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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1371642
審判番号 不服2020-9599  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-08 
確定日 2021-03-23 
事件の表示 特願2018-138292「光均一性を向上できる中空ナノ構造の二次光学レンズの製作方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月24日出願公開、特開2019-101407、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2018-138292号(以下「本件出願」という。)は、平成30年7月24日(パリ条約の例による優先権主張 平成29年12月5日 台湾)の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和元年 8月23日付け:拒絶理由通知書
令和元年11月29日提出:手続補正書
令和元年11月29日提出:意見書
令和2年 3月26日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年 7月 8日提出:審判請求書


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1.本件出願の請求項1-11に係る発明は、本件出願の優先権主張の日前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願の優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2011-36995号公報
引用文献2:特開2017-83692号公報
引用文献3:国際公開第2017/057051号
引用文献4:特開2017-32609号公報
引用文献5:特開2013-102216号公報
引用文献6:特開2014-30980号公報
引用文献7:国際公開第2017/084491号
(当合議体注:主引用例は、引用文献1であり、その他の文献は周知技術を例示する文献である。特に、引用文献2?4は、LEDが、一般に、発光素子とその前面に配置される所定の拡散性を有するレンズとからなるものであることを示す周知技術文献である。)

2.本件出願は、発明の詳細な説明の記載が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができないから、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

3.本件出願は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したものであるということができないから、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。


第3 本願発明
本件出願の請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、令和元年11月29日提出の手続補正書による手続補正後の特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項によって特定される、以下のものである。

「 【請求項1】
中空ナノ構造を有し、光均一性を向上させるための光学レンズの製作方法であって、
(a)レンズの表面において、多結晶系シード層を形成し;
(b)前記多結晶系シード層において、ランダムに配列される複数のナノ柱構造を成長させ;
(c)前記ナノ柱構造の成長がないシード層を除去して、その下のレンズの表面を露出させ;
(d)前記複数のナノ柱構造及び前記レンズの表面の露出した部分において、スパッタリングによりセラミック材料層を形成し;及び
(e)前記複数のナノ柱構造を除去し、ランダムに配列される複数の中空ナノ柱構造を有するセラミック材料層を形成するステップを含む、製作方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製作方法であって、
ステップ(a)におけるレンズの材料は、石英、二酸化ケイ素、窒化アルミニウム、及びダイヤモンドのうちの1つである、製作方法。
【請求項3】
請求項1に記載の製作方法であって、
ステップ(a)における多結晶系シード層の材料は、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)、アルミニウム・ガリウム添加酸化亜鉛(AGZO)、及び酸化インジウム・スズ(ITO)のうちの1つである、製作方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製作方法であって、
ステップ(b)におけるナノ柱構造の材料は、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)、及びアルミニウム・ガリウム添加酸化亜鉛(AGZO)のうちの1つである、製作方法。
【請求項5】
請求項1又は4に記載の製作方法であって、
ステップ(b)におけるナノ柱構造の高さは、1μm?2μmの間にあり、幅は、100nm?200nmの間にある、製作方法。
【請求項6】
請求項1に記載の製作方法であって、
ステップ(b)では、水熱法により、ランダムに配列される前記複数のナノ柱構造を形成する、製作方法。
【請求項7】
請求項1に記載の製作方法であって、
ステップ(b)では、水熱法により、濃度が20mM?30mMであるヘキサメチレンテトラミン(Hexamethylenetetramine、C_(6)H_(12)N_(4))の溶液、及び、濃度が20mM?30mMである硝酸亜鉛六水和物(Zinc Nitrate Hexahydrate、Zn(NO_(3))_(2)・6H_(2)O)の溶液を採用し、プロセス温度が80℃?90℃であり、且つナノ柱成長時間が4時間?6時間であるという条件で、ランダムに配列される複数の酸化亜鉛(ZnO)ナノ柱構造を形成する、製作方法。
【請求項8】
請求項1に記載の製作方法であって、
ステップ(c)では、酸液によるエッチングを用いて、前記シード層を除去する、製作方法。
【請求項9】
請求項1に記載の製作方法であって、
ステップ(d)におけるセラミック材料層は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))、酸化ジルコニウム(ZrO_(2))、窒化ケイ素(Si_(3)N_(4))、二酸化チタン(TiO_(2))、炭化ケイ素(SiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、及び炭化タングステン(WC)のうちの1つである、製作方法。
【請求項10】
請求項1に記載の製作方法であって、
ステップ(e)では、酸液によるエッチングを用いて、前記複数のナノ柱構造を除去する、製作方法。
【請求項11】
請求項8又は10に記載の製作方法であって、
前記酸液は、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸又はそれらからなるグループのうちの1つである、製作方法。」


第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。

(1)「【請求項1】
基板を準備するステップと、
前記基板上に数個のナノワイヤを成長させるステップと、
前記ナノワイヤの表面に外部被覆層を形成させるステップと、
前記外部被覆層の先端に選択エッチングを施すことで、前記ナノワイヤの先端を露出させるステップと、
前記ナノワイヤ全体を除去して、中空状の前記外部被覆層を残すことで、数個の中空のナノチューブを形成させるステップと、
を備えることを特徴とするナノチューブ構造の製造方法。
【請求項2】
前記基板の材料は、半導体材料、ガラス、セラミック、金属、高分子ポリマーまたはサファイアから選択されることを特徴とする、請求項1に記載のナノチューブ構造の製造方法。
【請求項3】
先ず前記基板上にシード層を堆積させてから、前記シード層を利用して、前記ナノワイヤを成長させることを特徴とする、請求項1に記載のナノチューブ構造の製造方法。
【請求項4】
前記シード層の材料は、耐酸性・耐アルカリ性の高い導電金属材料または半導体材料から選択されることを特徴とする、請求項3に記載のナノチューブ構造の製造方法。
【請求項5】
前記耐酸性・耐アルカリ性の高い導電金属材料または半導体材料は、アルミ亜鉛酸化物、インジウム・亜鉛酸化物、ガリウム・亜鉛酸化物または酸化亜鉛から選択されることを特徴とする、請求項4に記載のナノチューブ構造の製造方法。
・・・(省略)・・・
【請求項7】
水熱法を利用して、前記基板のシード層上に前記ナノワイヤを成長させることを特徴とする、請求項3に記載のナノチューブ構造の製造方法。
【請求項8】
前記ナノワイヤの材料は、酸化亜鉛または酸化ニッケルから選択されることを特徴とする、請求項7に記載のナノチューブ構造の製造方法。
【請求項9】
前記水熱法は、硝酸亜鉛とヘキサメチレンテトラミンの混合溶液を利用して、前記基板のシード層上に酸化亜鉛の前記ナノワイヤを成長させることを特徴とする、請求項8に記載のナノチューブ構造の製造方法。
【請求項10】
前記ナノワイヤの成長温度は、30から100℃の間であることを特徴とする、請求項9に記載のナノチューブ構造の製造方法。
【請求項11】
化学気相堆積法、DC/RFスパッタ法、熱蒸着法または電子ビーム蒸着法を選択、利用して、前記ナノワイヤの表面に前記外部被覆層を形成させることを特徴とする、請求項1に記載のナノチューブ構造の製造方法。
【請求項12】
前記ナノワイヤの材料は、前記外部被覆層の材料と異なることを特徴とする、請求項1に記載のナノチューブ構造の製造方法。
【請求項13】
前記外部被覆層の材料は、絶縁材料、半導体材料、導電材料またはその組合せから選択されることを特徴とする、請求項12に記載のナノチューブ構造の製造方法。
【請求項14】
前記絶縁材料は、二酸化シリコン、窒化シリコン、高誘電率材料、アルミ亜鉛酸化物、インジウム・亜鉛酸化物、ガリウム・亜鉛酸化物、酸化インジウム・スズ、酸化ニッケル、銅ホウ素酸化物、銅アルミ酸化物、銅ガリウム酸化物、銅インジウム酸化物またはその組合せから選択され、前記半導体材料は、シリコン、ガリウム砒素、ハフニウム・ランタン酸化物、チタンシリサイド、窒化チタン、窒化タンタルまたはその組合せから選択され、前記導電材料は、金、プラチナまたはその組合せから選択されることを特徴とする、請求項13に記載のナノチューブ構造の製造方法。
・・・(省略)・・・
【請求項19】
ウェットエッチング方式を利用して、前記ナノワイヤ全体を除去することを特徴とする、請求項1に記載のナノチューブ構造の製造方法。
【請求項20】
前記ウェットエッチングは、燐酸混合溶液を使用することを特徴とする、請求項19に記載のナノチューブ構造の製造方法。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノチューブ構造の製造方法に関し、特に、ナノワイヤ(nanowire)及び外部被覆層によって中空のナノチューブ(nanotube)構造を形成させる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、マイクロ電子技術素子(Micro-Electro-Mechanical Device)及びセンサー素子のニーズに応えるために、各種ナノ構造が研究開発及び改良され、適切な絶縁材料(例えば酸化物)、半導体材料または導体材料を応用して各種ナノワイヤ(nanowire)またはナノチューブ(nanotube)構造が製造されている。例えば、二酸化シリコンSiO_(2)、二酸化チタンTiO_(2)、酸化亜鉛ZnO、リン化インジウムInP、シリコンSi、窒化ガリウムGaN、ニッケルNi、プラチナPtまたは金Au等のナノ材料を利用して金属ナノワイヤが製造される。また他に、カーボンまたは二酸化シリコン等を利用してナノチューブを製造する場合もある。上述のナノワイヤまたはナノチューブの構造は、各種の異なる独特の物理化学性質を提供することができるため、各種機能を有するマイクロ電子技術素子及びセンサー素子を設計することが可能である。
【0003】
現在、すでによく知られている従来のナノチューブの作製方法は、ファーネス(furnace)高温法、触媒(catalyst)または基板と電気泳動法(electrophoretic deposition,EPD)を組み合わせた方法、パルスレーザー堆積法(pulse laser deposition,PLD)、有機金属気相成長法(metal-organic chemical-vapor deposition,MOCVD)、原子層堆積法(atomic-layer deposition,ALD)、熱蒸着法(thermal evaporation)または表面ゾル-ゲル法(surface sol-gel,SSG)等の方式がある。
【0004】
しかしながら、従来の製造工程による方式は、必要とする設備費用が高価で、その製造技術も極めて複雑で時間を要するため、ナノチューブの作製コストは極めて高くなる。さらに、従来の製造工程による方式は、ほとんどが高温環境下で行なわれる。しかしながら、この高温条件は、高温に耐えないマイクロ電子技術素子製造に応用する際に、その発展性が大きく制限されて、後続の素子作製の難度及び光電特性に影響する。また、多くのナノチューブの作製方法は、適切なナノ材料を利用して直接中空のナノチューブを製造するが、一部のナノ材料は、直接ナノチューブ構造を形成させることはできない。したがって、これらのナノ材料をナノチューブ分野に応用する際の発展性が制限されることになる。」

(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、従来の技術における問題を解決するナノチューブ構造の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のナノチューブ構造の製造方法を提供することを目的とする。先ずナノワイヤ(nanowire)を成長させてから、ナノワイヤを外部被覆層で被覆し、次に外部被覆層内のナノワイヤを取り除く。このようにして、外部被覆層から構成された中空部によってナノチューブ(nanotube)が形成される。各種材料のナノチューブの製作に提供されることで、製造工程の複雑さが簡素化され、素子の製造コスト及び素子材料の選択性も増す。
【0007】
さらに、上記課題を解決するために、本発明は、以下のナノチューブ構造の製造方法を提供することを目的とする。水熱法(hydro-thermal growth,HTG)を利用し、相対的に低い温度下においてコントロールして、所定のサイズを有するナノワイヤを成長させ、このナノワイヤを利用してナノチューブを製造する。水熱法は、高温に耐えない材料によってナノチューブを作製する場合に応用できることで、後続のマイクロ電子技術素子製造に役立つため、製造工程の簡素化、設備の簡素化、素子製造コストの削減、ナノチューブのサイズの精度向上、製造工程の適用分野の拡大及び素子の光電特性の向上が図れる。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のナノチューブの製造方法は、以下のステップを備える。即ち、基板を準備するステップと、前記基板上に数個のナノワイヤを成長させるステップと、前記ナノワイヤの表面に外部被覆層を形成させるステップと、前記外部被覆層の先端に選択エッチングを施して、前記ナノワイヤの先端を露出させるステップと、前記ナノワイヤ全体を取り除いて、中空状の前記外部被覆層を残して、数個のナノチューブを形成させるステップと、を備える。
・・・(省略)・・・
【発明の効果】
【0021】
本発明の製造工程は、高価な金属有機化学気相堆積法MOCVD等のエピタキシーまたは成長製造工程設備を必要としないため、高価な設備の必要性がなく、よって、設備コストが節約され、製造工程の簡素化が可能である。
【0022】
さらに、本発明の製造工程は、シンプルながら、面積の大きな基板の作製も可能である。ナノチューブの成長後、さらに、切断を行なうことも可能であるため、マイクロ電子技術素子の量産製造に有利で、素子の製造コストを相対的に節約できる。
【0023】
またさらに、本発明のナノチューブの成長には触媒を必要とせず、面積の大きな基板上に垂直配列の特性を持たせて成長させることができる。したがって、単一方向による均一なナノチューブの作製に有利であるため、ナノチューブの均一性及び製品の歩留りが高くなる。
【0024】
またさらに、本発明の水熱法によるナノワイヤ成長、被覆堆積による外部被覆層及びドライ方式/ウェット方式によるエッチング等の製造工程は、いずれも低温製造工程であり、必要とする製造温度は相対に低く、後続素子の光電性能を損なうことがない。さらに、高温に耐えない材料によるナノチューブの作製が可能である。したがって、製造工程の適用領域が広がり、素子の光電特性も向上する。
【0025】
またさらに、本発明は、水熱法を実施する際において、ナノワイヤの直径及び長さをコントロールすることで、外部被覆層にメッキされる外部被覆層の堆積厚度を調整することができる。さらに、選択エッチングの際に、ナノワイヤの露出する長さ等の数値をコントロールして、最終的なナノチューブ構造の長さ、内径、外径及び管壁厚度等の条件を精確に調整できる。したがって、ナノチューブのサイズの精度が高くなり、製品設計の幅が広がる。
【0026】
またさらに、本発明の製造工程は、ナノワイヤ及び外部被覆層によって、中空のナノチューブを作製する。したがって、材料がナノワイヤ上に被覆、堆積して外部被覆層が形成されさえすれば、中空のナノチューブ構造が作製できる。中空のナノチューブ構造の材料の選択は、製造工程の制限を受けにくく、よって、素子材料の選択性及び製品設計の幅が広がる。」

(4)「【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図を参照しながら、本発明のナノチューブ構造の製造方法について説明する。
【0029】
本発明のナノチューブ構造の製造方法は、主にナノワイヤ(nanowire)及び外部被覆層を利用して、各種の異なる独特の物理化学性質を有する中空のナノチューブ管(nanotube)構造を作製することにより、ナノチューブ構造によって各種機能を有するマイクロ電子技術素子及びセンサー素子を設計することが可能である。例えば、ナノチューブ構造を光波伝導材料とすることで各種光電素子に応用できる。例えば、光検出器(photo detector)、太陽エネルギー電池(solar cell)、液晶ディスプレイ(LCD)及び発光ダイオード(LED)等である。したがって、電気工学工業上、極めて大きなビジネスチャンス及び応用面での潜在力を有する。
【0030】
本発明の好適な実施例において、前記ナノチューブ構造の製造方法は、以下のステップを備える。基板1を準備するステップと、前記基板1上に数個のナノワイヤ2を成長させるステップと、前記ナノワイヤ2の表面上に外部被覆層3を形成させるステップと、前記外部被覆層3の先端に選択エッチングを施すことで、前記ナノワイヤ2の先端を露出させるステップと、前記ナノワイヤ2全体を除去して、中空の前記外部被覆層3を残すことで、数個のナノチューブ3'を形成させるステップと、である。本発明の好適な実施例は、以下に図1Aから図1Fによって、順にナノチューブ構造の製造方法の各ステップについて詳細に説明する。
【0031】
図1Aを参照しながら説明する。本発明の好適な実施例におけるナノチューブ構造の製造方法のステップ1 は以下のとおりである。基板1を準備する。本ステップにおいて、前記基板1は、末端マイクロ電子技術素子またはセンサー素子のニーズに応じて、適切な材料を選択して前記基板1を作製する。このうち、前記材料は、P型またはN型半導体材料、ガラス、セラミック、金属、高分子ポリマーまたはサファイア(sapphire)から選択されるが、これに限られるものではない。本実施例において、前記基板1はガラス基板から選択され、さらに、理想的なものは透明の導電コーティングガラスである。例えば、酸化インジウム・スズ(ITO)コーティングガラスは、透光特性を有する光電素子を後続製作するのに有利である。さらに、末端マイクロ電子技術素子またはセンサー素子のニーズに応じて、前記基板1は、ハード基板の外、フレキシブル基板から選択されることも可能である。例えば、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエチレンテレフタレート (polyethylene terephthalate,PET)またはその他の等価高分子ポリマーからフレキシブル基板を製造することも可能である。
【0032】
さらに、図1Aに示したように、前記基板1は、ステップ2に移る前に、先に洗浄作業を行なうことが望ましい。それは以下の内容を含む。脱イオン水で5分間洗浄する。硫酸/過酸化水素の混合溶液(H_(2)SO_(4):H_(2)O_(2)=3:1)中に10分間浸す。脱イオン水で再度5分間洗浄する。フッ化水素酸の水溶液(HF:H_(2)O=1:100)中に20秒浸す。脱イオン水で5秒間洗浄する。水酸化アンモニウム/過酸化水素の混合水溶液(NH_(4)OH:H_(2)O_(2):H_(2)O= 1:4:20)中に10分間浸す。脱イオン水で5分間洗浄する。塩酸/過酸化水素の混合水溶液(HCl:H_(2)O_(2):H_(2)O=1:1:6)中に10分間浸す。脱イオン水で5分間洗浄する。フッ化水素の水溶液(HF:H_(2)O=1:100)中に15-20秒浸す。脱イオン水で5秒間洗浄する。窒素(N_(2))で前記基板1を吹き乾かす。
【0033】
図1B及び1Cを参照しながら説明する。本発明の好適な実施例におけるナノチューブ構造の製造方法のステップ2は以下のとおりである。前記基板1上に数個のナノワイヤ2を成長させる。本ステップにおいて、本発明で好適とされるのは、先ず前記基板1上にシード層(seed layer)11を堆積させてから、前記シード層11を利用して水熱法(hydro-thermal growth,HTG)を組み合わせて、前記ナノワイヤ2を成長させるものである。図1Bに示したように、前記シード層11の材料は、耐酸性・アルカリ性の高い導電金属材料または半導体材料から選択される。例えば、アルミ亜鉛酸化物(AZO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、ガリウム・亜鉛酸化物(GZO)、酸化亜鉛(ZnO)またはその他である。
【0034】
本実施例において、本発明はアルミ亜鉛酸化物(AZO)を使用して、前記シード層11を成長させる。さらに、使用する堆積システムは、DC/RFスパッタリングシステムまたは蒸着システムであり、望ましい堆積条件は、パワー200ワット(W)、堆積速度0.4オングストローム/秒(オングストローム/sec)、真空条件7.6x10^(-3)トル(torr)、アルゴン(Ar)流量24立方cm/分(sccm)である。前記シード層11の堆積厚度は、100から500ナノメートル(nm)の間が望ましい。
【0035】
次に、図1C及び図2を参照しながら説明する。水熱法を実施する際、本発明では、硝酸亜鉛(zinc nitrate)とヘキサメチレンテトラミン(hexamethylenetetramine,HMT)の混合溶液を利用して、前記基板1のシード層11上に前記ナノワイヤ2を成長させる。前記ナノワイヤ2の材料は、酸化亜鉛(ZnO)または酸化ニッケル(NiO)から選択されることが望ましい。前記ナノワイヤ2の成長時間は、10から240分の間であるが、望ましいのは60から120分の間である。そして、成長温度は、30から100℃の間に保持されるが、望ましいのは85から95℃の間である。
【0036】
本実施例において、本発明では、酸化亜鉛を使用して前記ナノワイヤ2を成長させている。前記混合溶液は、脱イオン水800ml、硝酸亜鉛6gとヘキサメチレンテトラミン3gを調合して作られる。さらに、前記基板1は、前記混合溶液中に約40から80分間静かに置かれて、成長温度は85℃前後に維持される。こうして、図2に示したように、本発明では、前記基板1のシード層11上に垂直配列の酸化亜鉛ナノワイヤ(ZnO-NWs)2を成長させる。その直径は、約40から200ナノメートル(nm)で、長さは約1から2ミクロン(um)である。さらに、前記ナノワイヤ2は、前記基板1の表面に沿ってほぼ垂直方向に成長する。
【0037】
ここで注意すべきは、本発明の水熱法は、相対的に低い温度しか必要としないという点である。このため、後続素子の光電性能を損なうことがない。同時に、本発明では、成長時間を調整することで、前記ナノワイヤ2の直径と長さ(高さ)、さらには、アスペクト比、均一度または密度等のサイズの数値がコントロールできる。上述の直径及び長さは、末端マイクロ電子技術素子またはセンサー素子のニーズによって設定されるが、特に制限されるものではない。
【0038】
図1Dを参照しながら説明する。本発明の好適な実施例におけるナノチューブ構造の製造方法のステップ3は以下のとおりである。前記ナノワイヤ2の表面上に、外部被覆層3が形成される。本ステップにおいて、本発明では、化学気相堆積法(chemical vapor deposition,CVD)、DC/RF スパッタ法(DC/RF sputter)、熱蒸着法(thermal evaporation)または電子ビーム蒸着法(e-beam evaporation)が選択、利用されて、前記ナノワイヤ2の表面上に前記外部被覆層3が形成される。前記外部被覆層3の材料は、前記ナノワイヤ2の材料と異なることで、後続ステップにおける選択エッチングがしやすくなる。
【0039】
前記外部被覆層3の材料は、広範囲から取得することが可能で、堆積、スパッタリングまたは蒸着が行なえる絶縁材料、半導体材料、導電材料またはその他の組合せでありさえすれば、いずれも前記外部被覆層3を成長させるのに使用することが可能である。例えば、使用可能な絶縁材料は、二酸化シリコン(SiO_(2))、窒化シリコン(Si_(3)N_(4))、高誘電率(high-k)材料、アルミ亜鉛酸化物(AZO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、ガリウム・亜鉛酸化物(GZO)、酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化ニッケル(NiO)、銅ホウ素酸化物(CuBO_(2))、銅アルミ酸化物(CuAlO_(2))、銅ガリウム酸化物(CuGaO_(2))、銅インジウム酸化物(CuInO_(2))またはその組合せから選択される。半導体材料は、シリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、ハフニウム・ランタン酸化物(HfLaO)、チタンシリサイド(TiSi_(2))、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)またはその組合せから選択される。そして、導電材料は、金(Au)、プラチナ(Pt)またはその組合せから選択される。前記外部被覆層3の堆積厚度は、100から1000ナノメートルの間が望ましい。
【0040】
図1D及び図3を参照しながら説明する。本実施例において、前記外部被覆層3は、二酸化シリコンから選択されて、化学気相堆積法(CVD)を利用して、酸化亜鉛のナノワイヤ2の表面に二酸化シリコンの外部被覆層3が蒸着される。前記外部被覆層3の最終平均堆積厚度は約1000ナノメートル(すなわち1ミクロン)である。前記外部被覆層3は完全に前記ナノワイヤ2の全ての表面を覆って、同時に前記シード層11の表面を覆う。ここで注意すべきは、本発明では、化学気相堆積法による製造工程の堆積時間または堆積速度等の数値を調整することで、前記外部被覆層3の堆積厚度をコントロールでき、さらに、後続のナノチューブ3'の管壁厚度も調整できるという点である。
【0041】
図1Eを参照しながら説明する。本発明の好適な実施例におけるナノチューブ構造の製造方法のステップ4は以下のとおりである。前記外部被覆層3の先端に選択エッチングを施すことで、前記ナノワイヤ2の先端を露出させる。本ステップにおいて、本発明では、ドライ方式またはウェット方式の異方性エッチング(anisotropic etching)方式によって、前記外部被覆層3の先端に選択エッチングを行なう。例えば、前記外部被覆層3の材料は、二酸化シリコンの場合は、前記ドライ式エッチング方式は、誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma,ICP)エッチングまたは反応性イオンエッチング(reactive ion etching,RIE)から選択されることが望ましい。そして、ウェット方式は、バッファ酸化物エッチング(buffer oxide etching,BOE)から選択されることが望ましいが、これに限られるものではない。
・・・(省略)・・・
【0044】
つまり、エッチング製造工程の条件をコントロールすることで、前記外部被覆層3の先端のエッチングの長さ及び後続のナノチューブ3'の最終の長さを決定することができるということである。また、ステップ4 において、製造条件を調整することで、同時に前記シード層11表面の外部被覆層3をエッチングして除去するが、製品のニーズに応じて、前記シード層11上の外部被覆層3を残すことも可能である。
【0045】
図1Fを参照しながら説明する。本発明の好適な実施例におけるナノチューブ構造の製造方法のステップ5は以下のとおりである。前記ナノワイヤ2全体を除去して、残された中空状の前記外部被覆層3を残すことで、数個のナノチューブ3'を形成させる。本ステップにおいて、本発明では、ウェット式エッチング方式によって前記ナノワイヤ2全体を除去することが望ましい。つまり、前記ナノワイヤ2の材料によって、適当な化学混合溶液を選択してエッチングを行なうということである。例えば、前記ナノワイヤ2の材料が酸化亜鉛または酸化ニッケルである時、化学混合溶液は、燐酸混合溶液から選択されることが望ましい。前記燐酸混合溶液の調合は、脱イオン水:燐酸溶液(H_(3)PO_(4)):塩酸(HCl)=50:5:1であり、エッチング条件は、室温下で5から10分間エッチング処理を行なう。
【0046】
図1F及び図5A、図5Bを参照しながら説明する。本発明では、先ず脱イオン水500ml、燐酸50mlと塩酸10mlを調合して燐酸混合溶液とする。次に、ステップ4で処理された基板1を燐酸混合溶液の中に浸す。室温下で5から10分間静かにそのまま置く。こうして、燐酸混合溶は、先ず前記ナノワイヤ2の露出した先端をエッチングし、続いて、前記ナノワイヤ2全体を除去して、中空状の前記外部被覆層3が残るまで、前記外部被覆層3内部のナノワイヤ2にエッチングが行なわれる。
【0047】
こうして、本発明の初期段階におけるナノチューブ3'が得られる。図5A、図5Bを参照しながら説明する。前記ナノチューブ3'の先端は、ステップ4の選択エッチングの関係で、時に一部が「バリ」となってその先端の開口部に残留する場合があるが、ステップ4の選択エッチング条件を調整することで、このような「バリ」を少なくすることが可能である。しかしながら、本発明は、故意に上述の「バリ」形状を形成させることにより、ある特殊なニーズのマイクロ電子技術素子の作製に応用されることが可能である。」

(5)「【産業上の利用可能性】
【0051】
このように、本発明は、従来のナノチューブの製造方法に存在した、設備費用が高い、製造工程が複雑で時間がかかる、製作コストが極めて高い、耐高温性が低い素子での作製ができない、一部のナノ材料のナノチューブ構造が形成できない等の欠点を解決することが可能である。図1Aから図7までの、本発明のナノチューブ構造の製造方法は以下の特徴を有する。
【0052】
(1)本発明の製造工程は、高価な金属有機化学気相堆積法MOCVD等のエピタキシーまたは成長製造工程設備を必要としないため、高価な設備の必要性がなく、よって、設備コストが節約され、製造工程の簡素化が可能である。
【0053】
(2)本発明の製造工程は、シンプルながら、面積の大きな基板の作製も可能である。ナノチューブの成長後、さらに、切断を行なうことも可能であるため、マイクロ電子技術素子の量産製造に有利で、素子の製造コストの相対的な節約ができる。
【0054】
(3)本発明のナノチューブの成長には触媒を必要とせず、面積の大きな基板上に垂直配列の特性を持たせて成長させることができる。したがって、単一方向による均一なナノチューブの作製に有利であるため、ナノチューブの均一性及び製品の歩留りが高くなる。
【0055】
(4)本発明の水熱法によるナノワイヤ成長、被覆堆積による外部被覆層及びドライ方式/ウェット方式によるエッチング等の製造工程は、いずれも低温製造工程であり、必要とする製造温度は相対的に低く、後続素子の光電性能を損なうことがない。さらに、高温に耐えない材料によるナノチューブの作製が可能である。したがって、製造工程の適用領域が広がり、素子の光電特性も向上する。
【0056】
(5)本発明は、水熱法を実施する際において、ナノワイヤの直径及び長さをコントロールすることで、メッキされる外部被覆層の堆積厚度を調整することができる。さらに、選択エッチングの際に、ナノワイヤの露出する長さ等の数値をコントロールして、最終のナノチューブ構造の長さ、内径、外径及び管壁厚度等の条件を精確に調整できる。したがって、ナノチューブのサイズの精度が高くなり、製品設計の幅が広がる。
【0057】
(6)本発明の製造工程は、ナノワイヤ及び外部被覆層によって、中空のナノチューブを作製する。したがって、材料がナノワイヤ上に被覆、堆積して外部被覆層が形成されさえすれば、中空のナノチューブ構造が作製できる。中空のナノチューブ構造の材料の選択は、製造工程の制限を受けにくく、よって、素子材料の選択性及び製品設計の幅が広がる。」

(6) 図1A


(7)図1B


(8)図1C


(9)図1D


(10)図1E


(11)図1F


(12)図2


(13)図5B


2.引用発明
上記1.によれば、引用文献1には、請求項5に係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「 基板を準備するステップと、
前記基板上に数個のナノワイヤを成長させるステップと、
前記ナノワイヤの表面に外部被覆層を形成させるステップと、
前記外部被覆層の先端に選択エッチングを施すことで、前記ナノワイヤの先端を露出させるステップと、
前記ナノワイヤ全体を除去して、中空状の前記外部被覆層を残すことで、数個の中空のナノチューブを形成させるステップと、
を備え、
先ず前記基板上にシード層を堆積させてから、前記シード層を利用して、前記ナノワイヤを成長させ、
前記シード層の材料は、耐酸性・耐アルカリ性の高い導電金属材料または半導体材料から選択され、
前記耐酸性・耐アルカリ性の高い導電金属材料または半導体材料は、アルミ亜鉛酸化物、インジウム・亜鉛酸化物、ガリウム・亜鉛酸化物または酸化亜鉛から選択される、ナノチューブ構造の製造方法。」


第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のとおりとなる。
なお、以下では、対比の便宜のため、本願発明1の「(a)」?「(e)」を、それぞれ「ステップ(a)」?「ステップ(e)」という。

ア ステップ(a)
引用発明の「シード層」は、「シード層を利用して、ナノワイヤを成長させ」るものであるから、その文言の意味及び機能からみて、本願発明1の「シード層」に相当する。
また、引用発明の「シード層の材料」は、「アルミ亜鉛酸化物、インジウム・亜鉛酸化物、ガリウム・亜鉛酸化物または酸化亜鉛から選択される」ものであり、一般的にこれらの材料は多結晶系であることは技術常識である。
そうしてみると、引用発明の「シード層」は、本願発明1の「多結晶系シード層」に相当する。
以上によれば、引用発明の「基板上にシード層を堆積させ」るステップと、本願発明1の「ステップ(a)」とは、「表面において、多結晶シード層を形成し」という点で共通する。

イ ステップ(b)
引用発明の「ナノワイヤ」は、「基板上にシード層を堆積させてから、前記シード層を利用して、前記ナノワイヤを成長させ、基板上に数個の」「成長させるステップ」で得られるものである。
ここで、引用発明の「ナノワイヤ」における「ワイヤ」は、基板上から成長したものであり、縦に長い形状をしたものであるから、一般的にその構造(形状)は柱状であるといえ、「ナノ」という用語の意味からみて、引用発明の「ナノワイヤ」は、本願発明1の「ナノ柱構造」に相当する。また、引用発明の「ナノワイヤ」は、基板上に複数成長することが技術常識である。
以上によれば、引用発明の「シード層を利用して、ナノワイヤを成長させ」るステップは、本願発明1の「ステップ(b)」と、「(b)多結晶系シード層において、」「複数のナノ柱構造を成長させ」る点で共通する。

ウ ステップ (d)
上記「イ ステップ(b)」で述べたとおり、ナノワイヤは複数成長されたものであるから、引用発明の「ナノワイヤの表面に外部被覆層を形成させるステップ」は、本願発明1の「ステップ(d)」と、「(d)複数のナノ柱構造において、」「層を形成し」という点で共通する。

エ ステップ(e)
引用発明の「中空のナノチューブ」は、「ナノワイヤ全体を除去して、中空状の前記外部被覆層を残すことで」「形成される」ものであり、「ナノワイヤ」は上記イで述べたとおり柱状といえる。そうするとその「ナノワイヤ」を覆う外部被覆層の形状もまた柱状であるといえることから、引用発明の「中空のナノチューブ」は、本願発明1の「中空ナノ柱構造」に相当する。
以上によれば、引用発明の「ナノワイヤ全体を除去して、中空状の前記外部被覆層を残すことで、数個の中空のナノチューブを形成させるステップ」は、本願発明1「ステップ(e)」と、「複数のナノ柱構造を除去し、」「複数の中空ナノ柱構造を有する」「層を形成するステップ」という点で共通する。

以上ア?エによれば、本願発明1と引用発明とは、次の一致ないし相違する。

(一致点)
「(a)表面において、多結晶系シード層を形成し;
(b)前記多結晶系シード層において、複数のナノ柱構造を成長させ;
(d)前記複数のナノ柱構造において、層を形成し;及び
(e)前記複数のナノ柱構造を除去し、複数の中空ナノ柱構造を有する層を形成するステップを含む、製作方法。」

(相違点1)「製作方法」が、本願発明1では、「中空ナノ構造を有し、光均一性を向上させるための光学レンズの製作方法」であるのに対して、引用発明では、このように特定されていない点。

(相違点2)「多結晶系シード層」が形成される「表面」が、本願発明1では、「レンズの表面」であるのに対して、引用発明では、「基板の表面」である点。

(相違点3)「複数のナノ柱構造」が、本願発明1は、「ランダムに配列される」のに対して、引用発明では、このように特定されていない点。

(相違点4)本願発明1では、「(c)ナノ柱構造の成長がないシード層を除去して、その下のレンズの表面を露出させ」るのに対して、引用発明では、このような構成を具備していない点。

(相違点5)ステップ「(d)」の「複数のナノ柱構造」「において」「形成」される「層」が、本願発明1では、「レンズの表面の露出した部分において」も形成されるものであり、「スパッタリング」により「セラミック材料層」として形成されるのに対して、引用発明では、このように特定されていない点。

(相違点6)ステップ「(e)」の「複数の中空ナノ構造」が、本願発明1では、「ランダムに配列され」、「複数の中空ナノ構造を有する層」が、本願発明1では、「セラミック材料層」であるのに対して、引用発明では、このように特定されていない点。

(2)相違点についての判断

事案に鑑み、相違点4について検討する。
引用文献1には、ナノ柱構造の成長がないシード層を除去して、その下の部材の表面を露出させることは、記載も示唆もない。
ここで、原査定の拒絶理由に周知技術として示された、引用文献5の【0055】、引用文献6の【0029】、引用文献7の第3頁第8-11行には、配線基板や液体吐出ヘッドにおいて、シード層上にめっき膜を成長させた後、メッキ膜が形成されていないシード層を除去することや太陽電池において、P型微結晶ゲルマニウムシード層を成長形成し、余剰な微結晶ゲルマニウムシード層を除去することが開示されているが、「ナノ柱構造」の成長があるシード層を除去することが開示されているものでもなく、さらに、これらの除去工程を引用発明に採用しようとする動機も見いだせない。
くわえて、令和元年11月29日提出の意見書において、請求人は、「引例1の構造を本願発明の光学散乱材料に適用すれば、基板の不透明性及びシード層の残留が原因で、光が基板及びシード層を通過するときに、光損失が生じるため、光の通過量が低減し、これにより、後続の光が中空ナノ柱を通過する散乱効率が低くなります。これに対して、本願発明の主な応用は、散乱光の均一性を向上させることです。よって、本願発明は、透明基板材料を採用し、且つ、シード層の除去ステップも有し、これにより、光を有効に通過させることができ」ることを主張しており、当業者にとって単なる設計事項であるともいえない。
また、引用文献1の【0029】に「発光ダイオード(LED)」に応用できることが示唆されているが、散乱光の均一性を向上させ、光を有効に透過させることができる効果まで当業者が予測できるともいえず、製造工程の簡素化とコストの低減を課題とする(【0006】)主引用発明の製造方法において、あえて、除去工程を追加するほどの十分な動機は見いだせない。
以上によれば、相違点4に係る本願発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、上記相違点1-3、5-8について判断するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2-11について、
本願発明2-11は、いずれも、本願発明1の「(c)前記ナノ柱構造の成長がないシード層を除去して、その下のレンズの表面を露出させ」という相違点4に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


第5 原査定について
1 理由1(特許法29条2項:進歩性)について
上記「第4 対比・判断」で述べたとおり、本願発明1?11は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?7に記載された事項に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないとはいえない。

2 理由2(特許法36条4項1号:実施可能要件)について
スパッタ法により形成される層が微細孔を有しエッチング液が浸透することがあり得ることは、特開平9-54058号公報の【0010】に記載されているように技術常識であるから、本願発明が実施できないとまではいえない。

3 理由3(特許法36条4項1号:委任省令要件)について
本願発明の中空ナノ構造を有する光学レンズが、光均一性を多少なりとも向上することは明らかであるから、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が、発明の詳細な説明に記載されていないとまではいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 むずび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2021-03-03 
出願番号 特願2018-138292(P2018-138292)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
P 1 8・ 536- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 井亀 諭
井口 猶二
発明の名称 光均一性を向上できる中空ナノ構造の二次光学レンズの製作方法  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
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