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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1370888
異議申立番号 異議2020-700766  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-03-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-07 
確定日 2021-02-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第6676817号発明「フラネオール由来のオフフレーバーが軽減された飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6676817号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯の概要
特許第6676817号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成31年2月25日を出願日とする特願2019-31312号の一部を、令和1年10月2日に新たな特許出願としたものであって、令和2年3月16日にその特許権の設定登録がされ、令和2年4月8日にその特許公報が発行され、その後、その全請求項に係る発明の特許に対し、令和2年10月7日に斉藤 出(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?3に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明1」などと、それらをまとめて「本件発明」ということがある。)である。

「【請求項1】
4ppm以上のフラネオールを含む、紅茶抽出物を含有する飲料であって、
カテキン類を1?500ppm含有し、pHが5.0?8.0である、上記飲料。
【請求項2】
Brixが1以下である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
紅茶抽出物を含有する飲料を製造する方法であって、
フラネオールの濃度を4ppm以上、カテキン類の濃度を1?500ppm、pHを5.0?8.0に調整する工程を含む、上記方法。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は次のとおりである。

[理由1]本件発明1?3は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2?甲第7号証に記載された技術的事項及び甲第10?甲第12号証に示される本件出願時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
[理由2]本件発明1?3について、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に適合しない。
したがって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[理由3]本件発明1?3について、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しない。
したがって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[理由4]本件発明1?3について、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合しない。
したがって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第4 当審の判断
1 理由1について
(1)甲各号証及びそれらの記載事項
甲各号証及びそれらの記載事項は以下のとおりである(なお、以下甲第1号証を「甲1」、などという)。

甲1:特開2011-97905号公報
甲2:特開2008-295370号公報
甲3:特開2008-148604号公報
甲4:特開2007-167003号公報
甲5:特開2015-80564号公報
甲6:村松敬一郎編,シリーズ≪食品の科学≫ 茶の科学,株式会社朝倉書店,1991年3月15日 初版第1刷,pp.108?111
甲7:特開2007-68464号公報
甲8:≪食品添加物≫ 「サンフェノン90LB-OP」のパンフレット,太陽化学株式会社,2015年7月8日発行
甲9:衛藤英男他6名編,新版 茶の機能-ヒト試験から分かった新たな役割,一般社団法人農山漁村文化協会,2013年11月1日 第1刷発行,pp.382?387
甲10:特開2008-285425号公報
甲11:生活衛生,(2004),Vol.48,No.2,pp.92?96
甲12:特開2005-279208号公報
甲13:中林敏郎他2名著,緑茶・紅茶・烏龍茶の化学と機能,弘学出版株式会社,2001年11月30日初版復刻版,pp.75?81

甲1:
1a)「【請求項1】
加熱殺菌して製造される容器詰茶飲料であって、以下(a)?(c)を含有する茶飲料:
(a)アミノ酸 40ppm以上
(b)カフェイン 150ppm以上
(c)フラネオール 50ppb以上。
・・・
【請求項3】
カテキン類の含量が600ppm以下である、請求項1又は2に記載の茶飲料。」

1b)「【0001】
本発明は、アミノ酸を高濃度に含有する茶飲料に関し、より詳細には、加熱劣化臭が緩和された風味良好なアミノ酸を高濃度に含有する容器詰茶飲料に関する。」

1c)「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0008】
本発明は、高濃度にアミノ酸を含有する茶飲料特有の加熱劣化臭を簡便な方法で緩和し、飲用しやすい容器詰茶飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、アミノ酸を高濃度に配合した茶飲料に、種々のフレーバー成分を配合して、加熱劣化臭に対する影響を検討した。その結果、フラネオールに特異的にアミノ酸を高濃度に配合した茶飲料の加熱劣化臭を緩和する作用があることを見出した。また、本発明者らはさらに検討を重ねた結果、特定量以上のカフェインが存在すると、フラネオールの加熱劣化臭の緩和作用が増強され、果実様風味を有するフラネオールの量を減らす、すなわち茶本来の香気香味にほとんど影響を及ぼすことなく、不快な加熱劣化臭のみを緩和することができることを見出し、本発明を完成するに至った。」

1d)「【0015】
・・・一般にフラネオールは、パイナップルフレーバー、ストロベリーフレーバー、ラズベリーフレーバー、シュガータイプフレーバーに有用とされており、最終製品での使用濃度は5.0?10.0ppm程度とされている(合成香料 化学と商品知識、印藤元一著、化学工業日報社、2005年)。
【0016】
本発明では、フラネオールを特定量含有させることにより、高濃度にアミノ酸を含有する茶飲料における加熱劣化臭を緩和させることができる。フラネオールの加熱劣化臭を緩和する作用は、その添加量が多いほど高い効果を発揮するが、フラネオールの持つ果実様風味が茶飲料本来の香気香味を損なうことがある。本発明の茶飲料では、特定量のカフェインを含有させることにより、フラネオールの作用を相乗的に増強し、フラネオールを極めて低い使用濃度、すなわち茶飲料本来の香気香味に影響を及ぼすことのない濃度で、高濃度にアミノ酸を含有する茶飲料の加熱劣化臭を緩和させることができる点に特長がある。低い濃度のフラネオールの作用を増強しうるカフェイン含量は、茶飲料全体に対して150ppm以上、好ましくは200ppm以上であり、カフェインの上限は、通常、500ppm、好ましくは450ppm、より好ましくは400ppm程度である。
【0017】
本発明におけるフラネオールは、最終製品(加熱殺菌処理された茶飲料)中、50?200ppb、好ましくは50?100ppb程度である。」

1e)「【0036】
実施例1.フラネオール添加茶飲料(1)
原料茶としてアミノ酸含量の高い一番茶かぶせ茶を用い、茶葉の乾燥重量に対して25倍量の水を抽出溶媒として用いた。55℃の温水で7分間抽出した後、茶葉を分離し、さらに遠心分離処理して粗大な粉砕茶組織や茶粒子などの固形分を除去して、抽出液Aを得た。
【0037】
この抽出液Aをアミノ酸含量が75ppmとなるように希釈した(比較例1)。これに、フラネオール(純度95%以上)を表1の濃度になるように添加し、L-アスコルビン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加してpHを6.7に調整した後、125℃×7分間殺菌することにより本発明の緑茶飲料(本発明品1?3)を得た。
【0038】
得られた緑茶飲料のフラネオール、ピラジン類、アミノ酸、カフェイン及びカテキン含有量を測定し、官能評価を実施した。官能評価は、旨み、すっきり感、加熱劣化臭の有無について、専門パネラー5名でそれぞれ6段階(5点;著しく強く感じる、4点;強く感じる、3点;感じる、2点;やや感じる、1点;わずかに感じる、0点;全く感じない)で評価し、その平均点を算出した。
【0039】
結果を表1に示す。表1から明らかなように、フラネオール濃度が40ppbの茶飲料(比較例1)では加熱劣化臭(レトルト臭)が顕著であったのに対し、フラネオール濃度が50ppb以上の茶飲料(本発明品1?3)では、加熱劣化臭が緩和されており、旨み豊かでまったりとした香気香味であった。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例2.フラネオール添加茶飲料(2)
実施例1で得た茶抽出液Aを用い、アミノ酸含量が40ppmとなるように希釈し、実施例1と同様にフラネオールを表2の濃度となるように添加した(比較例3)。これに、実施例1と同様にフラネオールを表2の濃度となるように添加し、L-アスコルビン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加してpHを6.7に調整した後、125℃×7分間殺菌することにより本発明の緑茶飲料を得た(本発明品4)。
【0042】
また、比較例2として、実施例1の抽出液Aをアミノ酸含量が20ppmとなるように希釈し、アミノ酸含有茶抽出物を添加して表2の成分となるように調節した茶飲料を製造した。すなわち、カラム型抽出機に緑茶葉(火入れ度:弱)を封入して25℃の水を通液し、低温抽出液(ア)を得、次にこの抽出残渣に75℃の温水を通液して高温抽出液(イ)を得、この抽出残渣に酵素(プロテアーゼ及びペクチナーゼ)処理を実施し酵素反応液(ウ)を得、上記の(ア)及び(ウ)の全量を混合してアミノ酸含有茶抽出物(Brix0.8)を得、これを実施例1の抽出液Aをアミノ酸含量が20ppmとなるように調整した希釈液に混合して表2の比較例2の茶飲料を得た。
【0043】
さらに、比較例4として、強火で火入れ加工した茶葉(一番かぶせ茶)を用い、茶抽出液Aと同様に抽出を行って抽出液を得、これをアミノ酸含量が40ppmとなるように希釈して茶飲料を得た。
【0044】
比較例2?4についても、実施例1と同様にpH調整、殺菌を行った後、本発明品4、及び比較例2?4について、実施例1と同様に、各種成分の分析及び官能評価を行った。
結果を表2に示す。フラネオールを50ppb以上、カフェインが200ppmとなるように調節された茶飲料(本発明品4)は、加熱劣化臭が緩和されており、旨み豊かでまったりとした香気香味であった。一方、フラネオールが50ppb以上配合されていてもカフェインが150ppm未満である茶飲料(比較例4)は加熱劣化臭が有効に緩和されていなかった。
【0045】
【表2】

【0046】
実験例3.フラネオール含有茶抽出物を添加した茶飲料
実験例1と同様の方法で原料茶を抽出し、遠心分離処理して抽出液を得た後、L-アスコルビン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加してpH6.7に調整した。これに以下の方法により調製したフラネオール含有茶抽出物を0.1%添加し、125℃×7分間殺菌することにより本発明の緑茶飲料(本発明品5)を得た。得られた緑茶飲料について、実施例1に記載の方法にしたがってフラネオール濃度、アミノ酸、カフェイン及びカテキン含有量を測定し、官能評価を行った。
【0047】
フラネオール含有茶抽出物(Brix8.4、フラネオール含量;6ppm)は、以下の方法にて作成した。
秋冬番茶を強火で火入れした焙じ茶を、常圧下でSV(空間速度)50h^(-1)で水蒸気蒸留を行い、留出液を得た。次いで茶葉を抽出し、この抽出液に活性炭処理を行なった後、遠心分離と濾過により活性炭を分離・清澄化させ、減圧下で濃縮を行った。上記留出液と濃縮液を配合し、得られたエキスを80℃×30sec.で加熱殺菌し、フラネオール含有茶抽出物を得た。
【0048】
結果を表3に示す。フラネオール含有茶抽出物を添加した場合でも、加熱劣化臭緩和の効果が認められた。
【0049】
【表3】



甲2:
2a)「【請求項1】
緑茶抽出物の精製物を配合したpH2?6の容器詰飲料であって、次の成分(A)及び(B):
(A)非重合体カテキン類 0.03?0.6質量%、
(B)フラネオール、ソトロン、ホモフロノール、マルトール、エチルマルトール、バニリン、エチルバニリン、アントラニル酸メチル及びN-メチルアントラニル酸メチルよりなる群から選ばれる1種以上を、(B)/(A)(質量比)が0.00005?0.5の範囲で含有する非茶系容器詰飲料。
・・・
【請求項3】
成分(B)を0.00001?0.3質量%で含有する請求項1又は2記載の容器詰飲料。」

2b)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
・・・
従って、本発明の目的は、高濃度にカテキンを配合した飲料における苦みや渋みを緩和し飲用しやすい容器詰飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、緑茶抽出物の精製物を配合したカテキンを高濃度に含有する飲料に、種々のフレーバー成分を配合して、苦みや渋みに対する影響を検討してきたところ、柑橘類に多く含まれているリモネンに比べて、特定の成分をカテキンに対して一定の比率で配合することにより、カテキン特有の苦みや渋みが緩和された飲料が得られることを見出した。」

2c):「【実施例】
・・・
【0064】
苦み・渋み評価方法
市販飲料のなかで、スポーツドリンク類を飲用するユーザーを対象に、一回に一品ずつ飲用する官能評価試験を行った(10名)。比較例2((B)成分無添加品)を基準として、下記の基準で評価した。
5;比較例2より苦みや渋みが増した。
4;比較例2より苦みや渋みがやや増した。
3;比較例2と苦みや渋みが同等。
2;比較例2より苦みや渋みがやや弱くなった。
1;比較例2より苦みや渋みが弱くなった。
【0065】
(1)カテキン製剤水溶液(a)
カテキン含量が30%の緑茶抽出物にタンナーゼ処理(タンナーゼ濃度2%;反応温度20℃)を行い、スプレードライ法により噴霧乾燥させる。得られたパウダーをエタノールと水の混合溶媒(水:エタノール=15:85)でカテキンを抽出した後に混合液に対して8質量部の活性炭を添加して精製を行って、カテキン製剤水溶液(A)を得た。得られたカテキン製剤(緑茶抽出物の精製物)のガレート体率は44質量%であった。固形分中の非重合体カテキン類濃度は71質量%であった。固形分は23.2質量%であった。固形分中の没食子酸濃度は3.1質量%であった。
・・・
【0067】
実施例1?4及び比較例1、2
表1記載の処方で、酸性飲料(pH3.5)を製造した。飲料は、UHT殺菌装置により98℃30秒間殺菌し、透明PETボトルに充填した。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から明らかなように、フラネオール、ソトロン、ホモフロノール、マルトール、エチルマルトール、バニリン、エチルバニリン、アントラニル酸メチル及びN-メチルアントラニル酸メチルから選ばれる1種以上を特定の範囲で含有することにより、苦みや渋みの感じ方が緩和されることが判明した。これに対し、これらの成分を含まない飲料においては、苦みや渋みの感じ方が強調されることがわかった。」

甲3:
3a)「【請求項2】
2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-メチルピラジン、3-エチル-2,5-ジメチルピラジン及び2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンからなる群から選ばれる2種以上からなることを特徴とする茶飲料用添加剤。
・・・
【請求項4】
請求項1又は2記載の茶飲料用添加剤を0.5?10000ppb濃度添加したことを特徴とする茶飲料。」

3b)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、後半の厚味のある味、飲みごたえ感を茶飲料に付与する素材が無いという点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者らは各種天然素材を検索し、茶飲料への香味成分の寄与を検討した結果、微量の2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-メチルピラジン又は3-エチル-2,5-ジメチルピラジンの添加が、茶飲料へ後半の厚味のある味、飲みごたえ感を付与することを見いだし、さらには2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを組み合わせると相乗的効果を示すことを見いだし、本発明を完成させた。・・・
【発明の効果】
【0006】
本発明の茶飲料用添加剤を茶飲料に添加することにより、後半に厚味のある味、飲みごたえ感を付与し、嗜好性あふれる茶飲料を提供することができる。」

3c)「【0010】
また、本発明でいう2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン(2,5-dimethyl-4-hydroxy-3(2H)-furanone)とは、一般にはフラネオール(フィルメニッヒ社の商品名)として知られ、・・・最終製品での使用濃度は5.0?10.ppmとされている(「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社、2005年3月22日増補改訂版発行)。
・・・
【0014】
本発明で用いられる2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンの、茶飲料に対して使用可能な濃度範囲は1?10000ppbの範囲であるが、本発明においては1?5000ppb濃度を添加して用いる。添加濃度が1ppb未満であると、人によっては風味が弱く飲みごたえ感として感じなくなる場合があり、添加濃度が5000ppbを超えると、風味がややアーティフィシャルに感じられる場合がある。本発明の効果をさらに十分に発揮するには、添加濃度を50?3000ppbにすることが最も望ましい。
・・・
【0017】
本発明の茶飲料用添加剤が添加される茶飲料の例としては、緑茶、紅茶、ウーロン茶などの茶葉を常法により熱水、温水または冷水で抽出して得られる茶抽出液、茶の香味成分を適宜調合して得られる茶香味を有する調合飲料などが挙げられ、また、これら茶飲料に種々の健康素材を添加した各種混合茶飲料が挙げられる。」

3d)「【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げ、更に詳細に説明する。
・・・
【0065】
[実施例32?42](紅茶飲料)
80℃の湯400mlに対して、紅茶葉(三井農林社製)7g、L-アスコルビン酸ナトリウム0.2gを添加し、5分間抽出を行った。抽出後固液分離を行い、砂糖40g、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ社製)0.3g、水を加えて1,000mlとし、炭酸水素ナトリウムにてpHを5.5に調整後、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-メチルピラジン、3-エチル-2,5-ジメチルピラジン及び2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを各種濃度(単位ppb)混合物添加し、121℃×10分間殺菌することにより本発明の紅茶飲料を調製した。
【0066】
[比較例6]
80℃の湯400mlに対して、紅茶葉(三井農林社製)7g、L-アスコルビン酸ナトリウム0.2gを添加し、5分間抽出を行った。抽出後固液分離を行い、砂糖40g、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ社製)0.3g、水を加えて1,000mlとし、炭酸水素ナトリウムにてpHを5.5に調整後、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを2500ppb濃度添加し、121℃×10分間殺菌することにより比較例6の紅茶飲料を調製した。
【0067】
[試験例6]
実施例32?42の紅茶飲料と、比較例6の紅茶飲料の香味について、熟練したパネル20名により官能評価を行った。評価の基準は、比較例6をコントロール(4点)とし、飲みごたえ感については非常に強い(7点)?非常に弱い(1点)、嗜好性については非常に高い(7点)?非常に低い(1点)とする7段階評価で行った。評価点の平均と香味のコメントを表7に示した。
【0068】
【表7】

【0069】
表7の結果から、本発明の化合物を相互に組み合わせることにより、のどごし感増強作用として相乗効果を示すことが明らかである。」

甲4:
4a)「【請求項3】
2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを1?1000ppb濃度添加したことを特徴とする茶飲料。」

4b)「【0001】
本発明は、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンからなる茶飲料用添加剤及び該添加剤を含有する香味料組成物、該香味料組成物を含有する茶飲料並びに2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを添加することを特徴とする茶飲料への甘味増強方法に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、高級茶類、特に高級抹茶類が本来有している、まったりとした自然な甘さを茶飲料に付与する素材が無いという点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者らは各種天然素材を検索し、茶飲料への香味成分の寄与を検討した結果、微量の2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンの添加が茶飲料へまったりとした自然な甘さを付与することを見いだし、本発明を完成させた。」

4c)「【0007】
以下に、本発明を実施の形態に即して詳細に説明する。本発明でいう2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンとは、一般にはフラネオール(フィルメニッヒ社の商品名)として知られ、・・・最終製品での使用濃度は5.0?10.0ppmとされている(合成香料 化学と商品知識 印藤元一著 化学工業日報社 2005年3月22日増補改訂版発行)。
【0008】
本発明で用いられる2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンは、茶飲料に対して、通常は1?1000ppb濃度添加して用いる。添加濃度が1ppb未満であると、人によっては風味が甘く感じなくなる場合があり、添加濃度が1000ppbを超えると、甘い風味がやや砂糖風に感じられる場合がある。本発明の効果を十分に発揮するには、添加濃度を10?300ppbにすることが最も望ましい。・・・
【0010】
本発明の茶飲料用添加剤が添加される茶飲料の例としては、緑茶、紅茶、ウーロン茶などの茶葉を常法により熱水、温水または冷水で抽出して得られる茶抽出液、茶の香味成分を適宜調合して得られる茶香味を有する調合飲料などが挙げられ、また、これら茶飲料に種々の健康素材を添加した各種混合茶飲料が挙げられる。」

4d)「【0031】
[実施例10](紅茶飲料)
80℃の湯400mlに対して、紅茶葉(三井農林社製)7g、L-アスコルビン酸ナトリウム0.2gを添加し、5分間抽出を行った。抽出後固液分離を行い、砂糖40g、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ社製)0.3g、水を加えて1,000mlとし、炭酸水素ナトリウムにてpHを5.5に調整後、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを100ppb濃度添加し、121℃×10分間殺菌することにより本発明の紅茶飲料を調製した。このものは、紅茶本来の甘味が増すとともに、渋味がマスキングされた美味しいものであった。」

甲5:
5a)「【請求項1】
下記化合物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンによるにおいの抑制剤:
ω-6-ヘキサデセンラクトン;
・・・。」

5b)「【0001】
本発明は、フラネオールによるにおいの抑制剤に関する。」

5c)「【0030】
上記フラネオールによるにおいの抑制剤、およびフラネオールによるにおいを抑制するための化合物または組成物は、上記に挙げたOR5K1アンタゴニストに加えて、他の消臭効果を有する成分を、その目的に応じて適宜含有していてもよい。当該消臭効果を有する他の成分としては、化学的または物理的な消臭効果を有する公知の消臭剤が何れも使用できるが、例えば、植物から抽出された消臭有効成分(例えば、緑茶抽出物)、有機酸、各種アミノ酸およびこれらの塩、グリオキサール、酸化剤、フラボノイド類、カテキン類、ポリフェノール類、活性炭やゼオライトなどの多孔性物質、シクロデキストリン類等の包接剤、光触媒、各種マスキング剤、などが挙げられる。さらに、上記抑制剤、およびフラネオールによるにおいを抑制するための化合物または組成物は、消臭剤や防臭剤に一般的に添加される任意の成分を含んでいてもよい。」

甲6:
6a)「



甲7:
7a)「【請求項1】
水素型イオン交換樹脂に接触させてカフェインを低減させた紅茶抽出液と非重合体カテキン類含有組成物を配合することにより得られる、飲料中、非重合体カテキン類を40mg/100mL?300mg/100mLの濃度で、カフェイン/非重合体カテキン類との比率が0.001?0.15であり、非重合体カテキン類中のガレート体含有率が40?80質量%であり、pHが3.5?7である容器詰紅茶飲料。」

7b)「【0001】
本発明は、非重合体カテキン類を高濃度で含有し、カフェイン量が低減された容器詰紅茶飲料に関する。」

甲8:
8a)「 サンフェノン90LB-OP
緑茶中に含まれる緑茶ポリフェノール(カテキン類)は、抗菌・抗酸化などの効果を持つ事が知られています。本品は、緑茶の茶葉から抽出・精製したポリフェノール粉末であり・・・。
・・・
【用途】
食品全般、特に飲料にご利用いただけます。
【成分】
チャ抽出物 100%(ポリフェノール含量 80%以上、カテキン含量
70%以上、EGCg 含量 40%以上 カフ
ェイン含量 1%以下)」(2?13行)

甲9:
9a)「1.茶の苦渋味物質
茶には,ポリフェノール,カフェイン,アミノ酸,糖類,有機酸などが含まれている。これらの成分のうち,茶の苦渋味に関与するのは,主にポリフェノールやカフェインである。ポリフェノールとしては,カテキン類,テアフラビン類およびテアルビジン類が,緑茶や紅茶の主要な苦渋味物質である。」(382ページ、1の項目1?4行)

9b)「渋味物質の多くは,タンニンと総称される一群の化合物であり,その多くは植物由来のポリフェノールである。その種類は数千種類以上にのぼり化学構造も多種多様であることから,ポリフェノールの渋味の強さや渋味の受容メカニズムは物質の構造によって,それぞれ異なるものと考えられている。タンニンは,タンパク質やリン脂質膜と結合しやすく細胞膜を透過しないため生体内に取り込まれにくいことから,渋味の生理的意義は苦味とは異なる可能性がある(苦味と同様に危険な物質の信号であるとの説もある)。」(384ページ、下から2行?385ページ、4行)

甲10:
10a)「【請求項3】
紅茶からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする酪酸及び/又はカプロン酸による臭気に対する消臭剤。」

甲11:
11a)「一方、お茶を飲み終えたあとの茶殻についても、かつて生活の知恵として、例えばたたみの掃除やにおい消しというような利用がされてきた。」(92ページ、左欄、I.の項目3?5行)

11b)「II.臭気物質の吸収実験
1.方 法
1)実験材料
市販の煎茶(日本産)・・・および紅茶(セイロン、スリランカ産)を用いた。これらについて、
○1(原文は○の中に1。以下同様。)未使用の茶葉(以下生試料)
○2茶を浸出した後の茶葉(以下茶殻試料)
のそれぞれを使用した。・・・
2)実験方法
・・・
テドラーバッグ(容量5L)に各試料をそれぞれ5gずつ入れ、・・・各悪臭物質を含む臭気を3Lずつ注人し、・・・テドラーバッグ内の臭気物質濃度を測定した。・・・

2.実験結果
各臭気物質濃度に対する吸収効果の測定結果をFig. 1からFig. 4に示す。・・・これらの図から見ると、ブランクの場合と比べて濃度の低滅が最も小さいのが硫化水素であり、一方、アンモニアに関しては高い吸収効果が見られた。また、メチルメルカプタンやトルエンについては、生試料よりも茶殻試料の方が、濃度低下は大きかった。・・・しかしながら、茶葉の臭気物質に対する吸収性能については概ね評価できるものと考える。
・・・
IV.考 察
1.臭気物質吸収量
Table 2に、実験開始120分後のデータ(ブランクと試料の濃度差)を用いて試料1gあたりの各臭気物質の吸収量の概算値を求めて示した。トルエンやメチルメルカプタンについては茶殻試料の方が吸収量が大きい傾向にある。硫化水素については両者であまり差が認められなかった。何れにしても、物質ごとではアンモニアに対する吸収量が何れの試料とも大きかったほかは、全般的に吸収量が小さい。

2.カテキン含有量と臭気吸収量との関係
Fig. 5に測定したカテキン類含有量の合計値とTable 2に示した臭気物質吸収量との関係を示す。カテキンの消臭効果については、宇井ら[5] が、カテキンの精製品を用いて、液層でのメチルメルカプタンに対する消臭効果を確認している。したがって、カテキン含有量が多いほど茶葉の消臭効果が高いことが期待されるが、茶殻の方が吸収量が大きく、結果としてFig. 5にも示されるように、カテキン含有量が多い場合に吸収量が多いとは言えず、むしろ少ない方が、吸収量が多い傾向も認められた。従って、茶葉による臭気物質の吸収作用にはカテキン以外の要素が大きく関与しているものと考えられる。ここで、今回測定していない茶葉中の含有成分については、測定したカテキン類と同様に茶殻の方が少ないと考えられるので、これら含有有効成分より茶葉骨格上の作用、たとえばカテキンの抜けた痕に取り込まれている可能性もある。」(92ページ、左欄、下から4行?96ページ、左欄、7行)

甲12:
12a)「【請求項1】
通気性を有する難燃性ペーパー状素材(1)、(1)を用いて、紅茶(2)、(2)を小ブロック形状に連接封入したことを特徴とする焼き魚用消臭パック。」

12b)「【0003】
・・・本発明は、かかる課題の解消を図るために開発したものであり、芳香を放つ紅茶を用いて、焼き魚をしても大半の匂いを吸着し、焼き魚の匂いが消臭される焼き魚用消臭パックを提供しようとするものである。」

甲13:
13a)「

」(78?79ページ、表VI-6)

(2)引用発明
甲1(摘示1a?1e)には、アミノ酸、カフェイン、フラネオールを所定量含有し、アミノ酸を高濃度に含有する容器詰茶飲料及びその製造方法についての記載があるところ(摘示1a?1c)、実施例1及び2、実験例3に、「本発明品1」?「本発明品5」として、アミノ酸を40又は75ppm、カフェインを200、350ppm、フラネオールを50、100又は200ppb、カテキン類を300又は550(当審注:単位が不明である。)含有する緑茶飲料及び所定の方法による該飲料の製造方法が記載されている(摘示1e)。
したがって、甲1には次に示す発明(以下「引用発明1-1」及び「引用発明1-2」という。)が記載されていると認める。
「1)原料茶としてアミノ酸含量の高い一番茶かぶせ茶を用い、茶葉の乾燥重量に対して25倍量の水を抽出溶媒として用い、55℃の温水で7分間抽出した後、茶葉を分離し、さらに遠心分離処理して粗大な粉砕茶組織や茶粒子などの固形分を除去して、得た抽出液Aをアミノ酸含量が40、75ppmとなるように希釈し、これに、フラネオール(純度95%以上)を所定の濃度となるように添加し、L-アスコルビン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加してpHを6.7に調整した後、125℃×7分間殺菌することにより得た、アミノ酸を40又は75ppm、カフェインを200又は350ppm、フラネオールを50、100又は200ppb、カテキン類を300又は550含有する緑茶飲料(本発明品1?4)、又は
2)上記抽出液AにL-アスコルビン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加してpH6.7に調整し、これに、秋冬番茶を強火で火入れした焙じ茶を、常圧下でSV(空間速度)50h^(-1)で水蒸気蒸留を行い、留出液を得、次いで茶葉を抽出し、この抽出液に活性炭処理を行なった後、遠心分離と濾過により活性炭を分離・清澄化させ、減圧下で濃縮を行い、上記留出液と濃縮液を配合し、得られたエキスを80℃×30sec.で加熱殺菌して得たフラネオール含有茶抽出物を0.1%添加し、125℃×7分間殺菌することにより得た、アミノ酸を75ppm、カフェインを350ppm、フラネオールを50ppb、カテキン類を550含有する緑茶飲料(本発明品5)。」(引用発明1-1)

「1)原料茶としてアミノ酸含量の高い一番茶かぶせ茶を用い、茶葉の乾燥重量に対して25倍量の水を抽出溶媒として用い、55℃の温水で7分間抽出した後、茶葉を分離し、さらに遠心分離処理して粗大な粉砕茶組織や茶粒子などの固形分を除去して、得た抽出液Aをアミノ酸含量が40、75ppmとなるように希釈し、これに、フラネオール(純度95%以上)を所定の濃度となるように添加し、L-アスコルビン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加してpHを6.7に調整した後、125℃×7分間殺菌することによる、アミノ酸を40又は75ppm、カフェインを200又は350ppm、フラネオールを50、100又は200ppb、カテキン類を300又は550含有する緑茶飲料(本発明品1?4)の製造方法、又は
2)上記抽出液AにL-アスコルビン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加してpH6.7に調整し、これに、秋冬番茶を強火で火入れした焙じ茶を、常圧下でSV(空間速度)50h^(-1)で水蒸気蒸留を行い、留出液を得、次いで茶葉を抽出し、この抽出液に活性炭処理を行なった後、遠心分離と濾過により活性炭を分離・清澄化させ、減圧下で濃縮を行い、上記留出液と濃縮液を配合し、得られたエキスを80℃×30sec.で加熱殺菌して得たフラネオール含有茶抽出物を0.1%添加し、125℃×7分間殺菌することによる、アミノ酸を75ppm、カフェインを350ppm、フラネオールを50ppb、カテキン類を550含有する緑茶飲料(本発明品5)の製造方法。」(引用発明1-2)

(3)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と引用発明1-1とを対比する。
引用発明1-1はフラネオールを含む点で本件発明1と一致する。
引用発明1-1は、一番茶かぶせ茶の抽出物を含有する緑茶飲料であるといえるところ、茶抽出物を含有する飲料である点で、本件発明1と一致する。
カテキン類及びその含量について、甲1には、「【0024】・・・本明細書中カテキン類とは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレートを合わせての総称であり、カテキン類含量は、上記8種の合計量に基づいて定義される。」と記載され、当該記載の技術的内容は、本件明細書【0011】の記載と同様であるから、引用発明1-1は、カテキン類を含有する点で本件発明1と一致する。
引用発明1-1のうち、本発明品1?4については、pHを6.7に調整後に、加熱殺菌しているが、甲1に「【0027】茶飲料用調合液には、L-アスコルビン酸等の酸化防止剤や、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤を添加してもよい。・・・容器詰緑茶飲料においては、通常、pH6.0?6.4程度であるが、本発明の茶飲料は、フラネオールの抗菌活性を期待できることから、6.4を超えるpHに設定できるという特徴もある。したがって、加熱殺菌後の茶飲料のpHが6.4?7.0になるように調合液のpHを調整することが好ましい。」との記載があること、加熱殺菌によって、pHが大きく変動することはないと考えられることから、上記本発明品1?4のpHは本件発明1の「5.0?8.0」に相当すると認める。また、本発明品5についても、L-アスコルビン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加してpH6.7に調整していること、及び上記甲1の記載からみて、そのpHは本件発明1の「5.0?8.0」に相当すると認める
したがって、本件発明1と引用発明1-1とは、
「フラネオールを含む、茶抽出物を含有する飲料であって、カテキン類を含有し、pHが5.0?8.0である、上記飲料。」である点で一致し、以下の3点で相違する。

相違点1:フラネオールの濃度について、本件発明1は「4ppm以上」であるのに対し、引用発明1-1は「50、100又は200ppb」である点

相違点2:茶抽出物、飲料について、本件発明1が「紅茶抽出物」、「飲料」であるのに対し、引用発明1-1は「一番茶かぶせ茶を用い、茶葉の乾燥重量に対して25倍量の水を抽出溶媒として用い、55℃の温水で7分間抽出した後、茶葉を分離し、さらに遠心分離処理して粗大な粉砕茶組織や茶粒子などの固形分を除去して、得た抽出液」、「緑茶飲料」である点

相違点3:カテキン類の濃度について、本件発明1は「1?500ppm」であるのに対し、引用発明1-1は「300又は550」である点

<相違点1、2について>
事案に鑑み、相違点1及び2について併せて検討する。
甲1には、フラネオールを50ppb以上含有する容器詰茶飲料であること(摘示1a)、一般にフラネオールは、最終製品での使用濃度は5.0?10.0ppm程度とされていること(摘示1d)が記載されている。
一方で、甲1には、解決しようとする課題が、高濃度にアミノ酸を含有する茶飲料特有の加熱劣化臭を簡便な方法で緩和し、飲用しやすい容器詰茶飲料を提供することであり、課題を解決するための手段が、フラネオールに特異的にアミノ酸を高濃度に配合した茶飲料の加熱劣化臭を緩和する作用があることを見出し、また、特定量以上のカフェインが存在すると、フラネオールの加熱劣化臭の緩和作用が増強され、果実様風味を有するフラネオールの量を減らす、すなわち茶本来の香気香味にほとんど影響を及ぼすことなく、不快な加熱劣化臭のみを緩和することができることを見出し、発明を完成するに至った旨が記載されており(摘示1c)、一般的な記載として、フラネオールの濃度は「最終製品(加熱殺菌処理された茶飲料)中、50?200ppb、好ましくは50?100ppb程度である。」ことが記載されている(摘示1d)。
してみると、甲1には、フラネオールを50ppb以上含有することが記載されているとはいえ、カフェインの存在により、フラネオールの量を減らし、茶本来の香気香味にほとんど影響を及ぼすことなく、不快な加熱劣化臭のみを緩和することができることが記載されているといえるから、一般的な記載における上限である200ppbを大きく超える4ppm以上のフラネオールを含有する飲料とすることが示唆されているとはいえない。
また、甲1には紅茶抽出物を含有する飲料とすることについて何ら記載・示唆はない。
したがって、引用発明1-1において、紅茶抽出物を含有するものとした上でフラネオールの濃度を4ppm以上のものとすることが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
甲2(摘示2a?2c)には、高濃度にカテキンを配合した飲料における苦みや渋みを緩和し飲用しやすい容器詰飲料を提供することを目的として、緑茶抽出物の精製物を配合した容器詰飲料について、フラネオール等を0.00001?0.3質量%で含有することが記載されているところ、紅茶抽出物を含有する飲料についてフラネオールをどの程度配合するかについての記載・示唆はない。
したがって、甲2に記載された技術的事項を参酌しても、引用発明1-1において、紅茶抽出物を含有するものとした上でフラネオールの濃度を4ppm以上のものとすることが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
甲3(摘示3a?3d)には、後半の厚味のある味、飲みごたえ感を茶飲料に付与する素材が無いという解決しようとする課題に対して、微量の2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-メチルピラジン又は3-エチル-2,5-ジメチルピラジンの添加が、茶飲料へ後半の厚味のある味、飲みごたえ感を付与することを見いだし、さらには2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン(当審注:フラネオール)を組み合わせると相乗的効果を示すことを見いだし、発明を完成したことが記載されており(摘示3b)、フラネオールの使用可能な濃度範囲が1?10000ppbの範囲であること、緑茶、紅茶等の茶抽出液を調合できること(摘示3c)、実施例・比較例として、紅茶飲料におけるフラネオールの濃度が2000又は2500ppbであること(摘示3d)が記載されているが、引用発明1-1は、一番茶かぶせ茶、すなわち緑茶を原料茶とする抽出物を含有する飲料であって、甲3に記載された発明とは課題の共通性もないから、甲3に記載された技術的事項を参酌しても、引用発明1-1において、紅茶抽出物を含有するものとした上でフラネオールの濃度を4ppm以上のものとすることが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
甲4(摘示4a?4d)には、高級茶類、特に高級抹茶類が本来有している、まったりとした自然な甘さを茶飲料に付与する素材が無いという解決しようとする課題に対して、微量の2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンの添加が茶飲料へまったりとした自然な甘さを付与することを見いだし、発明を完成させたことが記載されており(摘示4b)、フラネオールの添加濃度は1?1000ppbであること、添加濃度が1000ppbを超えると、甘い風味がやや砂糖風に感じられる場合があること、緑茶、紅茶等の茶抽出液を調合できること(摘示4a、4c)、実施例として、フラネオールを100ppb添加した紅茶飲料(摘示4d)が記載されているところ、添加濃度の上限は1000ppb(1ppm)であり、また、引用発明1-1は、一番茶かぶせ茶、すなわち緑茶を原料茶とする抽出物を含有する飲料であって、甲4に記載された発明とは課題の共通性もないから、甲4に記載された技術的事項を参酌しても、引用発明1-1において、紅茶抽出物を含有するものとした上でフラネオールの濃度を4ppm以上のものとすることが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
甲5(摘示5a?5c)には、各種化合物を有効成分とするフラネオールのにおいの抑制剤について、また、該抑制剤に含有させることができる他の消臭効果を有する成分としてカテキン類が記載されており、甲6(摘示6a)には、紅茶の味成分の分析例が記載されており、甲7(摘示7a、7b)には、非重合体カテキン類を高濃度で含有し、カフェイン量が低減された容器詰紅茶飲料が記載されており、甲10(摘示10a)には、紅茶からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする酪酸及び/又はカプロン酸による臭気に対する消臭剤が記載されており、甲11(摘示11a、11b)には、お茶を飲み終えたあとの茶殻について、かつて生活の知恵として、例えばたたみの掃除やにおい消しというような利用がされてきたこと、紅茶の茶殻等が臭気物質の吸収作用を有することが記載されており、甲12(摘示12a、12b)には、通気性を有する難燃性ペーパー状素材(1)、(1)を用いて、紅茶(2)、(2)を小ブロック形状に連接封入したことを特徴とする焼き魚用消臭パックが記載されているところ、いずれの文献にも、紅茶抽出物を含有する飲料において、フラネオールの濃度を4ppm以上のものとすることは記載も示唆もされていないから、これら文献の記載事項を参酌しても、引用発明1-1において、紅茶抽出物を含有するものとした上でフラネオールの濃度を4ppm以上のものとすることが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

そして、本件明細書の記載からみて、本件発明1は、飲用時のフラネオールのオフフレーバーが軽減されたpHが5.0以上の紅茶抽出物を含有する飲料を提供することができるという効果を奏するということができる。

してみると、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2?甲第7号証に記載された技術的事項及び甲第10?甲第12号証に示される本件出願時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に特定するものであるから、引用発明1-1との対比において、上記相違点1?3と同様の相違点が存在する。
したがって、上記アで本件発明1について述べたのと同様の理由により、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2?甲第7号証に記載された技術的事項及び甲第10?甲第12号証に示される本件出願時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明3について
上記アにおいて本件発明1と引用発明1-1との対比で述べたのと同様にして、本件発明3と引用発明1-2とを対比する。
上記アで述べたことに加え、引用発明1-2においては、フラネオール、カテキン類の濃度及びpHを調整する工程を含むといえる。
したがって、本件発明3と引用発明1-2とは、
「茶抽出物を含有する飲料を製造する方法であって、フラネオールの濃度、カテキン類の濃度、pHを5.0?8.0に調整する工程を含む、上記方法。」である点で一致し、以下の3点で相違する。

相違点4:フラネオールの濃度について、本件発明3は「4ppm以上」であるのに対し、引用発明1-2は「50、100又は200ppb」である点

相違点5:茶抽出物、飲料について、本件発明3が「紅茶抽出物」、「飲料」であるのに対し、引用発明1-2は「一番茶かぶせ茶を用い、茶葉の乾燥重量に対して25倍量の水を抽出溶媒として用い、55℃の温水で7分間抽出した後、茶葉を分離し、さらに遠心分離処理して粗大な粉砕茶組織や茶粒子などの固形分を除去して、得た抽出液」、「緑茶飲料」である点

相違点6:カテキン類の濃度について、本件発明3は「1?500ppm」であるのに対し、引用発明1-2は「300又は550」である点

上記相違点4?6は、上記アで示した相違点1?3と同様の相違点であるから、それらについての判断も上記アで示したのと同様である。
したがって、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2?甲第7号証に記載された技術的事項及び甲第10?甲第12号証に示される本件出願時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえず、本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはえいない。

2 理由2について
(1)申立理由
理由2についての特許異議申立人の主張の具体的な理由の概要は次のとおりである。
実施例1で用いたサンフェノン90LB-OP(太陽化学株式会社;カテキン類70%)は、紅茶抽出物ではなく、緑茶抽出物であるから、実施例には紅茶抽出物を含有する飲料は一切開示されておらず、本件明細書の詳細な説明には、本件発明の適切な実施例が記載されているとは認められない。そのため、本件発明が対象とする「紅茶抽出物を含有する飲料のフラネオールに由来するオフフレーバーを軽減する」との課題に対する解決手段として、本件発明の構成によって期待する効果が得られるかどうかは全く不明である。
また、サンフェノン90LB-OPについて、紅茶から緑茶への訂正は認められるべきではない(甲13、甲9の記載を援用している。)。
さらに、本件明細書の発明の詳細な説明には、フラネオールのオフフレーバーを解決する手段として、本件発明1の配合を採用したことが記載されているところ、実施例1では、精製されたカテキン類70%を含有する紅茶抽出物(サンフェノン90LB-OP、ただし、実際は緑茶抽出物)を用いた評価結果しか開示されていないが、本件発明1では紅茶抽出物は精製品であるかどうかについて一切特定がなく、本件明細書の発明の詳細の説明の記載範囲より広い。このような広範囲な記載は、発明を実施するために、当業者に施行錯誤を強いるものである。同様のことは、本件発明2及び3にもいえる。
なお、精製されていない紅茶抽出物まで本件発明が適用できることについて、本件明細書は十分に開示されていない。精製されていない紅茶抽出物には、アミノ酸や糖類など様々な成分が存在し、これらの成分の共存下において、フラネオールのオフフレーバーをカテキン類で抑制することを示すことが理解できるほどに十分な説明や実施例はなされていないからである。本件特許の明細書の有効な実施例1から理解できるのは、カテキン類70%を含む紅茶抽出物をフラネオール濃度4?60ppmにおいて、pH5?8のときに1?500ppmのカテキン類がフラネオールのオフフレーバーを抑制できることのみである。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件発明1?3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているとはいえないから、本件発明1?3について、発明の詳細な説明の記載は、特許法36条第4項第1号に適合しない。

(2)判断
以下の観点に立って、検討する。
物の発明における発明の「実施」とは、その物の生産、使用等をする行為をいう(特許法第2条第3項第1号)から、特許法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」(実施可能要件)とは、その物を生産することができ、かつ、その物を使用できることである。したがって、物の発明については、明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を生産することができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。

ア 本件明細書の記載
本件明細書には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラネオールを含有する飲料において、フラネオール濃度が4ppm以上になると、オフフレーバー、すなわち刺激の強い香りが生じる。特に、pH5.0以上の飲料においては、オフフレーバーが一層強く感じられることが本発明者により見いだされた。本発明は、フラネオールを含有するpH5.0以上の飲料において、飲用時に感じられるフラネオールに由来するオフフレーバーを軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の事情に鑑み、本発明者は、飲料に関し、フラネオール由来のオフフレーバーの軽減に有効な成分を探索した。鋭意検討の結果、カテキン類が当該オフフレーバーの軽減に寄与し得ることを見出した。このような知見に基づいて、本発明を完成させた。
【0006】
本発明により、以下が提供される。但し、本発明の範囲はこれに限定されない。
(1)(a)カテキン類を1?500ppm含有し、(b)フラネオールを4ppm以上含有し、(c)pHが5.0?8.0である、飲料。
(2)Brixが1以下である、(1)の飲料。
(3)茶抽出物を含有する、(1)又は(2)の飲料。」
「【0008】
(フラネオール)
本発明の飲料は、フラネオールを特定量で含有する。本発明の飲料は、フラネオールを4ppm以上、・・・含有する。pHが5.0以上の飲料において、フラネオールを4ppm以上含有する場合に、オフフレーバーが強く感じられるため、本発明によるオフフレーバーの軽減効果を得る上で好ましい。飲料中のフラネオールの濃度が60ppmを超える場合、本発明によるオフフレーバーの軽減効果は得られるが、オフフレーバーが十分に軽減しないことがある。
【0009】
本発明で用いるフラネオールは、特に限定されないが、精製品の他、粗製品であってもよい。例えば、フラネオールを含有する天然物又はその加工品(植物抽出物、精油、植物の発酵物、これらの濃縮物等)であってもよい。・・・。
【0010】
本発明の飲料中のフラネオールの含有量は、公知のLC-MS法にて測定できる。・・・
【0011】
(カテキン類)
本発明の飲料は、カテキン類を含有する。これにより、フラネオールのオフフレーバーが軽減される。本明細書において、「カテキン類」とは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートの総称を表す。従って、本発明の実施の形態では、カテキン類は、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートからなる群から選択される1以上を含んでいればよい。なお、確認のために記載するが、上記のカテキン類の含有量は、前記8種の各化合物の含有量の合計を意味するものとする。
【0012】
本発明のカテキン類は、特に限定されないが、精製品の他、粗製品でも良く、カテキン類を含有する天然物もしくはその加工品、例えば茶抽出物やその濃縮物の形態であってもよい。カテキン類を含有する植物の抽出物又はその濃縮物は、紅茶、緑茶、烏龍茶、プーアル茶などのカメリア・シネンシスに属する茶葉類等を原料として用い、調製することができる。中でも、本発明の効果の側面から、紅茶葉より得られる抽出物を好適に用いることができる。
【0013】
本発明の飲料中のカテキン類の濃度は、1?500ppmであり、・・・。
【0014】
(pH)
本発明の飲料のpHは5.0?8.0であり、・・・飲料のpH調整は、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、重曹等のpH調整剤を用いて適宜行うことができる。飲料のpHは市販のpHメーターを使用して容易に測定することができる。
【0015】
(Brix)
本発明の飲料のBrix(ブリックス)は、特に限定されないが、1以下であることが好ましい。・・・Brixは、糖度計や屈折計などを用いて得られるBrix値によって評価することができる。・・・」
「【0017】
(飲料)
本発明の飲料は、清涼飲料であれば特に限定されない。例えば、栄養飲料、機能性飲料、フレーバードウォーター(ニアウォーター)系飲料、茶系飲料(紅茶、ウーロン茶、緑茶等)、コーヒー飲料、炭酸飲料などいずれであってもよい。本発明の飲料は、一実施形態において、茶飲料であることが好ましい。ここで「茶飲料」とは、茶葉の抽出物や穀類の抽出物を主成分として含有する飲料であり、具体的には、緑茶、ほうじ茶、ブレンド茶、麦茶、マテ茶、ジャスミン茶、紅茶、ウーロン茶、杜仲茶などが挙げられる。本発明において特に好ましい茶飲料は、紅茶飲料である。」
「【0019】
(発明の効果)
本発明によれば、飲用時のフラネオールのオフフレーバーが軽減されたpHが5.0以上の飲料を提供することができる。本明細書において「オフフレーバー」というときは、飲用時に感じる刺激的な香りを意味する。」
「【実施例】
【0020】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書においては、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0021】
[実施例1]
カテキン類として、紅茶抽出物(サンフェノン90LB-OP(太陽化学株式会社;カテキン類70%)を用いた。飲料中のフラネオール濃度及びカテキン類の濃度が表1のようになるように、水にフラネオール及びチャ抽出物を添加し、飲料を調製した。クエン酸又は水酸化ナトリウムを用いて飲料のpHを表1に示すように変化させた。全ての飲料のBrixは1以下であった。
【0022】
それぞれの飲料について、フラネオールのオフフレーバーの強さを官能で評価した。以下の基準に沿って、専門パネル3名が、以下のとおり5点、3点、1点のサンプルを作成し、それらと照合しながら、オフフレーバーの強さを評価した。3名の専門パネルの点数の平均を算出し、3点以下を合格とした。
5点:フラネオールを60ppm添加した水
3点:フラネオール3ppm添加した水
1点:水
結果を表1に示す。サンプル11はフラネオールのオフフレーバーはほとんど感じなかったが、カテキン類由来の苦味が感じられ、飲みやすい飲料ではなかった。
【0023】
【表1】

【0024】
これらより、フラネオールのオフフレーバーは、飲料のpHが5.0以上のときに知覚されることがわかった。これらの飲料にカテキン類を添加すると、オフフレーバーが軽減されることが示された。
【0025】
一方、pH3.5の飲料では、フラネオールのオフフレーバーはあまり問題にならないことがわかった。また、この飲料にカテキン類を添加してもオフフレーバーの強さは変わらないこともわかった。
【0026】
また、フラネオールを4?60ppmを含有する飲料に、カテキン類を1?500ppm添加した飲料は全て、オフフレーバーが軽減され、飲みやすい飲料であった。」

イ 判断
発明の詳細な説明には、一般的な記載として、本発明は、カテキン類がフラネオール由来のオフフレーバーの軽減に寄与し得ることを見出したことに基づくものであることが記載されているところ(【0005】)、飲料は、フラネオールを4ppm以上含有すること、フラネオールは、特に限定されないが、精製品の他、粗製品であってもよいこと、飲料中のフラネオールの含有量は、公知のLC-MS法にて測定できること(【0008】?【0010】)、「カテキン類」とは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートの総称を表すこと、カテキン類の含有量は、前記8種の各化合物の含有量の合計を意味するものとすること、カテキン類は、特に限定されないが、精製品の他、粗製品でもよく、カテキン類を含有する天然物もしくはその加工品、例えば紅茶等を原料とする茶抽出物やその濃縮物の形態であってもよいこと、カテキン類の濃度は、1?500ppmであること(【0011】?【0013】)、飲料のpHは5.0?8.0であること、飲料のpH調整は、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、重曹等のpH調整剤を用いて適宜行うことができること、飲料のpHは市販のpHメーターを使用して容易に測定することができること(【0014】)、飲料のBrix(ブリックス)は、特に限定されないが、1以下であることが好ましく、糖度計や屈折計などを用いて得られるBrix値によって評価することができること(【0015】)、飲料は、清涼飲料であれば特に限定されないが、茶葉の抽出物や穀類の抽出物を主成分として含有する飲料である茶飲料であることが好ましく、具体的には、緑茶、紅茶等が挙げられること(【0017】)、本発明によれば、飲用時のフラネオールのオフフレーバーが軽減されたpHが5.0以上の飲料を提供することができること(【0019】)が記載されている。
そして、実施例1として、カテキン類として、紅茶抽出物(サンフェノン90LB-OP(太陽化学株式会社;カテキン類70%)を用い、飲料中のフラネオール濃度及びカテキン類の濃度が表1のようになるように、水にフラネオール及びチャ抽出物を添加し、飲料を調製し、クエン酸又は水酸化ナトリウムを用いて飲料のpHを表1に示すように変化させたこと、全ての飲料のBrixは1以下であったことが記載されている(【0021】?【0026】)。

してみると、実施例1における「紅茶抽出物(サンフェノン90LB-OP(太陽化学株式会社;カテキン類70%)」との記載に誤りがあり(甲8の記載(摘示8a)参照。)、また、本件発明1では紅茶抽出物は精製品であるかどうかについて特定がなく、精製されていない紅茶抽出物には、アミノ酸や糖類など様々な成分が存在する(甲9の記載(摘示9a、9b)参照。)としても、当業者は、精製品でも粗製品でもよく、カテキン類を含有する天然物もしくはその加工品、例えば紅茶等を原料とする茶抽出物やその濃縮物の形態でよいと発明の詳細な説明に記載されるカテキン類(【0012】)を、本件出願時にカテキン類を含有することも周知である(甲6の記載(摘示6a)参照。)、紅茶抽出物の形態で供することができるといえる。また、上述のとおり、発明の詳細な説明には、フラネオールを精製品等として用いることができること、その含有量の測定方法、pHの調整方法、測定方法についての記載もある。したがって、当業者は、適当な量の通常の紅茶抽出物、フラネオールを含有する物品、pHを調整する物質を用いて、実施例1に記載の方法と同様の方法により、本件発明1の飲料を製造することができるといえる。
そして、実施例1の、フラネオールを4?60ppm含有する飲料にカテキン類を1?500ppm添加した飲料は全て、オフフレーバーが軽減され、飲みやすい飲料であったところ(【0026】)、通常の紅茶抽出物を用いた場合にそれに存在するカテキン類以外の成分によって飲料として使用できないものとなるとは考えられないから、紅茶抽出物が精製品であることの特定の有無、紅茶抽出物におけるカテキン類以外の成分の有無が不明であったとしても、当業者は、飲料として使用できるものであるといえる。
なお、フラネオール、カテキン類の濃度を変更することは、例えばフラネオールを含有する物品、紅茶抽出物の添加量を変えることにより行えることは明らかであるし、pHの調整は、実施例1に記載のように、クエン酸、水酸化ナトリウム等を用いることでできるといえる。
したがって、本件発明1の範囲全体ついて、過度の試行錯誤をすることなく、当業者は、飲料を生産することができ、また、使用できるといえる。
そして、上記判断は、実施例1に記載の「サンフェノン90LB-OP(太陽化学株式会社;カテキン類70%)」が緑茶抽出物であることに左右されるものではない。また、サンフェノン90LB-OPについて、紅茶から緑茶への訂正はされておらず、しかも当該訂正が認められるべきかどうかは実施可能要件とは直接の関係はない。
したがって、本件発明1について、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
本件発明2、3についても同様である。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?3について、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合しないとはいえず、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

3 理由3について
(1)申立理由
理由3についての特許異議申立人の主張の具体的な理由の概要は、上記2で示した理由の概要で述べたのと同様であり、以下のとおりである。
開示されている実施例は実施例1のみであり、実施例1は、精製品の紅茶抽出物(サンフェノン90LB-OPは甲8より緑茶抽出物)を用いた結果の開示であり、そのような実施例1に対して、本件発明1はあまりに広いから、本件発明1?3は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであり、本件発明1?3について、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

(2)判断
以下の観点に立って判断する。
特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。そして、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合することは、当該特許の特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。

ア 本件明細書の記載
本件明細書の記載は、上記2(2)アに示したとおりである。

イ 本件発明の課題
発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識からみて、本件発明1及び2の解決しようとする課題は、「フラネオールを含有するpH5.0以上の飲料において、飲用時に感じられるフラネオールに由来するオフフレーバーを軽減すること」であり、本件発明3の解決しようとする課題は、「フラネオールを含有するpH5.0以上の飲料において、飲用時に感じられるフラネオールに由来するオフフレーバーを軽減した飲料の製造方法を提供すること」であると認める。

ウ 判断
上記2(2)イで述べたとおり、本件発明1の範囲全体ついて、過度の試行錯誤をすることなく、当業者は、飲料を生産することができ、また、使用できるといえ、本件発明1について、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、本件発明1の飲料自体は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
そして、実施例1の、フラネオールを4?60ppm含有する飲料にカテキン類を1?500ppm添加した飲料は全て、オフフレーバーが軽減され、飲みやすい飲料であったことが記載されており(【0026】)、当該飲料は、当業者が上記課題を解決できると認識できるといえる。
ここで、精製されていない紅茶抽出物には、アミノ酸や糖類など様々な成分が存在するとしても、そのような成分がカテキン類によるフラネオールに由来するオフフレーバーの軽減作用を妨害するという技術的な根拠はないから、そのような成分が存在しても、当業者が上記課題を解決できると認識できるといえる。
また、実施例1により、フラネオールが4ppm以上、カテキン類が1?500ppm、pHが5?8の範囲においてカテキン類の添加により、飲料におけるフラネオール由来のオフフレーバーが軽減されることが示されており、発明の詳細な説明には、フラネオール由来のオフフレーバーを軽減することに関連して、カテキン類としては精製品、粗製品を問わず、様々なものを用いることができることも記載されているといえるから(【0011】、【0012】)、実施例1の結果と合わせると、当業者が、本件発明1の範囲全体にわたって上記課題を解決できると認識できるといえる。
したがって、実施例1に対して、本件発明1はあまりに広く、本件発明1?3は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるとはいえず、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものである。
本件発明2、3についても同様である。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?3について、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえず、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

4 理由4について
(1)申立理由
理由4についての特許異議申立人の主張の具体的な理由の概要は、以下のとおりである。
本件発明1のフラネオールの含有量は上限がないため、フラネオールの含有量が60ppmより高い場合も含まれ、その場合は、フラネオールのオフフレーバーが強くて、カテキン類を500ppm以上含有させないと効果が見られないと考えられることから、本件発明1?3は明確でなく、また、本件発明2には、Brixが0の場合も含まれているところ、茶飲料に可溶性固形分が含まれていないことは実質的に考えられないから、本件発明2は明確でなく、本件発明1?3について、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。

(2)判断
以下の観点に立って判断する。
特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。この趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るため、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

本件発明1は、フラネオールの濃度、カテキン類の濃度、pHの範囲を特定した飲料に係るものであり、フラネオールの濃度について、「4ppm以上のフラネオールを含む」と特定しているところ、その上限についての特定はない。そして、発明の詳細な説明には、「(フラネオール)本発明の飲料は、フラネオールを特定量で含有する。本発明の飲料は、フラネオールを4ppm以上、好ましくは4?60ppm、より好ましくは5?50ppm、さらに好ましくは6?40ppm、よりさらに好ましくは7?30ppm含有する。pHが5.0以上の飲料において、フラネオールを4ppm以上含有する場合に、オフフレーバーが強く感じられるため、本発明によるオフフレーバーの軽減効果を得る上で好ましい。飲料中のフラネオールの濃度が60ppmを超える場合、本発明によるオフフレーバーの軽減効果は得られるが、オフフレーバーが十分に軽減しないことがある。」(【0008】)と記載され、上限について制限する記載はない。
したがって、本件発明1は、フラネオール濃度が60ppmより高い場合を含むと解される。
しかし、フラネオール由来のオフフレーバーを軽減することは本件発明1の発明特定事項とされていない。また、上記明細書の記載では、フラネオール濃度が60ppmより高い場合であっても、オフフレーバーの軽減効果は得られると記載されている。そして、特許異議申立人のフラネオールのオフフレーバーが強くて、カテキン類を500ppm以上含有させないと効果が見られないとの主張に具体的な根拠はなく、推測に過ぎない。
したがって、本件発明1について、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、本件発明1は明確である。
本件発明2、3についても同様である。

本件発明2は、Brixが1以下であることを特定するものであるところ、Brixの下限についての特定はない。そして、発明の詳細な説明には、「(Brix)本発明の飲料のBrix(ブリックス)は、特に限定されないが、1以下であることが好ましい。理論に拘束されないが、Brixが1以下である場合、オフフレーバーのマスキング成分として作用する可溶性固形分が少ないために、フラネオールに由来するオフフレーバーが顕著に感じられることが考えられるため、本発明によるオフフレーバーの軽減効果を得る上で好ましい。Brixは、糖度計や屈折計などを用いて得られるBrix値によって評価することができる。ブリックス値は、20℃で測定された屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析統一委員会)の換算表に基づいてショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値である。単位は「°Bx」、「%」または「度」で表示される。」(【0015】)と記載され、Brixが0の場合を含まないことについての記載はない。
しかし、特許異議申立人も主張するように、茶飲料に可溶性固形分が含まれていないことは実質的に考えられず、また、フラネオール、カテキン類を含有する本件発明2の飲料についてBrixが0の場合が含まれないことは明らかであり、この点で本件発明2が明確でないとはいえない。
したがって、本件発明2について、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、本件発明2は明確である。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?3について、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合しないとはいえず、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-01-22 
出願番号 特願2019-182019(P2019-182019)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 536- Y (A23L)
P 1 651・ 537- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平林 由利子  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 関 美祝
冨永 保
登録日 2020-03-16 
登録番号 特許第6676817号(P6676817)
権利者 サントリーホールディングス株式会社
発明の名称 フラネオール由来のオフフレーバーが軽減された飲料  
代理人 鶴喰 寿孝  
代理人 宮前 徹  
代理人 小野 新次郎  
代理人 山本 修  
代理人 中西 基晴  
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