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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1370035
異議申立番号 異議2020-700671  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-02-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-08 
確定日 2021-01-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第6662312号発明「固形組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6662312号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6662312号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成27年11月27日(優先権主張 平成26年12月5日)を出願日とする特許出願2015-231564号の一部を、平成29年1月13日に新たな特許出願(特願2017-4042号)としたものであり、令和2年2月17日にその特許権の設定登録がされ、同年3月11日に特許掲載公報が発行された。
その後、当該特許に対し、令和2年9月8日付けで特許異議申立人 蔦原説子(以下、「申立人1」という。)が、令和2年9月11日付けで特許異議申立人 大津理津子(以下、「申立人2」という。)が、それぞれ特許異議の申立てを行った。

第2 本件特許発明

特許第6662312号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制するための、オンジエキス1質量部に対し0.1?2質量部のカルメロースカルシウムの使用。
【請求項2】
オンジエキス1質量部に対し0.1?2質量部のカルメロースカルシウムを添加することによって、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制する方法。」

以下、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明を、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」といい、これらをまとめて「本件発明」ということもある。

第3 申立理由の概要

1 申立人1の申立理由及び証拠

(1)申立理由
ア 申立理由1A(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)
本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証?甲第13号証に示される優先日当時の技術常識及び先行技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、何ら格別な効果を有しておらず、進歩性を有しない。
したがって、本件発明1及び2の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

イ 申立理由1B(特許法第36条第4項第1号、同法第113条第4号)
本件明細書に記載された試験結果は合理性を欠き、特にオンジエキス濃度が31%(オンジエキス末換算)を超える固形組成物に適用する態様、またはオンジエキスと乳糖と併用しない態様について、本件発明を当業者が実施しうる程度に明確かつ充分に記載していない。
したがって、本件発明1及び2の特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

ウ 申立理由1C(特許法第36条第6項第1号、同法第113条第4号)
本件発明は、本件明細書において発明の課題が解決できることを当業者が認識できる範囲を超えたものであり、特にオンジエキス濃度が31%(オンジエキス末換算)を超える固形組成物に適用する態様、またはオンジエキスと乳糖と併用しない態様について、当業者が本件明細書に基づいて本件発明の課題を解決すると認識し得る範囲を超えている。
したがって、本件発明1及び2の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(2)申立人1が提出した証拠
申立人1は、甲第1号証から甲第18号証を提出している。以下、申立人1が提出した甲第1号証、甲第2号証、・・・を、それぞれ甲1、甲2・・・のように省略して記載する。

・甲1:韓国特許公開第10-2007-0018571号公報(抄訳添付)
・甲2:「単味生薬のエキス製剤の開発に関するガイドライン」(案)に関する意見募集について、平成26年9月1日、厚生労働省医薬食品局審査管理課
・甲3:平山秀樹、博士論文「漢方エキス製剤の新規安定性評価法に関する研究」、1999年、p.195-199(抜粋)
・甲4:漢方調剤研究、平成9年9月1日、Vol.5、No.4、p.9
・甲5:特開2014-166994号公報
・甲6:特開2001-181192号公報
・甲7:臨床と薬物治療、1992年、Vol.11、No.3、p.16-20
・甲8:特開2012-1474号公報
・甲9:ウチダのオンジMの添付文書、公開日不明
・甲10:紀伊國屋 オンジMの添付文書、公開日不明
・甲11:日本医薬品添加剤協会編、「医薬品添加物事典 2000」、株式会社薬事日報社、2000年4月28日、p.20、21、65、226
・甲12:特開2011-178690号公報
・甲13:特開2007-291045号公報
・甲14:調剤と情報、2012年、Vol.18、No.5、p.97-102
・甲15:厚生労働省、第4回薬剤師国家試験出題制度検討会、資料3のp.12、[0nline]、2007年12月27日開催、インターネット
<URL:https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/dl/s1227-9d_0012.pdf>
・甲16:確認試験1、作成者及び作成時期不明
・甲17:確認試験2、作成者及び作成時期不明
・甲18:「試験報告 生薬オンジエキス末の変色試験」、JAPAN TESTING LABORATORIES 株式会社、2020年5月28日発行

2 申立人2の申立理由及び証拠

(1)申立理由
ア 申立理由2A(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)
本件特許発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第7号証、甲第9号証の記載に基づいて、優先日当時の当業者が容易に発明をすることができたものであり、何ら予想外の効果を有しておらず、進歩性を有しない。
したがって、本件発明1及び2の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

イ 申立理由2B(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)
本件特許発明1及び2は、甲第8号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第7号証、甲第9号証の記載に基づいて、優先日当時の当業者が容易に発明をすることができたものであり、何ら予想外の効果を有しておらず、進歩性を有しない。
したがって、本件発明1及び2の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

ウ 申立理由2C(特許法第36条第4項第1号、同法第113条第4号)
本件明細書の試験結果は再現性を有しておらず、また、オンジエキス濃度が30.9%以外である場合、及び乳糖を含有しない場合について、本件発明を当業者が実施しうる程度に明確かつ充分に記載していない。
したがって、本件発明1及び2の特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

エ 申立理由2D(特許法第36条第6項第1号、同法第113条第4号)
本件発明についての本件明細書の試験結果は再現性を有しておらず、また、オンジエキス濃度が30.9%以外である場合、及び乳糖を含有しない場合について、当業者が本件明細書に基づいて本件発明の課題を解決できると認識し得る範囲を超えており、サポート要件を満足しない。
したがって、本件発明1及び2の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(2)申立人2が提出した証拠
申立人2は、甲第1号証から甲第9号証を提出している。以下、申立人2が提出した甲第1号証、甲第2号証、・・・を、申立人1が提出した証拠と区別するために、それぞれ甲1’、甲2’・・・のように省略して記載する。
・甲1’:国際公開2005/120533号
・甲2’:特開2014-166994号公報
・甲3’:特開2013-32346号公報
・甲4’:日本医薬品添加剤協会 訳編、「改訂 医薬品添加物ハンドブック」、2007年2月28日、株式会社薬事日報社、p.216,217、587-589
・甲5’:特開平5-139982号公報
・甲6’:特開平4-243832号公報
・甲7’:特開2011-178690号公報
・甲8’:特開平10-130162号公報
・甲9’:追試結果、作成者及び作成時期不明

第4 申立人1が提出した証拠に記載されている事項
申立人1が提出した甲1?甲18に記載された事項は次のとおりである。なお、外国語で記載された文献については、当審の訳で示す。

1 甲1に記載された事項
(甲1ア)
「1.オンジ(Polygala tenuifolia Willdenow)エキスを有効成分として含む認知症疾患の予防及び治療用医薬組成物。」(特許請求の範囲請求項1)

(甲1イ)
「前記目的を達成するために、本発明は、オンジ(Polygala tenuifolia Willdenow)エキスを有効成分として含む認知症疾患の予防及び治療用医薬組成物を提供し、前記抽出物は、水、C1ないしC4の低級アルコール又はこれらの混合溶媒から選択された溶媒、望ましくは水に可溶な抽出物を含む。」(4ページ下から5行?3行)

(甲1ウ)
「本発明による抽出物を含む組成物は、医薬組成物の製造において通常的に使用される適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。本発明による抽出物を含む組成物は、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの形態で、経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射液として製剤化されうる。本発明による抽出物を含む組成物に使用することができる担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アラビアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油が含まれる。製剤化する場合には、例えば、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用することができる。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸薬、粉末、顆粒、カプセルなどが含まれる。これらの固形製剤は、前記抽出物に少なくとも一つ以上の賦形剤例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混合して調剤される。さらに、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤を使用することができる。経口のための液体製剤には、懸濁剤、静脈内溶液、エマルジョン、シロップ剤などが含まれる。一般的に使用される単純な希釈剤である水及び流動パラフィンに加えて、湿潤剤、甘味料、香料、保存剤などのさまざまな賦形剤を含んでもよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶液、懸濁液、乳濁液、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶液、懸濁液は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、及びオレイン酸エチルのような注射可能なエステルを含みうる。坐剤の基剤として、ウィテプゾール、マクロゴール、tween61、カカオバター、ラウリンバター、グリセロゼラチンなどを使用することができる。本発明の組成物の好ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾患の程度、剤形、投与の経路及び期間に依存するが、当業者により、適切に選択されうる。」(5ページ10?27行)

(甲1エ)
「実施例1 オンジエキスの準備
伝統薬剤を見つけるために、小児約定集結(伝統的な中国の薬学書)という文献を調査した。オンジ(Polygala tenuifolia Willdenow)の新鮮な根を大邱の東洋医学センターで入手し、大邱医大でオンジエキスを得て単一の薬剤として試験した。オンジの水抽出物の抽出は、1300ccの水に600gを入れ、100℃で3時間煮ることにより行った。抽出後、ガーゼを用いてフィルターを行い、フィルターされたものを凍結乾燥し、次いで4℃に乾燥保管して、抽出物の粉末を得た。」(実施例1 9ページ)

(甲1オ)
「製剤例2 錠剤の製造
実施例1のオンジエキス 200mg
ラクトース 100mg
澱粉 100mg
ステアリン酸マグネシウム 適量
上記の成分を混合して、通常の錠剤の製造方法によって打錠して錠剤を製造する。」(製剤例2 9ページ)

2 甲2号証に記載された事項
(甲2ア)
「エキスの色はメイラード反応により、保管時にわずかずつ濃い色に傾くことがあるため、経時的な変化を加味して色の幅(○?○)を決めることが望ましい。」((別添)5ページ下から8?7行)

(甲2イ)
「5 オンジ
【用法及び用量】
大人(15歳以上)は1日量5gを、水約600mLをもって煮て約400mLに煮詰め、かすをこして取り去り、食前又は食間3回に分服する。
【効能又は効果】
高齢者の記憶力の改善」((別添)10ページ5?10行)

3 甲3に記載された事項
(甲3ア)
「漢方エキス製剤は,天然物である生薬に由来する多種多様な有機化合物複合体から構成されるために,合成医薬品に比べると品質確保の難しい薬剤である。」(196ページ7?9行)

(甲3イ)
「よって,漢方エキス製剤の加熱保存での劣化は,Maillard反応などによって生成したラジカルなどの活性分子種が,連鎖反応を繰り返しながら着色高分子成分を生成し,最終的に分子量の大きな褐変物質(メラノイジン)を生成して安定化していく現象と推定した。」(198ページ8?11行)

4 甲4に記載された事項
(甲4ア)
「漢方エキス製剤は,熱水抽出して得た乾燥エキス粉末に賦形剤などを加え,吸湿性を抑えて安定性を高めていますが,一般の合成医薬品に比べると吸湿性が高い製剤といえます。また,品目の違いによって吸湿性に差が認められます(図2)。漢方エキス製剤(医療用)を包装から取り出してグラシン紙包装などの防湿効果の低い包装材質で保存すると吸湿し,製剤中の水分含量がおよそ7%以上になると,変色や固結(ケーキング)などの外観の変化を起こしやすい特徴をもっています。また,過度に吸湿した製剤では,色や形状などの外観変化に加え,水分活性が増加して含有成分の変化ならびにカビやバクテリアによる汚染などのおそれがあります。したがって,漢方エキス製剤(医療用)の調剤あるいは投薬後の保管に際しては,吸湿に対する十分な配慮が必要です。」(9ページ右欄1?14行)

5 甲5に記載された事項
(甲5ア)
「一般的に漢方エキスの変色の原因は、エキスの高い吸湿性にあると考えられており、その変色の原因となる吸湿を抑制する方法としては、例えば、製造場所や保管場所における温湿度の徹底した管理が挙げられ、実際の製造現場においてもそのような管理が行われている。しかし、この方法においては、作業効率の低下、管理コストの増大等の問題がある。」(【0003】)

(甲5イ)
「一方、漢方エキスを配合した製剤における吸湿の抑制方法としては、特許文献1?3等、漢方エキスに種々の医薬品添加剤を配合することが知られている。・・・」(【0005】)

6 甲6に記載された事項
(甲6ア)
「【従来の技術】一般に漢方エキスや動物・植物を抽出したエキスは糖類、アミノ酸、有機酸等の吸湿性の高い構成成分を含み、エキスそのものも吸湿しやすいものが多い。特に噴霧乾燥したエキスは吸湿性が高い。また、これらのエキスは吸湿により空気による酸化を受けやすくなり、安定性が低いうえ、カプセル充填などの製剤化においてもその吸湿性のため機械による充填が不可能になるものがほとんどで実用に耐えられないものが多いのが現状である。」(【0002】)

(甲6イ)
「現在、このような問題をさけるために漢方薬エキスや動物・植物を抽出したエキスにトウモロコシでんぷん、結晶セルロースなどの賦形剤を混合又は合わせ、乾燥処理することで防湿効果をあげていた。・・・」(【0003】)

7 甲7に記載された事項
(甲7ア)
「エキス製剤自体は本来きわめて吸湿性が高く,顆粒剤・細粒剤・粉末を防湿包装を行わない裸状態で放置した場合,とくに高温多湿の状態でなくとも1日以内に変色・ケーキング等の変化を起こす製剤(処方)が多数存在する。」(17ページ左欄下から15?10行)

8 甲8に記載された事項
(甲8ア)
「エキス末とは、生薬や漢方薬を抽出し、濃縮及び乾燥して得られたものである。防風通聖散等に代表されるエキス末はべたつきがあり、吸湿しやすく、粉体流動性が悪く、非常に取り扱い難い。」(【0002】)

9 甲9に記載された事項
(甲9ア)
「1 天産物(生薬)の性質上吸湿しやすいものがありますので、保存には十分ご注意ください。保存が悪いと、カビ、虫害等の発生する原因になることがあります。
2 特に開封後は、湿気を避け、直射日光の当たらない涼しい場所に保管してください。」(「取扱い上の注意」)

10 甲10に記載された事項
(甲10ア)
「-脱酸素剤使用-
開封するまでは、包装内部の酸素を吸収し、カビ・害虫の発生を防止し、製品の酸化防止の効果があります。
本品は天産品であり、その性質上変質しやすい為開封後は、低温・低湿で通気性の良い場所に保存し、なるべく早めに御使用下さい。」(「脱酸素剤使用」の項)

11 甲11に記載された事項
(甲11ア)
「カルメロースカルシウム
・・・
【概要】白色?帯黄白色の粉末.セルロースの多価カルボキシメチルエーテルのカルシウム塩.においはない.エタノール又はエーテルにほとんど溶けない.水を加えると膨潤し懸濁液となる.pH4.5?6.0(1g,100mL,懸濁液).吸湿性である.
・・・
【用途】安定(化)剤,滑沢剤,吸着剤,懸濁(化)剤,光沢化剤,コーティング剤,賦形剤,崩壊剤,崩壊補助剤.
・・・」(65ページ カルメロースカルシウムの項)

12 甲12に記載された事項
(甲12ア)
「【発明が解決しようとする課題】
食品、医薬品などの原料としてサラシア属植物成分を使用する場合、サラシア属植物の抽出物を濃縮、乾燥し、粉末化して得られるサラシアエキス末などを使用することができる。サラシアエキス末などのサラシア属植物の抽出物はサラシア属植物が有する種々の薬効成分を含んでおり、健康食品、機能性食品などの原料として好ましく用いることができる。しかし、サラシア属植物抽出物は酸化されやすく、サラシア属植物抽出物を含む食品は保存中に酸化による変色が生じる場合がある。また、サラシアエキス末は吸湿性が高く、吸湿により粘着性が高まる性質を有するため、サラシアエキス末を成分とした食品では保存中の吸湿による品質の低下が生じやすく、特に、サラシアエキス末を成分とした錠剤では、保存中に錠剤の崩壊性が低下する点が問題となる。その一方で、サラシア属植物成分を効率的に摂取するためには、サラシア属植物抽出物を高含量で含む食品、医薬品の開発が望まれている。」(【0006】)

(甲12イ)
「【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題解決のために鋭意研究を進めたところ、サラシア属植物抽出物を、カルボキシメチルセルロースまたはその金属塩、および二酸化ケイ素と共に配合することにより、高度な保存安定性を有する組成物を調製することができることを見出し、本発明を完成させた。」(【0009】)

(甲12ウ)
「本発明で使用されるカルボキシメチルセルロースまたはその金属塩としては、例えばカルボキシメチルセルロースならびにそのナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩など、およびそれらの混合物が挙げられ、カルボキシメチルセルロースとその金属塩を併用してもよい。特に、カルボキシメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースカルシウムを好ましく使用することができ、または両者を併用することも好ましい。カルボキシメチルセルロースまたはその金属塩は、食品添加物または医薬品原料として使用できるものであれば特に限定されず、例えばエーテル化度は0.45?1.0(mol/C6)を使用することができる。具体的には、NS-300(ニチリン化学工業株式会社製)、E.C.G-505(ニチリン化学工業株式会社製)、E.C.G-FA(ニチリン化学工業株式会社製)などを使用することができる。」(【0019】)

(甲12エ)
「また、その他の成分として、結晶セルロース(セオラスFD301、旭化成ケミカルズ株式会社製)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Caと称する、E.C.G-FA、ニチリン化学工業株式会社製)、二酸化ケイ素(アエロジル200FAD、日本アエロジル株式会社製)、ステアリン酸マグネシウム(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を使用した。
・・・
錠剤をアルミパウチに入れて密封し、温度50℃湿度60%条件で10日間保管し、保管前後で錠剤の変色と崩壊時間を比較した。変色の評価は、製造直後に薄茶色であった錠剤と比較しての変色を目視により確認した。評価基準については、変色が認められないものを◎、錠剤の一部に弱い変色が認められるものを○、錠剤の全体に変色が認められるが、錠剤の色は薄茶色であるものを△、錠剤の全体に強い変色が認められ、錠剤が黒またはそれに近い色になったものを×と表示した。」(【0036】、【0038】)

(甲12オ)


」(表1)

(甲12カ)


」(表2)

(甲12キ)


」(表3)

(甲12ク)



」(表4)

13 甲13に記載された事項
(甲13ア)
「一方、ジフェンヒドラミンは苦味があり、またジフェンヒドラミンを含有する製剤は経時的に変色する等の問題があり、それらの解決手段として、(1)平均粒子径30?500μmのジフェンヒドラミンを用いる(特許文献1)、(2)遮光性物質と水溶性高分子物質を含有する皮膜で被覆する(特許文献2)、(3)低膨潤性高分子及び高膨潤性高分子を併用する(特許文献3)等が報告されている。」(【0003】)

(甲13イ)
「そこで本発明者は、ジフェンヒドラミンの溶出性の確保と変色防止の両者を同時に解決すべく、ジフェンヒドラミンと、賦形剤と、ジフェンヒドラミンの溶出性確保のための崩壊剤との組み合せについて種々検討したところ、崩壊剤としてカルボキシメチルセルロースカルシウムを採用し、かつこれをジフェンヒドラミンと賦形剤を含有する造粒物を調製した後に、粉末として添加し、次いで打錠すれば、ジフェンヒドラミンの溶出性が確保され、かつ経時的な変色のない錠剤が得られることを見出し、本発明を完成した。」(【0005】)

(甲13ウ)
「試験例1
保存安定性試験
実施例1及び比較例1で得られた錠剤をガラス瓶に入れ、蓋をした後、外観変化を観察した。外観変化は製造直後、60℃-3日間保存後及び80℃-1日間保存後の製剤を目視により評価し、白色のものを〇、黄褐色の斑点が生じたものを×とした。その結果を表1に示した。
【表1】

カルボキシメチルセルロースカルシウムを混合して練合、造粒して製造した比較例1のジフェンヒドラミン含有錠剤では、明らかな変色が観察された。一方、造粒後にカルボキシメチルセルロースカルシウムを粉末として添加した実施例1のジフェンヒドラミン含有錠剤では、全く変色が認められなかった。これらのことから、ジフェンヒドラミン含有錠剤の製造方法において、ジフェンヒドラミンの造粒後にカルボキシメチルセルロースカルシウムを粉末として添加する製造方法により有意に変色が抑制できることが判明した。
さらに、実施例1で得られた錠剤を用いて、第十四改正日本薬局方解説書記載の溶出試験法第2法(パドル回転数;50回転、試験液;精製水、試験液量;900mL)による塩酸ジフェンヒドラミンの溶出試験を行ったところ、試験開始15分後において90%以上の溶出率を示し、本発明方法により得られるジフェンヒドラミン含有錠の溶出性は良好であった。」(【0024】?【0026】)

14 甲14に記載された事項
(甲14ア)
「乳糖との混和により変色する薬剤もありますので注意が必要です。」(98ページ右欄下から13?12行)

15 甲15に記載された事項
(甲15ア)




16 甲16に記載された事項
(甲16ア)
「確認試験1
オンジエキス濃度が高濃度である場合の変色抑制効果、ならびに、α化デンプンとカルメロースカルシウムの変色抑制効果の対比

1.試験方法
オンジエキスと各成分をビニール袋内で混合した後、篩を通してオンジエキス含有粉体を調製した。25℃ 60% RH条件下で24時間静置したのち、2gずつガラスビンに入れて密閉し、65℃条件下で3日保存した。保存後の粉体について、それぞれ製造直後品との色差Δ E*(ab)を、分光式色差計を用いて測定したa値、b値、L値を用いて算出した。



3.考察
1) オンジエキス31%での比較(試料1?5)
カルメロースカルシウムによって用量依存的に変色抑制効果が認められた。しかしα化デンプンの方が、変色抑制効果が顕著であった。
2) オンジエキス40%での比較(試料6?10)
カルメロースカルシウムによって用量依存的に変色抑制効果が認められた。しかしα化デンプンの方が、変色抑制効果が顕著であった。
3) オンジエキス50%での比較(試料11?15)
カルメロースカルシウムによる変色抑制効果は認められなかった。
4) オンジエキス60%での比較(試料16?20)
カルメロースカルシウムによる変色抑制効果は認められなかった。」(2?5ページ)

17 甲17に記載された事項
(甲17ア)
「確認試験2
オンジエキス濃度に対する変色作用の変動について

1.試験方法
オンジエキスと各成分をビニール袋内で混合した後、篩を通してオンジエキス含有粉体を調製した。25℃ 60% RH条件下で24時間静置したのち、2gずつガラスビンに入れて密閉し、65℃条件下で3日保存した。保存後の粉体について、それぞれ製造直後品との色差Δ E*(ab)を、分光式色差計を用いて測定したa値、b値、L値を用いて算出した。

2.試験結果


3.考察
オンジエキス濃度が40%付近で、変曲点があることが理解される。」(2?3ページ)

18 甲18に記載された事項
(甲18ア)
「試験報告書
生薬オンジエキス末の変色試験」

(甲18イ)
「6.試験方法・条件
6-1.試験方法
1:生薬エキスと賦形剤を下表の割合で各10gとなるうようにポリ袋に入れ、よく振り混ぜる
※本試験を行う際は未開封の生薬オンジエキスを開封して使用する



2:500μmの篩にかけた後、再度ポリ袋でよく混ぜ、各検体4gをシャーレ上で平にし、色差を測定する(各検体5点)
3:シャーレ上の検体4gを薄く広げた状態で、25℃/60%RH条件下で24時間静置
その後、各サンプル2gずつ別のガラス瓶に入れて密封し、写真撮影を行う
4:ガラス瓶に入れた2gの検体を65℃条件下で3日間保管し、その後写真撮影を行う
5:保存後の検体の表面で色差を測定する(各検体5点)



(甲18ウ)


第5 申立人2が提出した証拠に記載されている事項
申立人2が提出した甲1’?甲9’に記載された事項は以下のとおりである。なお、外国語で記載された文献については、当審の訳で示す。

1 甲1’に記載された事項
(甲1’ア)
「実施例1:熱水抽出によるイトヒメハギ(オンジ)抽出物の調製
オンジ乾燥粉末500gを、3回蒸留した水1リットルを含むフラスコに入れ、100℃の熱水で1時間抽出した。抽出物はガーゼで濾過した。濾液を真空フィルター(Eyela社、日本)で濃縮し、凍結乾燥し、発明に係るオンジ抽出物を調製した。結果、115gの乾燥抽出物を得た。」(段落[25][26])

(甲1’イ)
「製造例2:錠剤の調製
実施例1で調製したオンジ抽出物100.0mg、コーンスターチ90.0mg、乳糖175.0mg、L-ヒドロキシプロピルセルロース15.0mg、ポリビニルピロリドン90 5.0mg及びエタノール適量を均一に混合し、湿式造粒により造粒し、ステアリン酸マグネシウム1.8mgと混合し、400mgの錠剤に圧縮した。」(段落[77][78])

2 甲2’に記載された事項
(甲2’ア)
「医薬品における性状は、その品質項目として必須である。中でも、製剤の経時的な色の変化は服用する者に心理的に大きな不安感を与える要因にもなるため、その外観上の変色を抑えることは、医薬品やサプリメント等の開発にあたって重要な課題の一つである。特に漢方エキスの場合は、天然物の抽出成分で、種々の微量成分を多様に含有し、またその構造が未知の成分も含まれることなどから、通常の医薬品に比べ品質管理が難しく、保存条件によっては、エキスの変色やカビの発生など漢方エキスの品質低下がみられるなど、エキスの製造過程や製剤化工程において取扱いが困難であることが課題となっている。
一般的に漢方エキスの変色の原因は、エキスの高い吸湿性にあると考えられており、その変色の原因となる吸湿を抑制する方法としては、例えば、製造場所や保管場所における温湿度の徹底した管理が挙げられ、実際の製造現場においてもそのような管理が行われている。しかし、この方法においては、作業効率の低下、管理コストの増大等の問題がある。
また、製造後の漢方エキスを配合した製剤の変色を抑制する方法としては、製剤を保存する容器内に乾燥剤を使用したり、製剤の包装材質を防湿素材にする工夫などの方法がとられている(非特許文献1)。
一方、漢方エキスを配合した製剤における吸湿の抑制方法としては、特許文献1?3等、漢方エキスに種々の医薬品添加剤を配合することが知られている。しかし、漢方エキス製剤のべたつきを抑制し、その製剤における崩壊性、硬度、耐摩損度等の改善が図られているに止まっており、よりデリケートに影響を受けやすい変色の改善にまでは至っておらず、なお漢方エキスの変色を抑えることには課題を残していた。」(【0002】?【0005】)

(甲2’イ)
「【請求項1】
(A)漢方エキス、及び、(B)ポリ酢酸ビニルを含有する固形製剤。
【請求項2】
(A)漢方エキスが、防已黄耆湯、葛根湯、葛根湯加川キュウ辛夷、小青竜湯、当帰芍薬散、加味帰脾湯、加味逍遙散、桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸料加ヨク苡仁、補中益気湯、防風通聖散、牛車腎気丸、杞菊地黄丸、麻黄湯、麻黄附子細辛湯、桂枝加朮附湯、桂枝加苓朮附湯、十全大補湯、疎経活血湯、芍薬甘草湯、桂枝人参湯、桃核承気湯、甘草瀉心湯、抑肝散、抑肝散加芍薬黄連、麦門冬湯、五苓散、五虎湯、六君子湯および越婢加朮湯からなる群から選択される少なくとも1種の漢方エキスである請求項1記載の固形製剤。
【請求項3】
(B)ポリ酢酸ビニルが、(A)漢方エキス 100重量部に対し、0.1?10.0重量部である請求項1または2に記載の固形製剤。
【請求項4】
漢方エキス含有量が50重量%?99.5重量%である、請求項1?3のいずれかの固形製剤。
【請求項5】
固形製剤が、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤のいずかである請求項1?4のいずれかの固形製剤。
【請求項6】
成人1日あたりの配合量が、(A)成分 500?6000mg、(B)成分0.5?600mgである請求項1?5のいずれかの固形製剤。
【請求項7】
ポリ酢酸ビニルを含有することを特徴とする、漢方エキスを含有する固形製剤の変色抑制剤。」(特許請求の範囲)

(甲2’ウ)
「【課題を解決するための手段】
本発明者は、漢方エキスの変色を抑制するべく鋭意検討したところ、(A)漢方エキスと(B)ポリ酢酸ビニルとを固形製剤中に含有させることにより、漢方エキスを含有する固形製剤の変色が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。」(【0010】)

(甲2’エ)
「本発明で用いられる漢方エキスとは、通常の漢方処方の原料生薬を、加熱抽出してできた液から溶媒を溜去し、加工したものである。
漢方処方としては、例えば、『傷寒論』(しょうかんろん)、『金匱要略』(きんきようりゃく)、「改訂 一般用漢方処方の手引き」(監修 財団法人 日本公定書協会、編集 日本漢方生薬製剤協会、発行 じほう社)に等に記載されている漢方処方が挙げられる。 具体的な漢方処方としては、防已黄耆湯、安中散、安中散加茯苓、胃風湯、胃苓湯、茵チン蒿湯、茵チン五苓散、温経湯、温清飲、温胆湯、延年半夏湯、黄耆建中湯、黄ゴン湯、応鐘散、黄連阿膠湯、黄連解毒湯、黄連湯、乙字湯、乙字湯去大黄、化食養脾湯、カッ香正気散、葛根黄連黄ゴン湯、葛根紅花湯、葛根湯、葛根湯加川キュウ辛夷、加味温胆湯、加味帰脾湯、加味解毒湯、加味逍遙散、加味逍遙散加川キュウ地黄、加味平胃散、乾姜人参半夏丸、甘草瀉心湯、甘草湯、甘麦大棗湯、甘露飲、帰耆建中湯、桔梗湯、帰脾湯、キュウ帰膠艾湯、キュウ帰調血飲、キュウ帰調血飲第一加減、響声破笛丸、杏蘇散、苦参湯、駆風解毒散、荊芥連翹湯、鶏肝丸、桂枝湯、桂枝加黄耆湯、桂枝加葛根湯、桂枝加厚朴杏仁湯、桂枝加芍薬生姜人参湯、桂枝加芍薬大黄湯、桂枝加芍薬湯、桂枝加朮附湯、桂枝加苓朮附湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、桂枝加苓朮附湯、桂枝五物湯、桂枝人参湯、桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸料加ヨク苡仁、啓脾湯、荊防敗毒散、桂麻各半湯、鶏鳴散加茯苓、堅中湯、甲字湯、香砂平胃散、香砂養胃湯、香砂六君子湯、香蘇散、厚朴生姜半夏人参甘草湯、五虎湯、牛膝散、五積散、牛車腎気丸、呉茱萸湯、五物解毒散、五淋散、五苓散、柴陥湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴胡桂枝湯、柴胡清肝湯、柴芍六君子湯、柴朴湯、柴苓湯、左突膏、三黄散、三黄瀉心湯、酸棗仁湯、三物黄ゴン湯、滋陰降火湯、滋陰至宝湯、紫雲膏、四逆散、四君子湯、滋血潤腸湯、滋腎通耳湯、七物降下湯、柿蒂湯、四物湯、炙甘草湯、芍薬甘草湯、鷓鴣菜湯、蛇床子湯、十全大補湯、十味敗毒湯、潤腸湯、蒸眼一方、生姜瀉心湯、小建中湯、小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏、小承気湯、小青竜湯、小青竜湯加杏仁石膏、小青龍湯加石膏、椒梅湯、小半夏加茯苓湯、消風散、升麻葛根湯、逍遙散、四苓湯、辛夷清肺湯、秦キュウ姜活湯、秦キュウ防風湯、参蘇飲、神秘湯、参苓白朮散、清肌安蛔湯、清湿化痰湯、清上ケン痛湯(駆風触媒)、清上防風湯、清暑益気湯、清心蓮子飲、清肺湯、折衝飲、川キュウ茶調散、千金鶏鳴散、銭氏白朮散、疎経活血湯、蘇子降気湯、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯、大建中湯、大柴胡湯、大柴胡湯去大黄、大半夏湯、竹茹温胆湯、治打撲一方、治頭瘡一方、治頭瘡一方去大黄、中黄膏、調胃承気湯、丁香柿蒂湯、釣藤散、猪苓湯、猪苓湯合四物湯、通導散、桃核承気湯、当帰飲子、当帰建中湯、当帰散、当帰四逆湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰芍薬散、当帰湯、当帰貝母苦参丸、独活葛根湯、独活湯、二朮湯、二陳湯、女神散(安栄湯)、人参湯(理中丸)、人参養栄湯、排膿散、排膿湯、麦門冬湯、八味地黄丸、半夏厚朴湯、半夏瀉心湯、半夏白朮天麻湯、白虎湯、白虎加桂枝湯、白虎加人参湯、不換金正気散、伏竜肝湯、茯苓飲、茯苓飲加半夏、茯苓飲合半夏厚朴湯、茯苓沢瀉湯、分消湯(実脾飲)、平胃散、防已茯苓湯、防風通聖散、補気健中湯(補気建中湯)、補中益気湯、補肺湯、麻黄湯、麻黄附子細辛湯、麻杏甘石湯、麻杏ヨク甘湯、麻子仁丸、揚柏散、ヨク苡仁湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、六君子湯、立効散、竜胆瀉肝湯、苓姜朮甘湯、苓桂甘棗湯、苓桂朮甘湯、六味丸(六味地黄丸)、黄耆桂枝五物湯、解労散、加味四物湯、枳縮二陳湯、杞菊地黄丸、柴胡疎肝湯、紫蘇飲、芍薬甘草附子湯、沢瀉湯、竹葉石膏湯、知柏地黄丸、中建中湯、定悸飲、当帰芍薬散加黄耆釣藤、当帰芍薬散加人参、当帰芍薬散加附子、排膿散及湯、八解散、附子理中湯、味麦地黄丸、明朗飲、抑肝散加芍薬黄連、連珠飲、越婢加朮湯等が例示される。 これらの漢方処方の中でも、好ましくは、防已黄耆湯、葛根湯、葛根湯加川キュウ辛夷、小青竜湯、当帰芍薬散、加味帰脾湯、加味逍遙散、桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸料加ヨク苡仁、補中益気湯、防風通聖散、牛車腎気丸、杞菊地黄丸、麻黄湯、麻黄附子細辛湯、桂枝加朮附湯、桂枝加苓朮附湯、十全大補湯、疎経活血湯、芍薬甘草湯、桂枝人参湯、桃核承気湯、甘草瀉心湯、抑肝散、抑肝散加芍薬黄連、麦門冬湯、五苓散、五虎湯、六君子湯および越婢加朮湯であり、;更に好ましくは、防已黄耆湯、加味逍遙散、葛根湯、防風通聖散、及び、六君子湯が例示される。」(【0019】、【0020】)

3 甲3’に記載された事項
(甲3’ア)
「【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ケーキング(固化)および製剤の変色を有効に抑制できる生薬製剤(または漢方製剤)及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、生薬エキスまたは漢方エキス(特に軟エキス)に由来する成分の含有量が高くても、固化または変色を抑制できる組成物(造粒物など)及びその製造方法を提供することにある。」(【0009】、【0010】)

(甲3’イ)
「【請求項1】
生薬エキスまたは漢方エキスと吸着剤とを含む固形製剤であって、前記吸着剤が、吸着能が4?6ml/gである第1の吸着剤と、吸着能が2ml/g以上であり、かつ4ml/g未満である第2の吸着剤とを含む固形製剤。
【請求項2】
第1の吸着剤がケイ酸カルシウムであり、第2の吸着剤が、軽質無水ケイ酸およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択された少なくとも1種の吸着剤である、請求項1記載の固形製剤。
【請求項3】
第1の吸着剤と第2の吸着剤との割合が、前者/後者=20/80?90/10(質量比)である請求項1または2記載の固形製剤。
【請求項4】
生薬エキスが、ナンテンジツエキス、キキョウエキス、ショウキョウエキス、及びチンピエキスから選択された少なくとも一種の軟エキスである請求項1?3のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項5】
生薬エキスまたは漢方エキスが水分含有量20?40質量%の軟エキスである請求項1?4のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項6】
生薬エキスまたは漢方エキス100質量部に対して吸着剤の総量が10?45質量部である請求項1?5のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項7】
さらに解熱鎮痛剤を含む請求項1?6のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項8】
さらに、結合剤、賦形剤、崩壊剤および矯味剤から選択された少なくとも1つの成分を含有する請求項1?7のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項9】
散剤、顆粒剤又は錠剤の形態である請求項1?8のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項10】
吸着能が4?6ml/gである第1の吸着剤と、吸着能が2ml/g以上であり、かつ4ml/g未満である第2の吸着剤とを含む吸着剤と、生薬エキスまたは漢方エキスとを湿式造粒する固形製剤の製造方法。
【請求項11】
生薬エキスまたは漢方エキスを、吸着能が4?6ml/gである第1の吸着剤と、吸着能が2ml/g以上であり、かつ4ml/g未満である第2の吸着剤とを含む吸着剤に吸着させて湿式造粒し、造粒物のケーキング及び/又は変色を防止する方法。」(特許請求の範囲)

(甲3’ウ)
「【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、吸着量の高い第1の吸着剤(ケイ酸カルシウムなど)と、この第1の吸着剤よりも吸着量の低い第2の吸着剤(軽質無水ケイ酸など)との複数の吸着剤を用いると生薬エキスまたは漢方エキス(複数の軟エキスなど)を大量に原料として用いても、ケーキング(固化)を有効に防止でき、外観変化を起こしにくい固形製剤が得られることを見いだし、本発明を完成した。」(【0014】)

(甲3’エ)
「生薬エキスとは、生薬原末から水、エタノールのような有機溶媒またはその混合物を用いてエキスを抽出させたものをいう。また、生薬エキスは、生薬原末から抽出したエキスの濃縮エキスまたは複数の生薬から抽出したエキスまたはその混合物であってもよい。
生薬エキスに用いられる生薬の種類は、植物性の生薬のみならず動物性又は鉱物性の生薬であってもよく、特に制限されないが、日本薬局方に記載されている生薬が好ましく、例えば、アセンヤク、イレイセン(威霊仙)、ウイキョウ(茴香)、エンゴサク(延胡索)、オウギ(黄耆)、オウゴン(黄岑)、オウバク(黄柏)、オウヒ(桜皮)、オウレン(黄連)、オンジ(遠志)、ガジュツ、カンキョウ(乾姜)、カッコン(葛根)、カッコウ、カロニン、カノコソウ、カンゾウ(甘草)、カミツレ、キキョウ(桔梗)、キクカ(菊花)、キジツ(枳実)、キョウニン(杏仁)、キョウカツ、クジン(苦参)、ケイガイ(荊芥)、ケイヒ(桂皮)、ゲンチアナ、コウカ(紅花)、コウブシ(香附子)、コウベイ、コウボク(厚朴)、ゴオウ、ゴシツ(牛膝)、ゴシュユ(呉茱萸)、ゴボウシ(牛蒡子)、ゴミシ(五味子)、サイコ(柴胡)、サイシン(細辛)、サンシシ(山梔子)、サンシュユ(山茱萸)、サンショウ(山椒)、サンザシ(山査子)、サンズコン(山豆根)、サンソウニン(酸棗仁)、サンヤク(山薬)、サンナ(山奈)、ジオウ(地黄)、シオン、シャクヤク、ジャコウ、ショウマ(升麻)、シツリシ、シャゼンシ、シャゼンソウ、シャジン(シュクシャ(縮砂))、獣胆(ユウタンを含む)、ショウキョウ(生姜)、ジリュウ(地竜)、シンイ(辛夷)、ジコッピ(地骨皮)、シコン、セキサン(石蒜)、セッコウ(石膏)、セネガ、センコツ(川骨)、ゼンコ(前胡)、センキュウ、センブリ、ソウジュツ(蒼朮)、ソウハクヒ(桑白皮)、ソヨウ(蘇葉)、ダイオウ(大黄)、タイソウ、チクジョ、チクセツニンジン(竹節人参)、チョウジ(丁子)、チョレイ(猪苓)、チンピ(陳皮)、テンナンショウ(天南星)、トウガシ(冬瓜子)、トウキ(当帰)、トウニン(桃仁)、トコン、トチュウ、ナンテンジツ、ニンジン(人参)、ニンドウ(忍冬)、バイモ、バクモンドウ、ハッカ(薄荷)、ハンゲ(半夏)、ビャクシ、ビャクシャク、ビャクジュツ(白朮)、ビワヨウ(枇杷葉)、ビンロウジ(檳榔子)、ブクリョウ(茯苓)、ボタンピ(牡丹皮)、マオウ(麻黄)、マシニン(麻子仁)、モッコウ(木香)、ヨクイニン、リュウガンニク(竜眼肉)、リョウキョウ(良姜)、リュウコツ(竜骨)、リュウタン(竜胆)、レンニク(蓮肉)、レンギョウ(連翹)などが例示できる。
生薬は、疾患の種類に応じて選択でき、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。より具体的には、かぜ症候群の治療及び/又は予防に用いられる生薬(例えば、総合感冒剤などの成分)としては、例えば、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、カンゾウ、キキョウ、キョウニン、シャゼンシ、シャゼンソウ、セキサン(石蒜)、セネガ、セッコウ(石膏)、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カノコソウ、カミツレ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、サンショウ、シャジン、ショウキョウ、ジリュウ、ソウジュツ、チョウジ、チンピ、ビャクジュツ、ボタンピ、ジオウ(地黄)、チクセツニンジン、トコン、ニンジン、アセンヤク、ウイキョウ、オウゴン、カッコン、カロニン、キョウニン、ケイヒ、ゴオウ、コウブシ、コウベイ(粳米)、コウボク、ゴミシ、サイコ、サイシン、シオン、ジャコウ、シャクヤク、ソウハクヒ、ソヨウ、タイソウ、チクセツニンジン、バクモンドウ、ハンゲ、バイモ、ブクリョウ、リュウコツ(竜骨)、獣胆(ユウタンを含む)などが例示できる。代表的なかぜ症候群の治療及び/又は予防に用いられる生薬(例えば、総合感冒剤などの生薬成分)は、ナンテンジツエキス、キキョウエキス、ショウキョウエキス、及びチンピエキスから選択された少なくとも一種を含む場合が多く、これらの全ての生薬を含んでいてもよい。」(【0019】?【0021】)

4 甲4’に記載された事項
(甲4’ア)
「カルボキシメチルセルロースカルシウム
・・・
1.一般名
・・・
JP:Carmellose calcium
・・・
6.用途分類
安定化剤,懸濁化剤,錠剤・カプセルの崩壊剤,増粘剤,吸水剤.
・・・
8.性状
カルボキシメチルセルロースカルシウムは,白色ないし黄白色の吸湿性の微粉末である.」(216ページ カルボキシメチルセルロースカルシウムの項)

(甲4’イ)
「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
・・・
6.用途分類
錠剤・カプセルの崩壊剤,錠剤の結合剤.」(587ページ 低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの項)

5 甲5’に記載された事項
(甲5’ア)
「実施例1(加味帰脾湯エキス末の製造)
人参3kg、朮(白朮)3kg、茯苓3kg、黄耆2kg、当帰2kg、遠志1.5kg、柴胡3kg、山梔子2kg、甘草1kg、木香1kg、大棗1.5kg、生姜0.5kg、酸棗仁3kg及び竜眼肉3kgからなる混合生薬に精製水295リットルを加えて約100℃で1時間抽出した。抽出液を濾過し、減圧濃縮後、噴霧乾燥して乾燥エキス末5.6kgを得た。」(【0022】)

(甲5’イ)
「実施例3(加味帰脾湯エキス錠の製造)
処方
主薬(実施例1の乾燥エキス末) 51.8重量部
合成ケイ酸アルミニウム 15.0重量部
カルボキシメチルセルロースカルシウム 15.0重量部
ステアリン酸マグネシウム 1.0重量部
結晶セルロース 17.2重量部
操作
上記の各成分を充分混合し、その混合物を打錠機で1錠400mgに打錠して1錠中に主薬207mgを含む錠剤を得た。」(【0024】)

6 甲6’に記載された事項
(甲6’ア)
「実施例1 人参養栄湯乾燥エキス末の製造
人参3.0kg、当帰、地黄、白じゅつ、ぶく苓の各4.0kg、芍薬、陳皮、遠志の各2.0kg、桂皮2.5kg、黄ぎ1.5kg、および五味子、甘草の各1.0kgからなる混合生薬に水310リットルを加えて加熱し、100℃で1時間抽出した。抽出液を濾過し、約30リットルまで減圧濃縮後、噴霧乾燥して、人参養栄湯乾燥エキス末6.7kgを得た。」(【0028】)

(甲6’イ)
「実施例4 錠剤の製造
(処方)
主薬(実施例1の乾燥エキス末 60重量部
乳糖 18重量部
トウモロコシでんぷん 5重量部
合成ケイ酸アルミニウム 9重量部
カルボキシメチルセルロースカルシウム 7重量部
ステアリン酸マグネシウム 1重量部
(操作)
上記の主薬、乳糖、トウモロコシデンプンおよび合成ケイ酸アルミニウムに99%エタノール28重量部を加え充分練合の後、パワーミル(株式会社ダルトン製)にて破砕造粒し、乾燥して造粒物を得た。この造粒物にカルボキシメチルセルロースカルシウムを加え充分混合し、さらにステアリン酸マグネシウムを加えて混合し、この混合物を1錠300mgに打錠して、1錠中に人参養栄湯エキス180mgを含む錠剤を得た。」(【0031】)

7 甲7’に記載された事項
甲7’は、申立人1が提出した甲12と同じ文献であり、上記第4 12における摘記(甲12ア)?(甲12ク)を(甲7’ア)?(甲7’ク)と読み替えて、ここに引用する。

8 甲8’に記載された事項
(甲8’ア)
「【課題を解決するための手段】
上述の目的は、アルニカ、イカリ草、エレウテロコック、オウヒ(桜皮)、オンジ(遠志)、ケイヒ、ゴカヒ(五加皮) 、セイヨウハッカ、セネガ、タチジャコウソウ、ムイラプアマ、モッキン(木槿)、アセンヤク、チョウジ(丁子)、ドクダミ(十薬)より選ばれる1種又は2種以上の生薬の抽出液を有効成分とすることを特徴とするヒアルロン酸分解阻害剤、該ヒアルロン酸分解阻害剤を含有することを特徴とするヒアルロン酸分解異常疾患治療剤およびムイラプアマ、モッキンから選ばれる1種又は2種の生薬抽出物を有効成分とするヒアルロン酸分解阻害剤を含有することを特徴とする化粧料等によって達成される。」(【0010】)

(甲8’イ)
「実施例1 アルニカ抽出物からなるヒアルロン酸分解阻害剤の製造
アルニカ100gを、1000mlの75%容量エタノール中に室温にて7日間浸し、振盪し、上澄み液をろ過後凍結乾燥し、抽出物(乾燥物)9.97gを得、ヒアルロン酸分解阻害剤とした。

実施例2 イカリ草抽出物からなるヒアルロン酸分解阻害剤の製造
イカリ草100gを1000mlの25容量%のエタノール中で室温にて7日間浸し、振盪し、上澄み液をろ過後凍結乾燥し、抽出物(乾燥物)14.58gを得、ヒアルロン酸分解阻害剤とした。」(【0044】、【0045】)

(甲8’ウ)
「実施例5 オンジ( 遠志) 抽出物からなるヒアルロン酸分解阻害剤の製造
オンジ( 遠志) 100gを1000mlの20容量%のエタノール中で室温にて7日間浸し、振盪し、上澄み液をろ過後凍結乾燥し、抽出物(乾燥物)9.1gを得、ヒアルロン酸分解阻害剤とした。」(【0048】)

(甲8’エ)
「【表1】

」(【0072】)

(甲8’オ)
「【表2】

上記の各成分を均一に混合し、常法に従って、1錠170mgとなるように打錠する。」(【0077】、【0078】)

9 甲9’に記載された事項
(甲9’ア)
「1.試験目的:
生薬エキスの変色抑制試験

2.試験内容:
生薬エキスと賦形剤を混合し、高温条件における変色の程度を製造直後品と比較し、色差ΔE*(ab)によって賦形剤の変色抑制効果を評価する。

3.試験方法:
以下表1に試料No.1およびNo.2の処方を示す。オンジエキスと各成分をビニール袋内で混合した後、篩を通してオンジエキス含有粉体を調製した。
25℃60%RH条件下で24時間静置したのち、2gずつガラスビンに入れて密閉し、65℃条件下で3日保存した。保存後の粉体について、それぞれ製造直後品との色差ΔE*(ab)について分光式光度計(コニカミノルタ製「CM-600d」)を用いて測定した。

4.試験日:
令和2年4月7日」

」(1ページ)

(甲9’イ)
「表1より明らかなように、デンプン系の崩壊剤であるアルファ化デンプンを配合した試料No.1の固形組成物は、本件特許発明に係るカルメロースカルシウムを配合した試料No.2の固形組成物よりも、経時的な色の変化抑制において高い効果を示した。」(2ページ下から4行?最下行)

第6 当合議体の判断
当合議体は、申立人1の主張する申立理由1A?1C及び申立人2の主張する申立理由2A?2Dはいずれも認められず、本件発明1及び2は取り消されるべきものではないと判断した。以下、その理由を示す。

1 申立人1の主張する申立理由1A?1Cについての判断
事案にかんがみ、申立理由1C、1B、1Aの順に判断を示す。
(1)申立理由1Cについて
申立理由1Cは、本件発明は、本件明細書において発明の課題が解決できることを当業者が認識できる範囲を超えたものであり、特にオンジエキス濃度が31%(オンジエキス末換算)を超える固形組成物に適用する態様、またはオンジエキスと乳糖と併用しない態様について、当業者が本件明細書に基づいて本件発明の課題を解決すると認識し得る範囲を超えていることから、本件発明1及び2の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるというものである。

ア 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
本件特許の明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の記載からみて、本件発明が解決すべき課題は、生薬エキスとしてオンジエキス「のみ」を含有する固形組成物の経時的な変色を抑制するということであると認める(本件特許明細書の【0004】?【0007】)。

イ そして、本件発明1及び2は、いずれも方法の発明であって、上記課題を解決するため、オンジエキスのみを含有する固形組成物において、オンジエキス1質量部に対して0.1?2質量部のカルメロースカルシウムを添加するという手段を採用するものである。

ウ これに対し、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【実施例】
【0013】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本説明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、表中の単位はmgである。
以下表1に比較例1?3、及び実施例1?6の処方を示す。オンジエキス(原生薬換算量500mg)と各成分をビニール袋内で混合した後、篩を通してオンジエキス含有粉体を調製した。
【0014】
(試験例1)
実施例1?6及び比較例1?3について25℃60%RH条件下で24時間静置したのち、2gずつガラスビンに入れて密閉し、65℃条件下で3日保存した。保存後の粉体について、それぞれ製造直後品との色差ΔE*(ab)について分光式光度計(SE6000 日本電色工業製)を用いて測定した。結果を、表1及び図1に示す。
【0015】
【表1】


【0016】
表1及び図1より明らかなように、オンジエキスを含む固形組成物は変色した(比較例1)。本発明のセルロース系崩壊剤を含む実施例1?6の固形組成物は、デンプン系の崩壊剤であるアルファ化デンプン、部分α化デンプンを配合した比較例2、3の固形組成物と比べて、経時的な色の変化は抑制された。また、軽質無水ケイ酸及び/又は結晶セルロースを配合するとさらに色の変化が抑制された。
(中略)
【0021】
(実施例8?11)
以下表3に、実施例8?11の処方を示す。オンジエキス(原生薬換算量500mg)とオンジエキス以外の成分aを乳鉢にて混合した後篩顆したものをオンジエキス含有粉体とした。オンジエキス含有粉体に成分bを添加後、混合・篩顆したものを打錠用粉末とした。1錠重量341.7 mgとして簡易錠剤成型機(HANDTAB-200;市橋精機社製)で錠剤を製した。
【0022】
(試験例3)
実施例8?11のオンジエキス含有錠剤について25℃60%RH条件下で24時間静置したのちガラスビンに入れて密閉し、65℃条件下で3日保存した。保存後の錠剤について、それぞれ製造直後品との色差ΔE*(ab)について分光式光度計(SE6000 日本電色工業製)を用いて測定した。
【0023】
【表3】


【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明により、オンジエキスを高濃度含有していても、経時的な変色が抑制された、商品価値の高いオンジエキス配合の固形組成物の提供が可能となった。」(【0013】?【0024】)

エ 上記のように、発明の詳細な説明は、オンジエキス末(105質量部、固形組成物全体に対して30.9質量%)及びカルメロースカルシウム(35質量部、固形組成物全体に対して10.3質量%、オンジエキス1質量部に対して0.33質量部)を含む実施例3の固形組成物は、カルメロースカルシウムを含まない比較例1?3の固形組成物よりも、経時的な色の変化が抑制されたことが記載され(【0013】?【0016】)、さらに、オンジエキス末(105質量部、固形組成物全体に対して30.7質量%)及びカルメロースカルシウム(35質量部、固形組成物全体に対して10.2質量%、オンジエキス1質量部に対して0.33質量部)を含む実施例10及び11の錠剤の経時的な変色が抑制されたことが記載されている(【0022】)のであるから、当業者は、本件特許発明によって「オンジ単味生薬エキス製剤の変色抑制という課題」を解決できることを理解できるといえる。
よって、本件発明1及び2は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものである。

オ これに対して、申立人1は、本件発明がサポート要件を満たさないことについて、以下の主張をしている。
(ア)発明の詳細な説明の段落【0013】?【0015】における「オンジエキス(原生薬換算量500mg)」、表1中の合計「340(mg)」、「2gずつガラスビンに入れて」という各記載の量関係は整合しておらず、例えば、実施例1として合計「340mg」の成分をビニール袋内で混合したものをさらに篩に通せば、得られる「オンジエキス含有粉体」は340mg未満となるはずであり、これを「2gずつガラスビンに入れ」ることは不可能である。さらに、そもそも、340mgといった少量の粉体を篩に通すようなことは、実験方法としてそもそも妥当であるとは言えない。そのため、明細書の実験条件に関する記載を、整合性をもって理解することができず、またその記載どおりに試験することは不適切又は不可能である。

(イ)合理的に理解できる範囲で、試験法を一部変更して行われた第三者機関による追試(甲18)では、以下のとおり、本件明細書の試験例1の結果は再現されず、オンジエキス配合固形組成物におけるカルメロースカルシウムの添加は必ずしも変色を抑制しないことが明らかとなった。
a 試験例1と同様のオンジ原生薬配合量となるように、オンジエキス約37%(オンジエキス末約31%に相当)に対して乳糖のみを含む粉体(試料No.1)、乳糖に加えてカルメロースカルシウム10%を含む粉体(試料No.2)及び乳糖に加えてα化デンプン10%を含む粉体(試料No.4)の経時的変色を、試験例1と同様の実験条件により比較すると、ΔEの値は、順に17.64、22.58、12.18となった。すなわち、試料No.1に比して、カルメロースカルシウムを添加した試料No.2ではむしろ変色程度は大きいが、一方α化デンプンを添加した試料No.4では変色抑制効果が得られている。
b オンジエキス約48%(オンジエキス末約40%に相当)に対して乳糖のみを含む粉体(試料No.6)、乳糖に加えてカルメロースカルシウム10%を含む粉体(試料No.7)及び乳糖に加えてα化デンプン10%を含む粉体(試料No.9)の経時的変色を同様に比較すると、ΔEの値は、順に34.77、20.45、16.96となった。すなわち、試料No.6に比して、カルメロースカルシウムを添加した試料No.7では変色抑制効果が確認されたものの、変色抑制効果はα化デンプンの方が大きい。

(ウ)本件発明においては、「オンジエキス1質量部に対し0.1?2質量部のカルメロースカルシウム」と両者の相対的な配合量について規定されているが、オンジエキスの配合量を限定していない。
一方、本件明細書にはオンジエキスをオンジエキス末として31%配合した固形組成物において、カルメロースカルシウムが変色抑制効果を示す試験例が記載されるにとどまり、オンジエキス末の含有量が約31%をよりも多い固形組成物における変色抑制効果は確認されていない。
そして、第三者機関による追試(甲18)では、以下のとおりの結果となっており、当業者はオンジエキス濃度が31%超(オンジエキス末換算)の場合に本件発明の課題が解決できることを理解できない。
a オンジエキス約60%(オンジエキス末約50%に相当)に対して乳糖のみを含む粉体(試料No.11)、乳糖に加えてカルメロースカルシウム10%を含む粉体(試料No.12)及び乳糖に加えてカルメロースカルシウム15%を含む粉体(試料No.13)の経時的変色を比較すると、ΔEの値は、順に27.68、25.38、29.28となった。また、オンジエキス約71%(オンジエキス末約60%に相当)に対して乳糖のみを含む粉体(試料No.16)、乳糖に加えてカルメロースカルシウム10%を含む粉体(試料No.17)及び乳糖に加えてカルメロースカルシウム15%を含む粉体(試料No.18)の経時的変色を比較すると、ΔEの値は、順に28.04、21.10、27.06となった。これによれば、オンジエキス濃度が50%以上(オンジエキス末換算)の範囲では、カルメロースカルシウム10%の添加による変色抑制効果はほとんど得られず、カルメロースカルシウム15%を添加するとむしろ変色が促進されている。

(エ)本件明細書において変色抑制効果が試験された組成物はすべて乳糖を多量に含有するものであるところ、甲14、甲15にも示されるように、乳糖が様々な薬剤と反応して着色を引き起こしうることは、本願優先日当時に広く知られた事項であった。
上記追試(甲18)においても、以下のaのとおり、オンジエキスのみを含む粉体(試料No.23)の変色程度は、乳糖を含む試料よりも少ないことが確認されており、本件明細書における変色抑制効果は、オンジエキスと乳糖との反応による変色の抑制効果としては理解し得たとしても、オンジエキス単体の変色抑制効果としては理解できない。
a オンジエキス約37%(オンジエキス末約31%に相当)に対して乳糖のみを含む粉体(試料No.1)、オンジエキス約48%(オンジエキス末約40%に相当)に対して乳糖のみを含む粉体(試料No.6)、オンジエキス約60%(オンジエキス末約50%に相当)に対して乳糖のみを含む粉体(試料No.11)、オンジエキス約71%(オンジエキス末約60%に相当)に対して乳糖のみを含む粉体(試料No.16)及びオンジエキスのみを含む粉体(試料No.23)の経時的変色を比較すると、ΔEの値は、順に17.64、34.77、27.68、28.04及び15.04であった。

カ 以下、申立人1の上記主張について、検討する。
(ア)上記オ(ア)の主張について
この主張は、発明の詳細な説明に記載された実験条件の不整合を指摘するものである。
しかしながら、340mgという少量の粉体を篩に通すことは、実験方法として妥当でないとの主張は、一般論としては妥当な面もあるが、実験条件としてあり得ないものであるとまではいえない。
また、製造時の粉体の分量「340mg」とガラスビンに入れられる粉体の分量「2g」の不一致については、実験条件に従い、「340mg」の粉体試料を複数作成し、これをまとめて2gとし(例えば340mgの試料6個分で約2gとなる)、ガラスビンに入れることは可能である。
よって、一見、実験条件に不整合な記載が存在するとしても、上記のように理解することはできるから、発明の詳細な説明に記載の実験条件に従い、試験を行うことは可能である。
したがって、上記オ(ア)の主張は採用できない。

(イ)上記オ(イ)の主張について
上記(ア)で説示したとおり、発明の詳細な説明に記載の実験条件に従い試験を行うことは可能であるにもかかわらず、甲18の追試は、条件を一部変更して試験を行っており、また、申立書17ページの(C)に「具体的には、・・・明細書に記載された市販のオンジエキス末が現在入手不可能であったため、・・・を使用して試験を行った。」と記載されているように、原料のオンジエキスも本件特許の実施例とは異なるものを用いている点で、発明の詳細な説明に記載された実施例を追試したものとはいえない。
また、上記オ(イ)aの主張は、甲18の追試において、本件特許の実施例と同様のオンジエキス濃度(オンジエキス末約31%)の系でのカルメロースカルシウムの経時的変色を確認した試料No.1と試料No.2との結果の比較に基づくものである。ここで、上記甲18(ウ)の記載に基づき、比較対象である試料No.1(オンジエキスに対して乳糖のみを含む粉体)の5つのサンプルについて、初期及び試験後のデータからΔEの値を算出すると、同じ組成の試料を用いて同じ条件下で経時変色を確認しているにもかかわらず、以下のとおり、約10.1?27.3まで大きくばらついており、実験結果の信憑性は低いといわざると得ず、この結果に基づくカルメロースカルシウムによる変色抑制効果を否定する主張は認められない。



なお、申立人1は、カルメロースカルシウムよりもα化デンプンの方が変色抑制効果に優れる旨の主張もしているが、かかる主張は、カルメロースカルシウムによる経時的変色抑制の課題解決を否定するものではない。

(ウ)上記オ(ウ)の主張について
申立人1が主張するとおり、本件明細書の実施例においては、オンジエキスをオンジエキス末として31%配合した固形組成物において、カルメロースカルシウムが変色抑制効果を示す試験例が記載されるにとどまる。
しかしながら、実施例の固形組成物におけるオンジエキスの配合割合を、ある程度増減させたとしても、効果の程度に多少の際は生じるかもしれないが、実施例と同様に変色抑制効果が得られるであろうことは、当業者であれば当然理解しうるものである。
また、申立人1は、オンジエキス濃度が50%以上(オンジエキス末換算)の範囲では、カルメロースカルシウム10%の添加による変色抑制効果はほとんど得られず、カルメロースカルシウム15%を添加するとむしろ変色が促進されている旨主張する。
しかしながら、上記(甲18ウ)によれば、オンジエキス濃度が50%及び60%(オンジエキス末換算)の場合、カルメロースカルシウムを10%添加すると、ΔEの値はそれぞれ27.68から25.38へ及び28.04から21.10へと減少している。また、オンジエキス濃度が60%(オンジエキス末換算)の場合、カルメロースカルシウムを15%添加すると、ΔEの値は28.04から27.06へと減少している。
よって、申立人1の上記主張は、甲18の追試結果に基づくものとはいえず、採用できない。

(エ)上記オ(エ)の主張について
乳糖が様々な薬剤と反応して着色を引き起こしうることが本件特許の出願日当時広く知られていたとしても、オンジエキスが乳糖と反応して着色することは、申立人1が提出した証拠からは示されておらず、また、甲18の追試結果において、オンジエキスのみを含む粉体(試料No.23)の5つのサンプルについて、初期及び試験後のデータからΔEの値を算出すると、同じ組成の試料を用いて同じ条件下で経時変色を確認しているにもかかわらず、以下のとおり、約9.2?22.9と大きくばらついており、実験結果の信憑性は低いといわざると得ない。



よって、申立人1の上記主張(本件明細書における変色抑制効果は、オンジエキスと乳糖との反応による変色の抑制効果としては理解し得たとしても、オンジエキス単体の変色抑制効果としては理解できない)は、採用できない。

キ 以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たしているといえる。
よって、申立人1による申立理由1Cは認められない。

(2)申立理由1Bについて
申立理由1Bは、本件明細書に記載された試験結果は合理性を欠き、特にオンジエキス濃度が31%(オンジエキス末換算)を超える固形組成物に適用する態様、またはオンジエキスと乳糖と併用しない態様について、本件発明を当業者が実施しうる程度に明確かつ十分に記載していないことから、本件発明1及び2の特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるというものである。

ア 発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件(いわゆる実施可能要件)に適合するためには、発明の詳細な説明が、本願発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていることが必要である。

イ 本件発明1及び2は、いずれも特許法第2条第3項第2号にいう「方法」の発明であり、「方法」の発明の実施とは、その「方法」を使用する行為である。そして、本件発明1及び2の発明特定事項からみて、オンジエキス1質量部に対して0.1?2質量部のカルメロースカルシウムを添加することで、オンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制できることが、発明の詳細な説明から理解できることが必要である。

ウ これに対し、発明の詳細な説明には、上記(1)ウに摘示した事項が記載されている。

エ そして、発明の詳細な説明の記載は、当業者であれば、オンジエキス1質量部に対して0.1?2質量部のカルメロースカルシウムを添加することで、オンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制できることが理解できるものであることは、上記(1)エで説示したとおりである。

オ これに対して、申立人1は、発明の詳細な説明が実施可能要件を満たさないことについて、上記(1)オ(ア)?(エ)と同様の主張をしている。

カ そして、その主張が採用できないことは、上記(1)カで説示したとおりである。

キ 以上のとおりであるから、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1及び2について、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されており、特許法第36条第4項第1号に規定される実施可能要件を満たしているといえる。
よって、申立人1による申立理由1Bは認められない。

(3)申立理由1Aについて
申立理由1Aは、本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証?甲第13号証に示される優先日当時の技術常識及び先行技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、何ら格別な効果を有しておらず、進歩性を有しないというものである。

ア 甲1に記載された発明
上記(甲1ア)及び(甲1イ)によれば、甲1には、オンジエキスを有効成分として含む認知症疾患の予防及び治療用医薬組成物が記載され、実施例では、以下の組成を有する錠剤が記載されている(上記(甲1エ)及び(甲1オ))。
オンジエキス 200mg
ラクトース 100mg
デンプン 100mg
ステアリン酸マグネシウム 適量
そして、上記(甲1ウ)によれば、実施例におけるラクトース及びデンプンは賦形剤として、また、ステアリン酸マグネシウムは潤滑剤として添加されているものである。
そうしてみると、甲1には、以下の二つの発明が記載されているものと認める。
「オンジエキス200mg、ラクトース100mg、デンプン100mg及びステアリン酸マグネシウム適量からなる認知症疾患の予防及び治療用組成物である錠剤における、賦形剤としてのデンプンの使用。」(以下「甲1発明」という。)
「オンジエキス200mgに対し、ラクトース100mg、デンプン100mg及びステアリン酸マグネシウム適量を添加し、認知症疾患の予防及び治療用組成物である錠剤を製造する方法。」(以下「甲1の2発明」という。)

イ 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「認知症疾患の予防及び治療用組成物である錠剤」は、本件発明1における「固形組成物」に相当する。また、甲1発明において生薬エキスとしてはオンジエキスのみを含有していることから、両者は、「生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)本件発明1においては、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制するために、オンジエキス1質量部に対し0.1?2質量部のカルメロースカルシウムを使用するのに対し、甲1発明においては、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する認知症疾患の予防及び治療用組成物である錠剤の賦形剤として、デンプンをオンジエキス200mgに対し100mg、すなわち1質量部に対して0.5質量部使用する点。

ウ 相違点1についての検討
(ア)本件発明1において、カルメロースカルシウムは、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制するために使用される成分である。
これに対して、甲1には、認知症疾患の予防及び治療用組成物に含み得るオンジエキス以外の成分として、カルメロースカルシウムは記載されておらず、さらに、オンジエキスを有効成分として含む医薬組成物について、経時的な変色の抑制が必要であるとの課題も、また、変色抑制の課題を解決する手段についても記載はない。
以下、甲1以外の文献も参酌することで、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む甲1発明について、本件特許の優先日当時、当業者であれば、
a 経時的な変色を抑制する必要があるという課題を認識し、かつ
b 当該課題の解決のためにカルメロースカルシウムをオンジエキス1質量部に対し0.1?2質量部使用することを容易に想到し得たかどうか
検討する。

(イ)上記(ア)aの点について
甲2?10には、以下の内容が記載されている。
甲2の「「単味生薬のエキス製剤の開発に関するガイドライン」(案)に関する意見募集について」という標題の文書に添付された(別添)「単味生薬のエキス製剤の開発に関するガイドライン」には、「第5章 単味生薬製剤承認基準」において、オンジが記載される(甲2イ)とともに、「第4章 単味生薬のエキス製剤の製造販売承認申請におけるエキスの製造方法、規格及び試験項目に係る留意事項」において、エキスの色に関し、メイラード反応により、保管時にわずかずつ濃い色に傾くことがあることが記載されているが(甲2ア)、当該記載は保管時に変色する単味エキスが存在することを示唆するものにすぎず、具体的にオンジエキスが経時的な変色の課題を有することを示唆する記載はない。

「漢方エキス製剤の新規安定性評価法に関する研究」との標題の博士論文である甲3の論文内容要旨には、漢方エキス製剤の加熱保存での劣化は,Maillard反応などによるものであることが記載されているが(甲3イ)、(甲3ア)の記載を踏まえると、ここでの「漢方エキス製剤」とは、単味生薬のエキスではなく、また、オンジエキスの経時的な変色の課題を示唆するものではない。

また、甲4?8には、漢方エキス(製剤)は、吸湿性が高いこと(甲4ア、甲5ア、甲6ア、甲7ア、甲8ア)、そして漢方エキス(製剤)の変色の原因は高い吸湿性にあること(甲4ア、甲5ア、甲7ア)も記載されているが、例えば甲5の請求項2、甲6の実施例1、甲7の表2等の記載によれば、ここでの漢方エキス(製剤)とは、必ずしも単味生薬のエキスではなく、また、これらの記載はオンジエキスの経時的な変色の課題を示唆するものではない。

さらに、オンジエキスの添付文書である甲9及び甲10には、保管時に吸湿しやすいことや変質しやすいことが記載されているものの、経時的な変色については記載されていない。なお、甲9及び10については、申立人1が提出した証拠自体からは、その公開日が不明である。

以上によれば、申立人1が提出した甲2?10の記載を参酌しても、本件特許の優先日当時、上記(ア)aの課題、すなわち、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む甲1発明について、経時的な変色抑制の必要性という課題を、本件特許の優先日当時、当業者が認識し得たものとはいえない。

(ウ)上記(ア)bの点について
甲11?13には、以下の内容が記載されている。
甲11には、カルメロースカルシウムは、吸湿性であり、賦形剤や安定(化)剤として用いられるものであることが記載されている(甲11ア)。
甲12には、サラシア属植物抽出物は酸化されやすく、サラシア属植物抽出物を含む食品は保存中に酸化による変色が生じる場合があり、また、サラシアエキス末は吸湿性が高く、吸湿により粘着性が高まる性質を有するため、サラシアエキス末を成分とした食品では保存中の吸湿による品質の低下が生じやすく、特に、サラシアエキス末を成分とした錠剤では、保存中に錠剤の崩壊性が低下する点が問題となるとの課題を解決するため、サラシア属植物抽出物を、カルボキシメチルセルロースまたはその金属塩、および二酸化ケイ素と共に配合することにより、高度な保存安定性を有する組成物を調製することができることを見出したことが記載されている(甲12ア、甲12イ)。そして、実施例において、サラシアエキス末に、カルボキシメチルセルロースカルシウム及び二酸化ケイ素を配合した組成物においては、変色に改善がみられたことが確認されている(甲12オ?ク)。
甲13には、ジフェンヒドラミンを含有する製剤は経時的に変色するという課題があり(甲13ア)、この課題を解決するために、崩壊剤としてカルボキシメチルセルロースカルシウムを採用し、かつこれをジフェンヒドラミンと賦形剤を含有する造粒物を調製した後に、粉末として添加し、次いで打錠すればよいことを見出したことが記載されている(甲13イ)。そして、実施例では、かかる手段を採用することで、ジフェンヒドラミン含有錠剤の変色が有意に抑制されたことが確認されている(甲13ウ)。
しかしながら、これらの文献には、カルメロースカルシウムが吸湿性であることや、サラシアエキス末やジフェンヒドラミン含有錠剤の変色を抑制したことが記載されているものの、変色の原因は、吸湿のみによるものではなく(要すれば甲2ア等参照)、また、オンジエキスとは異なるものを用いた場合の変色抑止の結果をもって、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む場合にも変色を抑止することはいえないことは、当業者にとって自明である。
以上によれば、申立人1が提出した甲11?13の記載から、本件特許の優先日当時、上記(ア)bの点、すなわち、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む甲1発明において、経時的な変色抑制の必要性という課題を解決するためにカルメロースカルシウムをオンジエキスに対して所定量使用するということは、本件特許の優先日当時、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(エ)そうしてみると、申立人1が提出した甲2?13を参酌しても、本件特許の優先日当時、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む甲1発明について、経時的な変色を抑制する必要があったという課題を、当業者が認識し得たものとはいえず、また、甲1発明について、経時的な変色を抑制するために、カルメロースカルシウムを所定量使用するということも当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

エ 本件発明2と甲1の2発明との対比
本件発明2と甲1の2発明とを対比する。
甲1の2発明における「認知症疾患の予防及び治療用組成物である錠剤」は、本件発明2における「固形組成物」に相当する。また、甲1の2発明において、「認知症疾患の予防及び治療用組成物である錠剤」は、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有していることから、両者は、「生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点2)本件発明2においては、オンジエキス1質量部に対し0.1?2質量部のカルメロースカルシウムを添加することによって、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制する方法であるのに対し、甲1の2発明においては、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する認知症疾患の予防及び治療用組成物を製造する方法であり、かつ、カルメロースカルシウムを所定量添加することについては特定されていない点。

オ 相違点2についての検討
本件発明2は、カルメロースカルシウムを所定量添加することで、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制する方法に関する。
これに対して、甲1には、認知症疾患の予防及び治療用組成物に含み得るオンジエキス以外の成分として、カルメロースカルシウムは記載されておらず、さらに、オンジエキスを有効成分として含む医薬組成物について、経時的な変色の抑制が必要であるとの課題も、また、変色抑制の課題を解決する手段についても記載はない。

そして、上記ウで説示したのと同様の理由で、申立人1が提出した甲1?13を参酌しても、本件特許の優先日当時、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む甲1の2発明について、経時的な変色を抑制する必要があったという課題を、当業者が認識し得たものとはいえず、また、甲1の2発明について、経時的な変色を抑制するために、カルメロースカルシウムを所定量添加するということも当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

カ 本件発明の効果について
本件特許明細書には、オンジエキス末(105質量部、固形組成物全体に対して30.9質量%)及びカルメロースカルシウム(35質量部、固形組成物全体に対して10.3質量%、オンジエキス1質量部に対して0.33質量部)を含む実施例3の固形組成物は、カルメロースカルシウムを含まない比較例1?3の固形組成物よりも、経時的な色の変化が抑制されたことが記載され(【0013】?【0016】)、さらに、オンジエキス末(105質量部、固形組成物全体に対して30.7質量%)及びカルメロースカルシウム(35質量部、固形組成物全体に対して10.2質量%、オンジエキス1質量部に対して0.33質量部)を含む実施例10及び11の錠剤の経時的な変色が抑制されたことが記載されている(【0022】)。
そして、本件発明によるこのような効果が、甲1及び甲2?13の記載から、当業者が予測し得た程度のものであるとはいえない。

キ 申立人1の主張
申立人1は、上記(1)オ(ア)?(エ)と同様の主張を主たる根拠として、本件発明は格別な効果を有しないことを主張している。
しかしながら、かかる主張が採用できないことは、上記(1)カで説示したとおりである。

ク 以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証?甲第13号証に示される優先日当時の技術常識及び先行技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、申立人1による申立理由1Aは認められない。

2 申立人2の主張する申立理由2A?2Dについての判断
事案にかんがみ、申立理由2D、2C、2A、2Bの順に判断を示す。
(1)申立理由2Dについて
申立理由2Dは、本件発明についての本件明細書の試験結果は再現性を有しておらず、また、オンジエキス濃度が30.9%以外である場合、及び乳糖を含有しない場合について、当業者が本件明細書に基づいて本件発明の課題を解決できると認識し得る範囲を超えており、本件発明1及び2の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるというものである。

ア 本件発明1及び2が発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たしているとの当審の判断は、上記1(1)ア?エにおいて説示したとおりである。

イ これに対して、申立人2は、本件発明がサポート要件を満たさないことについて、以下の主張をしている。
(ア)本件明細書の段落【0013】?【0014】に記載される方法に従って、オンジエキスと各成分をビニール袋内で混合した後、篩を通してオンジエキス含有粉体を調製した。25℃60%RH条件下で24時間静置したのち、2gずつガラスビンに入れて密閉し、65℃条件下で3日保存した。保存後の粉体について、それぞれ製造直後品との色差ΔE*(ab)について分光式光度計(コニカミノルタ製「CM-600d」)を用いて測定した。その結果、カルメロースカルシウムを配合した試料No.1の色差ΔE*(ab)が19.06であったのに対し、アルファ化デンプンを配合した試料N0.2の色差ΔE*(ab)は13.12であり、アルファ化デンプンの方がカルメロースカルシウムよりも、オンジエキスの経時的な色変化抑制効果が優れていた。以上から、本件明細書に示された試験例1の結果は再現できず、令和1年12月20日付けで提出した意見書において特許権者が述べた主張は合理的な根拠を有しない。

(イ)実施例において試験されたオンジエキス末の濃度は30.9%の1点のみであり、他の濃度でオンジエキス末を含む場合においても同様に、経時的な色の変化が抑制されることは明細書に記載されておらず、当業者は、本件明細書の記載及び出願時の技術常識に鑑みても、オンジエキス末の濃度がどのような濃度でも(すなわち30.9%よりも低い濃度や、30.9%よりも高い濃度でも)、経時的な色の変化を抑制する効果が得られることを理解し得ない。

(ウ)発明の詳細な説明で、経時的な変色抑制が確認された実施例3の固形組成物は、オンジエキス末及びカルメロースカルシウムの他に乳糖を含んでいるのに対し、本件発明1及び2は、固形組成物が乳糖を含有することを規定していない。よって、本件明細書に示された乳糖を含んだ固形組成物の記載を、本件発明の、乳糖を含まない固形組成物の範囲まで拡張ないし一般化することはできない。

ウ 以下、申立人2の上記主張について、検討する。
(ア)上記イ(ア)の主張について
この主張は、甲9’の追試結果に基づくものである。
しかしながら、本件特許の実施例と甲9’の追試の試験方法を比較すると、前者では、各試料の組成が重量の絶対値(mg)で示されるとともに、試料中のオンジエキスの含有量(105mg)は原生薬換算で500mgであるとされているのに対し、後者では、各試料の組成は絶対量ではなく相対比で示され、試料中に含まれるオンジエキスの原生薬換算量も不明である。
そうしてみると、甲9’の追試は、そもそも本件特許の実施例を追試したものとはいえず、当該結果に基づく上記イ(ア)の主張は採用できない。

(イ)上記イ(イ)の主張について
申立人2が主張するとおり、実施例において試験されたオンジエキス末の濃度は30.9%の1点のみであり、他の濃度でオンジエキス末を含む場合においても同様に、経時的な色の変化が抑制されることは明細書に記載されていない。
しかしながら、実施例の固形組成物におけるオンジエキスの配合割合を、ある程度増減させたとしても、効果の程度に多少の差異は生じるかもしれないが、実施例と同様に変色抑制効果が得られるであろうことは、当業者であれば当然理解しうるものである。そして、オンジエキス末の濃度を30.9%から増減させた場合に変色抑制効果が得られないとの主張を裏付ける実験結果の提示もない。
よって、上記イ(イ)の主張は採用できない。

(ウ)上記イ(ウ)の主張について
乳糖は、一般的に使用される賦形剤であって、実施例の固形組成物における賦形剤を乳糖以外のものに変更したとしても、効果の程度に多少の差異は生じるかもしれないが、実施例と同様に変色抑制効果が得られるであろうことは、当業者であれば当然理解しうるものである。そして、乳糖以外の賦形剤を使用した場合に変色抑制効果が得られないとの主張を裏付ける実験結果の提示もない。
よって、上記イ(イ)の主張は採用できない。

エ 以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たしているといえる。
よって、申立人2による申立理由2Dは認められない。

(2)申立理由2Cについて
申立理由2Cは、本件明細書の試験結果は再現性を有しておらず、また、オンジエキス濃度が30.9%以外である場合、及び乳糖を含有しない場合について、本件発明を当業者が実施しうる程度に明確かつ十分に記載していないことから、本件発明1及び2の特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるというものである。

ア 本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1及び2について、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されており、特許法第36条第4項第1号に規定される実施可能要件を満たしているとの当審の判断は、上記1(2)ア?エにおいて説示したとおりである。

イ これに対して、申立人2は、発明の詳細な説明が実施可能要件を満たさないことについて、上記(1)イ(ア)及び(イ)に加え、以下の(エ)の主張をしている。
(エ)錠剤に関する実施例7?11のうち、カルメロースカルシウムを含む錠剤は実施例10及び11であるが、カルメロースカルシウムを含まない比較例相当の錠剤については示されていないので、カルメロースカルシウムを錠剤に含ませることによる効果を当業者は理解できない。

ウ 以下、申立人2の上記主張について、検討する。
(ア)上記(1)イ(ア)及び(イ)と同様の主張が採用できないことは、上記(1)ウで説示したとおりである。

(イ)上記イ(エ)の主張について
発明の詳細な説明の試験例1における比較例1(オンジエキス末及び乳糖のみからなる固形組成物)及び実施例3(オンジエキス末及び乳糖に加えカルメロースカルシウムを添加した固形組成物)の色差△E*(ab)は、それぞれ54.8及び37.3であり、カルメロースカルシウム添加による、オンジエキスを含む固形組成物の変色抑制効果は確認されている。
そして、この結果が同じく固形組成物である錠剤の場合にも敷衍できることは、当業者であれば当然理解することである。
よって、上記イ(エ)の主張は採用できない。

エ 以上のとおりであるから、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1及び2について、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されており、特許法第36条第4項第1号に規定される実施可能要件を満たしているといえる。
よって、申立人2による申立理由2Cは認められない。

(3)申立理由2Aについて
申立理由2Aは、本件発明1及び2は、甲1’に記載された発明及び甲2’?甲7’、甲9’に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明の効果は引用発明と比較して顕著な効果とはいえず、進歩性を有しないというものである。

ア 甲1’に記載された発明
上記(甲1’ア)及び(甲1’イ)によれば、甲1’には、以下の二つの発明が記載されているものと認める。
「オンジ抽出物100.0mg、コーンスターチ90.0mg、乳糖175.0mg、L-ヒドロキシプロピルセルロース15.0mg、ポリビニルピロリドン90 5.0mg及びエタノール適量を均一に混合し、湿式造粒により造粒し、ステアリン酸マグネシウム1.8mgと混合し圧縮した400mgの錠剤における、L-ヒドロキシプロピルセルロースの使用。」(以下「甲1’発明」という。)
「オンジ抽出物100.0mgに対し、コーンスターチ90.0mg、乳糖175.0mg、L-ヒドロキシプロピルセルロース15.0mg、ポリビニルピロリドン90 5.0mg及びエタノール適量を均一に混合し、湿式造粒により造粒し、ステアリン酸マグネシウム1.8mgと混合することで400mgの錠剤を製造する方法。」(以下「甲1’の2発明」という。)

イ 本件発明1と甲1’発明との対比
本件発明1と甲1’発明とを対比する。
甲1’発明における「オンジ抽出物」及び「錠剤」は、それぞれ、本件発明1における「オンジエキス」及び「固形組成物」に相当する。また、甲1’発明において生薬エキスとしてはオンジエキスのみを含有していることから、両者は、「生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点3)本件発明1においては、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制するために、オンジエキス1質量部に対し0.1?2質量部のカルメロースカルシウムを使用するのに対し、甲1’発明においては、L-ヒドロキシプロピルセルロースの添加目的について特定されておらず、また、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する錠剤において、L-ヒドロキシプロピルセルロースをオンジエキス100.0mgに対し15.0mg、すなわち1質量部に対して0.15質量部使用する点。

ウ 相違点3についての検討
(ア)本件発明1において、カルメロースカルシウムは、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制するために使用される成分である。
これに対して、甲1’には、オンジエキス以外の成分として、カルメロースカルシウムは記載されておらず、さらに、オンジエキスを有効成分として含む組成物について、経時的な変色の抑制が必要であるとの課題も、また、変色抑制の課題を解決する手段についても記載はない。
以下、甲1’以外の文献も参酌することで、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む甲1’発明について、本件特許の優先日当時、当業者であれば、
a 経時的な変色を抑制する必要があるという課題を認識し、かつ
b 当該課題の解決のためにカルメロースカルシウムをオンジエキス1質量部に対し0.1?2質量部使用することを容易に想到し得たかどうか
検討する。

(イ)上記(ア)aの点について
甲2’には、
・漢方エキスは、天然物の抽出成分で、種々の微量成分を多様に含有し、またその構造が未知の成分も含まれることなどから、保存条件によっては、エキスの変色やカビの発生など漢方エキスの品質低下がみられること
・一般的に漢方エキスの変色の原因は、エキスの高い吸湿性にあると考えられていること
が記載されているが(甲2’ア)、ここにいう「漢方エキス」とは、上記甲2’イ及びエの記載も併せ考えると、単独の生薬のエキスではなく、通常の漢方処方の原料生薬、すなわち、複数の生薬を加熱抽出して得られるエキスを意味するものである。
また、甲3’には、生薬エキスに関し、ケーキング(固化)及び変色の課題があることが記載され(甲3’ア)、生薬エキスとして「オンジ(遠志)」も例示されている(甲3’エ)。
そうしてみると、甲2’の記載からは、オンジエキスのみを含む固形組成物について、経時的な変色の課題が示唆されているとはいえない。また、甲3’には、生薬エキスの課題の一つとして変色が記載されるとともに、生薬エキスの一例としてオンジが例示されてはいるものの、変色以外の課題(ケーキング)も記載されており、甲3’の記載は、オンジエキスに経時的な変色の課題が存在することを示唆するものとまではいえない。

以上によれば、申立人2が提出した甲2’及び甲3’の記載を参酌しても、本件特許の優先日当時、上記(ア)aの課題、すなわち、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む甲1’発明について、経時的な変色抑制の必要性という課題を、本件特許の優先日当時、当業者が認識し得たものとはいえない。

(ウ)上記(ア)bの点について
甲4’?甲7’には、以下の内容が記載されている。
甲4’には、カルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム)及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースには、錠剤・カプセルの崩壊剤として用途があることが記載され、また、カルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム)には吸水剤の用途があることも記載されている(甲4’ア及びイ)。
甲5’及び甲6’の実施例には、生薬の一成分としてオンジを含む漢方エキスにカルボキシメチルセルロースカルシウムを添加して錠剤としたものが記載されている(甲5’ア、イ及び甲6’ア、イ)。
また、甲7’には、サラシア属植物抽出物は酸化されやすく、サラシア属植物抽出物を含む食品は保存中に酸化による変色が生じる場合があり、また、サラシアエキス末は吸湿性が高く、吸湿により粘着性が高まる性質を有するため、サラシアエキス末を成分とした食品では保存中の吸湿による品質の低下が生じやすく、特に、サラシアエキス末を成分とした錠剤では、保存中に錠剤の崩壊性が低下する点が問題となるとの課題を解決するため、サラシア属植物抽出物を、カルボキシメチルセルロースまたはその金属塩、および二酸化ケイ素と共に配合することにより、高度な保存安定性を有する組成物を調製することができることを見出したことが記載されている(甲7’ア、イ)。そして、実施例において、サラシアエキス末に、カルボキシメチルセルロースカルシウム及び二酸化ケイ素を配合した組成物においては、変色に改善がみられたことが確認されている(甲7’オ?ク)。
しかしながら、これらの文献には、カルメロースカルシウムが吸湿性であることやオンジエキスを一成分として含む漢方製剤に添加された例があること、さらにはサラシアエキス末含有錠剤の変色を抑制したことが記載されているものの、上記(イ)で説示したとおり、申立人2が提出した証拠からは、本件特許の優先日当時、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む甲1’発明について、経時的な変色が認められ、それを抑制する必要があるという課題を認識できない上、オンジエキスとは異なるものを用いた場合の変色抑止の結果をもって、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む場合にも変色を抑止できるとはいえないことは、当業者にとって自明である。
以上によれば、申立人2が提出した甲4’?7’の記載から、本件特許の優先日当時、上記(ア)bの点、すなわち、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む甲1’発明において、経時的な変色抑制の必要性という課題を解決するためにカルメロースカルシウムをオンジエキスに対して所定量使用するということは、本件特許の優先日当時、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(エ)そうしてみると、申立人2が提出した甲2’?7’を参酌しても、本件特許の優先日当時、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む甲1’発明について、経時的な変色を抑制する必要があったという課題を、当業者が認識し得たものとはいえず、また、甲1発明について、経時的な変色を抑制するために、カルメロースカルシウムを所定量使用するということも当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

エ 本件発明2と甲1’の2発明との対比
本件発明2と甲1’の2発明とを対比する。
甲1’の2発明における「オンジ抽出物」及び「錠剤」は、それぞれ、本件発明2における「オンジエキス」及び「固形組成物」に相当する。また、甲1’の2発明において、生薬エキスとしてはオンジエキスのみを含有していることから、両者は、「生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点4)本件発明2は、オンジエキス1質量部に対し0.1?2質量部のカルメロースカルシウムを添加することによって、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制する方法であるのに対し、甲1’発明は、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する錠剤の製造方法であり、L-ヒドロキシプロピルセルロースの添加目的は特定されておらず、L-ヒドロキシプロピルセルロースをオンジエキス1質量部に対して0.15質量部使用する点。

オ 相違点4についての検討
本件発明2は、カルメロースカルシウムを所定量添加することで、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制する方法に関する。
これに対して、甲1’には、オンジエキス以外の成分として、カルメロースカルシウムは記載されておらず、さらに、オンジエキスを有効成分として含む組成物について、経時的な変色の抑制が必要であるとの課題も、また、変色抑制の課題を解決する手段についても記載はない。
そして、上記ウで説示したのと同様の理由で、申立人2が提出した甲2’?7’を参酌しても、本件特許の優先日当時、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む甲1’の2発明について、経時的な変色を抑制する必要があったという課題を、当業者が認識し得たものとはいえず、また、甲1’の2発明について、経時的な変色を抑制するために、カルメロースカルシウムを所定量添加するということも当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

カ 本件発明の効果について
本件特許明細書には、オンジエキス末(105質量部、固形組成物全体に対して30.9質量%)及びカルメロースカルシウム(35質量部、固形組成物全体に対して10.3質量%、オンジエキス1質量部に対して0.33質量部)を含む実施例3の固形組成物は、カルメロースカルシウムを含まない比較例1?3の固形組成物よりも、経時的な色の変化が抑制されたことが記載され(【0013】?【0016】)、さらに、オンジエキス末(105質量部、固形組成物全体に対して30.7質量%)及びカルメロースカルシウム(35質量部、固形組成物全体に対して10.2質量%、オンジエキス1質量部に対して0.33質量部)を含む実施例10及び11の錠剤の経時的な変色が抑制されたことが記載されている(【0022】)。
そして、本件発明によるこのような効果が、甲1’及び甲2’?7’の記載から、当業者が予測し得た程度のものであるとはいえない。

キ 申立人2の主張
申立人2は、以下の点を主張し、本件発明の効果は、引用発明に比して顕著な効果とはいえず、本件特許の優先日当時の技術水準から当業者が予測し得た範囲内のものであることを主張している。
(ア)上記(1)イ(ア)での主張と同様、本件明細書に示される試験結果は再現性を欠くものであり、当業者の予測できなかった効果を裏付けるものではない。

(イ)発明の詳細な説明の実施例3(カルメロースカルシウムを含むもの)と実施例2(カルメロースカルシウムに代えて低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含むもの)の色差△E*(ab)の値を比較すると、前者が37.3であったのに対し、後者は35.6となっており、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いた場合の方が変色抑制効果に優れている。よって、本件発明においてカルメロースカルシウムによって得られる変色抑制は、甲1’発明ないし甲1’の2発明と比較して顕著な効果とはいえない。

(ウ)本件特許の優先日当時、カルメロースカルシウムの吸湿剤としての用途は既知であったこと(甲4’)や、他の生薬エキス末を含む錠剤にカルメロースカルシウムを配合することで錠剤の変色が抑制されていたことに鑑みれば(甲7’)、オンジエキス末を含む固形組成物中にカルメロースカルシウムを配合することで、カルメロースカルシウムが吸湿性を示し、錠剤の変色が抑制されることは当業者の予測の範囲内であったといえる。

ク 申立人2の主張についての検討
(ア)上記キ(ア)の主張について
上記キ(ア)の主張が採用できないことは、上記(1)ウ(ア)において説示したとおりである。

(イ)上記キ(イ)の主張について
上記ウ及びオで説示したとおり、申立人2が提出した甲2’?7’を参酌しても、本件特許の優先日当時、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む甲1’発明又は甲1’の2発明について、経時的な変色を抑制する必要があったという課題を、当業者が認識し得たものとはいえず、また、経時的な変色を抑制するために、カルメロースカルシウムを所定量使用するということも当業者が容易に想到し得たものとはいえないのであるから、本件発明における変色抑制効果が、甲1’発明ないし甲1’の2発明と比較して顕著な効果とはいえないとする上記キ(イ)の主張は、採用できない。

(ウ)上記キ(ウ)の主張について
この主張は、本件発明1及び2が、甲1’発明又は甲1’の2発明及び甲2’?7’の記載に基づき当業者が容易に想到し得たという主張と軌を一にするものである。
しかしながら、かかる主張が採用できないことは、上記ウ及びオで説示したとおりである。

ケ 以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、甲1’に記載された発明に、甲2’?甲7’及び甲9’の記載を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、申立人2による申立理由2Aは認められない。

(4)申立理由2Bについて
申立理由2Bは、本件発明1及び2は、甲8’に記載された発明及び甲2’?甲7’、甲9’に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明の効果は引用発明と比較して顕著な効果とはいえず、進歩性を有しないというものである。

ア 甲8’に記載された発明
上記(甲8’オ)によれば、甲8’には、以下の二つの発明が記載されているものと認める。
「アルニカ抽出物又はイカリ草抽出物0.02質量%、結晶セルロース47.38質量%、乳糖47.3質量%、カルボキシメチルセルロースカルシウム3.5質量%、タルク1.2質量%及びステアリン酸ナトリウム0.6質量%という組成の錠剤における、カルボキシルメチルセルロースカルシウムの使用。」(以下「甲8’発明」という。)
「アルニカ抽出物又はイカリ草抽出物0.02質量%に対し、結晶セルロース47.38質量%、乳糖47.3質量%、カルボキシメチルセルロースカルシウム3.5質量%、タルク1.2質量%及びステアリン酸ナトリウム0.6質量%を添加し、錠剤を製造する方法。」(以下「甲8’の2発明」という。)

イ 本件発明1と甲8’発明との対比
本件発明1と甲8’発明とを対比する。
甲8’発明における「錠剤」及び「カルボキシメチルセルロースカルシウム」は、本件発明1における「固形組成物」及び「カルメロースカルシウム」に相当する。また、甲8’発明における「アルニカ抽出物又はイカリ草抽出物」及び本件発明1における「オンジエキス」は生薬エキスである点で共通する。そして、甲8’発明も本件発明1も、生薬エキスとしては、一種類のエキスのみを含有するものである。
そうしてみると、両者は、「生薬エキスとして一種類のエキスのみを含有するとともにカルメロースカルシウムを含有する固形組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点5)本件発明1においては、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制するためにカルメロースカルシウムをオンジエキス1質量部に対し0.1?2質量部使用するのに対し、甲8’発明においては、生薬エキスがアルニカ抽出物又はイカリ草抽出物であり、また、カルボキシメチルセルロースカルシウムの添加目的について特定されておらず、また、生薬エキスであるアルニカ抽出物又はイカリ草抽出物1質量部に対し、カルボキシメチルセルロースカルシウムを175質量部使用する点。

ウ 相違点5についての検討
(ア)甲8’発明は、アルニカ抽出物又はイカリ草抽出物を0.02質量%含む錠剤において、カルボキシメチルセルロースカルシウム3.5質量%使用するというものである。
甲8’には、用いる有効成分の例として、アルニカ抽出物。イカリ草抽出物以外にオンジ抽出物も記載されているが(甲8’ア、ウ、エ)、特定の組成から剤形に関する甲8’発明において、有効成分をアルニカ抽出物又はイカリ草抽出物からオンジ抽出物に換える動機付けはない。

(イ)仮に、甲8’発明において、有効成分をオンジ抽出物に換えることを当業者が容易に想到しうるものであったとしても、甲8’には、オンジエキスを有効成分として含む組成物について、経時的な変色の抑制が必要であるとの課題も、また、変色抑制の課題を解決する手段についても記載はない。

(ウ)そして、甲8’以外の文献である甲2’?甲7’を参酌しても、本件特許の優先日当時、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む固形組成物について、経時的な変色を抑制する必要があったという課題を、当業者が認識し得たものとはいえず、また、経時的な変色を抑制するために、カルメロースカルシウムを所定量使用するということも当業者が容易に想到し得たものとはいえないことは、上記(3)ウ(エ)で説示したとおりである。

エ 本件発明2と甲8’の2発明との対比
本件発明2と甲8’の2発明とを対比する。
甲8’の2発明における「錠剤」及び「カルボキシメチルセルロースカルシウム」は、本件発明2における「固形組成物」及び「カルメロースカルシウム」に相当する。また、甲8’の2発明における「アルニカ抽出物又はイカリ草抽出物」及び本件発明2における「オンジエキス」は生薬エキスである点で共通する。そして、甲8’の2発明も本件発明2も、生薬エキスとしては、一種類のエキスのみを含有するものである。
そうしてみると、両者は、「生薬エキスとして一種類のエキスのみを含有するとともにカルメロースカルシウムを含有する固形組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点6)本件発明2は、オンジエキス1質量部に対し0.1?2質量部のカルメロースカルシウムを添加することによって、生薬エキスとしてオンジエキスのみを含有する固形組成物の変色を抑制する方法であるのに対し、甲8’の2発明は、生薬エキスとしてアルニカ抽出物又はイカリ草抽出物のみを含有する錠剤の製造方法であり、カルボキシメチルセルロースカルシウムの添加目的は特定されておらず、生薬エキスであるアルニカ抽出物又はイカリ草抽出物1質量部に対しカルボキシメチルセルロースカルシウムを175質量部使用する点。

オ 相違点6についての検討
特定の組成から剤形に関する甲8’の2発明において、有効成分をアルニカ抽出物又はイカリ草抽出物からオンジ抽出物に換える動機付けはないこと、仮に、甲8’の2発明において、有効成分をオンジ抽出物に換えることを当業者が容易に想到しうるものであったとしても、甲8’の2発明において、本件特許の優先日当時、オンジエキスのみを生薬エキスとして含む固形組成物について、経時的な変色を抑制する必要があったという課題を、当業者が認識し得たものとはいえず、また、経時的な変色を抑制するために、カルメロースカルシウムを所定量使用するということも当業者が容易に想到し得たものとはいえないことは、上記ウにおいて説示したとおりである。

カ 本件発明の効果について
本件特許明細書には、オンジエキス末(105質量部、固形組成物全体に対して30.9質量%)及びカルメロースカルシウム(35質量部、固形組成物全体に対して10.3質量%、オンジエキス1質量部に対して0.33質量部)を含む実施例3の固形組成物は、カルメロースカルシウムを含まない比較例1?3の固形組成物よりも、経時的な色の変化が抑制されたことが記載され(【0013】?【0016】)、さらに、オンジエキス末(105質量部、固形組成物全体に対して30.7質量%)及びカルメロースカルシウム(35質量部、固形組成物全体に対して10.2質量%、オンジエキス1質量部に対して0.33質量部)を含む実施例10及び11の錠剤の経時的な変色が抑制されたことが記載されている(【0022】)。
そして、本件発明によるこのような効果が、甲8’及び甲2’?7’の記載から、当業者が予測し得た程度のものであるとはいえない。

キ 申立人2の主張
申立人2は、上記(3)キと同様の主張に基づき、本件発明の効果は、引用発明に比して顕著な効果とはいえず、本件特許の優先日当時の技術水準から当業者が予測し得た範囲内のものであることを主張している。
しかしながら、かかる主張が採用できないことは、上記(3)クにおいて説示したとおりである。

ク 以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、甲8’に記載された発明に、甲2’?甲7’及び甲9’の記載を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、申立人2による申立理由2Bは認められない。

第7 むすび
したがって、申立人1及び申立人2による特許異議申立ての理由及び証拠によって、本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
異議決定日 2021-01-06 
出願番号 特願2017-4042(P2017-4042)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 536- Y (A61K)
P 1 651・ 537- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鶴見 秀紀  
特許庁審判長 前田 佳与子
特許庁審判官 小川 知宏
滝口 尚良
登録日 2020-02-17 
登録番号 特許第6662312号(P6662312)
権利者 大正製薬株式会社
発明の名称 固形組成物  
代理人 特許業務法人 津国  

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