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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A01G
管理番号 1370022
異議申立番号 異議2020-700732  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-02-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-25 
確定日 2020-12-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6672215号発明「箱型船」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6672215号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6672215号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成28年10月26日に出願した特願2016-209850号(以下、「原出願」という。)の一部を、特願2017-73990号として平成29年4月3日に新たな特許出願(以下、「本件出願」という。)としたものであって、令和2年3月6日にその特許権の設定登録がされ、令和2年3月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年9月25日に特許異議申立人 本庄 正秀(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6672215号の請求項1ないし3の特許に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
酸処理液を貯留する酸処理槽と、該酸処理槽内に設けられ、海苔が付着した海苔網を巻き取る一対の巻取ロールとを備える箱型船であって、
前記酸処理槽に設けられ、前記酸処理液のpHを検出するpHセンサと、
前記巻取ロールに巻き取られる前記海苔網と干渉しない位置に設けられ、酸原液を吐出する原液吐出部と、
前記pHセンサの検出値に基づいて前記原液吐出部に供給する前記酸原液の供給量を自動調節する原液供給装置とを備え、
前記原液吐出部は、前記一対の巻取ロールに沿って前記酸処理槽の上方に設けられる管状部材であり、前記一対の巻取ロールの間に設けられていることを特徴とする箱型船。
【請求項2】
前記管状部材は、複数の吐出孔が所定間隔で形成されており、前記吐出孔から前記酸原液を吐出することを特徴とする請求項1に記載の箱型船。
【請求項3】
前記pHセンサは、前記酸処理槽内において前記原液吐出部の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の箱型船。

第3 申立理由の概要及び提出された証拠
1 申立理由の概要
申立人は、甲第1号証ないし甲第4号証(主たる証拠として甲第1号証)を提出して、本件発明1ないし3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けられないものであり、本件発明1ないし3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきである旨、本件発明1ないし3は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしておらず、本件発明1ないし3に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきである旨、主張している。
なお、特許異議申立書(以下「申立書」という。)の第1頁下から4行及び第3頁第2行の「特許法第36条第6項第2号」との記載は、申立書第12頁第2行?第13頁第3行で主張される具体的理由が「特許法第36条第6項第1号違反(サポート要件違反)」であることから、「特許法第36条第6項第1号」の誤記と認めた。

2 提出された証拠
申立人が提出した申立書に添付された証拠は、以下のとおりである。
(1)特許法第29条第2項に係る出願前公知文献として挙げられた証拠
甲第1号証:特開平5-95740号公報
甲第2号証:特開平11-332406号公報
甲第3号証:特開平4-252121号公報
甲第4号証:特開平8-298885号公報

(2)本件特許についての出願及びその分割原出願に関する証拠
甲第5号証:1-1 原出願の公開特許公報及び経過情報
2-1 原出願に対する平成29年2月16日付け
拒絶理由通知書
2-2 原出願の平成29年4月3日付け意見書
2-3 原出願の平成29年4月3日付け手続補正書
3-1 原出願の特許公報(特許第6161016号)
甲第6号証:1-1 本件出願の公開特許公報及び経過情報
2-1 本件出願に対する平成30年4月23日付け
拒絶理由通知書
2-2 本件出願の平成30年6月27日付け意見書
2-3 本件出願の平成30年6月27日付け手続補正書
3-1 本件出願に対する平成30年11月22日付け
拒絶理由通知書
3-2 本件出願の平成31年1月17日付け意見書
3-3 本件出願の平成31年1月17日付け手続補正書
4-1 本件出願に対する令和1年6月18日付け
拒絶理由通知書
4-2 本件出願の令和1年8月2日付け意見書
4-3 本件出願の令和1年8月2日付け手続補正書
5-1 本件出願の特許公報(特許第6672215号)

第4 各証拠の記載
特許法第29条第2項に係る出願前公知文献として挙げられた甲第1号証ないし甲第4号証には、それぞれ、以下の事項が記載されている。

1 甲第1号証(特開平5-95740号公報)
申立書に添付された甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
(1)「【0013】
【実施例】本発明の実施例を図面にもとづき詳説すれば、第1図の説明図において、1は本発明に係る海苔網処理装置を示し、同処理装置1は、船内に装着し、現場において、海苔網を引き上げなから海苔網の処理を行うものであり、以下、その構成を詳説する。即ち、海苔網処理装置1は、一定容量の処理槽2内に、海苔網引上装置3を取付けており、同引上装置3は、処理槽2内に2つの回転体4,5を軸支し、しかも、各回転体4,5を正逆回転自在として、一方の回転体4を海苔網引上げ用とし、他方の回転体5を海苔網戻し用としている。
【0014】また、処理槽2の一側部には、駆動エンジン6と連動機構7とを設けており、同エンジン6の出力軸に、連動機構7を介して各回転体4,5とを連動連結している。
【0015】本発明では、海苔網処理装置1に、処理槽2内に酸原液を供給する酸原液補給装置8と、酸処理液aのpHを検出し、補給装置8の作動させて、酸処理液aを一定のpH値、例えばpH2.0前後に保持する制御部9とを設けて、処理槽2内のpHを一定に保持可能に構成している。
【0016】本実施例では、補給装置8を、酸原液を収納したタンク10と、処理槽2内に伸延したパイプ11と、酸原液を補給するポンプ12とよりなり、処理槽2の他側部にタンク10を配設するとともに、同タンク10に、ポンプ12を介してパイプ11の基端部を接続し、同パイプ11の先端部を処理槽2内の側面から底面に沿って配設している。なお、13はパイプ11に設けた酸原液を噴出する為の孔を示す。
【0017】また、処理槽2内には、pH検出用センサ14を取付けており、同酸処理液aのpH値を検出しており、補給装置8の近傍に制御部9を内蔵したpH検出ボックス15を配設し、同ボックス15のメーター等でその値を表示するようにしいる。
【0018】さらに、本発明では、制御部9を介して補給装置8を作動させ、処理槽2内に酸原液を補給して、酸原液のpH値を一定に保持するようにしており、補給装置8を作動させる制御部9の構成について詳説すると、図3において、制御部9は、マイクロプロセッサユニットMPUと、入出力インターフエイス16,17と、ROM及びRAMからなるメモリ18と、タイマ19とから構成されており、pH検出用センサ14からの出力信号を入力インターフエイス16に送信する。
【0019】一方、出力インターフエイス17には、補給装置8のポンプ12が接続されており、同ポンプ12に操作信号を送信する。また、メモリ18には、上記のpH検出用センサ14からの出力信号に基づいてポンプ12を作動させるプログラムが記憶されている。このように、制御部9によって、酸原液補給装置8を制御して、酸処理液aのpH値を一定に保持することができる。
【0020】本実施例では、制御部9に、pHの上限値と下限値とをセットして、その間でのpH値を一定に保持するものであり、酸処理液aの目標pH値を、例えば2.0とした場合、制御部9への上限値と下限値とを2.05?1.95として、酸処理液a内のpHを可及的に2.0 に保持するようしている。」

(2)「【0021】次いで、上記の海苔網処理装置1による処理方法について詳説する。即ち、まず、処理槽2内に入れた海水が、例えば、300リットルの場合、酸原液1.5リットルを加えて撹拌して、一定のpH値、例えば、pH2.0とした酸処理液aとする。
【0022】そして、引上装置3の回転体4に海苔網の一側部を係合させて、駆動エンジン6で回転させて、海苔網を引き上げ、その酸処理液aに海苔網を約6分間浸漬させ、浸けた海苔網を再度海中に戻し、順次、他の海苔網の作業を行う。
【0023】その作業中において、処理槽2内のpH検出用センサ14で、薄くなる酸処理液aのpH値を検出して、その検出値にもとづいて補給装置8でタンク10内の酸原液を処理槽2内に補給して、酸処理液aのpH値を一定のpH値、例えば、2.0前後に保持するものである。
【0024】かかる処理方法によって、一定のpH値の酸処理液aに海苔網を浸漬することにより、病菌及び雑藻を除去するとともに、海苔の成長を早め、しかも、各海苔網の成長を一定状態として、海苔の収穫を増大させることができる。」

(3)「【図1】



(4)「【図2】



(5)上記(1)及び(2)の記載を踏まえると、上記(3)の図1及び上記(4)の図2からは、酸処理液aを貯留する処理槽2の底面に沿って配設された酸原液を噴出する為の孔13が複数所定間隔で形成されたパイプ11は、回転体4,5に沿って、前記回転体4,5の間であって、回転体4,5の下方に設けられており、海苔網と干渉しない位置に配置されていることが看取される。

(6)上記(1)ないし(5)からみて、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

甲1発明
「海苔網処理装置1は、船内に装着され、
海苔網処理装置1は、海苔網引上装置3を取付けており、同引上装置3は、酸処理液aを貯留する処理槽2内に、2つの正逆回転自在の回転体4,5を軸支し、一方の回転体4を海苔網引上げ用とし、他方の回転体5を海苔網戻し用としており、
処理槽2内には、pH検出用センサ14を取付けて、酸処理液aのpH値を検出しており、
海苔網処理装置1に、処理槽2内に酸原液を供給する酸原液補給装置8と、酸処理液aのpHを検出し、補給装置8を作動させて、酸処理液aを一定のpH値、例えばpH2.0前後に保持する制御部9とを設け、
酸原液補給装置8は、酸原液を収納したタンク10と、処理槽2内に伸延したパイプ11と、酸原液を補給するポンプ12とよりなり、タンク10に、ポンプ12を介してパイプ11の基端部を接続し、パイプ11の先端部は処理槽2内の側面から底面に沿って配設され、底面に沿って配設されたパイプ11には複数の酸原液を噴出する為の孔13が所定間隔で形成されており、パイプ11は、回転体4,5に巻き取られる海苔網と干渉しない位置に配置され、回転体4,5に沿って、前記回転体4,5の間に設けられており、
制御部9は、マイクロプロセッサユニットMPUと、入出力インターフエイス16,17と、ROM及びRAMからなる、pH検出用センサ14からの出力信号に基づいてポンプ12を作動させるプログラムが記憶されているメモリ18と、タイマ19とから構成されている、
海苔網処理装置1を装着した船。」

2 甲第2号証(特開平11-332406号公報)
申立書に添付された甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、船に積載されて消毒液が貯溜される容器と、この容器の内部に配設されて駆動手段により駆動されて回転する複数本の海苔網の巻取り体と、消毒液が貯溜され且つ前記容器内の消毒液が導入されるタンクと、このタンク内の消毒液を吸い出すポンプと、このポンプで吸い出された消毒液を前記容器へ供給する配管とを備えたことを特徴とする海苔網の消毒装置である。
【0009】この構成において、容器内の濃度の低い消毒液をタンクに導入し、タンク内の消毒液を希釈する。そしてポンプを駆動することによりタンク内の消毒液を吸い出し、配管を通じて容器に供給する。
【0010】また好ましくは、前記配管に接続された吐出部が前記容器の相対する2つの壁面に設けられている。
【0011】この構成によれば、容器内に2方向から消毒液をまんべんなく供給できる。
【0012】また好ましくは、前記巻取り体が前記容器の内部に4本並設されており、また前記吐出部が前記4本の巻取り体の中の両側部の巻取り体に消毒液を吐出するように前記容器の相対する2つの壁面に設けられている。
【0013】この構成により、消毒効果の大きい巻取り体へ向って消毒液を吐出できる。
【0014】また好ましくは、前記相対する2つの壁面に設けられた吐出部から消毒液を選択的に吐出させるための流路の切替手段を設けた。
【0015】この構成において、流路の切替え手段を操作することにより、互いに相対する2つの壁面に設けられた任意の吐出部から容器内に消毒液を補給する。この場合、吐出部からの消毒液の吐出のパターンは自由に選択できるが、海苔網を巻取った巻取り体から巻返す巻取り体に近い方の吐出部から消毒液を補給するのが好ましい。」

(2)「【0017】図1において、船1上には海苔網の消毒装置の主体となる容器2が積載されている。容器2の内部には巻取り体3A,3B,3C,3Dが4本互いに平行かつ水平に配設されている。このうち、両側部の巻取り体3A,3Bの端部には、ガイド体4が装着されている。ガイド体4は、海洋に張設された海苔網を巻取る際に、海苔網の浮棒が容器2の内壁面に当るのを防止する。
(・・・中略・・・)
【0019】図1?図3において、容器2の側部にはタンク10が設けられている。タンク10には濃い目の消毒液が貯溜されている。容器2とタンク10はパイプ11で接続されており、パイプ11にはパイプ11の流路を開閉する開閉手段としてのコック12が設けられている。コック12を開けると、容器2内に貯溜された消毒液はタンク10内に導入される(図2の矢印a)。すなわち、パイプ11やコック12は容器2内の消毒液をタンク10内に導入する導入部になっている。容器2内に貯溜された消毒液は、海洋から引き上げた海苔網8を浸漬する間に、海苔網8が含浸していた海水が容器2内に流出する結果、かなり濃度が低くなっている。したがって容器2内の消毒液をタンク10内に導入すれば、タンク10内の消毒液は希釈されて濃度が低くなる。
【0020】タンク10はパイプ13を通じてポンプ14に接続されている。タンク10にはパイプ15が接続されており、パイプ15の先端部は流路の切替手段であるコック16に接続されている。16aはコック16の操作レバーである。コック16にはパイプ17,18が接続されている。また容器2の互いに相対する壁面には吐出部19,20が設けられている。一方のパイプ17は一方の吐出部19に接続されており、また他方のパイプ18は他方の吐出部20に接続されている。すなわち、パイプ15,17,18は、ポンプ14でタンク10から吸い出された消毒液を容器2へ供給する配管になっている。パイプとしては、塩化ビニールパイプやチューブなどが使用される。
【0021】したがってタンク10内の消毒液はパイプ13を通してポンプ14に吸い出され(図2の矢印b)、更にパイプ15へ送り出される(矢印c)。そしてコック16の操作のレバー16aを操作することにより、一方のパイプ17または他方のパイプ18へ選択的に送り出される(矢印d,e)。そして吐出部19または吐出部20から容器2内へ選択的に吐出される(矢印f,g)。なお本形態では、コック16の操作レバー16aを操作することにより、吐出部19または吐出部20から選択的に容器2へ消毒液を吐出して供給するものであるが、2つの吐出部19,20から同時に容器2へ消毒液を供給するようにしてもよいものであり、吐出部19,20から消毒液を吐出するパターンは自由に選択できる。」

(3)図1「



(4)「図2



(5)「図3



(6)上記(2)の記載を踏まえると、上記(3)の図1からは、消毒装置の容器2が積載される船1は箱形の船であることが看取される。
上記(2)の記載を踏まえると、上記(5)の図3からは、濃度の濃いめの消毒液の吐出部19、20は、容器2の上方の互いに相対する壁面に、巻取り体の回転軸と交差する方向に消毒液を吐出するように設けられていることが看取される。

(7)上記(1)ないし(6)からみて、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

甲2発明
「消毒液が貯溜される容器2と、この容器2の内部に配設されて回転する複数本の海苔網の巻取り体3A,3B,3C,3Dと、消毒液が貯溜されるタンク10と、このタンク10内の消毒液を吸い出すポンプ14と、このポンプ14で吸い出された消毒液を前記容器2へ供給する配管とを備えた海苔網の消毒装置が積載された箱形の船1であって、
配管に接続された吐出部19、20が前記容器の上方の相対する2つの壁面に、巻取り体の回転軸と交差する方向に消毒液を吐出するように設けられている、箱形の船1。」

3 甲第3号証(特開平4-252121号公報)
申立書に添付された甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】 海面に張設された海苔網の始端を洗滌液を満した洗滌槽内の第1の巻取り軸に掛止し、前記巻取軸を回転し、海苔網の巻き取りにつれて前記洗滌槽を前進させることにより、前記第1の巻取り軸に所定長さの海苔網を全部巻取った後、前記海苔網の終端を、第1の巻取り軸と平行な第2の巻取り軸に掛止し、第2の巻取り軸を回転して、前記海苔網を第2の巻取り軸に巻き移す。斯して第2の巻取り軸の最外端に位置した海苔網の始端を支柱棒に固定し、前記洗滌槽を移動し乍ら第2の巻取り軸から巻きもどした海苔網を逐次海面に張設敷設することを特徴とした海苔付網の洗滌方法
【請求項2】 第1の巻取り軸に海苔網を巻きつける際に、洗滌液をシャワーすることとした請求項1記載の海苔付網の洗滌方法
(・・・中略・・・)
【請求項6】 平面方形の洗滌槽内に、二本の巻取り軸を平行に、かつ水平に回転自在に架設し、前記巻取り軸端は切換え装置を介して原動機の出力軸と連結し、前記洗滌槽の側縁部に海苔網の案内具を設置し、前記洗滌槽の側縁部にシャワー管を前記巻取り軸と平行に架設したことを特徴とする海苔付網の洗滌装置」

(2)「【0009】前記における洗滌液は、例えば弱酸性(酢酸、クエン酸などの希釈液pH5.0?2.5)であり、pHの度合により浸漬時間を通常1分?5分に調節する。例えばpH1.5ならば更に短時間処理とする。」

(3)「【0015】
【実施例1】図1のように、海面に敷設され海苔網1の一方の端A(端縁側)を支柱棒2、2の吊綱16から外して、図4、5に示す洗滌槽3内の第1の巻取り軸4の掛止片5、5に掛止すると共に、エンジン6を始動する。然るときはエンジン6の回転力は、連動装置7を経て第1の巻取り軸4を回転するので、海苔網1は図5中矢示8のように巻き込まれる。このようにして一定長さ(例えば18m又は36m)を巻き込んだならば、海苔網1の終端になる。そこで、海苔網1の終端を第2の巻取り軸9の掛止片10、10に掛止し、第2の巻取り軸9を矢示11の方向へ回転すれば、前記第1の巻取り軸4の海苔網1を鎖線図示12、矢示17のように第2の巻取り軸9へ巻き換えることができる。このようにすれば、第1の巻取り軸4の中側へ巻き込んだ海苔網1が第2の巻取り軸9では外側に巻かれることになり、引続いて第2の巻取り軸9から図5の矢示13のように巻き出す時に、最初に洗滌液に浸漬した海苔網1の端縁が、最初に洗滌液から引出されることになる。そこで全海苔網は、ほぼ同一時間洗滌液に浸漬され、同一時間処理されることになる。前記図5において矢示8のように海苔網を引張って第1の巻取り軸4に巻き込む時に、洗滌槽3をのせた箱舟14は、図5中矢示15の方向へ前進するので、海苔網1を引張って巻き込む必要なく、きわめて合理的である。然して当初の巻き込みを終了したならば、引続き第1の巻取り軸4から第2の巻取り軸9へ巻き移す。従って、第1の巻取り軸4は空くことになる。そこで矢示53のように、図1のB部で箱舟14を180度回転し、第1の巻取り軸4を再び海苔網1側に対向させると共に、次位の海苔網1aの端縁を第1の巻取り軸4の掛止片5、5に掛けて、第1の巻取り軸4を回転すれば、海苔網1aは第1の巻取り軸4に巻き始められる。この時に、第2の巻取り軸9に巻き込まれている海苔網1の端縁を支柱棒2、2の吊綱16に縛着すると共に、第2の巻取り軸9の回転をフリーにすれば、箱舟14の進行につれて海苔網1を矢示13のように巻き出し、所定位置(海苔網1aのあった位置)に敷設することができる。
【0016】前記実施例において、海苔網1を巻取る際に、図7のポンプ18を始動し、吸入ホース19から洗滌槽3内の洗滌液を吸入し、吐出ホース20を介して洗滌槽3の一側に架設したシャワー管21から巻込まれる海苔網1に洗滌液をシャワーすれば、海苔網1等の付着汚物が先づ洗除されるので、爾後洗滌液へ浸漬した際の処理が一層円滑になる。また、第1の巻取り軸4及び第2の巻取り軸9にも多数の小孔を穿設し、前記各巻取り軸4、9に、前記吐出ホース20の分岐ホース20a、20bを夫々連結して、内側からシャワーすることもできる。前記吸入ホース19には三方コック51を介して海水吸入ホース22が連結されているので、三方コック51を操作することにより、海水をシャワーすることもできる。また、洗滌液を入れ換える場合には、前記シャワーを介して洗滌槽3内へ海水を満すと共に、薬剤槽23の抽出細管24の先端を、前記海水吸入ホース22に連結開口し、コック25を開けば、海水の吸入量に応じ必要量の薬剤を供給して、洗滌液を所定のpHに生成することができる。前記吐出ホース20に三方コック27を介して排水ホース26を連結しておけば、三方コック27の操作により、吸入した液を海上へ排水することもできる。例えば作業中に箱舟14内に水が溜るが、そのような時には、海水吸入ホース22の先端を箱舟14内に入れ、三方コック51、27を操作した後、ポンプ18を始動すれば、箱舟14内の排水ができる。図中28は分岐匣、29、30は分岐ホース20a、20bのコックである。」

(4)「図3



(5)「図4



(6)「図5


(7)上記(1)?(6)からみて、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

甲3発明
「海苔付網の洗滌装置の洗滌槽3をのせた箱舟14であって、洗滌槽3内に、二本の巻取り軸4、9を平行に、かつ水平に回転自在に架設し、洗滌槽3の側縁部にシャワー管21を前記巻取り軸4、9と平行に架設し、シャワー管21から海苔網1に吸入ホース19から吸入した洗滌槽3内の洗滌液をシャワーする、箱舟14。」

4 甲第4号証(特開平8-298885号公報)
申立書に添付された甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0022】本実施例の海苔網作業船は、船本体1に液処理装置2を搭載したもので、液処理装置2は、処理液槽3、同処理液槽3内の仕切り板4、四本の巻取りローラ5a?5d、同巻取りローラ5a?5dの駆動機構6などから構成されている。
【0023】船本体1は、従来の海苔網作業船の本体と同様なFRP製の箱状のものであり、図示していない船外機により自走可能である。この船本体1に、図1及び図2に示すように液処理装置2が設置されており、液処理装置2の両側の空間は作業場S_(1),S_(2)となっている。
【0024】処理液槽3は、FRP製の箱状のもので、船本体1に搭載した後、動かないように固定されている。この処理液槽3には、槽体を船体前後方向(図1において上下方向)に二分する仕切り板4が設けられ、この仕切り板4の一方の側に巻取りローラ5a,5bが配設され、他方の側に巻取りローラ5c,5dが配設されている。」


(2)上記(1)からみて、甲第4号証には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

甲4発明
「液処理装置2を搭載した箱状の船本体1であって、液処理装置2の処理液槽3には槽体を船体前後方向に二分する仕切り板4が設けられ、この仕切り板4の一方の側に巻取りローラ5a,5bが配設され、他方の側に巻取りローラ5c,5dが配設されている箱状の船本体1。」

第5 当審の判断
1 特許法第29条第2項(容易性)
(1)請求項1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「酸処理液a」、「処理槽2」及び「pH検出用センサ14」は、それぞれ、本件発明1の「酸処理液」、「酸処理槽」及び「pHセンサ」に相当する。
甲1発明の「処理槽2内」に「軸支」された「2つの正逆回転自在の回転体4,5」は、処理槽2内に設けられたものである。そして、「一方の回転体4を海苔網引上げ用とし、他方の回転体5を海苔網戻し用とし」たものであって、引上げた海苔網を巻き取る一方の回転体4も、引上げた海苔網が巻き戻される他方の回転体5も海苔が付着した海苔網を巻き取る回転体であることは自明であるから、甲1発明の「一方の回転体4」及び「他方の回転体5」とからなる「2つの正逆回転自在の回転体4,5」は、本件発明1の「酸処理槽内に設けられ、海苔が付着した海苔網を巻き取る一対の巻取ロール」に相当する。
甲1発明の「処理槽2」と「2つの正逆回転自在の回転体4,5」とを備える「海苔網処理装置1を装着した船」と、本件発明1の「酸処理液を貯留する酸処理槽と、該酸処理槽内に設けられ、海苔が付着した海苔網を巻き取る一対の巻取ロールとを備える箱型船」とは、「酸処理液を貯留する酸処理槽と、該酸処理槽内に設けられ、海苔が付着した海苔網を巻き取る一対の巻取ロールとを備える船」の点で共通する。
甲1発明の「回転体4,5に巻き取られる海苔網と干渉しない位置に配置され」る「複数の酸原液を噴出する為の孔13が所定間隔で形成され」た「パイプ11」は、本件発明1の「巻取ロールに巻き取られる海苔網と干渉しない位置に設けられ、酸原液を吐出する原液吐出部」に相当する。
甲1発明の「パイプ11」が「管状部材」であることは自明であるから、
甲1発明の「複数の酸原液を噴出する為の孔13が所定間隔で形成され」た「パイプ11」が、「回転体4,5に沿って」「処理槽2」の「底面」に設けられ、「前記回転体4,5の間に設けられている」点と、本件発明1の「原液吐出部は、一対の巻取ロールに沿って酸処理槽の上方に設けられる管状部材であり、前記一対の巻取ロールの間に設けられている」点とは、「原液吐出部は、一対の巻取ロールに沿って酸処理槽に設けられる管状部材であり、前記一対の巻取ロールの間に設けられている」点で共通する。
甲1発明の「制御部9」は、「pH検出用センサ14からの出力信号に基づいてポンプ12を作動させるプログラムが記憶されているメモリ18」を備えてなり、「酸処理液aを一定のpH値、例えばpH2.0前後に保持する」制御を行うものである。
また、甲1発明は、「酸原液を収納したタンク10」に、「ポンプ12を介してパイプ11の基端部」が「接続」され、先端部の処理槽2内の底面に沿って配設されたパイプ11には複数の酸原液を噴出する為の孔13が所定間隔で形成されているものであるから、甲1発明において「ポンプ12を作動させ」ることは、処理槽2内の底面に沿って配設された酸原液を噴出する為の孔13が設けられたパイプ11に酸原液を供給することといえる。
そうすると、甲1発明の「メモリ18」に記憶されている「pH検出用センサ14からの出力信号に基づいてポンプ12を作動させるプログラム」により「酸処理液aを一定のpH値、例えばpH2.0前後に保持する」制御を行う「制御部9」により作動する「酸原液補給装置8」は、本件発明1の「pHセンサの検出値に基づいて原液吐出部に供給する酸原液の供給量を自動調節する原液供給装置」に相当する。

そうすると、甲1発明と本件発明1とは、以下の一致点、相違点を有する。
一致点
酸処理液を貯留する酸処理槽と、該酸処理槽内に設けられ、海苔が付着した海苔網を巻き取る一対の巻取ロールとを備える船であって、
前記酸処理槽に設けられ、前記酸処理液のpHを検出するpHセンサと、
前記巻取ロールに巻き取られる前記海苔網と干渉しない位置に設けられ、酸原液を吐出する原液吐出部と、
前記pHセンサの検出値に基づいて前記原液吐出部に供給する前記酸原液の供給量を自動調節する原液供給装置とを備え、
前記原液吐出部は、前記一対の巻取ロールに沿って前記酸処理槽に設けられる管状部材であり、前記一対の巻取ロールの間に設けられている船。

相違点1
本件発明1は、「酸処理液を貯留する酸処理槽と、該酸処理槽内に設けられ、海苔が付着した海苔網を巻き取る一対の巻取ロールとを備える船」が「箱形船」と特定されているのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。

相違点2
「一対の巻取ロールに沿って前記酸処理槽に設けられる管状部材」である「原液吐出部」が設けられる位置が、本件発明1は「酸処理槽の上方」であるのに対し、甲1発明は「処理槽2」(酸処理槽)の「底面に沿っ」た位置である点。

イ 判断
事案に鑑み上記相違点2について検討する。
甲2発明は、本件発明1の「酸処理槽」に相当する「容器」の上方に、本件発明1の「原液吐出部」に相当する「吐出部19、20」を設けるものであるが、「吐出部19、20」は、容器の「相対する2つの壁面」に設けられているものであるし、「巻取り体の回転軸と交差する方向に消毒液を吐出するように」設けられているものであって、一対の巻取ロールに沿って、一対の巻取ロールの間に設けられる管状部材でもない。
海苔養殖に用いる「酸処理槽」において、酸原液を槽内に供給する場合、甲1発明や甲2発明のように、槽の底面や側面に吐出口を設けることが通常であり、甲2発明が容器の上方に酸原液の吐出部を設けていることをもって、甲1発明の容器の底面に沿った位置とされた原液吐出部を酸処理槽の上方に設けるものへと変更することが当業者が容易になし得たこととはいえない。

甲3発明は、洗滌槽3内の洗滌液をシャワー管21から海苔網1にシャワーするものであって、酸原液を酸処理槽に供給するものでないから、甲1発明の原液吐出部の配置を変更することに関し、何らの開示もなく、示唆もない。

甲4発明は、原液吐出部について開示がなく、甲1発明の原液吐出部の配置を変更することに関し、何らの開示もなく、示唆もない。

また、「前記一対の巻取ロールに沿って前記酸処理槽に設けられる管状部材」である原液吐出部を「酸処理槽の上方」に設けることが当業者に周知であるものでもない。

よって、相違点2は甲2発明ないし甲4発明に基いて、当業者が容易に想到をすることができたものではない。

したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明ないし甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明ないし甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えた発明である。
よって、上記(1)で検討した理由と同様の理由により、本件発明2、3は、甲1発明ないし甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)
(1)申立人の主張
申立人は、サポート要件について、概略、本件発明1の原液吐出部が「酸処理槽の上方」に設けられる管状部材であることは、明細書または図面にサポートする記載や示唆が無いものであり、36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである旨主張し(申立書第3頁)、その理由として、「上述の如く、当所明細書(当審註:「当初明細書」の誤記と認める)には、本件出願人が主張する「酸処理槽内の酸処理液に対して、一対の巻取ロールの間かつ酸処理液の液面(上面)よりも上方から酸処理液に向けて酸原液を供給することを特徴点とする」記載、例えば、図2(a)において、樹脂シート7を除外して酸処理液に向けて酸原液を供給するもの、当該一般的な当業界の箱型船では吐出口から処理液上面までの高さは通常:10?50cmであり、この場合、本件出願人が明細書で記載するように、船本体1の揺動(海上であるので、更に波の影響や風邪の影響(当審註:「風の影響」の誤記と認める)などにより、巻き取ロール5a又は5bで巻取っている(巻取り厚みが増加する)海苔網に滴下される水滴などが飛ばされて直接接触し、海苔にダメージを与えて生育を阻害する可能性が高いものと思料されます。
本件発明の課題及びその効果は、当所明細書(当審註:「当初明細書」の誤記と認める)段落【0006】(酸処理液を所望のpH値に維持することが可能な箱型船を提供することを目的とする。)、並びに、当初明細書段落【0010】(酸処理液のpHを自動調節するので、酸処理液を所望のpH値に維持することが可能な箱型船を提供することができる。)ことを記載しているが、本件意見書(当審註:令和1年8月2日付け意見書、甲第6号証4-2)で記載するように、「本願発明は、酸原液が海苔網(海苔)に直接接触しないこと、また酸原液の酸処理液への混ざり易さを良好とすることを念頭に創作されたものであり、またこの2つの条件を同時に満足するものです。」ことが、当所明細書(当審註:「当初明細書」の誤記と認める)に開示も示唆等もない真の発明の課題及びその効果であり、そのため、段落【0013】?【0036】及び図1、図2の第1実施形態で、「酸原液12は、一対チューブ8A、8Bに設けられた複数の吐出孔8a、8bから樹脂シート7に向けて吐出され、樹脂シート7の表面をつたって流下する形態」(親出願:特許第6161016号)とし、段落【0037】?【0036】(当審註:申立書第3頁(理由の要点)欄の記載に鑑み【0036】は、【0047】の誤記と認める)の第2実施形態及び図3で、「原液吐出部は、前記酸処理槽において前記海苔網の進入側の壁面近傍に設けられ、当該壁面に向かって前記酸原液を吐出することを特徴とする箱型船。」(孫出願:特許第6672252号)とし、酸原液が海苔網(海苔)に直接接触しないように、樹脂シート又は処理槽の壁面に吐出させるものであり、これ以外の記載や示唆等は当所明細書(当審註:「当初明細書」の誤記と認める)及び図面にはないものである。」(申立書第12頁第3行?下から2行)と主張する。

当該主張は、本願発明1ないし3は、酸原液が海苔網(海苔)に直接接触しないこと、また酸原液の酸処理液への混ざり易さを良好とすることの2つの条件を同時に満足することが課題であり、これらの課題を解決するために、酸原液を樹脂シート7の表面ないし処理槽の壁面を流下するものとしたものであって他の手段を開示しないものであるのだから、本件発明1を、酸原液が流下する樹脂シートが存在しないものにまで拡張一般化することができないとの主張と解されるので、当該主張については、下記(2)ウにて検討する。

(2)サポート要件の検討
ア 本件明細書等の記載事項
本件明細書及び図面には以下の記載がある。
(ア)「【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
本実施形態に係る箱型船Aは、養殖中の海苔網上の海苔を酸処理する酸処理装置である。箱型船Aは、船本体1、酸処理液2が貯留する酸処理槽3、海苔網4を巻き取る一対の巻取ロール5a、5b、吊り棒6(棒状部材)、樹脂シート7(シート部材)、チューブ8A、8B(管状部材)、pHセンサ9、pH制御器10、酸原液ポンプ11、酸原液12を貯蔵する酸原液タンク13、巻出ロール14a、14bを備える。なお、pH制御器10、酸原液ポンプ11及び酸原液タンク13は、本発明における原液供給装置を構成している。
(・・・中略・・・)
【0018】
吊り棒6は、酸処理液2の液面に対峙するように酸処理槽3の上方に設けられた棒状部材である。すなわち、この吊り棒6は、一対の巻取ロール5a、5bの中間、かつ、当該巻取ロール5a、5bと平行な姿勢になるように、両端が船本体1の上部に固定されている。このような吊り棒6は、一対の巻取ロール5a、5bに各々巻き取られる海苔網4と干渉しない位置に、つまり海苔網4の侵入方向に対して各々の巻取ロール5a、5bの後方に設けられている。
【0019】
樹脂シート7は、略長方形かつ可撓性を有するシート部材であり、例えば塩化ビニル製の白色シートである。この樹脂シート7は、一方の長辺(上端)が吊り棒6に固定され、当該吊り棒6から酸処理液2の液面に向かって垂下する。また、この樹脂シート7は、図示するように、他方の長辺(下端)が酸処理液2の液面から間隔Dを空けた位置となるように、酸処理液2の液面より上方に位置するように設けられている。
【0020】
チューブ8A、8Bは、樹脂シート7の両側に吊り棒6に沿って設けられた管状部材である。このチューブ8A、8Bには、複数の吐出孔8a、8bが長さ方向に所定間隔で形成されており、例えば塩化ビニル製である。各吐出孔8a、8bは、酸原液12を樹脂シート7に向かって吐出するように、下方に対して樹脂シート7側に傾斜した角度で形成されている。
【0021】
ここで、吊り棒6、樹脂シート7及びチューブ8A、8Bは、本発明における原液吐出部を構成している。すなわち、吊り棒6、樹脂シート7及びチューブ8A、8Bは、一対の巻取ロール5a、5bの間に酸原液12を吐出する。」

(イ)「図1



(ウ)「図2



イ 本件発明1の「前記原液吐出部は、前記一対の巻取ロールに沿って前記酸処理槽の上方に設けられる管状部材であり、」と、発明の詳細な説明に記載されたものとの対比

発明の詳細な説明には、吊り棒6は、「一対の巻取ロール5a、5bの中間、かつ、当該巻取ロール5a、5bと平行な姿勢になるように、両端が船本体1の上部に固定されている」ものであって「酸処理液2の液面に対峙するように酸処理槽3の上方に設けられた棒状部材」であることが記載される。
そうすると、吊り棒6は、「一対の巻取ロールに沿って酸処理槽3の上方に設けられる」ものといえる。
発明の詳細な説明には、「チューブ8A、8B」について「吊り棒6に沿って設けられた管状部材である」こと、「酸原液12」を吐出する「吐出孔8a、8b」が形成されていること、が記載される。
そうすると、発明の詳細な説明には、酸原液を吐出する原液吐出部である「チューブ8A、8B」は、吊り棒6に沿って設けられた管状部材であることが記載されているといえる。また、吊り棒6は「一対の巻取ロールに沿って前記酸処理槽の上方に設けられる」ものであるから、吊り棒6に沿って設けられた管状部材である「チューブ8A、8B」も「一対の巻取ロールに沿って前記酸処理槽の上方に設けられる」ものである。
よって本件発明1の「前記原液吐出部は、前記一対の巻取ロールに沿って前記酸処理槽の上方に設けられる管状部材であり、」は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

ウ 本件発明1の原液吐出部の拡張一般化(「前記原液吐出部は、前記一対の巻取ロールに沿って前記酸処理槽の上方に設けられる管状部材であり、」との発明特定事項において原液吐出部に樹脂シートが含まれないこと)について

(ア)本件発明1の課題について
本件発明1は海苔網を酸処理液に浸漬させる処理を行うものであり、酸原液が海苔網(海苔)に接触すれば海苔の品質が劣化し得ることは自明であるから、原液吐出部を、前記酸処理槽の上方に設けるにあたり、酸原液の海苔網(海苔)への接触を抑制することは、当業者に自明の課題といえる。

(イ)原液吐出部に樹脂シートを含まないことによる拡張ないし一般化について
しかし、樹脂シートへの吐出が当該課題を解決する必須の要件であるというものではない。
申立人は、「一般的な当業界の箱型船では吐出口から処理液上面までの高さは通常:10?50cmであり、この場合、・・・船本体1の揺動(海上であるので、更に波の影響や風邪の影響(当審註:「風の影響」の誤記と認める)などにより、巻き取ロール5a又は5bで巻取っている(巻取り厚みが増加する)海苔網に滴下される水滴などが飛ばされて直接接触し、海苔にダメージを与えて生育を阻害する可能性が高い」と主張しているが、吐出口の位置は申立人の主張する位置とは限らず、高さや巻取ロールとの配置によってはこのような不都合を生じないようにすることも十分想定することができる。

そうすると、酸原液が海苔網(海苔)に接触することを抑制するための構成として樹脂シートを含まなくても酸原液が海苔網(海苔)に直接接触しないこと、また酸原液の酸処理液への混ざり易さを良好とすることの2つの条件を同時に充足することができると認められる。
そうすると、原液吐出部に樹脂シートが含まれず、本願の課題が解決できないとの理由で、「前記原液吐出部は、前記一対の巻取ロールに沿って前記酸処理槽の上方に設けられる管状部材であり、」との発明特定事項が発明の詳細な説明に記載されたものではないとは言えない。

(3) 小括
以上のとおりであるから、「前記原液吐出部は、前記一対の巻取ロールに沿って前記酸処理槽の上方に設けられる管状部材であり」とされる本件発明1及びそれを引用する本件発明2及び3は、発明の詳細な説明に記載された発明である。

3 付加的検討
申立人は、特許法第44条第1項(特許出願の分割要件)違反も主張しているが、当該理由により本件特許は取り消されるべきであると主張しているわけではなく、また、当該理由は、特許法第113条各号に規定する特許異議申立ての理由に該当しない。
よって、当該主張については検討を要するものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。




 
異議決定日 2020-12-14 
出願番号 特願2017-73990(P2017-73990)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A01G)
P 1 651・ 121- Y (A01G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 圭伸川野 汐音  
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 有家 秀郎
土屋 真理子
登録日 2020-03-06 
登録番号 特許第6672215号(P6672215)
権利者 光洋通商株式会社
発明の名称 箱型船  
代理人 清水 雄一郎  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 仁内 宏紀  
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