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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1370295
審判番号 不服2020-8004  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-10 
確定日 2021-02-02 
事件の表示 特願2018-234273「通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月14日出願公開、特開2019- 41421、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)1月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年1月30日 英国)を国際出願日とする出願である特願2017-538744号の一部を平成30年12月14日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和1年10月11日付け :拒絶理由通知書
令和1年12月20日 :意見書の提出
令和2年 2月28日付け :拒絶査定
令和2年 6月10日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年2月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由1(進歩性):請求項1ないし4に係る発明は、引用例1ないし5に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.Nokia Networks, Nokia Corporation,Observations on SIB Performance for MTC[online],3GPP TSG-RAN WG1#79 R1-145391,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_79/Docs/R1-145391.zip>,2014年11月24日アップロード
2.特開2012-157059号公報
3.特開2014-143644号公報
4.特開2013-157892号公報
5.特開2013-243734号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和2年6月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
基地局と通信するユーザ装置であって、帯域幅制限ユーザ装置として動作するように構成され、
ブロードキャストチャネル(BCH)において、複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む第1の情報を含むマスタ情報ブロック(MIB)を受信する手段と、
前記第1の情報に基づいて、SIB1用のTBS及びSIB1の繰り返し数を決定する手段と、
前記第1の情報に基づいてSIB1を受信する手段と、
を備え、前記SIB1は他のシステム情報用のTBS情報を示す、
ユーザ装置。
【請求項2】
基地局と通信するユーザ装置によって実行される方法であって、
ブロードキャストチャネル(BCH)において、複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む第1の情報を含むマスタ情報ブロック(MIB)を受信することと、
前記第1の情報に基づいて、SIB1用のTBS及びSIB1の繰り返し数を決定することと、
前記第1の情報に基づいて前記SIB1を受信することと、
を含み、前記SIB1は他のシステム情報用のTBS情報を示す、方法。
【請求項3】
ユーザ装置と通信する基地局であって、
ブロードキャストチャネル(BCH)において、複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む第1の情報を含むマスタ情報ブロック(MIB)を送信する手段と、
前記TBSと繰り返し数とに基づいてSIB1を送信する手段と、
を備え、
SIB1は他のシステム情報用のTBS情報を示す、基地局。
【請求項4】
ユーザ装置と通信する基地局によって実行される方法であって、
ブロードキャストチャネル(BCH)において、複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む第1の情報を含むマスタ情報ブロック(MIB)を送信することと、
前記TBSと繰り返し数とに基づいてSIB1を送信することと、
を含み、SIB1は他のシステム情報用のTBS情報を示す、方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用された、Nokia Networks,Nokia Corporation,“Observations on SIB Performance for MTC” ([当審仮訳]:MTCのSIB性能の所見)[online],3GPP TSG-RAN WG1#79 R1-145391,2014年11月24日アップロード,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_79/Docs/R1-145391.zip>(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は、当審で付与した。)

「Observation
(中略)
・Based on simulation results provided in RAN1#79, it is seen that, for Rel-13 low complexity UE in normal coverage (SNR = -4dB)
-Repetition is required to transmit SIB messages
-The number of repetitions can be high
・e.g. 16-32 repetitions are required for SIB size of 328 bits
-The number of repetitions increases with the SIB size
・e.g. 16-32 repetitions are required for SIB size of 328 bits, 30-40 repetitions are required SIB size of 504 bits
-For a given SIB size, it may be more efficient to use one SIB rather than multiple smaller SIBs
e.g. 40-80 repetitions are required for SIB size of 1000 bits, while 30-40 repetitions are required for SIB size of 504 bits
(後略)
」(2葉1行目?16行目)

([当審仮訳]:
所見
(中略)
・RAN1#79で提供されたシミュレーション結果に基づいて、通常のカバレッジ(SNR=-4dB)では、Rel-13の低複雑度UEでは、以下のようになることがわかる。
-SIBメッセージの送信には繰り返しが必要である。
-繰り返しの回数が多くなることがある。
・例:SIBサイズが328ビットの場合、16?32回の繰り返しが必要である。
-繰り返し回数はSIBサイズに応じて増加する。
・例:328ビットのSIBサイズでは16?32回の繰り返しが必要、504ビットのSIBサイズでは30?40回の繰り返しが必要となる。
-所定のSIBサイズに対しては、複数の小さなSIBよりも1つのSIBを使用した方が効率的かもしれない。
・例えば、SIBサイズが1000ビットの場合は40?80回の繰り返しが必要ですが、504ビットの場合は30?40回の繰り返しが必要である。
(後略))

引用例1の上記記載、図面及びこの分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 上記「所見」には、「Rel-13の低複雑度UEでは、以下のようになることがわかる。」との記載がある。そして、3GPPのRel-13において低複雑度UEとは、1.4 MHzの周波数帯域幅性能しかサポートしないUEであることは技術常識であるから、引用例1の「低複雑度UE」は「帯域幅制限UE」であるといえる。
そうすると、引用例1には、「帯域幅制限UE」について記載されている。

イ 上記「所見」には、「SIBメッセージの送信には繰り返しが必要である。」、「繰り返し回数はSIBサイズに応じて増加する」との記載がある。そして、SIBメッセージを送信するのは基地局であり、該SIBメッセージをUEが繰り返し受信することは技術常識である。
そうすると、引用例1には、UEが「繰り返しSIBメッセージを受信するものであって、繰り返し回数はSIBのサイズに応じて増加する」ものが記載されている。

ウ そして、上記「ア」及び「イ」によれば、基地局から送信されるSIBメッセージを帯域幅制限UEにおいて受信するもの、すなわち基地局と通信するUEについての記載あるから、引用例1は「基地局と通信するUEであって、該UEは帯域幅制限UEとして動作する」ものであるといえる。

以上を総合すると、上記引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 基地局と通信するUEであって、該UEは帯域幅制限UEとして動作するものであり、
繰り返しSIBメッセージを受信するものであって、繰り返し回数はSIBのサイズに応じて増加する、
UE。」

2.引用例2及び引用例3について
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2012-157059号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0049】
システム情報は、ツリーとして編成される。マスタ情報ブロック(MIB)は、ネットワークセル内の複数のシステム情報ブロック(SIB)への参照およびスケジューリング情報を与え、SIBは実際のシステム情報を含む。MIBは、任意選択で、1つまたは2つのスケジューリングブロックへの参照およびスケジューリング情報をさらに含んでもよく、スケジューリングブロックは、追加のSIBへの参照およびスケジューリング情報を与える。SIBのスケジューリング情報は、MIB、またはスケジューリングブロックのうちの1つの、いずれかの中にのみ含まれてもよい。言い換えると、MIBは、システム情報を構成するさまざまな情報要素のインデックスであり、例えばサポートされている公衆陸上移動網(PLMN)と、SIBのスケジューリングとに関する情報を提供する。各SIBは、パラメータのそれぞれのグループに関連し、ユーザ装置が適切に機能するようにユーザ装置に通信される、それらのパラメータの値を含む。例えば、それらのパラメータは、アイドルモードで動作している場合のユーザ装置のためのパラメータと、接続モードで動作している場合のユーザ装置のためのパラメータとを含む。標準では、ネットワークがユーザ装置に送信してもよい、18の異なるタイプのSIBが定義されており、各SIBは特定の情報内容に関する。MIB、スケジューリングブロック(存在する場合)、およびSIBは、特に抽象構文記法(ASN.1)符号化に従って、符号化された形態で伝送される。」

また、原査定の拒絶の理由に引用された、特開2014-143644号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0006】
MIBは、128フレーム単位で巡回的に一斉同報送信されるSIBの構成(何フレーム目でどのSIBが送信されるかの送信スケジュール)を移動体通信端末が知るための情報および報知情報の変更を判断するための情報を含んでいる。」

上記引用例2の「マスタ情報ブロック(MIB)は、ネットワークセル内の複数のシステム情報ブロック(SIB)への参照およびスケジューリング情報を与え、SIBは実際のシステム情報を含む。」、「SIBのスケジューリング情報は、MIB、またはスケジューリングブロックのうちの1つの、いずれかの中にのみ含まれてもよい。」、上記引用例3の「MIBは、128フレーム単位で巡回的に一斉同報送信されるSIBの構成(何フレーム目でどのSIBが送信されるかの送信スケジュール)を移動体通信端末が知るための情報および報知情報の変更を判断するための情報を含んでいる。」との記載によれば、「マスタ情報ブロック(MIB)がシステム情報ブロック(SIB)のスケジューリング情報を含む。」ことは周知技術(以下、「周知技術1」という。)であると認められる。

3.引用例4及び引用例5について
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2013-157892号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0052】
システム情報ブロックとしては、SIB1?SIB9がある。SIB1が送信されるタイミング等は、MIBで指定される。SIB2?SIB9のスケジューリング情報は、SIB1に含まれている。したがって、SIBなどの報知情報は、端末装置2が基地局装置1との接続を確立してなくても、端末装置が読み取ることができる。なお、SIBの数は特に限定されるものではない。」

また、原査定の拒絶の理由に引用された、特開2013-243734号公報(以下、「引用例5」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0004】
図1は、無線送受信ユニット(WTRU:wireless transmit receive unit)110と改善型ユニバーサル地上無線アクセスネットワーク(E-UTRAN:enhanced universal terrestrial radio access network)(改善型Node B(eNB)とも称される)120との間の従来型のシステム情報獲得手順100を示す。定義されたSIBの1つは、数が限定された最も高い頻度で送信されるパラメータを含む、MIB(master information block)125である。もう1つの定義されたSIBは、他のSI130がいつ送信されるか(開始時間)を示すスケジューリング情報を包含する、システム情報ブロック種類1(SIB-1)128である。MIB125は、放送チャネル(BCH:broadcast channel)を用いて送信されるが、(SIに包含される)他のSIB、およびSIB-1は、ダウンリンク共有チャネル(DL-SCH)において搬送される。」

上記引用例4の「SIB2?SIB9のスケジューリング情報は、SIB1に含まれている。」、上記引用例5の「もう1つの定義されたSIBは、他のSI130がいつ送信されるか(開始時間)を示すスケジューリング情報を包含する、システム情報ブロック種類1(SIB-1)128である。」との記載によれば、「SIB1は他のSIBのスケジューリング情報を含む。」ことは周知技術(以下、「周知技術2」という。)であると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
ア.対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

(ア)引用発明の「UE」は、本願発明1の「ユーザ装置」に相当し、引用発明の「帯域幅制限UE」は、本願発明の1の「帯域幅制限ユーザ端末装置」に相当する。そして、帯域幅制限UEは基地局と通信するUEに含まれるものであるから、引用発明の「基地局と通信するUE」は、「帯域幅制限UEとして動作するように構成され」るものであるといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明は「基地局と通信するユーザ装置であって、帯域幅制限ユーザ装置として動作するように構成され、」る点で一致する。

(イ)引用発明の「UE」は「SIBメッセージを受信」するものであり、SIBメッセージを受信するためには、そのスケジューリング情報を含むMIBを受信する必要があること、MIBはブロードキャストチャネルを介して受信されることは当該技術分野において技術常識である。してみれば、引用発明のUEは、MIBをブロードキャストチャネルを介して受信すること、そして、該MIBを受信する手段を有していることは自明である。
そうすると、本願発明1の「ブロードキャストチャネル(BCH)において、複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む第1の情報を含むマスタ情報ブロック(MIB)を受信する手段と、」を備えることと、引用発明の「UEは繰り返しSIBメッセージを受信するもの」であることは、「ブロードキャストチャネル(BCH)において、マスタ情報ブロック(MIB)を受信する手段と、」を備える点において共通する。

(ウ)上記「(イ)」に述べたとおり、引用発明の「UE」は「SIBメッセージを受信」するものであり、その受信のためにMIBを受信する必要があるものである。加えて、MIBを受信した後、SIBメッセージを受信するためには、少なくとも、他のSIBのスケジューリング情報を含むSIB1を受信する必要があることは技術常識である。そうすると、引用発明の「UE」は「SIB1を受信する」こと、そして当該SIB1を受信する手段を有していることは自明である。また、他のSIBのスケジューリング情報は他のシステム情報を示すものといえるから、「SIB1は他のシステム情報を示す」といえる。
そうすると、本願発明1と引用発明は「SIB1を受信する手段と、」を有し、「SIB1は他のシステム情報を示す」点で共通する。

以上を総合すると、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「 基地局と通信するユーザ装置であって、帯域幅制限ユーザ装置として動作するように構成され、
ブロードキャストチャネル(BCH)において、マスタ情報ブロック(MIB)を受信する手段と、
SIB1を受信する手段と、を備え、
SIB1は他のシステム情報を示す、
ユーザ装置。」

(相違点1)
本願発明1の「マスタ情報ブロック(MIB)」は「複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む第1の情報を含む」のに対し、引用発明では、当該特定がされていない点。

(相違点2)
本願発明1の「ユーザ装置」が「前記第1の情報に基づいて、SIB1用のTBS及びSIB1の繰り返し数を決定する手段」を備えるのに対し、引用発明は、当該手段を備えていない点。

(相違点3)
本願発明1の「SIB1を受信する手段」は「前記第1の情報に基づいて」SIB1を受信するものであるのに対し、引用発明では、当該特定がされていない点。

(相違点4)
本願発明1の「SIB1」は「他のシステム情報用のTBS情報を示す」のに対し、引用発明の「SIB」は「他のシステム情報」がTBS情報を含むとの特定がされていない点。

イ.相違点についての判断
相違点1に係る本願発明1の「マスタ情報ブロック(MIB)」は「複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む第1の情報を含む」という発明特定事項は、引用例1、周知技術1として例示した引用例2及び3、並びに周知技術2として例示した引用例4及び5には記載も示唆もされておらず、当該技術分野において周知技術であるともいえない。
よって、当業者といえども、引用発明において、上記相違点1に係る「マスタ情報ブロック(MIB)」を「複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む第1の情報を含む」ものとすることは、容易に想到し得たとはいえない。
したがって、上記相違点2ないし4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、並びに周知技術1及び2に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を方法の発明として記載したものあって、「マスタ情報ブロック(MIB)」が「複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む第1の情報を含む」との発明特定事項を含むから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに周知技術1及び2に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.本願発明3について
ア.対比
本願発明3と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

(ア)引用発明の「UE」、「帯域幅制限UE」は、本願発明3の「ユーザ装置」に相当する。そして、引用発明の「基地局と通信するUE」の「基地局」は「UEと通信する基地局」である。
そうすると、本願発明3と引用発明は「ユーザ装置と通信する基地局」を有する点で一致する。

(イ)引用発明の「UE」は「SIBメッセージを受信」するものであり、SIBメッセージを受信するためには、そのスケジューリング情報を含むMIBを受信する必要があること、MIBはブロードキャストチャネルを介して受信されること、そしてSIBメッセージ及びMIBは基地局から送信されることは当該技術分野において技術常識である。してみれば、引用発明の「基地局」は、ブロードキャストチャネルを介してMIBを送信すること、そして、該MIBを送信する手段を有していることは自明である。
そうすると、本願発明3と引用発明は、「ブロードキャストチャネル(BCH)において、マスタ情報ブロック(MIB)を送信する手段と、」を有する点において共通する。

(ウ)上記「(イ)」に述べたとおり、引用発明の「UE」は「SIBメッセージを受信」するものであり、その受信のためにMIBを受信する必要があるものである。加えてMIBを受信した後、SIBメッセージを受信するためには、少なくとも、他のSIBのスケジューリング情報を含むSIB1を受信する必要があること、そしてSIB及びMIBは基地局から送信されることは技術常識である。してみれば、引用発明の「基地局」は「SIB1を送信する」ものであり、当該SIB1を送信する手段を有していることは自明である。また、他のSIBのスケジューリング情報は他のシステム情報を示すものといえるから、「SIB1は他のシステム情報を示す」といえる。
そして、引用発明の「UE」は「繰り返しSIBメッセージを受信するものであって、繰り返し回数はSIBのサイズに応じて増加する」ものであり、SIBは基地局から送信されることを考慮すれば、繰り返し回数をSIBのサイズに応じて決めるのは基地局であることは自明である。更に、SIBもトランスポートブロックを用いて送信されることは自明であるから、SIBのサイズが変わればトランスポートブロックのサイズも変わるといえる。してみれば、引用発明の「基地局」は、トランスポートブロックのサイズと繰り返し数に基づいてSIB1を送信するものであり、当該SIB1を送信する手段を有していることは自明である。
そうすると、本願発明3と引用発明は「トランスポートブロックサイズ(TBS)と繰り返し数とに基づいてSIB1を送信する手段と、」を有し、「SIB1は他のシステム情報を示す」点で一致する。

以上を総合すると、本願発明3と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「 ユーザ装置と通信する基地局であって、
ブロードキャストチャネル(BCH)において、マスタ情報ブロック(MIB)を送信する手段と、
トランスポートブロックサイズ(TBS)と繰り返し数とに基づいてSIB1を送信する手段と、を備える基地局。」

(相違点1)
本願発明3の「マスタ情報ブロック(MIB)」は「複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む第1の情報を含む」のに対し、引用発明では、当該特定がされていない点。

(相違点2)
本願発明3の「SIB1」は「他のシステム情報用のTBS情報を示す」のに対し、引用発明の「SIB」は「他のシステム情報」がTBS情報を含むとの特定がされていない点。

イ.相違点についての判断
相違点1に係る本願発明3の「マスタ情報ブロック(MIB)」は「複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む第1の情報を含む」という発明特定事項は、引用例1、周知技術1として例示した引用例2及び3、並びに周知技術2として例示した引用例4及び5には記載も示唆もされておらず、当該技術分野において周知技術であるともいえない。
よって、当業者といえども、引用発明において、上記相違点1に係る「マスタ情報ブロック(MIB)」を「複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む第1の情報を含む」ものとすることは、容易に想到し得たとはいえない。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明3は、当業者であっても、引用発明、並びに周知技術1及び2に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4.本願発明4について
本願発明4は、本願発明3を方法の発明として記載したものあって、「マスタ情報ブロック(MIB)」が「複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む第1の情報を含む」との発明特定事項を含むから、本願発明3と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに周知技術1及び2に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時補正(令和2年6月10日にされた手続補正)により、本願の請求項1ないし4に係る発明は「マスタ情報ブロック(MIB)」が「複数の異なるトランスポートブロックサイズ(TBS)のうちの1つ、及び複数の異なるシステム情報ブロック1(SIB1)の繰り返し回数のうちの1つに直接対応する値を持つパラメータを含む」という発明特定事項を有するものとなった。そして、上記第5の1.ないし4.で説示したとおり、当該発明特定事項は、原査定において引用された引用例1ないし5記載も示唆もされておらず、当該技術分野における周知技術であるともいえない。
したがって、本願の請求項1ないし4に係る発明は、当業者であっても、引用例1に記載された発明、引用例2及び3に記載された周知技術、並びに引用例4及び5に記載された周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-01-14 
出願番号 特願2018-234273(P2018-234273)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三枝 保裕  
特許庁審判長 廣川 浩
特許庁審判官 永田 義仁
本郷 彰
発明の名称 通信システム  
代理人 家入 健  

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