• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1370903
異議申立番号 異議2019-700997  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-03-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-06 
確定日 2021-02-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第6529529号発明「ウエットシート包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6529529号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6529529号の請求項1?2に係る特許についての出願は、平成28年2月16日に出願された特願2016-27204号(以下、「原出願」という。)の一部を分割して平成29年2月17日にした出願であって、令和元年5月24日にその特許権の設定登録がされ、令和元年6月12日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和元年12月6日 :特許異議申立人 昭和紙工株式会社(以下、「申立人」という。)による請求項1?2に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年10月9日 :申立人による上申書の提出
令和2年10月23日付け:申立人に対する審尋
令和2年11月12日 :申立人による回答書の提出

第2 本件特許に係る発明
特許第6529529号の請求項1?2に係る発明は、本件特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
含浸液を含浸するウエットシートの積層体を外装袋内に収容して、前記外装袋の上面側の外取り出し口から前記ウエットシートを取り出し可能にしたウエットシート包装体において、
前記積層体を収容する容器を前記外装袋内に備え、
前記容器の上端側の開口部を密封し且つ前記外取り出し口に対応する内取り出し口を形成可能な内側シートを備え、
前記容器は上端側に前記開口部を有する周壁部と、該周壁部の下端に一体に形成された底壁部と、前記周壁部の上端から外周側に屈曲して一体に形成された外周縁とを備え、
前記内側シートの全周を前記外周縁に固着し、
前記容器と前記外装袋との間に介在され且つ前記外装袋の形状を内側から略直方体状又は略立方体状に保持する保持部材を備えた
ことを特徴とするウエットシート包装体。
【請求項2】
前記外装袋はガスバリアー性を有する複合フィルム又は複合シートにより製袋されている
ことを特徴とする請求項1に記載のウエットシート包装体。」

第3 特許異議申立て理由の概要
申立人は、以下の証拠を提出し、本件特許の請求項1?2に係る発明は、検甲第1号証から把握される発明、甲第1号証に記載された事項並びに甲第1号証又は甲第2号証に例示された従来周知の事項から容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるので、同法第113条第2号の規定に該当することを理由として取り消されるべきものであると主張する。

検甲第1号証:「商品名:フェイスマスク 青のルルルン2S ロット番号:3508082」
検甲第1の1号証:「検甲1の特許法施行規則第50条の4項における見本の図面」
甲第1号証 :実願昭59-164847号(実開昭61-80274号)のマイクロフィルム
甲第2号証 :特開2008-150317号公報
甲第3号証 :電子メール「【LULULUN】お問い合わせの回答をさせていただきます」
甲第4号証 :著者不明,「Cosmetic-Info.jp ルルルン フェイスマスク 青のルルルン2S」,インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=33025>
甲第7号証 :「平成27年(ワ)第33398号不正競争行為差止等請求事件 東京地方裁判所平成28年7月19日判決」、インターネット<URL:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/046/086046_hanrei.pdf>
甲第8号証 :特許異議2019-700998号で検甲第1号証として提出された「商品名:フェイスマスク 青のルルルン2S ロット番号:3515042」(以下、「検証物」という。)の第1回証拠調べ調書
甲第12号証:著者不明,「LuLuLunフェイスマスク ルルルン♪」,平成27年5月 2日,TRUCK MARKET 木更津店 Blog,インターネット<URL:http://www.hands-truck.com/shop/kisarazu/blog/2015/05/lululun.html>
甲第13号証:小夏ちゃん著,「成分もマスクもリニューアルルルン♪「「フェイスマスク 青のルルルン2」」・・・」,平成26年10月21日,@COSMEブログ,インターネット<https://www.cosme.net/beautist/article/938631>
甲第14号証:moumou著,「フェイスマスク■ルルルン&ピュアスマイル(当審注:■はハートマーク)」,平成27年12月20日,moumouのブログ,インターネット<URL:https://ameblo.jp/tmoumou43/entry-12551520024.html>

第4 認定事実
1.検甲第1号証
検甲第1号証について、以下の事実が認められる。なお、検甲第1号証についての検証申立については、令和2年10月9日提出の上申書において取り下げられている。
ア.検甲第1号証の写真【平面】から、検甲第1号証の平面には、青色のパッケージの平面にフェイスマスクをかたどった絵柄と併せて、「1億枚売れてマスク!青のLuLuLun」、「¥1500税別(当審注:「税別」は縦書き。)」、「/32枚入り」の表示が看取できる。また、平面の左上には、流れ星をかたどった絵柄と併せて、「2014up」、「2年連続第1位」の表示が看取できる。
イ.検甲第1号証の写真【正面】から、検甲第1号証の正面には、青色のパッケージの前面にまつげをかたどった絵柄と併せて、「青のLuLuLunフェイスマスクルルルン」の表示が看取できる。
ウ.検甲第1号証の写真【左側面】から、検甲第1号証の左側面には、「3508082」との記載がある。
エ.検甲第1号証の写真【背面】から、検甲第1号証の背面には、「1箱に、350ml分のうるおい美容液がぎゅっと!」との記載がある。
オ.検甲第1号証の写真【底面】から、検甲第1号証の底面には、以下の記載がある。
(ア)「販売名:フェイスマスク 青のルルルン2S」、
(イ)「(配合成分)水、グリセリン、プロパンジオール、ポリクオタニウム-51、グリコシルトレハロース、グリセリルグルコシド、加水分解水添デンプン、PCA-Na、ローヤルゼリーエキス、ヒアルロン酸Na、ユズ果実エキス、アルゲエキス、マヨラナ葉エキス、PEG-40水添ヒマシ油、キサンタンガム、クエン酸、クエン酸Na、フェノキシエタノール、ペチルパラベン、BG★ ★植物エキス類の添加物として含まれます。」
(ウ)「製造販売元:株式会社ランリーゼ 愛媛県新居浜市岸の上町2丁目6番35号 発売元:株式会社グライド・エンタープライズ 東京都渋谷区渋谷2丁目10番13号」

2.甲第1号証
本件特許に係る出願の原出願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
ア.「本案は湿潤紙片等の包装体の改良に関するものであり、特に包装材のコストダウンを計り、且つ開封後の密閉性向上を計るべく勘案された湿潤紙片等の包装箱構造に関するものである。」(明細書1ページ14?17行)
イ.「(a) 合成樹脂薄板等の単材または複合材、或いは気密加工を施した紙板の単材または複合材等により組立てまたは一体的に成形された内箱10の上板12適所には、任意形状の開口14をミシン目等による環状の破断線16にて形成している。・・・」(明細書3ページ10?14行)
ウ.「該クッション性素材32は、容器の開封後においては外箱20の蓋体30と共に開閉し、蓋体30を閉じた際には内箱10の開口部14を略密閉すべく構成してなる湿潤紙片等の包装箱構造である・・・」(明細書6ページ3?6行)

3.甲第2号証
本件特許に係る出願の原出願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
「【0044】
容器本体11の開口部上縁には、フランジ部15を有し、当該フランジ部15に、プラスチックフィルムを蓋シート12として当接して熱シールすることにより密閉状に梱包できる構造とすることが好ましい。熱シールを容易にするためには、フランジ部15に凸状部15aを設けておくことがより好ましい。」

4.甲第3号証
令和2年11月12日に申立人の提出した回答書を参酌すると、甲第3号証から以下の事実が認められる。
ア.甲第3号証の電子メールは、検甲第1号証の発売元である「株式会社グライド・エンタープライズ」が運営する「フェイスマスクルルルン公式ホームページ」(URL:https://lululun.com/contact/)より問い合わせをした際に送信されたものであり、電子メールの作成者は、「LULULUNお客様担当の大吉」である。
イ.甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「・・・ロットNo.より、製造年月日が判明しましたので、下記ご案内致します。
・3508082 2015年08月08日製造
・3510063 2015年06月10日製造
・3515042 2015年04月15日製造
でございます。」
(イ)「なお、ルルルン製品の使用期限につきましては、未開封であれば3年、開封後は80日以内にお使いいただくことをご案内しております。」
(ウ)「・・・
・3508082 2018年08月07日使用期限
・3510063 2018年06月09日使用期限
・3515042は2018年04月14日使用期限
でございます。」

5.甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
「商品名 ルルルン フェイスマスク 青のルルルン2S
発売元 グライド・エンタープライズ
販売日 2014-09-01
・・・」

6.甲第7号証
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
ア.「(2)原告商品及び被告商品の販売
原告は,平成26年9月1日から,原告商品の販売を開始し,原告商品は,全国のドラッグストアやスーパーマーケットなどの小売店等において販売されている。
・・・」(2ページ20?23行)
イ.「第3 当裁判所の判断
1 認定事実
前記第2の1の前提事実に加え,争いのない事実,証拠(甲1?4,乙5)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。
(1)原告商品の形態
原告商品は,顔の美容等を目的とするフェイスマスクであり,その形態は別紙原告商品目録の写真(1)?(4)のとおりであるが,具体的には次のとおりである(以下,順に「原告態様A」のようにいう。)
A 外面包装が直方体状となっており,その外寸は,縦約110?112mm,横約112?115mm,高さ約87?88mmである。
B ・・・
C 外面包装の上面に,フラップラベルが貼られ,外面包装の上面に固定された一辺を除き,繰り返しはがしたり貼ったりできるようになっており,その下に縦約60mm,横約65mmの切込みがある。
D 外面包装は光沢のあるローズピンクで,その上面に貼られたフラップラベルには,上方から中央部にかけて,リボン(緑と白)及び伏し目のまつ毛(緑)のイラストが描かれ,白い吹き出し中のセリフ(「まいにち生まれ変わりたい。」又は「みんな大好き!」など)が緑色で記載され,下方には,緑色で「LuLuLun」「フェイスマスクルルルン」と記載されている。また,前面には,中央部付近に緑色で「LuLuLun」「フェイスマスクルルルン」と記載され,下方には,白地に緑文字で内容量や有効成分等が記載されている。」(20ページ5行?21ページ2行)
ウ.(別紙)原告商品目録の「4 包装及び内容器の構造等」の(4)及び(5)の写真から、外面包装の中に内容器が配置されていること、および内容器の外観が看取できる。

7.甲第8号証
検証物の外観及び内部構造は、以下の事実が認められる。
(1)外観
ア.検証物の上面の写真(甲第1号証の写真1(以下、「甲第1号証」の内容については、単に「(写真1)」等という。))から、検証物の上面には、青色のパッケージの上面にフェイスマスクをかたどった絵柄と併せて、「1億枚売れてマスク!青のLuLuLun」、「¥1500税別(当審注:「税別」は縦書き。)」、「/32枚入り」の表示が看取できる。また、上面の左上には、流れ星をかたどった絵柄と併せて、「2014up」、「2年連続第1位」の表示が看取できる。
イ.検証物の前面の写真(写真2)から、検証物の前面には、青色のパッケージの前面にまつげをかたどった絵柄と併せて、「青のLuLuLunフェイスマスクルルルン」の表示が看取できる。
ウ.検証物の左側面(写真4及び写真5)には、「3515042」との記載がある。
エ.検証物の後面(写真6)には、 「1箱に、350ml分のうるおい美容液がぎゅっと!」との記載がある。
オ.検証物の下面(写真7)には、以下の記載がある。
(ア)「販売名:フェイスマスク 青のルルルン2S」、
(イ)「(配合成分)水、グリセリン、プロパンジオール、ポリクオタニウム-51、グリコシルトレハロース、グリセリルグルコシド、加水分解水添デンプン、PCA-Na、ローヤルゼリーエキス、ヒアルロン酸Na、ユズ果実エキス、アルゲエキス、マヨラナ葉エキス、PEG-40水添ヒマシ油、キサンタンガム、クエン酸、クエン酸Na、フェノキシエタノール、ペチルパラベン、BG★ ★植物エキス類の添加物として含まれます。」
(ウ)「製造販売元:株式会社ランリーゼ 愛媛県新居浜市岸の上町2丁目6番35号 発売元:株式会社グライド・エンタープライズ 東京都渋谷区渋谷2丁目10番13号」
カ.検証物(写真8)は、「ウエットシート包装体(1)」と、当該「ウエットシート包装体(1)」の上面、前面、後面、下面の周囲を覆う「帯状の封印シート」からなる。
キ.「ウエットシート包装体(1)」(写真13)の上面には、「封口シート(19)」がある。また、「帯状の封印シート」(写真14)は、「封口シート(19)」の開閉方向に巻き付けられている。
ク.「ウエットシート包装体(1)」(写真15、写真16)の縦方向長さ、横方向長さ、高さは、それぞれ、縦方向長さは約11cm、横方向長さは約11cm、高さは約8.5cmである。
ケ.「ウエットシート包装体(1)」(写真22)の「封口シート(19)」は、その当該「ウエットシート包装体(1)」の前後方向に開閉可能である。「封口シート(19)」を開くと、「外取り出し口(18)」が現れる(写真23)。
コ.「封口シート(19)」を開くと、その内部には、上部に透明フィルムが載った、白色のものが収容されている(写真25)。上記透明フィルムを取り除き、上記白色のものの最上部を指で摘まむことにより、その一枚を「外取り出し口(18)」からが取り出すことができる。
取り出した一枚のものは、湿潤したウェットシートである(写真26)。

(2)内部構造
ア.「ウエットシート包装体(1)」の内部には、「ウェットシートの積層体(3)」を収容する「容器(5)」が、収容されている(写真28)。
イ.「容器(5)」は、「第1内容器(49)」と、「第2内容器(50)」とが重ね合されており、その上側に「内枠(38)」が、下側に「受け皿(27)」が取り付けられた構造を有している(写真30)。
ウ.「第1内容器(49)」は、上端側に「開口部(6)」を有する「周壁部(24)」と、「周壁部(24)」の下端に一体に形成された「底壁部(25)」と、「周壁部(24)」の上端から外周側に屈曲して一体に形成された「外周縁(26)」とを備えている(写真34、写真35)。
エ.「第2内容器(50)」は、上端側に「開口部(6)」を有する「周壁部(51)」と、「周壁部(51)」の下端に一体に形成された「底壁部(52)」と、「周壁部(51)」の上端から外周側に屈曲して一体に形成された「外周縁(53)」とを備えている(写真36)。
オ.「第1内容器(49)」の「外周縁(26)」直下での周長は約39.7cmであり(写真38)、周壁の底壁部(25)部分での周長は約37.6cmである(写真39)。「第2内容器(50)」の「外周縁(53)」直下での周長は約38.5cmであり(写真40)、周壁の底壁部(52)部分での周長は約37.4cmである(写真41)。
カ.「内枠(38)」の縦方向長さ及び横方向長さはともに約11cmである(写真56、写真57)。「受け皿(27)」の縦方向長さ及び横方向長さはともに約11cmである(写真58、写真59)。
キ.「内枠(38)」の周壁部には、突起状の「係合部(42)」が内側に突出して形成されている(写真65、写真66)。「係合部(42)」は、「第1内容器(49)」の「外周縁(26)」と着脱自在に係合する(写真67、写真68)。
ク.「第1内容器(49)」の「底壁部(25)」には、凹状の「位置決め凹部(36)」が設けられている(写真69)。「受け皿(27)」の底壁部には、凸状の「位置決め凸部(43)」が設けられている(写真71)。「位置決め凹部(36)」は、「位置決め凸部(43)」と着脱自在に係合する(写真72)。
ケ.「容器(5)」を「外装袋(8)」内に収容した状態での、「内枠(38)」の「内取り出し口(35)」の外側部分と、「封口シート(19)」の貼着部分との位置関係は「封口シート(19)」の周縁部分を「外装袋(8)」を介して「内取り出し口(35)」の外側部分が下側から受ける構造となっていることが看取できる(写真60、写真61)。

8.甲第12号証
令和2年11月12日に申立人が写しを提出した、本件特許に係る出願の原出願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲第12号証には、写真とともに次の事項が記載されている。
ア.「今日は 東急ハンズ 全店で展開中の大人気商品が
ここ木更津店にもきた?!!!」
イ.「もっちり高保湿タイプ(32枚入り)」との文章の下の写真には、青色のパッケージの上面にフェイスマスクをかたどった絵柄と併せて、「1億枚売れてマスク!青のLuLuLun」、「¥1500税別(当審注:「税別」は縦書き。)」、「/32枚入り」の表示が看取できる。また、上面の左上には、流れ星をかたどった絵柄と併せて、「2014up」、「2年連続第1位」の表示が看取できる。

9.甲第13号証
令和2年11月12日に申立人が写しを提出した、本件特許に係る出願の原出願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲第13号証には、写真とともに次の事項が記載されている。
ア.掲載された写真には、青色のパッケージの上面に、フェイスマスクをかたどった絵柄と併せて、「1億枚売れてマスク!青のLuLuLun」、「¥1500(税込¥1620)」、「/32枚入り」の表示が看取できる。

10.甲第14号証
令和2年11月12日に申立人が写しを提出した、本件特許に係る出願の原出願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲第14号証には、写真とともに次の事項が記載されている。
ア.掲載された写真には、青色のパッケージの上面に、まつげをかたどった絵柄と併せて、「青のLuLuLunフェイスマスクルルルン」の表示が看取できる。また、上面の右側中程には、黄色の雲形の絵柄の上に「2億枚突破!」の表示が看取できる。
イ.掲載された写真には、青色のパッケージの前面に、フェイスマスクをかたどった絵柄と併せて、「New マスク!目元カバー率175%up!青のLuLuLun」の表示が看取できる。また、前面の左上には、流れ星をかたどった絵柄と併せて、「2014up」、「2年連続第1位」の表示が看取できる。

第5 当審の判断
1.検甲第1号証から把握される発明が原出願の出願前に公然実施されたものであるか否かについて
事案に鑑み、まず検甲第1号証から把握される発明が本件特許の原出願の出願(平成28年2月16日)前に公然と実施されていたか否かについて、すなわち、当該検甲第1号証を分析して、その発明の内容を不特定多数の者が知り得る状態であったか否かについて検討する。
上記「第4 認定事実」から総合的に判断すると、検甲第1号証が製造された日は、本件特許の原出願の出願前である平成27年8月8日であり、また、検甲第1号証に係る商品である「フェイスマスク 青のルルルン2S」が発売された日は、本件特許の原出願の出願前である平成26年9月1日と認められる。
そして申立人は、特許異議申立書の4(4)イ(ア)の「b 公然実施の時期について」において、「当該商品の仕様が、検甲第1号証の製造までの間に変更されていなければ、検甲1発明は本件特許の原出願以前に公然実施をされた発明であるといわざるを得ない。」(6ページ23?25行)と主張する。しかし、検甲第1号証に係る商品の発売日である平成26年9月1日から検甲第1号証の製造日である平成27年8月8日までの間に、検甲第1号証に係る商品である「フェイスマスク 青のルルルン2S」の特に内部構造が変更されていないことを立証する証拠は、なんら提出されていない。
申立人は、さらに特許異議申立書において「また、当該製造日以前に当該商品の内部構造に仕様変更がなされていたとしても、既に発売されている商品であるにもかかわらず、製造から本件特許の原出願日までの約半年間もの間、検甲第1号証が販売もされずに秘匿状態で保管されていたということは、通常考えられない。」(6ページ26行?7ページ1行)、「当該商品の使用期限は未開封でも3年間であるので、無駄に販売を遅らせて商品の寿命を短縮する必要性がない。」(7ページ4?6行)とし、「何らかの特別な反証がない限り、検甲第1号証は本件特許出願前に守秘義務を有しない者に譲渡等されたものであると認定するのが極めて妥当である。」(7ページ7?9行)と主張する。
ここで、「検甲第1号証は本件特許出願前に守秘義務を有しない者に譲渡等された」とは、『製造販売元である「株式会社ランリーゼ」、発売元である「株式会社グライド・エンタープライズ」から守秘義務を有しない者・・・に、直接又は間接的に譲渡等されたもの・・・』(回答書第2ページ20?22行)と解されるが、製造販売元である「株式会社ランリーゼ」又は発売元である「株式会社グライド・エンタープライズ」が、検甲第1号証を、守秘義務を有しない者に直接又は間接的に譲渡等したことを直接的に証明する証拠は、提出されておらず、発売元である「株式会社グライド・エンタープライズ」が運営する「フェイスマスクルルルン公式ホームページ」への問い合わせに対する回答の電子メール(甲第3号証)にも、譲渡等された日の記載はない。
申立人は、令和2年11月12日提出の回答書と同時に甲第12号証を提出し、「検甲第1号証に係る製品とパッケージが同一の製品が、東急ハンズトラックマーケット松坂屋豊田店(当審注:「木更津店」の誤りと認められる。)にて入荷された旨が記載されたウェブページ」(回答書1ページ32?33行)が「2015年5月2日に記載されたものであるので、検甲第1号証に係る製品とパッケージが同一の製品は、少なくとも、2015年5月2日の時点では東急ハンズトラックマーケット松坂屋豊田店(当審注:同じく「木更津店」の誤りと認められる。)に入荷されていたといえる。」(回答書2ページ3?5行)旨を主張する。
しかし、甲第12号証の掲載された写真から看取できるパッケージの外観のみから、甲第12号証に掲載された製品の内部構造まで看取することはできず、さらにパッケージが同一ないし類似していることだけを理由に、甲第12号証に記載された製品が検甲第1号証と同一の製品であると解する理由もない。
また、同じく回答書と同時に甲第13号証及び甲第14号証を提出し、「甲第13号証及び甲第14号証によると、検甲第1号証に係る製品のシリーズ製品は、定期的に、帯状の封印シートのデザインを変えて販売していたことがわかる。・・・甲第12号証に掲載されている2015年12月20日時点の製品の帯状の封印シートは、検第1号証に係る製品の帯状の封印シートの上面に配されるフェイスパックのデザインが側面に配され、上面にまつげのデザインが配されている。」(回答書2ページ11?18行)から「検甲第1号証に係る製品は、少なくとも本件特許出願前である2015年12月20日に、・・・守秘義務を有しない者・・・に、直接又は間接的に譲渡等された」(回答書2ページ19?22行)と主張する。
しかし、甲第12号証と同様に、甲第13号証及び甲第14号証に掲載された写真から看取できるパッケージに外観のみから、甲第11号証及び甲第12号証に掲載された製品の内部構造まで看取することはできず、定期的に帯状の封印シートのデザインを変えて販売していることを理由に、検甲第1号証と同一の製品が2015年12月20日に、製造販売元又は発売元から守秘義務を有しない者に直接又は間接的に譲渡等されたことまで認めることはできない。
してみると、申立人の提出したいずれの証拠からも、本件特許に係る出願の原出願の出願前に、検甲第1号証が市場において販売されていた等、その発明の内容を不特定多数の者が知り得る状態にあったことを立証することはできないから、検甲第1号証から把握される発明が、本件特許に係る出願の原出願の出願前に公然と実施されていたということはできない。

2.補足について
申立人は、特許異議申立書の4(4)ウの「(ウ)補足:平成27年(ワ)第33398号不正競争行為差止等請求事件 東京地方裁判所平成28年7月19日判決(甲第7号証)について」において、上記不正競争行為差止等請求事件の原告である株式会社グライド・エンタープライズが提出した原告商品「フェイスマスク ルルルン4S」に関する上記判決中の文章及び別紙「原告商品目録」に掲載された写真から、上記原告商品が「本件特許に係る原出願より前の平成26年9月1より公然実施されていた」(特許異議申立書13ページ26?27行)とし、「・・・上述の(4)ウ(本件特許発明と証拠に記載された発明との対比)において、検甲1発明の代わりに、上記公然実施発明及び上記周知技術を適用することにより当業者が容易に想到できたものであるということもできる。」(特許異議申立書14ページ22?25行)と主張する。
当該主張は、本件特許異議の申立てにおいて取消理由を構成する主たる証拠である検甲第1号証に代えて、上記不正競争行為差止等請求事件の原告である株式会社グライド・エンタープライズが提出した原告商品「フェイスマスク ルルルン4S」を、取消理由を構成する主たる証拠とすることを主張するものと解されるので、検討する。
前記第4の6.に示したとおり、甲第7号証には、原告商品「フェイスマスク ルルルン4S」について、前提事実として原告表品が平成26年9月1日に販売されたこと、認定事実として外面包装の形状及び寸法、フラップラベルとフラップラベルの下に縦約60mm、横約65mmの切り込みがあることが記載されるとともに、内容器の外観が看取できる。
しかし、甲第7号証において前提事実及び認定事実とされた事項からは、技術常識を参酌しても、原告商品「フェイスマスク ルルルン4S」が、本件特許の請求項1に係る発明のように「前記容器の上端側の開口部を密封し且つ前記外取り出し口に対応する内取り出し口を形成可能な内側シートを備え、前記容器は上端側に前記開口部を有する周壁部と、該周壁部の下端に一体に形成された底壁部と、前記周壁部の上端から外周側に屈曲して一体に形成された外周縁とを備え、前記内側シートの全周を前記外周縁に固着し、前記容器と前記外装袋との間に介在され且つ前記外装袋の形状を内側から略直方体状又は略立方体状に保持する保持部材を備えたこと」や本件特許の請求項2に係る発明のように「前記外装袋はガスバリアー性を有する複合フィルム又は複合シートにより製袋されていること」ことまで看取することはできないし、そのような構成が、甲第1号証及び甲第7号証に記載されているわけでもない。
よって、申立人の主張は、採用することはできない。

3.当審において顕著な事実について
申立人が、令和2年10月12日に上申書と共に提出した甲第8号証は、当審において顕著な事実であるので、検討する。
事案に鑑み、まず甲第8号証から把握される発明が本件特許の原出願の出願(平成28年2月16日)前に公然と実施されていたか否かについて、すなわち、当該甲第8号証を分析して、その発明の内容を不特定多数の者が知り得る状態であったか否かについて検討すると、上記1.で説示した理由と同様の理由により、申立人の提出したいずれの証拠からも、本件特許に係る出願の原出願の出願前に、検証物が市場において販売されていた等、その発明の内容を不特定多数の者が知り得る状態にあったことを立証することはできないから、甲第8号証から把握される発明が、本件特許に係る出願の原出願の出願前に公然と実施されていたということもできない。

第6 むすび
以上のとおり、検甲第1号証から把握される発明及び甲第8号証から把握される発明は、本件特許に係る出願の原出願の出願前に公然と実施されたということはできないから、その余について論じるまでもなく、本件特許の請求項1?2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。

よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-02-10 
出願番号 特願2017-28134(P2017-28134)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 矢澤 周一郎  
特許庁審判長 森藤 淳志
特許庁審判官 間中 耕治
石井 孝明
登録日 2019-05-24 
登録番号 特許第6529529号(P6529529)
権利者 篠原 勇治
発明の名称 ウエットシート包装体  
代理人 松島 理  
代理人 特許業務法人谷藤特許事務所  
復代理人 小笠原 宜紀  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ