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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G06F
審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
管理番号 1371687
異議申立番号 異議2020-700204  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-24 
確定日 2020-12-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6581200号発明「静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物、静電容量型入力装置の電極保護膜、転写フィルム、積層体、静電容量型入力装置および画像表示装置。」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6581200号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-21〕について訂正することを認める。 特許第6581200号の請求項1、2、4、5及び7ないし21に係る特許を維持する。 特許第6581200号の請求項3及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6581200号の請求項1?21に係る特許についての出願は、平成28年9月29日(優先権主張 平成27年9月30日)の出願であって、令和元年9月6日にその特許権の設定登録がされ、令和元年9月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年3月24日に特許異議申立人(特許業務法人 朝日奈特許事務所)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年6月30日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和2年9月3日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は、令和2年12月1日に意見書を提出した。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、訂正により付加又は変更された箇所を示す。

ア 訂正事項1
請求項1に、「但し、前記静電容量型人力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く」と記載されているのを、「但し、前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合と、前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物を含有する場合を除く」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、11?16および18?21も同様に訂正する。)。

イ 訂正事項2
請求項2に「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物を硬化した静電容量型入力装置の電極保護膜が、23℃、相対湿度50%の環境下の引っ張り試験において、破断伸び5%以上である、請求項1に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物。」と記載されているのを、独立形式に改め、「(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物であって、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物を硬化した静電容鼠型入力装置の電極保護膜が、23℃、相対湿度50%の環境下の引っ張り試験において、破断伸びが5%以上である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合勿と、カルボキシル基を有するジオール化合勿との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化2】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、11?16および18?21も同様に訂正する。)。

ウ 訂正事項3
請求項3を削除する。

エ 訂正事項4
請求項4に「前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物が、重量平均分子量を軍合性基の平均個数で割った値が350?800である光重合性化合物である、請求項1または2に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含み、
前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物が、重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が550?800である光重合性化合物である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化3】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、11?16および18?21も同様に訂正する。)。

オ 訂正事項5
請求項5に「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、すべての前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記(b1)重量平均分子星を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合が10質量%以上である、請求項1?4のいずれか一項に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物であって、
前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物が、重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物であり、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、すべての前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物の割合が21.63質量%以上であり、
前記静電容量型人力装置の電極保護膜用の組成物の中で、全固形分に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物の割合が7.92質量%以上である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化4】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、11?16および18?21も同様に訂正する。)。

カ 訂正事項6
請求項6を削除する。

キ 訂正事項7
請求項7に「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、全固形分に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合が5質量%以上である、請求項1?6のいずれか一項に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物であって、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、すべての前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合が44.38質量%以上であり、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、全固形分に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合が21.46質量%以上である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;

【化5】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、11?16および18?21も同様に訂正する。)。

ク 訂正事項8
請求項9に「前記(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物である、請求項1?8のいずれか一項に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
一般式(1)
【化2】

前記一般式(1)中、R^(1)?R^(3)は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含み、
前記(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
一般式(1)
【化6】

前記一般式(1)中、R^(1)?R^(3)は、それぞれ独立に1価の有機基を表す;
【化7】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11?16および18?21も同様に訂正する。なお、訂正請求書第11ページ第4-5行に「請求項8、11?16および」とあるのは「請求項11?16および」の明らかな誤記と認める。)。

ケ 訂正事項9
請求項10に「前記(a)バインダーポリマーが酸基を有する樹脂であり、前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物のうち少なくとも1種類がカルボキシル基を含有する光重合性化合物である、請求項1?9のいずれか一項に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含み、
前記(a)バインダーポリマーが酸基を有する樹脂であり、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物のうち少なくとも1種類がカルボキシル基を含有する光重合性化合物である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化8】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」に訂正する(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11?16および18?21も同様に訂正する。なお、訂正請求書第12ページ第14行に「請求項8、11?16」とあるのは「請求項11?16」の明らかな誤記と認める。)。

コ 訂正事項10
訂正事項10は、請求項17に「但し、前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く」と記載されているのを、「但し、前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合と、前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有するタ官能エポキシ化合物を含有する場合を除く」に訂正する(請求項17の記載を直接的又は間接的に引用する請求項18ないし21も同様に訂正する)。

なお、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-21〕に対して請求されたものである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1、8、11?16および18?21に係る発明において、「前記静電容量型人力装置の電極保護膜用の組成物」から除かれるものとして、「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物を含有する場合」を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1を引用する請求項2に係る発明を独立形式にするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項2は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項4について
訂正事項4は、引用する請求項1又は2のうち請求項1を引用する請求項4に係る発明を独立形式にするとともに、「前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物が、重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値」の範囲を「350?800」から「550?800」に限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4は、本件明細書等(特に、明細書の【0040】、【表1】の材料-4、当該材料-4を使用する【表3】の実施例5及び実施例10)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
これについて、特許異議申立人は、令和2年12月1日に提出した意見書(以下、単に「申立人意見書」という。)の「(3-1-3)本件訂正発明4について」の項(第4?6ページ)において、「本件訂正明細書のいずれにも、「エチレン性不飽和基あたりの重量平均分子量の値が550であるUA-122P」を下限値として採用し得ることや、「エチレン性不飽和基あたりの重量平均分子量の値が800であるUA-160TM」を上限値として採用し得ることは開示も示唆もない。…したがって、上記訂正は、新規事項の追加に該当し、認められない。」と主張する。
しかしながら、本件明細書等の【0016】には、「破断伸びが4.8%以上であることが曲げ耐性の観点から好ましく、破断伸びが5%以上であることがより好ましく、破断伸びが5.1%以上であることが特に好ましい。」と記載されていることからすれば、「破断伸び」は大きい方がより好ましいといえ、本件明細書等の【表3】において、良好な実施例とされる実施例1ないし5及び7ないし10において、「破断伸び」が最も大きい実施例5及び10が、「破断伸び」の観点からすれば最も好ましい実施例といえるから、当該実施例5及び10に基づいた訂正をすることは許される。また、当該実施例5及び10に使用される「材料-4」は、UA-122P(エチレン性不飽和基あたりの重量平均分子量の値が550)およびUA-160TM(エチレン性不飽和基あたりの重量平均分子量の値が800)を併用するものであるから、実施例5及び10のエチレン性不飽和基あたりの重量平均分子量の値は550?800の範囲となる。したがって、エチレン性不飽和基あたりの重量平均分子量の値の下限値を350から550と変更する訂正は、本件明細書等に記載された範囲内のものといえる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用しない。
よって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

オ 訂正事項5について
訂正事項5は、引用する請求項1ないし4のうち請求項1を引用する請求項5に係る発明を独立形式にするとともに、「前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物が、重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物であり、」及び「前記静電容量型人力装置の電極保護膜用の組成物の中で、全固形分に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物の割合が7.92質量%以上である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;」との事項を付加し、「前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値」に関する必要条件を「270以上」から「350以上」に限定するとともに、「光重合性化合物の割合」の要件を「10質量%以上」から「21.63質量%以上」に限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5は、本件明細書等(特に、明細書の【0039】、【0040】、【表1】の材料-1及び材料-2、これらを用いた【表3】の実施例1ないし実施例3、実施例7及び実施例8)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
これについて、特許異議申立人は、申立人意見書の「(3-1-4)本件訂正発明5について」の項(第7?8ページ)において、「上記「21.63質量%」、「7.92質量%」なる数値は、いずれも表1または表3の「材料-2」、「材料-1」の特性値から抽出した1点に過ぎない。これらの数値は、発明の詳細な説明において好適な数値などとして挙げられていることもなく、下限値または上限値としての臨界的な意義も見いだせない。したがって、上記訂正は、新規事項の追加に該当し、認められない。」と主張する。
しかしながら、本件明細書等の【0040】には、「(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1-1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物を含むことが好ましく、」と記載され、実際、本件明細書等の【表3】において、良好な実施例とされる実施例1ないし5及び7ないし10における、「(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1-1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値」はいずれも「350以上」であり、また、「前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値」の最小値は、「21.63」質量%であり、また、「全固形分に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物の割合」の最小値は、「7.92」質量%であるから、「前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値」に関する必要条件を「270以上」から「350以上」に限定するとともに、「光重合性化合物の割合」の要件を「10質量%以上」から「21.63質量%以上」に限定すること、及び、「前記静電容量型人力装置の電極保護膜用の組成物の中で、全固形分に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物の割合が7.92質量%以上である」との事項を付加する訂正は、本件明細書等に記載された範囲内のものといえる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用しない。
よって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

カ 訂正事項6について
訂正事項6は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項6は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

キ 訂正事項7について
訂正事項7は、引用する請求項1ないし6のうち請求項1を引用する請求項7に係る発明を独立形式にするとともに、「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、すべての前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合が44.38質量%以上であり、」との事項を付加し、「全固形分に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合」を「5質量%以上」から「21.46質量%以上」に限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7は、本件明細書等(特に、明細書の【0039】、【表1】の材料-4、当該材料-4を使用する【表3】の実施例5及び実施例10)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
これについて、特許異議申立人は、申立人意見書の「(3-1-5)本件訂正発明7について」の項(第8?9ページ)において、「上記「44.38質量%」、「21.46質量%」なる数値は、いずれも表1または表3の「材料-4」の特性値から抽出した1点に過ぎない。これらの数値は、発明の詳細な説明において好適な数値などとして挙げられていることもなく、下限値または上限値としての臨界的な意義も見いだせない。したがって、上記訂正は、新規事項の追加に該当し、認められない。」と主張する。
しかしながら、前記「エ 訂正事項4について」で述べたように、本件明細書等の【表3】において、「破断伸び」の観点からすれば最も好ましいといえる実施例5及び10(材料-4)に基づいた訂正をすることは許され、かつ、実施例5及び10における「前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合」は、「44.38」質量%であり、また、「全固形分に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合」は、「21.46」質量%である。そして、本件明細書等の【0039】に記載の「すべての(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合が10質量%以上であることが曲げ耐性を改善する観点から好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。」及び「全固形分に対する、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合が5質量%以上であることが曲げ耐性を改善する観点から好ましく、6質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることが特に好ましい。」から、「前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合」及び「全固形分に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合」は大きい方が好ましいとの技術思想が読み取れる。そして、前記実施例5及び10(材料-4)に基づいた発明を採用する場合は、その値である「44.38」質量%及び「21.46」質量%がそれぞれの下限値となる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用しない。
よって、訂正事項7による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ク 訂正事項8について
訂正事項8は、引用する請求項1ないし8のうち請求項1を引用する請求項9に係る発明を独立形式にするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項8は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項8による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ケ 訂正事項9について
訂正事項9は、請求項1を引用する請求項10に係る発明を独立形式にするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項9は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項9による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

コ 訂正事項10について
訂正事項10は、「前記静電容量型人力装置の電極保護膜用の組成物」から除かれるものとして、「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物を含有する場合」を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項10は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項10による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-21〕について訂正することを認める。

3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1、2、4、5及び7ないし21に係る発明(以下「本件発明1」…「本件発明21」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4、5及び7ないし21に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

[本件発明1]
「 (a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合と、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物を含有する場合を除く:
【化1】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」

[本件発明2]
「 (a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物であって、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物を硬化した静電容量型入力装置の電極保護膜が、23℃、相対湿度50%の環境下の引っ張り試験において、破断伸びが5%以上である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化2】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」

[本件発明4]
「 (a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含み、
前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物が、重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が550?800である光重合性化合物である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化3】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」

[本件発明5]
「 (a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物であって、
前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物が、重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物であり、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、すべての前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物の割合が21.63質量%以上であり、
前記静電容量型人力装置の電極保護膜用の組成物の中で、全固形分に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物の割合が7.92質量%以上である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化4】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」

[本件発明7]
「 (a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物であって、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、すべての前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合が44.38質量%以上であり、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、全固形分に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合が21.46質量%以上である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化5】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」

[本件発明8]
「 前記(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物が、ブロックイソシアネートである、請求項1?7のいずれか一項に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物。」

[本件発明9]
「 (a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含み、
前記(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
一般式(1)
【化6】

前記一般式(1)中、R^(1)?R^(3)は、それぞれ独立に1価の有機基を表す;
【化7】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」

[本件発明10]
「 (a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含み、
前記(a)バインダーポリマーが酸基を有する樹脂であり、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物のうち少なくとも1種類がカルボキシル基を含有する光重合性化合物である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化8】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」

[本件発明11]
「 前記静電容量型入力装置の、Agを含む金属電極保護膜用の組成物である、請求項1?10のいずれか一項に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物。」

[本件発明12]
「 前記静電容量型入力装置の、Ag 細線を含む金属電極保護膜用の組成物である、請求項1?11のいずれか一項に記載の静電容量型人力装置の電極保護膜用の組成物。」

[本件発明13]
「 請求項1?12のいずれか一項に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物から形成された、静電容量型入力装置の電極保護膜。」

[本件発明14]
「 仮支持体と、請求項1?12のいずれか一項に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物を含む感光性樹脂層と、を有する転写フィルム。」

[本件発明15]
「 請求項14に記載の転写フィルムから、前記仮支持体が取り除かれた静電容量型入力装置の電極保護膜。」

[本件発明16]
「 静電容贔型入力装置の電極を備える基板上に、請求項13または15に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜、あるいは、請求項14に記載の転写フィルムの前記感光性樹脂層を転写することにより形成された静電容量型入力装置の電極保護膜、を有する、積層体。」

[本件発明17]
「 静電容量型入力装置の電極を備える基板と、
前記基板の上に位置する感光性樹脂層とを有する積層体であって、
前記感光性樹脂層が、(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む、積層体;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合と、
前記感光性樹脂層が、芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物を含有する場合
を除く;
【化9】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」

[本件発明18]
「 前記静電容量型入力装置の電極が、Au、Ag、CuおよびAlから選択される少なくとも1種類の金属、あるいは、Au、Ag、CuおよびAlから選択される少なくとも1種類の金属を含む合金を含む請求項16または17に記載の積層体。」

[本件発明19]
「 前記感光性樹脂層が硬化された請求項16?18のいずれか一項に記載の積層体。」

[本件発明20]
「 請求項16?19のいずれか一項に記載の積層体を含む、静電容量型入力装置。」

[本件発明21]
「 請求項20に記載の静電容量塑入力装置を有する、画像表示装置。」

4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし21に係る特許に対して、当審が令和2年6月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 請求項1、3、4、8、11ないし13、16、17、19ないし21に係る発明は、甲第2号証(特開2013-76821号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
イ 請求項1、3ないし8、11ないし21に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。よって、請求項1、3ないし8、11ないし21に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)甲号証の記載
ア 甲第1号証
甲第1号証(特開2010-160300号公報)は、その【請求項1】?【請求項3】、段落【0001】、【0007】、【0013】?【0015】、【0017】、【0086】、【0090】?【0092】、【0148】、【0183】、【0184】、【0193】、【0237】?【0239】(特に、【表2】の実施例6と【表3】の実施例14)の記載によれば、以下の発明(以下「甲1発明」という。)を開示していると認められる。(括弧内は、甲第1号証の対応する記載箇所を示す。以下の甲2ないし甲6発明についても同様。)

「 パターン加工時において、Si原子を有しない無機物で構成される基板表面や素子表面との現像時接着性に優れたネガ型感光性樹脂組成物を提供することを目的して発明した、(【0007】)
ネガ型感光性樹脂組成物とそれを用いたタッチパネル用材料、タッチパネル保護膜およびタッチパネル絶縁膜であって、(【0001】)
前記ネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、タッチパネル保護膜、各種ハードコート剤等として用いられ、タッチパネルの方式としては、静電容量式等が挙げられ、静電容量式タッチパネルは特に高い硬度が求められることから、本発明の硬化膜を好適に用いることができ、(【0148】)
前記ネガ型感光性樹脂組成物は、
(A)カルボキシル基および/またはフェノール性水酸基と、エチレン性不飽和二重結合基を有する重合体、
(B)光ラジカル重合開始剤、および
(C)水酸基を有する不飽和カルボン酸エステル残基を1分子中に3個以上有する化合物を含有することを特徴とするものであり、(【請求項1】)
前記ネガ型感光性樹脂組成物は、前記(C)の化合物以外にさらに、(D)前記(A)の重合体中のエチレン性不飽和二重結合とラジカル重合反応しうる化合物を含有してもよく、(【0086】)
前記(C)の化合物が、下記一般式(1)で表され、
【化1】

(上記一般式(1)中、R^(1)およびR^(2)は水酸基またはアルケニルカルボニルオキシ基を表し、いずれか一方は水酸基である。R^(3)は炭素数1?5の2価の有機基を表す。R^(4)は炭素数6?40のn価の有機基を表す。nは3?8の整数を表す。)(【請求項2】)
前記一般式(1)中のR^(1)およびR^(2)におけるアルケニルカルボニルオキシ基がメタクリロイル基またはアクリロイル基であり、(【請求項3】)
前記ネガ型感光性樹脂組成物は、さらに下記一般式(11)で表されるイソシアヌレート化合物を含有してもよく、イソシアヌレート骨格部位が、Si原子、(A)の重合体や(C)の化合物と効率よく相互作用するため、Si原子を有する基板であるガラス基板や、窒化ケイ素基板との熱処理後および薬品処理後の接着性が向上し、また、イソシアヌレート化合物を含有することにより、イソシアヌレート骨格由来の耐熱性に加えて、1分子中に適度な鎖長、個数の重合性基を有することから、より硬度の高い硬化膜を得ることができ、
【化9】

(【0090】、【0091】)
上記一般式(11)中、R^(14)?R^(16)は同じでも異なってもよく、エチレン性不飽和二重結合基または下記一般式(12)で表される基を表すものであり、
(【0092】)
合成例17によって合成されたエポキシメタクリレート化合物(E-6)は、下記構造で表されるものであり、
【化26】

(【0183】、【0184])
合成例21によって合成されたイミドシラン化合物(I-1)は、下記構造で表されるものであり、
【化31】

(【0193】、【0194】)
実施例1?20は表2及び表3に示されたものであり、
【表2】

【表3】

前記実施例6は、前記(C)の化合物として、前記エポキシメタクリレート(E-6)を10.5重量%(固形分に対する重量%、以下同様。)、前記(D)の化合物として、テトラペンタエリスリトールデカアクリレートを20.3重量%とBPEFAを20.3重量%含み、
前記実施例14は、前記イミドシラン化合物(I-1)を含むものである、(【0237】?【0239】)
ネガ型感光性樹脂組成物とそれを用いたタッチパネル用材料、タッチパネル保護膜およびタッチパネル絶縁膜。」

イ 甲第2号証
甲第2号証(特開2013-76821号公報)は、その【請求項1】、【請求項2】、段落【0001】、【0002】、【0008】、【0035】、【0046】、【0070】、【0103】ないし【0107】、【0112】、【0113】、【図1】、【図2】の記載によれば、以下の発明(以下「甲2発明」という。)を開示していると認められる。

「 高硬度、高透明、高耐熱であり、かつ下地金属の腐食を抑える高い耐湿熱性を備える硬化膜を与える、アルカリ現像可能なネガ型感光性樹脂組成物を提供することを課題して発明した、(【0008】)
ネガ型感光性樹脂組成物およびそれを用いた保護膜およびタッチパネル部材であって、(【0001】)
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、タッチパネルの保護膜などの各種ハードコート膜の他、タッチセンサー用絶縁膜、液晶や有機ELディスプレイのTFT用平坦化膜、金属配線保護膜、絶縁膜、反射防止膜、反射防止フィルム、光学フィルター、カラーフィルター用オーバーコート、柱材などに好適に用いられ、(【0113】)
静電容量式のタッチパネルは特に高い硬度が求められることから、本発明の硬化膜を好適に用いることができ、(【0070】)
前記ネガ型感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有アクリル樹脂、(B)光重合開始剤、(C)多官能モノマー、(D)芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物、及び、(E)イソシアネート化合物を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、(【請求項1】、【請求項2】)
前記ネガ型感光性樹脂組成物は、光照射により上記(B)光重合開始剤によって上記(C)多官能モノマーの重合が進行するものであり、多官能モノマーとは、分子中に少なくとも2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物をいい、特に限定するわけでないが、ラジカル重合のしやすい(メタ)アクリル基を有する多官能モノマーが好ましく、また、上記(C)多官能モノマーの二重結合当量は80g/mol以上、400g/mol以下であることが、感度、硬度の点から好ましく、(【0035】)
前記ネガ型感光性樹脂組成物は、上記(E)イソシアネート化合物を含有することで得られる硬化膜の耐湿熱性が向上し、該イソシアネート化合物は、ブロック化されたブロックイソシアネート化合物を含み、また、上記(E)イソシアネート化合物が(e-1)イソシアネート基含有シラン化合物であることがより好ましく、前記(e-1)イソシアネート基含有シラン化合物であることにより、様々な基板上での接着性が向上するものであり、(【0046】)
近年注目を浴びている静電容量式タッチパネルのセンサー基板は、ガラス上にITO(Indium Tin Oxide)や金属(銀、モリブデン、アルミニウムなど)がパターニングされた配線を有し、その他、配線の交差部に絶縁膜、ITOおよび金属を保護する保護膜を有する構造が一般的であり、(【0002】)
実施例17は、ガラス基板にITOによる透明電極2を形成し、透明電極2の上に前記ネガ型感光性樹脂組成物を用いて透明保護膜3を作製したタッチパネル部材である、(【0103】?【0107】、【0112】、【図1】、【図2】)
ネガ型感光性樹脂組成物およびそれを用いた保護膜およびタッチパネル部材。」

ウ 甲第3号証
甲第3号証(特開2013-100413号公報)は、その【請求項1】、【請求項4】?【請求項7】、段落【0001】、【0006】、【0023】の記載によれば、以下の発明(以下「甲3発明」という。)を開示していると認められる。

「 硬化性に優れ、硬化時の収縮が小さく、硬化物の透明性、基材との接着性かつ柔軟性に優れる光学透明接着剤を得ることが出来る紫外線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする、(【0006】)
光学基材の貼り合わせに有用な紫外線硬化型樹脂組成物、前記紫外線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物、及び、前記紫外線硬化型樹脂組成物を用いてなるタッチパネルであって、(【0001】、【請求項6】、【請求項7】)
前記紫外線硬化型樹脂組成物は、
重量平均分子量が1500?30000である(メタ)アクリルポリマー(A)、(メタ)アクリル当量が200g/eq.以上で2個以上のアクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含有し、(【請求項1】)
組成物全体に対して、重量平均分子量が1500?30000である(メタ)アクリルポリマー(A)が70?95重量%、(メタ)アクリル当量が200g/eq.以上で2個以上のアクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)が10?30重量%及び光重合開始剤(C)が3?12重量%含有され、(【請求項4】)
硬化収縮率が3.0%以下であり、(【請求項5】)
本発明の特性を損なわない範囲で前記(B)以外の(メタ)アクリレート化合物(D)を含有することができ、前記(B)以外の(メタ)アクリレート化合物(D)としては、(メタ)アクリロイル基を1個以上有する(メタ)アクリレートを好適に使用することができ、(メタ)アクリレートとはメタクリレート又はアクリレートを意味し、その種類は特に限定されないが、(D-1)ウレタン(メタ)アクリレート、(D-2)エポキシ(メタ)アクリレート、(D-3)(メタ)アクリレートモノマー等を用いることができる、(【0023】)
紫外線硬化型樹脂組成物、硬化物及びタッチパネル。」

エ 甲第4号証
甲第4号証(特開2013-37272号公報)は、その段落【0001】、【0002】、【0008】の記載によれば、以下の発明(以下「甲4発明」という。)を開示していると認められる。

「 レジストパターン形成後にベーク処理を施した場合であっても、金属基材への密着性に優れ、その結果、金属基材表面へのエッチング液の染み込みが少なくなく、且つ、レジスト剥離液に溶解性にも優れ、さらに、ベーク処理を施していても、レジストの折れも少ない感光性樹脂組成物及び該感光性樹脂組成物を使用してなる感光性フィルムを提供することを課題とする、(【0008】)
金属基材のエッチングや金属めっき等の金属加工を行う際にレジストとして使用される、感光性樹脂組成物及び感光性フィルムであって、(【0001】、【0002】)
前記感光性樹脂組成物は、
少なくとも(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)アクリレートモノマーを含有し、(C)アクリレートモノマーに対して(D)メタクリレートモノマーの含有量が0?5質量%であり、二重結合当量250以上のアクリレートモノマーの含有量が70質量%以上であり、二重結合当量150以下のアクリレートモノマーの含有量が30質量%以下である、(【請求項1】)
感光性樹脂組成物及び感光性フィルム。」

オ 甲第5号証
甲第5号証(国際公開第2014-010345号)は、その[請求項1]、[請求項6]、[請求項10]、段落[0001]、[0007]の記載によれば、以下の発明(以下「甲5発明」という。)を開示していると認められる。

「 高硬度、高透明、高耐熱及び高耐薬品といった特性を損なうことなく、保存安定性にきわめて優れる、アルカリ現像可能な感光性樹脂組成物を提供することを目的とする、([0007])
感光性樹脂組成物、及び、前記感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜を具備するタッチパネル部材であって、([請求項10]、[0001]、)
前記感光性樹脂組成物は、
(メタ)アクリル酸エステル(A)と、不飽和基及び酸含有化合物(B)と、を共重合させた共重合体が有する一部の酸基に、エポキシ基含有不飽和化合物(C)を付加させた不飽和基含有樹脂(D)と、下記一般式(21)で表される、(メタ)アクリル化合物(E)と、
[化1]

(式中、R^(14)、R^(15)及びR^(16)は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、R^(17)、R^(18)及びR^(19)は、炭素数1?10のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシル基を示す。)と、光重合開始剤(F)と、を含有し、([請求項1])。
下記一般式(22)、下記一般式(23)及び下記一般式(24)からなる群から選ばれる一般式で表される、カルボン酸を有する化合物(I)を含み、
[化6]

[化7]

[化8]

(各式中、Xは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1?6のアルキル基、アクリロイル基又はメタアクリロイル基を示し、少なくとも一のXは、アクリロイル基又はメタアクリロイル基であり、Yは、炭素数1?10のアルキレン基、一の不飽和結合を有する炭素数2?6のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシル基を示し、Pは0?6の整数を示す。)([請求項6])
感光性樹脂組成物及びタッチパネル部材。」

カ 甲第6号証
甲第6号証(特開第2013-4074号公報)は、その【請求項1】、【請求項3】、【請求項4】、段落【0001】、【0010】、【0011】の記載によれば、以下の発明(以下「甲6発明」という。)を開示していると認められる。

「 金属で透明電極を形成する場合、電気伝導度に優れ、視認性が向上したメッシュ構造の透明電極を含む静電容量方式タッチパネルを提供することを目的とする、(【0010】、【0011】)
静電容量方式タッチパネルであって、(【0001】)
第1の透明基板の一面に形成され、2Xの幅を有するパターニングされた線で囲まれた複数個の開口部を含むメッシュ構造の検出電極と、
前記第1の透明基板の一面に対向するように位置する第2の透明基板の一面に形成され、前記検出電極に対応する領域は、2Xの幅を有するパターニングされた線で囲まれた複数個の開口部を含み、その他の領域は、Xの幅を有するパターニングされた線で囲まれた複数個の開口部を含むメッシュ構造の駆動電極と、
を含み、(【請求項1】)。
前記検出電極及び前記駆動電極が金属からなり、(【請求項3】)。
前記金属が、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)またはクロム(Cr)であることを特徴とする、(【請求項4】)
静電容量方式タッチパネル。」

(3)当審の判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「(A)カルボキシル基含有アクリル樹脂」、「(B)光重合開始剤」はそれぞれ、本件発明1における「(a)バインダーポリマー」、「(c)光重合開始剤」に相当する。
また、甲2発明の「(C)多官能モノマー」は、「分子中に少なくとも2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物」であって、「エチレン性不飽和二重結合」を有することは、「エチレン性不飽和基を有する」ことに相当するから、本件発明1における「(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物」に相当する。
本件明細書等の【0045】には、「(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物としては、ブロックイソシアネートおよびエポキシ化合物を挙げることができる」と記載されていることから、本件発明1の「(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物」には「ブロックイソシアネート」及び「エポキシ化合物」が含まれる。甲2発明に係る「ネガ型感光性樹脂組成物」は、「(E)イソシアネート化合物」を含有するものであり、「該イソシアネート化合物は、ブロック化されたブロックイソシアネート化合物を含」むものである。ここで、「ブロックイソシアネート化合物」は、「ブロックイソシアネート」に相当する。
また、甲2発明の「(D)芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物」は、「エポキシ化合物」である。
よって、甲2発明の「(E)ブロックイソシアネート化合物」又は「(D)」の「多官能エポキシ化合物」は、本件発明1の「(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物」に相当する。
本件発明1の「重量平均分子量」は、分子量分布を持たない単一化合物(モノマーを含む。)については、分子量と等しく、また、本件発明1の「重合性基の平均個数」は、分子量分布を持たない単一化合物(モノマーを含む。)については、重合性基の個数に等しい。
また、甲2発明の「二重結合当量が80g/mol以上、400g/mol以下である(C)多官能モノマー」において、「二重結合当量」は、分子量(g/mol)を二重結合基の個数で割った値であり、二重結合基は、「重合性基」に相当し、また、「多官能モノマー」は、分子量分布を持たない単一化合物である。また、甲2発明は、「前記ネガ型感光性樹脂組成物は、光照射により上記(B)光重合開始剤によって上記(C)多官能モノマーの重合が進行するもの」であるから、(C)の「多官能モノマー」は、「光重合性化合物」に相当する。
そうすると、甲2発明の「二重結合当量が80g/mol以上、400g/mol以下である(C)多官能モノマー」は、「重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が80以上、400以下である光重合性化合物」といいかえることができる。そして、この「80以上、400以下」という範囲は、「270以上」である範囲を含んでいる。
よって、甲2発明は、本件発明1の「(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物」との構成を備えている。
甲2発明は、「本発明のネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、タッチパネルの保護膜などの各種ハードコート膜の他、タッチセンサー用絶縁膜、液晶や有機ELディスプレイのTFT用平坦化膜、金属配線保護膜、絶縁膜、反射防止膜、反射防止フィルム、光学フィルター、カラーフィルター用オーバーコート、柱材などに好適に用いられ、静電容量式のタッチパネルは特に高い硬度が求められることから、本発明の硬化膜を好適に用いることができ」るものであって、「実施例17は、ガラス基板にITOによる透明電極2を形成し、透明電極2の上に前記ネガ型感光性樹脂組成物を用いて透明保護膜4を作製したタッチパネル部材」を含むことから、甲2発明に係る「ネガ型感光性樹脂組成物」は、「静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物」として使用され得るものである。
また、甲2発明は、本件発明1の【化1】に示される化合物を必須の構成とするものではない。

(イ)一致点・相違点
前記(ア)より、本件発明1と甲2発明とは、次の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 (a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く:
【化1】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」

[相違点]
本件発明1は、「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物を含有する場合」を除くものであるのに対し、甲2発明は、「(D)芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物」を有する点。

(ウ)相違点についての判断
甲2発明は、「高硬度、高透明、高耐熱であり、かつ下地金属の腐食を抑える高い耐湿熱性を備える硬化膜を与える、アルカリ現像可能なネガ型感光性樹脂組成物を提供すること」との課題を解決するために「(D)芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物」を必須の構成として含むものである。
したがって、当該「(D)芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物」を甲2発明の構成から除くことの動機付けはなく、むしろ、技術的に阻害されている。
よって、当業者といえども、前記相違点に係る本件発明1の構成を容易に想到し得たものではない。

(エ)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、申立人意見書の「(3-1-1)本件訂正発明1について」(第2?3ページ)において、「形式的に重複箇所のみを排除する訂正を行っただけの本件訂正発明1は、甲2発明とのわずかな相違が認められるのみであり、上記審査基準に示されているような「引用発明と技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有する」発明でもなく、依然として甲第2号証を主たる証拠として進歩性がない。」と主張するが、前記(ウ)で述べたように、甲2発明は「(D)芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物」を必須の構成とするものであるから、本件発明1と甲2発明との相違がわずかなものということはできない。
よって、上記特許異議申立人の主張は採用しない。

以上から、本件発明1は、甲2発明ではなく、また、当業者が甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明4について
(ア)対比・判断
本件発明4と甲2発明とを対すると、両者は以下の点において一致ないし相違する。
[一致点]
「 (a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化3】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」

[相違点]
「前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物が、重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値」が、本件発明4は、「550?800」であるのに対し、甲2発明は、「80以上、400以下」(80?400)である点。

当該相違点について検討するに、当該相違点に係る本件発明4の構成は、本件特許に係る優先日におけるこの技術分野の技術常識ないし周知技術とはいえないから、甲2発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。

(イ)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、申立人意見書の「(3-1-3)本件訂正発明4について」(第4?6ページ)において、「すなわち、甲第2号証には、「(c)多官能モノマーの二重結合当量は80g/mol以上、400g/mol以下であることが、感度、硬度の点から好ましい」([0035])と開示されているが、ここでいう二重結合当量の範囲は、あくまで好ましい範囲である。そのため、解決すべき課題の程度に応じて、当業者は、甲2発明における二重結合当量の範囲を適宜調整することにより、本件訂正発明4の範囲に含まれるよう設計変更し得る。」と主張するが、甲2発明は、「高硬度、高透明、高耐熱であり、かつ下地金属の腐食を抑える高い耐湿熱性を備える硬化膜を与える、アルカリ現像可能なネガ型感光性樹脂組成物を提供すること」を課題とするものであることからすれば、「高硬度」等に反する、二重結合当量を大きくする設計変更をすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、上記特許異議申立人の主張は採用しない。

以上から、本件発明4は、甲2発明ではなく、また、当業者が甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明5について
本件発明5と甲2発明とを対すると、両者は以下の点において一致ないし相違する。
[一致点]
「 (a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物であって、
前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物が、重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化4】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」

[相違点]
本件発明5は、「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、すべての前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物の割合が21.63質量%以上であり、前記静電容量型人力装置の電極保護膜用の組成物の中で、全固形分に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物の割合が7.92質量%以上である」との構成を備えるのに対し、甲2発明は、当該構成について特定するものではない点。

当該相違点について検討するに、本件発明5において、光重合性化合物の割合の下限値を示す「21.63」質量%及び「7.92」質量%は、本件明細書等に記載された具体例に基いて設定されたものであるから、臨界的異議を有するものである。
そして、このような下限値を設定することは、本件特許に係る優先日におけるこの技術分野の技術常識ないし周知技術ではないから、当業者が、甲2発明に基いて、当該相違点に係る本件発明5の構成を容易に想到することができたとはいえない。
よって、本件発明5は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明7について
本件発明7と甲2発明とを対すると、両者は以下の点において一致ないし相違する。
[一致点]
「 (a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化5】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。」

[相違点]
本件発明7は、「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、すべての前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合が44.38質量%以上であり、前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、全固形分に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合が21.46質量%以上である」との構成を備えるのに対し、甲2発明は、当該構成について特定するものではない点。

当該相違点について検討するに、本件発明7において、光重合性化合物の割合の下限値を示す「44.38」質量%及び「21.46」質量%は、本件明細書等に記載された具体例に基いて設定されたものであるから、臨界的異議を有するものである。
そして、このような下限値を設定することは、本件特許に係る優先日におけるこの技術分野の技術常識ないし周知技術ではないから、当業者が、甲2発明に基いて、当該相違点に係る本件発明7の構成を容易に想到することができたとはいえない。
よって、本件発明7は、当業者が甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

オ 本件発明8について
本件発明8は、本件発明1ないし7のいずれかの構成をすべて含むものであるから、前記アないしエより、甲2発明ではなく、また、当業者が甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

カ 本件発明11ないし16について
本件発明11ないし16は、本件発明1ないし10のいずれかの構成をすべて含むものであるから、本件発明1ないし10と同様に、甲2発明ではなく、また、当業者が甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

キ 本件発明17について
本件発明17は、本件発明1の構成をすべて含む「積層体」であるから、本件発明1と同様に、甲2発明ではなく、また、当業者が甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

ク 本件発明18ないし21について
本件発明18ないし21は、本件発明16又は17の構成をすべて含むものであるから、本件発明16及び17と同様に、甲2発明ではなく、また、当業者が甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立理由の概要
特許異議申立書の全趣旨からみて、特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、取消理由通知で通知したもの以外の申立ての理由として、以下のものを主張していると認められる。(なお、ここでは、「甲第○号証」を単に「甲○」と記載する場合がある。また、訂正により削除された請求項3及び請求項6については省略する。)

ア 請求項1に係る発明に対して
・甲1に基づく新規性欠如
・甲2と周知技術(甲1、甲2)に基づく進歩性欠如
イ 請求項2に係る発明に対して
・甲1と甲3とに基づく進歩性欠如
・甲2と甲3とに基づく進歩性欠如
・甲3と周知技術(甲1、甲2)に基づく進歩性欠如
ウ 請求項4に係る発明に対して
・甲2と周知技術(甲4)に基づく進歩性欠如
・甲3と周知技術(甲1、甲2、甲4)に基づく進歩性欠如
エ 請求項5に係る発明に対して
・甲1に基づく新規性欠如及び進歩性欠如
・甲2と周知技術(甲1、甲3)に基づく進歩性欠如
・甲3と周知技術(甲1、甲2)に基づく進歩性欠如
オ 請求項7に係る発明に対して
・甲1に基づく新規性欠如及び進歩性欠如
・甲2と甲1に基づく進歩性欠如
・甲3と周知技術(甲1、甲2)に基づく進歩性欠如
カ 請求項8に係る発明に対して
・なし
キ 請求項9に係る発明に対して
・甲1に基づく新規性欠如及び進歩性欠如
・甲1と周知技術(甲5)に基づく進歩性欠如
ク 請求項10に係る発明に対して
・甲1と甲5に基づく進歩性欠如
・甲2と甲5に基づく進歩性欠如
ケ 請求項11に係る発明に対して
・甲2と周知技術(甲2)に基づく進歩性欠如
コ 請求項12に係る発明に対して
・甲2と周知技術(甲2)に基づく進歩性欠如
サ 請求項13に係る発明に対して
・甲1に基づく新規性欠如及び進歩性欠如
シ 請求項14に係る発明に対して
・なし
ス 請求項15に係る発明に対して
・なし
セ 請求項16に係る発明に対して
・甲1に基づく新規性欠如及び進歩性欠如
ソ 請求項17に係る発明に対して
・甲1と甲2に基づく進歩性欠如
・甲3と甲2に基づく進歩性欠如
タ 請求項18に係る発明に対して
・甲1と周知技術(甲6)に基づく進歩性欠如
・甲2と周知技術(甲6)に基づく進歩性欠如
チ 請求項19に係る発明に対して
・甲1と周知技術(甲5)に基づく進歩性欠如
ツ 請求項20に係る発明に対して
・甲1と甲3に基づく進歩性欠如
・甲2と甲3に基づく進歩性欠如
・甲3と周知技術(甲1、甲2)に基づく進歩性欠如
テ 請求項21に係る発明に対して
・甲1と甲3に基づく進歩性欠如
・甲2と甲3に基づく進歩性欠如

(2)各理由について
ア 本件発明1について
(ア)甲1に基づく新規性欠如について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「実施例14」において使用されている「イミドシラン化合物(I-1)」は、本件発明1の「(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物」に相当する。
また、甲1発明の「実施例6」において使用されている「エポキシメタクリレート(E-6)」は、本件発明1の「前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物」に相当する。(補足:「エポキシメタクリレート(E-6)」はその分子式から、その二重結合当量は302.36である。)
また、甲1発明において、「実施例14」と「実施例6」とは異なる実施例であり、「実施例14」の「イミドシラン化合物(I-1)」と「実施例6」の「エポキシメタクリレート(E-6)」を組み合わせた実施例については記載も示唆もない。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、甲1発明が、本件発明1の「(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物」又は「前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む」のいずれか一方を備えない点において相違する。
当該相違点について検討するに、甲1発明において、相違点に対応する各構成を組み合わせる動機付けはなく、かつ、仮に組み合わせた場合に、甲1発明の「パターン加工時において、Si原子を有しない無機物で構成される基板表面や素子表面との現像時接着性に優れたネガ型感光性樹脂組成物」との課題を解決できることは、本件特許に係る優先日の技術常識を参酌しても自明ということはできない。
よって、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(イ)甲2と周知技術(甲1、甲2)に基づく進歩性欠如
前記4(3)アの(ウ)及び(エ)で述べたように、甲2発明において、「高硬度、高透明、高耐熱であり、かつ下地金属の腐食を抑える高い耐湿熱性を備える硬化膜を与える、アルカリ現像可能なネガ型感光性樹脂組成物を提供すること」との課題を解決するための必須の構成である「(D)芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物」を甲2発明の構成から除くことには技術的な阻害要因があるため、甲1、甲2に記載の周知技術を参酌しても、当業者といえども本件発明1の構成を容易に想到することはできない。
よって、本件発明1は、当業者が甲2発明に基いて甲1、甲2に記載の周知技術を参酌することにより容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2について
(ア)甲1と甲3とに基づく進歩性欠如
本件発明2と甲1発明とを対比すると、前記ア(ア)で述べた相違点に加え、甲1発明が、本件発明2の「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物を硬化した静電容量型入力装置の電極保護膜が、23℃、相対湿度50%の環境下の引っ張り試験において、破断伸びが5%以上である」との構成を備えない点において相違する。
甲3発明は、前記「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物を硬化した静電容量型入力装置の電極保護膜が、23℃、相対湿度50%の環境下の引っ張り試験において、破断伸びが5%以上である」に相当する構成を備えないし、甲3発明の「硬化収縮率が3.0%以下であり」等の構成から自明ともいえない。
よって、甲1発明に甲3発明を適用しても、本件発明2には到達しない。
仮に、甲3発明が、前記「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物を硬化した静電容量型入力装置の電極保護膜が、23℃、相対湿度50%の環境下の引っ張り試験において、破断伸びが5%以上である」との構成を備えるとしても、甲1発明は、「パターン加工時において、Si原子を有しない無機物で構成される基板表面や素子表面との現像時接着性に優れたネガ型感光性樹脂組成物を提供すること」を課題としたものであるのに対し、甲3発明は、「硬化性に優れ、硬化時の収縮が小さく、硬化物の透明性、基材との接着性かつ柔軟性に優れる光学透明接着剤を得ることが出来る紫外線硬化型樹脂組成物を提供すること」を課題とするものであり、両者は課題も対象物も異なるから、甲1発明に甲3発明を適用する動機付けが存在しない。
よって、本件発明2は、当業者が、甲1発明と甲3発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(イ)甲2と甲3とに基づく進歩性欠如
本件発明2と甲2発明とを対比すると、甲2発明が、本件発明2の「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物を硬化した静電容量型入力装置の電極保護膜が、23℃、相対湿度50%の環境下の引っ張り試験において、破断伸びが5%以上である」との構成を備えない点において相違する。
甲3発明は、前記「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物を硬化した静電容量型入力装置の電極保護膜が、23℃、相対湿度50%の環境下の引っ張り試験において、破断伸びが5%以上である」に相当する構成を備えないし、甲3発明の「硬化収縮率が3.0%以下であり」等の構成から自明ともいえない。
よって、甲2発明に甲3発明を適用しても、本件発明2には到達しない。
仮に、甲3発明が、前記「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物を硬化した静電容量型入力装置の電極保護膜が、23℃、相対湿度50%の環境下の引っ張り試験において、破断伸びが5%以上である」との構成を備えるとしても、甲2発明は、「高硬度、高透明、高耐熱であり、かつ下地金属の腐食を抑える高い耐湿熱性を備える硬化膜を与える、アルカリ現像可能なネガ型感光性樹脂組成物を提供すること」を課題としたものであるのに対し、甲3発明は、「硬化性に優れ、硬化時の収縮が小さく、硬化物の透明性、基材との接着性かつ柔軟性に優れる光学透明接着剤を得ることが出来る紫外線硬化型樹脂組成物を提供すること」を課題とするものであり、両者は課題も対象物も異なるから、甲2発明に甲3発明を適用する動機付けが存在しない。
よって、本件発明2は、当業者が、甲2発明と甲3発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)甲3と周知技術(甲1、甲2)に基づく進歩性欠如
前記(ア)及び(イ)で述べたように、甲3発明は、少なくとも本件発明2の「前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物を硬化した静電容量型入力装置の電極保護膜が、23℃、相対湿度50%の環境下の引っ張り試験において、破断伸びが5%以上である」に相当する構成を備えないし、甲3発明の「硬化収縮率が3.0%以下であり」等の構成から自明ともいえない。
また、甲3発明と、甲1発明及び甲2発明とは課題が異なるから、仮に、甲1発明又は甲2発明から何らかの周知技術が抽出できるとしても、甲3発明に当該周知技術を適用する動機付けが存在しない。
したがって、本件発明3は、当業者が、甲3発明に基いて甲1発明又は甲2発明を参酌することにより容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明4について
(ア)甲2と周知技術(甲4)に基づく進歩性欠如
甲4発明は、「レジストパターン形成後にベーク処理を施した場合であっても、金属基材への密着性に優れ、その結果、金属基材表面へのエッチング液の染み込みが少なくなく、且つ、レジスト剥離液に溶解性にも優れ、さらに、ベーク処理を施していても、レジストの折れも少ない感光性樹脂組成物及び該感光性樹脂組成物を使用してなる感光性フィルムを提供すること」を課題とするものであって、甲2発明の課題とは異なるものである。
よって、仮に甲4発明が周知技術であるとしても、甲2発明とは課題が異なる周知技術を適用する動機付けが存在しない。
したがって、本件発明4は、当業者が、甲2発明に基いて甲4発明を参酌することにより容易に発明をすることができたものではない。

(イ)甲3と周知技術(甲1、甲2、甲4)に基づく進歩性欠如
本件発明4と甲3発明とを対比すると、本件発明4は、「前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物が、重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が550?800である光重合性化合物である」との構成を備えるのに対し、甲3発明は、「(メタ)アクリル当量が200g/eq.以上で2個以上のアクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)」である点において相違する。
甲4発明は、「二重結合当量250以上のアクリレートモノマーの含有量が70質量%以上」との構成を備えるものの、当該構成は、前記相違点に係る本件発明4の構成には相当しないし、甲第4号証の記載及び本件特許に係る優先日の技術常識から自明なものでもない。
また、甲4発明は、「レジストパターン形成後にベーク処理を施した場合であっても、金属基材への密着性に優れ、その結果、金属基材表面へのエッチング液の染み込みが少なくなく、且つ、レジスト剥離液に溶解性にも優れ、さらに、ベーク処理を施していても、レジストの折れも少ない感光性樹脂組成物及び該感光性樹脂組成物を使用してなる感光性フィルムを提供すること」を課題とするものであるから、甲3発明とは課題も対象物も異なる。
甲3発明の課題が、甲1発明及び甲2発明とは異なることは前述したとおりである。
よって、本件発明4は、当業者が甲3発明に基いて甲1発明、甲2発明及び甲4発明を参酌することにより容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明5について
(ア)甲1に基づく新規性欠如及び進歩性欠如
本件発明5と甲1発明とは、少なくとも、甲1発明が、本件発明5の「(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物」及び/又は「前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物が、重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物であり」を備えない点において相違する。
また、甲1発明において、「実施例14」の「イミドシラン化合物(I-1)」と「実施例6」の「エポキシメタクリレート(E-6)」を組み合わせた上で、「エポキシメタクリレート(E-6)」(二重結合当量302.36)に替えて、二重結合当量が350以上のものを用いるようにする動機付けは存在しない。
よって、本件発明5は、甲1発明ではなく、また、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(イ)甲2と周知技術(甲1、甲3)に基づく進歩性欠如
甲2発明に、課題ないし技術分野が異なる甲1発明又は甲3発明に係る周知技術を適用する動機付けは存在しない。
よって、本件発明5は、当業者が甲2発明に基いて甲1発明及び甲3発明を参酌することにより容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)甲3と周知技術(甲1、甲2)に基づく進歩性欠如
甲3発明に、課題ないし技術分野が異なる甲1発明又は甲2発明に係る周知技術を適用する動機付けは存在しない。
よって、本件発明5は、当業者が甲3発明に基いて甲1発明及び甲2発明を参酌することにより容易に発明をすることができたものではない。

オ 本件発明7について
(ア)甲1に基づく新規性欠如及び進歩性欠如
本件発明7と甲1発明とは、少なくとも、甲1発明が、本件発明7の「(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物」又は「前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む」のいずれか一方を備えない点において相違する。
また、甲1発明において、「実施例14」の「イミドシラン化合物(I-1)」と「実施例6」の「エポキシメタクリレート(E-6)」を組み合わせる動機付けは存在しない。
よって、本件発明7は、甲1発明ではなく、また、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(イ)甲2と甲1に基づく進歩性欠如
甲2発明に、課題ないし技術分野が異なる甲1発明を適用する動機付けは存在しない。
よって、本件発明7は、当業者が甲2発明及び甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)甲3と周知技術(甲1、甲2)に基づく進歩性欠如
甲3発明に、課題ないし技術分野が異なる甲1発明又は甲2発明に係る周知技術を適用する動機付けは存在しない。
よって、本件発明7は、当業者が甲3発明に基いて甲1発明及び甲2発明を参酌することにより容易に発明をすることができたものではない。

カ 本件発明9について
(ア)甲1に基づく新規性欠如及び進歩性欠如
本件発明9と甲1発明とは、少なくとも、甲1発明が、本件発明9の「(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物」又は「前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む」のいずれか一方を備えない点において相違する。
また、甲1発明において、「実施例14」の「イミドシラン化合物(I-1)」と「実施例6」の「エポキシメタクリレート(E-6)」を組み合わせる動機付けは存在しない。
よって、本件発明9は、甲1発明ではなく、また、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(イ)甲1と周知技術(甲5)に基づく進歩性欠如
甲5発明は、前記(ア)で述べた相違点に係る本件発明9の構成を備えない。
よって、甲1発明と甲5発明とを組み合わせても本件発明9には到達しない。
したがって、本件発明9は、当業者が甲1発明に基いて甲5発明に係る周知技術を参酌することにより容易に発明をすることができたものではない。

キ 本件発明10について
(ア)甲1と甲5に基づく進歩性欠如
本件発明10と甲1発明とは、少なくとも、甲1発明が、本件発明10の「(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物」又は「前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む」のいずれか一方を備えない点において相違する。
甲5発明は、上記相違点に係る本件発明10の構成を備えないから、甲1発明に甲5発明を適用しても本件発明10に到達しない。
よって、本件発明10は、当業者が甲1発明と甲5発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(イ)甲2と甲5に基づく進歩性欠如
甲2発明の「(A)カルボキシル基含有アクリル樹脂」は、本件発明10の「前記(a)バインダーポリマーが酸基を有する樹脂」に相当する。
一方、本件発明10と甲2発明とは、本件発明10が、「前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物のうち少なくとも1種類がカルボキシル基を含有する光重合性化合物である」との構成を備えるのに対し、甲2発明は、当該構成について特定するものではない点において相違する。
甲5発明は、「高硬度、高透明、高耐熱及び高耐薬品といった特性を損なうことなく、保存安定性にきわめて優れる、アルカリ現像可能な感光性樹脂組成物を提供すること」を課題とするものであり、甲2発明は「高硬度、高透明、高耐熱であり、かつ下地金属の腐食を抑える高い耐湿熱性を備える硬化膜を与える、アルカリ現像可能なネガ型感光性樹脂組成物を提供すること」を課題とするものであり、両者は、「アルカリ現像可能」な「感光性樹脂組成物」に関する点において共通するものの、課題が異なるから技術分野が同一又は共通しているとはいえない。
よって、甲2発明に甲5発明を適用することには阻害要因がある。
したがって、本件発明10は、当業者が甲2発明と甲5発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

ク 本件発明11ないし13及び16について
本件発明11ないし13及び16は、本件発明1ないし10のいずれかを引用するものであるから、本件発明13及び16は、甲1発明ではなく、また、本件発明11ないし13及び16は、当業者が甲1発明又は甲2発明に基いて周知技術を参酌することにより容易に発明をすることができたものではない。

ケ 本件発明17について
(ア)甲1と甲2に基づく進歩性欠如
本件発明17と甲1発明とは、少なくとも、甲1発明が、本件発明17の「(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物」又は「前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む」のいずれか一方を備えない点において相違する。
甲1発明と甲2発明とは課題が異なるから、甲1発明に甲2発明を組み合わせる動機付けは存在しない。
よって、本件発明17は、当業者が甲1発明と甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(イ)甲3と甲2に基づく進歩性欠如
本件発明17と甲3発明とを対比すると、本件発明17は、「静電容量型入力装置の電極を備える基板」「を有する積層体」との構成を備えるのに対し、甲3発明は、「硬化性に優れ、硬化時の収縮が小さく、硬化物の透明性、基材との接着性かつ柔軟性に優れる光学透明接着剤を得ることが出来る紫外線硬化型樹脂組成物」である点において相違する。
また、甲2発明は、「ネガ型感光性樹脂組成物およびそれを用いた保護膜およびタッチパネル部材」に関するものであるが、「高硬度、高透明、高耐熱であり、かつ下地金属の腐食を抑える高い耐湿熱性を備える硬化膜を与える、アルカリ現像可能なネガ型感光性樹脂組成物を提供すること」を課題とするものであり、一方、甲第3号証には、「基材」が「腐食を抑える」ことが問題となる「下地金属」であること、また、甲3発明に係る「紫外線硬化型樹脂組成物」を「ネガ型感光性樹脂組成物」として使用することについて記載ないし示唆するものではない。
よって、甲3発明と甲2発明とは課題ないし技術分野が異なるから、甲3発明に甲2発明を適用する動機付けが存在しない。
したがって、本件発明17は、当業者が甲3発明及び甲2発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

コ 本件発明18ないし21について
本件発明18ないし21は、本件発明16又は17の構成をすべて含むものであるから、本件発明16及び17と同様に、当業者が甲1ないし甲3発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

サ 補足
特許異議申立人は、申立人意見書(第10ページ)において、「なお、本件訂正発明9では、異なる2種の化合物が「一般式(1)」として規定されており、それぞれの一般式(1)におけるR^(1)等の官能基も複数の定義が規定されている。そのため、本件訂正発明9は、明確でない点を付言する(明確性要件違反)。」と主張するので、念のため検討する。
本件発明9には、「前記(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物である」及び「下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂」との構成を含み、「一般式(1)」と「式(1)」とは区別して特定されており、「一般式(1)」が【化6】の化学式に、また、「式(1)」が【化7】の化学式であることは当業者にとって明確である。
よって、本件発明9には、特許異議申立人が主張する明確性要件違反は存在しない。

6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4、5及び7ないし21に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、4、5及び7ないし21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項3及び6に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項3及び6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合と、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物を含有する場合
を除く;
【化1】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【請求項2】
(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物であって、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物を硬化した静電容量型入力装置の電極保護膜が、23℃、相対湿度50%の環境下の引っ張り試験において、破断伸びが5%以上である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化2】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含み、
前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物が、重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が550?800である光重合性化合物である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化3】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【請求項5】
(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物であって、
前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物が、重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物であり、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、すべての前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物の割合が21.63質量%以上であり、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、全固形分に対する、前記重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が350以上である光重合性化合物の割合が7.92質量%以上である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化4】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物であって、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、すべての前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合が44.38質量%以上であり、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物の中で、全固形分に対する、前記(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物の割合が21.46質量%以上である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化5】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【請求項8】
前記(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物が、ブロックイソシアネートである、請求項1?7のいずれか一項に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物。
【請求項9】
(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含み、
前記(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
一般式(1)
【化6】

前記一般式(1)中、R^(1)?R^(3)は、それぞれ独立に1価の有機基を表す;
【化7】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【請求項10】
(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含み、
前記(a)バインダーポリマーが酸基を有する樹脂であり、
前記(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物のうち少なくとも1種類がカルボキシル基を含有する光重合性化合物である、静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物;
但し、
前記静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合を除く;
【化8】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【請求項11】
前記静電容量型入力装置の、Agを含む金属電極保護膜用の組成物である、請求項1?10のいずれか一項に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物。
【請求項12】
前記静電容量型入力装置の、Ag細線を含む金属電極保護膜用の組成物である、請求項1?11のいずれか一項に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物。
【請求項13】
請求項1?12のいずれか一項に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物から形成された、静電容量型入力装置の電極保護膜。
【請求項14】
仮支持体と、請求項1?12のいずれか一項に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物を含む感光性樹脂層と、を有する転写フィルム。
【請求項15】
請求項14に記載の転写フィルムから、前記仮支持体が取り除かれた静電容量型入力装置の電極保護膜。
【請求項16】
静電容量型入力装置の電極を備える基板上に、請求項13または15に記載の静電容量型入力装置の電極保護膜、あるいは、請求項14に記載の転写フィルムの前記感光性樹脂層を転写することにより形成された静電容量型入力装置の電極保護膜、を有する、積層体。
【請求項17】
静電容量型入力装置の電極を備える基板と、
前記基板の上に位置する感光性樹脂層とを有する積層体であって、
前記感光性樹脂層が、(a)バインダーポリマー、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤および(d)加熱により酸基またはアルコール性ヒドロキシ基と反応可能な化合物を含み、
(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物が、(b1)重量平均分子量を重合性基の平均個数で割った値が270以上である光重合性化合物を含む、積層体;
但し、
前記感光性樹脂層が、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であって、下記式(1)で表されるポリウレタン樹脂を含む場合と、
前記感光性樹脂層が、芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物を含有する場合
を除く;
【化9】

式(1)中、R^(1)はエポキシアクリレートの残基、R^(2)はジイソシアネートの残基、R^(3)は炭素数1?5のアルキル基、R^(4)は水素原子又はメチル基を示す。式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【請求項18】
前記静電容量型入力装置の電極が、Au、Ag、CuおよびAlから選択される少なくとも1種類の金属、あるいは、Au、Ag、CuおよびAlから選択される少なくとも1種類の金属を含む合金を含む請求項16または17に記載の積層体。
【請求項19】
前記感光性樹脂層が硬化された請求項16?18のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項20】
請求項16?19のいずれか一項に記載の積層体を含む、静電容量型入力装置。
【請求項21】
請求項20に記載の静電容量型入力装置を有する、画像表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-12-16 
出願番号 特願2017-543565(P2017-543565)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G06F)
P 1 651・ 113- YAA (G06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 酒井 優一  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 北川 純次
林 毅
登録日 2019-09-06 
登録番号 特許第6581200号(P6581200)
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 静電容量型入力装置の電極保護膜用の組成物、静電容量型入力装置の電極保護膜、転写フィルム、積層体、静電容量型入力装置および画像表示装置。  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  

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