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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B23K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B23K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B23K
審判 全部申し立て 2項進歩性  B23K
管理番号 1371731
異議申立番号 異議2020-700810  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-21 
確定日 2021-03-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6684372号発明「ディスペンス塗布用はんだ組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6684372号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6684372号の請求項1?6(以下、それぞれ「本件特許請求項1」?「本件特許請求項6」という。)に係る特許についての出願は、平成31年3月1日(国内優先権主張 平成30年3月29日)に特許出願され、令和2年3月31日にその特許権の設定登録がされ、令和2年4月22日に特許掲載公報(以下、「本件特許公報」という。)が発行された。その後、その特許に対し、令和2年10月21日に特許異議申立人山下桂(以下「申立人」という。)により、請求項1?6に対して特許異議の申立てがなされた。

2 本件特許発明
(1)本件特許発明の内容
特許第6684372号の請求項1?6の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明6」といい、これらをまとめて「本件特許発明」ということがある。)は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末とを含有し、
当該はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下である
ことを特徴とするディスペンス塗布用はんだ組成物。

【請求項2】
(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末とを含有し、
当該はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下である
ことを特徴とする。

【請求項3】
請求項1に記載のディスペンス塗布用はんだ組成物において、
当該はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下である
ことを特徴とするディスペンス塗布用はんだ組成物。

【請求項4】
請求項1?請求項3のいずれか1項に記載のディスペンス塗布用はんだ組成物において、
前記フラックス組成物が、さらに、(F)ピラゾール化合物を含有する
ことを特徴とするディスペンス塗布用はんだ組成物。

【請求項5】
請求項1?請求項4のいずれか1項に記載のディスペンス塗布用はんだ組成物において、
前記(A)成分が、(A1)不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物と、(A2)完全水添ロジンとを含有する
ことを特徴とするディスペンス塗布用はんだ組成物。

【請求項6】
請求項1?請求項5のいずれか1項に記載のディスペンス塗布用はんだ組成物において、
前記(D)成分が、(D1)アマイド系チクソ剤を含有する
ことを特徴とするディスペンス塗布用はんだ組成物。」

(2)優先権主張についての検討
本件特許発明2、3の「当該はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下である」との構成は、本件特許の優先権主張の基礎とされた特願2018-65166号(以下、「先の出願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載されたものでも、それらの記載から自明なものでもなく、先の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、上記構成を含む本件特許発明2?6についての新規性進歩性の判断の基準時は、本件特許に係る出願の出願時である平成31年3月1日である。
また、それ以外の本件特許発明についての新規性進歩性の判断の基準時は、本件特許の優先権主張で優先日とされた平成30年3月29日である。

3 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として、いずれも本件特許に係る出願の優先日前に日本国内または外国において頒布されたまたは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である次の甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第12号証、甲第14号証?甲第15号証と、本件特許に係る出願前かつ優先日後に日本国内または外国において頒布されたまたは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である、次の甲第2号証、甲第4号証、甲第13号証とを提出し、以下の申立理由1?5により、本件特許請求項1?6に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張している。

甲第1号証(甲1):特開2015-123491号公報
甲第2号証(甲2):特開2018-140437号公報
甲第3号証(甲3):特開2016-93816号公報
甲第4号証(甲4):特開2018-123340号公報
甲第5号証(甲5):小椋文昭,「はんだ粉末特性のソルダーペーストに与える影響」,SHM会誌,Vol.8, No.2 1992年3月1日発行,社団法人ハイブリッドマイクロエレクトロニクス協会(SHM)発行,2?7ページ
甲第6号証(甲6):ニホンハンダ株式会社,「超微小吐出対応鉛フリーソルダペーストPF305-5091VO」,[online],2016年5月,[2020年10月16日検索],インターネット
https://www.nihonhanda.com/pg385.html
および
https://www.nihonhanda.com/_src/sc2147/PF305-5091.pdf
甲第7号証(甲7):ニホンハンダ株式会社,「ディスペンサー用207シリーズ」,[online],2014年1月,[2020年10月16日検索],インターネット
https://www.nihonhanda.com/pg308.html および
https://www.nihonhanda.com/_src/sc1627/20783V838A815B83Y.pdf
甲第8号証(甲8):特開2009-241126号公報
甲第9号証(甲9):特開平5-392号公報
甲第10号証(甲10):特開2004-25288号公報
甲第11号証(甲11):特開2014-4590号公報
甲第12号証(甲12):特開2003-211631号公報
甲第13号証(甲13):特開2018-109232号公報
甲第14号証(甲14):鶴田加一,「マイクロ接合実装品(材料編)-Pbフリーはんだ材料-」,溶接学会誌第80巻第7号,平成23年10月5日,43?50ページ
甲第15号証(甲15):知的財産高等裁判所平成20年(行ケ)第10107号判決書

なお、甲第1?15号証をそれぞれ甲1?甲15ということがある。

(1)申立理由1(サポート要件) 特許異議申立書3(4)(4.5)第68?78ページ
申立人は、証拠として甲3、甲4、甲8、甲13、甲14を提示し、本件特許発明1?6は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、請求項1?6に係る特許は同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである旨を主張する。
なお、甲3は、特許異議申立書3(3)第23ページにサポート要件に関わる証拠として挙げられていないものの、特許異議申立書3(4.5)第73ページの説明において、「はんだ組成物の活性剤としてイミダゾール化合物を用いること」という周知技術、及び「チクソ剤をはんだ組成物に添加すること」という周知技術の証拠として用いられている。


(2)申立理由2(明確性) 特許異議申立書3(4)(4.6)第79?84ページ
申立人は、証拠として甲2、甲3、甲12、甲14、甲15を提示し、本件特許発明1?6は、明確でないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、請求項1?6に係る特許は同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである旨を主張する。
なお、甲2は、特許異議申立書3(3)第24ページに明確性に関わる証拠として挙げられていないものの、特許異議申立書3(4.6)第83ページの説明において、「イミダゾールを活性剤として用いる」ことの証拠として用いられている。

(3)申立理由3(実施可能要件) 特許異議申立書3(4)(4.7)第84?85ページ
申立人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1?6について、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度に記載されているとはいえず、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1?6に係る特許は同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである旨を主張する。

(4)申立理由4(新規性)、申立理由5(進歩性) 特許異議申立書3(4)(4.8)第85?107ページ
(4-1)特許異議申立書3(4)(4.8.1)において、申立人は、主たる証拠として甲1を、従たる証拠として甲4?11、13?14を提示し、本件特許発明1?3、6は特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1?6は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?6に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである旨を主張する。
なお、甲14は、特許異議申立書3(3)第24ページにおいて新規性進歩性に関わる証拠として挙げられていないものではあるが、特許異議申立書3(4)(4.8.1)第86ページに記載された「技術常識3」を裏付ける証拠として、特許異議申立書3(4)(4.3.2)第65ページに「甲14には、ソルダーペーストの粘度はJIS Z 3284に準拠してPa・Sの単位をもって表示され、回転数としては通常、10rpmが採用されることが記載されている」ことが提示されているものである。

(4-2)特許異議申立書3(4)(4.8.2)において、申立人は、本件特許発明2、3の「当該はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下である」との構成が、本件特許の優先権主張の基礎とされた特願2018-65166号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載されてなく、上記構成を含む本件特許発明2?6についての新規性進歩性の判断の基準時は、本件特許の出願時である平成31年3月1日となる前提において、主たる証拠として甲2を、従たる証拠として甲1、4?8、11、13?14を提示し、上記構成を含む本件特許発明2?4、6は特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、上記構成を含む本件特許発明2?6は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項2?6に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである旨を主張する。
なお、甲14は、特許異議申立書3(3)第24ページに新規性進歩性に関わる証拠として挙げられていないものではあるが、特許異議申立書3(4)(4.8.2)第95ページに記載された「技術常識3」を裏付ける証拠として、特許異議申立書3(4)(4.3.2)第65ページに「甲14には、ソルダーペーストの粘度はJIS Z 3284に準拠してPa・Sの単位をもって表示され、回転数としては通常、10rpmが採用されることが記載されている」ことが提示されているものである。
また、甲1は、特許異議申立書3(3)第24ページにおいて、新規性進歩性に関わる証拠として「主引例」と記載されているものではあるが、甲2を主たる証拠とする場合には、特許異議申立書3(4)(4.8.2)第95?97ページの各ページに記載された「周知技術1」を裏付ける証拠として、特許異議申立書第66?67ページにおいて「粘度調整が、はんだ組成物を実用に供するにあたって行われること」及び「はんだ組成物の粘度は溶剤量を増減することでも容易に調整できる」ことが甲1の【0021】に提示されている点のみを取り上げた主張内容となっていることからみて、従たる証拠といえる。

(4-3)特許異議申立書3(4)(4.8.3)において、申立人は、主たる証拠として甲3を、従たる証拠として甲1、4?11、13?14を提示し、本件特許発明1?3、6は特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1?6は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?6に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである旨を主張する。
なお、甲14は、特許異議申立書3(3)第24ページに新規性進歩性に関わる証拠として挙げられていないものではあるが、特許異議申立書3(4)(4.8.3)第102ページ及び第103ページに記載された「技術常識3」を裏付ける証拠として、特許異議申立書3(4)(4.3.2)第65ページに「甲14には、ソルダーペーストの粘度はJIS Z 3284に準拠してPa・Sの単位をもって表示され、回転数としては通常、10rpmが採用されることが記載されている」ことが提示されているものである。
また、甲1は、特許異議申立書3(3)第24ページに挙げられた新規性進歩性に関わる証拠であり、そこでは「主引例」と記載されているものではあるが、甲3を主たる証拠とする場合には、特許異議申立書3(4)(4.8.3)第102ページ及び第103ページにそれぞれ記載された「周知技術1」を裏付ける証拠として、特許異議申立書第66?67ページにおいて「粘度調整が、はんだ組成物を実用に供するにあたって行われること」及び「はんだ組成物の粘度は溶剤量を増減することでも容易に調整できる」ことが甲1【0021】に提示されている点のみを取り上げた主張内容となっているため、従たる証拠といえる。

4 当審の判断
当審は、以下に述べるとおり、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできないと判断した。

(1)申立理由1(サポート要件)について
(1-1)申立人の主張の概要
ア.「プリヒート時のだれ」に関する課題解決手段
本件特許明細書の実施形態および実施例の記載を参照すると、本件特許明細書において「プリヒート時のだれ」の課題を解決できることが具体的に開示されているのは、以下の(a)?(c)を満たすものにとどまっている。
(a)チクソ指数が0.49以上0.71以下の範囲にある。
(b)チクソ剤(D)として、N,N’-ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドおよび水添ヒマシ油を併用するとともに、その合計量を所定範囲のものとする。
(c)イミダゾール化合物(E)として、2EZ、2E4MZ、または、2P4MZを用いるとともに、その合計量を所定範囲のものとする。
一方、本件特許請求項1は、チクソ剤(D)およびイミダゾール化合物(E)を含有させるという構成は記載されているものの、(D)および(E)の種類や添加量については記載がない上、だれの改善に必要な「十分なチクソ性」を備えることについても記載されていない。
したがって、本件特許請求項1は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えたものとなっている。
本件特許請求項2についても、同様の不備がある。

イ.ディスペンス塗布用はんだ組成物の粘度
本件特許請求項1は、「E型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下である」という構成を備えるところ、少なくとも50Pa・s以上92Pa・s以下の範囲および111Pa・s以上120Pa・s以下の範囲については、本件特許発明が解決しようとする課題を解決できることが把握できない。
本件特許請求項2についても、同様の記載の不備がある。

ウ.小括
したがって、本件特許請求項1、2およびこれを引用する本件特許請求項3?6は、いずれも特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たしていないものであり、請求項1?6に係る特許は同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

(1-2)当審の判断
ア.本件特許発明が解決しようとする課題
本件特許明細書の記載(【0005】)によれば、本件特許発明が解決しようとする課題は、「ディスペンス塗布法により塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、プリヒート時のだれを十分に抑制できるディスペンス塗布用はんだ組成物を提供すること」と認定できる。

イ.本件特許明細書の記載から把握される課題解決手段
(ア)本件特許明細書には、課題解決手段に関し、以下の記載がある。
a.「【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、次の知見を見出した。すなわち、ディスペンス塗布用はんだ組成物は、粘度が低いために、リフロー工程におけるプリヒート時にだれが発生しやすいが、このはんだ組成物中に、イミダゾール化合物を添加した場合には、驚くべきことに、粘度が低いままでも、プリヒート時のだれを抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のディスペンス塗布用はんだ組成物は、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末とを含有し、当該はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の他のディスペンス塗布用はんだ組成物は、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末とを含有し、当該はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下であることを特徴とするものである。」

b.「【0011】
本実施形態においては、はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下であることが必要である。粘度が50Pa・s未満の場合には、プリヒート時のだれを十分に抑制できない。他方、粘度が120Pa・s超である場合には、ディスペンス塗布法より塗布する場合において、十分な塗布性を維持できない。また、プリヒート時のだれと塗布性とを両立するという観点から、はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度は、70Pa・s以上115Pa・s以下であることがより好ましく、90Pa・s以上110Pa・s以下であることが特に好ましい。
また、本実施形態においては、はんだ組成物のE型粘度計により測定したチクソ指数は、0.40以上0.90以下であることが好ましく、0.45以上0.80以下であることがより好ましく、0.65以上0.75以下であることが特に好ましい。チクソ指数が前記範囲内であれば、ディスペンス塗布法により塗布する場合において、十分な塗布性を維持できる。
粘度およびチクソ指数は、JIS Z3284付属書6に準拠して、E型粘度計により測定できる。
また、本実施形態においては、プリヒート時のだれと塗布性とを両立するという観点から、はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下であることが好ましく、80Pa・s以上120Pa・s以下であることがより好ましい。ここで、レオメーターとしては、例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の『MARS III』を用いることができる。」

c.「【0017】
(A)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、25質量%以上60質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上52質量%以下であることが特に好ましい。(A)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだ付ランドの銅箔面の酸化を防止してその表面に溶融はんだを濡れやすくする、いわゆるはんだ付け性を向上でき、はんだボールを十分に抑制できる。他方、(A)成分の配合量が前記上限以下であれば、フラックス残さ量を十分に抑制できる。」

d.「【0021】
(B)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。(B)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだボールがより確実に抑制できる。他方、(B)成分の配合量が前記上限以下であれば、フラックス組成物の絶縁性を確保できる。」

e.「【0023】
(C)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、30質量%以上60質量%以下であることが好ましく、35質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。(C)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだ組成物の粘度およびチクソ性を適切な範囲に調整しやすい。他方、(C)成分の配合量が前記上限以下であれば、はんだ組成物の溶融時に残るフラックスの残さ中に溶剤がより残存しにくくなる。」

f.「【0025】
(D)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、3質量%以上15質量%以下であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。(D)成分の配合量が前記下限以上であれば、十分なチクソ性が得られ、プリヒート時のだれをより確実に抑制できる。他方、(D)成分の配合量が前記上限以下であれば、チクソ性が高すぎて、塗布不良となることはない。」

g.「【0027】
(E)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上3質量%以下であることが特に好ましい。(E)成分の配合量が前記下限以上であれば、プリヒート時のだれをより確実に抑制できる。他方、(E)成分の配合量が前記上限以下であれば、保存安定性を維持できる。」

h.「【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A1)成分)
ロジン系樹脂A:水添酸変性ロジン、商品名「KE-604」、荒川化学工業社製((A2)成分)
ロジン系樹脂B:完全水添ロジン、商品名「フォーラルAX」、双日社製
((A3)成分)
ロジン系樹脂C:重合ロジン、商品名「中国重合ロジン140」、荒川化学工業社製
((B)成分)
活性剤A:コハク酸
活性剤B:グルタル酸
活性剤C:ピコリン酸
((C)成分)
溶剤A:2-エチルヘキシルジグリコール、日本乳化剤社製
溶剤B:α,β,γ-ターピネオール、商品名「ターピネオールC」、日本テルペン化学社製
((D1)成分)
チクソ剤A:N,N’-ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、商品名「スリパックスZHH」、日本化成社製
((D2)成分)
チクソ剤B:水添ヒマシ油、商品名「ヒマ硬」、KFトレーディング社製
((E)成分)
イミダゾール化合物A:2-エチルイミダゾール、商品名「2EZ」、四国化成工業社製イミダゾール化合物B:2-エチル-4-メチルイミダゾール、商品名「2E4MZ」、四国化成工業社製
イミダゾール化合物C:2-フェニル-4-メチルイミダゾール、商品名「2P4MZ」、四国化成工業社製
((F)成分)
ピラゾール化合物:3,5-ジメチルピラゾール
((G)成分)
はんだ粉末A:粒子径5?15μm、はんだ融点216?220℃、はんだ組成Sn/3.0Ag/0.5Cu
はんだ粉末B:粒子径20?36μm、はんだ融点216?220℃、はんだ組成Sn/3.0Ag/0.5Cu
(その他の成分)
酸化防止剤A:商品名「イルガノックス MD1024」、BASF社製
酸化防止剤B:商品名「イルガノックス245」、BASF社製
【0040】
[実施例1]
ロジン系樹脂A22質量%、ロジン系樹脂B7質量%、ロジン系樹脂C8質量%、チクソ剤A6.6質量%、チクソ剤B1.8質量%、酸化防止剤A0.9質量%、酸化防止剤B1.8質量%、活性剤A0.5質量%、活性剤B4質量%、活性剤C1質量%、イミダゾール化合物A1.8質量%、ピラゾール化合物0.4質量%、溶剤A32.3質量%および溶剤B11.9質量%をそれぞれ容器に投入し、マントルヒーターにて160℃に加熱しつつ、混練機(プラネタリーミキサー)にて混合してフラックス組成物を得た。
その後、得られたフラックス組成物14.8質量%およびはんだ粉末85.2質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、混練機(プラネタリーミキサー)にて混合することで、はんだ組成物を調製した。
また、得られたはんだ組成物について、JIS Z3284付属書6に準拠し、E型粘度計により測定を行った。回転数を10rpm、温度を25℃にして、粘度値η(単位:mPa・s)を読み取った。また、上記と同様にして、回転数を30rpmに調整した場合の粘度値(30rpm粘度)と、回転数を3rpmに調整した場合の粘度値(3rpm粘度)とを読み取った。そして、下記式に基づいて、チクソ指数を算出した。得られた結果を表1に示す。
チクソ指数=log[(3rpm粘度)/(30rpm粘度)]
さらに、得られたはんだ組成物について、レオメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の「MARS III」)を用いて、せん断速度10s-1の条件で、温度25℃における粘度の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0041】
[実施例2?6および比較例1?3]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にしてはんだ組成物を得た。
また、得られたはんだ組成物について、実施例1と同様にして、粘度およびチクソ指数を測定した。
【0042】
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の性能(塗布性、加熱だれ、チップ脇ボール)を以下のような方法で評価または測定した。得られた結果を表1に示す。
(1)塗布性
ディスペンス塗布装置(武蔵エンジニアリング社製の「SHOT mini」)を用いて、下記の塗布条件にて、基板(材質:アルミニウム、大きさ:150mm×150mm、厚み:0.5mm)上の100mm×100mmの範囲内に等間隔で10000点の吐出(100点×100列)を行って試験基板を得た。
ニードルにおけるノズル径(直径):0.4mm
押圧部での圧力:120kPa
塗布時間:0.3秒間
タクト:1ショット/秒
クリアランス:0.35mm
塗布温度:25℃
そして、得られた試験基板を目視にて観察し、以下の基準に従って、塗布性を評価した。
○:未塗布が発生しなかった。
△:未塗布が発生したが、未塗布の数は、100個当たり、5個以下である。
×:未塗布が発生し、未塗布の数は、100個当たり、5個超である。
(2)加熱だれ
JIS Z 3284-3:2014に記載の方法に準拠して、加熱だれの試験を行う。すなわち、銅張積層板(大きさ:80mm×60mm、厚み:1.6mm)を準備し、研磨剤で研磨し、IPAで表面をふいた。そして、この銅張積層板上に、(i)3.0×0.7mmまたは(ii)3.0×1.5mmの2種類のパターンの孔をもち、それを0.1mmステップで配置している2種類のパターン孔をもつ厚み0.2mmのメタルマスクを使用し、はんだ組成物を印刷して試験基板を得た。この試験基板に対し、図2に示すリフロー条件にて、酸素濃度1000ppm以下の雰囲気下にてリフロー処理を施した。得られた試験基板を目視にて観察し、2種類のパターンの5列のうち、印刷されたはんだ組成物のすべてが一体にならない最小間隔で、加熱だれを評価した。なお、この最小間隔が小さいほど、加熱だれが良好である。
(3)チップ脇ボール
チップ部品(3216CRチップ)を搭載できる評価用基板(タムラ製作所社製の「SP-011」)に、上記(1)塗布性の試験と同様の条件で、はんだ組成物を塗布し、チップ部品38個を搭載して試験基板を得た。この試験片に対し、図2に示すリフロー条件にて、酸素濃度1000ppm以下の雰囲気下にてリフロー処理を施した。得られた試験基板を拡大鏡にて観察し、チップ部品の脇に発生したはんだボールの数(個)を測定した。なお、比較例2については、塗布性が不良であったため、チップ脇ボールの評価をしなかった。
【0043】
【表1】



(イ)上記(ア)a.?g.の摘記記載によれば、本件特許明細書において、本件特許発明の「ディスペンス塗布用はんだ組成物」の上記ア.の課題は、以下a.及びb.の各要件を備えることで解決できることが説明されている。

a.はんだ組成物の構成成分として「(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末」を含有すること。(以下、「組成要件」という。)

なお、本件特許明細書の記載によると、(G)はんだ粉末に対し上記のような各成分を有するフラックス組成物を含有させる上記「組成要件」の技術的意味に関しては、(A)成分のロジン系樹脂について【0017】、(B)成分の活性剤について【0021】、(C)成分の溶剤について【0023】、(D)成分のチクソ剤について【0025】、(E)成分のイミダゾール化合物について【0027】の記載により、それぞれ把握できるところ、【0006】の記載によると、本件特許発明は、特に(E)成分を添加したことにより「粘度が低いままでも、プリヒート時のだれを抑制できる」ことを可能とした点に、従来にはない格別な特徴があると理解される。

b.はんだ組成物の粘度範囲を、ディスペンス塗布用のものとして、本件特許請求項1記載の「E型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下」、又は本件特許請求項2記載の「レオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下」に特定すること。(以下、「粘度要件」という。)

なお、上記「粘度要件」の技術的意味は、【0011】に「プリヒート時のだれと塗布性とを両立する」と記載されるとおりである。

(ウ)そして、上記(ア)h.の摘記記載によれば、本件特許明細書には、「ディスペンス塗布用はんだ組成物」に関し、
a.上記(イ)a.の「組成要件」を満たす範囲で、(D)成分のチクソ剤、(E)成分のイミダゾール化合物も含む各成分の種類・添加量が特定の組み合わせとなっており、
b.上記(イ)b.の「粘度要件」を、E型粘度計により測定した25℃における粘度を93Pa・s以上110Pa・s以下の範囲内でそれぞれ満足し、レオメーターにより測定した25℃における粘度を96Pa・s以上113Pa・s以下の範囲内で満足する実施例1?6が示されており、それぞれ上記ア.の課題を解決する評価結果が得られている。
そうすると、本件特許明細書に記載された上記課題を確実に解決する手段として、実施例1?6それぞれの条件で特定される「ディスペンス塗布用はんだ組成物」が把握できる。

なお、本件特許明細書に開示された比較例は、いずれもディスペンス塗布用の(E)成分のイミダゾール化合物を有していないものであり、いずれも上記ア.の課題を解決出来ていない評価結果が示されている。その具体的な比較例としては、E型粘度計により測定した25℃における粘度とレオメーターにより測定した25℃における粘度とが、いずれも上記「粘度要件」を満たしているものの、プリヒート時のだれを十分に抑制できない比較例1,3と、E型粘度計により測定した25℃における粘度とレオメーターにより測定した25℃における粘度とが、いずれも上記「粘度要件」の上限値を超え、十分な塗布性を有していない比較例2とが示されている。

ウ.本件特許発明がサポート要件を満たしているか否かの具体的判断
(ア)本件特許発明は、いずれも、上記イ.(イ)a.の「組成要件」及び上記イ.(イ)b.の「粘度要件」を満たす「ディスペンス塗布用はんだ組成物」として特定されているが、上記イ.(ウ)のような実施例1?6それぞれの条件で特定され、上記ア.の課題を確実に解決するもの以外の上記「組成要件」及び上記「粘度要件」の「ディスペンス塗布用はんだ組成物」を範囲に含んでいる。

(イ)しかしながら、上記「組成要件」については、本件特許明細書に上記イ.(イ)a.のなお書きのような各成分の技術的意味の説明が記載されており、(E)成分のイミダゾール化合物が実施例1?6を通じて計3種類試された上で得られている上記課題を解決する評価結果と、上記イ.(ウ)のなお書きのような比較例の評価結果とは、上記各成分の技術的意味の説明に対して矛盾をする点もない。そうすると、その「組成要件」の範囲内であれば、たとえ、(D)成分のチクソ剤及び(E)成分のイミダゾール化合物の種類や添加量が実施例1?6に記載された「ディスペンス塗布用はんだ組成物」のいずれかに該当しない場合でも、当業者は、その技術的意味を踏まえた上で上記課題を解決することを期待できる。
また、本件特許明細書の上記イ.(ア)e.及びf.の記載によれば、実施例1?6に記載された「ディスペンス塗布用はんだ組成物」のいずれかに該当しない場合でも、少なくとも上記「組成要件」の(C)成分の溶剤及び(D)成分のチクソ剤により、当業者は、だれの改善に必要な「十分なチクソ性」を備えることを期待できる。
よって、「本件特許請求項1は、チクソ剤(D)およびイミダゾール化合物(E)を含有させるという構成は記載されているものの、(D)および(E)の種類や添加量については記載がない上、だれの改善に必要な『十分なチクソ性』を備えることについても記載されていない。」及び「本件特許請求項2についても、同様の不備がある。」との、上記(1-1)ア.に関する申立人の主張は理由がない。

(ウ)また、上記「粘度要件」については、本件特許明細書に上記イ.(イ)b.のなお書きのような技術的意味の説明が記載されており、当業者であれば、上記イ.(ウ)b.で触れた実施例1?6のような「E型粘度計により測定した25℃における粘度を93Pa・s以上110Pa・s以下の範囲内」ではなく、かつ「レオメーターにより測定した25℃における粘度を96Pa・s以上113Pa・s以下の範囲内」でもない、該「粘度要件」における粘度範囲の上限値及び下限値の技術的意味も含めて理解をし、上記課題を解決することを期待できる。
よって、「本件特許請求項1は、『E型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下である』という構成を備えるところ、少なくとも50Pa・s以上92Pa・s以下の範囲および111Pa・s以上120Pa・s以下の範囲については、本件特許発明が解決しようとする課題を解決できることが把握できない。」及び「本件特許請求項2についても、同様の記載の不備がある。」との、上記(1-1)イ.に関する申立人の主張は理由がない。

エ.そうすると、本件特許発明は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものとはいえず、申立人のサポート要件に関する上記3(1)の主張は採用できない。

オ.申立理由1(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおりであるから、サポート要件に関する特許異議の申立ての理由を採用することはできない。

(2)申立理由2(明確性)について
(2-1)申立人の主張の概要
ア.ディスペンス塗布用はんだ組成物の粘度
本件特許請求項1および2における粘度の記載は、以下の(ア)?(ウ)の点で不明確である。
(ア)粘度の測定値は回転数によって異なる値となるところ、本件特許請求項1、2には回転数が特定されていない。
(イ)はんだ組成物のようなチクソ性を有する試料の粘度は、試料が受けたせん断履歴によって粘度の値が大きく変動する。粘度測定のタイミングが、試料となるはんだ組成物をセットした直後であるか、ロータを一定時間回転させた後であるかによって、得られる粘度の値が相違する。粘度測定のタイミングに関する条件が規定されていない本件特許請求項1および本件特許請求項2の記載では、得られる粘度が一義的に定まらない。
(ウ)本件特許請求項1および2は、はんだペーストを製造した直後に測定したものか、一定期間経た後に測定したものか、いつの時点の粘度であるかを特定していない。一般に、はんだペーストは、貯蔵している間、粘度が経時変化する。製造直後には本件特許請求項1の粘度範囲の外にあったものが、製造後一定期間を経た後に本件特許請求項1の粘度範囲内のものとなるという状況が生じ得る。本件特許請求項2についても同様である。

イ.「(B)活性剤」と「(E)イミダゾール化合物」との区別
本件特許請求項1および2には、フラックス組成物が(B)活性剤および(E)イミダゾール化合物を含有すると記載されている。イミダゾール化合物を活性剤として用いることは周知技術であることを踏まえると、当業者としては、(E)は(B)の下位概念であると理解する。したがって、(B)および(E)の特定は、両者が区別できない点で不明確である。たとえば、イミダゾール化合物を含有するがそれ以外の活性剤を含有しないフラックスが本件特許請求項1および2に規定されるフラックス組成物に該当するかが判別できない。

ウ.小括
したがって、本件特許請求項1、2およびこれを引用する本件特許請求項3?6は、いずれも特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たしていないから、請求項1?6に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2-2)当審の判断
ア.「ディスペンス塗布用はんだ組成物の粘度」について
(ア)本件特許発明の「ディスペンス塗布用はんだ組成物」に関し、本件特許請求項1および2に記載された各粘度は、それぞれ、どのような回転数で測定されたものであるのか、どのようなせん断履歴のタイミングで測定されたものであるのか、また、はんだペーストを製造してどれくらい後に測定したものであるのかは、特定されていない。

(イ)しかしながら、本件特許明細書の【0040】には、本件特許請求項1に記載されるE型粘度計による測定に関し、「得られたはんだ組成物について、JIS Z3284付属書6に準拠し、E型粘度計により測定を行った。回転数を10rpm、温度を25℃にして、粘度値η(単位:mPa・s)を読み取った。」との説明がなされ、また、本件特許請求項2に記載されるレオメーターによる測定に関し、「得られたはんだ組成物について、レオメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の『MARS III』)を用いて、せん断速度10s^(-1)の条件で、温度25℃における粘度の測定を行った。」との説明がなされており、本件特許請求項1および2に記載された各粘度は、それぞれこのような条件で測定されたものと理解できる上に、粘度測定を行うための条件として特に不足の点もない。
なお、本件特許請求項1に記載されるE型粘度計による粘度測定に関し、本件特許明細書の【0040】に記載される「JIS Z3284付属書6」は、令和2年2月26日に提出された刊行物等提出書における刊行物7として抜粋されているように、細かな測定手順が明確に定められているものである。また、本件特許請求項2に記載されるレオメーターによって測定される粘度も、たとえば、特開2015-160861号公報に、
「【0051】
<可使時間測定>
実施例1?10及び比較例1?4のカチオン重合性樹脂組成物について、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製レオメーターMARS IIを用い、せん断速度1[1/s]、25℃での粘度を測定した。」
と記載されてもいるように、装置が特定された場合の測定条件としては、温度とせん断速度とを特定するのみで十分であることも知られている。

(ウ)また、本件特許発明の「ディスペンス塗布用はんだ組成物」は、「ディスペンス塗布法により塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、プリヒート時のだれを十分に抑制できるディスペンス塗布用はんだ組成物を提供すること」という上記(1)(1-2)ア.の課題を解決するために適切な粘度が特定されたものであるから、その粘度測定時からディスペンス塗布法により塗布されるまでの間に、粘度がさほど変化してない、すなわち性能がさほど劣化していない範囲で使用されることは明らかであり、また、そのような期間内に使用されることが当然の前提であるから、明確性の観点より、粘度をはんだペーストを製造してどれくらい後に測定したものであるのかまで、本件特許発明を特定する必要性は見いだせないし、その点が明記されないからといって第三者に不測の不利益をあたえるものともいえない。

(エ)よって、上記(ア)?(ウ)で検討したとおり、本件特許請求項1および2における粘度の記載は、上記(2-1)ア.(ア)?(ウ)の点で不明確である旨の、申立人の主張は理由がない。

イ.「(B)活性剤」と「(E)イミダゾール化合物」と区別することの技術的意味について
(ア)本件特許発明の「ディスペンス塗布用はんだ組成物」に関し、本件特許請求項1および2には、フラックス組成物が「(B)活性剤」および「(E)イミダゾール化合物」を含有することが記載されている。

(イ)そして、本件特許発明の「(E)イミダゾール化合物」は、上記(1)(1-2)イ(イ)a.のなお書きで述べたように、「粘度が低いままでも、プリヒート時のだれを抑制できる」ことを可能とした点に、従来にはない格別な特徴がある成分である一方、本件特許発明の「(B)活性剤」は、「はんだ組成物」における通常の「活性剤」の役割が期待されるのみの成分と解されるから、本件特許発明における「(B)活性剤」と「(E)イミダゾール化合物」との技術的意味は、明確に区別をして理解をすることができる。

(ウ)よって、上記(ア)?(イ)で検討したとおり、本件特許請求項1および2に記載の(B)活性剤および(E)イミダゾール化合物の特定は両者が区別できない点で不明確である旨の、上記(2-1)イ.の申立人の主張は理由がない。

ウ.小括
そうすると、上記(2-1)ア.及びイ.の申立人の主張はともに理由がなく、申立人の明確性に関する上記3(2)の主張は採用することはできない。

エ.申立理由2(明確性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、明確性に関する特許異議の申立ての理由を採用することはできない。

(3)申立理由3(実施可能要件)について
(3-1)申立人の主張の概要
ア.実施例に開示される範囲を外れるディスペンス塗布用はんだ組成物の粘度
本件特許請求項1の粘度範囲のうち、少なくとも50Pa・s以上92Pa・s以下の範囲および111Pa・s以上120Pa・s以下の範囲については、「十分な塗布性を有し、かつ、プリヒート時のだれを十分に抑制できるディスペンス塗布用はんだ組成物」を作製した例が示されておらず、本件特許明細書の記載を考慮してもそのようなはんだ組成物をどのようにすれば作製できるのか、当業者は理解することはできない。本件特許請求項2の70Pa・s以上95Pa・s以下の粘度範囲および114Pa・s以上130Pa・s以下の粘度範囲についても同様のことがいえる。
したがって、本件特許請求項1、2およびこれを引用する本件特許請求項3?6に係る発明について、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

イ.小括
したがって、本件特許請求項1?6に係る発明について、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定される要件を満たしていないものであり、請求項1?6に係る特許は同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

(3-2)当審の判断
ア.実施例に開示される範囲を外れるディスペンス塗布用はんだ組成物の粘度について
(ア)本件特許明細書において、「十分な塗布性を有し、かつ、プリヒート時のだれを十分に抑制できるディスペンス塗布用はんだ組成物」を作製した実施例(【0043】の【表1】)が示されているのは、本件特許請求項1記載の、E型粘度計により測定した25℃における、ディスペンス塗布用はんだ組成物の粘度範囲(50Pa・s以上120Pa・s以下)のうち、93Pa・s以上110Pa・s以下の範囲であり、本件特許請求項2記載の、レオメーターにより測定した25℃における、ディスペンス塗布用はんだ組成物の粘度範囲(70Pa・s以上130Pa・s以下)のうち、96Pa・s以上113Pa・s以下の範囲となっている。

(イ)しかしながら、本件特許明細書の【0012】に「粘度およびチクソ指数は、いずれもロジン系樹脂、溶剤およびチクソ剤の種類や配合量を変更することにより調整できる。」と記載されているとおり、これらの種類や配合量を変えることで、本件特許明細書の実施例に開示される範囲を外れる本件特許請求項1記載のディスペンス塗布用はんだ組成物の粘度及び本件特許請求項2記載のディスペンス塗布用はんだ組成物の粘度を実現することも、それぞれ当業者が過度な試行錯誤を要することなく可能であったと判断される。

(ウ)そうすると、本件特許発明は、実施例に開示される範囲を外れる粘度のディスペンス塗布用はんだ組成物に関しても、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載から当業者が実施することができたものと判断されるから、申立人の実施可能要件に関する上記3(3)の主張は採用できない。

イ.申立理由3(実施可能要件)についてのまとめ
以上のとおりであるから、実施可能要件に関する特許異議の申立ての理由を採用することはできない。

(4)申立理由4(新規性進歩性)について
上記2(2)で検討したように、「当該はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下である」との構成を含む本件特許発明2?6についての新規性進歩性の判断の基準時は、本件特許に係る出願の出願時である平成31年3月1日であり、上記3の冒頭で、本件特許に係る出願前かつ優先日後に日本国内または外国において頒布されたまたは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物として提示をした甲2、甲4、甲13は、以下で、新規性進歩性の判断の基準時が本件特許に係る出願の出願時となる、上記本件特許発明2?6に対してのみ検討する。

ア.甲1?11、13?14の記載事項及び甲1?3記載の発明
(ア)甲1の記載事項及び甲1記載の発明
(ア-1)甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がある。
なお、下線は、当審が特に参考にした部分を示し、点線(・・・)は、当審が記載抽出を省略した部分を示す(以下同じ。)。

a.
「【請求項1】
(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤および(D)アミン系化合物を含有するフラックスと、(E)はんだ粉末とを含有し、
前記(A)成分は、(A1)軟化点が100℃以下の低軟化点ロジン系樹脂を含有する
ことを特徴とするはんだ組成物。」

b.
「【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のはんだ組成物において、
前記(D)成分が、イミダゾール系化合物である
ことを特徴とするはんだ組成物。」

c.
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0006】 本発明は、スズメッキなどが施された鋼板などのはんだぬれ性を、はんだ組成物の組成の観点から改良した技術であり、本発明の目的は、スズメッキへのはんだぬれ性が優れ、かつはんだ付け部分での腐食を十分に抑制できるはんだ組成物を提供することにある。」

d.
「【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のようなはんだ組成物およびプリント配線基板を提供するものである。
すなわち、本発明のはんだ組成物は、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤および(D)アミン系化合物を含有するフラックスと、(E)はんだ粉末とを含有し、前記(A)成分は、(A1)軟化点が100℃以下の低軟化点ロジン系樹脂を含有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明のはんだ組成物においては、前記(A)成分は、さらに(A2)軟化点が100℃超の高軟化点ロジン系樹脂を含有し、前記(A1)成分の配合量は、前記(A1)成分および前記(A2)成分の合計量100質量部に対して、10質量部以上35質量部以下であることが好ましい。
本発明のはんだ組成物においては、前記(D)成分が、イミダゾール系化合物であることが好ましい。・・・」

e.
「【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スズメッキへのはんだぬれ性が優れ、かつはんだ付け部分での腐食を十分に抑制できるはんだ組成物を提供できる。」

f.
「【0014】
[(A)成分]
本発明に用いる(A)ロジン系樹脂としては、ロジン類およびロジン系変性樹脂が挙げられる。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。ロジン系変性樹脂としては、ディールス・アルダー反応の反応成分となり得る前記ロジン類の不飽和有機酸変性樹脂((メタ)アクリル酸などの脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸などの芳香族環を有する不飽和カルボン酸等の変性樹脂)およびこれらの変性物などのアビエチン酸、並びに、これらの変性物を主成分とするものなどが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
本発明において、前記(A)成分は、(A1)軟化点が100℃以下の低軟化点ロジン系樹脂を含有することが必要である。このような(A1)成分としては、前記(A)成分のうち、軟化点が100℃以下の低軟化点ロジン系樹脂が挙げられる。また、はんだぬれ性の観点からは、前記低軟化点ロジン系樹脂の軟化点は、90℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましい。なお、軟化点は、環球法により測定できる。 本発明において、前記(A)成分は、(A2)軟化点が100℃超の高軟化点ロジン系樹脂を含有することが好ましい。このような(A2)成分としては、前記(A)成分のうち、軟化点が100℃超の高軟化点ロジン系樹脂が挙げられる。また、印刷性などの観点からは、前記高軟化点ロジン系樹脂の軟化点は、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。 なお、前記(A)成分の軟化点を調整する手段としては、ロジンの重合度合を調整することや(重合度合が高くなるほど、軟化点が高くなる傾向にある)、ロジンの変性方法を変更することや(例えば、アクリル酸やマレイン酸により変性することで、軟化点が高くなる傾向にある)、ロジンの分子量を調整することや(分子量が高くなるほど、軟化点が高くなる傾向にある)、ロジンに水素化反応を施すことや、ロジンにエステル化反応またはエステル交換反応を施すことなどが挙げられる。 前記(A1)成分の配合量は、前記(A1)成分および前記(A2)成分の合計量100質量部に対して、10質量部以上35質量部以下であることが好ましく、15質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
【0016】
前記(A)成分の配合量は、フラックス100質量%に対して、30質量%以上70質量%以下であることが好ましく、40質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。(A)成分の配合量が前記下限未満では、はんだ付ランドの銅箔面などの酸化を防止してその表面に溶融はんだをぬれやすくする、いわゆるはんだ付性が低下し、はんだボールが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フラックス残さ量が多くなる傾向にある。」

g.
「【0017】
[(B)成分] 本発明に用いる(B)活性剤としては、有機酸、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤、アミン系活性剤などが挙げられる。
・・・
【0019】
前記(B)成分の配合量としては、フラックス100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上6質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上5.5質量%以下であることが特に好ましい。(B)成分の配合量が前記下限未満では、はんだボールが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フラックスの絶縁性が低下する傾向にある。」

h.
「【0020】
[(C)成分] 本発明に用いる(C)溶剤としては、公知の溶剤を適宜用いることができる。
・・・
【0021】
前記(C)成分の配合量は、フラックス100質量%に対して、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。溶剤の配合量が前記範囲内であれば、得られるはんだ組成物の粘度を適正な範囲に適宜調整できる。」

i.
「【0022】
[(D)成分]
本発明に用いる(D)アミン系化合物としては、例えば、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物が挙げられる。これらのアミン系化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
イミダゾール化合物としては、ベンゾイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)、2-ウンデシルイミダゾールなどが挙げられる。
トリアゾール化合物としては、ベンゾトリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-1-メタノール、1-メチル-1H-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0023】
前記(D)成分の配合量は、フラックス100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上1質量%以下であることが特に好ましい。(D)成分の配合量が前記下限未満では、はんだの未溶融や基板ランドへの不ぬれが発生しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られるはんだ組成物の保存安定性が低下する傾向にある。」

j.
「【0024】
[他の成分]
本発明に用いるフラックスには、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分の他に、必要に応じて、チクソ剤やその他の添加剤、更には、その他の樹脂を加えることができる。その他の添加剤としては、酸化防止剤、消泡剤、改質剤、つや消し剤、発泡剤などが挙げられる。その他の樹脂としては、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0025】
本発明に用いるチクソ剤としては、硬化ひまし油、アミド類、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリットなどが挙げられる。これらのチクソ剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
前記チクソ剤の配合量は、フラックス100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上6質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。配合量が前記下限未満では、チクソ性が得られず、ダレが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、チクソ性が高すぎて、塗布不良となりやすい傾向にある。」

k.
「【0027】
[(E)はんだ粉末] 本発明に用いる(E)はんだ粉末は、無鉛のはんだ粉末のみからなることが好ましいが、有鉛のはんだ粉末であってもよい。・・・」

l.
「【0030】
[はんだ組成物によるはんだ接合の方法]
次に、本発明のはんだ組成物によるはんだ接合の方法について説明する。本発明のはんだ組成物は、電子機器用の筐体(特にスズメッキ品)同士の接合をするのに、特に好適なものであるので、ここでは、スズメッキが施された筐体同士をはんだ接合により固定する方法を例に挙げて説明する。
この筐体としては、スズメッキが施されていればよく、他の処理(エッチング処理、他のメッキ処理など)が更に施されているものでもよい。
この筐体同士の接触部分にはんだ組成物を塗布し、リフロー炉により所定条件にて加熱して(リフロー工程)、筐体同士をはんだ接合し、固定を行う。
ここで用いる塗布装置としては、スクリーン印刷機、メタルマスク印刷機、ディスペンサー、ジェットディスペンサーなどが挙げられる。」

m.
「【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A2)成分)
ロジン系樹脂A:水添酸変性ロジン(軟化点:130℃)
ロジン系樹脂B:重合ロジン(軟化点:140℃)
ロジン系樹脂C:マレイン酸変性ロジン(軟化点:148℃)
((A1)成分)
ロジン系樹脂D:水添ロジンエステル(軟化点:85℃)
((B)成分)
活性剤:スベリン酸
((C)成分)
溶剤:ヘキシルジグリコール
((D)成分)
アミン系化合物:商品名「キュアゾール2E4MZ」、四国化成社製
((E)成分)
はんだ粉末:平均粒子径28μm、はんだ融点217?224℃、はんだ組成Sn98.3質量%/Ag1.0質量%/Cu0.7重量%
(他の成分)
チクソ剤:脂肪酸アマイド(脂肪酸アミド)、商品名「スリパックスH」、日本化成社製
酸化防止剤:ヒンダントフェノール系酸化防止剤、商品名「イルガノックス245」、チバ・ジャパン社製
【0034】
[実施例1]
ロジン系樹脂A26質量部、ロジン系樹脂B15質量部、ロジン系樹脂D10質量部、活性剤5質量部、溶剤35質量部、アミン化合物1質量部、チクソ剤4質量部および消泡剤4質量部を容器に投入し、らいかい機を用いて混合してフラックスを得た。
その後、得られたフラックス11.4質量%およびはんだ粉末88.6質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、混練機にて混合することではんだ組成物を調製した。
【0035】
[実施例2?3および比較例1?6]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。」

n.
「【0036】
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の評価(加熱時のダレ幅、腐食試験、スズメッキ基板へのぬれ広がり)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
(1)加熱時のダレ幅
セラミック基板(大きさ:25mm×25mm、厚み:0.6mm)を準備する。直径3mmφの円形のパターン孔を3つ有する厚み0.2mmのメタルマスクを使用し、このセラミック基板上にはんだ組成物を印刷して試験板とした。ここで、印刷後のペーストの直径(L1)を測定する。その後、170℃に加熱された炉中にこの試験板を入れ、1分間加熱した。そして、加熱後のペーストの直径(L2)を測定した。加熱後のペーストの直径(L2)から印刷後のペーストの直径(L1)を引いて、加熱時のダレ幅(L2-L1)(単位:mm)を算出した。
(2)腐食試験
JIS Z 3284(1994)に記載の方法に準じて、腐食試験を行う。すなわち、酸化被膜を除去したリン脱酸銅板(大きさ:50mm×50mm、厚み:0.5mm)を準備する。なお、この試験では、2枚のリン脱酸銅板を使用する。図1に示すように、リン脱酸銅板の両端5mmの部分でコの字型に曲げたものを第一基板Aとし、両端6mmの部分をコの字型に曲げたものを第二基板Bとした。第二基板Bに、直径6.5mmφの円形のパターン孔を4つ有する厚み0.2mmのメタルマスクを使用し、はんだ組成物Pを印刷した。この第二基板Bに第一基板Aを被せて試験片とする。試験片を温度235±2℃に調節されたホットプレートに載せ、はんだ溶融後5秒間保持した。かかる試験片を3組作成し、1組は室温保管しブランク基板とする。残りの2組は温度40℃、相対湿度90%に設定した恒温恒湿槽内に投入し、96時間放置して、試験後の試験片を得た。試験後の試験片と、ブランク基板とを比較し、第一基板Aおよび第二基板Bでの残さの変色および残さをIPAで洗浄し、銅の変色がないか目視で確認を行い、以下の基準に基づいて、銅箔の変色を評価した。
○:残さおよび銅の変色が無い。
△:残さの変色はあるが、銅面は変色していない。
×:残さの変色があり、銅面が変色している。
(3)スズメッキ基板へのぬれ広がり
無電解スズメッキを施した銅板(大きさ:30mm×30mm、厚み:0.5mm)に、はんだ組成物を0.30gになるように乗せ、その後ホットプレートで、はんだの液相線温度(融点)より50℃高い温度にて30秒間加熱する。その後、ホットプレートから取り出した試験片を室温まで冷却する。そして、マイクロメーターで広がったはんだの高さ(H)を測定し、広がり率(Sr)を下記式(F1)より求める。
Sr=(D-H)/D×100 ・・・(F1)
D=1.24V1/3 ・・・(F2)
Sr:広がり率(%)
H:広がったはんだの高さ(mm)
D:試験に用いたはんだを球とみなした場合の直径(mm)
V:試験に用いたはんだの質量/密度
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のはんだ組成物を用いた場合(実施例1?3)には、スズメッキへのはんだぬれ性が優れ、かつはんだ付け部分での腐食を十分に抑制できることが確認された。なお、本発明のはんだ組成物は、加熱時のダレ幅が比較的に大きい傾向にあり、それによりはんだ溶融時のスズメッキへのはんだぬれ性が向上したことが確認された。
これに対し、はんだ組成物の組成において、(A1)成分を含まない場合(比較例1?6)には、スズメッキ基板へのぬれ広がりが不十分であり、しかもはんだ付け部分での腐食を十分に抑制できないことが分かった。」

(ア-2)甲1記載の発明
a.上記(ア-1)のc.の【0006】から、甲1記載の発明は、スズメッキへのはんだぬれ性が優れ、かつはんだ付け部分での腐食を十分に抑制できるはんだ組成物を提供することを解決すべき課題とするものといえる。

b.当該課題の解決手段として、上記(ア-1)のd.の【0007】には、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤および(D)アミン系化合物を含有するフラックスと、(E)はんだ粉末とを含有するはんだ組成物であって、「(A)成分は、(A1)軟化点が100℃以下の低軟化点ロジン系樹脂を含有することを特徴するもの」が記載され、さらに【0008】には、「(D)成分が、イミダゾール系化合物であることが好ましい。」ことが記載されている。
また、上記(ア-1)のj.の【0024】には、甲1記載の発明に用いる「フラックス」について、必要に応じて、「チクソ剤」を加えることができるとの記載がある。

c.上記(ア-1)のm.及びn.には、実施例1?3として、(A)ロジン系樹脂としての(A1)軟化点が100℃以下の低軟化点ロジン系樹脂D、(B)活性剤、(C)溶剤および(D)アミン系化合物、さらにはチクソ剤を含有するフラックスと、(E)はんだ粉末とを含有するはんだ組成物についての具体的な評価結果が記載されている。
かかる実施例1?3は、上記(ア-1)のa.の【請求項1】に記載された「はんだ組成物」の一例であることはもちろん、上記(ア-1)のm.の【0033】に記載された(D)成分のアミン系化合物:商品名「キュアゾール2E4MZ」は、上記(ア-1)のi.の【0022】に「2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)」と記載されていることからみて、上記(ア-1)のb.の【請求項3】で特定される「イミダゾール系化合物」であることも明らかである。
そして、ここではまず、これら実施例のうち「実施例1」に着目する。

d.上記(ア-1)のm.の説明を参酌しながらn.の【表1】を見ると、「実施例1」として示されたはんだ組成物は、11.4質量%のフラックスと88.6質量%の((E)成分)はんだ粉末:平均粒子径28μm、はんだ融点217?224℃、はんだ組成Sn98.3質量%/Ag1.0質量%/Cu0.7重量%とからなり、該フラックスの成分は、次のとおりである。
なお、以下における(A2)成分は、上記(ア-1)のf.の【0015】に記載されるように、(A)成分に含有される「(A2)軟化点が100℃超の高軟化点ロジン系樹脂」である。

[実施例1のフラックス(計 100%)の組成]
((A2)成分)
ロジン系樹脂A:水添酸変性ロジン(軟化点:130℃) 26質量%
ロジン系樹脂B:重合ロジン(軟化点:140℃) 15質量%
((A1)成分)
ロジン系樹脂D:水添ロジンエステル(軟化点:85℃) 10質量%
((B)成分)
活性剤:スベリン酸 5質量%
((C)成分)
溶剤:ヘキシルジグリコール 35質量%
((D)成分)
アミン系化合物:商品名「キュアゾール2E4MZ」、四国化成社製 1質量%
(他の成分)
チクソ剤:脂肪酸アマイド(脂肪酸アミド)、商品名「スリパックスH」、日本化成社製 4質量%
酸化防止剤:ヒンダントフェノール系酸化防止剤、商品名「イルガノックス245」、チバ・ジャパン社製 4質量%

e.上記(ア-1)のn.の【表1】に「実施例1」として示されたはんだ組成物は、同n.の【0034】に記載されるように、フラックスの各成分を、容器に投入し、らいかい機を用いて混合してフラックスを得た後、フラックスおよびはんだ粉末を容器に投入し、混練機にて混合することで調製したものであり、同n.の【0036】に具体的に記載された評価が行われ、(1)加熱時のダレ幅;0.18(mm)、(2)腐食試験;残さおよび銅の変色が無い、(3)スズメッキ基板へのぬれ広がり;94%という良好な結果が得られたものである。

f.そうすると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「11.4質量%のフラックスと88.6質量%の((E)成分)はんだ粉末:平均粒子径28μm、はんだ融点217?224℃、はんだ組成Sn98.3質量%/Ag1.0質量%/Cu0.7重量%とからなり、かつ、該フラックスが以下の成分(計100質量%)、
((A)成分)ロジン系樹脂A:水添酸変性ロジン(軟化点:130℃) 26質量%、ロジン系樹脂B:重合ロジン(軟化点:140℃) 15質量%、ロジン系樹脂D:水添ロジンエステル(軟化点:85℃) 10質量%、
((B)成分)活性剤:スベリン酸 5質量%、
((C)成分)溶剤:ヘキシルジグリコール 35質量%、
((D)成分)アミン系化合物:商品名『キュアゾール2E4MZ』、四国化成社製 1質量%、
(他の成分)チクソ剤:脂肪酸アマイド(脂肪酸アミド)、商品名『スリパックスH』、日本化成社製 4質量%、
酸化防止剤:ヒンダントフェノール系酸化防止剤、商品名『イルガノックス245』、チバ・ジャパン社製 4質量%
からなり、
(1)加熱時のダレ幅、(2)腐食試験、(3)スズメッキ基板へのぬれ広がりの評価において、いずれも良好な結果が得られるはんだ組成物」

(イ)甲2の記載事項及び甲2記載の発明
(イ-1)甲2の記載事項
甲2には、以下の記載がある。
a.
「【請求項1】
(A)樹脂と、(B)活性剤とを含有し、
前記(B)成分が、(B1)分子中に下記構造式(1)で表される構造を有するカルボン酸付加物、および、(B2)アミン類を含有する
ことを特徴とするフラックス組成物。



b.
「【請求項5】
請求項1?請求項4のいずれか1項に記載のフラックス組成物において、
前記(A)成分が、(A1)ロジン系樹脂である
ことを特徴とするフラックス組成物。」

c.
「【請求項10】
請求項1?請求項9のいずれか1項に記載のフラックス組成物と、はんだ粉末とを含有することを特徴とするはんだ組成物。」

d.
「【請求項11】
請求項10に記載のはんだ組成物において、
ジェットディスペンサーまたはディスペンサーを用いて塗布する
ことを特徴とするはんだ組成物。」

e.
「【背景技術】
【0002】
はんだ組成物は、はんだ粉末にフラックス組成物(ロジン系樹脂、活性剤および溶剤など)を混練してペースト状にした混合物である(特許文献1参照)。近年、はんだとしては、環境問題に配慮して、鉛(Pb)を含有しない鉛フリーはんだが広く使用されている。また、フラックス組成物としては、環境問題に配慮して、ハロゲンを削減したハロゲンフリーや、ハロゲンを全く含有しないノンハロゲンが求められている。」

f.
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のフラックス組成物中のハロゲン化合物は、優れた性能を有する活性剤として用いられている。しかしながら、ハロゲンフリーのフラックス組成物においては、ハロゲン系以外の活性剤で、活性作用を補う必要がある。そこで、活性剤組成として、例えば、有機酸とアミン類との併用などが検討されている。しかしながら、このような活性剤組成では、活性作用を補うことができ、はんだ溶融性は向上するものの、一部の有機酸とアミン類は常温で容易に反応してしまうため、保存安定性の点で問題があり、使用可能な材料に制限があった。」
【0005】
本発明は、十分なはんだ溶融性および十分な保存安定性を有するフラックス組成物、およびこれを用いたはんだ組成物、並びに、これらを用いた電子基板を提供することを目的とする。」

g.
「【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のようなフラックス組成物、はんだ組成物および電子基板を提供するものである。
本発明のフラックス組成物は、(A)樹脂と、(B)活性剤とを含有し、前記(B)成分が、(B1)分子中に下記構造式(1)で表される構造を有するカルボン酸付加物、および、(B2)アミン類を含有することを特徴とするものである。
【0007】
【化1】

【0008】
本発明のはんだ組成物は、前記フラックス組成物と、はんだ粉末とを含有することを特徴とするものである。
本発明の電子基板は、前記はんだ組成物を用いたはんだ付け部を備えることを特徴とするものである。
【0009】
本発明のフラックス組成物が、十分なはんだ溶融性および十分な保存安定性を有する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、本発明のフラックス組成物は、(B)活性剤として、(B1)カルボン酸付加物、および、(B2)アミン類(イミダゾール化合物など)を含有している。(B1)成分は、常温においてはカルボキシル基がブロックされているため、(B2)成分が存在しても、常温で容易に反応することはない。そのため、十分な保存安定性を確保できる。
一方で、(B1)成分は、リフロー工程で加熱をした際に、カルボキシル基のブロックが外れることにより、金属表面の酸化膜の除去が可能となる。また、(B2)成分は、金属表面の酸化膜が除去された金属表面に錯体の皮膜を形成して、金属表面の再酸化を防止できる。このようなメカニズムにより、十分なはんだ溶融性を確保できる。以上のようにして、上記本発明の効果が達成されるものと本発明者らは推察する。」

h.
「【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分なはんだ溶融性および十分な保存安定性を有するフラックス組成物、およびこれを用いたはんだ組成物、並びに、これらを用いた電子基板を提供できる。」

i.
「【0012】
[(A)成分]
本実施形態に用いる(A)樹脂としては、(A1)ロジン系樹脂および(A2)熱硬化性樹脂が挙げられる。なお、(A1)ロジン系樹脂を用いたフラックス組成物(いわゆるロジン系フラックス)は、熱硬化性を有さないが、(A2)熱硬化性樹脂を用いたフラックス組成物は、熱硬化性を有している。・・・
【0013】
前記(A1)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、30質量%以上70質量%以下であることが好ましく、35質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。(A1)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだ付ランドの銅箔面の酸化を防止してその表面に溶融はんだを濡れやすくする、いわゆるはんだ付け性を向上でき、はんだボールを十分に抑制できる。また、(A1)成分の配合量が前記上限以下であれば、フラックス残さ量を十分に抑制できる。」

j.
「【0014】
[(B)成分]
本実施形態に用いる(B)活性剤は、以下説明する(B1)カルボン酸付加物、および、(B2)アミン類を含有することが必要である。
【0015】
本実施形態に用いる(B1)カルボン酸付加物は、分子中に下記構造式(1)で表される構造を有するカルボン酸付加物である。・・・
【0016】
【化2】

・・・
【0040】
前記(B1)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上22質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。配合量が前記下限以上であれば、はんだ付け性を更に向上できる。また、前記上限以下であれば、フラックス残さを十分に抑制できる。
【0041】
本実施形態に用いる(B2)アミン類としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、グアニジン化合物、アミンアダクト、窒素含有複素環式化合物(イミダゾール化合物、ピリジン化合物、アゾール化合物、ピラゾール化合物、ピロール化合物、モルホリン化合物、およびピペラジン化合物など)およびアミン塩などが挙げられる。これらの中でも、脂肪族アミンまたはイミダゾール化合物が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
・・・
【0044】
イミダゾール化合物としては、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾールなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
・・・
ピラゾール化合物としては、3,5-ジメチルピラゾールなどが挙げられる。
・・・
【0047】
前記(B2)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上16質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上15質量%以下であることが更により好ましく、2質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。配合量が前記下限以上であれば、はんだ付け性を更に向上できる。また、配合量が前記上限以下であれば、絶縁信頼性が低下することはない。」

k.
「【0050】
[(C)成分]
本実施形態のフラックス組成物においては、印刷性などの観点から、さらに(C)溶剤を含有することが好ましい。ここで用いる(C)溶剤としては、公知の溶剤を適宜用いることができる。このような溶剤としては、沸点170℃以上の溶剤を用いることが好ましい。
・・・
【0051】
前記(C)成分を用いる場合、その配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。溶剤の配合量が前記範囲内であれば、得られるはんだ組成物の粘度を適正な範囲に適宜調整できる。」

l.
「【0052】
[(D)成分]
本実施形態のフラックス組成物においては、印刷性などの観点から、さらに(D)チクソ剤を含有していてもよい。ここで用いる(D)チクソ剤としては、硬化ひまし油、ポリアミン類、ポリアミド類、ビスアマイド類、ジベンジリデンソルビトール、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリットなどが挙げられる。これらのチクソ剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。」
【0053】
前記(D)成分を用いる場合、その配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、5質量%以上12質量%以下であることがより好ましい。配合量が前記下限以上であれば、十分なチクソ性が得られ、ダレを十分に抑制できる。また、配合量が前記上限以下であれば、チクソ性が高すぎて、印刷不良となることはない。」

m.
「【0055】
本実施形態のフラックス組成物は、十分なはんだ溶融性および十分な保存安定性を有する。そして、ハロゲンフリーのフラックス組成物であっても、ハロゲン系活性剤を用いる場合と同等以上のはんだ溶融性を確保できることから、ハロゲンフリーのフラックス組成物と特に好適に用いることができる。」

n.
「【0057】
[(E)成分] 本発明に用いる(E)はんだ粉末は、鉛フリーはんだ粉末のみからなることが好ましいが、有鉛のはんだ粉末であってもよい。」

o.
「【0060】
[はんだ組成物の製造方法]
本実施形態のはんだ組成物は、上記説明したフラックス組成物と上記説明した(E)はんだ粉末とを上記所定の割合で配合し、撹拌混合することで製造できる。」

p.
「【0072】
[ジェットディスペンサー用はんだ組成物]
前記実施形態では、前記電子基板の製造にあたり、塗布装置として、スクリーン印刷機、メタルマスク印刷機、ディスペンサーなどを用いているが、これに限定されない。例えば、塗布装置としては、ジェットディスペンサーを用いてもよい。・・・」

q.
「【実施例】
【0077】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A1)成分)
ロジン系樹脂:水添酸変性ロジン、商品名「パインクリスタルKE-604」、荒川化学工業社製
((A2)成分)
エポキシ樹脂A:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名「EXA-830LVP」、DIC社製
エポキシ樹脂B:エポキシ樹脂、商品名「NC-3000」、日本化薬社製
((B1)成分)
カルボン酸付加物A:下記調製例1で得られたカルボン酸付加物、示差走査熱量測定(DSC)による分解開始温度は約170℃
カルボン酸付加物B:下記調製例2で得られたカルボン酸付加物、示差走査熱量測定(DSC)による分解開始温度は約180℃
((B2)成分)
アミン類A:2-フェニル-4-メチルイミダゾール、商品名「2P4MZ」、四国化成工業社製
アミン類B:2-ヘプタデシルイミダゾール、商品名「C17Z」、四国化成工業社製
アミン類C:4-アセチルピリジン
アミン類D:アミンアダクト、商品名「フジキュアーFXR-1081」、T&K TOKA社製
アミン類E:N,N-ジエチルアニリン
アミン類F:オクチルアミン
アミン類G:1.3-ジフェニルグアニジンアジピン酸塩
((C)成分)
溶剤:テトラエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「ハイソルブMTEM」、東邦化学工業社製
((D)成分)
チクソ剤:商品名「スリパックスZHH」、日本化成社製
((E)成分)
はんだ粉末:粒子径分布20?38μm(平均粒子径約30μm)、はんだ融点217?220℃、はんだ組成Sn/Ag3.0/Cu0.5
(他の成分)
有機酸:コハク酸ハロゲン系活性剤:トランス-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール
【0078】
[調製例1]
カルボン酸(コハク酸)41.1gと、ビニルエーテル化合物(n-ブチルビニルエーテル)126.9gとを反応容器内に投入した後、30分間かけて常温から120℃まで加熱するとともに攪拌した。その後、反応容器内の温度を120℃に維持しながら4時間反応させて、カルボン酸付加物Aを得た。
得られたカルボン酸付加物Aの酸価を測定したところ、酸価は10mgKOH/g以下であり、反応が完了していることが確認できた。
【0079】
[調製例2]
溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)45gと、カルボン酸無水物(無水コハク酸)41.2gと、ビニルエーテル化合物(ジエチレングリコールモノビニルエーテル)108.8gとを反応容器内に投入した後、30分間かけて常温から80℃まで加熱するとともに攪拌した。その後、反応容器内の温度を80℃に維持しながら4時間反応させ、その後、エバポレーターを用いて溶剤を除去して、カルボン酸付加物Bを得た。
得られたカルボン酸付加物Bの酸価を測定したところ、酸価は14mgKOH/gであった。」

r.
「【0080】
[実施例1]
フラックス組成物として、ロジン系樹脂51質量部、カルボン酸付加物A10質量部、アミン類A2.5質量部、チクソ剤8.5質量部、および溶剤29質量部を配合し、また、フラックス組成物11質量%およびはんだ粉末89質量%(合計で100質量%)の割合で配合して、適宜混合することで、フラックス組成物およびはんだ組成物を調製した。
【0081】
[実施例2、比較例1?5]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、フラックス組成物およびはんだ組成物を得た。
【0082】
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の評価(保存安定性、チップ脇ボール、ピン間ボール、はんだ広がり(洋白))を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
(1)保存安定性
まず、はんだ組成物を試料として、粘度を測定する。その後、試料を密封容器に入れ、温度30℃の恒温槽に投入し、14日間保管し、保管した試料の粘度を測定する。そして、保管前の粘度値(η1)に対する、温度30℃にて14日間保管後の粘度値(η2)との差(η2-η1)を求める。なお、粘度測定は、スパイラル方式の粘度測定(測定温度:25℃、回転速度:10rpm)によりを行う。
そして、粘度値の差の結果に基づいて下記の基準に従って、保存安定性を評価した。
○:粘度値の差が、-100Pa・s超100Pa・s未満である。
×:粘度値の差が、-100Pa・s以下、または、100Pa・s以上である。
(2)チップ脇ボール
チップ部品(1608チップおよび1005チップ)を搭載できる評価用基板(タムラ製作所社製の「SP-TDC」)に、120μm厚のメタルマスクを使用して、はんだ組成物を印刷し、チップ部品60個を搭載し、リフロー炉(タムラ製作所社製)ではんだ組成物を溶解させて、はんだ付けを行ったものを試験板とする。ここでのリフロー条件は、プリヒート温度が150?180℃(60秒)で、温度220℃以上の時間が50秒間で、ピーク温度が245℃である。得られた試験板を拡大鏡にて観察し、チップ部品の脇に発生したはんだボールの数(個/チップ)を測定した。
そして、はんだボールの数(個/チップ)の結果に基づいて下記の基準に従って、チップ脇ボールを評価した。なお、1608チップを使用した場合、および、1005チップを使用した場合について、それぞれ評価した。
◎:チップ当たりのはんだボールの数が、1個未満である。
○:チップ当たりのはんだボールの数が、1個以上2個未満である。
△:チップ当たりのはんだボールの数が、2個以上3個未満である。
×:チップ当たりのはんだボールの数が、3個以上である。
(3)ピン間ボール
0.8mmピッチのQFP(Quad Flat Package)パターンを有する評価用基板(タムラ製作所社製の「SP-TDC」)に、120μm厚のメタルマスクを使用して、はんだ組成物を印刷し、リフロー炉ではんだ組成物を溶解させて、はんだ付けを行ったものを試験板とする。ここでのリフロー条件は、プリヒート温度が150?180℃(60秒)で、温度220℃以上の時間が50秒間で、ピーク温度が245℃である。得られた試験板を拡大鏡にて観察し、0.8mmピッチのQFPランドのピンの間隔に発生したはんだボールの数(個/ピン)を測定した。
そして、はんだボールの数(個/ピン)の結果に基づいて下記の基準に従って、ピン間ボールを評価した。
◎:ピン当たりのはんだボールの数が、10個未満である。
○:ピン当たりのはんだボールの数が、10個以上15個未満である。
△:ピン当たりのはんだボールの数が、15個以上100個未満である。
×:ピン当たりのはんだボールの数が、100個以上である。
(4)はんだ広がり(洋白)
洋白基板(30mm×30mm×0.3mmt)に、はんだ組成物を0.30g±0.03gになるように乗せ、その後ホットプレートで温度240℃にて30秒間加熱する。マイクロメーターで広がったはんだの高さ(H)を測定し、広がり率(Sr)を下記式(F1)より求める。この操作を、5枚繰り返し平均値を試料の広がり率とする。
Sr=(D-H)/D×100 ・・・(F1)
D=1.24V^(1/3 )・・・(F2)
Sr:広がり率(%)
H:広がったはんだの高さ(mm)
D:試験に用いたはんだを球とみなした場合の直径(mm)
V:試験に用いたはんだの質量/密度
そして、広がり率(Sr)の結果に基づいて下記の基準に従って、はんだ広がりを評価した。
◎:広がり率が、87%以上である。
○:広がり率が、80%以上87%未満である。
△:広がり率が、70%以上80%未満である。
×:広がり率が、70%未満である。
【0083】
【表1】


【0084】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のはんだ組成物(実施例1および2)は、保存安定性、チップ脇ボール、ピン間ボールおよびはんだ広がりの結果がいずれも良好であり、十分なはんだ溶融性および十分な保存安定性を有することが確認された。
これに対し、比較例1?5で得られたはんだ組成物は、保存安定性、チップ脇ボール、ピン間ボールおよびはんだ広がりの結果の少なくともいずれかが不十分であることが分かった。
なお、本発明のはんだ組成物(実施例1および2)は、ハロゲン系活性剤を含有していないので、ハロゲンフリーである。」

s.
「【0085】
[実施例3?11]
表2に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、フラックス組成物およびはんだ組成物を得た。
また、得られたはんだ組成物の評価(保存安定性、チップ脇ボール、ピン間ボール、はんだ広がり(洋白))を前述の方法で行った。得られた結果を表2に示す。
なお、実施例11の保存安定性の評価は、保管の時間を14日間から7日間に変更して行っている。また、実施例11のチップ脇ボールおよびピン間ボールの評価では、リフロー条件が、プリヒート温度が30?120℃(90秒)で、はんだの融点温度(218?220℃)まで4℃/sで昇温させ、220℃以上の時間が30?45秒間で、ピーク温度が245℃である。
【0086】
【表2】

【0087】
表2に示す結果からも明らかなように、本発明のはんだ組成物(実施例3?11)は、保存安定性、チップ脇ボール、ピン間ボールおよびはんだ広がりの結果がいずれも良好であり、十分なはんだ溶融性および十分な保存安定性を有することが確認された。」

(イ-2)甲2記載の発明
a.上記(イ-1)のf.の【0005】から、甲2記載の発明は、十分なはんだ溶融性および十分な保存安定性を有するフラックス組成物、およびこれを用いたはんだ組成物、並びに、これらを用いた電子基板を提供することを解決すべき課題とするものといえる。
なお、上記(イ-1)のe.の【0002】の記載から、かかる課題は、「環境問題に配慮して、ハロゲンを削減したハロゲンフリーや、ハロゲンを全く含有しないノンハロゲン」のフラックス組成物への適用を、念頭においたものである。

b.当該課題の解決手段として、上記(イ-1)のg.の【0006】、【0007】には、(A)樹脂と、(B)活性剤とを含有するフラックス組成物において、「前記(B)成分が、(B1)分子中に下記構造式(1)

で表される構造を有するカルボン酸付加物、および、(B2)アミン類を含有する」ものが記載され、さらに【0008】には、はんだ組成物が、前記フラックス組成物と、はんだ粉末とを含有することが記載されている。
また、上記(イ-1)のi.の【0012】には、(A)樹脂として、「(A1)ロジン系樹脂」が挙げられている。
また、上記(イ-1)のj.の【0041】には、(B2)アミン類として、窒素含有複素環式化合物であるイミダゾール化合物が例示されている。
また、上記(イ-1)のk.の【0050】には、甲2記載の実施形態の「フラックス組成物」について、「印刷性などの観点から、さらに(C)溶剤を含有することが好ましい。」との記載がある。
さらに、上記(イ-1)のl.の【0052】には、甲2記載の実施形態の「フラックス組成物」について、「印刷性などの観点から、さらに(D)チクソ剤を含有していてもよい。」との記載がある。

c.上記(イ-1)のp.、q.、r.及びs.には、実施例1?5として、(A)樹脂としての(A1)ロジン系樹脂、(B)活性剤としての(B1)分子中に下記構造式(1)

で表される構造を有するカルボン酸付加物、および、(B2)アミン類、(C)溶剤、(D)チクソ剤を含有するフラックス組成物と、(E)はんだ粉末とを含有するはんだ組成物についての具体的な評価結果が記載されている。かかる実施例1?5は、上記(イ-1)のa.の【請求項1】を引用するb.の【請求項5】をさらに引用するc.の【請求項10】に記載された「はんだ組成物」の一例となっており、かつ、これら実施例1?5の(B2)成分は、上記(イ-1)のq.の【0077】に記載された「アミン類A:2-フェニル-4-メチルイミダゾール」又は「アミン類B:2-ヘプタデシルイミダゾール」であるから、上記(イ-1)のj.の【0041】に記載される「イミダゾール系化合物」であることも明らかである。
そして、ここでは、これら実施例のうち「実施例1」に着目する。

d.上記(イ-1)のq.の説明を参酌しながらr.の【表1】を見ると、「実施例1」として示されたはんだ組成物は、11質量%のフラックスと89質量%の((E)成分)はんだ粉末:粒子径分布20?38μm(平均粒子径約30μm)、はんだ融点217?220℃、はんだ組成Sn/Ag3.0/Cu0.5とからなるものであり、該フラックス組成物の成分は、次のとおりである。

[実施例1のフラックス組成物(計100%)の組成]
((A1)成分)
ロジン系樹脂:水添酸変性ロジン、商品名「パインクリスタルKE-604」、荒川化学工業社製 51.0質量%
((B1)成分)
カルボン酸付加物A:下記調製例1で得られたカルボン酸付加物、示差走査熱量測定(DSC)による分解開始温度は約170℃ 9.0質量%
((B2)成分)
アミン類A:2-フェニル-4-メチルイミダゾール、商品名「2P4MZ」、四国化成工業社製
((C)成分) 2.5質量%
溶剤:テトラエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「ハイソルブMTEM」、東邦化学工業社製 29.0質量%
((D)成分)
チクソ剤:商品名「スリパックスZHH」、日本化成社製 8.5質量%

e.上記(イ-1)のr.の【表1】に「実施例1」として示されたはんだ組成物は、同o.の【0060】に記載されるように、フラックス組成物と(E)はんだ粉末とを所定の割合で配合し、撹拌混合することで製造できるものであり、同r.の【0082】に具体的に記載された評価が行われ、(1)保存安定性、(2)チップ脇ボール、(3)ピン間ボール、(4)はんだ広がり(洋白)の各項目に関し、いずれも良好な結果が得られたものである。

f.そうすると、甲2には、実施例1に注目すると、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

<甲2発明>
「11質量%のフラックス組成物と89質量%の((E)成分)はんだ粉末:粒子径分布20?38μm(平均粒子径約30μm)、はんだ融点217?220℃、はんだ組成Sn/Ag3.0/Cu0.5とからなり、かつ、該フラックス組成物が以下の成分(計100質量%)、
((A)成分)
ロジン系樹脂:水添酸変性ロジン、商品名『パインクリスタルKE-604』、荒川化学工業社製 51.0質量%、
((B1)成分)
カルボン酸付加物A:調製例1で得られたカルボン酸付加物、示差走査熱量測定(DSC)による分解開始温度は約170℃ 9.0質量%、
((B2)成分)
アミン類A:2-フェニル-4-メチルイミダゾール、商品名『2P4MZ』、四国化成工業社製 2.5質量%、
((C)成分)
溶剤:テトラエチレングリコールジメチルエーテル、商品名『ハイソルブMTEM』、東邦化学工業社製 29.0質量%、
((D)成分)
チクソ剤:商品名『スリパックスZHH』、日本化成社製 8.5質量%、
からなり、
(1)保存安定性、(2)チップ脇ボール、(3)ピン間ボール、(4)はんだ広がり(洋白)の評価において、いずれも良好な結果が得られるはんだ組成物。」

(ウ)甲3の記載事項及び甲3記載の発明
(ウ-1)甲3の記載事項
甲3には、以下の記載がある。
a.
「【請求項1】
ロジン、グリコールエーテル系溶剤、有機酸、チキソ剤、ハロゲン化合物、イミダゾール化合物を含み、
前記ハロゲン化合物は、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物の何れか、あるいは、これらの組み合わせであり、
前記アミンハロゲン化水素酸塩の添加量は0重量%以上2.5重量%以下、前記有機ハロゲン化合物の添加量は0重量%以上4重量%以下であり、
前記アミンハロゲン化水素酸塩の添加量が0重量%以上0.02重量%未満である場合、前記有機ハロゲン化合物の添加量は0重量%以上0.1重量%未満を除き、
前記有機ハロゲン化合物の添加量が0重量%以上0.1重量%未満である場合、前記アミンハロゲン化水素酸塩の添加量は0重量%以上0.02重量%未満を除き、
前記アミンハロゲン化水素酸塩の添加量をX(重量%)、前記有機ハロゲン化合物の添加量をY(重量%)としたとき、前記アミンハロゲン化水素酸塩の添加量と前記有機ハロゲン化合物の添加量が(1)式を満たす範囲であり、
前記イミダゾール化合物の添加量が0.1重量%?10重量%である
ことを特徴とするソルダペースト用フラックス。
【数1】



b.
「【請求項4】
前記イミダゾール化合物は、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-メチルイミダゾールの何れか、あるいは、これらの組み合わせである
ことを特徴とする請求項1?請求項3の何れか1項に記載のソルダペースト用フラックス。」

c.
「【請求項5】
請求項1?4に記載のソルダペースト用フラックスとはんだ合金の粉末が混合された
ことを特徴とするソルダペースト。」

d.
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
BGAを適用した半導体パッケージでは、近年薄型化が要求され、半導体パッケージの薄型化が進行している。このように、半導体チップの薄型化が進行したことで、リフロー時の加熱で、従来では無視できたフラックスの主活性温度域より低温域で半導体パッケージに発生する反りが大きくなり、はんだ付けの新たな問題となってきた。
・・・
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、従来の問題点に加えて、特にフラックスの主活性温度域より低温域で発生した部品の反りに特に着目して、ソルダペーストが電極から剥離することを抑制できるようにしたソルダペースト用フラックス及びソルダペーストを提供することを目的とする。」

e.
「【課題を解決するための手段】
【0015】
薄型化した半導体パッケージ等や基板の反りが始まる低温域では、一般的にはソルダペースト中のはんだ合金とフラックスとの間で反応はまだ発生しない。本願の発明者らは、このような低温域で金属酸化膜を除去できれば、金属粉末同士の密着度が増し、基板に反りが発生しても、ソルダペーストが電極から剥離することを抑制できることを見出した。
【0016】
本発明は、ロジン、グリコールエーテル系溶剤、有機酸、チキソ剤、ハロゲン化合物、イミダゾール化合物を含み、ハロゲン化合物は、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物の何れか、あるいは、これらの組み合わせであり、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量は0重量%以上2.5重量%、有機ハロゲン化合物の添加量は0重量%以上4重量%である。但し、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量が0重量%以上0.02重量%未満の範囲である場合、有機ハロゲン化合物の添加量は0重量%以上0.1重量%未満の範囲を除き、有機ハロゲン化合物の添加量が0重量%以上0.1重量%未満の場合、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量は0重量%以上0.02重量%未満の範囲を除く。上記の範囲を簡潔に表すと、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量をX(重量%)、有機ハロゲン化合物の添加量をY(重量%)としたとき、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量と有機ハロゲン化合物の添加量が(1)式を満たす範囲であり、イミダゾール化合物の添加量が0.1重量%?10重量%であるソルダペースト用フラックスである。
【0017】
【数1】

【0018】
アミンハロゲン化水素塩や有機ハロゲン化合物は、所定の低温域で金属酸化膜と反応して、金属酸化膜を除去する活性剤として添加される。
【0019】
イミダゾール化合物は、所定の低温域で金属酸化膜と反応して、金属酸化膜を除去する活性剤として添加され、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-メチルイミダゾールの何れか、あるいは、これらの組み合わせであることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、フラックスとはんだ合金の粉末が混合されたソルダペーストにおいて、フラックスは、ロジン、グリコールエーテル系溶剤、有機酸、チキソ剤、ハロゲン化合物、イミダゾール化合物を含み、ハロゲン化合物は、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物の何れか、あるいは、これらの組み合わせであり、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量は0重量%以上2.5重量%、有機ハロゲン化合物の添加量は0重量%以上4重量%である。但し、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量が0重量%以上0.02重量%未満の範囲である場合、有機ハロゲン化合物の添加量は0重量%以上0.1重量%未満の範囲を除き、有機ハロゲン化合物の添加量が0重量%以上0.1重量%未満の場合、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量は0重量%以上0.02重量%未満の範囲を除く。上述したように、上記の範囲を簡潔に表すと、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量をX(重量%)、有機ハロゲン化合物の添加量をY(重量%)としたとき、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量と有機ハロゲン化合物の添加量が(1)式を満たす範囲であり、イミダゾール化合物の添加量が0.1重量%?10重量%であるソルダペースト用フラックスである。
【0021】
【数2】



f.
「【発明の効果】
【0022】
本発明では、一般的にソルダペースト中のはんだ合金と、フラックスとの間で反応が発生しないような低温域で、フラックス中の活性剤成分と金属表面の酸化物が反応し、金属酸化膜が除去される。このような低温域で金属酸化膜を除去できれば、金属粉末同士の密着度が増し、基板の反り等による応力が加わっても、ソルダペーストが接合対象物から剥離することを抑制できる。」

g.
「【0025】
ハロゲン化合物としては、アミンハロゲン化水素酸塩と有機ハロゲン化合物が挙げられる。アミンハロゲン化水素酸塩のアミン化合物としては、エチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、イソプロピルアミン、ジフェニルグアニジン、シクロヘキシルアミン、アニリンなどが挙げられる。ハロゲン化水素酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸が挙げられる。
【0026】
有機ハロゲン化合物としては、1-ブロモ-2-ブタノール、1-ブロモ-2-プロパノール、3-ブロモ-1-プロパノール、3-ブロモ-1,2-プロパンジオール、1,4-ジブロモ-2-ブタノール、1,3-ジブロモ-2-プロパノール、2,3-ジブロモ-1-プロパノール、2,3-ジブロモ-1,4-ブタンジオール、2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4ジオールなどが挙げられる。
【0027】
ハロゲン化合物の添加量が少ないと、活性が弱く、所定の低温域で酸化膜を除去できない。一方、ハロゲン化合物の添加量が多いと、ソルダペーストの粘度が経時変化で増加する。そこで、ハロゲン化合物の添加量を以下のように定めた。
【0028】
ハロゲン化合物は、上述したアミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物の何れか、あるいは、これらの組み合わせとした。アミンハロゲン化水素酸塩の添加量をX(重量%)、有機ハロゲン化合物の添加量をY(重量%)としたとき、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量と有機ハロゲン化合物の添加量が(1)式を満たす範囲とした。
【0029】
【数3】



h.
「【0030】
フラックスには、ハロゲン化合物以外に、所定の低温域で金属酸化膜と反応して、金属酸化膜を除去する活性剤としてアミン化合物が添加される。活性剤として添加されるアミン化合物は、イミダゾール化合物であることが好ましく、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-メチルイミダゾールの何れか、あるいは、これらの組み合わせであることが好ましい。」

i.
「【0031】
イミダゾール化合物の添加量が少ないと、活性が弱く、所定の低温域で酸化膜を除去できない。一方、イミダゾール化合物の添加量が多いと、ソルダペーストの粘度が経時変化で増加する。そこで、イミダゾール化合物の添加量は、0.1重量%?10重量%とした。」

j.
「【0032】
ロジンは、ハロゲン化合物及びイミダゾール化合物等の活性剤成分を熱から保護して、活性剤成分の揮発を抑制する。ロジンとしては、水添ロジン、酸変性ロジン、重合ロジン、ロジンエステルなどが挙げられる。」

k.
「【0033】
溶剤は、フラックス中の固形分を溶かす。溶剤としては、一般的に知られているグリコールエーテル系の化合物から選択される。活性剤の作用を効率よくもたらすために、120℃?150℃の低温域において揮発しないことが好ましい。溶剤が揮発してしまうとフラックスの流動性が悪くなり、活性剤の作用を金属粉末全体に行きわたらすことが難しくなる。そのため、沸点は200℃以上であることが好ましく、240℃以上であることがより好ましい。」

l.
「【0034】
チキソ剤は、チキソ性の付与のために添加される。チキソ剤としては、高級脂肪酸アマイド、高級脂肪酸エステル、ひまし硬化油などが挙げられる。」

m.
「【0035】
有機酸はフラックスにおける活性剤成分として添加される。有機酸としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸など、常温固体の有機酸が好ましい。」

n.
「【0038】
本実施の形態のソルダペーストは、上述した組成のフラックスと、はんだ合金の粉末が混合されて生成される。本例におけるソルダペーストは、はんだ合金の組成がSn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)であるはんだ合金の粉末と、フラックスが混合されて生成される。尚、本発明はこのはんだ合金に限定するものではない。」

o.
「【実施例】
【0039】
以下の表に示す組成で実施例と比較例のフラックスを調合し、実施例及び比較例のフラックスを使用してソルダペーストを調合して、ソルダペーストの剥離防止効果について検証した。なお、表1?3における組成率は、フラックス組成物中の重量%である。まず、各検証の評価方法について説明する。
【0040】
(1)ソルダペーストの剥離防止効果の検証について
(a)評価方法
銅板にソルダペーストを印刷後、はんだボールを搭載し、120℃で1分間保持後、保温状態ではんだボールを引き上げた。
(b)判定基準
○:ソルダペーストが銅板に残留した
×:ソルダペーストが銅板から剥離した
(2)ソルダペーストの連続粘度測定について
(a)測定方法
測定に用いた粘度計は株式会社マルコム製、PCU-205である。試験条件は回転数:10rpm、測定温度:25℃で粘度を8時間測定し続ける。
(b)判定基準
8時間後の粘度が初期粘度の±20%以内の値であれば合格(○)とした。」

p.
「【0043】
【表1】

【0044】
表1に示すように、アミンハロゲン化水素酸塩と、イミダゾール化合物を含み、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量Xが0.02重量%?2.5重量%、イミダゾール化合物の添加量が0.1重量%?10重量%を添加した実施例1?実施例13では、ソルダペーストが銅板に残留した。一方、有機ハロゲン化合物を含まず、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量が0.02重量%未満で、かつ、イミダゾール化合物を含まない比較例1、ハロゲン化合物を含まず、イミダゾール化合物の添加量が0.1重量%未満の比較例3では、ソルダペーストがはんだボールに付着して、銅板から剥離した。また、有機ハロゲン化合物を含まず、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量が2.5重量%を超え、かつ、イミダゾール化合物を含まない比較例2、ハロゲン化合物を含まず、イミダゾール化合物の添加量が10重量%を超える比較例4では、連続粘度測定で増粘の傾向が見られた。」

q.
「【0047】
【表2】

【0048】
表2に示すように、有機ハロゲン化合物と、イミダゾール化合物を含み、有機ハロゲン化合物の添加量Yが0.1重量%?4重量%、イミダゾール化合物の添加量が0.1重量%?10重量%を添加した実施例14?実施例25では、ソルダペーストが銅板に残留した。一方、アミンハロゲン化水素酸塩を含まず、有機ハロゲン化合物の添加量が0.1重量%未満で、かつ、イミダゾール化合物を含まない比較例5では、ソルダペーストがはんだボールに付着して、銅板から剥離した。また、アミンハロゲン化水素酸塩を含まず、有機ハロゲン化合物の添加量が4重量%を超え、かつ、イミダゾール化合物を含まない比較例6では、連続粘度測定で増粘の傾向が見られた。」

r.
「【0051】
【表3】

【0052】
表3に示すように、アミンハロゲン化水素酸塩の添加量が0.02重量%以上2.5重量%以下、有機ハロゲン化合物の添加量が0.1重量%以上4重量%以下の範囲であっても、比較例7?9では、連続粘度測定で増粘の傾向が見られた。」

(ウ-2)甲3記載の発明
a.上記(ウ-1)のd.の【0014】から、甲3記載の発明は、特にフラックスの主活性温度域より低温域で発生した部品の反りに特に着目して、ソルダペーストが電極から剥離することを抑制できるようにしたソルダペースト用フラックス及びソルダペーストを提供することを解決すべき課題とするものといえる。

b.上記(ウ-1)のe.の【0020】?【0021】の記載を、【0015】、【0018】、【0019】の記載を参酌しながら整理すると、当該課題の解決手段として、ロジン、グリコールエーテル系溶剤、有機酸、チキソ剤を含むソルダペースト用フラックスとして、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物の何れか、あるいは、これらの組み合わせからなるハロゲン化合物と、イミダゾール化合物とを、それぞれ所定の添加量含ませたフラックスと、はんだ合金の粉末が混合されたソルダペースト、が記載されている。

c.上記(ウ-1)のp.の【0043】【表1】、q.の【0047】【表2】、及びr.の【0051】【表3】には、実施例1?30として、ロジン、グリコールエーテル系溶剤、有機酸、チキソ剤、ハロゲン化合物、イミダゾール化合物を含み、ハロゲン化合物は、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物の何れか、あるいは、これらの組み合わせであるフラックスが示されているとともに、上記(ウ-1)のo.の【0039】のように当該フラックスを使用して調合したソルダペーストについて、同o.の【0040】に具体的に説明されるような剥離防止効果と連続粘度とをそれぞれ評価した結果が示されている。
そして、ここでは、これら実施例のうち「実施例1」に着目する。

d.上記(ウ-1)のp.の【0039】の「表1?3における組成率は、フラックス組成物中の重量%である。」という記載を踏まえて上記(ウ-1)のp.の【0043】【表1】を見ると、「実施例1」として示されたフラックスの成分は、次のとおりである。

[実施例1のフラックス(計100%)の組成]
ロジン 55.9量%
溶剤;グリコールエーテル系の化合物 30重量%
チキソ剤 7重量%
有機酸 6重量%
ジフェニルグアニジン-HBr 1重量%
イミダゾール 0.1重量%

なお、上記(ウ-1)のj.の【0032】には、「ロジンは、ハロゲン化合物及びイミダゾール化合物等の活性剤成分を熱から保護して、活性剤成分の揮発を抑制する。ロジンとしては、水添ロジン、酸変性ロジン、重合ロジン、ロジンエステルなどが挙げられる。」との記載はあるものの、上記(ウ-1)のp.の【0043】【表1】記載の「ロジン」が具体的にどのような種類のロジンを用いたものであるかは不明である。
また、上記(ウ-1)のk.の【0033】には、「溶剤は、フラックス中の固形分を溶かす。溶剤としては、一般的に知られているグリコールエーテル系の化合物から選択される。」との記載はあるものの、上記(ウ-1)のp.の【0043】【表1】記載の「溶媒」が具体的にどのようなグリコールエーテル系の化合物を用いたものであるかは不明である。
また、上記(ウ-1)のl.の【0034】には、「チキソ剤は、チキソ性の付与のために添加される。チキソ剤としては、高級脂肪酸アマイド、高級脂肪酸エステル、ひまし硬化油などが挙げられる。」との記載はあるものの、上記(ウ-1)のp.の【0043】【表1】記載の「チキソ剤」が具体的にどのような種類のチキソ剤を用いたものであるかは不明である。
また、上記(ウ-1)のm.の【0035】には、「有機酸はフラックスにおける活性剤成分として添加される。有機酸としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸など、常温固体の有機酸が好ましい。」との記載はあるものの、上記(ウ-1)のp.の【0043】【表1】記載の「有機酸」が具体的にどのような種類の有機酸を用いたものであるかは不明である。

e.上記(ウ-1)のp.の【0043】【表1】に「実施例1」として示されたフラックスに関しては、上記(ウ-1)のn.の【0038】に記載されるように、はんだ合金の組成がSn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)であるはんだ合金の粉末と、フラックスが混合されて生成されるソルダーペーストについて、上記(ウ-1)のo.の【0040】に具体的に説明される評価が行われ、(1)剥離防止効果、(2)連続粘度の各項目に関し、いずれも良好な結果が得られたものである。

f.そうすると、甲3には、実施例1に注目すると、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲3発明>
「フラックスとSn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)であるはんだ合金の粉末とからなるソルダーペーストであって、該フラックスが、
ロジン 55.9量%、
溶剤;グリコールエーテル系の化合物 30重量%、
チキソ剤 7重量%、
有機酸 6重量%、
ジフェニルグアニジン-HBr 1重量%、
イミダゾール 0.1重量%
からなり、
(1)剥離防止効果、(2)連続粘度の評価において、いずれも良好な結果が得られるソルダーペースト。」

(エ)甲4の記載事項
甲4には、以下の記載がある。
a.
「【0020】
また、本発明においては、レオメータによる粘度測定方法の他にも、E型回転粘度計を所定の温度で1分間、所定の回転数(rpm、1/60sec-1)で回転させた時の測定値に、所定の換算係数を乗じた値を粘度として定義して規定しても良い。測定値は、所定の温度±1℃に保たれた液体について、コーン角度3゜、コーン半径10mmのコーンロータを装着したE型回転粘度計を用いて得られる。前記回転数及び換算係数は、測定対象の液体の粘度によって異なる。具体的には、測定対象の液体の粘度を予め大まかに推定し、推定値に応じて回転数及び換算係数を決定する。測定対象の液体の粘度の推定値が0?1.25Pa・sの場合は回転数を100rpm、換算係数を0.0125とし、粘度の推定値が1.25?2.5Pa・sの場合は回転数を50rpm、換算係数を0.025とし、粘度の推定値が2.5?6.25Pa・sの場合は回転数を20rpm、換算係数を0.0625とし、粘度の推定値が6.25?12.5Pa・sの場合は回転数を10rpm、換算係数を0.125とする。ここで、E型回転粘度計によって測定される粘度は、前記のレオメータによる粘度とは絶対値が同じでないため、前記のレオメータによる粘度に換算することによって、本発明によるアンダーフィル材の粘度を規定することができる。」

(オ)甲5の記載事項
甲5には、以下の記載がある。
a.
「また,はんだ粉末量は当然ながら粘度にも関係し,同一のフラックスを用いて,はんだ粉末量のみを変えた場合の粘度変化を表したものがFig.11である(Blookfield粘度計RVT型,5rpm,25℃による)。ソルダーペーストの適用の方法によっては,最適な粉末含有量範囲がある。たとえば,ディスペンサによる吐出法の場合,含有量が高いと吐出が困難になることがある。これは,高含有でペーストに流動性を与えるには,粘度を低くしなければならず,そのためにフラックス中の増粘剤の量を減らすことに起因する。すなわち,増粘剤の量が減ったことによって,シリンジ中で粉末-フラックスの分離が容易に起き,ニードル中で詰まったりするため,増粘剤量低下の目的とは逆に,流動性が著しく悪くなるからである。ディスペンサ吐出の場合,最適な粉末含有量範囲は,85?88wt%といわれている。」(6ページ右欄?7ページ左欄)

b.




(カ)甲6の記載事項
甲6には、以下の記載がある。
a.



(第4ページ記載の「ディスペンサー用ソルダペーストPF305-5091VO」の一般特性)

(キ)甲7の記載事項
甲7には、以下の記載がある。
a.



(第2ページ記載の「ディスペンサー用207シリーズ」の型番の性状)

(ク)甲8の記載事項
甲8には、以下の記載がある。
a.
「【請求項1】
Sn:15?25質量%を含有し、残り:Auおよび不可避不純物からなる成分組成並びに平均粒径:5μm以下でかつ最大粒径:10μm以下の粒度分布を有するAu-Sn合金はんだ粉末とRAフラックスとからなるAu-Sn合金はんだペーストであって、前記Au-Sn合金はんだペーストの粘度が50超え?120Pa・sの範囲内にあることを特徴とするディスペンス塗布用Au-Sn合金はんだペースト。」

b.
「【0009】
また、平均粒径D50:5μm以下でかつ最大粒径:10μm以下の微細なAu-Sn合金はんだ粉末に市販のRAフラックスを混合して得られたAu-Sn合金はんだペーストであっても、ペーストの粘度が50Pa・s以下ではRAフラックスが多く含まれてシリンジからのペーストの吐出量にバラツキが生じて安定した塗布が困難になり、また吐出後、ペーストがだれていまい、塗布設定場所以外にまで流れてしまうので好ましくなく、さらにAu-Sn合金はんだペーストに含まれるRAフラックスとAu-Sn合金はんだ粉末との分離が激しくなるので好ましくなく、一方、Au-Sn合金はんだペーストの粘度が120Pa・sを超えるとディスペンス塗布用ペーストとしての流動性が悪くなり、吐出性が悪化してディスペンス塗布量のバラツキや塗布されない空打ちが多発するようになるので好ましくない。よって、この発明のディスペンス塗布用Au-Sn合金はんだペーストの粘度は50越え?120Pa・sの範囲内に定めた。」

(ケ)甲9の記載事項
甲9には、以下の記載がある。
a.
「【請求項1】 少なくとも1個の窒素原子を含む複素環式化合物の1種またはそれ以上の混合物を含有することを特徴とするはんだ付け用フラックス。
【請求項2】 前記複素環式化合物が単環式または多環式のアゾール類、例えばメルカプトベンゾチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾールまたはこれらのアルキル基置換体から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のはんだ付け用フラックス。
【請求項3】 請求項1に記載のはんだ付け用フラックス及びはんだ粉を含有することを特徴とするクリームはんだ。」

b.
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】解決しようとする課題は、未加熱時に活性が発揮せず、加熱時に十分なはんだ付け性が得られるはんだ付け用フラックス及びクリームはんだの活性剤を開発し、さらにはんだ付け後の大量の残渣の発生を排除し、はんだ付け後の後洗浄をなくすことである。
【0006】
【課題を解決しようとする手段】本発明者らは、少なくとも1個の窒素原子を含む複素環式化合物でアゾール類である、例えば窒素含有単環式化合物ではイミダゾール、ピラゾールや窒素含有多環式化合物ではメルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾールまたはこれらのアルキル基置換体の1種またはそれ以上の混合物を、はんだ付け用フラックス及びクリームはんだの活性剤として用いた場合、未加熱時にその活性が発揮せず、加熱することにより金属表面に存在する酸化物、硫化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩及び炭酸塩を還元して金属を清浄化する作用を見出した。なおこれらの少なくとも1個の窒素原子を含む複素環式化合物は残渣として残りにくくたとえ残渣として残ったとしても全く腐食性を有しない。それによってたとえばはんだ付け用フラックス及びクリームはんだに、これらの少なくとも1個の窒素原子を含む複素環式化合物を活性剤として用い、さらにクリームはんだに、はんだ付け後超低残渣となるような増粘剤(例えばエチルセルロース)を用いれば、はんだ付け後プリント回路板の後洗浄は必要ない。」

(コ)甲10の記載事項
甲10には、以下の記載がある。
a.
「【請求項1】
ロジン系樹脂を含有する樹脂成分と、溶剤成分を少なくとも含有する回路基板に電子部品をはんだ付する際に用いるフラックスにおいて、ピラゾール系化合物を含有する回路基板はんだ付用フラックス。
【請求項2】
ピラゾール系化合物はピラゾール、その誘導体及びこれらの塩の群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の回路基板はんだ付用フラックス。
【請求項3】
回路基板に電子部品をはんだ付する際に用いる、はんだ粉末と樹脂成分を少なくとも含有するソルダーペーストにおいて、ピラゾール系化合物を含有する回路基板はんだ付用ソルダーペースト。」

b.
「【0009】
本発明の第1の目的は、回路基板の金属面の酸化物等の還元作用に優れ、溶融はんだのぬれ性が良い回路基板はんだ付用フラックス及びソルダーペーストを提供することにある。
本発明の第2の目的は、複数回のリフローはんだ付工程を行う場合やその後に噴流はんだ付を行う場合において、後に行うリフローはんだ付や噴流はんだ付でも、溶融はんだのぬれ性やぬれ上がり性が良い回路基板はんだ付用フラックス及びソルダーペーストを提供することにある。
本発明の第3の目的は、塗布性を損なわず、均一な塗布膜を形成でき、しかも低残渣膜ではんだ付性を害さない回路基板はんだ付用フラックス及びソルダーペーストを提供することにある。
本発明の第4の目的は、はんだ付ランドの腐食性が少なく、電気絶縁性の良い信頼性の高い回路基板はんだ付用フラックス及びソルダーペーストを提供することにある。
本発明の第5の目的は、上記目的を達成する回路基板はんだ付用フラックスを塗布してはんだ付ランドを保護した電子部品搭載前の回路基板を提供することにある。
本発明の第6の目的は、回路機能の信頼性を損なわず、しかも生産性が良く、安価に得られる電子部品搭載後の回路基板を提供することにある。」

c.
「【0013】
ピラゾール誘導体及びその塩の具体例としては、5-アミノ-1,3-ジメチルピラゾール塩酸塩、3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール、3-アミノピラゾール、3-(4-クロロフェニル)ピラゾール、ピラゾール-3,5-ジカルボン酸ジエチル、3,5-ジメチルピラゾール、3-(4-メトキシフェニル)ピラゾール、3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール、3-メチルピラゾール、3-フェニルピラゾール、3,5-ピラゾールジカルボン酸一水和物、3-(4-トリル)ピラゾール、3-アミノピラゾール-4-カルボン酸、3,4-ジアミノ-5-ヒドロキシピラゾール硫酸塩、4-メチルピラゾール、5-クロロ-1,3-ジメチルピラゾール、1-フェニルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、3,5-ジメチル-1-フェニルピラゾール、4-ブロモ-3-メチルピラゾール、1,3,5-トリメチルピラゾールが挙げられる。」

d.
「【0031】
実施例6(ソルダーペースト)
以下の組成のソルダーペーストを調製した。
(フラックスの組成)
ロジン 5.0g
ピラゾール 0.1g
硬化ひまし油 0.7g
ブチルカルビトール 4.2g
合計 10.0g
(ソルダーペーストの組成)
上記フラックス 10.0g
はんだ粉末(Sn/Pb=63/37) 90.0g
(アトマイズ法により製造)
合計 100.0g」

e.
「【0038】
【表1】

【0039】
【表2】



(サ)甲11の記載事項
甲11には、以下の記載がある。
a.
「【0014】
本発明に用いるフラックスは、例えば、ロジン系樹脂と、チクソ剤と、活性剤と、溶剤とを含有するものである。
【0015】
本発明に用いるロジン系樹脂としては、ロジンおよびロジン誘導体が挙げられる。ロジン誘導体としては、変性ロジン、重合ロジン、水添ロジンなどが挙げられる。これらのロジン系樹脂の中でも、活性作用の観点から、水添ロジンが好ましい。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。」

b.
「【0030】
次に、本発明を実施例、比較例および参考例などによりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
ロジン系樹脂A:完全水添ロジン、商品名「フォーラルAX」、Eastman Chemical社製
ロジン系樹脂B:水添酸変性ロジン、商品名「KE-604」、荒川化学工業社製
溶剤:ヘキシルジグリコール(DEH)、日本乳化剤社製
チクソ剤:硬化ヒマシ油、12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド、KFトレーディング社製
活性剤A:ジカルボン酸ポリ酸無水物、20℃にて液状、商品名「IPU-22AH」、岡村製油社製
活性剤B:ジカルボン酸ポリ酸無水物、20℃にて固体、融点:75?85℃、商品名「SL-12AH」、岡村製油社製、
活性剤C:ジカルボン酸ポリ酸無水物、20℃にて固体、融点:85?105℃、商品名「SL-20AH」、岡村製油社製
鉛フリーはんだ粉末A:平均粒子径が42μmで、融点が243℃(固相線:243℃、液相線:263℃)で、組成が90Sn/10Sbのもの
鉛フリーはんだ粉末B:平均粒子径が34μmで、融点が243℃で、組成が90Sn/10Sbのもの
鉛フリーはんだ粉末C:平均粒子径が52μmで、融点が243℃で、組成が90Sn/10Sbのもの
鉛フリーはんだ粉末D:平均粒子径が26μmで、融点が243℃で、組成が90Sn/10Sbのもの
鉛フリーはんだ粉末E:平均粒子径が62μmで、融点が243℃で、組成が90Sn/10Sbのもの」

c.
「【0032】
【表1】



(シ)甲13の記載事項
甲13には、以下の記載がある。
a.
「【0055】
1-6.その他
上記の各構成成分以外に、適宜、公知の成分を本実施形態の接合材に含有させても構わない。そのような成分の具体例としては、粘度調整剤、有機バインダー、無機バインダー、pH調整剤、緩衝剤、消泡剤、レベリング剤、揮発抑制剤が挙げられる。
また本実施形態の接合材の好適な粘度は、それが適用される印刷方法によって変動するが、一般的な指標として、好ましくは5?40Pa・sである。なお、本明細書において粘度は、他に特記しない限り、回転式動的粘弾性測定装置により25℃において5rpmの条件で測定するものとする。」

b.
「【0070】
(接合材の粘度)
この接合材(銀ペースト)の粘度をレオメーター(回転式動的粘弾性測定装置)(Thermo社製のHAAKE RheoStress 600、コーン径35mm、コーン角度2°のコーンを使用)により求めたところ、25℃において5rpmで24(Pa・s)であった。なお1rpmでの粘度は65(Pa・s)であった。」

(ス)甲14の記載事項
甲14には、以下の記載がある。
a.
「2.3.2 粘度およびチキソ比
ソルダペーストはチキソトロピー(Thixotropy)性という性質を備えており、ずり速度が速い時に低粘度、遅い時に高粘度を示す性質があり、これにより、印刷時はソルダペーストが柔らかく印刷しやすく、印刷後には硬くなってダレ難くなり、印刷に適した性質を示す。ソルダペーストの選定にあたっては適切な粘度およびチキソ比(TI, Thixotropic Index)が求められ、それらの測定方法はJIS Z 3284ソルダペーストの流動特性試験に規定されている。回転粘度計でのソルダペーストの粘度を測定する場合は、通常10rpmの粘度を測定しPasで表示する。チキソ比(TI)はずり速度別の粘度を対数プロットした直線の傾きから得られる。」
(第48ページ)

イ.甲1発明との対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a.対比
(a)上記ア(ア)(ア-2)c.で述べたように、甲1発明の「アミン系化合物:商品名『キュアゾール2E4MZ』」は、甲1の【請求項3】で特定される「イミダゾール系化合物」であることも踏まえながら、本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「((A)成分)ロジン系樹脂A:水添酸変性ロジン(軟化点:130℃) 26質量部、ロジン系樹脂B:重合ロジン(軟化点:140℃) 15質量部、ロジン系樹脂D:水添ロジンエステル(軟化点:85℃) 10質量部」、「((B)成分)活性剤:スベリン酸 5質量部」、「((C)成分)溶剤:ヘキシルジグリコール 35質量部」、「(他の成分)チクソ剤:脂肪酸アマイド(脂肪酸アミド)、商品名『スリパックスH』、日本化成社製 4質量部」、「((D)成分)アミン系化合物:商品名『キュアゾール2E4MZ』、四国化成社製 1質量部」、「11.4質量%のフラックス」及び「((E)成分)はんだ粉末:平均粒子径28μm、はんだ融点217?224℃、はんだ組成Sn98.3質量%/Ag1.0質量%/Cu0.7重量% 88.6質量部」は、それぞれ、本件特許発明1の「(A)ロジン系樹脂」、「(B)活性剤」、「(C)溶剤」、「(D)チクソ剤」、「(E)イミダゾール化合物」、「フラックス組成物」及び「(G)はんだ粉末」に相当する。

(b)以上から本件特許発明1と甲1発明とは以下の一致点、相違点を有する。
<一致点>
「(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末とを含有したはんだ組成物。」である点。

<相違点1>
本件特許発明1のはんだ組成物は、「E型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下である」のに対し、甲1発明のはんだ組成物はそのような粘度のものであるのか不明な点。

<相違点2>
本件特許発明1のはんだ組成物は、「ディスペンス塗布用」のものであるに対し、甲1発明のはんだ組成物はそのような用途のものであるのか不明な点。

b.相違点の検討
事案に鑑み、相違点1について検討する。
(a)本件特許発明1において「当該はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下である」とすることの技術的意義は、本件特許明細書【0011】に「本実施形態においては、はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下であることが必要である。粘度が50Pa・s未満の場合には、プリヒート時のだれを十分に抑制できない。他方、粘度が120Pa・s超である場合には、ディスペンス塗布法より塗布する場合において、十分な塗布性を維持できない。」と説明されるように、ディスペンス塗布法により塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、プリヒート時のだれを十分に抑制できるディスペンス塗布用はんだ組成物を提供する(【0005】)というものである。
そして、本件特許発明1のはんだ組成物をそのような粘度範囲へ調整するに際しては、本件特許明細書【0012】に「ロジン系樹脂、溶剤およびチクソ剤の種類や配合量を変更する」と記載される手法が採用でき、本件特許明細書の【0043】【表1】には、「(1)塗布性」の評価結果(評価内容の詳細は【0042】参照)が、上記粘度範囲の実施例1?6のはんだ組成物(評価結果:○又は△)より、粘度が上記粘度範囲の上限値より高い比較例2のはんだ組成物(評価結果:×)のほうが明らかに悪くなっているように、特に上記粘度範囲の上限値を定めることによる効果は、実施例・比較例において確認されている。なお、本件特許明細書の比較例として、本件特許発明1の上記粘度範囲の下限値より低い粘度のはんだ組成物で、効果が得られないことまでは確認されていないものの、【0011】記載の「粘度が50Pa・s未満の場合には、プリヒート時のだれを十分に抑制できない。」と説明されている。

(b)これに対し、甲1発明の「はんだ組成物」は、上記ア.(ア)(ア-2)a.で触れたように、「スズメッキへのはんだぬれ性が優れ、かつはんだ付け部分での腐食を十分に抑制できるはんだ組成物を提供する」との課題を解決するもので、「(1)加熱時のダレ幅、(2)腐食試験、(3)スズメッキ基板へのぬれ広がりの評価において、いずれも良好な結果が得られるはんだ組成物」であるが、このうちの「(1)加熱時のダレ幅」にしても、上記ア.(ア)(ア-1)n.の【0038】に「本発明のはんだ組成物は、加熱時のダレ幅が比較的に大きい傾向にあり、それによりはんだ溶融時のスズメッキへのはんだぬれ性が向上したことが確認された。」と記載されるように、「(3)スズメッキ基板へのぬれ広がり」と連関し、加熱時のダレ幅が比較的に大きい傾向のものが「良好な評価結果」とされているなど、いずれの評価も、本件特許発明1の「プリヒート時のだれを十分に抑制できる」という技術的意義とは関連しないものである。

(c)そうすると、少なくとも、「プリヒート時のだれを十分に抑制できる」との技術的意義をもたらす相違点1の粘度範囲のはんだ組成物に関わる本件特許発明と、甲1発明とは、仮に両者で発明範囲が重複または近い可能性があるように見えたとしても、これらは互いに課題が全く異なり、両発明で技術思想は共通しない。
そして、甲1発明の課題解決に適した条件を選択して当該発明を実施する際に、本件特許発明1のような技術的意義を有する上記相違点1に係る範囲の粘度が実現し得ることは、甲1に何ら記載も示唆もされていないから、上記相違点1は両者の実質的な相違点であり、かつ、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項は、当業者が甲1発明から通常の創作能力の範囲で想到できたものでもない。

(d)また、特許異議申立書3(4)(4.8.1)において、主たる証拠としての甲1に対し、従たる証拠として提示されている甲4?11、13?14について検討すると、これら従たる証拠の記載事項は、それぞれ上記ア.(エ)?(ス)のとおりであり、はんだ組成物の粘度を、本件特許発明1のような技術的意義を有する上記相違点1に係る範囲にすることは、記載も示唆もされていない。
そうすると、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲1発明と甲5?11、14に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(e)さらに、上記ア.(ア)(ア-2)c.では、甲1記載の実施例1?3のうち実施例1に着目し、かかる実施例1の内容に基づいて上記ア.(ア)(ア-2)f.で甲1発明を認定したが、仮に甲1記載の実施例2?3のいずれかに着目して別の甲1記載の発明を認定したとしても、実施例1に着目した場合と同様に判断していくと、本件特許発明1と該別の甲1記載の発明とは実質的な相違点があり、また、該相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項は、当業者が該別の甲1記載の発明と甲5?11、14に記載の技術事項とに基いて、当業者が通常の創作能力の発揮の範囲で想到しえたものともいえない、と結論できる。

(f)なお、申立人は、特許異議申立書第31?32ページにおいて、甲1に記載された発明を、次のような内容で「甲1発明」を認定している(以下、「甲1発明(申立人)」という。)。

[甲1発明(申立人)]
「(1a)ロジン系樹脂、(1b)活性剤、(1c) 溶剤、(1d)チクソ剤および(1e)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、
(1g)はんだ粉末と
を含有するディスペンス塗布用はんだ組成物であって、
前記フラックス組成物は、
(1a)ロジン系樹脂として、水添酸変性ロジンおよび水添ロジンエステルを含んでもよく、
(1d)チクソ剤として、たとえばアミド類を用いてもよく、
(1e)イミダゾール化合物として、ベンゾイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)、2-ウンデシルイミダゾールのうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、
(1e)イミダゾール化合物の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい、
ディスペンス塗布用はんだ組成物。」

しかしながら、このような甲1発明(申立人)は、甲1の実施例に直接記載されていない各成分の組合せ及び含有量の「はんだ組成物」を含むものである。
そして、甲1に記載された「はんだ組成物」は、上記ア.(ア)(ア-2)f.で認定した甲1発明のように、「(1)加熱時のダレ幅、(2)腐食試験、(3)スズメッキ基板へのぬれ広がりの評価において、いずれも良好な結果が得られるはんだ組成物」(以下、「甲1の良好な評価結果のはんだ組成物」という。)であるが、甲1には、甲1発明(申立人)のうち甲1の実施例に相当しない部分が、確実に上記甲1の良好な評価結果のはんだ組成物となっていることの十分な裏付けもされていないし、また、本件特許発明1と甲1発明(申立人)とを対比しようとする場合にも、本件特許発明1のように「はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度」が、上記ア.(ア)(ア-2)f.で認定した甲1発明に対し、甲1発明(申立人)において、どのくらいの範囲で差異が生じうるのかも不明である。
そのため、甲1に記載されたはんだ組成物は、各成分の組合せ及び含有量が、一体として、はんだ組成物の特性を決定する上で重要な技術的意義を有するとの前提に立ち、本件特許発明1との対比判断に用いる甲1に記載されたはんだ組成物の発明としては、甲1の実施例に記載されたはんだ組成物の発明を認定することが好ましいと考えられる。
また、甲1の実施例記載のはんだ組成物は、それ自体が甲1発明(申立人)のような「ディスペンス塗布用」のものかどうかは、明らかでもない。
したがって、はんだ組成物の各成分の組合せや含有量が「一体として」の技術的意義を有することを前提とせず、かつ、かかるはんだ組成物の用途を「ディスペンス塗布用」と特定する内容の甲1発明(申立人)を、甲1に記載されたはんだ組成物の発明として認定することは、適切とは言い難い。
よって、本件特許発明1との対比判断において、甲1発明(申立人)を採用することはできない。

c.結言
以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載されたものではなく、また、甲1発明と甲5?11、14に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(イ)本件特許発明2について
a.対比
(a)本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「((A)成分)ロジン系樹脂A:水添酸変性ロジン(軟化点:130℃) 26質量部、ロジン系樹脂B:重合ロジン(軟化点:140℃) 15質量部、ロジン系樹脂D:水添ロジンエステル(軟化点:85℃) 10質量部」、「((B)成分)活性剤:スベリン酸 5質量部」、「((C)成分)溶剤:ヘキシルジグリコール 35質量部」、「(他の成分)チクソ剤:脂肪酸アマイド(脂肪酸アミド)、商品名『スリパックスH』、日本化成社製 4質量部」、「((D)成分)アミン系化合物:商品名『キュアゾール2E4MZ』、四国化成社製 1質量部」、「11.4質量%のフラックス」及び「((E)成分)はんだ粉末:平均粒子径28μm、はんだ融点217?224℃、はんだ組成Sn98.3質量%/Ag1.0質量%/Cu0.7重量% 88.6質量部」は、それぞれ、本件特許発明2の「(A)ロジン系樹脂」、「(B)活性剤」、「(C)溶剤」、「(D)チクソ剤」、「(E)イミダゾール化合物」、「フラックス組成物」及び「(G)はんだ粉末」に相当する。

(b)以上から本件特許発明2と甲1発明とは以下の一致点、相違点を有する。
<一致点>
「(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末とを含有したはんだ組成物。」である点。

<相違点3>
本件特許発明2のはんだ組成物は、「レオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下である」のに対し、甲1発明のはんだ組成物はそのような粘度のものであるのか不明な点。

<相違点4>
本件特許発明2のはんだ組成物は、「ディスペンス塗布用」のものであるに対し、甲1発明のはんだ組成物はそのような用途のものであるのか不明な点。

b.相違点の検討
事案に鑑み、相違点3について検討する。
(a)本件特許発明2において「当該はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下」とすることの技術的意義は、本件特許明細書【0011】に「また、本実施形態においては、プリヒート時のだれと塗布性とを両立するという観点から、はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下であることが好ましく、80Pa・s以上120Pa・s以下であることがより好ましい。」と説明されるように、ディスペンス塗布法により塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、プリヒート時のだれを十分に抑制できるディスペンス塗布用はんだ組成物を提供する(【0005】)というものである。
そして、本件特許発明2のはんだ組成物をそのような粘度範囲へ調整するに際しては、本件特許明細書【0012】に「ロジン系樹脂、溶剤およびチクソ剤の種類や配合量を変更する」と記載される手法が採用でき、本件特許明細書の【0043】【表1】には、「(1)塗布性」の評価結果(評価内容の詳細は【0042】参照)が、上記粘度範囲の実施例1?6のはんだ組成物(評価結果:○又は△)より、粘度が上記粘度範囲の上限値より高い比較例2のはんだ組成物(評価結果:×)のほうが明らかに悪くなっているように、特に上記粘度範囲の上限値を定めることによる効果は、実施例・比較例において確認されている。なお、本件特許明細書の比較例として、本件特許発明2の上記粘度範囲の下限値より低い粘度のはんだ組成物で、効果が得られないことまでは確認されていないものの、本件特許発明1に対応する【0011】記載の「粘度が50Pa・s未満の場合には、プリヒート時のだれを十分に抑制できない。」との説明同様、本件特許発明2で特定される粘度範囲の下限値より低い粘度のはんだ組成物では、「プリヒート時のだれを十分に抑制できない。」ものと理解されるし、それが特に誤りといえるような点も見いだせない。

(b)これに対し、甲1発明の「はんだ組成物」は、上記ア.(ア)(ア-2)a.で触れたように、「スズメッキへのはんだぬれ性が優れ、かつはんだ付け部分での腐食を十分に抑制できるはんだ組成物を提供する」との課題を解決するもので、「(1)加熱時のダレ幅、(2)腐食試験、(3)スズメッキ基板へのぬれ広がりの評価において、いずれも良好な結果が得られるはんだ組成物」であるが、このうちの「(1)加熱時のダレ幅」にしても、上記ア.(ア)(ア-1)n.の【0038】に「本発明のはんだ組成物は、加熱時のダレ幅が比較的に大きい傾向にあり、それによりはんだ溶融時のスズメッキへのはんだぬれ性が向上したことが確認された。」と記載されるように、「(3)スズメッキ基板へのぬれ広がり」と連関し、加熱時のダレ幅が比較的に大きい傾向のものが「良好な評価結果」とされているなど、いずれの評価も、本件特許発明2の「プリヒート時のだれを十分に抑制できる」という技術的意義とは関連しないものである。

(c)そうすると、少なくとも、「プリヒート時のだれを十分に抑制できる」との技術的意義をもたらす相違点3の粘度範囲のはんだ組成物に関わる本件特許発明1と、甲1発明とは、仮に両者で発明範囲が重複または近い可能性があるように見えたとしても、これらは互いに課題が全く異なり、両発明で技術思想は共通しない。そして、甲1発明の課題解決に適した条件を選択して当該発明を実施する際に、本件特許発明1のような技術的意義を有する上記相違点3に係る範囲の粘度が実現し得ることは、甲1に何ら記載も示唆もされていないから、上記相違点3は両者の実質的な相違点であり、かつ、上記相違点3に係る本件特許発明2の発明特定事項は、当業者が甲1発明から通常の創作能力の範囲で想到できたものでもない。

(d)また、特許異議申立書3(4)(4.8.1)において、主たる証拠としての甲1に対し、従たる証拠として提示されている甲4?11、13?14について検討すると、これら従たる証拠の記載事項は、それぞれ上記ア.(エ)?(ス)のとおりであり、はんだ組成物の粘度を、本件特許発明2のような技術的意義を有する上記相違点3に係る範囲にすることは、記載も示唆もされていない。
そうすると、上記相違点3に係る本件特許発明2の発明特定事項は、甲1発明と甲4?11、13?14に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(e)さらに、上記ア.(ア)(ア-2)c.では、甲1記載の実施例1?3のうち実施例1に着目し、かかる実施例1の内容に基づいて上記ア.(ア)(ア-2)f.で甲1発明を認定したが、仮に甲1記載の実施例2?3のいずれかに着目して別の甲1記載の発明を認定したとしても、実施例1に着目した場合と同様に判断していくと、本件特許発明2と該別の甲1記載の発明とは実質的な相違点があり、また、該相違点に係る本件特許発明2の発明特定事項は、当業者が該別の甲1記載の発明と甲4?11、13?14に記載の技術事項とに基いて、当業者が通常の創作能力の発揮の範囲で想到しえたものともいえない、と結論できる。

(f)なお、申立人は、特許異議申立書第31?32ページにおいて、甲1に記載された発明を、次のような内容で「甲1発明」と認定している(以下、「甲1発明(申立人)」という。)。

[甲1発明(申立人)]
「(1a)ロジン系樹脂、(1b)活性剤、(1c) 溶剤、(1d)チクソ剤および(1e)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、
(1g)はんだ粉末と
を含有するディスペンス塗布用はんだ組成物であって、
前記フラックス組成物は、
(1a)ロジン系樹脂として、水添酸変性ロジンおよび水添ロジンエステルを含んでもよく、
(1d)チクソ剤として、たとえばアミド類を用いてもよく、
(1e)イミダゾール化合物として、ベンゾイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)、2-ウンデシルイミダゾールのうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、
(1e)イミダゾール化合物の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい、
ディスペンス塗布用はんだ組成物。」

しかしながら、このような甲1発明(申立人)は、甲1の実施例に直接記載されていない各成分の組合せ及び含有量の「はんだ組成物」を含むものである。
そして、甲1に記載された「はんだ組成物」は、上記ア.(ア)(ア-2)f.で認定した甲1発明のように、「(1)加熱時のダレ幅、(2)腐食試験、(3)スズメッキ基板へのぬれ広がりの評価において、いずれも良好な結果が得られるはんだ組成物」(以下、「甲1の良好な評価結果のはんだ組成物」という。)であるが、甲1には、甲1発明(申立人)のうち甲1の実施例に相当しない部分が、確実に上記甲1の良好な評価結果のはんだ組成物となっていることの十分な裏付けもされていないし、また、本件特許発明2と甲1発明(申立人)とを対比しようとする場合にも、本件特許発明2のように「レオメーターにより測定した25℃における粘度」が、上記ア.(ア)(ア-2)f.で認定した甲1発明に対し、甲1発明(申立人)において、どのくらいの範囲で差異が生じうるのかも不明であるから、甲1に記載されたはんだ組成物は、各成分の組合せ及び含有量が、一体として、はんだ組成物の特性を決定する上で重要な技術的意義を有するとの前提に立ち、本件特許発明2との対比判断に用いる甲1に記載されたはんだ組成物の発明としては、甲1の実施例に記載されたはんだ組成物の発明を認定することが好ましいと考えられる。
また、甲1の実施例記載のはんだ組成物は、それ自体が甲1発明(申立人)のような「ディスペンス塗布用」のものかどうかは、明らかでもない。
したがって、はんだ組成物の各成分の組合せや含有量が「一体として」の技術的意義を有することを前提とせず、かつ、かかるはんだ組成物の用途を「ディスペンス塗布用」と特定する内容の甲1発明(申立人)を、甲1に記載されたはんだ組成物の発明として認定することは、適切とは言い難いものであり、本件特許発明2との対比判断において、甲1発明(申立人)を採用することはできない。

c.結言
以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲1に記載されたものではなく、また、甲1発明と甲4?11、13?14に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(ウ)本件特許発明3?6について
本件特許発明3?6は、本件特許発明1または2を直接または間接的に引用したものであり、本件特許発明1または2の構成要件全て含むものである。
したがって、本件特許発明3?6は、本件特許発明1または2と同様に、甲1に記載されたものではなく、また、甲1発明と甲4?11、13?14に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(エ)甲1発明との対比・判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、新規性進歩性に関する上記3(4)(4-1)の特許異議の申立ての理由を採用することはできない。

ウ.甲2発明との対比・判断
(ア)本件特許発明2について
a.対比
(a)本件特許発明2と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「((A)成分)ロジン系樹脂:水添酸変性ロジン、商品名「パインクリスタルKE-604」、荒川化学工業社製 51.0質量%」、「((B1)成分)カルボン酸付加物A:下記調製例1で得られたカルボン酸付加物、示差走査熱量測定(DSC)による分解開始温度は約170℃ 9.0質量%、、」、「((C)成分)溶剤:テトラエチレングリコールジメチルエーテル、商品名『ハイソルブMTEM』、東邦化学工業社製 29.0質量%」、「((D)成分)チクソ剤:商品名『スリパックスZHH』、日本化成社製 8.5質量%」、「((B2)成分)アミン類A:2-フェニル-4-メチルイミダゾール、商品名『2P4MZ』、四国化成工業社製 2.5質量%」、「11質量%のフラックス組成物」及び「89質量%の((E)成分)はんだ粉末:粒子径分布20?38μm(平均粒子径約30μm)、はんだ融点217?220℃、はんだ組成Sn/Ag3.0/Cu0.5」は、それぞれ、本件特許発明2の「(A)ロジン系樹脂」、「(B)活性剤」、「(C)溶剤」、「(D)チクソ剤」、「(E)イミダゾール化合物」、「フラックス組成物」及び「(G)はんだ粉末」に相当する。

(b)以上から本件特許発明2と甲2発明とは以下の一致点、相違点を有する。
<一致点>
「(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末とを含有したはんだ組成物。」である点。

<相違点5>
本件特許発明2のはんだ組成物は、「レオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下である」のに対し、甲2発明のはんだ組成物はそのような粘度のものであるのか不明な点。

<相違点6>
本件特許発明2のはんだ組成物は、「ディスペンス塗布用」のものであるに対し、甲2発明のはんだ組成物はそのような用途のものであるのか不明な点。

b.相違点の検討
事案に鑑み、相違点5について検討する。
(a)本件特許発明2において「当該はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下」とすることの技術的意義は、本件特許明細書【0011】に「また、本実施形態においては、プリヒート時のだれと塗布性とを両立するという観点から、はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下であることが好ましく、80Pa・s以上120Pa・s以下であることがより好ましい。」と説明されるように、ディスペンス塗布法により塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、プリヒート時のだれを十分に抑制できるディスペンス塗布用はんだ組成物を提供する(【0005】)というものである。
そして、本件特許発明2のはんだ組成物をそのような粘度範囲へ調整するに際しては、本件特許明細書【0012】に「ロジン系樹脂、溶剤およびチクソ剤の種類や配合量を変更する」と記載される手法が採用でき、本件特許明細書の【0043】【表1】には、「(1)塗布性」の評価結果(評価内容の詳細は【0042】参照)が、上記粘度範囲の実施例1?6のはんだ組成物(評価結果:○又は△)より、粘度が上記粘度範囲の上限値より高い比較例2のはんだ組成物(評価結果:×)のほうが明らかに悪くなっているように、特に上記粘度範囲の上限値を定めることによる効果は、実施例・比較例において確認されている。なお、本件特許明細書の比較例として、本件特許発明2の上記粘度範囲の下限値より低い粘度のはんだ組成物で、効果が得られないことまでは確認されていないものの、本件特許発明1に対応する【0011】記載の「粘度が50Pa・s未満の場合には、プリヒート時のだれを十分に抑制できない。」との説明同様、本件特許発明2で特定される粘度範囲の下限値より低い粘度のはんだ組成物では、「プリヒート時のだれを十分に抑制できない。」ものと理解されるし、それが特に誤りといえるような点も見いだせない。

(b)これに対し、甲2発明の「はんだ組成物」は、上記ア.(イ)(イ-2)a.で触れたように、「十分なはんだ溶融性および十分な保存安定性を有するフラックス組成物、およびこれを用いたはんだ組成物、並びに、これらを用いた電子基板を提供する」との課題を解決するもので、「(1)保存安定性、(2)チップ脇ボール、(3)ピン間ボール、(4)はんだ広がり(洋白)の評価において、いずれも良好な結果が得られるはんだ組成物」であるが、いずれの評価も、本件特許発明2の「プリヒート時のだれを十分に抑制できる」という技術的意義とは関連しないものである。

(c)そうすると、少なくとも、「プリヒート時のだれを十分に抑制できる」との技術的意義をもたらす相違点5の粘度範囲のはんだ組成物に関わる本件特許発明2と、甲2発明とは、仮に両者で発明範囲が重複または近い可能性があるように見えたとしても、これらは互いに課題が全く異なり、両発明で技術思想は共通しない。そして、甲2発明の課題解決に適した条件を選択して当該発明を実施する際に、本件特許発明2のような技術的意義を有する上記相違点5に係る範囲の粘度が実現し得ることは、甲2に何ら記載も示唆もされていないから、上記相違点5は両者の実質的な相違点であり、かつ、上記相違点5に係る本件特許発明2の発明特定事項は、当業者が甲2発明から通常の創作能力の範囲で想到できたものでもない。

(d)また、特許異議申立書3(4)(4.8.2)において、主たる証拠としての甲2に対し、従たる証拠として提示されている甲1、4?8、11、13?14について検討すると、これら従たる証拠の記載事項は、それぞれ上記ア.(ア)(ア-1)、(エ)?(ク)、(サ)?(ス)のとおりであり、はんだ組成物の粘度を、本件特許発明2のような技術的意義を有する上記相違点5に係る範囲にすることは、記載も示唆もされていない。
そうすると、上記相違点5に係る本件特許発明2の発明特定事項は、甲2発明と甲1、4?8、11、13?14に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(e)さらに、上記ア.(イ)(イ-2)c.では、甲2記載の実施例1?5のうち実施例1に着目し、かかる実施例1の内容に基づいて上記ア.(イ)(イ-2)f.で甲2発明を認定したが、仮に甲2記載の実施例2?5のいずれかに着目して別の甲2記載の発明を認定したとしても、実施例1に着目した場合と同様に判断していくと、本件特許発明2と該別の甲2記載の発明とは実質的な相違点があり、また、該相違点に係る本件特許発明2の発明特定事項は、当業者が該別の甲2記載の発明と甲4?11、13?14に記載の技術事項とに基いて、当業者が通常の創作能力の発揮の範囲で想到しえたものともいえない、と結論できる。

(f)なお、申立人は、特許異議申立書第40?41ページにおいて、甲2に記載された発明を、次のような内容で「甲2発明」と認定している(以下、「甲2発明(申立人)」という。)。

[甲2発明(申立人)]
「(2a)ロジン系樹脂、(2b)活性剤、(2c)溶剤、(2d)チクソ剤および(2e)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、
(2g)はんだ粉末と
を含有するディスペンス塗布用はんだ組成物であって、
前記フラックス組成物は、
さらに、3,5-ジメチルピラゾールなどのピラゾール化合物を含んでもよく、
(2a)ロジン系樹脂として、水添酸変性ロジンおよび/または水添ロジンエステルを含んでもよく、
(2d)チクソ剤として、アマイド系チクソ剤を含んでもよい、
(2e)イミダゾール化合物として、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾールのうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい、
ディスペンス塗布用はんだ組成物。」

しかしながら、このような甲2発明(申立人)は、甲2の実施例に直接記載されていない各成分の組合せ及び含有量の「はんだ組成物」を含むものである。そして、甲2に記載された「はんだ組成物」は、上記ア.(イ)(イ-2)f.で認定した甲2発明のように、「(1)保存安定性、(2)チップ脇ボール、(3)ピン間ボール、(4)はんだ広がり(洋白)の評価において、いずれも良好な結果が得られるはんだ組成物」(以下、「甲2の良好な評価結果のはんだ組成物」という。)であるが、甲2には、甲2発明(申立人)のうち甲2の実施例に相当しない部分が、確実に上記甲2の良好な評価結果のはんだ組成物となっていることの十分な裏付けもされていないし、また、本件特許発明2と甲2発明(申立人)とを対比しようとする場合にも、本件特許発明2のように「レオメーターにより測定した25℃における粘度」が、上記ア.(イ)(イ-2)f.で認定した甲2発明に対し、甲2発明(申立人)において、どのくらいの範囲で差異が生じうるのかも不明であるから、甲2に記載されたはんだ組成物は、各成分の組合せ及び含有量が、一体として、はんだ組成物の特性を決定する上で重要な技術的意義を有するとの前提に立ち、本件特許発明2との対比判断に用いる甲2に記載されたはんだ組成物の発明としては、甲2の実施例に記載されたはんだ組成物の発明を認定することが好ましいと考えられる。
また、甲2の実施例記載のはんだ組成物は、それ自体が甲2発明(申立人)のような「ディスペンス塗布用」のものかどうかは、明らかでもない。
したがって、はんだ組成物の各成分の組合せや含有量が「一体として」の技術的意義を有することを前提とせず、かつ、かかるはんだ組成物の用途を「ディスペンス塗布用」と特定する内容の甲2発明(申立人)を、甲2に記載されたはんだ組成物の発明として認定することは、適切とは言い難いものであり、本件特許発明2との対比判断において、甲2発明(申立人)を採用することはできない。

c.結言
以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲2に記載されたものではなく、また、甲2発明と甲1、4?8、11、13?14に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(イ)本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明2を引用する形式ではないもの、本件特許発明2の構成要件全て含む。
したがって、本件特許発明3は、本件特許発明2と同様に、甲2に記載されたものではなく、また、甲2発明と甲1、4?8、11、13?14に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(ウ)本件特許発明4?6について
本件特許発明4?6は、本件特許発明2または3を直接または間接的に引用し、本件特許発明2または3の構成要件全て含む場合がある。
したがって、このような場合の本件特許発明4?6は、本件特許発明2または3と同様に、甲2に記載されたものではなく、また、甲2発明と甲1、4?8、11、13?14に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(エ)甲2発明との対比・判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、新規性進歩性に関する上記3(4)(4-2)の特許異議の申立ての理由を採用することはできない。

エ.甲3発明との対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a.対比
(a)本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明の「ロジン 55.9質量%」、「有機酸 6重量%、ジフェニルグアニジン-HBr 1重量%」、「溶剤;グリコールエーテル系の化合物 30重量%」、「チキソ剤 7重量%」、「イミダゾール 0.1重量%」、「フラックス」、「Sn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)であるはんだ合金の粉末」及び「ソルダーペースト」は、それぞれ、本件特許発明1の「(A)ロジン系樹脂」、「(B)活性剤」、「(C)溶剤」、「(D)チクソ剤」、「(E)イミダゾール化合物」、「フラックス組成物」、「(G)はんだ粉末」及び「はんだ組成物」に相当する。

(b)以上から本件特許発明1と甲3発明とは以下の一致点、相違点を有する。
<一致点>
「(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末とを含有したはんだ組成物。」である点。

<相違点7>
本件特許発明1のはんだ組成物は、「E型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下である」のに対し、甲3発明のはんだ組成物はそのような粘度のものであるのか不明な点。

<相違点8>
本件特許発明1のはんだ組成物は、「ディスペンス塗布用」のものであるに対し、甲3発明のはんだ組成物はそのような用途のものであるのか不明な点。

b.相違点の検討
事案に鑑み、相違点7について検討する。
(a)本件特許発明1において「当該はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下である」とすることの技術的意義は、本件特許明細書【0011】に「本実施形態においては、はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下であることが必要である。粘度が50Pa・s未満の場合には、プリヒート時のだれを十分に抑制できない。他方、粘度が120Pa・s超である場合には、ディスペンス塗布法より塗布する場合において、十分な塗布性を維持できない。」と説明されるように、ディスペンス塗布法により塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、プリヒート時のだれを十分に抑制できるディスペンス塗布用はんだ組成物を提供する(【0005】)というものである。
そして、本件特許発明1のはんだ組成物をそのような粘度範囲へ調整するに際しては、本件特許明細書【0012】に「ロジン系樹脂、溶剤およびチクソ剤の種類や配合量を変更する」と記載される手法が採用でき、本件特許明細書の【0043】【表1】には、「(1)塗布性」の評価結果(評価内容の詳細は【0042】参照)が、上記粘度範囲の実施例1?6のはんだ組成物(評価結果:○又は△)より、粘度が上記粘度範囲の上限値より高い比較例2のはんだ組成物(評価結果:×)のほうが明らかに悪くなっているように、特に上記粘度範囲の上限値を定めることによる効果は、実施例・比較例において確認されている。なお、本件特許明細書の比較例として、本件特許発明1の上記粘度範囲の下限値より低い粘度のはんだ組成物で、効果が得られないことまでは確認されていないものの、【0011】記載の「粘度が50Pa・s未満の場合には、プリヒート時のだれを十分に抑制できない。」との説明されている。

(b)これに対し、甲3発明の「はんだ組成物」は、上記ア.(ウ)(ウ-2)a.で触れたように、「特にフラックスの主活性温度域より低温域で発生した部品の反りに特に着目して、ソルダペーストが電極から剥離することを抑制できるようにしたソルダペースト用フラックス及びソルダペーストを提供する」との課題を解決するもので、「(1)剥離防止効果、(2)連続粘度の評価において、いずれも良好な結果が得られるはんだ組成物」であるが、いずれの評価も、本件特許発明1の「プリヒート時のだれを十分に抑制できる」という技術的意義とは関連しないものである。

(c)そうすると、少なくとも、「プリヒート時のだれを十分に抑制できる」との技術的意義をもたらす相違点7の粘度範囲のはんだ組成物に関わる本件特許発明と、甲3発明とは、仮に両者で発明範囲が重複または近い可能性があるように見えたとしても、これらは互いに課題が全く異なり、両発明で技術思想は共通しない。
そして、甲3発明の課題解決に適した条件を選択して当該発明を実施する際に、本件特許発明1のような技術的意義を有する上記相違点7に係る範囲の粘度が実現し得ることは、甲3に何ら記載も示唆もされていないから、上記相違点7は両者の実質的な相違点であり、かつ、上記相違点7に係る本件特許発明1の発明特定事項は、当業者が甲3発明から通常の創作能力の範囲で想到できたものでもない。

(d)また、特許異議申立書3(4)(4.8.3)において、主たる証拠としての甲3に対し、従たる証拠として提示されている甲5?11、14について検討すると、これら従たる証拠の記載事項は、それぞれ上記ア.(エ)?(ス)のとおりであり、はんだ組成物の粘度を、本件特許発明1のような技術的意義を有する上記相違点7に係る範囲にすることは、記載も示唆もされていない。
そうすると、上記相違点7に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲3発明と甲5?11、14に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(e)さらに、上記ア.(ウ)(ウ-2)c.では、甲3記載の実施例1?30のうち実施例1に着目し、かかる実施例1の内容に基づいて上記ア.(ウ)(ウ-2)f.で甲3発明を認定したが、仮に甲3記載の実施例2?30のいずれかに着目して別の甲3記載の発明を認定したとしても、実施例1に着目した場合と同様に判断していくと、本件特許発明1と該別の甲3記載の発明とは実質的な相違点があり、また、該相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項は、当業者が該別の甲3記載の発明と甲5?11、14に記載の技術事項とに基いて、当業者が通常の創作能力の発揮の範囲で想到しえたものともいえない、と結論できる。

(f)なお、申立人は、特許異議申立書第99?100ページにおいて、甲3に記載された発明を、次のような内容で「甲3発明」を認定している(以下、「甲3発明(申立人)」という。)。

[甲3発明(申立人)]
「(3a)ロジン系樹脂、(3b)活性剤、(3c) 溶剤、(3d)チクソ剤および(3e)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、
(3g)はんだ粉末と
を含有するはんだ組成物であって、
前記フラックス組成物は、
(3a)ロジン系樹脂として、水添ロジン、酸変性ロジン、重合ロジン、ロジンエステルのいずれかを含んでもよく、
(3d)チクソ剤として、たとえば高級脂肪酸アマイド、高級脂肪酸エステル、ひまし硬化油を用いてもよく、
(3e)イミダゾール化合物として、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-メチルイミダゾールの何れか、あるいは、これらの組み合わせとしてもよく、
(3e)イミダゾール化合物の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい、
はんだ組成物。」

しかしながら、このような甲3発明(申立人)は、甲3の実施例に直接記載されていない各成分の組合せ及び含有量の「はんだ組成物」を含むものである。
そして、甲3に記載された「はんだ組成物」は、上記ア.(ウ)(ウ-2)f.で認定した甲3発明のように、「(1)加熱時のダレ幅、(2)腐食試験、(3)スズメッキ基板へのぬれ広がりの評価において、いずれも良好な結果が得られるはんだ組成物」(以下、「甲3の良好な評価結果のはんだ組成物」という。)であるが、甲3には、甲3発明(申立人)のうち甲3の実施例に相当しない部分が、確実に上記甲3の良好な評価結果のはんだ組成物となっていることの十分な裏付けもされていないし、また、本件特許発明1と甲3発明(申立人)とを対比しようとする場合にも、本件特許発明1のように「はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度」が、上記ア.(ウ)(ウ-2)f.で認定した甲3発明に対し、甲3発明(申立人)において、どのくらいの範囲で差異が生じうるのかも不明であるから、甲3に記載されたはんだ組成物は、各成分の組合せ及び含有量が、一体として、はんだ組成物の特性を決定する上で重要な技術的意義を有するとの前提に立ち、本件特許発明1との対比判断に用いる甲3に記載されたはんだ組成物の発明としては、甲3の実施例に記載されたはんだ組成物の発明を認定することが好ましいと考えられる。
また、甲3の実施例記載のはんだ組成物は、それ自体が甲3発明(申立人)のような「ディスペンス塗布用」のものかどうかは、明らかでもない。
したがって、はんだ組成物の各成分の組合せや含有量が「一体として」の技術的意義を有することを前提とせず、かつ、かかるはんだ組成物の用途を「ディスペンス塗布用」と特定する内容の甲3発明(申立人)を、甲3に記載されたはんだ組成物の発明として認定することは、適切とは言い難い。
よって、本件特許発明1との対比判断において、甲3発明(申立人)を採用することはできない。

c.結言
以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3に記載されたものではなく、また、甲3発明と甲5?11、14に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(イ)本件特許発明2について
a.対比
(a)本件特許発明2と甲3発明とを対比すると、甲3発明の「ロジン 55.9質量%」、「有機酸 6重量%、ジフェニルグアニジン-HBr 1重量%」、「溶剤;グリコールエーテル系の化合物 30重量%」、「チキソ剤 7重量%」、「イミダゾール 0.1重量%」、「フラックス」、「Sn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)であるはんだ合金の粉末」及び「ソルダーペースト」は、それぞれ、本件特許発明1の「(A)ロジン系樹脂」、「(B)活性剤」、「(C)溶剤」、「(D)チクソ剤」、「(E)イミダゾール化合物」、「フラックス組成物」、「(G)はんだ粉末」及び「はんだ組成物」に相当する。

(b)以上から本件特許発明2と甲3発明とは以下の一致点、相違点を有する。
<一致点>
「(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末とを含有したはんだ組成物。」である点。

<相違点9>
本件特許発明2のはんだ組成物は、「レオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下である」のに対し、甲3発明のはんだ組成物はそのような粘度のものであるのか不明な点。

<相違点10>
本件特許発明2のはんだ組成物は、「ディスペンス塗布用」のものであるに対し、甲3発明のはんだ組成物はそのような用途のものであるのか不明な点。

b.相違点の検討
事案に鑑み、相違点9について検討する。
(a)本件特許発明2において「当該はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下」とすることの技術的意義は、本件特許明細書【0011】に「また、本実施形態においては、プリヒート時のだれと塗布性とを両立するという観点から、はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下であることが好ましく、80Pa・s以上120Pa・s以下であることがより好ましい。」と説明されるように、ディスペンス塗布法により塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、プリヒート時のだれを十分に抑制できるディスペンス塗布用はんだ組成物を提供する(【0005】)というものである。
そして、本件特許発明2のはんだ組成物をそのような粘度範囲へ調整するに際しては、本件特許明細書【0012】に「ロジン系樹脂、溶剤およびチクソ剤の種類や配合量を変更する」と記載される手法が採用でき、本件特許明細書の【0043】【表1】には、「(1)塗布性」の評価結果(評価内容の詳細は【0042】参照)が、上記粘度範囲の実施例1?6のはんだ組成物(評価結果:○又は△)より、粘度が上記粘度範囲の上限値より高い比較例2のはんだ組成物(評価結果:×)のほうが明らかに悪くなっているように、特に上記粘度範囲の上限値を定めることによる効果は、実施例・比較例において確認されている。なお、本件特許明細書の比較例として、本件特許発明2の上記粘度範囲の下限値より低い粘度のはんだ組成物で、効果が得られないことまでは確認されていないものの、本件特許発明1に対応する【0011】記載の「粘度が50Pa・s未満の場合には、プリヒート時のだれを十分に抑制できない。」との説明同様、本件特許発明2で特定される粘度範囲の下限値より低い粘度のはんだ組成物では、「プリヒート時のだれを十分に抑制できない。」ものと理解されるし、それが特に誤りといえるような点も見いだせない。

(b)これに対し、甲3発明の「ソルダーペースト」は、上記ア.(ウ)(ウ-2)a.で触れたように、「特にフラックスの主活性温度域より低温域で発生した部品の反りに特に着目して、ソルダペーストが電極から剥離することを抑制できるようにしたソルダペースト用フラックス及びソルダペーストを提供する」との課題を解決するもので、「(1)剥離防止効果、(2)連続粘度の評価において、いずれも良好な結果が得られるはんだ組成物」であるが、いずれの評価も、本件特許発明2の「プリヒート時のだれを十分に抑制できる」という技術的意義とは関連しないものである。

(c)そうすると、少なくとも、「プリヒート時のだれを十分に抑制できる」との技術的意義をもたらす相違点9の粘度範囲のはんだ組成物に関わる本件特許発明2と、甲3発明とは、仮に両者で発明範囲が重複または近い可能性があるように見えたとしても、これらは互いに課題が全く異なり、技術思想が共通しない発明同士である。そして、甲3発明の課題解決に適した条件を選択して当該発明を実施する際に、本件特許発明2のような技術的意義を有する上記相違点9に係る範囲の粘度が実現し得ることは、甲3に何ら記載も示唆もされていないから、上記相違点9は両者の実質的な相違点であり、かつ、上記相違点9に係る本件特許発明2の発明特定事項は、当業者が甲3発明から通常の創作能力の範囲で想到できたものでもない。

(d)また、特許異議申立書3(4)(4.8.3)において、主たる証拠としての甲3に対し、従たる証拠として提示されている甲1、4?11、13?14について検討すると、これら従たる証拠の記載事項は、それぞれ上記ア.(ア)(ア-1)、(エ)?(ス)のとおりであり、はんだ組成物の粘度を、本件特許発明2のような技術的意義を有する上記相違点9に係る範囲にすることは、記載も示唆もされていない。
そうすると、上記相違点9に係る本件特許発明2の発明特定事項は、甲3発明と甲1、4?11、13?14に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(e)さらに、上記ア.(ウ)(ウ-2)c.では、甲3記載の実施例1?30のうち実施例1に着目し、かかる実施例1の内容に基づいて上記ア.(ウ)(ウ-2)f.で甲3発明を認定したが、仮に甲3記載の実施例2?30のいずれかに着目して別の甲3記載の発明を認定したとしても、実施例1に着目した場合と同様に判断していくと、本件特許発明2と該別の甲3記載の発明とは実質的な相違点があり、また、該相違点に係る本件特許発明2の発明特定事項は、当業者が該別の甲3記載の発明と甲4?11、13?14に記載の技術事項とに基いて、当業者が通常の創作能力の発揮の範囲で想到しえたものともいえない、と結論できる。

(f)なお、申立人は、特許異議申立書第31?32ページにおいて、甲3に記載された発明を、次のような内容で「甲3発明」と認定している(以下、「甲3発明(申立人)」という。)。

[甲3発明(申立人)]
「(1a)ロジン系樹脂、(1b)活性剤、(1c) 溶剤、(1d)チクソ剤および(1e)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、
(1g)はんだ粉末と
を含有するディスペンス塗布用はんだ組成物であって、
前記フラックス組成物は、
(1a)ロジン系樹脂として、水添酸変性ロジンおよび水添ロジンエステルを含んでもよく、
(1d)チクソ剤として、たとえばアミド類を用いてもよく、
(1e)イミダゾール化合物として、ベンゾイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)、2-ウンデシルイミダゾールのうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、
(1e)イミダゾール化合物の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい、
ディスペンス塗布用はんだ組成物。」

しかしながら、このような甲3発明(申立人)は、甲3の実施例に直接記載されていない各成分の組合せ及び含有量の「はんだ組成物」を含むものである。
そして、甲3に記載された「はんだ組成物」は、上記ア.(ウ)(ウ-2)f.で認定した甲3発明のように、「(1)加熱時のダレ幅、(2)腐食試験、(3)スズメッキ基板へのぬれ広がりの評価において、いずれも良好な結果が得られるはんだ組成物」(以下、「甲3の良好な評価結果のはんだ組成物」という。)であるが、甲3には、甲3発明(申立人)のうち甲3の実施例に相当しない部分が、確実に上記甲3の良好な評価結果のはんだ組成物となっていることの十分な裏付けもされていないし、また、本件特許発明2と甲3発明(申立人)とを対比しようとする場合にも、本件特許発明2のように「レオメーターにより測定した25℃における粘度」が、上記ア.(ウ)(ウ-2)f.で認定した甲3発明に対し、甲3発明(申立人)において、どのくらいの範囲で差異が生じうるのかも不明であるから、甲3に記載されたはんだ組成物は、各成分の組合せ及び含有量が、一体として、はんだ組成物の特性を決定する上で重要な技術的意義を有するとの前提に立ち、本件特許発明2との対比判断に用いる甲3に記載されたはんだ組成物の発明としては、甲3の実施例に記載されたはんだ組成物の発明を認定することが好ましいと考えられる。
また、甲3の実施例記載のはんだ組成物は、それ自体が甲3発明(申立人)のような「ディスペンス塗布用」のものかどうかは、明らかでもない。
したがって、はんだ組成物の各成分の組合せや含有量が「一体として」の技術的意義を有することを前提とせず、かつ、かかるはんだ組成物の用途を「ディスペンス塗布用」と特定する内容の甲3発明(申立人)を、甲3に記載されたはんだ組成物の発明として認定することは、適切とは言い難いものであり、本件特許発明2との対比判断において、甲3発明(申立人)を採用することはできない。

c.結言
以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲3に記載されたものではなく、また、甲3発明と甲4?11、13?14に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(ウ)本件特許発明3?6について
本件特許発明3?6は、本件特許発明1または2を直接または間接的に引用したものであり、本件特許発明1または2の構成要件全て含むものである。
したがって、本件特許発明3?6は、本件特許発明1または2と同様に、甲3に記載されたものではなく、また、甲3発明と甲4?11、13?14に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(エ)甲3発明との対比・判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、新規性進歩性に関する上記3(4)(4-3)の特許異議の申立ての理由を採用することはできない。

オ.申立理由4、5(新規性進歩性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、新規性進歩性に関する特許異議の申立ての理由を採用することはできない。

5 むすび
したがって、特許異議の申立てのいずれの理由及び証拠によっても、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-02-22 
出願番号 特願2019-37631(P2019-37631)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (B23K)
P 1 651・ 121- Y (B23K)
P 1 651・ 536- Y (B23K)
P 1 651・ 537- Y (B23K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 結城 佐織  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 中澤 登
市川 篤
登録日 2020-03-31 
登録番号 特許第6684372号(P6684372)
権利者 株式会社タムラ製作所
発明の名称 ディスペンス塗布用はんだ組成物  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  
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