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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C03C |
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管理番号 | 1370843 |
審判番号 | 不服2019-14763 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-11-05 |
確定日 | 2021-02-26 |
事件の表示 | 特願2015- 17263「合わせガラスおよび導電性発熱体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 8日出願公開、特開2016-141579、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年1月30日の出願であって、平成30年6月18日付けの拒絶理由通知に対し、同年8月8日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、更に、同年12月25日付けの拒絶理由通知に対し、平成31年3月11日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和1年7月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年11月5日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の拒絶の理由は、平成30年12月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由2であり、要するに、平成31年3月11日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという、進歩性欠如に関するものである。 引用文献一覧 1.特開2010-251230号公報 2.特開昭58-032042号公報 3.特開2012-14945号公報 4.特開2003-203681号公報 第3 本願発明 本願請求項1?11に係る発明(以下、「本願発明1?11」といい、これらをまとめて「本願発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 一対のガラス板と、 前記一対のガラス板の間に配置される導電性発熱体と、 熱可塑性樹脂を含み、厚みが0.02mm以上0.20mm以下であり、前記導電性発熱体を支持する透明基材と、を備え、 前記導電性発熱体は、 前記透明基材の対向する二つの端辺に沿って延在する第1および第2電極と、 前記第1および第2電極の間にそれぞれ間隔を隔てて配置され、前記第1および第2電極と一体成形され、それぞれが交差しないように配置される複数の第1導電体と、を有し、 前記複数の第1導電体のそれぞれは、一端部が前記第1電極に接続され、他端部が前記第2電極に接続され、 前記複数の第1導電体の短手方向の幅は、前記複数の第1導電体の長手方向中央側よりも、前記一端部および前記他端部側の方が大きく、かつ前記幅は2μm乃至10μmであり、 前記複数の第1導電体の前記一端部及び前記他端部は、前記第1および第2電極に一体に繋がっている合わせガラス。 【請求項2】 前記複数の第1導電体の短手方向の幅は、前記一端部および前記他端部側において、暫時に広がっている請求項1に記載の合わせガラス。 【請求項3】 前記第1および第2電極のそれぞれは、導電細線で囲まれた複数の開口部を有する請求項1または2に記載の合わせガラス。 【請求項4】 前記第1および第2電極のそれぞれは、メッシュ状である請求項3に記載の合わせガラス。 【請求項5】 前記第1および第2電極に接触するように配置され、それぞれがベタ状の第3および第4電極を備える請求項3または4に記載の合わせガラス。 【請求項6】 前記複数の第1導電体は、前記第1および第2電極の長手方向に交差する方向に、略平行に配置されている請求項1乃至5のいずれかに記載の合わせガラス。 【請求項7】 前記導電性発熱体は、銅を含有する導電性材料にて一体成形される請求項1乃至6のいずれかに記載の合わせガラス。 【請求項8】 前記導電性発熱体の第1主面と、一方の前記ガラス板と、に接合される第1接合層と、 前記導電性発熱体の前記第1主面とは反対側の第2主面と、他方の前記ガラス板と、に接合される第2接合層と、を備える請求項1乃至7のいずれかに記載の合わせガラス。 【請求項9】 前記導電性発熱体を支持する透明基材と、 前記導電性発熱体の前記透明基材との接触面とは反対側の面と、一方の前記ガラス板と、に接合される第1接合層と、 前記透明基材と、他方の前記ガラス板と、に接合される第2接合層と、を備える請求項1乃至8のいずれかに記載の合わせガラス。 【請求項10】 導電性発熱体と、 熱可塑性樹脂を含み、厚みが0.02mm以上0.20mm以下であり、前記導電性発熱体を支持する透明基材と、を備え、 前記導電性発熱体は、 前記透明基材の対向する二つの端辺に沿って延在する第1および第2電極と、 前記第1および第2電極の間にそれぞれ配置され、前記第1および第2電極と一体成形され、それぞれが交差しないように配置される複数の第1導電体と、を有し、 前記複数の第1導電体のそれぞれは、一端部が前記第1電極に接続され、他端部が前記第2電極に接続され、 前記複数の第1導電体の短手方向の幅は、前記複数の第1導電体の長手方向中央側よりも、前記一端部および前記他端部側の方が大きく、かつ前記幅は2μm乃至10μmであり、 前記複数の第1導電体の前記一端部及び前記他端部は、前記第1および第2電極に一体に繋がっている、発熱体シート。 【請求項11】 熱可塑性樹脂を含み、厚みが0.02mm以上0.20mm以下である透明基材上に、金属の薄膜を形成する工程と、 前記薄膜の上面をフォトレジストで覆う工程と、 前記フォトレジストをパターニングしてレジストパターンを形成する工程と、 前記レジストパターンにエッチング液を噴射して、前記レジストパターンで覆われていない場所の前記薄膜をエッチング除去して、前記透明基材上の対向する二つの端辺に沿って延在する第1および第2電極と、前記第1および第2電極の間にそれぞれが交差しないように配置される複数の第1導電体とを一体成形する工程と、を備え、 前記複数の第1導電体の短手方向の幅は、前記複数の第1導電体の長手方向中央側よりも、一端部および他端部側の方が大きく、かつ前記幅は2μm乃至10μmである、発熱体シートの製造方法。」 第4 引用文献1及び2の記載事項 1 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。 「【発明を実施するための形態】 【0035】 〔第1実施形態〕 以下、本発明の第1実施形態である電熱窓ガラスを図1?図5を参照しながら説明する。 【0036】 図1には、電熱窓ガラスの全体構成が平面図にて示されている。この図に示されるように、電熱窓ガラス10は、上辺と下辺がほぼ平行で、かつ上辺よりも下辺が長く形成された略矩形状の電熱窓ガラス本体12と、電熱窓ガラス本体12の長手方向に沿って帯状に形成された略長方形状の発熱部14と、この発熱部14の上下に対向するように配置された上下一対の第1電極16及び第2電極18と、を備えている。 【0038】 図2には電熱窓ガラス10の発熱部14が断面図にて示されている。図2では、説明を分りやすくするために各部材の断面を模式的に表している。この図に示されるように、電熱窓ガラス10は、窓ガラス材料からなる2枚のガラス30、32を備えており、2枚のガラス30、32に挟まれた部位には、一方のガラス30に積層された樹脂層34と、樹脂層34に積層された導電性フィルム36と、導電性フィルム36と他方のガラス32との間に介在された樹脂層38と、を備えている。導電性フィルム36の一方の面(樹脂層38側の面)には導電層40が形成されている。 【0040】 導電性フィルム36は、図6に示されるように、支持体としての絶縁性の透明フィルム50と、この透明フィルム50の一方の面に形成された導電層40と、を備えている。図4に示されるように、導電層40は、導電性の金属細線42にて構成された多数の格子の交点を有する多数の金属細線群としてのメッシュ状パターンを有し、発熱部14に形成された粗いメッシュ状パターン43Aからなる発熱区域43と、第1電極16及び第2電極18に形成された細かいメッシュ状パターン44Aからなる電極区域44と、を備えている。すなわち、発熱区域43には、金属細線42の細線間隔が大きいメッシュ状パターン43Aが形成されており、電極区域44には、発熱区域43よりも金属細線42の細線間隔が小さいメッシュ状パターン44Aが形成されている。導電性フィルム36の一方の面には、導電層40(メッシュ状パターン)を形成しない非発熱区域45が設けられており、この非発熱区域45が電熱窓ガラス10の非発熱部20となる。 【0060】 ここで、透明フィルム50上に金属細線42によるメッシュ状パターン43A、44Aを形成するいくつの方法(第1方法?第4方法)について、図5を参照しながら説明する。発熱区域43のメッシュ状パターン43Aと電極区域44のメッシュ状パターン44Aは金属細線42の細線間隔が異なるのみで形成方法は同じであるので、図5では、発熱区域43と電極区域44とを区別せずに説明する。 【0061】 第1方法は、透明フィルム50上に設けられた銀塩感光層を露光し、現像、定着することによって形成された金属銀部にてメッシュ状パターン43A、44Aを構成する方法である。 【0063】 その後、図5(B)に示すように、銀塩感光層58に対して発熱区域43のメッシュ状パターン43A及び電極区域44のメッシュ状パターン44Aの形成に必要な露光を行う。具体的には、発熱区域43では細線間隔が大きいメッシュ状パターンを露光し、電極区域44では発熱区域43よりも細線間隔が小さいメッシュ状パターンを露光する。本実施形態では、発熱区域43及び電極区域44の形成のための露光を同時に行う。 【0073】 次に、第2方法は、例えば透明フィルム上に形成された銅箔上のフォトレジスト膜を露光、現像処理してレジストパターンを形成し、レジストパターンから露出する銅箔をエッチングすることによって、銅箔によるメッシュ状パターンを形成する。 【0083】 (4)金属細線42が直線の時は、対向車のライトなどで光干渉によるスターマークを生じる可能性があり、目障りである。金属細線を曲線にしたり、線と線との間隔を広くとるなどして光干渉を少なくすることができる。金属細線は波線が好ましい。また、金属細線は、網目状でなく交差のない平行線でも可能である。 【0096】 (感光材料)[透明フィルム50] 本実施形態の製造方法に用いられる透明フィルム50としては、フレキシブルなプラスチックフイルムを用いることができる。 【0098】 本実施形態においては、透光性、耐熱性、取り扱い易さ及び価格の点から、上記プラスチックフイルムはポリエチレンテレフタレートフイルムが適しているが、耐熱性・熱可塑性等の必要性により、適宜選択される。 【0131】 〔第2実施形態〕 次に、本発明の第2実施形態の電熱窓ガラスについて以下に説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。 【0132】 図7に示されるように、電熱窓ガラス90は、導電層94が形成された導電性フィルム92を備える点は第1実施形態と同じであるが、導電層94の構成が異なる。すなわち、導電層94は、細い金属細線42で構成されたメッシュ状パターン96Aからなる発熱区域96と、金属細線42よりも太い金属細線97で構成されたメッシュ状パターン98Aからなる電極区域98と、備えている。金属細線42の細線幅は、例えば約20μmであり、金属細線97の細線幅は、例えば約40μmである。電極区域98のメッシュ状パターン98Aには、図3に示す第1実施形態と同様に、導電性ペースト層46、金属箔48が順次積層されて第1電極16及び第2電極18が構成されている。 金属細線42の細線幅は、5?50μmが好ましく、10?30μmが更に好ましい。金属細線97の細線幅は、20μm以上が好ましく、40μm以上が更に好ましい。40μm以上には無限大も含まれる。線幅が無限大とは空間部分がなく電極区域全体が金属層で覆われている状態を表す。」 2 引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。 「3. 発明の詳細な説明 本発明は、電流供給用コレクタストリップ間の表面に配列されかつ印刷及び焼成された導電性組成物からなる狭幅の加熱用導体と、該コレクタストリップ上にその輪郭が重なるように被着され焼成して硬化された電気絶縁性セラミック塗料からなるエナメル又は釉タイプの保護層とを含む電気的に加熱可能な窓ガラスに係る。 ・・・加熱可能窓ガラスにおいて保護層は、電気的導体用の保護層として働かなければならないが、コレクタストリップ上のみならず狭幅の加熱用導体にも被着されている。・・・ コレクタストリップを焼成保護層で覆う場合、加熱用導体のコレクタストリップへの接合帯域自身もこの保護層で覆われ、保護層は電流コレクタストリップを構成する端部を越えて横方向に延在し、接合帯域にもはや外部から接触できない。こうして、これらの接合帯域にシルクスクリーン印刷法で生じた弱い領域が存在する場合、弱い領域の故に欠陥があるこれらの加熱可能窓ガラスを修正することは不可能である。これらの弱い領域は加熱可能窓ガラスを後に使用する際局所的な過剰加熱及び場合によってはそれらの位置における導体の破壊を引き起こすことがある。 加熱用導体が電気メッキで金属層を適用することによって付着される加熱可能窓ガラスでは、エナメルタイプの焼成保護層は電気メッキ前に適用できるだけなので、メッキした金属層はコレクタストリップの保護層の末端までしか延在することかできない。・・・電気メッキで補強した加熱用導体と焼成保護層を設けたコレクタストリップを同時に有する加熱可能窓ガラスの場合、加熱用導体とコレクタストリップ間の遷移帯域に弱くなる部分があることによる困難がより悪化する。というのは加熱用導体の横断面は金属被着によって保護層を構成する端部から増加するからである。 本発明はエナメルタイプの保護層を設けた電流供給用コレクタストリップを有しかつ信頼できる耐久性の要求に基づく要件を満たす加熱可能窓ガラスを提供することを目的としている。 本発明は、保護層下の加熱用導体の末端部を拡幅することによって、加熱用導体の電気抵抗をその末端部で加熱用部分自身の全体より低くすることにある。 本発明に依れば、こうして保護層下にある加熱用導体の末端部に好ましい遷移帯域が設けられる。 加熱用導体の過剰加熱や破壊さえ起こすことがある遷移帯域における弱い箇所の存在がこうして回避される。」(第2頁右上欄第7行?第3頁左上欄第12行。「・・・」は記載の省略を表す。) 第5 引用文献1に記載された発明(引1発明、引1’発明、引1’’発明) 1 上記「第4」1の記載事項から把握できる技術的事項は次のとおりである。 (1) 【0036】の記載事項から、「電熱窓ガラス」に関し、電熱窓ガラス本体の長手方向に沿って帯状に形成された略長方形状の「発熱部」と、この発熱部の上下に対向するように配置された上下一対の「第1電極」及び「第2電極」を備えていることが把握できる。 (2) 【0038】の記載事項から、「電熱窓ガラス」が「2枚のガラス」を備えており、2枚のガラスに挟まれた部位には、一方のガラスに積層された「樹脂層」と、樹脂層に積層された「導電性フィルム」と、導電性フィルムと他方のガラスとの間に介在された「樹脂層」と、導電性フィルムの一方の面に形成された「導電層」とを備えていることが把握できる。 (3) 【0040】の記載事項から、導電性フィルムは、支持体としての絶縁性の「透明フィルム」と、この透明フィルムの一方の面に形成された「導電層」とを備え、導電層は、導電性の金属細線にて構成され、発熱部に形成され発熱区域と、第1電極及び第2電極に形成された「電極区域」を備えていることが把握できる。 (4) 【0063】、【0073】の記載事項から、透明フィルム上の金属細線は、銀塩感光層のパターニングやフォトレジストを用いた銅箔のパターンエッチングにより形成され、また、発熱区域及び電極区域の形成のための露光は同時に行われることが把握できる。 (5) 【0083】の記載事項から、金属細線は交差のない平行線でも可能であることが把握できる。 (6) 【0096】、【0098】の記載事項から、「透明フィルム」の材料としてポリエチレンテレフタレートフイルムが適していることが把握できる。 (7) 【0131】、【0132】の記載事項から、第2実施形態において、発熱区域の金属細線の細線幅は、10?30μmが好ましく、電極区域は全体が金属層で覆われている状態が含まれることが把握できる。 2 上記1によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引1発明」という。)が記載されているといえる。 「電熱窓ガラス本体の長手方向に沿って帯状に形成された略長方形状の発熱部と、発熱部の上下に対向するように配置された上下一対の第1電極及び第2電極と、2枚のガラスを備える電熱窓ガラスであって、 2枚のガラスに挟まれた部位には、一方のガラスに積層された樹脂層と、樹脂層に積層された導電性フィルムと、導電性フィルムと他方のガラスとの間に介在された樹脂層と、導電性フィルムとを備え、 導電性フィルムは、支持体としての絶縁性の透明フィルムと、この透明フィルムの一方の面に形成された導電層とを備え、 導電層は、導電性の金属細線にて構成され、発熱部に形成され発熱区域と、第1電極及び第2電極に形成された電極区域を備え、 金属細線は、銀塩感光層のパターニングやフォトレジストを用いた銅箔のパターンエッチングにより形成され、また、発熱区域及び電極区域の形成のための露光は同時に行われ、 金属細線は交差のない平行線とすることができ、 透明フィルムの材料はポリエチレンテレフタレートフイルムが適しており、 発熱区域の金属細線の細線幅は、10?30μmが好ましく、電極区域は全体が金属層で覆われている、 電熱窓ガラス。」 また、上記1によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引1’発明」という。)が記載されているといえる。 「支持体としての絶縁性の透明フィルムと、この透明フィルムの一方の面に形成された導電層とを備える導電性フィルムであって、 導電層は、導電性の金属細線にて構成され、発熱部に形成され発熱区域と、第1電極及び第2電極に形成された電極区域を備え、 金属細線は、銀塩感光層のパターニングやフォトレジストを用いた銅箔のパターンエッチングにより形成され、また、発熱区域及び電極区域の形成のための露光は同時に行われ、 金属細線は交差のない平行線とすることができ、 透明フィルムの材料はポリエチレンテレフタレートフイルムが適しており、 発熱区域の金属細線の細線幅は、10?30μmが好ましく、電極区域は全体が金属層で覆われている、 導電性フィルム。」 更に、上記1によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引1’’発明」という。)が記載されているといえる。 「支持体としての絶縁性の透明フィルムと、この透明フィルムの一方の面に形成された導電層とを備え、 導電層は、導電性の金属細線にて構成され、発熱部に形成され発熱区域と、第1電極及び第2電極に形成された電極区域を備え、 金属細線は交差のない平行線とすることができ、 透明フィルムの材料はポリエチレンテレフタレートフイルムが適しており、 発熱区域の金属細線の細線幅は、10?30μmが好ましく、電極区域は全体が金属層で覆われている導電性フィルムの製造方法であって、 金属細線は、銀塩感光層のパターニングやフォトレジストを用いた銅箔のパターンエッチングにより形成され、また、発熱区域及び電極区域の形成のための露光は同時に行われる、 導電性フィルムの製造方法。」 第6 進歩性についての検討 1 本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引1発明とを対比すると、両者は少なくとも次の相違点1を有するものと認められる。 <相違点1> 本願発明1は、「複数の第1導電体の短手方向の幅は、前記複数の第1導電体の長手方向中央側よりも、前記一端部および前記他端部側の方が大きく」なる発明特定事項を有しているのに対し、引1発明は、発熱区域の金属細線の幅について、当該発明特定事項を有していない点。 (2) 相違点1についての検討 ア 上記「第4」2の引用文献2の記載事項から把握できる技術的事項は、「電流供給用コレクタストリップ間の表面に配列されかつ印刷及び焼成された導電性組成物からなる狭幅の加熱用導体と、該コレクタストリップ上にその輪郭が重なるように被着され焼成して硬化された電気絶縁性セラミック塗料からなるエナメル又は釉タイプの保護層とを含む電気的に加熱可能な窓ガラス」において、「加熱用導体のコレクタストリップへの接合帯域自身もこの保護層で覆われ」るため、「これらの接合帯域にシルクスクリーン印刷法で生じた弱い領域が存在する場合、弱い領域の故に欠陥があるこれらの加熱可能窓ガラスを修正することは不可能」であり、「これらの弱い領域は加熱可能窓ガラスを後に使用する際局所的な過剰加熱及び場合によってはそれらの位置における導体の破壊を引き起こす」ことがあり、また、「加熱用導体が電気メッキで金属層を適用することによって付着される加熱可能窓ガラス」であっても、「エナメルタイプの焼成保護層は電気メッキ前に適用できるだけなので、メッキした金属層はコレクタストリップの保護層の末端までしか延在することかでき」ず、「加熱用導体とコレクタストリップ間の遷移帯域に弱くなる部分があることによる困難がより悪化する」という問題に対し、「エナメルタイプの保護層を設けた電流供給用コレクタストリップを有しかつ信頼できる耐久性の要求に基づく要件を満たす加熱可能窓ガラスを提供する」ことを課題として、「保護層下の加熱用導体の末端部を拡幅することによって、加熱用導体の電気抵抗をその末端部で加熱用部分自身の全体より低く」し、「加熱用導体の過剰加熱や破壊さえ起こすことがある遷移帯域における弱い箇所の存在」を「回避」するということである。 イ 引1発明の電熱窓ガラスは、2枚のガラスに導電層が挟まれた、いわゆる合わせガラスに関するものであるのに対し、引用文献2に記載された加熱可能窓ガラスは、コレクタストリップを「焼成して硬化された電気絶縁性セラミック塗料からなるエナメル又は釉タイプの保護層」で被覆するものであり、技術分野は異なるといえる。 ウ また、上記アのとおり、引用文献2の記載事項から把握できる技術的事項は、「エナメルタイプの保護層を設けた電流供給用コレクタストリップを有しかつ信頼できる耐久性の要求に基づく要件を満たす加熱可能窓ガラスを提供する」ことを課題とするものであり、当該保護層を有しない引1発明と課題が共通するということはなく、引1発明において、「保護層下の加熱用導体の末端部を拡幅することによって、加熱用導体の電気抵抗をその末端部で加熱用部分自身の全体より低く」し、「加熱用導体の過剰加熱や破壊さえ起こすことがある遷移帯域における弱い箇所の存在」を「回避」することの動機付けはないというほかない。 エ 一方、本願発明1は、第1導電体の幅が「2μm乃至10μm」という、「微細な構造の電熱線を形成する」のに優れている、「フォトリソグラフィとエッチングによる手法」(本願明細書【0006】)を用いた際に、「露光パターンの中央部よりも両端部側がよりエッチング処理が進行し、電熱線の線幅が中央部よりも両端側の方が細くなってしま」い、「バスバー電極との接続部分の電熱線が極端に細くなり、局所的な加熱が生じたり、あるいは、バスバー電極と電熱線とが接触しなくなって断線状態となり、電熱線を加熱できなくなるおそれがある」(【0008】)という課題に対し、上記相違点1に係る本願発明1の構成とすることで、「エッチングによるばらつきで線状導電体8の長手方向端部側のエッチングが想定以上に進行したとしても、端部側の短手方向の幅が小さくなることはなく、断線や抵抗値の部分的な上昇などの不具合を防止できる」(【0056】)という、有利な効果を発揮するものである。 オ したがって、上記相違点1は実質的な相違点であり、また、当業者が容易に想到し得るものでもない。 なお、引用文献3、4は、上記相違点1に係る「複数の第1導電体の短手方向の幅は、前記複数の第1導電体の長手方向中央側よりも、前記一端部および前記他端部側の方が大きく」なることについて記載されたものではない。 (3) 小括 以上のとおりであるから、当業者が引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基いて、上記相違点1に係る本願発明1の構成を、当業者が容易に想到することができたものとは認められない。 よって、本願発明1が進歩性を欠如するということはできない。 2 本願発明2?9について 本願発明2?9は本願発明1を直接的又は間接的に引用するものであり、これら発明についても上記1の本願発明1についての検討と同様、進歩性を欠如するということはできない。 3 本願発明10について 本願発明10と引1’発明とを対比すると、両者は少なくとも上記1(1)の相違点1と同様の相違点を有し、当該相違点については、上記1の本願発明1についての検討と同様、実質的な相違点であり、また、当業者が容易に想到し得るものでもない。 よって、本願発明10が進歩性を欠如するということはできない。 4 本願発明11について 本願発明11と引1’’発明とを対比すると、両者は少なくとも上記1(1)の相違点1と同様の相違点を有し、当該相違点については、上記1の本願発明1についての検討と同様、実質的な相違点であり、また、当業者が容易に想到し得るものでもない。 よって、本願発明11が進歩性を欠如するということはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-02-09 |
出願番号 | 特願2015-17263(P2015-17263) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(C03C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山田 貴之、松本 瞳、宮崎 大輔 |
特許庁審判長 |
日比野 隆治 |
特許庁審判官 |
金 公彦 村岡 一磨 |
発明の名称 | 合わせガラスおよび導電性発熱体 |
代理人 | 川崎 康 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 朝倉 悟 |