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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23K
管理番号 1370824
審判番号 不服2019-14599  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-01 
確定日 2021-02-04 
事件の表示 特願2015-177474「メッキ除去方法、溶接方法、溶接物、構造物」拒絶査定不服審判事件〔平成29年3月16日出願公開、特開2017-51973〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月9日の出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 1月 9日付け:拒絶理由通知書
同 年 3月20日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 元年 8月 1日付け:拒絶査定
同 年11月 1日 :審判請求と同時に手続補正書の提出
令和 2年 5月11日付け:審尋
同 年 6月17日 :回答書の提出

第2 令和元年11月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和元年11月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項6の記載
本件補正は、特許請求の範囲並びに明細書の段落【0012】及び【0013】を補正するものであるところ、そのうちの特許請求の範囲の請求項6の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「メッキ部を有すると共に先端の位置をズラして複数重ね合わせた鋼材の、複数重ね合わされた前記メッキ部に部分的に設けられているメッキ除去部に溶接部を備えていることを特徴とする溶接物。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項6の記載
本件補正前の特許請求の範囲の請求項6(平成31年3月20日に手続補正された特許請求の範囲の請求項6)記載は次のとおりである。

「メッキ部を有すると共に先端の位置をズラして複数重ね合わせた鋼材の表面に設けられているメッキ除去部に溶接部を備えていることを特徴とする溶接物。」

2.補正の目的
ア.本件補正は、本件補正前の請求項6に記載された「・・・鋼材の表面に設けられているメッキ除去部」という事項について、「・・・鋼材の、複数重ね合わされた前記メッキ部に部分的に設けられているメッキ除去部」と補正することにより、メッキ除去部が「複数重ね合わされた前記メッキ部に部分的に設けられている」ことを限定するものである。
イ.また、本件補正により、本件補正前の請求項6に記載されていた、(鋼材の)「表面に」(設けられているメッキ除去部)という事項が削除されているが、メッキが鋼材の表面に設けられるものであることは、当業者にとって自明であるから、そのメッキを除去した部分であるメッキ除去部が鋼材の表面に設けられることも自明の事項であり、「表面に」という事項は、本件補正後の請求項6に記載されているに等しい事項である。
ウ.そして、補正前の請求項6に記載された発明と補正後の請求項6に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正のうち、請求項6に係る補正の目的は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
エ.そこで、本件補正後の請求項6に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同法同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(いわゆる独立特許要件))について、以下、検討する。

3.独立特許要件
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア.原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特表2014-531324号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0001】
本発明のシステム及び方法は溶接及び接合に関し、より具体的には、塗膜付き材料の溶接及び接合に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食を防止する表面塗膜を必要とする環境では多くの溶接構造が使用される。例えば、鋼が環境に晒されるときに鋼を腐食から保護するために、(亜鉛めっき又はガルバニール処理を通じた)鋼上の亜鉛の堆積が一般的に使用されている。材料が所定の場所に溶接された後に材料を亜鉛メッキすることは極めて困難であり、よって、殆どの鋼製の構成部品は溶接前に亜鉛メッキされる。しかしながら、塗膜は溶接プロセスと干渉し、溶接の品質を劣化させるので、塗膜付き材料を溶接することは困難であり得る。例えば、亜鉛メッキにおける亜鉛は、溶接アークの熱の故に気化させられ、この気化は有意なスパッタを引き起こし得るし、或いは溶接パッドル内に捕捉されて溶接内に多孔性を招き得る。この故に、塗膜付き材料の溶接は、塗膜無し材料の溶接よりも相当に遅い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術の上記問題点を解決することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施態様は、溶接の機器及び方法を含み、そこでは、高エネルギビームが溶接されるべきワークピースの塗膜付き表面に向けられ、塗膜付き表面はワークピースと異なる塗膜を有する。塗膜の少なくとも一部を除去するために、塗膜の少なくとも一部が高エネルギビームで削摩され、削摩はワークピースを実質的に溶解しない。次に、ワークピースは、0?30%の範囲内の断面孔隙率、0?30%の範囲内の長さ孔隙率、及び1?3の範囲内のスパッタ因子を有する溶接継手が作り出されるように、アーク溶接プロセスで溶接され、スパッタ因子は、溶接継手の長さに亘る消費される充填金属のKg重量に対する溶接スパッタのmg重量の比率である。」
「【0008】
図1は、第1のワークピースW1が第2のワークピースW2の上に部分的に配置され、2つのワークピースが溶接ビードWBで溶接される、典型的な溶接ラップジョイント(重ね継ぎ)を描写している。溶接産業において、この種類の接続は、一般的にはラップジョイントと呼ばれる。ラップジョイントは、自動車産業において一般的である。ラップジョイントに加えて、本発明の実施態様は、隅肉ジョイント、凹凸ジョイント、継ぎ合わせジョイント等を含む、多数の異なる種類の継手(ジョイント)も溶接し得る。図1に示すように、ワークピースのうちの少なくとも一方は、溶接されるべき表面の上に塗膜C1/C2を有し、塗膜はワークピースとは異なる材料組成を有する。一例として、この塗膜は、亜鉛メッキのような耐食塗膜であり得る。・・・(後略)」
「【0010】
前述のように、一般的な塗膜は、耐食用の亜鉛メッキである。しかしながら、類似の問題を引き起こし得る他の塗膜は、塗装、スタンピング潤滑剤、ガラス裏打ち、アルミニウム処理塗膜、表面熱処理、窒化又は炭化処理、クラッド処理、又は他の蒸発塗膜又は材料を含むが、それらに限定されない。」
「【0019】
図3A及び3Bは、本発明の実施態様に従って塗膜が除去された後のワークピースW1及びW2を描写している。それらの図面から分かるように、表面S1及びS2は、溶接ゾーン内に完全な/元の量の塗膜をもはや有していない。これらの図面において、塗膜C1/C2の全量が除去されているが、上述のように、一部の実施態様では、完全な除去は不要かもしれない。これらのワークピースが今や溶接されるときに(図3B)、溶接ビードの浸透は気化させられる塗膜材料を作り出さず、よって、スパッタ又は孔隙率を増大させずに、溶接作業の速度が増大させられることを可能にする。例えば、本発明の実施態様は、1/16インチ?3/16インチの範囲内の厚さを有する塗膜付き鋼材料の上で、上述の孔隙率及びスパッタレベルを伴う少なくとも50インチ/分の溶接速度を達成し得る。一部の実施態様において、速度は50?100インチ/分の範囲内にあり、他の実施態様において、速度は70?100インチ/分の範囲内にある。一部の実施態様では、同時に塗膜を除去し且つ溶接しながら、これらの速度を達成し得る。」
「【図3A】


図3Aには、塗膜C1を有するワークピースW1の右端は、塗膜が除去されて表面S1が表れており、塗膜C2を有するワークピースW2の左端は、塗膜が除去されて表面S2が表れていることが図示されている。

「【図3B】


図3Bには、ワークピースW1の右端の位置とワークピースW2の左端の位置をズラして2枚重ね合わせ、2枚重ね合わされた表面S1と表面S2に溶接部WBが設けられていることが図示されている。
「【図4】


図4には、上下に重ね合わせた板の右端同士又は左端同士の位置をそろえずに段差を設け、当該段差部に溶接を行うことが図示されている。

イ.上記ア.の記載事項から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているということができる。
(ア)従来、塗膜付き材料を溶接することは、塗膜が溶接アークの熱によって気化してスパッタを引き起こしたり、溶接内に多孔性を招くという問題点があったが(【0002】)、引用文献に係る発明は、溶接されるべきワークピースの塗膜の少なくとも一部を高エネルギビームで除去し、次に、アーク溶接プロセスで溶接することで、スパッタ又は孔隙率を増大させずに、溶接作業の速度を増大できること(【0004】)。
(イ)一般的な塗膜は、耐食用の亜鉛メッキであり(【0010】)、当該亜鉛メッキは鋼を腐食から保護するために使用される(【0002】)ことから、塗膜として亜鉛メッキが施される対象は鋼材であるといえること。
(ウ)図3BのワークピースW1及びW2は、溶接部WBが設けられているから、全体として溶接物ということができること。

ウ.上記ア.の記載事項及び上記イ.の技術的事項から、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。

「塗膜を有すると共に各々の右端の位置と左端の位置をズラして2枚重ね合わせたワークピースW1及びW2の、2枚重ね合わされた前記塗膜に設けられている塗膜が除去された表面S1及びS2に溶接部WBが設けられている溶接物。」(以下「引用発明」という。)

(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア.本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
(ア)引用発明の「塗膜」と本件補正発明の「メッキ部」は、いずれも被覆を有する部分であるから、「被覆部」という点で一致する。
(イ)引用発明において「各々の右端の位置と左端の位置をズラして2枚重ね合わせた」ことと、本件補正発明において「先端の位置をズラして複数重ね合わせた」ことは、「位置をズラして複数重ね合わせた」ことという点で一致する。
(ウ)引用発明の「ワークピースW1及びW2」と本件補正発明の「鋼材」は、いずれも被覆の対象となる部材であるから、「被覆対象部材」という点で一致する。
(エ)引用発明の「2枚重ね合わされた上記塗膜に設けられている塗膜が除去された表面S1及びS2」と、本件補正発明の「複数重ね合わされた前記メッキ部に部分的に設けられているメッキ除去部」は、いずれも、複数重ね合わされた被覆部に被覆除去部が設けられている状態を意味するから、「複数重ね合わされた前記被覆部に設けられている被覆除去部」という点で一致する。
(オ)引用発明の「溶接部WB」及び「溶接物」が本件補正発明の「溶接部」及び「溶接物」に相当することは明らかである。

イ.以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「被覆部を有すると共に位置をズラして複数枚重ね合わせた被覆対象部材の、複数枚重ね合わされた前記被覆部に設けられている被覆除去部に溶接部が設けられている溶接物。」である点。

<相違点1>
本件補正発明では、「被覆部」が「メッキ部」であり、また、「被覆除去部」は「メッキ部に部分的に設けられているメッキ除去部」であるのに対して、引用発明では「被覆部」が「塗膜」であり、また、「被覆除去部」は「塗膜が除去された表面S1及びS2」であって、メッキ部に部分的に設けられているものであるかどうか不明な点。

<相違点2>
「被覆対象部材」が、本件補正発明では「鋼材」であるのに対して、引用発明では鋼材かどうか不明な点。

<相違点3>
「位置をズラ」すことが、本件補正発明では「先端の位置をズラ」すことであるのに対して、引用発明では「各々の右端の位置と左端の位置をズラ」すことである点。

(4)相違点の判断
ア.相違点1について
(ア)引用文献1には、塗膜の一例として亜鉛メッキのような耐食塗膜であり得ること(【0008】)、一般的な塗膜は耐食用の亜鉛メッキであること(【0010】)が示されているから、引用発明の「塗膜」として亜鉛メッキを選択することは、当業者が容易に想到できる事項である。また、その選択に合わせて、引用発明の「塗膜が除去された表面S1及びS2」がメッキ除去部となることは当然である。
(イ)また、本件補正発明のメッキ除去部は、「メッキ部に部分的に」設けられるものであるが、その文言どおりに解釈すれば、鋼材表面のメッキ部が全て除去されているわけではないことを意味すると解される。
これに対して、引用発明の「塗膜が除去された表面S1及びS2」は、ワークピースW1、W2それぞれの表面全体ではなく、一部に設けられるものであるから、「部分的に」設けられるものであることに差異はない。
(ウ)さらに、令和2年6月17日の回答書を参酌すれば、「部分的」とは、「複数重ね合わされた各メッキ部における加熱を行った部分」のことであり、「加熱によってメッキ蒸発温度以上となった部分の全て」(回答書3ページ下から8ないし3行)を意味すると説明されている。
請求人の当該説明は、「加熱を行った部分」や「メッキ蒸発温度以上となった部分」のように、「溶接物」という物の製造に関して、技術的な特徴や条件を付した説明となっているが、そもそも本件補正発明は、「部分的に」としか特定しないのであり、製造に関しての条件は一切特定されないのだから、そのように解することはできないし、仮に「部分的に」が、そのように意図されたものと解したとしても、本件補正発明は「溶接物」という物の発明であるから、請求人が説明する「複数重ね合わされた各メッキ部における加熱を行った部分」や「加熱によってメッキ蒸発温度以上となった部分の全て」とは、メッキが除去された状態となった部分を意味すると解するのが相当である。
(エ)これに対して、引用発明の「塗膜が除去された表面S1及びS2」は、ワークピースW1とW2を個別に加熱することで塗膜を除去している(図3A)から、本件補正発明について、請求人が上記回答書で説明したように、ワークピースW1とW2を重ね合わせて加熱を行ってはいないが、加熱を行った結果、メッキが除去された状態となった部分という点では差異がないというほかない。
(オ)そうすると、本件補正発明のメッキ除去部が「部分的に」設けられることについて、請求人が上記回答書で説明する意味として解釈しても、引用発明との間に実質的な差異はない。
(カ)したがって、上記相違点1は、引用文献1の記載から当業者が容易に想到できた事項である。

イ.相違点2について
上記ア.(ア)に示すとおり、引用文献1には、一般的な塗膜として、耐食用の亜鉛メッキが示されており、当該亜鉛メッキは鋼を腐食から保護するために使用される(【0002】)ことから、塗膜として亜鉛メッキが施される対象は鋼材であるといえる(上記(2)イ.(イ))。
したがって、引用発明のワークピースW1とW2を鋼材とすることは、引用文献1に実質的に示されており、上記相違点2は、引用文献1の記載から当業者が容易に想到できた事項である。

ウ.相違点3について
(ア)本件補正発明において「先端の位置をズラ」すことは、上下に重ね合わせた鋼板の右端同士又は左端同士の位置をそろえずに、段差を設けること、又は、重ね合わせた鋼板の各々の左端と右端の位置をズラすことを意味すると解される。
(イ)これに対して、引用文献のワークピースW1の左端やワークピースW2の右端は、図3において省略されており、明示されていないが、ワークピースW1とW2は有限な長さであることは明らかであり、少なくとも、ワークピースW1とワークピースW2の右端同士又は左端同士の位置がそろっておらず、その先端がズレて段差が生じていると推認できるから、相違点3は実質的な相違点ではない。
(ウ)また、仮に上記(イ)のように推認できないとしても、上下に重ね合わせた板の右端同士又は左端同士の位置をそろえずに段差を設け、当該段差部に溶接を行うことは、引用文献1の図4に示されている事項であるから、引用文献1の記載に基づいて容易に想到できた事項である。
(エ)さらに、「先端の位置をズラ」すことが、重ね合わせた鋼板の各々の左端と右端の位置をズラすこととと解しても、このことは引用発明が備えている構成にすぎず、実質的な相違点とはならない。
(オ)したがって、上記相違点3は、実質的な相違点でないか、仮に相違点であるとしても、引用文献1の記載から当業者が容易に想到できた事項である。

エ.本件補正発明の効果について
(ア)本件補正発明は、表面にメッキを施した鋼材をそのまま溶接した場合、溶接部に、メッキ材の混入によるブローホールなどの内部欠陥やピットなどの表面欠陥が発生し易くなる(本願明細書の【0004】)といった課題を解決しようとするものであり、本件補正発明の構成を採用することで、欠陥のない溶接部を有する品質の高い溶接物を安定して得ることができ、溶接物の品質を上げることができる(本願明細書の【0053】の(作用効果5))という効果を奏するものと解される。
(イ)これに対して、引用発明も、塗膜付き材料を溶接することでスパッタが生じたり、溶接内に多孔性を招くという課題を解決しようとするものであり、引用発明により、溶接部の孔隙率を増大させないという効果(上記(2)イ.(ア))を認めることができるところ、ブローホールの少ない溶接物の品質が高いことは明らかであるから、本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項の奏する効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ.小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.補正の却下の決定のむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
令和元年11月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成31年3月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項6に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1、3-7に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であり、又は引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号に該当し、又は同条2項の規定により特許を受けることができない。請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、同条2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1:特表2014-531324号公報

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]3.(2)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2.で検討した本件補正発明から、(鋼材の)「、複数重ね合わされた前記メッキ部に部分的」という限定事項に代えて、(鋼材の)「表面に」との特定をしたものである。
そうすると、上記第2の[理由]2.イのとおり、本件補正発明においても「表面に」との事項は記載されているに等しい事項であるところ、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]3.(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

第5 補正案についての付言
1.補正案の内容
請求人は、令和2年6月17日付けの回答書において、請求項6について以下の補正案を示している。(下線は、補正案で新たに記載する事項を示すために当審が付したものである。)

「メッキ部を有すると共に先端の位置をズラして予め複数重ね合わせた鋼材の、複数重ね合わされた前記メッキ部における溶接する部分に対し、前処理として加熱によるメッキ除去部が形成されると共に、該メッキ除去部に溶接部が設けられていることを特徴とする溶接物。」

2.補正案の検討
当審が、当該補正案を検討すべき法的根拠はないが、一応検討すると、補正案で新たに請求項6について特定する事項は、前処理という経時的な工程による特定を含むものであるが、請求項6に係る発明は、溶接物という物の発明であるから、この特定は、メッキが除去された状態を意味すると解するほかなく、上記第2の3.(4)ア.(ウ)ないし(オ)に説示するとおり、引用発明との実質的な相違点とはならない。

3.付言のむすび
したがって、仮に補正案のとおりに請求項6を補正したとしても、その発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないことを付言する。
 
審理終結日 2020-11-19 
結審通知日 2020-11-24 
審決日 2020-12-09 
出願番号 特願2015-177474(P2015-177474)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹下 和志  
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 青木 良憲
刈間 宏信
発明の名称 メッキ除去方法、溶接方法、溶接物、構造物  
代理人 弁護士法人クレオ国際法律特許事務所  
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