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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1370729
審判番号 不服2020-2471  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-25 
確定日 2021-02-16 
事件の表示 特願2018-132387「トランジスタ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月25日出願公開、特開2018-166220、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年1月21日(優先権主張平成25年1月21日、平成25年3月15日)に出願された特許出願(特願2014-8329号、以下、「原出願」という。)の一部を、平成30年7月12日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願としたものであって、平成30年8月8日付けで上申書が提出され、平成31年4月17日付けで拒絶理由通知がされ、令和1年6月20日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、令和1年8月5日付けで拒絶理由通知がされ、令和1年10月18日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され令和1年11月14日付けで拒絶査定(原査定)がされた。
これに対し、令和2年2月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和2年9月16日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年11月17日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、令和2年11月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ゲート電極と、
前記ゲート電極上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に接する、InとGaとZnとを有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜上に接する、InとGaとZnとを有する酸化物膜と、
前記酸化物膜上の第1の電極と、
前記酸化物膜上の第2の電極と、
前記酸化物膜上、前記第1の電極上、及び前記第2の電極上の酸化物絶縁膜と、を有し、
前記酸化物膜は、非単結晶構造であり且つc軸配向した結晶を有し、
前記酸化物膜のInに対するGaの原子数比は、前記酸化物半導体膜のInに対するGaの原子数比よりも大きく、
前記酸化物半導体膜の厚さは、前記酸化物膜の厚さよりも厚く、
前記酸化物膜の伝導帯下端のエネルギーと、前記酸化物半導体膜の伝導帯下端のエネルギーとの差が、0.1eV以上であることを特徴とするトランジスタ。」

なお、本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第2011/132769号)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「技術分野
[0001] 本発明は、半導体装置およびそれを用いたRFIDタグ、表示装置などの電子装置に関し、特に、酸化物半導体をチャネル層に用いた薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を有する半導体装置に適用して有効な技術に関するものである。」

「発明が解決しようとする課題
[0011] 酸化物半導体をチャネル層に用いた薄膜トランジスタで回路を形成する場合、低消費電力駆動の観点からは、小さいサブスレッショルド係数が要求され、高速動作の観点からは、高いオン電流および高い電界効果移動度が要求される。また、回路の安定動作のためには、しきい電位の制御が要求される。
・・・
[0015] 本発明の目的は、酸化物半導体をチャネル層に用いた薄膜トランジスタにおいて、100mV/decade以下のサブスレッショルド係数と、単層チャネル構造に比べて2倍以上高いオン電流および電界効果移動度を共に実現する技術を提供することにある。」

「発明の効果
[0019] 本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
[0020] 100mV/decade以下のサブスレッショルド係数と、高いオン電流および電界効果移動度とを備えた薄膜トランジスタを有する半導体装置を実現することができる。」

「[0023] (実施の形態1)
本実施の形態1は、ボトムゲート/トップコンタクト型薄膜トランジスタに適用したものである。ここで、ボトムゲートとは、ゲート電極がチャネル層よりも下層に配置される構造を示し、トップコンタクトとは、ソース電極およびドレイン電極がチャネル層よりも上層に配置される構造を示している。以下、ボトムゲート/トップコンタクト型薄膜トランジスタの製造方法を工程順に説明する。

[0024] まず、図1に示すように、絶縁性の基板10を用意する。基板10の材料としては、例えばシリコン(Si)、サファイア、石英、ガラス、フレキシブルな樹脂シート(いわゆるプラスチックフィルム)などを例示することができる。・・・
[0025] 次に、図2に示すように、基板10上に導電膜を形成した後、この導電膜をパターニングすることによりゲート電極11を形成する。ゲート電極11を構成する導電膜としては、例えばモリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、銀(Ag)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、金(Au)、白金(Pt)のような金属の単層膜、これらの金属の合金膜、これらの金属の積層膜を例示することができる。・・・
[0027] 次に、図3に示すように、ゲート電極11が形成された基板10上にゲート絶縁膜12を形成する。
・・・
[0030] 次に、図4に示すように、ゲート絶縁膜12上に酸化物半導体層13を形成した後、フォトレジスト膜をマスクに用いたウェットエッチングで酸化物半導体層13をパターニングすることにより、ゲート電極11の上部とその近傍の領域に酸化物半導体層13を残す。
[0031] 上記酸化物半導体層13は、薄膜トランジスタのチャネル層を構成する半導体層であり、少なくともInと酸素(O)とを含み、さらにZn、カドミウム(Cd)、Al、Ga、Si、Sn、セリウム(Ce)、ゲルマニウム(Ge)のうち、いずれか一種以上の元素を含む化合物である。酸化物半導体層13の形成は、スパッタリング法、CVD法、パルスレーザーデポジション(Pulsed Laser Deposition:PLD)法、塗布法、印刷法、共蒸着法などにより行なう。また、酸化物半導体層13を形成した後、薄膜トランジスタの性能を向上させるために、基板10にアニール処理を施してもよい。
[0032] 上記酸化物半導体層13を形成する際は、酸化物半導体層13に含まれるIn元素の濃度が膜厚方向に沿って一様になるように成膜するのではなく、酸化物半導体層13内の一部にIn濃度の高い領域(図4に示す高濃度領域13d)が生じるように、In濃度プロファイルを制御しながら成膜する。このとき、酸化物半導体層13内において、In濃度の高い領域(高濃度領域13d)と他の領域のIn濃度差は、酸素元素以外の構成元素で算出した場合、最大で30原子%以上とする。すなわち、酸化物半導体層13内において、In濃度の高い領域(高濃度領域13d)は、酸素元素以外の構成元素で算出した場合、他の領域に比べてIn濃度が30原子%以上高い極大値を持つように成膜される。
[0033] 酸化物半導体層13の全体の膜厚は、100nm以下とする。また、高濃度領域13dの膜厚は20nm以下とし、好ましくは6nm以下とする。本実施の形態では、In-Sn-Ga-Zn-Al-Oを同時に成膜できる多元スパッタリング装置を用い、ゲート絶縁膜12上に膜厚25nmの酸化物半導体層13を堆積する。また、このとき、ゲート電極11に最も近接した領域、すなわちゲート絶縁膜12と接する領域に膜厚6nmの高濃度領域13dを形成する。なお、酸化物半導体層13内におけるIn濃度プロファイルの制御は、スパッタ条件を制御することによって行うが、共蒸着法によっても、目的の濃度に制御することが可能である。
[0034] 次に、図5に示すように、酸化物半導体層13上に導電膜を形成した後、この導電膜をパターニングすることによりソース電極14sおよびドレイン電極14dを形成する。ソース電極14sおよびドレイン電極14dを構成する導電膜としては、前述したゲート電極11を構成する各種導電膜を例示することができる。導電膜の形成は、CVD法、スパッタリング法、蒸着法などにより行い、導電膜のパターニングは、フォトレジスト膜をマスクに用いたドライエッチングまたはウェットエッチングにより行う。
[0035] その後、ドライエアー雰囲気中において125℃、3時間のアニールを実施することにより、本実施の形態1の薄膜トランジスタが完成する。この薄膜トランジスタのチャネル長は0.1mmであり、チャネル幅は2mmである。
[0036] 図6は、上記の方法で作製した薄膜トランジスタのゲート絶縁膜12と酸化物半導体層13との界面近傍における構成元素の組成分布を、エネルギー分散型X線スペクトロスコピー(EDX)法により分析した結果を示したものである。
[0037] 分析した元素は、酸化物半導体層13中の酸素を除いた構成元素(In、Sn、Ga、Zn、Al)と、ゲート絶縁膜12中の酸素を除いた構成元素(Si)である。分析に使用したビーム径は1nm以下とし、1.5nmピッチで分析が可能となる。図6の横軸の原点(0)は、ゲート絶縁膜12と酸化物半導体層13との界面とした。
[0038] 図6に示すように、ゲート絶縁膜12との界面から6nmまでの領域にIn濃度の高い領域(高濃度領域13d)が形成されていることが確認できる。このとき、高濃度領域13d内におけるIn濃度のピーク値と、酸化物半導体層13内の他の領域におけるIn濃度との差は、30原子%以上であった。
[0039] 図7は、上記の方法で作製した薄膜トランジスタのゲート電圧(Vg)とドレイン電流(Id)との関係を示すグラフである。図7に示すように、この薄膜トランジスタのサブスレッショルド係数は、68mV/decadeであった。また、電界効果移動度は50cm^(2)/Vs以上を示し、オン電流は2×10^(-4)Aを示した。
[0040] (比較例1)
酸化物半導体層13内において、高濃度領域13dのIn濃度のピーク値と、他の領域のIn濃度との差を30原子%未満とした以外は、上記実施の形態1と同一の条件で薄膜トランジスタを作製した。
[0041] 図8は、比較例1の薄膜トランジスタのゲート絶縁膜12と酸化物半導体層13との界面近傍における構成元素の組成分布を、エネルギー分散型X線スペクトロスコピー(EDX)法により分析した結果を示したものである。
[0042] 分析した元素は、酸化物半導体層13中の酸素を除いた構成元素(In、Sn、Ga、Zn、Al)と、ゲート絶縁膜12中の酸素を除いた構成元素(Si)である。分析に使用したビーム径は1nm以下とした。図8の横軸の原点(0)は、ゲート絶縁膜12と酸化物半導体層13との界面とした。
[0043] 図8に示すように、ゲート絶縁膜12との界面から6nmまでの領域にIn濃度の高い領域(高濃度領域13d)が形成されていることが確認できる。このとき、高濃度領域13d内におけるIn濃度の極大値と、他の領域のIn濃度との差は、30原子%未満であった。また、この薄膜トランジスタのサブスレッショルド係数は、150mV/decadeであった。電界効果移動度は50cm^(2)/Vs以上を示し、オン電流は2×10^(-4)Aを示した。
[0044] この結果から、酸化物半導体層13内において、高濃度領域13dと他の領域のIn濃度差が小さくなると、電界効果移動度やオン電流には変化がないものの、サブスレッショルド係数が著しく増加することが分かった。その理由として、酸化物半導体層13内の他の領域(高濃度領域13d以外の領域)でもIn濃度が比較的高くなるため、キャリア伝導に起因するIn元素の5s電子が上記他の領域でもキャリアのネットワークを形成できるようになる。その結果、見掛け上、酸化物半導体層13全体が膜厚の大きい単層のチャネル層として機能するためと推測される。
[0045] このように、酸化物半導体層13内の高濃度領域13dにおけるIn濃度の極大値と、他の領域のIn濃度との差を30原子%以上とすることにより、100mV/decade以下のサブスレッショルド係数と、50cm^(2)/Vs以上の高い電界効果移動度と、2×10^(-4)A以上のオン電流とを示す薄膜トランジスタを実現することができる。従って、実施の形態1の薄膜トランジスタを使って回路を形成することにより、低電圧で高速動作が可能な高性能薄膜トランジスタ回路を実現することが可能となる。」

「[0046](実施の形態2)
前記実施の形態1と同様の材料、プロセスを用い、高濃度領域(13d)の膜厚が(1)6nm以下、(2)20nm、(3)50nmである3種の薄膜トランジスタを作製し、高濃度領域の膜厚とサブスレッショルド係数との関係を調べた。ここでは、高濃度領域におけるIn濃度の極大値と、他の領域のIn濃度との差を40原子%以上とした。図9にその結果を示す。また、比較のために、In-Ga-Zn-O(IGZO)からなる酸化物半導体層の膜厚とサブスレッショルド係数との関係も図9に示した。
[0047] 図9に示すように、高濃度領域の膜厚が6nm以下のとき、サブスレッショルド係数は70mV/decade程度を示し、膜厚が20nmのときは、100mV/decade以下を示した。高濃度領域の膜厚が増加するにつれてサブスレッショルド係数が増加し、膜厚が50nmのときは、約200mV/decadeを示した。また、In-Ga-Zn-O(IGZO)からなる単層の酸化物半導体層の場合は、その膜厚が25nmのとき、サブスレッショルド係数が200mV/decade以上となった。
[0048] これらの結果から、100mV/decadeのサブスレッショルド係数を実現するためには、高濃度領域の膜厚を20nm以下にしなければならないことが分かる。また、高濃度領域の膜厚を6nm以下にすることで、より小さいサブスレッショルド係数を実現できることが分かる。なお、高濃度領域の膜厚を薄くし過ぎると上記の効果が小さくなるので、高濃度領域の膜厚は、少なくとも3nm以上とすることが望ましい。
[0049] このように、膜厚が20nm以下の高濃度領域におけるIn濃度の極大値と、他の領域のIn濃度との差を40原子%以上とすることにより、100mV/decade以下のサブスレッショルド係数と、50cm^(2)/Vs以上の高い電界効果移動度と、2×10^(-4)A以上のオン電流とを示す薄膜トランジスタを実現することができる。従って、この薄膜トランジスタを使って回路を形成することにより、低電圧で高速動作が可能な高性能薄膜トランジスタ回路を実現することが可能となる。」

「[0064] (実施の形態6)
本実施の形態6は、ボトムゲート/ボトムコンタクト型薄膜トランジスタに適用したものである。ここで、ボトムゲートとは、ゲート電極がチャネル層よりも下層に配置される構造を示し、ボトムコンタクトとは、ソース電極およびドレイン電極がチャネル層よりも下層に配置される構造を示している。
[0065] ボトムゲート/ボトムコンタクト型薄膜トランジスタを製造するには、まず、図16に示すように、基板10上にゲート電極11、ゲート絶縁膜12、ソース電極14sおよびドレイン電極14dをこの順で形成する。使用する材料およびプロセスは、前記実施の形態1と同じである。
[0066] 次に、図17に示すように、前記実施の形態1のプロセスを用いてソース電極14sおよびドレイン電極14dの上部に酸化物半導体層13を形成する。本実施の形態6の酸化物半導体層13は、In-Ce-Zn-Sn-Oからなり、その膜厚は50nmである。また、前記実施の形態1?5の薄膜トランジスタは、いずれもゲート電極11側の酸化物半導体層13内に高濃度領域13dを形成しているが、本実施の形態6では、ゲート電極11から離れた側の酸化物半導体層13内に高濃度領域13dを形成する。この高濃度領域13dの膜厚は、10nmである。」

「[0070] (実施の形態7)
本実施の形態7は、トップゲート/トップコンタクト型薄膜トランジスタに適用したものである。ここで、トップゲートとは、ゲート電極がチャネル層よりも上層に配置される構造を示し、トップコンタクトとは、ソース電極およびドレイン電極がチャネル層よりも上層に配置される構造を示している。
[0071] トップゲート/トップコンタクト型薄膜トランジスタを製造するには、まず、図19に示すように、基板10上に酸化物半導体層13を形成する。本実施の形態7の酸化物半導体層13は、共蒸着法で堆積したIn-Zn-Sn-Oからなり、その膜厚は50nmである。また、高濃度領域13dは、後の工程で形成するゲート電極11から離れた側(基板10に近い側)に形成し、その膜厚は5nmである。」

図4?6は、以下のとおりのものである。
図4、5から、高濃度領域13dは、ゲート絶縁膜12上に接する領域であることが見てとれる。
図5から、ソース電極14sおよびドレイン電極14dは、酸化物半導体層13の高濃度領域13d以外の領域の上に形成されていることが見てとれる。



したがって、上記引用文献1には、実施の形態1のトランジスタとして、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ゲート電極11と、
ゲート電極11上のゲート絶縁膜12と、
ゲート絶縁膜上に形成された酸化物半導体層13であって、
少なくともInと酸素(O)とを含む、In-Sn-Ga-Zn-Al-Oからなり、
酸化物半導体層13内の一部に、ゲート絶縁膜12上に接する、In濃度の高い領域(高濃度領域13d)が形成されている酸化物半導体層13と、
酸化物半導体層13のIn濃度の高い領域(高濃度領域13d)以外の領域の上のソース電極14s及びドレイン電極14dと、を有する薄膜トランジスタであって、
酸化物半導体層13を形成する際は、酸化物半導体層13内において、In濃度の高い領域(高濃度領域13d)は、酸化物半導体層13内において、酸素元素以外の構成元素(In、Sn、Ga、Zn、Al)で算出した場合、他の領域に比べてIn濃度が30原子%以上高い極大値を持つように成膜される、薄膜トランジスタ。」

2.引用文献2について
また、原査定で周知技術を示す文献として引用された引用文献2(特開2013-9285号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0093】
(実施の形態5)
本実施の形態では、信号処理回路を構成するトランジスタ等の構成について、図6乃至図9、図17を参照して説明する。
・・・
【0101】
図6におけるトランジスタ662は、絶縁層628上に形成された酸化物半導体層644と、酸化物半導体層644と一部が接する電極642a及び電極642bと、酸化物半導体層644と電極642aと電極642bとを覆うゲート絶縁層646と、ゲート絶縁層646上に酸化物半導体層644と重畳するように設けられたゲート電極648とを有する。電極642aは、絶縁層628に設けられた開口部に形成された電極503によってトランジスタ660の金属化合物領域624bと接続されている。
・・・
【0113】
また、図6や図7に示す構成では、ゲート電極648が酸化物半導体層644の上に配置される例を示した。しかしこれに限定されず、ゲート電極648は酸化物半導体層644の下に設けてもよい。ゲート電極648を酸化物半導体層644の下に設けた例を図8に示す。なお、図8において図6や図7と同じ部分は同じ符号を用いて示す。」

「【0128】
(実施の形態6)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る記憶素子の作製方法について、図10乃至図15を参照して説明する。
【0129】
図6に示した記憶素子の作製方法の一例について説明する。以下では、はじめに下部のトランジスタ660の作製方法について図10及び図11を参照して説明し、その後、上部のトランジスタ662及び容量素子664の作製方法について図12乃至図15を参照して説明する。
・・・
【0149】
〈上部のトランジスタの作製方法〉
次に、上部トランジスタ662及び容量素子664の作製方法について説明する。図6に示した構成に対応する作製方法を図12を参照して説明する。図7に示した構成に対応する作製方法を図13を参照して説明する。図8に示した構成に対応する作製方法を図14を参照して説明する。図9に示した構成に対応する作製方法を図15を参照して説明する。
【0150】
最初に、図6に示した構成に対応する作製方法を図12を参照して説明する。
・・・
【0212】
以上により、高純度化された酸化物半導体層644を用いたトランジスタ662と、容量素子664とが完成する(図12(C)参照)。上述した作製方法により、酸化物半導体層644は水素濃度が十分に低減されて高純度化され、十分な酸素の供給により酸素欠乏に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減される。こうして作製された酸化物半導体層644は、i型化(真性化)または実質的にi型化されており、このような酸化物半導体層644をチャネル形成領域に用いることで、極めて優れたオフ電流特性のトランジスタ662を得ることができる。
【0213】
次に、ゲート絶縁層646、ゲート電極648、及び電極649上に、絶縁層650及び絶縁層654を形成する(図12(D)参照)。絶縁層650及び絶縁層654は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、絶縁層650及び絶縁層654は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて、単層または積層で形成することができる。
・・・
【0224】
次に、図8に示した構成に対応する作製方法を図14を参照して説明する。
【0225】
図12に示した作製方法と図14に示した作製方法とでは、ゲート電極648、電極649、電極504、ゲート絶縁層646の作製方法が異なる。図14に示した作製方法において、それ以外の作製方法以外の作製方法は図12に示した作製方法と同様であるため説明は省略する。
【0226】
電極502、電極503及び絶縁層628上に導電層を形成し、当該導電層を選択的にエッチングして、ゲート電極648、電極649、電極504を形成する(図14(A)参照)。当該導電層は、図12に示した作製方法において、ゲート電極648、電極649を形成するために用いた導電層と同様の材料とし、同様の方法で作製することができるので説明は省略する。
【0227】
次いで、ゲート電極648、電極649、電極504を覆うようにゲート絶縁層646を形成する(図14(B)参照)。ゲート絶縁層646は図12に示した作製方法においてゲート絶縁層646を形成するために用いた材料と同様の材料を用いて、同様の方法で作製することができるので説明は省略する。
【0228】
次いで、ゲート絶縁層646上に、酸化物半導体層644を形成する(図14(B)参照)。酸化物半導体層644は、図12に示した作製方法において酸化物半導体層644を形成するために用いた酸化物半導体層と同様の材料とし、同様の方法で作製することができるので説明は省略する。
【0229】
次に、酸化物半導体層644上に導電層を形成し、当該導電層を選択的にエッチングして、電極642a、電極642bを形成する(図14(C)参照)。当該導電層は、図12に示した作製方法において、電極642a、電極642bを形成するために用いた導電層と同様の材料とし、同様の方法で作製することができるので説明は省略する。
【0230】
これ以降の作製工程は図12で示した工程と同様であるため説明は省略する。
【0231】
以上の工程より、図8に示すような構成の記憶素子を作製することができる。」

「【0240】
(実施の形態7)
トランジスタ662の酸化物半導体層644の一形態を、図16を用いて説明する。
【0241】
本実施の形態の酸化物半導体層は、第1の結晶性酸化物半導体層上に第1の結晶性酸化物半導体層よりも厚い第2の結晶性酸化物半導体層を有する積層構造である。
・・・
【0243】
次に、絶縁層437上に膜厚1nm以上10nm以下の第1の酸化物半導体膜を形成する。第1の酸化物半導体膜の形成は、スパッタリング法を用い、そのスパッタリング法による成膜時における基板温度は200℃以上400℃以下とする。
【0244】
本実施の形態では、酸化物半導体用ターゲット(In-Ga-Zn-O系酸化物半導体用ターゲット(In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol数比])を用いて、基板とターゲットの間との距離を170mm、基板温度250℃、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素のみ、アルゴンのみ、又はアルゴン及び酸素雰囲気下で膜厚5nmの第1の酸化物半導体膜を成膜する。
【0245】
次いで、基板を配置するチャンバー雰囲気を窒素、または乾燥空気とし、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下とする。第1の加熱処理によって第1の結晶性酸化物半導体層450aを形成する(図16(A)参照)。
【0246】
成膜時の基板温度や第1の加熱処理の温度にもよるが、第1の加熱処理によって、膜表面から結晶化が起こり、膜の表面から内部に向かって結晶成長し、C軸配向した結晶が得られる。第1の加熱処理によって、亜鉛と酸素が膜表面に多く集まり、上平面が六角形をなす亜鉛と酸素からなるグラフェンタイプの二次元結晶が最表面に1層または複数層形成され、これが膜厚方向に成長して重なり積層となる。加熱処理の温度を上げると表面から内部、そして内部から底部と結晶成長が進行する。
【0247】
第1の加熱処理によって、酸化物絶縁層である絶縁層437中の酸素を第1の結晶性酸化物半導体層450aとの界面またはその近傍(界面からプラスマイナス5nm)に拡散させて、第1の結晶性酸化物半導体層の酸素欠損を低減する。
【0248】
次いで、第1の結晶性酸化物半導体層450a上に10nmよりも厚い第2の酸化物半導体膜を形成する。第2の酸化物半導体膜の形成は、スパッタリング法を用い、その成膜時における基板温度は200℃以上400℃以下とする。成膜時における基板温度を200℃以上400℃以下とすることにより、第1の結晶性酸化物半導体層の表面上に接して成膜する第2の酸化物半導体膜にプリカーサの整列が起きる。
【0249】
本実施の形態では、酸化物半導体用ターゲット(In-Ga-Zn-O系酸化物半導体用ターゲット(In_(2)O_(3):Ga_(2)O_(3):ZnO=1:1:2[mol数比])を用いて、基板とターゲットの間との距離を170mm、基板温度400℃、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素のみ、アルゴンのみ、又はアルゴン及び酸素雰囲気下で膜厚25nmの第2の酸化物半導体膜を成膜する。
【0250】
次いで、基板を配置するチャンバー雰囲気を窒素、または乾燥空気とし、第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下とする。第2の加熱処理によって第2の結晶性酸化物半導体層450bを形成する(図16(B)参照)。第2の加熱処理は、窒素雰囲気下、酸素雰囲気下、或いは窒素と酸素の混合雰囲気下で行うことができる。第2の加熱処理によって、第1の結晶性酸化物半導体層450aを核として膜厚方向、即ち底部から内部に結晶成長が進行して第2の結晶性酸化物半導体層450bが形成される。
・・・
【0252】
次いで、第1の結晶性酸化物半導体層450aと第2の結晶性酸化物半導体層450bからなる酸化物半導体積層を加工して島状の酸化物半導体積層からなる酸化物半導体層453を形成する(図16(C)参照)。図では、第1の結晶性酸化物半導体層450aと第2の結晶性酸化物半導体層450bの界面を点線で示し、酸化物半導体積層と説明しているが、明確な界面が存在しているのではなく、あくまで分かりやすく説明するために図示している。
・・・
【0255】
また、上記作製方法により、得られる第1の結晶性酸化物半導体層及び第2の結晶性酸化物半導体層は、C軸配向を有していることを特徴の一つとしている。ただし、第1の結晶性酸化物半導体層及び第2の結晶性酸化物半導体層は、単結晶構造ではなく、非晶質構造でもない構造であり、C軸配向を有した結晶(C Axis Aligned Crystal; CAACとも呼ぶ)を含む酸化物を有する。なお、第1の結晶性酸化物半導体層及び第2の結晶性酸化物半導体層は、一部に結晶粒界を有している。
【0256】
なお、第1及び第2の結晶性酸化物半導体層は、上述の実施の形態において示した酸化物半導体によって形成することができる。
【0257】
また、第1の結晶性酸化物半導体層上に第2の結晶性酸化物半導体層を形成する2層構造に限定されず、第2の結晶性酸化物半導体層の形成後に第3の結晶性酸化物半導体層を形成するための成膜と加熱処理のプロセスを繰り返し行って、3層以上の積層構造としてもよい。
【0258】
上記作製方法で形成された酸化物半導体積層からなる酸化物半導体層453を、図6乃至図9に示した酸化物半導体層644として用いることができる。
【0259】
また、酸化物半導体層644として本実施の形態の酸化物半導体積層を用いたトランジスタにおいては、電流は、主として酸化物半導体積層の界面を流れるトランジスタ構造であるため、トランジスタに光照射が行われ、またはBTストレスが与えられても、トランジスタ特性の劣化は抑制される、または低減される。
【0260】
酸化物半導体層453のような第1の結晶性酸化物半導体層と第2の結晶性酸化物半導体層の積層をトランジスタに用いることで、安定した電気的特性を有し、且つ、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0261】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。」

図6、8は、以下のとおりのものである。


したがって、上記引用文献2には、図8に示されるトランジスタ662において、実施の形態7の、酸化物半導体層644として、酸化物半導体積層からなる酸化物半導体層453を用いたものとして、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「酸化物半導体からなるトランジスタ662であって、
酸化物半導体層644は、第1の結晶性酸化物半導体層上に第1の結晶性酸化物半導体層よりも厚い第2の結晶性酸化物半導体層を有する積層構造であり、
第1の結晶性酸化物半導体層及び第2の結晶性酸化物半導体層は、c軸配向した結晶を有し、
酸化物半導体層644、電極642a及び電極642b上に、酸化シリコン等を含む材料からなる絶縁層650を備えるトランジスタ662。」

3.引用文献3について
また、原査定で周知技術を示す文献として引用された引用文献3(特開2012-134472号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0064】
(実施の形態2)
本実施の形態では、酸化物半導体層と当該酸化物半導体層の一部と接する絶縁層との界面状態が良好なボトムゲート型トランジスタの作製方法の一例について図2を用いて説明する。
【0065】
図2(A)に示すように、基板200上にゲート電極層201を形成する。
・・・
【0067】
次いで、ゲート電極層201を覆うゲート絶縁層202を形成する。なお、ゲート絶縁層202に用いる材料として、酸化窒化珪素膜(SiO_(x)N_(y)とも呼ぶ、ただし、x>y>0)がより好適である。ゲート絶縁層202を形成した後、N_(2)OまたはN_(2)などのガスを用いたプラズマ処理を行う。プラズマ処理を行うことによってゲート絶縁層202の表面近傍に窒素が添加される。窒素が添加されたゲート絶縁層202aの窒素濃度は、窒素が添加されていないゲート絶縁層202bの窒素濃度に比べて高くなる。
・・・
【0071】
次いで、図2(B)に示すようにゲート絶縁層202上に接して酸化物半導体層を形成する。酸化物半導体層は、酸素ガスと希ガスの混合雰囲気、酸素と窒素の混合雰囲気、希ガスのみの雰囲気でのスパッタリング法により成膜する。
【0072】
次いで、酸化物半導体層を加工して島状の酸化物半導体層203を形成する。酸化物半導体積層の加工は、当該酸化物半導体層上にフォトリソグラフィ技術またはインクジェット法により所望の形状のマスクを形成し、当該マスクを用いて当該酸化物半導体層を選択的にエッチングすることで、形成することができる。
【0073】
このように、窒素が添加されたゲート絶縁層202aに接して酸化物半導体層203を設けることによって、当該窒素が添加されたゲート絶縁層202aと接する酸化物半導体層203の界面近傍にもまた、結晶性の高い酸化物半導体層207を形成することができる。
【0074】
酸化物半導体層において、窒素を多く含む領域(結晶性の高い酸化物半導体層207)は、窒素を多く含まない領域に比べてエネルギーギャップが小さく、キャリアを流しやすい。プラズマ処理を行うことによってゲート絶縁層の表面近傍に窒素を添加することで、酸化物半導体層のキャリアが流れる領域に窒素を多く含ませ、その他の領域に含まれる窒素を少なくすることができる。
【0075】
また、結晶性の高い酸化物半導体層207に含まれる結晶は、六方晶のウルツ鉱型結晶構造である。
【0076】
即ち、窒素が添加されたゲート絶縁層202aと酸化物半導体層203との界面近傍領域212は、他の領域に比べて結晶性が高くなる。更に当該界面近傍領域212は、他の領域に比べて均一性が高くなる。また、ゲート絶縁層202と酸化物半導体層203との界面には未結合手に起因する界面準位が少なくなるため、良好な界面状態を実現できる。
【0077】
次いで酸化物半導体層203上に、導電膜を形成する。導電膜はスパッタリング法や真空蒸着法で形成することができる。導電膜に用いる材料としては、Al、Cu、Cr、Ta、Ti、Mo、Wなどの金属材料、または該金属材料を成分とする合金材料で形成する。また、Al、Cuなどの金属層の下側もしくは上側の一方または双方にCr、Ta、Ti、Mo、Wなどの高融点金属層を積層させた構成としても良い。
【0078】
次いで、導電膜上に、フォトリソグラフィ技術またはインクジェット法により所望の形状のマスクを形成し、当該マスクを用いて当該導電膜を選択的にエッチングすることで、ソース電極層204またはドレイン電極層205を形成することができる。なお、エッチングの際、酸化物半導体層203の一部が、削られてもよい。
【0079】
ソース電極層204またはドレイン電極層205を形成した後、減圧下で加熱処理を行う。減圧下での加熱処理を行うことによって、酸化物半導体層203に含まれる過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去することができる。減圧下での加熱処理を行った後、酸素プラズマ処理を行う。酸素プラズマ処理を行うことによって露出した酸化物半導体層203の表面近傍に酸素が添加される。酸素が添加された酸化物半導体層203aの酸素濃度は、酸素が添加されていない酸化物半導体層203bの酸素濃度に比べて高くなる。
【0080】
図2(C)に示すように、酸素プラズマ処理を行った後、スパッタリング法により、ソース電極層204またはドレイン電極層205を覆い、且つ酸化物半導体層203の一部に接する保護絶縁層206を形成する。加熱により酸素の一部が放出する保護絶縁層206は、スパッタリング法を用いることで形成しやすいため好ましい。加熱により酸素の一部が放出する保護絶縁層206をスパッタリング法により形成する場合は、成膜ガス中の酸素量が高いことが好ましく、酸素、または酸素及び希ガスの混合ガス等を用いることができる。代表的には、成膜ガス中の酸素濃度を6%以上100%以下にすることが好ましい。
【0081】
保護絶縁層206としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、及び酸化ガリウムのいずれか一層もしくは積層を用いることができる。
・・・
【0084】
以上の工程で酸化物半導体層と当該酸化物半導体層と接する絶縁層との界面状態が良好なボトムゲート型トランジスタ211を作製することができる。
【0085】
次に、図3(B)に示す、窒素濃度プロファイルを用いて、酸化物半導体層と当該酸化物半導体層と接する絶縁層との界面付近の窒素濃度の状態について、詳細に説明する。また図3(C)に示す、酸素濃度プロファイルを用いて、酸化物半導体層と当該酸化物半導体層と接する絶縁層との界面付近の酸素濃度の状態について、詳細に説明する。図3(B)及び図3(C)は図2(C)において鎖線で切断した場合における膜厚方向における窒素濃度プロファイル及び酸素濃度プロファイルを示す模式図である。図3(B)及び図3(C)における第1の絶縁層が図2(C)におけるゲート絶縁層であり、図3(B)及び図3(C)における第2の絶縁層が図2(C)における保護絶縁層である。ただし、図3(B)及び図3(C)において窒素濃度と酸素濃度はそれぞれ異なる濃度であり、図3(B)の窒素濃度プロファイルと図3(C)の酸素濃度プロファイルは、それぞれの相対関係を示している模式図であり、どちらの濃度が高い、若しくは低い等を示しているものではない。プロファイルが比較できるように、図3(C)には図3(B)の窒素濃度プロファイルが示されている。
・・・
【0094】
酸化物半導体層と第1の絶縁層との界面は、窒素濃度のピークを有するため、最も結晶性が高くなる。その結果、酸化物半導体層と第1の絶縁層との界面には未結合手に起因する界面準位が少なくなるため、良好な界面状態を実現できる。従って、酸化物半導体層と第1の絶縁層との界面が非晶質状態である場合と比べて、トランジスタの電気的特性の低下を防ぐことができる。
【0095】
図3(B)に示す窒素濃度プロファイルを有するトランジスタ211は、第1の絶縁層と酸化物半導体層との界面近傍領域212における窒素濃度が高い。従って、当該界面近傍領域212は、他の領域に比べて結晶性が高くなり、しかもc軸配向を有する。このため、より電気的特性(電界効果移動度やしきい値など)の向上したトランジスタ211を得ることができる。また当該界面近傍領域212は他の領域に比べて均一性も高いため、電気的特性のバラツキの少ないトランジスタ211を得ることができる。」

「【0111】
(実施の形態3)
本実施の形態では、酸化物半導体層と当該酸化物半導体層の一部と接する絶縁層との界面状態が良好なボトムゲート型トランジスタの作製方法の一例について図8を用いて説明する。
【0112】
図8(A)に示すように、基板300上にゲート電極層301を形成する。
・・・
【0114】
次いで、ゲート電極層301を覆うゲート絶縁層302を形成する。なお、ゲート絶縁層302に用いる材料として、酸化窒化珪素膜(SiO_(x)N_(y)とも呼ぶ、ただし、x>y>0)がより好適である。ゲート絶縁層302を形成した後、N_(2)OまたはN_(2)などのガスを用いたプラズマ処理を行う。プラズマ処理を行うことによってゲート絶縁層302の表面近傍に窒素が添加される。窒素が添加されたゲート絶縁層302aの窒素濃度は、窒素が添加されていないゲート絶縁層302bの窒素濃度に比べて高くなる。
・・・
【0117】
次いで、図8(B)に示すようにゲート絶縁層302上に接して酸化物半導体層を形成する。なお、酸化物半導体層303を形成する際、成膜室に導入するガスの種類を切り換えることで窒素濃度の高い酸化物半導体層303d、酸化物半導体層303cをそれぞれ形成する。最初に、成膜室に窒素ガスのみを導入し、途中から成膜室に導入するガスの種類を切り換えて、酸素ガスと希ガスの混合雰囲気、酸素と窒素の混合雰囲気、希ガスのみの雰囲気でのスパッタリング法により成膜をする。
・・・
【0120】
次いで、酸化物半導体層を加工して島状の酸化物半導体層303を形成する。酸化物半導体積層の加工は、当該酸化物半導体層上にフォトリソグラフィ技術またはインクジェット法により所望の形状のマスクを形成し、当該マスクを用いて当該酸化物半導体層を選択的にエッチングすることで、形成することができる。
【0121】
酸化物半導体層において、窒素を多く含む領域(窒素濃度の高い酸化物半導体層303d)は、窒素を多く含まない領域(酸化物半導体層303c)に比べてエネルギーギャップが小さく、キャリアを流しやすい。成膜室に導入するガスの種類を切り換えて、加熱をしながら成膜を行って、窒素濃度の高い酸化物半導体層303d及び酸化物半導体層303cを形成することで、酸化物半導体層のキャリアが流れる領域に窒素を多く含ませ、その他の領域に含まれる窒素を少なくすることができる。
【0122】
窒素濃度の高い酸化物半導体層303dを形成する際、成膜時に導入する窒素ガス流量等を制御することで、結晶性の高低の制御や、結晶構造、及び結晶構造に付随するあらゆるパラメータを変化させることが可能になる。
【0123】
また、窒素濃度の高い酸化物半導体層303dに含まれる結晶は、六方晶のウルツ鉱型結晶構造であり、酸化物半導体層303cに含まれる結晶は、六方晶の非ウルツ鉱型結晶構造である。ウルツ鉱型結晶構造と非ウルツ鉱型結晶構造はともに六方晶であるので、c軸方向からは六角形の格子像を確認できる。
【0124】
即ち、窒素が添加されたゲート絶縁層302aと酸化物半導体層303との界面近傍領域314は、他の領域に比べて結晶性が高くなる。更に当該界面近傍領域314は、他の領域に比べて均一性が高くなる。また、ゲート絶縁層302と酸化物半導体層303との界面には未結合手に起因する界面準位が少なくなるため、良好な界面状態を実現できる。
【0125】
次いで酸化物半導体層303上に、導電膜を形成する。導電膜はスパッタリング法や真空蒸着法で形成することができる。導電膜に用いる材料としては、Al、Cu、Cr、Ta、Ti、Mo、Wなどの金属材料、または該金属材料を成分とする合金材料で形成する。また、Al、Cuなどの金属層の下側もしくは上側の一方または双方にCr、Ta、Ti、Mo、Wなどの高融点金属層を積層させた構成としても良い。
【0126】
次いで、導電膜上に、フォトリソグラフィ技術またはインクジェット法により所望の形状のマスクを形成し、当該マスクを用いて当該導電膜を選択的にエッチングすることで、ソース電極層304またはドレイン電極層305を形成することができる。なお、エッチングの際、酸化物半導体層303の一部が、削られてもよい。
【0127】
ソース電極層304またはドレイン電極層305を形成した後、減圧下で加熱処理を行う。減圧下での加熱処理を行うことによって、酸化物半導体層303に含まれる過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去することができる。減圧下での加熱処理を行った後、酸素プラズマ処理を行う。酸素プラズマ処理を行うことによって露出した酸化物半導体層303の表面近傍に酸素が添加される。酸素が添加された酸化物半導体層303aの酸素濃度は、酸素が添加されていない酸化物半導体層303cの酸素濃度に比べて高くなる。
【0128】
図8(C)に示すように、酸素プラズマ処理を行った後、スパッタリング法により、ソース電極層304またはドレイン電極層305を覆い、且つ酸化物半導体層303の一部に接する保護絶縁層306を形成する。加熱により酸素の一部が放出する保護絶縁層306は、スパッタリング法を用いることで形成しやすいため好ましい。加熱により酸素の一部が放出する保護絶縁層306をスパッタリング法により形成する場合は、成膜ガス中の酸素量が高いことが好ましく、酸素、または酸素及び希ガスの混合ガス等を用いることができる。代表的には、成膜ガス中の酸素濃度を6%以上100%以下にすることが好ましい。
【0129】
保護絶縁層306としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、及び酸化ガリウムのいずれか一以上との積層構造を用いることができる。
【0130】
なお、保護絶縁層306の膜厚は、50nm以上、好ましくは200nm以上500nm以下とする。保護絶縁層306を厚くすることで、保護絶縁層306からの酸素放出量を増加させることができると共に、その増加によって保護絶縁層306と酸化物半導体層303との界面における欠陥を低減することが可能である。
【0131】
保護絶縁層306の形成後、必要であれば、水素及び水分をほとんど含まない雰囲気下(窒素雰囲気、酸素雰囲気、乾燥空気雰囲気(例えば、水分については露点-40℃以下、好ましくは露点-60℃以下)など)で加熱処理(温度範囲150℃以上650℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下)を行ってもよい。
【0132】
以上の工程で酸化物半導体層と当該酸化物半導体層と接する絶縁層との界面状態が良好なボトムゲート型トランジスタ313を作製することができる。
【0133】
次に、図9に示す、窒素濃度プロファイルを用いて、酸化物半導体層と当該酸化物半導体層と接する絶縁層との界面付近の窒素濃度の状態について、詳細に説明する。図9は図8(C)において鎖線で切断した場合における膜厚方向における窒素濃度プロファイル及び酸素濃度プロファイルを示す模式図である。図9における第1の絶縁層が図8(C)におけるゲート絶縁層であり、図8(C)における第2の絶縁層が図2における保護絶縁層である。
・・・
【0137】
図3(B)における酸化物半導体層と第1の絶縁層との界面に比べて、図9における酸化物半導体層と第1の絶縁層との界面には窒素が多く含まれており、結晶化が進行する。
【0138】
酸化物半導体層と第1の絶縁層との界面は、窒素濃度のピークを有するため、最も結晶性が高くなる。また当該窒素濃度のピーク値は、図3(B)における窒素濃度のピーク値よりも高くなる。その結果、酸化物半導体層と第1の絶縁層との界面には未結合手に起因する界面準位が少なくなるため、良好な界面状態を実現できる。従って、酸化物半導体層と第1の絶縁層との界面が非晶質状態である場合と比べて、トランジスタの電気的特性の低下を防ぐことができる。
【0139】
また、図9に示す窒素濃度プロファイルを有するトランジスタ313は、第1の絶縁層と酸化物半導体層との界面近傍領域314における窒素濃度が高く、第1の絶縁層と酸化物半導体層との界面における窒素濃度は更に高い。従って、当該界面近傍領域314は、他の領域に比べて結晶性が高くなり、しかもc軸配向を有する。このため、より電気的特性(電界効果移動度やしきい値など)の向上したトランジスタ313を得ることができる。また当該界面近傍領域314は他の領域に比べて均一性も高いため、電気的特性のバラツキの少ないトランジスタ313を得ることができる。」

したがって、上記引用文献3には、実施の形態2、実施の形態3のボトムゲート型トランジスタに関して、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「酸化物半導体からなるトランジスタ211、311において、
酸化物半導体層203、303の、第1の絶縁層(ゲート絶縁層202、302)と酸化物半導体層との界面近傍領域212、314は、c軸配向した結晶を有し、
酸化物半導体層203、303、ソース電極層204、304及びドレイン電極層205、305上に、酸化シリコンなどからなる保護絶縁層206、306を備えるボトムゲート型トランジスタ211、311。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(国際公開第2009/034953号)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0012] 以下、本発明の薄膜トランジスタを図面を参照して説明する。
図1は、結晶質層及び非晶質層を積層してなる酸化物半導体膜を含む本発明の薄膜トランジスタの第1の実施形態を示す概略断面図である。
薄膜トランジスタ1は、基板10及び絶縁膜30の間にゲート電極20を挟持しており、ゲート絶縁膜30上には非晶質層42及び結晶質層44が積層してなる酸化物半導体膜40が活性層として積層されている。さらに、酸化物半導体膜40を覆うようにしてソース電極50及びドレイン電極52がそれぞれ設けられており、酸化物半導体膜40、ソース電極50及びドレイン電極52で囲まれた部分にチャンネル部60を形成している。
尚、図1の薄膜トランジスタ1はいわゆるチャンネルエッチ型薄膜トランジスタである。
[0013] 本発明の薄膜トランジスタ1において、活性層である酸化物半導体膜40は、非晶質層42及び結晶質層44が積層した構造を有する。酸化物半導体膜40が結晶質層44を有することにより、酸素分圧等の周囲の雰囲気の影響を防止でき、薄膜トランジスタ1の安定性を向上させることができる。安定性向上の結果、大気下及び真空下のいずれの雰囲気下であっても、電界効果移動度及びon-off比が高く、また、ノーマリーオフを示すとともに、ピンチオフが明瞭である薄膜トランジスタ1とすることができる。また、薄膜トランジスタ1は高い安定性を有するため、エッチストッパー層を積層する必要がなく、大面積化が可能である。
[0014] 酸化物半導体膜40の膜厚は、通常3?500nmであり、好ましくは5?200nm、より好ましくは10?80nm、特に好ましくは15?60nmである。酸化物半導体膜40の膜厚が3nm未満の場合、膜質が均一な酸化物半導体膜の成膜が困難となるおそれがある。一方、酸化物半導体膜40の膜厚が500nm超の場合、成膜時間が長くなるため、生産効率が落ちるおそれがあり、及び薄膜トランジスタ1がノーマリーオンになり、消費電力が大きくなるおそれがある。
[0015] 非晶質層42の膜厚は、通常1?200nmであり、好ましくは2?100nm、より好ましくは3?70nmである。非晶質層42の膜厚が1nm未満の場合、成膜が困難となるおそれがある。一方、非晶質層42の膜厚が200nm超の場合、非晶質層42の加工精度が低下したり、移動度が低下するおそれがある。
[0016] 結晶質層44の膜厚は、好ましくは2nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上、特に好ましくは20nm以上である。結晶質層44の膜厚が2nm未満の場合、非晶質層42を保護できないおそれがある。
尚、結晶質層44の膜厚の上限としては、200nmが挙げられる。
・・・
[0055] 結晶質層及び非晶質層が含む元素の組み合わせとしては、好ましくは結晶質層がインジウム及び亜鉛を含み、非晶質層がインジウム、亜鉛及びガリウムを含む組み合わせである。」

「[実施例]
[0082] 実施例1
(1)スパッタリングターゲットの製造
原料として、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムの粉末とを、原子比In/(In+Zn+Ga)=0.4、原子比Zn/(In+Zn+Ga)=0.2、原子比Ga/(In+Zn+Ga)=0.4となるように混合し、この混合粉末を湿式ボールミルに供給して、72時間混合粉砕し、原料微粉末を調製した。
得られた原料微粉末を造粒し、直径10cm、厚さ5mmの寸法にプレス成形し、成形体を得た。この成形体を焼成炉に入れ、1450℃、12時間の条件で焼成し、スパッタリングターゲットIを得た。
ターゲットIと同様にして、原子比In/(In+Zn)=0.93、原子比Zn/(In+Zn)=0.07であるスパッタリングターゲットIIを得た。
・・・
[0090] (4)薄膜トランジスタの製造
無アルカリガラス基板上にモリブデンを150nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法を用いパターニングしてゲート電極とした。次に、プラズマ化学気相成長法(PECVD)を用いてSiN_(x)(X=4/3)を200nmの厚さで成膜し、ゲート絶縁膜とした。(1)で製造したターゲットI及びIIを用いて、(2)と同様にして非晶質層及び結晶質層を積層してなる酸化物半導体膜をゲート絶縁膜上に成膜した。リフトオフを用いてPt(100nm)/Ti(10nm)をソース電極及びドレイン電極とした。このようにしてW=50μm、L=5μmである図1の構成を有する薄膜トランジスタが得られた。
・・・
[0093] 実施例2?16
ターゲットI及びIIの組成を表1及び表2に記載の組成としたほかは実施例1と同様にしてターゲットI及びIIを製造した。次に、得られたターゲットI及びIIを用いて、雰囲気ガスの組成、酸素分圧、及び酸化物薄膜I及びIIの膜厚を表1及び表2に記載の値としたほかは実施例1と同様にして酸化物半導体膜及び薄膜トランジスタを製造した。得られた酸化物半導体膜及び薄膜トランジスタについて実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び表2に示す。
[0094] [表1]


[0095] [表2]


請求の範囲
[1] 結晶質層及び非晶質層を積層してなる酸化物半導体膜を含む薄膜トランジスタ。
[2] 前記結晶質層がインジウムを含み、酸素を除く全原子に占める前記インジウムの含有率が90原子%以上100原子%以下である請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
[3] 前記結晶質層が1種以上の正二価の金属元素をさらに含む請求項2に記載の薄膜トランジスタ。
[4] 前記結晶質層が正二価の金属元素として亜鉛を含む請求項3に記載の薄膜トランジスタ。
・・・
[6] 前記非晶質層がインジウム及び亜鉛のうち少なくとも1つを含む請求項1?5のいずれかに記載の薄膜トランジスタ。
[7] 前記非晶質層がインジウム、亜鉛及びガリウムを含む請求項6に記載の薄膜トランジスタ。
[8] 透明基材、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物半導体膜、ソース電極及びドレイン電極を備えてなる薄膜トランジスタにおいて、
前記酸化物半導体膜が結晶質層及び非晶質層の積層体であり、
前記非晶質層がゲート絶縁膜と接し、及び
前記結晶質層が前記非晶質層と接し、かつチャンネル部を隔ててソース電極及びドレイン電極と電気的に接続している薄膜トランジスタ。
・・・
[10] 透明基材、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物半導体膜、ソース電極及びドレイン電極を備えてなる薄膜トランジスタにおいて、
前記酸化物半導体膜が結晶質層及び非晶質層の積層体であり、
前記非晶質層がゲート絶縁膜と接し、
前記結晶質層が前記非晶質層と接し、
前記酸化物半導体膜を覆うように形成された層間絶縁膜を有し、及び
前記層間絶縁膜を貫通するビアホールを有し、前記ビアホールを介して前記ソース電極及びドレイン電極と前記結晶質層が電気的に接続している薄膜トランジスタ。
[11] 透明基材、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物半導体膜、ソース電極及びドレイン電極を備えてなる薄膜トランジスタにおいて、
前記酸化物半導体膜が結晶質層及び非晶質層の積層体であり、
前記非晶質層がゲート絶縁膜と接し、
前記結晶質層が前記非晶質層と接し、
前記酸化物半導体膜を覆うように前記ゲート絶縁膜が形成しており、及び
前記ゲート絶縁膜上に前記ゲート電極を有する薄膜トランジスタ。」

図1は、以下のとおりのものである。


したがって、上記引用文献4には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「結晶質層及び非晶質層を積層してなる積層構造の酸化物半導体膜を含む薄膜トランジスタであって、
前記非晶質層がゲート絶縁膜と接し、
前記結晶質層が前記非晶質層と接し、
結晶質層がインジウム及び亜鉛を含み、非晶質層がインジウム、亜鉛及びガリウムを含み、
非晶質層42の膜厚は、通常1?200nmであり、好ましくは2?100nm、より好ましくは3?70nmであり、
結晶質層44の膜厚は、好ましくは2nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上、特に好ましくは20nm以上であり、
酸化物薄膜II(結晶質層)の膜厚は、例えば、40nmであり、酸化物薄膜I(非晶質層)の膜厚は、例えば、30nmである、薄膜トランジスタ。」

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「ソース電極14s」、「ドレイン電極14d」、「薄膜トランジスタ」、「ゲート電極11」、「ゲート絶縁膜12」は、それぞれ、本願発明1における「第1の電極」、「第2の電極」、「トランジスタ」、「ゲート電極」、「ゲート絶縁膜」に相当する。

イ 本願発明1の「前記ゲート絶縁膜上に接する、InとGaとZnとを有する酸化物半導体膜」と、「前記酸化物半導体膜上に接する、InとGaとZnとを有する酸化物膜」と、引用発明の「ゲート絶縁膜上に形成された酸化物半導体層13であって、少なくともInと酸素(O)とを含む、In-Sn-Ga-Zn-Al-Oからなり、酸化物半導体層13内の一部に、ゲート絶縁膜12上に接する、In濃度の高い領域(高濃度領域13d)が形成されている酸化物半導体層13」とを対比する。
引用発明における「酸化物半導体層13」のうち、「In濃度の高い領域(高濃度領域13d)」、「In濃度の高い領域(高濃度領域13d)以外の領域」は、それぞれ、本願発明1の「『前記ゲート絶縁膜上に接する』、『酸化物半導体膜』」、「『前記酸化物半導体膜上に接する』、『酸化物膜』」に対応する。
また、引用発明における「酸化物半導体層13」は、「少なくともInと酸素(O)とを含む、In-Sn-Ga-Zn-Al-Oからな」るから、本願発明1の「酸化物半導体膜」及び「酸化物膜」とは、「InとGaとZnとを有する」点で共通する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記ゲート絶縁膜上に接する、InとGaとZnとを有する酸化物半導体膜」と、「前記酸化物半導体膜上に接する、InとGaとZnとを有する酸化物膜」を有する点で共通する。

エ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「ゲート電極と、
前記ゲート電極上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に接する、InとGaとZnとを有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜上に接する、InとGaとZnとを有する酸化物膜と、
前記酸化物膜上の第1の電極と、
前記酸化物膜上の第2の電極と、を有するトランジスタ。」

<相違点>
<相違点1>
本願発明1は、「前記酸化物膜上、前記第1の電極上、及び前記第2の電極上の酸化物絶縁膜」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

<相違点2>
本版発明1は、「前記酸化物膜は、非単結晶構造であり且つc軸配向した結晶を有し」という構成を備えるのに対し、引用発明の「酸化物半導体層13の高濃度領域13d以外の領域」はそのような構成を備えていない点。

<相違点3>
本願発明1は、「前記酸化物膜のInに対するGaの原子数比は、前記酸化物半導体膜のInに対するGaの原子数比よりも大きく」という構成を備えるのに対し、引用発明では、「酸化物半導体層13」における、「In濃度の高い領域(高濃度領域13d)以外の領域」と「In濃度の高い領域(高濃度領域13d)」について、Inに対する「Ga」の原子数比について特定されておらず、本願発明1の上記のような構成を備えていない点。

<相違点4>
本願発明1は、「前記酸化物半導体膜の厚さは、前記酸化物膜の厚さよりも厚く」という構成を備えるのに対し、引用発明では、「酸化物半導体層13」における、「In濃度の高い領域(高濃度領域13d)以外の領域」の厚さと、「In濃度の高い領域(高濃度領域13d)」の厚さの大小関係について特定されていない点。

<相違点5>
本願発明1は「前記酸化物膜の伝導帯下端のエネルギーと、前記酸化物半導体膜の伝導帯下端のエネルギーとの差が、0.1eV以上である」という構成を備えるのに対し、引用発明では、「酸化物半導体層13」における、「高濃度領域13d以外の領域」と、「In濃度の高い領域(高濃度領域13d)」、それぞれの伝導帯下端のエネルギーについて特定されておらず、本願発明1の上記のような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点4について先に検討する。

ア 引用文献1には、実施の形態2について、段落[0049]に、「膜厚が20nm以下の高濃度領域におけるIn濃度の極大値と、他の領域のIn濃度との差を40原子%以上とすることにより、100mV/decade以下のサブスレッショルド係数と、50cm^(2)/Vs以上の高い電界効果移動度と、2×10^(-4)A以上のオン電流とを示す薄膜トランジスタを実現することができる。」(下線は合議体が付加した。)と記載されている。
また、引用文献1には、実施の形態1について、段落[0033]に、「酸化物半導体層13の全体の膜厚は、100nm以下とする。また、高濃度領域13dの膜厚は20nm以下とし、好ましくは6nm以下とする。」と記載されており、更に、引用文献1には、膜厚25nmの酸化物半導体層13を堆積し、6nmの高濃度領域13dを形成すること、実施の形態6について、段落[0066]に、膜厚50nmの酸化物半導体層13に10nmの高濃度領域13dを形成すること、実施の形態7について、段落[0071]に、膜厚50nmの酸化物半導体層13に5nmの高濃度領域13dを形成することが記載されており、どの例をとってみても、高濃度領域13dが酸化物半導体層13の全体の膜厚に対して5割以上を占める記載はない。

したがって、引用文献1の上記記載に触れた当業者であれば、高濃度領域の膜厚をその他の領域の膜厚より厚くするならば、「本発明の目的」の「100mV/decade以下のサブスレッショルド係数を実現する技術を提供すること」を達成できないと解される。
よって、引用発明において、相違点4に係る本願発明1の上記構成とする動機付けを見いだせない。

イ また、仮に、引用発明に、引用文献4に記載された技術的事項を組み合わせることを考慮したとしても、上記第3の4.のとおり、引用文献4に記載された技術的事項は、
「結晶質層及び非晶質層を積層してなる積層構造の酸化物半導体膜を含む薄膜トランジスタであって、
前記非晶質層がゲート絶縁膜と接し、
前記結晶質層が前記非晶質層と接し、
結晶質層がインジウム及び亜鉛を含み、非晶質層がインジウム、亜鉛及びガリウムを含み、
非晶質層42の膜厚は、通常1?200nmであり、好ましくは2?100nm、より好ましくは3?70nmであり、
結晶質層44の膜厚は、好ましくは2nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上、特に好ましくは20nm以上であり、
酸化物薄膜II(結晶質層)の膜厚は、例えば、40nmであり、酸化物薄膜I(非晶質層)の膜厚は、例えば、30nmである、薄膜トランジスタ。」
であり、引用文献4の[表1]には、実施例2として、「2層の酸化物薄膜のうち、ゲート絶縁膜と接する、下層の酸化物薄膜I(非晶質層)の膜厚を50nmとし、上層の酸化物薄膜II(結晶質層)の膜厚を20nm」とする実施例が示されているものの、その他の実施例1、3?16は、ターゲットの組成が本願発明1とは異なるものも含めて、すべて、「ゲート絶縁膜と接する、下層の酸化物薄膜I(非晶質層)の膜厚を30nmとし、上層の酸化物薄膜II(結晶質層)の膜厚を40nm」とする実施例であるから、引用文献4に記載された技術的事項に基づいて、引用発明において、当業者が、相違点4に係る本願発明1の「前記酸化物半導体膜の厚さは、前記酸化物膜の厚さよりも厚く」という構成を選択する動機付けを見いだすことはできない。

したがって、仮に、引用文献4に記載された技術的事項を考慮したとしても、当業者といえども、引用発明及び引用文献4に記載された技術的事項から、相違点4に係る本願発明1の上記構成に容易に想到することはできない。
また、相違点4に係る本願発明1の上記構成は、引用文献2、3には記載されておらず、原出願の出願前において周知技術であるともいえない。

よって、本願発明1は、他の相違点について判断するまでもなく、当業者であっても、引用発明、引用文献4に記載された技術的事項、引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の「前記酸化物半導体膜の厚さは、前記酸化物膜の厚さよりも厚く」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献4に記載された技術的事項、引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-3について、上記引用文献1-4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、令和2年2月25日付け手続補正により、補正前の請求項1は削除され、補正後の請求項1、2(補正前の請求項2、3)は、いずれも「前記酸化物半導体膜の厚さは、前記酸化物膜の厚さよりも厚い」という構成を有するものとなっている。
そして、上記のとおり、本願発明1、2は、当業者であっても、上記引用文献1に記載された発明、上記引用文献4に記載された技術的事項、引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第6項第1号について
当審では、請求項1、2に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、請求項1、2の記載は、サポート要件に適合するものではないとの拒絶の理由を通知しているが、令和2年11月17日付けの手続補正において、請求項1に、「前記酸化物膜の伝導帯下端のエネルギーと、前記酸化物半導体膜の伝導帯下端のエネルギーとの差が、0.1eV以上である」との記載が追加された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1、2は、当業者が引用発明、引用文献4に記載された技術的事項、引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-01-27 
出願番号 特願2018-132387(P2018-132387)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 脇水 佳弘  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 恩田 春香
小川 将之
発明の名称 トランジスタ  
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