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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B29C
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B29C
審判 全部無効 2項進歩性  B29C
管理番号 1371047
審判番号 無効2018-800138  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-12-11 
確定日 2020-12-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5807070号発明「ヒートシール樹脂層を含む多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5807070号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2及び10ないし16〕及び〔3ないし9〕について訂正することを認める。 特許第5807070号の請求項1及び3ないし9に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5807070号の請求項2及び10ないし16に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、これを9分し、その1を請求人の負担とし、その余を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5807070号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし9に係る発明についての出願は、2012年(平成24年)1月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年1月6日、大韓民国)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年9月11日に特許権の設定登録がされ、平成30年12月11日に、本件特許に対して、本件審判の請求がされた。
そして、本件審判の請求についての主な経緯は次のとおりである。
平成31年4月11日:審判事件答弁書及び訂正請求書提出(被請求人)
令和1年6月7日:審判事件弁駁書提出(請求人)
令和1年7月23日付け:訂正拒絶理由通知(被請求人に対して)及び職権審理結果通知(請求人に対して)
令和1年7月31日:意見書提出(請求人)
令和1年8月1日:意見書及び訂正請求取下書提出(被請求人)
令和1年8月26日付け:審理事項通知(請求人及び被請求人双方に対して)
令和1年10月16日:口頭審理陳述要領書提出(請求人及び被請求人)
令和1年10月29日:上申書(口頭審理陳述要領書2)提出(請求人)
令和1年10月31日:第1回口頭審理
令和1年11月21日:上申書提出(被請求人)
令和1年12月5日:上申書2提出(請求人)
令和2年1月15日付け:審決の予告(請求人及び被請求人双方に対して)
令和2年4月21日:訂正請求書及び上申書(被請求人)
令和2年6月26日付け:審理終結通知書(請求人及び被請求人双方に対して)
令和2年7月6日:上申書(請求人)

なお、本件特許については、平成30年4月26日に別件の無効審判(無効2018-800047号)が請求され、平成31年4月15日付けで「特許第5807070号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決がされ、この審決は確定した。
また、令和2年4月21日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、下記第2に述べるとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするもので、特許請求の範囲に実質的な変更を加えるものではないので、訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたとはいえず、かつ、仮に請求人に意見の機会を与えて新たな無効理由が追加されたとしても、当該無効理由を審判請求時の請求書に記載しなかったことに合理的な理由があったとはいえないので、請求人に該訂正の請求に対して意見を申し立てる機会を与えない(特許法第131条の2第2項)。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和2年4月21日にされた訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に「前記樹脂層がラミネーションされたフィルムの第2冷却ステップは、表面に凹凸構造を有する冷却ロールを利用して前記樹脂層に気流溝を形成させるように遂行する、請求項1に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。」と記載されているのを、「多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;
前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ;
前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ;
前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われるインライン押出である、第2押出成形ステップ;
前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ;および、
前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ
を含み、前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され、
前記縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって、
前記第2押出成形ステップでは、ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法であって、
前記樹脂層がラミネーションされたフィルムの第2冷却ステップは、表面に凹凸構造を有する冷却ロールを利用して前記樹脂層に気流溝を形成させるように遂行する、多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3の引用請求項を請求項1に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5の引用請求項を請求項1、3?4のいずれかに訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6の引用請求項を請求項1、3?5のいずれかに訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7の引用請求項を請求項1、3?6のいずれかに訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8の引用請求項を請求項1、3?7のいずれかに訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9の引用請求項を請求項1に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項3に「前記第2押出成形ステップは、前記ヒートシール樹脂層として、メタロセン樹脂、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、およびエチレン酸ターポリマーからなる群より選択された一つ以上を含む原料を使用する、請求項1または2に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、新たに請求項10とする。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項4に「前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなる、請求項3に記載の多層ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法。」とあるうち、請求項4が引用する請求項3のうち請求項2を引用するものについて、新たに請求項11とする。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項5に「前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、第1押出成形ステップにおいて使用した原料よりも融点の低い樹脂を含む原料を使用する、請求項1?4のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。」とあるうち、請求項2を引用するもの並びに請求項5が引用する請求項3及び4のうち請求項2を直接又は間接的に引用するものについて、新たに請求項12とする。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項6に「前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、帯電防止剤を含む原料を使用する、請求項1?5のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。」とあるうち、請求項2を引用するもの及び請求項6が引用する請求項3ないし5のうち請求項2を直接又は間接的に引用するものについて、新たに請求項13とする。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項7に「前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、ナイロン樹脂を含む原料を使用する、請求項1?6のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。」とあるうち、請求項2を引用するもの及び請求項7が引用する請求項3ないし6のうち請求項2を直接又は間接的に引用するものについて、新たに請求項14とする。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項8に「前記第1押出成形ステップでは、スキン外層にスリップ剤およびブロッキング防止剤からなる群より選択された一つ以上が含まれるように遂行される、請求項1?7のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。」とあるうち、請求項2を引用するもの及び請求項8が引用する請求項3ないし7のうち請求項2を直接又は間接的に引用するものについて、新たに請求項15とする。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項9に「前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなり、
前記ヒートシール樹脂層は、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、または、エチレン/プロピレン/ブタジエンの三元共重合体からなる、請求項1または2に記載の多層ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、新たに請求項16とする。

2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項に改めるための訂正であって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2ないし7について
訂正事項2ないし7は、訂正前の請求項3ないし9が引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2ないし7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項8ないし14について
訂正事項8ないし14は、訂正前の請求項3ないし9のうち、訂正前の請求項2を直接又は間接的に引用するものについて、訂正事項1による訂正に伴い、訂正後の請求項2を直接又は間接的に引用する形式として新たに請求項10ないし18として書き改めるものであるから、訂正事項1と併せて他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項8ないし14は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし14は、特許法134条の2第1項ただし書第1又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第134条の1第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。

なお、訂正前の請求項3ないし9は訂正前の請求項2を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項2ないし9は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし14は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第134条の2第3項の規定に適合する。

したがって、本件訂正は適法なものである。
そして、訂正後の請求項2及び10ないし16については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、他の請求項とは別途訂正することの求めがされているので、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2及び10ないし16〕及び〔3ないし9〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし16に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいう。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;
前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ;
前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ;
前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われるインライン押出である、第2押出成形ステップ;
前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ;および、
前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ
を含み、前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され、
前記縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって、
前記第2押出成形ステップでは、ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項2】
多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;
前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ;
前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ;
前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われるインライン押出である、第2押出成形ステップ;
前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ;および、
前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ
を含み、前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され、
前記縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって、
前記第2押出成形ステップでは、ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法であって、
前記樹脂層がラミネーションされたフィルムの第2冷却ステップは、表面に凹凸構造を有する冷却ロールを利用して前記樹脂層に気流溝を形成させるように遂行する、多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第2押出成形ステップは、前記ヒートシール樹脂層として、メタロセン樹脂、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、およびエチレン酸ターポリマーからなる群より選択された一つ以上を含む原料を使用する、請求項1に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなる、請求項3に記載の多層ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、第1押出成形ステップにおいて使用した原料よりも融点の低い樹脂を含む原料を使用する、請求項1、3?4のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、帯電防止剤を含む原料を使用する、請求項1、3?5のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、ナイロン樹脂を含む原料を使用する、請求項1、3?6のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記第1押出成形ステップでは、スキン外層にスリップ剤およびブロッキング防止剤からなる群より選択された一つ以上が含まれるように遂行される、請求項1、3?7のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなり、
前記ヒートシール樹脂層は、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、または、エチレン/プロピレン/ブタジエンの三元共重合体からなる、請求項1に記載の多層ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記第2押出成形ステップは、前記ヒートシール樹脂層として、メタロセン樹脂、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、およびエチレン酸ターポリマーからなる群より選択された一つ以上を含む原料を使用する、請求項2に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなる、請求項10に記載の多層ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、第1押出成形ステップにおいて使用した原料よりも融点の低い樹脂を含む原料を使用する、請求項2、10?11のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、帯電防止剤を含む原料を使用する、請求項2、10?12のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、ナイロン樹脂を含む原料を使用する、請求項2、10?13のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記第1押出成形ステップでは、スキン外層にスリップ剤およびブロッキング防止剤からなる群より選択された一つ以上が含まれるように遂行される、請求項2、10?14のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなり、
前記ヒートシール樹脂層は、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、または、エチレン/プロピレン/ブタジエンの三元共重合体からなる、請求項2に記載の多層ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法。」

第4 請求人の主張の概要及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書とともに下記甲第1ないし16号証を証拠方法として提出し、審判事件弁駁書とともに下記甲第17ないし30号証を証拠方法として提出し、上申書(口頭審理陳述要領書2)とともに下記甲第31号証を証拠方法として提出し、上申書2とともに下記甲第32号証を証拠方法として提出した。
そして、請求人は、「特許第5807070号の請求項1ないし16に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、おおむね次の無効理由を主張している。なお、審判請求書における請求の趣旨は「特許第5807070号の請求項1ないし9に記載された発明についての特許を無効とする。」であったが、本件訂正により、特許請求の範囲が請求項1ないし16に増項されていることから、上記のように読み替えた。以下、請求人の主張について同様に読み替える。

(1)無効理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件発明1ないし16は、いずれも、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらについての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。

(2)無効理由2(甲第2号証を主引用文献とする進歩性)
本件発明1ないし16は、いずれも、甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらについての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。

(3)無効理由3(甲第3号証を主引用文献とする進歩性)
本件発明1ないし16は、いずれも、甲第3号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらについての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。

(4)無効理由4(実施可能要件)
本件発明1ないし16についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものである。

(5)無効理由5(サポート要件)
本件発明1ないし16についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものである。

(6)無効理由6(明確性要件)
本件発明1ないし16についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものである。

2 証拠方法
甲第1号証 特開平3-73341号公報
甲第2号証 特開平3-260689号公報
甲第3号証 特開平3-69361号公報
甲第4号証 プラスチックフィルムの延伸技術と評価、表紙、目次、107?129ページ、144?156ページ、奥付、1992年10月16日
甲第5号証 プラスチックフィルムの基礎と応用、表紙、目次、33?38ページ、奥付、2010年1月26日
甲第6号証 株式会社マツムラの「インライン ラミネート」と題するウェブページ(https://www.ensoku.jp/mobile_mg/pop_t-dai/big_image_in_line_lami_.html)、2001年
甲第7号証 ラミネートフィルムの加工技術、202ページ、奥付、1990年4月12日
甲第8号証 「日本の包装印刷加工の現状」と題する論文、FOOD PACKAGING、1990/4、156?168ページ
甲第9号証 「連載 特許に見る包装開発動向 第8回 インモールドラベル(その1)」と題する論文、食品包装、FEB.2006、No.643、表紙、目次、74?77ページ、奥付
甲第10号証 公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)の「インモールドラベルってどんなものですか」と題するウェブページ(https://www.jagat.or.jp/archives/12626)、2002年4月15日
甲第11号証 特開平2-244189号公報
甲第12号証 特開平2-84319号公報
甲第13号証 特開2002-160287号公報
甲第14号証 特開平3-88579号公報
甲第15号証 特開2002-258752号公報
甲第16号証 特開平9-1660号公報
甲第17号証 特開昭56-42652号公報
甲第18号証 特公昭63-12792号公報
甲第19号証 「二軸延伸フィルムプラントにおける高効率キャスティング装置」、三菱重工技報Vol.39 No.4 176頁?179頁、平成14年7月
甲第20号証 「日本ポリプロピレンフィルム工業会 PPフィルム豆知識」と題するウェブページ(http://www.pp-film.jp/knowledge.html)
甲第21号証 「誰でもわかるラミネーティング」、目次、奥付、1998年10月6日
甲第22号証 審判事件答弁書(無効2018-800047号)
甲第23号証 実務詳説 特許関係訴訟[第3版]、360?361ページ、平成28年8月31日
甲第24号証 特公昭46-40794号公報
甲第25号証 特開昭58-69015号公報
甲第26号証 審決(無効2018-800048号)
甲第27号証 特開平1-182040号公報
甲第28号証 特開昭57-181829号公報
甲第29号証 「ポリエチレン(PE)の物性と用途、特性|ポリエチレンの融点、耐熱温度、比重」と題するウェブページ(https://www.toishi.info/sozai/plastic/pe.html)
甲第30号証 三井・ダウポリケミカル株式会社のウェブページ(http://www.mdp.jp/product/eva/busei-02-02.html)
甲第31号証 特公昭54-31030号公報
甲第32号証 包装用フィルム概論、表紙、79?80ページ、84?85ページ、奥付
(以下、順に「甲1」のようにいう。)

第5 被請求人の主張の概要及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、審判事件答弁書とともに下記乙第1及び2号証を証拠方法として提出し、口頭審理陳述要領書を提出し、上申書とともに下記乙第3及び4号証を証拠方法として提出した。
そして、被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、請求人が主張する上記無効理由1ないし6はいずれも理由がない旨主張している。

2 証拠方法
乙第1号証 英和 プラスチック工業辞典、第5版第2刷、496ページ、1992年5月25日
乙第2号証 プラスチック大辞典、初版第1刷、153?154ページ、460ページ、463ページ、1994年10月20日
乙第3号証 特許第3579701号公報
乙第4号証 特許第4519341号公報

第6 当審の判断
1 主な甲号証の記載
主な甲号証には、それぞれ、次の記載がある。なお、下線は予め付されたものと当審で付したものである。

(1)甲1
・「2.特許請求の範囲
(1)二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面に熱接着層が設けられた熱圧着プリントラミネート用フィルムにおいて、該熱接着層の表面の濡れ張力が34dyne/cm以上であり、該熱接着層がエチレンメタクリル酸メチル共重合体からなるメルトフローレート5?500の重合体(A)100重量部とポリエチレンまたはエチレンメタクリル酸メチル共重合体からなるメルトフローレート0.05?3.0の重合体(B)5?50重量部の混合物からなることを特徴とする熱圧着プリントラミネート用フィルム。
・・・(略)・・・
(8)熱接着層の表面の表面粗さRaが0.2μm以上であり、Rtが1.5μm以上であることを特徴とする請求項1記載の熱圧着プリントラミネート用フィルム。」(第1ページ左下欄第4行ないし第2ページ左上欄第2行)

・「〔産業上の利用分野〕
本発明は、印刷紙等とラミネートを行なう際に、接着剤を用いることなく、加熱圧着のみでラミネーションが可能な熱接着層を付与してなる光沢性に優れた熱接着プリントラミネート用フィルムに関するものである。
〔従来の技術〕
印刷されたアート紙等の印刷部分を保護したり、耐水、耐油性の付与、光沢を出す目的で印刷紙の上にフィルムをラミネートすることは通常行なわれており、このような処理を当業界では一般にプリントラミネートと称している。
従来、ドライラミと言われる、このプリントラミネーション法は、ラミネーターのコーティング部において、有機溶剤に溶解した接着剤を、基材となるプラスチックフィルムに塗布し、有機溶剤を乾燥オーブン中で飛散せしめた後、基材の接着塗布面と印刷紙を熱圧着することによりなされている。
更に、最近では、プリントラミネートは、フィルム自身が接着力をもち、接着剤を使うことなく熱圧着のみでラミネート可能なプリントラミネート用フィルムが知られている。(例えば、特開昭56-42652号公報、特公昭63-12792号公報、実開昭61-50437号公報、実開昭62-126931号公報)。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、ドライラミでは、有機溶剤に接着剤を溶解し使用するため、接着剤厚みが薄く、紙面のうねり等がそのまま反映され光沢性に劣ったものとなっている。更に接着力にも欠ける。
また、他方、熱圧着型プリントラミネート用フィルムは、すべり性、耐ブロッキング性に劣るため、フィルム生産時に皺が入ったり、また使用の際ロールからの巻出しでフィルム面同士がくっつき平面性が悪化したり、更にブロッキングが著しいときにはフィルムが破断されたりするなどの問題がある。」(第2ページ左上欄第4行ないし左下欄第1行)

・「該二軸延伸ポリプロピレンフィルムは単膜、積層体のいずれでもよい。」(第3ページ左上欄第13及び14行)

・「また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは公知の添加剤、例えば結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑り剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤などを含有させてもよい。」(第3ページ左上欄第14ないし18行)

・「本発明における熱接着層は、上記の重合体(A)および重合体(B)の混合物からなる。」(第3ページ右上欄第18及び19行)

・「なお、重合体Aと重合体Bの混合物には、さらに併用する添加剤として、公知の滑り剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤などを添加してもよい。」(第4ページ左上欄第1行ないし4行)

・「本発明における熱接着層の表面粗さRaは好ましくは0.2μm以上であり、より好ましくは0.35μm以上である。また、熱接着層の表面粗さRtは好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.0μm以上である。表面粗さRaが0.2μm未満であると、本発明が解決しようとする課題の一つである耐ブロッキング性に劣り、滑り性にも劣る。また、印刷紙等に加熱圧着しプリントラミネートしようとした場合、印刷紙等との滑りが悪いためフィルムが皺になった状態でラミネートされ、仕上がりの非常に劣ったものとなる。」(第4ページ左上欄第13行ないし右上欄第3行)

・「また、該熱接着層の融点Tmは、50?100℃の範囲にあるのが好ましく、より好ましくは55?80℃の範囲である。」(第4ページ右上欄第19行ないし左下欄第1行)

・「実施例1
極限粘度[η]が1.9、アイソタクチックインデックスが96%のポリプロピレンを押出機aへ、メタクリル酸メチル成分が30重量%のエチレンメタクリル酸メチル共重合体(MFR:50)100重量部とメタクリル酸メチル成分が10重量%のエチレンメタクリル酸メチル共重合体(MFR:2)43重量部の混合物を押出機bへそれぞれ供給した。押出機aを280℃に加熱してポリマーを溶融し、口金から吐出した。この溶融ポリマーを、30℃に保たれたキャスティングドラム(鏡面仕上げ)上にニップキャストし、急冷却固化して未延伸シートを得た。該未延伸シートを140℃に加熱された熱風オーブン中に導き予熱後、135℃で5倍長手方向に延伸後冷却し一軸延伸フィルムとした。次いで240℃に加熱された押出機bから前記混合物を溶融吐出させ、該一軸延伸フィルム上に積層し、30℃に保たれた冷却ロール(サンドブラスト仕上げ)上で冷却固化した。次いで、160℃に加熱されたテンター内で幅方向に10倍延伸後、155℃で幅方向に5%リラックスを許しながら熱処理した。次いで冷却ロール上で冷却し端部をカツト除去後、前記混合物からなる熱接着層の表面を空気中でコロナ放電処理を行い巻き取った。かくして、ポリプロピレン層厚み15μm、熱接着層厚み10μmの合計厚み25μmの熱圧着プリントラミネート用フィルムを得た。」(第6ページ左上欄第1行ないし右上欄第8行)

(2)甲2
・「<産業上の利用分野>
本発明は、差圧成形、中空成形によって製造される合成樹脂製容器に容器成形と同時に貼着されるラベル(ブランクを含む)に用いられるインモールド用ラベルに関し、特に、金型内に予めラベルをセットし、その上より熱可塑性樹脂を中空成形又は真空成形もしくは圧空成形することによって、ラベル付きの樹脂成形容器を一体成形して容器を加飾することのできるインモールド用ラベルに関する。
<従来の技術>
従来、ラベル付きの樹脂成形容器を一体成形するには、金型内に予めブランク又はラベルをインサートし、次いで射出成形、中空成形、差圧成形、発泡成形などにより容器を成形して、容器に絵付けを行なっている(特開昭58-69015号公報、ヨーロッパ公開特許第254923号明細書参照)。この様なラベルとしては、グラビア印刷された樹脂フィルム、オフセット多色印刷された合成紙(例えば、特公昭46-40794号公報、特公昭54-31030号公報、英国特許第1090059号明細書など)、或いは、アルミニウム箔の裏面にポリエチレンをラミネートし、その箔の表面にグラビア印刷したアルミニウムラベルなどが知られている。」(第1ページ右下欄第3行ないし第2ページ左上欄第7行)

・「[II]インモールド用ラベルの製造
(1)構成材料
(a)基材層
本発明の好ましい態様のインモールド用ラベルは、通常、基材層と接着層とから構成され、該基材層として用いられる材料としては、ポリプロピレン、高密度ポリチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドのなどの融点が135?264℃の熱可塑性樹脂に、無機微細粉末を8?65重量%含有させた樹脂フィルム、或いは、該樹脂フィルムの表面上に無機充填剤含有ラテックス(塗工剤)を塗工させたフィルム、或いは、前記樹脂フィルムにアルミニウムを蒸着させたものなどを挙げることができる。このような基材層は単層であっても、或いは、二層以上の積層された構造であっても良い。
(b)接着層
前記基材層の樹脂フィルムの裏面側(樹脂容器と接する側)には、接着層となる低密度ポリエチレン、酢酸ビニル・エチレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩などの、融点が85?135℃のヒートシール性樹脂よりなるフィルム層が積層される。また、これら樹脂のエマルジョンや溶剤に溶かした溶液を塗布し、乾燥させて接着層を形成させてもよい。
このヒートシール性樹脂フィルム層の積層によって、インモールド用ラベルと樹脂容器との接着をより強固にさせることができる。但し、成形される樹脂とラベル素材の樹脂とが同一のときは、接着層を省略することもできる。
(2)エンボス加工
そして、このヒートシール性樹脂フィルム層には、逆グラビア型のパターンの点又は線の数が、1インチ(2.54cm)当たり、80?200本となるようなエンボス模様に形成した金属ロールとゴムロールによってエンボス加工が施される。
該エンボスは稜線で囲まれた独立した凹部構造を多数備える逆グラビア型のパターン(第5図参照)であることが重要で、第7図に示すような各部屋の気体が自由に移動できる凸形の正グラビア型のパターンでは本発明の効果を発揮することができない。
(3)延伸
前記エンボス加工後の積層構造フィルムは、少なくとも一方向に、通常4?12倍、好ましくは4?8倍に延伸される。該延伸は基材層の樹脂の融点よりも低い温度で、かつヒートシール性樹脂の融点以上の温度で行われる。この延伸によって基材層は配向されるが、ヒートシール層は配向されない。
(4)その他の処理
前記延伸後の積層構造フィルム(合成紙)は、必要であれば、コロナ放電加工、火炎処理、プラズマ処理などを施すことによって、表面の印刷性、接着性を改善しておくことができる。
前記基材層の表面側、例えば紙状層には、通常印刷が施される。この様な印刷としては、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などがあり、これによって、商品名、製造元、販売会社名、キャラクター、バーコード、使用方法などを印刷することができる。。
(5)抜打加工
印刷及びエンボス加工された前記容器用ラベルは、抜打加工により必要な形状、寸法のラベルに分離される。このラベルは容器表面の一部に貼着される部分的なものであっても良いが、通常は差圧成形ではカップ状容器の側面を取り巻くブランクとして、中空成形では瓶状容器の表及び裏に貼着されるラベルとして製造される。」(第3ページ右下欄第1行ないし第4ページ左下欄第10行)

・「この第3図に示す積層構造フィルムのエンボス模様は、ロールの点又は線の数を、例えば1インチ(2.54cm)当たり、80?200本となる数で設ける。上記範囲未満では凹部6の溝が深くなり過ぎて、貼着後にラベル表面(印刷される側)にエンボスパターンが現われ易く、オレンジピール(貼着されたラベルの印刷面側にまでエンボスの凹凸が現われること)の発生を容易にする。また、上記範囲を超えると凹部6の溝が浅くなり過ぎてガスや空気を封じ込める体積が不足し、ブリスター防止の効果が減少する。更に、上記範囲を超えるとエンボス加工時に一部の低融点樹脂の場合に冷却不足によるロールへの貼り付き現象が発生し、加工上問題がある。このような1インチ当たりの線の数を線数といい、エンボス模様の精粗の目安となる。この様なエンボス模様は本発明においては、逆グラビア型のパターンとすることが重要である。」(第4ページ右下欄第19行ないし第5ページ左上欄第16行)

・「実施例1
インモールド用ラベルの製造
メルトフローレート(MFR)0.8、融点164℃のホモポリプロピレン70重量%、融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)し、270℃に設定した押出機にて混練した後、シート状に押し出し、冷却装置により冷却して、無延伸シートを得た。
次いで、このシートを145℃に加熱した後、縦方向に5倍延伸して(A層)の縦方向5倍延伸シートを得た。
一方、MFRが4.0のホモポリプロピレン58重量%と平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム42重量%との混合物(B)と、融点が90℃のエチレン・メタクリル酸共重合体(C)を、それぞれ別の押出機を用いて270℃の温度で溶融混練した後、一台のダイに供給して、該ダイ内で積層(B層-C層)した後、この積層物(B層-C層)をダイよりフィルム状に押し出して、前記A層の縦方向5倍延伸シートの裏面側にC層が外側になるように押し出し、これを金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロールに通して、該積層構造フィルムのC層側に、0.3mm間隔(80線)、谷部の深さ30μmのドットを有する逆グラビア型のパターンをエンボス加工した。
他方、上記(B)の混合物を、前記A層のシートの表面側にラミネートし、紙状層(B層)を形成して、四層構造の積層フィルムを得た。
次いで、この積層フィルムを約155℃まで再加熱した後、横方向に7倍延伸し、次いで紙状層(B層)にコロナ放電処理を行なった後、これを55℃まで冷却した後、耳部をスリットして、(B)/(A)/(B)/(C)の各層の厚さがそれぞれ30/70/30/10μmからなる四層構造の合成紙を得た。
そして、この合成紙の紙状層(B層)側にオフセット印刷を施した後、更にこれを打抜加工して、インモールド用ラベル1(横60mm、縦110mm)を得た。
・・・(略)・・・
貼 着
このインモールド用ラベル1をブロー成形用割型の一方に真空を利用して印刷面側(B層)が金型と接するように固定した後、高密度ポリエチレン(融点134℃)のパリソンを155℃(低温パリソン)及び205℃(高温パリソン)で溶融押出し、次いで割型を型締めした後、4.2kg/cm^(2)の圧空をパリソン内に供給し、パリソンを膨脹させて容器状とすると共にインモールド用ラベルと融着させ、次いで該型を冷却した後、型開きをして中空容器を取り出した。」(第5ページ右下欄第8行ないし第6ページ左上欄第11行)

・「4.図面の簡単な説明
・・・(略)・・・
1:インモールド用ラベル
2:熱可塑性樹脂フィルム基材層
3:印刷
4:ヒートシール性樹脂層
5:エンボス加工によりドット状の格子模様を付与された綾(凸部)の頂上
6:格子模様の谷部(凹部)
L:中心線
L1:凹部の平均深さ
S:Lより上の凸部の面積」(第8ページ左上欄第1行ないし右上欄第10行)

・「




(3)甲3
・「2 特許請求の範囲
1.2軸延伸が導入されているポリプロピレン系樹脂フィルム層と該フィルム層に積層されている低融点樹脂層とからなる複合2軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムにおいて、・・・(略)・・・しかも、低融点樹脂層の表面が、粗面状態を呈していることを特徴とする複合2軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム。」(第1ページ左下欄第5行ないし末行)

・「[産業上の利用分野]
本発明は、食品その他の包装体を得る際の包装用材や、紙に対する美粧用の保護フィルム等として利用される複合2軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム、および該フィルムの製造方法に関するものであり、低温でのヒートシール特性を有し、しかも、滑り性および耐ブロッキング性においても優れた特性を有する複合2軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムとその製造方法とを提供するものである。」(第2ページ左上欄第17行ないし右上欄第9行)

・「これに対して本第1の発明は、80℃以下のヒートシール温度で十分に熱接着され得る積層樹脂層を具備する複合2軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムであり、しかも、ポリプロピレン系樹脂層と低融点樹脂層との積層シートを、少なくとも1軸方向に延伸する方法を利用して製造され得るものであり、かつ、作業特性においても良好な性質を有する複合2軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを提供するものである。」(第3ページ左上欄末行ないし右上欄第9行)

・「なお、前記ポリプロピレン系樹脂層の形成に際しては、ポリプロピレン系樹脂フィルムの製膜に通常利用される添加剤、例えば、酸化防止剤,スリップ剤,アンチブロッキング剤,帯電防止剤,紫外線吸収剤等が、必要に応じて適宜の添加,含有され得るものであることは勿論である。」(第4ページ左上欄第15行ないし右上欄第3行)

・「なお、前記低融点樹脂層には、該低融点樹脂層における特質、すなわち、低温でのヒートシール特性と延伸による表面の粗化という特質が損なわれることのない範囲内で、その他の添加剤、例えば、スリップ剤、アンチブロッキング剤、石油樹脂やテルペン樹脂等による粘着付与剤等が適宜添加され得るものであることは勿論である。」(第6ページ左上欄第7ないし14行)

・「本発明の複合2軸延伸フィルムの製造方法は、ポリプロピレン系樹脂層に対する2軸延伸うちの少なくとも1方向の延伸工程の完了以前に、ポリプロピレン系樹脂層と低融点混合樹脂による溶融,押し出し樹脂層との積層を完了するものであって、例えば、共押し出しによるポリプロピレン系樹脂層と低融点樹脂層との積層樹脂シートを2軸延伸する方法、縦方向に延伸されているポリプロピレン系フィルムに対して低融点樹脂層を押し出しラミネートし、これを横方向に延伸する方法等が利用され得る。
なお、本発明で利用される前記低融点樹脂層は、文字通りその融点が低いものである。
したがって、前者の共押し出しによるポリプロピレン系樹脂層と低融点樹脂層との積層樹脂シートを利用する方法においては、該積層樹脂シートをロール延伸する際に低融点樹脂層が溶融して、ロールに付着する傾向があるため、延伸時の加熱方法が難しくなるので、ロールによる延伸工程終了後の1軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムに対して、低融点混合樹脂による溶融,押し出し樹脂層を積層し、これをテンターによって横方向に延伸するのが好ましい。」(第6ページ右上欄第6行ないし左下欄第12行)

・「実施例1?4
下記に示されるポリプロピレン樹脂組成物を、Tダイによる溶融押し出しで得られた厚さ約1000μのシートを、縦方向に1軸延伸することによって、1軸延伸フィルムを得た。
ポリプロピレン樹脂組成物
アイソタクチックポリプロピレン
(MFR2.0g/10分)……99.2重量部
アルキルアミンエチレン
オキサイド付加物 ……0.25重量部
グリセリンのモノステアリン酸
エステル ……0.35重量部
ステアリン酸アミド ……0.05重量部
シリカ微粉末 ……0.15重量部
前記得られた1軸延伸フィルムの表面に、別の押し出し機から、下記第1表に示される樹脂[A]70重量部と樹脂[B]30重量部との混合樹脂99.6重量部に対して、ステアリン酸アミド0.2重量部、シリカ微粉末0.2重量部とを添加した低融点樹脂層用の樹脂組成物を溶融,押し出し積層することによって、厚さ約50μの低融点樹脂層を有する積層シートを得た。
次いで、前記積層シートをテンターに導入し、約9倍の横方向の延伸を行なうことによって、厚さ約25μの本発明の1実施例品たる複合2軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。」(第7ページ右上欄第14行ないし右下欄第6行)

・「


(当審注:時計回りに90度回転させている。)」(第8ページ左上欄)

(4)甲4
・「5.6 複合製膜(積層製膜)
・・・(略)・・・
この(溶融)複合製膜には,共押出しによる狭義の複合フィルムに加えて,インライン・コーティングなどによる複合フィルムを含める。
この複合製膜による製品化が最も進んでいるのは,OPPフィルムであろう。OPPフィルムの約1/4は,共押出しなどによってヒートシート性としてのPPランダムコポリマーを積層した多層フィルムである。ここで言う共押出しによる複合フィルムは,全て共押出し後に延伸するという,共押出多層延伸フィルムのことを指している。
積層(複合フィルム)の製造方法として,最近の公開特許では共押出し法によるものが最も多く,インライン・コーティングがこれに次いで多いことを筆者は以前の調査で報告した。
共押出し法では,表面と裏面とで異なる物性を付与することが出来る2層延伸フィルムが最も多く実用化ないし検討されている。さらに,2種延伸フィルム以外では,中心(コア:芯)層と表面2層(シース:鞘)からなる3層延伸フィルムがよく検討されている。
・・・(略)・・・これに対して,インライン・コーティングでは,製膜工程の生産ライン中(インライン)でコーティングする。一般には,一軸延伸後のフィルムにコーティングし,引続き第2段目の延伸・熱処理をする間にコーティング剤が乾燥・硬化し,フィルム表面に連続コート層が形成される。・・・(略)・・・
この他に,複合フィルムの製膜段階で製造する方法としては,インライン・ラミネート・延伸など,各種の組合せが考えられ,その一部は実用化されているが,割愛する。」(第126ページ第7行ないし第128ページ第7行)

・「以下簡単ではあるが,OPPの原料,添加剤および製造方法,改質方法について述べる。
・・・(略)・・・
2. 添加剤
ポリプロピレンはそのままでは成形時の熱分解や耐候性が悪いため熱安定剤,酸化防止剤が添加されている。
フィルムに使用されるその他の添加剤には帯電防止剤,アンチブロッキング剤およびスリップ剤があるが,ポリプロピレンフィルムは食品用途への使用が多いため,一般にはPL記載物やFDAに合格していることの他,200℃以上の加工温度で安定であること等の制約がある。

2.1 帯電防止剤
・・・(略)・・・
2.2 アンチブロッキング剤
・・・(略)・・・
2.3 スリップ剤
・・・(略)・・・」(第145ページ第6行ないし第146ページ第20行)

・「4.1 共押出法
共押出法は延伸前のシート作成工程で積層のシートを作成し,この積層シートを延伸する方法である。
図2にシート作成部の概略を示した。」(第150ページ下から3行ないし第151ページ第1行)

・「

」(第151ページ)

・「

」(第151ページ)

・「4.1.1 マルチマニホールド方式
一つのTダイに各樹脂それぞれのマニホールド(樹脂の流路)があり,ダイの先端にゆくにしたがって横に広がり,やがて各層が合流して複層シートとなる。マルチマニホールドダイは後述のフィードブロックダイに比べて厚み精度が良く,また各樹脂を別々の流路で制御するため樹脂の選択に幅をもつ。
しかしダイの構造が複雑で大きくメンテナンスが困難なため,層構成数は3?4層が限界と言われている。その他価格も高額となる。

4.1.2 フィールドブロック方式
ダイそのものは単層ダイと同じで,ダイの上部に設けるフィードブロックの中で各樹脂が合流した後,ダイの中に入ってから幅方向に広がり,複層シートとなる。この方式はフィードブロックを重ねることで理論上は無限大の層構成を取ることができ,4?5層以上ではこの方式が使用されている。フィードブロックダイは各樹脂が合流してから幅方向に広がるため,コア層とスキン層に使用する樹脂には流動性が類似する必要がある等の限界があるが,メンテナンスが比較的容易で,また安価であることや厚み精度が向上した最近ではこの方式の採用が多くなっている。」(第151ページ下から第5行ないし第152ページ第9行)

・「4.2 インラインラミ法
この方法は先に作ったシートの片面または両面に押出機で溶融した樹脂を押出して,積層した後,延伸する方法である。シートは無延伸シートまたは縦延伸シートのどちらでもよいが,一般的には縦延伸シートに積層する。
図5に積層部の概略を示した。」(第152ページ第10ないし14行)

・「

」(第152ページ)

(5)甲15
・「【請求項1】 熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)、ヒートシール性樹脂層(II)よりなる多層フィルムであって、ヒートシール性樹脂層(II)が、ポリオレフィン系樹脂(a)にポリエーテルエステルアミド(b)を主成分とする永久帯電防止剤、金属塩(d)及び/又はアイオノマー(e)を含有した熱可塑性樹脂組成物よりなるものであることを特徴とするインモールド成形用ラベル。」

・「【0027】(c)ポリアミド樹脂
ヒートシール性樹脂層(II)の構成成分として、帯電防止性能をより安定して発現することを目的に、炭素数6?12またはそれ以上のラクタムの開環重合体、炭素数6?12またはそれ以上のアミノカルボン酸の重縮合体及び炭素数4?20のジカルボン酸と炭素数6?12またはそれ以上のジアミンの重縮合体等のポリアミド樹脂(c)を含有することができる。
【0028】具体的には、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46等を挙げることができる。また、ナイロン6/66、ナイロン6/10、ナイロン6/12、ナイロン6/66/12等の共重合ポリアミド類も使用することができる。更には、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸とメタキシレンジアミン又は、脂肪族ジアミンから得られる芳香族含有ポリアミド類などを挙げることができる。これらの中でも特に好ましいものはナイロン66、ナイロン6、ナイロン12である。」

(6)甲24
・「図面の簡単な説明
第1図はこの発明による合成紙の一具体例を示す断面図、第2図はこの発明による合成紙を製造する場合の装置の一実施例を示す側面図である。
発明の詳細な説明
この発明は、従来の紙(あらゆる紙の範ちゅう(疇)に入るものすべて)と同一目的に同一使用法で使用可能なプラスチツクフイルム積層構造物からなる合成紙に関するものである。」(第1ページ第1欄第14ないし22行)

・「以下、この発明の方法を図面によつて更に具体的に説明しよう。
延伸可能な基材層用熱可塑性樹脂は、押出機2により押出可能な温度まで加熱混練され、ダイス3のスリツトから押出され、冷却装置4により必要な温度まで冷却されて、無延伸フイルム1となる。ここで、冷却装置4は、ロール冷却、水浴冷却あるいはこれらの組み合せ等の任意のものであつてもよい。押出機の代りに、公知のカレンダー法その他を採用してもよい。
この無延伸フイルム1は、縦方向延伸機5によって1.3倍以上に延伸され、得られた縦方向一軸延伸フイルム1’は、次のラミネート工程へと移送される。縦方向一軸延伸フィルム1’は、金属ロール7(冷却水通過可能で、表面を鏡面仕上げしたもの)とゴムライニングされたニツプロールとの間に通す。他方、微細無機充てん剤および顔料を含んだ紙状層用熱可塑性樹脂は、押出機(図示せず)により加熱混練されてダイス9より押出され、溶融シート6となって前記-軸延伸フイルムとラミネートされる。
次いでガイドロール10,11,12を通つて第二の表面ラミネート工程へと送られ、第一の表面ラミネート工程と同様の操作で表面ラミネートが行なわれる。ラミネートを行なう順序は基材層のいずれの面が先でも良く、またいずれか片面の場合もあり得る。なお、両面にラミネートする場合には、各々の面の組成は同一である必要はない。
この様にして得られた複合体は適当な横延伸機たとえばテンタ一式幅出し機14の中で横方向に少なくとも2.5倍に延伸し、実質的にその延伸状態に拘束しながら冷却して、ニツプロール18,18’により引取り、耳縁部をトリミングしてから巻き取る。」(第3ページ第5欄第19行ないし第6欄第7行)

・「



(7)甲27
・「〔産業上の利用分野〕
本発明は、ブックカバー、半透明ラベル、電飾看板やポスター、OHP、サーマルレントゲンフィルム、インジェクト記録紙或いは熱転写被記録体基材として有用な半透明のプロピレン系樹脂多層複合フィルムに関する。」(第2ページ左上欄第5ないし10行)

・「〔従来技術〕
ブックカバーとしては、従来、パラフィン紙の片面にサンドブラスト処理した半透明のものが使用されていた。
しかし、強度が弱く、破れやすいので、無機微細粉末を含有するポリプロピレンの2軸延伸フィルムを基材層とし、この基材層よりも無機微細粉末を多量に有するポリプロピレンの1軸延伸フィルムを表面層とする複合フィルムよりなり、その不透明度(JIS P-8138)が30?38%、表面光沢度(JIS P-8142)が5?7%のものが王子油化合成紙(株)よりユポTPG(商品名)として販売され、使用されている。
このユポTPGは、電飾看板やポスター、製図用のトレース紙としても用いられている。このユポTPGは、鉛筆筆記性をも目的としているので表面層に無機微細粉末を多量に含有している。それ故、光沢度が5?7%と低く、ブックカバーとして更に光沢度の改良が望まれている。
また、不透明度が30?38%であり、トレース紙としては良好で、複写に便利であるが、OHPや電飾看板やポスター、サーマルレントゲンフィルム基材、透明な瓶や容器の中身が透視できるラベルやクッキー、チョコ等の菓子類を収納した箱本体の封止のために用いる耐水性フィルムとしては、更に不透明度を低下させることが望まれている。」(第2ページ左上欄第13行ないし右上欄末行)

・「〔問題点を解決する手段〕
本発明においては、表面層を結晶化度の高い(50?85%)プロピレンのホモポリマーもしくはプロピレン系ランダム共重合体を用いることにより複合フィルムの透明性、光沢を向上させる。
・・・(略)・・・
即ち、本発明はプロピレン系樹脂75?95重量%、高密度ポリエチレン25?5重量%よりなる樹脂フィルムの2軸延伸物を基材層(A)とし、該基材層(A)の少くとも片面に接着剤層(B)を介して、(a)プロピレン系樹脂80?95重量%、(b)高密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレンより選ばれたオレフィン系樹脂10?0重量%および(c)無機微細粉末20?5重量%よりなるオレフィン系樹脂組成物よりなるフィルム(C)とプロピレンのホモ重合体またはプロピレン系ランダム共重合体のフィルム(D)との積層物の一軸延伸物が、後者のプロピレンのホモ重合体フィルムの一軸延伸物(D)が表面層となるように積層された複合フィルムであって、この複合フィルムのJIS P-8138の規格で測定した不透明度が3?25%、表面層(D)側よりJIS P-8142の規格で測定した光沢度が65?95%である半透明のプロピレン系樹脂多層複合フィルムを提供するものである。」(第2ページ左下欄第1行ないし右下欄第15行)

・「(各層の組成物)
(A)基材層
(a”)プロピレン系樹脂 75?95重量%
(b”)高密度ポリエチレン 25?5重量%
(B)接着剤層
(a’)プロピレン系樹脂 85?94.5重量%
(b’)高密度ポリエチレン 5?15重量%
(c’)無機微細粉末 0.5?5重量%
(C)中間層
(a)プロピレン系樹脂 80?95重量%
(b)高密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレンより選ばれたオレフィン系樹脂 10?0重量%
(c)無機微細粉末 5?20重量%
(D)表面層
プロピレンの単独重合体(ホモポリマー)」(第2ページ右下欄第16行ないし第3ページ左上欄第12行)

・「(複合フィルムの製造)
本発明の複合フィルムは、基材層(A)形成樹脂組成物と、接着剤層(B)形成用樹脂組成物をそれぞれ別々の押出機を用いて溶融混練し、1台のダイに供給し、ダイ内で積層した後、共押出し、シート状に押し出す。
次いで、この多層樹脂シートを基材層のプロピレン系樹脂の融点より低い温度、例えば40?85℃まで冷却し、再び基材層のプロピレン系樹脂の軟化点まで加熱した後、縦方向に3?10倍延伸する。この延伸により、基材層フィルムは縦方向に配向する。
続いて、別々の押出機を用いて中間層形成用樹脂組成物(C)と表面層形成用樹脂(D)を溶融混練し、一台のダイに供給し、次いでシート状に共押出して前述の縦延伸(多層)樹脂シートの両面または片面に溶融積層(ラミネート)し、(C)層のプロピレン系樹脂の融点より少くとも10℃以上高い温度で横方向に4?12倍延伸し〔融点より高い温度で延伸するので中間層(C)においては無機微細粉末を核とした微細なミクロボイドは殆んど見受けられない。〕必要によりアニーリング処理し、続いて耳部をスリットすることより本発明の複合フィルムは製造される。
(複合フィルム)
この複合フィルムの層の構造は、第1図に示すような表面層(D)/中間層(C)/接着剤層(B)/基材層(A)/接着剤層(B)/中間層(C)/表面層(D)の7層構造、D/C/B/A/Cの5層構造が代表的であるが、必要により他の樹脂層をこの各層の間に、または表面層の上に設けてもよい。ガスバリヤー性のポリアミドやポリエチレンテレフタレート、ケン化エチレン・酢酸ビニル共重合体のフィルム層を例えば中間層と接着剤層の間に設けたり、表面層の一方(通常は用途によって裏面層といわれる)の上に低温ヒートシール性のフィルムをラミネートする等のことである。」(第3ページ右下欄第3行ないし第4ページ左上欄末行)

・「実施例1
(1) メルトインデックス(MI)0.8ホモポリプロピレン(融点164℃)90重量%と高密度ポリエチレン8重量%の混合物(A)と、MI4.0のポリプロピレン87重量%、高密度ポリエチレン10重量%および平均粒径1.5ミクロンの重質炭酸カルシウム粉末3重量%の混合物(B)を、それぞれ別々の押出機で溶融混練後、一台のダイに供給し、ダイ内で三層(B/A/B)に積層し、ついで250℃でダイよりシート状に共押出し、冷却装置により冷却して、無延伸シートを得た。このシートを、155℃に加熱後、縦方向に5倍延伸した。
(2) MI4.0のホモポリプロピレン(D)と、MI4.0のポリプロピレン86.5重量%に平均粒径1.5μの炭酸カルシウム10重量%と高密度ポリエチレン3.5重量%を混合した組成物(C)とを別々の押出機で溶融混練し、ダイ内で積層して共押出したシートを(1)の5倍延伸シートの両面に(D)が外側になるように積層し、ついでこの七層積層物を185℃に加熱したのち横方向に7.5倍の延伸を行なって、七層のフィルムを得た。
(3) この七層積層フィルムの表面をコロナ放電処理し、(D)/(C)/(B)/(A)/(B)/(C)/(D)の各フィルムの肉厚が5/20/0.5/49/0.5/20/5ミクロンの七層構造物を得た。」(第4ページ左下欄第2行ないし右下欄第8行)

・「応用例1
表面がエンボス加工されたガラスを素材とした緑色の内容量540ccの半透明瓶の内部にビールを充填し、栓を施した後、実施例1で得た肉厚100ミクロンの七層の半透明複合フィルムにバーコードを印刷したものをラベルとしてこの瓶の胴部に透明なアクリル系溶剤型接着剤を用いて貼合した。
このラベルを透して瓶内のビールを透視することができた。
応用例2
透明なポリ塩化ビニールの中空形成容器(内容量300ml)ボトルに淡い緑色に着色した液体洗剤を充填し、キャップを施した後、実施例1で得た厚さ100ミクロンの半透明複合フィルムにバーコード及び文字を印刷したものをラベルとしてこのボトルの胴部に透明なゴム系エマルジョン型接着剤で貼合した。
このラベルを透してボトル内の液体洗剤を透視することができた。」(第4ページ左下欄下から5行ないし第5ページ右上欄第15行)

・「4.図面の簡単な説明
第1図は本発明の複合フィルムの断面図である。」(第5ページ左上欄第16及び17行)

・「




(8)甲28
・「〔I〕発明の背景
技術分野
本発明は、複合ポリオレフィン樹脂延伸フィルムの製造法に関する。さらに具体的には、本発明は、寸法安定性および外観の良好な複合ポリオレフィン樹脂延伸フィルムを成形性良く製造する方法に関する。
無機微細粉末(以下、充填剤ということがある)を配合した熱可塑性樹脂のフィルムを適当な温度で一軸または二軸に延伸することにより、不透明なフィルムが得られる。このフィルムはその不透明性、白さ、風合および感触の点でパルブ紙に類似しており、このフィルムのみからなる単層構造物としてあるいはこのフィルムを表面層に有する多層構造物として従来のパルプ紙の各種の用途に使用可能であることが知られている。
充填剤配合熱可塑性樹脂の延伸フィルムが不透明および白色であるのは、フィルム延伸時に樹脂と充填剤粒子との界面に剥離が起り、さらに延伸が進むにつれて樹脂/充填剤粒子間に微細な隙間が生じて、延伸終了時には充填剤粒子をその内部に含んだ微細なボイドがフィルム内部に形成されること、ならびにフィルム表面付近では閉鎖されたボイドの形状が保たれないので微小な亀裂が表面に形成されることから、光がフィルム表面および内部で散乱されるためである。そして、この表面亀裂および内部ボイドによって、フィルムはパルプ紙に類似した性質を持つようになるのである。
しかし、このような不透明フィルムに印刷、折り、製本、製袋等の二次加工を行なう場合には、表面付近のボイドがその閉鎖構造を破壊されて表面亀裂となり、その結果表面に遊離ないし半遊離状態で存在するに到った充填剤粒子が二次加工機のロール、ブランケット等に付着し、加工に障害が生じることが多くて二次加工の能率が著るしく低下する(以下、紙粉トラブルということがある)。
従って、このような構造の不透明フィルムでは、印刷ないし筆記が可能であってしかも紙様の不透明度があれば、その表面層は充填剤の含有率が低い方が好ましいということになる。
このような希望を満たすものとして、充填剤含有率の比較的低い層(紙状層)をこれより充填剤含有率の高い層(基材層)の表面に設けてなる積層構造のものが挙げられる・・・。しかし、この公知の積層構造延伸フィルムは紙状層および基材層がともに二軸延伸フィルムであり、紙状層が二軸延伸フィルムであることに相当して表面が真珠様光沢を有するとともに基材層層との間で層間剥離を生じやすいという問題が認められる。また、この紙状層は、グラビア印刷は実用上利用できるとしても、そのオフセット印刷性能は実用にはほど遠いといわざるを得ない。
このような問題点は、紙状層が一軸延伸フィルムで基材層が二軸延伸フィルムである積層構造体によって解決することができよう。しかし、基材層として充分な機械的強度および延伸展性を持たすべくメルトインデックス(MI)0.5?3のポリオレフィン樹脂を使用し、しかも充分な不透明度を得べく充填剤含量を20?68%としてこのような積層構造体を製造したところ、いくつかの問題点が見出された。すなわち、積層構造は、基材層用のポリオレフィン樹脂の縦方向延伸シートを予めつくり、その少なくとも片面に紙状層用のポリオレフィン樹脂を溶融積層し、得られる積層シートを横方向に延伸することによって製造されるが、基材層が低MIかつ高充填剤含量のポリオレフィン樹脂であることに起因して下記の欠点が認められた。
(1) 基材層用シートを押出すダイのスリット部に焼けて劣化した樹脂が付着して蓄積され、これが押出されるシートの表面に筋状の傷をつける。その結果、延伸が均一に行なわれず、生成複合延伸フィルムを光で透過してみると筋状の不透明度ムラが視認される。
(2) 溶融押出された基材層用シートを冷却すると充填剤粒子を核として収縮が起り、シート表面に多数のくぼみが生じる。その結果、生成複合延伸フィルムには米粒大の未延伸部分(所謂「エクボ」)が多数視認される。
(3) 低MIかつ高充填剤含量のポリオレフィン樹脂シートは延伸が困難であり、上記のくぼみの発生とあいまって、延伸が不均一となり易い。」(第2ページ右上欄第4行ないし第3ページ右上欄第7行)

・「〔II〕発明の概要
要旨
本発明は上記の点に解決を与えることを目的とし、基材層用シートとして共押出によって得られた特定の複合構造シートを使用することによってこの目的を達成しようとするものである。
従って、本発明による複合ポリオレフィン樹脂延伸フィルムの製造法は、基材層用ポリオレフィン樹脂シートの一軸延伸物の少なくとも片面に紙状層用ポリオレフィン樹脂シートを溶融積層し、得られる積層シートを上記延伸方向と直角の方向に延伸することからなり、上記基材層ポリオレフィン樹脂シートが下記の組成物(B)よりなる中間層の一方の面に下記の組成(A)よりなる層を、他方の面に下記の組成物(C)よりなる層を設けるように一台の共押出ダイより溶融押出しして得た複合構造シートであり、上記紙状層用ポリオレフィン樹脂シートが下記の組成物(D)からなるものであること、を特徴とするものである。
組成物(A)
無機微細粉末を0?18重量%の割合で含有する熱可塑性樹脂組成物。
組成物(B)
無機微細粉末を20?68重量%の割合で含有するポリオレフィン樹脂組成物。
ただし、このポリオレフィン樹脂のメルトインデックスは0.5?3g/10分である。
組成物(C)
無機微細粉末を0?18重量%の割合で含有する熱可塑性樹脂組成物。
組成物(D)
無機微細粉末を5?50重量%の割合で含有するポリオレフィン樹脂組成物。
ただし、このポリオレフィン樹脂のメルトインデックスは3?12でありかつ組成物(B)のポリオレフィン樹脂のそれより大きい。」(第3ページ右上欄第8行ないし右下欄第4行)

・「〔III〕発明の具体的説明
1.基材層
本発明で使用する基材層用ポリオレフィン樹脂シートは、組成物(A)、(B)および(C)の層からなる複合シートであって共押出によって製造したものであり、しかも一軸延伸されたものである。
1) 組成物(A)および(C)
組成物(A)および(C)を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ(4-メチルペンテン-1)、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、エチレン-アクリル酸共重合体およびその塩、塩化ビニリデン共重合体たとえば塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、その他、およびこれらの混合物、を例示することができる。
これらのうちでも、安価でありかつ組成物(B)よりなる層および組成物(D)よりなる層との接着性の面から、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂を組成物(A)および(C)の少なくとも一方、望ましくは両方、に使用することが好ましい。なお、ポリオレフィン樹脂を組成物(A)および(C)の両方に使用するときでも、使用オレフィンの種類、MIその他を異ならせることができる。
本発明に従って組成物(B)から形成される基材層は、内部に微細な空孔を多数有していて水蒸気、酸素等のガスの透過度が大きい。従って、本発明による複合延伸フィルムにガスバリヤー性が要求されるときには、組成物(A)および(C)の少なくとも一方の熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物および塩化ビニリデン共重合体(たとえば塩化ビニルとの共重合体)から選んだものを使用することが好ましい。
組成物(A)および(C)からなる層は低MIかつ高充填剤含量の組成物(B)からなる中間層の両面を被って一台のダイより共押出する際の焼け樹脂の発生を防ぐために用いるものであるから、組成物(A)および(C)用の樹脂は、先ず組成物(B)用ポリオレフィン樹脂のMIと同等かそれよりもMIが大きいものであるべきである。好ましいMIは、1?3程度である。そして、組成物(A)および(B)は、充填剤を含まないかあるいは充填剤含量18重量%まで、好ましくは15重量%まで、のものであるべきである。もっとも、組成物(A)および(C)からなる層の表面には組成物(D)からなる層が被着されるのであるから、その場合の接着性を考慮すれば組成物(A)および(C)充填剤含量は3重量%以上であることが好ましい。
充填剤の種類に関しては、組成物(B)について後記されているところを参照されたい。
組成物(A)および(C)は熱可塑性樹脂組成物であり、従ってこの種の組成物が含みうる各種の補助資材を含むことができる。詳細は、後記されたところを参照されたい。
2) 組成物(B)
組成物(B)を構成するポリオレフィン樹脂としては、MI値に関する条件を除けば、組成物(A)および(C)について前記したポリオレフィン樹脂と同種または異種のものを使用することができる。組成物(B)からなる層は基材層として製品複合延伸フィルムの機械的性質を主として支配するものであるから、組成物(B)用ポリオレフィン樹脂としては高密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよび両者の混合物がフィルム剛性の点から好ましい。
組成物(B)用のポリオレフィン樹脂は、MIが0.5?3、好ましくは1?3、のものであるべきである。MIが0.5未満のものは耐クリープ性に富むとしてもフィルムの押出量が少なくなる故に生産性が向上しないからであり、一方、基材層用ポリプロピレンのMIが3より大きいと基材層が厚肉のときは均一延伸が困難となって延伸むらが生じやすいからである。なお組成物(B)用のポリオレフィン樹脂のMIは、組成物(D)用のポリオレフィン樹脂のそれ(詳細後記)より1以上低いことが横延伸成形性(詳細後記)の面から望ましい。
組成物(B)は、充填剤を20?68重量%、好ましくは25?65重量%、の割合で含有する。20%未満では、生成複合延伸フィルムに紙的風合をもたらすために表面組成物(D)に多量の充填剤を配合することが必要となるので、生成複合延伸フィルムの紙粉トラブル防止、表面強度の低下防止および表面層用フィルム押出ダイに焼け樹脂の付着防止等の効果が期待できない。一方、68重量%を越える多量の充填剤を配合した場合は、押出成形が困難である。
なお、組成物(A)および(または)(C)が熱可塑性樹脂として前記のガス透過性の小さい樹脂を用いたときは、組成物(A)ないし(C)からなる層と組成物(B)からなる層との接着性を向上させるために、組成物(B)は無水マレイン酸変性ポリオレフィン(詳細後記)を樹脂成分中0.05?5重量%の割合で含有することが好ましい。
充填剤として使用される無機微細粉末は、樹脂用充填剤として使用しうる任意のものでありうる。具体的には、たとえば、炭酸カルシウム、焼成クレイ、ケイ藻土、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、シリカ等、が例示される。粒径は、0.05?10ミクロン、特に0.1?5ミクロン、が好ましい。組成物(B)用の充填剤としては、安価な炭酸カルシウムが好ましい。
3) 製造
組成物(A)、(B)および(C)を一台の共押出ダイから溶融押出して複層構造シートを製造するには、三種の樹脂の共押出に使用しうる任意の手段によってこれを行なうことができる。具体的には、たとえば、組成物(A)、(B)および(C)をそれぞれ別の押出機(3台)により混練し(組成物(A)と(C)とが同一のときは押出機は2台でよいことはいうまでもない)、導管により溶融物を一台の共押出ダイに導びき、その際組成物(B)が中間層となるようにし、この中間層と組成物(A)および(C)からなる層とを共押出ダイ内で貼合して共押出ダイスリットよりシート状に押出し、これを60℃以下の温度に冷却する。これを延伸適当温度、すなわち組成物(B)を構成するポリオレフィン樹脂の融点より低い温度であってしかも延伸可能な温度、に加熱し、捲取ロール群の周速度差を利用して、縦方向に2.5?10倍、好ましくは4?8倍、に延伸する。
基材層の厚さ構成は、組成物(A)?(C)からなる層(A):(B):(C)の比が(0.005?0.5):1:(0.005?0.5)となる程度が好ましい。
4) 改変その他
組成物(A)、(B)および(C)はいずれも熱可塑性樹脂組成物である。従って、これらは、この種の組成物が含有しうる各種の補助資材、たとえば酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、滑剤、紫外線吸収剤、その他をそれぞれ0.01?2重量%程度の割合で含有することができる。特に、界面活性剤、紫外線吸収剤等の滲出性の添加剤は、表面層用の組成物(D)(詳細後記)ばかりでなく、基材層用の組成物(B)にも配合することにより、その効果をより長期に保つことができる。
2.表面層
表面層は組成物(D)により形成される。
組成物(D)を構成するポリオレフィフィン樹脂としては、MI値に関する条件を除けば、組成物(A)および(C)について前記したポリオレフィン樹脂と同種または異種のものを使用することができる。組成物(D)からなる層は製品複合延伸フィルムの表面を構成するものであるので、使用するポリオレフィン樹脂は高密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよび両者の混合物が剛性の面から好ましい。
組成物(D)用のポリオレフィン樹脂は、MIが3?12、好ましくは4?8、のものであるべきである。このMI値が組成物(B)用ポリオレフィン樹脂のそれと1以上の差があることが望ましいことは前記したところである。
組成物(D)は、製品複合延伸フィルムの表面層を構成するのであるから、筆記性ないし印刷性を実現すべく充填剤を含有している。充填剤含量は前記のような紙粉トラブルが生じないように比較的低レベルであって、具体的には5?50重量%、好ましくは5?20重量%未満、である。なお、組成物(B)の充填剤含量に対する組成物(D)のそれの割合は、1/2?1/8程度であることが好ましい。この程度の割合では、組成物(D)に無水マレイン酸変性ポリオレフィンを配合しなくても複合延伸フィルムの紙状層に起りがちな紙粉トラブルが抑制されるからである。
充填剤として使用される無機微細粉末としては、組成物(B)用として前記したものと同種または異種のものを使用することができる。
製品複合延伸フィルムの表面層を構成すべき組成物(D)は、紙粉トラブル防止の目的をよりよく達成するために、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン(以下、変性ポリオレフィンという)を含むことが好ましい。変性ポリオレフィンとしては、ポリオレフィン(好ましくは高密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらの混合物)に無水マレイン酸が0.01?5重量%(対ポリオレフィン)の割合でグラフト共重合したものが好ましく、また組成物(D)はこのような変性ポリオレフィンを組成物中0.1?15重量%の割合で含有することが好ましい。組成物(D)がこのような変性ポリオレフィンを含有することは、組成物(A)および(または)(C)が前記のようなガス透過性の小さい樹脂からなるときにこれらの層との間の接着性を向上させる点からも好ましいことである。
表面層の製造は、複合延伸フィルムの製造と実質的に同じであるということができる。下記を参照されたい。」(第3ページ右下欄第17行ないし第6ページ右上欄第5行)

・「実施例1
組成物(A)および(C)
(1) 三菱油化(株)製ポリプロピレン「三菱ノープレン MA-6」(商品名)(MI=1.2g/10分(230℃測定)) 85重量%
(2) 三菱油化(株)製高密度ポリエチレン「ユカロンハード EY-40」(商品名) 5重量%
(3) 金平鉱業製炭酸カルシウム微細粉末「KS-1500」(平均粒径1.2ミクロン) 10重量%
組成物(B)
(1) ポリプロピレン「三菱ノープレン MA-6」 50重量%
(2) 高密度ポリエチレン「ユカロンハードEY-40」 10重量%
(3) 炭酸カルシウム「KS-1500」 40重量%
組成物(D)
(1) 三菱油化製ポリプロピレン「三菱ノープレン MA-3」(商品名)(MI=6g/10分(230℃測定)) 80重量%
(2) 高密度ポリエチレン「ユカロンハード EY-40」 5重量%
(3) 炭酸カルシウム 15重量%
上記組成物(A)、(B)および(C)をそれぞれ別々の押出機を用いて溶融混練し、これを1台の共押出ダイに供給して、ダイ内で組成物(B)が中間層に、組成物(A)と(C)がその両面に位置するように溶融積層したのち、約250℃の温度で三層シートを押し出し、約50℃まで冷却した。
次いで、このシートを約140℃に加熱したのち、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸して三層構造の一軸延伸シート(基材層用)を得た。別に、組成物(D)を別々の2台の押出機により溶融混練し、ダイより250℃の温度でシート状に前記基材層の両表面にラミネートし、一旦室温より約30℃高い温度迄冷却してから、約150℃に再加熱し、テンターを用いて約9倍横方向に延伸し、更に、160℃のオーブン中を通過させて熱セット処理を行ない、耳部をスリットして、五層構造の白色不透明な合成紙を得た。
この合成紙の各層の肉厚(ミクロン)は次の通りであった。
(D)/(A)/(B)/(C)/(D)=25/5/50/5/25 」(第7ページ右上欄第1行ないし右下欄第4行)

・「得られた各合成紙について、次の方法および基準で合成紙としての適性を評価した。結果を表1に示す。
・・・(略)・・・
(5) 筆記性
三菱鉛筆製鉛筆HBを用いて文字を筆記した際、合成紙への鉛筆芯ののりを次のように評価した。
〇=筆記ができた
△=鉛筆芯ののりがやや劣った
×=鉛筆芯ののりが実用上問題であった」(第7ページ右下欄第9行ないし第8ページ右上欄末行)

(9)甲32
・「4.CPPフィルム(無延伸ポリプロピレンフィルム)
・・・(略)・・・
(3)フィルムの性質と用途
○1(当審注:○付き数字の1である。以下同様。)フィルムの構成
CPPフィルムにはプレーンのものと共押出(複合)のものがある。
共押出のものは、張り合わせる原料を同一のダイスから押し出すので、各層の厚みを薄くすることができると共に、特徴のある原料を組み合わせることで高品質のフィルムを作り出すことができる。


共押出品は特徴のあるレジンを組み合わせることができることであるが、一般的な組み合わせとしては左図のようなものがある。コア層は腰のあるホモポリマーを使い、シール層にはコポリマーやターポリマーを使い低温シール性、ホットタック性を付与し、接着層には接着性を付与する特殊ポリマーを使うような組み合わせが一般的な考え方である。」(第79ページ第1行ないし第80ページ第18行)

・「5.OPPフィルム(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)
・・・(略)・・・
(3)フィルムの性質と用途
○1フィルムの構成
フィルムの構成もCPPと同じでプレーンと共押出品がある。」(第84ページ第1行ないし第85ページ第3行)

2 無効理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)について
(1)甲1発明
ア 甲1について、実施例1に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「極限粘度[η]が1.9、アイソタクチックインデックスが96%のポリプロピレンを押出機aへ、メタクリル酸メチル成分が30重量%のエチレンメタクリル酸メチル共重合体(MFR:50)100重量部とメタクリル酸メチル成分が10重量%のエチレンメタクリル酸メチル共重合体(MFR:2)43重量部の混合物を押出機bへそれぞれ供給し、押出機aを280℃に加熱してポリマーを溶融し、口金から吐出し、
この溶融ポリマーを、30℃に保たれたキャスティングドラム(鏡面仕上げ)上にニップキャストし、急冷却固化して未延伸シートを得、
該未延伸シートを140℃に加熱された熱風オーブン中に導き予熱後、135℃で5倍長手方向に延伸後冷却し一軸延伸フィルムとし、
次いで240℃に加熱された押出機bから前記混合物を溶融吐出させ、該一軸延伸フィルム上に積層し、
30℃に保たれた冷却ロール(サンドブラスト仕上げ)上で冷却固化し、
次いで、160℃に加熱されたテンター内で幅方向に10倍延伸し、
その後、155℃で幅方向に5%リラックスを許しながら熱処理し、次いで冷却ロール上で冷却し端部をカツト除去後、前記混合物からなる熱接着層の表面を空気中でコロナ放電処理を行い巻き取って、ポリプロピレン層厚み15μm、熱接着層厚み10μmの合計厚み25μmの熱圧着プリントラミネート用フィルムを得る方法。」

イ 請求人は、甲1には、次の発明が記載されている主張する(審判請求書第7 6(1)ア(ア)、審判請求書第60及び61ページ)。
「1-1A’ ポリプロピレンで形成される基材層フィルムであって二層以上の積層された構造としてもよいフィルム(以下「甲1基材層フィルム」という。)の押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;
1-1B’ 前記第1押出成形された甲1基材層フィルムを30℃に保たれたキャスティングドラム(鏡面仕上げ)上にニップキャストし、急冷却固化する第1冷却ステップ;
1-1C’ 前記第1冷却された甲1基材層フィルムを、140℃に加熱された熱風オーブン中に導き予熱後、135℃で5倍長手方向に延伸するステップ;
1-1D’ 上記一軸延伸フィルム(甲1基材フィルム)上に、メタクリル酸メチル成分が30重量%のエチレンメ夕クリル酸メチル共重合体(MFR:50)100重量部とメ夕クリル酸メチル成分が10重量%のエチレンメタクリル酸メチル共重合体(MFR:2)43重量部の混合物の熱接着層が積層されるように押出機から溶融吐出する第2押出成形ステップ;
1-1E’ 前記熱接着層が積層された甲1基材層フィルムを、30℃に保たれた冷却ロール上で冷却固化する第2冷却ステップ;および、
1-1F’ 前記熱接着層がラミネーションされた甲1基材層フィルムを160℃に加熱されたテンター内で幅方向に10倍延伸するステップを含み、
1-1G’ 第1の押出成形ステップは、前記甲1基材層フィルムが二層以上の積層された構造となるように遂行されてもよく、
1-1H’ 前記縦方向延伸ステップは、前記甲1基材層フィルムを縦延伸するものであって、
1-1I’ 前記第2押出成形ステップでは、前記熱接着層が前記甲1基材層フィルムに積層されるように遂行される熱圧着プリントラミネート用フィルムの製造方法。」
しかし、甲1に、実施例として、二層以上の積層された構造の基材層フィルムが記載されているわけではなく、また、「第1押出成形ステップ」、「第1冷却ステップ」、「縦方向延伸ステップ」、「第2押出成形ステップ」、「加熱するステップ」及び「横方向延伸ステップ」等の記載があるわけでもないから、甲1の記載から請求人が主張するような発明を直ちには認定することはできない。

(2)本件発明について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「押出機aを280℃に加熱してポリマー(極限粘度[η]が1.9、アイソタクチックインデックスが96%のポリプロピレン)を溶融し、口金から吐出」する工程は、本件発明1における「多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ」と、「ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ」という限りにおいて一致する。
甲1発明における「この溶融ポリマーを、30℃に保たれたキャスティングドラム(鏡面仕上げ)上にニップキャストし、急冷却固化して未延伸シートを得」る工程は、本件発明1における「前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ」に相当する。
甲1発明における「該未延伸シートを140℃に加熱された熱風オーブン中に導き予熱後、135℃で5倍長手方向に延伸後冷却し一軸延伸フィルムとし」という工程は、本件発明1における「前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ」に相当する。
甲1発明における「次いで240℃に加熱された押出機bから前記混合物(メタクリル酸メチル成分が30重量%のエチレンメタクリル酸メチル共重合体(MFR:50)100重量部とメタクリル酸メチル成分が10重量%のエチレンメタクリル酸メチル共重合体(MFR:2)43重量部の混合物)を溶融吐出させ、該一軸延伸フィルム上に積層し」という工程は、本件発明1における「前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われるインライン押出である、第2押出成形ステップ」と、「前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われる押出である、第2押出成形ステップ」という限りにおいて一致する。
甲1発明における「30℃に保たれた冷却ロール(サンドブラスト仕上げ)上で冷却固化し」という工程は、本件発明1における「前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ」に相当する。
甲1発明における「次いで、160℃に加熱されたテンター内で幅方向に10倍延伸し」という工程は、本件発明1における「前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ」に相当する。
甲1発明における「その後、155℃で幅方向に5%リラックスを許しながら熱処理し、次いで冷却ロール上で冷却し端部をカツト除去後、前記混合物からなる熱接着層の表面を空気中でコロナ放電処理を行い巻き取って、ポリプロピレン層厚み15μm、熱接着層厚み10μmの合計厚み25μmの熱圧着プリントラミネート用フィルムを得る方法」は、本件発明1における「多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法」に相当する。

したがって、両者は、次の点で一致する。
<一致点>
「ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;
前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ;
前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ;
前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われる押出である、第2押出成形ステップ;および、
前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ
を含む、多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。」

そして、両者は、次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-1>
「ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ」における「ポリオレフィンフィルム」が、本件発明1においては、「多層」であるのに対し、甲1発明においては、「ポリマー(極限粘度[η]が1.9、アイソタクチックインデックスが96%のポリプロピレン)を溶融し、口金から吐出し」たものである点。

<相違点1-2>
「第2押出成形ステップ」における「押出成形」が、本件発明1においては、「インライン押出」であるのに対し、甲1発明においては、「押出」ではあるものの「インライン押出」であるかどうかの特定がない点。

<相違点1-3>
本件発明1においては、「前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され、
前記縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって、
前記第2押出成形ステップでは、ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される」という発明特定事項を有するのに対し、甲1発明においては、上記発明特定事項を有していない点。

(イ)判断
そこで、上記相違点について検討する。
a 相違点1-1及び1-3について
甲1に「該二軸延伸ポリプロピレンフィルムは単膜、積層体のいずれでもよい。」(第3ページ左上欄第13及び14行)と記載されていることから、甲1発明において、「ポリマー(極限粘度[η]が1.9、アイソタクチックインデックスが96%のポリプロピレン)を溶融し、口金から吐出し」たものを「積層体」とすることの動機付けはあるといえる。
また、甲32、4、25、27及び28に記載されているように、二軸延伸ポリプロピレンフィルムとして、スキン外層、コア層及びスキン内層からなる3層(当審注:「3層」は「積層体」である。)の共押出法によるポリプロピレンフィルムは、周知(以下、「周知技術1」という。)である。
したがって、甲1発明において、周知技術1を適用し、「ポリマー(極限粘度[η]が1.9、アイソタクチックインデックスが96%のポリプロピレン)を溶融し、口金から吐出し」たものに代えて、スキン外層、コア層及びスキン内層からなる3層の共押出法によるポリプロピレンフィルムを採用して、相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、甲1発明において、「ポリマー(極限粘度[η]が1.9、アイソタクチックインデックスが96%のポリプロピレン)を溶融し、口金から吐出し」たものを、スキン外層、コア層及びスキン内層からなる3層の共押出法によるポリプロピレンフィルムとすれば、必然的に、スキン外層、コア層及びスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸することになり、また、ヒートシール樹脂層はスキン外層及びスキン内層のどちらかにラミネーションされるように遂行されることになるから、甲1発明において、周知技術1を適用して、相違点1-3に係る本件発明1の発明特定事項とすることも、当業者が容易に想到し得たことである。

b 相違点1-2について
甲1発明における「第2押出成形ステップ」における「押出成形」は、甲1の「一軸延伸フィルムとした。次いで240℃に加熱された押出機bから前記混合物を溶融吐出させ、該一軸延伸フィルム上に積層し、30℃に保たれた冷却ロール(サンドブラスト仕上げ)上で冷却固化した。」(第6ページ左上欄第15ないし20行)という記載からみて、「インライン」で行われていると解するのが自然であるから、相違点1-2は実質的な相違点とはいえない。
仮に、相違点1-2が実質的な相違点であるとしても、甲24の第2図に示されるように「第2押出成形ステップ」における「押出成形」を「インライン」で行うことは従前より知られた手法にすぎないから、甲1発明において、甲24に記載された事項を適用して、相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

c 効果について
本件発明1の奏する効果は、甲1発明、周知技術1及び甲24に記載された事項からみて格別顕著なものとはいえない。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明1は、甲1発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に「前記樹脂層がラミネーションされたフィルムの第2冷却ステップは、表面に凹凸構造を有する冷却ロールを利用して前記樹脂層に気流溝を形成させるように遂行する」という発明特定事項を追加したものである、すなわち、本件発明2と甲1発明は、相違点1-1ないし1-3のほか、甲1発明が上記発明特定事項を有していない点(相違点1-4)でも相違する。
そこで、相違点1-4について検討する。
甲1発明における「冷却ロール(サンドブラスト仕上げ)」は、「樹脂層に気流溝を形成させる」ような「表面に凹凸構造を有する冷却ロール」ではないから、甲1発明は、上記発明特定事項を有するものではない。
また、他の証拠にも、上記発明特定事項は記載も示唆もされていない。
そして、本件発明2は、上記発明特定事項を有することにより、「前記気流溝は、気流通路を提供して、巻取時に皺が寄ることを効果的に防止する。すなわち、巻取時にフィルムとフィルムの間に存在する空気が、気流溝を介して抜け出て皺が寄ることを効果的に防止する。」(【0058】)及び「前記気流溝によってフィルムの巻取品質が向上する。」(【0057】)という主引用文献である甲1のほか他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明2は、甲1発明を主たる引用発明としたとき、この引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

なお、請求人は、甲1発明は、「前記熱接着層が積層された甲1基材フィルムの第2冷却ステップはサンドブラスト仕上げされた冷却ロールを使用して遂行される」という構成要件を有するから、必然的に「前記樹脂層に気流溝を形成されるように遂行される」ので、この点は実質的な相違点とはならず、仮にこの点が実質的な相違点となる前提に立っても、当業者にとっての設計事項にすぎない旨主張する(審判請求書第93及び94ページ)。
しかし、サンドブラスト仕上げされた冷却ロールを用いて第2冷却ステップを遂行したとしても、樹脂層が粗面化するだけで、気流溝が形成されるわけではないし、気流溝を形成することが設計事項にすぎないことを裏付ける証拠もないので、該主張は採用できない。

ウ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1に「前記第2押出成形ステップは、前記ヒートシール樹脂層として、メタロセン樹脂、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、およびエチレン酸ターポリマーからなる群より選択された一つ以上を含む原料を使用する」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
甲1発明は、「メタクリル酸メチル成分が30重量%のエチレンメタクリル酸メチル共重合体(MFR:50)100重量部とメタクリル酸メチル成分が10重量%のエチレンメタクリル酸メチル共重合体(MFR:2)43重量部の混合物」を「一軸延伸フィルム上に積層」するものであるから、上記発明特定事項を有するものである。
したがって、本件発明3は、甲1発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明3に「前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなる」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
周知技術1は、上記発明特定事項を有するものである。
したがって、本件発明4は、甲1発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1、3?4のいずれかに「前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、第1押出成形ステップにおいて使用した原料よりも融点の低い樹脂を含む原料を使用する」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
甲1には、「また、該熱接着層の融点Tmは、50?100℃の範囲にあるのが好ましく、より好ましくは55?80℃の範囲である。」(第4ページ右上欄第19行ないし左下欄第1行)と記載されている。
他方、ポリプロピレンの融点が164℃程度であることは技術常識である(甲2の実施例1)。
してみると、甲1発明における「メタクリル酸メチル成分が30重量%のエチレンメタクリル酸メチル共重合体(MFR:50)100重量部とメタクリル酸メチル成分が10重量%のエチレンメタクリル酸メチル共重合体(MFR:2)43重量部の混合物」の融点は、「極限粘度[η]が1.9、アイソタクチックインデックスが96%のポリプロピレン」より低いといえ、甲1発明は、上記発明特定事項を有するものである。
したがって、本件発明5は、甲1発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 本件発明6について
本件発明6は、本件発明1、3?5のいずれかに「前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、帯電防止剤を含む原料を使用する」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
甲1には、「本発明における熱接着層は、上記の重合体(A)および重合体(B)の混合物からなる。」(第3ページ右上欄第18及び19行)及び「なお、重合体Aと重合体Bの混合物には、さらに併用する添加剤として、公知の滑り剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤などを添加してもよい。」(第4ページ左上欄第1行ないし4行)と記載されている。
したがって、甲1発明において、上記発明特定事項を有するようにする動機付けはあるといえる。
よって、本件発明6は、甲1発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ 本件発明7について
本件発明7は、本件発明1、3?6のいずれかに「前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、ナイロン樹脂を含む原料を使用する」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
甲15に記載されているように、熱接着層の材料として、ナイロン樹脂を含む原料はよく知られたものにすぎない。
したがって、本件発明7は、甲1発明、周知技術1、甲24に記載された事項及び甲15に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク 本件発明8について
本件発明8は、本件発明1、3?7のいずれかに「前記第1押出成形ステップでは、スキン外層にスリップ剤およびブロッキング防止剤からなる群より選択された一つ以上が含まれるように遂行される」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
甲1には、「二軸延伸ポリプロピレンフィルムは公知の添加剤、例えば結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑り剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤などを含有させてもよい。」(第3ページ左上欄第14ないし18行)と記載されている。
したがって、甲1発明において、上記発明特定事項を有するようにする動機付けはあるといえる。
よって、本件発明8は、甲1発明、周知技術1、甲24に記載された事項及び甲15に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ケ 本件発明9について
本件発明9は、本件発明1に「前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなり、
前記ヒートシール樹脂層は、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、または、エチレン/プロピレン/ブタジエンの三元共重合体からなる」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
上記発明特定事項のうち、「前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなり」については、上記エと同様であり、「前記ヒートシール樹脂層は、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、または、エチレン/プロピレン/ブタジエンの三元共重合体からなる」については、上記ウと同様である。
したがって、本件発明9は、甲1発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

コ 本件発明10ないし16について
本件発明10ないし16は、請求項2を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明2の発明特定事項をすべて有するものであるから、本件発明2について検討したことと同様に、甲1発明を主たる引用発明としたとき、この引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)無効理由1についてのむすび
したがって、本件発明1及び3ないし9は、甲1を主引用文献として当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらについての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるので、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。
また、本件発明2及び10ないし16は、甲1を主引用文献として当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、それらについての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものであるとはいえない。

3 無効理由2(甲2を主引用文献とする進歩性)について
(1)甲2発明
ア 甲2について、実施例1に関して整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「メルトフローレート(MFR)0.8、融点164℃のホモポリプロピレン70重量%、融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)し、270℃に設定した押出機にて混練した後、シート状に押し出し、
冷却装置により冷却して、無延伸シートを得、
次いで、このシートを145℃に加熱した後、縦方向に5倍延伸して(A層)の縦方向5倍延伸シートを得、
一方、MFRが4.0のホモポリプロピレン58重量%と平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム42重量%との混合物(B)と、融点が90℃のエチレン・メタクリル酸共重合体(C)を、それぞれ別の押出機を用いて270℃の温度で溶融混練した後、一台のダイに供給して、該ダイ内で積層(B層-C層)した後、この積層物(B層-C層)をダイよりフィルム状に押し出して、前記A層の縦方向5倍延伸シートの裏面側にC層が外側になるように押し出し、
これを金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロールに通して、該積層構造フィルムのC層側に、0.3mm間隔(80線)、谷部の深さ30μmのドットを有する逆グラビア型のパターンをエンボス加工し、
他方、上記(B)の混合物を、前記A層のシートの表面側にラミネートし、紙状層(B層)を形成して、四層構造の積層フィルムを得、次いで、この積層フィルムを約155℃まで再加熱した後、横方向に7倍延伸し、
次いで紙状層(B層)にコロナ放電処理を行なった後、これを55℃まで冷却した後、耳部をスリットして、(B)/(A)/(B)/(C)の各層の厚さがそれぞれ30/70/30/10μmからなる四層構造の合成紙を得る方法。」

イ 請求人は、甲2には、次の発明が記載されていると主張する(審判請求書第7 6(1)イ(ア)、審判請求書第65及び66ページ)。
「2-1A’ ホモポリプロピレン・高密度ポリエチレンの混合物で形成される基材層フィルムであって二層以上の積層された構造としてもよいフィルム(以下「甲2基材層フィルム」という。)の押出成形を遂行する第1の押出成形ステップ;
2-1B’ 前記第1押出成形された甲2基材層フィルムを冷却装置により冷却する第1冷却ステップ;
2-1C’ 前記第1冷却された甲2基材層フィルムを、縦方向に5倍延伸する縦方向延伸ステップ;
2-1D’ 前記縦方向延伸された甲2基材層フィルムの裏面側に、(ホモポリプロピレンで形成されるB層/エチレン・メタクリル酸共重合体で形成されるC層)の熱融着樹脂層(以下「甲2樹脂層」という。)をこの順に押出成形する第2押出成形ステップ;
2-1E’ 前記甲2樹脂層がラミネーションされた甲2基材層フィルムを、金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロールに通した後、約155℃まで再加熱するステップ;および、
2-1F’ 前記甲2樹脂層がラミネーションされた甲2基材層フィルムを横方向に約7倍延伸する横方向延伸ステップを含み、
2-1G’ 第1の押出成形ステップは、前記甲2基材層フィルムが二層以上の積層された構造となるように遂行されてもよく、
2-1H’ 前記縦方向延伸ステップは、前記甲2基材層フィルムを縦延伸するものであって、
2-1I’ 前記第2押出成形ステップでは、甲2樹脂層が裏面側の前記甲2基材層フィルムにラミネーションされるように遂行されるインモールド用ラベルの製造方法」
しかし、甲2に、実施例として、二層以上の積層された構造の基材層フィルムが記載されているわけではなく、また、「第1押出成形ステップ」、「第1冷却ステップ」、「縦方向延伸ステップ」、「第2押出成形ステップ」、「第2冷却ステップ」及び「横方向延伸ステップ」等の記載があるわけでもないから、甲2の記載から請求人が主張するようは発明を直ちには認定することはできない。

(2)本件発明について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明における「メルトフローレート(MFR)0.8、融点164℃のホモポリプロピレン70重量%、融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)し、270℃に設定した押出機にて混練した後、シート状に押し出し」する工程は、本件発明1における「多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ」と、「ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ」という限りにおいて一致する。
甲2発明における「冷却装置により冷却して、無延伸シートを得」る工程は、本件発明1における「前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ」に相当する。
甲2発明における「次いで、このシートを145℃に加熱した後、縦方向に5倍延伸して(A層)の縦方向5倍延伸シートを得」る工程は、本件発明1における「前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ」に相当する。
甲2発明における「一方、MFRが4.0のホモポリプロピレン58重量%と平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム42重量%との混合物(B)と、融点が90℃のエチレン・メタクリル酸共重合体(C)を、それぞれ別の押出機を用いて270℃の温度で溶融混練した後、一台のダイに供給して、該ダイ内で積層(B層-C層)した後、この積層物(B層-C層)をダイよりフィルム状に押し出して、前記A層の縦方向5倍延伸シートの裏面側にC層が外側になるように押し出し」という工程は、本件発明1における「前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われるインライン押出である、第2押出成形ステップ」と、「前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われる押出である、第2押出成形ステップ」という限りにおいて一致する。
甲2発明における「これを金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロールに通して、該積層構造フィルムのC層側に、0.3mm間隔(80線)、谷部の深さ30μmのドットを有する逆グラビア型のパターンをエンボス加工し」という工程は、本件発明1における「前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ」に相当する。
甲2発明における「他方、上記(B)の混合物を、前記A層のシートの表面側にラミネートし、紙状層(B層)を形成して、四層構造の積層フィルムを得、次いで、この積層フィルムを約155℃まで再加熱した後、横方向に7倍延伸し」という工程は、本件発明1における「前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ」に相当する。
甲2発明における「次いで紙状層(B層)にコロナ放電処理を行なった後、これを55℃まで冷却した後、耳部をスリットして、(B)/(A)/(B)/(C)の各層の厚さがそれぞれ30/70/30/10μmからなる四層構造の合成紙を得る方法」は、本件発明1における「多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法」に相当する。

したがって、両者は、次の点で一致する。
<一致点>
「ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;
前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ;
前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ;
前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われる押出である、第2押出成形ステップ;および、
前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ
を含む、多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。」

そして、両者は、次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-1>
「ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ」における「ポリオレフィンフィルム」が、本件発明1においては、「多層」であるのに対し、甲2発明においては、「メルトフローレート(MFR)0.8、融点164℃のホモポリプロピレン70重量%、融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)し、270℃に設定した押出機にて混練した後、シート状に押し出し」たものである点。

<相違点2-2>
「第2押出成形ステップ」における「押出成形」が、本件発明1においては、「インライン押出」であるのに対し、甲2発明においては、「押出」ではあるものの「インライン押出」であるかどうかの特定がない点。

<相違点2-3>
本件発明1においては、「前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され、
前記縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって、
前記第2押出成形ステップでは、ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される」という発明特定事項を有するのに対し、甲2発明においては、上記発明特定事項を有していない点。

(イ)判断
a 相違点2-1及び2-3について
甲2に「このような基材層は単層であっても、或いは、二層以上の積層された構造であっても良い。」(第3ページ右下欄第14ないし16行)と記載されていることから、甲2発明において、「メルトフローレート(MFR)0.8、融点164℃のホモポリプロピレン70重量%、融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)し、270℃に設定した押出機にて混練した後、シート状に押し出し」たものを「二層以上の積層された構造」とすることの動機付けはあるといえる。
また、上記2(2)ア(イ)aで示したように、二軸延伸ポリプロピレンフィルムとして、スキン外層、コア層及びスキン内層からなる3層(当審注:「3層」は「二層以上の積層された構造」である。)の共押出法によるポリプロピレンフィルムは、周知(周知技術1)である。
したがって、甲2発明において、周知技術1を適用し、「メルトフローレート(MFR)0.8、融点164℃のホモポリプロピレン70重量%、融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)し、270℃に設定した押出機にて混練した後、シート状に押し出し」たものに代えて、スキン外層、コア層及びスキン内層からなる3層の共押出法によるポリプロピレンフィルムを採用して、相違点2-1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、甲2発明において、「メルトフローレート(MFR)0.8、融点164℃のホモポリプロピレン70重量%、融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)し、270℃に設定した押出機にて混練した後、シート状に押し出し」たものを、スキン外層、コア層及びスキン内層からなる3層の共押出法によるポリプロピレンフィルムとすれば、必然的に、スキン外層、コア層及びスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸することになり、また、ヒートシール樹脂層はスキン外層及びスキン内層のどちらかにラミネーションされるように遂行されることになるから、甲2発明において、周知技術1を適用して、相違点2-3に係る本件発明1の発明特定事項とすることも、当業者が容易に想到し得たことである。

b 相違点2-2について
甲2に「この様なラベルとしてはグラビア印刷された樹脂フィルム、オフセット多色印刷された合成紙(例えば、特公昭46-40794号公報、特公昭54-31030号公報、英国特許第1090059号明細書など)、或いは、アルミニウム箔の裏面にポリエチレンをラミネートし、その箔の表面にグラビア印刷したアルミニウムラベルなどが知られている。」(第1ページ左下欄末行ないし第2ページ第7行)と記載されているように、甲24(特公昭46-40794号公報)は、甲2発明の前提技術を示す文献であるといえるところ、甲24には、「第2押出成形ステップ」における「押出成形」を「インライン」で行うことが記載されている(第6ページ左上欄第15ないし20行)。
したがって、甲2発明における「第2押出成形ステップ」における「押出成形」は、「インライン」で行われていると解するのが自然であるから、相違点2-2は実質的な相違点とはいえない。
仮に、相違点2-2が実質的な相違点であるとしても、甲24の第2図に示されるように、「第2押出成形ステップ」における「押出成形」を「インライン」で行うことは従前より知られた手法にすぎないから、甲2発明において、甲24に記載された事項を適用して、相違点2-2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

c 効果について
本件発明1の奏する効果は、甲2発明、周知技術1及び甲24に記載された事項からみて格別顕著なものとはいえない。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明1は、甲2発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に「前記樹脂層がラミネーションされたフィルムの第2冷却ステップは、表面に凹凸構造を有する冷却ロールを利用して前記樹脂層に気流溝を形成させるように遂行する」という発明特定事項を追加したものである、すなわち、本件発明2と甲2発明は、相違点2-1ないし2-3のほか、甲2発明が上記発明特定事項を有していない点(相違点2-4)でも相違する。
そこで、相違点2-4について検討する。
甲2発明における「金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロール」は、甲2の「該エンボスは稜線で囲まれた独立した凹部構造を多数備える逆グラビア型のパターン(第5図参照)であることが重要で、第7図に示すような各部屋の気体が自由に移動できる凸形の正グラビア型のパターンでは本発明の効果を発揮することができない。」(第4ページ左上欄第18行ないし右上欄第3行)という記載によると、「樹脂層に気流溝を形成させる」ような「表面に凹凸構造を有する冷却ロール」ではないから、甲2発明は、上記発明特定事項を有するものではない。むしろ、甲2発明には、上記発明特定事項を有することに対して阻害要因があるといえる。
また、他の証拠にも、上記発明特定事項は記載も示唆もされていない。
そして、本件発明2は、上記発明特定事項を有することにより、「前記気流溝は、気流通路を提供して、巻取時に皺が寄ることを効果的に防止する。すなわち、巻取時にフィルムとフィルムの間に存在する空気が、気流溝を介して抜け出て皺が寄ることを効果的に防止する。」(【0058】)及び「前記気流溝によってフィルムの巻取品質が向上する。」(【0057】)という主引用文献である甲2のほか他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明2は、甲2発明を主たる引用発明としたときに、この引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

なお、請求人は、甲2発明は、「前記甲2樹脂層がラミネーションされた前記甲2基材層フィルムは、金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロールに通して、該積層構造フィルムのC層側に、気体が移動するためのドットを有する逆グラビア型のパターンをエンボス加工した後に、約155℃まで再加熱される」という構成要件を有し、該構成要件中の「前記甲2基材層フィルムは、金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロールに通して、該積層構造フィルムのC層側に、気体が移動するためのドットを有する逆グラビア型のパターンをエンボス加工」は、本件発明2の「前記樹脂層がラミネーションされたフィルムの第2冷却ステップは、表面に凹凸構造を有する冷却ロールを利用して前記樹脂層に気流溝を形成させる」に該当する旨主張する(審判請求書第111及び112ページ)。
しかし、上記のとおり、甲2発明における「金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロール」は、「樹脂層に気流溝を形成させる」ような「表面に凹凸構造を有する冷却ロール」ではないから、該主張は採用できない。

ウ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1に「前記第2押出成形ステップは、前記ヒートシール樹脂層として、メタロセン樹脂、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、およびエチレン酸ターポリマーからなる群より選択された一つ以上を含む原料を使用する」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
甲2発明は、「MFRが4.0のホモポリプロピレン58重量%と平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム42重量%との混合物(B)」及び「融点が90℃のエチレン・メタクリル酸共重合体(C)」を「A層の縦方向5倍延伸シートの裏面側にC層が外側になるように押し出し」するものであるから、上記発明特定事項を有するものである。
したがって、本件発明3は、甲2発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明3に「前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなる」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
周知技術1は、上記発明特定事項を有するものである。
したがって、本件発明4は、甲2発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1、3?4のいずれかに「前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、第1押出成形ステップにおいて使用した原料よりも融点の低い樹脂を含む原料を使用する」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
甲2発明における「融点が90℃のエチレン・メタクリル酸共重合体(C)」の融点は、「メルトフローレート(MFR)0.8、融点164℃のホモポリプロピレン70重量%、融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)」したものよりも低いといえ、甲2発明は、上記発明特定事項を有するものである。
したがって、本件発明5は、甲2発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 本件発明6について
本件発明6は、本件発明1、3?5のいずれかに「前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、帯電防止剤を含む原料を使用する」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
甲4に「ポリプロピレンはそのままでは成形時の熱分解や耐候性が悪いため熱安定剤、酸化防止剤が添加されている。
フィルムに使用されるその他の添加剤には帯電防止剤、アンチブロッキング剤およびスリップ剤がある」(第145ページ第18ないし21行)と記載されているように、フィルムに帯電防止剤、アンチブロッキング剤及びスリップ剤を含ませることは、周知(以下、「周知技術2」という。)である。
したがって、本件発明6は、甲2発明、周知技術1及び2並びに甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ 本件発明7について
本件発明7は、本件発明1、3?6のいずれかに「前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、ナイロン樹脂を含む原料を使用する」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
甲15に記載されているように、熱接着層の材料として、ナイロン樹脂を含む原料はよく知られたものにすぎない。
したがって、本件発明7は、甲2発明、周知技術1及び2、甲24に記載された事項並びに甲15に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク 本件発明8について
本件発明8は、本件発明1、3?7のいずれかに「前記第1押出成形ステップでは、スキン外層にスリップ剤およびブロッキング防止剤からなる群より選択された一つ以上が含まれるように遂行される」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
周知技術2で示したように、フィルムにアンチブロッキング剤及びスリップ剤を含ませることは、周知である。
したがって、本件発明8は、甲2発明、周知技術1及び2、甲24に記載された事項並びに甲15に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ケ 本件発明9について
本件発明9は、本件発明1に「前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなり、
前記ヒートシール樹脂層は、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、または、エチレン/プロピレン/ブタジエンの三元共重合体からなる」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
上記発明特定事項のうち、「前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなり」については、上記エと同様であり、「前記ヒートシール樹脂層は、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、または、エチレン/プロピレン/ブタジエンの三元共重合体からなる」については、上記ウと同様である。
したがって、本件発明9は、甲2発明、周知技術1及び2並びに甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

コ 本件発明10ないし16について
本件発明10ないし16は、請求項2を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明2の発明特定事項をすべて有するものであるから、本件発明2について検討したことと同様に、甲2発明を主たる引用発明としたとき、この引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)無効理由2についてのむすび
したがって、本件発明1及び3ないし9は、甲2を主引用文献として当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらについての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるので、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。
また、本件発明2及び10ないし16は、甲2を主引用文献として当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、それらについての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものであるとはいえない。

4 無効理由3(甲3を主引用文献とする進歩性)について
(1)甲3発明
ア 甲3について、実施例1ないし4に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。

「下記に示されるポリプロピレン樹脂組成物を、Tダイによる溶融押し出しで得られた厚さ約1000μのシートを、縦方向に1軸延伸することによって、1軸延伸フィルムを得、
ポリプロピレン樹脂組成物
アイソタクチックポリプロピレン
(MFR2.0g/10分)……99.2重量部
アルキルアミンエチレン
オキサイド付加物……0.25重量部
グリセリンのモノステアリン酸
エステル……0.35重量部
ステアリン酸アミド……0.05重量部
シリカ微粉末 ……0.15重量部
前記得られた1軸延伸フィルムの表面に、別の押し出し機から、下記第1表(当審注:第1表は略)に示される樹脂[A]70重量部と樹脂[B]30重量部との混合樹脂99.6重量部に対して、ステアリン酸アミド0.2重量部、シリカ微粉末0.2重量部とを添加した低融点樹脂層用の樹脂組成物を溶融,押し出し積層することによって、厚さ約50μの低融点樹脂層を有する積層シートを得、
次いで、前記積層シートをテンターに導入し、約9倍の横方向の延伸を行なうことによって、厚さ約25μの複合2軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを得る方法。」

イ 請求人は、甲3には、次の発明が記載されている主張する(審判請求書第7 6(1)ウ(ア)、審判請求書第70ないし72ページ)。
「3-1A’ ポリプロピレン樹脂組成物のシートの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;
3-1B’ 前記第1押出成形されたポリプロピレン樹脂組成物のシートを冷却する第1冷却ステップ;
3-1C’ 前記第1冷却されたポリプロピレン樹脂組成物のシートを、縦方向に1軸延伸する縦方向延伸ステップ;
3-1D’ 前記縦方向延伸されたポリプロピレン樹脂組成物のシートの表面に、低温でのヒートシール特性を有する低融点樹脂用の樹脂組成物を溶融、押し出し積層する第2押出成形ステップ;
3-1E’ 前記低温でのヒートシール特性を有する低融点樹脂用の樹脂組成物を積層した積層シートを冷却する第2冷却ステップ;および、
3-1F’ 前記第2冷却された積層シートを横方向に約7倍延伸する横方向延伸ステップを含み、
3-1G’ 第1押出成形ステップは、ポリプロピレン樹脂組成物のシートを用いて遂行され、
3-1H’ 前記縦方向延伸ステップは、前記ポリプロピレン樹脂組成物のシートを縦延伸するものであって、
3-1I’ 前記第2押出成形ステップでは、低温でのヒートシール特性を有する低融点樹脂用の樹脂組成物が前記ポリプロピレン樹脂組成物のシートの表面に積層されるように遂行される包装用フィルムの製造方法。」
しかし、甲3に、「第1押出成形ステップ」、「第1冷却ステップ」、「縦方向延伸ステップ」、「第2押出成形ステップ」及び「横方向延伸ステップ」等の記載があるわけでもないから、甲3の記載から請求人が主張するような発明を直ちには認定することはできない。

(2)本件発明について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明における「下記に示されるポリプロピレン樹脂組成物を、Tダイによる溶融押し出し」する工程は、本件発明1における「多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ」と、「ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ」という限りにおいて一致する。
甲3発明が、本件発明1における「前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ」に相当する工程を有することは技術常識から明らかである。
甲3発明における「(下記に示されるポリプロピレン樹脂組成物を、Tダイによる溶融押し出しで得られた)厚さ約1000μのシートを、縦方向に1軸延伸することによって、1軸延伸フィルムを得」る工程は、本件発明1における「前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ」に相当する。
甲3発明における「前記得られた1軸延伸フィルムの表面に、別の押し出し機から、下記第1表に示される樹脂[A]70重量部と樹脂[B]30重量部との混合樹脂99.6重量部に対して、ステアリン酸アミド0.2重量部、シリカ微粉末0.2重量部とを添加した低融点樹脂層用の樹脂組成物を溶融,押し出し積層することによって、厚さ約50μの低融点樹脂層を有する積層シートを得」る工程は、本件発明1における「前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われるインライン押出である、第2押出成形ステップ」と、「前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われる押出である、第2押出成形ステップ」という限りにおいて一致する。
甲3発明が、本件発明1における「前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ」に相当する工程を有することは技術常識から明らかである。
甲3発明における「次いで、前記積層シートをテンターに導入し、約9倍の横方向の延伸を行なうこと」という工程は、本件発明1における「前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ」に相当する。
甲3発明における「厚さ約25μの複合2軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを得る方法」は、本件発明1における「多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法」に相当する。

したがって、両者は、次の点で一致する。
<一致点>
「ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;
前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ;
前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ;
前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われる押出である、第2押出成形ステップ;および、
前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ
を含む、多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。」

そして、両者は、次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-1>
「ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ」における「ポリオレフィンフィルム」が、本件発明1においては、「多層」であるのに対し、甲3発明においては、「下記に示されるポリプロピレン樹脂組成物を、Tダイによる溶融押し出しで得られた」ものである点。

<相違点3-2>
「第2押出成形ステップ」における「押出成形」が、本件発明1においては、「インライン押出」であるのに対し、甲3発明においては、「押出」ではあるものの「インライン押出」であるかどうかの特定がない点。

<相違点3-3>
本件発明1においては、「前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され、
前記縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって、
前記第2押出成形ステップでは、ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される」という発明特定事項を有するのに対し、甲3発明においては、上記発明特定事項を有していない点。

(イ)判断
a 相違点3-1及び3-3について
上記2(2)ア(イ)aで示したように、二軸延伸ポリプロピレンフィルムとして、スキン外層、コア層及びスキン内層からなる3層の共押出法によるポリプロピレンフィルムは、周知(周知技術1)である。
したがって、甲3発明において、周知技術1を適用し、「下記に示されるポリプロピレン樹脂組成物を、Tダイによる溶融押し出しで得られた」ものに代えて、スキン外層、コア層及びスキン内層からなる3層の共押出法によるポリプロピレンフィルムを採用して、相違点3-1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、甲3発明において、「下記に示されるポリプロピレン樹脂組成物を、Tダイによる溶融押し出しで得られた」たものを、スキン外層、コア層及びスキン内層からなる3層の共押出法によるポリプロピレンフィルムとすれば、必然的に、スキン外層、コア層及びスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸することになり、また、ヒートシール樹脂層はスキン外層及びスキン内層のどちらかにラミネーションされるように遂行されることになるから、甲3発明において、周知技術1を適用して、相違点3-3に係る本件発明1の発明特定事項とすることも、当業者が容易に想到し得たことである。

b 相違点3-2について
甲24の第2図に示されるように「第2押出成形ステップ」における「押出成形」を「インライン」で行うことは従前より知られた手法にすぎないから、甲3発明において、甲24に記載された事項を適用して、相違点3-2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

c 効果について
本件発明1の奏する効果は、甲3発明、周知技術1及び甲24に記載された事項からみて格別顕著なものとはいえない。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明1は、甲3発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に「前記樹脂層がラミネーションされたフィルムの第2冷却ステップは、表面に凹凸構造を有する冷却ロールを利用して前記樹脂層に気流溝を形成させるように遂行する」という発明特定事項を追加したものである、すなわち、本件発明2と甲3発明は、相違点3-1ないし3-3のほか、甲3発明が上記発明特定事項を有していない点(相違点3-4)でも相違する。
そこで、相違点3-4について検討する。
甲3発明が、本件発明1における「前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ」に相当する工程を有することは技術常識から明らかであるが、該「第2冷却ステップ」が「表面に凹凸構造を有する冷却ロールを利用して前記樹脂層に気流溝を形成させるように遂行する」ものであることは技術常識であるとはいえない。
また、他の証拠にも、上記発明特定事項は記載も示唆もされていない。
そして、本件発明2は、上記発明特定事項を有することにより、「前記気流溝は、気流通路を提供して、巻取時に皺が寄ることを効果的に防止する。すなわち、巻取時にフィルムとフィルムの間に存在する空気が、気流溝を介して抜け出て皺が寄ることを効果的に防止する。」(【0058】)及び「前記気流溝によってフィルムの巻取品質が向上する。」(【0057】)という主引用文献である甲3のほか他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明2は、甲3発明を主たる引用発明としたときに、この引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

なお、請求人は、「甲3発明は包装用フィルムに関するものであるところ、包装用フィルムの具体的な用途としてインモールドラベルがあることは技術常識であり、インモールドラベルにエンボス加工を行うことは技術常識である。」、「インモールドラベルのエンボス加工が、エンボス模様(凹凸模様)が形成された冷却ロールを用いて行われることは周知である。そして、この方法は工業的に生産性が上がる好ましい方法である。」及び「そうすると、技術常識に基づき、甲3発明をインモールドラベルに用いると、必然的にエンボス加工を行うことになるが、その際に、上記生産性を上げる周知技術を適用する程度のことは当業者の設計事項である。」旨主張する(審判請求書第128ページ)。
しかし、甲3発明は「インモールドラベル」とは全く異なる「食品その他の包装体を得る際の包装用材や、紙に対する美粧用の保護フィルム等として利用される複合2軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム」に関するものであり、また、包装用フィルムの具体的な用途としてインモールドラベルがあることは請求人の提出した証拠に基づいては技術常識とはいえない(甲8は、プラスチック成形容器の印刷方法として、インモールドラベルを用いたインモールド法があることを示すものにすぎない。)。
したがって、甲3発明をインモールドラベルに用いることは当業者にとって容易とはいえず、該主張は採用できない。

ウ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1に「前記第2押出成形ステップは、前記ヒートシール樹脂層として、メタロセン樹脂、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、およびエチレン酸ターポリマーからなる群より選択された一つ以上を含む原料を使用する」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
甲3発明は、「下記第1表に示される樹脂[A]70重量部と樹脂[B]30重量部との混合樹脂99.6重量部に対して、ステアリン酸アミド0.2重量部、シリカ微粉末0.2重量部とを添加した低融点樹脂層用の樹脂組成物を溶融,押し出し積層する」ものであり、「下記第1表」には、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エチレン-メタクリル酸メチル樹脂、エチレン-アクリル酸メチル樹脂及びエチレン-メタクリル酸樹脂が挙げられているから、上記発明特定事項を有するものである。
したがって、本件発明3は、甲3発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明3に「前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなる」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
周知技術1は、上記発明特定事項を有するものである。
したがって、本件発明4は、甲3発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1、3?4のいずれかに「前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、第1押出成形ステップにおいて使用した原料よりも融点の低い樹脂を含む原料を使用する」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
甲3発明における「下記第1表に示される樹脂[A]70重量部と樹脂[B]30重量部との混合樹脂99.6重量部に対して、ステアリン酸アミド0.2重量部、シリカ微粉末0.2重量部とを添加した低融点樹脂層用の樹脂組成物」の融点は、「下記に示されるポリプロピレン樹脂組成物」よりも低いといえ、甲3発明は、上記発明特定事項を有するものである。
したがって、本件発明5は、甲3発明、周知技術1及び甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 本件発明6について
本件発明6は、本件発明1、3?5のいずれかに「前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、帯電防止剤を含む原料を使用する」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
上記3(2)カで示したように、フィルムに帯電防止剤、アンチブロッキング剤及びスリップ剤を含ませることは、周知(周知技術2)である。
したがって、本件発明6は、甲3発明、周知技術1及び2並びに甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ 本件発明7について
本件発明7は、本件発明1、3?6のいずれかに「前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、ナイロン樹脂を含む原料を使用する」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
甲15に記載されているように、熱接着層の材料として、ナイロン樹脂を含む原料はよく知られたものにすぎない。
したがって、本件発明7は、甲3発明、周知技術1及び2、甲24に記載された事項並びに甲15に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク 本件発明8について
本件発明8は、本件発明1、3?7のいずれかに「前記第1押出成形ステップでは、スキン外層にスリップ剤およびブロッキング防止剤からなる群より選択された一つ以上が含まれるように遂行される」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
甲3には、「なお、前記ポリプロピレン系樹脂層の形成に際しては、ポリプロピレン系樹脂フィルムの製膜に通常利用される添加剤、例えば、酸化防止剤,スリップ剤,アンチブロッキング剤,帯電防止剤,紫外線吸収剤等が、必要に応じて適宜の添加,含有され得るものであることは勿論である。」(第3ページ左上欄第15行ないし右上欄第3行)と記載されている。
したがって、甲3発明において、上記発明特定事項を有するようにする動機付けはあるといえる。
また、周知技術2で示したように、フィルムにアンチブロッキング剤及びスリップ剤を含ませることは、周知である。
よって、本件発明8は、甲3発明、周知技術1及び2、甲24に記載された事項並びに甲15に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ケ 本件発明9について
本件発明9は、本件発明1に「前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなり、
前記ヒートシール樹脂層は、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、または、エチレン/プロピレン/ブタジエンの三元共重合体からなる」という発明特定事項を追加したものである。
そこで、検討する。
上記発明特定事項のうち、「前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなり」については、上記エと同様であり、「前記ヒートシール樹脂層は、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、または、エチレン/プロピレン/ブタジエンの三元共重合体からなる」については、上記ウと同様である。
したがって、本件発明9は、甲3発明、周知技術1及び2並びに甲24に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

コ 本件発明10ないし16について
本件発明10ないし16は、請求項2を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明2の発明特定事項をすべて有するものであるから、本件発明2について検討したことと同様に、甲3発明を主たる引用発明としたとき、この引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)無効理由3についてのむすび
したがって、本件発明1及び3ないし9は、甲3を主引用文献として当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらについての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるので、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。
また、本件発明2及び10ないし16は、甲3を主引用文献として当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、それらについての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものであるとはいえない。

5 無効理由4(実施可能要件)について
(1)請求人の主張
請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
ア 本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載や技術常識に基づき、当業者は、本件発明1が奏する「融点が低い樹脂と基材となるポリオレフィン樹脂との層間接着強度(接着力)が低下する問題を解決できる」という作用効果を認識できないので、当業者は本件発明1を実施することができない(審判請求書第51及び140ないし146ページ)。
本件発明2は本件発明1の発明特定事項をすべて有するものであり、本件発明3ないし16は、直接又は間接的に本件発明1又は2に従属するものである。本件発明1につき実施可能要件違反の無効理由がある以上、本件発明2ないし16についても実施可能要件違反の無効理由がある(審判請求書第51及び146ページ)。

イ 本件発明2の「前記樹脂層がラミネーションされたフィルムの第2冷却ステップは、表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に空気チャンネルを形成させるように遂行する」との発明特定事項について、発明の詳細な説明及び図面の記載に矛盾(【0056】に「図5を参照すると、前記のような第2押出ステップを通じて樹脂層40がラミネーションされた多層フィルムFは、連続的に第2冷却ロール400に通過されて第2冷却ステップを経る。このとき、第2冷却ロール400に通過させるにあたって、第2冷却ロール400のロール表面に樹脂層40が密着するように位置させて冷却させるのが良い。」と記載されているが、図5では、表面に凹凸構造が形成された第2冷却ロール400が密着されているのは樹脂層40と反対側の面である。)があり、当業者が実施できる程度の記載がない(審判請求書第51及び147ないし150ページ)。
本件発明10ないし16は、直接又は間接的に本件発明2に従属するものである。本件発明2につき実施可能要件違反の無効理由がある以上、本件発明10ないし16についても実施可能要件違反の無効理由がある(審判請求書第51及び150ページ)。

(2)実施可能要件の判断基準
物を生産する方法の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、また、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載を要する。

(3)実施可能要件の判断
ア 発明の詳細な説明及び図面の記載
発明の詳細な説明には、次の記載がある。

・「【技術分野】
【0001】
本発明は、多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法、およびそれにより製造された多層ポリオレフィン延伸フィルムに関する。」

・「【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリプロピレン(PP)フィルムやポリエチレン(PE)フィルム等といった多層ポリオレフィン延伸フィルムは、包装材やラミネーションコーティング(ラミネートシート)用等として多く使用されている。これらPPおよびPEフィルム以外に、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムやポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがあるが、PVCフィルムは焼却時にダイオキシンといった有害物質を排出し、PETフィルムは費用対効率が良くなく、再生の困難さがある。
【0003】
これにより、費用効率性や再生性等において有利な多層ポリオレフィン延伸フィルム、特に、多層二軸延伸されたポリプロピレンフィルム(BOPPフィルム; Biaxially Oriented Polypropylene Film)が多く使用されている。前記BOPPフィルムは、費用効率性および再生性に有利であることはもちろん、引張強度、剛性、表面硬度、耐衝撃強度等の機械的物性や、光沢性、透明性等の光学的特性、そして無毒性、無臭性等の食品衛生性等においても優れるため、包装材(食品包装材等)やラミネーションコーティング(ラミネートシート)用等として有用である。
【0004】
図1は、一般的な従来のBOPPフィルムの概略構成図を示したものであり、図2は、従来技術によるBOPPフィルムの製造方法を説明する概略図である。
【0005】
図1を参照しつつ説明すると、一般的に、BOPPフィルムは、コア層3としてPP層と、前記コア層3の一側および他側にそれぞれ積層されたスキン外層(skin outer layer)1およびスキン内層(skin inner layer)2を含む。ここで、スキン外層1はPPを含み、スキン内層2はPPまたはPEを含む。また、前記スキン外層1および/またはスキン内層2上に、機能性樹脂層4が積層できる。
【0006】
たとえば、前記のようなBOPPフィルムがラミネーションコーティング(ラミネートシート)用、具体的に、2枚のBOPPフィルムの間に写真、身分証、印刷物またはメニューボード等の認識物を挿入した後、熱融着させるラミネーションコーティング(ラミネートシート)用フィルムや、包装用フィルム(たとえば、食品等の包装用)として使用される場合、前記機能性樹脂層4は、熱融着(ヒートシール)が可能なエチレン酢酸ビニル(EVA)やポリエチレン(PE)等の低温接着性樹脂を含むことができる。
【0007】
また、図2を参照しつつ説明すると、従来、前記のような構造を有するBOPPフィルムを製造するにあたっては、押出機5を通じてスキン外層1、コア層3およびスキン内層2を同時に押出させながら、押出ダイ(Dies)において前記3つの層1,2,3がラミネーションされるようにして、多層フィルムを形成することができる。その後、前記押出された多層フィルムを冷却ロール6に通過させて冷却させた後、二軸延伸、つまり、縦方向延伸(MDO;Machine Direction Orientation)と繋がる横方向延伸(TDO;Transverse Direction Orientation)を遂行して製造する。すなわち、図2に示したところのように、複数のロールRの組合せを有する縦方向延伸機7に通過させて、機械方向(すなわち、長手方向)に延伸(MDO)を遂行した後、連続的に横方向延伸機8に通過させて、レールパターン(rail pattern)により幅方向に延伸(TDO)を遂行する。その後、縦方向延伸および横方向延伸されたフィルムは、直ちにすぐに巻取ロール(winding roll)9に巻き取られる。
【0008】
従来、多層構造のBOPPフィルムを製造するにあたっては、前記のように、押出、冷却、縦方向延伸、横方向延伸工程を連続的に遂行して、たとえば、図1に示したところのような、PP層/PP層/PP(またはPE)層の構造を有する多層フィルムを製造する。
【0009】
また、前記のような連続的な工程を通じて多層フィルムを製造した後は、前記のようにスキン外層1および/またはスキン内層2上に機能性樹脂層4を追加でラミネーションさせる。すなわち、従来は、別個のコーティングや、ラミネーション(熱融着)等の追加工程を通じて、エチレン酢酸ビニル(EVA)等の機能性樹脂層4をラミネーションさせていた。しかし、こうした追加工程は、費用および時間が多く所要され、工程が複雑である。
【0010】
そこで、前記機能性樹脂層4をラミネーションするにあたり、多層押出コーティングの際、スキン(skin)押出部に機能性樹脂を投入して共押出(co-extrusion)成形する方法を考えることができるが、前記機能性樹脂とポリオレフィン(PP等)の物理化学的性質の差が大きい場合、同時押出が困難である。すなわち、低融点を有する樹脂や、ポリオレフィン以外の樹脂は、共押出が困難である。たとえば、エチレン酢酸ビニル(EVA)等のように融点が低い樹脂の場合、PPとの融点の差により、層間接着強度(接着力)が低下する。また、多層フィルムが縦方向延伸機7のロールRを通過する過程において、機能性樹脂層4にスクラッチが発生して製品の外観性が低下し、樹脂層4がロールRに貼り付く現象が発生して共押出を困難にすることがある。
【0011】
これにより、従来、機能性樹脂層4をラミネーションするにあたっては、前記のように費用と時間が多く所要される、別途のコーティングやラミネーション(熱融着)等の追加工程が必要であり、その結果、製品の生産単価上昇の原因となっている。」

・「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、融点が低い機能性樹脂の場合にも、連続工程によりラミネーションされるようにすることができ、製造工程が単純かつ時間の所要も少なく、製品の生産単価を下げることができる多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法を提供しようとするものである。また、本発明は、前記方法によって得られた多層ポリオレフィン延伸フィルムを提供しようとするものである。」

・「【発明の効果】
【0016】
本発明の具現例の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法によれば、縦延伸後に追加押出/冷却工程(つまり、第2押出/第2冷却ステップ)が行われるが、前記追加押出を通じて樹脂層がラミネーションされて、融点が低い樹脂の場合にも押出を通じたラミネーションが可能である。かかる方式により、樹脂層を含む多層を、連続的な押出を通じてラミネーションして多層ポリオレフィン延伸フィルムを製造することができる。これにより、製造工程が単純かつ時間の所要が少なく、製品の生産単価を下げることができる。」

・「【0029】
図5は、本発明の具現例による方法を具現するための装置を示す概略図である。図5は、例示的な目的で図示したものであって、図5に見られるもの以外に、多様な具現例が可能である。
【0030】
図5を参照すると、製造装置は、第1押出機100‐1、第1冷却ロール200、縦方向延伸機300、第2押出機100‐2、第2冷却ロール400、横方向延伸機500およびワインダー600を含む。これら各デバイスは、連続工程が可能なように配置される。各装置の構造は、特に限定されない。たとえば、縦方向延伸機300は、図5に示されたところのように、多数のロールRの組合せを含んでよい。図5において、参照番号R1およびR2は、それぞれ第1冷却ロール200および第2冷却ロール400に隣接して設置されたガイドロールR1,R2を示す。
【0031】
本発明の具現例による多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法は、多層ポリオレフィンフィルムFが形成されるように押出成形する第1押出成形ステップ;前記押出成形された多層フィルムFを冷却あせる第1冷却ステップ;前記第1冷された多層フィルムFを、縦方向に沿って延伸する縦方向延伸ステップ;前記縦方向延伸された多層フィルムF上に、一以上の樹脂層40がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップ;前記樹脂層40がラミネーションされた多層フィルムFを冷却させる第2冷却ステップ;および、前記第2冷却された多層フィルムFを横方向に沿って延伸する横方向延伸ステップを含む。そして、前記方法の各ステップは、連続的に遂行される。
【0032】
前記第1押出成形ステップにおいては、第1押出機100‐1を通じて多層フィルムFを押出成形する。具体的に、2層以上の層が同時にラミネーションされるように押出して多層フィルムFを提供する。ここで、前記第1押出機100‐1は、多層フィルムFの層数に対応する数の押出部を有し、押出ダイ(Dies)において各層はラミネーションされる。たとえば、スキン外層10、コア層30およびスキン内層20により構成された3層構造の多層フィルムFを形成しようとする場合、前記第1押出機100‐1は、前記3層構造に対応する3つの押出部を有することができる。」

・「【0040】
図5を参照すると、前記のような第1押出成形を通じて押出成形された多層フィルムFは、第1冷却ロール200に通過されて冷却される(第1冷却ステップ)。図5においては、前記第1冷却ロール200が製造装置内に1つ設置された様子を例示したが、前記第1冷却ロール200は、製造装置内に1つまたは2つ以上が連続的に配置されてよい。冷却温度、すなわち、前記第1冷却ロール200の温度は、たとえば、5?80℃てよいが、これにより制限されるものではない。
【0041】
続いて、前記第1冷却された多層フィルムFは、ガイドロールR1に沿って縦方向延伸機300に移送されて、機械方向(長手方向)に延伸(MDO)される。たとえば、図5に見られるところのように、複数のロールRにより縦方向延伸(MDO)が遂行されてよい。かかる縦方向延伸ステップの延伸温度、すなわち、前記縦方向延伸機300に設置されたロールRの温度は、たとえば、80?160℃てよいが、これにより制限されるものではない。また、縦方向延伸ステップにおいては、1.5?10倍(延伸比)、具体的に3?7倍(延伸比)、より具体的には4?5倍(延伸比)で縦方向延伸されてよい。かかる縦方向延伸比は、ロールRの速度により具現できる。
【0042】
前記縦方向延伸後、多層フィルムFは、追加押出工程(第2押出ステップ)および冷却工程(第2冷却ステップ)を連続的に経る。前記第2押出の間、多層フィルムF上に樹脂層40がラミネーションされる。具体的に、図5に示されているように、縦方向延伸された多層フィルムFは、第2押出機100‐2に供給される。ここで、前記第2押出機100‐2は、樹脂層40の形成のための物質を供給する樹脂供給部150を有してよい。前記第2押出機100‐2には、多層フィルムFが通過され、これと同時に、樹脂供給部150に樹脂層を形成する物質が供給される。かかる方式により、樹脂層40が押出されつつ、多層フィルムF上に樹脂層40がダイ(Dies)においてラミネーションされる。
【0043】
具現例において、前記樹脂層40を形成する物質、すなわち、前記樹脂供給部150から第2押出機100‐2に供給される物質は、特に制限されない。第2押出ステップにおいて、前記樹脂層40の物質の例は、ポリオレフィン樹脂(polyolefin resins)、シリコン樹脂(siliconeresins)、ウレタン樹脂(urethane resins)、アクリル樹脂(acrylic resins)、ポリアミド樹脂(polyamideresins)、メタロセン樹脂(metallocene resins)、ナイロン樹脂(nylon resins)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレン酢酸メチル(EMA)、エチレンメタクリル酸(EMAA)、エチレングリコール(EG)、エチレンアシドターポリマー(ethylene acid ter‐polymer)およびゴムからなる群より選択された一つ以上を含むことができる。
【0044】
具現例によると、縦方向延伸後、直ちに横方向延伸を行わずに、追加押出、すなわち、前記第2押出ステップを通じて樹脂層40がラミネーションされる。これにより、前記樹脂層40として、多層フィルムFを構成するベース樹脂と物理化学的性質の異なる物質(たとえば、ポリオレフィンよりも融点が低いまたは高い物質等)の使用が可能である。
【0045】
具体的には、具現例において、樹脂層40として、ポリオレフィン以外の樹脂、より具体的には、ポリオレフィンよりも融点が低いまたは高い機能性樹脂の使用が可能である。好ましくは、前記第2押出ステップにおいては、樹脂層40の物質として、第1押出において使用された物質よりも融点の低い樹脂を含む物質を使用してよい。たとえば、低温において熱融着(ヒートシール)が可能な低温接着性樹脂が使用されてよい。特に、低温接着性樹脂として、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレン酢酸メチル(EMA)、エチレンメタクリル酸(EMAA)、低温メタロセン樹脂およびエチレンアシドターポリマー(ethylene acid ter‐polymer)のように融点が低く、シール性に優れた樹脂を使用してよい。ここで、前記エチレンアシドターポリマー(ethylene acid ter‐polymer)は、延伸フィルムをインモールドラベル(in-mold labels)用として使用する場合に有用であり、エチレンアシドターポリマーの例は、エチレン/プロピレン/ブタジエンの三元共重合体等含んでよい。また、ターポリマーの商用化された製品の例は、デュポン社のappeal(商標) 52009を含む。樹脂層40の物質として、低融点樹脂は、前記羅列したところのような樹脂に限定されず、ポリエチレン(PE)も使用可能である。たとえば、前記のスキン外層10および/またはスキン内層20のベース樹脂としてポリプロピレン(PP)を使用する場合、樹脂層40を構成する樹脂としてポリプロピレン(PP)よりも融点が低いポリエチレン(PE)の使用が可能である。」

・「【0052】
本発明のまた他の具現例により、前記樹脂層40の原料としては、ナイロン(Nylon)樹脂を含むことができる。すなわち、前記樹脂層40は、主原料としてナイロン樹脂を含んでナイロン樹脂層かもしれない。樹脂層40がナイロン樹脂を含む場合、ナイロン樹脂はガス遮断性(バリア性)に優れるので、食品等の包装材として有用に使用され得る。また、ナイロン樹脂は、低温抵抗性に優れ、冷凍食品の包装に好適に使用され得る。前記ナイロン樹脂は、分子内にアミド結合(‐CONH‐)を有するポリアミド系であればこれに含み、たとえば、Nylon6、Nylon66およびNylon12等からなる群より選択された一つまたは二つ以上の組み合わせ(たとえば、Nylon6+Nylon66、Nylon6+Nylon12、Nylon6+Nylon66+Nylon12)を使用してよい。
【0053】
また、前記樹脂層40の原料としては、上述したところのような樹脂をベース樹脂(主原料)とするが、これ以外に、その他添加剤をさらに含む樹脂組成物が使用されてよい。例示的な具現例により、前記樹脂層40の原料は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレン酢酸メチル(EMA)、エチレンメタクリル酸(EMAA)、低温メタロセン樹脂およびエチレンアシドターポリマー(ethylene acid ter‐polymer)等といった低融点接着性樹脂;ポリアミド系樹脂、エチレングリコール(EG)および伝導性高分子等の帯電防止性樹脂(帯電防止剤);ナイロン樹脂等のガスバリア(barrier)性および低温抵抗性樹脂等から選択された一つ以上のベース樹脂を含むが、必要に応じて、スリップ剤およびブロッキング防止剤等から選択された一つ以上の添加剤をさらに含む樹脂組成物が使用できる。
【0054】
前記スリップ剤およびブロッキング防止剤の具体的な種類は、前述したところのとおりである。たとえば、前記スリップ剤の場合、ベース樹脂100重量部に対して、0.1?20重量部、より具体的には、それぞれ2?12重量部含まれてよい。前記ブロッキング防止剤の場合、ベース樹脂100重量部に対して、0.1?20重量部、より具体的には、それぞれ2?12重量部含まれてよい。」

・「【0056】
図5を参照すると、前記のような第2押出ステップを通じて樹脂層40がラミネーションされた多層フィルムFは、連続的に第2冷却ロール400に通過されて第2冷却ステップを経る。このとき、第2冷却ロール400に通過させるにあたって、第2冷却ロール400のロール表面に樹脂層40が密着するように位置させて冷却させるのが良い。また、図5においては、前記第2冷却ロール400が製造装置内に一台設置された様子を例示したが、前記第2冷却ロール400は、製造装置内に一台または二台以上の多数台が連続配置されてよい。かかる第2冷却ステップにおける冷却温度、すなわち、前記第2冷却ロール400の温度は、たとえば、5?80℃に設定されてよいが、これにより限定されるものではない。
【0057】
また、本発明の好ましい具現例により、前記第2冷却ステップにおいては、樹脂層40を冷却させるとともに、樹脂層40に気流溝(air flow groove)を形成させるのが良い。前記気流溝によってフィルムの巻取品質が向上する。以下において説明されるところのように、横方向延伸されたフィルムは、ワインダー600に巻き取られるが、このとき、巻取工程において皺が寄ってうまく伸ばされないことがある。樹脂層40を形成するにあたり、従来のようにコーティング工程などよらず、本発明は、縦方向延伸後、連続的な追加押出工程(第2押出ステップ)を通じて樹脂層40を積層することにより、巻取時に皺が寄ってうまく伸ばされないことがある。樹脂層40の原料として融点の低い樹脂を使用する場合、さらに多くの皺が生じる。
【0058】
このとき、前記気流溝は、気流通路を提供して、巻取時に皺が寄ることを効果的に防止する。すなわち、巻取時にフィルムとフィルムの間に存在する空気が、気流溝を介して抜け出て皺が寄ることを効果的に防止する。前記気流溝は、多数個であって、その形状は限定されない。前記気流溝は、樹脂層40の表面に長手方向または幅方向に、たとえば、線状または格子状に形成されたり、エンボス(emboss)状に規則的または不規則的に形成されたりしてよい。
【0059】
また、前記気流溝は、第2冷却ステップにおいて形成されるが、このとき、前記気流溝の形成は、表面に凹凸構造(彫刻構造)を有する第2冷却ロール400を使用することにより具現される。具体的に、図5に図示したところのように、前記第2冷却ロール400として、エンボス(emboss)表面を有する彫刻冷却ロールを使用して樹脂層40に気流溝が形成されるようにする。すなわち、第2押出ステップにおいて、樹脂層40がラミネーションされた多層フィルムFを第2冷却ロール400に通過させて冷却させるが、表面に凹凸構造450が形成された第2冷却ロール400に樹脂層40が密着されるように通過させて、気流溝が形成されるようにする。このとき、第2冷却ロール400に形成された凹凸構造450は、気流溝を形成させることができるものであれば、その形状や構造は限定されず、多様に設計されてよい。たとえば、前記の凹凸構造450は、第2冷却ロール400の軸方向と平行または直交した線状や格子状に形成されてよく、または第2冷却ロール400の表面に規則的または不規則的に突出したエンボス(emboss)状に形成されてよい。
【0060】
前記気流溝は、延伸フィルムの製品化の際または使用の際に容易に除去されてよい。具体的に、ワインダー600に巻き取られた延伸フィルム(製品)は、適切な大きさに切断されて製品化されてよいが、このとき、延伸フィルムに人為的な熱を加えると、前記気流溝は容易に除去される。すなわち、延伸フィルムに所定の熱を加えると、気流溝が削除されて延伸フィルムは平坦化を維持する。また、延伸フィルムの使用過程において、前記気流溝は容易に除去されてよい。たとえば、延伸フィルムは、包装材用、ラベル用およびラミネーションコーティング(ラミネートシート)用等に使用され得るが、このとき、シーリングのために熱を加えたり、コーティング密着のために熱を加える場合、前記熱により気流溝は容易に除去されてよい。」

・「【0061】
図5を参照すると、第2冷却ステップを経たフィルムは、ガイドロールR2に沿って横方向延伸機500に移送されて、幅方向に横方向延伸(TDO)される。前記横方向延伸機500は、通常のものを使用してよい。かかる横方向延伸ステップの延伸温度、すなわち、前記横方向延伸機500の温度は、たとえば、100?200℃に設定されてよいが、これにより限定されるものではない。また、横方向延伸ステップにおいては、2?15倍(延伸比)、具体的にたとえば5?12倍(延伸比)、より具体的にたとえば5?10倍(延伸比)で横方向延伸されてよく、かかる横方向延伸比は、レールパターン(Rail pattern)によって具現されてよい。」

・「【0063】
以上において説明した本発明によれば、前述したところのように、縦方向延伸後、そのまま直ちに横方向延伸を行わずに、縦方向延伸工程と横方向延伸工程の間に第2押出ステップおよび第2冷却ステップを含み、前記第2押出ステップを通じて樹脂層40がラミネーションされて、融点の低い樹脂の場合にも押出を通じたラミネーションが可能である。かかる連続的な押を通じて樹脂層40を含む多層延伸フィルムが得られる。したがって、製造工程が単調かつ時間の所要が少なく、製品の生産単価を下げることができる。また、前記第2冷却ステップにおいて、凹凸構造450が形成された第2冷却ロール400を使用する場合、樹脂層40に気流溝が形成されて、巻取時に皺が寄ることが防止されて多層フィルムの外観性を向上させられる。また、前記樹脂層40は、多層フィルムFについて優れた層間接着強度、すなわち、従来のコーティング工程によるものと同等以上の優れた層間接着強度を有する。」

・「【0064】
また、本発明の具現例により製造された延伸フィルムは、各種包装材、ラベル、ラミネーションコーティング(ラミネートシート)用等、多様に使用され得る。たとえば、食品、電子製品および医薬品等の包装材や、写真、身分証、印刷物、メニューボード等のラミネーションコーティング(ラミネートシート)用、そしてラベル付着用等、多様に使用され得る。」

・「【実施例】
【0067】
[実施例1および2]
図5に示される装置を利用して、押出を通じてスキン外層10/コア層30/スキン内層20を形成、冷却した後、縦方向延伸比4倍に縦延伸した。そして、縦延伸後、連続押出を通じたインライン(In‐Line)工程により、前記スキン内層20上に樹脂層40としてEVA層をラミネーション、冷却した後、横方向延伸比8倍に横方向延伸して、図3に示されるところのような4層構造の延伸フィルムを製造した。このとき、スキン外層10およびコア層30はPP層により構成し、スキン内層20は、PE層により構成される(実施例1)。そして前記EVA層上に、紙を熱ラミネーションしたものを実施例2による試片とした。
【0068】
[比較例1および2]
現在市販されているEVA熱ラミネーション製品を購入して、本比較例1および2の試片として使用した。具体的に、押出を通じてスキン外層(PP層)/コア層(PP層)/スキン内層(PE層)を形成、冷却し、縦方向延伸比4倍、横方向延伸比8倍にして縦方向延伸と横方向延伸を連続的に遂行する。次に、Off‐Lineを通じてスキン内層(PE層)にEVA層を熱ラミネーションしたものを、比較例1による試片として使用した。そして、EVA層上に紙を熱ラミネーションしたものを、比較例2による試片として使用した。
【0069】
前記実施例1および比較例1による各試片に対して、次のように層間接着強度評価し、その結果を下記表1に示した。
【0070】
層間接着強度(剥離強度)
(1)カッターバー(cutter bar)を利用して、各試片を、横(15mm)×縦(150mm)にカッティングしたサンプルを準備した。
(2)一定のサイズにカッティングされたサンプルの樹脂層(EVA層)とスキン内層(PE層)をかみそりで一定の長さのみ層間剥離した。
(3)一定の長さで層間剥離されたサンプルを標準電解液の入った容器に含浸させた後、密閉した。(電解液:1M LiPF6)
(4)サンプルが入っている電解液容器を、85℃の乾燥オーブンで、1日間保管した。
(5)1日後、サンプルを取り出して、層間接着強度(剥離強度)を引張強度器を利用して、180度の剥離角により測定した。
(6)実施例2および比較例2による試片に対しては、前記のような方法で樹脂層(EVA層)と紙との間の層間接着強度(剥離強度)を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0071】
【表1】


(当審注:右に90度回転している。)
【0072】
前記[表1]に示されたところのように、樹脂層(EVA層)をラミネーションするにあたって、本発明の具現例によりインライン押出を通じてラミネーションした場合、従来の熱ラミネーションフィルム(比較例1および2)と対比して、同等またはそれ以上の層間接着強度を有することが分かった。また、目視評価の結果、実施例1および2の各多層延伸フィルムは、表面外観性においても良好であることが分かり、また、紙を熱ラミネーションした多層延伸フィルムを折る際に浮きが発生しないので、紙との間の良好な接着性を有することが分かった。」

また、図面として、次の図がある。
・「【図5】

(当審注:右に90度回転している。)」

イ 判断
上記第3の請求項1の記載によると、本件発明1は、「多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ」、「前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ」、「前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ」、「前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われるインライン押出である、第2押出成形ステップ」、「前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ」及び「前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ」という発明特定事項を有し、さらに、「前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され、前記縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって、前記第2押出成形ステップでは、ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される」という発明特定事項を有する「多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法」である。
また、本件発明2は、本件発明1の発明特定事項に加え、上記「第2冷却ステップ」が「表面に凹凸構造を有する冷却ロールを利用して前記樹脂層に気流溝を形成させるように遂行する」という発明特定事項をさらに有するものである。
さらに、本件発明3ないし9は、本件発明1の発明特定事項に加え、請求項3ないし9に記載された発明特定事項をさらに有するものである。
さらにまた、本件発明10ないし16は、本件発明2の発明特定事項に加え、請求項10ないし16に記載された発明特定事項をさらに有するものである。
他方、発明の詳細な説明の記載は上記アのとおりであり、「多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ」については【0032】に、「前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ」については【0040】に、「前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ」については【0041】に、「前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われるインライン押出である、第2押出成形ステップ」については【0042】に、「前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ」及びそこで用いる「表面に凹凸構造を有する冷却ロール」については【0056】ないし【0060】に、「前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ」については【0061】に、「前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され」ることについては【0032】に、「前記縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸する」ことについては【0041】に、「前記第2押出成形ステップでは、ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される」については【0042】及び【0045】に、それぞれ詳細に記載され、【0063】には、それらにより、「製造工程が単調かつ時間の所要が少なく、製品の生産単価を下げることができる。また、前記第2冷却ステップにおいて、凹凸構造450が形成された第2冷却ロール400を使用する場合、樹脂層40に気流溝が形成されて、巻取時に皺が寄ることが防止されて多層フィルムの外観性を向上させられる。また、前記樹脂層40は、多層フィルムFについて優れた層間接着強度、すなわち、従来のコーティング工程によるものと同等以上の優れた層間接着強度を有する。」ことが記載されている。
また、本件発明3ないし9において本件発明1にさらに加えられた発明特定事項及び本件発明10ないし16において本件発明2にさらに加えられた発明特定事項についても、発明の詳細な説明に記載されている。
さらに、【0067】ないし【0072】には、具体的な実施例が記載され、当該実施例が「従来の熱ラミネーションフィルム(比較例1および2)と対比して、同等またはそれ以上の層間接着強度を有すること」も記載されている。
さらにまた、【0064】には、「本発明の具現例により製造された延伸フィルム」がどのような分野で使用されるのか詳細に記載されている。
したがって、本件発明1ないし16について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、また、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえ、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。

ウ 請求人の主張について
(ア)上記(1)アの主張について
上記(2)のとおり、作用効果を奏するかどうかは、実施可能要件を充足するか否かに関係がない。
仮に、請求人が主張するように作用効果を奏することが実施可能要件を充足するために必要であるとしても、発明の詳細な説明の【0016】によると、本件発明1ないし16の作用効果は、「樹脂層を含む多層を、連続的な押出を通じてラミネーションして多層ポリオレフィン延伸フィルムを製造することができる」こと及び「製造工程が単純かつ時間の所要が少なく、製品の生産単価を下げることができる」ことであり、請求人が主張する「融点が低い樹脂と基材となるポリオレフィン樹脂との層間接着強度(接着力)が低下する問題を解決できる」ことではない。
そして、本件発明1ないし16は、費用と時間が多く所要される、別途のコーティングやラミネーション(熱融着)等の追加工程を必要としないことから、上記作用効果を奏することは明らかである。
したがって、請求人の上記(1)アの主張は採用できない。

(イ)上記(1)イの主張について
発明の詳細な説明の【0029】によると、図5は、本件発明1ないし16の理解を助けるために例示的に図示したものであり、当該図5が設計図でないことは明らかであって、発明の詳細な説明の記載(【0042】等)をみれば、樹脂層40が多層フィルムF上に積層される際に、冷却ロール400と密着する側に積層されることは当業者に明らかであることから、当業者は、当該樹脂供給部150及び第2の押出機100-2の部分において、多層フィルムFの下側に樹脂層が積層されるものと理解する。
そして、発明の詳細な説明の記載(【0056】ないし【0060】等)をみれば、空気チャンネルが樹脂層の表面であって、冷却ロールに接触する面に形成されることも当業者に明らかである。
したがって、本件発明2の「前記樹脂層がラミネーションされたフィルムの第2冷却ステップは、表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に空気チャンネルを形成させるように遂行する」との発明特定事項について、発明の詳細な説明及び図面の記載に矛盾があるとはいえない。
また、直接又は間接的に本件発明2に従属する本件発明10ないし16についても同様である。
よって、請求人の上記(1)イの主張は採用できない。

(4)無効理由4についてのむすび
したがって、本件発明1ないし16に関して、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえ、それらについての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第123条第1項第4号に該当するとはいえないので、無効理由4は理由がない。

6 無効理由5(サポート要件)について
(1)請求人の主張
請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
ア 本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載や技術常識に基づくと、当業者は、本件発明1の融点が限定されていないヒートシール樹脂層では、「融点の低い樹脂を基材となるポリオレフィン(PP)と共押出すると層間接着強度(接着力)が低下する」のを防止するという本件発明1の課題を解決することを認識することができない(審判請求書第51、151及び152ページ)。
本件発明2は本件発明1の発明特定事項をすべて有するものであり、本件発明3ないし16は、直接又は間接的に本件発明1又は2に従属するものである。本件発明1につきサポート要件違反の無効理由がある以上、本件発明2ないし16についてもサポート要件違反の無効理由がある(審判請求書第51及び152ページ)。

イ 本件発明2の「前記樹脂層がラミネーションされたフィルムの第2冷却ステップは、表面に凹凸構造を有する冷却ロールを利用して前記樹脂層に気流溝を形成させる」という発明特定事項に関し、発明の詳細な説明と図面の記載に矛盾(上記5(1)イ参照。)があり、発明の詳細な説明は、当業者が「巻取時に皺が寄ることを効果的に防止する」という本件発明2の課題を解決することを認識できるように記載されていない(審判請求書第51、52、152及び153ページ)。
本件発明10ないし16は、直接又は間接的に本件発明2に従属するものである。本件発明2につきサポート要件違反の無効理由がある以上、本件発明10ないし16についてもサポート要件違反の無効理由がある(審判請求書第51及び153ページ)。

(2)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、サポート要件の存在は、特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。

(3)サポート要件の判断
ア 特許請求の範囲の記載
本件発明1ないし16に関する特許請求の範囲の記載は、上記第3の請求項1ないし16のとおりである。

イ 発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明の記載は、上記5(3)アのとおりである。

ウ 判断
(ア)発明の詳細な説明の記載(【0001】ないし【0012】等)によると、本件発明1ないし16の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「融点が低い機能性樹脂の場合にも、連続工程によりラミネーションされるようにすることができ、製造工程が単純かつ時間の所要も少なく、製品の生産単価を下げることができる多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法を提供すること」である。

(イ)「多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ」については【0032】に、「前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ」については【0040】に、「前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ」については【0041】に、「前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われるインライン押出である、第2押出成形ステップ」については【0042】に、「前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ」及びそこで用いる「表面に凹凸構造を有する冷却ロール」については【0056】ないし【0060】に、「前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ」については【0061】に、「前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され」ることについては【0032】に、「前記縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸する」ことについては【0041】に、「前記第2押出成形ステップでは、ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される」については【0042】及び【0045】に、それぞれ詳細に記載され、【0063】には、それらにより、「製造工程が単調かつ時間の所要が少なく、製品の生産単価を下げることができる。また、前記第2冷却ステップにおいて、凹凸構造450が形成された第2冷却ロール400を使用する場合、樹脂層40に気流溝が形成されて、巻取時に皺が寄ることが防止されて多層フィルムの外観性を向上させられる。また、前記樹脂層40は、多層フィルムFについて優れた層間接着強度、すなわち、従来のコーティング工程によるものと同等以上の優れた層間接着強度を有する。」ことが記載されている。
また、【0067】ないし【0072】には、具体的な実施例が記載され、当該実施例が「従来の熱ラミネーションフィルム(比較例1および2)と対比して、同等またはそれ以上の層間接着強度を有すること」も記載されている。
したがって、発明の詳細な説明の上記記載に接した当業者は、本件発明1ないし16は、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると理解する。
よって、本件発明1ないし16は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるというべきであり、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。

エ 請求人の主張について
(ア)上記(1)アの主張について
上記ウ(ア)のとおり、本件発明1ないし16の発明の課題は、「融点が低い機能性樹脂の場合にも、連続工程によりラミネーションされるようにすることができ、製造工程が単純かつ時間の所要も少なく、製品の生産単価を下げることができる多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法を提供すること」であり、請求人が主張する「融点の低い樹脂を基材となるポリオレフィン(PP)と共押出すると層間接着強度(接着力)が低下する」のを防止することではない。
そして、上記ウ(イ)のとおり、本件発明1ないし16は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、請求人の上記(1)アの主張は採用できない。

(イ)上記(1)イの主張について
上記ウ(ア)のとおり、本件発明1ないし16の発明の課題は、「融点が低い機能性樹脂の場合にも、連続工程によりラミネーションされるようにすることができ、製造工程が単純かつ時間の所要も少なく、製品の生産単価を下げることができる多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法を提供すること」であり、請求人が主張する「巻取時に皺が寄ることを効果的に防止する」ことではない。
そして、本件発明1ないし16は、上記ウ(イ)のとおり、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
仮に、本件発明2及び直接又は間接的に本件発明2に従属する本件発明10ないし16の発明の課題が、「巻取時に皺が寄ることを効果的に防止する」ことであるとしても、上記5(3)ウのとおり、発明の詳細な説明と図面の記載に矛盾はなく、本件発明2及び直接又は間接的に本件発明2に従属する本件発明10ないし16は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が「巻取時に皺が寄ることを効果的に防止する」という発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、請求人の上記(1)イの主張は採用できない。

(4)無効理由5についてのむすび
したがって、本件発明1ないし16は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、それらについての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第123条第1項第4号に該当するとはいえないので、無効理由5は理由がない。

7 無効理由6(明確性要件)について
(1)請求人の主張
請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
ア 発明の詳細な説明の記載や技術常識に基づくと、本件発明1が「融点の低い樹脂」を必須の前提とするにもかかわらず、本件発明1には、ヒートシール樹脂層という融点とは全く関係のない樹脂層が規定されているだけでなく、ヒートシール樹脂層が何を意味するのかも明確ではない(審判請求書第52、154及び155ページ)。
本件発明2ないし16は、本件発明1で特定する発明特定事項をすべて有するものであるから、本件発明1につき明確性要件違反の無効理由がある以上、本件発明2ないし16についても明確性要件違反の無効理由がある(審判請求書第52及び155ページ)。

イ 本件発明2の「前記樹脂層がラミネーションされたフィルムの第2冷却ステップは、表面に凹凸構造を有する冷却ロールを利用して前記樹脂層に気流溝を形成させる」との記載に関し、発明の詳細な説明及び図面の記載に矛盾(上記5(1)イ参照。)があり、また、気流溝自体の文言も不明なため、本件発明2に明確性要件違反の無効理由がある(請求書第52及び155ないし157ページ)。
本件発明10ないし16は、直接又は間接的に本件発明2に従属するものである。本件発明2につき明確性要件違反の無効理由がある以上、本件発明10ないし16についても明確性要件違反の無効理由がある(審判請求書第52及び157ページ)。

(2)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

(3)明確性要件の判断
ア 判断
本件発明1ないし16に関する特許請求の範囲の記載は、上記第3の請求項1ないし16のとおりである。
そして、特許請求の範囲の記載には、意味内容が不明な記載はなく、また、上記5(3)イのとおり、発明の詳細な説明の記載及び図面に本件発明1ないし16が有する各発明特定事項について詳細に記載されているから、特許請求の範囲の記載並びに願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、本件発明1ないし16がどのようなものかを当業者は理解することができるといえる。
したがって、本件発明1ないし16に関して、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
よって、本件発明1ないし16に関して、特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合する。

イ 請求人の主張について
(ア)上記(1)アについて
上記(2)のとおり、前提とする樹脂が何であるかは、明確性要件に適合するか否かと関係がない。
仮に、前提とする樹脂が何であるかが明確性要件に適合するために必要であるとしても、 発明の詳細な説明の【0012】の「本発明は、融点が低い機能性樹脂の場合にも、連続工程によりラミネーションされるようにすることができ、製造工程が単純かつ時間の所要も少なく、製品の生産単価を下げることができる多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法を提供しようとするものである。」という記載における「融点が低い機能性樹脂の場合にも」という記載は、「融点が低くない機能性樹脂の場合もそうであるが」ということを前提としていることは当業者に明らかであり、本件発明1は「融点の低い樹脂」を必須の前提とするものではない。
また、本件発明1における「ヒートシール樹脂層」が、ヒートシールが可能な樹脂の層を意味することも当業者に明らかである。
したがって、本件発明1は明確であるし、直接又は間接的に本件発明1に従属する本件発明3ないし9も明確である。
同様に、本件発明2は明確であるし、直接又は間接的に本件発明2に従属する本件発明10ないし16も明確である。
よって、請求人の上記(1)アの主張は採用できない。

(イ)上記(1)イについて
上記5(3)ウ(イ)のとおり、発明の詳細な説明と図面の記載に矛盾はない。
また、本件発明2における「気流溝」が気流通路を提供するための溝であることは、その文言自体並びに発明の詳細な説明の【0057】及び【0058】の記載から、明らかである。
したがって、本件発明2は明確であるし、直接又は間接的に本件発明2に従属する本件発明10ないし16も明確である。
よって、請求人の上記(1)イの主張は採用できない。

(4)無効理由6についてのむすび
したがって、本件発明1ないし16は明確であり、それらについての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第123条第1項第4号に該当するとはいえないので、無効理由6は理由がない。

第7 結語
以上のとおり、本件発明1及び3ないし9に関しては、無効理由1ないし3は理由があるので、本件発明1及び3ないし9についての特許は無効とすべきである。
また、本件発明2及び10ないし16に関しては、無効理由1ないし6はいずれも理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明2及び10ないし16についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、これを9分し、その1を請求人の負担とし、その余を被請求人の負担とすべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;
前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ;
前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ;
前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われるインライン押出である、第2押出成形ステップ;
前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ;および、
前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ
を含み、前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され、
前記縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって、
前記第2押出成形ステップでは、ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項2】
多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;
前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ;
前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ;
前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって、当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われるインライン押出である、第2押出成形ステップ;
前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ;および、
前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ
を含み、前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され、
前記縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって、
前記第2押出成形ステップでは、ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法であって、
前記樹脂層がラミネーションされたフィルムの第2冷却ステップは、表面に凹凸構造を有する冷却ロールを利用して前記樹脂層に気流溝を形成させるように遂行する、多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第2押出成形ステップは、前記ヒートシール樹脂層として、メタロセン樹脂、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、およびエチレン酸ターポリマーからなる群より選択された一つ以上を含む原料を使用する、請求項1に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなる、請求項3に記載の多層ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、第1押出成形ステップにおいて使用した原料よりも融点の低い樹脂を含む原料を使用する、請求項1、3?4のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、帯電防止剤を含む原料を使用する、請求項1、3?5のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、ナイロン樹脂を含む原料を使用する、請求項1、3?6のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記第1押出成形ステップでは、スキン外層にスリップ剤およびブロッキング防止剤からなる群より選択された一つ以上が含まれるように遂行される、請求項1、3?7のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなり、
前記ヒートシール樹脂層は、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、または、エチレン/プロピレン/ブタジエンの三元共重合体からなる、請求項1に記載の多層ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記第2押出成形ステップは、前記ヒートシール樹脂層として、メタロセン樹脂、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、およびエチレン酸ターポリマーからなる群より選択された一つ以上を含む原料を使用する、請求項2に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなる、請求項10に記載の多層ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、第1押出成形ステップにおいて使用した原料よりも融点の低い樹脂を含む原料を使用する、請求項2、10?11のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、帯電防止剤を含む原料を使用する、請求項2、10?12のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、ナイロン樹脂を含む原料を使用する、請求項2、10?13のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記第1押出成形ステップでは、スキン外層にスリップ剤およびブロッキング防止剤からなる群より選択された一つ以上が含まれるように遂行される、請求項2、10?14のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなり、
前記ヒートシール樹脂層は、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、または、エチレン/プロピレン/ブタジエンの三元共重合体からなる、請求項2に記載の多層ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2020-06-26 
結審通知日 2020-07-02 
審決日 2020-07-31 
出願番号 特願2013-548355(P2013-548355)
審決分類 P 1 113・ 537- ZDA (B29C)
P 1 113・ 121- ZDA (B29C)
P 1 113・ 536- ZDA (B29C)
最終処分 一部成立  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 植前 充司
加藤 友也
登録日 2015-09-11 
登録番号 特許第5807070号(P5807070)
発明の名称 ヒートシール樹脂層を含む多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法  
代理人 胡田 尚則  
代理人 青木 篤  
代理人 高橋 正俊  
代理人 柳下 彰彦  
代理人 青木 篤  
代理人 胡田 尚則  
代理人 高橋 正俊  
代理人 篠田 淳郎  
代理人 三橋 真二  
代理人 出野 知  
代理人 三橋 真二  
代理人 出野 知  
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