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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1370308
審判番号 不服2020-7303  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-29 
確定日 2021-02-02 
事件の表示 特願2015- 27008「ゲル状の薬剤入りのパッケージ製品」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月18日出願公開、特開2016-147704、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年 2月13日の出願であって、平成30年12月12日付けで拒絶理由通知がされ、平成31年 2月15日に意見書及び手続補正書が提出され、令和 元年 7月16日付けで拒絶理由通知(最後)がされ、令和 元年 9月13日に意見書が提出されたが、令和 2年 2月28日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和 2年 5月29日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

理由1
この出願の請求項1?10に係る発明は、以下の引用文献1記載された発明、引用文献2?3に記載された事項及び引用文献4?5に記載された周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2014/028681号
2.特開平06-312770号公報
3.特開2007-275344号公報
4.特開2012-143506号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2010-253054号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
令和 2年 5月29日に拒絶査定不服審判の請求と同時に提出した手続補正書による補正(以下、「審判請求時の補正」という。)は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

審判請求時の補正は、請求項1に「するとともに、前記底面部と対向する位置に開口を有し、前記開口は、前記展示状態において、遮水シートで覆われており」を追加するとともに、請求項2から「前記容器は、前記底面部の反対側において前記側面部により規定される開口を有し、」を削除し、また、請求項4の「前記空気清浄器は、前記カバーシートとの間に空間を保ちつつ、前記カバーシートを外側から覆う遮水シートをさらに含む、」から「前記遮水シートは、前記カバーシートとの間に空間を保ちつつ、前記カバーシートを外側から覆う、」に変更するものである。

上記の請求項1についての手続補正は、請求項1の「底面部及び前記底面部から起立する側面部を有」する「容器」の発明特定事項をさらに減縮するものであって、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2及び請求項4についての手続補正は、請求項1に発明特定事項が追加されたことに伴う発明特定事項の重複を避けるものであるから、全体として特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。

また、請求項1の手続補正は、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲の段落[0024]、[0064]及び[請求項2]に記載された事項に基づくものであり、新規事項を追加するものではない。また、請求項2の手続補正は、請求項1の手続補正に対応して重複する発明特定事項を削除するものであるから、新規事項を追加するものではないことが明らかである。さらに、請求項4の手続補正は、請求項4が間接的に引用する請求項1の発明特定事項が「前記容器は、・・・遮水シートで覆われており」となることにともない、主語を「前記容器」から「前記遮水シート」とするものであって、やはり新規事項を追加するものではないことが明らかである。

そして、「第4 本件発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1?10に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本件発明
本件審判に係る出願の請求項1?10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明10」という。)は、上記審判請求時の補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

【請求項1】
水分が分離し得るゲル状の薬剤と、前記薬剤を収容する容器とを含む空気清浄器と、
前記空気清浄器を支持し、前記薬剤の不使用時において前記空気清浄器を展示する展示状態に設置可能な支持体とを備え、
前記容器は、底面部及び前記底面部から起立する側面部を有するとともに、前記底面部と対向する位置に開口を有し、前記開口は、前記展示状態において、遮水シートで覆われており、
前記底面部は、前記容器の内部を視認可能に構成されており、前記展示状態で、外側から視認可能な位置に配置され、
前記側面部は、前記展示状態で、前記薬剤から分離した前記水分が前記底面部から離れる方向へ流れるように、鉛直方向に対し前記底面部から離れるにつれて下方に傾斜する傾斜面を有する、
パッケージ製品。
【請求項2】
前記空気清浄器は、前記開口を塞ぐ吸水性を有するカバーシートをさらに含む、
請求項1に記載のパッケージ製品。
【請求項3】
前記容器は、前記側面部における前記開口側の端部から周方向外方へ延びるフランジ部をさらに含み、
前記カバーシートは、少なくとも前記傾斜面付近において前記カバーシートと前記フランジ部との間に前記容器の内部空間に連通する空間を確保するような態様で、周方向に亘って前記フランジ部に接着される、
請求項2に記載のパッケージ製品。
【請求項4】
前記遮水シートは、前記カバーシートとの間に空間を保ちつつ、前記カバーシートを外側から覆う、
請求項2又は3に記載のパッケージ製品。
【請求項5】
前記カバーシートは、不織布である、
請求項2から4のいずれかに記載のパッケージ製品。
【請求項6】
前記底面部は、透明である、
請求項1から5のいずれかに記載のパッケージ製品。
【請求項7】
前記支持体は、前記空気清浄器が固定される固定面部と、前記展示状態で前記固定面部を起立させる台座とを含む、
請求項1から6のいずれかに記載のパッケージ製品。
【請求項8】
前記展示状態は、前記空気清浄器を支持した前記支持体を吊り下げた状態である、
請求項1から6のいずれかに記載のパッケージ製品。
【請求項9】
前記支持体は、内部に前記空気清浄器を収容可能な箱体である、
請求項1から6のいずれかに記載のパッケージ製品。
【請求項10】
前記支持体は、紙製である、
請求項1から9のいずれかに記載のパッケージ製品。

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア「1. Field of the Background
[0004] The present invention generally relates to a volatile material dispensing system, and more particularly, to a volatile material dispenser in combination with an adjustable chipboard holder.
2. Description of the Background
[0005] Volatile material dispensers have been used to provide fragrances to office or home settings. One such dispenser is an ornamental design for a combined picture frame and potpourri holder. The design includes front and rear panels angled from each other. A recess is centered within the front panel to provide an area to insert a photograph. A bridge connects both the front and rear panels.」
(当審訳:以下同様。)
「1.技術分野
[0004]
本発明は、一般的に揮発性物質分配システムに関し、具体的には、調節可能なチップボードホルダと組合わせた揮発性物質ディスペンサーに関する。
2.背景技術
[0005]
揮発性物質ディスペンサーは、事務室や家庭に香りを提供するように用いられる。そのようなディスペンサーは、結合されたフォトフレーム及びポプリホルダのための装飾的デザインである。デザインは、互いに傾斜した前方及び後方パネルを含む。凹部は、写真を挿入する領域を提供するために、前方パネル内の中央に配置される。ブリッジは、前方及び後方パネルの両方を接続している。」

イ「[0036] Referring to FIG. 1 , a volatile material dispensing system 20 is illustrated. The dispensing system 20 includes a volatile material dispenser 22 and a display frame 24. The dispensing system 20 is foldable between a first state (shown) where the system is substantially planar or flat and a second state, which is substantially triangular (see FIG. 8). The display frame 24 comprises a first wall portion 26 and a second wall portion 28 hingedly attached to a first end 26a of the first wall portion 26 by a first fold line 30. The first wall portion 26 may be substantially rectangular in shape. An opening 32 is disposed within the first wall portion 26. The first wall portion 26 further includes at least two arcuately shaped slits 34 positioned on opposite corners of the opening 32. Corner portions 36a, 36b of the dispenser 22 may be inserted into the slits 34 to releasably secure the dispenser 22 within the opening 32. In other embodiments the dispenser 22 is fittingly retained within the slits 34 or otherwise adhered or affixed to the frame 24 so as not to be removable. The second wall portion 28 includes an aperture 38 shaped to permit the dispensing system to be hung, for example, from a wall hanger display.
[0037] The dispenser 22 is further illustrated in FIGS. 2-5. With reference to FIGS. 2 and 3, the dispenser 22 or cartridge comprises a blister 44, a peripheral flange 46, and an impermeable laminate 48 releasably adhered to the blister 44 and the flange 46. The blister 44 includes a non- porous permeable membrane 50 and a cup-shaped structure 52 or reservoir. The cup-shaped structure 52 includes a bottom wall 54 and four side walls 56 that in conjunction with the permeable membrane 50 act as a sealed reservoir to contain a volatile material 58 (shown in FIGS. 4 and 5). Illustratively, the cup-shaped structure 52 and the permeable membrane 50 are formed from clear and/or translucent materials, thereby allowing the volatile material 58 to be visible therethrough. The peripheral flange 46 is planar and is coupled to and extends outwardly from top edges of the cup-shaped structure 52. In one embodiment, the peripheral flange 46 extends outwardly from upper edges of the side walls 56 and is integrally formed therewith. The present dispenser 22 and the volatile material 58 are similar to those described in U.S. Patent Nos. 7,213,770, 7,523,577, and 7,665,238.
[0038] FIG. 4 illustrates the dispenser 22 in a first condition. The dispenser 22 is completely or substantially Ml in the first condition, i.e., little or no volatile material 58 has diffused through the permeable membrane 50 because the impermeable laminate 48 has not been removed from the blister 44. There is substantially no diffusion of the volatile material 58 when the dispenser 22 is filled and the impermeable laminate 48 covers the permeable membrane 50. Illustratively, the impermeable laminate 48 is removed from the blister 44 by a user grasping an end of the impermeable laminate 48 and peeling it off the blister 44. A tab, extension, or other means for grasping may be included as an extension of the impermeable laminate 48 to aid in removal of same. The extension may be at the comers, ends, and/or on the surface of the impermeable laminate 48.
[0039] Following removal of the impermeable laminate 48, the dispenser 22 begins to transition from a full or first condition (FIG. 4) to an empty or second condition (FIG. 5). There may be a small amount of the volatile material 58 that remains in the blister 44 and the dispenser 22 will still be considered to have reached the second condition. As the volatile material 58 diffuses through the permeable membrane 50, the permeable membrane 50 slowly collapses upon the bottom wall 54. With reference to FIG. 5, following diffusion of the volatile material 58 across the permeable membrane 50 there is less volatile material 58 contained within the dispenser 22. Substantially no new air enters the dispenser 22 subsequent to diffusion of the volatile material 58. The result of this is a pressure gradient across the permeable membrane 50, with a higher pressure existing in the ambient air than the pressure in the dispenser 22. The pressure gradient causes the ambient air to exert a net positive pressure upon the dispenser 22, which presses the permeable membrane 50 against the remaining volatile material 58 and ultimately the bottom wall 54.」
「[0036]
図1を参照すると、揮発性物質の分配システム20が説明される。分配システム20は、揮発性物質のディスペンサー22及び表示フレーム24を含む。分配システム20は、システムが実質的に平面又は平坦な第1状態及び実質的に三角形の(図8参照)第2状態の間で折り畳まれることができる。表示フレーム24は、第1壁部26及び第1折り畳み線30によって第1壁部26の第1端部26aにヒンジ式に取付けた第2壁部28を含む。第1壁部26は、実質的に形状が長方形であってもよい。開口部32が第1壁部26内に配置される。第1壁部26は、開口部32の対向するコーナー上に位置する少なくとも2つの弓形のスリット34をさらに含む。ディスペンサー22のコーナー部36a,36bは、開口部32内のディスペンサー22を脱着可能に固定するようにスリット34内に挿入してもよい。他の実施形態において、ディスペンサー22は、スリット34内に適合して保持されたり、脱着できないように表示フレーム24に固定して取付けられる。第2壁部28は、例えば、壁かけ表示物から分配システムを可能にする形状の孔38を含む。
[0037]
ディスペンサー22は、図2?図5でさらに説明される。図2及び図3を参照すると、ディスペンサー22又はカートリッジは、ブリスター44、周辺フランジ46、及びブリスター44と周辺フランジ46に脱着可能に取付けた不透過薄膜48を含む。ブリスター44は、非多孔性の透過膜50及びカップ状構造52又は容器を含む。カップ状構造52(図4及び図5を参照)は、透過膜50と結合して揮発性物質58を保持するように密封された容器の役割をする第4側壁56及び底壁54を含む。具体的には、カップ状構造52及び透過膜50は、透明及び/又は半透明な物質で作られ、揮発性物質58がそれを通して見えるようにする。周辺フランジ46は、平面でカップ状構造52の上部端から外側に延びる。一実施形態では、周辺フランジ46は、第4側壁56の上部端から外側に延びて、一体化して形成される。本ディスペンサー22及び揮発性物質58は、米国特許第7,213,770号、同第7,523,577号、及び同第7,665,238号に記述されたものと同様である。
[0038]
図4は、第1条件におけるディスペンサー22を示す。ディスペンサー22は、第1条件で完全に又は実質的にいっぱいに満たされ、すなわち、不透過薄膜48がブリスター44から除去されないために、ほとんど又は全く揮発性物質58は透過膜50を介して広がらない。ディスペンサー22がいっぱいに満たされて不透過薄膜48が透過膜50を覆っているときは、揮発性物質58の実質的な拡散はない。具体的には、不透過薄膜48は、ユーザが不透過薄膜48の端部を把持してブリスター44からそれをはがすことによって、ブリスター44から除去される。タブ、延長部、又は把持するための異なる手段が不透過薄膜48の延長部として含まれてもよく、その除去を助ける。延長部は、不透過薄膜48の表面、端部、及び/又はコーナーであってもよい。
[0039]
不透過薄膜48が除去された後に、ディスペンサー22は、いっぱいに満たされた状態又は第1条件(図4)から空の状態又は第2条件(図5)に移り始める。ブリスター44内に残る揮発性物質58が少量存在してもよく、ディスペンサー22は、第2条件に達したものとみなされてもよい。揮発性物質58が透過膜50を介して広がることによって、透過膜50は、ゆっくりと底壁54上で分裂する。図5を参照すると、透過膜50にわたる揮発性物質58が拡散後にディスペンサー22内に含まれる揮発性物質58は少ない。揮発性物質58の拡散後に、実質的に新しい空気はディスペンサー22に入らない。このような結果は、ディスペンサー22内の圧力よりも周辺の空気中に存在する圧力が高いという透過膜50にわたる圧力勾配による。圧力勾配は、ディスペンサー22に正味圧力を加える周辺の空気によって、残りの揮発性物質58、及び最終的に底壁54に対して透過膜50を加圧する。」

ウ FIG.2?FIG.4及び上記摘記事項ア、イから、カップ状構造52が底壁54と対向する位置に開口を有するものといえる。また、「カップ状構造52及び透過膜50は、透明及び/又は半透明な物質で作られ、揮発性物質58がそれを通して見える」から、カップ状構造52の底壁54もカップ状構造の内部を視認可能なものであり、FIG1、FIG8及び上記摘記事項ア、イから、底壁54が展示状態で外側から視認可能な位置に配置されていることも自明である。さらに、FIG1?FIG4、FIG7及びFIG8からみて、側壁56は、展示状態で鉛直方向に対して底壁54から離れるにつれて下方に傾斜する傾斜面となっていることが確認できる。

エ 上記摘記事項ア及びウから、引用文献1には、次の発明が記載されている(以下、「引用発明1」という。)。

(引用発明1)
「揮発性物質と、前記揮発性物質を収容するカップ状構造とを含むディスペンサーと、前記ディスペンサーを支持し、前記揮発性物質の不使用時において前記ディスペンサーを展示する展示状態で設置可能な表示フレームとを備え、前記カップ状構造は、底壁及び底壁から起立する側壁を有するとともに、底壁と対向する位置に開口を有し、前記開口は、不透過薄膜で覆われており、前記底壁は、前記カップ状構造の内部を視認可能に構成されており、展示状態で、外側から視認可能な位置に配置され、前記側壁は、前記展示状態で、鉛直方向に対して前記底壁から離れるにつれて下方に傾斜する傾斜面を有する分配システム。」

2.引用文献4及び引用文献5に記載された事項
(1)引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、以下の事項が記載されている。
ア「【0011】
本発明の好ましい第1実施形態に係る芳香剤容器10は、図1(a),(b)及び図2に示すように、例えば球形粒状のゲルからなるビーズ状芳香剤12(図3(a)参照)を凹箱部13に多数収容した容器本体11と、容器本体11の開口面11aを覆って着脱可能に装着されるカバー体14とを含んで構成される。本第1実施形態の芳香剤容器10は、ビーズ状芳香剤12から揮散される揮散成分を、容器本体11の開口面11aに形成されたシート側空気孔15(図3(b)参照)と、容器本体11の側周面11bに形成された箱側空気孔16とを介して容器本体11の内部を通過する空気によって、外部に揮散させて芳香作用を発揮させる。また、本第1実施形態の芳香剤容器10は、カバー体14の正面板17を側方に向けると共に(図2参照)、容器本体11の側周面11bに形成された箱側空気孔16を上方に向けて縦置きにした状態で用いることができて、ビーズ状芳香剤12から揮散される揮散成分を効率良く揮散させると共に、ビーズ状芳香剤12から分離した界面活性剤や溶剤等の水分が容器本体11から漏れ出るのを防止する機能を備える。さらに、本第1実施形態の芳香剤容器10は、ビーズ状芳香剤12からの揮散成分の揮散を効果的に抑制して、例えばビーズ状芳香剤12による香りが強くなりすぎたり、香りの持続時間を十分に確保できなくなるのを回避する機能を備える。」

イ「【図1】



ウ「【図2】



エ「【図3】



(2)引用文献5に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、以下の事項が記載されている。
ア「【0015】
また、本実施形態では、2段構造となった略正方形の底部13は、周縁部13aと下段底部18との間に介在する平坦な肩部17が、略同じ幅で「コの字」形に設けられている。これによって、下段底部18は、底部13の中央部分まで延設して配置されると共に、下段底部18は、肩部17から一段下がって凹状に設けられることにより、ゲル状芳香剤12から分離した水分を液溜めする液溜り部24(図2(c)参照)を形成することになる。」

イ「【図2】



3.当審が発見した引用文献
当審が調査した引用文献である実願昭63-24099号(実開平1?128581号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア「考案の詳細な説明
<産業上の利用分野>
本考案は透過膜を有する揮散性物質収容体に関する。
<従来技術>
従来この種の揮散性物質収容体は、透過膜の外側を非通気性のフィルムで閉じていただけであった。
<本考案が解決すべき問題点>
しかしながら、上記従来の揮散性物質収容体は透過膜と非通気性フィルムの間に揮散性物質の液だまりを生じやすく、開封時に液だまりの揮散性物質がこぼれて、人体、衣類、床面、家具等に付着するという欠点があった。そこで、本考案は従来の欠点を除去することを目的としてなされたものである。
<問題点を解決するための手段>
本考案は収容体の開口部を透過膜により閉じ、該透過膜の外側を、吸収性部材を内面に設けたフィルムで閉じたことを特徴とする揮散性物質収容体に係る。」(明細書第1ページ第7行?第22行)

イ「本考案において吸油性部材としては揮散性物質を吸液保持する部材であればよく、例えば、不織布、紙、布、綿、親油性高分子化合物等の無機、有機の吸油性部材が使用されるがこれらに限定されるもではない(原文ママ)。
本考案において揮散性物質(常温及び/又は加温で揮散する物質をいう)としては、香料類、殺菌剤、消臭剤、忌避剤、植物生長調整剤、除草剤、衣類用防虫剤、殺虫剤、化粧品、医薬品等を挙げることが出来、液体、ゾル体、ゲル体等任意である。」(明細書第2ページ第9行?第16行)

ウ「第1図は本考案の実施の1例を示す縦断面図であり、揮散性物質(2)を収容した収容体(1)の上面に透過膜(3)が貼着され、さらにその上面に吸油性部材(4)を内側全面に設けた、フィルム(5)を貼着した場合が示されている。使用に際し、フィルム(5)を剥がすと同時に液だまりを吸液保持した吸油性部材(4)がはがれ、液こぼれがなく使用できる。・・・」(第4ページ第6行?第11行)

エ「



4.その他の文献
(1)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア「【0007】容器本体(2) は、ガスバリヤー性の高い合成樹脂製材料で一体成型され、内側シート(3) は、紙製材料と合成樹脂製材料とを組合せ、微小の通気孔を有する布状に形成され、通気性が確保されている。外側シート(4) は、ガスバリヤー性の高い合成樹脂製フィルムで形成され、鍔部(2a)上に貼着された内側シート(3) 上へ不完全結合状態で接合されている。」

イ「【0011】内側シートとしては、ガスバリヤー性の低い合成樹脂製シートを用いることもできる。その合成樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン等が好適に用いられる。また、天然繊維、炭素繊維、金属製材料や、それらを適宜組合せたものを用いることもできる。さらに、それら各材料を繊維織物状や不織布状に形成して通気性を確保したり、フィルム状に形成したものに通気孔やスリットを形成してもよい。
【0012】内側シートは、防虫剤や芳香剤等のように、あまり多くの通気量を必要としないものを収容する場合、また、除湿剤のように多くの通気量を必要とするものを収容する場合等、収容する薬剤の種類、また、設置箇所の空間の大きさや使用目的に応じて適宜変更することができる。さらに、容器の構造も上記実施例のものに限定されるものでないことは勿論である。」

(2)引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア「【0020】実施例1
・・・芳香/消臭ゲルセット1は、ゲル収容トレー2を備え、芳香/消臭ゲルを個々独立に収納する構成となっている。すなわち、ゲル収容トレー2は、厚さ約0.5mmの透明なPE樹脂シート3から作られ、シート成形により、そのシート表面には、その裏面側へと半球面状に窪む形態のゲル収納容器部4…が縦方向に2列、横方向に3列、計6個形成されている。各ゲル収納容器部4は、内径約4cmの半球面を有し、そして容器部4と隣の容器部4とは、それぞれ互いに、約5mmの間隙を保つように設けられている。
そして、各々のゲル収納容器部4には、それぞれ、透明な水性ゲル5が充填されている。水性ゲル5は、直径約4cmの半球体をなし、この形状が長期間保持されるように、該ゲル5のブルーム強度は15g以上となるように、好ましくは25g乃至32gの範囲に調整されている。また、半球体の水性ゲル5には、母材の水の他、ゼラチン、架橋剤、界面活性剤、可溶化剤、並びに、芳香剤(香料)及び/又は消臭剤が適量含有され、さらに着色剤の添加により、例えば淡いピンク色やモスグリーン色に着色されている。
そして、6個の半球体の水性ゲル5が容器部4に各々充填されたゲル収容トレー2の表面には、PE(厚さ約20μm)の透明フィルムからなるシール材6が熱接着により、剥離可能に貼着されている。」

第6 対比・判断
1.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「カップ状構造」、「ディスペンサー」、「表示フレーム」、「底壁」、「側壁」、「開口」、「分配システム」が、本件発明1の「容器」、「空気清浄器」、「支持体」、「底面部」、「側面部」、「開口」、「パッケージ製品」に相当する。

引用発明1の「揮発性物質」は、「揮発性物質ディスペンサーは、事務室や家庭に香りを提供する」ものであることから、本件発明1の「薬剤」に相当する。

引用発明1の「不透過薄膜」は、「ディスペンサー22がいっぱいに満たされて不透過薄膜48が透過膜50を覆っているときは、揮発性物質58の実質的な拡散はない」のであるから、内部で気化した揮発性物質を透過しない以上、液体である水を透過しないことも自明であり、してみると、本件発明1の「遮水シート」に相当する。

してみると、本件発明1と引用発明1とは、
「薬剤と、前記薬剤を収容する容器とを含む空気清浄器と、
前記空気清浄器を支持し、前記薬剤の不使用時において前記空気清浄器を展示する展示状態に設置可能な支持体とを備え、
前記容器は、底面部及び前記底面部から起立する側面部を有するとともに、前記底面部と対向する位置に開口を有し、前記開口は、遮水シートで覆われており、
前記底面部は、前記容器の内部を視認可能に構成されており、前記展示状態で、外側から視認可能な位置に配置され、
前記側面部は、前記展示状態で、鉛直方向に対し前記底面部から離れるにつれて下方に傾斜する傾斜面を有する、パッケージ製品。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
薬剤が本件発明1では「水分が分離し得るゲル状」であるのに対して、引用発明1では水分を分離し得るゲル状であるか否か不明な点。

(相違点2)
容器の側面部が本件発明1では「前記薬剤から分離した前記水分が前記底面部から離れる方向へ流れるように」構成されているのに対して、引用発明1では薬剤から水分が分離するか否か不明な点。

(相違点3)
開口が本件発明1では「前記展示状態において」遮水シートで覆われているのに対して、引用発明1では、展示状態において遮水シートで覆われていない点。

(2)当審の判断
上記相違点1について検討すると、第5の2.(1)及び(2)で摘記した引用文献4及び引用文献5の記載からみて、芳香剤を「水分が分離し得るゲル状」とすることは従来周知の技術手段というべきであって、引用発明1の薬剤である揮発性物質も「事務室や家庭に香りを提供する」のであるから、当該薬剤である揮発性物質を「水分が分離し得るゲル状」とすることのみであれば、単なる周知技術の置換にすぎないものといえる。

次いで相違点2及び相違点3について検討すると、薬剤から分離した水分を傾斜面を利用して容器から漏れ出るのを防止することは、第5の2.(1)及び(2)で摘記した引用文献4及び引用文献5の記載から従来周知の技術手段ということができる。

しかしながら、引用文献4及び引用文献5に記載された事実から把握される周知技術は、展示状態において薬剤から分離した水分を傾斜面を利用して容器の底面側で捕捉することで容器から漏れ出ることを防止するものであって、本件発明1のように薬剤から分離した水分が底面部から離れる方向に流れるようにするものではない。

そして、引用発明1の側面部である側壁は、「前記展示状態で、鉛直方向に対し前記底面部から離れるにつれて下方に傾斜する傾斜面を有する」ものであるから、上記引用文献4及び引用文献5に記載された事実から把握される周知技術の傾斜面とは傾きが逆方向となっており、してみると、引用発明1に当該周知技術を適用することは、阻害要因があるといわざるを得ない。

さらに、引用発明1は、展示状態において事務室や家庭に香りを提供するため開口が遮水シートで覆われていないものであるから、引用発明1の薬剤である揮発性物質を引用文献2及び引用文献3に例示される従来周知の「水分が分離し得るゲル状」のものに置換したとしても、分離した水分が開口から漏れ出てしまうという不具合が発生することが自明である。

そして上記のとおり、引用発明1は、展示状態において事務室や家庭に香りを提供するのであるから、引用発明1の開口を展示状態において遮水シートで覆うことも、やはり阻害要因があるといわざるを得ない。

してみると、引用発明1に引用文献4及び引用文献5に記載された事実から把握される周知技術を適用することに阻害要因がある以上、本件発明1は、引用発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。

(3)引用文献6について
引用文献6には、上記第5の3.で示したとおり、ゲル体の揮散性物質(2)を収容した収容体(1)の開口に透過膜(3)を貼着し、さらにその上面に吸油性部材(4)を内側全面に設けたフィルムを貼着したことなどが記載されている(以下、「引用文献6記載事項」という。)。

そこで、引用発明1への引用文献6記載事項の適用を検討する。

上記相違点1について検討すると、引用文献6に記載されたゲル体の揮散性物質は、技術常識を参酌すると「水分を分離し得るゲル状の薬剤」に相当するものといえる。

次いで相違点2及び相違点3について検討すると、引用文献6には、揮散性物質から分離した液体を容器から漏れ出るのを防止することが記載されている。

しかしながら、引用文献6には、収容体(1)の側面を「展示状態において、薬剤から分離した前記水分が前記底面部から離れる方向へ流れるように、鉛直方向に対して前記底面部から離れるにつれて下方に傾斜する傾斜面」とすることは、一切記載されておらず示唆もされていない。

また、引用文献6に記載された収容体(1)は、透明又は半透明にすることで収容体(1)に収容した揮散性物質を見せるような構成もないことから、当該収容体(1)を引用発明1のディスペンサーのように支持体に支持させて展示することの動機付けもない。

してみると、引用発明1に引用文献6記載事項を適用する動機付けがない以上、本件発明1は、引用発明1及び引用文献6記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。

2.本件発明2?10について
本件発明2?10も、本件発明1を直接的又は間接的に引用して本件発明1と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、並びに周知技術若しくは引用文献6記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-01-12 
出願番号 特願2015-27008(P2015-27008)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村山 美保小川 悟史種子島 貴裕  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 藤井 眞吾
間中 耕治
発明の名称 ゲル状の薬剤入りのパッケージ製品  
代理人 山下 未知子  
代理人 山下 未知子  
代理人 立花 顕治  
代理人 桝田 剛  
代理人 桝田 剛  
代理人 立花 顕治  
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