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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1370856
審判番号 不服2020-9601  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-08 
確定日 2021-02-24 
事件の表示 特願2017-251433「オブジェクト及び通信プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月26日出願公開,特開2018- 67351,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年7月13日(優先権主張平成27年7月23日)に出願した特願2017-529570号の一部を,平成29年12月27日に新たな特許出願として出願されたものであって,令和1年10月8日付けで拒絶理由通知がされ,令和1年11月29日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がされ,令和2年4月2日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和2年7月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(令和2年4月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1-7に係る発明は,以下の引用文献1に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
1. 米国特許出願公開第2010/0090000号明細書


第3 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6という。)は,令和2年7月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりのものである。

「【請求項1】
第1機器と通信する第1通信インタフェース部と、
第2機器と通信する第2通信インタフェース部と、
前記第1通信インタフェース部を介して前記第1機器から受信した第1情報に基づく第2情報を、前記第2通信インタフェース部を介して前記第2機器へ送信する制御を行うとともに、前記第1通信インタフェース部を介した前記第1機器との通信が終了した場合、Proactiveコマンドに規定されている、前記第2機器へ送信した前記第2情報の削除を要求する要求情報としてのUICC Resetを、前記第2機器へ送信する制御を行う制御部と、
を備えるオブジェクト。
【請求項2】
第1機器と通信する第1通信インタフェース部と、
第2機器と通信する第2通信インタフェース部と、
前記第1通信インタフェース部を介して前記第1機器から受信した第1情報に基づく第2情報を、前記第2通信インタフェース部を介して前記第2機器へ送信する制御を行うとともに、前記第1通信インタフェース部を介した前記第1機器との通信が終了した場合、前記第2機器に関するリセット動作を再リセットさせ、前記第2機器へ送信した前記第2情報の削除を要求する要求情報としてのUICC Resetを、前記第2機器へ送信する制御を行う制御部と、
を備えるオブジェクト。
【請求項3】
第1機器と通信する第1通信インタフェース部と、
第2機器と通信する第2通信インタフェース部と、
前記第1通信インタフェース部を介して前記第1機器から受信した第1情報に基づく第2情報を、前記第2通信インタフェース部を介して前記第2機器へ送信する制御を行うとともに、前記第1通信インタフェース部を介した前記第1機器との通信が終了した場合、自装置から取得した前記第2情報の再読出しを前記第2機器に行なわせ、前記第2機器へ送信した前記第2情報の削除を要求する要求情報としてのUICC Resetを、前記第2機器へ送信する制御を行う制御部と、
を備えるオブジェクト。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1通信インタフェース部が前記第1機器との通信の切断を検出した場合、前記第2機器へ送信した前記第2情報の削除を要求する要求情報を前記第2機器へ送信する制御を行う請求項1から3のうちいずれか1項に記載のオブジェクト。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1通信インタフェース部を介する通信と、前記第2通信インタフェース部を介する通信とを同時に行う請求項1から4のいずれか1項に記載のオブジェクト。
【請求項6】
コンピュータに、
第1通信インタフェース部を介して第1機器から受信した第1情報に基づく第2情報を、第2通信インタフェース部を介して第2機器へ送信するステップと、
前記第1通信インタフェース部を介した前記第1機器との通信が終了した場合、Proactiveコマンドに規定され、前記第2機器へ送信した前記第2情報の削除を要求する要求情報としてのUICC Resetを、前記第2機器へ送信するステップと、
を実行させるための通信プログラム。」


第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1) 本願の原出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,米国特許出願公開第2010/0090000号明細書(以下,これを「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。)

ア 「[0018] FIG. 2 schematically shows a handset device intended to host and communicate with USIM, according to the present invention.
(当審訳:図2は,本発明によるハンドセットがUSIMをホストし,通信しようとすることを概略的に示している。)

[0019] FIG. 3 schematically shows, in a block diagram, a communication between a handset device and a USIM, according to the present invention.
(当審訳:図3は,ブロック図形式による,本発明によるハンドセットとUSIMとの間の通信を概略的に示している。 )

[0020] FIG. 4 schematically shows a packet of data in wireless communication between IC cards, according to the present invention.
(当審訳:図4は,本発明による,ICカードとの無線通信におけるデータパケットを概略的に示している。)

[0021] FIG. 5 schematically shows a sequence of steps executed for selecting one of at least one second IC card for a wireless communication, according to the present invention.
(当審訳:図5は,本発明による,ワイヤレス通信のための少なくとも1枚の第2のICカードから1枚を選択するために実行されるステップのシーケンスを概略的に示している。)

[0022] FIG. 6 schematically shows a sequence of steps executed for deactivating a current IC card and for activating a selected IC card for a wireless communication, according to the present invention. (当審訳:図6は,本発明による,現在のICカードを非アクティブにし,無線通信のために選択されたICカードをアクティブにするためのステップのシーケンスを概略的に示している。)」

イ 「[0029] According to the present invention and with reference to the annexed drawings, a communication method between a handset device and at least an IC card is schematically indicated with numeral reference 10. With reference to FIG. 2, the handset device 1 comprises a slot 2 for hosting a first IC card, a communication between the handset device 1 and the first IC card being based on a handset device-IC card interface, for example, an ISO 7816 protocol.
(当審訳:本発明によれば,添付の図面を参照して,ハンドセットと少なくとも1枚のICカードの間の通信方法は,符号10で概略的に示される。図2を参照すると,ハンドセット1は,例えば,ISO 7816プロトコルに基づくようなハンドセット-ICカードインタフェイスに基づいて,第1のICカードとハンドセット1との間の通信を行うために,第1のICカードをホストするためのスロット2を含んでいる。

[0030] According to one embodiment of the disclosed method, a communication between the handset device 1 and at least a second IC card is provided. The first IC card 4 is inserted in typical way inside the slot 2 of the handset device 1 and it is in communication with it according to the handset device-IC card interface.
(当審訳:開示された方法の1つの実施形態によれば,ハンドセット1と少なくとも1枚の第2のICカードの間の通信が提供される。第1のICカード4は,ハンドセット1のスロット2の内部に一般的な方法で挿入されており,ハンドセット-ICカードインタフェースによって通信されている。

[0031] At least a second IC card is inserted inside an additional box 6, for example, external to the handset device 1, comprising at least one slot for hosting the corresponding at least one second IC card. In the example of FIG. 2, the at least one second IC card is illustratively represented with three IC cards 5a, 5b, 5c, without limiting the scope of protection to the number of IC card hosted by the additional box 6. The connection between the IC cards 5a, 5b, 5c and the additional box 6 is realized in a typical way, for example, they are hosted inside three corresponding slots, under an hardware point of view, similar to the slot 2 provided by the handset device 1.
(当審訳:少なくとも1枚の第2のICカードは,例えば,ハンドセット1の外部にあり,対応する少なくとも1つの第2のICカードをホストする少なくとも1つのスロットを有する追加のボックス6の内部に挿入されている。追加のボックス6によってホストされているICカードの枚数の保護の範囲を限定するものではないが,図2の例では,少なくとも1枚の第2のICカードは,一例として,3枚のICカード5a,5b,5cが示されている。ICカード5a,5b,5cと追加のボックス6との間の接続は,一般的な方法で実現され,例えば,3個の対応するスロット内でホストされ,ハードウェアの点では,ハンドセット1に形成されたスロット2と同様のものである。」

ウ 「[0033] According to one embodiment, data exchanged between the first IC card 4 and the handset device 1, based on a typical handset-IC card interface, is forwarded onto a wireless personal interface, to one of the IC card 5a, 5b, 5c hosted in the additional device 6.
(当審訳:一実施形態によれば,一般的なハンドセット-ICカードインタフェースによって,第1のICカード4とハンドセット1との間で交換されるデータは,無線パーソナルインタフェース上で,追加のボックス6にホストされているICカード5a,5b,5cの1つに送られる。)

[0034] The first IC card 4 and the at least a second IC cards 5a, 5b, 5c are provided with the wireless personal interface 7, supporting the wireless communication between the first IC card 4 and the additional one or more IC cards 5a, 5b, 5c. For example, the wireless personal interface 7 is supported by the additional box 6, while the at least second IC cards 5a, 5b, 5c is connected in typical way to the additional box 6.
(当審訳:第1のICカード4と少なくとも1枚の第2のICカード5a,5b,5cには,無線パーソナルインタフェース7が提供され,第1のICカード4と追加の1つまたは複数のICカード5a,5b,5cの間での無線通信をサポートしている。例えば,少なくとも1枚の第2のICカード5a,5b,5cは追加のボックス6に一般的な方法で接続されおり,無線パーソナルインタフェース7は,追加のボックス6によってサポートされている。)

・・・中略・・・

[0038] Without limiting the scope of the present disclosure, a ZigBee communication protocol is considered to better explain the wireless personal communication between the first IC card 4 and the second IC cards 5a, 5b, 5c. A ZigBee communication protocol is indicated for implementing a wireless communication in an IC card, due to its low hardware use and low power consumption. A different wireless personal communication protocol could be taken in consideration without altering the scope of the present disclosure.
(当審訳:本開示の範囲を限定するものではないが,ZigBee通信プロトコルが,第1のICカード4と第2のICカード5a,5b,5cの間の無線パーソナル通信としてより良く説明できる。単純なハードウェアを使用し,電力消費が少ないために,ZigBee通信プロトコルは,ICカードの無線通信の手段として示されている。異なる無線パーソナル通信プロトコルが,本開示の範囲を変化させることなく考慮に入れることができる。)

・・・中略・・・

[0043] Again with reference to FIG. 3, the handset device 1 sends an ISO 7816 compliant APDU command to the first IC card 4, according to the typical handset-IC card interface. Such first IC card 4 forwards the ADDU command to the additional box 6, through the wireless personal interface 7. The additional box 6 receives the APDU command through the wireless personal interface 7 and forwards it to the at least second IC card 5a, 5b, 5c, for example according to ISO 7816 standard protocol.
(当審訳:再び図3を参照すると,ハンドセット1は,一般的なハンドセット-ICカードインタフェースによって,第1のICカード4にISO規格7816に準拠したAPDUコマンドを送る。そして,第1のICカード4は,無線パーソナルインタフェース7を介して,APDUコマンドを追加のボックス6に転送する。追加のボックス6は,無線パーソナルインタフェース7を介して,APDUコマンドを受信し,さらに,例えばISO 7816の標準的プロトコルに従ってAPDUコマンドを第2のICカード5a,5b,5cに転送する。)」

エ 「[0053] Being the handset device 1 designed to use a single IC card at a time, the communication method also provides a phase for selecting a specific IC card among the second IC cards 5a, 5b, 5c, inserted inside the additional box 6. The phase for selecting a specific IC card may allow a user to decide which subscriber line he desires to use, for example, through a graphic interface on a display of the handset device 1, driven by an application loaded inside the first IC card 4, for example, using SIM Application Toolkit commands defined in ETSI Technical Specification 11.14. The switching of a second IC card 5a, 5b, 5c, may also be managed through an application stored inside the handset device 1, adding an administrative menu for setting an active IC card 5a, 5b, 5c.
(当審訳:同時には1枚のICカードを使用するように設計されたハンドセット装置1では,通信方法に,追加のボックス6の内部に挿入されている第2のICカード5a,5b,5cのうち,特定のICカードを選択するためのフェーズが設けられる。特定のICカードを選択するためのフェーズでは,例えば,ETSI技術仕様書11.14に規定されたSIM Application Toolkit commandsを使用した第1のICカード4内にロードされているアプリケーションによって動作する,ハンドセット1のディスプレイ上のグラフィック・インタフェースを介して,ユーザが望む加入者回線を決定することができる。ICカード5a,5b,5cをアクティブに設定する管理メニューが追加することで,第2のICカード5a,5b,5cの切り替えもハンドセット1内のアプリケーションを介して管理できる。)

[0054] The administrative menu allows the user to query which IC card among the second IC cards 5a, 5b, 5c is available, for example, which IC card is inserted in the additional box 6. Once the one of the second IC cards is selected, the first IC card 4 issues a REFRESH proactive command, for example, according to the ETSI TS 11.14, to the handset device 1 for switching to the selected IC card 5a, 5b, 5c.
(当審訳:管理メニューは,ユーザに追加のボックス6に挿入されている第2のICカード5a,5b,5cのうちどのICカードが利用するか尋ねる。一度,第2のICカードの1枚が選択されると,第1のICカード4は,選択されたICカード5a,5b,5cへの切替えのために,ハンドセット1に,例えば,ETSI TS 11.14によるproactiveコマンドのREFRESHを発行する。)」

オ 「



カ 「



キ 「



ク 「



ケ 上記イの段落[0029]には,「ハンドセット1は,」「ISO 7816プロトコルに基づくようなハンドセット-ICカードインタフェイスに基づいて,第1のICカードとハンドセット1との間の通信を行う」ことが,また,段落[0030]には,「第1のICカード4は,ハンドセット1のスロット2の内部に一般的な方法で挿入されており,ハンドセット-ICカードインタフェースによって通信されている」と記載されている。
してみると,引用文献1には,“ハンドセット1のスロット2の内部に挿入され,ISO 7816プロトコルに基づくハンドセット-ICカードインタフェースを介して通信を行う,第1のICカード4”が記載されているといえる。

コ 上記イの段落[0030]には,「ハンドセット1と少なくとも1枚の第2のICカードの間の通信が提供される」と,さらに,段落[0031]には,「図2の例では,少なくとも1枚の第2のICカードは,一例として,3枚のICカード5a,5b,5cが示されている」と記載されている。

サ 上記イの段落[0031]の「対応する少なくとも1つの第2のICカードをホストする少なくとも1つのスロットを有する追加のボックス6の内部に挿入されている」,及び上記コの記載内容によれば,引用文献1には,“第2のICカード5a,5b,5cは,3つのスロットを有する追加のボックス6の内部に挿入されている”ことが記載されているといえる。

シ 上記ウの段落[0034]には,「第1のICカード4と少なくとも1枚の第2のICカード5a,5b,5cには,無線パーソナルインタフェース7が提供され,第1のICカード4と追加の1つまたは複数のICカード5a,5b,5cの間での無線通信をサポートしている。例えば,少なくとも1枚の第2のICカード5a,5b,5cは追加のボックス6に一般的な方法で接続されおり,無線パーソナルインタフェース7は,追加のボックス6によってサポートされている」と,また,段落[0038]には,「ZigBee通信プロトコルが,第1のICカード4と第2のICカード5a,5b,5cの間の無線パーソナル通信としてより良く説明できる」と記載されている。
してみると,引用文献1には,“第1のICカード4と第2のICカード5a,5b,5cとは,無線パーソナルインタフェース7であるZigBeeによって無線通信がサポートされており,また,第2のICカード5a,5b,5cは,接続されている追加のボックス6を介して無線インタフェース7がサポートされるものである”ことが記載されているといえる。

ス 上記カのFig.3(図3),及び上記ウの段落[0043]の記載によれば,図における「1 HANDSET」「4 ZIGBEE PROXY」,「6 HOSTING DEVICE」,「5A,5B,5C SELECTED USIM」は,発明の詳細な説明における「ハンドセット1」,「第1のICカード4」,「追加のボックス6」,「第2のICカード5a,5b,5c」に対応しているといえる。
してみると,上記キのFig.5(図5)より,「STK MENU」なる情報が,「第2のICカード5a,5b,5c 」の1枚から「追加のボックス6」を介して「第1のICカード4」に送信され,さらに「第1のICカード4」から「ハンドセット1」に送信されていることが看取できる。
さらに,上記アの段落[0021]には,「図5は,本発明による,ワイヤレス通信のための少なくとも1枚の第2のICカードから1枚を選択するために実行されるステップのシーケンスを概略的に示している」と,また,上記
エの段落[0053]には,「同時には1枚のICカードを使用するように設計されたハンドセット装置1では,通信方法に,追加のボックス6の内部に挿入されている第2のICカード5a,5b,5cのうち,特定のICカードを選択するためのフェーズが設けられる。特定のICカードを選択するためのフェーズでは,例えば,ETSI技術仕様書11.14に規定されたSIM Applicasion Toolkit commandsを使用した第1のICカード4内にロードされているアプリケーションによって動作する,ハンドセット1のディスプレイ上のグラフィック・インタフェースを介して,ユーザが望む加入者回線を決定することができる。ICカード5a,5b,5cをアクティブに設定する管理メニューが追加することで,第2のICカード5a,5b,5cの切り替えも,ハンドセット1内のアプリケーションを介して管理できる」と記載されており,図5における「STK MENU」は,「SIM Applicasion Toolkit commands」を使用した「管理メニュー」に対応するといえる。
したがって,引用文献1には,“3枚の第2のICカードから1枚を選択する際に,STK MENUという管理メニューの情報が,第2のICカード5a,5b,5cの1枚から追加のボックス6を介して第1のICカード4に送信され,さらに第1のICカードからハンドセット1に送信される”ことが記載されているといえる。

セ 上記アの段落[0022]には,「図6は,本発明による,現在のICカードを非アクティブにし,無線通信のために選択されたICカードをアクティブにするためのステップのシーケンスを概略的に示している」とあり,また,上記エの段落[0054]には,「管理メニューは,ユーザに追加のボックス6に挿入されている第2のICカード5a,5b,5cのうちどのICカードが利用するか尋ねる。一度,第2のICカードの1枚が選択されると,第1のICカード4は,選択されたICカード5a,5b,5cへの切替えのために,ハンドセット1に,例えば,ETSI TS 11.14によるproactiveコマンドのREFRESHを発行する。」と記載されている。
ここで,図6においては,「ハンドセット1」が「ユーザ」に「REFRESH(USIM RESET)」を発行しているように記載されているが,上記エの段落[0054]の記載からすると,「第1のICカード4」が「ハンドセット1」にproactiveコマンドの「REFRESH(USIM RESET)」を発行するように記載されるべきであったところの誤記であると認められる。
そうすると,上記アの段落[0022],上記エの段落[0054],上記クのFig.6(図6)から,引用文献1には,“管理メニューによって,3枚の第2のICカード5a,5b,5cのうちいずれかが選択されると,現在の第2のICカードを非アクティブにし,選択された第2のICカードをアクティブにし,また,第1のICカード4はハンドセット1にproactiveコマンドにおけるREFRESHのUSIM RESETを発行する”ことが記載されているといえる。

(2)上記アないしセの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「ハンドセット1のスロット2の内部に挿入され,ハンドセット1からのコマンドをISO 7816プロトコルに基づくハンドセット-ICカードインタフェースを介して通信を行う第1のICカード4において,
ハンドセット1は,第2のICカード5a,5b,5cとの間の通信を行うものであり,
第2のICカード5a,5b,5cは,3つのスロットを有する追加のボックス6の内部に挿入されており,
第1のICカード4と第2のICカード5a,5b,5cとは,無線パーソナルインタフェース7であるZigBeeによって無線通信がサポートされており,また,第2のICカード5a,5b,5cは,接続されている追加のボックス6を介して無線インタフェース7がサポートされるものであって,
3枚の第2のICカードから1枚を選択する際には,SYK MENUという管理メニューの情報が,第2のICカード5a,5b,5cの1つから追加のボックス6を介して第1のICカード4に送信され,さらに第1のICカードからハンドセット1に送信され,
管理メニューによって,3枚の第2のICカード5a,5b,5cのうちいずれかが選択されると,現在の第2のICカードを非アクティブにし,選択された第2のICカードをアクティブにし,また,第1のICカード4はハンドセット1にproactiveコマンドにおけるREFRESHのUSIM RESETを発行する,
第1のICカード4。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「第2のICカード5a,5b,5c」が,本願発明1の「第1機器」に相当する。
そして,引用発明は「第1のICカード4と第2のICカード5a,5b,5cとは,無線パーソナルインタフェース7であるZigBeeによって無線通信がサポートされ」るものであるから,引用発明の「第1のICカード4」には「ZigBee」用のインタフェース部があることは明らかである。
してみると,引用発明の「ZigBee」用のインタフェース部は,本願発明1の「第1機器と通信する第1通信インタフェース部」に相当する。

イ 引用発明の「ハンドセット1」は,本願発明1の「第2機器」に相当する。
そして,引用発明の「第1のICカード4」は,「ISO 7816プロトコルに基づくハンドセット-ICカードインタフェースを介して通信を行う」ものであるから,引用発明の「第1のICカード4」には「ハンドセット-ICカードインタフェース」用のインタフェース部があることは明らかである。
してみると,引用発明の「ハンドセット-ICカードインタフェース」用のインタフェース部は,本願発明1の「第2機器と通信する第2通信インタフェース部」に相当する。

ウ 本願発明1における「第1情報」及び「第2情報」に関して,本願の発明の詳細な説明の段落【0016】には「・・・。また、第2情報は、第1情報そのものであってもよいし、第2通信インタフェースの通信仕様で受信した第1情報を、第2通信インタフェースの通信仕様にプロトコル変換した情報であってもよい」と記載されている。
一方、引用発明は「3枚の第2のICカードから1枚を選択する際には,STK MENUという管理メニューの情報が,第2のICカード5a,5b,5cの1つから追加のボックス6を介して第1のICカード4に送信され,さらに第1のICカードからハンドセット1に送信され」るものであり,さらに,「第2のICカード5a,5b,5c」から「第1のICカード4」の送信は「ZigBee」で,また,「第1のICカードからハンドセット1」の「送信」は,「ハンドセット-ICカードインタフェースを介して」行うものである。
してみると,引用発明の「第1のICカード4」は,「ZigBee」用のインタフェース部を介して「第2のICカード5a,5b,5cの1つ」から受信した「STK MENUという管理メニューの情報」を,「ISO 7816プロトコルに基づくハンドセット-ICカードインタフェース」用のインタフェース部を介して「ハンドセット1」に送信する制御を行っているといえ,また,その制御のために制御部を有していることは明らかである。さらに,「第1のICカード4」のこの制御部は,「ZigBee」で受信した「STK MENU」の情報を,「ハンドセット1」に送信する際には,「ISO 7816プロトコル」用に変換しているものと認められる。
さらに,引用発明は,「管理メニューによって,3枚の第2のICカード5a,5b,5cのうちいずれかが選択されると,現在の第2のICカードを非アクティブにし,選択された第2のICカードをアクティブにし,また,第1のICカード4はハンドセット1にproactiveコマンドにおけるREFRESHのUSIM RESETを発行する」ものであり,「第1のICカード4」は,「現在の第2のICカード」との通信が「非アクティブ」となった時に,proactiveコマンドに規定されている,REFRESHのUSIM RESETを,ハンドセット1に送信する制御を行っているといえ,この制御も「第1のICカード4」の上記制御部によって行っているものと認められる。また,「USIM」が「UICC」の一形態であることは明らかである。
したがって,引用発明の「STK MENUという管理メニューの情報」は,本願発明1の「第1情報」,及び「第2情報」に相当する。また,引用発明の「proactiveコマンドにおけるREFRESHのUSIM RESET」と,本願発明1の「Proactiveコマンドに規定されている,前記第2機器へ送信した前記第2情報の削除を要求する要求情報としてのUICC Reset」とは,後記の点で相違するものの,“Proactiveコマンドに規定されている,UICC Reset”の点では共通する。
してみると,引用発明の「第1のICカード4」の上記「制御部」は,本願発明1の「前記第1通信インタフェース部を介して前記第1機器から受信した第1情報に基づく第2情報を、前記第2通信インタフェース部を介して前記第2機器へ送信する制御を行うとともに、前記第1通信インタフェース部を介した前記第1機器との通信が終了した場合、Proactiveコマンドに規定されている、UICC Resetを、前記第2機器へ送信する制御を行う制御部」に相当する。

エ 引用発明の「第1のICカード4」は,「ZigBee」用のインタフェース部,「ハンドセット-ICカードインタフェース」用のインタフェース部,「制御部」を備えるものであるから,本願発明1の「オブジェクト」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,以下の一致点と相違点とがある。

〈一致点〉
「第1機器と通信する第1通信インタフェース部と,
第2機器と通信する第2通信インタフェース部と,
前記第1通信インタフェース部を介して前記第1機器から受信した第1情報に基づく第2情報を,前記第2通信インタフェース部を介して前記第2機器へ送信する制御を行うとともに,前記第1通信インタフェース部を介した前記第1機器との通信が終了した場合,Proactiveコマンドに規定されている,UICC Resetを,前記第2機器へ送信する制御を行う制御部と,
を備えるオブジェクト。」

〈相違点〉
「UICC Reset」が,本願発明1では「前記第2機器へ送信した前記第2情報の削除を要求する要求情報としてのUICC Reset」であるのに対して,引用発明では「USIM RESET」にその旨の特定がされていない点。

(2)相違点についての判断
引用発明における「USIM RESET」は,「ICカード5a,5b,5c」の切替えの際に発行されるものである。そして,「ICカード5a,5b,5c」の切替えには、必ずしも「ハンドセット1」へ送信した「STK MENU」の削除を要求する必要はないものである。してみると,引用発明において,「USIM RESET」を「前記第2機器へ送信した前記第2情報の削除を要求する要求情報」とする理由が存在しない。
したがって,引用発明に基づいて,上記相違点に係る構成を想起することは,当業者といえども容易とはいえない。
以上のとおりであるから,本願発明1が引用発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1の「UICC Reset」を更に「前記第2機器に関するリセット動作を再リセットさせ」るとして限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明3について
本願発明3は,本願発明1の「UICC Reset」を更に「自装置から取得した前記第2情報の再読出しを前記第2機器に行なわせ」るとして限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明4-5について
本願発明4-5は,本願発明1-3を更に限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明6について
本願発明6は,本願発明1の「オブジェクト」を「通信プログラム」の観点から記載したに過ぎないものであるので,同様に,当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第6 原査定について
<特許法29条2項について>
審判請求時の補正により,本願発明1ないし6は上記第3に示したとおりのものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1(上記第4の引用文献1)に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-02-05 
出願番号 特願2017-251433(P2017-251433)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 小林 秀和
山澤 宏
発明の名称 オブジェクト及び通信プログラム  
代理人 野村 進  
代理人 西澤 和純  
代理人 三木 雅夫  
代理人 覚田 功二  
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