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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部無効 2項進歩性  H01L
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H01L
管理番号 1371039
審判番号 無効2018-800084  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-07-09 
確定日 2020-12-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5177317号発明「発光装置と表示装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5177317号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 本件の概要及び経緯
1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第5177317号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とすることを求める事案である。

2 本件の経緯
本件特許に係る出願は、
平成9年7月29日(優先権主張の日:平成8年7月29日、平成8年9月17日、平成8年9月18日、平成8年12月27日、平成9年3月31日)を国際出願日とする出願である特願平10-508693号
の一部を平成14年9月24日に新たな出願とした特願2002-278066号
の一部を平成17年5月19日に新たな出願とした特願2005-147093号
の一部を平成18年7月19日に新たな出願とした特願2006-196344
の一部を平成20年1月7日に新たな出願とした特願2008-269号
の一部を平成24年8月29日に新たな出願としたものであって、その特許登録以後の経緯は次のとおりである。

平成25年 1月18日:特許登録
平成29年 8月 9日:訂正審判請求(訂正2017-390078号)
平成29年11月28日:訂正審判請求成立審決
平成29年12月 7日:訂正審判請求成立審決の確定
平成30年 7月 9日:本件審判請求
平成30年 7月31日:手続補正指令書(方式)
平成30年 8月30日:手続補正書
平成30年11月 9日:答弁書・訂正請求書
平成31年 1月 8日:弁駁書
平成31年 2月 4日:審理事項通知書
平成31年 3月15日:口頭審理陳述要領書(請求人)
平成31年 3月15日:口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成31年 3月29日:口頭審理期日

以下、最先の優先権主張の日(平成8年7月29日)を「本件優先日」ということにする。

第2 訂正の適否についての当審の判断
1 訂正請求の内容
(1)平成30年11月9日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(下線は、訂正箇所である。)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2において、「該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、」とあるのを、
「該LED光源は、発光層がインジウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体であり、」と訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、「ガーネット系蛍光体とを含むことを特徴とするLED光源。」とあるのを、
「ガーネット系蛍光体とを含み、前記LED光源は発光ダイオードであることを特徴とするLED光源。」と訂正する。

ウ 訂正事項3
願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の段落【0012】において、「該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、」とあるのを、
「該LED光源は、発光層がインジウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体であり、」と訂正する。

エ 訂正事項4
本件特許明細書の段落【0012】において、「ガーネット系蛍光体とを含むことを特徴とするLED光源でもある。」とあるのを、
「ガーネット系蛍光体とを含み、前記LED光源は発光ダイオードであることを特徴とするLED光源でもある。」と訂正する。

(2)一群の請求項等について
訂正事項1及び2は、請求項2に対して請求されたものである(なお、請求項2には、一群の請求項の関係になる他の請求項は存在しない。)。
訂正事項3及び4は、請求項2に関係する訂正である。

2 本件訂正に対する当審の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、上記1(1)アのとおり、本件訂正前の請求項2の発明特定事項である「発光層」について、「インジウムを含む」ことを限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合する。

イ 新規事項追加の有無
(ア)本件特許明細書には、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
「ここで、窒化物系化合物半導体(一般式IniGajAlkN、ただし、0≦i,0≦j,0≦k,i+j+k=1)としては、InGaNや各種不純物がドープされたGaNを始め、種々のものが含まれる。」(【0013】)、
「(発光素子102、202)
発光素子は、図1及び図2に示すように、モールド部材に埋設されることが好ましい。本願発明の発光ダイオードに用いられる発光素子は、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体を効率良く励起できる窒化ガリウム系化合物半導体である。窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子102,202は、MOCVD法等により基板上にInGaN等の窒化ガリウム系半導体を発光層として形成することにより作製される。発光素子の構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合などを有するホモ構造ヘテロ構造あるいはダブルヘテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる程度に薄く形成した単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。特に、本願発明においては、発光素子の活性層をInGaNの単一量子井戸構造とすることにより、フォトルミネセンス蛍光体の劣化がなく、より高輝度に発光する発光ダイオードとして利用することができる。」(【0065】)

(イ)上記(ア)の各記載からすれば、「発光層がインジウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体である」ことは、本件特許明細書の記載から導き出せるといえる。
よって、訂正事項1は、当業者によって、特許請求の範囲、本件特許明細書及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質拡張・変更の有無
上記ア及びイにも照らすと、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
よって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項1についての小括
このように、訂正事項1は、訂正要件を満たす。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、上記1(1)イのとおり、本件訂正前の請求項2の発明特定事項である「LED光源」について、「前記LED光源が発光ダイオードである」ことを限定するものである。
すなわち、本件訂正前の請求項1は「発光ダイオード」に係るものであり、同請求項2は「LED光源」に係るものであって、「発光ダイオード」と「LED光源」とが区別されていることが明らかである。そして、両者が区別されている以上、両者は同義ではないと解するのが相当である。その上で、両者の関係をさらにみると、「LED光源」とは「LEDチップ」を用いた「光源」の意味であるから、「発光ダイオード」が、「LED光源」の上位概念であるとは言い難く、そうであれば、「LED光源」の下位概念であると解される(なお、この点に関連して、請求人は、「発光ダイオード」とは、LEDチップを用いた「光源」に他ならない旨主張する(請求人口頭審理陳述要領書18頁下から10行?下から9行)けれども、その文言に照らして、そのように解する根拠はなく、むしろ、上記のとおり、「LED光源」こそがLEDチップを用いた光源を意味する概念であると解すべきである。)。つまり、「発光ダイオード」の意味は「LED光源」の意味よりは狭いと認められる。
このように、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合する。

イ 新規事項追加の有無
(ア)本件特許明細書には、次の記載がある。
「【図1】本発明に係る実施の形態のリードタイプの発光ダイオードの模式的断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のチップタイプの発光ダイオードの模式的断面図である。・・・」(【0033】)

(イ)上記(ア)の各記載からすれば、「前記LED光源が発光ダイオードである」ことは、本件特許明細書の記載から導き出せるといえる。
よって、訂正事項2は、当業者によって、特許請求の範囲、本件特許明細書及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
訂正事項2は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質拡張・変更の有無
上記ア及びイにも照らすと、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
よって、訂正事項2は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項2についての小括
このように、訂正事項2は、訂正要件を満たす。

(3)訂正事項3及び4について
ア 訂正の目的
訂正事項3及び4は、いずれも、請求項2が訂正事項1及び2のとおりに訂正されたことに伴い、訂正後の請求項2の記載と不整合になっている本件特許明細書の記載を整合させるために行われるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
上記(2)ア及びイと同様の理由により、訂正事項3及び4は、当業者によって、特許請求の範囲、本件特許明細書及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
訂正事項3及び4は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質拡張・変更の有無
上記ア及びイにも照らすと、訂正事項3及び4は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
よって、訂正事項3及び4は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項3及び4についての小括
このように、訂正事項3及び4は、訂正要件を満たす。

(4)本件訂正に対する当審の判断の小括
以上のとおりであるから、本件訂正は適法である。よって、訂正後の請求項2について訂正を認める。

第3 本件発明の認定
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、以下のとおりのものと認められる。

1 本件発明1
「白色系を発光する発光ダイオードであって、
該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、
ことを特徴とする発光ダイオード。」

2 本件発明2(下線は訂正箇所である。)
「白色系を発光するLED光源であって、
該LED光源は、発光層がインジウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含み、前記LED光源は発光ダイオードである
ことを特徴とするLED光源。」

第4 請求人の主張の概要
1 請求人が主張する無効理由
(1)無効理由1
本件発明1及び2の「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」との記載は、Yを含まない(Gdのみを含む)ガーネット系蛍光体を文言上包含する。
しかしながら、かかる組成のガーネット系蛍光体を用いた場合には、「より高輝度」の「白色系」を発光する発光ダイオードを実現し得ない。
よって、本件発明1及び2についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第123条第4号の規定により、無効とされるべきである。

(2)無効理由2
本件発明1及び2の「Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素」との記載は、Alを含まない(Gaのみを含む)ガーネット系蛍光体を文言上包含する。
しかしながら、かかる組成のガーネット系蛍光体を用いた場合には、「より高輝度」の「白色系」を発光する発光ダイオードを実現し得ない。
よって、本件発明1及び2についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第123条第4号の規定により、無効とされるべきである。

(3)無効理由3-1
本件発明1及び2は、甲13に記載された発明及び甲1?甲12・甲14?甲22・甲24に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第2号の規定により、無効とされるべきである。

(4)無効理由3-2
本件発明2は、甲14に記載された発明及び甲1?甲12・甲15?甲22・甲24に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2に係る特許は、特許法第123条第2号の規定により、無効とされるべきである。

2 請求人が提出した証拠方法
以下、証拠番号における「第」及び「号証」は略して表記する。
甲1:蛍光体ハンドブック第1版、株式会社オーム社、平成21年1月30日(第1版第1刷は昭和62年12月25日発行)、240頁?279頁
甲2:「Preparation of Y_(3)Al_(5)O_(12)-Based Phosphor Powders」,J.Electrochem.Soc.,Vol.134,No.2,1987年2月,p.493-p.498
甲3:「PYGけい光面とその応用」、三菱電機技報、Vol.48、No.9、昭和49年9月25日、p.1121-p.1124
甲4:特開平6-73376号公報
甲5:特開平8-170077号公報
甲6:米国特許第3819974号明細書
甲7:「PREPARATION OF Mg-DOPED GaN DIODES EXHIBITING VIOLET ELECTROLUMINESCENCE」,Mat.Res.Bull.,Vol.7,1972年,p.777-p.782
甲8:「青色発光ダイオード、ダブルヘテロ構造で1cd実現」,NIKKEI ELECTRONICS,No.602,p.93-p.102,1994年2月28日
甲9:「Candela-class high-brightness InGaN/AlGaN double-heterostructure blue-light-emitting diodes」,Appl.Phys.Lett.,Vol.64,No.13,1994年3月28日,p.1687-p.1689
甲10:「Cd-Doped InGaN Films Grown on GaN Films」,Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.32,pt.2,No.3A,1993年3月1日,p.L338-L341
甲11:「InGaN青色発光ダイオード-新しい青色半導体光源を目指して」,電子情報通信学会誌,Vol.76,No.9,p.913-p.917,1993年9月
甲12:「青色LEDも1cd時代」、エレクトロニクス、1994年6月号、1994年6月1日、p.34-p.37
甲13:特開平5-152609号公報
甲14:特開平8-7614号公報
甲15:「カーオーディオのLCD用高輝度白色バックライト」、電子技術、第38巻第7号、平成8年7月1日、55頁-58頁
甲16の1:NP-204のデータシート(その1),1995年5月16日
甲16の2:NP-204のデータシート(その2),1995年5月16日
甲17:特公昭49-1221号公報
甲18:特開昭62-20237号公報
甲19:特開平6-208845号公報
甲20:特開平7-183005号公報
甲21:特開平5-156246号公報
甲22:Luminescent Materials,Springer-Verlag,1994年、目次・第10章
甲23:特開平7-99345号公報
甲24:特開平6-44947号公報
甲25:米国訴訟事件No.12-cv-11758の証拠A(https://lexmachina.comよりダウンロード)
甲26:米国訴訟事件No.12-cv-11758の証拠HH(https://lexmachina.comよりダウンロード)
甲27:「次世代照明のための白色LED材料」、日刊工業新聞社、2010年3月27日、36頁?39頁

第5 被請求人の主張の概要
1 被請求人の答弁
無効理由1?4は理由がないから、本件発明1及び2についての特許は無効にされるべきものではない。

2 被請求人が提出した証拠方法
乙1:特許第6139334号公報
乙2:宮原諄二、「「白い光」のイノベーション」、朝日新聞社、平成17年12月25日、204頁?205頁・234頁?239頁
乙3の1:佐久間健、「サイアロン系蛍光体と発光素子への応用」、1頁?25頁・126頁?141頁・154頁?155頁
乙3の2:UT Repositoryにおける「サイアロン系蛍光体と発光素子への応用」の紹介ページ(http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/handle/2261/15750)、2011年9月30日印刷
乙4:「第20回櫻井健二郎氏記念賞」の紹介記事(http://www.oitda.or.jp/main/sakurai/sakurai04-j.html)、2011年10月1日印刷
乙5:「10.4 レーザーディスプレー」、レーザーハンドブック、朝倉書店、昭和48年2月20日、639頁?647頁
乙6:訂正2017-390078号事件審決
乙7:図解ファインセラミックスの結晶化学、アグネ技術センター、平成9年6月20日、277頁?278頁
乙8:赤崎勇、「青色発光デバイスの魅力」、工業調査会、平成9年5月1日、146頁?163頁
乙9:「照明用LED技術」、独立行政法人工業所有権情報・研修館、平成18年3月、3頁?8頁
乙10:オムロンプレシジョンテクノロジー株式会社のウェブサイト(http://www.omron-precision.co.jp/products/msi_type.html)、2019年2月26日印刷
乙11:ミネベアミツミ株式会社のウェブサイト(https://www.eminebea.com/jp/product/electronic/lcdlightingdevice/lcd.shtml)、2019年2月26日印刷
乙12:シチズン電子株式会社のウェブサイト(http://ce.citizen.co.jp/products/assemblies_category.php)、2019年2月26日印刷
乙13:SINLOIHI 色光変換EL用蛍光顔料FA-000シリーズのカタログ、シンロイヒ株式会社
乙14:竹村博文、「白色LEDの多様化を支える高効率、高演色性、及び高信頼性蛍光体」、東芝レビュー、Vol.67、No.2、2012年、42頁?45頁
乙15:アンドリース・マイヤーリンク、「白色光LEDの開発に関する専門家意見書」と題する文書、2013年12月16日
乙16:独国特許出願公開第19625622号明細書
乙17:米国特許第6600175号明細書
乙18:米国特許第5847507号明細書
乙19:無効2011-800123号審決
乙20:ドイツ連邦最高裁判所判決(X ZR96/14)
乙21:欧州特許第936682号に対する異議決定
乙22:中華人民共和国北京知識産権法院行政判決書(2018)京73行初247号
乙23:豊田合成株式会社のウェブサイト(https://www.toyoda-gosei.co.jp/news/detail/?id=84)、2002年10月2日(2019年3月4日印刷)
乙24:株式会社マイクラフトのウェブサイト(http://www.my-craft.jp/html/aboutled/led_iroondo.html/)、2019年3月6日印刷
乙25:第290回蛍光体同学会講演予稿、平成13年11月30日、1頁
乙26:西澤潤一監修・スタンレー電気技術研究所編、「発光ダイオードとその応用」、産業図書、平成2年6月8日、74頁?79頁
乙27:「白色LED素子の量産開始について」と題する株式会社東芝のニュースリリース、2012年7月25日

第6 無効理由に対する当審の判断
1 証拠の記載事項の認定
なお、甲23は、もっぱら、無効理由1及び2に関連する証拠である。また、認定に用いた記載箇所を、適宜、括弧内に参考までに示してある。

(1)請求人が提出したもの
ア 甲1
ブラウン管用蛍光体として、Y_(3)Al_(5)O_(12):Tb^(3+)及びY_(3)Al_(3)Ga_(2)O_(12):Tb^(3+)が焼けに対する相対強度が強いこと(268頁左欄)、
フライングスポット管用蛍光体として、Y_(3)(Al,Ga)_(5)O_(12):Ce^(3+)が存在し、単一で幅広い発光スペクトル領域をもつこと(276頁左欄)。

イ 甲2
投影CRT用途において、高い発光強度と長い寿命ゆえに、セリウムをドープしたY_(3)Al_(5)O_(12)ベースの蛍光物質が選択されたこと。

ウ 甲3
PYGけい光体とは、カラー用フライングスポット管のために開発されたセリウムふ活イットリウム・アルミノ・ガレイトの仮称であること(1121頁左欄)、
Y_(3)(Al,Ga)_(5)O_(12):CeであらわされるPYGけい光体は、発光スペクトルが450?650nmと幅広く約500nmにそのピークがあり発光色は緑黄色であって、さらに、残光特性は最も速い部類に属し、電子線衝撃に対する安定性も非常にすぐれていること(1121頁左欄)、
PYGけい光体は非常に劣化の少ないことが大きな特長の一つでもあり、陽極電圧20kVで電流密度2μA/cm^(2)の条件で輝度劣化特性をみると、初期の250時間くらいまで数%の劣化が認められるが、それ以後はほとんど劣化は認められず、わずかに2?3000時間を越えるころからフェースガラスの電子線焼けの影響で透過率が落ちるために、ブラウン管としての輝度劣化が若干ある程度であること(1123頁左欄)、
PYGけい光面の応用面としては、このけい光体が明るく、しかもきわめて劣化が少なく発光波長帯域も比較的広いことから、その用途は多岐にわたっており、おもな用途としては、カラーおよび単色のビデオプレーヤ用フライングスポットスキャナを始めとして、ファクシミリやOCR等があげられ、変わったところでは、カラーフィルム等の色彩情報分析用光源や、きわめてけい光体の発光レスポンスのよいPYGけい光体の特長を生かしてμs程度の短時間の光パルスを発生させる計測用光源としての用途もあること(1124頁左欄?右欄)。

エ 甲4
陰極線管用蛍光体に用いられるイットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体であって、イットリウム及びガドリニウムのうち少なくとも1つを含み、イットリウムまたはガドリニウムを特定量のクロムで置換した蛍光体が、電流密度あるいは加速電圧の増加に対しても、発光波長の変化がないと共に、劣化しにくく、また有害な物質を含まない、650nm以上の帯域に発光する蛍光体となること(【0001】、【0009】、【0010】、【0032】、【0040】、【0041】)。

オ 甲5
投射型ブラウン管の発光スクリーンには、まず発光効率が高いこと、輝度が所望の範囲で励起強度に忠実に比例すること、蛍光膜の温度上昇に伴う発光効率の低下がないこと、発光効率の経時変化が少ないこと、つまり輝度寿命に優れていること等の特性が強く求められること(【0002】)、
投射型テレビの緑色蛍光体には、Y_(3)(Al,Ga)_(5)O_(12):Tb系が、とりわけ有望な2種類の材料のうちの1つであること(【0003】)、
イットリウム、アルミニウム(ただし、アルミニウムの一部又は全部をガリウムで置換してもよい)及び酸素を基本構成元素とし、結晶構造がガーネット構造の蛍光体であって、熱発光強度の温度依存性を示した曲線の中で、300K未満の温度領域の熱発光ピークの積分強度より、300Kから700Kの温度領域の熱発光ピークの積分強度が小さい蛍光体が、高密度励起による輝度寿命が向上し、また、発光効率が高いこと(【請求項1】、【0054】)。

カ 甲6
紫色の発光ダイオードからの光は、有機および無機蛍光体を用いて、良好な変換効率で、より低い周波数(より低いエネルギー)に変換することが可能であり、このような変換は、審美的目的のために異なる色を発色するだけでなく、人間の目にとって高い感度のスペクトル範囲の光を生成するのにも適していること、
異なる蛍光体を使用することにより、すべての基本色を、この同じ基本デバイスから発現させることができること、
このような装置のアレイは、カラーディスプレイシステム、例えば、ソリッドステートTVスクリーンに使用することができること。(以上、翻訳文の「4.」)

キ 甲7
紫色のエレクトロルミネッセンスを示すMgドープGaNダイオードが製造され、その射出される放射は4250Åにピークを示すこと。

ク 甲8
従来の製品に比べて100倍近く明るい光度1cdのGaN青色発光ダイオードが開発されたこと(94頁中欄)、
InGaN層に発光中心としてZnをドープし、クラッド層をAlGaNとしたInGaN/AlGaNダブルへテロ構造青色発光ダイオードが、波長450nm、半値幅70nm、輝度が1.2cdであったこと(99頁左欄?100頁左欄)。

ケ 甲9
発光強度が1cdを越えるカンデラクラスの高輝度InGaN/GaNダブルへテロ(DH)青色発光ダイオードが作成されたこと、
活性層は、ZnドープのInGaN層であったこと。

コ 甲10
810℃から780℃の範囲の温度で成長させた、CdをドープしたInGaN薄膜のフォトルミネッセンス(PL)は、インジウムのモル分率に依存して424nmから495nmの範囲にピーク波長をもち、半値幅が約60nmの、強い青色発光を示したこと。

サ 甲11
活性層がInGaN、クラッド層がGaNであるInGaN/GaNダブルヘテロ構造を用いた青色LED(914頁右欄?916頁)。

シ 甲12
発光波長を長くする目的で、活性層のInGaNにZnをドープしクラッド層をAlGaNにして1cdの輝度を有するInGaN/AlGaNダブルヘテロ構造発光ダイオードが完成したこと(36頁左欄)、
その発光ダイオードの発光ピーク波長は450nm、発光輝度は1.2cdであったこと(36頁左欄)。

ス 甲13
(ア)甲13には次の記載がある。
a 「【特許請求の範囲】」、
「ステム上に発光素子を有し、それを樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオードにおいて、前記発光素子が、一般式Ga_(X)Al_(1-X)N(但し0≦X≦1である)で表される窒化ガリウム系化合物半導体よりなり、さらに前記樹脂モールド中に、前記窒化ガリウム系化合物半導体の発光により励起されて蛍光を発する蛍光染料、または蛍光顔料が添加されてなることを特徴とする発光ダイオード。」(【請求項1】)

b 「【産業上の利用分野】」、
「本考案は発光素子を樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオード(以下LEDという)に係り、特に一種類の発光素子で多種類の発光ができ、さらに高輝度な波長変換発光ダイオードに関する。」(【0001】)

c 「【従来の技術】」、
「一般に、LEDは図1に示すような構造を有している。1は1mm角以下に切断された例えばGaAlAs、GaP等よりなる発光素子、2はメタルステム、3はメタルポスト、4は発光素子を包囲する樹脂モールドである。発光素子1の裏面電極はメタルステム2に銀ペースト等で接着され電気的に接続されており、発光素子1の表面電極は他端子であるメタルポスト3から伸ばされた金線によりその表面でワイヤボンドされ、さらに発光素子1は透明な樹脂モールド4でモールドされている。」(【0002】)、

「通常、樹脂モールド4は、発光素子の発光を空気中に効率よく放出する目的で、屈折率が高く、かつ透明度の高い樹脂が選択されるが、他に、その発光素子の発光色を変換する目的で、あるいは色を補正する目的で、その樹脂モールド4の中に着色剤として無機顔料、または有機顔料が混入される場合がある。例えば、GaPの半導体材料を有する緑色発光素子の樹脂モールド中に、赤色顔料を添加すれば発光色は白色とすることができる。」(【0003】)

d 「【発明が解決しようとする課題】」、
「しかしながら、従来、樹脂モールドに着色剤を添加して波長を変換するという技術はほとんど実用化されておらず、着色剤により色補正する技術がわずかに使われているのみである。なぜなら、樹脂モールドに、波長を変換できるほどの非発光物質である着色剤を添加すると、LEDそのもの自体の輝度が大きく低下してしまうからである。」(【0004】)、
「ところで、現在、LEDとして実用化されているのは、赤外、赤、黄色、緑色発光のLEDであり、青色または紫外のLEDは未だ実用化されていない。青色、紫外発光の発光素子はII-VI族のZnSe、IV-IV族のSiC、III-V族のGaN等の半導体材料を用いて研究が進められ、最近、その中でも一般式がGa_(X)Al_(1-X)N(但しXは0≦X≦1である。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体が、常温で、比較的優れた発光を示すことが発表され注目されている。また、窒化ガリウム系化合物半導体を用いて、初めてpn接合を実現したLEDが発表されている(応用物理,60巻,2号,p163?p166,1991)。それによるとpn接合の窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDの発光波長は、主として430nm付近にあり、さらに370nm付近の紫外域にも発光ピークを有している。その波長は上記半導体材料の中で最も短い波長である。しかし、そのLEDは発光波長が示すように紫色に近い発光色を有しているため視感度が悪いという欠点がある。」(【0005】)、
「本発明はこのような事情を鑑みなされたもので、その目的とするところは、発光ピークが430nm付近、および370nm付近にある窒化ガリウム系化合物半導体材料よりなる発光素子を有するLEDの視感度を良くし、またその輝度を向上させることにある。」(【0006】)

e 「【課題を解決するための手段】」、
「本発明は、ステム上に発光素子を有し、それを樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオードにおいて、前記発光素子が、一般式Ga_(X)Al_(1-X)N(但し0≦X≦1である)で表される窒化ガリウム系化合物半導体よりなり、さらに前記樹脂モールド中に、前記窒化ガリウム系化合物半導体の発光により励起されて蛍光を発する蛍光染料、または蛍光顔料が添加されてなることを特徴とするLEDである。」(【0007】)、
「図2は本発明のLEDの構造を示す一実施例である。11はサファイア基板の上にGaAlNがn型およびp型に積層されてなる青色発光素子、2および3は図1と同じくメタルステム、メタルポスト、4は発光素子を包囲する樹脂モールドである。発光素子11の裏面はサファイアの絶縁基板であり裏面から電極を取り出せないため、GaAlN層のn電極をメタルステム2と電気的に接続するため、GaAlN層をエッチングしてn型層の表面を露出させてオーミック電極を付け、金線によって電気的に接続する手法が取られている。また他の電極は図1と同様にメタルポスト3から伸ばした金線によりp型層の表面でワイヤボンドされている。さらに樹脂モールド4には420?440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料5が添加されている。」(【0008】)


f 「【発明の効果】」、
「蛍光染料、蛍光顔料は、一般に短波長の光によって励起され、励起波長よりも長波長光を発光する。逆に長波長の光によって励起されて短波長の光を発光する蛍光顔料もあるが、それはエネルギー効率が非常に悪く微弱にしか発光しない。前記したように窒化ガリウム系化合物半導体はLEDに使用される半導体材料中で最も短波長側にその発光ピークを有するものであり、しかも紫外域にも発光ピークを有している。そのためそれを発光素子の材料として使用した場合、その発光素子を包囲する樹脂モールドに蛍光染料、蛍光顔料を添加することにより、最も好適にそれら蛍光物質を励起することができる。したがって青色LEDの色補正はいうにおよばず、蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光に変換することができる。さらに、短波長の光を長波長に変え、エネルギー効率がよい為、添加する蛍光染料、蛍光顔料が微量で済み、輝度の低下の点からも非常に好都合である。」(【0009】)(当審注:なお、「・・・蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光を変換することができる。」は、「・・・蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光に変換することができる。」の明らかな誤記と認められるので、誤記を正した上で認定した。)

(イ)上記(ア)の各記載によれば、甲13には次の発明(以下「甲13発明」という。)が記載されていると認められる。
「ステム上に発光素子を有し、それを樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオードにおいて、前記発光素子が、一般式Ga_(X)Al_(1-X)N(但し0≦X≦1である)で表される窒化ガリウム系化合物半導体よりなり、さらに前記樹脂モールド中に、前記窒化ガリウム系化合物半導体の発光により励起されて蛍光を発する蛍光染料、または蛍光顔料が添加されてなるものであり、(【請求項1】)
LEDの発光波長は、主として430nm付近にあり、さらに370nm付近の紫外域にも発光ピークを有しており、(【0005】)
蛍光染料、蛍光顔料は、短波長の光によって励起され、励起波長よりも長波長光を発光する、(【0009】)
発光ダイオード。」

セ 甲14
(ア)甲14には次の記載がある。
a 「【特許請求の範囲】」、
「透明な導光板2の端面の少なくとも一箇所に青色発光ダイオード1が光学的に接続されており、さらに前記導光板2の主面のいずれか一方に白色粉末が塗布された散乱層3を有し、前記散乱層3と反対側の導光板2の主面側には、透明なフィルム6が設けられており、そのフィルム6の表面あるいは内部には前記青色発光ダイオード1の発光により励起されて蛍光を発する蛍光物質が具備されていることを特徴とする面状光源。」(【請求項1】)

b 「【産業上の利用分野】」、
「本発明はディスプレイのバックライト、照光式操作スイッチ等に使用される面状の光源に係り、特に液晶ディスプレイのバックライトとして好適に用いることができる面状光源に関する。」(【0001】)

c 「【従来の技術】」、
「一般にノート型パソコン、ワープロ等に使用される液晶ディスプレイのバックライト用の面状光源には、例えばEL、冷陰極管が使用されている。ELはそれ自体が面状光源であり、冷陰極管は拡散板を用いて面状光源とされ、現在それらのバックライトの発光色はほとんどが白色とされている。」(【0002】)、
「一方発光ダイオード(以下LEDと記す。)もバックライト用光源として一部利用されている。しかしLEDを用いて白色発光を得る場合、従来では青色LEDの発光出力が数十μWほどしかないため、他の赤色LED、緑色LEDを用いて白色発光を実現させるには、それら各色発光LEDの特性を合致させにくく色変化が大きいという欠点がある。また、三原色のLEDを集合させて、同一平面上に幾何学的に同じ位置に配置しても、バックライトとしてはそれらのLEDを接近した位置で視認するため、均一な白色光源にすることは不可能であった。従って現在白色の液晶バックライトの面状光源には、大型では冷陰極管、小型?中型にはELと使い分けられているのが現状で、LEDを用いた白色発光のバックライトはほとんど知られていない。」(【0003】)、
「また白色発光、あるいはモノクロの光源として、一部では青色LEDチップの周囲を蛍光物質を含む樹脂で包囲して色変換する試みもあるが、チップ周辺は太陽光よりも強い放射強度の光線にさらされるため、蛍光物質の劣化が問題となり、特に有機蛍光顔料で顕著である。更にイオン性の有機染料はチップ近傍では直流電界により電気泳動を起こし、色調が変化する可能性がある。また従来の青色LEDは蛍光物質で色変換するには十分な出力を有しておらず、たとえ色変換したとしても実用できるものではなかった。」(【0004】)

d 「【発明が解決しようとする課題】」、
「本発明はこのような欠点を解決するために成されたもので、その目的とするところは、LEDを用い、主としてバックライトとして利用できる白色発光可能な面状光源を実現すると共に、均一な白色発光を観測できる面状光源を提供することにあり、さらには白色以外の任意色の発光が可能な面状光源を提供し、信頼性に優れたLEDの特性を利用し、各種操作スイッチ等に利用することにある。」(【0005】)

e 「【課題を解決するための手段】」、
「本発明の面状光源は、透明な導光板2の端面の少なくとも一箇所に青色発光ダイオード1が光学的に接続されており、さらに前記導光板2の主面のいずれか一方に白色粉末が塗布された散乱層3(以下、散乱層側の主面を第二の主面という。)を有し、前記散乱層3と反対側の導光板2の主面(以下、第一の主面という。)側には、透明なフィルム6が設置されており、そのフィルム6の表面あるいは内部には前記青色発光ダイオード1の発光により励起されて蛍光を発する蛍光物質が具備されていることを特徴とする。」(【0006】)、
「図1は本発明の面状光源の導光板2を第二の主面側から見た平面図である。導光板2は例えばアクリル、硝子等の透明な材料よりなり、その導光板2の端面に青色LED1が埋設されることにより、導光板2と青色LED1とが光学的に接続されている。なお本発明において、青色LED1と導光板2の端面とが光学的に接続されているとは、簡単に言えば、導光板2の端面から青色LEDの光を導入することをいい、例えばこの図に示すように青色LED1を埋設することはもちろんのこと、青色LEDを接着したり、また、光ファイバー等を用いて導光板2の端面に青色LEDの発光を導くことによって実現可能である。」(【0007】)、

「次に、散乱層3は、白色顔料で光を導光板2内に散乱させている。特に図1では前記散乱層3をストライプ状とし、第一の主面側の表面輝度が一定となるように、LED1に接近するにつれて、第二の主面側の単位面積あたりの散乱層3の面積を減じるようなパターンとし、さらにはLED1と最も離れた第二の主面の端部の面積はやや最大面積に比して若干小さくしている。ここで、図1中の■は散乱層3のパターンを表している。図1では青色LEDを一つの端面に六個配した構造としているが、導光板が四角形であれば四方の端面全てにLEDを接続してもよいことはいうまでもなく、LEDの個数も限定するものではない。さらに、LEDの配置状況により、第一の主面側から観測する発光を面状均一とするように散乱層3の塗布形状、塗布状態を適宜変更することができる。」(【0008】)

f 「【作用】」、
「図2は本発明の面状光源を例えば液晶パネルのバックライトとして実装した場合の模式断面図である。これは図1に示す面状光源の第二の主面側に、例えばチタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等よりなる散乱反射層7と、例えばAlよりなるベース8とが積層された反射板を設置し、第一の主面側には表面に微細な凹凸が施された透明なフィルム6が設置され、このフィルム6の凹凸が施された表面上には青色LED1の発光により励起されて蛍光を発する蛍光物質が塗布されている。」(【0009】)、

「まず図2の矢印で示すように、青色LED1から出た光は、チップ近傍で一部導光板2以外の外部に放射されるが、大部分の光は導光板2の中を全反射を繰り返しながら、導光板2の端面に達する。端面に達した光は端面全てに形成された反射膜4に反射されて、全反射を繰り返す。この時、導光板2の第二の主面側に設けられた散乱層3により光は散乱され、散乱された光の一部は蛍光層5により吸収され同時に波長変換されて放射され、導光板2の第一の主面側から観測する発光色はこれらの光を合成した光が観測できる。例えば橙色の蛍光顔料からなる蛍光層5を設けた面状光源では、先に述べた作用により、青色LED1からの発光色が白色となって観測できる。」(【0010】)、
「特に本発明では一つの青色LEDの発光波長はその主発光ピークが500nmよりも短く、その発光出力は200μW以上、更に好ましくは300μW以上の出力が必要である。なぜなら発光波長が500nm以上であると全ての色が実現しにくくなり、またその発光出力が200μWよりも少ないと、たとえ導光板の端面に光学的に接続する青色LEDの数を増やしても、充分な明るさの均一な面状発光の光源が得られにくい傾向にあるからである。」(【0011】)、
「また本発明者は特願平5-318267号で、発光観測面と反対側の導光板の主面側に蛍光散乱層を形成することにより、均一な白色発光が可能な面状光源を提案した。しかしこの方法では、得られた面状光源において、色調を変えるには導光板に形成された蛍光散乱層を剥して、再び目的の色調となるような蛍光散乱層を印刷しなければならなかった。ところが本発明では、蛍光層5と散乱層3がそれぞれ独立し、特に色調を決める蛍光層5が着脱可能なフィルム上に形成されているため、蛍光層5が形成されたフィルムを変えるだけで簡単に色調を変化させることができる。また、同時に複数の色を分割発光させることもできる。」(【0012】)、
「しかもフィルム6の第一の主面側と接する表面には凹凸が施されている為、発光された光を散乱させるのに非常に有用であり、またフィルム6が導光板2に張り付いて干渉縞ができるのを防ぐことができる。」(【0013】)

g 「【実施例】」、
「[実施例1]」、
「厚さ約2mmのアクリル板の片面に、図1に示すストライプ状のパターンで、散乱層3をスクリーン印刷により形成した。散乱層3はチタン酸バリウムよりなる白色物質をアクリル系バインダー中に分散したものを印刷して形成した。」(【0014】)、
「上記のようにして散乱層3が形成されたアクリル板を、所望のパターンに従って切断し、アクリル板の端面(切断面)を全て研磨した後、研磨面にAlよりなる反射層4を形成することにより、散乱層3が形成された導光板2を得た。」(【0015】)、
「次に、表面に微細な凹凸が施されたフィルム6に蛍光層5を形成した。蛍光層5は、赤色蛍光顔料であるシンロイヒ化学製FA-001と緑色蛍光顔料である同社製FA-005とを等量に混合した蛍光顔料をアクリル系バインダー中に分散したものを塗布して形成した。」(【0016】)、
「前記導光板2の端面に六箇所、穴を設け、その穴に発光波長480nm、発光出力1200μWを有する窒化ガリウム系化合物半導体よりなる青色LED1をそれぞれ1個づつ埋め込んだ。続いて、発光観測面側には上記のように蛍光層5が形成されたフィルム6を、散乱層3側にはAlベース8上にチタン酸バリウム層7が塗布された反射板を設置して、バックライト用光源としたところ、第一の主面側から完全に面状均一な白色発光が得られた。輝度は55cd/m^(2)であった。」(【0017】)

h 「[実施例2]」、
「黄色蛍光染料としてBASF社のLumogenF Yellow-083と橙色蛍光染料として同社製Orenge-240とをほぼ等量混合し、それらとアクリル樹脂をブチルカルビトールアセテートに溶解した蛍光染料を微細な凹凸が施されたフィルム6上に塗布した。それ以外は実施例1と同様にして本発明の面状光源を得たところ、ほぼ均一な面状発光が観測された。さらに同様にしてバックライト用光源としたところ、完全に均一な面状発光が観測された。」(【0018】)

i 「【発明の効果】」、
「以上説明したように、本発明の面状光源は、青色LEDを用い、しかも導光板の一方の主面側には白色粉末が塗布された散乱層3を有し、さらにもう一方の主面側には青色LEDにより波長変換できる蛍光物質が塗布された透明なフィルム6を設置することにより、信頼性に優れたLEDによる面状光源を実現することが可能となった。しかも散乱層3の白色粉末は青色LEDの発光を 反射、拡散させる作用があるため、使用する蛍光物質の使用量が少なくて済む。更にフィルム6に微細な凹凸を形成することにより、光を散乱させる作用を高め、フィルムが導光板2に張り付いて干渉縞ができるのを防ぐことができる。更に好都合なことには、LEDチップと蛍光物質とが直接接することがないので、蛍光物質の劣化が少なく、長期間に渡って面状光源の色調変化を起こすことがない。また色調に関しては、蛍光層5の蛍光物質の種類により、白色を含め任意の色調を提供することができ、また蛍光物質はフィルムに具備されている為、フィルムを変えるだけで簡単に面状光源の色調を変化させることができる。」(【0019】)、
「一方蛍光層5を励起する側として、最も好ましくは使用する青色LEDの発光出力が200μW以上のものとすることにより、蛍光物質により効率的に波長変換され大きな面積の明るい面状光源を実現することができる。このように、本発明の面状光源は、バックライト用光源としてだけでなく、蛍光物質を利用した照光式操作スイッチ等に利用することもできる。」(【0020】)

(イ)上記(ア)の各記載によれば、甲14には次の発明(以下「甲14発明」という。)が記載されていると認められる。
「透明な導光板2の端面の少なくとも一箇所に青色発光ダイオード1が光学的に接続されており、さらに前記導光板2の主面のいずれか一方に白色粉末が塗布された散乱層3を有し、前記散乱層3と反対側の導光板2の主面側には、透明なフィルム6が設けられており、そのフィルム6の表面あるいは内部には前記青色発光ダイオード1の発光により励起されて蛍光を発する蛍光物質が具備されている面状光源であって、(【請求項1】)
散乱層3により散乱された光の一部は蛍光層5により吸収され同時に波長変換されて放射され、導光板2の第一の主面側から観測する発光色はこれらの光を合成した光が観測できるものであり、例えば橙色の蛍光顔料からなる蛍光層5を設けた面状光源では、先に述べた作用により、青色LED1からの発光色が白色となって観測でき、(【0010】)
一つの青色LEDの発光波長はその主発光ピークが500nmよりも短く、発光波長480nm、発光出力1200μWを有する窒化ガリウム系化合物半導体よりなる青色LEDを用いてもよい、(【0011】、【0017】)
面状光源。」

ソ 甲15
波長450nmの純青色で、1000mcd/m^(2)の輝度をもっている青色LEDが1993年に発表されたこと(57頁左欄)、
アクリル導光板に青色LEDを配置し、エッジライト方式で均一に反射された青色光は、CCS(色変換シート)で白色に変換されるとともに、輝度アップされてLCDを透過すること(57頁右欄)、

CCSは、青色のもつ波長帯で励起発光する蛍光体の原理を応用して、色変換材を混合したものであり、色変換材の混合比を変えることで、任意の色度が得られるものであること(57頁中欄)、



タ 甲16の1
Y_(3)Al_(5)O_(12):Ceからなる商品名NP-204の物質。

チ 甲16の2
NP-204が、1995年5月16日に、LVANIAライトニングN.V.宛てに500g送付されたこと。

ツ 甲17
4880Åに発光するように配置されたアルゴン・イオンレーザによってエネルギー付与されたセリウム・ドープのイットリウムアルミニウム・ガーネット(YAG)で被膜されたスクリーンを用いると、斑点問題のない黒白画像を作ることができること(2欄30行?31行、3欄4行?9行)、
セリウムを含有するイットリウム・アルミニウムガーネットの燐光性物質からの発光は帯黄色である特性であり、レーザ発光の一部を故意に反射させることによってより白色に近いように修正されること(2欄35行?3欄3行)、
アルミニウムの一部をガリウムで置換して吸収波長をより短い方へ移動させる、あるいは、イットリウムの全部又は一部をガドリウムで置換しより長い波長へ吸収ピークを移動させることができ、吸収ピークの移動は同方向での相当する発光変化を起こし、レーザ・ビームの一部の反射による色修正(例えば、白色像を作るため)が容易に続けられること(3欄21行?28行)、
レーザディスプレイは、レーザ10からの投射ビーム11が、変調器12によって振幅変調され、偏向器14により、適当な水平及び垂直に偏向されてスクリーン15に達するものであること(6欄32行?7欄17行)、
YAG:Ce^(3+)の発光は約0.55ミクロン(帯黄色)にピークのある非常に広いバンドを有し、約0.46ミクロンに中心を持つ格子のピーク吸収及びこの吸収スペクトルはアルゴン(0.488μ)或は、カドミウム(0.4416μ)レーザに適していること(7欄34行?39行)、

アルゴン或はカドミウム・レーザを用いる非変更YAG:Ce系では、第2次黄色発光を、レーザ発光のより短波長の一部反射によって補償することにより白色像が得られるので、全部の吸収にならないように、層の厚さ及び成分を設計し、又は一部反射が起るようにすることが望ましいこと(13欄22行?28行)、

テ 甲18
3帯域蛍光灯として呼称される低圧水銀蒸気放電灯は、放射が主として590?630nmの範囲にある赤に発光する材料と、放射が主として520?565nmの範囲にある緑に発光する材料とを含んでいるが、430?490nmの青の範囲における必要な放射は、すべて、水銀蒸気放電によって放出される436nmの放射から発生していたこと(2頁右上欄9行?右下欄17行)、
この3帯域蛍光灯は、小型の構造にされるために、放電灯における発光層は重く負荷されており、これらの重く負荷された放電灯においては、青の水銀放射の相対的な寄与がさらに高く、このような蛍光灯は、強烈な青の水銀放射により、しばしば要求される約2000K?約2700Kの色温度範囲において用いることができないという欠点をもつこと(2頁右下欄18行?3頁右上欄12行)、
この欠点を除去するために、3価のセリウムによって活性化されかつガーネットの結晶構造を有するアルミン酸塩を含む吸収層を設けると、前記ガーネットは、短波紫外放射のほかに、特に400?480nmの波長を有する放射をも吸収し、それを、約560nmにおいて最大値を有する広い放射帯域(約110nmの半値幅)の放射に変換するので、この蛍光灯によって放出される放射の色点を移動させることができること(3頁右上欄13行?左下欄13行)、
青の放射を黄色顔料を用いて吸収しても色温度を低下させることができるが、黄色顔料は、相対的発光束を低下させてしまう一方、発光性ガーネットを用いることは、吸収された放射が失われないで、高い効率をもって可視放射に変換されるため高い相対的発光束が得られるという利点を有すること(3頁左下欄14行?右下欄4行)。

ト 甲19
低圧水銀ランプ(当審注:「水素」は「水銀」の誤記であると認める。)によって放射される光の色温度が比較的低いことを所望する場合は、発光層が3価のセリウムで活性化された蛍光イットリウム-アルミニウムガーネットを含んでいることによってこれを実現することができること、
このアルミン酸塩(YAG)は、式Y_(3-x)Ce_(x)Al_(5)O_(12)によって規定され、0.01≦x≦0.15であり、Yを、Gd、La及びLuのような他の希土酸化物で置き換えてもよく、Alの一部を、例えばGa及び/又はScで置き換えるようにしてもよいこと、
これらの発光ガーネットは、短波長紫外線のみならず、可視深青線をも吸収し、最大約560nmの広いバンド(半値幅約110nm)で放出すること(【0016】)。

ナ 甲20
白熱電球の完全な置き換えのためには、蛍光ランプで白熱電球の形状をした、点光源に近いものが必要になるが、このような蛍光ランプは、管壁負荷が非常に大きくなること(【0003】?【0004】)、
高負荷蛍光ランプは効率が悪いところ、その理由の一つが、高負荷蛍光ランプでは、185nmの波長の紫外線が発生する割合が大きくなり、この185nmの放射に蛍光体をさらすことは、非常に短時間であっても一般に蛍光物質の発光に有害な影響を及ぼすことが知られていること(【0005】?【0007】)。

ニ 甲21
ヒューズ社製液晶ライトバルブ(LCLV)のアモルファスシリコンに向けるために用いる蛍光体は、遠赤外に属する約740nmでピークを有するというアモルファスシリコンの応答にできるだけマッチしているべきであること(【0002】【0003】【0005】)、
蛍光ランプの技術において、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)蛍光体はよく知られており、このYAG蛍光体は、例えば、テルビウム、セリウム、ユーロピウム等の様々な付活剤を有すること(【0006】)、
しかし、YAG:Euのスペクトル出力は、光バルブを効率よく点灯するものではないため、Y_(3-y)Gd_(y)Al_(5-x)Ga_(x)O_(12):A(ここで、xは0ないし5の範囲であり、yは0ないし3の範囲であり、Aはクロム、鉄、バナジウム、ネオジム、ジスプロシウム、コバルト、ニッケル、チタン、及びその組み合わせからなる群から選択される)というイットリウムアルミニウムガーネット結晶構造を有する新種の蛍光体を用い、液晶光バルブ内のα-シリコン感光層の要望によって定められる要求の範囲内のスペクトル出力、発光及び持続特性における注文通りの変化を示すことができたこと(【0007】【0009】【0010】)、
液晶ライトバルブ(LCLV)は、陰極線管(CRT)12を含み、この陰極線管12は、通常溶融光ファイバーのフェースプレートを通して、液晶ライトバルブ14と組合わせられる入力画像を提供すること(【0011】)、
上記の新種の蛍光体は、陰極線管(CRT)12で使用されているものであること(【0001】【0012】からそのように解される。)


ヌ 甲22
「Luminescent Materials」(発光材料)と題する書籍において、「ランプ蛍光体」、「陰極線蛍光体」などと並んで、「その他の応用」が記載されていること、
「その他の応用」の中に、「エレクトロルミネッセンス」が記載され、その中に「発光ダイオード」が記載されていること。

ネ 甲23
次の記載がある。
「波長変換材料5は蛍光物質であれば蛍光染料、蛍光顔料、蛍光体等、発光チップの発光波長を他の波長に変換できる材料であればどのようなものを使用してもよく、・・・」(【0010】)

ノ 甲24
ある蛍光ランプによれば、可視域全体に亘ってブロードな発光スペクトルが得られる関係で、平均演色評価数が80と高いこと(【0003】)。

ハ 甲25
次の記載がある。
「あなたはGAGについての試験を行い、上司に対し、あなた方が当該特許を出願する時点では、発光しなかったと報告しましたね?」、
「あなたは技術報告書に書かれていることを誤解しています。あなたは、発光せずとの記載がゼロであることを意味すると解釈しているようであるが、我々技術者がそれを見れば、2パーセントや3パーセントあるいはそれ以外の放出は・・・我々は100%を狙っているので、発光していないと見做すものです。2パーセントや3パーセントであれば、私たちは非放出と見做します。」、
「あなたがこのグラフを提出する時までに、GAGについては「発光せず」という表現を用いた報告書を上司に提出しましたね?」、
「はい、これまで私が言ってきたように、技術報告書で「発光せず」と記載されているのは、おそらく、2?3パーセントのオーダーの光を意味しています。」

ヒ 甲26
次の記載がある。
「YをGdで置換した時の、Blue光励起の色、輝度は(中略)Gd10は発光せず」

フ 甲27
次の記載がある。
「白色光は複数の色の光を合成(混色)することで得られる光(後略)」(37頁)、
「LEDチップの青色光で黄色の蛍光体を励起し、青色と黄色の混色で白色を得る方式(後略)」(38頁)、
「白色発光の原理はYAG蛍光体による波長変換であり、(後略)」(38頁)、
「補色関係にある青色と黄色の2色の光が足し合わされ人間の目には白色の光として見える。」(38頁)

(2)被請求人が提出したもの
ア 乙1
次の記載がある。
「特許権者 (中略)東芝マテリアル株式会社」、
「【請求項1】組成が、Ln_(3)Mn_(x)(Al_(1-z),Ga_(z))_(5-x-y)Si_(y)O_(12):Ce(但し、LnはY,LuおよびGdから選択される少なくとも1つの元素であり、x,y,zは、それぞれ0<x≦2,0<y≦2,0<z<0.7,0.9≦x/y≦1.1なる関係式を満たす係数である。)で表されることを特徴とする蛍光体。」

イ 乙2
次の記載がある。
「白色発光ダイオードは、その「辺境」で異種の技術を巧みに融合させた技術開発の典型例と言えよう。」、
「白色発光ダイオードが1996年に日亜化学から発表されたときも、なぜ1個の発光ダイオードで白い光が実現できたのか、多くの人が不思議に思ったにちがいない。」、
「蛍光体技術を熟知し、同時に青色発光ダイオード技術を熟知していたのは、世界でも日亜化学をおいてほかになかった。白色発光ダイオードは異種技術の融合で技術革新を起こした典型例であり、日亜化学で生まれる運命にあったとしか言いようがない。」

ウ 乙3の1
次の記載がある。
「青色LEDと蛍光体を用いた発光ダイオードが最初に多田津芳昭と中村修二によって日亜化学工業から特許出願されたのは、1991年11月25日のことである。この時には、白色光を得るという発想は無く、視感効率の低い発光波長の低い420-440nmの青色をより視感効率の高い波長の長い480nmの青色に蛍光体に変換するというものであった。その後、5年が経過した1996年7月28日、YAG:Ce(セリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体を用いて青色光を黄色光に変換し、青色光とその補色である黄色光との混色により白色に発光するLEDランプが日亜化学工業の清水義則らによって出願され、後に特許第2927279号やU.S.Patent No.5998925として成立、一般にはこれら特許が白色LEDランプの基本特許と呼ばれることとなった。」

エ 乙3の2
乙3の1が、東京大学における博士論文であり、発行日が2008年5月22日であること。

オ 乙4
日亜化学工業株式会社の清水義則が、「白色発光ダイオードの発明と実用化」に関して、第20回櫻井健二郎氏記念賞を受賞したこと。

カ 乙5
レーザーディスプレーについての一般的な技術説明がなされている。

キ 乙6
本件特許に係る訂正2017-390078号の審決がした判断が記載されている。

ク 乙7
次の記載がある。
「10.2 ガーネット構造;Ia3d,立方
ざくろ石(garnet)の立方単位格子には、A_(3)B_(2)’B_(3)”O_(12)のユニットが8個含まれている。(中略)この構造では、96個の酸素イオンの間に3種類のサイトがあって金属イオンで満たされている。すなわち、16個の四面体配位のサイトはB’イオンで、24個の八面体配位のサイトはB”イオンで、そして24個の十二面体配位のサイトはAイオンで満たされている。」(277頁)

ケ 乙8
次の記載がある。
「3.6 3in1フルカラーLED
(中略)3in1フルカラーLEDの外観を図3.26に、ランプの構造を図3.27に示す。このデバイスは、リードフレーム上に、‘RGB’各色のLEDチップをそれぞれ1個ずつ計3個載せて周囲をエポキシで封止したマルチチップ型のランプである。」、


「3.7 白色LED
(中略)ここで紹介する白色LEDは、InGaN系青色LEDと蛍光体を組み合わせて作られたものである(図3.30)。(中略)白色LEDの構造は、基本的に通常のInGaN系の青色LEDと変わるところはない。ただ白色LEDの場合、発光源のチップ表面には蛍光層が薄くコーティングされている点が異なる。」、


「3.8 白色バックライト
図3.33は、InGaN系青色LEDを応用して作られた白色バックライトである。(中略)白色は青色LEDの光で蛍光材料を塗布した色変換シート(CCS:Color Conversion Sheet)を照らすことで得られる。面光源と点光源の違いはあるが前述の白色LEDと同様の原理である。」、


コ 乙9
次の記載がある。
「「LED応用技術」は、LEDを使用した光源装置・ランプ・発光装置等の「光源装置(共通)」、「液晶表示装置」、「面照明装置」、(中略)が含まれる。」、
「(7)面照明装置
特に液晶表示装置に特定されないバックライト・面照明装置を指す。」

サ 乙10
次の記載がある。
「シート型バックライトユニットについて
(中略)オムロン独自技術であるRP(Rotation Prism)を有することで、LEDから入射光を高効率で利用できます。」

シ 乙11
次の記載がある。
「LCDパネル用バックライトユニット
(中略)弊社は、LEDを光源としたモバイル製品向け、PC向けバックライトの開発、部品製造、組み立てまで展開しています。
(中略)LEDを光源とするLCDパネル用バックライトユニットです。」

ス 乙12
次の記載がある。
「CITILED応用製品
・液晶バックライトユニット(携帯/スマートフォン用)
・液晶バックライトユニット(車載用)」

セ 乙13
次の記載がある。
「有機蛍光顔料(FA-001,FA-007)」

ソ 乙14
次の記載がある。
「3 蛍光体に対する要求項目
白色LED用蛍光体に要求される特性など主な要求項目は次のとおりである。
(1)発光効率 吸収率、内部量子効率、及び外部量子効率
(2)発光色 ピーク波長、半値幅、及びスペクトル形状
(3)信頼性 低温、常温、高温、及び高温高湿の条件下
(4)粉体特性 粒径、粒度分布、及び分散性
(5)温度特性 温度消光
(6)演色性 緑色、黄色、及び赤色の波長組合せ
一般に、これらの項目を全て満足するような蛍光体は存在しないため、用途によって重視する特性項目に対応した蛍光体を選択することになる。また、蛍光体によっては、発光スペクトルが可変なものがあり、用途に対応した最適なスペクトル設計ができる。蛍光体は数μmから20μm程度の無機化合物の結晶粒子であるため、発光特性以外にも、LED製造プロセスに適合した粉体特性も要求される。」(43頁左欄)

タ 乙15
次の記載がある。
「3.LED蛍光体の条件
発光装置は、蛍光物質に依拠して、種々の源(例えば、紫外線、x線、電子線)からのエネルギーを可視光に変換する。あらゆる用途に関して、特別な条件が適用される。LED蛍光体の条件は挑戦的なものである。LEDチップからの青色光を長波長の緑色および赤色または黄色または橙色へ効率的に変換するという要求に加えて、LEDに特有の条件として以下のものが含まれる:

・LEDチップの小さな寸法および高輝度に起因する、非常に高い励起密度(光量子束)の下での長期間の安定性。LEDの典型的な作動時間は30000時間を超える。
・作動条件下での蛍光体の高温(本件特許の優先日当時で100℃、近年では150?200℃)に起因する、物質および発光強度の高温安定性
・種々の作動条件下での色の変化を避けるために発光最大値の熱シフトが小さいこと
・高出力の励起下での飽和効果を避けるために発光寿命が短いこと
・化学的安定性(例えば、パッケージ樹脂への水分拡散に起因する水分に対して安定であること)

w-LEDにおける特別な作動条件(高い光量子束、熱および水分)は、蛍光体の安定性および性能を予測することを困難にする。

発光物質の適用に関して、最も適切な物質は、全ての条件を最も良く満たす物質である。通常は、ある側面において、より良い又はより悪い性能との間でトレードオフがある。蛍光体の研究は、特別な用途についての基準を満たす最も適切な物質を見つけることを目指している。したがって、発光物質の分野における技術革新は、発光特性が長く知られていた発光物質の使用、および他の分野での適用について特許された物質の使用をしばしば要求する。

4.他の用途での蛍光体の条件
過去数十年間にわたって、広範な発光物質が、種々の発光装置について開発されてきた。種々の用途について蛍光体の特異性および条件の多様性を理解するために、以下において、応用の適切な選択に関し、短い概要を提供する。概要は完全ではないが、発光装置における適切な蛍光体の発明および選択のプロセスに関して、良い洞察を与える。
-CRTにおける発光物質

陰極線管において、発光物質は、高エネルギーの電子線(20?50keVの電子)によって励起される。該電子線は、ガラス製のCRT管の内部を走査し、当該CRT管の内部には、各画素について、三色の蛍光体が小さな点状または帯状に塗布されている。速い電子のエネルギは、スクリーンにおいて各画素にて三色の蛍光体で青色、緑色、赤色光に変換される。条件は以下のとおりである:

・電子線による効率的な励起
・高エネルギー電子励起の下での安定性
・ゴースト像を防止するために残光がないこと
・高エネルギー電子による、間欠的な(連続的でない)励起
・室温(<50℃)に近い動作温度
・発光スペクトルが、青色、緑色および赤色についての視感度とマッチングすること
・水分から保護する真空管

-低圧水銀灯における発光物質

蛍光灯およびコンパクト蛍光ランプにおいては、低圧水銀放電が、主に254nmUV放射をもたらすが、いくらかのVUV(185nm)および僅かな部分の青色光(例えば、436nm)も発せられる。UV放射の青色、緑色および赤色の光への変換は、白色光を生成する。蛍光灯における蛍光体の条件は以下のとおりである:

・水銀のUV線(主に254nm)による効率的な励起
・放電空間のより大きい寸法(LEDと比較して)に起因する、低いUV励起密度
・大きな放熱領域に起因する、典型的には約50℃の動作温度
・水銀ガスとの反応に対する化学的安定性
・長期間の安定性(典型的な動作時間10000時間)
・シールされたガラス管が水分から保護する

(中略)

-レーザプロジェクションディスプレイ用の発光物質
レーザプロジェクションディスプレイは、成功した市場製品には発展しなかった。黒および白色レーザプロジェクションディスプレイの概念は、アルゴンレーザからの青い488nmの光の白色への特別な変換に依拠している。動作条件は以下のとおりである:
・488nmの青色レーザ光源による励起
・レーザビームによる間欠的な(連続的でない)励起、長期間の安定性に対する要求は厳しいものではない
・低い動作温度
・残光がないこと(ゴースト像を防止するため)」

チ 乙16
次の記載がある。
「本発明の白色発光半導体デバイスは、半導体から発せられた青色光を補色の波長範囲、特に、青色および黄色、または青色、緑色および赤色のような三原色となるように、変換し得るように発光染料を選択する場合に作製され得る。この場合、黄色、または緑色および赤色光が発光染料によって生成される。白色の色相(CIE色度図における色度点)は、混合および濃度に関して、染料を適切に選択することによって変化させ得る。
本発明の白色発光半導体のための適切な発光染料は、ペリレン系の発光染料であり、例えば、緑色発光のためのBASF Lumogen F 083、黄色発光のためのBASF Lumogen F 240および赤色発光のためのBASF Lumogen F 300である。」

ツ 乙17
次の記載がある。
「紫外線または青色光LEDについて、芳香族蛍光体をダウンコンバート発光体として用いてよい。例えば、適切な蛍光体は以下のものから選択される:
A) 青色発光組成-9,10-ジフェニルアントラセン、1-クロロ9,10-ジフェニルアントラセン、2-クロロ-9,10-ジフェニルアントラセン、2-メトキシ-9,10 ジフェニルアントラセン; 1,1,4,4-テトラフェニル-1,3-ブタジエン(TPB)、Lumogene F Violet 570 (置換されたナフタレンテトラカルボキシルジイミド)、Alq2OPh (Alはアルミニウムであり、q は8-ヒドロキシキノレートであり、Phはフェニルである)、
B) 緑黄色発光組成-9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(フェニルエチニル)-アントラセン、クマリン-5(7-ジエチルアミノ-3-(2'ベンゾチアゾイル-)クマリン)、Lumogen Yellow 083 (置換されたペリレンテトラカルボキシルジイミド)、Mq3 (MはIII族の金属(例えば、Al、GaまたはInであり、qは8-ヒドロキシキノレートである)
C) 赤橙色発光物質-DCM-1、Lumogen F Red 300(置換されたペリレンテトラカルボキシルジイミド)、Lumogen F Orange 240 (置換されたペリレンテトラカルボキシルジイミド)、テトラフェニルナフタセン、フタロシアニン亜鉛、(ベンゾイチアゾイリデン)メチル)スクアライン、トリス(ビフェニリジン-ルテニウム(2+)、および[3]-カテナン銅錯体」

テ 乙18
次の記載がある。
「種々の蛍光物質をレンズ240に加えてよい。例えば、以下のランバダ・フィジック・インコーポレーテッド(フォートローダーデール、フロリダ州)の染料は、470nmの青色GaN LEDで励起された。

クマリン6(非常に良好な緑色、非常に効率的)
フルオール7GA(黄緑色、非常に効率的)
DOCI(緑色、短い減衰長)
ローダミン10(黄色、非常に効率的)
DCM(橙色、中程度に効率的)
DCMスペシャル(橙赤色、中程度に効率的)
ピリジン1(赤色、低い効率)
ピリジン2(深赤色、低い効率)

可能な蛍光物質の他の例には、オスラム・シルバニア・インコーポレーテッド(デンバー、マサチューセッツ州)の以下の蛍光体が含まれる。
タイプ1330 Ag:ZnS(青色)
タイプ1261 CuAuAl:ZnS(緑色)
タイプ1260 CuAl:ZnS(緑色)
タイプ236 Mg4(F)GeO5:Mn(赤色)
タイプ251 Ce:YAG(黄緑色)

さらに他の適切な染料には、モレキュラー・プローブス・インコーポレーテッド(ユージーン、オレゴン州)の染料が含まれる。これらの染料は複数の転移の有機染料である。ストークスシフト(色から色へのシフト)は各染料について小さいが、いくつかの染料については、色は数倍もシフトする。488nmから605nm、488nmから645nm、および488nmから685nmタイプが試験され、470nmのGaN LEDで具合よく機能することが分かった。

有機染料の使用は、無機材料の使用よりも効率的であると思われる。無機染料は粉末であり、有機染料は液体である。粉末粒子は他の粒子によって放出された光を遮断することがある。これは液体の場合はそれほど問題とならない。」

ト 乙19
無効2011-800123号の審決がした判断が記載されている。

ナ 乙20
本件特許の関連欧州特許についてのドイツ連邦最高裁判所がした判断が記載されている。

ニ 乙21
本件特許の関連欧州特許についての欧州特許庁の異議部がした判断が記載されている。

ヌ 乙22
本件特許の関連中国特許についての北京知識産権法院がした判断が記載されている。

ネ 乙23
次の記載がある。
「豊田合成株式会社(松浦剛社長)は、短波長のTG Purple LEDと蛍光体を用い、赤から青まで広範囲で優れた演色性を有する、白色LEDランプの開発に成功しました。
開発品(図-1)は、当社従来の3波長型白色LED(TG Purpleと赤、緑、青の蛍光体の組合せ)に改良を加えることにより、その明るさを、現在主流となっている補色系白色LED(青色LED+黄色の蛍光体)(図-2)と同じレベルまで飛躍的(約3倍)に向上させたものです。これにより、明るくて、自然光により近い、赤から青にいたるあらゆる色の再現性を有する白色LEDの提供が可能となりました。従って、補色系白色LEDに見られた欠点、すなわち赤色の再現性が悪いといった問題点も解消しました。」、
「発光方式 TG Purple+RGB蛍光体」

ノ 乙24
次の記載がある。
「蛍光灯やLED照明で使われる白色光の分類は、「電球色」「温白色」「白色」「昼白色」「昼光色」の5種類で表されています。」

ハ 乙25
次の記載がある。
「受賞者らの成果に刺激されて青色LEDと組み合わせる蛍光体の開発が現在内外で活発になっている。しかし、高効率の白色発光を示すとともに、LEDモジュール内の発熱に対して耐久性を有し、輝度が低下しない蛍光体として、受賞者らが用いたYAG:Ce系が優れたものであることが実証されている。」

ヒ 乙26
次の記載がある。
「温度-発光光度特性
LEDの基本材料は半導体であるために温度に対して敏感に作用する。図5・4は点灯電流(順電流IF)二十ミリアンペア一定のとき、周囲温度の変化により発光光度がどのように変わるかを示した例である。
使用されている半導体材料、すなわち発光色が異なると、温度特性に差異が生じる(図5・4の赤と緑の差を参照)。赤色系では一度Cあたり約マイナス二%、緑色系ではマイナス0・四%の勾配をもっている。」(77頁?78頁)

フ 乙27
次の記載がある。
「当社は、LED照明や液晶テレビのバックライトなどに利用される白色LED素子の量産を開始することを決定しました。白色LED素子の量産ラインを、ディスクリート製品の量産拠点である加賀東芝エレクトロニクス株式会社(以下、加賀東芝)の200mmウェハー対応の製造棟内に構築し、今年10月から量産を開始する計画です。
近年、白色LEDは低消費電力、長寿命という特性により照明や液晶テレビのバックライト向けなど、様々な用途での使用が拡大しており、白色LED素子の市場規模は2011年度の7,000億円から2013年度には1兆円になると予測されています。」

2 無効理由1及び2について
無効理由1及び2は、いずれも、本件発明の記載にサポート要件違反があるというものであるから、まとめて判断をする。

(1)サポート要件の有無の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)本件訂正後の明細書(以下「本件訂正明細書」という。)の記載
本件訂正明細書には以下の記載がある。
ア 「【技術分野】」、
「本願発明は、LEDディスプレイ、バックライト光源、信号機、照光式スイッチ及び各種インジケータなどに利用される発光ダイオードに関し、特に発光素子が発生する光の波長を変換して発光するフォトルミネセンス蛍光体を備えた発光装置及びそれを用いた表示装置に関する。」(【0001】)、
「発光ダイオードは、小型で、効率が良く鮮やかな色の光の発光が可能で、半導体素子であるため、球切れの心配がなく、初期駆動特性及び耐震性に優れ、さらにON/OFF点灯の繰り返しに強いという特長を有する。そのため、各種インジケータや種々の光源として広く利用されている。また、最近では、超高輝度、高効率なRGB(赤、緑、青色)の発光ダイオードがそれぞれ開発され、これらの発光ダイオードを用いた大画面のLEDディスプレーが使用されるようになった。このLEDディスプレーは、少ない電力で動作させることができ、軽量でしかも長寿命であるという優れた特性を有し、今後益々使用されるものと期待される。」(【0002】)、
「さらに、最近では、発光ダイオードを用いて、白色発光光源を構成する試みが種々なされている。発光ダイオードを用いて白色光を得るためには、発光ダイオードが単色性ピーク波長を有するので、例えば、R、G、Bの3つの発光素子を近接して設けて発光させて拡散混色する必要がある。このような構成によって白色光を発生させようとした場合、発光素子の色調や輝度等のバラツキにより所望の白色を発生させることができないという問題点があった。また、発光素子がそれぞれ異なる材料を用いて形成されている場合、各発光素子の駆動電力などが異なり個々に所定の電圧を印加する必要があり、駆動回路が複雑になるという問題点があった。さらに、発光素子が半導体発光素子であるため、個々に温度特性や経時変化が異なり、色調が使用環境によって変化したり、各発光素子によって発生される光を均一に混色させる事ができずに色むらを生ずる場合がある等の多くの問題点を抱えていた。すなわち、発光ダイオードは、個々の色を発光させる発光装置としては有効であったが、発光素子を用いて白色光を発生させることができる満足な光源は得られていなかった。」(【0003】)、
「そこで、本出願人は先に発光素子によって発生された光が、蛍光体で色変換されて出力される発光ダイオードを、特開平5-152609号公報、特開平7-99345号公報、特開平7-176794号公報、特開平8-8614号公報などにおいて発表した。これらに開示された発光ダイオードは、1種類の発光素子を用いて白色系など他の発光色を発光させることができるというものであり、以下のように構成される。」(【0004】)、
「上記公報に開示された発光ダイオードは、具体的には、発光層のエネルギーバンドギャッブが大きい発光素子をリードフレームの先端に設けられたカップ上に配置し、発光素子を被覆する樹脂モールド部材中に発光素子からの光を吸収して、吸収した光と波長の異なる光を発光する(波長変換)蛍光体を含有させて構成する。」(【0005】)、
「上述の開示された発光ダイオードにおいて、発光素子として、青色系の発光が可能な発光素子を用いて、該発光素子をその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体を含有した樹脂によってモールドすることにより、混色により白色系の光が発光可能な発光ダイオードを作製することができる。」(【0006】)、
「しかしながら、従来の発光ダイオードは、蛍光体の劣化によって色調がずれたり、あるいは蛍光体が黒ずみ光の外部取り出し効率が低下する場合があるという問題点があった。ここで、黒ずむというのは、例えば、(Cd,Zn)S蛍光体等の無機系の蛍光体を用いた場合には、この蛍光体を構成する金属元素の一部が析出したり変質したりして着色することであり、また、有機系の蛍光体材料を用いた場合には、2重結合が切れる等により着色することをいう。特に、発光素子である高エネルギーバンドギャッブを有する半導体を用い、蛍光体の変換効率を向上させた場合(すなわち、半導体によって発光される光のエネルギーが高くなり、蛍光体が吸収することができるしきい値以上の光が増加し、より多くの光が吸収されるようになる。)、又は蛍光体の使用量を減らした場合(すなわち、相対的に蛍光体に照射されるエネルギー量が多くなる。)等においては、蛍光体が吸収する光のエネルギーが必然的に高くなるので、蛍光体の劣化が著しい。また、発光素子の発光強度を更に高め長期にわたって使用すると、蛍光体の劣化がさらに激しくなる。」(【0007】)、
「また、発光素子の近傍に設けられた蛍光体は、発光素子の温度上昇や外部環境(例えば、屋外で使用された場合の太陽光によるもの等)によって高温にもさらされ、この熱によって劣化する場合がある。」(【0008】)、
「さらに、蛍光体によっては、外部から侵入する水分や、製造時に内部に含まれた水分と、上記光及び熱とによって、劣化が促進されるものもある。
またさらに、イオン性の有機染料を使用すると、チップ近傍では直流電界により電気泳動を起こし、色調が変化する場合がある。」(【0009】)

イ 「【発明が解決しようとする課題】」、
「したがって、本願発明は上記課題を解決し、より高輝度で、長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的とする。」(【0010】)

ウ 「【課題を解決するための手段】」、
「本発明者らは、この目的を達成するために、発光素子と蛍光体とを備えた発光装置において、
(1)発光素子としては、高輝度の発光が可能で、かつその発光特性が長期間の使用に対して安定していること、
(2)蛍光体としては、上述の高輝度の発光素子に近接して設けられて、該発光素子からの強い光にさらされて長期間使用した場合においても、特性変化の少ない耐光性及び耐熱性等に優れていること(特に発光素子周辺に近接して配置される蛍光体は、我々の検討によると太陽光に比較して約30倍?40倍に及ぶ強度を有する光にさらされるので、発光素子として高輝度のものを使用すれば使用する程、蛍光体に要求される耐光性は厳しくなる)、
(3)発光素子と蛍光体との関係としては、蛍光体が発光素子からのスペクトル幅をもった単色性ピーク波長の光を効率よく吸収すると共に効率よく異なる発光波長が発光可能であること、が必要であると考え、鋭意検討した結果、本発明を完成させた。」(【0011】)、
「すなわち、本発明の発光装置は、白色系を発光する発光ダイオードであって、該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含むこと、を特徴とする発光ダイオードである。また、本発明の発光装置は、白色系を発光するLED光源であって、該LED光源は、発光層がインジウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含み、前記LED光源は発光ダイオードであることを特徴とするLED光源でもある。」(【0012】)、
「ここで、窒化物系化合物半導体(一般式IniGajAlkN、ただし、0≦i,0≦j,0≦k,i+j+k=1)としては、InGaNや各種不純物がドープされたGaNを始め、種々のものが含まれる。」(【0013】)、
「また、前記フォトルミネセンス蛍光体としては、Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce、Gd_(3)In_(5)O_(12):Ceを始め、上述のように定義される種々のものが含まれる。
この本願発明の発光装置は、高輝度の発光が可能な窒化物系化合物半導体からなる発光素子を用いているので、高輝度の発光をさせることができる。また、該発光装置において、使用している前記フォトルミネッセンス蛍光体は、長時間、強い光にさらされても蛍光特性の変化が少ない極めて耐光性に優れている。これによって、長時間の使用に対して特性劣化を少なくでき、発光素子からの強い光のみならず、野外使用時等における外来光(紫外線を含む太陽光等)による劣化も少なくでき、色ずれや輝度低下が極めて少ない発光装置を提供できる。また、この本願発明の発光装置は、使用している前記フォトルミネッセンス蛍光体が、短残光であるため、例えば、120nsecという比較的速い応答速度が要求される用途にも使用することができる。」(【0014】)、
「本発明の発光ダイオードにおいては、前記フォトルミネセンス蛍光体が、YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むことが好ましく、これによって、発光装置の輝度を高くできる。」(【0015】)、
「本発明の発光装置においては、前記フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いることができ(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体用いた場合と同様の優れた特性が得られる。」(【0016】)、
「また、本発明の発光装置において、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれYとAlとを含んでなる互いに組成の異なる2以上の、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むようにしてもよい。これによって、発光素子の特性(発光波長)に対応して、フォトルミネッセンス蛍光体の発光スペクトルを調整して、所望の発光色の発光をさせることができる。」(【0018】)、
「さらに、本発明の発光装置では、発光装置の発光波長を所定の値に設定するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれ一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ce(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)で表され、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を含むことが好ましい。」(【0019】)、
「さらに、本発明の発光装置において?前記発光素子の発光スペクトルの主ピークが400nmから530nmの範囲内に設定し、かつ前記フォトルミネッセンス蛍光体の主発光波長が前記発光素子の主ピークより長くなるように設定することが好ましい。これによって、白色系の光を効率よく発光させることができる。」(【0021】)、
「またさらに、前記発光素子において、該発光素子の発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体を含んでなり、前記フォトルミネセンス蛍光体が、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、Alの一部がGaによってGa:Al=1:1から4:6の範囲内の比率になるように置換されかつYの一部がGdによってY:Gd=4:1から2:3の範囲内の比率になるように置換されていることがさらに好ましい。このように調整されたフォトルミネセンス蛍光体の吸収スペクトルは、発光層としてInを含む窒化ガリウム系半導体を有する発光素子の発光する光の波長と非常によく一致し、変換効率(発光効率)を良くできる。また、該発光素子の青色光と該蛍光体の蛍光光との混色による光は、演色性のよい良質な白色となり、その点で極めて優れた発光装置を提供できる。」(【0022】)、
(【0026】)、
「本発明の発光ダイオードにおいては、前記フォトルミネッセンス蛍光体が、YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むことが好ましく、
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)を用いても良い。
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12)で表される(ただし、0≦p≦0.8、0.003≦q≦0.2、0.0003≦r≦0.08、0≦s≦1)蛍光体を用いることもできる。」(【0027】)、
「本発明の発光ダイオードにおいては、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれYとAlとを含んでなる互いに組成の異なる2以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むようにすることが好ましい。」(【0028】)、
「本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、それぞれ一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表され(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を用いてもよい。」(【0029】)、
「本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、それぞれイットリウムの一部がガドリニウムに置換されてなり、互いに置換量が異なる第1の蛍光体と第2の蛍光体とを用いてもよい。」(【0031】)、
「また、一般的に蛍光体では、短波長の光を吸収して長波長の光を発光するものの方が、長波長の光を吸収して短波長の光を発光するものに比較して効率がよい。発光素子としては、樹脂(モールド部材やコーティング部材等)を劣化させる紫外光を発光するものより可視光を発光するものを用いる方が好ましい。従って、本発明の発光ダイオードにおいては、発光効率の向上及び長寿命化のために、前記発光素子の発光スペクトルの主ピークを、可視光のうちで比較的短波長の400nmから530nmの範囲内に設定し、かつ前記フォトルミネッセンス蛍光体の主発光波長を前記発光素子の主ピークより長く設定することが好ましい。また、このようにすることにより、蛍光体により変換された光は、発光素子が発光する光よりも長波長であるため、蛍光体等により反射された変換後の光が発光素子に照射されても、発光素子によって吸収されることはない(バンドギャップエネルギーより変換された光のエネルギーの方が小さいため)。このように、蛍光体等により反射された光は、発光素子を載置したカップにより反射され、さらに効率のよい発光が可能になる。」(【0032】))

エ 「実施の形態1.」、
「本願発明に係る実施の形態1の発光ダイオードは、発光層に高エネルギーバンドギャッブを有し、青色系の発光が可能な窒化ガリウム系化合物半導体素子と、黄色系の発光が可能なフォトルミネセンス蛍光体である、セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体とを組み合わせたものである。これによって、この実施形態1の発光ダイオードにおいて、発光素子102,202からの青色系の発光と、その発光によって励起されたフォトルミネセンス蛍光体からの黄色系の発光光との混色により白色系の発光が可能になる。」(【0044】)、
「また、この実施形態1の発光ダイオードに用いた、セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体は耐光性及び耐候性を有するので、発光素子102,202から放出された可視光域における高エネルギー光を長時間その近傍で高輝度に照射した場合であっても発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少ない白色光が発光できる。」(【0045】)、
「以下、本実施形態1の発光ダイオードの各構成部材について詳述する。
(フォトルミネセンス蛍光体)
本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、半導体発光層から発光された可視光や紫外線で励起されて、励起した光と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体である。具体的にはフォトルミネセンス蛍光体として、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である。本発明では、該蛍光体として、YとAlを含みセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、又は、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ce(但し、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種)であらわされる蛍光体を用いることが好ましい。窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子が発光するLED光と、ボディーカラーが黄色であるフォトルミネセンス蛍光体が発光する蛍光光が補色関係にある場合、LED光と、蛍光光とを混色して出力することにより、全体として白色系の光を出力することができる。」(【0046】)、
「本実施形態1において、このフォトルミネセンス蛍光体は、上述したように、コーテイング樹脂101,コーテイング部201を形成する樹脂(詳細は後述する)に混合して使用されるので、窒化ガリウム系発光素子の発光波長に対応させて、樹脂などとの混合比率、若しくはカップ部105又は筺体204の凹部への充填量を種々調整することにより、発光ダイオードの色調を、白色を含め電球色など任意に設定できる。」(【0047】)、
「このフォトルミネセンス蛍光体の含有分布は、混色性や耐久性にも影響する。例えば、フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くした場合は、外部環境からの水分などの影響をより受けにくくでき、水分による劣化を防止することができる。他方、フォトルミネセンス蛍光体を、発光素子からモールド部材等の表面側に向かって分布濃度が高くなるように分布させると、外部環境からの水分の影響を受けやすいが発光素子からの発熱、照射強度などの影響をより少なくでき、フォトルミネセンス蛍光体の劣化を抑制することができる。このような、フォトルミネセンス蛍光体の分布は、フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材、形成温度、粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状、粒度分布などを調整することによって種々の分布を実現することができ、発光ダイオードの使用条件などを考慮して分布状態が設定される。」(【0048】)、
「実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は、発光素子102,202と接したり、あるいは近接して配置され、照射強度(Ee)として、3W・cm^(-2)以上10W・cm^(-2)以下においても高効率でかつ十分な耐光性を有するので、該蛍光体を用いることにより、優れた発光特性の発光ダイオードを構成することができる。」(【0049】)、
「また、実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は、ガーネット構造を有するので、熱、光及び水分に強く、図3(A)に示すように、励起スペクトルのピークを450nm付近にすることができる。また、発光ピークも図3(B)に示すように、580nm付近にあり700nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。また、実施形態1のフォトルミネッセンス蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、460nm以上の長波長域における励起発光効率を高くすることができる。Gdの含有量の増加により、発光ピーク波長が、長波長に移動し、全体の発光波長も長波長側にシフトする。すなわち、赤みの強い発光色が必要な場合、Gdによる置換量を多くすることで達成することができる。
一方、Gdが増加するするとともに、青色光によるフォトルミネッセンスの発光輝度は低下する傾向にある。」(【0050】)、
「特に、ガーネット構造を有するYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで、発光波長が、短波長側にシフトするまた組成のYの一部をGdで置換することにより、発光波長が長波長側にシフトする。」(【0051】)、
「表1に一般式(Y1-aGda)_(3)(Al1-bGab)_(5)O_(12):Ceで表されるYAG系蛍光体の組成とその発光特性を示す。」(【0052】)、
「【表1】

表1に示した各特性は、460nmの青色光で励起して測定した。又表1における輝度と効率は一の材料を100として相対値で示している。
AlをGaによって置換する場合、発光効率と発光波長を考慮してGa:Al=1:1から4:6の間の比率に設定することが好ましい。同様に、Yの一部をGdで置換する場合は、Y:Gd=9:1?1:9の範囲の比率に設定することが好ましく、4:1?2:3の範囲に設定することがより好ましい。Gdの置換量が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなるからであり、Gdの置換量が6割以上になると、赤み成分を増やすことができるが、輝度が急激に低下する。特に、発光素子の発光波長によるがYAG系蛍光体中のYとGdとの比率を、Y:Gd=4:1?2:3の範囲に設定することにより、1種類のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いて黒体放射軌跡にほぼ沿った白色光の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。また、YAG系蛍光体中のYとGdとの比率を、Y:Gd=2:3?1:4の範囲に設定すると、輝度は低いが電球色の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。
尚、Ceの含有量(置換量)は、0.003?0.2の範囲に設定することにより、発光ダイオードの相対発光光度を70%以上にできる。含有量が0.003未満では、Ceによるフォトルミネッセンスの励起発光中心の数が減少することにより光度が低下し、逆に0.2より大きくなると濃度消光が生じる。」(【0054】)
「以上のように、組成のAlの一部をGaで置換することにより発光波長を短波長にシフトさせることができ、また、組成のYの一部をGdで置換することで、発光波長を長波長へシフトさせることができる。このように組成を変化することで発光色を連続的に調節することが可能である。また、波長が254nmや365nmであるHg輝線ではほとんど励起されず450nm付近の青色系発光素子からのLED光による励起効率が高い。さらに、ピーク波長がGdの組成比で連続的に変えられるなど窒化物半導体発光素子の青色系発光を白色系発光に変換するための理想条件を備えている。」(【0055】)

オ 「(実施例1)」、
「実施例1は、発光素子として、GaInN半導体を用いた発光ピークが450nm、半値幅30nmの発光素子を用いた例である。実施例1の発光素子は、洗浄されたサファイ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジウム)ガス、窒素ガス及びドーバントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜することにより作製される。成膜時に、ドーパントガスとしてSiH4とCp2Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成する。実施例1のLED素子は、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層と、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体層であるコンタクト層を備え、N型導電性を有するコンタクト層とP型導電性を有するクラッド層との間に厚さ約3nmの、単一量子井戸構造を構成するためのノンドープInGaNからなる活性層が形成されている。尚、サファイア基板上には、バッファ層として低温で窒化ガリウム半導体層が形成されている。また、P型窒化ガリウム半導体は、成膜後400℃以上の温度でアニールされている。」(【0102】)、
「エッチングによりP型及びN型の各半導体表面を露出させた後、スパッタリングによりn側p側の各電極がそれぞれ形成される。こうして作製された半導体ウエハーにスクライブラインを引いた後、外力を加えて個々の発光素子に分割した。」(【0103】)、
「以上のようにして作製された発光素子を、銀メッキした鋼製のマウント・リードのカップ部にエポキシ樹脂でダイボンディングした後、発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードとをそれぞれ直径が30μmの金線を用いてワイヤーボンディングして、リードタイプの発光ダイオードを作製した。」(【0104】)、
「一方、フォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ceの希土類元素を所定の化学量論比で酸に溶解した溶解液を修酸で共沈させ、沈澱物を焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムを混合して、この混合原料にフラックスとしてフツ化アンモニウムを混合して坩堝に詰めて、空気中1400℃の温度で3時間焼成した後、その焼成品をボールミルを用いて湿式粉砕して、洗浄、分離、乾燥後、最後に篩を通すことにより作製した。その結果、フォトルミネセンス蛍光体は、YがGdで約2割置換されたイットリウム・アルミニウム酸化物として(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceが形成された。尚、Ceの置換は0.03であった。」(【0105】)、
「以上のようにして作製した(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ce蛍光体80重量部とエポキシ樹脂100重量部とをよく混合してスラリーとし、このスラリーを発光素子が載置されたマウント・リードのカップ内に注入した後、130℃の温度で1時間で硬化させた。こうして発光素子上に厚さ120μmのフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部を形成した。なお、本実施例1では、コーティング部においては、発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体が徐々に多く分布するように構成した。」(【0106】)、
「照射強度は、約3.5W/cm^(2)である。その後、さらに発光素子やフォトルミネセンス蛍光体を外部応力、水分及び塵芥などから保護する目的でモールド部材として透光性エポキシ樹脂を形成した。ここで、モールド部材は、砲弾型の型枠の中に、リードフレームにボンディングされ、フォトルミネセンス蛍光体を含んだコーティング部に覆われた発光素子を挿入して、透光性エポキシ樹脂を注入した後、150℃5時間にて硬化させて形成した。」(【0107】)、
「この要に形成した発光ダイオードは、発光観測正面から見ると、フォトルミネセンス蛍光体のボディーカラーにより中央部が黄色っぽく着色されていた。
こうして得られた白色系が発光可能な発光ダイオードの色度点、色温度、演色性指数を測定した結果、それぞれ、色度点は、(x=0.302、y=0.280)、色温度8080K、演色性指数(Ra)=87.5と三波長型蛍光灯に近い性能を示した。また、発光効率は9.51m/wと白色電球並であった。さらに、温度25℃60mA通電、温度25℃20mA通電、温度60℃90%RH下で20mA通電の各寿命試験においても蛍光体に起因する変化は観測されず通常の青色発光ダイオードと寿命特性に差がないことが確認できた。」(【0108】)、
「(比較例1)
フォトルミネセンス蛍光体を(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ce蛍光体から(ZnCd)S:Cu、Alとした以外は、実施例1と同様にして発光ダイオードの形成及び寿命試験を行った。形成された発光ダイオードは通電直後、実施例1と同様、白色系の発光が確認されたが輝度は低かった。また、寿命試験においては、約100時間で出力がゼロになった。劣化原因を解析した結果、蛍光体が黒化していた。」(【0109】)、
「これは、発光素子の発光光と蛍光体に付着していた水分あるいは外部環境から進入した水分により光分解し蛍光体結晶表面にコロイド状亜鉛金属を析出し外観が黒色に変色したものと考えられる。温度25℃20mA通電、温度60℃90%RH下で20mA通電の寿命試験結果を実施例1の結果と共に図13に示す。輝度は初期値を基準にしそれぞれの相対値を示す。図13において、実線が実施例1であり波線が比較例1を示す。」(【0110】)

カ 「(実施例2)」、
「実施例2の発光ダイオードは、発光素子における窒化物系化合物半導体のInの含有量を実施例1の発光素子よりも増やすことにより、発光素子の発光ピークを460nmとし、フォトルミネセンス蛍光体のGdの含有量を実施例1よりも増やし(Y_(0.6)Gd_(0.4))_(3)Al_(5)O_(12):Ceとした以外は実施例1と同様にして発光ダイオードを作製した。
以上のようにして作製した発光ダイオードは、白色系の発光可能であり、その色度点、色温度、演色性指数を測定した。それぞれ、色度点(x=0.375、y=0.370)、色温度4400K、演色性指数(Ra)=86.0であった。」(【0111】)、
「図18(A?C)にそれぞれ、実施例2のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、この実施例2の発光ダイオードを100個作製し、初期の光度に対する1000時間発光させた後における光度を調べた。その結果、初期(寿命試験前)の光度を100%とした場合、1000時間経過後における平均光度は、平均して98.8%であり特性に差がないことが確認できた。」(【0112】)

キ 「(実施例5)」、
「実施例5の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例5の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、色度点(平均値)は(x=0.450,y=0.420)であり、電球色の光を発光することができた。」(【0116】)、
「図19(A?C)にそれぞれ、実施例5のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、実施例5の発光ダイオードは、実施例1の発光ダイオードに比較して輝度が約40%低かったが、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。」(【0117】)

ク 「(実施例6)」、
「実施例6の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例6の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、実施例1に比較してやや黄緑色がかった白色の光を発光することができた。
図20(A?C)にそれぞれ、実施例6のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、実施例6の発光ダイオードは、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。」(【0118】)

ケ 「(実施例7)」、
「実施例7の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12:)Ceで表される蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例7の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、実施例7の発光ダイオードは、輝度は低いが緑色がかった白色の光を発光することができ、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
図21(A?C)にそれぞれ、実施例7のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。」(【0119】)

コ 「(実施例8)」、
「実施例8の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として、一般式Gd_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表されるYを含まない蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例8の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、実施例8の発光ダイオードは、輝度は低いが、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。」(【0120】)

サ 「(実施例9)」、
「実施例9の発光ダイオードは、図7に示す構成を有する面状発光の発光装置である。
発光素子として発光ピークが450nmのIn_(0.05)Ga_(0.95)N半導体を用いた。発光素子は、洗浄させたサファイヤ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジュウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜することにより形成した。ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成しPN接合を形成した。半導体発光素子としては、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層、N型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層を形成した。N型導電性を有するクラッド層とP型導電性を有するクラッド層との間にダブルヘテロ接合となるZnドープInGaNの活性層を形成した。なお、サファイア基板上には、低温で窒化ガリウム半導体を形成し、バッファ層として用いた。P型窒化物半導体層は、成膜後400℃以上の温度でアニールされている。」(【0121】)、
「各半導体層を成膜した後、エッチングによりPN各半導体表面を露出させた後、スパッタリングにより各電極をそれぞれ形成し、こうして出来上がった半導体ウエハーをスクライブラインを引いた後、外力により分割させ発光素子として発光素子を形成した。
銀メッキした銅製リードフレームの先端にカップを有するマウント・リードに発光素子をエポキシ樹脂でダイボンディングした。発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードと、をそれぞれ直径が30μmの金線でワイヤボンディングし電気的導通を取った。」(【0122】)、
「モールド部材は、砲弾型の型枠の中に発光素子が配置されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させ青色系発光ダイオードを形成させた。青色系発光ダイオードを端面が全て研磨されたアクリル性導光板の一端面に接続させた。アクリル板の片面及び側面は、白色反射部材としてチタン酸バリウムをアクリル系バインダー中に分散したものでスクリーン印刷及び硬化させた。」(【0123】)、
「一方、フォトルミネセンス蛍光体は、緑色系及び赤色系をそれぞれ必要なY、Gd、Ce、Laの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400°Cの温度範囲で3時間焼成して焼成品を得た。焼成品をそれぞれ水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して形成した。」(【0124】)、
「以上のようにして作製された、一般式Y_(3)(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体120重量部と、同様にして作製された、一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体100重量部とを、エポキシ樹脂100重量部とよく混合してスラリーとし、このスラリーを厚さ0.5mmのアクリル層上にマルチコーターを用いて均等に塗布、乾燥し、厚さ約30μmの色変換部材として蛍光体膜を形成した。
蛍光体層を導光板の主発光面と同じ大きさに切断し導光板上に配置することにより面状の発光装置を作製した。以上のように作製した発光装置の色度点、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.29,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)は、92.0と三波長型蛍光灯に近い性能を示した。また、発光効率は12 lm/wと白色電球並であった。さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においても蛍光体に起因する変化は観測されなかった。」(【0125】)

シ 「(比較例2)」、
「実施例9の一般式Y_(3)(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体、及び一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体からなるフォトルミネセンス蛍光体に代えて、それぞれペリレン系誘導体である緑色有機蛍光顔料(シンロイヒ(SINLOIHI)化学製FA-001)と赤色有機蛍光顔料(シンロイヒ化学製FA-005)とを用いて同量で混合攪拌した以外は、実施例9と同様にして発光ダイオードを作製して実施例9と同様の耐侯試験を行った。作製した比較例1の発光ダイオードの色度点は、(x=0.34,y=0.35)であった。耐侯性試験として、カーボンアークで紫外線量を200hrで太陽光の1年分とほぼ同等とさせ時間と共に輝度の保持率及び色調を測定した。また、信頼性試験として発光素子を発光させ70℃一定における時間と共に発光輝度及び色調を測定した。この結果を実施例9と共に図14及び図15にそれぞれ示す。図14,15から明らかなようにねいずれの試験においても、実施例9は、比較例2より劣化が少ない。」(【0126】)

ス 「(実施例10)」、
「実施例10の発光ダイオードは、リードタイプの発光ダイオードである。
実施例10の発光ダイオードでは、実施例9と同様にして作製した450nmのIn_(0.05)Ga_(0.95)Nの発光層を有する発光素子を用いた。そして、銀メッキした銅製のマウントリードの先端のカップに発光素子をエポキシ樹脂でダイボンディングし、発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードとをそれぞれ金線でワイヤーボンディングし電気的に導通させた。」(【0127】)、
「一方、フォトルミネセンス蛍光体は、一般式Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体と一般式(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体とをそれぞれ以下のようにして作製して混合して用いた。すなわち、必要なY、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400°Cの温度範囲で3時間焼成してそれぞれ焼成品を得た。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して所定の粒度の第1と第2の蛍光体を作製した。」(【0128】)、
「以上のようにして作製された第1の蛍光体及び第2の蛍光体それぞれ40重量部を、エポキシ樹脂100重量部に混合してスラリーとし、このスラリーを発光素子が配置されたマウント・リード上のカップ内に注入した。注入後、注入されたフォトルミネセンス蛍光体を含有する樹脂を130℃1時間で硬化させた。こうして発光素子上に厚さ120μのフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部材を形成した。なお、このコーティング部材は、発光素子に近いほどフォトルミネセンス蛍光体の量が徐々に多くなるように形成した。その後、さらに発光素子やフォトルミネセンス蛍光体を外部応力、水分及び塵芥などから保護する目的でモールド部材として透光性エポキシ樹脂を形成した。モールド部材は、砲弾型の型枠の中にフォトルミネセンス蛍光体のコーティング部が形成されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させて形成した。このようにして作製された実施例10の発光ダイオードは、発光観測正面から視認するとフォトルミネセンス蛍光体のボディーカラーにより中央部が黄色っぽく着色されていた。」(【0129】)、
「以上のように作製した実施例10の発光ダイオードの色度点、色温度、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.32,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)=89.0、発光効率は10lm/wであった。さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においてもフォトルミネセンス蛍光体に起因する変化は観測されず通常の青色系発光ダイオードと寿命特性に差がないことが確認できた。」(【0130】)

セ 「(実施例11)」、
「LED素子として発光ピークが470nmのIn_(0.4)Ga_(0.6)N半導体を用いた。発光素子は、洗浄させたサファイヤ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジュウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜させることにより形成した。ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成しPN接合を形成した。LED素子としては、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層を形成した。N型導電性を有するコンタクト層とP型導電性を有するクラッド層との間に厚さ約3nmのノンドープInGaNの活性層を形成することにより単一井戸構造とした。なお、サファイア基板上には、低温で窒化ガリウム半導体をバッファ層として形成した。」(【0131】)、
「以上のように各層を形成した後、エッチングによりPN各半導体表面を露出させ、スパッタリングによりp側及びn側の各電極を形成した。こうして出来上がった半導体ウエハーをスクライブラインを引いた後、外力により分割させ発光素子として発光素子を形成した。」(【0132】)、
「この発光素子を銀メッキした銅製のマウントリードのカップにエポキシ樹脂を用いてダイボンディングした。発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードと、をそれぞれ直径30μmの金線でワイヤーボンディングし電気的導通を取った。」(【0133】)、
「モールド部材は、砲弾型の型枠の中に発光素子が配置されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させ青色系発光ダイオードを形成した。青色系発光ダイオードを端面が全て研磨されたアクリル性導光板の一端面に接続した。アクリル板の片面及び側面は、白色反射部材としてチタン酸バリウムをアクリル系バインダー中に分散したものをスクリーン印刷及び硬化して膜状に形成した。」(【0134】)、
「一方、フォトルミネセンス蛍光体は、一般式(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表され比較的短波長側の黄色系が発光可能な蛍光体と、一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表され比較的長波長側の黄色系が発光可能な蛍光体とを以下のようにして作製して混合して用いた。これらの蛍光体は、それぞれ必要なY、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400℃の温度範囲で3時間焼成して焼成品を得た。焼成品をそれぞれ水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して形成した。」(【0135】)、
「以上のように作製した比較的短波長側の黄色系蛍光体100重量部と比較的長波長側の黄色系蛍光体100重量部とを、アクリル樹脂1000重量部とよく混合して押し出し成形し、厚さ約180μmの色変換部材として用いる蛍光体膜を形成した。蛍光体膜を導光板の主発光面と同じ大きさに切断し導光板上に配置することにより発光装置を作製した。このようにして作製した実施例11の発光装置の色度点、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.33,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)=88.0を示した。また、発光効率は10 lm/wであった。」(【0136】)、
「図22(A?C)にはそれぞれ、実施例11に使用した、式(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体、式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体及び発光素子の各発光スペクトルを示す。また、図23には、実施例11の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。 さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においても蛍光体に起因する変化は観測されなかった。同様に、この蛍光体の含有量を種々変えることによって発光素子からの波長が変化しても所望の色度点を維持させることができる。」(【0137】)

ソ 「(実施例12)」、
「実施例12の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)In_(5)O_(12):Ceで表されるAlを含まない蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして発光ダイオードを100個作製した。実施例9の発光ダイオードは、輝度は低いが寿命試験において実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。」(【0138】)

タ 「以上説明したように、本発明に係る発光ダイオードは、所望の色を有する光を発光することができ、長時間高輝度の使用においても発光効率の劣化が少なくしかも耐候性に優れている。従って、一般的な電子機器に限られず、高い信頼性が要求される車載用、航空産業用、港内のブイ表示用及び高速道路の標識照明など屋外での表示や照明として新たな用途を開くことができる。」(【0139】)

(3)認定事実
上記(2)の各記載によれば、以下の事実が認められる。
ア 本件発明の課題、目的及び課題解決手段について
(ア)本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、
第一に、「従来の発光ダイオードは、蛍光体の劣化によって色調がずれたり、あるいは蛍光体が黒ずみ光の外部取り出し効率が低下する場合があるという問題点があった」こと(以下「第一の課題」という。【0007】)であり、
第二に、「イオン性の有機染料を使用すると、チップ近傍では直流電界により電気泳動を起こし、色調が変化する場合がある」こと(以下「第二の課題」という。【0009】)である。
第一の課題について、蛍光体の劣化は、「光」(【0007】)、「熱」(【0008】)及び「水分」(【0009】)によって生じる。

(イ)本件発明の目的は、「上記課題を解決し、より高輝度で、長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供すること」である(【0010】)。

(ウ)本件課題を解決する手段(以下「本件課題解決手段」という。)は、蛍光体として、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」を含み、当該ガーネット系蛍光体は、「発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップ」「によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光」し、それにより「白色系を発光する」もの、を採用することである。

(エ)本件訂正明細書(【0050】)には、ガーネット構造を有する蛍光体は、熱、光及び水分に強いとの記載がある。

イ 具体例について
本件訂正明細書には、本件課題解決手段に関する「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」についての具体例として、次のものが記載されている。
ここで、本件課題解決手段におけるガーネット系蛍光体の一般式(以下「本件一般式」といい、本件一般式により特定される蛍光体を「本件一般式蛍光体」という。)は、(Y_(1-a)Gd_(a))_(3)(Al_(1-b)Ga_(b))_(5)O_(12):Ce(ただし、0≦a≦1,0≦b≦1)で表されると解されるところ、以下に記載した数値は、この添字の値に対応するものである。

実施例・段落番号等 Y Gd Al Ga
実施の形態1【0054】 1.0 0.0 1.0 0.0
実施の形態1【0054】 1.0 0.0 0.6 0.4
実施の形態1【0054】 1.0 0.0 0.5 0.5
実施の形態1【0054】 0.8 0.2 1.0 0.0
実施の形態1【0054】 0.6 0.4 1.0 0.0
実施の形態1【0054】 0.4 0.6 1.0 0.0
実施の形態1【0054】 0.2 0.8 1.0 0.0
実施例 1 【0105】 0.8 0.2 1.0 0.0
実施例 2 【0111】 0.6 0.4 1.0 0.0
実施例 5 【0116】 0.2 0.8 1.0 0.0
実施例 6 【0118】 1.0 0.0 1.0 0.0
実施例 7 【0119】 1.0 0.0 0.5 0.5
実施例 8 【0120】 0.0 1.0 0.5 0.5
実施例 9 【0125】 1.0 0.0 0.6 0.4
実施例 9 【0125】 0.4 0.6 1.0 0.0
実施例10 【0128】 1.0 0.0 0.5 0.5
実施例10 【0128】 0.2 0.8 1.0 0.0
実施例11 【0135】 0.8 0.2 1.0 0.0
実施例11 【0135】 0.4 0.6 1.0 0.0

(4)判断
ア 本件発明1について
当業者が、本件課題解決手段により本件課題を解決できると認識できるか否かについて検討する。
(ア)本件一般式蛍光体(「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」)は、以下のとおり、熱、光及び水分に強いものと認められる。
a 本件課題解決手段は、本件一般式蛍光体を採用することを含むところ、本件一般式蛍光体は「ガーネット構造」を構成すると認められる。そして、本件訂正明細書には、「ガーネット構造」が、熱、光及び水分に強いと記載されており(【0050】)、この記載が特に不合理であるとは解されない。

b その上で、本件訂正明細書の具体例をみると、本件訂正明細書には、本件一般式蛍光体について、上記(3)イのとおり、組成が異なる実施例が8種類開示されている。これらの具体例は、YとGdとのモル比を示すaの数値が「0.0」、「0.2」、「0.4」、「0.6」、「0.8」及び「1.0」のものを含むから、本件一般式蛍光体が特定するaの全範囲に及んでいる。加えて、本件一般式蛍光体は、ガーネット構造をもつから、イオン結晶であると認められる(乙7)ところ、構成元素のイオン半径が近く価数が等しいイオン結晶の性質は類似すると考えられる。しかるに、YとGdは、ともに希土類元素(価数が3である。)であって、イオン半径が近いことが技術常識である。
以上を踏まえれば、aの全範囲のうちの、具体例が開示されていないaの数値であっても、同様の傾向があるものと推認できる。

c 次に、これらの具体例は、AlとGaとのモル比を示すbの数値が「0.5」、「0.6」及び「1.0」のものを含むところ、これらの数値は、本件一般式蛍光体が特定するbの全範囲のうち半分の範囲までしか及んでいない。しかしながら、AlとGaは、ともに価数が3であって、イオン半径が近いことが技術常識である。
そうすると、やはり、bの全範囲のうち、具体例が開示されていないbの数値であっても、同様の傾向があるものと推認できる。

d よって、本件一般式蛍光体は、熱、光及び水分に強いと認めるのが相当であり、この認定を覆すに足りる証拠はない。

(イ)上記(ア)によれば、当業者は、本件一般式蛍光体であって、「発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップ」「によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光」し、それにより「白色系を発光する」ものを採用すれば、すなわち、本件課題解決手段を採用すれば、第一の課題を解決できることを認識できるというべきである。
また、当業者は、本件課題解決手段を採用すれば、イオン性の有機染料を使用していないことになるのであるから、第二の課題を解決できることも認識できる。
このように、当業者は、本件訂正明細書の記載及び技術常識に照らして、本件課題解決手段により本件課題を解決できると認識することができる。

よって、本件発明1の記載はサポート要件を満たしている。

イ 本件発明2について
本件発明2は本件課題解決手段を含んでいるから、上記アと同様の理由で、本件発明2の記載はサポート要件を満たしている。

ウ 請求人の主張について
(ア)請求人は、本件発明の記載には、本件一般式蛍光体のうち「Gd」のみがYサイトの全てを占める態様も含まれるけれども、当該態様に係る発光ダイオードは、その輝度が低いものとならざるを得ないから、本件発明の課題を解決できない旨主張する(審判請求書16頁末行?17頁12行、請求人口頭審理陳述要領書10頁10行?12頁12行)。

a しかしながら、以下のとおり、発光ダイオードの輝度が低いかどうかは本件発明の課題解決とは無関係であるから、請求人の主張は、その前提が失当である。

(a)すなわち、本件発明の課題は、第一の課題(すなわち、「従来の発光ダイオードは、蛍光体の劣化によって色調がずれたり、あるいは蛍光体が黒ずみ光の外部取り出し効率が低下する場合があるという問題点があった」こと)及び第二の課題(すなわち、「イオン性の有機染料を使用すると、チップ近傍では直流電界により電気泳動を起こし、色調が変化する場合がある」こと)であるのであり、このことは、上記ア(ア)で認定したとおりである。
ところで、本件訂正明細書の【0010】には、「【発明が解決しようとする課題】」とのタイトルの下で、「したがって、本願発明は上記課題を解決し、より高輝度で、長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的とする。」と記載されている。しかしながら、この記載における「より高輝度で、長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供する」という内容は、文脈に照らして、上記ア(ア)で認定した課題を解決したことに伴う当然の結果、ないし、その課題解決を前提として得られる追加的な結果を意味していると解されるのであるから、当該内容が、本件発明がとりたてて解決しようとする課題であるとはいえない。
このように、「発光ダイオード」の輝度が低いかどうかは、本件発明の課題を解決できるか否かとは無関係であるというべきである。

(b)これに対し、請求人は、「高輝度」であることは本件発明の「前提」であるから、「発光ダイオード」の輝度が低いかどうかは、本件発明の課題と関係がある旨主張し、その根拠として、本件訂正明細書の【0007】の記載を挙げる(請求人口頭審理陳述要領書5頁7行?6頁下から4行)。
しかしながら、同【0007】には、「発光素子」(本件発明でいう「LEDチップ」)の光のエネルギーが高くなることが記載されているのであり、本件発明1の「発光ダイオード」や本件発明2の「LED光源」の輝度が高いことは記載されていないと認められる。

加えて、請求人は、同【0003】?【0009】の記載からすれば、発光ダイオードに用いる蛍光体として劣化しにくいものが存在していたのであるから、本件発明が技術的意味を有するためには、耐候性のみならず、高輝度であることが必要である旨主張しているものと解される(審判請求書7頁2行?9頁18行)。
しかしながら、本件訂正明細書の上記記載をもって、発光ダイオードに用いる蛍光体として劣化しにくいものが存在していたことが本件優先日当時の技術水準であると認めることはできない。

さらに、請求人は、同【0120】には、「Gd」のみがYサイトの全てを占める態様は、「輝度は低い」と記載されているから、不適である旨主張する(審判請求書23頁3行?9行・27頁14行?21行)。
しかしながら、同【0120】に記載された技術的事項は、本件訂正明細書において「実施例8」として位置づけられているのであるから、本件訂正明細書が、当該技術的事項を本件発明から除外したものとは認められない。

そして、本件訂正明細書の他の記載をみても、「発光ダイオード」や「LED光源」が「高輝度」であることが本件発明の前提であることをうかがわせる記載を見いだせない。

よって、本件発明1の「発光ダイオード」や本件発明2の「LED光源」が高輝度であることが本件発明の前提であるとは、認められない。

(c)このように、発光ダイオードの輝度が低いかどうかは本件発明の課題解決とは無関係であるから、請求人の主張は、その前提が失当である。

b 請求人は、本件一般式蛍光体のうち、YとAlの何れか一方でも含まれない蛍光体を用いた場合はほとんど発光しないことがあり得る旨主張し、その根拠として、本件訂正明細書の【0054】の表1において、Gaの含有量を大きくしていくと、輝度が著しく低下していく傾向が見て取れることのほか、甲25・甲26を挙げる(審判請求書47頁下から2行?48頁6行、請求人口頭審理陳述要領書8頁7行?10頁2行)。
しかしながら、YとAlの何れか一方でも含まれない蛍光体を用いた場合に、ほとんど発光しないということが事実であるとしても、上記aのとおり、「発光ダイオード」の輝度が低いかどうかは、本件発明の課題を解決できるか否かとは無関係であるから、当該事実は、上記ア及びイの判断を左右しない。

c よって、請求人の上記主張は失当である。

(イ)請求人は、YとAlの何れか一方でも含有しない単なる「ガーネット系蛍光体」は、「白色系」を発光しないから、本件発明の記載は、サポート要件違反である旨主張する(弁駁書4頁下から6行?6頁8行、請求人口頭審理陳述要領書10頁10行?11頁8行・12頁下から9行?下から3行)。
そして、請求人は、その根拠として、本件訂正明細書【0054】に「発光素子の発光波長によるがYAG系蛍光体中のYとGdとの比率を、Y:Gd=4:1?2:3の範囲に設定することにより、1種類のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いて黒体放射軌跡にほぼ沿った白色光の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。また、YAG系蛍光体中のYとGdとの比率を、Y:Gd=2:3?1:4の範囲に設定すると、輝度は低いが電球色の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。」と記載されているとともに、本件訂正明細書【0083】にも同様の記載があることを挙げる。さらに、請求人は、本件訂正明細書【0022】の記載によれば、演色性に優れた白色光を得るためには、(i)「フォトルミネセンス蛍光体」は「イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体」であること、(ii)その組成は、「Alの一部がGaによってGa:Al=1:1から4:6の範囲内の比率になるように置換されかつYの一部がGdによってY:Gd=4:1から2:3の範囲内の比率になるように置換されている」ことが条件とされている旨主張する。

a 請求人の上記主張は、本件発明が「電球色」を含まないことを前提としていると解される。しかしながら、本件発明は、「白色系」を発光するものであり、そして、「白色系」とは「電球色」を含んだ概念であると解されるのであるから、請求人の主張は、その前提が失当である。
すなわち、本件発明の「白色系」が「電球色」を含んだ概念であることは、本件訂正明細書【0055】が、上記の【0054】(「・・・白色光の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。また、・・・電球色の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。」)の記載を受けて、「以上のように、組成のAlの一部をGaで置換することにより発光波長を短波長にシフトさせることができ、また、組成のYの一部をGdで置換することで、発光波長を長波長へシフトさせることができる。このように組成を変化することで発光色を連続的に調節することが可能である。・・・さらに、ピーク波長がGdの組成比で連続的に変えられるなど窒化物半導体発光素子の青色系発光を白色系発光に変換するための理想条件を備えている。」と記載していることから明らかである。加えて、このことは、【0069】の記載が、図16中の斜線を付した部分を「白色領域」と称していることからも明らかである。


b さらに、請求人は、本件発明の課題が「演色性に優れた白色光を得る」ことであると主張しているようである(弁駁書12頁末行?14頁3行・14頁下から6行?15頁16行)けれども、上記ア及びイのとおり、当業者は、本件課題解決手段により第一の課題及び第二の課題を解決できると認識できるのであるから、上記主張は、本件発明の記載がサポート要件を満たすという判断(上記ア及びイ)を左右しない。

c よって、請求人の上記主張は失当である。

(ウ)請求人は、被請求人が、本件発明の記載にサポート要件違反があることを認めている旨主張し、その根拠として、被請求人が訂正2017-390078号審判事件にて「Sm」を削除したこととか、被請求人が、請求人を被告とした特許権侵害差止等訴訟において、本件発明1のYをGdが100%置換する態様を本件発明1から除外する訂正を検討するなどを意思表示したことを挙げる(請求人口頭審理陳述要領書14頁4行?16頁10行、弁駁書4頁1行?16行)
しかしながら、被請求人がサポート要件違反を自認していたとはいえないし、仮にそうだとしても、本件審判においては、そのことは上記ア及びイの判断を左右するものではない。

(5)無効理由1及び2についての小括
以上のとおりであるから、無効理由1及び2は、理由がない。

3 無効理由3-1について
(1)本件発明の「発光ダイオード」の意味について
進歩性の判断に先立ち、本件発明の「発光ダイオード」の意味を確認する。

ア 本件訂正明細書には、図1のようなリードタイプの光源、図2のようなチップタイプの光源のほか、図7?図9のような、LEDチップに導光板が接続されたタイプの面状光源(以下、「LEDチップに導光板が接続されたタイプの面状光源」のことを、単に、「面状光源」という。)も記載されている。しかしながら、本件発明の「発光ダイオード」が、いかなる範囲のものをいうのか(具体的には、図1のようなリードタイプや図2のようなチップタイプのものを含むのだとしても、面状光源をも含むのかどうか)については、必ずしも判然としない。

すなわち、「発光ダイオード」の字義は、「接合部に電流を流すと発光する特殊な半導体を利用した素子」(広辞苑第4版1994年9月12日発行)であるけれども、この字義からは、上記の点は明らかでない。
また、上記第2の1(2)アで説示したとおり、「発光ダイオード」の意味は「LED光源」の意味よりは狭いものと認められる。しかしながら、「LED光源」の意味よりは狭いといっても、その具体的範囲(面状光源を含むのか否か)は明らかでない。

イ そこで、本件訂正明細書の記載をも参酌すると、本件発明の「発光ダイオード」とは、以下のとおり、図1のようなリードタイプや図2のようなチップタイプなどの光源を意味し、面状光源を含まないものと解される。
(ア)すなわち、本件訂正明細書【0005】は、本件発明の従来技術に関して、「・・・発光素子をリードフレームの先端に設けられたカップ上に配置し、発光素子を被覆する樹脂モールド部材中に発光素子からの光を吸収して、吸収した光と波長の異なる光を発光する(波長変換)蛍光体を含有させて構成」したものを、「発光ダイオード」と称している。
そして、従来技術がもつ課題に関して、本件訂正明細書【0007】は、そのような構成をもつ従来の「発光ダイオード」が、発光素子である高エネルギーバンドギャッブを有する半導体を用い、蛍光体の変換効率を向上させた場合、蛍光体の劣化が著しい旨を記載し、同【0008】は、やはり、当該課題に関して、発光素子の近傍に設けられた蛍光体は、発光素子の温度上昇や外部環境による熱により劣化する場合がある旨を記載する。
その上で、本件訂正明細書【0011】は、その課題の解決手段に関して、高輝度の発光素子に近接して設けられても特性変化の少ない蛍光体が求められる旨を記載する。
以上に記載された本件発明の課題及び課題解決手段の観点からみると、本件発明の「発光ダイオード」では、蛍光体が発光素子(LEDチップ)に近接して設けられていると解される。そうすると、本件発明の「発光ダイオード」には、図1のようなリードタイプや図2のようなチップタイプなどの光源が想定されており(この場合、蛍光体を設けると、必然的に、LEDチップに近接することになる。)、面状光源(すなわち、LEDチップに導光板が接続したタイプの面状光源)は想定されていない(この場合、蛍光体を設けても、必ずしも、LEDチップに近接しない。)と解するのが自然である。

(イ)そして、上記(ア)の認定は、本件優先日当時の技術常識にも沿うものである。
a すなわち、甲13は、本件特許の図1のようなリードタイプの光源を「発光ダイオード」と記載している一方、甲14、甲15は、面状光源を「発光ダイオード」と記載してはいない。

b また、乙8によれば、平成9年5月当時、点状の光源を「LED」と称し、LEDチップに導光体が接続されたタイプの面状の光源を「LED」とは称さないことが、技術常識であったと認められる。ここで、「LED」とは「発光ダイオード」の意味であることが明らかである。
そして、乙8は、本件優先日(平成8年7月29日)以後に作成された証拠であるけれども、その作成日は、本件優先日から1年を経過していない。

c 以上の各証拠からすれば、本件優先日当時、本件特許の図1のようなリードタイプのような光源を「発光ダイオード」と称し、面状光源(すなわち、LEDチップに導光板が接続したタイプの面状光源)を「発光ダイオード」とは称さないことが、技術常識であったと認められる。
よって、上記(ア)の認定は、本件優先日当時の技術常識に沿うものといえる。

(ウ)ただし、本件訂正明細書の以下の各記載は、一見すると、上記(ア)の認定に沿わないので、検討する。
a まず、【0090】には、「面状発光の発光ダイオードを用いた液晶表示装置」との記載がある。加えて、実施例9に関して、同【0121】には、「実施例9の発光ダイオードは、図7に示す構成を有する面状発光の発光装置」との記載がある。なお、【0121】に記載された面状発光の発光装置は、同【0125】によれば、蛍光体層が導光体の主発光面上に配置されたものである。
そのため、このような記載が存在することをもって、本件発明の「発光ダイオード」が、「面状光源」をも含むと解すべきなのかが問題となる。
しかるところ、上記の各記載の体裁は、「発光ダイオード」が面状光源を含む概念であることを定義するものとはなっていないから、この記載をもって、直ちに、本件発明の「発光ダイオード」が、「面状光源」をも含むとはいえない。
そこで、さらに検討すると、上記の各記載における「発光ダイオード」は、本件訂正明細書の【0023】【0024】からすれば、「発光装置」などの誤記であると解される。
すなわち、【0023】には、「本発明の1つの態様の発光装置は、その一側面に前記フォトルミネセンス蛍光体を介して前記発光素子が設けられ、かつその一主表面を除く表面が実質的に反射部材で覆われた略矩形の導光板を備え、前記発光素子が発光した光を前記フォトルミネセンス蛍光体と導光板とを介して面状にして、前記導光板の前記一主表面から出力することを特徴とする。」と記載され、【0024】には、「本発明の別の態様の発光装置は、その一側面に前記発光素子が設けられ、その一主表面に前記フォトルミネセンス蛍光体が設けられかつ該一主表面を除く表面が実質的に反射部材で覆われた略矩形の導光板を備え、前記発光素子が発光した光を導光板と前記フォトルミネセンス蛍光体とを介して面状にして、前記導光板の前記一主表面から出力することを特徴とする。」と記載されている。これらの記載では、「面状光源」に対応する概念として「発光装置」という文言が用いられているのであって、「発光ダイオード」という文言は用いられていない。そして、「発光装置」との文言が「面状光源」をも含む概念であることは、明らかというべきである。
そうであれば、当業者は、上記【0090】・【0121】の「発光ダイオード」との記載は、「発光装置」などの誤記であると認識すると認めるのが相当である。
したがって、上記の各記載は、上記(ア)の認定を左右しない。

b 次に、本件訂正明細書の【0004】には、「・・・発光素子によって発生された光が、蛍光体で色変換されて出力される発光ダイオードを、特開平5-152609号公報、特開平7-99345号公報、特開平7-176794号公報、特開平8-8614号公報などにおいて発表した。これらに開示された発光ダイオードは、・・・」との記載も、上記(ア)の認定に沿わない。
すなわち、これら4つの公報のうち、後者2つの公報である「特開平7-176794号公報」及び「特開平8-8614号公報」(「特開平8-7614号公報」(甲14)の誤記であると認められる。)に係る光源は、面状光源である。そうすると、これら2つの公報に開示された構成を「発光ダイオード」と称している点は、上記(ア)の認定に沿わないことになる。
しかしながら、同【0005】は、上記の記載を受けて、「上記公報に開示された発光ダイオードは、具体的には、・・・発光素子をリードフレームの先端に設けられたカップ上に配置し、発光素子を被覆する樹脂モールド部材中に発光素子からの光を吸収して、吸収した光と波長の異なる光を発光する(波長変換)蛍光体を含有させて構成する。」と記載している。そうすると、同【0004】が後者2つの公報に開示された構成を「発光ダイオード」と称していることも、誤記であることが明らかである。
したがって、上記の記載も、上記(ア)の認定を左右しない。

ウ 以上のとおりであるから、本件発明の「発光ダイオード」とは、図1のようなリードタイプや図2のようなチップタイプなどの光源を意味し、面状光源を含まないものと解される。

以下、この解釈を踏まえ、本件発明の進歩性を検討する。

(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲13発明との対比
(ア)本件発明1の「白色系を発光する発光ダイオードであって、」との特定事項について
a 甲13発明の「発光ダイオード」は、本件発明1の「発光ダイオード」に相当する。
b よって、甲13発明は、本件発明1の「発光ダイオードであって、」との特定事項を備える。
しかし、甲13発明は、本件発明1の「白色系を発光する」との特定事項を備えない。

(イ)本件発明1の「該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、」との特定事項について
甲13発明の「発光ダイオード」が有している「発光素子」は、「一般式Ga_(X)Al_(1-X)N(但し0≦X≦1である)で表される窒化ガリウム系化合物半導体よりな」るものであり、その「発光波長は、主として430nm付近にあり、さらに370nm付近の紫外域にも発光ピークを有している」ものである。
よって、甲13発明が本件発明1の「該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、」との特定事項を備えることは、明らかである。

(ウ)本件発明1の「該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、」との特定事項について
a 甲13発明の「蛍光染料、蛍光顔料」は、「短波長の光によって励起され、励起波長よりも長波長光を発光する」ものであるから、本件発明1の「蛍光体」といえる。
しかし、甲13発明の「蛍光体」は、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」ではない。

b 甲13発明の「蛍光染料、蛍光顔料」は、「短波長の光によって励起され、励起波長よりも長波長光を発光する」ものであるから、本件発明1でいう「該LEDチップによって発光された光」「を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する」ものといえる。
しかし、甲13発明の「蛍光染料、蛍光顔料」(本件発明1の「蛍光体」)が「吸収」するところの「該LEDチップによって発光された光」が、そのうち全部なのか「一部」なのかは不明である。
この点、請求人は、甲13には「全ての光の吸収」とは記載されていない旨主張する(弁駁書21頁1行?5行)が、そのことは上記の認定を左右しない。

c このように、甲13発明は、本件発明1でいう「該LEDチップによって発光された光」「を吸収」する「蛍光体」を含むものであるけれども、甲13発明の「蛍光体」が「吸収」するところの「該LEDチップによって発光された光」が、そのうち全部なのか「一部」なのかは不明であり、また、当該「蛍光体」は、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」ではない。

(エ)本件発明1の「発光ダイオード」との特定事項について
上記(ア)aのとおりであるから、甲13発明は、本件発明1の「発光ダイオード」との特定事項を備える。

イ 一致点及び相違点の認定
上記イによれば、本件発明1と甲13発明とは、
「発光ダイオードであって、
該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、蛍光体とを含む、
発光ダイオード。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1-1]
「発光ダイオード」が「発光する」光が、本件発明1では、「白色系」であるのに対し、甲13発明では、そうではない点。

[相違点1-2]
「蛍光体」が「吸収」するところの「該LEDチップによって発光された光」が、本件発明1では、そのうち「一部」であるのに対し、甲13発明では、そのうち全部なのか「一部」なのかが不明である点。

[相違点1-3]
「蛍光体」について、本件発明1は、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」であるのに対し、甲13発明は、そうではない点。

ウ 相違点1-1?相違点1-3についての判断
(ア)これら3つの相違点は、以下のとおり技術的に密接に関連していると認められるので、まとめて判断をする。
a これらの関連性の有無ないし内容を確認するために、本件発明1に係る「発光ダイオード」が発光する「白色系」の光がどのようにして生成されるのかについて検討する。
(a)本件発明1には、発光源として、
「発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップ」(以下「本件LEDチップ」という。)と、
「該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」(以下「本件ガーネット系蛍光体」という。なお、「本件ガーネット系蛍光体」は、「本件一般式蛍光体」に、「該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、」との特定事項を加えたものである。)、
のみが記載されている。
そうすると、本件発明1に係る「発光ダイオード」から発光された「白色系」の光は、本件LEDチップから発せられた光と本件ガーネット系蛍光体から発せられた光とを混合させることにより生成されていると解するのが自然であり、本件訂正明細書にもその理解に反する記載はない。
このように、本件発明1においては、「白色系」の光を発光することと本件LEDチップと本件ガーネット系蛍光体とが、ひとまとまりの技術思想として扱われているといえる。

(b)もっとも、本件発明1が「白色系」の光を発光するものであるとの観点からは、「ひとまとまりの技術思想」であるのは、本件LEDチップと、「該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する」「蛍光体」なのであって、「蛍光体」が「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系」(本件一般式蛍光体)であることは、別の技術思想に係るものと解する余地もある。
しかしながら、そのように解したとしても、「蛍光体」が本件一般式蛍光体であることは、上記の意味での「ひとまとまりの技術思想」に対して、並列して存在するのではなく、それを前提として存在するというべきである。そうだとすれば、本件発明1においても、やはり、「白色系」の光を発光することと本件LEDチップと本件ガーネット系蛍光体とが、ひとまとまりの技術思想として扱われているといえるのである。

b そして、相違点1-1は、「白色系」の光を発光することに関連し、相違点1-2及び相違点1-3は、本件ガーネット系蛍光体に関連すると認められる。
したがって、相違点1-1?相違点1-3は、技術的に密接に関連していると認められる。

(イ)上記(ア)を踏まえ検討すると、当審は、
(i) 甲13発明は、蛍光体がLEDチップによって発光された光を「一部」吸収することによって「白色系」の光を得ること(蛍光体の「一部」吸収による「白色系」発光であり、要するに、LEDチップによって発光された光と蛍光体から発光された光を混合した光(以下、単に「混合光」という。)による「白色系」発光である。)を想定したものである、とはいえないから、当業者は、甲13発明の蛍光体として、「一部」吸収に係る蛍光体である本件ガーネット系蛍光体を採用することはなく、(相違点1-1,1-2関係)、
(ii) 仮に(i)で、甲13発明が蛍光体の一部吸収による白色系発光(混合光による白色系発光)を想定したものであるといえるとしても、当業者が、甲13発明の蛍光体として、本件一般式蛍光体を採用することに容易に至る、とはいえない(相違点1-3関係)、
から、当業者が、甲13発明から出発して、相違点1-1?相違点1-3の構成に容易に至ることはないと判断する。以下、具体的な理由を説示する。

(ウ)(i)甲13発明が、蛍光体の「一部」吸収による「白色系」発光(混合光による白色系発光)を想定したものであるとはいえないことについて
a 甲13発明の技術的意義を検討するに、まず、甲13発明の課題は、用いられているLEDが、紫色に近い発光色を有しているため視感度が悪いという欠点があることであり(【0005】)、甲13発明の目的は、「発光ピークが430nm付近、および370nm付近にある窒化ガリウム系化合物半導体材料よりなる発光素子を有するLEDの視感度を良くし、またその輝度を向上させること」(【0006】)にあると認められる。そして、甲13には、「青色LEDの色補正はいうにおよばず、蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光に変換することができる」(【0009】)ことも記載されている。ここで、「色補正」と「色変換」とは、両者の区別が必ずしも明瞭ではないものの、いずれも、発光素子からの発光光の波長を「変更」するという概念であると解される。
そうすると、甲13発明は、蛍光体を用いて、発光素子からの発光光の波長を「変更」するものなのであり、より具体的にいえば、蛍光体を用いて、発光素子からの視感度の悪い発光光の波長(紫色に近い発光色のもの)をより長波長に変更することによって、視感度を良くし、また、輝度を向上させるためのものと解される(なお、【0008】記載の蛍光染料は、420?440nm付近の波長によって励起されることのみが記載されており、370nm付近の紫外域によって励起されることが記載されていない点において、甲13発明の蛍光体も「一部」吸収と解する余地があるけれども、ここで認定しているのは、甲13発明の蛍光体が「視感度の悪い光」を「全部」吸収しているということであって、370nm付近にある紫外域は、「紫外域」である以上、そもそも、「視感度の悪い光」とは言い難いから、この点は、上記の認定を左右しない。)。

このような甲13発明の技術的意義からは、甲13発明が意図するところは、視感度が悪い光を残さないもの、すなわち、蛍光体が視感度が悪い光をすべて吸収するという「全部」吸収、であると解するのが自然である。換言すれば、甲13発明は、特段の記載ないし技術常識が存在すれば格別、視感度の悪い光の一部を蛍光体があえて吸収しないという「一部」吸収を想定しておらず、よって、蛍光体の一部吸収によって「白色系」発光を得ること(すなわち、混合光による白色系発光)をも想定していないというべきである。

b そこで、上記でいう特段の記載ないし技術常識が存在するかどうかについて検討する。
(a)甲13の【0003】には、甲13発明の従来技術として、GaPの半導体材料を有する緑色発光素子の樹脂モールド中に、赤色顔料を添加すれば発光色は白色とすることができることが、記載されている。そして、それを受けた同【0004】には、「しかしながら、従来、樹脂モールドに着色剤を添加して波長を変換するという技術はほとんど実用化されておらず、着色剤により色補正する技術がわずかに使われているのみである。」と記載されている。
しかるに、上記各記載からは、甲13が、緑色発光素子に赤色顔料を合わせれば発光色は白色になるという技術を「波長を変換する」と称しているということを、理解できる。そして、仮に、当該技術が、(蛍光体ではないものの)ある材料が発光光を一部吸収したことにより白色光発光を得ることを意味しているのであれば、同【0004】の「波長を変換する」との文言も、一部吸収による白色光発光をも意味すると解され得ることになり、その結果、同【0009】の「数々の波長の光に変換する」(なお、「数々の波長の光を変換する」が誤記であることは、上記1(1)ス(ア)fで認定した。)との文言も、同様に解される余地が生じる。

しかしながら、当該技術それ自体が、技術的に理解し難い。なぜならば、緑色発光素子に赤色顔料(非発光物質(【0004】)であって、白色光のうち、青色成分と緑色成分を吸収し、赤色成分を反射する作用があると解される。)を合わせてみても、緑色発光素子の発光光に緑色以外の色成分が含まれていない限り、緑色光が生じるのみであるからである。
このように、甲13の【0003】の記載は理解がし難いのであるから、それを受けた【0004】の記載を併せ読んでみても、【0009】の「数々の波長の光に変換する」との文言が、「一部」吸収をも想定したものであるとはいえない。
上記aの認定は、これらの記載によって、左右されないというべきである。

(b)甲14の【0004】には、「また白色発光、あるいはモノクロの光源として、一部では青色LEDチップの周囲を蛍光物質を含む樹脂で包囲して色変換する試みもある・・・」と記載されているところ、かかる「試み」の一例が甲13発明を意味しているのであれば、甲13発明が「白色発光」を想定していると解する余地があり、そうであれば、甲13発明が蛍光体の「一部」吸収をも想定していると解する余地が生じることになる。
しかしながら、かかる「試み」の一例が甲13発明を意味しているのかは、甲13及び甲14の記載からは判然としない。また、仮に、それを意味しているとしても、上記記載には、「白色発光」の光源のみならず「モノクロ」(すなわち、単色)の光源も記載されているから、甲13発明をもっぱら「モノクロ」の光源を想定したものと解する余地もある上、上記aの認定のとおり、むしろ、その理解が自然である。
よって、甲14のこの記載を考慮したとしても、甲13発明が蛍光体の「一部」吸収による「白色系」発光を想定したものとはいえない。

(c)請求人は、青色の光とこれにより励起された蛍光体から発光される光との混合により白色が得られるという知見が技術常識であるから、当業者が、甲13の「青色LEDの色補正はいうにおよばず、蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光に変換することができる」(【0009】)との記載に接すれば、当該色変換を利用して白色を得ることが可能であることを想起できる旨主張する(審判請求書64頁14行?16行・65頁11行?66頁6行、弁駁書20頁11行?末行)。
これについて、請求人が挙げる証拠は、甲6、甲7、甲8、甲14,甲15、甲17?19であると解されるので、以下、検討する。
甲6は、蛍光体を開示するけれども、蛍光体の「一部」吸収ないし「白色系」発光を開示しない。
甲7及び甲8は、蛍光体すら開示しない。
甲14は、蛍光体の「一部」吸収及び「白色系」発光を開示するけれども、この開示があるからといって、甲13発明が「一部」吸収ないし「白色系」発光を想定したことにはならない。すなわち、甲13発明のような「全部」吸収に係る技術と甲14に記載された「一部」吸収に係る技術とは、その目的が異なる(前者はもっぱら輝度向上光を得るための技術であり、後者は混合光を得るための技術である。)のであるから、両者は異なる技術であるというべきであり、よって、甲14に上記の開示があることは、上記aの認定を左右しない。
甲15及び甲17は、甲14と同様の議論が成り立つ。
甲18は、蛍光体の「一部」吸収を開示するけれども、蛍光体によって変換された光の生成は、放射の色点を移動させるためになされるのであって、青色光との混合によって白色光を得るためになされるのではないから、蛍光体の「一部」吸収による「白色系」発光を開示しない。
甲19は、蛍光体の「一部」吸収を開示しているのかが判然としないし、仮に、そうであるとしても、蛍光体によって変換された光の生成は、光の色温度を比較的低くするためになされるのであって、青色光との混合によって白色光を得るためになされるのではないから、蛍光体の「一部」吸収による「白色系」発光を開示しない。

以上のとおりであるから、請求人が挙げる証拠の記載事項に照らしても、当業者が、甲13発明を、蛍光体の「一部」吸収による「白色系」発光を想定したものと解することはない。

c このような次第で、甲13発明は、蛍光体の一部吸収による白色系発光、すなわち、蛍光体がLEDチップによって発光された光を「一部」吸収することによって「白色系」の光を得ること、を想定したものであるとはいえず、むしろ、LEDチップからの発光光の輝度向上のために、蛍光体が、該LEDチップによって発光された輝度が悪い光を「全部」吸収することにより、輝度を向上した光を得ることを開示するものである。
他方で、本件ガーネット系蛍光体は、蛍光体の「一部」吸収に係るものであり、輝度が悪い光をあえて残すものである。
よって、甲13発明から出発した当業者が、蛍光体として本件ガーネット系蛍光体を採用することはないというべきである。

(エ)(ii)仮に(i)で、甲13発明が蛍光体の「一部」吸収による「白色系」発光を想定したものであるといえるとしても、当業者が、甲13発明の蛍光体として本件一般式蛍光体を採用することに、容易に至るといえないことについて
本件一般式蛍光体は、それ自体は、本件優先日前に存在した(甲1?5,16?19,21)ものであると認められる(なお、甲4,甲5,甲21に記載された蛍光体は、本件一般式蛍光体とは異なり、セリウムで付活されたものではないけれども、仮に、セリウムで付括されたものだとしても、結論を左右しないので、以下、併せて検討する。)。しかしながら、以下のとおり、その事実を踏まえたとしても、当業者が、甲13発明の発光体として本件一般式蛍光体を採用することに、容易に至るとはいえない。

a 甲1?甲5、甲21に記載された蛍光体は、いずれも、陰極線管において使用されるものであるところ、陰極線管で蛍光体を発光させるエネルギー線は電子線であって、甲13発明のような紫色に近い光ではないから、これらの証拠に記載された技術的事項をもって、当業者が、甲13発明の蛍光体として本件一般式蛍光体を使用することを、動機付けられることはない。
甲16の1、甲16の2に記載された蛍光体は、ランプ用のものと解されるところ、蛍光体を発光させるエネルギー線が何であるのかが不明であるから、これらの証拠に記載された技術的事項をもって、当業者が、甲13発明の蛍光体として本件一般式蛍光体を使用することを、動機付けられることはない。

b 甲17?甲19に記載された蛍光体は、青色光を吸収して、黄色光を放出するものであるけれども、甲17?甲19は、以下のとおり、発光ダイオードの技術分野に属するものではない。
(a)甲17は、レーザディスプレイに関するものであり、甲18及び甲19は、低圧水銀ランプに関するものであるところ、これらの技術分野が本件発明の「発光ダイオード」の技術分野と同じといえるのかについて検討する。
蛍光体は多くの応用分野に関わる技術であるところ、蛍光体の選択を検討している当業者が非常に多数存在する蛍光体の候補の中から具体的にいかなる蛍光体を選択するのかは、各応用分野における個別具体的な要請に基づき決定されるのが、本件優先日当時の技術常識であると認められる(甲1、甲2、甲3、甲4、甲5、甲22、乙15)。このように、いかなる蛍光体を選択するかという局面においては、応用分野ごとの事情が考慮されるのであるから、進歩性の判断に当たって、ある応用分野が本件発明の「発光ダイオード」の技術分野と同じと評価するか否かについては、各応用分野における個別具体的な要請の相違を踏まえて判断するのが相当である。
これを甲17についてみると、レーザディスプレイ用の蛍光体においては、レーザ光が、偏向器によって走査されることにより、一定時間おきにスクリーン上の同一の位置を照射するのであるから、常時照射されることはない。そのため、当該蛍光体に対する耐光性及び耐熱性の要請は、この状況に対応できる程度で足りる。また、当該蛍光体の残光時間は、当該一定時間に比して短いことが要請される。
甲18及び甲19についてみると、低圧水銀ランプ用の蛍光体においては、エネルギー線が常時照射されることを踏まえた耐光性の強い要請が存在すると考えられるけれども、その際に対象となるエネルギー線は、水銀からの紫外線であるし、しかも、当該蛍光体は水銀ガス環境下におかれるという特殊性もある。他方で、当該蛍光体は、水分による耐性は求められない。
これらに対し、本件発明の「発光ダイオード」の技術分野においては、LEDチップからの光が常時照射されており、しかも、LEDチップと蛍光体とが近接している(上記(1)イ(ア))のであるから、耐熱性や耐光性の強い要請がある上、通常の大気中で使用されるものであるから、水分による耐性も求められる。他方で、短残光の要請は必ずしも大きくなく、水銀ガスに対する耐性も求められない。
このような甲17?甲19において蛍光体が選択される際に求められる個別具体的な要請は、本件発明の「発光ダイオード」におけるものと一致するとはいえないから、甲17?甲19の蛍光体が用いられている技術分野は、本件発明の技術分野とは異なるというべきである。

(b)これに対し、請求人は、甲22を挙げて、蛍光体の光学的応用という技術分野において、LEDへの応用が何ら特別なものではない旨主張するけれども(審判請求書73頁5行?19行)、甲22は、「発光材料」と題する書籍であるから、LEDを、「発光材料」の応用として位置づけていると解されるのであって、「蛍光体」の応用として位置づけているとは解されない。請求人の主張は失当である。

(c)このように、甲17?甲19は、発光ダイオードの技術分野に属さない。
よって、発光ダイオードの技術分野における当業者は、甲17?甲19に記載された蛍光体に接することがないから、甲13発明の蛍光体として、かかる蛍光体を採用することに至ることもない。
また、仮に、発光ダイオードの技術分野における当業者が、甲17?甲19に記載された蛍光体に接することがあり得るのだとしても、蛍光体の技術分野における上記bの事情に照らせば、甲13発明の蛍光体としてかかる蛍光体を採用することには、相当の困難があるというべきである。

c 加えて、次の観点からも、当業者が、甲13発明の蛍光体として、甲1?5,甲16?甲19及び甲21に記載された蛍光体を採用することに、容易に至ることはないといえる。
(a)すなわち、蛍光体は成熟した技術分野であると解されるところ、そのような技術分野であるにもかかわらず、甲1?5,甲16?甲19,甲21のような既に存在した蛍光体が、本件優先日前には、発光ダイオードに用いるものとしては選択されなかったのである。そして、甲13発明の蛍光体として既存の蛍光体を採用すれば、本件課題を解決できる発光ダイオードが得られ、しかも、かかる発光ダイオードは、照明用途などにおいて極めて有用であると認められる。
そうだとすれば、このような事実それ自体が、かかる選択が困難であったことを裏付けるものといえる。

(b)また、甲14の【0004】には、白色発光の光源を、青色LEDチップの周囲を蛍光物質を含む樹脂で包囲して得る構成が開示されていると認められるところ、ここでは、かかる構成が有する課題として、チップからの光による蛍光物質の劣化が記載されている。
そして、かかる課題を解決する具体策としては、耐光性のある蛍光物質を選択することが、最も自然であると考えられる。
しかるところ、甲14は、そのような具体策について何ら示唆することなく、むしろ、蛍光物質の位置をチップから遠ざけることにより、上記課題を解決したのである。そうすると、甲14がそのような具体策を何ら示唆していないという事実それ自体が、発光ダイオードの技術分野において、甲1?5,甲16?甲19及び甲21に記載された蛍光体を選択することが困難であったことを裏付けるものといえる。

d 請求人は、YAG系蛍光体が、劣化しがたく(甲1?甲5)、また、ブロードな発光スペクトルを示す(甲1、甲24)ものであることは、本件優先日当時の当業者にとっての技術常識でしかなく、しかも、YAG系蛍光体は、白色を得るディスプレイやランプ等に用いる蛍光体として周知であった(甲17?甲19)のであり、さらに、甲13発明において、劣化しがたい蛍光体やブロードな発光スペクトルを示す蛍光体を選択することが、当業者には動機付けられる(甲1?5、甲20)のであるから、甲13発明において、蛍光体にYAG系蛍光体を採用することは容易である旨主張する(審判請求書67頁10行?72頁17行、弁駁書17頁末行?19頁下から5行・21頁6行?22頁9行、請求人口頭審理陳述要領書3頁8行?4頁下から4行・26頁5行?27頁8行)。

しかしながら、当業者が、甲13発明において、劣化しがたい蛍光体を選択することが動機付けられたとしても、発光ダイオードの技術分野において、劣化しがたい蛍光体としてYAG系蛍光体を選択することが公知であったことを示す証拠はない。
また、当業者が、甲13発明において、ブロードな発光スペクトルを示す蛍光体を選択することが動機づけられたとしても、やはり、発光ダイオードの技術分野において、ブロードな発光スペクトルを示す蛍光体としてYAG系蛍光体を選択することが公知であったことを示す証拠はない。
請求人の主張は採用できない。

e 請求人は、これ以外の証拠として、甲8?甲12を挙げるけれども、これらの証拠の記載事項(上記第6の1(1))からみて、上記の認定・判断が左右されることはない。

(オ)相違点の判断についての小括
以上のとおりであるから、当業者が、甲13発明から出発して、相違点1-1?相違点1-2の構成に至ることはないし、仮に至るとしても、相違点1-3の構成に至ることはない。

エ 本件発明1についての小括
よって、本件発明1は、甲13に記載された発明及び甲1?甲12・甲14?甲22・甲24に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明2について
ア 本件発明2と甲13発明との対比
(ア)本件発明2の「白色系を発光するLED光源であって、」との特定事項と「前記LED光源は発光ダイオードである」「LED光源」との特定事項について
a 甲13発明の「発光ダイオード」は、本件発明2でいう「光源」といえる。
b よって、上記(2)ア(ア)も踏まえると、本件発明2と甲13発明とは、「LED光源であって、」「前記LED光源は発光ダイオードである」「LED光源」である点で一致するけれども、甲13発明は、本件発明2の「白色系を発光する」との特定事項を備えない。

(イ)本件発明2の「該LED光源は、発光層がインジウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含み、」との特定事項について
a まず、本件発明2の「発光層がインジウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、」についてみる。
上記(2)ア(イ)を踏まえると、本件発明2と甲13発明とは、「該LED光源は、」「発光層が」「窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップ」を備える点で一致する。
しかし、甲13発明の「窒化ガリウム系化合物半導体」は、「インジウムを含」まない。

b 次に、本件発明2の「該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含み、」についてみる。
上記(2)ア(ウ)を踏まえると、甲13発明は、本件発明2でいう「該LEDチップによって発光された光」「を吸収」する「蛍光体」を含むものであるけれども、甲13発明の「蛍光体」が「吸収」するところの「該LEDチップによって発光された光」が、そのうち全部なのか「一部」なのかは不明であり、また、当該「蛍光体」は、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」ではない。

c 上記a及びbによれば、甲13発明は、本件発明2でいう「該LED光源は、発光層が」「窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光」「を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、」「蛍光体とを含み、」との特定事項を備える。
しかし、甲13発明の「窒化ガリウム系化合物半導体」は、「インジウムを含」まず、甲13発明の「蛍光体」が「吸収」するところの「該LEDチップによって発光された光」がそのうち全部なのか「一部」なのかは不明であり、甲13発明の「蛍光体」は、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」ではない。

イ 一致点及び相違点の認定
上記アによれば、本件発明2と甲13発明とは、
「LED光源であって、
該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、蛍光体とを含み、前記LED光源は発光ダイオードである
LED光源。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点2-1]
「発光ダイオードである」「LED光源」が「発光する」光について、本件発明1は、「白色系」であるのに対し、甲13発明は、そうではない点。

[相違点2-2]
「蛍光体」が「吸収」するところの「該LEDチップによって発光された光」が、本件発明2では、そのうち「一部」であるのに対し、甲13発明では、そのうち全部なのか「一部」なのかが不明である点。

[相違点2-3]
「蛍光体」について、本件発明2は、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」であるのに対し、甲13発明は、そうではない点。

[相違点2-4]
「発光層」である「窒化ガリウム系化合物半導体」について、本件発明2は「インジウムを含む」のに対し、甲13発明は、そうではない点。

ウ 相違点2-4の判断
発光層である窒化ガリウム系化合物半導体にインジウムを含ませる態様は周知(例えば、甲8?甲11)であるから、相違点2-4は格別なものではない。

エ 相違点2-1?相違点2-3の判断
相違点2-1?相違点2-3は、実質的に、相違点1-1?相違点1-3と同一である。したがって、上記(2)ウと同様に、当業者が、甲13発明から出発して、相違点2-1?相違点2-2の構成に至ることはないし、仮に至るとしても、相違点2-3の構成に至ることはない。

オ 本件発明2についての小括
よって、本件発明2は、甲13に記載された発明及び甲1?甲12・甲14?甲22・甲24に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)無効理由3-1についての小括
以上のとおりであるから、無効理由3-1は、理由がない。

4 無効理由3-2について
無効理由3-2は、本件発明1に対しては主張されていないので、本件発明2について判断する。
(1)本件発明2について
ア 本件発明2と甲14発明との対比
(ア)本件発明2の「白色系を発光するLED光源であって、」「前記LED光源は発光ダイオードである」「LED光源」との特定事項について
a 甲14発明の「青色LED1からの発光色が白色となって観測でき」る「面状光源」は、本件発明2の「白色光を発光するLED光源」に相当する。
b しかし、本件発明2の「発光ダイオード」は面状光源を含まないと解される(上記3(1)イ)から、甲14発明の「青色LED1からの発光色が白色となって観測でき」る「面状光源」は、本件発明2の「発光ダイオード」に相当しない。
c したがって、甲14発明は、本件発明2の「白色系を発光するLED光源であって、」「LED光源」との特定事項を備えるけれども、「前記LED光源は発光ダイオードである」との特定事項を備えない。

(イ)本件発明2の「該LED光源は、発光層がインジウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含み、」との特定事項について
a まず、本件発明2の「発光層がインジウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、」についてみる。
(a)本件発明2の「発光層がインジウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップ」と甲14発明の「発光波長480nm、発光出力1200μWを有する窒化ガリウム系化合物半導体よりなる青色LED」とは、「発光層が」「窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップ」である点で一致する。

(b)よって、甲14発明は、本件発明2でいう「発光層が」「窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップ」を備える。
しかし、甲14発明の「発光層」である「窒化ガリウム系化合物半導体」は、「インジウムを含」まない。

b 次に、本件発明2の「該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含み、」についてみる。
(a)甲14発明は、「前記青色発光ダイオード1の発光により励起されて蛍光を発する蛍光物質が具備されている」とともに、「散乱層3により散乱された光の一部は蛍光層5により吸収され同時に波長変換されて放射され、導光板2の第一の主面側から観測する発光色はこれらの光を合成した光が観測できるものであり、例えば橙色の蛍光顔料からなる蛍光層5を設けた面状光源では、先に述べた作用により、青色LED1からの発光色が白色となって観測でき」るものであるから、本件発明2でいう「該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する」「蛍光体」を備える。

(b)しかし、甲14発明の「蛍光体」は、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」ではない。

c 上記a及びbによれば、甲14発明は、本件発明2でいう「該LED光源は、発光層が」「窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、」「蛍光体とを含」むものであるけれども、甲14発明の「発光層」である「窒化ガリウム系化合物半導体」は、「インジウムを含」まず、甲14発明の「蛍光体」は、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」ではない。

イ 一致点及び相違点の認定
上記アによれば、本件発明2と甲14発明とは、
「白色系を発光するLED光源であって、
該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、蛍光体とを含む、
LED光源。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点3-1]「発光層」である「窒化ガリウム系化合物半導体」が、本件発明2では「インジウムを含む」ものであるのに対し、甲14発明ではそうではない点。

[相違点3-2]「蛍光体」が、本件発明2では「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」であるのに対し、甲14発明ではそうではない点。

[相違点3-3]「LED光源」について、本件発明2は、「発光ダイオード」であるのに対し、甲14発明は、面状光源である点。

ウ 相違点3-1の判断
青色発光ダイオードの発光層である窒化ガリウム系化合物半導体として、インジウムを含むものは、本件優先日前に技術常識であったと認められる(甲8?甲11)。
そうすると、甲14発明の「青色発光ダイオード」ないし「青色LED」として、そのような発光層を備えたものを用いることは、当業者が適宜なし得たことである。

エ 相違点3-2の判断
相違点3-2は、無効理由3-1の相違点1-3と実質的に同じである。よって、上記3(2)ウ(エ)の判断と同じ理由で、当業者が、甲14発明から出発して、相違点3-2の構成に容易に至ることはない。

オ 相違点3-3の判断
甲14発明の技術的意義は、白色発光、あるいはモノクロの光源として、青色LEDチップの周囲を蛍光物質を含む樹脂で包囲して色変換する試みでは、チップ周辺が太陽光よりも強い放射強度の光線にさらされるため、蛍光物質の劣化が問題となるという課題(【0004】)をも解決するために、「導光板2の主面側には、透明なフィルム6が設けられており、そのフィルム6の表面あるいは内部には前記青色発光ダイオード1の発光により励起されて蛍光を発する蛍光物質が具備されている」ようにしたので、LEDチップと蛍光物質とが直接接することがなく、よって、蛍光物質の劣化が少なく、長期間に渡って面状光源の色調変化を起こすことがない(【0019】)ものであると認められる。
しかるところ、甲14発明の「LED光源」を、本件発明2の「発光ダイオード」、すなわち、蛍光体が発光素子に近接して設けられたものとすることは、甲14発明の上記課題を解決できないことに帰する。
よって、当業者が、甲14発明から出発して、相違点3-3の構成に至ることは、阻害されるというべきである。

カ 本件発明2についての小括
以上のとおりであるから、本件発明2は、甲14に記載された発明及び甲1?甲12・甲15?甲22・甲24に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)無効理由3-2についての小括
よって、無効理由3-2は、理由がない。

第7 むすび
以上のとおり、請求人が主張する無効理由によっては、本件特許の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
発光装置と表示装置
【技術分野】
【0001】
本願発明は、LEDディスプレイ、バックライト光源、信号機、照光式スイッチ及び各種インジケータなどに利用される発光ダイオードに関し、特に発光素子が発生する光の波長を変換して発光するフォトルミネセンス蛍光体を備えた発光
装置及びそれを用いた表示装置に関する。
【0002】
発光ダイオードは、小型で、効率が良く鮮やかな色の光の発光が可能で、半導体素子であるため、球切れの心配がなく、初期駆動特性及び耐震性に優れ、さらにON/OFF点灯の繰り返しに強いという特長を有する。そのため、各種インジケータや種々の光源として広く利用されている。また、最近では、超高輝度、高効率なRGB(赤、緑、青色)の発光ダイオードがそれぞれ開発され、これらの発光ダイオードを用いた大画面のLEDディスプレーが使用されるようになった。このLEDディスプレーは、少ない電力で動作させることができ、軽量でしかも長寿命であるという優れた特性を有し、今後益々使用されるものと期待される。
【0003】
さらに、最近では、発光ダイオードを用いて、白色発光光源を構成する試みが種々なされている。発光ダイオードを用いて白色光を得るためには、発光ダイオードが単色性ピーク波長を有するので、例えば、R、G、Bの3つの発光素子を近接して設けて発光させて拡散混色する必要がある。このような構成によって白色光を発生させようとした場合、発光素子の色調や輝度等のバラツキにより所望の白色を発生させることができないという問題点があった。また、発光素子がそれぞれ異なる材料を用いて形成されている場合、各発光素子の駆動電力などが異なり個々に所定の電圧を印加する必要があり、駆動回路が複雑になるという問題点があった。さらに、発光素子が半導体発光素子であるため、個々に温度特性や経時変化が異なり、色調が使用環境によって変化したり、各発光素子によって発生される光を均一に混色させる事ができずに色むらを生ずる場合がある等の多くの問題点を抱えていた。すなわち、発光ダイオードは、個々の色を発光させる発光装置としては有効であったが、発光素子を用いて白色光を発生させることができる満足な光源は得られていなかった。
【0004】
そこで、本出願人は先に発光素子によって発生された光が、蛍光体で色変換されて出力される発光ダイオードを、特開平5-152609号公報、特開平7-99345号公報、特開平7-176794号公報、特開平8-8614号公報などにおいて発表した。これらに開示された発光ダイオードは、1種類の発光素子を用いて白色系など他の発光色を発光させることができるというものであり、以下のように構成される。
【0005】
上記公報に開示された発光ダイオードは、具体的には、発光層のエネルギーバンドギャッブが大きい発光素子をリードフレームの先端に設けられたカップ上に配置し、発光素子を被覆する樹脂モールド部材中に発光素子からの光を吸収して、吸収した光と波長の異なる光を発光する(波長変換)蛍光体を含有させて構成する。
【0006】
上述の開示された発光ダイオードにおいて、発光素子として、青色系の発光が可能な発光素子を用いて、該発光素子をその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体を含有した樹脂によってモールドすることにより、混色により白色系の光が発光可能な発光ダイオードを作製することができる。
【0007】
しかしながら、従来の発光ダイオードは、蛍光体の劣化によって色調がずれたり、あるいは蛍光体が黒ずみ光の外部取り出し効率が低下する場合があるという問題点があった。
ここで、黒ずむというのは、例えば、(Cd,Zn)S蛍光体等の無機系の蛍光体を用いた場合には、この蛍光体を構成する金属元素の一部が析出したり変質したりして着色することであり、また、有機系の蛍光体材料を用いた場合には、2重結合が切れる等により着色することをいう。特に、発光素子である高エネルギーバンドギャッブを有する半導体を用い、蛍光体の変換効率を向上させた場合(すなわち、半導体によって発光される光のエネルギーが高くなり、蛍光体が吸収することができるしきい値以上の光が増加し、より多くの光が吸収されるようになる。)、又は蛍光体の使用量を減らした場合(すなわち、相対的に蛍光体に照射されるエネルギー量が多くなる。)等においては、蛍光体が吸収する光のエネルギーが必然的に高くなるので、蛍光体の劣化が著しい。また、発光素子の発光強度を更に高め長期にわたって使用すると、蛍光体の劣化がさらに激しくなる。
【0008】
また、発光素子の近傍に設けられた蛍光体は、発光素子の温度上昇や外部環境(例えば、屋外で使用された場合の太陽光によるもの等)によって高温にもさらされ、この熱によって劣化する場合がある。
【0009】
さらに、蛍光体によっては、外部から侵入する水分や、製造時に内部に含まれた水分と、上記光及び熱とによって、劣化が促進されるものもある。
またさらに、イオン性の有機染料を使用すると、チップ近傍では直流電界により電気泳動を起こし、色調が変化する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本願発明は上記課題を解決し、より高輝度で、長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、この目的を達成するために、発光素子と蛍光体とを備えた発光装置において、
(1)発光素子としては、高輝度の発光が可能で、かつその発光特性が長期間の使用に対して安定していること、
(2)蛍光体としては、上述の高輝度の発光素子に近接して設けられて、該発光素子からの強い光にさらされて長期間使用した場合においても、特性変化の少ない耐光性及び耐熱性等に優れていること(特に発光素子周辺に近接して配置される蛍光体は、我々の検討によると太陽光に比較して約30倍?40倍に及ぶ強度を有する光にさらされるので、発光素子として高輝度のものを使用すれば使用する程、蛍光体に要求される耐光性は厳しくなる)、
(3)発光素子と蛍光体との関係としては、蛍光体が発光素子からのスペクトル幅をもった単色性ピーク波長の光を効率よく吸収すると共に効率よく異なる発光波長が発光可能であること、が必要であると考え、鋭意検討した結果、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明の発光装置は、白色系を発光する発光ダイオードであって、該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含むこと、を特徴とする発光ダイオードである。また、本発明の発光装置は、白色系を発光するLED光源であって、該LED光源は、発光層がインジウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含み、前記LED光源は発光ダイオードであることを特徴とするLED光源でもある。
【0013】
ここで、窒化物系化合物半導体(一般式IniGajAlkN、ただし、0≦i,0≦j,0≦k,i+j+k=1)としては、InGaNや各種不純物がドープされたGaNを始め、種々のものが含まれる。
【0014】
また、前記フォトルミネセンス蛍光体としては、Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce、Gd_(3)In_(5)O_(12):Ceを始め、上述のように定義される種々のものが含まれる。
この本願発明の発光装置は、高輝度の発光が可能な窒化物系化合物半導体からなる発光素子を用いているので、高輝度の発光をさせることができる。また、該発光装置において、使用している前記フォトルミネッセンス蛍光体は、長時間、強い光にさらされても蛍光特性の変化が少ない極めて耐光性に優れている。これによって、長時間の使用に対して特性劣化を少なくでき、発光素子からの強い光のみならず、野外使用時等における外来光(紫外線を含む太陽光等)による劣化も少なくでき、色ずれや輝度低下が極めて少ない発光装置を提供できる。また、この本願発明の発光装置は、使用している前記フォトルミネッセンス蛍光体が、短残光であるため、例えば、120nsecという比較的速い応答速度が要求される用途にも使用することができる。
【0015】
本発明の発光ダイオードにおいては、前記フォトルミネセンス蛍光体が、YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むことが好ましく、これによって、発光装置の輝度を高くできる。
【0016】
本発明の発光装置においては、前記フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いることができ(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。
)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体用いた場合と同様の優れた特性が得られる。
【0017】
また、本発明の発光装置では、発光特性(発光波長や発光強度等)の温度依存性を小さくするために、前記フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12)で表される蛍光体(ただし、0≦p≦0.8、0.003≦q≦0.2、0.0003≦r≦0.08、0≦s≦1)を用いることが好ましい。
【0018】
また、本発明の発光装置において、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれYとAlとを含んでなる互いに組成の異なる2以上の、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むようにしてもよい。これによって、発光素子の特性(発光波長)に対応して、フォトルミネッセンス蛍光体の発光スペクトルを調整して、所望の発光色の発光をさせることができる。
【0019】
さらに、本発明の発光装置では、発光装置の発光波長を所定の値に設定するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれ一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ce(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)で表され、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を含むことが好ましい。
【0020】
また、本発明の発光装置においては、発光波長を調整するために前記フォトルミネッセンス蛍光体は、一般式Y_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される第1の蛍光体と、一般式Re_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される第2の蛍光体とを含んでもよい。
但し、0≦s≦1、Reは、Y、Ga、Laから選択される少なくとも一種である。
また、本発明の発光装置においては、発光波長を調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、イットリウムの一部がガドリニウムに置換され、互いに置換量が異なる第1の蛍光体と第2の蛍光体とを含むようにしてもよい。
【0021】
さらに、本発明の発光装置において、前記発光素子の発光スペクトルの主ピークが400nmから530nmの範囲内に設定し、かつ前記フォトルミネッセンス蛍光体の主発光波長が前記発光素子の主ピークより長くなるように設定することが好ましい。これによって、白色系の光を効率よく発光させることができる。
【0022】
またさらに、前記発光素子において、該発光素子の発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体を含んでなり、前記フォトルミネセンス蛍光体が、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、Alの一部がGaによってGa:Al=1:1から4:6の範囲内の比率になるように置換されかつYの一部がGdによってY:Gd=4:1から2:3の範囲内の比率になるように置換されていることがさらに好ましい。このように調整されたフォトルミネセンス蛍光体の吸収スペクトルは、発光層としてInを含む窒化ガリウム系半導体を有する発光素子の発光する光の波長と非常によく一致し、変換効率(発光効率)を良くできる。また、該発光素子の青色光と該蛍光体の蛍光光との混色による光は、演色性のよい良質な白色となり、その点で極めて優れた発光装置を提供できる。
【0023】
本発明の1つの態様の発光装置は、その一側面に前記フォトルミネセンス蛍光体を介して前記発光素子が設けられ、かつその一主表面を除く表面が実質的に反射部材で覆われた略矩形の導光板を備え、前記発光素子が発光した光を前記フォトルミネセンス蛍光体と導光板とを介して面状にして、前記導光板の前記一主表面から出力することを特徴とする。
【0024】
本発明の別の態様の発光装置は、その一側面に前記発光素子が設けられ、
その一主表面に前記フォトルミネセンス蛍光体が設けられかつ該一主表面を除く表面が実質的に反射部材で覆われた略矩形の導光板を備え、前記発光素子が発光した光を導光板と前記フォトルミネセンス蛍光体とを介して面状にして、前記導光板の前記一主表面から出力することを特徴とする。
【0025】
また、本発明を用いたLED表示装置は、本発明の発光装置をマトリックス状に配置したLED表示器と、該LED表示器を入力される表示データに従って駆動する駆動回路とを備える。これによって、高精細表示が可能でかつ視認角度によって色むらの少ない、比較的安価なLED表示装置を提供できる。
【0026】
本発明の一態様の発光装置は、カップ部とリード部とを有するマウント・リードと、
前記マウント・リードのカップ内に載置されかつ一方の電極がマウント・リードに電気的に接続されたLEDチップと、
該LEDチップの他方の電極に電気的に接続させたインナー・リードと、
前記LEDチップを覆うように前記カップ内に充填された透光性のコーティング部材と、
前記マウント・リードのカップ部と、前記インナーリードと該LEDチップの他方の電極との接続部分とを含み、前記コーティング部材で覆われたLEDチップを被覆するモールド部材とを有する発光ダイオードであって、
前記LEDチップが窒化物系化合物半導体であり、かつ前記コーティング部材が、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体からなるフォトルミネッセンス蛍光体を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明の発光ダイオードにおいては、前記フォトルミネッセンス蛍光体が、YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むことが好ましく、
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)を用いても良い。
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12)で表される(ただし、0≦p≦0.8、0.003≦q≦0.2、0.0003≦r≦0.08、0≦s≦1)蛍光体を用いることもできる。
【0028】
本発明の発光ダイオードにおいては、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれYとAlとを含んでなる互いに組成の異なる2以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むようにすることが好ましい。
【0029】
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、それぞれ一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表され(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を用いてもよい。
【0030】
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式Y_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される第1の蛍光体と、一般式Re_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される第2の蛍光体とを用いてもよい。ここで、0≦s≦1、Reは、Y、Ga、Laから選択される少なくとも一種である。
【0031】
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、それぞれイットリウムの一部がガドリニウムに置換されてなり、互いに置換量が異なる第1の蛍光体と第2の蛍光体とを用いてもよい。
【0032】
また、一般的に蛍光体では、短波長の光を吸収して長波長の光を発光するものの方が、長波長の光を吸収して短波長の光を発光するものに比較して効率がよい。発光素子としては、樹脂(モールド部材やコーティング部材等)を劣化させる紫外光を発光するものより可視光を発光するものを用いる方が好ましい。従って、本発明の発光ダイオードにおいては、発光効率の向上及び長寿命化のために、前記発光素子の発光スペクトルの主ピークを、可視光のうちで比較的短波長の400nmから530nmの範囲内に設定し、かつ前記フォトルミネッセンス蛍光体の主発光波長を前記発光素子の主ピークより長く設定することが好ましい。また、このようにすることにより、蛍光体により変換された光は、発光素子が発光する光よりも長波長であるため、蛍光体等により反射された変換後の光が発光素子に照射されても、発光素子によって吸収されることはない(バンドギャップエネルギーより変換された光のエネルギーの方が小さいため)。このように、蛍光体等により反射された光は、発光素子を載置したカップにより反射され、さらに効率のよい発光が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る実施の形態のリードタイプの発光ダイオードの模式的断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のチップタイプの発光ダイオードの模式的断面図である。
【図3】(A)は実施形態1のセリウムで付活されたガーネット系蛍光体の励起スペクトルを示すグラフであり、(B)は実施形態1のセリウムで付活されたガーネット系蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施の形態1の発光ダイオードの発光スペクトルを示すグラフである。
【図5】(A)は実施形態2のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の励起スペクトルを示すグラフであり、(B)は実施形態2のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【図6】実施形態2の発光ダイオードの発光色を説明するための色度図であり、図中、A及びB点は発光素子が発光する光の発光色を示し、C点、D点は、それぞれ2種類のフォトルミネッセンス蛍光体からの発光色を示す。
【図7】本発明に係る別の実施形態の面状発光光源の模式的な断面図である。
【図8】図7とは異なる面状発光光源の模式的な断面図である。
【図9】図7及び図8とは異なる面状発光光源の模式的な断面図である。
【図10】本願発明の応用例である表示装置のブロック図10である。
【図11】図10の表示装置のLED表示器の平面図である。
【図12】本願発明の発光ダイオード及びRGBの4つの発光ダイオードを用いて一絵素を構成したLED表示器の平面図である。
【図13】(A)は、実施例1及び比較例1の発光ダイオードの寿命試験の結果を示すグラフであって、25℃における結果であり、(B)は、実施例1及び比較例1の発光ダイオードの寿命試験の結果を示すグラフであって、60℃,90%RHにおける結果である。
【図14】(A)は、実施例9及び比較例2の耐候性試験の結果を示すグラフであり、経過時間に対する輝度保持率を示し、(B)は、実施例9及び比較例2の耐候性試験の結果を示すグラフであり、試験前後の色調の変化を示す。
【図15】(A)は、実施例9及び比較例2の発光ダイオードの信頼性試験における輝度保持率と時間との関係を示すグラフであり、(B)は、実施例9及び比較例2の発光ダイオードの信頼性試験における色調と時間との関係を示したグラフである。
【図16】表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LEDとを組み合わせた発光ダイオードにより実現できる色再現範囲を示す色度図である。
【図17】表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LEDとを組み合わせた発光ダイオードにおける蛍光体の含有量を変化させたときの発光色の変化を示す色度図である。
【図18】(A)は、(Y_(0.6)Gd_(0.4))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される実施例2のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B)は、発光ピーク波長460nmを有する実施例2の発光素子の発光スペクトルを示し、(C)は、実施例2の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【図19】(A)は、(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される実施例5のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B)は、発光ピーク波長450nmを有する実施例5の発光素子の発光スペクトルを示し、(C)は、実施例5の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【図20】(A)は、Y_(3)A_(15)O_(12):Ceで表される実施例6のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B)は、発光ピーク波長450nmを有する実施例6の発光素子の発光スペクトルを示し、(C)は、実施例6の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【図21】(A)は、Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表される実施例7のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B(は、発光ピーク波長450nmを有する実施例7の発光素子の発光スペクトルを示し、(C)は、実施例7の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【図22】(A)は、(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される実施例11のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B)は、(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される実施例11のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(C)は、発光ピーク波長470nmを有する実施例11の発光素子の発光スペクトルを示す。
【図23】実施例11の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の説明をする。
図1の発光ダイオード100は、マウント・リード105とインナーリード106とを備えたリードタイプの発光ダイオードであって、マウント・リード105のカップ部105a上に発光素子102が設られ、カップ部105a内に、発光素子102を覆うように、所定のフォトルミネッセンス蛍光体を含むコーティング樹脂101が充填された後に、樹脂モールドされて構成される。ここで、発光素子102のn側電極及びp側電極はそれぞれ、マウント・リード105とインナーリード106とにワイヤー103を用いて接続される。
【0035】
以上のように構成された発光ダイオードにおいては、発光素子(LEDチップ)102によって発光された光(以下、LED光という。)の一部が、コーティング樹脂101に含まれたフォトルミネッセンス蛍光体を励起してLED光と異なる波長の蛍光を発生させて、フォトルミネッセンス蛍光体が発生する蛍光と、フォトルミネッセンス蛍光体の励起に寄与することなく出力されるLED光とが混色されて出力される。その結果、発光ダイオード100は、発光素子102が
発生するLED光とは波長の異なる光も出力する。
【0036】
また、図2に示すものはチップタイプの発光ダイオードであって、筺体204の凹部に発光素子(LEDチップ)202が設けられ、該凹部に所定のフォトルミネッセンス蛍光体を含むコーティング材が充填されてコーティング部201が形成されて構成される。ここで、発光素子202は、例えばAgを含有させたエポキシ樹脂等を用いて固定され、該発光素子202のn側電極とp側電極とをそれぞれ、筺体204に設けられた端子金属205に、導電性ワイヤー203を用いて接続される。 以上のように構成されたチップタイプの発光ダイオードにおいて、図1のリードタイプの発光ダイオードと同様に、フォトルミネッセンス蛍光体が発生する蛍光と、フォトルミネッセンス蛍光体に吸収されることなく伝搬されたLED光とが混色されて出力され、その結果、発光ダイオード200は、発光素子102が発生するLED光とは波長の異なる光も出力する。
【0037】
以上説明したフォトルミネセンス蛍光体を備えた発光ダイオードは、以下のような特徴を有する。
1.通常、発光素子(LED)から放出される光は、発光素子に電力を供給する電極を介して放出される。放出された光は、発光素子に形成された電極の陰となり、特定の発光パターンを有し、そのために全ての方向に均一に放出されない。しかしながら、蛍光体を備えた発光ダイオードは、蛍光体により発光素子からの光を散乱させて光を放出するので、不要な発光パターンを形成することなく、広い範囲に均一に光を放出することができる。
2.発光素子(LED)からの光は、単色性ピークを有するといっても、ある程度のスペクトル幅をもつので演色性が高い。このことは、比較的広い範囲の波長を必要とする光源として使用する場合には欠かせない長所になる。例えば、スキャナーの光源等に用いる場合は、スペクトル幅が広いほうが好ましい。
【0038】
以下に説明する実施形態1,2の発光ダイオードは、図1又は図2に示す構造を有する発光ダイオードにおいて、可視光域における光エネルギーが比較的高い窒化物系化合物半導体を用いた発光素子と、特定のフォトルミネッセンス蛍光体とを組み合わせたことを特徴とし、これによって、高輝度の発光を可能にし、長時間の使用に対して発光効率の低下や色ずれが少ないという良好な特性を有する。
【0039】
一般的に蛍光体においては、短い波長の光を吸収して長い波長の光を放出する蛍光体の方が、長い波長の光を吸収して短い光を放出する蛍光体に比較して変換効率が優れているので、本発明の発光ダイオードにおいては、短い波長の青色系の発光が可能な窒化ガリウム系半導体発光素子(発光素子)を用いることが好ましい。また、高い輝度の発光素子を用いることが好ましいことは言うまでもない。
【0040】
このような窒化ガリウム系半導体発光素子と組み合わせて用いるのに適したフォトルミネセンス蛍光体としては、
1.発光素子102,202に近接して設けられ、太陽光の約30倍から40倍にもおよぶ強い光にさらされることになるので、強い強度の光の照射に対して長時間耐え得るように、耐光性に優れていること。
【0041】
2.発光素子102,202によって励起するために、発光素子の発光で効率よく発光すること。特に、混色を利用する場合、紫外線ではなく青色系発光で効率よく発光すること。
【0042】
3.青色系の光と混色されて白色になるように、緑色系から赤色系の光が発光可能なこと。
4.発光素子102,202に近接して設けられ、該チップを発光させる際の発熱による温度変化の影響を受けるので、温度特性が良好であること。
【0043】
5.色調が組成比あるいは複数の蛍光体の混合比を変化させることにより、連続的に変化させることができること。
6.発光ダイオードが使用される環境に応じた耐候性があること、
などの特性が要求される。
【0044】
実施の形態1.
本願発明に係る実施の形態1の発光ダイオードは、発光層に高エネルギーバンドギャッブを有し、青色系の発光が可能な窒化ガリウム系化合物半導体素子と、黄色系の発光が可能なフォトルミネセンス蛍光体である、セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体とを組み合わせたものである。これによって、この実施形態1の発光ダイオードにおいて、発光素子102,202からの青色系の発光と、その発光によって励起されたフォトルミネセンス蛍光体からの黄色系の発光光との混色により白色系の発光が可能になる。
【0045】
また、この実施形態1の発光ダイオードに用いた、セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体は耐光性及び耐候性を有するので、発光素子102,202から放出された可視光域における高エネルギー光を長時間その近傍で高輝度に照射した場合であっても発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少ない白色光が発光できる。
【0046】
以下、本実施形態1の発光ダイオードの各構成部材について詳述する。
(フォトルミネセンス蛍光体)
本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、半導体発光層から発光された可視光や紫外線で励起されて、励起した光と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体である。具体的にはフォトルミネセンス蛍光体として、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である。本発明では、該蛍光体として、YとAlを含みセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、又は、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ce(但し、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種)であらわされる蛍光体を用いることが好ましい。窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子が発光するLED光と、ボディーカラーが黄色であるフォトルミネセンス蛍光体が発光する蛍光光が補色関係にある場合、LED光と、蛍光光とを混色して出力することにより、全体として白色系の光を出力することができる。
【0047】
本実施形態1において、このフォトルミネセンス蛍光体は、上述したように、コーテイング樹脂101,コーテイング部201を形成する樹脂(詳細は後述する)に混合して使用されるので、窒化ガリウム系発光素子の発光波長に対応させて、樹脂などとの混合比率、若しくはカップ部105又は筺体204の凹部への充填量を種々調整することにより、発光ダイオードの色調を、白色を含め電球色など任意に設定できる。
【0048】
このフォトルミネセンス蛍光体の含有分布は、混色性や耐久性にも影響する。例えば、フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くした場合は、外部環境からの水分などの影響をより受けにくくでき、水分による劣化を防止することができる。他方、フォトルミネセンス蛍光体を、発光素子からモールド部材等の表面側に向かって分布濃度が高くなるように分布させると、外部環境からの水分の影響を受けやすいが発光素子からの発熱、照射強度などの影響をより少なくでき、フォトルミネセンス蛍光体の劣化を抑制することができる。このような、フォトルミネセンス蛍光体の分布は、フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材、形成温度、粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状、粒度分布などを調整することによって種々の分布を実現することができ、発光ダイオードの使用条件などを考慮して分布状態が設定される。
【0049】
実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は、発光素子102,202と接したり、あるいは近接して配置され、照射強度(Ee)として、3W・cm^(-2)以上10W・cm^(-2)以下においても高効率でかつ十分な耐光性を有するので、該蛍光体を用いることにより、優れた発光特性の発光ダイオードを構成することができる。
【0050】
また、実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は、ガーネット構造を有するので、熱、光及び水分に強く、図3(A)に示すように、励起スペクトルのピークを450nm付近にすることができる。また、発光ピークも図3(B)に示すように、580nm付近にあり700nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。また、実施形態1のフォトルミネッセンス蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、460nm以上の長波長域における励起発光効率を高くすることができる。Gdの含有量の増加により、発光ピーク波長が、長波長に移動し、全体の発光波長も長波長側にシフトする。すなわち、赤みの強い発光色が必要な場合、Gdによる置換量を多くすることで達成することができる。
一方、Gdが増加するするとともに、青色光によるフォトルミネッセンスの発光輝度は低下する傾向にある。
【0051】
特に、ガーネット構造を有するYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで、発光波長が、短波長側にシフトするまた組成のYの一部をGdで置換することにより、発光波長が長波長側にシフトする。
【0052】
表1に一般式(Y1-aGda)_(3)(Al1-bGab)_(5)O_(12):Ceで表されるYAG系蛍光体の組成とその発光特性を示す。
【0053】
【0054】
【表1】

表1に示した各特性は、460nmの青色光で励起して測定した。又表1における輝度と効率は一の材料を100として相対値で示している。
AlをGaによって置換する場合、発光効率と発光波長を考慮してGa:Al=1:1から4:6の間の比率に設定することが好ましい。同様に、Yの一部をGdで置換する場合は、Y:Gd=9:1?1:9の範囲の比率に設定することが好ましく、4:1?2:3の範囲に設定することがより好ましい。Gdの置換量が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなるからであり、Gdの置換量が6割以上になると、赤み成分を増やすことができるが、輝度が急激に低下する。特に、発光素子の発光波長によるがYAG系蛍光体中のYとGdとの比率を、Y:Gd=4:1?2:3の範囲に設定することにより、1種類のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いて黒体放射軌跡にほぼ沿った白色光の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。また、YAG系蛍光体中のYとGdとの比率を、Y:Gd=2:3?1:4の範囲に設定すると、輝度は低いが電球色の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。
尚、Ceの含有量(置換量)は、0.003?0.2の範囲に設定することにより、発光ダイオードの相対発光光度を70%以上にできる。含有量が0.003未満では、Ceによるフォトルミネッセンスの励起発光中心の数が減少することにより光度が低下し、逆に0.2より大きくなると濃度消光が生じる。
【0055】
以上のように、組成のAlの一部をGaで置換することにより発光波長を短波長にシフトさせることができ、また、組成のYの一部をGdで置換することで、発光波長を長波長へシフトさせることができる。このように組成を変化することで発光色を連続的に調節することが可能である。また、波長が254nmや365nmであるHg輝線ではほとんど励起されず450nm付近の青色系発光素子からのLED光による励起効率が高い。さらに、ピーク波長がGdの組成比で連続的に変えられるなど窒化物半導体発光素子の青色系発光を白色系発光に変換するための理想条件を備えている。
【0056】
また、実施形態1では、窒化ガリウム系半導体を用いた発光素子と、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット蛍光体(YAG)に希土類元素のサマリウム(Sm)を含有させたフォトルミネセンス蛍光体とを組み合わせることにより、発光ダイオードの発光効率をさらに向上させることができる。
【0057】
このようなフォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ce、Sm、Al及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを所定の化学量論比で十分に混合して混合原料を作製し、作製された混合原料に、フラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350?1450℃の温度範囲で2?5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でポールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことにより作製できる。
【0058】
上述の作製方法において、混合原料は、Y、Gd、Ce、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合することにより作製してもよい。
【0059】
一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)_(3)Al_(5)O_(12)で表すことができるフォトルミネセンス蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、特に460nm以上の長波長域の励起発光効率を高くすることができる。また、ガドリニウムの含有量を増加させることにより、発光ピーク波長を、530nmから570nmまで長波長に移動させ、全体の発光波長も長波長側にシフトさせることができる。赤みの強い発光色が必要な場合、Gdの置換量を多くすることで達成できる。一方、Gdが増加すると共に、青色光によるフォトルミネセンスの発光輝度は徐々に低下する。したがって、pは0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましい。さらに好ましくは0.6以下である。
【0060】
また、一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)_(3)Al_(5)O_(12)で表されるSmを含むフォトルミネセンス蛍光体は、Gdの含有量を増加させても温度特性の低下を少なくできる。
すなわち、Smを含有させることにより、高温度におけるフォトルミネセンス蛍光体の発光輝度の劣化は大幅に改善される。その改善される程度はGdの含有量が多くなるほど、大きくなる。特に、Gdの含有量を増加させてフォトルミネセンスの発光の色調に赤みを付与した組成の蛍光体は、温度特性が悪くなるので、Smを含有させて温度特性を改善することが有効である。なお、ここで言う温度特性とは、450nmの青色光による常温(25℃)における励起発光輝度に対する、同蛍光体の高温(200℃)における発光輝度の相対値のことである。
【0061】
Smの含有量rは0.0003≦r≦0.08の範囲であることが好ましく、これによって温度特性を60%以上にすることができる。この範囲よりrが小さいと、温度特性の改良効果が小さくなる。また、この範囲よりrが大きくなると温度特性は逆に低下してくる。また、Smの含有量rは0.0007≦r≦0.02の範囲であることがさらに好ましく、これによって温度特性は80%以上にできる。
【0062】
Ceの含有量qは、0.003≦q≦0.2の範囲であることが好ましく、これによって、相対発光輝度が70%以上にできる。ここで、相対発光輝度とは、q=0.03の蛍光体の発光輝度を100パーセントとした場合における発光輝度のことをいう。
【0063】
Ceの含有量qが0.003以下では、Ceによるフォトルミネセンスの励起発光中心の数が減少するために輝度が低下し、逆に、0.2より大きくなると濃度消光が生ずる。
ここで、濃度消光とは、蛍光体の輝度を高めるために付活剤の濃度を増加していくとある最適値以上の濃度では発光強度が低下することである。
【0064】
本願発明の発光ダイオードにおいては、Al、Ga、Y及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上の(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)_(3)Al_(5)O_(12)フォトルミネセンス蛍光体を混合して用いてもよい。これによって、蛍光発光中のRGBの波長成分を増やすことができ、これに、例えばカラーフィルターを用いることによりフルカラー液晶表示装置用としても利用できる。
【0065】
(発光素子102、202)
発光素子は、図1及び図2に示すように、モールド部材に埋設されることが好ましい。
本願発明の発光ダイオードに用いられる発光素子は、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体を効率良く励起できる窒化ガリウム系化合物半導体である。窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子102,202は、MOCVD法等により基板上にInGaN等の窒化ガリウム系半導体を発光層として形成することにより作製される。発光素子の構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合などを有するホモ構造ヘテロ構造あるいはダブルヘテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる程度に薄く形成した単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。特に、本願発明においては、発光素子の活性層をInGaNの単一量子井戸構造とすることにより、フォトルミネセンス蛍光体の劣化がなく、より高輝度に発光する発光ダイオードとして利用することができる。
【0066】
窒化ガリウム系化合物半導体を使用した場合、半導体基板にはサファイヤ、スピネル、SiC、Si、ZnO等の材料が用いることができるが、結晶性の良い窒化ガリウムを形成させるためにはサファイヤ基板を用いることが好ましい。このサファイヤ基坂上にGaN、AlN等のバッファー層を介してPN接合を形成するように窒化ガリウム半導体層を形成する。窒化ガリウム系半導体は、不純物をドーブしない状態でN型導電性を示すが、発光効率を向上させるなど所望の特性(キャリヤ濃度等)のN型窒化ガリウム半導体を形成するためには、N型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜ドープすることが好ましい。一方、p型窒化ガリウム半導体を形成する場合は、p型ドーパンドであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープする。尚、窒化ガリウム系化合物半導体は、p型ドーパントをドーブしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱、低速電子線照射やプラズマ照射等によりp型化させることが好ましい。エッチングなどによりp型及びN型の窒化ガリウム半導体の表面を露出させた後、各半導体層上にスバッタリング法や真空蒸着法などを用いて所望の形状の各電極を形成する。
【0067】
次に、以上のようにして形成された半導体ウエハー等を、ダイシングソーにより直接フルカットする方法、又は刃先幅よりも広い幅の溝を切り込んだ後(ハーフカット)、外力によって半導体ウエハーを割る方法、あるいは、先端のダイヤモンド針が往復直線運動するスクライバーにより半導体ウエハーに極めて細いスクライブライン(経線)を例えば碁盤目状に引いた後、外力によってウエハーを割る方法等を用いて、半導体ウエハーをチップ状にカットする。このようにして窒化ガリウム系化合物半導体からなる発光素子を形成することができる。
【0068】
本実施形態1の発光ダイオードにおいて白色系を発光させる場合は、フォトルミネセンス蛍光体との補色関係や樹脂の劣化等を考慮して発光素子の発光波長は400nm以上530nm以下に設定することが好ましく、420nm以上490nm以下に設定することがより好ましい。発光素子とフォトルミネセンス蛍光体との効率をそれぞれより向上させるためには、450nm以上475nm以下に設定することがさらに好ましい。実施形態1の白色系発光ダイオードの発光スペクトルの一例を図4に示す。ここに例示した発光ダイオードは、図1に示すリードタイプのものであって、後述する実施例1の発光素子とフォトルミネッセンス蛍光体とを用いたものである。ここで、図4において、450nm付近にピークを持つ発光が発光素子からの発光であり、570nm付近にピークを持つ発光が発光素子によって励起されたフォトルミネセンスの発光である。
【0069】
また、表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LED(発光素子)とを組み合わせた白色系発光ダイオードで、実現できる色再現範囲を図16に示す。この白色系発光ダイオードの発光色は、青色LED起源の色度点と蛍光体起源の色度点とを結ぶ直線上のいずれかに位置するので、表1の1?7の蛍光体を使用することにより、色度図中央部の広範な白色領域(図16中斜線を付した部分)をすべてカバーすることができる。図17は、白色系発光ダイオードにおける蛍光体の含有量を変化させた時の発光色の変化を示したものである。ここで、蛍光体の含有量は、コーティング部に使用する樹脂に対する重量パーセントで示している。図17から明らかなように、蛍光体の量を増やせば蛍光体の発光色に近付き、減らすと青色LEDに近付く。
【0070】
なお、本願発明では、蛍光体を励起する光を発生する発光素子に加えて、蛍光体を励起しない発光素子を一緒に用いることもできる。具体的には、蛍光体を励起可能な窒化物系化合物半導体である発光素子に加えて、蛍光体を実質的に励起しない、発光層がガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐やインジウムアルミニウム燐などである発光素子を一緒に配置する。このようにすると、蛍光体を励起しない発光素子からの光は、蛍光体に吸収されることなく外部に放出される。これによって、紅白が発光可能な発光ダイオードとすることができる。
【0071】
以下、図1及び図2の発光ダイオードの他の構成要素について説明する。
(導電性ワイヤー103、203)
導電性ワイヤー103、203としては、発光素子102、202の電極とのオーミック性、機械的接続性、電気伝導性及び熱伝導性がよいものが求められる。熱伝導度としては0.01cal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上が好ましく、より好ましくは0.5cal/(s)(cm2)(℃/cm)以上である。また、作業性を考慮すると導電性ワイヤーの直径は、10μm以上、45μm以下であることが好ましい。特に、蛍光体が含有されたコーティング部とモールド部材とをそれぞれ同一材料を用いたとしても、どちらか一方に蛍光体が入ることによる熱膨張係数の違いにより、それらの界面においては、導電性ワイヤーは断線し易い。そのために導電性ワイヤーの直径は、25μm以上がより好ましく、発光面積や取り扱い易さの観点から35μm以下が好ましい。導電性ワイヤーの材質としては、金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金が挙げられる。
このような材質、形状からなる導電性ワイヤーを用いることにより、ワイヤーボンディング装置によって、各発光素子の電極と、インナー・リード及びマウント・リードとを容易に接続することができる。
【0072】
(マウント・リード105)
マウント・リード105は、カップ部105aとリード部105bとからなり、カップ部105aに、ダイボンディング装置で発光素子102を載置する十分な大きさがあれば良い。また、複数の発光素子をカップ内に設け、マウント・リードを発光素子の共通電極として利用する場合においては、異なる電極材料を用いる場合があるので、それぞれに十分な電気伝導性とボンディングワイヤー等との接続性が求められる。また、マウント・リード上のカップ内に発光素子を配置すると共に蛍光体をカップ内部に充填する場合は、蛍光体からの光が当方的に放出されたとしても、カップにより所望の方向に反射されるので、近接して配置させた別の発光ダイオードからの光による疑似点灯を防止することができる。ここで、擬似点灯とは、近接して配置された別の発光ダイオードに電力を供給していなくても発光しているように見える現象のことをいう。
【0073】
発光素子102とマウント・リード105のカップ部105aとの接着は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂やイミド樹脂等の熱硬化性樹脂などを用いて行うことができる。また、フェースダウン発光素子(基板側から発光を取り出すタイプであって、発光素子の電極をカップ部105aに対向させて取り付けるように構成されたもの)を用いる場合は、該発光素子をマウント・リードと接着させると共に電気的に導通させるために、Agペースト、カーボンペースト、金属バンプ等を用いることができる。さらに、発光ダイオードの光利用効率を向上させるために発光素子が配置されるマウント・リードのカップ部の表面を鏡面状とし、表面に反射機能を持たせても良い。この場合の表面粗さは、0.1S以上0.8S以下が好ましい。また、マウント・リードの具体的な電気抵抗としては300μΩ・cm以下が好ましく、より好ましくは、3μΩ・cm以下である。また、マウント・リード上に複数の発光素子を積置する場合は、発光素子からの発熱量が多くなるため熱伝導度がよいことが求められ、その熱伝導度は、0.01cal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上が好ましく、より好ましくは0.5cal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上である。これらの条件を満たす材料としては、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅、メタライズパターン付きセラミック等が挙げられる。
【0074】
(インナー・リード106)
インナー・リード106は、マウント・リード105上に配置された発光素子102の一方の電極に、導電性ワイヤー等で接続される。マウント・リード上に複数の発光素子を設けた発光ダイオードの場合は、インナーリード106を複数設け、各導電性ワイヤー同士が接触しないよう各インナーリードを配置する必要がある。例えば、マウント・リードから離れるに従って、各インナー・リードのワイヤーボンディングされる各端面の面積を順次大きくすることによって、導電性ワイヤー間の間隔を開けるようにボンディングし、導電性ワイヤー間の接触を防ぐことができる。インナーリードの導電性ワイヤーとの接続端面の粗さは、密着性を考慮して1.6S以上1OS以下に設定することが好ましい。
【0075】
インナー・リードは、所望の形状になるように型枠を用いた打ち抜き加工等を用いて形成することができる。さらには、インナー・リードを打ち抜き形成後、端面方向から加圧することにより所望の端面の面積と端面高さを調整するようにしても良い。
【0076】
また、インナー・リードは、導電性ワイヤーであるボンディングワイヤー等との接続性及び電気伝導性が良いことが求められる。具体的な電気抵抗としては、300μΩ・cm以下であることが好ましく、より好ましくは3μΩ・cm以下である。これらの条件を満たす材料としては、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅及び銅、金、銀をメッキしたアルミニウム、鉄、銅等が挙げられる。
【0077】
(コーティング部101)
コーティング部101は、モールド部材104とは別にマウント・リードのカップに設けられるものであり、本実施の形態1では、発光素子の発光を変換するフォトルミネセンス蛍光体が含有されるものである。コーティング部の具体的材料としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーンなどの耐侯性に優れた透明樹脂や硝子などが適する。また、フォトルミネセンス蛍光体と共に拡散剤を含有させても良い。具体的な拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等を用いることが好ましい。
さらに、蛍光体をスパッタリングにより形成する場合、コーティング部を省略することもできる。この場合、膜厚を調整したり蛍光体層に開口部を設けることで混色表示が可能な発光ダイオードとすることができる。
【0078】
(モールド部材104)
モールド部材104は、発光素子102、導電性ワイヤー103、フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部101などを外部から保護する機能を有する。本実施形態1では、モールド部材104にさらに拡散剤を含有させることが好ましく、これによって発光素子102からの指向性を緩和させることができ、視野角を増やすことができる。また、モールド部材104は、発光ダイオードにおいて、発光素子からの発光を集束させたり拡散させたりするレンズ機能を有する。従って、モールド部材104は、通常、凸レンズ形状、凹レンズ形状さらには、発光観測面から見て楕円形状やそれらを複数組み合わせた形状に形成される。また、モールド部材104は、それぞれ異なる材料を複数積層した構造にしてもよい。モールド部材104の具体的材料としては、主としてエポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂などの耐候性に優れた透明樹脂や硝子などが好適に用いられる。また、拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等を用いることができる。さらに、本願発明では、拡散剤に加えてモールド部材中にフォトルミネセンス蛍光体を含有させてもよい。すなわち、本願発明では、フォトルミネセンス蛍光体をコーティング部に含有させても良いし、モールド部材中に含有させてもよい。モールド部材にフォトルミネセンス蛍光体を含有させることにより、視野角をさらに大きくすることができる。また、コーティング部とモールド部材の双方に含有させてもよい。またさらに、コーティング部をフォトルミネセンス蛍光体が含有された樹脂とし、モールド部材を、コーティング部と異なる部材である硝子を用いて形成しても良く、このようにすることにより、水分などの影響が少ない発光ダイオードを生産性良く製造できる。また、用途によっては、屈折率を合わせるために、モールド部材とコーティング部とを同じ部材を用いて形成してもよい。本願発明においてモールド部材に拡散剤や着色剤を含有させることによって、発光観測面側から見た蛍光体の着色を隠すことができると共により混色性を向上させることができる。すなわち、蛍光体は強い外光のうち青色成分を吸収し発光し、黄色に着色しているように見える。しかしながら、モールド部材に含有された拡散剤はモールド部材を乳白色にし、着色剤は所望の色に着色する。これによって、発光観測面から蛍光体の色が観測されることはない。さらに、発光素子の主発光波長が430nm以上では、光安定化剤である紫外線吸収剤を含有させることがより好ましい。
【0079】
発明の実施2.
本発明に係る実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子として発光層に高エネルギーバンドギャップを有する窒化ガリウム系半導体を備えた素子を用い、フォトルミネセンス蛍光体として、互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体、好ましくはセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含む蛍光体を用いる。これにより実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子によって発光されるLED光の発光波長が、製造バラツキ等により所望値からずれた場合でも、2種類以上の蛍光体の含有量を調節することによって所望の色調を持った発光ダイオードを作製できる。
この場合、発光波長が比較的短い発光素子に対しては、発光波長が比較的短い蛍光体を用い、発光波長が比較的長い発光素子には発光波長が比較的長い蛍光体を用いることで発光ダイオードから出力される発光色を一定にすることができる。蛍光体に関して言うと、フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表されるセリウムで付活された蛍光体を用いることもできる。但し、0<r≦1、0≦s≦1、Reは、Y、Gd、Laから選択される少なくとも一種である。これにより発光素子から放出された可視光域における高エネルギーを有する光が長時間高輝度に照射された場合や種々の外部環境の使用下においても蛍光体の変質を少なくできるので、発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少なく、かつ高輝度の所望の発光成分を有する発光ダイオードを構成できる。
【0080】
(実施の形態2のフォトルミネセンス蛍光体)
実施の形態2の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体について詳細に説明する。実施の形態2においては、上述したように、フォトルミネセンス蛍光体として組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたフォトルミネセンス蛍光体を使用した以外は、実施の形態1と同様に構成され、蛍光体の使用方法は実施の形態と同様である。
【0081】
また、実施形態1と同様に、フォトルミネセンス蛍光体の分布を種々変える(発光素子から離れるに従い濃度勾配をつける等)ことによって耐候性の強い特性を発光ダイオードに持たせることができる。このような分布はフォトルミネセンス蛍光体を含有する部材、形成温度、粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状、粒度分布などを調整することによって種々調整することができる。
したがって、実施形態2では、使用条件などに対応させて、蛍光体の分布濃度が設定される。また、実施の形態2では、2種類以上の蛍光体をそれぞれ発光素子から出力される光に対応して配置を工夫(例えば、発光素子に近い方から順番に配置する等)することによって発光効率を高くすることができる。
【0082】
以上のように構成された実施形態2の発光ダイオードは、実施形態1と同様、照度強度として(Ee)=3W・cm^(-2)以上10W・cm^(-2)以下の比較的高出力の発光素子と接する或いは近接して配置された場合においても高効率でかつ十分な耐光性を有する発光ダイオードを構成できる。
【0083】
実施形態2に用いられるセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)は、実施形態1と同様、ガーネット構造を有するので、熱、光及び水分に強い。また、実施形態2のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、図5(A)の実線に示すように励起スペクトルのピークを450nm付近に設定でき、かつ発光スペクトルの発光ピークを図5(B)の実線に示すように510nm付近に設定でき、しかも発光スペクトルを700nmまで裾を引くようにブロードにできる。
これによって、緑色系の発光をさせることができる。また、実施形態2の別のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、励起スペクトルのピークを図5Aの破線に示すように450nm付近にでき、かつ発光スペクトルの発光ピークを図5(B)の破線に示すように600nm付近に設定でき、しかも発光スペクトルを750nmまで裾を引くブロードにできる。これによって、赤色系の発光が可能となる。
ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで発光波長が短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、発光波長が長波長側へシフトする。AlのGaへの置換は、発光効率と発光波長を考慮してGa:Al=1:1から4:6が好ましい。同様に、Yの一部をGd及び/又はLaで置換することは、Y:Gd及び/又はLa=9:1から1:9であり、より好ましくは、Y:Gd及び/又はLa=4:1から2:3である。置換が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなる。また、6割以上では、赤み成分が増えるものの輝度が急激に低下する。
【0084】
このようなフォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ce、La、Al、Sm及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は、Y、Gd、Ce、La、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350?1450℃の温度範囲で2?5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことで得ることができる。 本実施形態2において、組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、混合して用いても良いし、それぞれ独立して配置(例えば、積層)して用いても良い。2種類以上の蛍光体を混合して用いた場合、比較的簡単に量産性よく色変換部を形成することができ、2種類以上の蛍光体を独立して配置した場合は、所望の色になるまで重ね合わせることにより、形成後に色調整をすることができる。また、蛍光体をそれぞれ独立して配置して用いる場合、LED素子に近いほうに、光をより短波長側で吸収発光しやすい蛍光体を設け、LEDより離れた所に、それよりも長波長側で吸収発光しやすい蛍光体を配置することが好ましい。これによって効率よく吸収及び発光させることができる。
【0085】
以上のように本実施形態2の発光ダイオードは、蛍光物質として、組成の異なる2種類以上のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いている。これによって、所望の発光色が効率よく発光可能な発光ダイオードを構成することができる。即ち、半導体発光素子が発光する光の発光波長が、図6に示す色度図のA点からB点に至る線上に位置する場合、組成の異なる2種類以上のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の色度点(C点及びD点)である図6のA点,B点,C点及びD点で囲まれた斜線内にある任意の発光色を発光させることができる。実施形態2では、LED素子、蛍光体の組成若しくはその量を種々選択することによって調節することができる。特に、LED素子の発光波長に対応して、所定の蛍光体を選択することによりLED素子の発光波長のバラツキを補償することにより、発光波長のバラツキが少ない発光ダイオードを構成することができる。また、蛍光物質の発光波長を選択することにより、RGBの発光成分を高輝度に含んだ発光ダイオードを構成することができる。
【0086】
さらに、実施形態2に用いるイットリウム・アルミニウム・ガーネット系(YAG系)蛍光体は、ガーネット構造を有するので、実施形態2の発光ダイオードは、長時間高輝度に発光させることができる。また、実施形態1及び2の発光ダイオードは、発光観測面からみて蛍光体を介して発光素子を設ける。また、発光素子からの光よりもより長波長側に発光する蛍光物質を用いているので、効率よく発光させることができる。さらに、変換された光は発光素子から放出される光よりも長波長側になっているために、発光素子の窒化物半導体層のバンドギャップよりも小さく、該窒化物半導体層に吸収されにくい。従って、蛍光体が等方的に発光するために発光された光はLED素子にも向かうが、蛍光体によって発光された光はLED素子に吸収されることはないので、発光ダイオードの発光効率を低下させることはない。
【0087】
(面状発光光源)
本発明に係る別の実施形態である面状発光光源の例を図7に示す。
図7に示す面状発光光源では、実施形態1又は2で用いたフォトルミネセンス蛍光体が、コーティング部701に含有されている。これによって、窒化ガリウム系発光素子が発生する青色系の光を、コーティング部で色変換した後、導光板704及び散乱シート706を介して面状にして出力する。
【0088】
詳細に説明すると、図7の面状発光光源において、発光素子702は、絶縁層及び導電性パターン(図示せず)が形成されたコの字形状の金属基板703内に固定される。発光素子の電極と導電性パターンとを導通させた後、フォトルミネセンス蛍光体をエポキシ樹脂と混合して発光素子702が積載されたコの字型の金属基板703の内部に充填する。
こうして固定された発光素子702は、アクリル性の導光板704の一方の端面にエポキシ樹脂などで固定される。導光板704の一方の主面上の散乱シート706が形成されていない部分には、点状に発光する蛍現象防止のため白色散乱剤が含有されたフィルム状の反射部材707が形成される。
【0089】
同様に、導光板704の他方の主表面(裏面側)全面及びや発光素子が配置されていない他方の端面上にも反射部材705を設け発光効率を向上させるように構成する。これにより、例えば、LCDのバックライト用として十分な明るさを有する面状発光の発光ダイオードを構成することができる。
【0090】
この面状発光の発光ダイオードを用いた液晶表示装置は、例えば、導光板704の一方の主面上に、透光性導電性パターンが形成された硝子基板間(図示せず)に液晶が注入された液晶装置を介して偏光板を配し構成する。
【0091】
本発明に係る別の実施形態である面状の発光装置の例を、図8、図9とに示す。図8に示す発光装置は、発光ダイオード702によって発生された青色系の光を、フォトルミネセンス蛍光体が含有された色変換部材701を介して白色系の光に変換した後、導光板704によって面状にして出力するように構成されている。
【0092】
図9に示す発光装置は、発光素子702が発光する青色系の光を、導光板704によって面状にした後、導光板704の一方の主表面に形成された、フォトルミネッセンス蛍光体を有する散乱シート706によって白色光に変換して面状の白色光を出力するように構成されている。ここで、フォトルミネッセンス蛍光体は、散乱シート706に含有させても良いし、或いはバインダー樹脂と共に散乱シート706に塗布してシート状に形成してもよい。さらには、導光板704上にフォトルミネセンス蛍光体を含むバインダーを、シート状ではなく、ドット状に直接形成してもよい。
【0093】
<応用例>
(表示装置)
次に、本願発明に係る表示装置について説明する。図10は本願発明に係る表示装置の構成を示すブロック図である。該表示装置は、図10に示すように、LED表示器601と、ドライバー回路602、画像データ記憶手段603及び階調制御手段604を備えた駆動回路610とからなる。
ここで、LED表示器601は、図11に示すように、図1又は図2に示す白色系の発光ダイオード501が、筺体504にマトリクス状に配列され、白黒用のLED表示装置として使用される。ここで、筺体504には遮光部材505が一体で成形されている。
【0094】
駆動回路610は、図10に示すように、入力される表示データを一時的に記憶する画像データ記憶手段(RAM)603と、RAM603から読み出したデータに基づいてLED表示器601のそれぞれの発光ダイオードを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算して出力する階調制御手段604と、階調制御手段604から出力される信号によってスイッチングされて、発光ダイオードを点灯させるドライバー602とを備える。
階調制御回路604は、RAM603に記憶されるデータを取り出してLED表示器601の発光ダイオード点灯時間を演算して点滅させるパルス信号をLED表示器601に出力する。以上のように構成された表示装置において、LED表示器601は、駆動回路から入力されるパルス信号に基づいて表示データに対応した画像を表示することができ、以下のような利点がある。
【0095】
すなわち、RGBの3つの発光ダイオードを用いて白色系の表示をさせるLED表示器は、RGBの各発光ダイオードの発光出力を調節して表示させる必要があるため、各発光ダイオードの発光強度、温度特性などを考慮して各発光ダイオードを制御しなけれはならないので、該LED表示器を駆動する駆動回路は複雑になるという問題点があった。しかしながら、本願発明の表示装置においては、LED表示器601が、RGBの3種類の発光ダイオードを用いることなく、本願発明に係る白色系の発光が可能な発光ダイオード501を用いて構成されているので、駆動回路がRGBの各発光ダイオードを個別に制御する必要がなく、駆動回路の構成を簡単にでき、表示装置を安価にできる
【0096】
また、RGBの3つの発光ダイオードを用いて白色系の表示をさせるLED表示器は、1画素毎に、RGBの3つの発光ダイオードを組み合わせて白色表示させるためには、3つの各発光ダイオードをそれぞれ同時に発光させて混色する必要があり、一画素あたりの表示領域が大きくなり、高精細に表示させることができなかった。しかしながら、本願発明の表示装置におけるLED表示器は、1個の発光ダイオードで白色表示できるので、より高精細に白色系表示させることができる。さらに、3つの発光ダイオードの混色によって表示するLED表示器は、見る方向や角度によって、RGBの発光ダイオードのいずれかが部分的に遮光され表示色が変化する場合があるが、本願発明のLED表示器ではそのようなことはない。
【0097】
以上のように本願発明に係る白色系の発光が可能な発光ダイオードを用いたLED表示器を備えた表示装置は、より高精細化が可能であり、安定した白色系の表示ができ、さらに、色むらを少なくできる特長がある。また、本願発明に係る白色表示が可能なLED表示器は、従来の赤色、緑色のみを用いたLED表示器に比べ人間の目に対する刺激が少なく長時間の使用に適している。
【0098】
(本願発明の発光ダイオードを用いた他の表示装置の例)
本願発明の発光ダイオードを用いることにより、図12に示すように、RGBの3つの発光ダイオードに本願発明の発光ダイオードを加えたものを1絵素とするLED表示器を構成することができる。そして、このLED表示器と所定の駆動回路とを接続することにより種々の画像を表示することができる表示装置を構成できる。この表示装置における駆動回路は、モノクロームの表示装置と同様に、入力される表示データを一時的に記憶する画像データー記憶手段(RAM)と、RAMに記憶されたデータに基づいて各発光ダイオードを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路と、階調制御回路の出力信号でスイッチングされて、各発光ダイオードを点灯させるドライバーとを備える。ただし、この駆動回路は、RGBと白色系に発光する各発光ダイオードをそれぞれ制御する専用の回路を必要とする。階調制御回路は、RAMに記憶されるデータから、それぞれの発光ダイオードの点灯時間を演算して、点滅させるパルス信号を出力する。ここで、白色系の表示を行う場合は、RGB各発光ダイオードを点灯するパルス信号のパルス幅を短く、あるいは、パルス信号のピーク値を低く、あるいは全くパルス信号を出力しないようにする。他方、それを補償するように(すなわち、パルス信号のパルス幅を短く、あるいは、パルス信号のピーク値を低く、あるいは全くパルス信号を出力しない分を補うように)白色系発光ダイオードにパルス信号を供給する。これにより、LED表示器の白色を表示する。
【0099】
このように、RGBの発光ダイオードに白色発光ダイオードを追加することによって、ディスプレーの輝度を向上させることができる。また、RGBの組合せで白色を表示しようとすると、見る角度によってRGBのうちのいずれか1つ又はいずれか2つの色が強調され、純粋な白を表現することができないが、本表示装置のように白色の発光ダイオードを追加することにより、そのような問題を解決することができる。
【0100】
このような表示装置における駆動回路では、白色系発光ダイオードを所望の輝度で点灯させるためのパルス信号を演算する階調制御回路としてCPUを別途備えることが好ましい。階調制御回路から出力されるパルス信号は、白色系発光ダイオードのドライバーに入力されてドライバをスイッチングさせる。ドライバーがオンになると白色系発光ダイオードが点灯され、オフになると消灯される。
【0101】
(信号機)
本願発明の発光ダイオードを表示装置の1種である信号機として利用した場合、長時間安定して発光させることが可能であると共に発光ダイオードの一部が消灯しても色むらなどが生じないという特長がある。本願発明の発光ダイオードを用いた信号機の概略構成として、導電性パターンが形成された基坂上に白色系発光ダイオードを所定の配列に配置する。このような発光ダイオードを直列又は直並列に接続された発光ダイオードの回路を発光ダイオード群として扱う。発光ダイオード群を2つ以上用いそれぞれ渦巻き状に発光ダイオードを配置させる。全ての発光ダイオードが配置されると円状に全面に配置される。
各発光ダイオード及び基板から外部電力と接続させる電源コードをそれぞれ、ハンダにより接続した後、鉄道信号用の匡体内に固定する。LED表示器は、遮光部材が付いたアルミダイキャストの匡体内に配置され表面にシリコーンゴムの充填材で封止されている。匡体の表示面は、白色レンズを設けてある。また、LED表示器の電気的配線は、筺体の裏面から筺体を密閉するためにゴムパッキンを介して通し、筺体内を密閉する。このようにして白色系信号機を形成することができる。本願発明の発光ダイオードを、複数の群に分け中心部から外側に向け輪を描く渦巻き状などに配置し、並列接続することでより信頼性が高い信号機を構成することができる。この場合、中心部から外側に向け輪を描くことにより、信頼性が高い信号機を構成することができる。中心部から外側に向け輪を描くことには、連続的に輪を描くものも断続的に配置するものの双方を含む。したがって、LED表示器の表示面積などを考慮して、配置される発光ダイオードの数や発光ダイオード群の数を種々選択することができる。この信号機により、一方の発光ダイオード群や一部の発光ダイオードが何らかのトラブルにより消灯したとしても他方の発光ダイオード群や残った発光ダイオードにより信号機を円形状に均一に発光させることが可能となるり、色ずれが生ずることもない。渦巻き状に配置してあることから中心部を密に配置することができ電球発光の信号と何ら違和感なく駆動させることができる。
【実施例】
【0102】
<実施例>
以下、本願発明の実施例について説明するが、本願発明は、以下に示す実施例のみに限定されるものではないことを念のために言っておく。
(実施例1)
実施例1は、発光素子として、GaInN半導体を用いた発光ピークが450nm、半値幅30nmの発光素子を用いた例である。実施例1の発光素子は、洗浄されたサファイ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジウム)ガス、窒素ガス及びドーバントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜することにより作製される。成膜時に、ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成する。実施例1のLED素子は、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層と、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体層であるコンタクト層を備え、N型導電性を有するコンタクト層とP型導電性を有するクラッド層との間に厚さ約3nmの、単一量子井戸構造を構成するためのノンドープInGaNからなる活性層が形成されている。尚、サファイア基板上には、バッファ層として低温で窒化ガリウム半導体層が形成されている。また、P型窒化ガリウム半導体は、成膜後400℃以上の温度でアニールされている。
【0103】
エッチングによりP型及びN型の各半導体表面を露出させた後、スパッタリングによりn側p側の各電極がそれぞれ形成される。こうして作製された半導体ウエハーにスクライブラインを引いた後、外力を加えて個々の発光素子に分割した。
【0104】
以上のようにして作製された発光素子を、銀メッキした鋼製のマウント・リードのカップ部にエポキシ樹脂でダイボンディングした後、発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードとをそれぞれ直径が30μmの金線を用いてワイヤーボンディングして、リードタイプの発光ダイオードを作製した。
【0105】
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ceの希土類元素を所定の化学量論比で酸に溶解した溶解液を修酸で共沈させ、沈澱物を焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムを混合して、この混合原料にフラックスとしてフツ化アンモニウムを混合して坩堝に詰めて、空気中1400℃の温度で3時間焼成した後、その焼成品をボールミルを用いて湿式粉砕して、洗浄、分離、乾燥後、最後に篩を通すことにより作製した。その結果、フォトルミネセンス蛍光体は、YがGdで約2割置換されたイットリウム・アルミニウム酸化物として(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceが形成された。尚、Ceの置換は0.03であった。
【0106】
以上のようにして作製した(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ce蛍光体80重量部とエポキシ樹脂100重量部とをよく混合してスラリーとし、このスラリーを発光素子が載置されたマウント・リードのカップ内に注入した後、130℃の温度で1時間で硬化させた。こうして発光素子上に厚さ120μmのフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部を形成した。なお、本実施例1では、コーティング部においては、発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体が徐々に多く分布するように構成した。
【0107】
照射強度は、約3.5W/cm^(2)である。その後、さらに発光素子やフォトルミネセンス蛍光体を外部応力、水分及び塵芥などから保護する目的でモールド部材として透光性エポキシ樹脂を形成した。ここで、モールド部材は、砲弾型の型枠の中に、リードフレームにボンディングされ、フォトルミネセンス蛍光体を含んだコーティング部に覆われた発光素子を挿入して、透光性エポキシ樹脂を注入した後、150℃5時間にて硬化させて形成した。
【0108】
この要に形成した発光ダイオードは、発光観測正面から見ると、フォトルミネセンス蛍光体のボディーカラーにより中央部が黄色っぽく着色されていた。
こうして得られた白色系が発光可能な発光ダイオードの色度点、色温度、演色性指数を測定した結果、それぞれ、色度点は、(x=0.302、y=0.280)、色温度8080K、演色性指数(Ra)=87.5と三波長型蛍光灯に近い性能を示した。また、発光効率は9.51m/wと白色電球並であった。さらに、温度25℃60mA通電、温度25℃20mA通電、温度60℃90%RH下で20mA通電の各寿命試験においても蛍光体に起因する変化は観測されず通常の青色発光ダイオードと寿命特性に差がないことが確認できた。
【0109】
(比較例1)
フォトルミネセンス蛍光体を(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ce蛍光体から(ZnCd)S:Cu、Alとした以外は、実施例1と同様にして発光ダイオードの形成及び寿命試験を行った。形成された発光ダイオードは通電直後、実施例1と同様、白色系の発光が確認されたが輝度は低かった。また、寿命試験においては、約100時間で出力がゼロになった。劣化原因を解析した結果、蛍光体が黒化していた。
【0110】
これは、発光素子の発光光と蛍光体に付着していた水分あるいは外部環境から進入した水分により光分解し蛍光体結晶表面にコロイド状亜鉛金属を析出し外観が黒色に変色したものと考えられる。温度25℃20mA通電、温度60℃90%RH下で20mA通電の寿命試験結果を実施例1の結果と共に図13に示す。輝度は初期値を基準にしそれぞれの相対値を示す。図13において、実線が実施例1であり波線が比較例1を示す。
【0111】
(実施例2)
実施例2の発光ダイオードは、発光素子における窒化物系化合物半導体のInの含有量を実施例1の発光素子よりも増やすことにより、発光素子の発光ピークを460nmとし、フォトルミネセンス蛍光体のGdの含有量を実施例1よりも増やし(Y_(0.6)Gd_(0.4))_(3)Al_(5)O_(12):Ceとした以外は実施例1と同様にして発光ダイオードを作製した。
以上のようにして作製した発光ダイオードは、白色系の発光可能であり、その色度点、色温度、演色性指数を測定した。それぞれ、色度点(x=0.375、y=0.370)、色温度4400K、演色性指数(Ra)=86.0であった。
【0112】
図18(A?C)にそれぞれ、実施例2のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、この実施例2の発光ダイオードを100個作製し、初期の光度に対する1000時間発光させた後における光度を調べた。その結果、初期(寿命試験前)の光度を100%とした場合、1000時間経過後における平均光度は、平均して98.8%であり特性に差がないことが確認できた。
【0113】
(実施例3)
実施例3の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体としてY、Gd、Ceの希土類元素に加えSmを含有させた、一般式(Y_(0.39)Gd_(0.57)Ce_(0.03)Sm_(0.01))_(3)Al_(5)O_(12)蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様に作製した。この実施例3の発光ダイオードを100個作製し、130℃の高温下において評価した結果、実施例1の発光ダイオードと比較して平均温度特性が8%ほど良好であった。
【0114】
(実施例4)
実施例4のLED表示器は、実施例1の発光ダイオードが、図11に示すように銅パターンを形成したセラミックス基坂上に、16×16のマトリックス状に配列されて構成される。尚、実施例4のLED表示器では、発光ダイオードが配列された基板は、フェノール樹脂からなり遮光部材505が一体で形成された筺体504内部に配置され、発光ダイオードの先端部を除いて筺体、発光ダイオード、基板及び遮光部材の一部をピグメントにより黒色に着色したシリコンゴム506が充填される。また、基板と発光ダイオードとの接続は、自動ハンダ実装装置を用いてハンダ付けを行た。
【0115】
以上のように構成されたLED表示器を、入力される表示データを一時的に記憶するRAM及びRAMに記憶されるデータを取り出して発光ダイオードを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路と階調制御回路の出力信号でスイッチングされて発光ダイオードを点灯させるドライバーとを備えた駆動手段によって駆動することにより白黒LED表示装置として使用できることを確認した。
【0116】
(実施例5)
実施例5の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例5の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、色度点(平均値)は(x=0.450,y=0.420)であり、電球色の光を発光することができた。
【0117】
図19(A?C)にそれぞれ、実施例5のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、実施例5の発光ダイオードは、実施例1の発光ダイオードに比較して輝度が約40%低かったが、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
【0118】
(実施例6)
実施例6の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例6の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、実施例1に比較してやや黄緑色がかった白色の光を発光することができた。
図20(A?C)にそれぞれ、実施例6のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、実施例6の発光ダイオードは、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
【0119】
(実施例7)
実施例7の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例7の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、実施例7の発光ダイオードは、輝度は低いが緑色がかった白色の光を発光することができ、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
図21(A?C)にそれぞれ、実施例7のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
【0120】
(実施例8)
実施例8の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として、一般式Gd_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表されるYを含まない蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例8の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、実施例8の発光ダイオードは、輝度は低いが、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
【0121】
(実施例9)
実施例9の発光ダイオードは、図7に示す構成を有する面状発光の発光装置である。
発光素子として発光ピークが450nmのIn_(0.05)Ga_(0.95)N半導体を用いた。発光素子は、洗浄させたサファイヤ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジュウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜することにより形成した。ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成しPN接合を形成した。半導体発光素子としては、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層、N型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層を形成した。N型導電性を有するクラッド層とP型導電性を有するクラッド層との間にダブルヘテロ接合となるZnドープInGaNの活性層を形成した。なお、サファイア基板上には、低温で窒化ガリウム半導体を形成し、バッファ層として用いた。P型窒化物半導体層は、成膜後400℃以上の温度でアニールされている。
【0122】
各半導体層を成膜した後、エッチングによりPN各半導体表面を露出させた後、スパッタリングにより各電極をそれぞれ形成し、こうして出来上がった半導体ウエハーをスクライブラインを引いた後、外力により分割させ発光素子として発光素子を形成した。
銀メッキした銅製リードフレームの先端にカップを有するマウント・リードに発光素子をエポキシ樹脂でダイボンディングした。発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードと、をそれぞれ直径が30μmの金線でワイヤボンディングし電気的導通を取った。
【0123】
モールド部材は、砲弾型の型枠の中に発光素子が配置されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させ青色系発光ダイオードを形成させた。青色系発光ダイオードを端面が全て研磨されたアクリル性導光板の一端面に接続させた。アクリル板の片面及び側面は、白色反射部材としてチタン酸バリウムをアクリル系バインダー中に分散したものでスクリーン印刷及び硬化させた。
【0124】
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、緑色系及び赤色系をそれぞれ必要なY、Gd、Ce、Laの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400°Cの温度範囲で3時間焼成して焼成品を得た。焼成品をそれぞれ水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して形成した。
【0125】
以上のようにして作製された、一般式Y_(3)(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体120重量部と、同様にして作製された、一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体100重量部とを、エポキシ樹脂100重量部とよく混合してスラリーとし、このスラリーを厚さ0.5mmのアクリル層上にマルチコーターを用いて均等に塗布、乾燥し、厚さ約30μmの色変換部材として蛍光体膜を形成した。
蛍光体層を導光板の主発光面と同じ大きさに切断し導光板上に配置することにより面状の発光装置を作製した。以上のように作製した発光装置の色度点、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.29,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)は、92.0と三波長型蛍光灯に近い性能を示した。また、発光効率は12 lm/wと白色電球並であった。さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においても蛍光体に起因する変化は観測されなかった。
【0126】
(比較例2)
実施例9の一般式Y3(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体、及び一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体からなるフォトルミネセンス蛍光体に代えて、それぞれペリレン系誘導体である緑色有機蛍光顔料(シンロイヒ(SINLOIHI)化学製FA-001)と赤色有機蛍光顔料(シンロイヒ化学製FA-005)とを用いて同量で混合攪拌した以外は、実施例9と同様にして発光ダイオードを作製して実施例9と同様の耐侯試験を行った。作製した比較例1の発光ダイオードの色度点は、(x=0.34,y=0.35)であった。耐侯性試験として、カーボンアークで紫外線量を200hrで太陽光の1年分とほぼ同等とさせ時間と共に輝度の保持率及び色調を測定した。また、信頼性試験として発光素子を発光させ70℃一定における時間と共に発光輝度及び色調を測定した。この結果を実施例9と共に図14及び図15にそれぞれ示す。図14,15から明らかなように、いずれの試験においても、実施例9は、比較例2より劣化が少ない。
【0127】
(実施例10)
実施例10の発光ダイオードは、リードタイプの発光ダイオードである。
実施例10の発光ダイオードでは、実施例9と同様にして作製した450nmのIn_(0.05)Ga_(0.95)Nの発光層を有する発光素子を用いた。そして、銀メッキした銅製のマウントリードの先端のカップに発光素子をエポキシ樹脂でダイボンディングし、発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードとをそれぞれ金線でワイヤーボンディングし電気的に導通させた。
【0128】
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、一般式Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体と一般式(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体とをそれぞれ以下のようにして作製して混合して用いた。すなわち、必要なY、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400°Cの温度範囲で3時間焼成してそれぞれ焼成品を得た。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して所定の粒度の第1と第2の蛍光体を作製した。
【0129】
以上のようにして作製された第1の蛍光体及び第2の蛍光体それぞれ40重量部を、エポキシ樹脂100重量部に混合してスラリーとし、このスラリーを発光素子が配置されたマウント・リード上のカップ内に注入した。注入後、注入されたフォトルミネセンス蛍光体を含有する樹脂を130℃1時間で硬化させた。こうして発光素子上に厚さ120μのフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部材を形成した。なお、このコーティング部材は、発光素子に近いほどフォトルミネセンス蛍光体の量が徐々に多くなるように形成した。その後、さらに発光素子やフォトルミネセンス蛍光体を外部応力、水分及び塵芥などから保護する目的でモールド部材として透光性エポキシ樹脂を形成した。モールド部材は、砲弾型の型枠の中にフォトルミネセンス蛍光体のコーティング部が形成されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させて形成した。このようにして作製された実施例10の発光ダイオードは、発光観測正面から視認するとフォトルミネセンス蛍光体のボディーカラーにより中央部が黄色っぽく着色されていた。
【0130】
以上のように作製した実施例10の発光ダイオードの色度点、色温度、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.32,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)=89.0、発光効率は10lm/wであった。さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においてもフォトルミネセンス蛍光体に起因する変化は観測されず通常の青色系発光ダイオードと寿命特性に差がないことが確認できた。
【0131】
(実施例11)
LED素子として発光ピークが470nmのIn_(0.4)Ga_(0.6)N半導体を用いた。
発光素子は、洗浄させたサファイヤ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジュウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜させることにより形成した。ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成しPN接合を形成した。LED素子としては、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層を形成した。N型導電性を有するコンタクト層とP型導電性を有するクラッド層との間に厚さ約3nmのノンドープInGaNの活性層を形成することにより単一井戸構造とした。なお、サファイア基板上には、低温で窒化ガリウム半導体をバッファ層として形成した。
【0132】
以上のように各層を形成した後、エッチングによりPN各半導体表面を露出させ、スパッタリングによりp側及びn側の各電極を形成した。こうして出来上がった半導体ウエハーをスクライブラインを引いた後、外力により分割させ発光素子として発光素子を形成した。
【0133】
この発光素子を銀メッキした銅製のマウントリードのカップにエポキシ樹脂を用いてダイボンディングした。発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードと、をそれぞれ直径30μmの金線でワイヤーボンディングし電気的導通を取った。
【0134】
モールド部材は、砲弾型の型枠の中に発光素子が配置されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させ青色系発光ダイオードを形成した。青色系発光ダイオードを端面が全て研磨されたアクリル性導光板の一端面に接続した。アクリル板の片面及び側面は、白色反射部材としてチタン酸バリウムをアクリル系バインダー中に分散したものをスクリーン印刷及び硬化して膜状に形成した。
【0135】
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、一般式(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表され比較的短波長側の黄色系が発光可能な蛍光体と、一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表され比較的長波長側の黄色系が発光可能な蛍光体とを以下のようにして作製して混合して用いた。これらの蛍光体は、それぞれ必要なY、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400℃の温度範囲で3時間焼成して焼成品を得た。焼成品をそれぞれ水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して形成した。
【0136】
以上のように作製した比較的短波長側の黄色系蛍光体100重量部と比較的長波長側の黄色系蛍光体100重量部とを、アクリル樹脂1000重量部とよく混合して押し出し成形し、厚さ約180μmの色変換部材として用いる蛍光体膜を形成した。蛍光体膜を導光板の主発光面と同じ大きさに切断し導光板上に配置することにより発光装置を作製した。
このようにして作製した実施例11の発光装置の色度点、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.33,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)=88.0を示した。また、発光効率は10 lm/wであった。
【0137】
図22(A?C)にはそれぞれ、実施例11に使用した、式(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体、式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体及び発光素子の各発光スペクトルを示す。また、図23には、実施例11の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。 さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においても蛍光体に起因する変化は観測されなかった。同様に、この蛍光体の含有量を種々変えることによって発光素子からの波長が変化しても所望の色度点を維持させることができる。
【0138】
(実施例12)
実施例12の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)In_(5)O_(12):Ceで表されるAlを含まない蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして発光ダイオードを100個作製した。実施例9の発光ダイオードは、輝度は低いが寿命試験において実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
【0139】
以上説明したように、本発明に係る発光ダイオードは、所望の色を有する光を発光することができ、長時間高輝度の使用においても発光効率の劣化が少なくしかも耐候性に優れている。従って、一般的な電子機器に限られず、高い信頼性が要求される車載用、航空産業用、港内のブイ表示用及び高速道路の標識照明など屋外での表示や照明として新たな用途を開くことができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色系を発光する発光ダイオードであって、
該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、
ことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
白色系を発光するLED光源であって、
該LED光源は、発光層がインジウムを含む窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含み、前記LED光源は発光ダイオードである
ことを特徴とするLED光源。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-04-19 
結審通知日 2019-04-23 
審決日 2019-05-08 
出願番号 特願2012-189084(P2012-189084)
審決分類 P 1 113・ 537- YAA (H01L)
P 1 113・ 121- YAA (H01L)
P 1 113・ 851- YAA (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 吉美  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 森 竜介
山村 浩
登録日 2013-01-18 
登録番号 特許第5177317号(P5177317)
発明の名称 発光装置と表示装置  
代理人 上山 浩  
代理人 山尾 憲人  
代理人 玄番 佐奈恵  
代理人 山尾 憲人  
代理人 片山 健一  
代理人 牧野 知彦  
代理人 牧野 知彦  
代理人 田村 啓  
代理人 玄番 佐奈恵  
代理人 加治 梓子  
代理人 加治 梓子  
代理人 田村 啓  
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