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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W |
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管理番号 | 1371260 |
審判番号 | 不服2020-927 |
総通号数 | 256 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-01-23 |
確定日 | 2021-03-09 |
事件の表示 | 特願2016-573835「デュアル接続性においてSRSを処理するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月23日国際公開、WO2015/195792、平成29年 7月 6日国内公表、特表2017-518707、請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)6月17日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年6月20日 米国、2015年6月12日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 5月25日 手続補正書及び上申書の提出 平成31年 2月 4日付け 拒絶理由通知書 令和 元年 5月13日 意見書、手続補正書の提出 令和 元年 9月13日付け 拒絶査定 令和 2年 1月23日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提 出 令和 2年 7月 3日 上申書の提出 令和 2年10月14日付け 拒絶理由通知書(当審) 令和 3年 1月 8日 意見書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和元年9月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1ないし30に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1. NTT DOCOMO,Power-control mechanisms for dual connectivity[online],3GPP TSG RAN WG1 Meeting ♯77 R1-142264,2014年 5月10日アップロード,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_77/Docs//R1-142264.zip> 2.LG Electronics,Uplink power control for dual connectivity[online],3GPP TSG RAN WG1 Meeting ♯77 R1-142141,2014年 5月10日アップロード,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_77/Docs//R1-142141.zip> 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 3.(進歩性)この出願の請求項1ないし26に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ●理由1(サポート要件)、理由2(明確性) (1)請求項1の「時間期間」とはどのような期間か不明確であり、シンボル期間より長い期間が含まれる記載であるが、シンボル期間より長い期間の場合に「チャネル重複」とはどのような状態がチャネル重複であるのか不明確である。 まず、発明の詳細な説明の段落11に「シンボル期間のあいだ重複チャネルを分析すること、ここで、シンボル期間が時間期間を含むかまたは時間期間である、を含む。」と記載され、また段落66に「シンボル期間(たとえば、時間期間)」と記載されており、時間期間としてはシンボル期間又はシンボル期間より短い期間しか発明の詳細な説明では例示されておらず、時間期間がシンボル期間より長い期間の場合は発明の詳細な説明に記載されていない。 また、時間期間がシンボル期間より長い期間の場合である例えばサブフレーム期間での「チャネル重複」とはどのような重複をチャネル重複というか、発明の詳細な説明及び技術常識を参酌しても不明確である。 請求項8、13、20及び請求項1、8、13、20を引用する請求項にも同様の不備がある。 したがって、請求項1?26に係る発明は不明確であるし、請求項1?26に係る発明と発明の詳細な説明との対応関係が不明である。(明確性、サポート要件) (2)請求項1の「第1のセル上での送信」とはどのような信号を送信するか不明確であり、発明の詳細な説明の段落5に「説明する特徴は、一般に、デュアル接続性シナリオにおいてサウンディング基準信号(SRS)を送信するための1つまたは複数の改善されたシステム、方法、および装置に関する。」と記載され、段落39に「UE115-aは、ある基地局(たとえば、基地局105-a)へのUL送信に関して電力制限状態にあるが、別の基地局(たとえば、105-b)への送信のために電力制限状態にないことがある。電力制限のステータスは、UE115-aがSRSを送信するかどうかに影響を及ぼし得る。」と記載され、図4A、図4B、図11及び図12においてもSRSの送信について記載されている。したがって、第1のセル上でのSRSの送信以外の送信については記載されておらず、PUCCHやPUSCHとSRSでは情報の重要性が違うことが技術常識であるから、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 請求項8、13、20及び請求項1、8、13、20を引用する請求項にも同様の不備がある。 したがって、請求項1?26に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものではない。(サポート要件) (3)請求項1に「余剰電力を割り振るかどうかを決定すること」は記載されているが、割り振られた余剰電力を最終的にどのように使用するかは不明確である。 請求項8、13、20及び請求項1、8、13、20を引用する請求項にも同様の不備がある。 したがって、請求項1?26に係る発明は不明確である。(明確性) (4)請求項1に「前記UEが前記時間期間のあいだ前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、および前記UEが前記時間期間のあいだ前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定することは、前記時間期間のあいだにチャネル重複があるかどうか決定することを備える」と記載され、時間期間のあいだにチャネル重複があるかの決定が、UEが電力制限状態にあり得るのか電力制限状態にないかの決定であると読み取れる。 一方、発明の詳細な説明の段落66では「UEが電力制限状態にあり得ると決定することは、シンボル期間(たとえば、時間期間)の間重複チャネルを分析することを含みであり得る。」と記載されており、UEが電力制限状態にあり得るのか電力制限状態にないかの決定をする際に、シンボル期間の間に重複チャネルがあるか否かを分析することを行うという動作が含まれると読み取れる。 ここで、時間期間のあいだにチャネル重複があるかの決定と、電力制限状態にあり得るのか電力制限状態にないかの決定は別の決定であり、チャネル重複があるからといって電力制限状態であるとはいえないことは明らかであるから、「前記UEが前記時間期間のあいだ前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、および前記UEが前記時間期間のあいだ前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定することは、前記時間期間のあいだにチャネル重複があるかどうか決定することを備える」は不明確であり、発明の詳細な説明に記載されていない。 請求項8、13、20及び請求項1、8、13、20を引用する請求項にも同様の不備がある。 したがって、請求項1?26に係る発明は不明確であるし、請求項1?26に係る発明と発明の詳細な説明との対応関係が不明である。(明確性、サポート要件) (5)請求項2に「前記UEが前記第1のセルに関する前記電力制限状態にあるという前記決定に基づいて、前記第1のセルのためのSRS送信をドロップすることをさらに備える」と記載されているが、ドロップするのであれば引用している請求項1の余剰電力がどのように使用されるか不明確である。 請求項9、14、21も同様の不備がある。 したがって、請求項2、9、14、21に係る発明は不明確である。(明確性) (6)請求項3に「前記第1のセルのための前記第1の電力をスケーリングすることをさらに備える」と記載されているが、スケーリングするのであれば引用している請求項1の余剰電力がどのように使用されるか不明確である。 請求項10、15、22も同様の不備がある。 したがって、請求項3、10、15、22に係る発明は不明確である。(明確性) (7)請求項8に「時間期間中の前記第1のセルのための第1のスケジューリングされた送信と前記時間期間中の前記第2のセルのための第2のスケジューリングされた送信とを識別する」と記載されているが「識別」とは何を識別し、どのような状態を検知しているのか不明確である。 請求項20及び請求項8、20を引用する請求項にも同様の不備がある。 したがって、請求項8?12、20?24に係る発明は不明確である。(明確性) (8)請求項8に「前記第1のスケジューリングされた送信または前記第2のスケジューリングされた送信に基づいて、前記第1のセルまたは前記第2のセルが前記時間期間のあいだ電力制限状態にあると、前記割り振られた第1の電力と前記第1のセルのための第1の最大送信電力とに基づいて、または前記割り振られた第2の電力と前記第2のセルのための第2の最大送信電力とに基づいて、決定すること」と記載されているが、「前記第1のスケジューリングされた送信または前記第2のスケジューリングされた送信に基づいて、」と「前記割り振られた第1の電力と前記第1のセルのための第1の最大送信電力とに基づいて、または前記割り振られた第2の電力と前記第2のセルのための第2の最大送信電力とに基づいて、」の関係が不明確であり、何と何に基づいて何を決定しているのか不明確である。 請求項20及び請求項8、20を引用する請求項にも同様の不備がある。 したがって、請求項8?12、20?24に係る発明は不明確である。(明確性) (9)請求項8に「前記第2のセルに余剰電力を割り振るかどうか決定すること、ここにおいて、前記余剰電力は、前記第2のセルのために前記割り振られた第2の電力と前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力との間の電力における差を備える」と記載されているが、第2のセルの余剰電力を第2のセルに割り振るとは意味不明であるし、発明の詳細な説明との対応関係も不明である。 請求項20及び請求項8、20を引用する請求項にも同様の不備がある。 したがって、請求項8?12、20?24に係る発明は不明確であるし、請求項8?12、20?24に係る発明と発明の詳細な説明との対応関係が不明である。(明確性、サポート要件) (10)請求項10に「前記電力制限状態に基づいて、・・・スケーリングする」と記載されているが、「前記電力制限状態」とは「電力制限状態にある」のことか、「電力制限状態にない」のことかどちらか不明確である。(明確性) (11)請求項25の「余剰電力は、・・・差の一部を備える」と記載され、引用する請求項1では「余剰電力は、・・・差を備える」と記載され、余剰電力について2つの定義がなされており、余剰電力が不明確である。また、「余剰電力は、・・・差の一部を備える」とは余剰電力がどのような量であるか不明確であり、発明の詳細な説明との対応関係も不明である。 請求項26も同様の不備がある。 したがって、請求項25、26に係る発明は不明確であるし、請求項25、26に係る発明と発明の詳細な説明との対応関係が不明である。(明確性、サポート要件) ●理由3(進歩性) ・請求項 1?26 ・引用文献等 1、2 1. NTT DOCOMO,Power-control mechanisms for dual connectivity[online],3GPP TSG RAN WG1 Meeting ♯77 R1-142264,2014年 5月10日アップロード,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_77/Docs//R1-142264.zip>(拒絶査定時の引用例1) 2.LG Electronics,Uplink power control for dual connectivity[online],3GPP TSG RAN WG1 Meeting ♯77 R1-142141,2014年 5月10日アップロード,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_77/Docs//R1-142141.zip>(拒絶査定時の引用例2) 第4 本願発明について 本願請求項1ないし24に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明24」という。)は、令和3年1月8日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし24は以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 ユーザ機器(UE)におけるワイヤレス通信の方法であって、 第1の基地局の第1のセルおよび第2の基地局の第2のセルとのコンカレント接続を確立することと、 前記第1のセル上でのサウンディング基準信号(SRS)送信のために第1の電力および第2のセル上での前記SRS送信のために第2の電力を割り振ることと、 前記割り振られた第1の電力および前記第1のセルのための第1の最大送信電力に基づいて、前記UEがシンボル期間のあいだ前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、ここにおいて、前記第1のセルのための前記第1の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための最大送信電力より小さい、と、 前記割り振られた第2の電力および前記第2のセルのための第2の最大送信電力に基づいて、前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定すること、ここにおいて、前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための前記最大送信電力より小さい、と、 前記第1のセル上での前記SRS送信のために余剰電力を割り振るかどうかを決定すること、ここにおいて、前記余剰電力は、前記第2のセルのために前記割り振られた第2の電力と前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力との間の電力における差を備え、前記第1のセルのための電力制限状態を克服するために使用される、と、 前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する前記電力制限状態にないという前記決定に基づいて、前記第2のセル上の前記第2の基地局に前記SRSを送信することと を備え、前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、および前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定することは、前記シンボル期間のあいだにチャネル重複があるかどうか分析することを含む、方法。 【請求項2】 前記UEが前記第1のセルに関する前記電力制限状態にあるという前記決定および前記前記余剰電力を前記第1のセル上での前記SRS送信のために割り振らないとの前記決定に基づいて、前記第1のセルのための前記SRS送信をドロップすることをさらに備える、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記UEが前記第1のセルに関する前記電力制限状態にあるという前記決定および前記前記余剰電力を前記第1のセル上での前記SRS送信のために割り振らないとの前記決定に基づいて、前記第1のセルのための前記第1の電力をスケーリングすることをさらに備える、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記余剰電力の量が前記第1のセルに関する前記電力制限状態を克服するのに十分であると決定することと、 前記余剰電力の前記量が前記第1のセルに関する前記電力制限状態を克服するのに十分であるという前記決定に基づいて、前記シンボル期間において前記第1のセル上の前記第1の基地局にSRSを送信することと をさらに備える、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記余剰電力の量が前記第1のセルに関する前記電力制限状態を克服するのに不十分であると決定することと、 前記余剰電力の前記量が前記第1のセルに関する前記電力制限状態を克服するのに不十分であるという前記決定に基づいて、前記シンボル期間において前記第1の基地局へのSRS送信をドロップまたはスケーリングすることと をさらに備える、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記第1のセルは、第1のタイミング調整グループ(TAG)中にあり、前記第2のセルは、第2のTAG中にある、 請求項1に記載の方法。 【請求項7】 前記第1の基地局は、マスタ基地局であり、前記第2の基地局は、2次基地局である、 請求項1に記載の方法。 【請求項8】 ユーザ機器(UE)におけるワイヤレス通信の方法であって、 第1の基地局の第1のセルおよび第2の基地局の第2のセルとのコンカレント接続を確立することと、 前記第1のセル上でのサウンディング基準信号(SRS)送信のために第1の電力および前記第2のセル上での前記SRS送信のために第2の電力を割り振ることと、 シンボル期間中の前記第1のセルのための第1のスケジューリングされたSRS送信と前記シンボル期間中の前記第2のセルのための第2のスケジューリングされたSRS送信とを識別することにより、前記シンボル期間中に前記第1のスケジューリングされたSRS送信と前記第2のスケジューリングされたSRS送信に送信重複が有るかどうか決定することと、 前記第1のスケジューリングされたSRS送信または前記第2のスケジューリングされたSRS送信に基づいた前記シンボル期間のあいだ前記第1のセルまたは前記第2のセルが電力制限状態にあると、前記割り振られた第1の電力と前記第1のセルのための第1の最大送信電力とに基づいて、または前記割り振られた第2の電力と前記第2のセルのための第2の最大送信電力とに基づいて決定すること、ここにおいて、前記第1のセルのための前記第1の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための最大送信電力より小さく、前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための前記最大送信電力より小さい、と、 前記UEが前記シンボル期間の間前記電力制限状態にあるという前記決定に基づいて、前記第1のセルに余剰電力を割り振るかどうか決定すること、ここにおいて、前記余剰電力は、前記第2のセルのために前記割り振られた第2の電力と前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力との間の電力における差を備え、前記第1のセルのための電力制限状態を克服するために使用される、と を備え、前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、および前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定することは、前記シンボル期間のあいだにチャネル重複があるかどうか分析することを含む、方法。 【請求項9】 前記電力制限状態にあるという決定および前記前記余剰電力を前記第1のセルに割り振らないとの前記決定に基づいて前記SRS送信をドロップすることをさらに備える、 請求項8に記載の方法。 【請求項10】 前記電力制限状態にあるという決定および前記前記余剰電力を前記第1のセルに割り振らないとの前記決定に基づいて、前記第1のセルのための前記第1の電力と前記第2のセルのための前記第2の電力とをスケーリングすること をさらに備え、前記第1のセルのための前記第1の電力および前記第2のセルのための前記第2の電力は、同じ値だけスケーリングされる、 請求項8に記載の方法。 【請求項11】 前記第1のセルは、第1のタイミング調整グループ(TAG)中にあり、前記第2のセルは、第2のTAG中にある、請求項8に記載の方法。 【請求項12】 前記第1の基地局は、マスタ基地局であり、前記第2の基地局は、2次基地局である、請求項8に記載の方法。 【請求項13】 ユーザ機器(UE)におけるワイヤレス通信のための装置であって、 プロセッサと、 前記プロセッサと電子通信しているメモリと 前記メモリに記憶された命令と を備え、前記命令は、前記装置に、 第1の基地局の第1のセルおよび第2の基地局の第2のセルとのコンカレント接続を確立することと、 前記第1のセル上でのサウンディング基準信号(SRS)送信のために第1の電力および第2のセル上での前記SRS送信のために第2の電力を割り振ることと、 前記割り振られた第1の電力および前記第1のセルのための第1の最大送信電力に基づいて、前記UEがシンボル期間のあいだ前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、ここにおいて、前記第1のセルのための前記第1の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための最大送信電力より小さい、と、 前記割り振られた第2の電力および前記第2のセルのための第2の最大送信電力に基づいて、前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定すること、ここにおいて、前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための前記最大送信電力より小さい、と、 前記第1のセル上での前記SRS送信のために余剰電力を割り振るかどうかを決定すること、ここにおいて、前記余剰電力は、前記第2のセルのために前記割り振られた第2の電力と前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力との間の電力における差を備え、前記第1のセルのための電力制限状態を克服するために使用される、と、 前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する前記電力制限状態にないという前記決定に基づいて、前記第2のセル上の前記第2の基地局に前記SRSを送信することと を行わせるように前記プロセッサによって実行可能であり、前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、および前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定することは、前記シンボル期間のあいだにチャネル重複があるかどうか分析することを含む、装置。 【請求項14】 前記命令は、前記装置に、 前記UEが前記第1のセルに関する前記電力制限状態にあるという前記決定および前記前記余剰電力を前記第1のセル上での前記SRS送信のために割り振らないとの前記決定に基づいて、前記第1のセルのためのSRS送信をドロップすること を行わせるように前記プロセッサによってさらに実行可能である、請求項13に記載の装置。 【請求項15】 前記命令は、前記装置に、 前記UEが前記第1のセルに関する前記電力制限状態にあるという前記決定および前記前記余剰電力を前記第1のセル上での前記SRS送信のために割り振らないとの前記決定に基づいて、前記第1のセルのための前記第1の電力をスケーリングすること を行わせるように前記プロセッサによってさらに実行可能である、請求項13に記載の装置。 【請求項16】 前記命令は、前記装置に、 前記余剰電力の量が前記第1のセルに関する前記電力制限状態を克服するのに十分であると決定することと、 前記余剰電力の前記量が前記第1のセルに関する前記電力制限状態を克服するのに十分であるという前記決定に基づいて、前記シンボル期間において前記第1のセル上の前記第1の基地局にSRSを送信することと を行わせるように前記プロセッサによってさらに実行可能である、請求項13に記載の装置。 【請求項17】 前記命令は、前記装置に、 前記余剰電力の量が前記第1のセルに関する前記電力制限状態を克服するのに不十分であると決定することと、 前記余剰電力の前記量が前記第1のセルに関する前記電力制限状態を克服するのに不十分であるという前記決定に基づいて、前記シンボル期間において前記第1の基地局へのSRS送信をドロップまたはスケーリングすることと を行わせるように前記プロセッサによってさらに実行可能である、請求項13に記載の装置。 【請求項18】 前記第1のセルは、第1のタイミング調整グループ(TAG)中にあり、前記第2のセルは、第2のTAG中にある、 請求項13に記載の装置。 【請求項19】 前記第1の基地局は、マスタ基地局であり、前記第2の基地局は、2次基地局である、 請求項13に記載の装置。 【請求項20】 ユーザ機器(UE)におけるワイヤレス通信のための装置であって、 プロセッサと、 前記プロセッサと電子通信しているメモリと 前記メモリに記憶された命令と を備え、前記命令は、 第1の基地局の第1のセルおよび第2の基地局の第2のセルとのコンカレント接続を確立することと、 前記第1のセル上でのサウンディング基準信号(SRS)送信のために第1の電力および前記第2のセル上での前記SRS送信のために第2の電力を割り振ることと、 シンボル期間中の前記第1のセルのための第1のスケジューリングされたSRS送信と前記シンボル期間中の前記第2のセルのための第2のスケジューリングされたSRS送信とを識別することにより、前記シンボル期間中に前記第1のスケジューリングされたSRS送信と前記第2のスケジューリングされたSRS送信に送信重複が有るかどうか決定することと、 前記第1のスケジューリングされたSRS送信または前記第2のスケジューリングされたSRS送信に基づいた前記シンボル期間のあいだ前記第1のセルまたは前記第2のセルが電力制限状態にあると、前記割り振られた第1の電力と前記第1のセルのための第1の最大送信電力とに基づいて、または前記割り振られた第2の電力と前記第2のセルのための第2の最大送信電力とに基づいて決定すること、ここにおいて、前記第1のセルのための前記第1の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための最大送信電力より小さく、前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための前記最大送信電力より小さい、と、 前記UEが前記シンボル期間の間前記電力制限状態にあるという前記決定に基づいて、前記第1のセルまたは前記第2のセルに余剰電力を割り振るかどうか決定すること、ここにおいて、前記余剰電力は、前記第2のセルのために前記割り振られた第2の電力と前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力との間の電力における差を備え、前記第1のセルのための電力制限状態を克服するために使用される、と を行うように前記プロセッサによって実行可能であり、前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、および前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定することは、前記シンボル期間のあいだにチャネル重複があるかどうか分析することを含む、装置。 【請求項21】 前記命令は、 前記UEが前記電力制限状態にあるという決定および前記前記余剰電力を前記第1のセルに割り振らないとの前記決定に基づいて前記SRS送信をドロップすることを行うように前記プロセッサによってさらに実行可能である、 請求項20に記載の装置。 【請求項22】 前記命令は、 前記UEが前記電力制限状態にあるという決定および前記前記余剰電力を前記第1のセルに割り振らないとの前記決定に基づいて、前記第1のセルのための前記第1の電力と前記第2のセルのための前記第2の電力とをスケーリングすることを行うように前記プロセッサによってさらに実行可能であり、前記第1のセルのための前記第1の電力および前記第2のセルのための前記第2の電力は、同じ値だけスケーリングされる、 請求項20に記載の装置。 【請求項23】 前記第1のセルは、第1のタイミング調整グループ(TAG)中にあり、前記第2のセルは、第2のTAG中にある、 請求項20に記載の装置。 【請求項24】 前記第1の基地局は、マスタ基地局であり、前記第2の基地局は、2次基地局である、請求項20に記載の装置。」 第5 引用発明及び技術的事項について 1.引用例1について 原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由に引用されたNTT DOCOMO,Power-control mechanisms for dual connectivity(当審訳:デュアルコネクティビティの電力コントロールメカニズム)[online],3GPP TSG RAN WG1 Meeting ♯77 R1-142264,2014年 5月10日アップロード,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_77/Docs//R1-142264.zip>(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。) (1)「Based on the observations, we prefer option 2 and therefore propose the following. Proposal 1: ●Dynamic power-sharing is supported for dual connectivity. ●Guaranteed transmit power for the MCG and SCG, P_(MeNB) and P_(SeNB), are introduced. ・When the power greater than P_(MeNB) or P_(SeNB) is available for MCG or SCG transmission, the transmit power per MCG or SCG can exceed P_(MeNB) or P_(SeNB). ・P_(MeNB) = P_(CMAX) and P_(SeNB) =0 should be allowed. ・FFS: P_(MeNB) + P_(SeNB) < P_(CMAX) needs to be allowed. In the following, P_(MeNB) + P_(SeNB) = P_(CMAX) is assumed.」(4ぺージ13?21行) (当審訳: 観察結果に基づいて、オプション2を優先するため、以下を提案する。 提案1: ●デュアルコネクティビティでは、動的な電力共有がサポートされる。 ●MCGおよびSCGの保証送信電力、P_(MeNB)およびP_(SeNB)が導入される。 ・P_(MeNB)またはP_(SeNB)より大きい電力がMCGまたはSCGの送信に使用できる場合、MCGまたはSCGの送信電力はP_(MeNB)またはP_(SeNB)を超える可能性がある。 ・P_(MeNB) = P_(CMAX)およびP_(SeNB) = 0を許可する必要がある。 ・FFS:P_(MeNB) + P_(SeNB) 以下では、P_(MeNB) + P_(SeNB) = P_(CMAX)を想定する。) (2)「2.2.UE behavior for determining actual transmit power per MCG and SCG In option 2, the transmit power for the MCG or SCG exceeds P_(MeNB) or P_(SeNB) when it is available. In order to achieve the benefits of dynamic power-sharing, it is important to define the UE behavior for determining the transmit power for the MCG and SCG. Considering the definition of P_(MeNB) and P_(SeNB) in option 2, the following UE behavior should be specified at least for the channels/signal other than PRACH. ●At first, the UE calculates required transmit power per MCG and SCG. (略) ●If the required transmit power per SCG is equal to or lower than P_(SeNB) (Fig.4 (b)), ・The actual transmit power per SCG, P_(S), is set equal to the required transmit power per SCG ・The maximum transmit power per MCG is set to P_(CMAX)-P_(S) so that the actual transmit power per MCG is determined ・If the required transmit power per MCG is greater than P_(CMAX)-P_(S), power-scaling/dropping is applied to the MCG transmission (略) Fig.4 Examples of transmit power determination with option 2.」(4ページ22行?5ページ8行) (当審訳: 2.2.MCGおよびSCGについての実際の送信電力を決定するためのUEの動作 オプション2では、利用可能な場合、MCG又はSCGの送信電力はP_(MeNB)またはP_(SeNB)を超える。動的電力共有の利点を実現するには、MCGとSCGの送信電力を決定するためのUEの動作を定義することが重要である。オプション2のP_(MeNB)とP_(SeNB)の定義を考慮すると、少なくともPRACH以外のチャネル/信号に対して、次のUEの動作を指定する必要がある。 ●最初に、UEはMCG及びSCGについての必要な送信電力を計算する。 (略) ●SCGについての必要な送信電力がP_(SeNB)以下である場合(図4(b))、 ・SCGについての実際の送信電力P_(S)は、SCGについての必要な送信電力に等しく設定される。 ・MCGについての最大送信電力はP_(CMAX)-P_(S)に設定され、MCGについての実際の送信電力が決定される。 ・MCGについての必要な送信電力がP_(CMAX)-P_(S)より大きい場合、電力スケーリング/ドロップがMCG送信に適用される。 以下、略) 上記記載及び当業者における技術常識からみて、 a.上記(2)に「次のUEの動作を指定する必要がある。」と記載されていることから、UEの方法が記載されているといえる。また、UEはワイヤレス通信を行っていることは明らかである。 よって、引用例1には、UEにおけるワイヤレス通信方法が記載されているといえる。 b.引用例1のタイトルが「デュアルコネクティビティの電力コントロールメカニズム」であるから、UEがデュアルコネクティビティを構築しているといえる。 c.上記(2)に「最初に、UEはMCG及びSCGについての必要な送信電力を計算する。」と記載されていることから、UEにおいて最初にMCGとSCGの送信電力を決定しているといえる。 d.上記(1)に「MCGおよびSCGの保証送信電力、P_(MeNB)およびP_(SeNB)が導入される」と記載されていることから、P_(MeNB)はMCGの保証送信電力であり、P_(SeNB)はSCGの保証送信電力である。 また、上記(2)に、「SCGについての必要な送信電力がP_(SeNB)以下である場合」、「SCGについての実際の送信電力P_(S)は・・・設定される」、「MCGについての最大送信電力はP_(CMAX)-P_(S)に設定され、MCGについての実際の送信電力が決定される」と記載されており、また(2)の図4(b)からP_(CMAX)-P_(S)はP_(MeNB)より大きいことが読み取れることから、SCGの送信電力はSCGの保証送信電力であるP_(SeNB)以下のP_(S)に決定し、MCGの最大送信電力はMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きいP_(CMAX)-P_(S)に決定しているといえる。 そして、図4(b)の記載から、MCGの送信電力はMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きいP_(M)に決定しているといえる。 e.上記(2)の図4(b)からP_(MeNB)はP_(CMAX)より小さく、P_(SeNB)はP_(CMAX)より小さいことが読み取れる。 f.上記(1)から「P_(MeNB) + P_(SeNB) = P_(CMAX)」といえる。 以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「UEにおけるワイヤレス通信方法であって、 デュアルコネクティビティを構築し、 最初にMCGとSCGの送信電力を決定し、 SCGの送信電力はSCGの保証送信電力であるP_(SeNB)以下のP_(S)に決定し、MCGの最大送信電力はMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きいP_(CMAX)-P_(S)に決定し、MCGの送信電力はMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きいP_(M)に決定し、 P_(MeNB)はP_(CMAX)より小さく、P_(SeNB)はP_(CMAX)より小さい、 P_(MeNB) + P_(SeNB) = P_(CMAX)である、 方法。」 2.引用例2について 原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由に引用されたLG Electronics,Uplink power control for dual connectivity(当審訳:デュアルコネクティビティのアップリンクの電力コントロール)[online],3GPP TSG RAN WG1 Meeting ♯77 R1-142141,2014年 5月10日アップロード,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_77/Docs//R1-142141.zip> (以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。) 「●SRS can be dropped in a power limited case」(3葉9行) (当審訳:SRSは、電力が制限されている場合にドロップできる。) 上記記載によれば、次の技術的事項(以下、「技術的事項2」という。)が記載されていると認められる。 「SRSは、電力が制限されている場合にドロップできる。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。 a.引用発明1の「UE」は、本願発明1の「ユーザ機器(UE)」に相当する。 よって、引用発明1の「UEにおけるワイヤレス通信方法」は本願発明1と同様に、「ユーザ機器(UE)におけるワイヤレス通信の方法」といえる。 b.引用発明1では、「デュアルコネクティビティを構築」しているが、デュアルコネクティビティとは2つの基地局のそれぞれのセルとのコンカレント接続をUEが行っていることであることが技術常識であり、引用発明1の「MCG」に含まれるセル,「SCG」に含まれるセルが,それぞれ本願発明の「第1の基地局の第1のセル」,「第2の基地局の第2のセル」に相当する。 よって、引用発明1の「デュアルコネクティビティを構築」していることは、本願発明1と同様に、「第1の基地局の第1のセルおよび第2の基地局の第2のセルとのコンカレント接続を確立」しているといえる。 c.引用発明1の「MCG」に含まれるセル,「SCG」に含まれるセルが,それぞれ本願発明の「第1の基地局の第1のセル」,「第2の基地局の第2のセル」に相当するから、引用発明1の「最初にMCGとSCGの送信電力を決定」することと、本願発明1の「前記第1のセル上でのサウンディング基準信号(SRS)送信のために第1の電力および第2のセル上での前記SRS送信のために第2の電力を割り振ること」とは、「前記第1のセル上での送信のために第1の電力および第2のセル上での送信のために第2の電力を割り振る」点で共通する。 d.引用発明1の「MCGの保証送信電力P_(MeNB)」は最初に送信電力を決定する際のMCGの最大送信電力ともいえることは明らかであるから、第1のセルのための第1の最大送信電力といえ、引用発明1の「MCGの送信電力はMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きいP_(M)に決定」とはMCGの送信電力P_(M)がMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きい送信電力の状態であるから、P_(MeNB)による制限を受けている状態、つまり電力制限状態にあるといえる。よって、引用発明1の「MCGの送信電力はMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きいP_(M)に決定」とは、割り振られた第1の電力P_(M)および第1のセルのための第1の最大送信電力P_(MeNB)に基づいて、UEが第1のセルに関する電力制限状態にあると決定することといえる。 また、引用発明1の「P_(CMAX)」は「P_(MeNB) + P_(SeNB) = P_(CMAX)」であって、MCGとSCGのデュアルコネクティビティの最大送信電力であることから、引用発明1の「P_(CMAX)」は「コンカレント接続のための最大送信電力」といえる。よって、引用発明1の「P_(MeNB)はP_(CMAX)より小さく」から、第1のセルのための第1の最大送信電力であるP_(MeNB)はUEのコンカレント接続のための最大送信電力P_(CMAX)より小さいといえる。 よって、引用発明1の「MCGの送信電力はMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きいP_(M)に決定」、「P_(MeNB)はP_(CMAX)より小さく」及び「P_(MeNB) + P_(SeNB) = P_(CMAX)」と、本願発明1の「前記割り振られた第1の電力および前記第1のセルのための第1の最大送信電力に基づいて、前記UEがシンボル期間のあいだ前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、ここにおいて、前記第1のセルのための前記第1の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための最大送信電力より小さい」とは、「前記割り振られた第1の電力および前記第1のセルのための第1の最大送信電力に基づいて、前記UEが前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、ここにおいて、前記第1のセルのための前記第1の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための最大送信電力より小さい」点で共通する。 e.引用発明1の「SCGの保証送信電力P_(SeNB)」は第2のセルのための第2の最大送信電力といえ、引用発明1の「SCGの送信電力はSCGの保証送信電力であるP_(SeNB)以下」とはSCGの送信電力がP_(SeNB)以下の状態であり、P_(SeNB)による制限を受けていない状態、つまり電力制限状態にないといえる。よって、引用発明1の「SCGの送信電力はSCGの保証送信電力であるP_(SeNB)以下のP_(S)に決定」とは、割り振られた第2の電力P_(S)および第2のセルのための第2の最大送信電力P_(SeNB)に基づいて、UEが第2のセルに関する電力制限状態にないと決定することといえる。 また、引用発明1の「P_(CMAX)」は「P_(MeNB) + P_(SeNB) = P_(CMAX)」であって、MCGとSCGのデュアルコネクティビティの最大送信電力であることから、引用発明1の「P_(CMAX)」は「コンカレント接続のための最大送信電力」といえる。よって、引用発明1の「P_(SeNB)はP_(CMAX)より小さい」から、第2のセルのための第2の最大送信電力であるP_(SeNB)はUEのコンカレント接続のための最大送信電力P_(CMAX)より小さいといえる。 よって、引用発明1の「SCGの送信電力はSCGの保証送信電力であるP_(SeNB)以下のP_(S)に決定」、「P_(SeNB)はP_(CMAX)より小さい」及び「P_(MeNB) + P_(SeNB) = P_(CMAX)」と、本願発明1の「前記割り振られた第2の電力および前記第2のセルのための第2の最大送信電力に基づいて、前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定すること、ここにおいて、前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための前記最大送信電力より小さい」とは、「前記割り振られた第2の電力および前記第2のセルのための第2の最大送信電力に基づいて、前記UEが前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定すること、ここにおいて、前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための前記最大送信電力より小さい」点で共通する。 f.引用発明1の「SCGの送信電力はSCGの保証送信電力であるP_(SeNB)以下のP_(S)に決定し、MCGの最大送信電力はMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きいP_(CMAX)-P_(S)に決定し、MCGの送信電力はMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きいP_(M)に決定」とは、SCGの送信電力をP_(SeNB)以下のP_(S)に決定することで、P_(SeNB)-P_(S)の余剰電力をMCGの送信電力に割り振ると決定し、MCGの送信電力をMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きいP_(M)に決定しているといえる。つまり、第1のセル上での送信のために余剰電力を割り振るかどうかを決定しているといえる。 ここで、引用発明1の余剰電力はP_(SeNB)-P_(S)であり、P_(SeNB)は第2のセルのための第2の最大送信電力であり、P_(S)は割り振られた第2の電力であるから、余剰電力は、第2のセルのために割り振られた第2の電力と第2のセルのための第2の最大送信電力との間の電力における差といえる。 そして、引用発明1ではP_(SeNB)-P_(S)の余剰電力をMCGの送信電力に割り割り振ると決定することで、MCGの送信電力をMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きいP_(M)に決定していることから、第1のセルのための第1の最大送信電力P_(MeNB)より大きい送信電力とするために余剰電力は使用されていることから、余剰電力は、第1のセルのための電力制限状態を克服するために使用されるといえる。 よって、引用発明1の「SCGの送信電力はSCGの保証送信電力であるP_(SeNB)以下のP_(S)に決定し、MCGの送信電力はMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きいP_(CMAX)-P_(S)に決定し、MCGの送信電力はMCGの保証送信電力P_(MeNB)より大きいP_(M)に決定」することと、本願発明1の「前記第1のセル上での前記SRS送信のために余剰電力を割り振るかどうかを決定すること、ここにおいて、前記余剰電力は、前記第2のセルのために前記割り振られた第2の電力と前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力との間の電力における差を備え、前記第1のセルのための電力制限状態を克服するために使用される」こととは、「前記第1のセル上での送信のために余剰電力を割り振るかどうかを決定すること、ここにおいて、前記余剰電力は、前記第2のセルのために前記割り振られた第2の電力と前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力との間の電力における差を備え、前記第1のセルのための電力制限状態を克服するために使用される」点で共通する。 g.引用発明1の「SCGの送信電力はSCGの保証送信電力であるP_(SeNB)以下のP_(S)に決定」とは、送信電力を決定した上でUEがSCGへの送信を行っていることは明らかである。つまり、P_(SeNB)以下のP_(S)である第2のセルに関する電力制限状態にないという決定に基づいてUEがSCGへの送信を行っているといえる。 よって、引用発明1の「SCGの送信電力はSCGの保証送信電力であるP_(SeNB)以下のP_(S)に決定」することと、本願発明1の「前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する前記電力制限状態にないという前記決定に基づいて、前記第2のセル上の前記第2の基地局に前記SRSを送信する」こととは、「前記UEが前記第2のセルに関する前記電力制限状態にないという前記決定に基づいて、前記第2のセル上の前記第2の基地局に送信する」点で共通する。 以上のことから、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「 ユーザ機器(UE)におけるワイヤレス通信の方法であって、 第1の基地局の第1のセルおよび第2の基地局の第2のセルとのコンカレント接続を確立することと、 前記第1のセル上での送信のために第1の電力および第2のセル上での送信のために第2の電力を割り振ることと、 前記割り振られた第1の電力および前記第1のセルのための第1の最大送信電力に基づいて、前記UEが前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、ここにおいて、前記第1のセルのための前記第1の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための最大送信電力より小さい、と、 前記割り振られた第2の電力および前記第2のセルのための第2の最大送信電力に基づいて、前記UEが前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定すること、ここにおいて、前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための前記最大送信電力より小さい、と、 前記第1のセル上での送信のために余剰電力を割り振るかどうかを決定すること、ここにおいて、前記余剰電力は、前記第2のセルのために前記割り振られた第2の電力と前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力との間の電力における差を備え、前記第1のセルのための電力制限状態を克服するために使用される、と、 前記UEが前記第2のセルに関する前記電力制限状態にないという前記決定に基づいて、前記第2のセル上の前記第2の基地局に送信することと、 を備える、方法。」 (相違点) 1.送信する信号について、本願発明1では「サウンディング基準信号(SRS)送信」であるのに対し、引用発明1では当該発明特定事項が特定されていない点。 2.本願発明1では「シンボル期間」のあいだの電力制限状態を検討し、「前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、および前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定することは、前記シンボル期間のあいだにチャネル重複があるかどうか分析することを含む」のに対し、引用発明1では当該発明特定事項が特定されていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 引用例1及び引用例2では、電力制限状態を検討する期間をシンボル期間とすることは記載されていないし、示唆もされていない。また、電力制限状態にあるかないかを決定することにシンボル期間のあいだにチャネル重複があるかどうか分析することを含む点も記載されていないし、示唆もされていない。そして、本願優先日前において周知技術でもない。 したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び引用例2に記載された技術的事項2に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.本願発明2ないし24について 本願発明2ないし24も、本願発明1の「シンボル期間」及び「前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、および前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定することは、前記シンボル期間のあいだにチャネル重複があるかどうか分析することを含む」との発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用例2に記載された技術的事項2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 原査定についての判断 令和3年1月8日付け手続補正により、補正された請求項1ないし24に記載された発明は、「シンボル期間」及び「前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、および前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定することは、前記シンボル期間のあいだにチャネル重複があるかどうか分析することを含む」との発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1ないし24は引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術的事項2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由についての判断 当審拒絶理由について検討する。 1.「●理由1(サポート要件)、理由2(明確性)」について 令和3年1月8日にされた手続補正により、 (1)請求項1等の「時間期間」を「シンボル期間」に補正することにより、当審拒絶理由の拒絶理由(1)は解消された。 (2)請求項1等において、SRSを送信することを明示する補正をすることにより、当審拒絶理由の拒絶理由(2)は解消された。 (3)請求項1等において、余剰電力が前記第1のセルのための電力制限状態を克服するために使用されることを明示する補正をすることにより、当審拒絶理由の拒絶理由(3)は解消された。 (4)請求項1等において、「電力制限状態にあるかどうか決定することがシンボル期間のあいだにチャネル重複があるかどうか分析することを含む」と補正をすることにより、当審拒絶理由の拒絶理由(4)は解消された。 (5)請求項2等において、「前記UEが前記第1のセルに関する前記電力制限状態にあるという前記決定および前記前記余剰電力を前記第1のセル上での前記SRS送信のために割り振らないとの前記決定に基づいて、前記第1のセルのための前記SRS送信をドロップすることをさらに備える」と補正をすることにより、当審拒絶理由の拒絶理由(5)は解消された。 (6)請求項3等において、「前記UEが前記第1のセルに関する前記電力制限状態にあるという前記決定および前記前記余剰電力を前記第1のセル上での前記SRS送信のために割り振らないとの前記決定に基づいて、前記第1のセルのための前記第1の電力をスケーリングすることをさらに備える」と補正をすることにより、当審拒絶理由の拒絶理由(6)は解消された。 (7)請求項8等において、「シンボル期間中の前記第1のセルのための第1のスケジューリングされたSRS送信と前記シンボル期間中の前記第2のセルのための第2のスケジューリングされたSRS送信とを識別することにより、前記シンボル期間中に前記第1のスケジューリングされたSRS送信と前記第2のスケジューリングされたSRS送信に送信重複が有るかどうか決定すること」と補正をすることにより、当審拒絶理由の拒絶理由(7)は解消された。 (8)請求項8等において、「前記第1のスケジューリングされたSRS送信または前記第2のスケジューリングされたSRS送信に基づいた前記シンボル期間のあいだ前記第1のセルまたは前記第2のセルが電力制限状態にあると、前記割り振られた第1の電力と前記第1のセルのための第1の最大送信電力とに基づいて、または前記割り振られた第2の電力と前記第2のセルのための第2の最大送信電力とに基づいて決定すること、ここにおいて、前記第1のセルのための前記第1の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための最大送信電力より小さく、前記第2のセルのための前記第2の最大送信電力は、前記UEの前記コンカレント接続のための前記最大送信電力より小さい、」と補正をすることにより、当審拒絶理由の拒絶理由(8)は解消された。 (9)請求項8等において、第2のセルの余剰電力を第2のセルに割り振ることを削除するように補正をすることにより、当審拒絶理由の拒絶理由(9)は解消された。 (10)請求項10において、電力制限状態にあることを明示するように補正をすることにより、当審拒絶理由の拒絶理由(10)は解消された。 (11)請求項25および26を削除することにより、当審拒絶理由の拒絶理由(11)は解消された。 2.「●理由3(進歩性)」について 令和3年1月8日にされた手続補正により、補正後の請求項1ないし24に係る発明には、「シンボル期間」及び「前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第1のセルに関する電力制限状態にあると決定すること、および前記UEが前記シンボル期間のあいだ前記第2のセルに関する電力制限状態にないと決定することは、前記シンボル期間のあいだにチャネル重複があるかどうか分析することを含む」の発明特定事項を備えるものであるが、当該発明特定事項は引用例1及び2には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし24は、当業者であっても、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術的事項2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 第9 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-02-18 |
出願番号 | 特願2016-573835(P2016-573835) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉村 真治▲郎▼ |
特許庁審判長 |
廣川 浩 |
特許庁審判官 |
中木 努 永田 義仁 |
発明の名称 | デュアル接続性においてSRSを処理するための方法および装置 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |