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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1370527
審判番号 不服2019-15586  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-20 
確定日 2021-01-21 
事件の表示 特願2015-214432「二重容器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月18日出願公開、特開2017- 81629〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年10月30日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 2月15日付け:拒絶理由通知
平成31年 4月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 8月 1日付け:拒絶査定
令和 1年11月20日 :審判請求書の提出、同時に手続補正書の提出

第2 令和1年11月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年11月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「容器の外殻を形成する外層体と、内容物の収容空間に通じる上部開口を有するとともに該外層体の内側に収められる減容変形自在な内層体と、該上部開口に設けられ、該収容空間に向けて延びる筒状壁の内側に弁体となる球状体を配してなる中栓と、該中栓を覆って該外層体の口部に装着されるとともに該筒状壁に連通する注出筒を備える注出栓と、を備える二重容器であって、
前記筒状壁は、前記収容空間に向けて縮径して前記球状体と全周に亘って当接する傾斜壁と、該傾斜壁と同材質で一体に形成されるとともに、該球状体の下端部に当接することで該球状体が該傾斜壁に喰い込むことを防止する喰い込み防止用の支持体と、を備えることを特徴とする二重容器。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成31年4月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「容器の外殻を形成する外層体と、内容物の収容空間に通じる上部開口を有するとともに該外層体の内側に収められる減容変形自在な内層体と、該上部開口に設けられ、該収容空間に向けて延びる筒状壁の内側に弁体となる球状体を配してなる中栓と、該中栓を覆って該外層体の口部に装着されるとともに該筒状壁に連通する注出筒を備える注出栓と、を備える二重容器であって、
前記筒状壁は、前記収容空間に向けて縮径して前記球状体と全周に亘って当接する傾斜壁と、該傾斜壁と一体に形成されるとともに、該球状体の下端部に当接することで該球状体が該傾斜壁に喰い込むことを防止する喰い込み防止用の支持体と、を備えることを特徴とする二重容器。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項である傾斜壁の材質と、該傾斜壁と一体に形成されるとともに、球状体の下端部に当接することで球状体が傾斜壁に喰い込むことを防止する喰い込み防止用の支持体の材質について、「同材質」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2014-193747号公報(平成26年10月9日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
なお、理解の助けとなるように当審にて下線を付した。以下同様。
「【技術分野】【0001】本発明は、内容物を収容する内層体を外層体の内側に収容した二重構造を有し、内容物の注出に伴って内層体のみを収縮させるようにした注出容器に関する。」
「【背景技術】【0002】従来から、例えばシャンプー、リンス、液体石鹸、化粧水などの化粧料または味醂、料理酒、醤油、ソースなどの食品調味料等の内容物を収納する容器として、内容物を収容する内層体と、内層体を剥離可能に収容する外層体とを備え、外層体の口部に装着された注出キャップから内容物を注出するようにした注出容器(デラミ容器)が知られている。注出容器は、外層体の胴部をスクイズ(押圧)して内容物を注出した後、スクイズが解除されて外層体の胴部が元の形状に復元しても、外層体に設けられた開孔から内層体と外層体との間に外気が導入されて内層体を減容状態に維持することができるので、内容物の注出に伴って内層体の内部の内容物が外気と置換されることを抑制して、内容物と外気との接触を極力避けることができる。」
「【0003】このような注出容器では、スクイズが解除されたときに注出口から内層体の内部へ外気が流入するのを阻止するために、注出キャップの注出路に逆止弁が設けられる。この逆止弁として、外気の流入を阻止するだけでなく、スクイズが解除されたときに注出口付近の内容物を引き込んで注出口からの液垂れを防止することができるボール弁タイプを用いたものが存在する(例えば特許文献1)。」
「【発明が解決しようとする課題】【0005】しかしながら、特許文献1に示すようなボール弁タイプの逆止弁は、ボール弁が注出路内を移動して該注出路を開閉する構成であるので、内容物の注出後に外層体のスクイズを解除してもボール弁が即座に注出路を閉塞することができない場合があり、また、注出作業の前後においてボール弁が注出路内を不意に移動して注出路が開放されるおそれがあるなど、そのシール性に改善の余地があった。」
「【0006】本発明は、このような従来の問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、注出口からの液垂れを防止しつつ、注出路のシール性を高めて内層体の内部への外気の流入を確実に防止することができる注出容器を提供することにある。」
「【0007】本発明の注出容器は、内容物の収容部につながる上部開口を備えた内層体と、該内層体を収容するとともに該内層体との間に外気を導入する開孔を備えた外層体と、内容物の注出口を備え、前記外層体の口部に装着された注出キャップと、を備えた注出容器であって、前記上部開口と前記注出口とを連通させる注出路を備え、前記上部開口に装着される注出栓と、前記注出路に該注出路に沿って移動自在に配置され、前記注出路を開閉する逆止弁として機能するボール弁と、前記注出栓と前記注出キャップとの間に固定された保持部に弾性変形自在の連結片を介して連結され、前記注出口に向けて開口する前記注出路の流出口を開閉する逆止弁として機能するリフト弁と、を有することを特徴とする。」
「【0017】図2に示すように、注出キャップ3は円筒状の装着筒部7とこの装着筒部7の上端に連なる頂壁8とを備えた有頂円筒状に形成されている。装着筒部7の内周面には雌ねじ部7aが一体に設けられ、この雌ねじ部7aが外層体5の口部5aの外周面に一体に設けられた雄ねじ部5cにねじ結合して注出キャップ3は外層体5の口部5aに装着されている。注出キャップ3の頂壁8には上方に向けて突出する円筒状の段差部8aが設けられ、この段差部8aには頂壁8の軸心からずれて注出口(ノズル)9が一体に設けられている。この注出口9は頂壁8の段差部8aの上面からラッパ状に突出するとともにこの段差部8aの下面から円筒状に突出し、頂壁8を貫通している。この注出口9は内層体4の上部開口4bに連通し、内層体4に収容された内容物を外界(外部)に注出することができる。」
「【0023】図2、図3に示すように、注出栓12の本体部13には円筒状の筒状部17が同軸且つ一体に設けられている。この筒状部17の内側は内層体4の上部開口4bと注出キャップ3の注出口9とを連通させる注出路18となっており、内層体4の収容部4aに収容された内容物は上部開口4bから注出路18を通って注出口9にまで流れることができる。・・・また、筒状部17の下側部分は収容部4aに向かうにつれて縮径する円錐状の傾斜壁17aとなっており、傾斜壁17aの下端部には収容部4aに向けて開口する流入口17bが設けられている。」
「【0025】図2に示すように、注出容器1が注出キャップ3を上側として起立した起立姿勢のときには、ボール弁20は自重により注出路18内を下方に移動し、弁座となる傾斜壁17aに全周に亘って当接して注出路18を閉塞し、収容部4aと注出口9とを非連通とする。一方、注出容器1が起立姿勢に対して90度以上傾けられ、または外層体5の胴部5bがスクイズされて収容部4aから注出路18に内容物が圧送されると、図2中に二点鎖線で示すように、ボール弁20は傾斜壁17aから離れて突起19aに抜け止め保持される位置にまで注出路18内を移動する。これによりボール弁20が開状態となり、収容部4aと注出口9とが、注出路18の隣り合うリブ19の隙間部分を介して互いに連通される。このように、ボール弁20は、弁座である傾斜壁17aから離れて内層体4の収容部4aから注出キャップ3の注出口9に向けて内容物を流す開位置と、弁座である傾斜壁17aに当接して注出口9から収容部4aに向けた内容物や外気の流れを阻止する閉位置とに移動して注出路18を開閉する逆止弁として機能する。」

「【 図2】


「【0033】また、ボール弁20の傾斜壁17aに向けた下方への移動に伴って注出口9の先端付近の内容物が注出路18の側に向けて引き込まれるので(サックバック)、注出口9の先端からの液垂れを有効に防止することができる。尚、連結片21cの弾性力等を調整することで板状弁21bの閉塞前にボール弁20が注出路18を閉じる位置に向けて移動するように設計したり、板状弁21bと流出口17cとのシール面に液流路(溝やシボ加工等)を設けて板状弁21bが流出口17cを閉塞した後もボール弁20の移動により前記液流路を通して内容物を注出路18内に引き込むように設計したりすることで、前述のサックバックの効果を高めることができる。」
(イ)上記記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「内容物の収容部につながる上部開口を備えた内層体4と、該内層体4を収容するとともに該内層体4との間に外気を導入する開孔を備えた外層体5と、内容物の注出口9と、外層体5の口部に装着された注出キャップ3と、上部開口に装着される注出栓12とを備えた注出容器であって、注出キャップ3は、円筒状の装着筒部7とこの装着筒部7の上端に連なる頂壁8とを備えた有頂円筒状に形成され、装着筒部7の内周面には雌ねじ部7aが一体に設けられ、この雌ねじ部7aが外層体5の口部5aの外周面に一体に設けられた雄ねじ部5cにねじ結合して注出キャップ3は外層体5の口部5aに装着され、注出キャップ3の頂壁8には上方に向けて突出する円筒状の段差部8aが設けられ、この段差部8aには頂壁8の軸心からずれて注出口9が一体に設けられ、注出栓12の本体部13には円筒状の筒状部17が同軸且つ一体に設けられており、筒状部17の下側部分は収容部4aに向かうにつれて縮径する円錐状の傾斜壁17aとなっており、注出容器1が注出キャップ3を上側として起立した起立姿勢のときには、ボール弁20は自重により注出路18内を下方に移動し、弁座となる傾斜壁17aに全周に亘って当接して注出路18を閉塞し、収容部4aと注出口9とを非連通とし、この注出口9は内層体4の上部開口4bに連通し、内層体4に収容された内容物を外界(外部)に注出することができ、内容物を収容する内層体を外層体の内側に収容した二重構造を有し、内容物の注出に伴って内層体のみを収縮させるようにした注出容器。」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である実願平04-067381号(実開平06-030064号)のCD-ROM(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0001】【産業上の利用分野】この考案は、醤油等を収容する液体収容器の口部に装着されて、醤油等の注ぎ出す量を弁により調整することができる弁付キャップに関するものである。」
「【0006】【考案が解決しようとする課題】しかしながら、液体収容器4を冷蔵庫に保存する場合、液体収容器4内が冷却されて減圧状態となることによりビー球5が口枠6に密着してしまい、収容物を注ぎ口2から注ぎ出す際にも密着したままのビー球5が邪魔になってうまく注ぎ出せないという問題点があった。」
「【0007】この考案は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液体収容器を例え冷蔵庫に保存した場合であっても、球状弁が注ぎ口への連通口に装着された弁座に食い込んでしまうのを防止して収容物を注ぎ口から注ぎ出す際の障害とならない弁付キャップを提供することにある。」
「【0014】上部開口15を形成するキャップ本体11上端面の略直径位置の二箇所には、注ぎ口20としての凹部が形成されており、注ぎ口20は下降する斜面を経て円筒状底部16に連続している。下部開口17は、円筒状底部16より縮径されており、円筒状底部16の底面には円環状段部21が形成されている。円筒状底部16の周壁底部には、直交する位置の四箇所に貫通孔22が形成されている。この円環状段部21には、リング状弁座14が載置される(図1,2参照)。」
「【0019】突起27は、リング状弁座14に位置するボール13を、後述する開口28を閉塞する状態である所定位置に保持することができる突出量を有しており、開口28を閉塞する状態でボール13が突起27に当接することにより、ボール13のこれ以上の下方移動を不可能にしてボール13がリング状弁座14に食い込むのを防止している(図1参照)。」
「【0023】リング状弁座14は、例えばエラストマー等の軟質材からなる円環状薄板により形成されており、中央に開口28を有すると共に外周縁29の直交する四箇所に矩形状突起30を有している(図4(a)参照)。」

(イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。
「醤油等を収容する液体収容器の口部に装着されて、醤油等の注ぎ出す量を弁により調整することができる弁付キャップにおいて、液体収容器を例え冷蔵庫に保存した場合であっても、球状弁が注ぎ口への連通口に装着された弁座に食い込んでしまうことを防止するために、注ぎ口20から連続する円筒状底部16の底面には円環状段部21を形成し、円筒状底部16の周壁底部には直交する位置の四箇所に貫通孔22を形成し、この円環状段部21にリング状弁座14を載置し、リング状弁座14に位置するボール13が突起27に当接することにより、ボール13のこれ以上の下方移動を不可能にしてボール13がリング状弁座14に食い込むことを防止する技術。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「外層体」は本件補正発明の「容器の外殻を形成する外層体」に相当し、同様に、「内容物の収容部につながる上部開口を備えた内層体」は「内容物の収容空間に通じる上部開口を有する内層体」に、「上部開口に装着される注出栓」は「上部開口に設けられ」る「中栓」に、「筒状部」は「筒状壁」に、「ボール弁」は「弁体となる球状体」に、「注出口」は「注出筒」に、「注出キャップ」は「注出栓」に、「収容部に向かうにつれて縮径する円錐状の傾斜壁」は「収容空間に向けて縮径」する「傾斜壁」に、「ボール弁20は自重により注出路18内を下方に移動し、弁座となる傾斜壁17aに全周に亘って当接」は「球状体と全周に亘って当接」にそれぞれ相当する。
(イ)引用発明の「内層体を収容するとともに該内層体との間に外気を導入する開孔を備えた外層体」、「内容物の注出に伴って内層体のみを収縮させる」は、その機能から、本件補正発明の「外層体の内側に収められる減容変形自在な内層体」に相当する。
(ウ)引用発明の「筒状部17の下側部分は収容部4aに向かうにつれて縮径する円錐状の傾斜壁17aとなっており」、「ボール弁20は自重により注出路18内を下方に移動し、弁座となる傾斜壁17aに全周に亘って当接して注出路18を閉塞」は、その機能から、本件補正発明の「収容空間に向けて延びる筒状壁の内側に弁体となる球状体を配して」に相当する。
(エ)引用発明の「装着筒部7の内周面には雌ねじ部7aが一体に設けられ、この雌ねじ部7aが外層体5の口部5aの外周面に一体に設けられた雄ねじ部5cにねじ結合して注出キャップ3は外層体5の口部5aに装着され」は、その機能から、本件補正発明の「外層体の口部に装着される」「注出栓」に相当し、同様に、「注出キャップ3の頂壁8には上方に向けて突出する円筒状の段差部8aが設けられ、この段差部8aには頂壁8の軸心からずれて注出口(ノズル)9が一体に設けられ」は「該筒状壁に連通する注出筒を備える注出栓」に相当する。
(オ)引用発明の「内容物を収容する内層体を外層体の内側に収容した二重構造」は、その機能から、本件補正発明の「二重容器」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「容器の外殻を形成する外層体と、内容物の収容空間に通じる上部開口を有するとともに該外層体の内側に収められる減容変形自在な内層体と、該上部開口に設けられ、該収容空間に向けて延びる筒状壁の内側に弁体となる球状体を配してなる中栓と、該中栓を覆って該外層体の口部に装着されるとともに該筒状壁に連通する注出筒を備える注出栓と、を備える二重容器であって、
前記筒状壁は、前記収容空間に向けて縮径して前記球状体と全周に亘って当接する傾斜壁と、を備えることを特徴とする二重容器。」
【相違点】
本件補正発明は、「傾斜壁と同材質で一体に形成されるとともに、該球状体の下端部に当接することで該球状体が該傾斜壁に喰い込むことを防止する喰い込み防止用の支持体」を備えるのに対し、引用発明は、そのような構成を備えない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 引用発明においては、注出口9の先端付近の内容物が注出路18の側に向けて引き込まれ、注出口9の先端からの液垂れを有効に防止するものであるから、内容物が注出路18の側に向けて引き込まれる際に、注出路18内に位置するボール弁20においても同方向の力、すなわち傾斜壁17aに喰い込む方向への力が作用することは明らかであるから、引用発明においてもボール弁20のボールが傾斜壁17aに喰い込まないようにすることの動機があると言える。
イ 引用文献2には、上記(2)イのとおり、醤油等を収容する液体収容器の口部に装着されて、醤油等の注ぎ出す量を弁により調整することができる弁付キャップにおいて、液体収容器を例え冷蔵庫に保存した場合であっても、球状弁が注ぎ口への連通口に装着された弁座に食い込んでしまうことを防止するために、リング状弁座14に位置するボール13が突起27に当接することにより、ボール13のこれ以上の下方移動を不可能にしてボール13がリング状弁座14に食い込むことを防止する技術的事項が記載されている。引用発明と、引用文献2に記載された技術的事項とは、いずれも、食品調味料等の内容物を収納する容器に関する同一の技術分野に属するものであり、引用発明においても、球状体が該傾斜壁に喰い込むことを防止するという動機があるから、当該動機にしたがって、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用し、引用発明において、球状体の下端部に当接することで該球状体が該傾斜壁に喰い込むことを防止する喰い込み防止用の支持体を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。そしてその際に、傾斜壁と支持体とを同材質で一体に形成することについては、製造コストや組立工数等を考慮し、当業者が適宜なし得た事項に過ぎない上、本件補正発明において、球状体が該傾斜壁に喰い込むことを防止するという課題に対し、傾斜壁と支持体とを同材質で一体に形成することにより奏される効果についての特段の記載もないことから、格別の困難性は認められない。
ウ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和1年11月20日にされた手続補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年4月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし5に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2014-193747号公報
引用文献2:実願平04-067381号(実開平06-030064号)のCD-ROM
引用文献3:特開2013-241197号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「同材質」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-11-13 
結審通知日 2020-11-17 
審決日 2020-12-04 
出願番号 特願2015-214432(P2015-214432)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 信秀  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 村山 達也
井上 茂夫
発明の名称 二重容器  
代理人 杉村 憲司  
代理人 片岡 憲一郎  
代理人 杉村 光嗣  

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