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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1370397
審判番号 不服2020-3573  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-16 
確定日 2021-01-14 
事件の表示 特願2015-185660「感光性樹脂組成物及びその硬化膜」拒絶査定不服審判事件〔平成29年3月23日出願公開,特開2017-58627〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2015-185660号(以下「本件出願」という。)は,平成27年9月18日の出願であって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
令和 元年 5月15日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 7月10日 :意見書
令和 元年 7月10日 :手続補正書
令和 元年12月 9日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 2年 3月16日 :審判請求書
令和 2年 3月16日 :手続補正書
令和 2年 6月15日 :上申書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年3月16日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の(令和元年7月10日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。
「【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂,重合性化合物及び色材を含む感光性樹脂組成物であって,
該アルカリ可溶性樹脂は,主鎖にヘテロ環構造を有する樹脂であり,
該アルカリ可溶性樹脂の含有割合は,該感光性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し,10?50質量%であり,
該感光性樹脂組成物は,色材として染料を少なくとも含む形態,及び,色材を感光性樹脂組成物の固形分総量100質量%中に42質量%以上含む形態,からなる群より選択される少なくとも1種の形態であることを特徴とする感光性樹脂組成物(ただし,(メタ)アクリル酸t-ブチル由来の構成単位を有する重合体を含むものを除く。)。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。なお,下線は補正箇所を示す。
「アルカリ可溶性樹脂,重合性化合物及び色材を含む感光性樹脂組成物であって,
該アルカリ可溶性樹脂は,主鎖に,下記一般式(1):
【化1】


(式中,R^(1)は,水素原子又は炭素数1?30の有機基を表す。R^(2)は,水素原子又はメチル基を表す。X,Y及びZは,同一又は異なって,メチレン基,水素原子がメチル基で置換されたメチレン基,酸素原子,硫黄原子,又は,イミノ基を表す。但し,X,Y及びZのうち少なくとも1つは,酸素原子,硫黄原子又はイミノ基を表す。)で表されるヘテロ環含有構成単位を有し,かつ,側鎖に重合性二重結合を含む樹脂であり,
該アルカリ可溶性樹脂の酸価は75mgKOH/g以上であり,
該アルカリ可溶性樹脂の含有割合は,該感光性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し,10?50質量%であり,
該感光性樹脂組成物は,色材として染料を少なくとも含む形態,及び,色材を感光性樹脂組成物の固形分総量100質量%中に42質量%以上含む形態,からなる群より選択される少なくとも1種の形態であることを特徴とする感光性樹脂組成物(ただし,(メタ)アクリル酸t-ブチル由来の構成単位を有する重合体を含むものを除く。)。」

(3) 本件補正の内容
本件補正は,[A]本件補正前の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)の発明を特定するために必要な事項である「ヘテロ環構造」を,前記(2)に記載の一般式(1)のものに限定するとともに,[B]同じく「アルカリ可溶性樹脂」を,「側鎖に重合性二重結合を含む」及び「酸価は75mgKOH/g以上であり」という要件を満たすものに限定する補正である。また,上記[A]の補正は,本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0010】?【0012】の記載に基づくものであり,上記[B]の補正は,同じく【0059】の記載,及び【0127】の【表1】の製造例4の酸価の値に基づくものである。そして,本願発明と,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)の産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題は,同一である(【0001】及び【0007】)。
したがって,本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に適合するとともに,同条5条2号に掲げる事項を目的とするものである。
そこで,本件補正後発明が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するかについて,以下,検討する。

2 独立特許要件についての判断
(1) 引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3(特開2010-168581号公報)は,本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物であるところ,そこには以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,…省略…より詳しくは,特にカラー液晶表示パネルやカラー撮像管素子に用いられるカラーフィルターを作製するのに好適な感光性樹脂組成物のバインダー樹脂として有用な主鎖に特定の環構造を含む新規なアルカリ可溶性樹脂,該樹脂を含んでなる感光性樹脂組成物に関する。
…省略…
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のバインダー樹脂及び着色レジストは,耐熱性や製版性に優れるものの,色材の高濃度化には十分対応できていなかった。
…省略…
【0011】
本発明は,上記の課題に鑑みてなされたものであり,耐熱性が高く,色材の分散安定性に優れ,かつ製版性に優れる主鎖に環構造を有する新規なアルカリ可溶性樹脂,及び該樹脂をバインダー樹脂として用いた感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。また,該感光性樹脂組成物を用いて形成されて成るカラーフィルター,及び該カラーフィルターを具備する液晶表示パネルを提供することを目的とする。
…省略…
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,耐熱性及び色材分散性に非常に優れ,かつ製版性に優れるアルカリ可溶性樹脂,及び該樹脂を用いた感光性樹脂組成物が提供される。該感光性樹脂組成物は,耐熱性に優れるため,電子情報分野の部材を形成するためのレジスト,例えばソルダーレジスト,エッチングレジスト,層間絶縁材料,めっきレジスト,カラーフィルター用レジストに好適であり,色材分散性にも優れることから,特にカラーフィルターの着色層形成用として好適である。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0016】
…省略…
【0019】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は,式(1)で表される構成単位を主鎖中に有することを特徴とするアルカリ可溶性樹脂であり,色材分散性に非常に優れ,かつ,密着性,硬化性,乾燥再溶解性などカラーフィルターを作製する際の製版性に寄与する基本性能や,耐熱性や透明性などカラーフィルターの信頼性や分光特性に寄与する基本性能に優れる。
【0020】
【化1】


【0021】
(Rは水素原子,または炭素数が1?30の有機基を表す)。
…省略…
【0024】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は,主鎖中に環構造を有する構造であるため耐熱性が高く,また,窒素原子を含まないため,透明性が良い。主鎖に環構造を有する樹脂は,耐熱性が高い反面,柔軟性に欠ける場合がほとんどだが,式(1)に示す本発明のアルカリ可溶性樹脂におけるテトラヒドロフラン環を含む繰り返し単位は,テトラヒドロフラン環の両隣にメチレン基があるため柔軟性が高く,分散性,密着性,硬化性,相溶性,乾燥再溶解性等のテトラヒドロフラン環に由来する各性能が効果的に発現すると考えられる。
…省略…
【0031】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は,式(2)で表される単量体を含む単量体成分を重合する工程を含む製造方法により得られるものであることが好ましい。これは,式(2)で表される単量体は,重合して式(1)で表される構成単位を高い割合で生成し,異常な高分子量化やゲル化を起こし難いためである。
【0032】
【化4】

(当合議体注:式の重複を除いた。)
…省略…
【0035】
上記単量体成分は,式(2)で表される単量体以外に,共重合可能な他の単量体を含んでいても良く,その種類,量は,目的,用途に応じて,適宜選択,調整すればよい。
…省略…
【0054】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は,アルカリ可溶となるための酸基を有している。本発明のアルカリ可溶性樹脂の酸価は,目的や用途に応じて好ましい値に設定されるが,10?300mgKOH/gであることが好ましく,より好ましくは15?250mgKOH/gであり,更に好ましくは20?200mgKOH/gである。発明の上記範囲とすることにより,十分なアルカリ可溶性が発現し,特にアルカリ現像型レジストに用いる場合,良好な製版性を発揮できる。本発明のアルカリ可溶性樹脂が高分子量である場合には,酸価が高い方が良好な製版性が得られ,低分子量である場合には酸価が低くても良好な製版性が得られる傾向がある。
…省略…
【0060】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は,製版性や硬化後の信頼性を向上できるため,ラジカル重合性不飽和基を有することがより好ましい。
…省略…
【0067】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は酸基を有する樹脂であり,ラジカル重合性不飽和結合を導入する場合,酸基も何らかの方法で導入する必要があるが,官能基Aとしてカルボキシル基を,官能基Bとしてエポキシ基を用いる場合には,カルボキシル基とエポキシ基を反応させる際にカルボキシル基の量をエポキシ基の量より過剰にするか,カルボキシル基とエポキシ基を反応させた後に多塩基酸無水物を反応させれば,酸基とラジカル重合性不飽和結合とを有する樹脂とすることができる。
…省略…
【0068】
上記官能基Aとしてカルボキシル基を,官能基Bとしてエポキシ基を用いる場合としては,具体的には,例えば,(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合した後に(メタ)アクリル酸グリシジルを反応させる際に,カルボキシル基の量を(メタ)アクリル酸グリシジルの量より過剰にするか,(メタ)アクリル酸グリシジルを反応させた後に,さらに無水コハク酸を反応させる方法が挙げられる。
…省略…
【0079】
本発明の感光性樹脂組成物は,(A)本発明のアルカリ可溶性樹脂,(B)ラジカル重合性単量体,(C)光開始剤,及び(D)溶剤を必須成分として含む感光性樹脂組成物であり,その優れた耐熱性から,電子情報分野の部材を形成するためのレジスト,中でもカラーフィルター用レジストに好適である。また,優れた色材分散安定性を有することから,上記必須成分に加えさらに(E)色材を必須成分として配合し感光性着色樹脂組成物とする使用様態は,本発明のアルカリ可溶性樹脂の特徴を最も活かす使用様態の1つであり,そのような感光性着色樹脂組成物は,特にカラーフィルター用着色レジストとして好適に使用される。
…省略…
【0080】
カラーフィルター用レジストには,着色レジスト(赤色,緑色,青色の各画素やブラックマトリクス形成用のレジスト),フォトスペーサー用レジスト,保護膜用透明レジスト,層間絶縁膜用レジストなど,カラーフィルターを構成する各部位に対応したレジストがある。
…省略…
【0101】
(E)色材
色材は,本発明の感光性樹脂組成物を着色して,さらに感光性着色樹脂組成物とするものであり,従来公知の染顔料が使用できるが,耐久性の点から顔料(有機顔料,無機顔料)が好ましい。
【0102】
有機顔料としては,…省略…を使用することができる。染料としては,アゾ系染料,アントラキノン系染料,フタロシアニン系染料,キノンイミン系染料,キノリン系染料,ニトロ系染料,カルボニル系染料,メチン系染料等を使用することができる。
…省略…
【0112】
…省略…アゾ系染料としては,例えば,C.I.アシッドイエロー11,アシッドオレンジ7,アシッドレッド37,アシッドレッド180,アシッドブルー29,ダイレクトレッド28,ダイレクトレッド83,ダイレクトイエロー12,ダイレクトオレンジ26,ダイレクトグリーン28,ダイレクトグリーン59,リアクティブイエロー2,リアクティブレッド17,リアクティブレッド120,リアクティブブラック5,ディスパースオレンジ5,ディスパースレッド58,ディスパースブルー165,ベーシックブルー41,ベーシックレッド18,モルダントレッド7,モルダントイエロー5,モルダントブラック7等を挙げることができる。
【0113】
アントラキノン系染料としては,例えば,C.I.バットブルー4,アシッドブルー40,アシッドグリーン25,リアクティブブルー19,リアクティブブルー49,ディスパースレッド60,ディスパースブルー56,ディスパースブルー60等を挙げることができる。
【0114】
フタロシアニン系染料としては,例えば,C.I.ベーシックブルー5等を挙げることができる。
【0115】
キノンイミン系染料としては,例えば,C.I.ベーシックブルー3,ベーシックブルー9等を挙げることができる。
【0116】
キノリン系染料としては,例えば,C.I.ソルベントイエロー33,アシッドイエロー3,ディスパースイエロー64等が挙げられる。
【0117】
ニトロ系染料としては,例えば,C.I.アシッドイエロー1,アシッドオレンジ3,ディスパースイエロー42等を挙げることができる。
【0118】
上述の色材は,単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
…省略…
【0119】
本発明の感光性樹脂組成物における色材の割合は,目的,用途に応じて,適宜設定すればよいが,着色力と分散安定性のバランスを取る点において,感光性樹脂組成物から(D)溶剤を除いた成分中,通常3?70質量%,好ましくは5?60質量%,更に好ましくは10?50質量%である。
…省略…
【実施例】
【0153】
…省略…
【0154】
<式(2)で表される単量体の合成>
[合成例1?5]
表1に示すように,式(2)で表される単量体である各α-アリルオキシメチルアクリル酸エステル(AMA-R)を,特開平10-226669に準じて,触媒として1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを用い,アリルアルコールと対応する各α-ヒドロキシメチルアクリル酸エステル(HMA-R)とから合成した。
【0155】
【表1】

【0156】
<式(1)で表される構成単位を主鎖中に含むアルカリ可溶性樹脂の合成>
以下に,式(1)で表される構成単位を主鎖中に含むアルカリ可溶性樹脂の合成について記述する。なお,得られた樹脂溶液の固形分の測定,樹脂酸価の測定,樹脂の重量平均分子量(Mw),数平均分子量(Mn),分子量分布(Mw/Mn)の測定,式(1)で表される構成単位の平均官能基数の算出,樹脂粉末の取り出し,1H-NMRの測定は,次のように行った。
…省略…
【0163】
[実施例1-1]
反応槽として,4口セパラブルフラスコに温度計,冷却管,ガス導入管,攪拌装置を取り付けたものを準備し,反応槽内を窒素置換した。窒素気流下,反応槽にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)223.7部を仕込み,90℃に昇温した。一方,滴下槽Aには合成例1で得たAMA-M20.0部,メタクリル酸ベンジル(BZMA)110.0部,メタクリル酸メチル(MMA)41.4部,メタクリル酸(MAA)28.6部を攪拌混合したものを,滴下槽Bにはt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(PBO)4.7部とPGMEA37.3部を攪拌混合したものを,滴下槽Cには3-メルカプトプロピオン酸(MPA)3.0部とPGMEA39.0部を攪拌混合したものを準備した。
…省略…
【0172】
[実施例1-11]
反応槽として,4口セパラブルフラスコに温度計,冷却管,ガス導入管,攪拌装置を取り付けたものを準備し,反応槽内を窒素置換した。窒素気流下,反応槽にPGMEA150.0部と2-プロパノール(IPA)14.0部を仕込み,90℃に昇温した。一方,滴下槽AにはAMA-M48.0部,BZMA64.0部,MAA48.0部を攪拌混合したものを,滴下槽BにはPBO3.7部とPGMEA38.3部を攪拌混合したものを,滴下槽CにはMPA4.3部とPGMEA37.7部を攪拌混合したものを準備した。
【0173】
反応槽の内温が安定したのを確認してから,滴下槽A,B,Cより各混合物の滴下を同時に開始し,内温を90℃に調整しながら,滴下槽Aからは3時間かけて,滴下槽B及びCからは3.5時間かけて滴下し,重合反応を行った。滴下終了30分後に昇温を開始して,115℃まで昇温し,115℃を1時間維持してから室温まで冷却した。
導入するガスを窒素から窒素/酸素混合ガス(酸素7%)に切り替え,6-t-ブチル-2,4-キシレノール(TBXL)0.06部,メタクリル酸グリシジル(GMA)52.8部,ジメチルベンジルアミン(DMBA)0.6部の順に各物質を反応槽へ仕込んだ後,攪拌,昇温を開始し,内温が110℃になるよう調整しながら,側鎖二重結合導入反応を行った。8時間110℃を維持した後,一旦,加熱を停止し,PGMEA80.0部を加え,徐々に減圧して系内の圧力を37.3kPaとした。この圧力を維持した状態で加熱を再開し,IPAを含む溶媒を留去すると同時に,留去した溶媒の量と同量のPGMEAを反応槽に供給し,反応槽中の溶媒に含まれるIPAを低減した。内温が115℃となってから,冷却を開始,次いで解圧して系内の圧力を常圧に戻し溶媒の留去を停止すると同時にPGMEAの供給も停止した。室温まで冷却を続け,樹脂溶液を得た。分析結果を表3に示す。
…省略…
【0187】
【表2】

【0188】
【表3】

…省略…
【0195】
[実施例3-1]
(ミルベースの調製)
まず,分散剤溶液としてSOLSPERSE24000GR(日本ルーブリゾール製,以下SP24000と表する)をPGMEAに溶解させ20%としたものと,バインダー樹脂溶液として実施例1-1で得られた樹脂溶液を20%にPGMEAで希釈したものを用意した。
【0196】
次に,色材としてC.I.ピグメントグリーン36(Monastral Green 6Y-CL:Heubach製,以下PG36と表する)3.75部,及びC.I.ピグメントイエロー150(Yellow Pigment E4GN-GT:Lanxess製,以下PY150と表する)2.5部を,分散剤としてSOLSPERSE12000(日本ルーブリゾール製,以下SP12000と表する)0.2部を225mlマヨネーズ瓶にはかり取った。
…省略…
【0207】
[実施例4-1]
(着色レジストの調製)
まず,表6に示したミルベース用の各物質を0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルで分散処理を行い,緑色ミルベースを得た。次に,表6に示した透明レジスト液用の各物質を攪拌混合し,透明レジスト液を調製した。こうして得られた緑色ミルベース240.0部と透明レジスト液135.0部とを攪拌混合した後,1μmのフィルターで濾過して,緑色レジストを得た。
…省略…
【0211】
[実施例4-2?7,比較例4-1?4-3]
ミルベース用のバインダー樹脂と,透明レジスト液用のバインダー樹脂を,表7に示すように変えた以外は,実施例4-1と同様にして評価した。結果を表7に示す。
【0212】
【表6】

【0213】
【表7】

…省略…
【0215】
<カラーフィルター,及び液晶表示パネルの作製>
[実施例5]
(着色レジストの調製)
緑色レジストとして,実施例4-6の感光性着色樹脂組成物を用いた。
…省略…
【0220】
作製したブラックマトリクス及び画素パターンをレーザー顕微鏡で検査したところ,パターンの欠損や現像残渣がなく,画素の表面平滑性も良好であった。
…省略…
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明のアルカリ可溶性樹脂及び該樹脂を用いた感光性樹脂組成物は,耐熱性に非常に優れ,…省略…色材分散性,製版性にも優れることから,特にカラーフィルターの着色層形成用として好適である。」

(2) 引用発明
引用文献3の【0211】?【0213】に記載された「実施例4-6」の「緑色レジスト」は,「ミルベース用のバインダー樹脂と,透明レジスト液用のバインダー樹脂を,表7に示すように変えた以外は,実施例4-1と同様」(【0211】)のものである。ここで,「実施例4-1」については,【0207】に記載があり,また,「実施例1-11」のバインダー樹脂については,【0172】,【0173】,【0187】の【表2】及び【0188】の【表3】に記載がある。加えて,「実施例1-11」で得られる樹脂は,その製造工程や【0156】の記載から理解されるとおり,「アルカリ可溶性樹脂」である。
そうしてみると,引用文献3には,次の「緑色レジスト」の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。なお,【0212】の【表6】に記載の略号は【0195】及び【0196】に記載の商品名又はカラーインデックスに置き換え,【0172】に記載の略号は【0155】及び【0163】に記載の化合物名に置き換えた。ただし,「PGMEA」(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)についてはそのまま記載した。加えて,工程を区別するため,必要に応じて「工程A:」等の見出しを付した。
「 ミルベース用の各物質を0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルで分散処理を行い,緑色ミルベースを得,透明レジスト液用の各物質を攪拌混合し,透明レジスト液を調製し,
得られた緑色ミルベース240.0部と透明レジスト液135.0部とを攪拌混合した後,1μmのフィルターで濾過して得た緑色レジストであって,
ミルベース用の各物質は,色材としてのC.I.ピグメントグリーン36が22.5重量部,色材としてのC.I.ピグメントイエロー150が15.0重量部,分散剤としてのSOLSPERSE24000GRの20%PGMEA溶液が24.0重量部,分散剤としてのSOLSPERSE12000が1.2重量部,バインダー樹脂が82.5重量部,溶剤としてのPGMEAが154.8重量部であり,
透明レジスト液用の各物質は,多官能性単量体としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが16.5質量部,バインダー樹脂が41.3重量部,光開始剤系としての2-メルカプトベンゾチアゾールが3.0重量部,光開始剤系としてのp-ジメチルアミノ安息香酸メチルが3.0重量部,光開始剤系としての4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンが3.0重量部,溶剤としてのPGMEAが102重量部であり,
バインダー樹脂は,以下の製造工程により作製されたアルカリ可溶性樹脂の溶液である,
緑色レジスト。
(バインダー樹脂の製造工程)
以下の工程A?工程Gによって製造された樹脂溶液を,PGMEAで20%に希釈したものであり,樹脂の重量平均分子量(Mw)は13300,数平均分子量(Mn)は5200,分子量分布(Mw/Mn)は2.6,樹脂酸価は64mgKOH/gである。
工程A:反応槽を準備し,反応槽内を窒素置換し,窒素気流下,反応槽にPGMEA150.0部と2-プロパノール14.0部を仕込み,90℃に昇温し,
工程B:滴下槽Aにはα-アリルオキシキシメチルアクリル酸メチル48.0部,メタクリル酸ベンジル64.0部,メタクリル酸48.0部を攪拌混合したものを,滴下槽Bにはt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート3.7部とPGMEA38.3部を攪拌混合したものを,滴下槽Cには3-メルカプトプロピオン酸4.3部とPGMEA37.7部を攪拌混合したものを準備し,
工程C:反応槽の内温が安定したのを確認してから,滴下槽A,B,Cより各混合物の滴下を同時に開始し,内温を90℃に調整しながら,滴下槽Aからは3時間かけて,滴下槽B及びCからは3.5時間かけて滴下し,重合反応を行い,
工程D:滴下終了30分後に昇温を開始して,115℃まで昇温し,115℃を1時間維持してから室温まで冷却し,
工程E:導入するガスを窒素から窒素/酸素混合ガス(酸素7%)に切り替え,6-t-ブチル-2,4-キシレノール0.06部,メタクリル酸グリシジル52.8部,ジメチルベンジルアミン0.6部の順に各物質を反応槽へ仕込んだ後,攪拌,昇温を開始し,内温が110℃になるよう調整しながら,側鎖二重結合導入反応を行い,
工程F:8時間110℃を維持した後,一旦,加熱を停止し,PGMEA80.0部を加え,徐々に減圧して系内の圧力を37.3kPaとしこの圧力を維持した状態で加熱を再開し,2-プロパノールを含む溶媒を留去すると同時に,留去した溶媒の量と同量のPGMEAを反応槽に供給し,反応槽中の溶媒に含まれる2-プロパノールを低減し,
工程G:内温が115℃となってから,冷却を開始,次いで解圧して系内の圧力を常圧に戻し溶媒の留去を停止すると同時にPGMEAの供給も停止し,室温まで冷却を続け,樹脂溶液を得た。」

(3) 対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると,以下のとおりである。
ア 感光性樹脂組成物
引用発明の「緑色レジスト」は,「緑色ミルベース240.0部と透明レジスト液135.0部とを攪拌混合した後,1μmのフィルターで濾過して得た」ものである。
ここで,前記(2)に記載のとおり,引用発明の「緑色ミルベース」及び「透明レジスト液」には,「バインダー樹脂」が含まれ,これは「アルカリ可溶性樹脂の溶液である」。また,引用発明の「透明レジスト液」には,「多官能性単量体としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」が含まれ,これは重合性化合物といえる。加えて,引用発明の「緑色ミルベース」には,「色材としてのC.I.ピグメントグリーン36」及び「色材としてのC.I.ピグメントイエロー150」が含まれる。
そうしてみると,引用発明の「バインダー樹脂」(の樹脂成分)及び「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」は,それぞれ本件補正後発明の「アルカリ可溶性樹脂」及び「重合性化合物」に相当する。また,引用発明の「C.I.ピグメントグリーン36」及び「C.I.ピグメントイエロー150」は,いずれも本件補正後発明の「色材」に相当する。そして,引用発明の「緑色レジスト」は,本件補正後発明の「アルカリ可溶性樹脂,重合性化合物及び色材を含む」とされる,「感光性樹脂組成物」に相当する。

イ アルカリ可溶性樹脂
引用発明の「バインダー樹脂」は,「工程A?工程Gによって製造された樹脂溶液を,PGMEAで20%に希釈したもの」である。
ここで,前記(2)に記載の「工程A」?「工程D」からみて,引用発明の「バインダー樹脂」は,その主鎖に,「工程B」の「α-アリルオキシキシメチルアクリル酸メチル」に由来し,かつ,本件補正後発明の「一般式(1)」において「R^(1)」が「炭素数1」「の有機基」,「R^(2)」が「水素原子」,「X」,「Y」及び「Z」がそれぞれ「メチレン基」,「酸素原子」及び「メチレン基」である,ヘテロ環含有構成単位を有する。さらに,前記(2)に記載の「工程E」からみて,引用発明の「バインダー樹脂」は,「工程B」の材料である「メタクリル酸」に由来する構成単位のカルボキシ基に「工程E」の「メタクリル酸グリシジル」のグリシジル基が開裂反応してなる側鎖に,重合性二重結合であるメタクリロイル基を含む。
そうしてみると,引用発明の「バインダー樹脂」は,本件補正後発明の「アルカリ可溶性樹脂」における,「主鎖に,下記一般式(1):」「で表されるヘテロ環含有構成単位を有し,かつ,側鎖に重合性二重結合を含む樹脂であり」という要件を満たす。
(当合議体注:「下記一般式(1)」は,前記1(2)に記載のとおりである。)

ウ 含有割合
引用発明の「緑色レジスト」は,「緑色ミルベース240.0部と透明レジスト液135.0部とを攪拌混合した後,1μmのフィルターで濾過して得た」ものである。
ここで,前記(2)に記載の「緑色ミルベース」及び「透明レジスト液」の各材料及びその分量からみて,引用発明の「緑色レジスト」における「バインダー樹脂」(の樹脂成分)の含有割合は,「緑色レジスト」の固形分総量100質量%に対し,約26質量%と計算される。
(当合議体注:「ミルベース用の各物質」のうち,固形分は,「C.I.ピグメントグリーン36が22.5重量部」,「C.I.ピグメントイエロー150が15.0重量部」,「SOLSPERSE24000GR」が「24.0重量部」×「20%」で「4.8重量部」,「SOLSPERSE12000が1.2重量部」及び「バインダー樹脂」(の固形分)が「82.5重量部」×「20%」で「16.5重量部」であり,総量は60重量部と計算される。また,「ミルベース用の各物質」のうち,非固形分は,「SOLSPERSE24000GR」中の「PGMEA」が「24.0重量部」×「80%」で「19.2重量部」,「バインダー樹脂」中の「PGMEA」が「82.5重量部」×「80%」で「66重量部」及び「PGMEAが154.8重量部」であり,総量は240重量部と計算される。そして,「ミルベース用の各物質」全体の総量は,300重量部と計算される。次に,「透明レジスト液用の各物質」のうち,固形分は,「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが16.5質量部」,「バインダー樹脂」(の固形分)が「41.3重量部」×「20%」で「8.26重量部」,「2-メルカプトベンゾチアゾールが3.0重量部」,「p-ジメチルアミノ安息香酸メチルが3.0重量部」及び「4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンが3.0重量部」であり,総量は33.76重量部と計算される。また,「透明レジスト液用の各物質」のうち,非固形分は,「バインダー樹脂」中の「PGMEA」が「41.3重量部」×「80%」で「33.04重量部」及び「PGMEAが102重量部」であり,総量は135.04重量部と計算される。そして,「透明レジスト液用の各物質」全体の総量は,168.8重量部と計算される。最後に,引用発明の「緑色レジスト」が,「緑色ミルベース240.0部と透明レジスト液135.0部」を用いていることを勘案すると,引用発明の「緑色レジスト」の固形分は,「ミルベース用の各物質」の固形分の総量60重量部×「緑色ミルベース240.0部」÷「ミルベース用の各物質」の総量300重量部+「透明レジスト液用の各物質」の固形分の総量33.76重量部×「透明レジスト液135.0部」÷「透明レジスト液用の各物質」の総量168.8重量部=75重量部と計算される。また,引用発明の「緑色レジスト」の「バインダー樹脂」(の固形分)は,「ミルベース用の各物質」の「バインダー樹脂」(の固形分)16.5重量部×「緑色ミルベース240.0部」÷「ミルベース用の各物質」の総量300重量部+「透明レジスト液用の各物質」の「バインダー樹脂」(の固形分)8.26重量部×「透明レジスト液135.0部」÷「透明レジスト液用の各物質」の総量168.8重量部=19.8重量部と計算される。そうしてみると,「バインダー樹脂」(の固形分)の含有割合は,「緑色ミルベース」に含まれる「バインダー樹脂」(の固形分)19.8重量部÷「緑色ミルベース」の固形分75重量部=約26質量%と計算される。)
したがって,引用発明の「緑色レジスト」は,本件補正後発明の「感光性樹脂組成物」における,「該アルカリ可溶性樹脂の含有割合は,該感光性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し,10?50質量%であり」という要件を満たす。

エ 除かれる重合体
引用発明の「バインダー樹脂」は,前記(2)に記載の「バインダー樹脂の製造工程」における各材料からみて,本件補正後発明の「感光性樹脂組成物」における「ただし,(メタ)アクリル酸t-ブチル由来の構成単位を有する重合体を含むものを除く。」という要件を満たす。

(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は,次の構成で一致する。
「アルカリ可溶性樹脂,重合性化合物及び色材を含む感光性樹脂組成物であって,
該アルカリ可溶性樹脂は,主鎖に,下記一般式(1):
【化1】

(式中,R^(1)は,水素原子又は炭素数1?30の有機基を表す。R^(2)は,水素原子又はメチル基を表す。X,Y及びZは,同一又は異なって,メチレン基,水素原子がメチル基で置換されたメチレン基,酸素原子,硫黄原子,又は,イミノ基を表す。但し,X,Y及びZのうち少なくとも1つは,酸素原子,硫黄原子又はイミノ基を表す。)で表されるヘテロ環含有構成単位を有し,かつ,側鎖に重合性二重結合を含む樹脂であり,
該アルカリ可溶性樹脂の含有割合は,該感光性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し,10?50質量%である,
感光性樹脂組成物(ただし,(メタ)アクリル酸t-ブチル由来の構成単位を有する重合体を含むものを除く。)。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は,以下の点で相違する。
(相違点1)
「アルカリ可溶性樹脂」が,本件補正後発明は,「酸価は75mgKOH/g以上であり」という要件を満たすのに対して,引用発明は,「64mgKOH/gである」点。

(相違点2)
「感光性樹脂組成物」が,本件補正後発明は,「色材として染料を少なくとも含む形態,及び,色材を感光性樹脂組成物の固形分総量100質量%中に42質量%以上含む形態,からなる群より選択される少なくとも1種の形態である」のに対して,引用発明は,「色材として染料を少なくとも含む形態」ではなく,また,「色材としてのC.I.ピグメントグリーン36」及び「色材としてのC.I.ピグメントイエロー150」を併せた分量は,「緑色レジスト」の固形分総量100質量%中に40質量%と計算される点。
(当合議体注:計算過程は,前記(3)ウと同様である。)

(5) 判断
相違点についての判断は,以下のとおりである。
ア 相違点1について
引用文献3の【0054】には,「本発明のアルカリ可溶性樹脂の酸価は,目的や用途に応じて好ましい値に設定されるが,10?300mgKOH/gであることが好ましく,より好ましくは15?250mgKOH/gであり,更に好ましくは20?200mgKOH/gである。…本発明のアルカリ可溶性樹脂が高分子量である場合には,酸価が高い方が良好な製版性が得られ,低分子量である場合には酸価が低くても良好な製版性が得られる傾向がある。」と記載されている。そして,引用発明の「バインダー樹脂」において,「樹脂の重量平均分子量(Mw)は13300,数平均分子量(Mn)は5200」であり,その分子量は,引用文献3の【0188】の【表3】から理解されるとおり,「実施例1-1」?「実施例1-10」と概ね同程度であるにも関わらず,「樹脂酸価は64mgKOH/g」と,「実施例1-1」?「実施例1-10」よりも小さくなっている(当合議体注:「工程E」の「側鎖二重結合導入反応」により,「工程B」の「メタクリル酸」に由来するカルボキシ基が消費され,酸価が小さくなっている。)。
上記の事実関係に接した当業者ならば,引用発明の「バインダー樹脂」の「樹脂酸価」を,例えば「実施例1-1」と同程度の「100mgKOH/g」に高めることを検討すると考えられるところ,引用文献3の【0067】及び【0068】には,それぞれ「本発明のアルカリ可溶性樹脂は酸基を有する樹脂であり,ラジカル重合性不飽和結合を導入する場合,酸基も何らかの方法で導入する必要があるが,官能基Aとしてカルボキシル基を,官能基Bとしてエポキシ基を用いる場合には,カルボキシル基とエポキシ基を反応させる際にカルボキシル基の量をエポキシ基の量より過剰にするか,カルボキシル基とエポキシ基を反応させた後に多塩基酸無水物を反応させれば,酸基とラジカル重合性不飽和結合とを有する樹脂とすることができる。」及び「上記官能基Aとしてカルボキシル基を,官能基Bとしてエポキシ基を用いる場合としては,具体的には,例えば,(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合した後に(メタ)アクリル酸グリシジルを反応させる際に,カルボキシル基の量を(メタ)アクリル酸グリシジルの量より過剰にするか,(メタ)アクリル酸グリシジルを反応させた後に,さらに無水コハク酸を反応させる方法が挙げられる。」というように,「工程E」の「側鎖二重結合導入反応」を具備する場合であっても「樹脂酸価」を高くすることが可能な方法が,明記されている。
以上勘案すると,引用発明の「バインダー樹脂」において,「樹脂酸価」を相違点1に係る本件補正後発明の要件を満たすものとすることは,引用文献3の記載が示唆する範囲内の事項にすぎない。

イ 相違点2について
引用文献3の【0102】には,「染料としては,アゾ系染料,アントラキノン系染料,フタロシアニン系染料,キノンイミン系染料,キノリン系染料,ニトロ系染料,カルボニル系染料,メチン系染料等を使用することができる。」と記載され,また,【0112】?【0117】には,具体的染料も列挙されている。そして,【0118】には,「上述の色材は,単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。」と記載されている。
そうしてみると,引用発明の「色材」として染料を併用することにより,相違点2に係る本件補正後発明の要件を満たしたものとすることは,引用文献3の記載が示唆する範囲内の事項にすぎない。

あるいは,引用文献3の【0119】には,「本発明の感光性樹脂組成物における色材の割合は,目的,用途に応じて,適宜設定すればよいが,着色力と分散安定性のバランスを取る点において,感光性樹脂組成物から(D)溶剤を除いた成分中,通常3?70質量%,好ましくは5?60質量%,更に好ましくは10?50質量%である。」と記載されている。
そうしてみると,引用発明の「緑色レジスト」において「着色力」を重視した当業者が,「着色力と分散安定性のバランス」が取れる範囲内で,「色材」の割合を,「更に好ましくは」とされる「50質量%」に近づけるように設計変更し,相違点2に係る本件補正後発明の要件を満たしたものとすることも,引用文献3の記載が示唆する範囲内の事項にすぎない。

(6) 発明の効果について
本件補正後発明の効果に関して,本件出願の明細書の【0015】には,「本発明の感光性樹脂組成物は,上述のような構成であるので,耐溶剤性及び現像性に優れ,高レベルの表面平滑性を有する硬化膜を与えることができ,近年の高色純度化や高輝度化,薄膜化の要望に充分に対応できるものである。」と記載されている。
しかしながら,引用文献3の【0215】には,「<カラーフィルター,及び液晶表示パネルの作製>」として,「緑色レジストとして,実施例4-6の感光性着色樹脂組成物を用いた。」と記載され,【0220】には,「作製したブラックマトリクス及び画素パターンをレーザー顕微鏡で検査したところ,パターンの欠損や現像残渣がなく,画素の表面平滑性も良好であった。」と記載されている。
本願発明の効果は,引用発明も奏する効果であるか,少なくとも,引用発明ないし引用文献3の記載に接した当業者が予測する範囲の効果である。

(7) 請求人の主張について
請求人は令和2年6月15日付け上申書において,補正案を示している。
しかしながら,補正案の発明もまた,前記(5)で述べたとおり,引用発明の「色材」として染料を併用する場合において,当業者が想到し得る範囲内の発明と考えられる。
したがって,補正案は採用することができない。

(8) 小括
本件補正後発明は,引用文献3に記載された発明及び同文献に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり,本件補正は却下されたので,本件出願の請求項1に係る発明は,前記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は,本願発明は,本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2010-168581号公報(引用文献3)に記載された発明に基づいて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用文献及び引用発明
引用文献3の記載及び引用発明は,前記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は,前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から,前記「第2」[理由]1(3)で述べた[A]及び[B]の限定を除いたものである。また,本願発明の構成をすべて具備し,これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明は,前記「第2」[理由]2(3)?(8)で述べたとおり,引用文献3に記載された発明及び同文献に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうしてみると,本願発明も,引用文献3に記載された発明及び同文献に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-11-09 
結審通知日 2020-11-10 
審決日 2020-11-27 
出願番号 特願2015-185660(P2015-185660)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
P 1 8・ 575- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塚田 剛士  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 福村 拓
樋口 信宏
発明の名称 感光性樹脂組成物及びその硬化膜  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  
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