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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01N
管理番号 1371580
審判番号 不服2020-6007  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-01 
確定日 2021-03-23 
事件の表示 特願2018-534498「液体サンプルからの複数の信号を測定する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月30日国際公開、WO2017/053478、平成30年11月29日国内公表、特表2018-535428、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2016年(平成28年)9月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年9月22日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成31年3月28日付けで拒絶理由が通知され、令和元年7月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月23日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、これに対し、令和2年5月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、当審により同年9月25日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明12」という。)は、令和2年12月25日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、10及び11は以下のとおりの発明である。

(本願発明1)
「 【請求項1】
装置であって、
コイル状管アウトレットを含むコイル状管を備え、
前記コイル状管アウトレットは、検出器要素によって観察されるように構成されたフロースルーセルと、前記コイル状管アウトレットとの間に配置されたインレットにのみ接続され、
前記インレットは、前記コイル状管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し、さらに、
前記コイル状管のボア半径に対する曲げ半径の比率が50未満であり、
前記コイル状管は、液体サンプルが前記インレットに流れ込むことが可能なように構成され、
前記インレット内に収納される流れ分配器を備え、
前記流れ分配器は、前記液体サンプルが前記コイル状管から前記流れ分配器を通って前記フロースルーセルに流れ込むことが可能なように構成され、
その結果、前記フロースルーセルに入る流れが生じ、
前記流れが前記フロースルーセルに入る際、前記流れは押し出し流れに近似する、装置。」

(本願発明10)
「 【請求項10】
方法であって、
粒子担持液体サンプルが、コイル状管アウトレットを含むコイル状管を通って流れるステップを備え、
前記コイル状管アウトレットは、検出器要素によって観察されるように構成されたフロースルーセルと、前記コイル状管アウトレットとの間に配置されたインレットにのみ接続され、
前記インレットは、前記コイル状管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し、
前記コイル状管のボア半径に対する曲げ半径の比率が50未満であり、
前記液体サンプルが、前記コイル状管アウトレットから、前記インレット内に収納される流れ分配器を通って流れるステップを備え、
その結果、前記フロースルーセルに入る流れが生じ、
前記流れが前記フロースルーセルに入る際、前記流れは押し出し流れに近似する、方法。」

(本願発明11)
「 【請求項11】
装置であって、
コイル状管アウトレットを含むコイル状管を備え、
前記コイル状管アウトレットは、検出器要素によって観察されるように構成されたフロースルーセルと、前記コイル状管アウトレットとの間に配置されたインレットにのみ接続され、
前記インレットは、前記コイル状管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し、
前記コイル状管のボア半径に対する曲げ半径の比率が50未満であり、
前記コイル状管は、液体混合物が前記インレットに流れ込むことが可能なように構成され、
前記インレット内に収納される流れ分配器を備え、
前記流れ分配器は、前記液体混合物が前記コイル状管から前記流れ分配器を通って前記フロースルーセルに流れ込むことが可能なように構成され、
その結果、前記フロースルーセルに入る流れが生じ、
前記流れが前記フロースルーセルに入る際、前記流れは押し出し流れに近似する、装置。」

なお、本願発明2ないし9及び12の概要は以下のとおりである。
本願発明2ないし9は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明12は、本願発明11を減縮した発明である。


第3 引用文献、引用発明等

1 引用文献6について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平8-122328号公報(以下「引用文献6」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。引用文献の記載において以下同様。)。

(引6-ア)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、赤血球機能測定方法及び測定装置に関し、より詳細には、赤血球変形能試験が行える赤血球機能測定方法及び測定装置に関する。」

(引6-イ)「【0013】この発明において第2混合部は、試料懸濁液をその浸透圧が平衡に達するまでの間滞留させる滞留部を備えていることが好ましい。この発明において第2混合部は、試料懸濁液に乱流を生じさせ均一に混合する乱流発生手段を備えていることが好ましい。ここで乱流発生手段とは、例えば、混合部に微小な粒子を充填した流路を設け、粒子のわずかな間隙を通る際の流速を上げることによって乱流を発生させるものが挙げられる。この発明において複数の液送出手段のいずれかで送出される希釈液は、色素を含有し、前記色素含有希釈液と他の希釈液との混合比を色素濃度の測定によって検出する混合比検出手段を備えていることが好ましい。混合比検出手段とは、例えば、LEDとフォトダイオードからなる光学的検出手段が挙げられる。
【0014】この発明において撮像手段は、回折像を撮像するCCDカメラを備えていることが好ましい。この発明において解析手段は、撮像された回折像の長径、短径を解析することにより赤血球変形指数を演算処理するものが好ましい。赤血球変形指数とは、撮像された回折像が楕円状であるとき、その長径をA、短径をBとすれば、変形指数DIが、DI=(A-B)/(A+B)で定義されるものをいう。この発明において応力付与手段は、試料懸濁液中の赤血球を通過させるフローセルであるのが好ましい。フローセルは、上記した所定のアスペクト比を有するものが好ましい。」

(引6-ウ)「【0018】この発明にかかる赤血球機能測定方法では、赤血球のずり応力変化による変形能試験を行う場合、まず浸透圧が等しく粘度が異なる2種類の液、例えば、第2および第3液を流量比を連続的に変化させながら液送出手段から送出する。総流量を一定にして第2液を一定の割合で連続的に増加させ、第3液を一定の割合で連続的に減少させるよう液送出手段を駆動する。次にこれらを液送出手段により送出し、第1混合部で混合させる。次に、第2混合部でその混合液に血球試料を一定比率で加え血球懸濁液とする。次に、血球懸濁液をアスペクト比の大きいフローセルに導く。フローセル中で赤血球は混合液の流速、粘度により定まる応力(ずり応力)が加えられ形態変化をおこし、変形する。フローセルにはレーザ光が照射されており、その散乱回折像は赤血球の変形程度により変化する。散乱回折像をCCDカメラにて撮像し、撮像された回折像を演算処理することにより、赤血球の変形能(変形指数)を測定する。このように、2種類の懸濁液の流量比を連続的に変えつつ上記測定を行うことにより、粘度をパラメータとする赤血球の変形能測定が実施できる。」

(引6-エ)「【0021】送出された二液は、第2混合部で試料液送出手段により送出された血球を含む試料液が混合され試料懸濁液となる。第2混合部が滞留部を有しておれば、試料懸濁液は平衡に達してからフローセルへ送出される。このため、最適な条件下での測定が可能となる。さらに、第2混合部が前記したような乱流発生手段を有しておれば、混合部の容積を小さくしても効率の高い混合が可能となる。乱流発生手段が、微小な粒子を充填したものであればより好ましい。さらに、この発明の装置では低粘度で浸透圧が低張である、例えば、第4液と、低粘度で浸透圧が第1液より高張な前記第3液とを選択して上記同様に送り出せば低粘度下における赤血球の浸透圧変化による変形能試験を行うことができる。これにより、従来から行われている低粘度下における赤血球の浸透圧変化による変形能試験を高粘度下における上記した変形能試験とともに1つの装置で行うことができる。」

(引6-オ)「【0022】
【実施例】図1は、この発明の一実施例による赤血球機能測定装置を示す。赤血球機能測定装置10は、希釈液を供給する液供給手段11、第1混合部12、モニター部13、第2混合部14、送液部15、フローセル16及び測定部17からなる。液送出手段11は、容器21?24、電磁弁21a?24a及びシリンジ21b?24bが配管で接続され構成されている。シリンジ21b?24bは、図示しない駆動源を有している。これにより、4種類までの懸濁液をシリンジ21b?24bの下流側に送出することができる。シリンジ21b?24bの下流側には、第1混合部12が接続されている。
【0023】第1混合部12は、キャビティ21c?24cおよび電磁弁21d?24dから構成されている。キャビティ21c?24cは、図2に示すように、ヒーター25を有する恒温ブロック26内に形成されている。第1混合部12の下流側にはモニター部13が接続されている。モニター部13は、図3に示すように、LED27、フォトダイオード28及び保持具29からなる。保持具29は、遮光性材料で形成されLED27とフォトダイオード28とを同軸上に固定している。LED27とフォトダイオード28の間には、第1混合部12から導出された配管30が配置されている。配管30は、テフロン(PTFE)製の透明チューブであり、保持具29を貫通して配置されている。このような構成によりモニター部13を通過する液体が後述する色素を含有するとき、この液体をモニターすることができる。モニター部13の下流側には、第2混合部14が接続されている。
【0024】第2混合部14は、図4に示すように、分注孔31と、通過する液体を任意の時間だけ滞留させるための滞留部32とから主に構成されている。分注孔31は、後述する血液分注用のピペット41の先端が挿通可能な口径を有している。分注孔31の下端には、滞留部32が連接されている。滞留部32は、コイル状の細管33と、細管33の前後に充填された乱流発生手段としてのビーズ34とから主に構成されている。ビーズ34は、ストッパー35により送液方向の前後で固定されている。ビーズ34は、血液を変質したり悪影響を及ぼさない材料、例えば、シリコンコーティングが施されたガラス、アルミナ、あるいはジルコニアが好ましい。第2混合部14の図中上方には、送液部15が配置されている(図1)。
【0025】この実施例では、乱流発生手段としてビーズ34を充填したが、それ以外の手段として、例えば、流路が縮小、拡大を繰り返す方法、あるいは不規則な形状を呈する充填材を充填する方法を用いても可能である。送液部15は、分注用のピペット41と、ピペット41を保持する保持具42と、保持具42を2軸方向に移動させるピペット移動機構43とから構成されている。ピペット移動機構43は、保持具42を水平及び垂直方向に移動させるエアシリンダ44,45と、エアシリンダ44,45を制御する切り換えバルブ46,47とから主に構成されている。ピペット移動機構43は、ピペット41の先端を、分注孔31と、分注孔31の近傍に配置された血球試料容器48との間で移動させることができる。切り換えバルブ46は水平方向移動用の、切り換えバルブ47の垂直方向移動用のエアシリンダ切り換えバルブである。
【0026】ピペット41の上端は、血球を含む試料液を分注する第1シリンジ49の吐出側に接続されている。第1シリンジ49は、図示しない駆動源を有している。第1シリンジ49の吸引側は電磁弁51、配管52を介して洗浄液密閉容器53の排出側に接続されている。密閉容器53の内部には配管54の一端が開口している。配管54の他端は弁55を介して圧力源56に接続されている。配管52には分岐配管57が接続されている。配管57は、電磁弁58を介して第1混合部12に接続されている。このような構成により、ピペット41が血球試料容器48内の血液試料を分注孔31に分注することができるとともに、密閉容器53に収納された洗浄液を分注孔31に注入することができる。第2混合部14の下方には、フローセル16が配置されている。
【0027】フローセル16は、図5で示すように、透光性を有する直方体ブロックで構成され、ブロックの長手方向を軸として断面形状が矩形の管路59を有している。管路59は、2mm×0.2mm、すなわち、アスペクト比の値が10の断面形状を有している(図1)。フローセル16の前後には、測定部17が配置されている。測定部17は、発光手段であるヘリウム-ネオンレーザ61と、スクリーン62と、CCDカメラ63と、画像処理部64とから主に構成されている。レーザ61は、光路軸が管路59の断面の長手方向と直交するよう配置されている。スクリーン62は、フローセル16を間に挟んでレーザ61の照射部と対向して配置されている。スクリーン62は、図6に示すように、強度の強い直接光を遮光できる直接光遮光部62aが設けられている。直接光遮光部62aは、直接光を遮光できるように位置が調整されている。これにより、レーザ61から発せられたレーザ光はセル16の中を流れている赤血球の形状に応じて散乱回折し微弱な散乱光をもスクリーン62に投影される。
【0028】投影された散乱回折光像は、スクリーン62に後置されたCCDカメラ63で撮像され、例えば、1/30秒ごとの像が得られる。撮像された像は適当なレベルで2値化され、画像処理部64に入力データとして取り込まれる。画像処理部64は、入力データを基に画像処理を行う。この結果は、画像処理部64に接続されたCRT70に表示される。一方、フローセル16の下方には、電磁弁65を介して排液チャンバー66が接続されている。さらに、排液チャンバー66には電磁弁67及びポンプ68からなる流体駆動部が接続されている。このような構成により、滞留部32からフローセル16へ所定量の試料液体及び洗浄液を流通させることができる。
【0029】図7は、赤血球機能測定装置10のブロック構成図である。赤血球機能測定装置10は、CPU、ROM、RAM、タイマー、カウンター等を有するマイクロコンピュータを含む制御部71を有している。制御部71には、キー入力部72及びフォトダイオード28が接続されている。また、制御部71には、各電磁弁21a、22a、23a、24a、51、55、58、67、21d、22d、23d、24d、シリンジ21c、22c、23c、24c、ポンプ46、47、LED27、レーザ61、CCDカメラ63、ヒータ25、CRT70および他の入出力部73が接続されている。」

(引6-カ)「【0037】次に、ステップS24では、第1シリンジ49を吐出駆動させる。これにより、第2混合部14の分注孔31に所定量の血液試料液が注入される。そして、血液試料液と希釈液とが混合され滞留部32に導かれる。次に、ステップS25では、滞留部32において所定の滞留時間が経過したか否かを判断する。滞留部32では、赤血球が浸透圧により変化しこの変化が平衡に達するまで、試料懸濁液が滞留する。所定の滞留時間が経過すると、図8のフローチャートのステップS4に移行する。ステップS4では、滞留部32を経た懸濁液がフローセル16の管路59に導入され赤血球の回析像から赤血球の形態が測定される。」

(引6-キ)「【0045】この装置10では、第2混合部14が滞留部32を有しているので、血液懸濁液の浸透圧が平衡に達した後、フローセル16に試料懸濁液を送出することができる。したがって、測定精度を高めることができる。モニター部13は、懸濁液に添加した色素濃度に基づいて混合された懸濁液の浸透圧及び粘度を監視できるので、正確に混合された懸濁液をフローセル16に送出することができる。したがって、測定精度を高めることができる。」

(引6-ク)【図1】




(引6-ケ)【図4】




(2)引用文献6に記載された発明

ア 上記(引6-ケ)の【図4】から、第2混合部14の滞留部32は、乱流発生手段としてのビーズ34が充填された上流側流路、コイル状の細管33、及び、乱流発生手段としてのビーズ34が充填された下流側流路から主に構成されていることが見て取れる。

イ 上記(引6-カ)の段落【0037】に記載された「懸濁液」は、その前に記載された「試料懸濁液」と同じものを意味すると解されることから、以下「試料懸濁液」と記載することとする。

ウ 上記ア及びイを踏まえると、上記(引6-ア)ないし(引6-ケ)の記載から、引用文献6には、

「 希釈液を供給する液供給手段11、第1混合部12、モニター部13、第2混合部14、送液部15、フローセル16及び測定部17からなる赤血球機能測定装置10であって、
第1混合部12の下流側にはモニター部13が接続され、モニター部13の下流側には、第2混合部14が接続されており、
第2混合部14は、分注孔31と、通過する液体を任意の時間だけ滞留させるための滞留部32とから主に構成されており、
滞留部32は、乱流発生手段としてのビーズ34が充填された上流側流路、コイル状の細管33、及び、乱流発生手段としてのビーズ34が充填された下流側流路から主に構成され、
第2混合部14の下方には、フローセル16が配置され、
フローセル16は、透光性を有する直方体ブロックで構成され、ブロックの長手方向を軸として断面形状が矩形の管路59を有しており、
フローセル16の前後には、測定部17が配置されており、
測定部17は、発光手段であるヘリウム-ネオンレーザ61と、スクリーン62と、CCDカメラ63と、画像処理部64とから主に構成されており、
第2混合部14の分注孔31に所定量の血液試料液が注入され、血液試料液と希釈液とが混合され滞留部32に導かれ、滞留部32では、赤血球が浸透圧により変化しこの変化が平衡に達するまで、試料懸濁液が滞留し、滞留部32を経た試料懸濁液がフローセル16の管路59に導入され赤血球の回析像から赤血球の形態が測定される、
赤血球機能測定装置10。」

の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2 引用文献1について

(1)平成31年3月28日付けで通知された拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平9-127086号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。

(引1-ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体クロマトグラフに関し、さらに詳しくはフローセルを流れる液体試料の蛍光を測定する液体クロマトグラフに関する。
【0002】
【従来の技術】図2はフローセルを流れる液体試料を蛍光検出器を用いて測定する液体クロマトグラフの一般的な構成を示す図である。図において10はフローセルであり、その入口側は移動相タンク1、送液ポンプ2、注入装置3、カラム4、入口側の外部配管5とに流路接続されており、フローセル10の出口側は出口側の外部配管6、ドレイン7とに流路接続されている。そして、注入装置3から注入された液体試料が移動相によってカラム4に送られ、カラム4内で成分分離され、フローセル10内を流れてドレイン7に至るようになっている。
【0003】一方、キセノンランプや水銀ランプのような光源21から放射された励起光22が励起分光器23で分光されてフローセル10内を流れる成分分離された試料に照射され、この励起光照射により励起されて放射された蛍光24が蛍光分光器25で分光された後、光電子増倍管などの光検出器26で検出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】フローセルを流れる液体試料の蛍光を測定する液体クロマトグラフでは、カラムからの流路となる外部配管をフローセルに接続する必要があるが、この接続部からの液漏れを防ぐため、接続部にはガスケットを介在させて接続している。
【0005】ところで、フローセル内の流路断面積と外部配管の流路断面積とでは一般にはフローセルにおいての光学的な検出のための領域(フローセルの横幅)を大きくするためフローセル側の断面積の方が大きくなっている。そのため外部配管とフローセルとの接続部の流路の内壁はフローセル側が広くなるような段付き構造(異径の孔が接続されて境界が段構造になったもの)にされたり、フローセル側が広がるようなテーパ状の内壁にされている。そして、液漏れを防ぐためのガスケットとして接続部フローセル側内径と同等以上の断面積の孔を有するものが取り付けられている。
【0006】ところが、カラムからフローセルへ液体を導く流路において、接続部のような流路断面積が急激に変化する場所では、使用する液体の粘度、流量によっては流路断面の中央部部分と流路断面の周囲部分との流速差が大きく開くこととなった。すなわち、接続部を通過してフローセル内に流入する試料は、流路断面の中央部から流入する試料の流速が早いのに対して流路断面の周囲から流入する液は流速が遅いので遅れてフローセルに流入することとなるため、フローセル内において均一な流速で試料が流れず、また特定成分の試料がフローセルを通過しきるまでの時間が長くなり、試料の交換が遅れるという問題があった。このような状態で測定されたクロマトグラムのピークはブロードなものとなり、分離能の低下の原因となった。
【0007】本発明は以上のような問題を解決し、フローセル内において均一に液体を流入させることにより分離能を向上させるようにした液体クロマトグラフを提供することを目的とする。」

(引1-イ)「【0009】
【実施の形態】本発明の液体クロマトグラフでは、フローセルの液体入口側と配管接続部の間には、細径の複数の孔を有する分配器が設けられているので、これが流れの抵抗となってフローセルへの流入部分での液体の流れ方向の流速分布が小さくなり、より均一な流れとなってフローセル内を通過する。したがって、よどみ等の液の置換の遅れが低減されることとなって、より広い流量範囲、多様な液体においてクロマトグラムピークの分離能の低下を避けることができる。
【0010】以下、本発明の実施例を図を用いて説明する。図1は本発明の一実施例を示す液体クロマトグラフの要部であるフローセル部分の構成図である。
【0011】図1において、10は石英ガラスなどで作られたフローセル、5はカラムからの流路である入口側の外部配管、6は液体を排出するのためのドレインに接続される出口側の外部配管である。外部配管5は入口側配管接続部11に接続され、外部配管6は出口側配管接続部12に接続される。
【0012】なお、外部配管5の上流側、外部配管6の下流側の構成については図2と同様であり、また、フローセルへの励起光光学系、蛍光光学系についても図2と同様であるのでこれら部分の説明は省略する。
【0013】入口側の配管接続部11と出口側の配管接続部12とはいずれも内部の流路断面がテーパ状に広がるようになっていて、その断面の広がる側がフローセル側にくるようにしてある。そして、配管接続部11とフローセル10との間には入口側のガスケット13が、配管接続部12とフローセル10との間には出口側のガスケット14が取り付けてある。これらのガスケットは、石英ガラスの破損防止と、液漏れ防止のために設けられている。
【0014】本実施例では、入口側のガスケット13を利用して分配器を構成している。すなわち、ガスケット13は、フローセル入口の広い開口断面積と同程度の大きな1つの孔を有する構造のものではなく、複数の細径の孔が設けてあるものを取り付ける。そしてこの細径が液体の流れに対する抵抗となり、分配器として機能するようにしてある。なお、複数の細径の孔の断面積の総和が入口側の外部配管5の内径の断面積と同等以上にしておけば、流速を低下させることはない。また、分配器がない流路状態であれば流路の中央部の流速が周辺部の流速より大きくなることから、図1に示すようにガスケットの中央部には孔を設けず、ガスケットの中央からすこし周囲に寄った位置に、複数の細径を設ける方がより望ましい(図1では中央から少しずれた位置に4つの細径を設けている)。
【0015】一方、出口側のガスケット14には、従来と同様にフローセル出口側内径と同程度からそれ以上の断面積の1つの大きな孔を有するガスケットを用いてこの部分でのよどみが生じるのを防ぐようにする。
【0016】本実施例のような構成のガスケット13をフローセルの入口側に取り付けることにより、カラムから送られてきた液体はガスケット13によりフローセル内での流速分布が小さくなるように分配され、フローセル10に流入する。
【0017】なお、本実施例では、ガスケット13に分配器として機能を持たせるようにしたが、ガスケット自体は従来からの大きな孔を有するものを用いてこれとは別に複数の細径を有する分配器を設け、フローセル、ガスケット、分配器、ガスケット、配管接続部の順で取り付けてもよい。
【0018】さらに、図3に示すように段付き構造の流路を有する配管接続部に、ステンレス粒子、あるいはフッ素樹脂粒子等の焼結体フィルタを設置して、この焼結体により流速分布を小さくするようにしてもよい(テーパ形状の流路の場合でも焼結体をテーパ形状に合わせればよい)。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように本発明の液体クロマトグラフは、上記のような構成としたので、配管接続部を通過してフローセル内に流入する試料は、分配器により流速分布が小さい状態でフローセルを流れることができ、フローセル内における試料の交換が遅くなるという問題が解消して測定されるクロマトグラムのピークはシャープなものとすることができ、分離能を向上することができる。」

(引1-ウ)【図1】




(引1-エ)【図2】




(引1-オ)【図3】




(2)引用文献1に記載された発明

上記(引1-ア)ないし(引1-オ)の記載から、引用文献1には、

「 フローセルを流れる液体試料の蛍光を測定する液体クロマトグラフであって、
光源21から放射された励起光22が励起分光器23で分光されてフローセル10内を流れる成分分離された試料に照射され、この励起光照射により励起されて放射された蛍光24が蛍光分光器25で分光された後、光電子増倍管などの光検出器26で検出されるものであり、
フローセル内の流路断面積とカラムからの流路となる外部配管の流路断面積とでは、フローセルにおいての光学的な検出のための領域(フローセルの横幅)を大きくするためフローセル側の断面積の方が大きくなっており、
そのため外部配管とフローセルとの接続部の流路の内壁はフローセル側が広くなるような段付き構造にされ、
段付き構造の流路を有する配管接続部に分配器として焼結体フィルタを設置して、この焼結体により流速分布を小さくするようにした、
液体クロマトグラフ。」

の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。


第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「赤血球機能測定装置10」は、本願発明1の「装置」に相当する。

イ 引用発明において、「コイル状の細管33」に流入した試料懸濁液は「下流側流路」へ流出されることから、引用発明の「コイル状の細管33」は、本願発明1の「コイル状管アウトレットを含むコイル状管」に相当する。

ウ 引用発明の「測定部17」は、本願発明1の「検出器要素」に相当する。

エ 引用発明の「フローセル16」は、本願発明1の「フロースルーセル」に相当する。

オ 引用発明において、「下流側流路」と「フローセル16」の流入側との間には、他の構成要素は存在していないことから、引用発明の「下流側流路」は、本願発明1の「インレット」に相当するといえる。

カ 引用発明において、「分注孔31と」「滞留部32とから主に構成され」る「第2混合部14の下方には、フローセル16が配置され」、「滞留部32は、乱流発生手段としてのビーズ34が充填された上流側流路、コイル状の細管33、及び、乱流発生手段としてのビーズ34が充填された下流側流路から主に構成され」、「フローセル16の前後には、測定部17が配置されて」いることは、本願発明1の「前記コイル状管アウトレットは、検出器要素によって観察されるように構成されたフロースルーセルと、前記コイル状管アウトレットとの間に配置されたインレットにのみ接続され」を満たす。

キ 引用発明の「試料懸濁液」は、本願発明1の「液体サンプル」に相当する。

ク 引用発明において、「コイル状の細管33」に流入した試料懸濁液は「下流側流路」へ流出されることから、引用発明の「コイル状の細管33」は、本願発明1の「前記コイル状管は、液体サンプルが前記インレットに流れ込むことが可能なように構成され」を満たす。

ケ 引用発明の「下流側流路」に「充填された」「乱流発生手段としてのビーズ34」と、本願発明1の「流れ分配器」とは、「流れ調整器」で共通する。

コ 引用発明の「下流側流路」に「乱流発生手段としてのビーズ34が充填され」と、本願発明1の「前記インレット内に収納される流れ分配器を備え」とは、「前記インレット内に収納される流れ調整器を備え」で共通する。

サ 引用発明の「滞留部32は、乱流発生手段としてのビーズ34が充填された上流側流路、コイル状の細管33、及び、乱流発生手段としてのビーズ34が充填された下流側流路から主に構成され」、「滞留部32を経た試料懸濁液がフローセル16の管路59に導入され」ることから、引用発明の「下流側流路」に「充填された」「乱流発生手段としてのビーズ34」は、本願発明1の「前記流れ分配器は、前記液体サンプルが前記コイル状管から前記流れ分配器を通って前記フロースルーセルに流れ込むことが可能なように構成され、その結果、前記フロースルーセルに入る流れが生じ」と、「前記流れ調整器は、前記液体サンプルが前記コイル状管から前記流れ調整器を通って前記フロースルーセルに流れ込むことが可能なように構成され、その結果、前記フロースルーセルに入る流れが生じ」で共通する構成を備えているといえる。

(2)そうすると、本願発明1と引用発明とは、

「 装置であって、
コイル状管アウトレットを含むコイル状管を備え、
前記コイル状管アウトレットは、検出器要素によって観察されるように構成されたフロースルーセルと、前記コイル状管アウトレットとの間に配置されたインレットにのみ接続され、
前記コイル状管は、液体サンプルが前記インレットに流れ込むことが可能なように構成され、
前記インレット内に収納される流れ調整器を備え、
前記流れ調整器は、前記液体サンプルが前記コイル状管から前記流れ調整器を通って前記フロースルーセルに流れ込むことが可能なように構成され、
その結果、前記フロースルーセルに入る流れが生じる、装置。」

の発明である点で一致し、次の2点において相違する。

(相違点1)
流れ調整器及びそれが収納されるインレットに関して、本願発明1においては、流れ調整器が「流れ分配器」であり、「前記インレットは、前記コイル状管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し」、「前記流れが前記フロースルーセルに入る際、前記流れは押し出し流れに近似する」と特定されているのに対し、引用発明においては、流れ調整器が「乱流発生手段としてのビーズ34」であり、「下流側流路」(「インレット」に相当。)、「コイル状の細管33」及び「フローセル16の管路59」それぞれのボア径の大小関係が不明であり、「フローセル16」に入る流れが押し出し流れに近似することは特定されていない点。

(相違点2)
本願発明1においては、「前記コイル状管のボア半径に対する曲げ半径の比率が50未満であり」と特定されているのに対し、引用発明においては、「コイル状の細管33」のボア半径に対する曲げ半径の比率が不明である点。

(3)判断

ア 上記相違点1について検討する。

(ア)本願発明1と引用発明1とを対比する。

a 引用発明1の「外部配管」と、本願発明1の「コイル状管」とは、「配管」で共通する。

b 引用発明1の「外部配管」が流出口を有していることは明らかであるから、引用発明1の「外部配管」と、本願発明1の「コイル状管アウトレットを含むコイル状管」とは、「配管アウトレットを含む配管」で共通するといえる。

c 引用発明1の「光検出器26」、「フローセル」及び「配管接続部」は、それぞれ本願発明1の「検出器要素」、「フロースルーセル」及び「インレット」に相当する。

d 引用発明1の「光源21から放射された励起光22が励起分光器23で分光されてフローセル10内を流れる成分分離された試料に照射され、この励起光照射により励起されて放射された蛍光24が蛍光分光器25で分光された後、光電子増倍管などの光検出器26で検出されるものであり」、「外部配管とフローセルとの接続部」に「配管接続部」があることと、本願発明1の「前記コイル状管アウトレットは、検出器要素によって観察されるように構成されたフロースルーセルと、前記コイル状管アウトレットとの間に配置されたインレットにのみ接続され」ることとは、「前記配管アウトレットは、検出器要素によって観察されるように構成されたフロースルーセルと、前記配管アウトレットとの間に配置されたインレットにのみ接続され」ることで共通する。

e 引用発明1の「段付き構造の流路を有する配管接続部」は「外部配管とフローセルとの接続部の流路の内壁はフローセル側が広くなるような段付き構造にされ」と、本願発明1の「前記インレットは、前記コイル状管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し」とは、「前記インレットは、前記配管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し」で共通するといえる。

f 引用発明1の「液体試料」及び「焼結体フィルタ」は、それぞれ本願発明1の「液体サンプル」及び「流れ分配器」に相当する。

g 引用発明1の「流速分布を小さくする」は、本願発明1の「流れは押し出し流れに近似する」に相当するといえる。

h 引用発明1の「液体クロマトグラフ」は、本願発明1の「装置」に相当する。

(イ)そうすると、本願発明1と引用発明1とは、

「 装置であって、
配管アウトレットを含む配管を備え、
前記配管アウトレットは、検出器要素によって観察されるように構成されたフロースルーセルと、前記配管アウトレットとの間に配置されたインレットにのみ接続され、
前記インレットは、前記配管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し、さらに、
前記配管は、液体サンプルが前記インレットに流れ込むことが可能なように構成され、
前記インレット内に収納される流れ分配器を備え、
前記流れ分配器は、前記液体サンプルが前記配管から前記流れ分配器を通って前記フロースルーセルに流れ込むことが可能なように構成され、
その結果、前記フロースルーセルに入る流れが生じ、
前記流れが前記フロースルーセルに入る際、前記流れは押し出し流れに近似する、装置。」

の発明で一致する。

(ウ)したがって、引用発明1は、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項と、「インレット内に収納される流れ分配器を備え」、「前記インレットは、前記配管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し」、「前記流れが前記フロースルーセルに入る際、前記流れは押し出し流れに近似する」で共通する構成を備えている。

(エ)しかしながら、引用発明は「試料懸濁液がフローセル16の管路59に導入され赤血球の回析像から赤血球の形態が測定される」「赤血球機能測定装置10」であるところ、上記(引6-エ)の「【0021】送出された二液は、第2混合部で試料液送出手段により送出された血球を含む試料液が混合され試料懸濁液となる。第2混合部が滞留部を有しておれば、試料懸濁液は平衡に達してからフローセルへ送出される。このため、最適な条件下での測定が可能となる。さらに、第2混合部が前記したような乱流発生手段を有しておれば、混合部の容積を小さくしても効率の高い混合が可能となる。」との記載によれば、引用発明の「乱流発生手段としてのビーズ34」は、血球を含む試料液を混合するために下流側流路に充填されているものであることを勘案すると、これに代えて、引用発明1の「流速分布を小さくする」ために「段付き構造の流路を有する配管接続部に分配器として焼結体フィルタを設置」する構成を採用することを動機付ける事情があるとはいえない。

(オ)また、引用発明において、フローセル16を流れる試料懸濁液の速度分布を均一化させるという課題があるとも認められないことから、引用発明において、引用発明1の「流速分布を小さくする」ために「段付き構造の流路を有する配管接続部に分配器として焼結体フィルタを設置」する構成を追加することを動機付ける事情があるともいえない。

(カ)してみると、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を備えたものとすることは、本願の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)といえども容易に想到し得たこととはいえない。

イ したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ また、引用発明1を主引用発明とした場合、上記ア(ア)及び(イ)の対比を踏まえると、本願発明1と引用発明1とは、次の点で相違する。

(相違点3)
配管に関して、本願発明1においては、「コイル状管」であり、「前記コイル状管のボア半径に対する曲げ半径の比率が50未満であり」と特定されているのに対し、引用発明1においては、「コイル状管」ではない点。

エ 上記相違点3について検討するに、引用発明は本願発明1の「コイル状管」に相当する「コイル状の細管33」を備えているが、「コイル状の細管33」は「通過する液体を任意の時間だけ滞留させるため」のものであるところ、液体クロマトグラフである引用発明1において、フローセルに流入する前に液体試料を滞留させる必要があるとは認められないから、引用発明1において、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者といえども容易に想到し得たこととはいえない。

オ したがって、本願発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)小括

以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明及び引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし9について

本願発明1を減縮した発明である本願発明2ないし9も、本願発明1の「前記インレットは、前記コイル状管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し」、「前記インレット内に収納される流れ分配器を備え」、「前記流れが前記フロースルーセルに入る際、前記流れは押し出し流れに近似する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明2ないし9は、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明10について

本願発明10は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「前記インレットは、前記コイル状管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し」、「前記インレット内に収納される流れ分配器を備え」、「前記流れが前記フロースルーセルに入る際、前記流れは押し出し流れに近似する」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明10は、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明11及び12について

本願発明1及び4の「液体サンプル」を「液体混合物」に変更した発明に相当する本願発明11及び12も、本願発明1の「前記インレットは、前記コイル状管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し」、「前記インレット内に収納される流れ分配器を備え」、「前記流れが前記フロースルーセルに入る際、前記流れは押し出し流れに近似する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明11及び12は、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断

1 原査定(令和元年12月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし12に係る発明は、以下の引用文献6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
引用文献6:特開平8-122328号公報

2 当審の判断

(1)令和2年12月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された請求項1ないし12は、それぞれ「前記インレットは、前記コイル状管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し」、「前記インレット内に収納される流れ分配器を備え」、「前記流れが前記フロースルーセルに入る際、前記流れは押し出し流れに近似する」という事項、又は、「前記インレットは、前記コイル状管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し」、「前記インレット内に収納される流れ分配器を備え」、「前記流れが前記フロースルーセルに入る際、前記流れは押し出し流れに近似する」に対応する事項を有するものとなっている。

(2)そして、上記第4で検討したとおり、本願発明1ないし12は、原査定において引用された引用文献6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について

1 当審拒絶理由では、特許法第36条第6項第2号(明確性)について、以下の不備を通知した。

(1)「フロースルーセルのインレット」について、「インレット」が、「フロースルーセル」の一部であるのか、「フロースルーセル」とは異なる別の部材であるのかが判然としない。
そのため、「前記フロースルーセルの前記インレット内に収納される流れ分配器」について、「流れ分配器」が収納される場所も不明瞭になっている。

(2)一般に、「フロースルーセルのインレット」は、「フロースルーセル」の「流入口」を意味するものといえることから、「インレット」は「フロースルーセル」の一部を指すものと認められる。その場合、「インレット内に収納される流れ分配器」は「フロースルーセル」内に収納されることになり、「前記流れ分配器を通って前記フロースルーセルに流れ込むこと」と整合しない。

2 当審の判断

(1)本件補正により「前記コイル状管アウトレットは、検出器要素によって観察されるように構成されたフロースルーセルと、前記コイル状管アウトレットとの間に配置されたインレットにのみ接続され、
前記インレットは、前記コイル状管アウトレットのボア径より大きく前記フロースルーセルのボア径にほぼ等しい内径を有し」と補正された結果、上記1(1)及び(2)の不備は解消した。

(2)したがって、当審拒絶理由は解消した。


第7 むすび

以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-03 
出願番号 特願2018-534498(P2018-534498)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01N)
P 1 8・ 537- WY (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野田 華代  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 渡戸 正義
伊藤 幸仙
発明の名称 液体サンプルからの複数の信号を測定する方法および装置  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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