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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する F16L
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する F16L
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する F16L
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する F16L
管理番号 1371041
審判番号 訂正2020-390069  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2020-08-07 
確定日 2020-12-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3752583号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3752583号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る特許第3752583号(以下「本件特許」という。)は、平成13年3月30日に出願されたものであって、平成17年12月22日にその特許権の設定登録がなされ、令和2年8月11日に本件訂正審判の請求がなされたものである。

第2 審判請求の趣旨
本件審判請求の趣旨は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を本件訂正審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正すること(以下「本件訂正」という。)を認める、との審決を求めるものである。

第3 訂正の内容
本件訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「対象物の外観形状に対応する形状に加工した柔軟性を有する合成樹脂シートからなる内層材と外層材」と記載されているのを、「配管、継手、弁、精密器具及び装置自体のいずれかを対象物とし、当該対象物の外観形状に対応する形状に加工した柔軟性を有する合成樹脂シートからなる内層材と外層材」に訂正し、また、特許請求の範囲の請求項1に「発熱体を取り付けた無機繊維製シート」と記載されているのを、「前記形状に合わせて加工した発熱体を取り付けた無機繊維製シート」に訂正し、更に、特許請求の範囲の請求項1に「断熱性を有する不燃難燃繊維製シート」と記載されているのを、「前記形状に合わせて加工した断熱性を有する不燃難燃繊維製シート」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし3も同様に訂正する)。

2 訂正事項2
明細書の段落【0007】に「対象物の外観形状に対応する形状に加工した柔軟性を有する合成樹脂シートからなる内層材と外層材」と記載されているのを、「配管、継手、弁、精密器具及び装置自体のいずれかを対象物とし、当該対象物の外観形状に対応する形状に加工した柔軟性を有する合成樹脂シートからなる内層材と外層材」に訂正し、また、明細書の段落【0007】に「発熱体を取り付けた無機繊維製シート」と記載されているのを、「前記形状に合わせて加工した発熱体を取り付けた無機繊維製シート」に訂正し、更に、明細書の段落【0007】に「断熱性を有する不燃難燃繊維製シート」と記載されているのを、「前記形状に合わせて加工した断熱性を有する不燃難燃繊維製シート」に訂正する。

3 訂正事項3
明細書の段落【0032】に「同様にに」と記載されているのを、「同様に」に訂正する。

第4 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的の適否
訂正事項1は、「対象物の外観形状に対応する形状に加工した柔軟性を有する合成樹脂シートからなる内装材と外装材」の「対象物」に対して「配管、継手、弁、精密器具及び装置自体のいずれか」であること、
また、「発熱体を取り付けた無機繊維製シート」及び「断熱性を有する不燃難燃繊維製シート」に対して、「前記形状に合わせて加工した」ことをそれぞれ限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か
上記(1)のとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
願書に添付した明細書の段落【0001】には、「本発明は、マントルヒータ及びその製造方法に係り、詳しくは精密器具や装置などの直管や曲管の配管、継手、弁など( 以下、配管という) の他、その精密器具や装置自体の保温または加熱を目的として用いるマントルヒータ及びその製造方法に関するものである。」と記載されており、マントルヒータを適用する対象物として、配管、継手、弁、精密器具及び装置自体が挙げられている。
また、上記明細書の段落【0027】には、「さらに、無機繊維製シート310及び不燃難燃繊維製シート410は、上記内層体110, 外層体210と同様に所定の曲がりを有し、かつ略半円筒状をなす2つの構成体311,411に成形されている。」、段落【0032】には、「さらに、マントルヒータ17の場合は、内層材110及び外層材210を屈曲形状に成形させ、無機繊維製シート310,410も同様にに屈曲形状を形成されている。」と記載されており、かつ、図7及び8には、無機繊維製シート310及び不燃難燃繊維製シート410が屈曲形状に成形されている様子が図示されており、発熱体を取り付けた無機繊維製シート及び断熱性を有する不燃難燃繊維製シートを、(対象物の外観)形状に合わせて加工することが開示されている。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書及び図面の上記記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「願書に添付した明細書等」という。)のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。よって、特許法第126条第5項に適合するものである。

2 訂正事項2について
(1)訂正の目的の適否
訂正事項2は、上記1で検討した訂正事項1による訂正に伴い生じる、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との齟齬を解消するものであり、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か
上記(1)のとおり、訂正事項2は訂正事項1による訂正に伴い生じる、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との齟齬を解消するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
上記(1)のとおり、訂正事項2は訂正事項1による訂正に伴い生じる、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との齟齬を解消するものである。
そして、訂正事項2の訂正に対応する訂正事項1の訂正については、上記1(3)で検討したとおりであるので、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。よって、特許法第126条第5項に適合するものである。

3 訂正事項3について
(1)訂正の目的の適否
訂正前の明細書の段落【0032】の「同様にに」との記載は、「同様に」の誤記であることは明白であり、訂正事項3は当該誤記を訂正しようとするものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に規定する「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か
上記(1)のとおり、訂正事項3は「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
上記(1)で検討したとおり、訂正事項3による訂正は、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書の段落【0032】に記載の「同様にに」が本来「同様に」との記載であることは客観的に明らかであるといえるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。

4 独立特許要件について
上記1、3で検討したとおり、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を、訂正事項3は請求項1ないし3に関連するものであって誤記又は誤訳の訂正を目的とするものに該当するから、訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けるものであるか否かについて検討する。
(1)本件出願前日本国内で頒布された刊行物等
ア 特開平10-64667号公報
本件明細書の段落【0003】において従来技術として挙げられている特開平10-64667号公報(以下「引用公報」という。)の段落【0011】-【0016】及び図1-3の記載を総合し、本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用公報には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「直管Bに巻き付けられるマントルヒータAであって、ガラスクロス製の袋状カバー部材3により、被熱電熱線4が表面に配置されるガラスクロス製のシート状芯部材1とガラス繊維のマット状断熱部材2とが包み込まれたマントルヒータA。」
イ 甲第1号証
本件審判請求書に添付して審判請求人が提出した甲第1号証(「ガラス繊維」佐野和夫、高分子、第13巻第149号8月号、昭和39年7月20日発行、表紙、第580-584ページ、奥付(公益社団法人高分子学会))の記載を総合すると、以下の技術的事項(以下「甲1技術的事項」という。)が記載されている。
「ガラス繊維の軟化点は約840℃であること。」
ウ 甲第2号証
本件審判請求書に添付して審判請求人が提出した甲第2号証(「高分子材料の耐熱性-アブレーションを中心として-」神戸博太朗、高分子、第11巻第126号9月号、昭和37年8月20日発行、表紙、第659-665、658ページ、奥付(公益社団法人高分子学会))の記載を総合すると、以下の技術的事項(以下「甲2技術的事項」という。)が記載されている。
「高分子材料の耐熱性は、最も耐熱性のあるフッ素樹脂でも200℃程度であること。」
(2)対比・判断
訂正後の請求項1に係る発明(以下「訂正発明1」という。)と引用発明とを対比する。
引用発明の「マントルヒータA」は、直管Bに巻くものであるから、訂正発明1の「配管、継手、弁、精密器具及び装置自体のいずれかを対象物」とする構成を満たしている。
引用発明の「被熱電熱線4が表面に配置されるガラスクロス製のシート状芯部材1」、「ガラス繊維のマット状断熱部材2」はそれぞれ、訂正発明1の「発熱体を取り付けた無機繊維製シート」、「断熱性を有する不燃難燃繊維製シート」に相当する。
また、引用発明の「袋状カバー部材3」は、直管Bに巻かれるものであるから一定の柔軟性を有しており、「シート状芯部材1」と「マット状断熱部材2」とを包み込むものであり、当該カバー部材に直管Bに接する内側と、直管Bとは接しない外側があるのは明らかであるから、訂正発明1の「柔軟性を有する内層材と外層材」に相当する。
そして、引用発明において、シート状芯部材1、マット状断熱部材2、袋状カバー部材3が断面視で積層状になっていることは明らかであるから、引用発明は、訂正発明1の「・・・内層材と外層材との間に・・・無機繊維製シートと・・・不燃難燃繊維製シートを介在させて積層状に構成されてなる」の構成を備えている。
そうすると、訂正発明1と引用発明との一致点・相違点は以下の通りである。
[一致点]
「配管、継手、弁、精密器具及び装置自体のいずれかを対象物とし、柔軟性を有する内層材と外層材との間に、発熱体を取り付けた無機繊維製シートと断熱性を有する不燃難燃繊維製シートを介在させて積層状に構成されてなるマントルヒータ。」
[相違点1]
訂正発明1の内層材、外層材は合成樹脂シートからなるのに対し、引用発明の袋状カバー部材3はガラスクロス製である点。
[相違点2]
訂正発明1の内層材、外層材、無機繊維製シート、不燃難燃繊維製シートは、対象物の外観形状に対応する形状に加工されているのに対し、引用発明のシート状芯部材1、マット状断熱部材2、袋状カバー部材3は対象物の外形形状に対応する形状に加工しているか不明な点。
上記相違点1について検討する。
甲2技術的事項によれば、高分子材料の耐熱性は、最も耐熱性のあるフッ素樹脂でも200℃程度であることから、訂正発明1の合成樹脂シートからなる内層材、外層材も、最も耐熱性のあるフッ素樹脂を用いたとしても耐熱性は200℃程度であると理解できる。
一方、引用発明の袋状カバー部材3に用いられているガラスクロスは、甲1技術的事項によれば軟化点が840℃であることから、訂正発明1の合成樹脂シートと比較してはるかに大きい耐熱性を備えていると理解できる。
そして、耐熱性が必要なマントルヒータにおいて、使用する材料の耐熱性をあえて下げる動機は見当たらず、引用発明において袋状カバー部材3をガラスクロスから合成樹脂シートに置き換えることは、当業者が容易になしえたとはいえない。
よって、当業者といえども、引用発明に基いて相違点1に係る訂正発明1の発明特定事項とすることは容易になし得たとすることはできない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、訂正発明1は、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。
(3)訂正後の請求項2および3に係る発明について
訂正後の請求項2及び3に係る発明は、訂正発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定を付加したものであるから、訂正発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。
(4)まとめ
上記訂正事項1、3による訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されている事項により特定される発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせない。
よって、訂正事項1、3による訂正は、特許法第126条第7項に適合するものである。

第5 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1ないし3号に掲げる事項を目的とし、また同条第5ないし7項に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
マントルヒータ及びその製造方法
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マントルヒータ及びその製造方法に係り、詳しくは精密器具や装置などの直管や曲管の配管、継手、弁など(以下、配管という)の他、その精密器具や装置自体の保温または加熱を目的として用いるマントルヒータ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種、配管の保温または加熱を目的とするマントルヒータとして、例えば、シリコン製のものが知られている。このシリコン製のマントルヒータにおいて、発熱体はシリコンラバーで被覆されている。つまり、このマントルヒータは、円筒状に形成され、その長手方向にスリットが設けられ、これを配管に装着させるには、スリットを広げて配管を押し込むようにして被覆させている(特許第2936155号公報参照)。
【0003】
また、ガラス繊維クロスからなるカバー体で配管を装着させる構成のマントルヒータが知られており、このカバー体を配管に被覆させた上、端部に設けたベルトを介して配管を被覆させている(特開平10-64667号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
対象となる配管は直管に限らず、曲管や異形の場合もある。直管の場合は、上記円筒構成或いはカバー体構成とも実際の使用にはそれ程の問題はない。しかし、曲管や異形の場合には、円筒構成のものは使用できない問題がある。また、カバー体構成のものは、直管或いは異形でも対応できるが、カバー体と対象となる配管とは、密に密着させないと、均一に熱を伝えることができず、熱効果のロスが問題となる。
【0005】
上記従来例のマントルヒータには、次のような問題点がある。
▲1▼ 特に、シリコンラバーで構成されているものは、200℃程度までの耐熱性しかない。
▲2▼ 帯電性があり、埃や塵が付着しやすい。
▲3▼ 配管に密着している部分は、シロキサンガスが発生して配管の金属部分を腐食させる。
▲4▼ 可撓性に欠け、配管に取付けるのに手間や時間などを要し、簡便さに欠けている。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高い耐熱性があり、低発塵性に優れ、かつ可撓性に優れて配管への密着性が高く、均一な熱効果を発揮し得るマントルヒータと、加工性に優れたマントルヒータの製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の発明は、配管、継手、弁、精密器具及び装置自体のいずれかを対象物とし、当該対象物の外観形状に対応する形状に加工した柔軟性を有する合成樹脂シートからなる内層材と外層材との間に、前記形状に合わせて加工した発熱体を取り付けた無機繊維製シートと前記形状に合わせて加工した断熱性を有する不燃難燃繊維製シートを介在させて積層状に構成されてなることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、合成樹脂シートは、ふっ素樹脂からなることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、内層材及び外層材の周縁部は、縫合または熱溶着により接合されてなることを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、対象物の外観形状に対応する形状に内層材及び外層材の合成樹脂シートを加工し、次いで、発熱体を取り付けた無機繊維製シートと断熱性を有する不燃難燃繊維製シートを内層材及び外層材の間に介在させ、最後に、内層材及び外層材の周縁部を接合させて積層状に構成されてなることを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、内層材及び外層材の周縁部は、熱溶着により接合されることを特徴とする。
【0012】
【作用】
第1の発明によれば、耐熱性があり、低発塵性にも優れ、かつ可撓性により配管への密着性が高くなり、均一な熱効果が発揮できる。
【0013】
第2の発明によれば、合成樹脂シートはふっ素樹脂であるため、耐熱性に優れ、埃や塵などが付着しにくい低発塵性がある。
【0014】
第3の発明によれば、内層材及び外層材の周縁部は縫合または熱溶着であるため、その加工が容易であるし、接合が完璧となり、熱効果のロスがない。
【0015】
第4の発明によれば、その加工工程が簡素化され、しかも密着性を高めた加工性の良いマントルヒータが作製できる。
【0016】
第5の発明によれば、その周縁部の接合が容易となり、熱効果のロスがなく密着性を高めたマントルヒータが作製できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明に係るマントルヒータの構成部材の1例を示す拡大断面図、(b)は、同2例を示す拡大断面図、図2は、本発明を直管に使用した例を示す一部切欠斜視図、図3は、図2と異なる例を示す一部切欠斜視図、図4は、本発明を曲管に使用した例を示す一部切欠斜視図、図5は、同内層材を示す斜視図、図6は、同外層材を示す斜視図、図7は、同不燃難燃繊維製シートを示す斜視図、図8は、同発熱体の例を示す斜視図である。
【0018】
図1?図3に示すように、本発明に係るマントルヒータ10の構成部材11は、内層材100と外層材200との間に、発熱体300を取り付けた無機繊維製シート303と不燃難燃繊維製シート400が介在され、これら構成部材11は、一体的或いは単に重ね合わせて積層状に構成されている。
【0019】
詳しくは、内層材100及び外層材200は、ふっ素樹脂としてPTFE(ポリテトラフォルオロエチレン),PFT(テトラフォルオロエチレン-パ-フォルオアルコキシェチレン共重合体),FEP(テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などが好ましく、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン),ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体),ECTFE(クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体),PVDF(ポリビニリデンフロライド)なども使用できる。
【0020】
さらに、この内層材100及び外層材200として、上記以外にポリアミド,ポリカーボネイト,ポリアセタール,ポリブチレンテレフタレート,変性ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンサルファイド,ポリサルホン,ポリエーテルサルホン,ポリアリレート,ポリエーテルエーテルケルトン,ポリフタエミド,ポリイミド,ポリエーテルイミド,ポリメチルペンテンなどの熱可撓性樹脂も使用できる。
【0021】
発熱体300は、図1(a)に示す断熱クロス301に絶縁被覆された発熱線302を無機繊維製シート303のガラスクロスに縫い糸304で縫い付けられたり、図1(b)の示すようにシート状発熱体305など所定の形状や容量を有するものが使用できる。また、発熱線302には、リード線306を介して電源接続用コネクタ307が取り付けられている。なお、この発熱体300は、次の不燃難燃繊維製シート400に取り付けてもよい。
【0022】
不燃難燃繊維製シート400は、無機繊維製シート,有機繊維製シートとを使用でき、無機質繊維製シートは、ガラスファイバー,セラミックファイバー,シリカファイバーなどの無機繊維材にニードル加工を施してコロイダルシリカ,アルミナゾル,ケイ酸ソーダなどの無機質バインダーでシート状に形成させたものが好ましい。また、アラミド,ポリアミド,ポリイミドなどの有機繊維製シートも使用できる。
【0023】
また、内層材100の両周縁部101,102は、これらを当接させた上、縫合や熱溶着などにより接合させて、上記の発熱体300の無機質繊維製シート303、不燃難燃製繊維シート400及び外層材200を内層材と一体化させてある。
【0024】
このような構成のマントルヒータ10を直管20に被覆させるには、直管20の径に対応させて円筒状のマントルヒータ10をスリット12を拡げて被覆させた後、この接合部103,104を当接させて、例えば、マジックテープ105,106を介して固定させているが、この固定手段としてホックやバックルなどの器具、ベルト類など公知の固定手段を採用できる。
【0025】
図3に示す例は、マントルヒータ15が略半円筒状に2つの構成体16,16に形成されている。このため、2つの構成体16,16を使用して直管20を被覆するために接合部103,104がそれぞれ2つある他は、上記例と同じ構成である。
【0026】
次に、図4?図8に示す曲管21を被覆するマントルヒータ17の例を説明する。このマントルヒータ17は、2つの構成体18,18からなっている。つまり、使用する曲管21の外観形状に対応させてプレス加工により所定の曲がりを有し、かつ略半円筒状をなす図7、図8に示す2つの内層材110,110及び外層材210,210にそれぞれ成形されている。
【0027】
さらに、無機繊維製シート310及び不燃難燃繊維製シート410は、上記内層体110,外層体210と同様に所定の曲がりを有し、かつ略半円筒状をなす2つの構成体311,411に成形されている。従って、その接合部103,104を重ね合わせてマジックテープ105,106を介して固定させている。この固定手段として、上記するようにホックやバックルなどの器具、ベルト類など公知の固定手段を採用できる。また、曲管21の場合、図示省略するが、図2に示すようにスリット12を有する構成の所定の曲がり形状のマントルヒータ17が構成でき、このスリットを広げて曲管21に被覆させること勿論のことである。
【0028】
このような構成からなるマントルヒータ17は、上記マントルヒータ10,15と同様に内層材110、外層材210及び無機質繊維製シート410は、一体的或いは単に重ね合わされて積層状に構成されている。
【0029】
このマントルヒータ17を曲管21に被覆させるには、一方の構成体18を曲管21に被覆させると共に、他方の構成体18を被覆させていない曲管21に被覆させて、両者の接合部103,104をそれぞれ当接させて、マジックテープ105,106を介して固定させている。
【0030】
【実施例】
ここで、本発明の実施例を説明する。マントルヒータ10,15は、内層材100及び外層材200として、ふっ素樹脂のPTFEを厚み0.1?5mm程とし、好ましくは、0.5?1mmのシート状に成形させ、無機繊維製シート400として、ガラス繊維を厚み4?10mmのシート状に形成させたものを用い。また、発熱体300は、断熱クロス301に絶縁被覆された発熱線302を無機繊維製シート303のガラスクロスに縫い糸304で縫い付けられているものを用いた。
【0031】
このマントルヒータ10,15によると、ふっ素樹脂の内層材100及び外層材200で構成され、また、ガラス繊維の無機繊維製シート400を有するために、250℃程の温度に耐え得る高い耐熱性があり、低摩擦係数に優れ、かつ可撓性があるために配管への密着性が高く、均一な熱効果を発揮できる。
【0032】
さらに、マントルヒータ17の場合は、内層材110及び外層材210を屈曲形状に成形させ、無機繊維製シート310,410も同様に屈曲形状を形成されている。従って、上記と同じ作用があり、特に、無機繊維製シート310,410において、屈曲形状が形成されているので、曲管17の屈曲部への密着性が格段と向上し、均一な熱効果を発揮できる。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、上記であれば、次のような効果がある。
▲1▼ 本発明のマントルヒータは、その外層材が合成樹脂シートのフッ素樹脂で構成されているため、高い耐熱性があり、低発塵性に優れ、不要なダストを発生しない。従って、このマントルヒータは、クリーンルーム内においても使用することができる。
▲2▼ 本発明のマントルヒータは、その内層材及び外層材が柔軟性を有する合成樹脂シートのフッ素樹脂で構成されているため、可撓性に優れて配管への密着性が高くなり、均一な熱効果が発揮できる。
▲3▼ 本発明のマントルヒータは、その接合部を縫合または熱溶着させているため、熱のロスがなく、熱効果が発揮できる。
▲4▼ 本発明のマントルヒータは、その内層材及び外層材の周縁部を縫合または熱溶着できるため、的確な接合ができ、均一な熱効果が発揮できる。
▲5▼ 本発明のマントルヒータは、対象物たる配管の外観形状に対応する形状に内層材及び外層材を加工し、また、この形状に合わせて発熱体を取り付けた無機繊維製シートを加工することにより作製できるため、その加工が容易であり、工期も短縮でき、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本発明に係るマントルヒータの構成部材の1例を示す拡大断面図であり、(b)は同2例を示す拡大断面図。
【図2】 本発明を直管に使用した例を示す一部切欠斜視図。
【図3】 異なる例を示す一部切欠斜視図。
【図4】 本発明を曲管に使用した例を示す一部切欠斜視図。
【図5】 同内層材を示す斜視図。
【図6】 同外層材を示す斜視図。
【図7】 同不燃難燃繊維製シートを示す斜視図。
【図8】 同発熱体を示す斜視図。
【符号の説明】
10,15,17 マントルヒータ
20 直管
21 曲管
100,110 内層材
200,210 外層材
300 発熱体
400,410 不燃難燃繊維製シート
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管、継手、弁、精密器具及び装置自体のいずれかを対象物とし、当該対象物の外観形状に対応する形状に加工した柔軟性を有する合成樹脂シートからなる内層材と外層材との間に、前記形状に合わせて加工した発熱体を取り付けた無機繊維製シートと前記形状に合わせて加工した断熱性を有する不燃難燃繊維製シートを介在させて積層状に構成されてなることを特徴とするマントルヒータ。
【請求項2】
合成樹脂シートは、ふっ素樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のマントルヒータ。
【請求項3】
内層材及び外層材の周縁部は、縫合または熱溶着により接合されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のマントルヒータ。
【請求項4】
対象物の外観形状に対応する形状に内層材及び外層材の合成樹脂シートを加工し、次いで、発熱体を取り付けた無機繊維製シートと断熱性を有する不燃難燃繊維製シートを内層材及び外層材の間に介在させ、最後に、内層材及び外層材の周縁部を接合させて積層状に構成されてなることを特徴とするマントルヒータの製造方法。
【請求項5】
内層材及び外層材の周縁部は、熱溶着により接合されることを特徴とする請求項4記載のマントルヒータの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2020-11-13 
結審通知日 2020-11-17 
審決日 2020-12-03 
出願番号 特願2001-102589(P2001-102589)
審決分類 P 1 41・ 851- Y (F16L)
P 1 41・ 852- Y (F16L)
P 1 41・ 853- Y (F16L)
P 1 41・ 856- Y (F16L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩谷 一臣  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 松下 聡
川上 佳
登録日 2005-12-22 
登録番号 特許第3752583号(P3752583)
発明の名称 マントルヒータ及びその製造方法  
代理人 磯貝 克臣  
代理人 高石 秀樹  
代理人 高石 秀樹  
代理人 磯貝 克臣  
代理人 辻居 幸一  
代理人 磯貝 克臣  
代理人 辻居 幸一  
代理人 高石 秀樹  
代理人 辻居 幸一  

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