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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1370369
審判番号 不服2020-3691  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-18 
確定日 2021-02-04 
事件の表示 特願2017-501297「メッセージを編集するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月14日国際公開,WO2016/007780,平成29年 9月21日国内公表,特表2017-528028,請求項の数(17)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由
第1 手続の経緯

本願は,2015年7月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年7月10日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成30年7月6日に手続補正がされ,令和元年8月1日付けで拒絶理由通知がされ,令和元年11月5日に手続補正がされ,令和元年11月14日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和2年3月18日に拒絶査定不服審判の請求がされ,令和2年9月3日付けで拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,令和2年12月4日に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(令和元年11月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

●理由1(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-17
・引用文献等 1,2
<引用文献等一覧>
1.特開2010-109629号公報
2.特表2013-503576号公報


第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1(明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

●理由1(明確性)

・請求項:4,10,16
編集されたメッセージを第3デバイスから受信することについて,第3デバイスが元のメッセージの送受信に関係している記載がなく,編集されたメッセージを第3デバイスが送信できる根拠が理解できないから,明確でない。

・請求項:13-17
「命令が格納されている非一時的な実体的なコンピューター読み取り可能記憶媒体を含む製品」の発明の範囲が不明瞭である。


第4 本願発明

本願請求項1-17に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明17」という。)は,令和2年12月4日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-17に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
方法であって,
メッセージング・サーバーによって,第1デバイスから元のメッセージを受信するステップと,
前記メッセージング・サーバーによって,前記元のメッセージをメッセージ・データベースに格納するステップと,
前記メッセージング・サーバーによって,新たなデータの要求を第2デバイスから受信するステップと,
前記メッセージング・サーバーによって,前記元のメッセージを前記メッセージ・データベースから前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記元のメッセージを表示し,前記第2デバイスは,前記元のメッセージをキャッシュに格納する,ステップと,
前記メッセージング・サーバーによって,編集されたメッセージを受信するステップと,
前記メッセージング・サーバーによって,前記編集されたメッセージを前記メッセージ・データベースに格納するステップと,
前記メッセージング・サーバーによって,前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する命令を前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する,ステップと,
前記メッセージング・サーバーによって,前記編集されたメッセージを前記メッセージ・データベースから前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを表示し,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを前記キャッシュに格納する,ステップと,
を含む方法。
【請求項2】
前記メッセージング・サーバーによって,入手可能なメッセージを前記第1デバイスが有するという通知を前記第2デバイスへ送信するステップを更に含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メッセージング・サーバーによって,前回のフェッチ時点以降の前記第2デバイス
に関する全ての新たなデータを前記第2デバイスへ送信するステップを更に含む,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メッセージング・サーバーは,前記編集されたメッセージを,前記第1デバイスから,または前記メッセージング・サーバーに接続することが可能な第3デバイスから受信する,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記メッセージング・サーバーによって,前記元のメッセージを無効とするステップを更に含む,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記メッセージング・サーバーによって,前記第2デバイスへ送信された元のファイルを削除するステップ,および,前記メッセージング・サーバーによって,前記第2デバイスへ編集されたファイルを送信するステップを更に含む,請求項1に記載の方法。
【請求項7】
システムであって,
プロセッサーと,
前記プロセッサーと通信するように構成され,命令が格納されている実体的な非一時的なメモリと,
を備え,前記命令は,前記プロセッサーによる実行に応答して,前記システムに,
前記プロセッサーによって,第1デバイスから元のメッセージを受信するステップと,
前記プロセッサーによって,前記元のメッセージをメッセージ・データベースに格納するステップと,
前記プロセッサーによって,新たなデータの要求を第2デバイスから受信するステップと,
前記プロセッサーによって,前記元のメッセージを前記メッセージ・データベースから前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記元のメッセージを表示し,前記第2デバイスは,前記元のメッセージをキャッシュに格納する,ステップと,
前記プロセッサーによって,編集されたメッセージを受信するステップと,
前記プロセッサーによって,前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する命令を前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する,ステップと,
前記プロセッサーによって,前記編集されたメッセージを前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを表示し,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを前記キャッシュに格納する,ステップと,
を含む動作を行わせる,システム。
【請求項8】
前記動作は,前記プロセッサーによって,前記第1デバイスが入手可能なメッセージを有するという通知を前記第2デバイスへ送信するステップを更に含む,請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記動作は,前記プロセッサーによって,前回のフェッチ時点以降の前記第2デバイスに関する全ての新たなデータを前記第2デバイスへ送信するステップを更に含む,請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサーは,前記編集されたメッセージを,前記第1デバイスから,または前記システムに接続することが可能な第3デバイスから受信する,請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記動作は,前記プロセッサーによって,前記元のメッセージを無効とするステップを更に含む,請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記動作は,前記プロセッサーによって,前記第2デバイスへ送信された元のファイルを削除するステップ,および,前記プロセッサーによって,前記第2デバイスへ編集されたファイルを送信するステップを更に含む,請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
命令が格納されている非一時的な実体的なコンピューター読み取り可能記憶媒体であって,前記命令は,コンピューターによる実行に応答して,前記コンピューターに,
前記コンピューターによって,第1デバイスから元のメッセージを受信するステップと,
前記コンピューターによって,前記元のメッセージをメッセージ・データベースに格納するステップと,
前記コンピューターによって,新たなデータの要求を第2デバイスから受信するステップと,
前記コンピューターによって,前記元のメッセージを前記メッセージ・データベースから前記第2デバイスへ送信するステップと,
前記コンピューターによって,編集されたメッセージを受信するステップと,
前記コンピューターによって,前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する命令を前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する,ステップと,
前記コンピューターによって,前記編集されたメッセージを前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを表示し,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを前記キャッシュに格納する,ステップと,
を含む動作を行わせる,コンピューター読み取り可能記憶媒体。
【請求項14】
前記動作は,前記コンピューターによって,前記第1デバイスが入手可能なメッセージを有するという通知を前記第2デバイスへ送信するステップを更に含む,請求項13に記載のコンピューター読み取り可能記憶媒体。
【請求項15】
前記動作は,前記コンピューターによって,前回のフェッチ時点以降の前記第2デバイスに関する全ての新たなデータを前記第2デバイスへ送信するステップを更に含む,請求項13に記載のコンピューター読み取り可能記憶媒体。
【請求項16】
前記コンピューターは,前記編集されたメッセージを,前記第1デバイスから,または前記コンピューターに接続することが可能な第3デバイスから受信する,請求項13に記載のコンピューター読み取り可能記憶媒体。
【請求項17】
前記動作は,前記コンピューターによって,前記元のメッセージを無効とするステップを更に含む,請求項13に記載のコンピューター読み取り可能記憶媒体。」



第5 引用文献,引用発明等

1.引用文献1について

原査定において引用された特開2010-109629号公報(以下,「引用文献1」という。下線は当審が付与。)には,

「【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の原理に従う一つのメッセージ伝送システムは,第1の利用者群が登録される第1のメッセージ管理機構の送信側サーバと,第2の利用者群が登録される第2のメッセージ管理機構の受信側サーバとを含む。送信側サーバは,送信者が前記第1の利用者群の一人であるかの認証を行う認証手段と,前記認証の成功した送信者により作成されたメッセージであって,宛先情報とメッセージ本体を含むメッセージを,送信端末から受信する受信手段と,受信した前記メッセージの少なくともメッセージ本体を保存する保存手段と,前記メッセージの宛先に対応する受信側サーバに対して,前記メッセージの保存場所を特定可能な情報を含む通知を送出する送出手段と,前記受信側サーバからの取得要求に応答して,この取得要求が含む情報に従って特定される保存場所に保存されているメッセージ本体を送信する送信手段とを備える。受信側サーバは,前記送信側サーバから送出された前記通知を保存する保存手段と,受信者が前記第2の利用者群の一人であるかの認証を行う認証手段と,前記認証の成功した受信者により発せられた,当該受信者を宛先とするメッセージの閲覧要求を,受信端末から受信する受信手段と,前記閲覧要求の受信を契機として,保存されている前記通知に基づく取得要求を,前記送信側サーバへ送出する送出手段と,前記送信側サーバから前記取得要求に応答して送信された前記メッセージ本体を,前記受信端末へ送信する送信手段とを備える。
【0014】
この構成によれば,既存技術のように作成したメッセージが宛先側のサーバに転送されて全てが送信先の設備に委ねられるのではなく,送信元(送信側)のサーバから送信先(受信側)のサーバへ送信されるのは,メッセージの存在を示す通知にとどまり,実際のメッセージ本体は,メッセージの作成者あるいは送信者の側の管理が及ぶ送信元のメッセージ管理機構のサーバに保存される。受信者は,受信側のサーバが受信した通知に従って,送信側のサーバにアクセスし,そこに保存されているメッセージ本体を閲覧するということになる。なお,メッセージ本体には,メッセージの本文と添付ファイルの両方が含まれてよい。」

「【0022】
上述したように,本メッセージ伝送システムでは,送信側のサーバにメッセージ本体が保存されているので,メッセージの存在をいったん受信側のサーバへ通知してしまった後でも,受信端末が,実際にそのメッセージの本体を閲覧するために送信側のサーバへアクセスしてくる前であれば,受信者に気付かれることなく,内容の変更を行うことができる。
【0023】
このためには,例えば,上記のメッセージ伝送システムにおいて,前記メッセージ本体の内容変更が,前記メッセージを作成した送信者から要求された場合に,送信側サーバの前記保存手段に保存されたメッセージ本体を書き換える手段を,送信側サーバがさらに備え,送信側サーバの前記送信手段は,受信側サーバからの取得要求に応答して,変更後のメッセージ本体を送信するようにすればよい。
【0024】
このようにすると,受信者がメッセージ本体を閲覧した後に,送信者が同じメッセージ本体の内容を変更する場合も,受信端末にそのメッセージ本体のコピーを残せないシステムであれば,受信者はもはや変更後の内容しか見ることができないため,間違った内容が流布することを防止できる。なお,受信者が閲覧した後のメッセージ本体を送信者が変更する場合には,そのメッセージの存在を示す通知を再度,送信側サーバから受信側サーバへ送信するようにしてもよい。メッセージ本体の最初の保存時に送信する通知を新着通知とし,内容の変更時に送信する通知を更新通知としてもよい。」

「【0036】
また,上述したメッセージ伝送システムにおいては,メッセージ本体を暗号化する場合もしない場合も,受信側サーバ及び受信端末において,一切メッセージ本体を保存しないという運用が可能である。この運用によれば,メッセージ本体は,送信者が明示的に削除しない限り,送信側サーバに保存され続けており,受信側サーバには,メッセージの存在を示す通知(過去に受信して既にメッセージ本体を閲覧した通知を含む)のリストだけが保存されている。受信者は,受信側サーバに保存されている通知のリストを見て,再度メッセージ本体を閲覧したくなれば,その都度,送信側サーバにアクセスして,閲覧すればよい。なお,受信者は,受信側サーバに保存されている通知を削除することはでき,送信者は,上述したように送信側サーバに保存されているメッセージ本体を変更,削除することができる。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
以下,本発明の実施の形態について,図面を用いて説明する。本実施形態では,電子メール等のメッセージを伝送するシステムの場合を例示する。
[システム全体]
図1は,本実施形態のメッセージ伝送システム全体の構成例を示す図である。図1に示すように,本メッセージ伝送システムは,ドメイン内のユーザー情報の管理やメッセージ(以下,MSGという)を管理するMSG管理機構10-1,10-2(これらのそれぞれを,あるいは,これらをまとめて,MSG管理機構10ということもある)のサーバと,各ドメイン間でMSGの作成通知やユーザーの公開鍵の伝達を行う通知機構20のサーバと,このMSG管理機構10と通知機構20の完全修飾ドメイン名(以下,FQDNという)を管理するID管理機構30のサーバと,端末ソフトウェア50-1,50-2(これらをまとめて端末ソフトウェア50ということもある)がインストールされている端末で構成される。本メッセージ伝送システムを構成する複数のサーバの間は,例えばTCP/IPのようなネットワーク60で接続される。
【0071】
図1の例では,説明の便宜のため,二つのMSG管理機構10-1,10-2と二つの端末ソフトウェア50-1,50-2が図示されているが,一つのMSG管理機構に多数の端末ソフトウェアが接続することや,一つのMSG管理機構が複数のMSG管理機構のそれぞれへMSGを送信したり,一つのMSG管理機構が複数のMSG管理機構のそれぞれからMSGを受信したりすることは,勿論可能である。また,図1の例では,一つの通知機構20が図示されているが,多数のMSG管理機構がある場合,通知機構を複数設けて,MSG管理機構間の仲介機能を分担させてもよく,あるMSG管理機構から別のMSG管理機構までの間に,二つ以上の通知機構が介在するようにしてもよい。
【0072】
以下,一方のMSG管理機構10-1に対応するドメインのユーザーから,他方のMSG管理機構10-2に対応するドメインのユーザーへ,MSG(例えば電子メール)が伝送されるときの動作について概略を説明する(本発明の特徴的な動作については,図面を用いて後述する)。
【0073】
この例では,送信元(送信側)のMSG管理機構10-1のサーバが,本発明の第1のメッセージ管理機構の送信側サーバに相当し,送信先(受信側)のMSG管理機構10-2のサーバが,本発明の第2のメッセージ管理機構の受信側サーバに相当する。また,通知機構20のサーバが,本発明の仲介サーバに相当し,ID管理機構30のサーバが,本発明の全体管理サーバに相当する。さらに,端末ソフトウェア50-1がインストールされている端末が,本発明における送信端末に相当し,端末ソフトウェア50-2がインストールされている端末が,本発明の受信端末に相当する。
【0074】
この場合,作成されるMSGは,作成者ユーザーのドメイン内にあるMSG管理機構10-1に登録され,送信先のユーザーを管理するMSG管理機構10-2に対して,MSGのヘッダー情報が通知される。このヘッダー情報には,少なくとも送信元ユーザーのドメインID及びユーザーID,送信先となるユーザーのドメインID及びユーザーID,件名,概要,送信日時,MSGID(MSGごとにユニークなID)が含まれる。ただし,MSG本文や添付ファイルは,MSG管理機構10-2に通知される情報には含まれていない。そのため,これらを利用する場合は,送信元ユーザーのドメインにあるMSG管理機構10-1に対して,送信先となったMSG管理機構10-2が,送信先となっているユーザーのドメインID,ユーザーID,当該MSGIDを通知して,MSG本文や添付ファイルを都度取得する。このようにして,MSG本文や添付ファイルが,送信先ユーザーの端末ソフトウェア50-2に提供される。」
【図1】

「【0137】
[各MSGリストに含まれる個別MSGの取得と表示(1)]
図18は,端末ソフトウェアの(8)各MSGリストに含まれる個別MSGの取得と表示の処理の流れを示すシーケンス図である。図18に示すように,各MSGリストに含まれる個別MSGの取得と表示が行われるときには,まず,送信元の端末ソフトウェア50-1(以下,端末ソフトウェア(A)とも表記する)において,特定の受信MSGを取得したか否かの判定が行われる(S1800)。特定の受信MSGを取得した場合には,端末ソフトウェア(A)から送信元のMSG管理機構10-1(以下,MSG管理機構(A)とも表記する)へ,受信MSGの取得要求が送信される(S1801,S1802)。
【0138】
MSG管理機構(A)では,その受信MSGの取得要求に基づいて,受信MSG管理テーブルから該当するMSGを抽出し(S1803),送信元MSG管理機構のFQDNの取得要求をID管理機構30へ送信する(S1804,S1805)。
【0139】
ID管理機構30は,MSG管理機構(A)からのFQDNの取得要求に基づいて,ドメイン情報管理テーブルからFQDNを抽出し(S1806),送信元MSG管理機構のFQDNをMSG管理機構(A)へ返信する(S1807,S1808)。
【0140】
つぎに,MSG管理機構(A)は,MSG取得要求を送信先のMSG管理機構10-2(以下,MSG管理機構(B)とも表記する)へ送信する(S1809,S1810)。
【0141】
MSG管理機構(B)は,そのMSG取得要求に基づいて,作成MSG管理テーブルから該当するMSGを抽出し(S1811),送信MSG管理テーブルから暗号化済みのMSG本体を抽出する。MSG本体が平文のまま送信MSG管理テーブルに保存されている場合は,MSG本体を送信先ユーザーの公開鍵で暗号化する(S1812)。そして,MSG管理機構(B)からMSG管理機構(A)へMSG本体が送信される(S1813,S1814)。
【0142】
MSG管理機構(A)では,MSG本体をユーザーの秘密鍵で復号し(S1815),復号済みの受信MSGを端末ソフトウェア(A)へ送信する(S1816,S1817)。そして,端末ソフトウェア(A)で,復号済みの受信MSGが画面に表示される(S1818)。」
【図18】

「【0146】
MSG管理機構(A)では,その下書き保存済みMSGの取得要求に基づいて,作成MSG管理テーブルから該当するMSGを抽出し(S1910),下書き保存済みMSGを端末ソフトウェア(A)へ返信する(S1911,S1912)。そして,端末ソフトウェア(A)では,下書き保存済みMSGが画面に表示される(S1913)。
[新規MSGの作成]
図20は,端末ソフトウェアの(9)新規MSGの作成の処理の流れを示すシーケンス図である。図20に示すように,新規MSGの作成が行われるときには,まず,端末ソフトウェア50からMSG管理機構(A)へアドレス帳リストの取得要求が送信される(S2000,S2001)。
【0147】
MSG管理機構(A)は,このアドレス帳リストの取得要求に基づいて,アドレス帳管理テーブルから該当するユーザーの公開鍵交換済みユーザーを抽出し(S2002),アドレス帳リストを作成して(S2003),端末ソフトウェア50へ返信する(S2004,S2005)。
【0148】
つぎに,端末ソフトウェア50では,送信先ユーザーの選択が行われた後(S2006),件名,本文,添付ファイルの指定が行われる(S2007)。そして,端末ソフトウェア50からMSG管理機構(A)へ新規MSG作成要求が送信される(S2008,S2009)。
【0149】
MSG管理機構(A)では,この新規MSG作成要求に基づいて,(宛先がグループの場合には,グループリストの取得処理後に)作成MSG管理テーブルの保存が行われ(S2010),MSG作成完了通知がMSG管理機構(A)から端末ソフトウェア50へ送信される(S2011,2012)。
【0150】
つづいて,MSG管理機構(A)は,通知機構20のFQDN取得要求をID管理機構30へ送信する(S2013,S2014)。ID管理機構30は,このFQDN取得要求に基づいて,ドメイン情報管理テーブルから該当するFQDNを抽出し(S2015),その通知機構20のFQDNをMSG管理機構(A)へ返信する(S2016,S2017)。
【0151】
MSG管理機構(A)は,通知機構20へMSG作成通知を送信する(S2018,S2019)。そうすると,通知機構20は,MSG管理機構(B)のFQDN取得要求をID管理機構30へ送信する(S2020,S2021)。ID管理機構30は,このFQDN取得要求に基づいて,ドメイン情報管理テーブルから該当するFQDNを抽出し(S2022),そのMSG管理機構(B)のFQDNを通知機構20へ返信する(S2023,S2024)。
【0152】
通知機構20が,MSG作成通知をMSG管理機構(B)へ転送すると(S2025,S2026),MSG管理機構(B)は,受信MSG管理テーブルへの保存を行って(S2027),結果通知を通知機構20へ返信する(S2028,S2029)。そして,通知機構20は,その結果通知をMSG管理機構(A)へ転送する(S2030,S2031)。」
【図20】

「【0174】
[送信済みMSGの訂正]
図26は,端末ソフトウェアの(14)送信済みMSGの訂正の処理の流れを示すシーケンス図である。図26に示すように,送信済みMSGの訂正が行われるときには,まず,端末ソフトウェア50において,特定のMSGIDの内容の訂正指示の入力が行われる(S2600)。
【0175】
つぎに,端末ソフトウェア50からMSG管理機構(A)へ訂正指示が送信されると(S2601,S2602),MSG管理機構(A)では,該当するMSGIDがあるか否かの判定が行われる(S2603)。該当するMSGIDがある場合には,MSG管理機構(A)は,作成MSG管理テーブルから該当するMSGIDを抽出し,訂正内容の更新を行う(S2604)。
【0176】
MSG管理機構(A)は,(宛先変更の場合には)送信MSG管理テーブルに新規宛先ユーザーのレコードを追加し,不要レコードを削除して(S2605),通知機構のFQDN取得要求をID管理機構30へ送信する(S2606,S2607)。ID管理機構30は,このFQDN取得要求に基づいて,ドメイン情報管理テーブルから該当するFQDNを抽出し(S2608),その通知機構20のFQDNをMSG管理機構(A)へ返信する(S2609,S2610)。
【0177】
MSG管理機構(A)は,(宛先変更の場合)該当するユーザー宛のMSG作成通知または削除通知を通知機構20へ送信する(S2611,S2612)。そうすると,通知機構20は,MSG管理機構(B)のFQDN取得要求をID管理機構30へ送信する(S2613,S2614)。ID管理機構30は,このFQDN取得要求に基づいて,ドメイン情報管理テーブルから該当するFQDNを抽出し(S2615),そのMSG管理機構(B)のFQDNを通知機構20へ返信する(S2616,S2617)。
【0178】
通知機構20が,MSG作成通知または削除通知をMSG管理機構(B)へ転送すると(S2618,S2619),MSG管理機構(B)は,受信MSG管理テーブルへ新規レコードの追加または該当するレコードの削除を行って(S2620),結果通知を通知機構20へ返信する(S2621,S2622)。そして,通知機構20が,その結果通知をMSG管理機構(A)へ転送すると(S2623,S2624),MSG管理機構(A)は,処理完了通知を端末ソフトウェア50へ送信する(S2625,S2626)。」
【図26】

の記載があるから,引用文献1には,

「メッセージ伝送システム及び方法であって,
作成したメッセージが宛先側のサーバに転送されて全てが送信先の設備に委ねられるのではなく,送信元(送信側)のサーバから送信先(受信側)のサーバへ送信されるのは,メッセージの存在を示す通知にとどまり,実際のメッセージ本体は,メッセージの作成者あるいは送信者の側の管理が及ぶ送信元のメッセージ管理機構のサーバに保存され,受信者は,受信側のサーバが受信した通知に従って,送信側のサーバにアクセスし,そこに保存されているメッセージ本体を閲覧するということになり,
送信側のサーバにメッセージ本体が保存されているので,メッセージの存在をいったん受信側のサーバへ通知してしまった後でも,受信端末が,実際にそのメッセージの本体を閲覧するために送信側のサーバへアクセスしてくる前であれば,受信者に気付かれることなく,内容の変更を行うことができ,
前記メッセージ本体の内容変更が,前記メッセージを作成した送信者から要求された場合に,送信側サーバの前記保存手段に保存されたメッセージ本体を書き換える手段を,送信側サーバがさらに備え,送信側サーバの前記送信手段は,受信側サーバからの取得要求に応答して,変更後のメッセージ本体を送信するようにし,
メッセージ本体を暗号化する場合もしない場合も,受信側サーバ及び受信端末において,一切メッセージ本体を保存しないという運用が可能であり,この運用によれば,メッセージ本体は,送信者が明示的に削除しない限り,送信側サーバに保存され続けており,受信側サーバには,メッセージの存在を示す通知のリストだけが保存されており,受信者は,受信側サーバに保存されている通知のリストを見て,再度メッセージ本体を閲覧したくなれば,その都度,送信側サーバにアクセスして,閲覧すればよく,受信者は,受信側サーバに保存されている通知を削除することはでき,送信者は,上述したように送信側サーバに保存されているメッセージ本体を変更,削除することができ,
ドメイン内のユーザー情報の管理やメッセージ(以下,MSGという)を管理するMSG管理機構10-1,10-2(これらのそれぞれを,あるいは,これらをまとめて,MSG管理機構10ということもある)のサーバと,各ドメイン間でMSGの作成通知やユーザーの公開鍵の伝達を行う通知機構20のサーバと,このMSG管理機構10と通知機構20の完全修飾ドメイン名(以下,FQDNという)を管理するID管理機構30のサーバと,端末ソフトウェア50-1,50-2(これらをまとめて端末ソフトウェア50ということもある)がインストールされている端末で構成され,
二つのMSG管理機構10-1,10-2と二つの端末ソフトウェア50-1,50-2が図示されているが,一つのMSG管理機構に多数の端末ソフトウェアが接続することは,勿論可能であり,
作成されるMSGは,作成者ユーザーのドメイン内にあるMSG管理機構10-1に登録され,送信先のユーザーを管理するMSG管理機構10-2に対して,MSGのヘッダー情報が通知され,このヘッダー情報には,少なくとも送信元ユーザーのドメインID及びユーザーID,送信先となるユーザーのドメインID及びユーザーID,件名,概要,送信日時,MSGIDが含まれ,
各MSGリストに含まれる個別MSGの取得と表示が行われるときには,まず,送信元の端末ソフトウェア50-1(以下,端末ソフトウェア(A)とも表記する)において,特定の受信MSGを取得したか否かの判定が行われ,特定の受信MSGを取得した場合には,端末ソフトウェア(A)から送信元のMSG管理機構10-1(以下,MSG管理機構(A)とも表記する)へ,受信MSGの取得要求が送信され,
MSG管理機構(A)では,その受信MSGの取得要求に基づいて,受信MSG管理テーブルから該当するMSGを抽出し,送信元MSG管理機構のFQDNの取得要求をID管理機構30へ送信し,ID管理機構30は,MSG管理機構(A)からのFQDNの取得要求に基づいて,ドメイン情報管理テーブルからFQDNを抽出し,送信元MSG管理機構のFQDNをMSG管理機構(A)へ返信し,
つぎに,MSG管理機構(A)は,MSG取得要求を送信先のMSG管理機構10-2(以下,MSG管理機構(B)とも表記する)へ送信し,MSG管理機構(B)は,そのMSG取得要求に基づいて,作成MSG管理テーブルから該当するMSGを抽出し,送信MSG管理テーブルから暗号化済みのMSG本体を抽出し,MSG本体が平文のまま送信MSG管理テーブルに保存されている場合は,MSG本体を送信先ユーザーの公開鍵で暗号化し,MSG管理機構(B)からMSG管理機構(A)へMSG本体が送信され,MSG管理機構(A)では,MSG本体をユーザーの秘密鍵で復号し,復号済みの受信MSGを端末ソフトウェア(A)へ送信して,端末ソフトウェア(A)で,復号済みの受信MSGが画面に表示され,
新規MSGの作成が行われるときには,まず,端末ソフトウェア50からMSG管理機構(A)へアドレス帳リストの取得要求が送信され,
MSG管理機構(A)は,このアドレス帳リストの取得要求に基づいて,アドレス帳管理テーブルから該当するユーザーの公開鍵交換済みユーザーを抽出し,アドレス帳リストを作成して,端末ソフトウェア50へ返信し,
つぎに,端末ソフトウェア50では,送信先ユーザーの選択が行われた後,件名,本文,添付ファイルの指定が行われ,端末ソフトウェア50からMSG管理機構(A)へ新規MSG作成要求が送信され,MSG管理機構(A)では,この新規MSG作成要求に基づいて,作成MSG管理テーブルの保存が行われ,MSG作成完了通知がMSG管理機構(A)から端末ソフトウェア50へ送信され,
つづいて,MSG管理機構(A)は,通知機構20のFQDN取得要求をID管理機構30へ送信し,ID管理機構30は,このFQDN取得要求に基づいて,ドメイン情報管理テーブルから該当するFQDNを抽出し,その通知機構20のFQDNをMSG管理機構(A)へ返信し,MSG管理機構(A)は,通知機構20へMSG作成通知を送信し,通知機構20は,MSG管理機構(B)のFQDN取得要求をID管理機構30へ送信し,ID管理機構30は,このFQDN取得要求に基づいて,ドメイン情報管理テーブルから該当するFQDNを抽出し,そのMSG管理機構(B)のFQDNを通知機構20へ返信し,通知機構20が,MSG作成通知をMSG管理機構(B)へ転送すると,MSG管理機構(B)は,受信MSG管理テーブルへの保存を行って,結果通知を通知機構20へ返信し,通知機構20は,その結果通知をMSG管理機構(A)へ転送し,
送信済みMSGの訂正が行われるときには,まず,端末ソフトウェア50において,特定のMSGIDの内容の訂正指示の入力が行われ,
つぎに,端末ソフトウェア50からMSG管理機構(A)へ訂正指示が送信されると,MSG管理機構(A)では,該当するMSGIDがあるか否かの判定が行われ,該当するMSGIDがある場合には,MSG管理機構(A)は,作成MSG管理テーブルから該当するMSGIDを抽出し,訂正内容の更新を行う,
メッセージ伝送システム及び方法。」(以下,「引用発明1」という。)

の発明が記載されている。

2.引用文献2について

原査定の理由に引用された特表2013-503576号公報(以下,「引用文献2」という。下線は当審が付与。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0002】
本発明は全般にコンピュータ通信技術に関し,より具体的には,非同期の通信メッセージの状況を監視して,非同期の通信メッセージに対する対応の重複を避けるための,システムおよび方法に関する。」

「【課題を解決するための手段】
【0005】
開示されるのは,非同期メッセージのルーティングおよび再ルーティングを仲介するための,通信システム,通信システムの構成要素および通信システムの方法である。非同期メッセージが通信ネットワークで送信されるときに,メッセージの送信者は,自身の非同期メッセージに応じて行動が取られ,かつ/もしくは返事が受信されることを,促しまたは確実にすることができるツールを与えられる。様々な実施形態は,ある閾値の時間内にメッセージに応じた行動が取られず,またはメッセージが応答されなかった場合に,メッセージを再ルーティングする。他の実施形態は,再ルーティングされた非同期メッセージの状況を監視し,対応の重複を避けるために,いずれかの受信者が非同期メッセージに応じて行動を取ると,非同期メッセージを全ての受信者(元のおよび再ルーティングされた)のメッセージキューから確実に削除する。」

「【0044】
非同期メッセージのルーティング(または再ルーティング)の一部として,またはその後で,仲介器130は,非同期メッセージの全ての受信者(元のおよび再ルーティングされた)のリストを保持する,監視されたメッセージテーブルのデータ入力を設定することができる。そのようなデータテーブルを用いて,受信者のいずれかからのメッセージ開封確認が仲介器130によって受信されると,仲介器130は,残りの受信者(すなわち,非同期メッセージを受信したが開封していない受信者)にメッセージ開封確認を知らせ,自身の通信デバイス110に,メッセージキューから非同期メッセージを削除するように指示し,非同期メッセージに対する応答の重複を避けることができる。非同期メッセージの状況を監視し,重複した応答を避けるための様々な実施形態の方法が,図20? 25を参照して以下でより詳細に説明される。」

の記載があるから,

「非同期の通信メッセージの状況を監視して,非同期の通信メッセージに対する対応の重複を避けるための,システムおよび方法であって,
対応の重複を避けるために,いずれかの受信者が非同期メッセージに応じて行動を取ると,非同期メッセージを全ての受信者のメッセージキューから確実に削除するために,
受信者のいずれかからのメッセージ開封確認が仲介器130によって受信されると,仲介器130は,残りの受信者(すなわち,非同期メッセージを受信したが開封していない受信者)にメッセージ開封確認を知らせ,自身の通信デバイス110に,メッセージキューから非同期メッセージを削除するように指示し,非同期メッセージに対する応答の重複を避けることができる,
システムおよび方法。」(以下,「引用文献2記載技術事項」という。)

との技術事項が記載されている。


第6 当審拒絶理由についての判断

令和2年12月4日に手続補正により,

請求項4,10,16は,編集されたメッセージを第3デバイスが送信できる根拠が明らかとなった。
請求項13-17は,「記憶媒体」を請求しており,発明の範囲が明瞭となった。

ので,拒絶理由は解消された。


第7 原査定についての判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明1とを対比する。

引用発明1では,「一つのMSG管理機構に多数の端末ソフトウェアが接続すること」が可能であるから,引用発明1の「送信側のサーバ」,「受信側のサーバ」,「MSG管理機構(A)」,「MSG管理機構(B)」はいずれも,本願発明1の「メッセージング・サーバ」に相当する。
引用発明1の「新規MSG」は,本願発明1の「元のメッセージ」に相当する。
引用発明1の「特定のMSGIDの内容の訂正指示」は,本願発明1の「編集されたメッセージ」に相当する。
引用発明1の「MSG取得要求」は,本願発明1の「新たなデータの要求」に相当する。

引用発明1では,「端末ソフトウェア50からMSG管理機構(A)へ新規MSG作成要求が送信され,MSG管理機構(A)では,この新規MSG作成要求に基づいて,作成MSG管理テーブルの保存が行われ」ているから,「MSG管理機構によって,端末ソフトウェア50がインストールされている端末から新規MSGを受信するステップ」と,「前記MSG管理機構によって,前記新規MSGを格納するステップ」を有しているといえるから,本願発明1とは,「メッセージング・サーバーによって,第1デバイスから元のメッセージを受信するステップ」と,「前記メッセージング・サーバーによって,前記元のメッセージをメッセージ・データベースに格納するステップ」を有する点で共通している。

引用発明1では,「MSG管理機構(A)」が「その受信MSGの取得要求に基づいて」,MSG管理機構(B)の送信MSG管理テーブルに保存されているMSG本体をMSG管理機構(B)から受信して,端末ソフトウェア(A)へ送信しているから,「受信MSGの取得要求を端末から受信するステップ」と,「受信MSGを前記MSG管理機構から端末へ送信するステップ」を有しているといえるから,本願発明1とは「前記メッセージング・サーバーによって,新たなデータの要求をデバイスから受信するステップ」と,「前記メッセージング・サーバーによって,メッセージを前記メッセージ・データベースから前記デバイスへ送信するステップ」を有する点で共通している。

引用発明1では,「MSG管理機構(A)へ訂正指示が送信される」と,作成MSG管理テーブルから該当するMSGIDを抽出し,訂正内容の更新を行う」のであってMSGIDは,作成されたMSGに対するMSGIDであるから,「前記新規MSG」のMSGIDである。
つまり,引用発明1は,「前期新規MSGの訂正をMSG管理機構へ送信するステップ」と,「MSG管理機構が訂正を更新するステップ」を有しているといえるので,本願発明1とは,「前記メッセージング・サーバーによって,編集されたメッセージを受信するステップ」と,「前記メッセージング・サーバーによって,前記編集されたメッセージを前記メッセージ・データベースに格納するステップ」を有する点で共通している。

したがって,本願発明1と引用発明1とは,

「方法であって,
メッセージング・サーバーによって,第1デバイスから元のメッセージを受信するステップと,
前記メッセージング・サーバーによって,前記元のメッセージをメッセージ・データベースに格納するステップと,
前記メッセージング・サーバーによって,新たなデータの要求をデバイスから受信するステップと,
前記メッセージング・サーバーによって,メッセージを前記メッセージ・データベースから前記デバイスへ送信するステップと,
前記メッセージング・サーバーによって,編集されたメッセージを受信するステップと,
前記メッセージング・サーバーによって,前記編集されたメッセージを前記メッセージ・データベースに格納するステップと,
を含む方法。」

で一致し,下記の点で相違する。

(相違点1)

新たなデータの要求に対して,前記デバイスへ送信するメッセージとして,本願発明1は「前記元のメッセージ」を「第2のデバイス」に送信するのに対し,引用発明1はどのようなメッセージをどのデバイスに送信するか特定されていない点。

(相違点2)
本願発明1は「前記元のメッセージをキャッシュに格納する,ステップ」と,「前記メッセージング・サーバーによって,前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する命令を前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する,ステップ」と,「前記メッセージング・サーバーによって,前記編集されたメッセージを前記メッセージ・データベースから前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを表示し,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを前記キャッシュに格納する,ステップ」を含むのに対し,引用発明1は,いずれのステップも含んでいない点。

(2)相違点についての判断

(相違点1)
引用発明1は,「受信者は,受信側のサーバが受信した通知に従って,送信側のサーバにアクセスし,そこに保存されているメッセージ本体を閲覧する」のであるから,「個別MSGの取得と表示」を行う際の「個別MSG」として送信サーバに保存されているメッセージである「新規MSG」すなわち「前記元のメッセージ」とするとともに,「送信元の端末ソフトウェア50-1(端末ソフトウェア(A))」を,メッセージの「受信者」が使用している端末の端末ソフトウェアとすること,すなわち送信者が使用している端末である「第1デバイス」と異なる「第2デバイス」とすることは,容易に想到しうることである。

(相違点2)
引用発明1は,「作成したメッセージが宛先側のサーバに転送されて全てが送信先の設備に委ねられるのではなく,送信元(送信側)のサーバから送信先(受信側)のサーバへ送信されるのは,メッセージの存在を示す通知にとどまり,実際のメッセージ本体は,メッセージの作成者あるいは送信者の側の管理が及ぶ送信元のメッセージ管理機構のサーバに保存され,受信者は,受信側のサーバが受信した通知に従って,送信側のサーバにアクセスし,そこに保存されているメッセージ本体を閲覧する」ことによって,「受信側サーバ及び受信端末において,一切メッセージ本体を保存しないという運用が可能」になるのであるから,第2デバイスが「前記元のメッセージをキャッシュに格納」するものでなく,「前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する命令を前記第2デバイスへ送信するステップ」も存在しない。
第2デバイスが「前記元のメッセージをキャッシュに格納」する場合は,「受信側サーバ及び受信端末において,一切メッセージ本体を保存しないという運用が可能」とならないから,引用発明1において,「前記元のメッセージをキャッシュに格納」することは阻害要因である。
つまり,引用発明1は受信端末,すなわち第2デバイスにおいて「キャッシュを格納」しないことが前提であるから,第2デバイスにキャッシュを格納することを前提とした「前記元のメッセージをキャッシュに格納する,ステップ」と,「前記メッセージング・サーバーによって,前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する命令を前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する,ステップ」と,「前記メッセージング・サーバーによって,前記編集されたメッセージを前記メッセージ・データベースから前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを表示し,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを前記キャッシュに格納する,ステップ」のいずれも,含むことがない。

したがって,本願発明1は,引用発明1及び引用文献2記載技術事項に基づいて容易に発明をすることができた,とはいえない。

2.本願発明2-6について

本願発明2-6は,本願発明1を引用して記載しており,「前記元のメッセージをキャッシュに格納する,ステップ」と,「前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する命令を前記第2デバイスへ送信するステップ」と,「前記メッセージング・サーバーによって,前記編集されたメッセージを前記メッセージ・データベースから前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを表示し,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを前記キャッシュに格納する,ステップ」を含んでいるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1及び引用文献2記載技術事項に基づいて容易に発明をすることができた,とはいえない。

3.本願発明7について

本願発明7は,本願発明1に対応するシステムを請求したものであって,「前記元のメッセージをキャッシュに格納する,ステップ」と,「前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する命令を前記第2デバイスへ送信するステップ」と,「前記メッセージング・サーバーによって,前記編集されたメッセージを前記メッセージ・データベースから前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを表示し,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを前記キャッシュに格納する,ステップ」を含んでいるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1及び引用文献2記載技術事項に基づいて容易に発明をすることができた,とはいえない。

4.本願発明8-12について

本願発明8-12は,本願発明7を引用して記載しており,「前記元のメッセージをキャッシュに格納する,ステップ」と,「前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する命令を前記第2デバイスへ送信するステップ」と,「前記メッセージング・サーバーによって,前記編集されたメッセージを前記メッセージ・データベースから前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを表示し,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを前記キャッシュに格納する,ステップ」を含んでいるから,本願発明7と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1及び引用文献2記載技術事項に基づいて容易に発明をすることができた,とはいえない。

5.本願発明13について

本願発明13は,本願発明1に対応する記憶媒体を請求したものであって,「前記元のメッセージをキャッシュに格納する,ステップ」と,「前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する命令を前記第2デバイスへ送信するステップ」と,「前記メッセージング・サーバーによって,前記編集されたメッセージを前記メッセージ・データベースから前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを表示し,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを前記キャッシュに格納する,ステップ」を含んでいるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1及び引用文献2記載技術事項に基づいて容易に発明をすることができた,とはいえない。

6.本願発明14-17について

本願発明14-17は,本願発明13を引用して記載しており,「前記元のメッセージをキャッシュに格納する,ステップ」と,「前記元のメッセージを前記キャッシュから削除する命令を前記第2デバイスへ送信するステップ」と,「前記メッセージング・サーバーによって,前記編集されたメッセージを前記メッセージ・データベースから前記第2デバイスへ送信するステップであって,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを表示し,前記第2デバイスは,前記編集されたメッセージを前記キャッシュに格納する,ステップ」を含んでいるから,本願発明13と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1及び引用文献2記載技術事項に基づいて容易に発明をすることができた,とはいえない。

したがって,原査定を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-01-21 
出願番号 特願2017-501297(P2017-501297)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤江 大望  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 吉田 隆之
谷岡 佳彦
発明の名称 メッセージを編集するためのシステムおよび方法  
代理人 宮前 徹  
代理人 山本 修  
代理人 中西 基晴  
代理人 大房 直樹  

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