• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1370306
審判番号 不服2020-6827  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-20 
確定日 2021-01-12 
事件の表示 特願2016-136501「回路基板」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月18日出願公開、特開2018- 10884〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成28年7月11日に特許出願したものであって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

令和 2年 2月 7日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 2月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 4月21日付け:拒絶査定
令和 2年 5月20日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和2年5月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年5月20日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
1 本件補正について
(1)本件補正による請求項1
令和2年5月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1については、
「【請求項1】
発熱を伴う表面実装型の第一の電気部品と、発熱を伴わない表面実装型の第二の電気部品と、前記第一の電気部品及び前記第二の電気部品を搭載する第一の面と前記第一の面の反対面である第二の面とを有する配線板と、を備えた回路基板であって、
前記第二の電気部品が半田にて固定される第一の配線パターンに前記第一の電気部品が電気的に接続されていると共に、前記第二の電気部品を固定する前記半田は、前記第二の電気部品の端子を第一の配線パターンに電気的に接続するものではないことを特徴とする回路基板。」
とあったものが、
「【請求項1】
発熱を伴う表面実装型の第一の電気部品と、発熱を伴わない表面実装型の第二の電気部品と、前記第一の電気部品及び前記第二の電気部品を搭載する第一の面と前記第一の面の反対面である第二の面とを有する配線板と、を備えた回路基板であって、
前記第二の電気部品が半田にて固定される第一の配線パターンに前記第一の電気部品が電気的に接続されており、
前記第二の電気部品は、前記第一の配線パターンに電気的に接続されていないと共に、前記第二の電気部品を固定する前記半田は、前記第二の電気部品の端子を第一の配線パターンに電気的に接続するものではないことを特徴とする回路基板。」
と補正された。

(2)補正の適否
上記補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第二の電気部品」について、「前記第一の配線パターンに電気的に接続されていない」ことの限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正による上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

2 先願発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願の日前の他の特許出願であって、本願出願後に出願公開された特願2015-160895号(特開2017-041485号公報参照)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。

「【0008】
本態様によれば、発熱部品のリード部をプリント配線を介して熱伝導率の高い金属製のペグに接続するだけの簡単な構造により、放熱用導体パターンを削除または縮小しつつ、発熱部品の放熱構造を構成することができる。特に、コネクタをプリント基板に固定するために用いられているペグを、発熱部品の放熱構造の一部として利用していることから、従来構造のように特別な放熱部品を必要とすることなく、既存のペグを利用して発熱部品の放熱性を高めることができるのである。
【0019】
本発明によれば、発熱部品のリード部をプリント配線を介して熱伝導率の高い金属製のペグに接続するだけの簡単な構造により、発熱部品の放熱構造を構成できる。特に、既存のペグを発熱部品の放熱構造の一部として利用していることから、従来の如き特別な放熱部品を必要とすることなく、発熱部品の放熱性を高めることができる。しかも、発熱部品のリード部とペグをプリント配線で接続するだけでよいことから、従来の如き大きな放熱用導体パターンを設ける場合に比して、放熱構造によるプリント基板の利用スペースを大幅に低減でき、プリント基板の高密度化、省スペース化の要求にも有利に対応できる。
(省略)
【0022】
先ず、図1?3に、本発明の一実施形態としての実装基板10を示す。実装基板10は、プリント基板12と、プリント基板12の一方の面である表面14に実装された発熱部品である集積回路16とコネクタ18を含んで構成されている。より詳細には、コネクタ18は、ハウジング20内に、複数の接続端子22が挿通されて収容保持された構造とされている。そして、接続端子22の一方の端部であるリード部24がプリント基板12の表面14に設けられたパッド部26aに対して半田付けにより導通接続されるようになっている一方、接続端子22の他方の端部が図示しない相手側コネクタと接続されることにより、相手側コネクタがプリント基板12に対して電気的に接続されるようになっている。なお、理解を容易とするために、図1?3においては、半田や一部のプリント配線の図示を省略している。また、以下の説明において、上方とは、図3中の上方、下方とは、図3中の下方を言うものとする。
【0023】
ハウジング20は、図1?3に示されているように、合成樹脂から形成された一体成形品とされており、側方(図1?3中、左方)に開口する略矩形の箱体形状とされたコネクタ装着孔28を有している。そして、かかるコネクタ装着孔28に対して図示しない相手側コネクタが嵌合されるようになっている。また、コネクタ18の幅方向(図2中、上下方向)の両側には、外方に向かって突出する扁平ブロック状のペグ保持部30が設けられている。さらに、ペグ保持部30の上面32には、ペグ保持部30の上面32に開口してハウジング20の長手方向(図2中、左右方向)に延びる溝状のペグ挿通孔34が設けられている一方、ペグ保持部30の下面36には、ハウジング20の長手方向に離隔した3箇所においてペグ保持部30の下面36に開口すると共にペグ挿通孔34に連通された溝状のリード部挿通孔38が設けられている(図3参照)。
【0024】
そして、このようなハウジング20のペグ保持部30のペグ挿通孔34に対して、3本のペグ40が収容保持されるようになっている。より詳細には、3本のペグ40はそれぞれ、図3に示されているように、略縦長平板状を有しており、かかる3本のペグ40のリード部42がペグ保持部30のリード部挿通孔38を挿通してリード部挿通孔38から下方に向かって突出された状態で、ペグ40がペグ挿通孔34内に収容保持されるようになっている。しかも、かかる3本のペグ40は、上端部が連結板部46を介して相互に連結されており、例えば銅板等の表面に錫等のめっきが施された金属板がプレス打ち抜き加工されて形成されている。
【0025】
加えて、ハウジング20には、左右方向で整列配置された一群の接続端子22が収容保持されている。各接続端子22は、他方の端部がハウジング20のコネクタ装着孔28の内部に突設されている一方、リード部24がハウジング20の外方に略クランク形状で突出されて、リード部24の先端部がプリント基板12の表面14に設けられたパッド部26a上に載置されている(図2?3参照)。
【0026】
一方、発熱部品である集積回路16は、図1?3に示されているように、集積回路本体48と、集積回路本体48の長さ方向(図2?3中、左右方向)の一端部から外方に向かって略クランク状に突出する2本のリード部50と、集積回路本体48の長さ方向の他端部の裏面に露呈されると共に外方に向かって延び出すリード部50より幅広とされたリード部52と、を備えて構成されている。そして、2本のリード部50と幅広とされたリード部52がそれぞれ、プリント基板12の表面14に設けられたパッド部26b、26c上に載置されている。ここで、集積回路16は、例えば、3端子レギュレータから構成されており、2本のリード部50がそれぞれ入力端子と接地端子とされている一方、幅広とされたリード部52が出力端子とされている。
【0027】
プリント基板12は、図3に示されているように、ガラスエポキシ樹脂などの公知の絶縁材料で形成された略矩形平板状の絶縁基板において、その表面14や他方の面である裏面54等にパッド部26a、26b、26cや後述するプリント配線26d、26e等を設けたものである。また、プリント基板12には、ハウジング20の両側のペグ保持部30に取り付けられた3本のペグ40のリード部42に対応して、6個の略円形断面形状のスルーホール56が3個ずつ平行に整列配置された状態で貫設されている。スルーホール56の内周面には全面に亘って図示しないめっきが施されていると共に、プリント基板12の表面14側および裏面54側においてスルーホール56の開口部の周囲には図示しないフランジ状のランド部が設けられている。さらに、プリント基板12の表面14にはプリント配線26dが設けられており、3個のスルーホール56の内周面に施されためっき層がランド部に接続されたプリント配線26dを介して相互に接続されるようになっている。加えて、プリント基板12の表面14にはプリント配線26eが設けられており、かかるプリント配線26eにより、集積回路16の幅広とされたリード部52が半田付け接続されるパッド部26cと、3本のペグ40のリード部42に半田付け接続されるプリント配線26dとが接続されるようになっている。また、図1?2に示されているように、コネクタ18のハウジング20と集積回路16は、間に他の実装部品を介在させることなく隣接配置されている。
【0028】
そして、図1および図3に示されているように、このような構造とされたプリント基板12のスルーホール56に対して、プリント基板12の表面14側から裏面54側に向って、コネクタ18のハウジング20に係合された3本のペグ40のリード部42が挿通配置される。これにより、コネクタ18のハウジング20内に挿通されて収容保持された複数の接続端子22のリード部24の先端部が、プリント基板12の表面14に設けられたパッド部26a上に載置されるようになっている。また、集積回路16が、そのリード部50、52がそれぞれプリント基板12のパッド部26b、26c上に載置されるように配設される。このようにプリント基板12に対してコネクタ18と集積回路16等が正規位置に位置決め載置された状態において、リード部24、50、52をそれぞれパッド部26a、26b、26cへ半田付けする工程と、ペグ40のリード部42をプリント基板12のスルーホール56に半田付けする工程を、例えばリフロー方式を用いて同時に行う。これにより、リード部24がパッド部26aに半田付けされて、相手側コネクタとプリント基板12の配線パターンが電気的に接続されると共に、リード部50、52がそれぞれパッド部26b、26cに半田付けされて、集積回路16が所望の回路に電気的に接続されるようになっている。加えて、プリント基板12のスルーホール56に挿通配置された3本のペグ40のリード部42が半田付けされることにより、コネクタ18のハウジング20がプリント基板12に固定されると共に、集積回路16の幅広とされたリード部52が3本のペグ40に接続されるようになっているのである。
【0029】
このような構造とされた本実施形態の実装基板10によれば、発熱部品である集積回路16のリード部52が半田付け接続されるパッド部26cと、ペグ40のリード部42に半田付け接続されるプリント配線26dとを、プリント配線26eを介して接続するだけの簡単な構造により、発熱部品の放熱構造を構成することができる。しかも、既存の部材である熱伝導率の高い金属製のペグ40を発熱部品の放熱構造の一部として利用していることから、従来の如き特別な放熱部品を必要とすることなく、発熱部品の放熱性を高めることができるのである。また、発熱部品である集積回路16のリード部52とペグ40のリード部42を接続するプリント配線26eを設けるだけでよいことから、従来の如き大きな放熱用導体パターンを設ける場合に比して、プリント基板12における放熱構造の使用スペースを大幅に低減でき、プリント基板12の高密度化や放熱構造の省スペース化の要求にも有利に対応することができる。

図1


図2


図3


先願明細書等の上記記載及び図面から、次のことがいえる。

(1)先願明細書等の段落【0022】ないし【0024】及び図1ないし図3から、先願明細書等には、プリント基板12と、プリント基板12の一方の面である表面14に実装された発熱部品である集積回路16とコネクタ18と、コネクタ18のハウジング20に設けられたペグ保持部30に収容保持された金属製のペグ40と、を含んで構成される実装基板10が記載されている。

(2)先願明細書等の段落【0028】及び図1ないし図3より、プリント基板12のスルーホール56に、ペグ40のリード部42を挿通し半田付けすることにより、コネクタ18がプリント基板12に固定される。
そして、先願明細書等の段落【0027】及び図1ないし図3より、3個のスルーホール56の開口部の周囲にフランジ状のランド部が設けられ、3個のスルーホール56の内周面に施されためっき層がランド部に接続されたプリント配線26dを介して相互に接続されるようになっており、同段落【0027】の「3本のペグ40のリード部42に半田付け接続されるプリント配線26d」及び同段落【0029】の「ペグ40のリード部42に半田付け接続されるプリント配線26d」の各記載からすれば、スルーホール56に、コネクタ18に設けられたペグ40のリード部42を挿通し半田付けすることにより、ペグ40のリード部42がプリント配線26dに半田付け接続されるといえる。

(3)先願明細書等の段落【0026】ないし【0029】及び図1ないし図3によれば、発熱部品である集積回路16の幅広とされたリード部52がパッド部26cと半田付け接続され、プリント配線26dはプリント配線26eを介してパッド部26cと接続される。

(4)先願明細書等の段落【0025】、【0028】及び図2、図3によれば、コネクタ18のハウジング20に収容保持された一群の接続端子22のリード部24は、プリント基板12の表面14に設けられたパッド部26aに半田付けされる。

したがって、上記(1)ないし(4)によれば、先願明細書等には次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。

「 プリント基板12と、プリント基板12の一方の面である表面14に実装された発熱部品である集積回路16とコネクタ18と、コネクタ18のハウジング20に設けられたペグ保持部30に収容保持された金属製のペグ40と、を含んで構成される実装基板10であって、
プリント基板12のスルーホール56にペグ40のリード部42を挿通し半田付けすることにより、ペグ40のリード部42がプリント配線26dに半田付け接続されるとともに、コネクタ18がプリント基板12に固定され、
集積回路16の幅広とされたリード部52がパッド部26cと半田付け接続され、プリント配線26dはプリント配線26eを介してパッド部26cと接続され、
コネクタ18のハウジング20に収容保持された一群の接続端子22のリード部24が、プリント基板12の表面14に設けられたパッド部26aに半田付けされる、
実装基板10。」

3 対比・判断
(1)そこで、本願補正発明と先願発明とを対比する。
ア 先願発明の「集積回路16」は、「プリント基板12の一方の面である表面14に実装された発熱部品」であるから、本願補正発明の「発熱を伴う表面実装型の第一の電気部品」に相当する。
そして、先願発明の「コネクタ18」は「プリント基板12の一方の面である表面14に実装」されるものであり、また、本願明細書段落【0026】の「本実施形態は、・・・発熱を伴わない表面実装型のコネクタ(第二の電気部品)27」との記載から、本願補正発明の「第二の電気部品」が「コネクタ」を含むことは明らかであるから、先願発明の「コネクタ18」は、本願補正発明の「発熱を伴わない表面実装型の第二の電気部品」に相当する。
さらに、先願発明の「プリント基板12」は「一方の面である表面14」とは反対の面を有することは当然のことである。
よって、先願発明の「プリント基板12と、プリント基板12の一方の面である表面14に実装された発熱部品である集積回路16とコネクタ18と、コネクタ18のハウジング20に設けられたペグ保持部30に収容保持された金属製のペグ40と、を含んで構成される実装基板10」は、本願補正発明の「発熱を伴う表面実装型の第一の電気部品と、発熱を伴わない表面実装型の第二の電気部品と、前記第一の電気部品及び前記第二の電気部品を搭載する第一の面と前記第一の面の反対面である第二の面とを有する配線板と、を備えた回路基板」に相当する。

イ 先願発明では、「プリント基板12のスルーホール56にペグ40のリード部42を挿通し半田付けすることにより、ペグ40のリード部42がプリント配線26dに半田付け接続されるとともに、コネクタ18がプリント基板12に固定され」るから、「コネクタ18」は「半田」によって「プリント配線26d」に「固定され」るといえ、該「プリント配線26d」は、本願補正発明の「第一の配線パターン」に相当する。
そして、先願発明では、「集積回路16の幅広とされたリード部52がパッド部26cと半田付け接続され、プリント配線26dはプリント配線26eを介してパッド部26cと接続される」から、「集積回路16」は「プリント配線26e」を介して「プリント配線26d」に電気的に接続されることは明らかである。
よって、先願発明の「プリント基板12のスルーホール56にペグ40のリード部42を挿通し半田付けすることにより、ペグ40のリード部42がプリント配線26dに半田付け接続されるとともに、コネクタ18がプリント基板12に固定され、集積回路16の幅広とされたリード部52がパッド部26cと半田付け接続され、プリント配線26dはプリント配線26eを介してパッド部26cと接続される」ことは、本願補正発明の「前記第二の電気部品が半田にて固定される第一の配線パターンに前記第一の電気部品が電気的に接続されて」いることに相当する。

(2)よって、本願補正発明と先願発明とは、以下の点で一致ないし一応相違する。
(一致点)
「発熱を伴う表面実装型の第一の電気部品と、発熱を伴わない表面実装型の第二の電気部品と、前記第一の電気部品及び前記第二の電気部品を搭載する第一の面と前記第一の面の反対面である第二の面とを有する配線板と、を備えた回路基板であって、
前記第二の電気部品が半田にて固定される第一の配線パターンに前記第一の電気部品が電気的に接続されている回路基板。」

(一応の相違点)
本願補正発明では、「前記第二の電気部品は、前記第一の配線パターンに電気的に接続されていないと共に、前記第二の電気部品を固定する前記半田は、前記第二の電気部品の端子を第一の配線パターンに電気的に接続するものではない」のに対し、先願発明では、そのような旨を特定した記載がない点。

(3)上記一応の相違点について検討する。
ア 上記(1)のアで述べたように、先願発明の「コネクタ18」は本願補正発明の「第二の電気部品」に相当し、また、上記(1)のイで述べたように、先願発明の「プリント配線26d」は本願補正発明の「第一の配線パターン」に相当する。
ここで、先願発明では、「プリント基板12のスルーホール56にペグ40のリード部42を挿通し半田付けすることにより、ペグ40のリード部42がプリント配線26dに半田付け接続される」ところ、先願明細書等を参酌しても、「コネクタ18」を構成し、「プリント配線26d」に接続される部品は、「ペグ40のリード部42」のみであって、「コネクタ18」を構成する「ペグ42のリード部42」以外の部品を「プリント配線26d」に接続することを示唆する記載は見当たらない。
そして、先願発明では、「プリント基板12のスルーホール56にペグ40のリード部42を挿通し半田付けすること」により「コネクタ18がプリント基板12に固定され」、また、先願明細書等の段落【0008】、【0019】、【0029】によれば、「ペグ40」は発熱部品の放熱構造の一部として利用されるものの、先願明細書等には、「ペグ40」が、コネクタ18をプリント基板12に固定すること及び放熱構造の一部として利用されること以外の機能を有すること、及び、「ペグ40」が、「スルーホール56」、「ランド」、「プリント配線26d」以外の導電性の部品に接続されること、は何等記載されていない。
以上からすれば、先願発明において、「ペグ40のリード部42がプリント配線26dに半田付け接続され」るものの、コネクタ18自体プリント配線26dに電気的に接続されているとは認められない。
つまり、先願発明は「第二の電気部品は、第一の配線パターン電気的に接続されていない」構成を備えるものである。

イ また、上記(2)で述べたように、先願発明において「コネクタ18」は「半田」によって「プリント配線26d」に「固定され」るといえ、「プリント配線26d」は、本願補正発明の「第一の配線パターン」に相当する。
そして、先願発明の「コネクタ18のハウジング20に収容保持された一群の接続端子22のリード部24」は、「プリント基板12の表面14に設けられたパッド部26aに半田付けされる」ものであって、本願補正発明の「第二の電気部品の端子」に相当する。
ここで、先願発明の「接続端子22のリード部24」に関し、先願明細書等の段落【0022】、【0028】には、リード部24がパッド部26aに半田付けされることにより、相手側コネクタとプリント基板12の配線パターンが電気的に接続されることは記載されているものの、該リード部24を、プリント基板12におけるパッド部26a以外の配線やパッドに接続させることは何等記載されていない。
さらに、先願明細書等によれば、「ペグ40」及び「プリント配線26d」はハウジング20の幅方向に位置し(先願明細書等の段落【0023】を参照)、「接続端子22」はハウジング20の長手方向に保持され(先願明細書等の段落【0023】、【0025】を参照)るから、「コネクタ18」を「プリント配線26d」に半田付けするための「半田」を用いて、「接続端子22のリード部24」を「プリント配線26d」に電気的に接続するには、「プリント配線26d」に接続する一部の「リード部24」又は「プリント配線26d」自体を延設・加工する必要性があることは明らかであって、このような設計変更が先願明細書及び図面に記載されているに等しい事項であるとはいえない。
してみれば、先願発明において「コネクタ18」を「プリント配線26d」に半田付けするための「半田」は、「接続端子22のリード部24」を「プリント配線26d」に電気的に接続するものではないといえる。
つまり、先願発明は「第二の電気部品を固定する半田は、前記第二の電気部品の端子を第一の配線パターンに電気的に接続するものではない」構成を備えるものである。

ウ したがって、上記一応の相違点は、実質的な相違点ではなく、本願補正発明と先願発明とは実質的に同一である。

(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書(「3.」「(d)」を参照)において、「先願1に記載された発明は、コネクタ18のリード部24が半田にてプリント配線26eに電気的に接続されているに対し、本願の請求項1に係る発明は、第二の電気部品27が前記第一の配線パターン21gに電気的に接続されていないと共に、半田S3が第二の電気部品27の端子を第一の配線パターン21gに電気的に接続するものではない点で相違している」と主張している。
しかしながら、先願明細書及び図面を参酌しても、「コネクタ18のリード部24が半田にてプリント配線26eに電気的に接続される」ことは記載されておらず、また、これを示唆する記載も見当たらない。
さらに、請求人は、先願明細書及び図面に「コネクタ18のリード部24が半田にてプリント配線26eに電気的に接続されること」が記載されているといえる技術的な根拠を何等提示していない。
したがって、上記請求人の主張は、採用できない。

4 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、先願発明と実質的に同一であり、しかも、本願補正発明の発明者が先願発明の発明者と同一ではなく、また、本願出願時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年5月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年2月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「【請求項1】
発熱を伴う表面実装型の第一の電気部品と、発熱を伴わない表面実装型の第二の電気部品と、前記第一の電気部品及び前記第二の電気部品を搭載する第一の面と前記第一の面の反対面である第二の面とを有する配線板と、を備えた回路基板であって、
前記第二の電気部品が半田にて固定される第一の配線パターンに前記第一の電気部品が電気的に接続されていると共に、前記第二の電気部品を固定する前記半田は、前記第二の電気部品の端子を第一の配線パターンに電気的に接続するものではないことを特徴とする回路基板。」

2 先願発明
原査定の拒絶の理由で引用された先願明細書等の記載事項、及び先願発明は、前記「第2」「2」に記載したとおりである。

3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶理由の概要は、以下のとおりのものである。

「(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。」というものであり、請求項1に対して、先願として、特願2015-160895号(特開2017-041485号公報)が引用されている。

4 対比・判断
本願発明と先願発明とを対比するに、本願発明は、本件補正発明から上記「第2」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「第二の電気部品」について「前記第一の配線パターンに電気的に接続されていない」ことの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した本件補正発明が、前記「第2」の「[理由]1」の「3」で検討したとおり、先願発明と同一であるから、本願発明も同様の理由により、先願発明と同一である。

したがって、本願発明は先願発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は先願発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する

 
審理終結日 2020-11-09 
結審通知日 2020-11-11 
審決日 2020-11-27 
出願番号 特願2016-136501(P2016-136501)
審決分類 P 1 8・ 56- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 16- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒田 久美子  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 畑中 博幸
永井 啓司
発明の名称 回路基板  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ