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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1370574 |
審判番号 | 不服2019-16071 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-11-28 |
確定日 | 2021-02-09 |
事件の表示 | 特願2016- 36447「マスタ装置、スレーブ装置、情報処理装置、イベントログ収集システム、マスタ装置の制御方法、スレーブ装置の制御方法、および制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日出願公開、特開2017-151936、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年2月26日の出願であって,平成30年7月13日付けで拒絶理由通知がされ,平成30年9月25日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,平成31年2月22日付けで拒絶理由通知(最後)がされ,平成31年4月18日付けで意見書が提出されたが,令和1年9月17日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和1年11月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和2年2月4日付けで前置報告がされ,令和2年8月17日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年10月7日付けで手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願請求項1?13に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明13」という。)は,令和2年10月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 所定の事象の発生を記録する複数のスレーブ装置と通信するマスタ装置であって, 時刻を取得する時刻取得部と, 前記時刻取得部が取得した時刻に応じた時刻情報を送信することで,前記スレーブ装置にて当該スレーブ装置が計時する時刻と,前記時刻取得部が取得した時刻との時刻合わせを行わせる時刻調節指示部と, 前記事象の発生時刻と当該事象を特定する情報とを対応付けた情報である第1イベントログを,前記スレーブ装置から受信するログ受信部と, 前記スレーブ装置と前記マスタ装置とのネットワーク構成に応じて前記時刻合わせの周期を決定する周期決定部と,を備え, 前記スレーブ装置と前記マスタ装置との通信は,EtherCATの通信規格を用いて行われ, 前記時刻調節指示部は,前記スレーブ装置と通信可能な状態になったタイミングで前記時刻情報を送信し,以降は,前記周期決定部により決定された前記周期で前記スレーブ装置に対し前記時刻情報を含む時刻合わせ指示を,前記EtherCATの通信規格に合致したフレームを介して送信するものであり, 前記周期は,前記マスタ装置と前記スレーブ装置との接続関係に応じて決定され,前記時刻取得部が取得した時刻と前記スレーブ装置が計時する時刻との誤差が,前記第1イベントログに含まれる前記事象の発生時刻の最小単位より小さくなるように規定されていることを特徴とするマスタ装置。」 なお,本願発明2?13の概要は以下のとおりである。 本願発明2?5は,本願発明1を減縮した発明である。 本願発明6は,本願発明1?5のいずれかを引用して「スレーブ装置」の発明として記載したものである。 本願発明7は,本願発明5を引用して「情報処理装置」の発明として記載したものである。 本願発明8は,本願発明1?5のいずれかのマスタ装置と,本願発明6のスレーブ装置と,本願発明7の情報処理装置とを備えるイベントログ収集システムである。 本願発明9?11は,それぞれ,本願発明1,2,6に対応する方法の発明であり,本願発明1,2,6とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。 本願発明12,13は,それぞれ,本願発明1,6に対応する制御プログラムの発明であり,本願発明1,6とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。 第3 引用文献,引用発明等1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2010-113553号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0023】 図1は,この発明の一実施形態に係るログ情報管理システムの構成を示す図である。この実施形態では,ログ情報管理システムは,端末装置としての多機能デジタル画像形成装置である複数のMFP(Multi Function Peripherals)1と,これらのMFP1のログ情報を収集管理するパソコンからなるログ情報管理装置2を備え,これらのMFP1及びログ情報管理装置2とは,ネットワークを介して相互に接続されている。 【0024】 前記MFP1は,図2に示すように,スキャナ部11と,操作パネル部12と,プリント部13と,記憶部14と,制御部15と,ログ管理部16と,時刻管理部17と,ネットワークインターフェース(I/F)部18等を備えている。 【0025】 スキャナ部11は,原稿台(図示せず)に置かれた原稿の画像を読み取り,画像データを出力する読み取り手段である。 【0026】 操作パネル部12は,各種入力操作等のために使用されるものであり,テンキー,スタートキー等のキー入力部121と液晶等からなる表示部122を備えている。この操作パネル部12により,送信宛先の入力,スキャン条件の選択,画像ファイルフォーマットの選択,処理の開始/中断等,ユーザへのインターフェース処理を実行する。 【0027】 プリント部13は,前記スキャナ部11で読み取られた原稿の画像データや,外部装置から送信されてきたプリントデータ等を,用紙に印字するものである。カラー印字可能な画像処理装置の場合は,イエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの4色のトナーを用い,画像を形成する。 【0028】 記憶部14は例えばハードディスク装置やRAM等の記録媒体からなり,各種のデータを記憶する。この実施形態では,MFP1の動作記録である,動作時刻が付加されたログ情報を時系列的に記憶する。 【0029】 制御部15はMFP1の全体を統括的に制御するものであり,図示しないCPUやROM等を備え,CPUが記憶部14等に記憶された動作プログラムに従って動作することにより,MFP1の有する機能が実現される。 【0030】 ログ管理部16は,MFP1が動作を行うたびに時刻管理部17で管理されている時刻を付加したログ情報を生成し,前記記憶部14に記憶させたり,後述するようにログ情報管理装置2からのログ情報の収集要求を受信したときは,該要求に従って記憶部14に記憶されているログ情報を,ログ情報管理装置2に送信する。 【0031】 時刻管理部17は,ログ情報管理装置2から送信されてきた時刻情報に基づいて時刻を設定し,設定された時刻を基準にしてその後の時刻を管理する。この設定された時刻は,ユーザによる再設定や変更の操作はできないものとなされている。 【0032】 なお,この実施形態では,時刻管理部17はユーザの操作により任意に設定や変更ができる時刻をも有しており,この時刻は,操作パネル部12の表示部122に表示されるものとなされている。 【0033】 ネットワークインターフェース部18は,ネットワーク上のログ情報管理装置2や他のMFP1,その他の外部装置との間での通信を制御するものである。 【0034】 図3は,ログ情報管理装置2の概略構成を示すブロック図である。 【0035】 ログ情報管理装置2は,CPU21と,ROM22と,RAM23と,表示部24と,記憶部25と,キー入力部26と,マウス27と,通信インターフェース部(通信I/F)28等を備え,システムバス20を介して互いに接続されている。 【0036】 CPU21は,ROM22に保存されているプログラムを実行することにより,ログ情報管理装置2の全体を統括的に制御する。この実施形態では,前記プログラムの一つとしてログ情報収集アプリケーションがインストールされており,このログ情報収集アプリケーションに従ってMFP1のログ情報の収集に関する動作を実行する。 【0037】 具体的には,CPU21は,MFP1の記憶部14に記憶されているログ情報を,予め設定された日時に,あるいはログ情報収集アプリケーションにより表示部24に表示された即時収集ボタンをユーザが操作することにより,一括して収集する。さらに,ログ情報の収集直後に,MFP1に新たな時刻設定を行わせるための時刻情報をMFP1に対して送信する。さらには,一括して収集したログ情報を,1つのグループ(塊)として記憶部25に記憶保存させる。 【0038】 さらにCPU21は,ログ情報の収集時に,前回送信した時刻情報に基づいてMFP1側で管理されている時刻情報を取得するとともに,取得されたMFP1側の時刻情報と今回送信される時刻情報(実際の時刻情報)を比較し,両者の時刻に所定以上の差が存在する場合に,管理者に警告メールを送信する。さらには,収集されたログ情報を表示部24に時系列で表示させた際に,ログ情報の一つのグループと次のグループとの間に,前記時刻の差を表示させる等の処理を行う。 【0039】 ROM22は,CPU21が実行するためのプログラムやその他のデータを保存する記憶媒体である。 【0040】 RAM23は,CPU21が動作用プログラムに従って動作する際の作業領域を提供する記憶媒体である。 【0041】 表示部24は,CRTや液晶表示装置等からなり,各種のメッセージ及びユーザに対する入力受付画面,選択画面等を表示したり,ユーザの作成文書等を表示したりする。この実施形態では,前述したログ情報アプリケーションによる操作画面やMFP1から収集されたログ情報も,表示されるものとなされている。 【0042】 記憶部25は,ハードディスク等の記憶媒体からなり,各種のアプリケーションプログラムやデータ等を保存する。前述したように,MFP1から収集されたログ情報も保存される。 【0043】 キー入力部26及びマウス27は,ユーザによる入力操作に用いられる。 【0044】 通信インターフェース部(通信I/F)28は,MFP1や他の外部装置との間で,ネットワークを介して,データの送受信を行う通信手段として機能する。 【0045】 図4は,図1のログ情報管理システムで実行されるログ情報収集処理を説明するための図である。 【0046】 MFP1は動作を実行するたびに,時刻を付加されたログ情報を生成し,生成したジョブ情報(当審注:「ジョブ情報」は「ログ情報」の誤記と認められる。)を時系列で蓄積していく。 【0047】 ログ情報管理装置2からログ情報の収集要求が送信されると,MFP1から蓄積された全てのログ情報がログ情報管理装置2に送信され(図4の丸数字1),これを受信したログ情報管理装置2は,取得したログ情報群31を1つのグループ(塊)として,記憶部15に保存する。 【0048】 また,ログ情報管理装置2はログ情報の収集直後に,現在の時刻を示す時刻情報をMFP1に送信し,MFP1はこの時刻情報に基づいて時刻を設定し(丸数字2),設定された時刻を基準にその後の時刻を管理する。ログ情報管理装置2による時刻情報の送信はログ情報の収集直後に実行されるから,MFP1では新たなログ情報の生成・蓄積がなされないうちに時刻が新規に設定されることになる。 【0049】 MFP1は,動作を行うたびに,新たに設定された時刻に基づいて,動作が行われた時刻が付加されたログ情報を生成し,記憶部14に記憶する(丸数字3)。 【0050】 その後,ログ情報の収集タイミングの到来により,または管理者等による要求に応じて,ログ情報管理装置2はMFP1にログ情報の収集要求を出力して,MFP1の記憶部14に蓄積された全てのログ情報を取得する(丸数字4)。 【0051】 ログ情報を取得したログ情報管理装置2は,取得したログ情報群32を1つのグループ(塊)として,記憶部25に保存する。 【0052】 また,ログ情報管理装置2はログ情報の収集直後に,現在の時刻を示す時刻情報をMFP1に送信し,MFP1はこの時刻情報に基づいて時刻を設定し(丸数字5),設定された時刻を基準にその後の時刻を管理する。 【0053】 このように,MFP1側の時刻は,ログ情報管理装置2から送信された時刻情報に基づいて設定され,しかも設定された時刻はユーザが変更できないから,誤った時刻設定や時刻の変更がユーザによってなされることはなくなり,誤った時刻設定等に基く時刻がログ情報に付加されることはなくなる。 【0054】 また,MFP1からログ情報が収集される毎に,ログ情報管理装置2から時刻情報が送信され,MFP1ではその都度正確な時刻が設定されるとともに,ログ情報が収集された直後に時刻情報が送信されるから,次の時刻の設定までは,前回設定された時刻情報に基づいてログ情報が記録され,このためログ管理装置において保存されたログ情報の1つのグループの中では,各ログ情報の時刻は保証されたものとなっている。このため,MFP1側で,設定した時刻に経時的な狂いが生じても,グループ間で調整することができ,全体として正確なログ情報の管理を行うことができる。 【0055】 図5は,ログ情報管理装置2のログ情報収集処理を示すフローチャートである。この処理は,CPU21がROM22等の記録媒体に記録された動作プログラムに従って動作することにより実行される。 【0056】 ステップS01では,ログ情報収集アプリケーションによって表示部14(当審注:「表示部14」は「表示部24」の誤記である。)に表示されたログ情報即時収集ボタンが押されたか,またはログ情報収集アプリケーションにより予め設定された定期的な収集タイミングが到来したかどうかを判断する。ボタンが押されず,収集タイミングも到来していなければ(ステップS01でNO),そのままログ情報収集処理を終了する。 【0057】 ボタンが押され,または収集タイミングが到来すると(ステップS01でYES),ステップS02で,1つのMFP1に蓄積されている全てのログ情報を収集し,記憶部25に保存したのち,ステップS03で,収集が完了したかどうかを判断する。完了していなければ(ステップS03でNO),ステップS02に戻って収集を継続する。 【0058】 ログ情報の収集が完了すると(ステップS03でYES),ステップS04で,ログ情報を収集したMFP1の時刻情報を取得した後,ステップS05で,MFP1に新たな時刻設定用の時刻情報を送信する。 【0059】 次いで,ステップS06で,取得したMFP1の時刻情報と,MFP1に送信した時刻情報(実際の時刻情報)との間に指定時間以上の差が有るかどうかを判断し,指定時間以上の差があれば(ステップS06でYES),ステップS07で,システムの管理者に警告メールを送信してその旨を知らせたのち,ステップS08に進む。 【0060】 この警告メールを受領したシステムの管理者等は,時刻に差が生じることを認識でき,その原因を調査することができる。 【0061】 なお,警告メールでなく,ログ情報管理装置2の表示部24にその旨を表示して警告しても良いし,その他の方法で警告しても良い。 【0062】 一方,ステップS06で,取得したMFP1の時刻情報と実際の時刻情報との間に指定時間以上の差がなければ(ステップS06でNO),そのままステップS08に進む。 【0063】 ステップS08では,ログ情報収集対象の次のMFP1があるかどうかを調べ,なければ処理を終了する。あれば(ステップS08でYES),ステップS02に戻って,次のMFP1に対して上記と同様の処理を行う。 【0064】 図6は,ログ情報管理装置2からログ情報の収集要求がなされたときの,MFP1の動作を示すフローチャートである。なお,この動作は,MFP1の制御部15の図示しないCPUが,図示しないROM等の記録媒体に記録された動作プログラムを実行することにより実行される。 【0065】 ステップS11では,ログ情報管理装置2からのログ情報の収集要求があるかどうかを判断する。 【0066】 なければ(ステップS11でNO),ステップS12で,他の動作要求があるかどうかを判断する。動作要求がなければ(ステップS12でNO),ステップS11に戻る。 【0067】 動作要求があれば(ステップS12でYES),ステップS13で,要求動作を実行した後,ステップS14でログ情報を記憶部14に記憶し,ステップS11に戻る。 【0068】 ステップS11において,ログ情報管理装置2からのログ情報の収集要求があれば(ステップS11でYES),ステップS15で,全てのログ情報をログ情報管理装置2に送信したのち,ステップS16で時刻情報を送信する。 【0069】 次いで,ステップS17で,ログ情報管理装置2から新たな時刻情報を受信するのを待つ。時刻情報を受信すると(ステップS17でYES),ステップS18で新たな時刻を設定し,ステップS19で,時刻設定を禁止したのち,ステップS11に戻る。このように,ログ情報管理装置2から次の時刻情報が送信されるまで,換言すると記憶部14にログ情報が存在している間は時刻の設定が禁止されるから,記憶部14にログ情報が存在している間に,他の外部装置から誤った時刻情報が送信されたような場合にも,誤った時刻設定がなされるのが防止され,正確なログ管理を継続することができる。 【0070】 上記のようにして,定期的にまたは管理者等の要求により一括的に収集されたMFP1のログ情報は,ログ情報管理装置2により収集される毎に,1つのグループとしてログ情報管理装置2の記憶部25に保存される。 【0071】 管理者等は,ログ情報管理装置2の表示部24に,保存されているログ情報を表示し閲覧することができる。 【0072】 図7は,ログ情報が表示された表示部24の表示画面を示す図である。 【0073】 表示部24には,各ログ情報が時系列で表示されている。この実施形態では,前回のログ情報収集時に収集したグループAのログ情報と,今回のログ情報収集時に収集したグループBのログ情報との間に,図5のステップS06で求めた,前回の時刻情報と今回設定した時刻情報(実際の時刻情報)との間の時間差(図7の例では2時間)が表示されている。 【0074】 このように,時間差を併せて表示することで,管理者等は前記時間差を容易に知ることができる。」 「図1 」 「図4 」 「図5 」 「図6 」 「図7 」 したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「端末装置としての多機能デジタル画像形成装置である複数のMFP(Multi Function Peripherals)1と,これらのMFP1のログ情報を収集管理するパソコンからなるログ情報管理装置2を備えたログ情報管理システムにおけるログ情報管理装置2であって, 前記MFP1は,時刻管理部17を備え,前記時刻管理部17は,ログ情報管理装置2から送信されてきた時刻情報に基づいて時刻を設定し,設定された時刻を基準にしてその後の時刻を管理するものであり, 前記ログ情報管理装置2は,CPU21と表示部24を備え, 前記CPU21は,ログ情報収集アプリケーションに従ってMFP1のログ情報の収集に関する動作を実行し, 前記CPU21は,MFP1の記憶部14に記憶されているログ情報を,予め設定された日時に,あるいはログ情報収集アプリケーションにより表示部24に表示された即時収集ボタンをユーザが操作することにより,一括して収集し,さらに,ログ情報の収集直後に,MFP1に新たな時刻設定を行わせるための時刻情報をMFP1に対して送信し,さらには,一括して収集したログ情報を,1つのグループ(塊)として記憶部25に記憶保存させ, さらに前記CPU21は,ログ情報の収集時に,前回送信した時刻情報に基づいてMFP1側で管理されている時刻情報を取得するとともに,取得されたMFP1側の時刻情報と今回送信される時刻情報(実際の時刻情報)を比較し,両者の時刻に所定以上の差が存在する場合に,管理者に警告メールを送信し,さらには,収集されたログ情報を表示部24に時系列で表示させた際に,ログ情報の一つのグループと次のグループとの間に,前記時刻の差を表示させる等の処理を行い, 前記MFP1は動作を実行するたびに,時刻を付加されたログ情報を生成し,生成したログ情報を時系列で蓄積していき, 前記ログ情報管理装置2からログ情報の収集要求が送信されると,MFP1から蓄積された全てのログ情報がログ情報管理装置2に送信され,これを受信したログ情報管理装置2は,取得したログ情報群31を1つのグループ(塊)として,記憶部15に保存し, 前記ログ情報管理装置2はログ情報の収集直後に,現在の時刻を示す時刻情報をMFP1に送信し,MFP1はこの時刻情報に基づいて時刻を設定し,設定された時刻を基準にその後の時刻を管理し,ログ情報管理装置2による時刻情報の送信はログ情報の収集直後に実行されるから,MFP1では新たなログ情報の生成・蓄積がなされないうちに時刻が新規に設定されることになり, 前記MFP1は,動作を行うたびに,新たに設定された時刻に基づいて,動作が行われた時刻が付加されたログ情報を生成し,記憶部14に記憶し, その後,ログ情報の収集タイミングの到来により,または管理者等による要求に応じて,前記ログ情報管理装置2はMFP1にログ情報の収集要求を出力して,MFP1の記憶部14に蓄積された全てのログ情報を取得し, ログ情報を取得した前記ログ情報管理装置2は,取得したログ情報群32を1つのグループ(塊)として,記憶部25に保存し, また,前記ログ情報管理装置2はログ情報の収集直後に,現在の時刻を示す時刻情報をMFP1に送信し,MFP1はこの時刻情報に基づいて時刻を設定し,設定された時刻を基準にその後の時刻を管理し, 前記MFP1からログ情報が収集される毎に,ログ情報管理装置2から時刻情報が送信され,MFP1ではその都度正確な時刻が設定されるとともに,ログ情報が収集された直後に時刻情報が送信されるから,次の時刻の設定までは,前回設定された時刻情報に基づいてログ情報が記録され,このためログ管理装置において保存されたログ情報の1つのグループの中では,各ログ情報の時刻は保証されたものとなっており,このため,MFP1側で,設定した時刻に経時的な狂いが生じても,グループ間で調整することができ,全体として正確なログ情報の管理を行うことができ, 前記ログ情報管理装置2のログ情報収集処理は, ステップS01では,ログ情報収集アプリケーションによって表示部24に表示されたログ情報即時収集ボタンが押されたか,またはログ情報収集アプリケーションにより予め設定された定期的な収集タイミングが到来したかどうかを判断し,ボタンが押されず,収集タイミングも到来していなければ(ステップS01でNO),そのままログ情報収集処理を終了し, ボタンが押され,または収集タイミングが到来すると(ステップS01でYES),ステップS02で,1つのMFP1に蓄積されている全てのログ情報を収集し,記憶部25に保存したのち,ステップS03で,収集が完了したかどうかを判断し,完了していなければ(ステップS03でNO),ステップS02に戻って収集を継続し, ログ情報の収集が完了すると(ステップS03でYES),ステップS04で,ログ情報を収集したMFP1の時刻情報を取得した後,ステップS05で,MFP1に新たな時刻設定用の時刻情報を送信し, 次いで,ステップS06で,取得したMFP1の時刻情報と,MFP1に送信した時刻情報(実際の時刻情報)との間に指定時間以上の差が有るかどうかを判断し,指定時間以上の差があれば(ステップS06でYES),ステップS07で,システムの管理者に警告メールを送信してその旨を知らせたのち,ステップS08に進み, この警告メールを受領したシステムの管理者等は,時刻に差が生じることを認識でき,その原因を調査することができ, 警告メールでなく,ログ情報管理装置2の表示部24にその旨を表示して警告しても良いし,その他の方法で警告しても良く, ステップS06で,取得したMFP1の時刻情報と実際の時刻情報との間に指定時間以上の差がなければ(ステップS06でNO),そのままステップS08に進み, ステップS08では,ログ情報収集対象の次のMFP1があるかどうかを調べ,なければ処理を終了し,あれば(ステップS08でYES),ステップS02に戻って,次のMFP1に対して上記と同様の処理を行い, 前記ログ情報管理装置2からログ情報の収集要求がなされたときの,前記MFP1の動作は, ステップS11では,ログ情報管理装置2からのログ情報の収集要求があるかどうかを判断し, なければ(ステップS11でNO),ステップS12で,他の動作要求があるかどうかを判断し,動作要求がなければ(ステップS12でNO),ステップS11に戻り, 動作要求があれば(ステップS12でYES),ステップS13で,要求動作を実行した後,ステップS14でログ情報を記憶部14に記憶し,ステップS11に戻り, ステップS11において,ログ情報管理装置2からのログ情報の収集要求があれば(ステップS11でYES),ステップS15で,全てのログ情報をログ情報管理装置2に送信したのち,ステップS16で時刻情報を送信し, 次いで,ステップS17で,ログ情報管理装置2から新たな時刻情報を受信するのを待ち,時刻情報を受信すると(ステップS17でYES),ステップS18で新たな時刻を設定し,ステップS19で,時刻設定を禁止したのち,ステップS11に戻り, 前記ログ情報管理装置2から次の時刻情報が送信されるまで,換言すると記憶部14にログ情報が存在している間は時刻の設定が禁止されるから,記憶部14にログ情報が存在している間に,他の外部装置から誤った時刻情報が送信されたような場合にも,誤った時刻設定がなされるのが防止され,正確なログ管理を継続することができ, ログ情報が表示された表示部24には,前回のログ情報収集時に収集したグループAのログ情報と,今回のログ情報収集時に収集したグループBのログ情報との間に,ステップS06で求めた,前回の時刻情報と今回設定した時刻情報(実際の時刻情報)との間の時間差(例では2時間)が表示され, このように,時間差を併せて表示することで,管理者等は前記時間差を容易に知ることができる, ログ情報管理装置2。」 2.引用文献2について また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2015-35158号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0024】 〔5〕<通信遅延を取得してタイマの時刻誤差を演算> 項2において,上位の制御モジュールから下位の制御モジュールまでの通信に要する通信遅延(Tdelay)を取得し,実際の送信時刻から受信時刻の差から通信遅延を減算してタイマの時刻誤差(Tdiff,Tcd)を演算し,この時間差を用いてタイマの時刻を補正する。」 「【0056】 時間同期処理は,夫々の同期タイマ404-1,404-2,404-3で生成されるタイムスタンプの時刻情報を同期させる処理,即ち,夫々の同期タイマ404-1,404-2,404-3で得られる時刻情報が同一時間軸上で刻まれる時刻になることを保証するための処理である。例えば,モジュール500-2は時間管理の点で上位となるモジュール500-1からその同期タイマ404-1の時刻の情報を受け取り,受け取った時刻の情報,及び当該時刻の情報を受け取ったときの自らの同期タイマ404-2の時刻の情報等に基づいて,自らの同期タイマ404-2の時刻を補正する処理である。同期タイマ404-1,404-2,404-3の時刻補正は,自らの同期タイマ404-1,404-2,404-3から得られた時刻情報の補正であってもよいし,或いは,自らの同期タイマ404-1,404-2,404-3に対する計数値のプリセットなどによるそれ自体の計数動作の補正であってもよい。同期タイマ404-1,404-2,404-3の時刻を補正する処理は,例えばCPUがパワーオンリセット処理の一貫として,或いは所定の処理ルーチンの先頭などで行えばよい。各モジュール500-1,500-2,500-3における同期タイマ404-1,404-2,404-3のクロック信号周波数が完全同一でないような場合に,一旦補正の処理を行っても経時的に時刻情報の同期に無視し得ない誤差を生ずる場合には,適宜のインターバルで再度補正を行えばよい。」 3.引用文献3について また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平4-96115号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「〔概 要〕 複数の機器で構築される複合システムにおける各機器の時刻を統一するための自動時刻補正方式に関し, 各機器の時刻補正を人手およびハードウェアによらないで行なうことによって,時刻の正確性,時刻設定の柔軟性,時刻チェックの容易性を向上し,更にハードウェアの設備費用を減少することを目的とし, システム全体を時刻に関してマスタースレーブシステムとして構成し,各スレーブはマスタに定期的に自己の時刻を通知し,マスタはスレーブの時刻が誤差の許容範囲外にあるときは,その誤差値に基づきスレーブに時刻補正を要求し,所定回数にわたりスレーブの時刻が誤差の許容範囲内にあるときは誤差の標準偏差を求めこれに基づきスレーブに時刻補正を要求するように構成する。」(第1頁右下欄下から4行?第2頁左上欄13行) 「範囲チェックの結果不合格,すなわちスレーブクロックの時刻がマスタクロックの時刻に関して所定の範囲内にないならば,通信による時間遅延等を考慮して,マスタクロックとスレーブクロックの各時刻間の誤差の予測値を求め,これをマスタクロックの時刻に加えた値を設定時刻としてスレーブへ時刻設定要求を送信する。」(第2頁右下欄10?16行) 4.引用文献4について また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(北山 健志 他,「リングネットワークにおける時刻同期方式の検討」,電子情報通信学会技術研究報告,社団法人電子情報通信学会,2010年11月4日,第110巻,第269号,第1頁-第6頁)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「4.性能評価 本章では,IEEEI588のBC方式と提案方式との性能評価を行う.性能評価を行うためのパラメータとして時刻同期精度,時刻同期完了時間を挙げ,各評価パラメータの性能を妨げる要因を特定する.つぎに本報告での設定パラメータを決定し,BC方式および提案方式における各評価パラメータの評価式を示す.これらの評価式を用いて,先に時刻同期完了時間を算出し,その結果をもとに,時刻同期を行う周期を決定し,最後に時刻同期精度の算出結果を示す. 4.1.遅延および遅延ゆらぎ発生箇所 時刻同期精度は,時差を算出する式3では往路と復路のDelayが等しいと仮定していたが,実際には両者のDelayが完全に一致することはなく,時刻同期シーケンスによる往路と復路での遅延時間差の1/2に等しい.遅延時間差の発生要因は,時刻同期シーケンス中に発生するリングネットワーク上での遅延ゆらぎである.一方,時刻同期完了時間はリングネットワーク上のすべてのノードが時刻合わせを行うまでの時間であり,リングネットワーク上で発生する遅延の累積値に依存する. 上記の評価パラメータの性能に影響する遅延ゆらぎと遅延発生箇所を図5に示す. リングノードでは,PHY,MAC,タイムスタンプ取得部,時刻同期処理部に分類され,MACではフレームのリング送信用のAddバッファ,リング中継用のTransitバッファを設けている.時刻同期処理部では,時刻同期シーケンスの管理およびタイムスタンプを保持する機能,時刻同期シーケンス完了後の時刻マスタとの時差の算出およびローカル時計への時刻合わせを行う機能を持つ. 遅延および遅延ゆらぎ発生箇所は4つに分類できる.以下にそれぞれの発生箇所について説明する. (ポイント1)時刻同期制御フレームの送信または受信時のタイムスタンプ取得タイミング時に発生する. (ポイント2)AddまたはTransit時の各バッファでの送信待ち合わせ,フレーム受信,送信時に発生する. (ポイント3)時刻同期処理での時刻同期シーケンス動作,時差算出および時刻合わせ時に発生する. (ポイント4)フレーム受信,送信時のPHY内部で発生する. 4.2.設定パラメータ 本節では性能評価を行う上での設定パラメータを示す.各評価パラメータの最大値を取るケースを想定した設定パラメータの値を決める. (a) イーサネット諸元 ギガビットイーサネットかつ1000BASE-Tとする. (b) ネットワーク構成 図6に示すネットワーク構成とする.さらに時刻マスタでのリンク断発生を条件とすることで,同期精度および同期完了時間への影響を最大とする.BC方式では,時刻同期シーケンスの回数,提案方式では中継段数が最大となり,その数はネットワーク上のノード台数から1を引いた値である. (c) 送信待ち遅延の最大化 遅延および遅延ゆらぎ発生箇所のポイント2において,時刻同期用フレームのAddおよびTransit時のリングへの送信待ちによる遅延時間を最大長フレームから算出する.リングネットワークに流れるMACフレームをVLANタグ付きフレームとする.送信待ち遅延は,ギガビットイーサネットでは約13μsecとなる. (d) 時刻同期用フレームのTransit時の固定遅延付与 提案方式の時刻同期シーケンスではTransit時の遅延ゆらぎによる時刻同期精度への影響が考えられるが,例えば,Transit時に必ず固定遅延を付与することで遅延ゆらぎを抑制する機能を実現することで対応する.本報告では最大長フレーム送信待ち時間を固定遅延とする.BC方式では,時刻同期用フレームのTransitはない. (e) H/Wによる時刻同期用リングノード装置の実現を仮定 本報告では,各発生ポイントでの遅延および遅延ゆらぎの値に対して不確定要素が少なく,各遅延および遅延ゆらぎの値の設定が比較的容易であるH/W(FPGA)での実現を条件に入れる.H/Wでの実現により,MAC内部での送信処理および受信処理時間,さらに時刻同期処理時間を固定化し,遅延ゆらぎの発生源をなくす.MAC内部での送信,受信処理による遅延時間,伝送路遅延を(c)または(d)に含めることで省略可能である. タイムスタンプ取得部分では,取得から時刻同期用フレームかっFCSチェックまでの時間が遅延時間であり,フレームサイズを100Byteとし,800nsecとする.また,タイムスタンプ取得時の遅延ゆらぎ時間を,GMIIクロックの125MHzの3サイクル分で設計可能とし,24nsecとする. したがって,不確定要素となるのはポイント4で示した送信PHY-受信PHY間の遅延ゆらぎのみとなる.この値を1000BASE-TのPHY搭載の市販評価ボードを用いて実測したところ,最大で約10nsecを得た. 以上から設定パラメータを得る.表1に,図5の発生ポイントにおける遅延時間および遅延ゆらぎ時間を示す.Dを遅延時間,εを遅延ゆらぎ時間とする. 以降,表1記載の遅延および遅延ゆらぎ時間をもとに各方式の時刻同期完了時間,時刻同期精度の評価式を導出する. 4.3.時刻同期完了時間の評価式および算出 まず,時刻同期の周期を明確化するため,時刻同期完了時間の評価式および値の比較を行う. ■ BC方式 (省略) ■ 提案方式 (省略) 以下に各方式における時刻同期完了時間の評価式から図7に時刻同期完了時間のグラフを示す.横軸はノード台数である. BC方式の方が時刻同期シーケンスの独立性により,遅延時間が増大するため,同期完了時間が大きくなるが,AddおよびTransit遅延であるD_(MAX)が支配的であるため,両者はほぼ同等の結果となった. 4.4.時刻同期精度の評価式の導出 本節では,各方式における時刻同期精度の評価式を示す.Nはリングネットワーク上の装置台数を示す. BC方式では,前提条件のネットワーク構成において,隣接ノードペア単位で順番に時刻同期を実施するため,1回分の時刻同期シーケンスおよび時刻合わせで発生する遅延ゆらぎ時間の倍数となる.提案方式では,前提条件のネットワーク構成において,時刻マスタと障害を挟むその隣接ノード間で一括した時刻同期シーケンスを実施する.以下に評価式を示す. 時刻同期精度は,(a)時刻合わせ時の遅延ゆらぎ分と(b)次の周期の時刻合わせ直前までの時刻マスタとスレーブ間の使用クロック偏差による時刻誤差との和と考えられる.まず,時刻合わせ時の遅延ゆらぎによる時刻同期精度の評価式を示す. ■ BC方式(a) (省略) ■ 提案方式(a) (省略) (b)は両方式で共通の値であり,以下の条件で算出する.図7より,255ノード構成の場合,約14msec経過で,ネットワーク上のすべてのノードの時刻同期が完了する.本報告では,14msecで時刻同期を行うものとする.さらに,時刻マスタとスレーブ間のクロック偏差をイーサネット規格から最大200ppmの差を持つものとする.上記条件から次の時刻合わせ直前までにクロック偏差による時刻誤差は2.8μsecである. 4.5.時刻同期精度における性能評価 以下に各方式における時刻同期精度の評価式から図8に時刻同期精度のグラフを示す.横軸はノード台数である. BC方式では,隣接ノードペア分の時刻同期シーケンス時のタイムスタンプ取得による遅延ゆらぎ時間が加算され,提案方式と比較して時刻同期精度が悪い.提案方式では,時刻同期シーケンスの一括化により,タイムスタンプ取得による遅延ゆらぎの影響を最小限としていることから,時刻同期精度がBC方式と比較して向上している.」(第4頁左欄1行?第6頁右欄7行) 5.引用文献5について また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2014-71574号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0034】 ログは,管理エージェント部201がログ機構部202から取得したログを管理サーバ100へ任意のタイミングで送信する場合と,管理サーバ100からの管理命令によりログ保存部203に保存されたログを管理命令受信処理部141がログ管理部143を通して取得し,管理サーバ100へ送信する場合がある。 送信するログには,ログ出力元の対象ソフトウェアの情報が含まれている。管理サーバ100は受信したログを受信元の情報端末装置140のID等の情報と共にログ保存部104に保存する。また,管理サーバ100自身のログもログ保存部104に保存する。管理サーバ100自身のログは,情報端末装置140を合せて一つのファイルもしくはデータベースのテーブルに保存する場合と,情報端末装置140のログとは分けて保存する場合がある。分けて保存した場合は,管理コンソール120にログを表示する際にログを統合して表示する。 【0035】 図3は,図1で示したログ表示部105が表示するログのテーブル31である。 対象装置列32は,ログ出力元の装置の種別とIDを示す。対象ソフトウェア列33は,ログ出力元のソフトウェアモジュールまたはソフトウェア部を示す。 時刻列34はログ出力時間を示す。ログレベル列35は,出力ログのログレベルを示す。メッセージ列36は,ログメッセージを示す。デーブル31を表示する際,時系列にログを表示し,対象ソフトウェア毎に色を変えることで更に解析が容易になる。」 6.引用文献6について また,前置報告に引用された引用文献6(特開2014-183386号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0032】 (1-2)EtherCATの時刻同期機能 次に,図4を参照して,EtherCATにおける時刻同期の仕組みについて説明する。 【0033】 EtherCATの時刻同期機能は,スレーブ間の通信遅延計測,各スレーブの時計のオフセット補償,各スレーブが有する時計の進み具合のドリフト補償という3段階で構成されている。このうち,各スレーブ間の通信遅延の計測は,図4に示すアルゴリズムを基本としている。図4では,通信装置121aはスレーブAとして,通信装置121bはスレーブBとして,通信装置121cはスレーブCとして振る舞うとして以下説明する。 【0034】 図4は,EtherCATのスレーブA,B,Cの各通信装置121において,パケットの通信経路と各スレーブの各ポートでの受信時刻を示している。EPU103(図中EtherCAT Processor Unitと表記)は,上記したように,EtherCAT仕様に準拠して,通信処理を実行するICである。 【0035】 図4のTa,Tb,Tc,Td及びTeは,時刻同期用の所定のパケット(時刻同期用パケット1とする)の各ポートにおける受信時刻で,tdiffAB,tdiffBC,tdiffCB及びtdiffBAはスレーブ間の通信遅延を示す。例えば,tdiffABは,スレーブAとスレーブB間の通信遅延を示す。tpは,EPU103の処理時間を示す。TAP,TBP及びTCPは,各スレーブA,B,CのEPU103における受信時刻である。 【0036】 ここで,スレーブAに着目した場合,Ta及びTeは同じ通信装置121a上のクロックで計測しているが,通信装置121bとは,クロックのオフセットやドリフトが異なるため,Tb及びTdとそのまま比較することはできない。 【0037】 図4のTa?Teが計測可能で,tpが既知であるとした場合,スレーブCとスレーブB間の通信遅延tdiffBCは,数式(1)で算出できる。 【0038】 tdiffBC =(Td-Tb)÷2 ・・・(1) 【0039】 ただし,tdiffBCとtdiffCBは等しいとする。なお,EtherCATスレーブのプロセッサユニットは同種のものを利用していると仮定している。もし,プロセッサユニットが異なる場合は,tpの違いを考慮する必要がある。 【0040】 また,スレーブBとスレーブA間の通信遅延tdiffABは,数式(2)及び(3)で求められる。 【0041】 tdiffAB =((Te-Ta)-(Td-Tb)-tp)÷2+tp・・・(2) tdiffBA =tdiffAB-tp ・・・(3) 【0042】 なお,時刻同期機能に対応していないEtherCATスレーブは,単なる通信経路と見なされる。すなわち,時刻同期機能に対応していないEtherCATスレーブに対しては,予め設定された固定の通信遅延でパケットを転送する必要がある。 【0043】 このように時刻同期機能を実現する場合には,時刻同期用のパケットをリングネットワークで周回させる必要がある。すなわち,あるスレーブにおいて往路と復路におけるパケットの受信時刻をもとに通信遅延を計算する必要がある。 【0044】 このように,スレーブ間の通信遅延を求めた後,これらの通信遅延を積算して,各スレーブと基準時刻を有するスレーブ間の通信遅延を求めることができる。例えば,図4でスレーブAを基準とする場合,スレーブAとスレーブB間の通信遅延は,tdiffABとなり,スレーブAとスレーブC間の通信遅延tdiffACは,数式(4)で求められる。 【0045】 tdiffAC=tdiffAB+tdiffBC・・・(4) 【0046】 これらの通信遅延を用いて,マスタは基準時刻となるスレーブAのTAPを,その他のスレーブに通知する。各スレーブは,各スレーブ自身のEPU103の受信時刻を用いて,基準時刻となるスレーブAとの時刻のオフセットを計算することができる。例えば,スレーブBにおけるスレーブAとの時刻のオフセットOffsetBは数式(5)で求められる。 【0047】 OffsetB=TAP-TBP・・・(5) 【0048】 各スレーブは,スレーブAとの通信遅延と,時刻のオフセットを用いて,自己の時刻を基準時刻と同期させることができる。 【0049】 EtherCATにおいては,時刻同期に対応したスレーブの中で,マスタに最も近い(ホップ数の小さい)スレーブの時刻を基準時刻とする。図1では,通信装置121aを時刻マスタとしている。」 第4 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明の「MFP1」は「動作を実行するたびに,時刻を付加されたログ情報を生成し,生成したログ情報を時系列で蓄積してい」くものであるから,本願発明1の「所定の事象の発生を記録する」「スレーブ装置」に相当する。 引用発明の「ログ情報管理システム」は,「複数のMFP(Multi Function Peripherals)1」と,「これらのMFP1のログ情報を収集管理するパソコンからなるログ情報管理装置2」を備えたものであるから,当該「ログ情報管理システム」における「ログ情報管理装置2」は,複数の「スレーブ装置」に対応する“マスタ装置”であるといえ,また,前記「ログ情報管理装置2」は,「MFP1に蓄積されている全てのログ情報を収集し」,「ログ情報の収集が完了すると」,「ログ情報を収集したMFP1の時刻情報を取得した後」,「MFP1に新たな時刻設定用の時刻情報を送信し」ているから,本願発明1の「複数のスレーブ装置と通信するマスタ装置」に相当する。 したがって,引用発明と本願発明1とは,“所定の事象の発生を記録する複数のスレーブ装置と通信するマスタ装置”である点で一致する。 イ 引用発明の「ログ情報管理装置2」は,「MFP1に新たな時刻設定用の時刻情報を送信」するものであるところ,当該「新たな時刻設定用の時刻情報」を送信するために,当該「新たな時刻設定用の時刻情報」を“取得”していることは明らかであるから,引用発明の「ログ情報管理装置2」と本願発明1の「マスタ装置」とは,“時刻を取得する時刻取得部”を備えている点で一致しているといえる。 ウ 引用発明では,「ログ情報管理装置2」が「MFP1に新たな時刻設定用の時刻情報を送信し」ているところ,引用発明の「ログ情報管理装置2」が送信する「新たな時刻設定用の時刻情報」は,上記イの検討から,本願発明1の「前記時刻取得部が取得した時刻に応じた時刻情報」に相当する。 また,引用発明では,「MFP1」が,「ログ情報管理装置2」から「新たな時刻情報」を「受信すると」,MFP1は,受信した「新たな時刻を設定」し,これにより,「MFP1」の「時刻管理部17」は,「ログ情報管理装置2から送信されてきた時刻情報に基づいて時刻を設定し,設定された時刻を基準にしてその後の時刻を管理するものであ」るから,自身が“計時する時刻”と,受信した「新たな時刻設定用の時刻情報」の“時刻”,すなわち,“前記時刻取得部が取得した時刻”との“時刻合わせ”を行っているといえる。 そうすると,引用発明の「ログ情報管理装置2」は,「MFP1」に対して“時刻合わせ”を行わせる“時刻調節指示部”を備えているといえることから,引用発明の「ログ情報管理装置2」と本願発明1の「マスタ装置」とは,“前記時刻取得部が取得した時刻に応じた時刻情報を送信することで,前記スレーブ装置にて当該スレーブ装置が計時する時刻と,前記時刻取得部が取得した時刻との時刻合わせを行わせる時刻調節指示部”を備えている点で一致しているといえる。 エ 引用発明の「MFP1」は,「動作を実行するたびに,時刻を付加されたログ情報を生成し,生成したログ情報を時系列で蓄積してい」くものであるから,「MFP1」で「生成」される「ログ情報」は,本願発明1の「前記事象の発生時刻と当該事象を特定する情報とを対応付けた情報である第1イベントログ」に相当する。 そして,引用発明の「ログ情報管理装置2」は,「MFP1に蓄積されている」「ログ情報を収集」することから,当該「ログ情報」を「MFP1」から“受信する受信部”を備えているといえる。 したがって,引用発明の「ログ情報管理装置2」と本願発明1の「マスタ装置」とは,“前記事象の発生時刻と当該事象を特定する情報とを対応付けた情報である第1イベントログを,前記スレーブ装置から受信するログ受信部”を備えている点で一致しているといえる。 オ 引用発明の「ログ情報管理装置2」は,「ステップS01では」,「ログ情報収集アプリケーションにより予め設定された定期的な収集タイミングが到来したかどうかを判断し」,「収集タイミングが到来すると」,「ステップS02で,1つのMFP1に蓄積されている全てのログ情報を収集し」,「記憶部25に保存したのち」,「ステップS03で,収集が完了したかどうかを判断し」,「ログ情報の収集が完了すると」,「ステップS05で,MFP1に新たな時刻設定用の時刻情報を送信し」ていることから,ログ情報の「定期的な収集タイミング」で,すなわち,“所定の周期”で,「MFP1に新たな時刻設定用の時刻情報を送信し」ているといえる。 してみれば,上記ウで検討した「時刻調節指示部」は,“所定の周期”で,“前記スレーブ装置”に対し,“時刻情報を含む時刻合わせ指示”を“送信する”ものであるといえる。 したがって,引用発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,“前記時刻調節指示部は,所定の周期で前記スレーブ装置に対し前記時刻情報を含む時刻合わせ指示を送信するものであ”る点で共通している。 したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「 所定の事象の発生を記録する複数のスレーブ装置と通信するマスタ装置であって, 時刻を取得する時刻取得部と, 前記時刻取得部が取得した時刻に応じた時刻情報を送信することで,前記スレーブ装置にて当該スレーブ装置が計時する時刻と,前記時刻取得部が取得した時刻との時刻合わせを行わせる時刻調節指示部と, 前記事象の発生時刻と当該事象を特定する情報とを対応付けた情報である第1イベントログを,前記スレーブ装置から受信するログ受信部と, を備え, 前記時刻調節指示部は,所定の周期で前記スレーブ装置に対し前記時刻情報を含む時刻合わせ指示を送信するものである, マスタ装置。」 (相違点) (相違点1)本願発明1は「前記スレーブ装置と前記マスタ装置とのネットワーク構成に応じて前記時刻合わせの周期を決定する周期決定部」を備えるのに対し,引用発明はそのような構成を備えていない点。 (相違点2)本願発明1は「前記スレーブ装置と前記マスタ装置との通信は,EtherCATの通信規格を用いて行われ」るのに対し,引用発明はそのような構成となっていない点。 (相違点3)本願発明1は「前記時刻調節指示部は,前記スレーブ装置と通信可能な状態になったタイミングで前記時刻情報を送信し,以降は,前記周期決定部により決定された前記周期で前記スレーブ装置に対し前記時刻情報を含む時刻合わせ指示を,前記EtherCATの通信規格に合致したフレームを介して送信するものであ」るのに対し,引用発明の「前記時刻調節指示部」は,「所定の周期」で前記スレーブ装置に対し前記時刻情報を含む時刻合わせ指示を送信するものではあるものの,「前記スレーブ装置と通信可能な状態になったタイミングで前記時刻情報を送信」するものではなく,また,それ「以降は,前記周期決定部により決定された前記周期で前記スレーブ装置に対し前記時刻情報を含む時刻合わせ指示を,前記EtherCATの通信規格に合致したフレームを介して送信する」ものでもない点。 (相違点4)本願発明1は,「前記周期は,前記マスタ装置と前記スレーブ装置との接続関係に応じて決定され,前記時刻取得部が取得した時刻と前記スレーブ装置が計時する時刻との誤差が,前記第1イベントログに含まれる前記事象の発生時刻の最小単位より小さくなるように規定されている」のに対して,引用発明は,そのような構成となっていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み,相違点1,3,4について先に検討する。 引用発明では,「ログ情報管理装置2のログ情報収集処理」において,「ステップS06で,取得したMFP1の時刻情報と,MFP1に送信した時刻情報(実際の時刻情報)との間に指定時間以上の差が有るかどうかを判断し,指定時間以上の差があれば(ステップS06でYES),ステップS07で,システムの管理者に警告メールを送信してその旨を知らせ」る一方,「ステップS06で,取得したMFP1の時刻情報と実際の時刻情報との間に指定時間以上の差がなければ(ステップS06でNO),そのままステップS08に進み」,「ステップS08では,ログ情報収集対象の次のMFP1があるかどうかを調べ,なければ処理を終了し,あれば(ステップS08でYES),ステップS02に戻って,次のMFP1に対して上記と同様の処理を行」うようになっており,「前回送信した時刻情報に基づいてMFP1側で管理されている時刻情報」であって,今回「取得したMFP1の時刻情報」と,今回「MFP1に送信した時刻情報(実際の時刻情報)」との間に「指定時間以上の差」がある場合には,「管理者に警告メールを送信してその旨を知らせ」るものの,逆に「指定時間未満の差」しかない場合には,特段何もしないという動作をしていることからすると,引用発明は,「指定時間未満の差」が生じることを許容する発明であるといえる。 そして,そのような「指定時間未満の差」が生じていたとしても,「前記MFP1からログ情報が収集される毎に,ログ情報管理装置2から時刻情報が送信され,MFP1ではその都度正確な時刻が設定されるとともに,ログ情報が収集された直後に時刻情報が送信される」ようにしておけば,「次の時刻の設定までは,前回設定された時刻情報に基づいてログ情報が記録され,このためログ管理装置において保存されたログ情報の」少なくとも「1つのグループの中では,各ログ情報の時刻は保証されたものとなっており,このため,MFP1側で,設定した時刻に」仮に「経時的な狂いが生じても」,それが「指定時間未満」であれば,「グループ間で調整すること」で,全体として正確なログ情報の管理を行うことができ」るという効果を奏する発明であると理解される。 そして,引用発明に例示されている,「前回のログ情報収集時に収集したグループAのログ情報と,今回のログ情報収集時に収集したグループBのログ情報との間に」,「表示され」る,「ステップS06で求めた,前回の時刻情報と今回設定した時刻情報(実際の時刻情報)との間の時間差」は,「2時間」であり,この「時間差」を「併せて表示することで,管理者等は前記時間差を容易に知ることができ」るというものである。 一方,上記第3の2.によれば,引用文献2には,「上位の制御モジュールから下位の制御モジュールまでの通信に要する通信遅延(Tdelay)を取得し,実際の送信時刻から受信時刻の差から通信遅延を減算してタイマの時刻誤差(Tdiff,Tcd)を演算し,この時間差を用いてタイマの時刻を補正する」,「同期タイマ404-1,404-2,404-3の時刻を補正する処理は,例えばCPUがパワーオンリセット処理の一貫として,或いは所定の処理ルーチンの先頭などで行えばよい。各モジュール500-1,500-2,500-3における同期タイマ404-1,404-2,404-3のクロック信号周波数が完全同一でないような場合に,一旦補正の処理を行っても経時的に時刻情報の同期に無視し得ない誤差を生ずる場合には,適宜のインターバルで再度補正を行えばよい。」と記載され,また,上記第3の3.によれば,引用文献3には,「複数の機器で構築される複合システムにおける各機器の時刻を統一するための自動時刻補正方式に関し,各機器の時刻補正を人手およびハードウェアによらないで行なうことによって,時刻の正確性,時刻設定の柔軟性,時刻チェックの容易性を向上し,更にハードウェアの設備費用を減少することを目的とし」,「スレーブクロックの時刻がマスタクロックの時刻に関して所定の範囲内にないならば,通信による時間遅延等を考慮して,マスタクロックとスレーブクロックの各時刻間の誤差の予測値を求め,これをマスタクロックの時刻に加えた値を設定時刻としてスレーブへ時刻設定要求を送信する」と記載され,上記第3の4.によれば,引用文献4には,「本章では,IEEEI588のBC方式と提案方式との性能評価を行う.性能評価を行うためのパラメータとして時刻同期精度,時刻同期完了時間を挙げ,各評価パラメータの性能を妨げる要因を特定する.つぎに本報告での設定パラメータを決定し,BC方式および提案方式における各評価パラメータの評価式を示す.これらの評価式を用いて,先に時刻同期完了時間を算出し,その結果をもとに,時刻同期を行う周期を決定し,最後に時刻同期精度の算出結果を示す.」,「(b) ネットワーク構成 図6に示すネットワーク構成とする.さらに時刻マスタでのリンク断発生を条件とすることで,同期精度および同期完了時間への影響を最大とする.BC方式では,時刻同期シーケンスの回数,提案方式では中継段数が最大となり,その数はネットワーク上のノード台数から1を引いた値である.」,「図7より,255ノード構成の場合,約14msec経過で,ネットワーク上のすべてのノードの時刻同期が完了する.本報告では,14msecで時刻同期を行うものとする.さらに,時刻マスタとスレーブ間のクロック偏差をイーサネット規格から最大200ppmの差を持つものとする.上記条件から次の時刻合わせ直前までにクロック偏差による時刻誤差は2.8μsecである.」と記載され,また,上記第3の6.によれば,引用文献6には,「EtherCATにおける時刻同期の仕組みについて」「EtherCATの時刻同期機能は,スレーブ間の通信遅延計測,各スレーブの時計のオフセット補償,各スレーブが有する時計の進み具合のドリフト補償という3段階で構成されている。」と記載されているように,引用文献2?4,6にはいずれも,「時刻補正」,または「時刻同期」に関する技術が記載されているものと認められるところ,そもそも,引用発明は,上記したように,「指定時間未満の差」,すなわち,「ある程度の誤差」を許容している発明であって,引用発明において,「正確なログ情報の管理」を行うための課題解決手段は,「前記MFP1からログ情報が収集される毎に,ログ情報管理装置2から時刻情報が送信され,MFP1ではその都度正確な時刻が設定されるとともに,ログ情報が収集された直後に時刻情報が送信される」ようにすることであり,これにより,「次の時刻の設定までは,前回設定された時刻情報に基づいてログ情報が記録され,このためログ管理装置において保存されたログ情報の1つのグループの中では,各ログ情報の時刻は保証されたものとなり」,たとえ「MFP1側で,設定した時刻に経時的な狂いが生じても,グループ間で調整することができ,全体として正確なログ情報の管理を行うことができ」るというものであって,当該記載から明らかなように,引用発明の課題は,「時刻同期」の精度を向上することではないから,引用発明1に,引用文献2?4,6に記載されている「時刻補正」または「時刻同期」に関する技術を適用する動機付けがあるとはいえない。 また,特に,引用文献2,4,6には,時刻同期を実行する周期について記載されているところ,引用発明の“周期”は,「予め設定された定期的な」“ログ情報”の「収集タイミング」のことであって,上記したとおり,少なくとも,「ログ情報が収集された直後に時刻情報が送信される」ことが重要であり,引用発明では,そのような構成とするために,「ログ情報管理装置2から次の時刻情報が送信されるまで,換言すると記憶部14にログ情報が存在している間は時刻の設定が禁止される」ようにし,これにより,「記憶部14にログ情報が存在している間に,他の外部装置から誤った時刻情報が送信されたような場合にも,誤った時刻設定がなされるのが防止され」,その結果,「全体として正確なログ情報の管理を行うことができ」るという発明であることからすれば,引用発明の「予め設定された定期的な」“ログ情報”の「収集タイミング」を,引用文献2,4,6に記載されているような,「時刻同期」の観点から決定される“周期”とする動機付けもないといえる。 以上のことから,引用発明に,引用文献2?4,6の技術を適用して,上記相違点1,3,4に係る構成を当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。 また,上記の点は,さらに引用文献5の記載を参照しても,容易に想到し得たこととはいえない。 したがって,その他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2?5について 本願発明2?5は,本願発明1を減縮した発明であり,上記相違点1,3,4に係る構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明6について 本願発明6は,本願発明1?5のいずれかを引用して「スレーブ装置」の発明として記載したものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明7について 本願発明7は,本願発明5を引用して「情報処理装置」の発明として記載したものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 5.本願発明8について 本願発明8は,本願発明1?5のいずれかのマスタ装置と,本願発明6のスレーブ装置と,本願発明7の情報処理装置とを備えるイベントログ収集システムであり,上記相違点1,3,4に係る構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 6.本願発明9?11について 本願発明9?11は,それぞれ,本願発明1,2,6に対応する方法の発明であり,本願発明1,2,6とカテゴリ表現が異なるだけの発明であるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 7.本願発明12,13について 本願発明12,13は,それぞれ,本願発明1,6に対応する制御プログラムの発明であり,本願発明1,6とカテゴリ表現が異なるだけの発明であるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は,請求項1?11について上記引用文献1?5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,令和2年10月7日付け手続補正により補正された請求項1?13は,上記相違点1,3,4に係る構成を有するものとなっており,上記のとおり,本願発明1?13は,上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1.特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 当審では,請求項1の「前記所定の周期は,前記EtherCATの通信規格を用いた通信の周期と前記スレーブ装置の台数とを参照することにより決定され」との記載に関して,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとの拒絶の理由を通知しているが,令和2年10月7日付けの補正において,上記記載が削除された結果,この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明1?13は,当業者が引用発明及び引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-01-22 |
出願番号 | 特願2016-36447(P2016-36447) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
P 1 8・ 536- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 三坂 敏夫 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 小林 秀和 |
発明の名称 | マスタ装置、スレーブ装置、情報処理装置、イベントログ収集システム、マスタ装置の制御方法、スレーブ装置の制御方法、および制御プログラム |
代理人 | 村上 尚 |