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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60C
管理番号 1370890
異議申立番号 異議2020-700833  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-03-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-26 
確定日 2021-02-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6690487号発明「空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6690487号の請求項1-5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6690487号(以下、「本件特許」という。)の請求項1-5に係る特許についての出願は、平成28年9月28日の出願であって、令和2年4月13日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年10月26日に特許異議申立人 鍵 隆(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1-5)がされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1-5に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、これらを併せて「本件特許発明」という場合がある。)。
「【請求項1】
左右一対のビード部及びサイドウォール部と、両サイドウォール部間に連なるトレッド部とを備える空気入りタイヤにおいて、
前記サイドウォール部で最もゲージが薄い部位の厚さが3.0mm未満であり、タイヤ子午線断面視においてタイヤの側面形状が、タイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第一円弧と、該第一円弧のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向内側に向かって凸となる曲率を有する第二円弧と、該第二円弧のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第三円弧とを含んでおり、前記第一円弧と前記第二円弧との変曲点である点P12と、前記第二円弧と前記第三円弧との変曲点である点P23とが下記の条件(1),(2)をそれぞれ満たすことを特徴とする空気入りタイヤ。
(1)前記点P12のタイヤ径方向の高さはビードフィラーの根元を基点として該ビードフィラーの高さBFhの110%以上130%以下である。
(2)前記点P23のタイヤ径方向の高さは前記ビードフィラーの根元を基点として該ビードフィラーの高さBFhの70%以上90%以下である。
【請求項2】
前記第一円弧の曲率半径R1と前記第二円弧の曲率半径R2とがR1-45mm≦R2≦R1+45mmの関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第一円弧を前記点P12から前記点P23まで延長した円弧を仮想円弧とし、該仮想円弧上で前記点P12と前記点P23との中間点を点P123とし、該点P123から前記仮想円弧の接線に引いた垂線と前記第二円弧との交点を点P’123としたとき、前記点P123と前記点P’123との距離が1.0mm以上であることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記点P12及び前記点P23に対応する位置にタイヤ上でタイヤ幅方向外側に向かって凸となる突出部を有することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
タイヤ周上の少なくとも2箇所に前記突出部から突出した柱状の突起が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。」

第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和2年10月26日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1-5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2-8号証に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1-5に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1-5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

なお、その具体的理由は次のとおりである。

「本件特許発明1では、「前記サイドウォール部で最もゲージが薄い部位の厚さが3.0mm未満」と特定されている。
しかしながら、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、上記数値範囲をサポートするための実施例として、サイドウォール部で最もゲージが薄い部位の厚さが「2.5mm」の例しか記載されていない。そうすると、例えば、サイドウォール部で最もゲージが薄い部位の厚さが、2.5mm未満(例えば1.0mmや0.5mmなどのきわめて小さい場合を含む)の場合においても、本件特許発明の作用効果が奏されるのか不明である。
したがって、本件特許発明1ないし5は、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、サポート要件に違反する。」

3 申立理由3(明確性要件)
本件特許の請求項1-5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

なお、その具体的理由は次のとおりである。

「本件特許発明1には、「前記サイドウォール部で最もゲージが薄い部位の厚さが3.0mm未満」と記載されている。
しかしながら、「ゲージ」は、インナーライナー、カーカス等を含むサイドウォール部全体の厚さを意味するのか、カーカスよりも外側のサイドウォールゴムの厚さを意味するのか、多義的に解釈することができ、明確ではない。ゲージに関しては、発明の詳細な説明には、どの位置のどの厚さを意味するのか、記載も示唆もされていない。一般的には、サイドウォール部のゲージといえば、サイドウォール部全体の厚さを意味するものと解釈できるところ、本件特許発明の図1、2を参酌しつつ、距離dが1.0mm以上であることを考慮すると、サイドウォール部全体の厚さを3.0mm未満とすることは、出願時の技術常識に照らしておよそ現実的でない蓋然性が高く、ゲージがサイドウォールゴムの厚さを意味すると解釈する余地がある。
したがって、本件特許発明1ないし5は、出願時の技術常識に照らしても、明確とはいえず、明確性要件に違反する。」

4 証拠方法
甲第1号証:特開2012-81951号公報
甲第2号証:国際公開第2009/051260号
甲第3号証:特開2014-156192号公報
甲第4号証:実願平5-71938号(実開平7-35109号)のCD-ROM
甲第5号証:特開2003-300212号公報
甲第6号証:特開2000-185530号公報
甲第7号証:特開平8-113016号公報
甲第8号証:特開2001-163018号公報
以下、順に「甲1」のようにいう。

第4 当審の判断
1 申立理由1(甲1を主引用文献とする進歩性)について
(1)証拠に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項等
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線については、当審において付与した。以下同様。)
「【請求項1】
一対のビードコア間にわたってトロイダル状に跨りタイヤ径方向に延びるコードをゴム被覆したプライからなるカーカス本体部と、該カーカス本体部から各ビードコアの周りに巻き返してカーカス折返し部を有するカーカスを骨格とし、タイヤ幅方向断面内において、サイドウォール部及びビード部の少なくとも一方の外側面に、カーカスよりタイヤ幅方向外側に中心を有する一つ以上の円弧により区画される凹部を有し、該ビードコアのタイヤ径方向外側に、サイドウォール部を構成するゴムよりもゴム硬度が大きいゴムからなる硬スティフナーを具え、該硬スティフナーのタイヤ径方向外側端は、前記凹部のタイヤ径方向の幅中心位置よりもタイヤ径方向内側にある空気入りタイヤにおいて、
前記カーカス本体部及びカーカス折返し部に沿って巻回してなる、スチールコードをゴム被覆してなる少なくとも一層のスチールコード補強層を具え、該スチールコードの各々は、タイヤの回転軸を中心とする円周と該スチールコードとの交点における該円周の法線に対して傾斜しており、前記スチールコード補強層のカーカス及びビード部のタイヤ幅方向外側にあるタイヤ径方向外側端は、該硬スティフナーのタイヤ径方向外側端よりもタイヤ径方向内側に位置してなることを特徴とする空気入りタイヤ。」
「【0007】
したがって、この発明の目的は、軽量化を図ることを前提に、ビード部の耐久性を向上させたタイヤを提供することにある。」
「【0020】
この発明のタイヤ1は、図1に示すように、一対のビードコア2間にわたってトロイダル状に跨りタイヤ径方向に延びるコードをゴム被覆したプライからなるカーカス本体部3と、カーカス本体部3から各ビードコア2の周りにそれぞれタイヤの内側から外側へ巻き返してタイヤ径方向外側へ延びるプライからなるカーカス折返し部4とを有するカーカス5を骨格としている。タイヤ幅方向断面内において、サイドウォール部6及びビード部7の少なくとも一方の外側面に、カーカス5よりタイヤ幅方向外側に中心を有する一つ以上の円弧により区画される凹部8を有する。ビードコア2のタイヤ径方向外側には、サイドウォール部6を構成するゴムよりもゴム硬度が大きいゴムからなる硬スティフナー9を具える。かかる硬スティフナー9のタイヤ径方向外側端10は、凹部8のタイヤ径方向の幅中心位置11よりもタイヤ径方向内側にある。
また、かかるカーカス5に沿って巻回してなる、スチールコードをゴム被覆してなる少なくとも一層のスチールコード補強層12を具え、図2に示すように、該スチールコード12aの各々は、タイヤの回転軸を中心とする円周Oと該スチールコード12aとの交点における該円周Oの法線nに対して傾斜している。
更に、スチールコード補強層12のカーカス5及びビード部7のタイヤ幅方向外側にあるタイヤ径方向外側端13は、硬スティフナー9のタイヤ径方向外側端10よりもタイヤ径方向内側に位置している。なお、上記タイヤ1は、適用リム14のリムフランジ15に組み付けたタイヤ1と適用リム14の組立体となっている。」
「【0026】
更にまた、凹部8のタイヤ径方向内側端17からタイヤのビード・トウと硬スティフナー9の径方向外側端10とを通る直線に降ろした垂線と、ビードコア2のタイヤ径方向外側端16からタイヤのビード・トウと硬スティフナー9の径方向外側端10とを通る直線に降ろした垂線との間の距離cは、20?40mmの範囲にあることが好ましい。」
「【図1】



(イ)甲1に記載された発明
甲1の図1から、凹部8のタイヤ径方向外側端は、硬スティフナー9のタイヤ径方向外側端10よりもタイヤ径方向の外側に位置し、かつ、凹部8のタイヤ径方向内側端17は、硬スティフナー9のタイヤ径方向外側端10よりもタイヤ径方向の内側に位置することが看て取れる。
甲1には、トレッド部に関する記載はないが、空気入りタイヤが、一対のビード部及びサイドウォール部間に連なるトレッド部を備えるものであることは、当業者にとって明らかである。
甲1の図1からは、タイヤ幅方向断面における凹部8よりもタイヤ径方向外側の部分(符号「6」の矢印近傍部分)の形状が、タイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する円弧となっていることが看取できる。
これらの点を踏まえて、図1に例示されている甲1に記載されたタイヤについて整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1発明>
「一対のビード部7及びサイドウォール部6と、サイドウォール部6間に連なるトレッド部とを備える空気入りタイヤ1において、タイヤ幅方向断面におけるタイヤの側面形状が、タイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する円弧と、該円弧のタイヤ径方向内側に連なりカーカス5よりタイヤ幅方向外側に中心を有する一つ以上の円弧により区画される凹部8を有し、ビードコア2のタイヤ径方向外側に、サイドウォール部6を構成するゴムよりもゴム硬度が大きいゴムからなる硬スティフナー9を具え、凹部8の径方向外側端は、硬スティフナー9のタイヤ径方向外側端10よりもタイヤ径方向の外側に位置し、かつ、凹部8の径方向内側端17は、硬スティフナー9のタイヤ径方向外側端10よりもタイヤ径方向の内側に位置する、空気入りタイヤ1。」

イ 甲2に記載された事項
甲2には、次の事項が記載されている。
「請求の範囲
[1] トレッド部と、一対のサイドウォール部と、一対のビード部と、各ビード部に埋設されたビードコア間にトロイド状に延在する本体部および、各ビードコアの周りで、タイヤ幅方向内側から外側に向けて折り返された折返し部を持つ少なくとも一枚のカーカスプライからなるカーカスと、このカーカスの、タイヤ幅方向外側に配置されるサイドゴムとを具えてなる空気入りタイヤにおいて、
適用リムへの組付け姿勢のタイヤにおける、タイヤ最大幅位置からタイヤの半径方向内方かつ、カーカスの折返し部の半径方向外方端よりタイヤの半径方向外方に、最外層カーカスプライからたてた法線方向に測ってサイドゴムのゴム厚さの最小寸法が2.5?4.5mmの範囲である、肉抜き状の凹部を形成してなることを特徴とする空気入りタイヤ。」
「[0007] そこで、本発明の目的は、タイヤの軽量化を、カーカスのプライコード耐引き抜き性の低下なしに実現することができ、転がり抵抗の低減、ひいては、低燃費化に大きく貢献することができる空気入りタイヤおよび、タイヤの外側面でサイドゴムに凹部を設けることによって、空気入りタイヤの軽量化を実現してなお、その凹部の形成に起因するゴム疲労を有効に抑制して、凹部形成個所の耐久性の低下を効果的に防止できる空気入りタイヤ、なかでも重荷重車両用空気入りタイヤを提供することにある。」
「[0057] 適用リムRへの組付け前の、凹部30,51の半径方向外方端30a,51aが、タイヤ幅方向外側に凸となる曲線状をなすサイドウォール部の外側面との接点に位置することにより、半径方向外方端30a,51aへのビード部の曲げ変形による圧縮歪の集中を防ぐとともに、外観を損なわない傾向がある。」

ウ 甲3に記載された事項
甲3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
トレッド部と、一対のサイドウォール部と、一対のビード部とを連ねて成り、前記ビード部に埋設された一対のビードコア間にトロイド状に延在するプライ本体部と、該プライ本体部から延びて各ビードコアの周りをタイヤ幅方向内側から外側に折り返すプライ折り返し部とからなる少なくとも一枚のプライによるカーカスを備え、さらに、リム離反点から前記サイドウォール部のタイヤ最大幅位置までのタイヤ外表面にタイヤ軸方向内側に凹となる凹部を有する空気入りタイヤであって、
リムに組み付けておらず且つ前記一対のビード部間の幅を規定リム幅とした、非リム組状態における、タイヤ幅方向断面において、ビードヒール部から、前記ビードコアのタイヤ径方向最外側端を通りタイヤ軸方向に平行な直線とタイヤ外表面との交点までのビード背面部のタイヤ外表面は、曲率中心が該タイヤ外表面よりもタイヤ軸方向内側に位置し、曲率半径Rが10?80mmである一以上の円弧で画定される
ことを特徴とする空気入りタイヤ。」
「【0005】
従って本発明の目的は、タイヤの軽量化を実現すると同時に、優れた耐久性を確保し得る空気入りタイヤを提供することにある。」
「【0029】
なお、本発明の空気入りタイヤにあっては、図4に示すように、非リム組状態において、タイヤ外表面が、ビードヒール部8からタイヤ最大幅位置Eまでの間で、タイヤ径方向外側に向かって順に、曲率中心C_(2)が該タイヤ外表面よりタイヤ軸方向内側に在る一以上の円弧と、曲率中心C_(3)が該タイヤ外表面よりタイヤ軸方向外側に在る一以上の円弧と、曲率中心C_(4)が該タイヤ外表面よりタイヤ軸方向内側に在る一以上の円弧とで画定されることが好ましい。
【0030】
このように、ビードヒール部8のタイヤ外表面の形状をタイヤ外側に凸とすることにより、ビードヒール部8近傍のビード部4とリムフランジ20とを、接触領域S_(1)の全体で十分に接触させることができるので、リムフランジ20の反力が当該領域S_(1)の全体で分散される。その結果、カーカスのプライ折り返し部6bの端部9への負荷が低減され、プライ端セパレーションの発生を抑制することが可能となるからである。
また、かかる構成によれば、サイドゴムの一部のタイヤ外表面の形状を、タイヤ内側に凸とすることにより、ゴム量を低減して、タイヤの軽量化を図ることができる。」
「【図4】



エ 甲4に記載された事項
甲4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0011】
【作用】
サイドウォール部の下部における外側表面部に、凹部が全周にわたって形成されて、下部のゲージが薄くされている。従って、サイドウォール部の下部内にレインフォースが配設されているにもかかわらず、モールド内でのグリーンタイヤの加硫成形時において、グリーンタイヤに成形圧力を作用させた際に、サイドウォール部の下部内には、大きな成形圧力が作用する。特に、凹部の断面が三角形とされて、凹部の最深部が、上下方向に関して、ビードフィラーの上端部とほぼ同位置であるので、この凹部に係合するモールドからは、楔効果により、サイドウォール部の外側部を介して、ビードフィラーの上部に、極めて大きな成形圧力が作用する。
【0012】
又、サイドウォール部の下部の外側表面部に、凹部が全周にわたって形成されているので、上記加硫成形時において、グリーンタイヤ内部からの圧力によって、サイドウォール部の下部をモールド内面に押し付ける際に、下部がモールド内面に早期に接触して、これら両者間にエアーが残留する惧れはない。」
「【図1】



オ 甲5に記載された事項
甲5には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項4】
ビードフィラーを備える空気入りタイヤであって、
タイヤサイズに応じて定まる標準リムサイズのリムに装着したとき、タイヤ断面形状において、前記ビートフィラーの配置位置に対応したタイヤ外周面の輪郭形状に凹部または直線部を有し、
さらに、タイヤ最大幅の位置を通るタイヤ断面形状の幅方向に平行な直線上に中心点を持ち、前記タイヤ最大幅の位置と装着した前記リムのリム径・リム幅基準位置とを通る円弧曲線を仮想することによって、この円弧曲線から距離が最も離れた前記凹部または前記直線部の位置を前記凹部または前記直線部の中心位置と定めたとき、
装着した前記リムのリム径・リム幅基準位置を基準としたタイヤ断面形状の高さ方向の高さに関し、前記中心位置の高さが、前記ビードフィラー部材の先端位置の高さよりも低くこの高さの半分より高いことを特徴とする空気入りタイヤ。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記方法で製造されるタイヤ、特に、トラックやバス等に装着されるトラック・バス用タイヤは、リム装着された場合のリムフランジ先端と接触するクッション部からビード部に至るタイヤ断面領域は、ビードフィラー部材B_(d)をはじめ複数のゴム部材が配置され、配置されるゴム部材の体積が比較的大きくタイヤ断面における厚さも厚い。場合によっては、この領域に金属補強層が挿入されるので、ビード部材B_(d)の回り(図6(c)中の矢印X方向)の回転剛性は高い。そのため、加硫用ブラダー112を用いて拡張しても加硫モールド110の内面と適切な圧力で当接されず、未加硫領域を形成するといった問題が生じるおそれがある。特に、タイヤ幅が425mm程度あり偏平率の高いタイヤの場合、加硫工程時、上記ビードフィラー部材B_(f)の配置位置に対応するタイヤの外周面のゴム部材がタイヤ断面側に凹状に巻き込まれてバックリングした未加硫領域を形成し、さらにこの凹状部分にクラックが発生するといった加硫故障の問題が生じるおそれがある。このような未加硫領域を有するタイヤや加硫故障の発生したタイヤは、検査工程で不良品として除去されるものの、未加硫領域の形成や加硫故障の発生確率が高い場合、製品としての歩留まりの低下に基づく製造コストの増大につながる。」
「【0019】中心位置Iとリム径・リム幅基準位置Tとを結ぶ円弧曲線Fと中心位置Iとの距離g、すなわち、円弧曲線Fの接線方向と直交する方向の距離は特に制限されないが、1.0mm以上10.0mm以下であるのが、タイヤの製造時に未加硫問題が発生しにくい点で好ましく、1.0mm以上5.0mm以下であるのがより好ましい。すなわち、このような空気入りタイヤは上述の加硫モールド10を用いて製造でき、後述するようなビートフィラー部材B_(f)の配置位置に対応したタイヤ外周面の部分26に未加硫部分が発生せず、さらに、クラックが発生しない。また、長期間使用しても、部分26にクラックが発生しにくい。」
「【図1】


「【図2】



カ 甲6に記載された事項
甲6には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ビード部耐久性にすぐれる重荷重用空気入りタイヤ、なかでも、偏平率が70%以下のラジアルタイヤに関するものである。」
「【0033】そして好ましくは、かかる凹条8の曲率半径Rを、前記タイヤ姿勢において、ベルト端を通って、図示しないタイヤ軸線と直交する平面Vと、カーカス本体部分2cの厚み中心線との二つの交点9,10を通るとともに、その中心線の、カーカス2の最大幅位置の点11を通る円弧の曲率半径Roの0.5?2.0倍とする。」
「【図1】



キ 甲7に記載された事項
甲7には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】トレッド部からサイドウォール部を通りビード部のビードコアに至る本体部にビードコアの周りを折返す折返し部を一体に設けたラジアル配列のカーカスと、ビードコアのタイヤ半径方向外側かつ前記カーカスの本体部と折返し部との間を前記サイドウォール部までのび硬質のゴムからなるビードエーペックスと、前記サイドウォール部の外面をなすサイドウォールゴムと、前記ビード部の外面をなし、半径方向外方にのびることにより前記サイドウォールゴムの内側で重なりかつサイドウォールゴムよりも硬質のクリンチャゴムとからなり、
前記サイドウォール外面にサイドウォールゴムを凹ませタイヤ周方向にのびるベア防止用の凹部Gを設けるとともに、この凹部Gは、その半径方向外縁Gaと内縁Gbとの間の凹部巾Wを2mm以上かつ10mm以下、サイドウォール部外面の輪郭線からの深さGcを0.5mm以上かつ1.5mm以下、タイヤ子午断面での断面積Kを0.7mm^(2)以上かつ12mm^(2)以下とするとともに、前記外縁Gaはビードエーペックスの先端Pよりも半径方向内方に位置させかつその半径方向高さの差AはO以上かつ7mm以下としたことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。」
「【図2】



ク 甲8に記載された事項
甲8には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】トレッド部と、その両端でタイヤ半径方向内方にのびるサイドウォール部と、このサイドウォール部のタイヤ半径方向内端部分に設けられかつビードコアを有するビード部とを具えるとともに、前記ビードコアからタイヤ半径方向外方にのびるビードエイペックスを設けた空気入りタイヤであって、
前記サイドウォール部表面に、ビードエーペックスの先端付近を周方向にのび加硫成形時における空気を排出するためのベントラインと、このベントラインの径方向外側に連なりかつ周方向にのびる深さ0.15mm以上の凹部とを設けてなる空気入りタイヤ。」
「【0008】グリーンタイヤは、加硫金型においてビード部の半径方向内方から外方に向かって成形面との接触位置を移動するとともに、剛性のあるビード部の上端が倒れ込みにより成形面と接するに先行して可撓性のあるサイドウォール部が成形面と当接するため、ビードエーペックス上端近傍において発生しがちな空気溜まりを、ベントラインから逃がすことによりベアを防止する。さらに、ベントラインの外側に該ベントラインに連なる凹部を形成することにより、ビードエーペックスの上端が設計変更、製造時の変動などによって変化しても、この凹部により空気を逃がす領域が拡大しているため、ベアの発生を抑制する。」
「【0022】さらに本形態では、直線状の前記サイドウォール下方領域の表面2A2上下の前記位置b,c、及びサイドウォール部表面2Aが前記小円弧面15Aに接する前記位置aにも、ベントライン5a、5b,5cを設けている。これらのベントライン5a、5b,5cはベントライン5Aと同様な突条として形成される。さらに凹部7の半径方向外側縁dには上下の面が交わる交差面(図1では誇張して図示している)からなるベントライン5d(総称するときベントライン5という)を形成し、加硫金型Mの折れ曲がり点での空気溜まりを防いでいる。なおベントラインは他の外凸折れ曲がり点など空気の閉じ込みの可能性がある場所に必要により形成でき、かつ適宜省略できる。
【0023】さらにかかるベントライン5には、該ベントライン5からの空気を外部に逃がすため、加硫金型Mにはベントライン5形成用の周方向に連続する溝部Mgに、小孔からなるベントホール9が形成される。このベントホール9は周方向に一定ピッチで3?20、通常6?12個程度を形成する。なお図4に略示するように、ベントホール9は周方向に位置ずれさせることができる。」
「【図2】


「【図3】


「【図4】



(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「一対のビード部7」は、本件特許発明1の「左右一対のビード部」に相当し、以下同様に、「タイヤ幅方向断面」は「タイヤ子午線断面」に、「円弧」は「第一円弧」に、「カーカス5よりタイヤ幅方向外側に中心を有する一つ以上の円弧により区画される凹部8」は「タイヤ幅方向内側に向かって凸となる曲率を有する第二円弧」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「左右一対のビード部及びサイドウォール部と、両サイドウォール部間に連なるトレッド部とを備える空気入りタイヤにおいて、タイヤ子午線断面においてタイヤの側面形状が、タイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第一円弧と、該第一円弧のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向内側に向かって凸となる曲率を有する第二円弧とを含んでいる空気入りタイヤ。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点>
本件特許発明1では、サイドウォール部で最もゲージが薄い部位の厚さが3.0mm未満であって、第一円弧と第二円弧との変曲点である点P12のタイヤ径方向の高さが、ビードフィラーの根元を基点として該ビードフィラーの高さBFhの110%以上130%以下である条件を満たし、かつ、第二円弧のタイヤ径方向内側に、タイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第三円弧が連なっており、さらに、前記第二円弧と前記第三円弧との変曲点である点P23のタイヤ径方向の高さが、前記ビードフィラーの根元を基点として該ビードフィラーの高さBFhの70%以上90%以下である条件を満たしているのに対し、甲1発明には、そのような特定がない点。

なお、特許異議申立人は特許異議申立書の第16-17ページにおいて、本件特許発明1と甲1発明との相違点として、最もゲージが薄い部位の厚みの点を相違点1、第三円弧を備えていない点を相違点3、第二円弧と第三円弧との変曲点の位置を相違点4としているが、前記相違点4は、サイドウォール部で最もゲージが薄い部位の厚さが3.0mm未満の空気入りタイヤにおいて、第三円弧を備えていることを前提としたものであるから、前記相違点1、3-4を分けて認定することは適切ではない。

イ 相違点についての判断
上記相違点について判断する。
空気入りタイヤにおいて、サイドウォール部で最もゲージが薄い部位の厚さが3.0mm未満とした上で第一円弧と第二円弧との変曲点である点P12のタイヤ径方向の高さが、ビードフィラーの根元を基点として該ビードフィラーの高さBFhの110%以上130%以下である条件を満たし、かつ、第二円弧のタイヤ径方向内側に、タイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第三円弧が連なっており、さらに、前記第二円弧と前記第三円弧との変曲点である点P23のタイヤ径方向の高さが、前記ビードフィラーの根元を基点として該ビードフィラーの高さBFhの70%以上90%以下である条件を満たすこと、すなわち、上記相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲2-8のいずれにも記載も示唆もされていないし、当該事項が設計的事項であるとする根拠もない。

そして、本件特許発明1は、上記相違点に係る発明特定事項を備えることで、加硫時における空気入りタイヤの第二円弧に対応する部分と金型との間の接触圧を増大させることができ、タイヤと金型との間のエアーを逃がすことができ、その結果、サイドウォール部の薄ゲージ化に起因した外観不良の発生を抑制することが可能となり、タイヤ歩留率の悪化を防止することができる(本件特許の明細書の段落【0007】、【0021】、【実施例】)という、予測できない顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、上記点について、主に甲4、甲5を引用しているが、甲4は、「凹部の断面が三角形とされて、凹部の最深部が、上下方向に関して、ビードフィラーの上端部とほぼ同位置であるので、この凹部に係合するモールドからは、楔効果により、サイドウォール部の外側部を介して、ビードフィラーの上部に、極めて大きな成形圧力が作用する。」(【0011】)、「又、サイドウォール部の下部の外側表面部に、凹部が全周にわたって形成されているので、上記加硫成形時において、グリーンタイヤ内部からの圧力によって、サイドウォール部の下部をモールド内面に押し付ける際に、下部がモールド内面に早期に接触して、これら両者間にエアーが残留する惧れはない。」(【0012】)、との記載はあるものの、あくまで凹部の断面が三角形であることが前提であり、第三円弧が存在していない。
甲5は、図2(b)から、第二円弧及び第三円弧のような形状が看取できる。しかしながら、甲5には、前記第二円弧と前記第三円弧との変曲点のタイヤ径方向の高さについての記載はなく、図2(b)を参酌しても、前記高さは、ビードフィラーの高さの70%以上90%以下ではない蓋然性が高い。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2-8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件特許発明2-5について
本件特許発明2-5は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明及び甲2-8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)申立理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1によっては、本件特許の請求項1-5に係る特許を取り消すことはできない。

2 申立理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は、上記「第2 本件特許発明」に記載のとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、サイドウォール部のプロファイルを工夫することで、タイヤ歩留率を悪化させることなく、軽量化及び転がり抵抗の低減を可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの軽量化及び転がり抵抗の低減を図るために、タイヤ部材の厚さを薄くすること(薄ゲージ化)が行われている。しかしながら、タイヤ部材の厚さを薄くすると、加硫時に金型との接触が弱まり、その箇所にエアーが溜まり易くなるため、加硫後に外観不良が発生するという懸念がある。
【0003】
このような外観不良を防止するために、金型にエアーを逃がすための溝(ベントグルーブ)や穴(ベントホール)を設けることが一般的である(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、空気入りタイヤのサイドウォール部に形成された文字に対応する部位には溝や穴を設けることができない場合があり、そのような場合には外観不良を改善することができないという問題がある。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、サイドウォール部のプロファイルを工夫することで、タイヤ歩留率を悪化させることなく、軽量化及び転がり抵抗の低減を可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、左右一対のビード部及びサイドウォール部と、両サイドウォール部間に連なるトレッド部とを備える空気入りタイヤにおいて、前記サイドウォール部で最もゲージが薄い部位の厚さが3.0mm未満であり、タイヤ子午線断面視においてタイヤの側面形状が、タイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第一円弧と、該第一円弧のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向内側に向かって凸となる曲率を有する第二円弧と、該第二円弧のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第三円弧とを含んでおり、前記第一円弧と前記第二円弧との変曲点である点P12と、前記第二円弧と前記第三円弧との変曲点である点P23とが下記の条件(1),(2)をそれぞれ満たすことを特徴とするものである。
(1)前記点P12のタイヤ径方向の高さはビードフィラーの根元を基点として該ビードフィラーの高さBFhの110%以上130%以下である。
(2)前記点P23のタイヤ径方向の高さは前記ビードフィラーの根元を基点として該ビードフィラーの高さBFhの70%以上90%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空気入りタイヤは、サイドウォール部で最もゲージが薄い部位の厚さが3.0mm未満であるので、サイドウォール部の薄ゲージ化を実現し、軽量化及び転がり抵抗の低減することが可能となる。また、タイヤ子午線断面視においてタイヤの側面形状が、タイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第一円弧と、第一円弧のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向内側に向かって凸となる曲率を有する第二円弧と、第二円弧のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第三円弧とを含んでおり、第一円弧と第二円弧との変曲点である点P12と、第二円弧と第三円弧との変曲点である点P23とが上記の条件(1),(2)をそれぞれ満たすので、加硫時における空気入りタイヤの第二円弧に対応する部分と金型との間の接触圧を増大させることができ、タイヤと金型との間のエアーを逃がすことができる。その結果、サイドウォール部の薄ゲージ化に起因した外観不良の発生を抑制することが可能となり、タイヤ歩留率の悪化を防止することができる。」
「【0014】
図1に示すように、本発明の実施形態からなる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0015】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。また、各ビード部3にはビードコア5を包み込むようにチェーファー7が配置されている。
【0016】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図1では2層)のベルト層8が埋設されている。これらベルト層8はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層8において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°?40°の範囲に設定されている。ベルト層8の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層8の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層9が配置されている。ベルトカバー層9の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0017】
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
【0018】
上記空気入りタイヤにおいて、サイドウォール部2で最もゲージが薄い部位の厚さは3.0mm未満に構成されている。また、タイヤ子午線断面視において、タイヤの側面形状は、タイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第一円弧C1と、第一円弧C1のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向内側に向かって凸となる曲率を有する第二円弧C2と、第二円弧C2のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第三円弧C3とを含んでいる。つまり、第二円弧C2の形状は、第一円弧C1及び第三円弧C3の形状とは異なっており、タイヤ幅方向内側に向かって凸となるように構成されている。本発明の空気入りタイヤでは、第二円弧C2の範囲に文字等が形成されている。サイドウォール部2において、特に、ビードフィラー6の先端部付近はゴムボリュームを多く必要とし、外観不良が発生しやすいため、ビードフィラー6の先端部付近に位置する第二円弧C2の形状を工夫することが外観不良を抑制する上で効果的である。
【0019】
第一円弧C1と第二円弧C2との変曲点を点P12とし、第二円弧C2と第三円弧C3との変曲点を点P23とする。また、ビードフィラー6の根元を基点として、点P12のタイヤ径方向の高さを高さh12、点P23のタイヤ径方向の高さを高さh23とする。このとき、点P12、点23は下記の条件(1),(2)をそれぞれ満たすように構成されている。また、点P12及び点23はタイヤ最大幅位置よりもタイヤ幅方向内側に位置している。
(1)点P12のタイヤ径方向の高さh12はビードフィラー6の高さBFhの110%以上130%以下である。
(2)点P23のタイヤ径方向の高さh23はビードフィラー6の高さBFhの70%以上90%以下である。
【0020】
上述した空気入りタイヤでは、サイドウォール部2で最もゲージが薄い部位の厚さが3.0mm未満であるので、サイドウォール部2の薄ゲージ化を実現し、軽量化及び転がり抵抗の低減することが可能となる。また、タイヤ子午線断面視においてタイヤの側面形状が、タイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第一円弧C1と、第一円弧C1のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向内側に向かって凸となる曲率を有する第二円弧C2と、第二円弧C2のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第三円弧C3とを含んでおり、第一円弧C1と第二円弧C2との変曲点である点P12と、第二円弧C2と第三円弧C3との変曲点である点P23とが上記の条件(1),(2)をそれぞれ満たすので、加硫時における空気入りタイヤの第二円弧C2に対応する部分と金型との間の接触圧を増大させることができ、タイヤと金型との間のエアーを逃がすことができる。その結果、サイドウォール部2の薄ゲージ化に起因した外観不良の発生を抑制することが可能となり、タイヤ歩留率の悪化を防止することができる。」
「【実施例】
【0026】
タイヤサイズ175/65R15で、左右一対のビード部及びサイドウォール部と、両サイドウォール部間に連なるトレッド部とを備える空気入りタイヤにおいて、サイドウォール部で最もゲージが薄い部位の厚さ(mm)、第一円弧の形状(内側に凸又は外側に凸)、第二円弧の形状(内側に凸又は外側に凸)、第三円弧の形状(内側に凸又は外側に凸)、ビードフィラー高さBFhに対するP12の高さh12の比率(h12/BFh×100%)、ビードフィラー高さBFhに対するP23の高さh23の比率(h23/BFh×100%)、第一円弧の曲率半径R1(mm)、第二円弧の曲率半径R2(mm)、第三円弧の曲率半径R3(mm)、P12に対応する位置におけるタイヤ上の突出部の有無、P23に対応する位置におけるタイヤ上の突出部の有無、タイヤ周上における柱状の突起の数を表1及び表2のように設定した従来例1,2、比較例1,2及び実施例1?12のタイヤを製作した。
【0027】
なお、各試験タイヤにおいて、ビードフィラー高さBFhが25mmであるビードフィラーを用いた。また、表1,2の第一円弧の形状、第二円弧の形状及び第三円弧の形状において、「内側に凸」はタイヤ幅方向内側に向かって凸となる曲率を有することを意味し、「外側に凸」はタイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有することを意味する。
【0028】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、タイヤ重量、転がり抵抗、加硫歩留率及び荷重耐久性に関する評価を実施し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
【0029】
タイヤ重量:
各試験タイヤの重量を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどタイヤ重量が軽いことを意味する。
【0030】
転がり抵抗:
各試験タイヤをリムサイズ15×5Jのホイールに組み付けて、空気圧210kPaを充填し、ISOの規定に準拠して、ドラム径2000mmのドラム試験機を用いて転がり抵抗を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど転がり抵抗が小さいことを意味する。
【0031】
加硫歩留率:
各試験タイヤをそれぞれ1000本製造し、金型から抜き取った後の外観不良の有無を目視で調べ、外観不良が発生したタイヤ数をカウントした。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど、外観不良が発生したタイヤ数が少なく、加硫歩留率が優れていることを意味する。
【0032】
荷重耐久性:
各試験タイヤをリムサイズ15×5Jのホイールに組み付けて、空気圧240kPaを充填し、ドラム径1707mmのドラム試験機を用いて、走行速度を81km/h、負荷荷重をJATMA規定の最大荷重の88%から4時間毎に13%ずつ増加させながら、タイヤが破壊するまでの総走行距離を測定し、その結果を以って評価した。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど荷重耐久性が優れていることを意味する。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】



(4)発明の課題
本件特許の明細書の段落【0001】-【0007】によると、本件特許発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「サイドウォール部のプロファイルを工夫することで、タイヤ歩留率を悪化させることなく、軽量化及び転がり抵抗の低減を可能にした空気入りタイヤを提供する」ことである。

(5)サポート要件についての判断
本件特許の明細書の発明の詳細な説明の、「第一円弧C1と第二円弧C2との変曲点を点P12とし、第二円弧C2と第三円弧C3との変曲点を点P23とする。また、ビードフィラー6の根元を基点として、点P12のタイヤ径方向の高さを高さh12、点P23のタイヤ径方向の高さを高さh23とする。このとき、点P12、点23は下記の条件(1),(2)をそれぞれ満たすように構成されている。また、点P12及び点23はタイヤ最大幅位置よりもタイヤ幅方向内側に位置している。(1)点P12のタイヤ径方向の高さh12はビードフィラー6の高さBFhの110%以上130%以下である。(2)点P23のタイヤ径方向の高さh23はビードフィラー6の高さBFhの70%以上90%以下である。」(【0019】)、「上述した空気入りタイヤでは、サイドウォール部2で最もゲージが薄い部位の厚さが3.0mm未満であるので、サイドウォール部2の薄ゲージ化を実現し、軽量化及び転がり抵抗の低減することが可能となる。また、タイヤ子午線断面視においてタイヤの側面形状が、タイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第一円弧C1と、第一円弧C1のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向内側に向かって凸となる曲率を有する第二円弧C2と、第二円弧C2のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第三円弧C3とを含んでおり、第一円弧C1と第二円弧C2との変曲点である点P12と、第二円弧C2と第三円弧C3との変曲点である点P23とが上記の条件(1),(2)をそれぞれ満たすので、加硫時における空気入りタイヤの第二円弧C2に対応する部分と金型との間の接触圧を増大させることができ、タイヤと金型との間のエアーを逃がすことができる。その結果、サイドウォール部2の薄ゲージ化に起因した外観不良の発生を抑制することが可能となり、タイヤ歩留率の悪化を防止することができる。」(【0020】)との記載、及び段落【0026】-【0032】、【0033】の【表1】、【0034】の【表2】の実施例の記載から、「サイドウォール部2で最もゲージが薄い部位の厚さが3.0mm未満」である空気入りタイヤにおいて、「タイヤ子午線断面視においてタイヤの側面形状が、タイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第一円弧C1と、第一円弧C1のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向内側に向かって凸となる曲率を有する第二円弧C2と、第二円弧C2のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第三円弧C3とを含んでおり、第一円弧C1と第二円弧C2との変曲点である点P12のタイヤ径方向の高さh12はビードフィラー6の高さBFhの110%以上130%以下であって、第二円弧C2と第三円弧C3との変曲点である点P23のタイヤ径方向の高さh23はビードフィラー6の高さBFhの70%以上90%以下である」空気入りタイヤであれば、サイドウォール部の薄ゲージ化に起因した外観不良の発生を抑制し、タイヤ歩留率を悪化させることなく、軽量化及び転がり抵抗の低減が可能となることが理解でき、発明の課題を解決できると認識できる。

そして、本件特許発明1-5は、空気入りタイヤにおいて、「サイドウォール部で最もゲージが薄い部位の厚さが3.0mm未満」であり、「タイヤ子午線断面視においてタイヤの側面形状が、タイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第一円弧と、該第一円弧のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向内側に向かって凸となる曲率を有する第二円弧と、該第二円弧のタイヤ径方向内側に連なりタイヤ幅方向外側に向かって凸となる曲率を有する第三円弧とを含んでおり、前記第一円弧と前記第二円弧との変曲点である点P12と、前記第二円弧と前記第三円弧との変曲点である点P23とが下記の条件(1),(2)をそれぞれ満たす。
(1)前記点P12のタイヤ径方向の高さはビードフィラーの根元を基点として該ビードフィラーの高さBFhの110%以上130%以下である。
(2)前記点P23のタイヤ径方向の高さは前記ビードフィラーの根元を基点として該ビードフィラーの高さBFhの70%以上90%以下である。」との特定事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できるものである。

よって、特許異議申立人の主張するような不備はない。

したがって、本件特許発明は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、本件特許発明1-5は、サポート要件を満足する。

(6)申立理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由2によっては、本件特許の請求項1-5に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立理由3(明確性)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

(2)明確性要件についての判断
通常、単に、「サイドウォール部のゲージ」という場合は、サイドウォールゴムのみではなく、サイドウォール部全体の厚さを意味することが、当業者において技術常識である。このことは、特許異議申立人も特許異議申立書の第21ページにおいて、「一般的には、サイドウォール部のゲージといえば、サイドウォール部全体の厚さを意味するものと解釈できる」と自認しているとおりである。
よって、「サイドウォール部のゲージ」との記載の意味は明確である。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書の第21ページにおいて、図1、2を参酌すると、サイドウォール部全体の厚さを3mm未満とすることが、おおよそ現実的でない旨主張しているが、図面から寸法の正確な認定はできないから、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
また、その他に、本件特許の請求項1-5に不明な記載はない。
以上のとおりであるから、本件特許発明1-5はいずれも明確である。

(3)申立理由3についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由3によっては、本件特許の請求項1-5に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
上記第4のとおり、本件特許の請求項1-5に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1-5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-01-29 
出願番号 特願2016-189388(P2016-189388)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (B60C)
P 1 651・ 121- Y (B60C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鏡 宣宏  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 岩田 健一
植前 充司
登録日 2020-04-13 
登録番号 特許第6690487号(P6690487)
権利者 横浜ゴム株式会社
発明の名称 空気入りタイヤ  
代理人 清流国際特許業務法人  
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