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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
管理番号 1371728
異議申立番号 異議2020-700821  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-22 
確定日 2021-03-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第6685316号発明「重合体粒子及びその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6685316号の請求項1ないし19に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6685316号(請求項の数19。以下、「本件特許」という。)は、平成28年3月25日(優先権主張:平成27年9月30日(日本国))を国際出願日とする出願であって、令和2年4月2日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和2年4月22日である。)。
その後、令和2年10月22日に、本件特許の請求項1?19に係る特許に対して、特許異議申立人である森田弘潤(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

第2 特許請求の範囲の記載
特許第6685316号の特許請求の範囲の記載は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?19に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1?19に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」?「本件発明19」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)

「【請求項1】
界面活性剤を含有する重合体粒子であって、
体積基準の粒子径分布の変動係数が15.7%以上25.0%以下であり、
重合体粒子5.0gに水15.0gを添加し、超音波洗浄器を用いて60分間分散処理を行うことにより重合体粒子を水中に分散させ、内径24mmの遠心管に入れて遠心分離機を用いてKファクタ6943、回転時間30分間の条件で遠心分離した後、上澄み液を回収したときに、上澄み液中における非揮発成分の濃度が3.5重量%未満であることを特徴とする重合体粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の重合体粒子であって、
前記重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が、10?250×10^(-5)g/m^(2)であることを特徴とする重合体粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の重合体粒子であって、
(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、及び(メタ)アクリル-スチレン系共重合体の少なくとも1つで構成されることを特徴とする重合体粒子。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載の重合体粒子であって、
ゲル分率が、90重量%以上であることを特徴とする重合体粒子。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載の重合体粒子であって、
屈折率が、1.490?1.595であることを特徴とする重合体粒子。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載の重合体粒子であって、
体積平均粒子径が、1μm以上8μm以下であることを特徴とする重合体粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の重合体粒子であって、
体積基準の粒子径分布における最大粒子径が、体積平均粒子径の3.5倍以下であることを特徴とする重合体粒子。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の重合体粒子であって、
体積平均粒子径が、2μm以上4μm以下であり、
8μm以上10μm以下の粒子径を有する重合体粒子の個数が、30万個中2個以下であることを特徴とする重合体粒子。
【請求項9】
請求項1?5のいずれか1項に記載の重合体粒子であって、
体積平均粒子径が、8μm超30μm以下であることを特徴とする重合体粒子。
【請求項10】
請求項9に記載の重合体粒子であって、
体積基準の粒子径分布における最大粒子径が、体積平均粒子径の2.5倍以下であることを特徴とする重合体粒子。
【請求項11】
請求項1?10のいずれか1項に記載の重合体粒子であって、
個数基準の粒子径分布の変動係数を体積基準の粒子径分布の変動係数で除した値が、1.0?3.0であることを特徴とする重合体粒子。
【請求項12】
請求項1?5のいずれか1項に記載の重合体粒子であって、
コーティング剤用又はインク用の添加剤であり、
体積平均粒子径が、4?40μmであることを特徴とする重合体粒子。
【請求項13】
請求項1?5のいずれか1項に記載の重合体粒子であって、
外用剤用の添加剤であり、
体積平均粒子径が、4?30μmであることを特徴とする重合体粒子。
【請求項14】
請求項1?11のいずれか1項に記載の重合体粒子であって、
光学部材用光拡散剤であることを特徴とする重合体粒子。
【請求項15】
請求項1?11のいずれか1項に記載の重合体粒子であって、
樹脂フィルム用凹凸付与剤であることを特徴とする重合体粒子。
【請求項16】
請求項1?12のいずれか1項に記載の重合体粒子を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の樹脂組成物であって、
コーティング用樹脂組成物であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項18】
基材フィルムと、その上に形成されているコーティングとを含む光学フィルムであって、
前記コーティングが、請求項1?5及び12のいずれか1項に記載の重合体粒子を含む
ことを特徴とする光学フィルム。
【請求項19】
請求項1?5及び13のいずれか1項に記載の重合体粒子を含むことを特徴とする外用剤。」

第3 申立理由の概要及び証拠方法
申立人がした申立ての理由の概要は、以下に示すとおりである。
1 申立理由の概要
(1)申立理由1
本件の特許請求の範囲の請求項1の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、概略、下記の点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。
よって、本件発明1?19の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

請求項1の「重合体粒子5.0gに水15.0gを添加し、超音波洗浄器を用いて60分間分散処理を行うことにより重合体粒子を水中に分散させ、内径24mmの遠心管に入れて遠心分離機を用いてKファクタ6943、回転時間30分間の条件で遠心分離した後、上澄み液を回収したときに、上澄み液中における非揮発成分の濃度が3.5重量%未満であること」の記載について、具体的にどのような粒子径分布を示しているのか、微小粒子がどのような領域にどの程度含まれているのか理解できない。

(2)申立理由2
本件明細書の発明の詳細な説明は、概略、下記の点で、当業者が本件発明1?19の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
よって、本件発明1?19の特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

ア 本件発明1の「体積基準の粒子径分布の変動係数が15.7%以上25.0%以下」という特定事項と、「重合体粒子5.0gに水15.0gを添加し、超音波洗浄器を用いて60分間分散処理を行うことにより重合体粒子を水中に分散させ、内径24mmの遠心管に入れて遠心分離機を用いてKファクタ6943、回転時間30分間の条件で遠心分離した後、上澄み液を回収したときに、上澄み液中における非揮発成分の濃度が3.5重量%未満である」という特定事項とを満足する重合体粒子を製造することは、発明の詳細な説明の記載をみても、当業者が容易に実施することはできない。

イ 発明の詳細な説明の段落【0027】には、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量は、10?250×10^(-5)g/m^(2)であることが好ましい旨の記載がされ、また、前記重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が前記範囲の下限未満である重合体粒子を製造することは困難であることが記載されているから、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が特定されていない本件発明1、3?19の「界面活性剤を含有する」重合体粒子を製造することは、当業者であっても容易に実施することはできない。

(3)申立理由3
本件の特許請求の範囲の請求項1?19の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、概略、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件発明1?19の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

ア 効果に影響を与える要素が揃えられた実施例、比較例の実験データでないと課題が解決できたことを確認できないということを前提として、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例では、本件発明の課題が解決できたことについて明確な評価基準が記載されておらず、また、本件発明の課題に関係する体積基準の平均粒子径等の条件が揃えられていないから、要件C及び要件Dの特定を満足する重合体粒子が本件発明の課題を解決できたとする根拠がない。

イ 本件発明1の重合体粒子が「体積基準の粒子径分布の変動係数が15.7%以上25.0%以下であ」ることについて、発明の詳細な説明の記載や審査段階で提出された実験成績証明書の記載をみてもサポート要件を満たすとはいえず、また、本件発明1は、重合体粒子の粒子径や実施例に記載された粗粉及び微粉を除去ことに関する特定がないから、本件発明1はサポート要件を満たさない。

ウ 本件発明1は、界面活性剤の種類及び含有量が特定されていないので、発明の詳細な説明での開示に比べ広範であり、サポート要件を満たさない。

エ 本件発明1は、重合体粒子の種類及びモノマー組成が特定されていないので、発明の詳細な説明での開示に比べ広範であり、サポート要件を満たさない。

(4)申立理由4
本件発明1?19は、本件優先日前に頒布された以下の刊行物である甲第1及び2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、本件発明1?19に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(5)申立理由5
本件発明1?19は、本件優先日前に頒布された以下の刊行物である甲第1又は2号証に記載された発明及び甲第1?7号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明1?19の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

2 証拠方法
甲第1号証:国際公開第2013/030977号
甲第2号証:特開2010-215765号公報
甲第3号証:皆川基 外2名編、洗剤・洗浄百科事典(新装版)、株式会社朝倉書店、2011年3月10日新装版第2刷発行、「18 食生活における洗浄」の頁、第577?584頁
甲第4号証:国際公開第2008/023648号
甲第5号証:国際公開第2015/045448号
甲第6号証:国際公開第2013/089050号
甲第7号証:国際公開第2015/071984号
以下、「甲第1号証」?「甲第7号証」を「甲1」?「甲7」という。

第4 特許異議申立ての理由についての当審の判断
申立理由の当審の判断を述べるに際し、本件の請求項1の記載を、以下のように「要件A」?「要件D」と区分けすることにする。
「界面活性剤を含有する(以下「要件A」という。)
重合体粒子であって、(以下「要件B」という。)
体積基準の粒子径分布の変動係数が15.7%以上25.0%以下であり、(以下「要件C」という。)
重合体粒子5.0gに水15.0gを添加し、超音波洗浄器を用いて60分間分散処理を行うことにより重合体粒子を水中に分散させ、内径24mmの遠心管に入れて遠心分離機を用いてKファクタ6943、回転時間30分間の条件で遠心分離した後、上澄み液を回収したときに、上澄み液中における非揮発成分の濃度が3.5重量%未満である(以下「要件D」という。)
ことを特徴とする重合体粒子。」

1 申立理由1について
(1)明確性要件の考え方について
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

(2)判断
請求項1には、重合体粒子の特定として要件Dが記載されている。
この要件Dに関係する記載として、発明の詳細な説明の段落【0010】及び【0011】には、以下の事項が記載されている。
(a)「【0010】
ところで、界面活性剤を含有する重合体粒子は、通常、界面活性剤及び水性媒体の存在下での懸濁重合やシード重合等によって得られるが、そのようにして得られた重合体粒子においては、通常、副反応である水相中での乳化重合により生成した、目的とする重合体粒子の粒子径と比較して顕著に小さい粒子径(例えば500nm以下の粒子径)を有する重合体粒子(「乳化重合生成物」と呼ばれる)等の微小粒子が、重合体粒子表面や重合体粒子間に存在している。重合体粒子は、このような乳化重合生成物等の微小粒子を多量に含有すると、他の材料中に重合体粒子を分散させた分散体の流動性が低くなり、その結果として他の材料中への重合体粒子の均一分散性が悪くなることがある。例えば、そのような重合体粒子をバインダーや溶剤の中に分散させた塗工液をフィルム基材上に塗工して光拡散フィルムや防眩フィルム等の光学フィルムを製造するときに、塗工液の粘稠性が高くなって、均一にムラ無く塗工し、光学フィルムの光学特性(光拡散性、防眩性、光透過率等)を全面にわたり安定させることが困難となることがある。そのため、得られる光学フィルムの光学特性が不均一となって、透過欠陥等の欠陥が発生することがある。
【0011】
上記非揮発成分の濃度は、上記乳化重合生成物等の微小粒子の含有量に相当する。本発明の重合体粒子は、上記非揮発成分の濃度が3.5重量%未満に抑えられているので、重合体粒子表面や重合体粒子間に存在する乳化重合生成物等の微小粒子の含有量が少ない。本発明の重合体粒子は、このように乳化重合生成物等の微小粒子の含有量が少ないことに加えて、体積基準の粒子径分布の変動係数が25%以下であるために小粒子の割合が少ないことから、他の材料中に重合体粒子を分散させた分散体の流動性が高く、他の材料中への重合体粒子の均一分散性に優れている。例えば、本発明の重合体粒子をバインダーや溶剤の中に分散させた塗工液をフィルム基材上に塗工して光拡散フィルムや防眩フィルム等の光学フィルムを製造するときに、塗工液の粘稠性を低く保ち、均一でムラの無い塗工が可能となる。そのため、得られる光学フィルムの光学特性(光拡散性、防眩性、光透過率等)が均一となって、透過欠陥等の欠陥が発生することを抑制できる。」

また、実施例における要件Dの具体的な測定・算出方法として、同【0124】?【0129】には、以下の事項が記載されている。
(b)「【0124】
〔重合体粒子中の副生成物(乳化重合生成物)の含有量の測定方法(溶剤分散法)〕
重合体粒子を水中に分散させ遠心分離すると、目的とする粒子径を有する重合体粒子は沈降する一方、重合体粒子中に含有される副生成物(乳化重合生成物)は、浮遊して少量の水と共に上澄み液を構成する。そこで、ここでは、重合体粒子中における重合の副生成物(乳化重合生成物)の含有量を、上澄み液中における非揮発成分の含有量として測定する。
【0125】
[上澄み液の作製]
まず、各実施例及び各比較例で得られた重合体粒子5.0gを内容量50mlのサンプル瓶に入れ、水15.0gを添加する。その後、超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製「ULTRASONIC CLEANER VS-150」、発振周波数:50kHz、高周波出力:150W)を用いて60分間分散処理を行うことにより重合体粒子を水中に分散させて、分散液を得る。なお、重合体粒子が水に分散しにくい場合には、重合体粒子を微量(上限0.8g)のアルコール(例えばエタノール)で湿潤させた後、水に分散させてもよい。
【0126】
次に、内径24mmの遠心管、例えば内容量50mLで内径24mmの遠心管(Thermo Fisher Scientific社製、商品名「ナルゲン(登録商標)3119-0050」)に上記分散液を20.0g入れ、その遠心管をローター、例えばアングルローター(型番「RR24A」、日立工機株式会社製、内容量50mLの遠心管が8本セットされるもの)にセットし、遠心分離機、例えば高速冷却遠心機(high-Speed refrigerated centrifuge)(型番「CR22GII」、日立工機株式会社製)に前記のローターをセットし、前記高速冷却遠心機を用いてKファクタ6943(前記アングルローターを使用した場合、回転数4800rpmのときにKファクタが6943となる)、回転時間30分間の条件で遠心分離した後、上澄み液を回収する。
【0127】
[副生成物(乳化重合生成物)の定量評価]
次に、回収した上澄み液5.0g中に含まれる副生成物(乳化重合生成物)の含有量を評価する。すなわち、まず、予め重量を計量した内容量10mlのサンプル瓶に、上澄み液5.0gを秤り取り、温度60℃の真空オーブンに5時間入れて水分を蒸発させる。蒸発乾固した残留物、すなわち非揮発成分を含むサンプル瓶の重量(g)を計量する。
【0128】
そして、非揮発成分を含むサンプル瓶の重量(g)と、サンプル瓶の重量(g)と、サンプル瓶に入れた上澄み液の重量(g)(=5.0g)とから、以下の算出式によって、上澄み液中における非揮発成分(副生成物(乳化重合生成物)に相当)の濃度(重量%)を算出する。
【0129】
(上澄み液中における非揮発成分の濃度)(重量%)
={(非揮発成分を含むサンプル瓶の重量)(g)-(サンプル瓶の重量)(g)}
÷(サンプル瓶に入れた上澄み液の重量)(g)×100」

上記したように、本件の発明の詳細な説明の【0124】?【0129】の記載を考慮すれば、請求項1に記載された「非揮発成分」は、その測定・算出方法が明らかであり定義は明確であるといえるから、請求項1の要件Dの記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

(3)申立人の主張の検討
申立人は、請求項1の要件Dの記載では、粒子径が比較的小さい部分の存在割合の特定方法が間接的であり、その特定方法と粒子径分布を結びつける技術常識が存在しないから、具体的にどのような粒子径分布を示しているのか、微小粒子がどのような領域にどの程度含まれているのか理解できない、という主張をする。
そこで、申立人の主張について検討するが、請求項1の要件Dの記載は、上記(2)で述べたように明確であり、必ずしも重合体粒子の粒子径分布においてどのような粒子径のものがどのような含有量で存在しているかを特定しなければ明確でないというものではない。
よって、申立人の主張は採用できない。

(4)まとめ
したがって、請求項1及びこれを直接又は間接的に引用する請求項2?19の特許を受けようとする発明は、明確でないとはいえない。
以上のとおりであるから、申立理由1によっては、本件発明1?19に係る特許を取り消すことはできない。

2 申立理由2について
(1)実施可能要件の考え方について
特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。

(2)特許請求の範囲の記載について
上記「第2」に記載したとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載について
本件の発明の詳細な説明には、上記「1(2)(a)及び(b)」で示した記載に加えて、以下の事項が記載されている。
(a)「【0007】
しかしながら、特許文献1の発明のアクリル系樹脂粒子は、体積基準の粒子径のCV値(変動係数)が34.9?37.4%であり(実施例1?3)、特許文献2に記載されているビニル重合体微粒子は、体積基準の粒子径の変動係数が30%以上であり(請求項1)、何れも体積基準の粒子径のCV値が30%以上の重合体粒子であるので、小粒子(平均粒子径よりもずっと小さい粒子径を有する重合体粒子)の割合や大粒子(平均粒子径よりもずっと大きい粒子径を有する重合体粒子)の割合が多い。・・・
【0012】
また、本発明の重合体粒子は、体積基準の粒子径分布の変動係数が25%以下であるために、周囲の小粒子を巻き込んで凝集の起点となって欠陥となることが多い大粒子の割合が少ないことから、凝集が起こりにくく、均一分散性に優れている。例えば、本発明の重合体粒子をバインダー及び溶剤の中に分散させた塗工液をフィルム基材上に塗工し乾燥して光拡散フィルムや防眩フィルム等の光学フィルムを製造するときに、塗工及び乾燥時の凝集が抑制され、透過欠陥等の欠陥が発生することを抑制できる。
【0013】
また、本発明の重合体粒子は、体積基準の粒子径分布の変動係数が13%以上であるために、本発明の重合体粒子をバインダーや溶剤の中に分散させた塗工液をフィルム基材上に塗工して光拡散フィルムや防眩フィルム等の光学フィルムを製造するときに、平均粒子径付近の粒子径を有する重合体粒子間を埋める小粒子が十分な量存在するため、透過欠陥の発生を抑制できる。
【0014】
また、本発明の重合体粒子は、光学部材用光拡散剤として使用した場合、体積基準の粒子径分布の変動係数が15.0%以上であることにより良好な光拡散性を有する光学部材を実現でき、体積基準の粒子径分布の変動係数が25.0%以下であることにより良好な光透過性を有する光学部材を実現できる。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、本発明の重合体粒子を含むことを特徴としている。本発明の樹脂組成物は、均一分散性に優れた本発明の重合体粒子を含むものであるから、均一分散性に優れている。」

(b)「【0027】
前記重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量は、10?250×10^(-5)g/m^(2)であることが好ましく、10?200×10^(-5)g/m^(2)であることがより好ましい。また、重合体粒子の体積平均粒子径が8μm超30μm以下である場合、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量は、10?150×10^(-5)g/m^(2)であることがさらに好ましく、10?100×10^(-5)g/m^(2)であることが最も好ましい。前記重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が前記範囲の上限以下であることにより、上記重合体粒子の均一分散性をさらに向上させることができる。また、前記重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が前記範囲の下限未満である重合体粒子を製造することは困難である。」

(c)「【0044】
〔重合体粒子の製造方法〕
本発明の重合体粒子は、例えば、水性媒体中、界面活性剤の存在下でビニル系単量体を重合させることによって体積基準の粒子径分布の変動係数が25.0%超の重合体粒子を得た後、体積基準の粒子径分布の変動係数が13.0%以上25.0%以下となるように重合体粒子を分級する製造方法によって製造できる。上記製造方法によれば、分級の際に、重合体粒子同士の表面に存在する乳化重合生成等の微小粒子の含有量が少なくなることで、非揮発成分の濃度が3.5重量%未満である本発明の重合体粒子が得られる。」

(d)「【0061】
ビニル系単量体の重合法としては、液状の媒体と界面活性剤を使用する公知の重合方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、シード重合、乳化重合、懸濁重合等の方法が挙げられる。これら重合法のうち、体積基準の粒子径分布の変動係数が13.0%以上25.0%以下の重合体粒子が得られ易いことから、懸濁重合が最も好ましい。
【0062】
上記懸濁重合とは、ビニル系単量体と水等の水性媒体とを機械的に攪拌して、ビニル系単量体を水性媒体中に懸濁させて重合させる重合法である。上記懸濁重合には、粒子径が小さく、かつ粒子径が比較的整った重合体粒子を得ることができるという特徴がある。懸濁重合においては、体積基準の粒子径分布の変動係数が13.0%以上25.0%以下の重合体粒子が得られ易いことから、することが好ましい。
【0063】
重合終了後、必要に応じて、酸(例えば塩酸)を添加して可溶性の難水溶性無機化合物からなる分散剤を溶解する溶解工程、濾過工程のような固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程、及び粉砕工程を行ってから、分級を行うことにより、本発明の重合体粒子を得ることができる。上記体積平均粒子径が2μm以上4μm以下の重合体粒子を製造する場合には、上記溶解工程の後に上記固液分離(脱液)工程を行って得たケーキを水でリスラリーしたものに、更に酸(例えば塩酸)を添加した後に水で洗浄してもよい。これにより、分散剤及び分散剤由来の無機物を十分に除去できると共に乳化重合生成物等の微小粒子の含有量を低減でき、非揮発成分の濃度が3.5重量%未満である本発明の重合体粒子が得られやすくなる。
【0064】
前記洗浄工程において使用する洗浄液としては、水性媒体が好ましく、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール等の低級アルコール(炭素数5以下のアルコール);水と低級アルコールとの混合物等が挙げられるが、上記重合工程で使用した媒体と同様のものを用いることが好ましい。前記洗浄工程で用いる洗浄液の重量は、重合体粒子の重量の2倍以上であることが好ましく、重合体粒子の重量の4倍以上であることがより好ましい。これにより、非揮発成分濃度が3.5重量%未満である本発明の重合体粒子が得られやすくなり、また、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が少ない本発明の重合体粒子(特に10?250×10^(-5)g/m^(2)である本発明の重合体粒子)が得られやすくなる。
【0065】
重合体粒子の分級方法としては、分級によって小粒子及び大粒子を除去することができれば、特に限定されず、例えば、気流分級(風力分級)、スクリーン分級(篩分級)などが挙げられ、小さな粒子径を有する重合体粒子を目詰まりを生じさせることなく分級することができるので、気流分級が好ましい。気流分級とは、空気の流れを利用して粒子を分級する方法をいう。スクリーン分級とは、スクリーン上に粒子を供給し、スクリーンを振動させることによって、スクリーン上の粒子を、スクリーンの網目を通過する粒子と通過しない粒子とに分級する方法をいう。
【0066】
上記気流分級としては、(1)重合体粒子を空気の流れにのせて、重合体粒子をスクリーンに衝突させ、スクリーンの網目を通過する重合体粒子と通過しない重合体粒子とに分級する方法、(2)重合体粒子を旋回気流の流れにのせて、旋回気流により重合体粒子に与えられる遠心力と、気流の旋回中心に向かう気流の流れとの相互作用によって大小二つの粒子径のグループに分級する方法、(3)コアンダ効果を利用した分級方法が挙げられる。上記(1)の気流分級を行う気流分級機としては、例えば、ユーグロップ株式会社から商品名「ブロワシフター」、東洋ハイテック株式会社から商品名「ハイボルター」、槇野産業株式会社から商品名「ミクロシフター」にて市販されている気流分級機が挙げられる。上記(2)の気流分級を行う気流分級機としては、日清エンジニアリング株式会社から商品名「ターボクラシファイア(登録商標)」、株式会社セイシン企業から商品名「スペディック・クラシファイアー」にて市販されている気流分級機が挙げられる。上記(3)の気流分級を行う気流分級機としては、株式会社マツボーから市販されているコアンダ型気流分級機(エルボージェット分級機)が挙げられる。上記3つの分級方法は、分級する重合体粒子の性状や、目的とする粗大粒子除去レベル及び微粒子除去レベルによって使い分けることができる。重合体粒子の付着性が高い場合及び粗大粒子の除去精度及び微粒子除去レベルを高めたい場合には、(2)の気流分級機を用いることが好ましい。」

(e)「【実施例】
【0102】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。まず、以下の重合体粒子の製造例の一部で使用した種粒子の体積平均粒子径、以下の重合体粒子の製造例で得られた重合体粒子の各種特性値、並びに以下の実施例及び比較例で得られた重合体粒子の各種特性値の測定方法を説明する。
【0103】
〔重合体粒子の体積平均粒子径及び個数平均粒子径、並びに体積基準の粒子径分布の変動係数及び個数基準の粒子径の変動係数の測定方法〕
重合体粒子の体積平均粒子径(体積基準の平均粒子径)及び個数平均粒子径(個数基準の平均粒子径)は、コールターMultisizer^(TM)3(ベックマン・コールター株式会社製測定装置)により測定する。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizer^(TM)3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施するものとする。
【0104】
なお、測定に用いるアパチャーは、測定する重合体粒子の大きさによって、適宜選択する。Current(アパチャー電流)及びGain(ゲイン)は、選択したアパチャーのサイズによって、適宜設定する。例えば、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-800、Gain(ゲイン)は4と設定する。
【0105】
測定用試料としては、重合体粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT-31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS-150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、重合体粒子の体積基準の粒度分布及び体積平均粒子径、並びに個数基準の粒度分布及び個数平均粒子径を10万個測定した時点で測定を終了する。重合体粒子の体積平均粒子径は、10万個の重合体粒子の体積基準の粒度分布における算術平均である。重合体粒子の個数平均粒子径は、10万個の重合体粒子の個数基準の粒度分布における算術平均である。
【0106】
重合体粒子の体積基準の粒子径分布の変動係数(以下、「体積基準CV値」と称する)及び個数基準の粒子径分布の変動係数(以下、「個数基準CV値」と称する)は、以下の数式によって算出する。
【0107】
重合体粒子の体積基準CV値=(重合体粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差÷重合体粒子の体積平均粒子径)×100
重合体粒子の個数基準CV値=(重合体粒子の個数基準の粒度分布の標準偏差÷重合体粒子の個数平均粒子径)×100
・・・
【0144】
〔重合体粒子の製造例1〕
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてのメタクリル酸メチル90重量部及び多官能ビニル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート10重量部並びに重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.4重量部からなる単量体組成物と、水性媒体としての脱イオン水200重量部と、酸可溶性の難水溶性無機化合物からなる分散安定剤としての複分解ピロリン酸マグネシウム(複分解生成法により得られたピロリン酸マグネシウム)5重量部と、界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05重量部及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸ナトリウム0.05重量部とを、高速乳化・分散機(プライミクス株式会社製、商品名「ホモミクサーMARK II 2.5型」)に供給して、液滴径が15μm程度になるように調整、混合した。これにより、単量体組成物が脱イオン水中に均一に分散した分散液を得た。
【0145】
攪拌機及び温度計が配設された重合反応器に上記分散液を供給し、撹拌機で攪拌しながら70℃にて3時間にわたって懸濁重合し、重合体粒子としての架橋ポリメタクリル酸メチル粒子が水中に分散した懸濁液が得られた。
【0146】
この懸濁液に塩酸を添加し、分散安定剤(複分解ピロリン酸マグネシウム)を溶解した。その後、内部バスケットに濾布を配設した遠心分離方式の脱水装置へ懸濁液を供給して遠心効果が700Gとなるようにバスケットを30分間回転させて脱液し、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含むケーキを得た。その後、遠心効果が700Gとなるようにバスケットを回転させながら脱イオン水500重量部をバスケット内へ供給して30分間かけてケーキを洗浄し、さらにバスケットの回転を60分間続けて、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含むケーキを得た。得られたケーキを乾燥して、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0147】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、体積平均粒子径が14.4μm、体積基準の粒子径分布の変動係数が44.3%、個数平均粒子径が7.5μm、個数基準の粒子径分布の変動係数が55.8%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が1.26、体積基準最大粒子径が60.8μmであった。
【0148】
〔重合体粒子の製造例2〕
ラウリル硫酸ナトリウムの量を0.2重量部に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸ナトリウムの量を0.25重量部にそれぞれ変更したこと以外は、重合体粒子の製造例1と同様にして、重合体粒子としての架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0149】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、体積平均粒子径が6.2μm、体積基準CV値が48.6%、個数平均粒子径が3.9μm、個数基準CV値が43.4%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が0.89、体積基準最大粒子径が29.6μmであった。
【0150】
〔重合体粒子の製造例3〕
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてのメタクリル酸メチル70重量部、多官能ビニル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート30重量部、重合開始剤としての2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8重量部及び過酸化ベンゾイル0.4重量部、分子量調整剤(連鎖移動剤)としてのn-ドデシルメルカプタン0.3重量部、並びに酸化防止剤としてのペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:「SONGNOX(登録商標)1010」、ソンウォン・インダストリアル社製)0.4重量部からなる単量体組成物と、水性媒体としての脱イオン水297重量部と、酸可溶性の難水溶性無機化合物からなる分散安定剤としての複分解ピロリン酸マグネシウム8.6重量部と、界面活性剤としてのポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸ナトリウム0.28重量部とを、高速乳化・分散機(プライミクス株式会社製、商品名「ホモミクサーMARK II 2.5型」)に供給して、液滴径が3μm程度になるように混合した。これにより、脱イオン水中に単量体組成物が液滴径3μm程度の液滴として均一に分散した一次懸濁液を得た。さらに、この一次懸濁液を懸濁液分散具(ナノマイザー株式会社製、商品名「LNP-20/300」)を取り付けた高圧型分散装置(ナノマイザー株式会社製、商品名「ナノマイザー(登録商標)LA-33」)に投入し、29.4MPaの高圧下にて衝撃力を加えて単量体組成物の液滴を微細化させて、二次懸濁液を得た。
【0151】
攪拌機及び温度計が配設された重合反応器に上記二次懸濁液を供給し、攪拌機で攪拌しながら70℃にて3時間にわたって懸濁重合し、重合体粒子としての架橋ポリメタクリル酸メチル粒子が水中に分散した懸濁液が得られた。
【0152】
この懸濁液に塩酸水溶液を添加してピロリン酸マグネシウムを溶解した後に遠心効果1000Gで10分間遠心濾過することにより脱液して得たケーキを300重量部の水でリスラリーしたものに、更に塩酸水溶液を添加して、系のpHが強酸領域となるように調整した。その後、濾布が配設されたバスケットを内部に備える遠心分離方式の脱水装置へ上記懸濁液を供給して遠心効果が1000Gとなるようにバスケットを30分間回転させて脱液した後に、遠心効果が1000Gとなるようにバスケットを回転させながら脱イオン水900重量部をバスケット内へ供給して30分間かけて洗浄を行い、さらにバスケットの回転を60分間続けて、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含むケーキを得た。得られたケーキを乾燥して、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0153】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、体積平均粒子径が2.8μm、体積基準CV値が32.0%、個数平均粒子径が2.6μm、個数基準CV値が30.0%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が0.94、体積基準最大粒子径が18.5μmであった。
【0154】
〔重合体粒子の製造例4〕
複分解ピロリン酸マグネシウムの量を4重量部に、ラウリル硫酸ナトリウムの量を0.05重量部に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸ナトリウムの量を0.03重量部にそれぞれ変更したこと、及び「ホモミクサーMARK II 2.5型」で液滴径を18μm程度に調整したこと以外は、重合体粒子の製造例1と同様にして、重合体粒子としての架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0155】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の体積平均粒子径は17.7μm、体積基準CV値は38.9%、個数平均粒子径は7.8μm、個数基準CV値は66.5%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)は1.71、体積基準最大粒子径は59.2μmであった。
【0156】
〔重合体粒子の製造例5〕
スチレン系単量体としてのスチレン10重量部を単量体組成物に添加したこと、メタクリル酸メチルの量を80重量部に、複分解ピロリン酸マグネシウムの量を6.5重量部に、ラウリル硫酸ナトリウムの量を0.25重量部に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸ナトリウムの量を0.25重量部にそれぞれ変更したこと、及び「ホモミクサーMARK II 2.5型」で液滴径を4μm程度に調整したこと、懸濁重合を8時間にわたって行ったこと以外は、重合体粒子の製造例1と同様にして、重合体粒子としての架橋メタクリル酸メチル-スチレン共重合体粒子を得た。
【0157】
得られた架橋メタクリル酸メチル-スチレン共重合体粒子は、体積平均粒子径が4.4μm、体積基準の粒子径分布の変動係数が47.2%、個数平均粒子径が3.1μm、個数基準の粒子径分布の変動係数が40.9%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が0.87、体積基準最大粒子径が20.7μmであった。
【0158】
〔重合体粒子の製造例6〕
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてのメタクリル酸メチル95重量部、多官能ビニル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート5重量部、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.5重量部、水性媒体としての脱イオン水300重量部と、酸可溶性の難水溶性無機化合物からなる分散安定剤としての複分解ピロリン酸マグネシウム5重量部と、界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.15重量部及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸ナトリウム0.10重量部とを、高速乳化・分散機(プライミクス株式会社製、商品名「ホモミクサーMARK II 2.5型」)に供給して、液滴径が8μm程度になるように混合した。これにより、脱イオン水中に単量体組成物が液滴径8μm程度の液滴として均一に分散した一次懸濁液を得た。さらに、この一次懸濁液を懸濁液分散具(ナノマイザー株式会社製、商品名「LNP-20/300」)を取り付けた高圧型分散装置(ナノマイザー株式会社製、商品名「ナノマイザー(登録商標)LA-33」)に投入し、29.4MPaの高圧下にて衝撃力を加えて単量体組成物の液滴を微細化させて、二次懸濁液を得た。
【0159】
攪拌機及び温度計が配設された重合反応器に上記二次懸濁液を供給し、攪拌機で攪拌しながら70℃にて3時間にわたって懸濁重合し、重合体粒子としての架橋ポリメタクリル酸メチル粒子が水中に分散した懸濁液が得られた。
【0160】
この懸濁液に塩酸を添加し、複分解ピロリン酸マグネシウムを溶解した。その後、内部バスケットに濾布を配設した遠心分離方式の脱水装置へ懸濁液を供給して遠心効果が700Gとなるようにバスケットを30分間回転させて脱液し、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含むケーキを得た。その後、遠心効果が700Gとなるようにバスケットを回転させながら脱イオン水500重量部をバスケット内へ供給して30分間かけてケーキを洗浄し、さらにバスケットの回転を60分間続けて、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含むケーキを得た。得られたケーキを乾燥して、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0161】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、体積平均粒子径が8.4μm、体積基準CV値が25.7%、個数平均粒子径が6.0μm、個数基準CV値が37.1%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が1.44、体積基準最大粒子径が29.0μmであった。
【0162】
〔重合体粒子の製造例7〕
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてメタクリル酸メチルに代えてアクリル酸ブチルを使用したこと、多官能ビニル系単量体としてエチレングリコールジメタクリレートに代えてポリエチレングリコール(600)ジメタクリレートを使用したこと、複分解ピロリン酸マグネシウムの量を3.5重量部に、ラウリル硫酸ナトリウムの量を0.04重量部に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸ナトリウムの量を0.03重量部にそれぞれ変更したこと、及び「ホモミクサーMARK II 2.5型」で液滴径を30μm程度に調整したこと以外は、重合体粒子の製造例1と同様にして、重合体粒子としての架橋ポリアクリル酸ブチル粒子を得た。
【0163】
得られたポリアクリル酸ブチル粒子の体積平均粒子径は29.9μm、体積基準CV値は36.2%、個数平均粒子径は17.1μm、個数基準CV値は42.2%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)は1.17、体積基準最大粒子径は81.3μmであった。
【0164】
〔実施例1〕
重合体粒子の製造例1で得た重合体粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)を分級ローター型気流分級機(商品名「ターボクラシファイア(登録商標)TC-25」、日清エンジニアリング株式会社製)へ供給し、分級ローターとして粗粉ローターを使用して、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.5の範囲から逸脱しないように上記分級ローター型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から粗粉(粗大な重合体粒子)を30重量%除去した。続いて、分級ローターとして微粉ローターを使用して、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.0の範囲から逸脱しないように上記分級ローター型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から微粉(微細な重合体粒子)を30重量%除去した。これにより、本発明の重合体粒子の一例としての架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0165】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、体積平均粒子径が13.5μm、体積基準CV値が15.7%、個数平均粒子径が12.0μm、個数基準CV値が24.3%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が1.55、体積基準最大粒子径が24.0μmであった。また、得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、屈折率が1.495、ゲル分率が98.1重量%、非揮発成分濃度が0.5重量%、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が67×10^(-5)g/m^(2)であった。
【0166】
〔実施例2〕
重合体粒子の製造例2で得た重合体粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)をコアンダ型気流分級機(エルボージェット分級機)(形式:EJ-PURO、製造:日鉄鉱業株式会社製、販売:株式会社マツボー)へ供給し、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.5の範囲から逸脱しないように上記コアンダ型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から粗粉を25重量%、微粉を30重量%除去した。これにより、本発明の重合体粒子の一例としての架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0167】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、体積平均粒子径が5.0μm、体積基準CV値が23.6%、個数平均粒子径が4.0μm、個数基準CV値が31.2%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が1.30、体積基準最大粒子径が15.8μmであった。また、得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、屈折率が1.495、ゲル分率が98.3重量%、非揮発成分濃度が3.1重量%、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が225×10^(-5)g/m^(2)であった。
【0168】
〔実施例3〕
重合体粒子の製造例3で得た重合体粒子を分級ローター型気流分級機(商品名「ターボクラシファイア(登録商標)TC-25」、日清エンジニアリング株式会社製)へ供給し、分級ローターとして粗粉ローターを使用して、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.5の範囲から逸脱しないように上記分級ローター型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から粗粉を30重量%除去した。続いて、分級ローターとして微粉ローターを使用して、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.0の範囲から逸脱しないように上記分級ローター型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から微粉を25重量%除去した。これにより、本発明の重合体粒子の一例としての架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0169】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、体積平均粒子径が2.7μm、体積基準CV値が18.1%、個数平均粒子径が2.4μm、個数基準CV値が21.2%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が1.17、体積基準最大粒子径が6.2μmであった。また、得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、屈折率が1.495、ゲル分率が97.9重量%、非揮発成分濃度が0.8重量%、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が180×10^(-5)g/m^(2)であった。また、得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、8μm以上10μm以下の粒子径を有する重合体粒子の個数が30万個カウント中に1個、10μm以上の粒子径を有する重合体粒子の個数が0個であった。
【0170】
〔実施例4〕
重合体粒子の製造例4で得た重合体粒子を、コアンダ型気流分級機(エルボージェット分級機)(形式:EJ-PURO、製造:日鉄鉱業株式会社製、販売:株式会社マツボー)へ供給し、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.5の範囲から逸脱しないように上記コアンダ型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から粗粉を35重量%、微粉を30重量%除去した。これにより、本発明の重合体粒子の一例としての架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0171】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、体積平均粒子径が18.1μm、体積基準CV値が26.2%、個数平均粒子径が13.4μm、個数基準CV値が42.6%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が2.12、体積基準最大粒子径が33.2μmであった。また、得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、屈折率が1.495、ゲル分率が97.8重量%、非揮発成分濃度が1.2重量%、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が64×10^(-5)g/m^(2)であった。
【0172】
〔実施例5〕
重合体粒子の製造例5で得た重合体粒子(架橋メタクリル酸メチル-スチレン共重合体粒子)を分級ローター型気流分級機(商品名「ターボクラシファイア(登録商標)TC-25」、日清エンジニアリング株式会社製)へ供給し、分級ローターとして粗粉ローターを使用して、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.5の範囲から逸脱しないように上記分級ローター型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から粗粉(粗大な重合体粒子)を25重量%除去した。続いて、分級ローターとして微粉ローターを使用して、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.0の範囲から逸脱しないように上記分級ローター型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から微粉(微細な重合体粒子)を25重量%除去した。これにより、本発明の重合体粒子の一例としての架橋メタクリル酸メチル-スチレン共重合体粒子を得た。
【0173】
得られた架橋メタクリル酸メチル-スチレン共重合体粒子は、体積平均粒子径が4.1μm、体積基準CV値が23.7%、個数平均粒子径が3.4μm、個数基準CV値が28.0%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が1.18、体積基準最大粒子径が12.0μmであった。また、得られた架橋メタクリル酸メチル-スチレン共重合体粒子は、屈折率が1.505、ゲル分率が97.2重量%、非揮発成分濃度が1.0重量%、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が98×10^(-5)g/m^(2)であった。
【0174】
〔実施例6〕
重合体粒子の製造例6で得た重合体粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)をコアンダ型気流分級機(エルボージェット分級機)(形式:EJ-PURO、製造:日鉄鉱業株式会社製、販売:株式会社マツボー)へ供給し、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.5の範囲から逸脱しないように上記コアンダ型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から粗粉を10重量%、微粉を10重量%除去した。これにより、本発明の重合体粒子の一例としての架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0175】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、体積平均粒子径が8.0μm、体積基準CV値が24.0%、個数平均粒子径が6.2μm、個数基準CV値が35.0%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が1.46、体積基準最大粒子径が19.0μmであった。また、得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、屈折率が1.495、ゲル分率が97.6重量%、非揮発成分濃度が2.1重量%、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が197×10^(-5)g/m^(2)であった。
【0176】
〔実施例7〕
重合体粒子の製造例7で得た重合体粒子(架橋ポリアクリル酸ブチル粒子)を分級ローター型気流分級機(商品名「ターボクラシファイア(登録商標)TC-25」、日清エンジニアリング株式会社製)へ供給し、分級ローターとして粗粉ローターを使用して、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.5の範囲から逸脱しないように上記分級ローター型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から粗粉を40重量%除去した。続いて、分級ローターとして微粉ローターを使用して、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.0の範囲から逸脱しないように上記分級ローター型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から微粉を25重量%除去した。これにより、本発明の重合体粒子の一例としての架橋ポリアクリル酸ブチル粒子を得た。
【0177】
得られた架橋ポリアクリル酸ブチル粒子は、体積平均粒子径が28.5μm、体積基準CV値が24.5%、個数平均粒子径が18.2μm、個数基準CV値が37.5%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が1.53、体積基準最大粒子径が70.4μmであった。また、得られた架橋ポリアクリル酸ブチル粒子は、屈折率が1.495、ゲル分率が98.1重量%、非揮発成分濃度が0.4重量%、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が44×10^(-5)g/m^(2)であった。
【0178】
〔比較例1〕
重合体粒子の製造例1で得た重合体粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)を分級ローター型気流分級機(商品名「ターボクラシファイア(登録商標)TC-25」、日清エンジニアリング株式会社製)へ供給し、分級ローターとして粗粉ローターを使用して、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.5の範囲から逸脱しないように上記分級ローター型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から粗粉を10重量%除去した。続いて、分級ローターとして微粉ローターを使用して、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.0の範囲から逸脱しないように上記分級ローター型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から微粉を10重量%除去した。これにより、比較用の重合体粒子としての架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0179】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、体積平均粒子径が13.9μm、体積基準CV値が34.3%、個数平均粒子径が7.5μm、個数基準CV値が55.5%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が1.62、体積基準最大粒子径が30.2μmであった。また、得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、屈折率が1.495、ゲル分率が98.3重量%、非揮発成分濃度が3.5重量%より多く、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が91×10^(-5)g/m^(2)であった。
【0180】
〔比較例2〕
重合体粒子の製造例2で得た重合体粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)をコアンダ型気流分級機(エルボージェット分級機)(形式:EJ-PURO、製造:日鉄鉱業株式会社製、販売:株式会社マツボー)へ供給し、個数基準CV値/体積基準CV値が1.0?3.5の範囲から逸脱しないように上記コアンダ型気流分級機により分級を行うことで、重合体粒子から粗粉を10重量%、微粉を10重量%除去した。これにより、比較用の重合体粒子としての架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0181】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、体積平均粒子径が5.9μm、体積基準CV値が32.0%、個数平均粒子径が3.9μm、個数基準CV値が43.1%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が1.35、体積基準最大粒子径が15.3μmであった。また、得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、屈折率が1.495、ゲル分率が98.4重量%、非揮発成分濃度が3.5重量%より多く、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が250×10^(-5)g/m^(2)であった。
【0182】
〔比較例3〕
重合体粒子の製造例3で得た重合体粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)を、ブロースルー式高性能ふるい機(商品名「ハイボルター」、東洋ハイテック株式会社製)へ供給し、上記ブロースルー式高性能ふるい機により分級を行うことで、重合体粒子から粗粉を5重量%除去すると共に微粉を除去した。微粉は、バグフィルターで回収した。これにより、比較用の重合体粒子としての架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0183】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、体積平均粒子径が2.8μm、体積基準CV値が26.2%、個数平均粒子径が2.5μm、個数基準CV値が28.5%、(個数基準CV値)/(体積基準CV値)が1.08、体積基準最大粒子径が14.8μmであった。また、得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、屈折率が1.495、ゲル分率が97.5重量%、非揮発成分濃度が0.9重量%、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が183×10^(-5)g/m^(2)であった。
【0184】
以上の各実施例及び比較例について、得られた体積基準の平均粒子径(体積平均粒子径)、体積基準CV値、個数基準の平均粒子径(個数平均粒子径)、個数基準CV値/体積基準CV値、体積基準最大粒子径、屈折率、ゲル分率、非揮発成分濃度、及び重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量を表1にまとめて示す。
【0185】
【表1】

【0186】
〔実施例8:光拡散フィルムの製造例〕
実施例1で得られた重合体粒子250重量部と、バインダー樹脂としてのアクリルポリオール(アクリディックA-801、固形分50重量%)180重量部及びポリイソシアネート(タケネートD110N、固形分60重量%)50重量部と、有機溶剤としてのトルエン300質量部及びメチルエチルケトン330質量部とをよく混合し、フィルム基材としての厚さ100μmのPETフィルム上へダイコート法により塗工して厚さ20μmの塗膜を形成し、光拡散フィルムを作製した。作製された光拡散フィルムは、重合体粒子が全面にわたり均一分散した、透過欠陥がない良好なものであった。
【0187】
〔実施例9:光拡散フィルムの製造例〕
実施例1で得られた重合体粒子に代えて実施例2で得られた重合体粒子を使用したこと以外は実施例1と同様にして、光拡散フィルムを作製した。作製された光拡散フィルムは、重合体粒子が全面にわたり均一分散した、透過欠陥がない良好なものであった。
【0188】
〔実施例10:光拡散フィルムの製造例〕
実施例1で得られた重合体粒子に代えて実施例3で得られた重合体粒子を使用したこと以外は実施例1と同様にして、光拡散フィルムを作製した。作製された光拡散フィルムは、重合体粒子が全面にわたり均一分散した、透過欠陥がない良好なものであった。
【0189】
〔実施例11:光拡散フィルムの製造例〕
実施例1で得られた重合体粒子に代えて実施例4で得られた重合体粒子を使用したこと以外は実施例1と同様にして、光拡散フィルムを作製した。作製された光拡散フィルムは、重合体粒子が全面にわたり均一分散した、透過欠陥がない良好なものであった。
【0190】
〔実施例12:光拡散フィルムの製造例〕
実施例1で得られた重合体粒子に代えて実施例5で得られた重合体粒子を使用したこと以外は実施例1と同様にして、光拡散フィルムを作製した。作製された光拡散フィルムは、重合体粒子が全面にわたり均一分散した、透過欠陥がない良好なものであった。
【0191】
〔実施例13:光拡散フィルムの製造例〕
実施例1で得られた重合体粒子に代えて実施例6で得られた重合体粒子を使用したこと以外は実施例1と同様にして、光拡散フィルムを作製した。作製された光拡散フィルムは、重合体粒子が全面にわたり均一分散した、透過欠陥がない良好なものであった。
【0192】
〔実施例14:光拡散フィルムの製造例〕
実施例1で得られた重合体粒子に代えて実施例7で得られた重合体粒子を使用したこと以外は実施例1と同様にして、光拡散フィルムを作製した。作製された光拡散フィルムは、重合体粒子が全面にわたり均一分散した、透過欠陥がない良好なものであった。
【0193】
〔比較例4:光拡散フィルムの比較製造例〕
実施例1で得られた重合体粒子に代えて比較例1で得られた重合体粒子を使用したこと以外は実施例1と同様にして、光拡散フィルムを作製した。作製された光拡散フィルムは、重合体粒子が一部不均一に分散しており、透過欠陥が発生していた。
【0194】
〔比較例5:光拡散フィルムの比較製造例〕
実施例1で得られた重合体粒子に代えて比較例2で得られた重合体粒子を使用したこと以外は実施例1と同様にして、光拡散フィルムを作製した。作製された光拡散フィルムは、重合体粒子が一部不均一に分散しており、透過欠陥が発生していた。
【0195】
〔比較例6:光拡散フィルムの比較製造例〕
実施例1で得られた重合体粒子に代えて比較例3で得られた重合体粒子を使用したこと以外は実施例1と同様にして、光拡散フィルムを作製した。作製された光拡散フィルムは、重合体粒子が一部不均一に分散しており、透過欠陥が発生していた。
【0196】
以上のように、体積基準の粒子径分布の変動係数が25.0%超(具体的には26.2?34.3%)である比較例1?3の重合体粒子を用いた光拡散フィルムは、透過欠陥が発生していたのに対し、体積基準の粒子径分布の変動係数が13.0%以上25.0%以下(具体的には15.7?24.5%)である実施例1?7の重合体粒子を用いた光拡散フィルムは、透過欠陥がない良好なものであった。また、非揮発成分の濃度が3.5重量%超である比較例1及び2の重合体粒子を用いた光拡散フィルムは、透過欠陥が発生していたのに対し、非揮発成分の濃度が3.5重量%未満(具体的には0.4?3.1重量%)である実施例1?7の重合体粒子を用いた光拡散フィルムは、透過欠陥がない良好なものであった。
【0197】
〔実施例15:ボディローションの製造例〕
実施例6で得られた重合体粒子3重量部と、分散媒としてのエタノール50重量部と、抗炎症剤としてのグリチルリチン酸0.1重量部と、分散媒としての精製水46.4重量部と、香料0.5重量部とをミキサーにて十分に混合して、外用剤としてのボディローションを得た。
【0198】
得られたボディローションは、肌に塗布する際の滑りに優れ、滑らかで使用感に優れたものであった。また、ボディローションは、使用の際に軽く振るだけで沈降している樹脂粒子が容易に再分散し、使用性に優れるものであった。
【0199】
〔実施例16:プレシェーブローションの製造例〕
実施例6で得られた重合体粒子4重量部と、分散溶媒としてのエタノール91重量部と、分散媒としての1,3-ブチレングリコール5.0重量部と、エチルヘキサン酸セチル2.0重量部と、香料(適量)とをミキサーにて十分に混合して、外用剤としてのプレシェーブローションを得た。
【0200】
得られたプレシェーブローションは、肌に塗布する際の滑りに優れ、滑らかで使用感に優れたものであった。また、プレシェーブローションは、使用の際に軽く振るだけで沈降している樹脂粒子が容易に再分散し、使用性に優れるものであった。
【0201】
〔実施例17:パウダーファンデーションの製造例〕
実施例6で得られた重合体粒子15重量部と、粘土鉱物類としてのセリサイト21重量部と、粘土鉱物類としての白雲母51重量部と、色材原料としての赤色酸化鉄0.6重量部と、色材原料としての黄色酸化鉄1重量部と、色材原料としての黒色酸化鉄0.1重量部とをヘンシェルミキサーで混合し、混合物を得る。次いで、前記混合物に、脂肪酸エステルとしての2-エチルヘキサン酸セチル10重量部と、界面活性剤としてのソルビタンセスキオレエート1重量部と、防腐剤0.2重量部とを混合溶解したものを加えて均一に混合し、得られた混合物に、さらに香料0.1重量部を加えて混合した後、粉砕し、この粉砕物を篩いに通した。そして、前記篩いを通過した粉砕物を金皿に圧縮成型してパウダーファンデーションを得た。
【0202】
得られたパウダーファンデーションは、肌に塗布する際の滑りに優れ、滑らかで使用感に優れたものであった。
【0203】
〔実施例18:乳化型ファンデーションの製造例〕
実施例6で得られた重合体粒子20.0重量部と、粘土鉱物類としてのセリサイト6.0重量部と、二酸化チタン3.0重量部と、顔料(適量)とをニーダーで混合し、粉末部を調製した。
【0204】
そして、粉末部とは別に、分散媒としての精製水50.2重量部に、保湿剤としてのポリエチレングリコール(ポリエチレングリコール4000)5.0重量部と、pH調整剤としてのトリエタノールアミン1.0重量部と、保湿剤としてのプロピレングリコール5.0重量部と、粘土鉱物類としてのケイ酸マグネシウムアルミニウム(商品名「VEEGUM(登録商標)」、バンダービルト社製)0.5重量部とを加え加熱溶解した。これにより得られた溶液に先に調製した前記粉末部を加え、ホモミクサーで粉末を均一に分散させた後、70℃に保温し、水相成分を得た。
【0205】
次いで、前記水相成分とは別に、高級脂肪酸としてのステアリン酸2.0重量部と、高級アルコールとしてのセチルアルコール0.3重量部と、炭化水素としての流動パラフィン20.0重量部と、香料(適量)と、防腐剤(適量)とを混合して加熱溶解した後、70℃に保温し、油相成分を得た。
【0206】
得られた油相成分に前記水相成分を加えて、予備乳化を行い、ホモミクサーで均一に乳化・分散後、かきまぜながら冷却させて乳化型ファンデーションを得た。
【0207】
得られた乳化型ファンデーションは、肌に塗布する際の滑りに優れ、滑らかで使用感に優れたものであった。
【0208】
〔実施例19:ルースパウダーの製造例〕
実施例6で得られた重合体粒子21.0重量部と、粘土鉱物類としてのマイカ30.0重量部と、粘土鉱物類としてのセリサイト30.0重量部と、粘土鉱物類としてのチタンセリサイト9.0重量部と、二酸化チタン8.0重量部と、色材原料としての酸化鉄2.0重量部とをヘンシェルミキサーで混合した後、Retsch社製のロータースピードミルZM-100を用いて、1回粉砕(12本刃ローター使用、1mmスクリーン装着、回転数14000rpm)し、ルースパウダーを得た。
【0209】
得られたルースパウダーは、肌に塗布する際の滑りに優れ、滑らかで使用感に優れたものであった。
【0210】
〔実施例20:ボディパウダーの製造例〕
実施例6で得られた重合体粒子50.0重量部と、粘土鉱物類としてのマイカ25.0重量部と、粘土鉱物類としてのセリサイト25.0重量部とをヘンシェルミキサーで混合した後、Retsch社製のロータースピードミルZM-100を用いて、1回粉砕(12本刃ローター使用、1mmスクリーン装着、回転数14000rpm)し、ボディパウダーを得た。
【0211】
得られたボディパウダーは、肌に塗布する際の滑り、使用感に優れたものであった。
【0212】
〔実施例21:コーティング用樹脂組成物の製造例〕
実施例6で得られた重合体粒子3重量部と、市販の水系樹脂バインダー液(ウレタン系樹脂、固形分30重量%、ALBERDINGK社製、商品名「U330」)20重量部とを遠心攪拌機により3分間攪拌して、分散液を得た。この工程において、重合体粒子は、遠心攪拌機により3分間攪拌することで、水系樹脂バインダーに容易に分散した。
【0213】
そして、得られた前記分散液を3時間放置した後、再び遠心攪拌機により3分間攪拌することによって、コーティング用樹脂組成物(塗料)を得た。
【0214】
得られたコーティング用樹脂組成物は、12時間経過後も振り混ぜるだけで重合体粒子が再分散し、再分散性に優れたものであった。
【0215】
(アクリル板の塗工)
前記コーティング用樹脂組成物を厚み3mmのアクリル板に吹き付け塗工することにより、厚み50μmの艶消し塗膜を作成した。得られた塗膜は、ブツ(突起)も見られず、良好な艶消し性及び触感を有していた。」

(4)当審の判断
ア 本件発明1の要件Cの特定事項と、要件Dの特定事項とを満足する重合体粒子を製造することは、発明の詳細な説明の記載をみても、当業者が容易に実施することはできない、ということについて

(ア)実施可能要件の充足性について
上記「第4」の冒頭で述べたとおり、要件Cは、樹脂微粒子が「体積基準の粒子径分布の変動係数が15.7%以上25.0%以下」であること、要件Dは、樹脂微粒子が「重合体粒子5.0gに水15.0gを添加し、超音波洗浄器を用いて60分間分散処理を行うことにより重合体粒子を水中に分散させ、内径24mmの遠心管に入れて遠心分離機を用いてKファクタ6943、回転時間30分間の条件で遠心分離した後、上澄み液を回収したときに、上澄み液中における非揮発成分の濃度が3.5重量%未満」であることである。

まず、要件Cについて、発明の詳細な説明の記載をみてみる。
発明の詳細な説明の段落【0103】?【0107】には、体積基準の粒子径分布の変動係数が「体積基準CV値」として記載され、体積基準CV値の算出式が、「重合体粒子の体積基準CV値=(重合体粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差÷重合体粒子の体積平均粒子径)×100」と記載されている。そして、同【0007】には、本件発明の課題に記載された先行技術文献には、体積基準の粒子径の変動係数が30%以上であるので、小粒子(平均粒子径よりもずっと小さい粒子径を有する重合体粒子)の割合や大粒子(平均粒子径よりもずっと大きい粒子径を有する重合体粒子)の割合が多いことが記載されている。一方、同【0011】及び【0012】には、本発明の重合体粒子は、体積基準の粒子径分布の変動係数が25%以下であるために小粒子及び大粒子の割合が少ないことが記載され、同【0013】には、本発明の重合体粒子は、体積基準の粒子径分布の変動係数が13%以上であるために平均粒子径付近の粒子径を有する重合体粒子間を埋める小粒子が十分な量存在することが記載されている。
これらの記載によれば、体積基準の粒子径分布の変動係数が15.7%以上25.0%以下であることは、本件発明の重合体粒子を粒子径分布の観点からみると、概略、体積基準の粒子径分布の変動係数が15.7%以上25.0%以下を満たさない小粒子及び大粒子の割合が少ないが、平均粒子径付近の粒子径を有する重合体粒子間を埋めるための小粒子が十分な量存在することを表しているということができる。

この要件Cの製造方法についての一般記載をみてみると、同【0044】には、本件発明の重合体粒子は、例えば、水性媒体中、界面活性剤の存在下でビニル系単量体を重合させることによって体積基準の粒子径分布の変動係数が25.0%超の重合体粒子を得た後、体積基準の粒子径分布の変動係数が13.0%以上25.0%以下となるように重合体粒子を分級する製造方法によって製造できることが記載され、同【0061】及び【0062】には、ビニル系単量体の重合方法として、可溶性の難水溶性無機化合物からなる分散剤を使用した懸濁重合が好ましいことが記載されている。

次に、要件Dについて、発明の詳細な説明の記載をみてみる。
上記1(2)で述べたように、要件Dは、重合体粒子を製造する際に副反応で生成した顕著に小さい粒子径(例えば500nm以下の粒子径)を有する重合体粒子等の微小粒子である非揮発成分の濃度が、特定の測定方法により測定した結果、3.5重量%未満であるといえ、同【0011】の記載によれば、微小粒子の含有量が少ないといえる。

この要件Dの製造方法についての一般記載をみてみると、同【0044】には、例えば、水性媒体中、界面活性剤の存在下でビニル系単量体を重合させることによって体積基準の粒子径分布の変動係数が25.0%超の重合体粒子を得た後、体積基準の粒子径分布の変動係数が13.0%以上25.0%以下となるように重合体粒子を分級する製造方法によって製造できる。上記製造方法によれば、分級の際に、重合体粒子同士の表面に存在する乳化重合生成等の微小粒子の含有量が少なくなることで、非揮発成分の濃度が3.5重量%未満である本発明の重合体粒子が得られることが記載され、同【0063】には、重合終了後に、酸(例えば塩酸)を添加して可溶性の難水溶性無機化合物からなる分散剤を溶解する溶解工程、濾過工程のような固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程、及び粉砕工程を行ってから、分級を行うことが記載され、体積平均粒子径が2μm以上4μm以下の重合体粒子を製造する場合には、上記溶解工程の後に上記固液分離(脱液)工程を行って得たケーキを水でリスラリーしたものに、更に酸(例えば塩酸)を添加した後に水で洗浄することにより、分散剤及び分散剤由来の無機物を十分に除去できると共に乳化重合生成物等の微小粒子の含有量を低減でき、非揮発成分の濃度が3.5重量%未満である本発明の重合体粒子が得られやすくなることが記載され、また同【0064】には、前記洗浄工程で用いる洗浄液の重量は、重合体粒子の重量の2倍以上であることが好ましく、重合体粒子の重量の4倍以上であることがより好ましく、これにより、非揮発成分濃度が3.5重量%未満である本発明の重合体粒子が得られやすくなることが記載されている。

この上で実施例の記載をみてみる。
同【0102】以降の実施例においては、まず、製造例1?7において、可溶性の難水溶性無機化合物からなる分散剤を使用し、各種ビニル系単量体を懸濁重合して架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(製造例1?4、6)、架橋ポリメタクリル酸メチル-スチレン共重合体粒子(製造例5)及び架橋ポリアクリル酸ブチル粒子(製造例7)を製造し、塩酸を添加してピロリン酸マグネシウムを溶解した後、遠心濾過、脱イオン水で洗浄して体積基準の粒子径分布の変動係数が25.0%超の重合体粒子を得て、その後、実施例1?7において、製造例1?7で得られた重合体粒子から粗粉と微粉を除去することにより、要件C及びDを満足する重合体粒子を製造することが具体的に記載されている。

そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分な記載がなされているものと認められる。

(イ)申立人の主張について
a 申立人の主張の内容
申立人は、申立書において、要件Dを満たすことを確認するには、特定の型番の装置を保持するか、他の装置を用いて推測するしかなく、過度の試行錯誤が必要である旨の主張をし(以下「主張(a)」という。)、また、要件C及びDを同時に充足するには過度の試行錯誤が必要である旨を主張する(以下「主張(b)」という。)(申立書第31頁下から3行?第33頁第18行)。

b 申立人の主張の検討
(a)主張(a)について
申立人が説明するように、要件Dを満たすことを確認するには、本件出願時に上市されていた特定の型番の装置を使用するか、上記装置と同様の仕様使用の装置を使用して要件Dで特定された条件を再現するなどして要件Dのとおりに実施することは過度の試行錯誤とは必ずしもいえない。よって、主張(a)は採用できない。

(b)主張(b)について
申立人は、申立書において、要件Dを満たしても要件Cを満たさないことが十分に考えられる、といった仮定を前提に過度の試行錯誤が必要であることを主張しているだけであって、何ら証拠に基づく主張ではない。そして、上記(4)アで述べたように、要件C及びDは、重合体粒子に対するそれぞれの特定であり、技術的に矛盾する特定ではなく、本件発明の詳細な説明の実施例に記載されているように、要件C及びDの両者を満たす重合体粒子は製造できているから、上記仮定を前提とした主張はその前提において誤りである。よって、主張(b)は採用できない。

(ウ)小括
したがって、申立人がする理由アは、理由がない。

イ 発明の詳細な説明の段落【0027】には、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量は、10?250×10^(-5)g/m^(2)であることが好ましい旨の記載がされ、また、前記重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が前記範囲の下限未満である重合体粒子を製造することは困難であることが記載されているから、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が特定されていない本件発明1、3?19の「界面活性剤を含有する」重合体粒子を製造することは、当業者であっても容易に実施することはできないということについて

(ア)判断
本件発明1は、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量は特定されない発明であるところ、発明の詳細な説明の段落【0027】には、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量は、10?250×10^(-5)g/m^(2)であることが好ましいことが記載され、そして、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が前記範囲の下限未満である重合体粒子を製造することは困難であることが記載されている。

しかしながら、上記記載は、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が前記範囲の下限未満である重合体粒子を製造することは困難であると記載があるだけで、製造できないことを述べたものではない。そして、同【0064】には、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が少ない本発明の重合体粒子(特に10?250×10^(-5)g/m^(2)である本発明の重合体粒子)が得られやすくなる方法が記載され、同【0102】以降の実施例においては、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が10?250×10^(-5)g/m^(2)である具体例が記載されている。
そうすると、以上の記載をみた当業者であれば、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が10×10^(-5)g/m^(2)以下であっても製造できるということができる。
一方、申立人は具体的な証拠を挙げて製造できないことを述べるものではない。

(イ)小括
したがって、申立人がする理由イは、理由がない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、申立理由2によっては、本件発明1?19に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立理由3について
(1)サポート要件の考え方について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。

(2)特許請求の範囲の記載
上記「第2」に記載したとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明には、上記「1(2)(a)及び(b)」及び「2(3)」で示した事項が記載されている。

(4)本件発明の課題について
本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】及び発明の詳細な説明全体の記載からみて、本件発明1?19の課題は、均一分散性に優れた重合体粒子並びにそれを用いた樹脂組成物、光学フィルム、及び外用剤を提供することであると認める。

(5)サポート要件の充足性について
ア 申立人が申立書で述べる申立理由について検討する前に、まず、ここでは、本件発明1が本件発明1の課題を解決できると認識できるかについて検討する。
本件発明1は、概略、界面活性剤を含有する重合体粒子であって、要件C及び要件Dの特定を満足する重合体粒子である。そして、本件発明1の課題は、上記(4)で述べたとおり、均一分散性に優れた重合体粒子を提供することである。

このことについて、発明の詳細な説明の段落【0011】及び【0012】には、要件C及び要件Dを満足することにより、重合体粒子の均一分散性が優れることが記載されており、同【0015】には、本件発明の重合体粒子は均一分散性に優れる旨の記載がされており、また、同【0186】?【0192】に記載された実施例8?14には、本件発明1の特定を満足する重合体粒子を使用した光拡散フィルムは、「重合体粒子が均一分散した、透過欠陥がない良好なものであった」ことが記載されている。
以上の記載によれば、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により本件発明の課題が解決できたと認識できる範囲であるといえる。
また、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2?19も発明の詳細な説明の記載により本件発明の課題が解決できたと認識できる範囲であるといえる。

イ 効果に影響を与える要素が揃えられた実施例、比較例の実験データでないと課題が解決できたことを確認できないということを前提として、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例では、本件発明の課題が解決できたことについて明確な評価基準が記載されておらず、また、本件発明の課題に関係する体積基準の平均粒子径等の条件が揃えられていないから、要件C及び要件Dの特定を満足する重合体粒子が本件発明の課題を解決できたとする根拠がないという主張について

(ア)判断
本件明細書をみるかぎり、本件発明において明確な評価基準がないと本件発明の課題が解決できたことが確認できないという理由は見当たらず、また、申立人も具体的な理由を述べていない。そして、申立人が挙げた知財高裁の判決(平成28年(行ケ)第10147号)の対象となった特許は本件発明と技術内容が異なるので、そのまま本件発明に当てはめることはできない。
さらに、申立人が主張する効果に影響を与える要素について検討すると、確かに、同【0027】には、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量が250×10^(-5)g/m^(2)以下であることにより、上記重合体粒子の均一分散性をさらに向上させることができること、同【0040】には、体積基準の粒子径分布における最大粒子径が体積平均粒子径の3.5倍以下であることで、重合体粒子の均一分散性をさらに向上させることができること、同【0041】には、本発明の重合体粒子は、体積平均粒子径が2μm以上4μm以下である場合、8μm以上10μm以下の粒子径を有する重合体粒子の個数が30万個中2個以下であると、重合体粒子の均一分散性をさらに向上させることができることが記載されている。
しかしながら、これらの記載は、重合体粒子の均一分散性をさらに向上させることができる場合の重合体粒子の特性が記載されているのであり、これらの特性がない本件発明1では、課題を解決できると認識できないことを記載するものではない。そして、これらの特性を揃えないと課題が解決できたことを確認できない理由はない。

(イ)小括
したがって、申立人がする上記主張は、理由がない。

ウ 本件発明1の重合体粒子が要件Cで特定されることについて、発明の詳細な説明の記載や審査段階で提出された実験成績証明書の記載をみてもサポート要件を満たすとはいえず、また、本件発明1は、重合体粒子の粒子径や実施例に記載された粗粉及び微粉を除去ことに関する特定がないから、本件発明1はサポート要件を満たさないという主張について

(ア)判断
ここで、申立人が指摘する発明の詳細な説明の記載をみていくが、段落【0011】及び【0012】には、本件発明の重合体粒子は体積基準の粒子径分布の変動係数が25%以下であるために小粒子及び大粒子の割合が少ないことから、他の材料中への重合体粒子の均一分散性に優れていることが記載されており、これは要件Cの上限を満たすことで本件発明1の課題を解決できることを示す記載である。
また、同【0013】には、本件発明の重合体粒子は、体積基準の粒子径分布の変動係数が13%以上であるために、本発明の重合体粒子を含む塗工液をフィルム基材上に塗工して光学フィルムを製造するときに、平均粒子径付近の粒子径を有する重合体粒子間を埋める小粒子が十分な量存在するため、透過欠陥の発生を抑制できることが記載されている。
確かにこの記載は、小粒子が十分な量存在することを前提とする記載であり、申立人が主張するとおり、上記【0011】及び【0012】の小粒子の割合が少ないから均一分散性に優れるという記載と矛盾する記載といえるかもしれないが、上記【0013】の記載は、平均粒子径付近の粒子径を有する重合体粒子間を埋めるのに十分な量の小粒子が存在すると解するのが適切であり、小粒子が上記【0011】及び【0012】の記載に矛盾するほど多く存在すると解するものではない。そして、同【0014】には、本件発明の重合体粒子は、光学部材用光拡散剤として使用した場合、体積基準の粒子径分布の変動係数が15.0%以上25.0%以下であることにより良好な光拡散性又は光透過性を有する光学部材を実現できることが記載されているのであって、要件Cによって本件発明1の課題を解決できないことを示す記載ではない。
さらに、審査段階において令和1年10月2日に提出された意見書に添付された実験成績証明書は、令和1年5月29日付け拒絶理由通知書に示された新規性及び進歩性に反論するための証拠であり、直接サポート要件のための証拠ではない。念のため、実験成績証明書の記載をみてみるが、ここには、要件Cである「CV値」が「8.7%」、「13.7%」及び「15.3%」のサンプルが記載されているものの、いずれも本件発明1の要件Cを満たすサンプルではない。
加えて、本件発明1に実施例1?7に記載された粗粉及び微粉を除去することに関する特定がなくても、本件発明1がサポートされていることは上記「ア」で述べたとおりである。
そして、上記「ア」で述べたように、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により本件発明1の課題が解決できたと認識できる範囲であるといえる。
よって、これらの記載をみても本件発明1がサポートされていないとはいえない。

(イ)小括
したがって、申立人がする上記主張は、理由がない。

エ 本件発明1は、界面活性剤の種類及び含有量が特定されていないので、発明の詳細な説明での開示に比べ広範であり、サポート要件を満たさないという主張について

(ア)判断
発明の詳細な説明の段落【0027】には、重合体粒子の単位表面積あたりにおける界面活性剤の含有量は、10?250×10^(-5)g/m^(2)であることが好ましく、この上限以下であることにより、上記重合体粒子の均一分散性をさらに向上させることができることが記載されているのであり、この含有量の範囲でないと均一分散性という発明の課題が解決できないことを記載しているのではない。また、同【0029】には、アニオン性界面活性剤を含む場合、重合反応時の分散安定性を確保することができることが記載されているが、アニオン性界面活性剤を含まないと均一分散性という発明の課題が解決できないことを記載しているのではない。さらに、実施例において具体的に示された界面活性剤の種類や含有量でないと本件発明1の課題が解決できると認識できないことを、申立人は証拠を挙げて主張している訳でもない。
そして、上記「ア」で述べたように、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により本件発明1の課題が解決できたと認識できる範囲であるといえる。

(イ)小括
したがって、申立人がする上記主張は、理由がない。

オ 本件発明1は、重合体粒子の種類及びモノマー組成が特定されていないので、発明の詳細な説明での開示に比べ広範であり、サポート要件を満たさないという主張について

(ア)判断
発明の詳細な説明の段落【0030】?【0037】には、重合体粒子を構成する単量体の具体例が記載されているが、具体的な単量体でないと均一分散性という発明の課題が解決できないことを記載しているのではない。さらに、実施例において具体的に示された単量体の種類やその組成でないと本件発明1の課題が解決できると認識できないことを、申立人は証拠を挙げて主張している訳でもない。
そして、上記「ア」で述べたように、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により本件発明1の課題が解決できたと認識できる範囲であるといえる。

(イ)小括
したがって、申立人がする上記主張は、理由がない。

(6)まとめ
以上のとおりであるから、申立理由3によっては、本件発明1?19に係る特許を取り消すことはできない。

4 申立理由4及び5について
(1)各甲号証の記載
ア 甲1
甲1には以下の事項が記載されている。
(1a)「請求の範囲
[請求項1] ビニル系単量体の重合体からなる樹脂粒子が複数、集合することによって形成された樹脂粒子集合体であって、
前記樹脂粒子100質量部と、
界面活性剤1?5質量部とを含み、
前記樹脂粒子は、前記樹脂粒子の全質量に対して9?50質量%の架橋性単量体で架橋されており、
前記樹脂粒子集合体中における無機成分の含有量が0.5質量%以下であり、
前記樹脂粒子の体積平均粒子径D1に対する、前記樹脂粒子集合体を水に分散させた分散液中に含まれる粒子の体積平均粒子径D2の比D2/D1が15以下であり、
前記体積平均粒子径D2は、前記樹脂粒子集合体0.50gと水50gとを混合し、これらの混合物に出力400W、周波数20kHzの超音波分散機を用いて超音波を10分間照射することにより分散液を得た後、前記樹脂粒子の屈折率に合わせた光学モデルを使用して粒子の体積平均粒子径を算出するレーザー回折散乱法粒度分布測定装置により、前記分散液中に含まれる粒子の体積平均粒子径を測定する測定方法で測定されたものであることを特徴とする樹脂粒子集合体。」

(1b)「[0016] 本発明の樹脂粒子集合体は、前記の課題を解決するために、ビニル系単量体の重合体からなる樹脂粒子が複数、集合することによって形成された樹脂粒子集合体であって、前記樹脂粒子100質量部と、界面活性剤1?5質量部とを含み、・・・」

(1c)「[0037] 〔樹脂粒子集合体〕
本発明の樹脂粒子集合体は、ビニル系単量体の重合体からなる樹脂粒子(一次粒子)が複数、集合(凝集)することによって形成された樹脂粒子集合体であって、前記樹脂粒子100質量部と、界面活性剤1?5質量部とを含み、前記樹脂粒子は、前記樹脂粒子の全質量に対して9?50質量%の架橋性単量体で架橋されており、前記樹脂粒子集合体中における無機成分の含有量が0.5質量%以下であり、前記樹脂粒子の体積平均粒子径D1に対する、前記樹脂粒子集合体を水に分散させた分散液中に含まれる粒子の体積平均粒子径D2の比D2/D1が15以下である樹脂粒子集合体である。ここで、前記体積平均粒子径D2は、前記樹脂粒子集合体0.50gと水50gとを混合し、これらの混合物に出力400W、周波数20kHzの超音波分散機を用いて超音波を10分間照射することにより分散液を得た後、前記樹脂粒子の屈折率に合わせた光学モデルを使用して粒子の体積平均粒子径を算出するレーザー回折散乱法粒度分布測定装置により、前記分散液中に含まれる粒子の体積平均粒子径を測定する測定方法で測定されたものである。
[0038] 前記の比D2/D1は、11以下であることがより好ましい。これにより、一次粒子またはそれに極めて近い状態に容易に分散する樹脂粒子集合体を実現できる。
[0039] 本発明の樹脂粒子集合体は、前記樹脂粒子集合体を水に分散させた分散液中に含まれる粒子中における、前記樹脂粒子集合体の体積平均粒子径D3よりも大きい粒子径を有する粒子の割合が1体積%以下であることが好ましい。この場合、前記樹脂粒子集合体は、水に分散させたときに、99体積%以上が、より小さい粒子径の粒子に分散する特性を備えている。これは、前記樹脂粒子集合体を光拡散剤、塗料用艶消し剤等の配合剤として他の成分と混合したときに、前記樹脂粒子集合体が一次粒子またはそれに近い状態まで容易に分散することを示している。したがって、この場合、一次粒子またはそれに近い状態へさらに容易に分散する樹脂粒子集合体を実現できる。」

(1d)「[0058] 本発明の樹脂粒子集合体を構成する樹脂粒子の粒子径の変動係数は、20%以下であることが好ましい。樹脂粒子は、体積平均粒子径D1が0.1?2.0μmの範囲内であるり、かつ、粒子径の変動係数が20%以下であることがより好ましい。これにより、本発明の樹脂粒子集合体を他の成分と混合したときに、樹脂粒子の光拡散性や艶消し等の特性が均一となる。また、粒子同士が接触したときにおける粒子間の空隙が広くなるので、樹脂粒子間の融着が起こりにくくなり、樹脂粒子集合体が一次粒子またはそれに近い状態に分散し易くなる。なお、前記変動係数は、体積基準の粒度分布の変動係数、具体的には〔実施例〕の項で説明する測定方法で測定された値を指すものとする。」

(1e)「実施例
[0103] 以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
・・・
[0105] ・・・
〔種粒子および樹脂粒子の体積平均粒子径、並びに樹脂粒子の変動係数の測定方法〕
以下の実施例および比較例において、種粒子および樹脂粒子の体積平均粒子径は、以下のようにして測定した。すなわち、種粒子および樹脂粒子の体積平均粒子径は、ベックマン・コールター株式会社製のレーザー回折散乱粒度分布測定装置「LS230」型で測定した。具体的には、測定対象粒子(種粒子または樹脂粒子)0.1gを試験管内に取り、0.1質量%ノニオン性界面活性剤(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(エチレンオキシド付加モル数20)、商品名「レオドールTW-L120」、花王株式会社製)水溶液10mlを前記測定対象粒子に加え、前記水溶液と前記測定対象粒子とをヤマト科学株式会社製のマグミキサ(タッチミキサ)「MT-31」型で2秒間混合した。その後、この試験管を、市販の超音波洗浄器である株式会社ヴェルヴォクリーア製の卓上型超音波洗浄器「VS-150」に入れ、この超音波洗浄器で前記試験管に超音波を10分間照射することにより、前記測定対象粒子を前記水溶液中に分散させて、分散液を得た。
得られた分散液中に含まれる測定対象粒子の体積平均粒子径および体積基準の粒度分布の標準偏差をベックマン・コールター株式会社製のレーザー回折散乱粒度分布測定装置「LS230」型にて測定した。このレーザー回折散乱粒度分布測定装置では、体積平均粒子径の測定値として、算術平均の体積平均粒子径の測定値(体積基準の粒度分布の算術平均値)が表示される。したがって、ここでは、前記測定対象粒子の算術平均の体積平均粒子径の測定値を、前記測定対象粒子の体積平均粒子径の測定値とした。また、測定対象粒子の粒子径の変動係数を、以下の数式によって算出した。
測定対象粒子の粒子径の変動係数=(測定対象粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差÷測定対象粒子の体積平均粒子径)×100
・・・
[0116] 〔実施例1〕
(種粒子の製造)
まず、単官能性ビニル系単量体(第1のビニル系単量体)としてのメタクリル酸メチル250gと連鎖移動剤としてのn-オクチルメルカプタン5gとを混合して、単量体混合物255gを調製した。また、重合開始剤としての過硫酸カリウム1.5gを水性媒体としての脱イオン水18.5gに溶解させて、過硫酸カリウム水溶液20gを得た。
[0117] 次に、攪拌機および温度計を備えた重合器に水性媒体としての脱イオン水1000gを入れ、前記単量体混合物255gを前記重合器に供給した。続いて、前記重合器の内容物を前記攪拌機により攪拌しながら、前記重合器内の空気を窒素で置換し、前記重合器の内温を70℃まで昇温した。さらに、前記攪拌を継続し、かつ前記重合器の内温を70℃に保ちながら、重合開始剤としての前記過硫酸カリウム水溶液20gを前記重合器の内容物に添加した後、10時間かけて重合を行った。
[0118] これにより、種粒子(ポリメタクリル酸メチル粒子)を含むエマルジョンが得られた。得られたエマルジョンに含まれる種粒子の体積平均粒子径は、0.38μmであった。また、得られたエマルジョンに含まれる種粒子の質量平均分子量(Mw)は、15,300であった。
・・・
[0128] 〔実施例2〕
(種粒子の製造)
実施例1で製造した種粒子を使用した。
[0129] (樹脂粒子の製造)
まず、界面活性剤としてのジオクチルスルホコハク酸ナトリウム6gを水性媒体としての脱イオン水894gに溶解させて、界面活性剤水溶液900gを得た。また、単官能性ビニル系単量体(第2のビニル系単量体)としてのメタクリル酸n-ブチル180gと、架橋性単量体(第2のビニル系単量体)としてのエチレングリコールジメタクリレート120g(樹脂粒子の全質量に対して38質量%)と、連鎖移動剤としてのn-ドデシルメルカプタン3gと、重合開始剤としての2,2’-アゾビスイソブチロニトリル2gとを混合して、単量体混合液305gを得た。
[0130] 次に、攪拌機および温度計を備えた重合器に前記界面活性剤水溶液900gを入れ、次いで、前記重合器に前記単量体混合液305gを入れた。次いで、重合器の内容物をプライミクス株式会社製の高速乳化・分散機「T.K.ホモミクサー」にて攪拌することにより、分散液を得た。このとき、攪拌を調整することで分散液中における液滴(前記混合液の液滴)の径を調整し、液滴の径が5μm程度の分散液を調製した。
[0131] さらに、前記種粒子を含むエマルジョン60gを前記分散液に加え、種粒子に単量体混合液を吸収させた。その後、重合器の内容物を窒素気流下で前記攪拌機で攪拌しながら、重合器の内温を50℃に昇温し50℃に10時間保つことで、10時間かけて重合を行った。その後、重合器の内温を室温(約25℃)まで冷却した。これにより、樹脂粒子を含むスラリーが得られた。
[0132] 得られたスラリーを目開き20μmのステンレス製金網に通過させて樹脂粒子の分級を行うことにより、分級された樹脂粒子を含むスラリーを得た。
[0133] 得られたスラリー中に含まれる樹脂粒子の体積平均粒子径D1は1.2μmであり、得られたスラリー中に含まれる樹脂粒子の粒子径の変動係数は17.3%であった。得られたスラリーは、固形分濃度が25質量%であり、界面活性剤の含有量が樹脂粒子100質量部に対して1.9質量部である。
[0134] (樹脂粒子集合体の製造)
実施例1の樹脂粒子に代えて本実施例で得られた樹脂粒子を使用した以外は実施例1と同様の条件で、樹脂粒子集合体を製造した。
[0135] 得られた樹脂粒子集合体の屈折率の推算値は、1.49であった。得られた樹脂粒子集合体の体積平均粒子径D3は55μmであった。得られた樹脂粒子集合体は、無機成分を含有していない。
[0136] 続いて、樹脂粒子集合体の分散性を評価するための評価値を測定した。その結果、樹脂粒子集合体分散液中に含まれる粒子の体積平均粒子径D2は5.7μmであり、樹脂粒子の体積平均粒子径D1に対する、樹脂粒子集合体分散液中に含まれる粒子の体積平均粒子径D2の比D2/D1は4.8であり、樹脂粒子集合体分散液中に含まれる粒子中における、樹脂粒子集合体の体積平均粒子径D3(=55μm)よりも大きい粒子径を有する粒子の割合は0.0体積%であった。
[0137](成形体の製造)
実施例1の樹脂粒子集合体に代えて本実施例で得られた樹脂粒子集合体を使用した以外は実施例1と同様の条件で、光拡散性樹脂組成物からなる成形体を製造した。得られた成形体の全光線透過率は67%、得られた成形体のヘーズは99%であった。」

(1f)「[0214] 実施例1?6および比較例1?4における、樹脂粒子を構成する第2のビニル系単量体の組成)、樹脂粒子の体積平均粒子径D1および粒子径の変動係数、樹脂粒子集合体の体積平均粒子径D3、樹脂粒子集合体分散液中に含まれる粒子の体積平均粒子径D2、比D2/D1、分散性評価値(樹脂粒子集合体分散液中に含まれる粒子中における、樹脂粒子集合体の体積平均粒子径D3よりも大きい粒子径を有する粒子の割合)、成形体の組成(基材樹脂の種類および配合量)、および成形体の全光線透過率およびヘーズを表1にまとめて示す。
[0215]

[0216] 上記表中において、BAはアクリル酸ブチル、EDMAはエチレングリコールジメタクリレート、BMAはメタクリル酸ブチル、STはスチレン、DVBはジビニルベンゼン、MMAはメタクリル酸メチル、PMMAはポリメタクリル酸メチルを表す。
[0217] 上記表中に示すように、本発明の実施例1?6に係る樹脂粒子集合体は、樹脂粒子が9質量%未満の架橋性単量体で架橋されている比較例1の樹脂粒子集合体、および樹脂粒子が50質量%より多くの架橋性単量体で架橋されている比較例3の樹脂粒子集合体と異なり、比D2/D1が15以下であり、かつ、分散性評価値が1質量%以下であり、一次粒子またはそれに近い状態に容易に分散することが分かった。また、本発明の実施例1?6に係る樹脂粒子集合体は、一次粒子またはそれに近い状態に容易に分散するために、光拡散性組成物(成形体)に配合したときに、良好な光拡散性(ヘーズ)を与えることが分かった。
[0218] また、上記表中に示すように、本発明の実施例1?6に係る樹脂粒子集合体は、光拡散性組成物(成形体)に配合したときに、0.5質量%より多くの無機成分を含む比較例2の樹脂粒子集合体と比較して、良好な光透過性(全光線透過率)を与えることが分かった。」

イ 甲2
甲2には以下の事項が記載されている。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体及び水性媒体を少なくとも含む混合物を、ミキサーを通過させることで前記重合性単量体の液滴の懸濁液を得る方法であって、
前記水性媒体が、前記重合性単量体1重量部に対して、1?5重量部使用され、
前記混合物が、0.1?10MPaの入口圧力で前記ミキサーに導入され、
前記ミキサーが、前記混合物の通過方向を管長方向とする管を備え、
前記管が、前記管長方向に沿って、前記混合物の螺旋流を生じうるように配置した少なくとも2枚の固定羽根を有する螺旋流発生部と、それにつながる懸濁液形成部とを備え、
前記混合物が、前記螺旋流発生部から前記懸濁液形成部へ、前記固定羽根により形成される開口部を介して流れ、前記開口部が、前記螺旋流発生部の管の内側断面積に対して、0.01?0.04倍の開口面積を有することを特徴とする懸濁液の製造方法。
・・・
【請求項7】
前記混合物が、純水中での臨界ミセル濃度の0.5倍以下の量の界面活性剤を更に含む請求項1?6のいずれか1つに記載の懸濁液の製造方法。」

(2b)「【0001】
本発明は、懸濁液の製造方法及び重合体粒子の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、大きさの揃った重合体粒子を得るための重合性単量体の液滴の懸濁液の製造方法及び、得られた懸濁液中の液滴を構成する重合性単量体を重合させることからなる重合体粒子の製造方法に関する。本発明の方法により得られた重合体粒子は、スペーサー、光拡散剤、滑り性付与剤、トナー、塗料のつや消し剤、機能性担体等として好適である。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載された技術では、1次懸濁液を5?100μmの重量平均粒子径に予備分散させる必要があった。そのため、更なる工程の簡略化が求められていた。
また、高圧で1次懸濁液をノズルに通過させるための高圧ポンプが必要であるため、製造設備のコストが高くなるという課題があった。
更に、高圧ポンプを使用するため、製造装置にも高圧に耐えうる強度が必要であるため、製造装置が大型化してしまうという課題があった。
更にまた、特許文献2及び3に記載された技術でも、十分均一な平均粒子径の重合体粒子を得ることが困難であった。
・・・
【発明の効果】
【0007】
本発明の懸濁液の製造方法によれば、高圧のポンプを使用せずとも粒子径の揃った液滴を含む懸濁液を1次分散を経ずに得ることができる。具体的には、ミキサーの入口圧力が0.1?1.0MPaでも、螺旋流と、それによる混合効果を得ることができるので、比較的低圧で容易に粒子径の揃った液滴を含む懸濁液を得ることができる。つまり、低圧のポンプで懸濁液が作製可能であるため製造装置を小型化及び低コスト化できる。
固定羽根が2枚であり、特定の角度で交差することで、より粒子径の揃った液滴を形成可能な螺旋流を形成することができる。」

(2c)「【0016】
水性媒体には、界面活性剤、懸濁安定剤等が含まれていてもよい。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をいずれも使用できる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウムのような高級脂肪酸、ラウリル硫酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、直鎖アルキルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0017】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテートのようなアルキル
アミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドのような第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。上記界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記界面活性剤の内、直鎖アルキルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムは、界面活性能力が高いので少量でも分散効果が高く好適に使用できる。」

(2d)「【0032】
(重合体粒子)
懸濁液中の液滴を構成する重合性単量体を重合させることにより重合体粒子を得ることができる。・・・
【0034】
ポンプを水性媒体と重合性単量体用に2台を使用することで、重合性単量体と水性媒体とをミキサーに定量通過させることができる。その結果、より大きさの揃った液滴を含む懸濁液及び重合体粒子が得られる。
得られた重合体粒子は、粒子径の均一性が高いため、その性質が特に要求される、スペーサー、光拡散剤、滑り性付与剤、トナー、塗料のつや消し剤、機能性担体等として好適である。」

(2e)「【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。また、実施例及び比較例に使用したミキサーの構造の説明、混合物中の重合性単量体の液滴の平均粒子径、懸濁液中の重合性単量体の液滴の平均粒子径、重合体粒子の平均粒子径、変動係数及び体積分布の測定法の説明を下記する。
・・・
【0037】
(重合性単量体の液滴の平均粒子径及び変動係数の測定法)
キーエンス社製デジタルマイクロスコープ(VHX)にて、懸濁液を撮影する。撮影画面上の任意の液滴100個の直径を測定する。測定結果から平均粒子径及び標準偏差を算出し、それらの値から変動係数を算出する。
【0038】
(重合体粒子の平均粒子径及び変動係数、重合体粒子の平均粒子径の体積分布の測定法)
孔径50?400μmの細孔に電解質溶液を満たし、電解質溶液を測定対象の液滴及び重合体粒子が通過する際の電界質溶液の導電率変化から体積を求め、体積分布と平均粒子径を計算する。具体的には、測定した平均粒子径は、ベックマンコールター社製のコールターマルチザイザーIIによって測定した体積平均粒子径である。なお、測定に際してはCoulter Electronics Limited発行のREFERENCE MANUAL FOR THE COULTERMULTISIZER(1987)に従って、測定する液滴及び重合体粒子の粒子径に適合したアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定する。
・・・
【0040】
[実施例1]
アゾビス-N,N-ジメチルバレロニトリル5gをメタクリル酸メチル950gとエチレングリコールジメタクリレート50gに溶解した単量体混合物と、ラウリル硫酸ナトリウム0.6g(臨界ミセル濃度の0.13倍)、複分解ピロリン酸マグネシウム50gを含むイオン交換水2000gとを、ポンプにて個別に図2に示すライン上のミキサーに定量投入した。
ミキサーとして静止型ミキサーを使用し、そのミキサー出口に内径22mm、長さ200mmのSUS配管を接続し、ミキサー入口圧力を0.4MPa(流速42.3mm/s)に調整し懸濁液を作った。
懸濁液は、平均粒子径が9.5μm、変動係数が25.8%の重合開始剤を含む単量体混合物の液滴を含んでいた。
この懸濁液を内容積が5リットルの重合反応槽に仕込み、300rpmの緩やかな撹拌下で50℃で8時間懸濁重合させて重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の体積分布(図3)を調べたところ、この粒子は体積平均粒子径が9.3μmで、変動係数が24.4%であり、粒度分布が狭い領域内に局限されていて、粒子の大きさがよく揃ったものであった。
・・・
【0046】
・・・
なお、実施例に使用した材料の種類及び使用量、ミキサーの種類及び混合条件、重合体粒子の平均粒子径及び変動係数をまとめて表1に示す。
【0047】
【表1】



(2f)「

」(図2)

ウ 甲4
甲4には以下の事項が記載されている。
(4a)「請求の範囲
[1] 平均粒子径の 2倍以上の粒子径を有する粗大粒子が1000個/0.5g以下であることを特徴とする微粒子。
・・・
[3] 請求項1または2に記載の微粒子の製造方法であって、
固形分濃度0.5?50質量%、B型粘度0.5?20mPa・sの微粒子分散液を湿式分級する工程、
湿式分級後の微粒子を、乾燥、粉砕して、水分含量0.05?2質量%の粉体微粒子とする工程、
上記粉体微粒子を乾式分級する工程を含むことを特徴とする微粒子の製造方法。」

(4b)「技術分野
[0001] 本発明は、粒子径が高度にコントロールされた微粒子、および、これを用いた樹脂組成物に関する。
・・・
[0006] 本発明は、上記事情に着目してなされたものであって、その目的は、好適な粒子径を逸脱する粗大な粒子の含有量が低レベルに低減された微粒子、および、かかる微粒子の製造方法、並びにこの微粒子を含む樹脂組成物を提供することにある。」

(4c)「[0011] 本発明の微粒子は、粒径の好適範囲を逸脱する粗大な粒子の含有量が低レベル に低減されたものである。また、本発明法によれば、粒径の好適範囲を逸脱する粗大粒子とともに微小粒子の含有量も低減することができる。したがって、本発明の粒子を含む樹脂組成物から得られる成形品は、粗大粒子に由来する欠点が生じ難いものと考えられる。また、微小な粒子の含有量も低減されているので、樹脂自体の透明性も害し難いと考えられる。本発明の微粒子は、特に、光学用樹脂組成物に好適であり、かかる樹脂組成物から得られる光拡散フィルム、防眩性フィルム、そして、本発明の微粒子を含む光拡散板は、優れた光学特性を示すものと考えられる。
発明を実施するための最良の形態
[0012] 本発明の微粒子とは、平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子が1000個/0.5g以下であるところに特徴を有するものである。
・・・
[0015] また、本発明の微粒子は、平均粒子径の1/2以下の粒子径を有する微小粒子数が低減されたものであるのが好ましい。かかる微小な微粒子が多量に含まれていると、当該微粒子を光学用途 (例えば各種画像表示装置の画像表示面に設けられる光拡散フィルム、反射防止防眩性フィルムなど)に用いた場合に、透明性や輝度を低下させる虞がある。したがって、平均粒子径の1/2以下の粒子径を有する微小粒子は10体積%以下であるのが好ましく、より好ましくは7体積%以下である。」

(4d)「[0023] 上記粉体微粒子の乾式分級には、風力を利用した気流分級装置を用いるのが好ましい。気流分級装置とは、気流を利用して、微粒子 (粉粒体層)を粒度 (粉粒体の粒径、質量)に応じて分離する装置である (すなわち、粒子の持つ慣性と、気流から受ける抗力のバランスによって飛距離が定まり分級される)。通常、篩やフィルタのみを使用する分級装置では、回収される粒子の物性は、使用する篩の目開きやフィルタの濾過効率に依存するため、所望の物性、たとえば粒子径が特定の範囲に含まれる粒子のみを得るためには、複数の分級操作を行う必要がある。これに対して、気流分級装置を使用すれば、粗大な粒子と微小な粒子を同時に除去することができる。
[0024] 上記気流分級装置の分級メカニズムは特に限定されない。したがって、気流のみを利用するもの、気流に推進力を与える回転ローターや、風を導くためのガイドべーンを備え、これらが複合的に作用して生じる気流を利用するもの、さらに、これらとその他の分級手段(篩やメッシュ)を組み合わせたものであっても良い。
[0025] 具体的な気流分級装置としては、DXF型(日本ニューマチック工業社製)などの高精度気流分級装置;ターボクラシファイア(日清エンジニアリング社製)、クラッシール(セイシン社製)、ターポプレックス(登録商標、ホソカワミクロン社製)などの分級ローターを有する回転ローター式気流分級装置;エルボージェット(日鉄鉱業社製)などのコアンダ効果を利用した気流分級装置 (エルボージェット型分級機);乾式篩ハイボルター(東洋ハイテック社製)、乾式篩ブロワーシフター(ユーグロップ社製)などの網の目開きを利用した気流分級装置が挙げられる。これらの中でも、高精度気流分級装置、回転ローター式気流分級装置およびコアンダ効果を利用した気流分級装置は、粗大な粒子を効率的に除去できるので好ましい。
[0026] 上記高精度気流分級装置とは、ムービングパーツ(可動可能な部材)がなく分散ゾーンおよび分級ゾーンへの流入エアーにより、高速旋回気流を発生させて、装置内に供給した粒子に遠心力を与えると共に、粒子に与えられた遠心力の抗カとなるように吸引ブロワ一により分級ゾーンから空気を排気させ、この遠心力と抗力とのバランスにより粒子から粗粉と微粉とを分級する装置である。回転ローター式気流分級装置とは、回転自由な円筒(分級ローター)と、装置外部から装置内へ空気を取り込む吸気口を備え、上記ローターの高速回転により装置内に渦流を発生させて、装置内に供給した粒子に渦流による遠心力を与え、一方、吸気口からは、遠心力の抗力となるように空気を取り込み、この遠心力と抗力とのバランスにより、粒子から粗粉と微粉とを分級する装置である。コアンダ効果を利用した気流分級装置とは、噴流は、その一方の側にだけ壁面を置くと、この壁面に沿って流れるというコアンダ効果を利用するものであり、当該装置は、粒子を気流 (フィードエアー)と共に装置内に噴出するエジェクター部と、分級室内にまで噴流 (粒子を含む)を導くコアンダブロックと、粒子を性状 (粗粉、細粉(目的物)、微粉など)に応じて隔離する分級エッジを任意の位置に備えている。上記エジェクター部から噴出された噴流 (粒子を含む)は、コアンダブ ロックに沿って流れようとする。このとき粒子に働く慣性力と (微小粒子と粗大粒子とで は働く慣性力に差があり、粗大な粒子はより遠くへと飛行しょうとする)、流体抵抗のバランスにより、粗大粒子と微小粒子が分級される。」

(4e)「[0044] また、上記粒子は、粒子径の変動係数(体積基準で算出した粒度分布を基準とする)が20%以下であるのが好ましい。より好ましくは10%以下である。粒子径の変動係数の値は小さいほど、粒子径にバラツキが少ないことを示しており、上記範囲を満足する場合には、湿式分級、乾式分級工程後の微粒子に含まれる粗大粒子量を低減し易いので好ましい。なお、ここで、粒子径の変動係数とは、下記式より算出される値である。」

(2)各甲号証に記載された発明
ア 甲1に記載された発明
甲1には、概略、その特許請求の範囲の請求項1に、ビニル系単量体の重合体からなる樹脂粒子が複数、集合することによって形成された樹脂粒子集合体が記載され(摘記(1a))、その具体例として、実施例2が記載されているところ(摘記(1e))、実施例2の樹脂粒子は変動係数が17.3%である。

そうすると、甲1には、実施例2の樹脂粒子に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「単官能性ビニル系単量体(第1のビニル系単量体)としてのメタクリル酸メチル250gと連鎖移動剤としてのn-オクチルメルカプタン5gとを混合して、単量体混合物255gを調製し、重合開始剤としての過硫酸カリウム1.5gを水性媒体としての脱イオン水18.5gに溶解させて、過硫酸カリウム水溶液20gを得、
次に、攪拌機および温度計を備えた重合器に水性媒体としての脱イオン水1000gを入れ、前記単量体混合物255gを前記重合器に供給し、続いて、前記重合器の内容物を前記攪拌機により攪拌しながら、前記重合器内の空気を窒素で置換し、前記重合器の内温を70℃まで昇温し、さらに、前記攪拌を継続し、かつ前記重合器の内温を70℃に保ちながら、重合開始剤としての前記過硫酸カリウム水溶液20gを前記重合器の内容物に添加した後、10時間かけて重合を行い、
種粒子(ポリメタクリル酸メチル粒子)を含むエマルジョンが得られ、得られたエマルジョンに含まれる種粒子の体積平均粒子径は、0.38μmであった。また、得られたエマルジョンに含まれる種粒子の質量平均分子量(Mw)は、15,300であり、
界面活性剤としてのジオクチルスルホコハク酸ナトリウム6gを水性媒体としての脱イオン水894gに溶解させて、界面活性剤水溶液900gを得た。また、単官能性ビニル系単量体(第2のビニル系単量体)としてのメタクリル酸n-ブチル180gと、架橋性単量体(第2のビニル系単量体)としてのエチレングリコールジメタクリレート120g(樹脂粒子の全質量に対して38質量%)と、連鎖移動剤としてのn-ドデシルメルカプタン3gと、重合開始剤としての2,2’-アゾビスイソブチロニトリル2gとを混合して、単量体混合液305gを得、
次に、攪拌機および温度計を備えた重合器に前記界面活性剤水溶液900gを入れ、次いで、前記重合器に前記単量体混合液305gを入れ、次いで、重合器の内容物をプライミクス株式会社製の高速乳化・分散機「T.K.ホモミクサー」にて攪拌することにより、分散液を得、このとき、攪拌を調整することで分散液中における液滴(前記混合液の液滴)の径を調整し、液滴の径が5μm程度の分散液を調製し、
さらに、前記種粒子を含むエマルジョン60gを前記分散液に加え、種粒子に単量体混合液を吸収させ、その後、重合器の内容物を窒素気流下で前記攪拌機で攪拌しながら、重合器の内温を50℃に昇温し50℃に10時間保つことで、10時間かけて重合を行い、その後、重合器の内温を室温(約25℃)まで冷却し、樹脂粒子を含むスラリーが得られ、
得られたスラリーを目開き20μmのステンレス製金網に通過させて樹脂粒子の分級を行うことにより、スラリー中に含まれる分級された樹脂粒子であって、
得られたスラリー中に含まれる樹脂粒子の体積平均粒子径D1は1.2μmであり、得られたスラリー中に含まれる樹脂粒子の粒子径の変動係数は17.3%であり、得られたスラリーは、固形分濃度が25質量%であり、界面活性剤の含有量が樹脂粒子100質量部に対して1.9質量部である樹脂粒子」(以下「甲1発明」という。)

イ 甲2に記載された発明
甲2には、概略、その特許請求の範囲の請求項1に、懸濁液の製造方法が記載され(摘記(2a))、同請求項7には、懸濁液中に界面活性剤を含むことが記載され(摘記(2a))、発明の詳細な説明の段落【0032】には、懸濁液中の液滴を構成する重合性単量体を重合させることにより重合体粒子が得られることが記載され(摘記(2d))その具体例として、実施例1が記載されている(摘記(2e))。

そうすると、甲2には、実施例1に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「アゾビス-N,N-ジメチルバレロニトリル5gをメタクリル酸メチル950gとエチレングリコールジメタクリレート50gに溶解した単量体混合物と、ラウリル硫酸ナトリウム0.6g(臨界ミセル濃度の0.13倍)、複分解ピロリン酸マグネシウム50gを含むイオン交換水2000gとを、ポンプにて個別に図2に示すライン上のミキサーに定量投入し、
静止型ミキサー出口に内径22mm、長さ200mmのSUS配管を接続し、ミキサー入口圧力を0.4MPa(流速42.3mm/s)に調整し、平均粒子径が9.5μm、変動係数が25.8%の重合開始剤を含む単量体混合物の液滴を含む懸濁液を作り、
この懸濁液を内容積が5リットルの重合反応槽に仕込み、300rpmの緩やかな撹拌下で50℃で8時間懸濁重合させて重合体粒子であって、得られた重合体粒子は体積平均粒子径が9.3μmで、変動係数が24.4%である重合体粒子」(以下「甲2発明」という。)

(3)対比・判断
以下では、上記「第4」の冒頭で述べたことと同様に、重合体粒子が、「体積基準の粒子径分布の変動係数が15.7%以上25.0%以下である」ことを「要件C」ともいい、また、「重合体粒子5.0gに水15.0gを添加し、超音波洗浄器を用いて60分間分散処理を行うことにより重合体粒子を水中に分散させ、内径24mmの遠心管に入れて遠心分離機を用いてKファクタ6943、回転時間30分間の条件で遠心分離した後、上澄み液を回収したときに、上澄み液中における非揮発成分の濃度が3.5重量%未満である」ことを「要件D」ともいう。

ア 本件発明1について
(ア)甲1発明との対比・判断
a 対比
甲1発明の「樹脂粒子」は、本件発明1の「重合体粒子」に相当することは明らかであり、界面活性剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを使用して製造しているから、甲1発明の「樹脂粒子」は、界面活性剤を含有するといえる。そうすると、甲1発明の「樹脂粒子」は、本件発明1の「界面活性剤を含有する重合体粒子」に相当する。
甲1には、樹脂粒子の変動係数の算出式は、「測定対象粒子の粒子径の変動係数=(測定対象粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差÷測定対象粒子の体積平均粒子径)×100」と記載され(摘記(1e))、これは、本件発明1の変動係数の算出式と同じであるから、甲1発明の樹脂粒子の粒子径の変動係数が17.3%であることは、本件発明1の「体積基準の粒子径分布の変動係数が15.7%以上25.0%以下」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とでは、
「界面活性剤を含有する重合体粒子であって、
体積基準の粒子径分布の変動係数が15.7%以上25.0%以下である
重合体粒子」で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)重合体粒子が、本件発明1では、要件Dで特定される特性を有するのに対し、甲1発明では上記特性を有するか明らかでない点

b 判断
まず、要件C及び要件Dの技術的な内容について検討すると、上記「2(4)ア(ア)」で述べたように、要件Cは、概略、体積基準の粒子径分布の変動係数が15.7%以上25.0%以下を満たさない小粒子及び大粒子の割合が少ないが、平均粒子径付近の粒子径を有する重合体粒子間を埋めるための小粒子が十分な量存在することを表している特定であり、一方、要件Dは、重合体粒子を製造する際に副反応で生成した顕著に小さい粒子径(例えば500nm以下の粒子径)を有する重合体粒子等の微小粒子の濃度が、特定の測定方法により測定した結果、3.5重量%未満であることを特定するものであり、両者は技術的に異なる内容を意味しているといえる。
この上で甲1の記載をみてみるが、甲1には、樹脂粒子が要件Cを満足すれば要件Dを満足するという記載はない。また、樹脂粒子が要件Cを満足すれば要件Dを満足するという本件優先日時点の技術常識もない。
そうすると、相違点1は実質的な相違点である。

さらに、相違点1について、容易想到性について検討する。
甲1発明は、甲1に記載された樹脂粒子集合体の原料となる樹脂粒子の発明であり、甲1には、甲1発明に対して要件Dを満足するための処理をする記載はなく、本件優先日時点の技術常識もないから、甲1発明において相違点1に係る事項を適用することが動機づけられるとはいえない。

ここで、甲4には、好適な粒子径を逸脱する粗大な粒子の含有量が低レベルに低減された微粒子を提供することを課題として(摘記(4b))、平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子が1000個/0.5g以下であることを特徴とする微粒子及びその製造方法が記載され(摘記(4a))、その効果として、粒径の好適範囲を逸脱する粗大粒子とともに微小粒子の含有量も低減することができるから、本発明の粒子を含む樹脂組成物から得られる成形品は、粗大粒子に由来する欠点が生じ難く、また、微小な粒子の含有量も低減されているので、樹脂自体の透明性も害し難いと考えられ、光学用樹脂組成物に好適であることが記載されている(摘記(4c))。
しかしながら、甲4には、要件Dについての記載はない。
よって、いくら甲4の記載をみても、相違点1に係る事項を適用することが動機づけられるとはいえない。

したがって、甲1発明において相違点1を本件発明1のとおりに構成することは、当業者が容易になし得たとはいえない。

(イ)甲2発明との対比・判断
a 対比
甲2発明の「重合体粒子」は、本件発明1の「重合体粒子」に相当することは明らかであり、界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムを使用して製造しているから、甲2発明の「重合体粒子」は、界面活性剤を含有するといえる。そうすると、甲2発明の「重合体粒子」は、本件発明1の「界面活性剤を含有する重合体粒子」に相当する。
甲2には、重合体粒子の変動係数の算出は、体積平均粒子径に基づくことが記載されている(摘記(2e))から、甲2発明の重合体粒子の変動係数が24.4%であることは、本件発明1の「体積基準の粒子径分布の変動係数が15.7%以上25.0%以下」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明とでは、
「界面活性剤を含有する重合体粒子であって、
体積基準の粒子径分布の変動係数が15.7%以上25.0%以下である
重合体粒子」で一致し、次の点で相違する。

(相違点1a)重合体粒子が、本件発明1では、要件Dで特定される特性を有するのに対し、甲2発明では上記特性を有するか明らかでない点

b 判断
上記(ア)bで述べたように、要件C及び要件Dは、技術的に異なる内容を意味しているといえ、甲2には、重合体粒子が要件Cを満足すれば要件Dを満足するという記載はない。また、重合体粒子が要件Cを満足すれば要件Dを満足するという技術常識もない。
そうすると、相違点1aは実質的な相違点である。

さらに、相違点1aについて、容易想到性について検討する。
甲2発明は、簡略した工程で大きさの揃った懸濁液を得、これを重合した重合体粒子の発明であり(摘記(2b))、特許請求の範囲の請求項1に記載された製造方法により大きさの揃った懸濁液が得られるといえ(摘記(2a))、甲2には、懸濁液を重合した重合体粒子に対して、要件Dを満足するための処理をする記載はなく、本件優先日時点の技術常識もないから、甲2発明において相違点1aに係る事項を適用することが動機づけられるとはいえない。
よって、甲2発明において相違点1aを本件発明1のとおりに構成することは、当業者が容易になし得たとはいえない。

(ウ)申立人の主張について
a 申立人の主張
申立人は、本件明細書の段落【0011】の記載から、要件Cを満たせば要件Dを満たす蓋然性が高いといえ、同【0185】に記載された表1をみると、実施例1及び3と甲1発明とでは、要件Cに関し変動係数が類似の割合であるから、要件Dに関する非揮発成分濃度も甲1発明は実施例1及び3と同様の傾向が当てはまるといえ、甲1における効果の記載からも要件Dに関する非揮発成分濃度が極めて低い値であると推測でき、甲1発明は要件Dを満たす蓋然性は極めて高いと主張する(以下「主張(a)」という。)。
また、もし仮に、相違点1が相違点であったとしても、甲4の記載から容易に想到できると主張する(以下「主張(b)」という。)

b 申立人の主張の検討
(a)主張(a)について
上記(ア)bで述べたように、要件C及び要件Dは技術的に異なる内容を意味しているといえ、甲1及び2には、重合体粒子が要件Cを満足すれば要件Dを満足するという記載はない。また、重合体粒子が要件Cを満足すれば要件Dを満足するという技術常識もない。
よって、申立人の主張(a)は採用できない。
(b)主張(b)について
上記(ア)bで述べたとおり、甲4には、要件Dについての記載はないから、相違点1が動機づけられるとはいえない。
よって、申立人の主張(b)は採用できない。

(エ)小括
よって、本件発明1は、甲1及び2に記載された発明であるとはいえず、また、甲1又は甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

イ 本件発明2?19について
本件発明2?19は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2?19は、上記アで示した理由と同じ理由により、甲1及び甲2に記載された発明であるといえず、また、甲1又は甲2に記載された発明及び甲1?甲7に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、申立理由4及び5によっては、本件発明1?19に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由によっては、本件発明1?19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-02-18 
出願番号 特願2017-542765(P2017-542765)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C08F)
P 1 651・ 536- Y (C08F)
P 1 651・ 537- Y (C08F)
P 1 651・ 121- Y (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中落 臣諭  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 佐藤 玲奈
佐藤 健史
登録日 2020-04-02 
登録番号 特許第6685316号(P6685316)
権利者 積水化成品工業株式会社
発明の名称 重合体粒子及びその用途  
代理人 山本 拓也  

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