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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E06B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E06B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E06B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  E06B
管理番号 1371727
異議申立番号 異議2020-700884  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-18 
確定日 2021-03-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6701318号発明「建具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6701318号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6701318号の請求項1ないし5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成27年7月30日に出願した特願2015-150842号の一部を平成30年12月26日に新たな特許出願としたものであって、令和2年5月8日に特許権の設定登録がされ、同年5月27日に特許掲載公報が発行され、同年11月18日に特許異議申立人 伊澤 武登(以下「申立人」という。)により請求項1ないし5に係る特許について特許異議の申立て(以下「本件特許異議の申立て」という。)がされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、各々を「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
開口を有する開口枠と、前記開口枠に対して開閉自在にそれぞれ支持された複数の障子とを備えた建具であって、
前記開口枠を構成する下枠本体部に見込み方向に並列した状態で設けられ、前記複数の障子をそれぞれ案内するための複数のレールと、
前記下枠本体部における前記レールの相互間の部位に着脱可能に装着されるレール間アタッチメントとを備え、
前記レール間アタッチメントは、
当該レール間アタッチメントにおける上方に位置し、鉛直方向に交差して延在する上板部と、
前記上板部から下方に向けてそれぞれ延在し、見込み方向に並列する第1対向壁部及び第2対向壁部とを有し、
前記上板部の上面には、
第1熱膨張性部材が取り付けられ、
前記第1対向壁部及び前記第2対向壁部の少なくとも一方には、
第3熱膨張性部材が取り付けられている
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記上板部には、断面コ字状の溝部が設けられ、
前記第1熱膨張性部材は、
前記溝部内に収納されている
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記複数のレールのうち最も室外側に位置する室外レールに着脱可能に装着される室外側レールアタッチメントをさらに備え、
前記室外側レールアタッチメントには、
前記レール間アタッチメントと見込み方向に対向する位置に第2熱膨張性部材が取り付けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の建具。
【請求項4】
前記複数の障子のいずれかの第1障子を構成する下框は、
前記複数のレールのうち当該第1障子を案内する第1レールと見込み方向に重なる位置まで下方に向けて延在する垂下片を有し、
前記垂下片は、
前記第1障子を構成する下框において、前記第1レールに対して前記レール間アタッチメントから離間する側にのみ設けられ、
前記第1対向壁部は、
前記第2対向壁部よりも前記第1レールに近接する側に設けられ、
前記第3熱膨張性部材は、
前記第1対向壁部に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1?3のいずれか1つに記載の建具。
【請求項5】
前記下枠本体部における前記複数のレールのうち最も室内側に位置する室内レールよりも室内側の部位に着脱可能に装着される室内側アタッチメントをさらに備え、
前記室内側アタッチメントの上面には、
第4熱膨張性部材が取り付けられている
ことを特徴とする請求項1?4のいずれか1つに記載の建具。」

第3 申立理由の概要
1 証拠
申立人が、提出した証拠は、以下のとおりである。
(1) 甲第1号証 :特開2007-16516号公報
(2) 甲第2号証 :特開2012-202186号公報
(3) 甲第3号証 :特開2013-127167号公報
(4) 甲第4号証 :特開2014-70398号公報
(5) 甲第5号証 :特開2014-70433号公報
(6) 甲第6号証 :特開2014-134022号公報
(7) 甲第7号証 :特開2016-56555号公報
(8) 甲第8号証 :特開2014-9494号公報
(9) 甲第9号証 :特許第5671384号公報
(10)甲第10号証:特開2014-5646号公報
(11)甲第11号証:特開2014-5645号公報
(12)甲第12号証:特開2012-197569号公報
(13)甲第13号証:特開2005-97928号公報
(14)甲第14号証:特開2006-233454号公報
(15)甲第15号証:特開2005-48514号公報
(16)甲第16号証:特開2005-299372号公報
(17)甲第17号証:特開2010-70942号公報
(18)甲第18号証:特開2010-133186号公報
(19)甲第19号証:特開2006-233452号公報
(20)甲第20号証:特開2017-31604号公報

以下、甲第1号証ないし甲第20号証を、「甲1」などと略す。

2 特許異議申立ての理由
申立人が主張する本件特許異議申立ての理由の概要は、以下のとおりである。
(1)分割要件違反(特許法44条違反)
本件特許に係る出願は、(ア)原出願では、熱膨張性部材について、本件発明の課題解決に必要なものとして記載されていた構成が、本件発明では省かれており、原出願から導くことができない上位概念化を図るものであり、(イ)原出願では、請求項において「第1障子」が「室外側障子」であることが特定されていたにもかかわらず、本件発明では、「第1障子」が「室内側障子」であるものも含まれており、原出願から導くことは困難であり、(ウ)請求項の記載によれば、本件発明には、「第1障子」が「室内側障子」である場合を含み、「垂下片」を「室内側障子」の室内側にのみ設ける態様が含まれるところ、原出願には、かかる態様のものは記載されておらず、原出願から導くことができないような上位概念化を図るものであるから、分割要件を満たしていない。
(2)サポート要件違反及び実施可能要件違反(特許法36条6項1号・4項1号違反)
本件発明の解決しようとする課題について、本件特許明細書には「排水性を十分に確保しつつ防火性を良好なものとすることができる建具を提供することを目的とする」(段落【0006】)と記載されているところ、本件発明では、熱膨張性部材を設ける場所を規定しているだけで、熱膨張性部材と対向する部材の存在、及び、どこを塞ぐのかについて規定されていないから、「防火性を良好なものとすることができる」という課題を解決できると認識することができず、サポート要件を満たしていない。
本件発明の解決しようとする課題には、排水性の確保が含まれるが、本件特許明細書等には、具体的な排水経路等の記載はなく、特許請求の範囲の記載から課題が解決されたと認識することはできないから、サポート要件を満たしていないし、本件特許明細書等には、具体的な排水経路等の記載がないから、「防火性を良好なものとすることができる」排水経路とする手段が記載されておらず、実施可能要件も満たしてない。
(3)甲1発明を主引用発明とする進歩性要件違反(特許法29条2項違反)
本件発明1ないし3は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、及び、甲3ないし甲8等に記載された周知技術、及び、甲8ないし甲12等に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明4及び5は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3ないし甲8等に記載された周知技術、甲8ないし甲12等に記載された周知技術、及び、甲13ないし甲19等に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)甲20を主引用文献とする新規性進歩性要件違反(特許法29条1項・2項違反)
本件発明は、上記(1)で述べたとおり、分割要件を満たしていないから、出願日の遡及が認められないところ、本件特許に係る原出願の公開公報(甲20)には、本件発明の下位概念の発明が記載されているから、本件発明1ないし5は、甲20に記載された発明であり、新規性を有しない。仮に相違するとしても甲20から容易に発明をすることができた程度のものであるので進歩性を有しない。

第4 当審の判断
1 分割要件違反(特許法44条違反)について
分割要件違反自体は、特許異議申立ての理由とはされていないものの(特許法113条)、同要件違反の有無は、申立人が主張する本件特許に係る原出願の公開公報である甲20を主引用文献とする新規性進歩性要件違反の有無の判断の前提となるので、以下検討する。
(1)本件発明の「熱膨張性部材」は原出願当初明細書に記載されたものか
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1の「レール間アタッチメント」の「上板部」の「上面」に取り付けられる「第1熱膨張性部材」について、本件特許に係る原出願の出願当初の明細書(甲20を参照。以下「原出願当初明細書」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。
「【0089】
この図6に示すように、本発明においては、アタッチメント1を構成するレール間アタッチメント60′の上板部66の上面、並びにアタッチメント1を構成する室内側アタッチメント80′の上面に熱膨張性部材5を設けてもよい。
【0090】
このようにレール間アタッチメント60′の上板部66の上面、並びに室内側アタッチメント80′の上面に熱膨張性部材5を設けることで、建具が火災等の極めて高い温度で加熱されると、上板部66の上面、並びに室内側アタッチメント80′の上面に設けられて熱膨張性部材5が上方に向けて膨張することとなり、これにより下枠12と各障子20,30との隙間を塞ぐことができる。」
(イ)本件発明1の「レール間アタッチメント」の「第1対向壁部及び第2対向壁部」の少なくとも一方に取り付けられる「第3熱膨張性部材」について、原出願当初明細書には、図面とともに次の記載がある。
「【0059】
このレール間アタッチメント60は、上記補強基部61の他に、第1対向壁部62及び第2対向壁部63を備えている。
・・・
【0061】
第1対向壁保持部64は、例えば発泡黒鉛等の熱膨張性部材5を保持するものである。熱膨張性部材5は、左右方向が長手方向となる長尺状板状体であり、第1対向壁保持部64の全長に亘って該第1対向壁保持部64に設けられている。・・・
・・・
【0064】
第2対向壁保持部65は、例えば発泡黒鉛等の熱膨張性部材5を保持するものである。熱膨張性部材5は、左右方向が長手方向となる長尺状板状体であり、第2対向壁保持部65の全長に亘って該第2対向壁保持部65に設けられている。・・・」
また、図6とともに次の記載がある。
「【0078】
レール間アタッチメント60では、外障子20の室内側垂下片221bの室内側面及び内障子30の室外側垂下片321aの室外側面と対向する部位に熱膨張性部材5が設けられているので、熱膨張性部材5が膨張すると、該レール間アタッチメント60と室内側垂下片221bとの隙間、並びに該レール間アタッチメント60と室外側垂下片321aとの隙間を塞ぐことになる。」
イ 本件発明3について
本件発明3の「室外側レールアタッチメント」における「レール間アタッチメント」と見込み方向に対向する位置に取り付けられる「第2熱膨張性部材」について、原出願当初明細書には、図6とともに次の記載がある。
「【0077】
ここで、室外側レールアタッチメント40では、外障子20の室内側垂下片221bの室外側面と対向する部位に熱膨張性部材5が設けられているので、熱膨張性部材5が膨張すると、該室外側レールアタッチメント40と室内側垂下片221bとの隙間を塞ぐことになる。・・・」
ウ 本件発明4について
本件発明4は、「第1障子」を構成する「下框」について、「前記第1障子を案内する第1レール」と見込み方向に重なる位置まで下方に向けて延在する「垂下片」が「前記第1レール」に対して前記レール間アタッチメントから離間する側に「のみ」設けられていることを前提に、「第3熱膨張性部材」が「第2対向壁部」よりも第1レールに近接する側に設けられた「第1対向壁部」に取り付けられるものである。
原出願の願書に最初に添付された図6(甲20参照)をみると、上記構成を有する「第1障子」の「下框」が示されているとともに、「第2対向壁部(63)」よりも第1レールに近接する側に設けられた「第1対向壁部(62)」に取り付けられた「熱膨張性部材(5)」が示されている。
エ 本件発明5について
本件発明5の「室内側アタッチメント」の「上面」に取り付けられる「第4熱膨張性部材」について、原出願当初明細書には、次の記載がある。
「【0089】
この図6に示すように、本発明においては、アタッチメント1を構成するレール間アタッチメント60′の上板部66の上面、並びにアタッチメント1を構成する室内側アタッチメント80′の上面に熱膨張性部材5を設けてもよい。
【0090】
このようにレール間アタッチメント60′の上板部66の上面、並びに室内側アタッチメント80′の上面に熱膨張性部材5を設けることで、建具が火災等の極めて高い温度で加熱されると、上板部66の上面、並びに室内側アタッチメント80′の上面に設けられて熱膨張性部材5が上方に向けて膨張することとなり、これにより下枠12と各障子20,30との隙間を塞ぐことができる。」

以上から、本件発明1ないし5における「第1熱膨張性部材」ないし「第4熱膨張性部材」は、本件特許に係る原出願の当初明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「原出願当初明細書等」という。)に記載されていたといえ、「熱膨張性部材」以外の構成についても記載、図示されていないとする理由はない。
したがって、本件発明は、本件特許に係る原出願当初明細書等に包含されていた発明であり、本件特許に係る出願は、当該原出願を適法に新たな特許出願としたものといえ、分割要件に違反するとする事情は認められない。
(2)申立人の主張について
ア 申立人は、原出願当初明細書等では、熱膨張性部材と対向する部材が存在することや、熱膨張性部材がどこを塞ぐかも本件発明の課題解決のために必要な要件として記載されているところ(段落【0077】ないし【0080】、【0086】、【0090】参照)、本件発明では、これら要件が省かれており、原出願当初明細書等の記載から導くことができない上位概念化を図ったものであるから、本件特許に係る出願は、分割要件を満たしていないと主張する。
しかし、そもそも特許請求の範囲には、明細書の実施例に記載されるような具体的な構成を記載しなければならないというものではないし、原出願当初明細書における「火災等のように極めて高い温度で加熱されると、開口枠10や障子20,30を構成する部材のうち、樹脂製の部材が溶融してしまうとともに、各アタッチメント1に貼付された熱膨張性部材5が膨張することとなる」(段落【0076】)、「この結果、下枠12と各障子20,30との隙間を塞ぐことで、室内側下框部222等の樹脂製部材が溶融して消失しても室内と室外との気密性を十分に確保し、火炎等が室内及び室外の一方から他方へと伝わることをある程度抑制して防火性能を確保することができる。」(段落【0081】)との記載、及び、「熱膨張性部材」の作用、機能からみて、本件発明の「第1熱膨張性部材」ないし「第4熱膨張性部材」は、膨張することによってそれが取り付けられる「下枠12」と「各障子20,30」との隙間を塞ぐことができれば「防火性能」を確保できることは自明であるから、熱膨張性部材と対向する部材が具体的に何であるかや、具体的にどこを塞ぐのかは、本件発明の課題解決に必須の要素ということはできない。
したがって、申立人の当該主張には理由がない。
イ 申立人は、原出願の特許請求の範囲の請求項7には、「第1障子」が室外側障子である旨が記載されていたところ、原出願のかかる記載等を踏まえると、「第1障子」が「室内側障子」であるものも含まれ得る本件発明4の「複数の障子のいずれかの第1障子」という事項を導くことは困難であり、分割要件を満たしていないと主張する。
しかし、原出願当初明細書には、「熱膨張性部材5」が膨張することにより、「下枠12と各障子20,30との隙間を塞ぐことで、・・・室内と室外との気密性を十分に確保し、火炎等が室内及び室外の一方から他方へと伝わることをある程度抑制して防火性能を確保することができる。」(段落【0081】)との記載があり、熱膨張性部材の膨張により、室内と室外との気密性を確保するという課題や室内及び室外の一方から他方へ火炎が伝わることを抑制するという課題を解決する観点からは、「第1障子」が「室外側障子」であるか、「室内側障子」であるかは問題ではないことからみて、本件発明4に「第1障子」が「室内側障子」であるものも含まれるとしても、原出願当初明細書等のすべての記載からみて新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって、申立人の当該主張にも理由がない。
ウ 申立人は、本件発明4の垂下片について、請求項には「前記第1障子を構成する下框において、前記第1レールに対して前記レール間アタッチメントから離間する側にのみ設けられ」と記載されているのみであり、また請求項における「複数の障子のいずれかの第1障子」という記載は、「第1障子」が「室内側障子」である場合を含むから、本件発明4には、室内側障子の室内側にのみ垂下片を設ける態様が含まれるが、原出願当初明細書等には、室内側障子について、「垂下片」が第1レールの両側に設けられるもの(図4参照)と第1レールに対してレール間アタッチメントの側にのみ設けられるもの(図6参照)しか記載されていないから、本件発明4は、原出願から導くことができない上位概念化を図るものであり、分割要件を満たしていないと主張する。
しかし、原出願当初明細書等には、室内側障子について、垂下片が第1レールの両側に設けられるものと第1レールに対してレール間アタッチメントの側にのみ設けられるものしか明記されていないとしても、上記イで述べたのと同様の理由により、熱膨張性部材の膨張により、室内と室外との気密性を確保するという課題や室内及び室外の一方から他方へ火炎が伝わることを抑制するという課題を解決する観点からは、「第1障子」が「室外側障子」であるか、「室内側障子」であるかは問題ではなく、「第1障子」が「室内側障子」である場合に「室外側障子」である場合と同様の垂下片の構成を有しているとしても、原出願当初明細書等のすべての記載からみて新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって、申立人の当該主張にも理由がない。

2 サポート要件違反及び実施可能要件違反(特許法36条6項1号・4項1号違反)について
(1)サポート要件に適合するか
ア 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
イ 本件発明は,従来の建具においては、下枠本体部にアタッチメントを装着して下枠の上面を略平坦に形成しているので、下枠本体部の隙間をできる限り少なくした構造となっており、下枠本体部に発泡黒鉛等の熱膨張性部材を貼り付けることが困難となり、そのため、良好な防火性能を得ることが困難であり、また、下枠本体部に熱膨張性部材を貼り付けることができたとしても、該熱膨張性部材が下枠の排水経路に貼り付けられると排水性能の低下を招来する虞れがあったことに鑑み、排水性を十分に確保しつつ防火性を良好なものとすることができる建具を提供するという課題を解決しようとするもので,そのような効果を有するものであると認められる(本件特許明細書の段落【0005】、【0006】、【0009】)。
しかるところ、本件発明1は,「前記下枠本体部における前記レールの相互間の部位に着脱可能に装着されるレール間アタッチメント」を備え、当該「レール間アタッチメント」は、その上方に位置する「上板部」の上面に「第1熱膨張性部材」が取り付けられ、前記上板部から下方に向けてそれぞれ延在し、見込み方向に並列する「第1対向壁部」及び「第2対向壁部」の少なくとも一方に「第3熱膨張性部材」が取り付けられるものであり,「レール間アタッチメント」の「上板部」の上面に「第1熱膨張性部材」が取り付けられ、「レール間アタッチメント」の「第1対向壁部」及び「第2対向壁部」の少なくとも一方に「第3熱膨張性部材」が取り付けられることで,建具が火災等の極めて高い温度で加熱されると、レール間アタッチメント60上板部66の上面に設けられ、熱膨張性部材5が上方に向けて膨張することとなり、これにより下枠12と各障子20,30との隙間を塞ぐことができ(【0075】、【0076】)、レール間アタッチメント60の外障子20の室内側垂下片221bの室内側面又は内障子30の室外側垂下片321aの室外側面と対向する部位に熱膨張性部材5が設けられているので、熱膨張性部材5が膨張すると、該レール間アタッチメント60と室内側垂下片221bとの隙間、並びに該レール間アタッチメント60と室外側垂下片321aとの隙間を塞ぐことになり(【0064】)、また、本件発明1の建具においては、下枠本体部12aに着脱可能に装着されるアタッチメント1に熱膨張性部材5を設けているので、従来のように下枠本体部に熱膨張性部材を貼付する場合に比して、熱膨張性部材5が下枠12の排水経路に貼付される虞れがなく、結果的に、排水性能の低下を招来しないようにすることができる(【0068】)と認められるから、上記のような,「レール間アタッチメント」の上面に「第1熱膨張性部材」が取り付けられ、「第1対向壁部」及び「第2対向壁部」の少なくとも一方に「第3熱膨張性部材」が取り付けられるという本件発明1の構成は、本件発明の課題を解決する手段といえる。
以上によると,本件発明1について,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ,サポート要件を欠くものとは認められない。本件発明2ないし5は,全て請求項1を引用するものであるから,それらについても同様にサポート要件を欠くものとは認められない。
(2)申立人の主張について
ア 申立人は、本件発明の解決しようとする課題について、本件特許明細書には「排水性を十分に確保しつつ防火性を良好なものとすることができる建具を提供することを目的とする」(段落【0006】)と記載されているところ、本件発明では、熱膨張性部材を設ける場所を規定しているだけで、熱膨張性部材と対向する部材の存在、及び、どこを塞ぐのかについて規定されていないから、「防火性を良好なものとすることができる」という課題を解決できると認識することができないと主張する。
しかし、上記「(1)イ」で検討したところによれば、熱膨張性部材と対向する部材の存在、及び、どこを塞ぐのかについて請求項に規定されていなくても、本件特許明細書の記載及び原出願時の技術常識を参酌すれば、本件発明1において、「レール間アタッチメント」の上面に「第1熱膨張性部材」が取り付けられ、「第1対向壁部」及び「第2対向壁部」の少なくとも一方に「第3熱膨張性部材」が取り付けられるという構成を有していることをもって、本件発明の課題を解決することができることが理解できるというべきである。
したがって、申立人の当該主張には理由がない。
イ 申立人は、本件発明の解決しようとする課題には、排水性の確保が含まれるが、本件明細書等には、具体的な排水経路等の記載はなく、特許請求の範囲の記載から課題が解決されたと認識することはできないから、サポート要件を満たしていないし、本件明細書等には、具体的な排水経路等の記載がないから、「防火性を良好なものとすることができる」排水経路とする手段が記載されておらず、むしろレール間アタッチメントをレール間に設置すること自体が排水を妨げているといえ、レール間アタッチメントの第1及び第2対向壁部に熱膨張性部材を設けるとレール間の排水を妨げることとなるから実施可能要件も満たしていないと主張する。
しかし、本件特許明細書の段落【0068】には、「上記建具においては、下枠本体部12aに着脱可能に装着されるアタッチメント1に熱膨張性部材5を設けているので、従来のように下枠本体部に熱膨張性部材を貼付する場合に比して、熱膨張性部材5が下枠12の排水経路に貼付される虞れがなく、結果的に、排水性能の低下を招来しない。」と記載されており、下枠本体部12aにではなく、これに着脱可能に装着されるアタッチメント1に熱膨張性部材5を設けることとすれば、熱膨張性部材5が下枠12の排水経路に貼付される虞れがなくなることが理解できるから、具体的な排水経路等の記載がないことをもってサポート要件及び実施可能要件を満たしていないということはできない。
したがって、申立人の当該主張にも理由がない。

3 甲1発明を主引用発明とする進歩性要件違反(特許法29条2項違反)について
(1)甲各号証の記載
ア 甲第1号証(甲1)
(ア)甲1の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲1(前記「第3」「1」参照)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0019】
・・・図1において、引違い窓1は、戸建て住宅等の建物の外壁開口部に設けられて建物の室内空間と室外空間とを仕切るもので、気密性や水密性、遮音性等について所定の性能を有している。そして、引違い窓1の下枠12は、上面が室外側のテラスやバルコニに設置されるデッキ2の上面および室内床面FLと略同一の高さ位置に設けられ、上面略平坦(フラット)に形成されている。従って、居住者が引違い窓1を通って室内外間を往来する際に、室内外床レベルの段差がないので上り下りする必要がなく、楽に出入りできるとともに、車いすを利用する居住者であっても容易に出入りできるようになっている。すなわち、引違い窓1は、室内外の床段差を小さくした、バリアフリータイプ(ユニバーサルデザイン)の掃出し窓である。
【0020】
引違い窓1は、それぞれアルミ押出形材製の上枠11、下枠12、および左右の縦枠13を四周枠組みした窓枠10と、この窓枠10の内側に開閉自在に支持された室内外一対の障子15とを備えて構成されている。窓枠10は、建物の外壁開口部における柱や壁パネル等の建物躯体に固定されている。障子15は、それぞれアルミ押出形材製の上框16、下框17、および左右の縦框18を四周框組みした内部に、ガラスパネル(複層ガラス)19を嵌め込んで構成されている。また、障子15の室外側には、網戸20が窓枠10内に開閉自在に支持されている。網戸20は、四周枠組みされた網戸枠21と、この網戸枠21に固定されたネット22とを有して構成されている。障子15は、室内側の障子15Aと室外側の障子15Bとからなり、室内外の障子15A,15Bが、窓枠10の略中央位置の召合せ部分で重なって閉じるようになっている。
そして、本実施形態において、下枠12は、後述する4種類の形態の下枠12A、12B、12C、12Dが適用可能に構成されている。
【0021】
・・・図2は、下枠12Aを拡大して示す縦断面図である。図3は、下枠12Aを分解して示す縦断面図である。
下枠12Aは、建物の開口部に固定される下枠本体121と、この下枠本体121に取り付けられて障子15の戸車171を案内する室内側および室外側のレール部材30(30A,30B)と、これら室内外の各レール部材30A,30Bの室外側側面に取り付けられて障子15の下框17に当接する室内側および室外側の気密材31(31A,31B)と、室内外の各レール部材30A,30B間に着脱自在に下枠本体121に取り付けられたレール間上面部材(下枠上面部材)32と、室内側レール部材30Aよりも室内側に着脱自在に設けられた室内側上面部材33と、室外側レール部材30Bよりも室外側に着脱自在に設けられた網戸レール部材34とを備えて構成されている。
【0022】
下枠12Aにおいて、下枠本体121の上面部124、室内外のレール部材30A,30Bの上端(戸車案内部302)、レール間上面部材32の上面、および網戸レール部材34の上面は、それぞれ略同一高さ位置に設けられている。また、室内側レール部材30Aと室内側上面部材33との間、および室内側の気密材31Aとレール間上面部材32との間には、それぞれ隙間が形成されており、これらの隙間には、室内側障子15Aにおける下框17に形成された室内外の垂下片172がそれぞれ挿入されている。これと同様に、室外側レール部材30Bとレール間上面部材32との間、および室外側の気密材31Bと網戸レール部材34との間には、それぞれ隙間が形成されており、これらの隙間には、室外側障子15Bにおける下框17に形成された室内外の垂下片172がそれぞれ挿入されている。これらの隙間寸法は、垂下片172を挿入するための最小限の寸法に設定されている。
・・・
【0024】
・・・そして、室内側立上り片部122Aおよび室外側立上り片部122Bには、下枠12Aの長手方向に沿った適宜な間隔で排水開口が形成されており、室内側凹溝部121Aに浸入した雨水や結露水等は、室内側立上り片部122Aに形成した排水開口を介してレール間凹溝部121Bに流れるとともに、レール間凹溝部121Bに浸入した雨水や結露水等は、室外側立上り片部122Bに形成した排水開口、および図示しない排水弁を介して室外空間に排水されるようになっている。そして、後述するレール間上面部材32の側面部323,324、および室内側上面部材33の下端側は、前述の排水経路に応じて適宜切り欠かれている。・・・
【0025】
次に、室内側および室外側のレール部材30A,30Bは、それぞれアルミ押出形材製で同一断面に形成され、上面部301と、この上面部301から上方に突出した戸車案内部302と、上面部301から下方に突出した室内側の第1側壁部303および室外側の第2側壁部304とを有している。・・・
・・・
【0027】
次に、レール間上面部材32は、略水平に形成された上面部321と、この上面部321に対向して略水平に形成された底面部322と、上面部321および底面部322に連続して下方に延びる室内側および室外側の側面部323,324と、を有して形成されたアルミ押出形材製の部材である。そして、レール間上面部材32における室内側側面部323の下端部には、鉤状に折れ曲がった係合片部325が形成されており、この係合片部325を下枠本体121の傾斜面部125の室外側端部に係合するとともに、室外側側面部324の下端を下枠本体121の底面部127に載置することで、レール間上面部材32が下枠本体121に支持されるようになっている。このようにして下枠本体121に取り付けられたレール間上面部材32によってレール間凹溝部121Bが塞がれて下枠12Aの上面が略平坦に形成されている。また、レール間上面部材32を下枠本体121から取り外してレール間凹溝部121Bを上方に開口させることで、掃除機等を用いてレール間凹溝部121B内の清掃を容易に行うことができるようになっている。」
「 【図1】


「 【図2】 【図3】


(イ)甲1発明
上記(ア)によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
【甲1発明】
「それぞれアルミ押出形材製の上枠11、下枠12、および左右の縦枠13を四周枠組みした窓枠10と、この窓枠10の内側に開閉自在に支持された室内外一対の障子15とを備えて構成される引違い窓1であって、
下枠12Aは、建物の開口部に固定される下枠本体121と、この下枠本体121に取り付けられて障子15の戸車171を案内する室内側および室外側のレール部材30(30A,30B)と、室内外の各レール部材30A,30B間に着脱自在に下枠本体121に取り付けられたレール間上面部材(下枠上面部材)32と、室内側レール部材30Aよりも室内側に着脱自在に設けられた室内側上面部材33と、室外側レール部材30Bよりも室外側に着脱自在に設けられた網戸レール部材34とを備え、それらの上面は略同一高さ位置に設けられ、上面略平坦(フラット)に形成されれており、
レール間上面部材32は、略水平に形成された上面部321と、この上面部321に対向して略水平に形成された底面部322と、上面部321および底面部322に連続して下方に延びる室内側および室外側の側面部323,324とを有して形成されている
引違い窓1。」

イ 甲第2号証(甲2)
(ア)甲2の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲2(前記「第3」「1」参照)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0014】
本実施では、樹脂製サッシとして引違い戸を挙げ、この引違い戸に、熱膨張耐火成分として膨張黒鉛を含有する樹脂製サッシ用形材を使用したものである。そして、引違い戸は、上枠1と下枠2と縦枠3とから躯体開口の四周を囲む枠体21と、その枠体21内周の内外位置にそれぞれ配置する二枚の障子4a,4bとから構成している。
【0015】
上記の枠体21を構成する上枠1と下枠2の構成について説明する。・・・下枠2は、上枠1との上下の対向位置に下レール15,15が内外に間隔をあけて二本配置してあり、その下レール15,15間には、枠材用樹脂製カバー材13bが取り付けてある。・・・
・・・
【0017】
上述したように、枠体21に取り付けてある枠材用樹脂製カバー材13a,13bと樹脂製アングル材14a,14b、そして、障子4a,4bに取り付けてある框用樹脂製カバー材12a?12dのすべてについて、本実施による樹脂製サッシを組立てた後の枠体21と障子4a,4bの隙間における炎の侵入が想定される箇所に、膨張黒鉛を含有する熱膨張耐火成分含有部22bが樹脂製サッシ用形材形成部22bと一体成形されている。このように形成すると、枠体21と障子4a,4bの間隔や形材間の隙間に熱膨張耐火成分含有部22bが配置されるので、万一の火災時には、その熱膨張耐火成分含有部22bが膨張して隙間や間隔を塞ぎ、炎や熱の侵入を防ぐことになる。」
「 【図1】 【図2】


(イ)甲2記載の技術的事項
上記(ア)によれば、甲2には、次の事項が記載されているものと認められる。
【甲2記載の技術的事項】
「上枠1と下枠2と縦枠3とから躯体開口の四周を囲む枠体21と、その枠体21内周の内外位置にそれぞれ配置する二枚の障子4a,4bとから構成される樹脂製サッシとしての引違い戸において、
下枠2に内外に間隔をあけて二本配置してある下レール15,15間に枠材用樹脂製カバー材13bが取り付けてあり、枠材用樹脂製カバー材13bの枠体21と障子4a,4bの隙間における炎の侵入が想定される箇所を膨張黒鉛を含有する熱膨張耐火成分含有部22bが樹脂製サッシ用形材形成部22bと一体成形されるようにし、火災時にはその熱膨張耐火成分含有部22bが膨張して隙間や間隔を塞ぎ、炎や熱の侵入を防ぐ技術。」

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明(前記「(1)ア(イ)」参照)とを対比する。
甲1発明の「窓枠10」、「室内外一対の障子15」、「引違い窓1」は、それぞれ、本件発明1における『開口枠』、『複数の障子』、『建具』に相当する。
甲1発明の「建物の開口部に固定される下枠本体121」に取り付けられた「室内側および室外側のレール部材30(30A,30B)」は、障子15の戸車171を案内するから、本件発明1における『前記開口枠を構成する下枠本体部』に見込み方向に並列した状態で設けられた『前記複数の障子をそれぞれ案内するための複数のレール』に相当する構成を有していることは明らかである。
甲1発明の「下枠本体121」における「室内外の各レール部材30A,30B間」に「着脱自在」に取り付けられた「レール間上面部材(下枠上面部材)32」は、本件発明1の『前記下枠本体部』における『前記レールの相互間』の部位に『着脱可能』に装着される『レール間アタッチメント』に相当する。
甲1発明における「レール間上面部材32」を構成する「略水平に形成された上面部321」、「上面部321」に連続して下方に延びる「室内側および室外側の側面部323,324」は、それぞれ、本件発明1における『レール間アタッチメント』を構成する『上板部』、『第1対向壁部及び第2対向壁部』に相当する。

以上から、本件発明1と甲1発明とは、
<一致点>
「開口を有する開口枠と、前記開口枠に対して開閉自在にそれぞれ支持された複数の障子とを備えた建具であって、
前記開口枠を構成する下枠本体部に見込み方向に並列した状態で設けられ、前記複数の障子をそれぞれ案内するための複数のレールと、
前記下枠本体部における前記レールの相互間の部位に着脱可能に装着されるレール間アタッチメントとを備え、
前記レール間アタッチメントは、
当該レール間アタッチメントにおける上方に位置し、鉛直方向に交差して延在する上板部と、
前記上板部から下方に向けてそれぞれ延在し、見込み方向に並列する第1対向壁部及び第2対向壁部とを有している建具」
である点で一致し、以下の点で相違している。
【相違点1】
本件発明1では、レール間アタッチメントの上板部の上面に「第1熱膨張性部材」が取り付けられ、第1対向壁部及び第2対向壁部の少なくとも一方に「第3熱膨張性部材」が取り付けられているのに対し、
甲1発明では、「レール間上面部材32」の「上面部32の上面」、「側面部323、324」のいずれにも「熱膨張性部材」が取り付けられていない点。
イ 判断
上記相違点1について検討する。
(ア)甲2には、上記「(1)イ(イ)」に示した技術的事項が記載されているところ、「膨張黒鉛を含有する熱膨張耐火成分含有部22b」が「枠材用樹脂製カバー材13b」と「一体成形」されるもので、「樹脂」製サッシであることを前提としており、熱膨張性部材が上面に配置されていることののみを取り出して、「アルミ」製サッシである甲1発明の「レール間上面部材(下枠上面部材)32」に適用する動機付けがあるとは認められない。
(イ)仮に甲1発明に甲2記載の技術的事項を適用しようとすると、「レール間上面部材(下枠上面部材)32」に「熱膨張性部材」を「一体成型」するのではなく、「取り付け」るように変更を加えることとなるが、たとえ「コ字状の溝部」を形成し、その溝部内に「熱膨張性部材を収納」するといった技術が、甲3ないし甲8により周知技術と認められるとしても、甲1発明の「レール間上面部材(下枠上面部材)32」は、アルミ製である上、居住者が通過しやすいよう「室内側上面部材33」、「室外側レール部材30B」及び「網戸レール部材34」などの上面と略同一高さ位置とされ、略平坦に形成されるべきものであることからみて、甲2記載の技術的事項を採用しつつ上記変更を加えることは、甲1発明のアルミ製の「レール間上面部材(下枠上面部材)32」の上面部に溝様のものを形成せざるを得ないことから構成が複雑化する上、熱膨張性部材が上面に露出するためその厚みを考慮して他の部材との高さ調整や平坦性の確保をせざるを得ないこととなるから、甲1発明の構成が特徴としているところに反する。
また、申立人は、排水開口付近に熱膨張性部材を設けることが、甲8ないし甲12により周知技術であり、また、本件発明4のように「垂下片」を設けることが甲13ないし甲19により周知技術であるなどと主張するが、いずれも「レール間上面部材」の「上面」や「側面」に熱膨張性部材を取り付けることを開示するものではない。
(ウ)したがって、甲1発明において、レール間上面部材32の上面や側面に熱膨張性部材を取り付けることが容易想到であるとはいえず、本件発明1は、甲1発明、甲2記載の技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2ないし5について
本件発明2ないし5は、前記「第2」に示したとおり、本件発明1の構成をさらに限定ないし新たな構成を追加したものであり、上記相違点1と同様の相違点を有するから、上記(2)に示した理由と同様の理由により、本件発明2ないし5は、甲1発明、甲2記載の技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 甲20を主引用文献とする新規性進歩性要件違反(特許法29条1項・2項違反)
本件発明は、前記「1」で述べたとおり、分割要件を満たしており、出願日の遡及が認められるから、本件特許に係る原出願の公開公報(甲20)を本件発明1ないし5に対する公知文献として扱うことはできない。
したがって、本件発明1ないし5は、甲20を主引用文献として新規性進歩性を否定することはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-02-26 
出願番号 特願2018-242579(P2018-242579)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (E06B)
P 1 651・ 536- Y (E06B)
P 1 651・ 113- Y (E06B)
P 1 651・ 121- Y (E06B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 家田 政明  
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 長井 真一
有家 秀郎
登録日 2020-05-08 
登録番号 特許第6701318号(P6701318)
権利者 YKK AP株式会社
発明の名称 建具  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
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