主張しているが、上記エに示したとおり、耐プラズマ性については、図5をみれば、もともと耐プラズマ性が優れている組成物にフッ素オリゴマー(a)を配合することにより、さらに耐プラズマ性が向上することが見てとれるし、成型品の硬度低下については、図7をみれば、エラストマー(B)に対して該フッ素オリゴマー(a)を添加することにより、成型品の硬度が低下することが読み取れ、本件明細書の段落【0018】,【0024】の記載を併せてみてみれば、パーフルオロエラストマー(A)とエラストマー(B)とを混合した架橋性エラストマー成分に、フッ素オリゴマー(a)に加えることで、得られる成型品の硬度が低下することが理解できるものといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。

ケ まとめ
以上のとおりであるから、取消理由1は解消したということができる。

(2)取消理由2について
ア 判断
取消理由2は、本件訂正前の請求項1,8,9には、「水素フッ素オリゴマー(a)」について、その分子量が「3830?8200」である旨規定されているが、同項には、「水素フッ素オリゴマー(a)」の基本骨格として、「式(1)乃至(8)で表される」化学構造式が記載されているところ、このうち、式(7)で示される化合物は、その分子量が266であり、上記「3830?8200」なる範囲に包含されないものであるから、同項の「式(7)」で表される化学構造式は、「水素フッ素オリゴマー(a)」として適切でない、というものである。
本件訂正前の請求項1,8,9の「式(7)」は、本件訂正により、繰り返し単位数が明瞭となり、上記「3830?8200」なる範囲との関係も適切となった。

イ まとめ
以上のとおりであるから、取消理由2は解消したことは明らかである。

2 取消理由通知において採用しなかった申立人がした申立理由について
申立理由2は、取消理由1と同様に特許法第36条第6項第1号に適合するものではないというものであり、その理由及び結論は上記1(1)で述べたとおりであるから、ここでは、申立理由1及び3について述べる。

(1)申立理由1について
ア 甲号証の記載事項
(ア)甲1の記載事項について
甲1には以下の記載がある。

(1a)「【請求項1】
パーフルオロエラストマー(A)と、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のエラストマー(B)とが、質量比で、0.5対99.5?80対20で混合されていることを特徴とするエラストマー組成物。
【請求項2】
パーフルオロエラストマー(A)とエラストマー(B)との混合比が、重量比で5対95?60対40であることを特徴とする請求項1記載のエラストマー組成物。
【請求項3】
パーフルオロエラストマー(A)及びエラストマー(B)が有機過酸化物により架橋され、かつ、有機過酸化物及び共架橋剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のエラストマー組成物。
【請求項4】
パーフルオロエラストマー(A)とエラストマー(B)とが相溶しているか、一方に、他方が平均粒径10μm以下の凝集体となって分散した海島構造を形成していることを特徴とする請求項1?3の何れか1項に記載のエラストマー組成物。
【請求項5】
請求項1?4記載の何れか1項に記載のエラストマー組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
【請求項6】
パーフルオロエラストマー(A)とエラストマー(B)とが相溶しているか、一方に、他方が平均粒径10μm以下の凝集体となって分散していることを特徴とする請求項5に記載の成形体。」

(1b)「【技術分野】
【0001】
本発明は耐プラズマ性、耐薬品性、耐熱性等が要求される部位に使用される成形体、並びに前記成形体を成形するためのエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ雰囲気や薬品雰囲気等の環境下で使用される装置に用いるシール材の成形体には、様々な化学種に対して高い安定性が求められており、主にフッ素系エラストマーからなる成形体が使用される(例えば、特許文献1参照)。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、耐プラズマ性、耐薬品性に優れ、かつ耐熱性や十分な機械的強度を兼備する成形体、並びに前記成形体を成形するためのエラストマー組成物を提供することを目的とする。」

(1c)「【0011】
本発明におけるパーフルオロエラストマー(A)は特に限定されないが、パーフルオロオレフィンと、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、及びその混合物からなる群より選択されたパーフルオロビニルエーテルと、硬化部位モノマーとの共重合単位を含有するパーフルオロエラストマーであることが好ましく、更には有機過酸化物で架橋し得るものが望ましい。」

(1d)「【0013】
フッ素ゴムは特に限定されないが、成形体の機械的強度の観点から有機過酸化物により架橋可能なフッ素ゴムが望ましい。例えばビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン系共重合体、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体、テトラフロロエチレン/プロピレン系共重合体等が挙げられる。また、これらの共重合体にエチレンやパーフロロアルキルビニルエーテル等を更に共重合させたものでもよい。また、フッ素ゴム(ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体)とフッ素樹脂(テトラフロロエチレン/エチレン交互共重合体及びポリビニリデンフロライド)とのブロック共重合体であるフッ素系熱可塑性エラストマー等も使用可能である。また、複数のフッ素ゴムを混合することも可能である。」

(1e)「【0018】
上記のパーフルオロエラストマー(A)と、エラストマー(B)との混合比は、質量比で0.5対99.5?80対20、好ましくは5対95?60対40である。この範囲を逸脱すると、所期の目的が達成されない。」

(1f)「【0021】
また、上記のエラストマー組成物を架橋することにより本発明の成形体が得られる。架橋方法としては通常の過酸化物架橋による成形方法に従うことができる。一般的には、エラストマー組成物を所望形状の金型に所定量充填し、加熱プレスする。必要に応じて、オーブンで150℃?250℃、1時間?32時間の二次架橋を施してもよい。成形体の形状は、例えばシート状、棒状、リング状、各種の複雑なブロック形状等、その用途に応じて任意の形状が挙げられ、特に限定されない。」

(1g)「【0023】
上記の特性を有することから、本発明の成形体は高温、真空といった厳しい環境下での使用に好適であり、例えばプラズマや薬品等に曝される半導体製造装置のシール材として有用である。尚、プラズマガスの種類は不問であり、例えばプラズマ処理装置ではO_(2)、CF_(4)、O_(2)+CF_(4)、H_(2)、CHF_(3)、CH_(3)F、CH_(2)F_(2)、Cl_(2)、C_(2)F_(6)、BCl_(3)、NF_(3)、NH_(3)等が一般的であるが、本発明の成形体は何れのプラズマに対しても優れた耐性を有する。従って本発明は、特定のプラズマに対するものではない。」

(イ)甲2の記載事項について
甲2には以下の記載がある。

(2a)「特許請求の範囲
1.過酸化物架橋性基を有するテトラフルオロエチレン-パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)共重合体、平均分子量約200?25000のパーフルオロポリエーテル化合物またはその末端ヨウ素および/または臭素基置換体および有機過酸化物を含有してなる含フッ素エラストマー組成物。」

(2b)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、含フッ素エラストマー組成物に関する。更に詳しくは、低温特性を改善せしめたパーフルオロタイプ含フッ素エラストマー組成物に関する。」(第1頁左欄第11行?第15行)

(2c)「〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、従来技術にみられるこれらの問題点を克服し、重合性の点で問題がなくしかも耐低温性にすぐれたパーフルオロタイプ含フッ素エラストマーを組成物の形で提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第17行?右上欄第1行)

(2d)「テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(メチルビニルエーテル)によって代表されるパーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)との共重合は、一般に共重合体中前者が約90?30モル%、また後者が約90?30モル%を占めるような割合で行われ、共重合反応自体は容易かつ安定的に行われるので重合性の点では問題がみられない。」(第2頁右上欄第10行?第16行)

(2e)「かかる過酸化物架橋性基含有共重合体に添加されるパーフルオロポリエーテル化合物としては、例えば次のようなものが用いられる。
RfO(CFXCF_(2)O)_(3?50)CF_(2)X [I]
Rf:パーフルオロ低級アルキル基
X:CF_(3)基またはF原子」(第2頁左下欄第14行?第19行)

(2f)「このパーフルオロポリエーテルは、ダイキン製品デムナムとして市販されている。」(第3頁左上欄第15行?第17行)

(2g)「本発明に係る組成物にあっては、これらのパーフルオロポリエーテル化合物類がテトラフルオロエチレン-パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)共重合体100重量部に対し約5?100重量部、好ましくは約5?50重量部の割合で用いられる。」(第3頁左下欄第1行?第5行)

(2h)「〔発明の効果〕
テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)とは重合性にすぐれており、得られた過酸化物架橋性基含有共重合体にパーフルオロポリエーテル化合物またはその末端ヨウ素および/または臭素基置換体を添加剤として添加することにより、この共重合体よりなる含フッ素エラストマーの低温特性が著しく改善され、広い低温温度範囲での弾性特性や耐薬品性などが要求される用途、例えばロケット、燃料タンク、石油化学プラントなどに用いられるオイルシール、パッキン、ガスケットなどのシール材の有効な成形材料が提供される。」(第3頁右下欄第10行?第4頁左上欄第2行)

(2i)「〔実施例〕
次に、実施例について本発明の効果を説明する。
実施例
含フッ素エラストマーI:
含ヨウ素臭素化合物(1-ヨード-2ブロモテトラフルオロエタン)の存在下にテトラフルオロエチレンとパーフルオロ(メチルビニルエーテル)とを共重合させた共重合体(共重合モル比55/45、ヨウ素および臭素含有率0.5重量%)
含フッ素エラストマーII,III:ダイキン工業製品ダイエルパーフロGA-50,GA-55
末端ヨウ素基含有テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルコキシ低級アルキルビニルエーテル共重合体):カーボンブラック、加硫剤配合品
補強剤:MTカーボンブラック
加硫剤:2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルペルオキシ)ヘキサン(濃度60重量%)
加硫助剤:トリアリルイソシアヌレート(濃度60重量%)
受酸剤:酸化鉛
添加剤I:へキサフルオロプロペンオキシド重合体
平均分子量約7300
粘度408Cst(40℃)

添加剤II:テトラフルオロエチレンオキシド重合体
平均分子量約18000
粘度400Cst(40℃)

添加剤III:下記方法により合成した重合体
平均分子量約5700
粘度280Cst(40℃)、m+n=31

米国特許第3,600,315号明細書記載の方法により得られた上記式の両末端COF基パーフルオロポリエーテル560gを、3000mlのR-113および1000mlの水と室温下に8時間攪拌して加水分解し、分離された下層にフッ化ナトリウム20gを加え、約10分間攪拌後ロ過する。ロ液にモレキュラシーブ3Aを入れ、一夜放置後ロ別し、ロ液に200mlのエタノールに溶解させた水酸化カリウム16.8gを加え、1時間攪拌する。反応液を活性炭で脱色し、活性炭をロ別した後R-113およびエタノールを減圧下で留去し、残渣の粉末を更に0.lmmHgの減圧下で乾燥する。この粉末を100mlのエタノールで3回抽出し、ロ過する。ロ過物に500mlの脱水ベンゼンを加えた後、ベンゼンを減圧下に留去する。残渣の粉末を100℃で減圧乾燥し、この粉末に700mlの脱水R-113、300mlの脱水アセトニトリルおよび25mlのオキシ塩化リンを加え、24時間還流する。反応生成物をロ過し、ロ液からR-113などを減圧下に留去して、油状の両末端COCl基パーフルオロポリエーテル420gを得た。この油状物57g、酸化銀5.0gおよびフレオンE-3(デュポン社製品)100mlを混合し、5.5時間還流した後5gの臭素を加え、更に2時間還流する。それをロ過し、ロ液を5%亜硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した後、硫酸マグネシウムで脱水し、減圧蒸留して油状の両末端Br基パーフルオロポリエーテル(Br含有量2.67%;計算値2.81%)47gを得た。
添加剤IV:2,2,3,3-テトラフルオロオキセタン重合体
平均分子量約7000
粘度200Cst(40℃)

添加剤V:下記方法により合成した重合体
平均分子量約4800
粘度190Cst(40℃)

オートクレーブ中に、BrCF_(2)COF 177g(1.0モル)、フッ化セシウム76gおよびテトラグライム300mlを仕込み、室温下で15時間激しく攪拌する。これを、-30℃の冷却槽中に浸漬し、ヘキサフルオロプロペンオキシド4980gを24時間かけて少量宛分添する。添加終了後、-25℃で24時間攪拌を続け、油状物を得る。この油状物中から、減圧下100℃迄の留出物を除去し、一方の末端基がBr基であるパーフルオロポリエーテルが茶褐色の油状物として取得される。この油状物466.5gについて、添加剤IIIの場合と同様に末端COCl基化反応を行ない(ただし、100mlのエタノールに溶解させた水酸化カリウム7.0gが用いられている)、他方の末端基がCOCl基(赤外線吸収スペクトル:1800cm^(-1))である油状のパーフルオロポリエーテル403gを得た。この油状物47.4g、酸化銀2.7gおよびフレオンE-3(デュポン社製品)100mlを混合し、5.5時間還流した後2.7gのヨウ素を加え、以下添加剤IIIの場合と同様に処理し、一方の末端基がBr基で、他方の末端基がI基である油状のパーフルオロポリエーテル33gを得た。
(放射化分析値)I 1.7%、Br 2.7%
(元素分析値) 計算値C:20.76%,F:65.75%
実測値C:20.65%,F:64.22%
以上の各成分を用いての含フッ素エラストマー組成物の調製は、次のようにして行われた。
冷却水を流した2本ロールの間隙に含フッ素エラストマーを投入し、エラストマーがロールに巻き付いたことを確認した上で、補強剤に分散させた添加剤を加える。このときのロールの間隙は、補強剤および添加剤が受皿に多量に落下しない程度に狭くしておくことが好ましい。全量の補強剤および添加剤を加えた後、ロールナイフを使用し、分散を高めるための切り返しを行なう。この後、これ以外の各成分を予め混合した状態で加え、更に15分間切り返しを行ない、エラストマー中に各成分を均一に分散させた。
得られた組成物について、常態物性、圧縮永久歪および低温特性を次のようにして測定した。
常態物性:組成物を160℃で10分間プレス加硫した後、175℃で6時間オーブン加硫し、シート状およびOリング状の加硫物を得、これらの加硫物についてJIS K-6301に従って測定
圧縮永久歪:線径3.5mmのP-24 Oリングを25%圧縮(200℃、70時間)して測定
低温特性:TR-試験を行ない、低温貯蔵中の結晶化傾向を読みとるために、TR-10値およびTR-70値を測定
得られた結果は、次の表に示される。なお、No1、No15およびNo17は比較例である。また、No15?18については、離型性(220×120×2mmの金型内に組成物140gを入れ、160℃で10分間プレス加硫したときの加硫シートの離型の容易さ)の試験を行なった。その結果は、添加剤Iを加えたNo16とNo18については離型性が良好であったが、添加剤Iを加えないNo15とNo17では離型性が不良であった。

」(第4頁右上欄第1行?第6頁の表)

(ウ)甲3の記載事項について
甲3には以下の記載がある。

(3a)「【請求項1】
フッ化ビニリデン-パーフルオロ(メチルビニルエーテル)-テトラフルオロエチレン3元共重合体100重量部に、100℃における粘度が500?3000cpsである液状フッ素ゴム10?50重量部を添加してなるフッ素ゴム組成物。
・・・
【請求項7】
架橋物または加硫物が20?50(デュロメータA)の硬さ(JIS K-6262準拠)を示す請求項5または6記載のフッ素ゴム組成物。」

(3b)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素ゴム組成物に関する。さらに詳しくは、低硬度のシール部材の成形材料として好適に用いられるフッ素ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フッ素ゴムは耐熱性、耐薬品性にすぐれた素材として広く用いられているが、その架橋物の硬さ(デュロメータA)の下限値は60程度である。一般的に用いられているゴム材料の硬さの調節法としては、主に補強剤であるカーボンブラックや可塑剤の量のバランスをとる方法が用いられており、低硬度化する場合には、通常パラフィン系、エステル系等の可塑剤を多量に配合する方法がとられているが、フッ素ゴムとの相溶性の良い可塑剤はあまり存在しない。また、フッ素ゴムは、基本的には高温環境下で使用される場合が多く、このような環境に長時間暴露した場合、可塑剤の多くは揮発し、所期の目的を達成し得ない。また、射出成形においてフッ素ゴムを流動長が長くかつ細かい製品に適用した場合、ショートショットが生じ製品を附型できないという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、架橋物または加硫物が硬さ(デュロメータA)50以下であって、加工性や耐圧縮永久歪特性にすぐれているものを与え得るフッ素ゴム組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、フッ化ビニリデン-パーフルオロ(メチルビニルエーテル)-テトラフルオロエチレン3元共重合体またはフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体100重量部に、100℃における粘度が500?3000cpsである液状フッ素ゴム10?50重量部を添加してなるフッ素ゴム組成物によって達成され、このフッ素ゴム組成物にさらに有機過酸化物0.5?5重量部および多官能性不飽和化合物0.5?10重量部を添加することによりあるいはポリオール系加硫剤0.5?10重量部を添加することにより、架橋性または加硫性フッ素ゴム組成物を形成し得る。」

(3c)「【0010】
VdF-FMVE-TFE3元共重合体またはVdF-HEP共重合体に添加される液状フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン-テトラフルオロエチレン3元共重合体、パーフルオロプロペンオキサイド重合体などであって、その粘度(100℃)が約500?3000cps、好ましくは約550?2000cpsのものが、VdF-FMVE-TFE3元共重合体またはVdF-HEP共重合体100重量部当り約10?50重量部、好ましくは約10?30重量部の割合で用いられる。
・・・
【0012】
実際には、液状フッ素ゴムとして、市販品、例えばデュポン社製品バイトンLM、ダイキン製品G101などをそのまま用いることができる。」

(エ)甲4の記載事項について
甲4には以下の記載がある。なお、甲4は、甲3の分割出願である。

(4a)「【請求項1】
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体100重量部に、100℃における粘度が500?3000cpsである液状フッ素ゴム10?50重量部を添加してなるフッ素ゴム組成物。
・・・
【請求項5】
架橋物または加硫物が20?50(デュロメータA)の硬さ(JIS K-6253準拠)を示す請求項3または4記載のフッ素ゴム組成物。
・・・
【請求項7】
シール部材の成形材料として用いられる請求項1、2、3または4記載のフッ素ゴム組成物。」

(4b)「【0001】
本発明は、フッ素ゴム組成物に関する。さらに詳しくは、低硬度のシール部材の成形材料として好適に用いられるフッ素ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フッ素ゴムは耐熱性、耐薬品性にすぐれた素材として広く用いられているが、その架橋物の硬さ(デュロメータA)の下限値は60程度である。一般的に用いられているゴム材料の硬さの調節法としては、主に補強剤であるカーボンブラックや可塑剤の量のバランスをとる方法が用いられており、低硬度化する場合には、通常パラフィン系、エステル系等の可塑剤を多量に配合する方法がとられているが、フッ素ゴムとの相溶性の良い可塑剤はあまり存在しない。また、フッ素ゴムは、基本的には高温環境下で使用される場合が多く、このような環境に長時間暴露した場合、可塑剤の多くは揮発し、所期の目的を達成し得ない。また、射出成形においてフッ素ゴムを流動長が長くかつ細かい製品に適用した場合、ショートショットが生じ製品を附型できないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、架橋物または加硫物が硬さ(デュロメータA)50以下であって、加工性や耐圧縮永久歪特性にすぐれているものを与え得るフッ素ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる本発明の目的は、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体100重量部に、100℃における粘度が500?3000cpsである液状フッ素ゴム10?50重量部を添加してな
るフッ素ゴム組成物によって達成され、このフッ素ゴム組成物にさらに有機過酸化物0.5?5重量部および多官能性不飽和化合物0.5?10重量部を添加することによりあるいはポリオール系加硫剤0.5?10重量部を添加することにより、架橋性または加硫性フッ素ゴム組成物を形成し得る。」

(4c)「【0010】
VdF-HFP共重合体に添加される液状フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン-テトラフルオロエチレン3元共重合体、パーフルオロプロペンオキサイド重合体などであって、その粘度(100℃)が約500?3000cps、好ましくは約550?2000cpsのものが、VdF-HFP共重合体100重量部当り約10?50重量部、好ましくは約10?30重量部の割合で用いられる。
・・・
【0012】
実際には、液状フッ素ゴムとして、市販品、例えばデュポン社製品バイトンLM、ダイキン製品G101などをそのまま用いることができる。」

(オ)甲5の記載事項について
甲5には以下の記載がある。

(5a)「【請求項1】
フッ素ゴムからなるゴム組成物において、前記フッ素ゴムの架橋密度が1.0×10^(-3)mole/cc以下であることを特徴とするフッ素ゴム組成物。」

(5b)「【0034】
本発明において、硬度調整や充填剤の増量を目的として可塑剤を添加してもよく、これにはバイトンLM(デュポンエラストマー株式会社製商品名)やダイエルG-101(ダイキン工業株式会社製商品名)のような液状フッ素ゴム、FS-1245(ダウコーニング(Dow Corning)社製商品名:米国)のようなフロロシリコーンオイル、DBS(ジブチルセバケート、株式会社大八化学工業所製商品名)のような高分子エステル、クライトックスGPL(デュポン(DuPont)社製商品名:米国)のようなフッ素オイルが例示され1?15重量部の範囲で添加される。」

イ 甲1に記載された発明
甲1には、耐プラズマ性、耐薬品性、耐熱性等が要求される部位に使用される成形体、並びに前記成形体を成形するためのエラストマー組成物が記載されており(記載事項(1b))、請求項1を引用する請求項3には、以下の発明が記載されていると認められる。
「パーフルオロエラストマー(A)と、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のエラストマー(B)とが、質量比で、0.5対99.5?80対20で混合され、パーフルオロエラストマー(A)及びエラストマー(B)が有機過酸化物により架橋され、かつ、有機過酸化物及び共架橋剤を含むことを特徴とするエラストマー組成物。」(以下、「甲1発明」という。)

ウ 対比・判断
(ア)本件訂正発明1について
a 対比
甲1発明の「パーフルオロエラストマー(A)」は、有機過酸化物により架橋されるものであるから、架橋性エラストマーであり、本件訂正発明1の「パーフルオロオレフィンと、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル及びその混合物からなる群より選択されたパーフルオロビニルエーテルと、硬化部位モノマーとの共重合単位を含有するパーフルオロエラストマー(A)」と、「パーフルオロエラストマー」である限りにおいて一致する。
甲1発明の「フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のエラストマー(B)」は、有機過酸化物により架橋されるものであるから、架橋性エラストマーであり、本件訂正発明1の「ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン系共重合体、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体、テトラフロロエチレン/プロピレン系共重合体、これらの共重合体にエチレンまたはパーフロロアルキルビニルエーテルを共重合させたもの、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体とテトラフロロエチレン/エチレン交互共重合体またはポリビニリデンフロライドとのブロック共重合体、シリコーンゴムから選ばれる少なくとも1種のエラストマー(B)」に相当する。
甲1発明の「エラストマー組成物」は、有機過酸化物により架橋されるものであるから、本件訂正発明1の「架橋性エラストマー組成物」に相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明とは、
「架橋性エラストマーを少なくとも含み、前記架橋性エラストマーが、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン系共重合体、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体、テトラフロロエチレン/プロピレン系共重合体、これらの共重合体にエチレンまたはパーフロロアルキルビニルエーテルを共重合させたもの、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体とテトラフロロエチレン/エチレン交互共重合体またはポリビニリデンフロライドとのブロック共重合体、シリコーンゴムから選ばれる少なくとも1種のエラストマー(B)、及び、パーフルオロエラストマー(A)、を含む、架橋性エラストマー組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件訂正発明1は、架橋性エラストマー組成物について、「水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を少なくとも含み、前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)は、分子量が3830?8200であり、下記式(1)乃至(8)で表される基本骨格を含むフッ素オリゴマーから選択され、

前記架橋性エラストマーに対する前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の割合が、0.1?30重量%である」のに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点

(相違点2)
本件訂正発明1は、パーフルオロエラストマー(A)について、「パーフルオロオレフィンと、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル及びその混合物からなる群より選択されたパーフルオロビニルエーテルと、硬化部位モノマーとの共重合単位を含有する」のに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点

b 判断
上記相違点1について検討する。
甲1には、耐プラズマ性、耐薬品性に優れ、かつ耐熱性や十分な機械的強度を兼備する成形体、並びに前記成形体を成形するためのエラストマー組成物が記載され(記載事項(1b))、該成形体は高温、真空といった厳しい環境下での使用に好適であり、例えばプラズマや薬品等に曝される半導体製造装置のシール材として有用であることが記載されているものの(記載事項(1g))、硬度に関する記載はなく、甲1発明において、硬度を低くしようとする課題はない。
また、甲2には、過酸化物架橋性基を有するテトラフルオロエチレン-パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)共重合体、平均分子量約200?25000のパーフルオロポリエーテル化合物またはその末端ヨウ素および/または臭素基置換体および有機過酸化物を含有してなる含フッ素エラストマー組成物が記載され(記載事項(2a))、該含フッ素エラストマー組成物は、過酸化物架橋性基を有するテトラフルオロエチレン-パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)共重合体にパーフルオロポリエーテル化合物またはその末端ヨウ素および/または臭素基置換体を添加剤として添加することにより、低温特性が改善され(ガラス転移温度Tgを低くする)、広い低温温度範囲での弾性特性や耐薬品性などが要求される用途、例えばロケット、燃料タンク、石油化学プラントなどに用いられるオイルシール、パッキン、ガスケットなどのシール材の有効であることが記載されている(記載事項(2a)、(2h))。
しかしながら、甲2は、低温特性を改善するために「パーフルオロポリエーテル化合物」を配合しているのであって、実施例において結果的に硬度が低くなっているものの(記載事項(2i))、硬度を低下させるために「パーフルオロポリエーテル化合物」を配合する積極的な動機付けは存在しない。加えて、甲1と甲2は、「シール材」として有用である点は共通しているが、前者は耐熱性に着目するような高温下で用いられるものであり、後者は低温下で用いられるものであるから、両者を組み合わせるほど技術分野が共通するとはいえない。
そうすると、いくら甲2の記載をみても、甲1発明において、相違点1に関する構成を導くことはできない。

さらに、甲3?甲5には、フッ素ゴム組成物に関し、液状フッ素ゴムを添加することによって硬度調整することが記載されているものの(記載事項(3a)?(5b))、本件訂正発明1における「式(1)乃至(8)で表される基本骨格を含むフッ素オリゴマー」は記載されていない。
そうすると、いくら甲3?甲5の記載をみても、甲1発明において、相違点1に関する構成を導くことはできない。

したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明及び甲2?甲5に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明及び甲3?甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

c 申立人の主張
申立人は、「甲2発明は、パーフルオロタイプ含フッ素エラストマー組成物であって、シール材に有効な成形材料であり、甲1発明と技術分野や用途が共通であり、耐薬品性などを効果としていることから、甲1発明と組み合わせる動機付けが存在する。」旨主張している。
しかしながら、上記bで述べたとおり、甲1と甲2は、両者を組み合わせるほど技術分野が共通するとはいえず、さらに、甲2には、硬度を低下させるために「パーフルオロポリエーテル化合物」を配合する積極的な動機付けも存在しない。
また、申立人は、「甲1発明の架橋性フッ素ゴム組成物に甲第3号証?甲第5号証に記載された各種液状フッ素ゴムを添加することを検討して、硬度の低下や他の特性を阻害しないように、添加する液状フッ素ゴムの分子量や粘度を適宜最適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。」旨主張している。
しかしながら、上記bで述べたとおり、甲3?甲5には、本件訂正発明1における「式(1)乃至(8)で表される基本骨格を含むフッ素オリゴマー」がそもそも記載されておらず、甲3?甲5のみの記載から、甲1発明において、相違点1に関する構成を導くことはできない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

d 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明及び甲2?甲5に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明及び甲3?甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(イ)本件訂正発明2?7について
本件訂正発明2?7は、本件訂正発明1を直接的又は間接的に引用する発明であるから、上記(ア)で述べた理由と同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(ウ)本件訂正発明8について
本件訂正発明8は、特定の「架橋性エラストマー組成物」「を架橋する工程を含」む「成型品の製造方法」であり、該「架橋性エラストマー組成物」は、本件訂正発明1の「架橋性エラストマー組成物」と同一のものである。
そして、上記「成型品の製造方法」は、上記(ア)で述べたのと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(エ)本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、「エラストマー(B)」及び「パーフルオロエラストマー(A)」を含む架橋性エラストマーを架橋して得られる成型品の硬度低下及び耐プラズマ性向上のための、「水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の使用」である。
そして、上記「水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の使用」は、上記(ア)で述べたのと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1によっては、本件訂正発明1?9に係る特許を取り消すことはできない。

(2)申立理由3について
ア 申立人の主張
申立人は、「表7、表8のデータは、フッ素オリゴマーを添加していない組成物よりもフッ素オリゴマーを添加した組成物の方が硬度が高くなっており、フッ素オリゴマーを添加することによって硬度が低下するとの効果を発現していない。すなわち、本件発明1の効果の記載と整合していない、発明が不明確である。」旨主張している。
しかしながら、本件訂正により、表7、表8のデータが訂正され、「フッ素オリゴマーを添加することによって硬度が低下するとの効果を発現していない。」という主張の根拠となる記載がなくなった。
また、申立人は、「本件明細書の段落0017には、フッ素オリゴマー(a)の化学構造について、「上記式(1)?(8)に示すように、フッ素オリゴマー(a)は基本骨格にエーテル結合を含み、また、後述する架橋性エラストマーの架橋工程において架橋しない。一方、特許文献3の未架橋のパーフルオロエラストマー(A)は側鎖にエーテル結合を含んでおり、基本骨格が異なっている。」と記載されている。しかしながら、式(1)?(8)に示された化学構造式には、基本骨格にエーテル結合を含まないものが記載されている。そうすると、本件発明1のフッ素オリゴマー(a)に該当するかどうかを明確に判断することが困難であり、発明が不明確である。」旨も主張している。
しかしながら、本件訂正発明1,8,9における「式(1)乃至(8)で表される基本骨格を含むフッ素オリゴマー」は、本件明細書の段落【0017】の記載と矛盾はあるものの、式(1)乃至(8)の化学構造自体は明確であり、発明が不明確であるとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

イ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由3によっては、本件訂正発明1?9を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人が申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、請求項1?9に係る本件特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?9に係る本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
架橋性エラストマー組成物、成型品、シール材、該シール材を含むプラズマ処理装置及び半導体製造装置、並びに、成型品の硬度低下剤、成型品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、成型品を製造するための架橋性エラストマー組成物、該架橋性エラストマー組成物を架橋して得られる成型品、シール材、該シール材を含むプラズマ処理装置及び半導体製造装置、並びに、成型品の硬度低下剤、成型品の製造方法に関する。
【0002】
プラズマ雰囲気や薬品雰囲気等の環境下で使用される装置に用いるシール材等の成型品には、様々な化学種に対して高い安定性が求められており、主にフッ素系エラストマーからなる成型品が使用される(特許文献1参照)。これらの装置では、近年効率化等の理由から高濃度で化学反応性の高いガス、薬液等が使用されるようになっており、これまで広く用いられているフッ素系エラストマーからなる成型品では、劣化が激しく使用できないという問題が起こっている。
【0003】
フッ素系エラストマーの中でもパーフルオロエラストマーは特に優れた耐プラズマ性、耐薬品性を示すことから、上記の厳しい環境下で使用される装置に多用されている(特許文献2参照)。しかしながら、パーフルオロエラストマーは熱間強度が低く、高温処理中にO-リング成型体が切れる等の不具合が発生するおそれがある。
【0004】
上記問題点を解決するために、特定の未架橋のパーフルオロエラストマー(A)と、前記未架橋のパーフルオロエラストマー(A)と相溶しない特定の未架橋のエラストマー(B)とを一定の比率で混合することが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-119468号公報
【特許文献2】特開2000-044930号公報
【特許文献3】特許第4778782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、成型品の一例であるシール材はプラズマ処理装置や半導体製造装置に装着した時に、弾性変形することで装置の密閉性を高めることができる。特許文献3に記載されている架橋物は、耐プラズマ性、耐薬品性に優れ、かつ耐熱性や機械的強度を兼備するシール材を提供することができるが、硬度が比較的高い。そのため、耐プラズマ性等の性能を有し、より硬度が低く柔軟性があるシール材等の成型品が望まれているが、現在のところ、そのような成型品を形成するための材料は知られていない。
【0007】
本願は、上記問題を解決する為になされたものであり、鋭意研究を行ったところ、水素を含まないフッ素オリゴマー(以下、単に「フッ素オリゴマー」と記載することがある。)(a)を架橋性エラストマーに加えると、架橋性エラストマーを架橋して得られる成型品の硬度を低くできること、を新たに見出した。
【0008】
すなわち、本願の目的は、成型品の硬度を低くする機能を有するフッ素オリゴマーを含む架橋性エラストマー組成物、架橋性エラストマー組成物を架橋して得られる成型品、シール材、該シール材を含むプラズマ処理装置及び半導体製造装置、並びに、成型品の硬度低下剤、成型品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は、以下に示す、架橋性エラストマー組成物、成型品、シール材、該シール材を含むプラズマ処理装置及び半導体製造装置、並びに、成型品の硬度低下剤、成型品の製造方法に関する。
【0010】
(1)水素を含まないフッ素オリゴマー(a)、及び、架橋性エラストマー、
を少なくとも含む、
架橋性エラストマー組成物。
(2)前記架橋性エラストマーが、
ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン系共重合体、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体、テトラフロロエチレン/プロピレン系共重合体、これらの共重合体にエチレンまたはパーフロロアルキルビニルエーテルを共重合させたもの、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体とテトラフロロエチレン/エチレン交互共重合体またはポリビニリデンフロライドとのブロック共重合体、シリコーンゴムから選ばれる少なくとも1種のエラストマー(B)、及び/又は、
パーフルオロオレフィンと、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル及びその混合物からなる群より選択されたパーフルオロビニルエーテルと、硬化部位モノマーとの共重合単位を含有するパーフルオロエラストマー(A)、
を少なくとも含む、
上記(1)に記載の架橋性エラストマー組成物。
(3)前記架橋性エラストマーが、前記パーフルオロエラストマー(A)を含み、
前記架橋性エラストマーの合計重量を100とした時、前記パーフルオロエラストマー(A)の割合が99.5以下である、
上記(2)に記載の架橋性エラストマー組成物。
(4)前記架橋性エラストマーが、前記エラストマー(B)及び前記パーフルオロエラストマー(A)のみを含む、
上記(3)に記載の架橋性エラストマー組成物。
(5)前記架橋性エラストマーに対する前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の割合が、0.1?30重量%である、
上記(1)?(4)の何れか一つに記載の架橋性エラストマー組成物。
(6)前記架橋性エラストマーに対する前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の割合が1?15重量%である、
上記(5)に記載の架橋性エラストマー組成物。
(7)上記(1)?(6)の何れか一つに記載の架橋性エラストマー組成物を架橋して得られる成型品。
(8)上記(7)に記載の成型品の形状がシール状であるシール材。
(9)上記(8)に記載のシール材を含むプラズマ処理装置。
(10)上記(8)に記載のシール材を含む半導体製造装置。
(11)水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を有効成分として含む、成型品の硬度低下剤。
(12)水素を含まないフッ素オリゴマー(a)、及び、架橋性エラストマーを少なくとも含む架橋性エラストマー組成物を架橋する工程を含む、
成型品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本願で開示する架橋性エラストマー組成物は、水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を添加しなかった組成物と比較して、成型品の硬度を低下することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1?10及び比較例1のシール材の耐プラズマ性能の評価結果を表すグラフである。
【図2】図2は、MDRで算出したTc90を基に決定した、実施例1?10及び比較例1のシール材の成型時間のグラフである。
【図3】図3は、図面代用写真で、実施例5の試験片の透過電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例5、11?19及び比較例1のシール材の耐プラズマ性能の評価結果を表すグラフである。
【図5】図5は、実施例24?29及び比較例3のシール材の耐プラズマ性能の評価結果を表すグラフである。
【図6】図6は、図面代用写真で、実施例27の試験片の透過電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、シール材の硬度の変化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、架橋性エラストマー組成物、成型品、シール材、該シール材を含むプラズマ処理装置及び半導体製造装置、並びに、成型品の硬度低下剤、成型品の製造方法について詳しく説明する。なお、本明細書において、「架橋性エラストマー組成物」とは、架橋性エラストマーを架橋する前の組成物を意味する(以下、「架橋性エラストマー組成物」は、単に「組成物」と記載することがある。)。また、「架橋性」と「未架橋」とは同義である。「シール材」とは、組成物を混練後、装置等のシールに適した形状にした後、架橋・硬化させたものを意味する。「成型品」とは、シールに適した形状に加え、シール以外の用途に適した形状を含めたものを意味する。
【0014】
成型品・シール材(以下、まとめて「成型品」と記載することもある。)の原料である組成物の実施形態は、フッ素オリゴマー(a)及び架橋性エラストマーを少なくとも含んでいる。
【0015】
フッ素オリゴマー(a)は、C、F、Oの元素から構成されるオリゴマーであって、例えば、以下の基本骨格を含むフッ素オリゴマー(a)が挙げられる。
【0016】
【化1】

【0017】
上記式(1)?(8)で表されるフッ素オリゴマー(a)は、n、mの数により分子量が異なり、分子量が大きくなるほど一般的に粘度及び沸点が高くなる。上記基本骨格を含むフッ素オリゴマー(a)は、合成したものを用いてもよいし、フッ素系溶剤(オイル、グリース)として市販されているものを用いてもよい。市販されているフッ素オリゴマー(a)は、n、mの数により粘性等の特性が異なる様々なグレードの製品が知られている。例えば、デュポン社製のクライトックス(登録商標)シリーズ;ソルベイ社のフォンブリン(登録商標)シリーズ、ガルデン(登録商標)シリーズ;ダイキン社製のデムナムシリーズ;等が挙げられる。なお、上記の製品及び骨格は、単なる例示に過ぎず、水素を含まなければ、その他の骨格、製品であってもよい。また、上記式(1)?(8)に示すように、フッ素オリゴマー(a)は基本骨格にエーテル結合を含み、また、後述する架橋性エラストマーの架橋工程において架橋しない。一方、特許文献3の未架橋のパーフルオロエラストマー(A)は側鎖にエーテル結合を含んでおり、基本骨格が異なっている。また、架橋性エラストマーの架橋工程において、パーフルオロエラストマー(A)自身も架橋する点で異なっている。
【0018】
基本骨格に水素を含むフッ素オリゴマーとしては、例えば、3M社製のノベック等が知られている。しかしながら、後述する実施例及び比較例に示すとおり、基本骨格に水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を架橋性エラストマーに添加した場合には、成型品の硬度を下げるとともに、架橋性エラストマーの種類によっては、成型品の耐プラズマ性を向上することができる。また、耐プラズマ性が優れている架橋性エラストマーに水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を添加した場合も成型品の硬度を下げることができ、架橋性エラストマーが元々有している耐プラズマ性を損なうことはない。つまり、架橋性エラストマーを架橋した成型品の硬度を低下するとともに、耐プラズマ性を向上または維持することができる。一方、基本骨格に水素を含むフッ素オリゴマーを添加した場合には、成型品の耐プラズマ性を向上させることはできない。したがって、基本骨格に水素を含まないフッ素オリゴマー(a)のほうが好ましい。
【0019】
フッ素オリゴマー(a)の分子量は、成型品の硬度が低下し、耐プラズマ性能が得られれば(又は維持)特に制限はない。しかしながら、粘度が低すぎると架橋性エラストマーに練り込みにくく、また、粘度が高いとせん断力が必要である。したがって、混練に好適な範囲となるように、適宜調整すればよい。
【0020】
架橋性エラストマーは、工業用に用いられている未架橋のエラストマーであれば、特に制限はない。例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。例示したゴムは、それぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。例示した架橋性エラストマーは、水密用または気密用等の用途、使用する装置、環境等に応じて適宜選択すればよい。
【0021】
プラズマ処理装置や半導体製造装置等、耐プラズマ性が求められる装置に成型品を使用する場合は、架橋性エラストマーの中でも耐プラズマ性に優れている、パーフルオロエラストマー(A)、及び/又は、フッ素ゴム、シリコーンゴム(以下、フッ素ゴム及びシリコーンゴムをまとめて「エラストマー(B)」と記載することがある。)を使用する、又は架橋性エラストマーの一部として含むことが好ましい。
【0022】
フッ素ゴムとしては、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン系共重合体、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体、テトラフロロエチレン/プロピレン系共重合体、等が挙げられる。また、これらの共重合体にエチレンやパーフロロアルキルビニルエーテルを更に共重合させたものでもよい。また、フッ素ゴム(ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体)とフッ素樹脂(テトラフロロエチレン/エチレン交互共重合体及びポリビニリデンフロライド)とのブロック共重合体であるフッ素系熱可塑性エラストマーも使用可能である。また、これらのフッ素ゴムを混合することも可能である。
【0023】
シリコーンゴムとしては、メチルビニルシリコーンゴム、メチルビニルフェニルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、等が挙げられる。また、これらのシリコーンゴムを混合してもよい。
【0024】
フッ素オリゴマー(a)をエラストマー(B)に加えることで、エラストマー(B)から得られた成型品の硬度を低下するとともに、更に、耐プラズマ性を向上することもできる。したがって、耐プラズマ性が求められる成型品の架橋性エラストマー成分としては、エラストマー(B)のみでもよい。一方、耐プラズマ性能に加え、耐薬品性能及び/又は耐熱性能が求められる場合は、架橋性エラストマー成分として、未架橋のパーフルオロエラストマー(A)のみを用いてもよい。又は、未架橋のパーフルオロエラストマー(A)と未架橋のエラストマー(B)とを混合してもよい。
【0025】
未架橋のパーフルオロエラストマー(A)としては、パーフルオロオレフィンと、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、及びその混合物からなる群より選択されたパーフルオロビニルエーテルと、硬化部位モノマーとの共重合単位を含有するパーフルオロエラストマー、等が挙げられる。
【0026】
硬化部位モノマーとしては、ヨウ素や臭素を含む硬化部位モノマーやシアノ基を含む硬化部位モノマーが挙げられる。ヨウ素や臭素を含む硬化部位モノマーとしては、CF_(2)=CF(CF_(2))_(n)I、CF_(2)=CF(CF_(2))_(n)Br、I(CF_(2))_(n)I等が挙げられる。またシアノ基を含む硬化部位モノマーの例としては、シアノ基含有パーフルオロビニルエーテルが挙げられ、例えば、CF_(2)=CFO(CF_(2))_(n)OCF(CF_(3))CN(n:2?4)、CF_(2)=CFO(CF_(2))_(n)CN(n:2?12)、CF_(2)=CFO[CF_(2)CF(CF_(3))O]_(m)(CF_(2))_(n)CN(n:2、m:1?5)、CF_(2)=CFO[CF_(2)CF(CF_(3))O]_(m)(CF_(2))_(n)CN(n:1?4、m:1?2)、CF_(2)=CFO[CF_(2)CF(CF_(3))O]_(n)CF_(2)CF(CF_(3))CN(n:0?4)等が挙げられる。
【0027】
パーフルオロエラストマー(A)と他の架橋性エラストマー成分を混合する場合、架橋性エラストマーの合計重量を100とした時、パーフルオロエラストマー(A)の割合が99.5以下であることが好ましい。パーフルオロエラストマー(A)以外の架橋性エラストマーにフッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の耐プラズマ性を向上できるので、パーフルオロエラストマー(A)の添加量を少なくしても耐プラズマ性能を発揮できる。架橋性エラストマーとして、エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合も、エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)の合計重量を100とした時、パーフルオロエラストマー(A)の割合が99.5以下とすればよい。ところで、成型品(架橋性エラストマー組成物)には、耐プラズマ性や耐熱性等を向上させるために、充填材を添加することがあるが、一般的に充填材を添加すると、成型品の硬度は高くなる。しかしながら、実施形態に示す成型品(架橋性エラストマー組成物)は、架橋性エラストマーにフッ素オリゴマー(a)を添加することで、フッ素オリゴマー(a)を添加しなかった成型品と比較して、硬度を低くできる。したがって、フッ素オリゴマー(a)を添加することで得られる硬度の低下分については、充填材を添加することもできることから、成型品(架橋性エラストマー組成物)の原料の配合の自由度が大きくなる。
【0028】
なお、フッ素オリゴマー(a)の原料単価は、パーフルオロエラストマー(A)の約1/100程度である。フッ素オリゴマー(a)を架橋性エラストマーに添加することで耐プラズマ性を付与できるので、パーフルオロエラストマー(A)の一部又は全部を他の架橋性エラストマー成分に換えることができ、成型品の原料コストも下げることができる。
【0029】
架橋性エラストマーに対するフッ素オリゴマー(a)の割合は、硬度を低くできれば特に制限はない。また、硬度の低下に加え、得られた成型品の耐プラズマ性を向上させる場合も、耐プラズマ性が向上できる範囲であれば特に制限はない。フッ素オリゴマー(a)の添加量が少なくとなると、硬度が低下せず、耐プラズマ性を向上することができない。したがって、架橋性エラストマーに対するフッ素オリゴマー(a)の割合は、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。一方、フッ素オリゴマー(a)の添加量が多くなると、硬度が低下し、耐プラズマ性能は向上するので、硬度の低下及び耐プラズマ性能との観点からはフッ素オリゴマー(a)の添加量の上限は特にない。ところで、成型品を製造するためには、フッ素オリゴマー(a)と架橋性エラストマーを混練した後に、架橋性エラストマーを架橋して成型する工程が必要である。しかしながら、フッ素オリゴマー(a)の添加量が多くなるほど成型する時間が長くなり、生産効率が悪くなる。したがって、成型品の生産効率との観点からは、架橋性エラストマーに対するフッ素オリゴマー(a)の添加量は、30重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。したがって、架橋性エラストマーに対するフッ素オリゴマー(a)の添加量は、0.1?30重量%が好ましく、1?15重量%がより好ましい。
【0030】
なお、上記の架橋性エラストマーに対するフッ素オリゴマー(a)の割合は、成型品における割合である。組成物においても、架橋性エラストマーに対するフッ素オリゴマー(a)の割合を上記と同様にしてもよいが、組成物をマスターバッチとして用い、成型する前に更に架橋性エラストマー等を加えて混練する場合は、フッ素オリゴマー(a)の割合は、上記範囲以外でもよい。また、組成物には、必要に応じて後述する架橋剤、共架橋剤、充填材等を含んでいてもよいが、架橋剤、共架橋剤、充填材等は、成型品を製造する工程で必要に応じて加えてもよい。
【0031】
架橋性エラストマーの架橋は、加熱、電離放射線等の公知の方法を用いればよい。ところで、特許文献3に記載されているシール材は、未架橋のパーフルオロエラストマー(A)と未架橋のエラストマー(B)を混練後に架橋することで、パーフルオロエラストマー(A)とエラストマー(B)はそれぞれが架橋した高分子となる。一方、実施形態に示す成型品では、架橋性エラストマーは架橋するが、フッ素オリゴマー(a)は架橋せず、微粒子状の凝集体のままである。そのため、実施形態に示す成型品・シール材と特許文献3に記載されているシール材とは、物として異なる。
【0032】
ところで、加熱により架橋性エラストマーを架橋する場合、架橋性エラストマーの種類により異なるものの、150℃前後の温度で加熱することで架橋反応を進行させる。また、必要に応じて、150℃?250℃の温度で2次架橋を行う。その際、上記のとおりフッ素オリゴマー(a)は架橋せず、微粒子状の凝集体として架橋性エラストマーが架橋したエラストマー中に分散するが、フッ素オリゴマー(a)の沸点が低いと、加熱による架橋の際に蒸発する可能性がある。そのため、加熱により架橋反応を進行させる場合、沸点が加熱温度より高いフッ素オリゴマー(a)を用いることが好ましい。フッ素オリゴマー(a)は、一般的に分子量が大きくなるほど沸点も高くなるので、分子量が比較的高いフッ素オリゴマー(a)を用いればよい。
【0033】
一方、加熱によらない電離放射線等の方法により架橋する場合は、加熱により架橋する場合より沸点の低いフッ素オリゴマー(a)を用いることができる。その場合、電離放射線の照射環境の温度より、沸点が高いフッ素オリゴマーを用いればよい。
【0034】
架橋性エラストマーの架橋方法としては、有機過酸化物による架橋が挙げられる。有機過酸化物架橋剤としては、架橋性エラストマー架橋用の公知のものを用いることができ、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、等が挙げられる。
【0035】
共架橋剤としては、架橋性エラストマー架橋用の公知のものを用いることができる。例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリレート、N,N’-m-フェニレンジマレイミド、トリメチロールプロパントリメタクリレート、等が挙げられる。その他、アクリレート系、メタクリレート系モノマー、等も用いることができる。
【0036】
また、成型品の実施形態は、効果を損なわない範囲で、カーボンブラック、炭化ケイ素(SiC)、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、珪酸塩鉱物(例えば、マイカ、タルク等)、硫酸バリウム、及び、有機補強材等の充填材、又は老化防止剤等を含んでもよい。なお、充填材の粒径は、種類により異なるものの10nm?500nmのナノ粒子であり、そのままでは飛散等により取扱が難しい。そのため、充填材を添加する場合は、造粒した充填材を用いてもよい。造粒は、公知の造粒技術を用いて造粒してもよいし、造粒済みの市販品を用いてもよい。造粒した充填材のかさ密度は、0.05?5.0g/cm^(3)程度が好ましい。かさ密度が0.05g/cm^(3)より小さいと、造粒効果が得られ難くなる。一方、かさ密度が5.0g/cm^(3)超えると、架橋性エラストマーに充填材を混練する際に、均一に分散し難くなる。
【0037】
成型品は、先ず、フッ素オリゴマー(a)、架橋性エラストマー、有機過酸化物架橋剤及び共架橋剤を混練して組成物を作製する。なお、フッ素オリゴマー(a)及び架橋性エラストマーのみを含む組成物のマスターバッチを用いる場合は、混練する際に、架橋性エラストマー、有機過酸化物架橋剤及び共架橋剤を適宜添加すればよい。更に、必要に応じて、充填材等を混練してもよい。混練には、オープンロール、ニーダー、バンバリーミキサー、2軸押出し機、等の公知の混練機を用いればよいが、これらに限定されるものではない。得られた組成物は、架橋性エラストマー中に、フッ素オリゴマー(a)が分散した構造となる。なお、架橋性エラストマー成分であるパーフルオロエラストマー(A)は、他の架橋性エラストマー成分と混合せずに、添加量に応じて海島構造となる。したがって、フッ素オリゴマー(a)は海島構造中に分散した構造となる。
【0038】
そして、上記の組成物を架橋することにより成型品が得られる。架橋方法としては通常の過酸化物架橋による成型方法に従うことができる。一般的には、組成物を所望形状の金型に所定量充填し、加熱プレスする。必要に応じて、オーブンで150℃?250℃、1時間?32時間の二次架橋を施してもよい。
【0039】
また、加熱プレスに代え、電離放射線を用いる場合、電離放射線の種類としては、直接または間接に空気を電離する能力を持つ電磁波または粒子線であれば適用可能である。例えば、α線、β線、γ線、重陽子線、陽子線、中性子線、X線、電子線が挙げられるが、これらに限定されない。また、これら放射線を組み合わせて使用しても良いが、特にγ線が好適に使用される。γ線は、透過力が高いため、架橋性エラストマーを均一に架橋することができる。
【0040】
なお、組成物中のフッ素オリゴマー(a)の分散は、架橋後の成型品においてもほぼそのまま維持される。したがって、成型品は、架橋性エラストマーの架橋物中に、原料として添加したフッ素オリゴマー(a)の凝集体が分散する。フッ素オリゴマー(a)は、架橋性エラストマーの架橋物中に、平均粒径が10μm以下となるように分散することが好ましく、2μm以下がより好ましい。平均粒子径は、混練する時間及び混練速度等により調整できる。
【0041】
シール材の形状(以下、「シール状」と記載することがある。)は、例えば、シート状、棒状、リング状、各種の複雑なブロック形状等、その用途に応じて任意の形状が挙げられる。また、成型品の形状は、上記のシール状に加え、容器状、板状、プラズマ処理が必要な物品のホルダー等が挙げられる。例えば、プラズマ処理が必要な物品をチャンバー内に置く際に、当該物品を保持し且つプラズマ処理が必要な部分は露出し、プラズマ処理が不要な部分は被覆するような形状のホルダーを作製することで、チャンバー内で所望の物品をプラズマ処理することができる。
【0042】
シール材は、フッ素オリゴマー(a)を加えると硬度が低下することから弾性変形しやすくなり、密閉性に優れた成型品(シール材)を製造できる。そのため、装置、配管用のシール材等に有用である。また、後述する実施例からも明らかなように、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、シール材の耐プラズマ性を向上することもできる。
【0043】
上記の特性を有することから、成型品は高温、真空といった厳しい環境下での使用に好適である。したがって、プラズマに曝されるプラズマ処理装置や半導体製造装置に、シール材として組み込むことができる。プラズマ処理装置や半導体製造装置は、シール材を使用するものであれば、公知の装置を用いることができる。なお、プラズマガスの種類は不問であり、例えば、プラズマ処理装置ではO_(2)、CF_(4)、O_(2)+CF_(4)、H_(2)、CHF_(3)、CH_(3)F、CH_(2)F_(2)、Cl_(2)、C_(2)F_(6)、BCl_(3)、NF_(3)、NH_(3)等が一般的であるが、成型品は何れのプラズマに対しても優れた耐性を有する。従って成型品は、特定のプラズマに対するものではない。
【0044】
上記のとおり、フッ素オリゴマー(a)は、架橋性エラストマーを架橋して得られた成型品の硬度を低下できるので、成型品の硬度低下剤として用いることもできる。フッ素オリゴマー(a)を成型品の硬度低下剤として用いる場合、合成または市販のフッ素オリゴマー(a)をそのまま用いてもよい。フッ素オリゴマー(a)は分子量が低いことから単体でも液体に近い粘度を有するため、市販のフッ素オリゴマー(a)の純度は100%である。なお、必要に応じて、フッ素オリゴマー(a)を溶剤で溶解したもの、あるいは、架橋性エラストマー等に混練したものを硬度低下剤としてもよい。有効成分としてフッ素オリゴマー(a)が含まれていれば、形態について特に制限はない。
【0045】
以下に実施例を掲げ、本願の実施形態の具体例を説明するが、本願で開示する実施形態の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。
【実施例】
【0046】
〔水素を含まないフッ素オリゴマーの添加量の影響〕
《実施例1?10、比較例1》
<原料>
原料には、以下の製品を用いた。
・フッ素オリゴマー(a):デュポン社製、Krytox 143AD、分子量7480
・エラストマー(B):ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン株式会社、フッ素ゴム P959
・共架橋剤:日本化成社製、TAIC
・架橋剤:日本油脂社製、25B
・充填材:カンカーブ(cancarb limited)社製、MTカーボンN990
【0047】
<混練組成物の作製>
2軸オープンロールに、エラストマー(B)、充填材、共架橋剤、架橋剤、フッ素オリゴマーを表1に示す配合となるように投入し混練した。混練時間は、フッ素オリゴマーの添加量が多くなるほど長くし、フッ素オリゴマーの大きさが同程度になるように調整した。
【0048】
<成型温度、成型時間>
先ず、MDR装置(Flexsys社製、RHEOMETER MDR 2000)に、上記混練組成物を適量投入した。そして、150℃、1時間で試験を実施し、成型時間の指標となるTc90のデータを得た。
【0049】
<成型、2次架橋(Oリングの製造)>
150℃に加熱したOリング成型用金型に混練組成物を適量投入した。次に、MDRで算出したTc90を基に決定した時間の1.2倍の時間にて各サンプルを成型した。成型終了後、金型から成型体を取り出し、不要なバリを取り除いた。そして、180℃のオーブン中で4時間二次架橋を実施し、シール材を製造した。
【0050】
【表1】

【0051】
(1)耐プラズマ性評価
以下の条件でプラズマを曝露し、曝露前後での試験片の質量減少率で耐プラズマ性を評価した。
・装置:神港精機製表面波プラズマエッチング装置
・試験片:φ3.53×30mm(AS568-214サイズのカット品)
・ガス:O_(2)+CF_(4)
・処理圧力:133Pa
・出力:3kW
・曝露時間:2時間
・重量減少率(重量%)=〔(プラズマ曝露前の重量-プラズマ曝露直後の重量)/(プラズマ曝露前の重量)〕×100
【0052】
図1は、耐プラズマ性能の評価結果を表すグラフである。図1から明らかなように、エラストマー(B)に対するフッ素オリゴマー(a)の添加割合が、0.1重量%でも耐プラズマ性能が向上した。そして、フッ素オリゴマー(a)の添加量が3重量%までは、耐プラズマ性能が急激に向上し、以後はフッ素オリゴマー(a)の添加量が増えるにしたがって、耐プラズマ性能が徐々に向上した。
【0053】
また、図2は成型時間のグラフである。図2から明らかなように、フッ素オリゴマー(a)の添加量が多くなるほど、成型時間が増加した。
【0054】
図1及び図2に示す結果より、エラストマー(B)に耐プラズマ性能を付与するとの観点では、エラストマー(B)に対するフッ素オリゴマー(a)の添加量は、実施例1?10に示す0.1?30重量%の範囲であればよい。一方、フッ素オリゴマー(a)の添加量に対する耐プラズマ性能と成型時間、つまり、生産効率を考えると、エラストマー(B)に対するフッ素オリゴマーの添加量は、1?15重量%程度がより好ましいことが明らかとなった。
【0055】
(2)シール材中のフッ素オリゴマー(a)の測定
実施例5の試験片から切片を採取し、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JEM-2000X」)を用いて透過電子顕微鏡写真を撮影した。図3は、撮影した写真で、写真中の白い点がフッ素オリゴマー(a)の微粒子状の凝集体である。写真から明らかなように、フッ素オリゴマー(a)の凝集体が、シール材中に分散していることを確認した。写真中の凝集体の平均粒径は0.4μmであった。なお粒径は、対象となる白い点の重心を通りかつ対象の外周2点を結ぶ径のうちで最大の長さを、その対象の粒径とした。
【0056】
〔フッ素オリゴマーの種類の影響〕
《実施例11?19》
次に、実施例5の各原料の配合をベースに、フッ素オリゴマーの種類を変えた実験を行った。実施例11?19で用いたフッ素オリゴマーの種類及び分子量、並びに、各原料の配合は表2のとおりである。また、実験手順は、上記<混練組成物>、<成型温度、成型時間>、<成型、2次架橋(Oリングの製造)>と同様の手順で行い、耐プラズマ性の評価も、上記「(1)耐プラズマ性評価」と同様の手順で行った。
【0057】
【表2】

【0058】
図4は、実施例5、11?19及び比較例1のシール材の耐プラズマ性能の評価結果を表すグラフである。なお、図中の白抜き番号は実施例の番号を表す。図4から明らかなように、製造メーカー及び種類によらず、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、耐プラズマ性能が向上した。なお、フッ素オリゴマーの種類、同じシリーズでも分子量により耐プラズマ性能に差異が見られた。したがって、製造に際しては、好適な種類のフッ素オリゴマー(a)を用いればよい。
【0059】
〔架橋方法の違いによる耐プラズマ性能への影響〕
《実施例20?23、比較例2》
上記の実施例1?19に示したシール材は加熱により架橋したが、γ線によりエラストマー(B)を架橋した場合の耐プラズマ性について実験を行った。
表3に示す配合及び原料を用い、上記<混練組成物>と同様の手順で組成物を作製し、シート状に成型した。次に、常温でγ線照射装置(ラジエ工業株式会社)を用いて、γ線量120kGyで照射を行った。架橋したシール材は、上記「(1)耐プラズマ性評価」と同様の手順で評価を行った。
また、γ線架橋と熱による架橋と比較する為、表3に示す配合及び原料を用いて、上記<混練組成物>、<成型温度、成型時間>、<成型、2次架橋(Oリングの製造)>と同様の手順でシール材を製造し、上記「(1)耐プラズマ性評価」と同様の手順で評価を行った。表3に評価結果を示す。
【0060】
【表3】

【0061】
表3から明らかなように、エラストマー(B)をγ線で架橋すると、熱で架橋した場合より耐プラズマ性能はやや劣るものの、分子量や添加量を調整することで充分な耐プラズマ性能が得られることが分かった。
【0062】
以上の結果より、エラストマー(B)の架橋方法によらず、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、耐プラズマ性能が得られることが明らかとなった。したがって、エラストマー(B)を架橋する際の温度に応じて幅広い範囲のフッ素オリゴマー(a)を用いることができる。
【0063】
〔エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)を混合した場合の影響〕
《実施例24?29、比較例3》
次に、架橋性エラストマーとして、エラストマー(B)と、耐薬品性能を付与することができるパーフルオロエラストマー(A)を混合した実験を行った。
原料は、実施例1?10と同様の原料に加え、
・パーフルオロエラストマー(A):ダイキン工業社製、ダイエルパーフロGA-15
を用いた。各原料の配合は表4のとおりで、実験手順は、上記<混練組成物>、<成型温度、成型時間>、<成型、2次架橋(Oリングの製造)>と同様に行い、耐プラズマ性の評価も、上記「(1)耐プラズマ性評価」と同様の手順で行った。
【0064】
【表4】

【0065】
図5は、耐プラズマ性能の評価結果を表すグラフである。図5から明らかなように、エラストマー(B)とパーフルオロエラストマー(A)を混合した場合でも、フッ素オリゴマー(a)の添加量を多くするほど耐プラズマ性能が向上した。上記結果よりエラストマー(B)とパーフルオロエラストマー(A)を混合した架橋性エラストマーにフッ素オリゴマー(a)を添加しても、耐プラズマ性能を向上することができ、負の相互作用はない。したがって、耐薬品性能等が必要な場合は、パーフルオロエラストマー(A)を添加してもよいことが明らかとなった。
【0066】
図6は、実施例27の試験片の切片を採取し、上記「(2)シール材中のフッ素オリゴマー(a)の測定」と同様の手順で撮影した写真である。フッ素オリゴマー(a)とパーフルオロエラストマー(A)は写真中の白い点であるが、写真から両者を区別することは困難である。写真から明らかなように、白い小さな点はエラストマー(B)中に凝集せずに分散していたことから、フッ素オリゴマー(a)とパーフルオロエラストマー(A)を同時にエラストマー(B)に添加しても、分散することが明らかとなった。
【0067】
〔水素を含むフッ素オリゴマーを添加した時の耐プラズマ性能〕
《比較例1、4?7》
次に、水素を含まないフッ素オリゴマー(a)に代え、水素を含むフッ素オリゴマーを添加した場合の影響について実験を行った。実験は、下記表5に示す配合及び原料とした以外は、上記《実施例1?10、比較例1》と同様の手順で耐プラズマ性能を調べた。各比較例の重量減少率(重量%)についても、表5に示す。
【0068】
【表5】

【0069】
上記表5に示すように、水素を含むフッ素オリゴマーを添加した場合には、硬度の低下は見られるものの、耐プラズマ性能の向上は見られず、フッ素オリゴマーを添加しなかった場合とほぼ同様の結果となった。以上の結果より、フッ素オリゴマーが水素を含む場合、エラストマー(B)をプラズマから保護する機能を発揮しないことが明らかとなった。したがって、成型品の硬度を低下するとの観点に加え、耐プラズマ性を向上するとの観点からは、水素を含むフッ素オリゴマーより、水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の方が好ましいことを確認した。
【0070】
〔フッ素オリゴマー(a)の添加量と硬度の関係〕
実施例1?10で作製したシール材の硬度は、成型体(Oリング)をBAREISS製マイクロゴム硬度計(型式:HPEII shore AM/M)に設置して測定した。なお、比較のため、パーフルオロエラストマー(A)の添加量を変えたシール材も複数作製し、同様の手順で硬度を調べた。
【0071】
図7は、シール材の硬度の変化率を示すグラフである。なお、グラフはエラストマー(B)のみの硬度を100とし、そして、パーフルオロエラストマー(A)を添加した各シール材と同じ添加量のフッ素オリゴマー(a)を添加した時の硬度を、エラストマー(B)のみの硬度(100)に対する比で表している。図7から明らかなように、エラストマー(B)に対してパーフルオロエラストマー(A)を添加した場合、エラストマー(B)の硬度は殆ど変化しなかった。一方、エラストマー(B)にフッ素オリゴマー(a)を添加した場合、エラストマー(B)の硬度は低くなった。
【0072】
〔充填材を変えた場合の耐プラズマ性の評価〕
《実施例30、31》
図7に示したように、架橋性エラストマーにフッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を下げられることを確認した。次に、実施例1?10において充填材として用いたカンカーブに換え、耐プラズマ性能に優れるSiCを用いた。原料には、以下の製品を用いた。
・フッ素オリゴマー(a):デュポン社製、Krytox 143AD、分子量7480
・パーフルオロエラストマー(A):ダイキン工業社製、ダイエルパーフロGA-15
・エラストマー(B):ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン株式会社、フッ素ゴム P959
・共架橋剤:日本化成社製、TAIC
・架橋剤:日本油脂社製、25B
・充填材:SiC(ナノメーカーズ社製)、かさ密度:0.6g/cm^(3)
なお、充填材のかさ密度は、100mlメスシリンダー(内径28mm)に5gの粉末を投入し、2cmの高さから20回タッピングした後の目盛りをよみ、その体積から算出した。
【0073】
各原料を表6に示す配合とし、実施例1?10の<成型、2次架橋(Oリングの製造)>において、160℃で15分成型した以外は、実施例1?10と同様の手順で、シール材を製造し、耐プラズマ性の評価を行った。評価結果も表6に示す。
【0074】
【表6】

【0075】
表6に示すように、充填材としてSiCを添加することで、耐プラズマ性が著しく向上した。フッ素オリゴマー(a)を添加することで成型品の硬度が下げられる。したがって、従来と同じ硬度の成型品を製造する場合、硬度の低下分を所期の特性を持つ充填材を添加できるので、充填材の種類や添加量等、原料の配合の自由度が大きくなることが明らかとなった。
【0076】
〔架橋性エラストマー成分を変えた場合の硬度変化の評価〕
《実施例32、33、比較例8》
架橋性エラストマーとして、パーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合の硬度変化を評価した。各原料の配合は表7に示すとおりで、パーフロエラストマー(A)は《実施例24?29》で用いた製品と同様で、その他の原料は《実施例1?10》と同様である。次に、実施例1?10と同様の手順で、シール材を製造し、耐プラズマ性の評価を行った。また、硬度については、上記〔フッ素オリゴマー(a)の添加量と硬度の関係〕と同様の手順で行った。
【0077】
【表7】

【0078】
架橋性エラストマーとしてパーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合でも、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下できることが明らかとなった。なお、パーフルオロエラストマー(A)のみを用いた場合、フッ素オリゴマー(a)を添加しても耐プラズマ性はほぼ同じであった。これは、パーフルオロエラストマー(A)が耐プラズマ性に特に優れている材料であるため、耐プラズマ性が変化しなかったと考えられる。
【0079】
《実施例34、比較例9》
次に、架橋性エラストマーとして、エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)以外の、架橋性エラストマーを用いた場合の硬度変化を評価した。各原料の配合は表8に示すとおりで、架橋性エラストマーとして用いたエチレンプロピレンゴム(EPDM、LUNXESS社製 Keltan 8340A)以外の原料は、《実施例1?10》と同様である。次に、実施例1?10と同様の手順で、シール材を製造した。また、硬度については、上記〔フッ素オリゴマー(a)の添加量と硬度の関係〕と同様の手順で行った。
【0080】
【表8】

【0081】
エラストマー(B)及びパーフルオロエラストマー(A)以外の架橋性エラストマーを用いた場合でも、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下できることが明らかとなった。
【0082】
上記実施例1?34、及び比較例1?9の結果より、水素を含まないフッ素オリゴマー(a)を架橋性エラストマーに添加することで、得られた成型品の硬度を低くできることが明らかとなった。更に、架橋性エラストマーの種類によるが、フッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の耐プラズマ性を向上することができた。したがって、架橋性エラストマーにフッ素オリゴマー(a)を添加することで、成型品の硬度を低下することができ、成型品の柔軟性が高くできる。また、充填材の添加等、組成物・成型品の原料の配合の自由度が大きくできることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
実施形態に示す組成物、該組成物から得られた成型品は、硬度を低くでき、また、原料の配合の自由度が向上する。したがって、プラズマ処理装置や半導体製造装置をはじめ、各種装置のシール材等の成型品として好適に用いることができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含まないフッ素オリゴマー(a)、及び、架橋性エラストマー、
を少なくとも含み、
前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)は、
分子量が3830?8200であり、
下記式(1)乃至(8)で表される基本骨格を含むフッ素オリゴマーから選択され、

前記架橋性エラストマーが、
ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン系共重合体、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体、テトラフロロエチレン/プロピレン系共重合体、これらの共重合体にエチレンまたはパーフロロアルキルビニルエーテルを共重合させたもの、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体とテトラフロロエチレン/エチレン交互共重合体またはポリビニリデンフロライドとのブロック共重合体、シリコーンゴムから選ばれる少なくとも1種のエラストマー(B)、及び、
パーフルオロオレフィンと、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル及びその混合物からなる群より選択されたパーフルオロビニルエーテルと、硬化部位モノマーとの共重合単位を含有するパーフルオロエラストマー(A)、
を含み、
前記架橋性エラストマーに対する前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の割合が、0.1?30重量%である、
架橋性エラストマー組成物。
【請求項2】
前記架橋性エラストマーの合計重量を100とした時、前記パーフルオロエラストマー(A)の割合が99.5以下である、
請求項1に記載の架橋性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記架橋性エラストマーに対する前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の割合が1?15重量%である、
請求項1に記載の架橋性エラストマー組成物。
【請求項4】
請求項1?3の何れか一項に記載の架橋性エラストマー組成物を架橋して得られる成型品。
【請求項5】
請求項4に記載の成型品の形状がシール状であるシール材。
【請求項6】
請求項5に記載のシール材を含むプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項5に記載のシール材を含む半導体製造装置。
【請求項8】
水素を含まないフッ素オリゴマー(a)、及び、架橋性エラストマーを少なくとも含む架橋性エラストマー組成物を架橋する工程を含み、
前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)は、
分子量が3830?8200であり、
下記式(1)乃至(8)で表される基本骨格を含むフッ素オリゴマーから選択され、

前記架橋性エラストマーが、
ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン系共重合体、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体、テトラフロロエチレン/プロピレン系共重合体、これらの共重合体にエチレンまたはパーフロロアルキルビニルエーテルを共重合させたもの、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体とテトラフロロエチレン/エチレン交互共重合体またはポリビニリデンフロライドとのブロック共重合体、シリコーンゴムから選ばれる少なくとも1種のエラストマー(B)、及び、
パーフルオロオレフィンと、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル及びその混合物からなる群より選択されたパーフルオロビニルエーテルと、硬化部位モノマーとの共重合単位を含有するパーフルオロエラストマー(A)、
を含み、
前記架橋性エラストマーに対する前記水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の割合が、0.1?30重量%である、
成型品の製造方法。
【請求項9】
ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン系共重合体、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体、テトラフロロエチレン/プロピレン系共重合体、これらの共重合体にエチレンまたはパーフロロアルキルビニルエーテルを共重合させたもの、ビニリデンフロライド/ヘキサフロロプロペン/テトラフロロエチレン系共重合体とテトラフロロエチレン/エチレン交互共重合体またはポリビニリデンフロライドとのブロック共重合体、シリコーンゴムから選ばれる少なくとも1種のエラストマー(B)、及び、
パーフルオロオレフィンと、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル及びその混合物からなる群より選択されたパーフルオロビニルエーテルと、硬化部位モノマーとの共重合単位を含有するパーフルオロエラストマー(A)、
を含む架橋性エラストマーを架橋して得られる成型品の硬度低下および耐プラズマ性向上のための、
分子量が3830?8200であり、下記式(1)乃至(8)で表される基本骨格を含む、
水素を含まないフッ素オリゴマー(a)の使用。

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-11-09 
出願番号 特願2019-76659(P2019-76659)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三原 健治  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 安田 周史
佐藤 健史
登録日 2019-06-14 
登録番号 特許第6539425号(P6539425)
権利者 ニチアス株式会社
発明の名称 架橋性エラストマー組成物、成型品、シール材、該シール材を含むプラズマ処理装置及び半導体製造装置、並びに、成型品の硬度低下剤、成型品の製造方法  
代理人 松本 征二  
代理人 松本 征二  
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