• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B64D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B64D
管理番号 1370842
審判番号 不服2020-8154  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-12 
確定日 2021-02-04 
事件の表示 特願2016-180000号「滑空機能付き無人航空機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月22日出願公開,特開2018- 43647号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年9月14日の出願であって,平成30年9月19日付けで拒絶理由が通知され,同年11月26日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,平成31年4月19日付けで最後の拒絶理由が通知され,令和1年7月3日に提出期間を2カ月延長されたい旨の期間延長請求書が提出され,同年9月4日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,同年9月17日付けで再度最後の拒絶理由が通知され,同年11月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,令和2年3月31日付けで令和1年11月25日付けの手続補正を却下する補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ,令和2年6月12日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和2年6月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された(下線部は,補正箇所であり,当審で付した。)。
「無人航空機本体と,
前記無人航空機本体に設置されるパラグライダー装置と,
前記無人航空機本体および前記パラグライダー装置を操縦するための操縦装置と,を備え,
前記パラグライダー装置は,
キャノピーと,
操舵部と,
前記キャノピーと前記操舵部とを接続するブレークコードと,
前記キャノピーを閉傘した状態で保持する格納部と,
前記キャノピーの閉傘状態を解除し,前記キャノピーを開傘する開傘装置と,を含み,
前記無人航空機本体は,メインバッテリ,モータおよびロータのいずれかの異常を検出する異常検出部を備え,
前記無人航空機本体のコントロールに支障が生じたことを前記異常検出部が検出し,不時着が必要である場合に操縦者が前記操縦装置を介して前記操舵部を操作することにより,前記操舵部は,前記キャノピーが開傘した状態において,前記ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,操縦者によって選択される着地点へ向けて,前記無人航空機本体を滑空させる,滑空機能付き無人航空機。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
令和1年11月25日付けの手続補正は却下されたため,本件補正前の令和1年9月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「無人航空機本体と,
前記無人航空機本体に設置されるパラグライダー装置と,
前記無人航空機本体および前記パラグライダー装置を操縦するための操縦装置と,を備え,
前記パラグライダー装置は,
キャノピーと,
操舵部と,
前記キャノピーと前記操舵部とを接続するブレークコードと,
前記キャノピーを閉傘した状態で保持する格納部と,
前記キャノピーの閉傘状態を解除し,前記キャノピーを開傘する開傘装置と,を含み,
前記無人航空機本体のコントロールに支障が生じた場合に操縦者が前記操縦装置を介して前記操舵部を操作することにより,前記操舵部は,前記キャノピーが開傘した状態において,前記ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,操縦者によって選択される着地点へ向けて,前記無人航空機本体を滑空させる,滑空機能付き無人航空機。」

2.補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「無人航空機本体」を「前記無人航空機本体は,メインバッテリ,モータおよびロータのいずれかの異常を検出する異常検出部を備え,」とし,「前記無人航空機本体のコントロールに支障が生じた場合」を「前記無人航空機本体のコントロールに支障が生じたことを前記異常検出部が検出し,不時着が必要である場合」と限定するものであって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明とは,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア.引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許第6808144号明細書(以下「引用文献1」という。)には,図面とともに次の記載がある({}内は,当審による翻訳文である。下線は当審で付した。以下同様。)。
・「Referring to FIG. 1, an embodiment of parafoil recovery system 100 for recovering payload 101, such as an unmanned air vehicle, at a desired location at the end of a flight is shown.」(第2欄58行?61行)
{図1また,ペイロード101を回収するためのパラフォイル回収システム100の一実施形態は,無人航空機のような飛行の終わりに所望の位置が示されている。}
・「A parafoil recovery system capable of autonomously controlling the descent profile of a payload to a predetermined recovery area and manipulating the parafoil to execute a soft landing in the recovery area is provided.」(第1欄66行?第2欄2行)
{所定の回収領域にペイロードの降下プロファイルを制御し,パラフォイルは回収領域のソフトランディングを実行する操作のできるパラフォイル回収システムが提供される。}
・「Parafoil canopy 102 had a leading edge 104, trailing edge 106, and sides 108R, 108L. Canopy 102 is typically a rectangular or oval shaped fabric wing with a spanwise series of cells that are inflated by ram-air pressure during flight. Canopy 102 can be deployed from payload 101 automatically when a predetermined event occurs, such as reaching a specified location or being aloft for a specified time period. Alternatively, an operator can command deployment of canopy 102 from a remote location via a data uplink/telemetry system (not shown).」(第2欄66行?第3欄8行)
{パラフォイルキャノピー102は,前縁104,後縁106,および側面108R,108Lを有していた。キャノピー102は,典型的には,飛行中にラムエア圧によって膨張されるセルの翼幅方向の一連の長方形または楕円形の布の翼である。指定された位置に到達するか,または指定された期間の間空中に存在するような所定のイベントが発生したときに,自動的にキャノピー102はペイロード101から展開することができる。あるいは,操作者は,データのアップリンク/遠隔測定システム(図示せず)を介して遠隔位置から,キャノピー102の展開を指令することができる。}
・「Reel motors 208R, 208L are mounted on payload 101. A length of brake lines 120 is wound around a spindle on reel motors 208. The spindle is rotated to wind or unwind the brake lines 120, thereby adjusting the length of brake lines 120. The resulting force is applied to the outer trailing edge portions of canopy 102. Other suitable types of devices for adjusting the length of brake lines 120 can be utilized in addition to or instead of reel motors 208.」(第3欄40行?47行)
{ペイロード101上に取付けられているリールモータ208R,208Lである。ブレーキライン120の長さは,リールモータ208のスピンドルの周りに巻き付けられることによって決まる。スピンドルを回転させ,ブレーキライン120を巻くか巻き戻すことにより,ブレーキライン120の長さを調整する。結果として生じる力は,キャノピー102の外側後縁部に適用される。ブレーキライン120の長さを調整するための他の適切な種類の装置は,リールモータ208に加えてまたはその代わりに使用することができる。}
・「The embodiment shown in FIG. 2A shows reel motors 208 mounted behind the center of gravity 122 of payload 101 to retain payload 101 in a substantially horizontal orientation during the descent. Brake lines 120R, 120L are coupled to reel motors 208R, 208L, respectively, and are threaded through pulleys 210R, 210L in harnesses 112. Reel motors 208 are coupled to a control system (not shown), which issues commands to operate reel motors 208 to lengthen or shorten brake lines 120R, 120L. When one of brake lines 120 is shortened, the corresponding outer portion 118 of trailing edge 106 is pulled downward, thereby increasing drag and causing canopy 102 to turn toward the side 108 with the increased drag. When brake lines 120 are the same length, canopy 102 will descend without turning. When both brake lines 120 are shortened the same amount, drag increases over the entire canopy 102, thereby slowing the descent rate and horizontal glide speed (also referred to as #braking#) of canopy 102. The control system (not shown) is capable of combining commands to turn and brake canopy 102 simultaneously.」(第3欄48行?67行)
{実施例図2Aは,ペイロード101を下降する間に実質的に水平方向に保持するためにペイロード101の重心122の背後に取り付けられたリールモータ208を示している。ブレーキライン120R,120Lは,リールモータ208L,208Rにそれぞれ接続されており,ハーネス112においてプーリ210R,210Lに挿通されている。リールモータ208は,制御システム(図示せず)に接続され,制御システムは,リールモータ208を作動し,ブレーキライン120R,120Lを延長または短縮するように命令を発行する。ブレーキライン120の1つを短くした場合には,後縁106の対応する外側の部分118が下方に引っ張られ,これによって,抗力を増大させ,キャノピー102が抗力を増やす側108に向かって旋回させる。ブレーキライン120は同じ長さであるとき,キャノピー102はs旋回することなく下降する。両方のブレーキライン120は,同じ量を小さくする際に,キャノピー全体102に対する効力を増加させ,それにより,キャノピー102の下降速度と水平滑り速度(#braking#とも呼ばれる)を遅くする。制御システム(図示せず)が同時にキャノピー102を旋回ととブレーキさせるコマンドを組み合わせることが可能である。}
・「DPMS 300 can also include telemetry/uplink communication equipment (not shown) that allows an operator at a remote location from payload 101 to enter/update information being used by control computer 302 regarding wind speed and direction at various altitudes, location of payload 101, and the desired recovery location. DPMS 300 can also include equipment to receive transmissions from automated flight information services to update information such as position, and wind speed/direction in the vicinity.
Power supply 316 provides power at the required voltage(s) to components in DPMS 300. A portable battery or set of batteries capable of supplying different voltages can be utilized to implement power supply 316. Other suitable devices, such as solar energy cells, can also be utilized in addition to, or instead of, batteries.](第5欄53行?67行)
{DPMS300は,ペイロード101から離れた位置で,操作者が制御コンピュータ302を使用して,様々な高度での風速および風向,ペイロード101の位置,及び,所望の回収場所に関する情報を入力/更新することを許容するテレメトリ・アップリンク通信機器(図示せず)を含むことができる。DPMS 300は,また,自動化された飛行情報サービスから位置や近傍の風速や風向のような更新情報を受信する機器を含むことができる。
電源316は,DPMS300内の構成要素に必要な電圧に電力を供給する。異なる電圧を供給可能な携帯型バッテリや複数のバッテリのセットは,電源316の器具として利用することができる。太陽エネルギーのような,他の適切な装置を,バッテリに加えて,または,その代わりに利用することができる。}
・「Payload 101 can be any type of item or system that flies or is drop-shipped from the air. In a system capable of flight, canopy 102 can be deployed by DPMS 300 automatically based on fulfilling one or more criteria, such as duration of flight, operator control from a remote location, arrival at a destination, or an aborted mission. For drop-shipped items, canopy 102 can be deployed using any suitable means, such as operator control from a remote location, a static line on the vehicle from which payload 101 is dropped, or automatically using a release device coupled to control computer 302 that is activated upon reaching a predetermined altitude above ground.」(第6欄17行?28行)
{ペイロード101は,空中から飛行するか落下された輸送品のアイテムまたはシステムのタイプとすることができる。飛行が可能なシステムでは,キャノピー102は,飛行の継続期間か,遠隔位置からのオペレータによる制御か,目的地に到着したか,またはミッションの中止のような1つまたは複数の基準を満たすことに基づいて自動的にDPMS300によって展開される。落下した輸送品のアイテムでは,キャノピー102は,遠隔位置からのオペレータによる制御か,ペイロード101が落下される車両のスタティックラインか,地面から所定の高度に到達した際に活性化される制御コンピュータ302に結合された放出デバイスを自動的に使用するか,のような適切な手段を使用して,展開される。}
・「Control computer 302 monitors sensor information, such as the heading, groundspeed, and descent rate of payload 101 to determine when canopy 102 is fully deployed in process 402.」(第6欄29行?32行)
{制御コンピュータ302は,ペイロード101の進行方向,対地速度,及び降下速度のようなセンサ情報を監視し,キャノピー102がプロセス402において完全に展開される時を決定する。}・「Process 406 can be included to determine the position of payload 101 with respect to a desired recovery location. If payload 101 is not within a desired distance of the recovery location, brake lines 120 are adjusted to steer toward the recovery location.」(第6欄41行?45行)
{プロセス406は,所望の回収場所に関するペイロード101の位置を決定するために含めることができる。ペイロード101は,回収場所の所望の距離内にいない場合には,ブレーキライン120は,回収場所に向けて操縦するために調整される。}
・図1,図2A,図5には以下の内容が示されている。







・図1からみて,ペイロード101に設置されるキャノピー102が理解でき,キャノピー102の大きさと技術常識を考慮すると,キャノピー102が展開される前には閉傘状態であることは明らかである。

これらの記載事項からみて,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「無人航空機のような飛行をするペイロード101と,
ペイロード101に設置されるキャノピー102と,
ペイロード101は,飛行が可能なシステムでは,キャノピー102は,飛行の継続期間か,遠隔位置からの操作者による制御か,目的地に到着したか,またはミッションの中止のような1つまたは複数の基準を満たすことに基づいて自動的にDPMS300によって展開され,
操作者は,遠隔位置から,キャノピー102の展開を指令することができ,
キャノピー102が展開される前には閉傘状態であり,
ブレーキライン120R,120Lは,リールモータ208L,208Rにそれぞれ接続されており,リールモータ208は,制御システムに接続され,制御システムは,リールモータ208を作動し,ブレーキライン120R,120Lを延長または短縮するように命令を発行し,ブレーキライン120の1つを短くした場合には,後縁106の対応する外側の部分118が下方に引っ張られ,これによって,抗力を増大させ,キャノピー102が抗力を増やす側108に向かって旋回させ,ブレーキライン120は同じ長さであるとき,キャノピー102は旋回することなく下降し,両方のブレーキライン120は,同じ量を小さくする際に,キャノピー全体102に対する効力を増加させ,それにより,キャノピー102の下降速度と水平滑り速度を遅くし,制御システムが同時にキャノピー102を旋回とブレーキさせるコマンドを組み合わせることが可能であり,
電源316は,DPMS300内の構成要素に必要な電圧に電力を供給し,
プロセス406は,所望の回収場所に関するペイロード101の位置を決定し,
ペイロード101は,回収場所の所望の距離内にいない場合には,ブレーキライン120は,回収場所に向けて操縦するために調整される,
ペイロード101を回収するためのパラフォイル回収システム100。」

イ.引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平8-156893号公報(以下「引用文献2」という。)には,図面とともに次の記載がある。
・「【請求項6】 パラシュートの周縁に取り付けたパラシュート用吊下制御索を連接して前記パラシュート用吊下制御索の伸縮制御をするパラシュート制御装置を備え,パラシュートが降下中空気力学的に外部から移動制御されるパラシュート用誘導制御装置を備えるパラシュート誘導制御システムであって,
パラシュート移動制御の指令情報を送出する指令誘導手段と,前記指令誘導手段からの指令情報により移動制御されるパラシュート用誘導制御装置とからなり,
前記パラシュート用誘導制御装置は,前記指令誘導手段からの指令情報を受信するホーミング又は指令誘導用送受信器部と,ジャイロ又は風信儀又は高度計を備える降下軌道補助センサー部と,誘導諸元信号により前記パラシュート制御装置の制御操舵信号を与えるとともに操舵量をフィードバックする誘導制御部,前記ホーミング又は指令誘導用送受信器部からの情報信号の入出力と前記誘導制御部の誘導諸元信号の出力と操舵量の入力と前記降下軌道補助センサー部からの信号の入力とをして所定の信号に変換する信号処理部と,前記信号処理部からの信号により降下軌道の演算をし前記パラシュートの誘導管制諸元を算出して前記信号処理部を介して誘導諸元信号を誘導制御部に与えるとともに各部の管理をするコンピュータ部とを備え,前記指令誘導手段による外部からの手動での指令情報により遠隔制御されることを特徴とするパラシュート誘導制御システム。」
・「【0040】110は,オートパイロットを含む誘導制御部であって,コンピュータ部109で処理した,時々刻々変化する誘導諸元信号を得て,パラシュート制御装置102の制御に必要な操舵量(たとえば電動油圧装置である,ピストンアクチュエータの場合ではピストンストロークの伸縮量)を決定して制御操舵信号110aを与えるとともに,パラシュート制御装置102の操舵量102bをコンピュータ部109にフィードバックし,オートパイロットを構成する。
【0041】パラシュート制御装置102は,ピストンアクチュエータ又は電動リール等からなり,誘導制御部110からの信号を受け,電気又は油圧によりピストンストロークを伸縮又は電動リールを回転させパラシュート100を管制する。」
・「【0063】指令誘導方式では,電波1043及びレーザ1044でもって外部から遠隔制御によって指令誘導する装置を有する指令誘導手段111とパラシュート用誘導制御装置10の組み合わせからなる。
【0064】ここで,電波1043又はレーザ1044でもって外部から指令誘導する方法は,パラシュート用誘導制御装置10を動かし,パラシュートの降下経路を変え目的地に誘導させることにある。指令誘導手段111は電波1043及びレーザ1044にコマンド信号(電波指令111a,レーザ指令111b)を乗せて発信し,パラシュート用誘導制御装置10は,アクティブ及びパッシブホーミングセンサー部105を介してホーミング又は指令誘導用送受信器部104で受信し,信号処理部106とコンピュータ部109において命令を解読し,誘導制御部110において制御操舵信号110aを生成するものである。」
・「【0068】一例として,地上において手動による指令誘導の場合,オペレータは,図5に示す操縦管制装置41の電源411を入れ,手動ボタン416を押す。降下してくるパラシュート見ながら又は,夜間等で視界が悪くパラシュートをオペレータが視認できないときは,映像及びデータ表示装置46の水平図面461,垂直図面462及び操縦管制装置41の指令誘導諸元データ418を見ながら,操縦管制装置41の操縦管制スイッチ又はハンドル417を操作し指令誘導する。このコマンド信号41aは前述したように,パラシュート用誘導制御装置10のアクティブ及びパッシブホーミングセンサー部105を介してホーミング又は指令誘導用送受信器部104で受信され,信号処理部106,コンピュータ部109で解読され,さらに誘導制御部110でパラシュート制御装置102の操舵量を与える制御操舵信号110aとなりパラシュート制御装置102を伸縮制御する。このコマンド信号41aの送出により,オペレータの制御にしたがったパラシュートの移動制御がされる。」
・図3には,以下の内容が示されている。


これらの記載事項からみて,引用文献2には,以下の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「指令誘導手段による外部からの手動での指令情報により遠隔制御される,パラシュート誘導制御システムにおいて,パラシュート制御装置102は,電動リール等からなり,誘導制御部110からの信号を受け,電動リールを回転させパラシュート100を管制し,外部から指令誘導する方法は,パラシュート用誘導制御装置10を動かし,パラシュートの降下経路を変え目的地に誘導させることにあり,地上において手動による指令誘導の場合,オペレータは,操縦管制装置41の電源411を入れ,手動ボタン416を押し,降下してくるパラシュート見ながら,操縦管制装置41の操縦管制スイッチ又はハンドル417を操作し指令誘導する,パラシュート誘導制御システム。」

ウ.引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2007-182182号公報(以下「引用文献3」という。)には,図面とともに次の記載がある。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は,宇宙や高空から高速で帰還する帰還部材の回収方法及び回収装置に関する。」
・「【0011】
本発明は,上述した従来技術の問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は,宇宙や高空から高速で帰還する帰還部材を回収することができ,帰還部材に衝撃を与えることなく,減速後に目標地点まで誘導し,衝撃の小さいソフトランディングを無人で行うことができる高速で帰還する帰還部材の回収方法及び回収装置を提供することにある。」
・「【0013】
また本発明によれば,高速で地上に帰還する帰還部材の先端部又は後端部に連結され,その限界速度以下で開傘可能であり,帰還部材の長手方向を地上に対し垂直状態に懸垂しながら減速する高速用パラシュートと,
帰還部材の先端部及び後端部に連結され,その限界速度以下で開傘可能であり,帰還部材を前記垂直状態に懸垂しながら更に減速するパラグライダ型のラムエアパラシュートと,
前記ラムエアパラシュートで懸垂したまま,帰還部材の長手方向を垂直状態から地上に対し水平状態に変化させる姿勢変更装置と,
ラムエアパラシュートの姿勢制御と方向制御を自動制御又は遠隔制御して,目標地点まで誘導する誘導制御装置と,を備えることを特徴とする高速で帰還する帰還部材の回収装置が提供される。」
・「【0024】
前記誘導制御装置は,無線で遠隔操作可能な無線遠隔操作装置を備える,ことが好ましい。
この構成により,例えば,目標地点に危険物があったり,人が入ってきた等の緊急の場合,無線遠隔操作装置(手動)に切り換え,目視にて手動で誘導し,危険物や人等を回避できる安全な場所に着地させることができる。」
・「【0034】
図1において,誘導制御装置18は,帰還部材1(ロケット)の先端ノーズコーンに格納されており,ラムエアパラシュート14の姿勢制御と方向制御を自動制御又は遠隔制御して,目標地点まで誘導する機能を有する。ラムエアパラシュート14の姿勢制御と方向制御は,上述したコントロール・コードとそのアクチュエータを介して行う。このアクチュエータは,例えば,コントロール・コード用のリール装置であるのがよい。
また誘導制御装置18は,無線で遠隔操作可能な図示しない無線遠隔操作装置を備え,緊急の場合,無線遠隔操作装置(手動)に切り換え,目視にて手動で誘導し,危険物や人等を回避できる安全な場所に着地させることができるようになっている。」
・図1には,以下の内容が示されている。


これらの記載事項からみて,引用文献3には,以下の事項(以下「引用文献3に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「高空から高速で帰還する帰還部材の回収装置において,
誘導制御装置18は,帰還部材1の先端ノーズコーンに格納されており,パラグライダ型のラムエアパラシュート14の姿勢制御と方向制御を遠隔制御して,目標地点まで誘導する機能を有し,ラムエアパラシュート14の姿勢制御と方向制御は,コントロール・コードとそのアクチュエータを介して行い,このアクチュエータは,コントロール・コード用のリール装置であり,前記誘導制御装置18は,無線で遠隔操作可能な無線遠隔操作装置を備え,目標地点に危険物があったり,人が入ってきた等の緊急の場合,無線遠隔操作装置(手動)に切り換え,目視にて手動で誘導し,危険物や人等を回避できる安全な場所に着地させることができる,高空から高速で帰還する帰還部材の回収装置。」

エ.引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2006-306264号公報(以下「引用文献4」という。)には,図面とともに次の記載がある。
・「【技術分野】
【0001】
この発明は,無人飛行機を着地させる,もしくは回収するためにパラシュートを射出するパラシュート射出装置,および当該パラシュート射出装置を備えた無人飛行機に関するものである。」
・「【0016】
図1はこの発明の実施の形態1における機体1と,パラシュート射出装置の構成を示すものである。
図1において,機体1は,主翼100と,垂直尾翼11と,水平尾翼12と,車輪13と,推進動力部16を備えて構成される。車輪13は機体1の下に設けられ,着地の際に機体1の主翼100や胴体下部が地面と接触することを避けることができる。推進動力部16は機体1に推力を与えるものであって,図1ではプロペラを例示している。なお,機体1には,前部にプロペラを回転駆動させるモータやモータに電力を与える電源などが収納されていることは言うまでもない。
【0017】
パラシュート射出装置は,バネ2と,収納部3と,留め金4と,蓋5と,前方支点6と,後方支点7と,紐8と,パラシュート9を備えて構成される。蓋5は凹面を成しており,パラシュート9は蓋5に覆われてその凹面の内側に収容される。
【0018】
図2はこの発明の実施の形態1におけるパラシュート射出装置の詳細構成を示す。図1および図2(a)において,後方支点7は機体の重心後方に配置されており,機体1の側面から突出して回転軸を構成している。後方支点7は主翼100の後方で両翼に近接してそれぞれ設けられ,2箇所設置されている。
バネ2はU字状に折り返すように成形され,バネ2の端末部は螺旋状に曲げられてねじりバネを構成している。バネ2の端末部の末端は直線部31を有している。バネ2のねじりバネは螺旋部が各後方支点7に挿入されて,後方支点7に対し回転可能に軸支されている。バネ2のねじりバネは支持部を構成し,バネ2はこの支持部によって後方支点7にそれぞれ拘束される。バネ2は後方支点7に拘束された状態で機体上面の外部形状(具体的には主翼100の上面)に沿わせて曲げて設置される。
バネ2のU字形状を成す先端部には,収納部3が設けられている。収納部3はL字状の柄杓形状に折り曲げられ,折り畳んだパラシュート9は収納部3の柄杓形状部内に収められる。この状態で,パラシュート9に蓋5が覆い被さる。」
・「【0024】
次に,この実施の形態に係る発明の主旨を説明するため,留め金の解除からパラシュート開傘までの射出機構についての動作を,より詳しく説明する。
上述の図2は更に,この発明の実施の形態1におけるパラシュート射出装置の動作例を示しており,図2(a)は動作前の状態,図2(b)は動作前半の状態,図3(c)は動作後半の状態を示している。
また,図3は留め金の解除からパラシュート開傘までの動作の流れを示すフロー図である。以下,図2および図3に沿ってパラシュート開傘までの動作を説明する。
【0025】
図2(a)に示すように,装置作動前のパラシュート9は収納部3に収められており,蓋5によって覆われている。収納部3の下には,パラシュート9を押し出す方向に反力を持つように,後方支点7を基点に機体に添って曲げられた状態でバネ2が押し込められている。ここで,蓋5下端の保持部33は留め金4によって保持され,上端の係合溝35は前方支点6によって機体に固定されている。このため,バネ2の反力により,飛行中にパラシュート9が飛び出すことはない。
【0026】
なお,この図2の例では,上述したようにバネ2の基点はねじりバネになっており,バネ2の反力をより強める効果を有している。
【0027】
機体1が操作不能もしくは制御不能になったときや,機体1を回収する場合など,機体1の飛行中にパラシュート回収を行なう際には,任意の手段(図2中ではサーボ10の回転)により留め金4を解除する(ステップS1)。留め金4が解除されるとバネ2が開放され,その反力により図2(b)のように収納部3及び蓋5は,前方支点6を軸にしてパラシュートを持ち上げる方向へ回転する(ステップS2)。蓋5と前方支点6の接点は,回転により外れる機構になっており,持ち上げられた蓋5及び収納部3が受ける風圧と,バネ2の反力により,収納部3と蓋5はある程度回転した時点で,前方支点6から開放される(ステップS3)。」
・「【0029】
蓋5が前方支点6から開放されると,バネ2の反力と風圧を受けて,図2(c)のように収納部3はパラシュート9を開放しながら,後方支点7を軸とした回転による展開動作に移行する(ステップS4)。この回転は,バネ2の先端と機体を結ぶ紐8が伸び切った時点で停止する。このとき,バネ2は自然長までは戻らないように調整されているため,バネ2の反力も依然存在し,その反力と紐8の張力が釣り合った状態で,パラシュート9の支持部34となるバネ2の先端位置は固定される(ステップS5)。これと同時に,パラシュート9が射出される(ステップS6)。このようにして,パラシュート9が開傘される(ステップS7)。図4はパラシュートが完全に開傘した状態を示す図である。」
・図1,図2(a)(b)(c),図4には,以下の内容が示されている。




これらの記載事項からみて,引用文献4には,以下の事項(以下「引用文献4に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「パラシュート射出装置は,バネ2と,収納部3と,留め金4と,蓋5と,前方支点6と,後方支点7と,紐8と,パラシュート9を備えて構成され,
装置作動前の折り畳んだパラシュート9は収納部3内に収められ,パラシュート9に蓋5が覆い被さり,蓋5下端の保持部33は留め金4によって保持され,上端の係合溝35は前方支点6によって機体に固定されており,
機体1が操作不能もしくは制御不能になったときには,留め金4を解除し,留め金4が解除されるとバネ2が開放され,その反力により収納部3及び蓋5は,前方支点6を軸にしてパラシュートを持ち上げる方向へ回転し,持ち上げられた蓋5及び収納部3が受ける風圧と,バネ2の反力により,収納部3と蓋5はある程度回転した時点で,前方支点6から開放され,蓋5が前方支点6から開放されると,バネ2の反力と風圧を受けて,収納部3はパラシュート9を開放しながら,後方支点7を軸とした回転による展開動作に移行し,パラシュート9が射出され,パラシュート9が開傘され,無人飛行機が着地される,前記パラシュート射出装置を備えた無人飛行機。」

オ.引用文献5
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2002-200369号公報(以下「引用文献5」という。)には,図面とともに次の記載がある。
・「【請求項1】飛行操作が制御困難となった際に押圧する安全保護スイッチと,
上記安全保護スイッチの押圧に基づいて動力を停止させる電子ブレーカーと,
上記飛行物の上部に収納されると共に,上記安全保護スイッチの押圧に基づいて起動して,上記飛行物の上方に向かって飛び出すようにした落下速度を低減する落下速度低減手段と,を備えることを特徴とするラジコン模型飛行物の安全装置。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,電子妨害等によりコントロール不能になった時に,コントロール可能としたり,あるいは動力を切断して安全に着陸可能とするラジコン模型飛行物の安全装置およびラジコン模型飛行物に関する。」
【0021】図3および図4に示すように,ラジコン模型飛行物の一形態であるヘリコプター3には,旋回ハネ30の中央に容間31が設けられている。格納領域となる容間31内には,緩衝パーツ格納空間部であるC形管35が設置されている。また,容間31の上部には,カバー体32が取り付けられている。上述のサーボ器23は,容間31内に設置され,サーボ器23の軸に,回転板である盤体24が設置されている。また,盤体24上には,引き棒25が設けられ,引き棒25のもう一端は掛け部26の上端部に設置されている。
【0022】一方,掛け部26の下端は,C形管35の管口近くに掛けられている。カバー体32の中央部分と,落下速度低減手段としてのパラシュート36の頂部は,連結線33で連接され,さらに,連結線33によって,パラシュート36の底部を,スプリング34を介してC形管35に連結している。
【0023】また,パラシュート36は,きちんと畳んで容間31内に入れられている。スプリング34は,C形管35の中に押し込まれ,C形管35の端部に設置した掛け部26によって管中に納められている。この状態で,カバー体32の蓋を閉めると,ラジコン模型飛行物の組立が完成する。
【0024】このような構造とすることによって,ラジコン模型飛行物であるヘリコプター3がコントロール不能になった時に安全保護スイッチ15を押すと,レシーバー21は直ちにサーボ器22で動力を切断する。そして,サーボ器23に設けた盤体24が回転することによって,引き棒25がこれに連動して掛け部26を下へ引く。C形管35内のスプリング34は,カバー体32を押し開き,カバー体32は風の勢いでパラシュート36を引きずり出す。この結果,パラシュート36は,墜落するヘリコプター3の降下スピードを遅くする。ここで,緩衝パーツとしてのスプリング34は,その弾性力でパラシュート36が開いた瞬間に,外方向への引っ張り力を緩衝すると同時に,パラシュート36と機体との接合を確保する役割を有している。」
【0025】また,本発明に係るラジコン模型飛行物は,色々なタイプの飛行物に応用できる。次に,第2の実施の形態として,飛行機を例に説明する。
【0026】図5および図6に示すように,飛行機4には,サーボ器23が操縦室内に設置されると共に,サーボ器23の軸に盤体24が設置されている。また,盤体24上には引き棒25が設けられ,引き棒25のもう一方の端部は操縦室上カバー40の内縁に当接されている。操縦室上カバー40の底縁には突出点が設けられ,機体と合わせる構造となっている。操縦室は,連結線によりスプリング44と連接されている。スプリング44のもう一端は,連接線によりパラシュート43と連結されている。パラシュート43の上部は,連結線42によっておもり45と連接れている。パラシュート43を整えて操縦室内に折り畳んで入れ,スプリング44を直立させた状態でおもり45をその頂部に設置してから,操縦室上カバー40をかぶせると,組立は完成する。
【0027】飛行機4が制御不能の場合に,安全保護スイッチ15を押すと,レシーバー21は直ちにサーボ器22で飛行機4の動力を切断する。次に,サーボ器23に設けた盤体24が回転し,引き棒25が動き,操縦室上カバー40を,軸41を中心に回動させて開く。すると,スプリング44が飛び出し,これによって,おもり45は,風の勢いによりパラシュート43を引きずり出す。この結果,飛行機4は,墜落速度を遅くし,安全に着陸する。」
・図3から図6には,以下の内容が示されている。


これらの記載事項からみて,引用文献5には,以下の事項(以下「引用文献5に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「ラジコン模型飛行物の安全装置において,パラシュート36は,きちんと畳んで容間31内に入れられており,スプリング34は,C形管35の中に押し込まれ,C形管35の端部に設置した掛け部26によって管中に納められており,この状態で,カバー体32の蓋を閉めると,ラジコン模型飛行物の組立が完成し,
ラジコン模型飛行物であるヘリコプター3がコントロール不能になった時に安全保護スイッチ15を押すと,サーボ器23に設けた盤体24が回転することによって,引き棒25がこれに連動して掛け部26を下へ引き,C形管35内のスプリング34は,カバー体32を押し開き,カバー体32は風の勢いでパラシュート36を引きずり出し,パラシュート36は,墜落するヘリコプター3の降下スピードを遅くし,安全に着陸可能とするパラシュート36を備えたラジコン模型飛行物の安全装置。」

カ.引用文献6
平成30年9月19日付けの拒絶の理由で引用された,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2016-88111号公報(以下「引用文献6」という。)には,図面とともに次の記載がある。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は,ヘリコプターに関し,特に2つ以上のロータ(回転翼)を備えるヘリコプターに関する。」
・「【0057】
図3に示すように,メインバッテリー3と,発電機4と,が電力供給切替スイッチ11に接続されている。当該電力供給切替スイッチ11を介して,メインバッテリー3又は発電機4からの電力を電動モータ2に供給することができる。制御部6は,バッテリー状態検出部71によって,メインバッテリー3の異常を検出した場合に,エンジン5及び発電機4に稼動指令を送信するとともに,電力供給切替スイッチ11に切替指令を送信して,発電機4から電動モータ2へ電力を供給するように制御する。そして,制御部6は,発電機4からの電力を用いて,マルチコプター100を着陸させる。
【0058】
ところで,本実施形態のマルチコプター100は,着陸モードとして,継続飛行モードと,不時着モードと,を有する。継続飛行モードとは,マルチコプター100の飛行を当面は継続し,ユーザの操縦による指令に応じて適宜の地点(例えば,離陸地や,ユーザがいる場所)までマルチコプター100を移動させてから着陸するモードである。不時着モードとは,深刻な異常に対応した緊急着陸のために用いられるモードであって,エアバッグ81やパラシュート82などを用いてマルチコプター100を直ちに不時着させるモードである。制御部6は,稼動状態検出部7によって,マルチコプター100に異常が検出された場合に,適切な着陸モードを選択して,マルチコプター100を着陸させる。
【0059】
続いて,制御部6によってメインバッテリー3の異常を検出し,異常が発生した場合に着陸する制御について,図5を参照して説明する。図5は,メインバッテリー3の異常に関して制御部6で実行される制御の例を示すフローチャートである。
【0060】
図5に示すフローがスタートすると,制御部6は先ず,バッテリー状態検出部71によって検出されたメインバッテリー3の状態に基づいて,メインバッテリー3に異常が発生しているか否かを判定する(ステップS101)。メインバッテリー3に異常が発生していない場合,ステップS101に戻る。メインバッテリー3に異常が発生している場合,制御部6は,モータ状態検出部72などの稼動状態検出部7により検出されたマルチコプター100の他の部分の稼動状態に基づいて,不時着が必要か否かを判定する(ステップS102)。」

これらの記載事項からみて,引用文献6には,以下の事項(以下「引用文献6に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「パラシュート82を有したマルチコプター100において,
制御部6は,バッテリー状態検出部71によって,メインバッテリー3の異常を検出した場合に,発電機4から電動モータ2へ電力を供給するように制御し,発電機4からの電力を用いて,マルチコプター100を着陸させ,
マルチコプター100は,着陸モードとして,継続飛行モードと,不時着モードと,を有し,
継続飛行モードとは,マルチコプター100の飛行を当面は継続し,ユーザの操縦による指令に応じて適宜の地点(例えば,離陸地や,ユーザがいる場所)までマルチコプター100を移動させてから着陸するモードであり,不時着モードとは,深刻な異常に対応した緊急着陸のために用いられるモードであって,エアバッグ81やパラシュート82などを用いてマルチコプター100を不時着させるモードであり,
メインバッテリー3に異常が発生している場合,制御部6は,モータ状態検出部72などの稼動状態検出部7により検出されたマルチコプター100の他の部分の稼動状態に基づいて,不時着が必要か否かを判定する,パラシュート82を有したマルチコプター100。」

(3)対比
ア.本件補正発明と引用発明とを対比すると,後者の「無人航空機のような飛行」をする「ペイロード101」は前者の「無人航空機本体」に相当し,以下同様に,「キャノピー102」は「キャノピー」に,「制御システム」は「操縦装置」に,「リールモータ208」は「操舵部」に,「ブレーキライン120」及び「ブレーキライン120R,120L」は「ブレークコード」に,「DPMS300」は「キャノピー102」を「展開する」ので「開傘装置」に,「キャノピー102」,「リールモータ208」,「ブレーキライン120」及び「DPMS300」は合わせて「パラグライダー装置」に,「パラフォイル回収システム100」によって回収される「ペイロード101」は「滑走機能付き無人航空機」に,それぞれ相当する。
イ.後者の「キャノピー102」は「ペイロード101」に設置され,「リールモータ208」,「ブレーキライン120」,「DPMS300」もペイロード101に設置されることは明らかであるから,上記アの相当関係を踏まえると,後者の「キャノピー102」,「リールモータ208」,「ブレーキライン120」及び「DPMS300」は前者の「無人航空機本体に設置されるパラグライダー装置」に相当する。
ウ.後者は「ペイロード101は,飛行が可能なシステム」であり,「ブレーキライン120R,120Lは,リールモータ208L,208Rにそれぞれ接続されており,リールモータ208は,制御システムに接続され,制御システムは,リールモータ208を作動し,ブレーキライン120R,120Lを延長または短縮するように命令を発行し,ブレーキライン120の1つを短くした場合には,後縁106の対応する外側の部分118が下方に引っ張られ,これによって,抗力を増大させ,キャノピー102が抗力を増やす側108に向かって旋回させ,ブレーキライン120は同じ長さであるとき,キャノピー102は旋回することなく下降し,両方のブレーキライン120は,同じ量を小さくする際に,キャノピー全体102に対する効力を増加させ,それにより,キャノピー102の下降速度と水平滑り速度を遅くし,制御システムが同時にキャノピー102を旋回とブレーキさせるコマンドを組み合わせることが可能であ」るから,上記ア.の相当関係を踏まえると,後者の「制御システム」は,前者の「前記無人航空機本体および前記パラグライダー装置を操縦するための操縦装置」に相当する。
エ.後者は「ブレーキライン120R,120Lは,リールモータ208L,208Rにそれぞれ接続されており,リールモータ208は,制御システムに接続され,制御システムは,リールモータ208を作動し,ブレーキライン120R,120Lを延長または短縮するように命令を発行し,ブレーキライン120の1つを短くした場合には,後縁106の対応する外側の部分118が下方に引っ張られ,これによって,抗力を増大させ,キャノピー102が抗力を増やす側108に向かって旋回させ,ブレーキライン120は同じ長さであるとき,キャノピー102は旋回することなく下降し,両方のブレーキライン120は,同じ量を小さくする際に,キャノピー全体102に対する効力を増加させ,それにより,キャノピー102の下降速度と水平滑り速度を遅くし,制御システムが同時にキャノピー102を旋回とブレーキさせるコマンドを組み合わせることが可能であ」るから,後者の「ブレーキライン120」は,キャノピー120の後縁106とリールモータ208を接続していることは明らかであり,上記ア.の相当関係を踏まえると,前者の「前記キャノピーと前記操舵部とを接続するブレークコード」に相当する。
オ.後者の「キャノピー102が展開される前には閉傘状態であ」ることと,前者の「前記キャノピーを閉傘した状態で保持する格納部」とは,「前記キャノピーを閉傘した状態」にすることにおいて共通する。
カ.後者の「キャノピー102」を「展開する」「DPMS300」と,前者の「前記キャノピーの閉傘状態を解除し,前記キャノピーを開傘する開傘装置」とは「前記キャノピーの閉傘状態から,前記キャノピーを開傘する開傘装置」において共通する。
キ.後者は「ブレーキライン120R,120Lは,リールモータ208L,208Rにそれぞれ接続されており,リールモータ208は,制御システムに接続され,制御システムは,リールモータ208を作動し,ブレーキライン120R,120Lを延長または短縮するように命令を発行し,ブレーキライン120の1つを短くした場合には,後縁106の対応する外側の部分118が下方に引っ張られ,これによって,抗力を増大させ,キャノピー102が抗力を増やす側108に向かって旋回させ,ブレーキライン120は同じ長さであるとき,キャノピー102は旋回することなく下降し,両方のブレーキライン120は,同じ量を小さくする際に,キャノピー全体102に対する効力を増加させ,それにより,キャノピー102の下降速度と水平滑り速度を遅くし,制御システムが同時にキャノピー102を旋回とブレーキさせるコマンドを組み合わせることが可能であり,」「プロセス406は,所望の回収場所に関するペイロード101の位置を決定し,ペイロード101は,回収場所の所望の距離内にいない場合には,ブレーキライン120は,回収場所に向けて操縦するために調整される」から,後者の「リールモータ208は,制御システムに接続され,制御システムは,リールモータ208を作動」することと,前者の「前記無人航空機本体のコントロールに支障が生じたことを前記異常検出部が検出し,不時着が必要である場合に操縦者が前記操縦装置を介して前記操舵部を操作することにより,前記操舵部は,前記キャノピーが開傘した状態において,前記ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,操縦者によって選択される着地点へ向けて,前記無人航空機本体を滑空させる」こととは,上記ア.の相当関係を踏まえると,「前記操縦装置を介して前記操舵部を操作することにより,前記操舵部は,前記キャノピーが開傘した状態において,前記ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,着地点に向けて,前記無人航空機本体を滑空させる」ことにおいて共通する。
ク.そうすると,両者は,
「無人航空機本体と,
前記無人航空機本体に設置されるパラグライダー装置と,
前記無人航空機本体および前記パラグライダー装置を操縦するための操縦装置と,を備え,
前記パラグライダー装置は,
キャノピーと,
操舵部と,
前記キャノピーと前記操舵部とを接続するブレークコードと,
前記キャノピーを閉傘した状態にし,
前記キャノピーの閉傘状態から前記キャノピーを開傘する開傘装置と,を含み,
前記操縦装置を介して前記操舵部を操作することにより,前記操舵部は,前記キャノピーが開傘した状態において,前記ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,着地点に向けて,前記無人航空機本体を滑空させる,滑空機能付き無人航空機。」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。
<相違点1>
前記キャノピーを閉傘した状態にし,前記キャノピーの閉傘状態から前記キャノピーを開傘する開傘装置に関して,本件補正発明では,前記キャノピーを閉傘した状態で「保持する格納部」
と,前記キャノピーの閉傘状態を「解除し,」前記キャノピーを開傘する開傘装置,とを含むのに対して,引用発明では,「キャノピー102が展開される前には閉傘状態あり,」「キャノピー102は,」「DPMS300によって展開され」る点。
<相違点2>
本件補正発明では,「前記無人航空機本体は,メインバッテリ,モータおよびロータのいずれかの異常を検出する異常検出部を備え,前記無人航空機本体のコントロールに支障が生じたことを前記異常検出部が検出し,不時着が必要である場合に操縦者が」前記操縦装置を介して前記操舵部を操作するのに対して,引用発明では,「ペイロード101は,飛行が可能なシステムでは,キャノピー102は,飛行の継続期間か,遠隔位置からの操作者による制御か,目的地に到着したか,またはミッションの中止のような1つまたは複数の基準を満たすことに基づいて自動的にDPMS300によって展開され,操作者は,遠隔位置から,キャノピー102の展開を指令することができ」,「ペイロード101は,回収場所の所望の距離内にいない場合には,ブレーキライン120は,回収場所に向けて操縦するために調整される」点。
<相違点3>
着地点に関して,本件補正発明では,「操縦者によって選択される着地点」であるのに対して,引用発明では,「プロセス406は,所望の回収場所に関するペイロード101の位置を決定し」ている点。

(4)相違点の判断
<相違点1について>
上述した引用文献4,5に記載された事項に例示されるように,キャノピー(引用文献4に記載された事項の「パラシュート9」が相当,引用文献5に記載された事項の「パラシュート36」が相当。)を備えた無人航空機(引用文献4に記載された事項の「無人航空機」が相当。引用文献5に記載された事項の「ラジコン模型飛行物」が相当。)において,前記キャノピーを閉傘した状態で保持する格納部(引用文献4に記載された事項の「収納部3」及び「蓋5」が相当,引用文献5に記載された事項の「容間31」及び「カバー体32の蓋」が相当。)と,前記キャノピーの閉傘状態を解除し(引用文献4に記載された事項の「留め金4を解除」することが相当,引用文献5に記載された事項の「掛け部26を下に引」くことが相当。)前記キャノピーを開傘する開傘装置は,本願出願前において周知の技術である。
そして,引用発明においても,展開前のキャノピーを格納することは極めて自然なことであるから,引用発明のキャノピーの102のDPMS300に上記周知の技術を適用して,相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が適宜なし得たことである。
<相違点2について>
本件補正発明と引用文献6に記載された事項を対比すると,後者の「マルチコプター100」は「ユーザの操縦の指令に応じて」「移動」するから,前者の「無人航空機本体」に相当し,後者の「バッテリー状態検出部71」は「メインバッテリー3の異常を検出」するから,「モータ状態検出部72などの稼働状態検出部7」と合わせて,前者の「メインバッテリ,モータおよびロータのいずれかのいずれかを検出する異常検出部」に相当する。
後者の「メインバッテリー3に異常が発生している場合,制御部6は,モータ状態検出部72などの稼動状態検出部7により検出されたマルチコプター100の他の部分の稼動状態に基づいて,不時着が必要か否かを判定する」ことは,前者の「前記無人航空機本体のコントロールに支障が生じたことを異常検出部が検出し,不時着が必要である場合」を判定していることに相当する。
そして,後者において,不時着が必要である場合,「パラシュート82などを用いて」「着陸する」ことは,前者の「キャノピーを開傘した状態」に相当する。
また,後者の「着陸モードとしての継続飛行モード」は「マルチコプター100の飛行を当面は継続し,ユーザの操縦による指令に応じて適宜の地点(例えば,離陸地や,ユーザがいる場所)までマルチコプター100を移動させてから着陸するモード」であって,前者の「操縦者が操縦装置を」「操作することにより」「操縦者によって着地点へ向けて無人航空機本体を滑空させる」ことに対応する。
そうすると,引用文献6に記載された事項を,本件補正発明に用語に倣って整理すると,
「無人航空機本体は,メインバッテリ,モータ及びロータのいずれかの異常を検出する異常検出部を備え,前記無人航空機本体のコントロールに支障が生じたことを前記異常検出部が検出すると,不時着が必要である場合に,キャノピーを開傘した状態で着陸すること,及び,無人航空機本体は,メインバッテリ,モータ及びロータのいずれかの異常を検出する異常検出部を備え,前記異常検出部が検出すると,操縦者が操縦装置を操作することにより,操縦者によって着地点へ向けて,無人航空機本体を滑空させること。」(以下「引用文献6記載事項」という。)が記載されているといえ,(コントロールに支障が生じた上で)より深刻な異常状態で飛行ができない場合には,キャノピーを開傘した状態で着陸する一方,異常状態であっても飛行が可能であれば,操縦者が操縦装置を操作することにより,操縦者によって着地点へ向けて,無人航空機本体を滑空させるものともいえる。
一方,引用発明は,「操作者は,遠隔位置から,キャノピー102の展開を指令することができ」るものであり,操作者による遠隔操作も示唆されているから,本件補正発明と「前記操縦装置を介して前記操舵部を操作することにより,前記操舵部は,前記キャノピーが開傘した状態において,前記ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,着地点に向けて,前記無人航空機本体を滑空させる,滑空機能付き無人航空機」において共通する引用発明に,上記引用文献6記載事項を適用して,「前記無人航空機本体は,メインバッテリ,モータおよびロータのいずれかの異常を検出する異常検出部を備え,前記無人航空機本体のコントロールに支障が生じたことを前記異常検出部が検出し,不時着が必要である場合に操縦者が」前記操縦装置を介して前記操舵部を操作すること,即ち,相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。
<相違点3について>
引用発明では,「プロセス406は,所望の回収場所に関するペイロード101の位置を決定し」ているから,「所望の回収場所」つまり「選択される着地点」に対する示唆があるといえる。
そして,本件補正発明と引用文献3に記載された事項とを対比すると,後者の「パラグライダ型のラムエアパラシュート14」は前者の「パラグライダ装置」又は「キャノピー」に,「コントロール・コード」は「ブレークコード」に,「コントロール・コード用のリール装置」及び「アクチュエータ」は「操舵部」に,「誘導制御装置18」及び「無線遠隔操作装置(手動)」は「操縦装置」に,それぞれ相当する。
後者の「誘導制御装置18は,帰還部材1の先端ノーズコーンに格納されており,パラグライダ型のラムエアパラシュート14の姿勢制御と方向制御を遠隔制御して,目標地点まで誘導する機能を有し,ラムエアパラシュート14の姿勢制御と方向制御は,コントロール・コードとそのアクチュエータを介して行い,このアクチュエータは,コントロール・コード用のリール装置であ」ることと,前者の「無人航空機本体と,前記無人航空機本体に設置されるパラグライダー装置と,前記無人航空機本体および前記パラグライダー装置を操縦するための操縦装置と,を備え,前記パラグライダー装置は,キャノピーと,操舵部と,前記キャノピーと前記操舵部とを接続するブレークコードと,前記キャノピーを閉傘した状態で保持する格納部と,前記キャノピーの閉傘状態を解除し,前記キャノピーを開傘する開傘装置と,を含み」とは,「部材本体と。前記部材本体に設置されるパラグライダー装置と,前記部材本体と前記パラグライダー装置を操縦するための操縦装置とを備え,前記パラグライダー装置は,キャノピーと,操舵部と,ブレークコードと,を含」むことにおいて共通する。
後者の「誘導制御装置18は,帰還部材1の先端ノーズコーンに格納されており,パラグライダ型のラムエアパラシュート14の姿勢制御と方向制御を遠隔制御して,目標地点まで誘導する機能を有し,ラムエアパラシュート14の姿勢制御と方向制御は,コントロール・コードとそのアクチュエータを介して行い,このアクチュエータは,コントロール・コード用のリール装置であり,前記誘導制御装置18は,無線で遠隔操作可能な無線遠隔操作装置を備え,目標地点に危険物があったり,人が入ってきた等の緊急の場合,無線遠隔操作装置(手動)に切り換え,目視にて手動で誘導し,危険物や人等を回避できる安全な場所に着地させることができる」ことと,前者の「操縦者が前記操縦装置を介して前記操舵部を操作することにより,前記操舵部は,前記キャノピーが開傘した状態において,前記ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,操縦者によって選択される着地点へ向けて,前記無人航空機本体を滑空させる」こととは,「操縦者が操縦装置を介して操舵部を操作することにより,キャノピーが開傘した状態で,ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,操縦者によって選択される着地点に向けて,部材本体を滑空させる」ことにおいて共通する。
そうすると,引用文献3に記載された事項を,本件補正発明に用語に倣って整理すると,
「部材本体と,前記部材本体に設置されるパラグライダー装置と,前記部材本体と前記パラグライダー装置を操縦するための操縦装置とを備え,前記パラグライダー装置は,キャノピーと,操舵部と,ブレークコードと,を含み,
緊急の場合に,操縦者が前記操縦装置を介して前記操舵部を操作することにより,前記キャノピーが開傘した状態で,前記ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,操縦者によって選択される着地点に向けて,前記部材本体を滑空させる,滑空する部材。」(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されているといえる。
そして,引用発明と引用文献3記載事項とは,「操縦装置を介して操舵部を操作することにより,前記操舵部は,キャノピーが開傘した状態において,ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,着地点に向けて,部材本体を滑空させる」ことにおいて共通する上に,引用発明には,上述したように「選択される着地点」に対する示唆があるから,引用発明の「無人航空機に設置されたキャノピー」の制御に,上記引用文献3記載事項の「操縦者が前記操縦装置を介して前記操舵部を操作することにより,前記キャノピーが開傘した状態で,前記ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,操縦者によって選択される着地点に向けて,」「滑空させる」ことを適用して,相違点3における本件補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が適宜なし得たことである。

そして,本件補正発明の効果について検討しても,引用発明,引用文献6記載事項,引用文献3記載事項及び上記周知の技術に基づいて予期される以上の格別のものがあるとはいえない。
したがって,本件補正発明は,引用発明,引用文献6記載事項,引用文献3記載事項及び上記周知の技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)請求人の主張の検討
請求人は,審判請求書(7ページ10?19行)において,
「上述のとおり,本願第一発明は,引用文献1?5のいずれにも記載も示唆もない特有の構成を有し,引用文献1?5の組み合わせによっても本願第一発明にはなりえません。また,引用文献1?5に接した当業者であっても,航空機本体に,航空機本体の異常を検出する異常検出部を備えるという構成に想到する動機がありません。さらに,引用文献1?5のいずれも,航空機本体に異常が生じた時に異常検出部によって異常を検出し,不時着が必要である場合にはパラグライダー装置を操縦者が操縦して航空機本体を選択される着地点に滑空させることで安全が確保できるという効果を奏するものではありません。
当業者であっても,引用文献1?5から本願第一発明に容易に想到するとはいえないと思料します。」旨主張する。
しかしながら,(4)で述べたように,引用文献6には,航空機本体に,航空機本体の異常を検出する異常検出部を備えるという構成に想到する動機があり,引用発明に引用文献6記載事項を適用することにより,航空機本体に異常が生じた時に異常検出部によって異常を検出し,不時着が必要である場合にはパラグライダー装置を操縦者が操縦して航空機本体を着地点に滑空させることは導き出せるものである。
また,操縦者が「選択される」着地点に滑空させることは,(4)の<相違点3について>で述べたとおりである。
したがって,請求人の上記主張は採用できない。
(6)まとめ
したがって,本願補正発明は,引用発明,引用文献6記載事項,引用文献3記載事項及び上記周知の技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?3に係る発明は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
【請求項1】
無人航空機本体と,
前記無人航空機本体に設置されるパラグライダー装置と,
前記無人航空機本体および前記パラグライダー装置を操縦するための操縦装置と,を備え,
前記パラグライダー装置は,
キャノピーと,
操舵部と,
前記キャノピーと前記操舵部とを接続するブレークコードと,
前記キャノピーを閉傘した状態で保持する格納部と,
前記キャノピーの閉傘状態を解除し,前記キャノピーを開傘する開傘装置と,を含み,
前記無人航空機本体のコントロールに支障が生じた場合に操縦者が前記操縦装置を介して前記操舵部を操作することにより,前記操舵部は,前記キャノピーが開傘した状態において,前記ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,操縦者によって選択される着地点へ向けて,前記無人航空機本体を滑空させる,滑空機能付き無人航空機。
【請求項2】
前記操縦者が前記操縦装置を介して前記開傘装置を操作することにより,前記開傘装置は前記キャノピーの閉傘状態を解除する,請求項1に記載の滑空機能付き無人航空機。
【請求項3】
前記格納部は,前記キャノピーが閉傘した状態で,前記キャノピーを覆うカバー部を含む,請求項1または請求項2に記載の滑空機能付き無人航空機。
ここで,請求項1を引用する請求項3に係る発明の引用関係を解消した発明(以下「本願発明」という。)を以下に示す。
「無人航空機本体と,
前記無人航空機本体に設置されるパラグライダー装置と,
前記無人航空機本体および前記パラグライダー装置を操縦するための操縦装置と,を備え,
前記パラグライダー装置は,
キャノピーと,
操舵部と,
前記キャノピーと前記操舵部とを接続するブレークコードと,
前記キャノピーを閉傘した状態で保持する格納部と,
前記キャノピーの閉傘状態を解除し,前記キャノピーを開傘する開傘装置と,を含み,
前記無人航空機本体のコントロールに支障が生じた場合に操縦者が前記操縦装置を介して前記操舵部を操作することにより,前記操舵部は,前記キャノピーが開傘した状態において,前記ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,操縦者によって選択される着地点へ向けて,前記無人航空機本体を滑空させる,
前記格納部は,前記キャノピーが閉傘した状態で,前記キャノピーを覆うカバー部を含む,滑空機能付き無人航空機。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1?6に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?5に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

・請求項1,2
・引用文献1?3

・請求項 3?6
・請求項 1?5

引用文献一覧
引用文献1:米国特許第6808144号明細書(上記第2 2.(2)ア.の引用文献1と同じ)
引用文献2:特開平8-156893号公報(上記第2 2.(2)イ.の引用文献2と同じ)
引用文献3:特開2007-182182号公報(上記第2 2.(2)ウ.の引用文献3と同じ)
引用文献4:特開2006-306264号公報(上記第2 2.(2)エ.の引用文献4と同じ)
引用文献5:特開2002-200369号公報(上記第2 2.(2)オ.の引用文献5と同じ)

3.引用文献とその記載事項等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献,その記載事項及び引用発明は,上記「第2 2.(2)ア.」?「第2 2.(2)オ.」に記載したとおりである。

4.対比
「第2 2.(3)対比」を参照して,本願発明と引用発明とを対比すると,両者は,
「無人航空機本体と,
前記無人航空機本体に設置されるパラグライダー装置と,
前記無人航空機本体および前記パラグライダー装置を操縦するための操縦装置と,を備え,
前記パラグライダー装置は,
キャノピーと,
操舵部と,
前記キャノピーと前記操舵部とを接続するブレークコードと,
前記キャノピーを閉傘した状態にし,
前記キャノピーの閉傘状態から前記キャノピーを開傘する開傘装置と,を含み,
前記操縦装置を介して前記操舵部を操作することにより,前記操舵部は,前記キャノピーが開傘した状態において,前記ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,着地点に向けて,前記無人航空機本体を滑空させる,滑空機能付き無人航空機。」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。
<相違点1’>
前記キャノピーを閉傘した状態にし,前記キャノピーの閉傘状態から前記キャノピーを開傘する開傘装置に関して,本願発明では,前記キャノピーを閉傘した状態で「保持する格納部」と,前記キャノピーの閉傘状態を「解除し,」前記キャノピーを開傘する開傘装置,とを含むのに対して,引用発明では,「キャノピー102が展開される前には閉傘状態あり,」「キャノピー102は,」「DPMS300によって展開され」る点。
<相違点2’>
本願発明では,「前記無人航空機本体のコントロールに支障が生じた場合に操縦者が」前記操縦装置を介して前記操舵部を操作するのに対して,引用発明では,「ペイロード101は,飛行が可能なシステムでは,キャノピー102は,飛行の継続期間か,遠隔位置からの操作者による制御か,目的地に到着したか,またはミッションの中止のような1つまたは複数の基準を満たすことに基づいて自動的にDPMS300によって展開され,操作者は,遠隔位置から,キャノピー102の展開を指令することができ」,「ペイロード101は,回収場所の所望の距離内にいない場合には,ブレーキライン120は,回収場所に向けて操縦するために調整される」点。
<相違点3’>
着地点に関して,本願発明では,「操縦者によって選択される着地点」であるのに対して,引用発明では,「プロセス406は,所望の回収場所に関するペイロード101の位置を決定し」ている点。
<相違点4>
本願発明では,「前記格納部は,前記キャノピーが閉傘した状態で,前記キャノピーを覆うカバー部を含む」のに対して,引用発明では,「キャノピー102が展開される前には閉傘状態であ」ものの,それ以上の特定はなされていない点。

5.判断
<相違点1’,相違点3’について>
<相違点1’><相違点3’>は,「第2 2.(3)」の本件補正発明と引用発明との<相違点1><相違点3>と同様であるから,「第2 2.(4)」の<相違点1について><相違点3について>と同様の理由により,当業者が適宜なし得たものである。
<相違点2’について>
上述した引用文献4,5に記載された事項に例示されるように,キャノピー(引用文献4に記載された事項の「パラシュート9」が相当,引用文献5に記載された事項の「パラシュート36」が相当。)を備えた無人航空機(引用文献4に記載された事項の「無人航空機」が相当。引用文献5に記載された事項の「ラジコン模型飛行物」が相当。)において,前記無人航空機本体(引用文献4に記載された事項の「機体1」が相当,引用文献5に記載された事項の「ラジコン模型飛行物であるヘリコプター3」が相当。)のコントロールに支障が生じたとき(引用文献4に記載された事項の「操作不能もしくは制御不能になったとき」が相当,引用文献5に記載された事項の「コントロール不能になった時」が相当。)前記キャノピーを開傘し,着地する前記無人航空機は,本願出願前において周知の事項(以下「周知事項1」という。)である。
また,引用文献2には「指令誘導手段による外部からの手動での指令情報により遠隔制御される,パラシュート誘導制御システムにおいて,パラシュート制御装置102は,電動リール等からなり,誘導制御部110からの信号を受け,電動リールを回転させパラシュート100を管制し,外部から指令誘導する方法は,パラシュート用誘導制御装置10を動かし,パラシュートの降下経路を変え目的地に誘導させることにあり,地上において手動による指令誘導の場合,オペレータは,操縦管制装置41の電源411を入れ,手動ボタン416を押し,降下してくるパラシュート見ながら,操縦管制装置41の操縦管制スイッチ又はハンドル417を操作し指令誘導する,パラシュート誘導制御システム。」が記載され,引用文献3には,「高空から高速で帰還する帰還部材の回収装置において,誘導制御装置18は,帰還部材1の先端ノーズコーンに格納されており,パラグライダ型のラムエアパラシュート14の姿勢制御と方向制御を遠隔制御して,目標地点まで誘導する機能を有し,ラムエアパラシュート14の姿勢制御と方向制御は,コントロール・コードとそのアクチュエータを介して行い,このアクチュエータは,コントロール・コード用のリール装置であり,前記誘導制御装置18は,無線で遠隔操作可能な無線遠隔操作装置を備え,目標地点に危険物があったり,人が入ってきた等の緊急の場合,無線遠隔操作装置(手動)に切り換え,目視にて手動で誘導し,危険物や人等を回避できる安全な場所に着地させることができる,高空から高速で帰還する帰還部材の回収装置。」が記載されており,外部(遠隔地)の操縦者が操縦装置(引用文献2に記載された事項の「操縦管制装置41の操縦管制スイッチ又はハンドル417」が相当,引用文献3に記載された事項の「無線遠隔操作装置(手動)」が相当。)を介して操舵部(引用文献2に記載された事項の「パラシュート制御装置102」又は「電動リール」が相当,引用文献3に記載された事項の「アクチュエータ」又は「コントロール・コード用のリール装置」が相当。)を操作して,キャノピー(引用文献2に記載された事項の「パラシュート」が相当,引用文献3に記載された事項の「ラムエアパラシュート14」が相当。)を制御することは,本願出願前において周知の事項(以下「周知事項2」という。)である。
引用発明における「前記操縦装置を介して前記操舵部を操作することにより,前記操舵部は,前記キャノピーが開傘した状態において,前記ブレークコードを介して前記キャノピーを制御することにより,着地点に向けて,前記無人航空機本体を滑空させる」ものにおいて,周知事項1の「無人航空機本体のコントロールに支障が生じた場合にキャノピーを開傘した」際に,周知事項2の外部(遠隔地)の「操縦者が操縦装置を介して操舵部を操作する」ことによりキャノピーを制御するものとして,相違点2’における本願発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。
<相違点4について>
上述した引用文献4,5に記載された事項に例示されるように,キャノピー(引用文献4に記載された事項の「パラシュート9」が相当,引用文献5に記載された事項の「パラシュート36」が相当。)を備えた無人航空機(引用文献4に記載された事項の「無人航空機」が相当。引用文献5に記載された事項の「ラジコン模型飛行物」が相当。)において,格納部(引用文献4に記載された事項の「収納部3」及び「蓋5」が相当,引用文献5の「容間31」及び「カバー体32の蓋」が相当。)が前記キャノピーが閉傘した状態(引用文献4に記載された事項の「(折り畳んだ」が相当。引用文献5に記載された事項の「畳んで」が相当。)で,前記キャノピーを覆うカバー部(引用文献4に記載された事項の「蓋5」が相当,引用文献5に記載された事項の「カバー体32の蓋」が相当。)を含むことは,本願出願前において周知の事項(以下「周知事項3」という。)である。
そうすると,引用発明の「キャノピー102が展開される前には閉傘状態であ」って,キャノピーを格納しようとすることは,極めて自然なことであるから,引用発明に上記周知事項3を適用して,相違点4における本願発明の発明特定事項とすることは,当業者が適宜なし得たことである。
そして,本願発明の効果について検討しても,引用発明,引用文献3記載事項,上記周知の技術及び上記周知事項1?3に基づいて予期される以上の格別のものがあるとはいえない。
したがって,本件補正発明は,引用発明,引用文献3記載事項,上記周知の技術及び上記周知事項1?3(引用文献2?5に記載された事項に基づく)に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用文献3記載事項,上記周知の技術及び上記周知事項1?3(引用文献2?5に記載された事項に基づく)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-11-26 
結審通知日 2020-12-01 
審決日 2020-12-15 
出願番号 特願2016-180000(P2016-180000)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B64D)
P 1 8・ 575- Z (B64D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷井 雅昭  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 藤井 昇
一ノ瀬 覚
発明の名称 滑空機能付き無人航空機  
代理人 北野 修平  
  • この表をプリントする
事前申し込み無料!情報収集目的の方もぜひいらしてください!
すごい知財サービス EXPO 2021

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ