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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1371976
審判番号 不服2019-15990  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-27 
確定日 2021-03-10 
事件の表示 特願2018- 95154「表示パネル及び表示パネルの上部基板を製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月 8日出願公開、特開2019-133118〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)5月17日(パリ条約による優先権主張 2018年1月29日(US)アメリカ合衆国)の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成31年 4月 8日付け 拒絶理由通知書
令和 元年 7月 8日 意見書・手続補正書の提出
令和 元年 7月22日付け 拒絶査定
令和 元年11月27日 本件審判請求・手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、令和元年11月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】
第1領域および前記第1領域のそばにある第2領域を有する表示パネルであって、前記表示パネルが、
外表面を有する支持板と、
前記支持板の前記外表面に配置され、且つ前記第1領域において消失するパターン化反射防止層と、
前記支持板の前記外表面に配置され、且つ前記第1領域内に設置されたパターン化遮光層と、
を含む上部基板と、
底部基板と、
前記上部基板と前記底部基板の間に配置された表示媒体層と、
前記上部基板が、さらに、前記支持板に配置され、前記パターン化遮光層を覆う保護層と
を含み、
前記パターン化遮光層は、良好な直線性を有するシャープなエッジを表すことができることを特徴とする表示パネル。」(以下「本願発明」という。)


第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本願の優先権主張の日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用文献1:特開2012-88684号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2015/0179586号明細書

第4 引用発明の認定
1 引用文献1:特開2012-88684号公報
(1)
原査定において引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された特開2012-88684号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審で付加。以下同様。)
「【発明を実施するための形態】
【0043】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る表示用前面板、表示装置、表示用前面板の製造方法および表示装置の製造方法の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図8は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0044】
図1(a)および図2(a)に示すように、本実施の形態の表示装置は、LCD、PDP、有機ELなどの表示部50と、表示部50に対して観察者側に配置され、表示領域と非表示領域とを有する表示用前面板40と、を備えている。なお、本実施の形態の表示装置は、表示用前面板40の周縁部を支える枠体がないものや、表示用前面板40が枠体によって挟持されているだけで表示用前面板40の観察者側の表面が枠体によって覆われていないものを想定している。
【0045】
上記の表示用前面板40は、表示部50を保護するためのものであり、0.5mm以上の厚みからなっている。また、表示用前面板40は、面方向に沿って表示領域と非表示領域とを有している。この表示用前面板40は、略矩形状からなりガラス基板などの透明基板20と、透明基板20の観察者側(図1の上方側)に反射防止材料を含む塗布液が塗布されることで設けられた反射防止膜30と、透明基板20の表示部側(図1の下方側)に設けられて透明基板20の周縁部に位置して非表示領域を形成する意匠層10と、を備えている。
【0046】
このうち、反射防止膜30は低屈折率層のみからなる単層構成でもよいが、多層構造からなってもよい。そして、多層構造からなる場合には、一般に、最表面に適切な膜厚の低屈折率層を形成し、さらに高屈折率層などの層を低屈折率層の下層に設けることで作製することができ、より具体的には、透明基板20側から順番に、高/低屈折率層、中/高/低屈折率層、ハードコート層/中/高/低屈折率層などからなる。また、反射防止膜30をドライ法で形成すると、コストが高くなり生産性が低くなることから、本実施の形態の反射防止膜30は、ダイコート法、スピンコート法またはディップコート法などのウエット法で形成される。なお、材料の屈折率を下げるには、フッ素原子を導入したり、密度を下げたり(空隙を導入したり)することで実現することができる。なお、反射防止膜30に用いられる材料などについては、特開2005-43749号に開示されており、当該特開2005-43749号に開示されている材料を用いることができる。
【0047】
また、意匠層10は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、転写シートからの転写印刷などの公知の印刷法、または手描きなどによってインキによって形成することができる。また、全面ベタ柄の場合は、グラビアコート、ロールコート、スプレーコートなどの公知の塗工法によって塗料で形成することもできる。使用するインキまたは塗料としては、バインダーとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂などの樹脂を、一種又は二種以上混合したものに着色剤、適宜その他添加剤を添加した物を用いることができる。なお、より詳細については、特開2005-43749号に開示されており、当該特開2005-43749号に開示されている着色剤などを用いることができる。」

「【0085】
第2の実施の形態
次に、図9乃至図12により、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0086】
第1の実施の形態は、透明基板20の表示部側に意匠層10が設けられている態様であったが、第2の実施の形態では、透明基板20の観察者側に意匠層10が設けられている態様になっている。第2の実施の形態において、その他の構成は、第1の実施の形態と略同一の態様となっている。
【0087】
図9乃至図12に示す第2の実施の形態において、図1乃至図8に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
[反射防止膜30の非表示領域に位置する部分の全てを除去]
【0088】
以下、本実施の形態の作用および効果について説明する。最初に、反射防止膜30が、非表示領域に位置する部分の全てで除去されている表示用前面板40および表示装置の製造方法について説明する。なお、第1の実施の形態と重複する部分については適宜省略しつつ説明する。
【0089】
まず、透明基板20が準備される(図11(a)参照)。
【0090】
次に、透明基板20の観察者側(図11(b)の上方側)の周縁部に意匠層10が印刷されて形成される(図11(b)参照)。
【0091】
次に、透明基板20と意匠層10の観察者側(図11(c)の上方側)の全面に反射防止材料を含む塗布液が直接塗布されて反射防止膜30が形成される(図9(a)および図11(c)参照)。このとき、塗布液は、ダイコート法、スピンコート法またはディップコート法などのウエット法で塗布される。
【0092】
次に、反射防止膜30が周縁部の全周にわたって除去される。このとき、本実施の形態の反射防止膜30は、非表示領域に位置する部分の全てで除去されることとなる(図9(b)および図11(d)参照)。
【0093】
この際、反射防止膜30は、ローラ、粘着膜を有するテープ、スキージ、ワイプなどによって除去することができる。また、このように反射防止膜30を除去する際には、より容易に反射防止膜30を除去するために、溶剤、アルカリ性の薬液、酸性の薬液、水、アセトンなどを用いることができる。
【0094】
このように反射防止膜30の周縁部を除去することで、膜厚が不均一になっている盛り上がり部31を除去することができ、その結果、反射防止膜30の膜厚を全面にわたって均一にすることができる。」

「【0136】
(変形例)
なお図17に示すように、反射防止膜30の観察者側に設けられた接着層100の観察者側に、さらに保護層105が予め設けられていてもよい。この保護層105は、仮に表示用前面板40の透明基板20が破損してしまった場合であっても、透明基板20の破片が飛散することを防ぐことなどを意図して設けられる層である。このような保護層105の材料として、例えば光硬化樹脂タイプ、熱硬化樹脂タイプ、2液混合反応液タイプ、両面粘着シールタイプの材料等が挙げられる。このうち光硬化樹脂タイプにおいては、ラジカル系硬化系やカチオン系硬化系の材料が用いられる。ラジカル系硬化系の材料には、アクリル系、エン/チオール系、ビニルエーテル系の材料などが含まれ、カチオン系硬化系の材料には、エポキシ系、オキセタン系、ビニルエーテル系の材料などが含まれる。また、熱硬化樹脂タイプの材料には、エポキシ系、フェノール系、ポリエステル系の材料などが含まれる。
・・・(中略)・・・
【0140】
(その他の変形例)
また図16乃至図18に示す形態において、第1の実施の形態による表示用前面板40にさらに接着層100が設けられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第2の実施の形態による表示用前面板40が、接着層100や保護層105をさらに備えていてもよい。・・・(後略)・・・」

(2)
図9は以下のものである。

図17は以下のものである。



(3)

上記(1)における「第2の実施の形態」における「反射防止膜30」が形成される領域について、明記されていないところ、「透明基板20と意匠層10の観察者側(図11(c)の上方側)の全面に反射防止材料を含む塗布液が直接塗布されて反射防止膜30が形成」(【0091】)され、「反射防止膜30は、非表示領域に位置する部分の全てで除去される」(【0092】)ことから、反射防止膜30は、透明基板20における非表示領域に位置する部分以外の全面に形成されることが理解される。

上記(2)の図17から、保護層105は、表示用前面板40の表示領域及び非表示領域を覆うことが見て取れる。

(4)
以上の記載から、引用文献1には、第2の実施の形態について、以下の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明」という。)。
「LCDなどの表示部50と、表示部50に対して観察者側に配置され、表示領域と非表示領域とを有する表示用前面板40と、を備え、(【0044】)
表示用前面板40は、面方向に沿って表示領域と非表示領域とを有し、
この表示用前面板40は、略矩形状からなりガラス基板などの透明基板20と、透明基板20の観察者側に反射防止材料を含む塗布液が塗布されることで設けられた反射防止膜30と、透明基板20の周縁部に位置して非表示領域を形成する意匠層10と、を備えており、(【0045】)
意匠層10は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、転写シートからの転写印刷などの公知の印刷法によって形成され、(【0047】)
意匠層10は、透明基板20の観察者側に設けられ、(【0086】)
表示用前面板40が、接着層100や保護層105をさらに備えており、(【0140】)
反射防止膜30は、透明基板20における非表示領域に位置する部分以外の全面に形成される、(上記(3)ア)
表示装置。」

2 引用文献2: 米国特許出願公開第2015/0179586号明細書
(1)
原査定において引用され、本願の優先日前に外国において頒布された米国特許出願公開第2015/0179586号明細書(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。なお、日本語訳は、当審で作成した。

「[0003] The present invention relates to a display device and a method for manufacturing the same to prevent deterioration in visibility.」
日本語訳:
「[0003]本発明は、視認性の低下を防止する表示装置及びその製造方法に関する。」

「[0010] To achieve these and other advantages and in accordance with the purpose of the invention, as embodied and broadly described herein, a method for manufacturing a display device includes forming an alignment mark on a front surface of a substrate having a display region and a non-display region surrounding the display region, forming an alignment protection pattern to overlap the alignment mark on a rear surface of the substrate, and forming a light-shielding member in the non-display region on the rear surface of the substrate, wherein the light-shielding member forms a boundary with the alignment protection pattern.」
日本語訳:
「[0010]これらおよび他の利点を達成するために、また本明細書で具体化され、広く説明されるように、本発明の目的に従って、表示装置を製造する方法は、表示領域と非表示領域を有する基板の前面にアライメントマークを形成することを含む。表示領域を取り囲み、基板裏面のアライメントマークと重なるように位置合わせ保護パターンを形成し、基板裏面の非表示領域に遮光部材を形成する。遮光部材は、アライメント保護パターンとの境界を形成する。」

(2)
図1は以下のものである。


3 引用文献3:特開2014-238532号公報
(1)
本願の優先日前に日本国内において頒布された特開2014-238532号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置(例えば、液晶表示装置)においては、ゲートドライバおよびソースドライバなどを配置するために、周縁部に非表示領域を確保することが必要とされている。このような非表示領域は、通常、ベゼルとも称される額縁で覆われている。ところで、近年、スマートフォンおよびタブレット端末等の普及に伴い、画像表示装置に対するデザイン上の要求が厳しくなっている。しかし、ベゼルは、画像表示装置の最表面に段差を生じさせ、見栄えを悪くするので、デザイン性向上の妨げとなっている。」
「【0018】
A-2.印刷層
印刷層12は、図1(a)および図1(b)ならびに図2に示すように、前面板10の平滑化層20側の面の周縁部、より具体的には平面視で画像表示装置のベゼルに対応する位置に形成されている。印刷層12は、所定のデザインが施された意匠層であってもよく、ベタの着色層であってもよい。印刷層12は、好ましくはベタの着色層であり、より好ましくは黒色の着色層である。黒色の着色層をベゼルに対応する位置に形成することにより、非表示領域を隠蔽することができるので、本発明の光学部材を用いれば、ベゼルを用いない画像表示装置を実現することができる。その結果、最表面に段差のない、きわめて優れた外観を有する画像表示装置を提供することができる。
・・・(中略)・・・
【0020】
使用されるインキまたは塗料は、代表的には、バインダーと着色剤と溶媒と必要に応じて用いられ得る任意の適切な添加剤とを含む。バインダーとしては、塩素化ポリオレフィン(例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン)、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂が挙げられる。バインダー樹脂は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。1つの実施形態においては、バインダー樹脂は熱重合性樹脂である。熱重合性樹脂は、光重合性樹脂に比べて使用量が少なくてすむので、着色剤の使用量(着色層における着色剤含有量)を増大させることができる。その結果、特に黒色の着色層を形成する場合に、全光線透過率が非常に小さく、優れた隠蔽性を有する着色層を形成することができる。1つの実施形態においては、バインダー樹脂はアクリル系樹脂であり、好ましくは多官能モノマー(例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート)を共重合成分として含むアクリル系樹脂である。多官能モノマーを共重合成分として含むアクリル系樹脂を用いることにより、適切な弾性率を有する着色層が形成され得るので、前面板が樹脂フィルムで構成されロール形状とする場合にブロッキングを良好に防止することができる。加えて、印刷層の厚みによる段差も形成され、当該段差がブロッキング防止に効果的に機能し得る。
【0021】
着色剤としては、目的に応じて任意の適切な着色剤が用いられ得る。着色剤の具体例としては、チタン白、亜鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、クロムバーミリオン、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等の無機顔料;フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、ペリレンレッド、アニリンブラック等の有機顔料または染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢顔料(パール顔料)が挙げられる。黒色の着色層を形成する場合には、カーボンブラック、鉄黒、アニリンブラックが好適に用いられる。この場合、着色剤は併用することが好ましい。可視光を広範囲かつ均等に吸収し、色付きのない(すなわち、真っ黒な)着色層を形成し得るからである。例えば、上記の着色剤に加えて、アゾ化合物および/またはキノン化合物が用いられ得る。1つの実施形態においては、着色剤は、主成分としてのカーボンブラックとその他の着色剤(例えば、アゾ化合物および/またはキノン化合物)とを含む。このような構成によれば、色つきがなく、かつ、経時安定性に優れた着色層を形成し得る。黒色の着色層を形成する場合には、着色剤は、バインダー樹脂100重量部に対して、好ましくは50重量部?200重量部の割合で用いられ得る。この場合、着色剤中のカーボンブラックの含有割合は、好ましくは80%?100%である。このような割合で着色剤(特にカーボンブラック)を用いることにより、全光線透過率が非常に小さく、かつ、経時安定性に優れた着色層を形成することができる。
【0022】
印刷層12の厚みは、好ましくは3μm?5μmである。このような厚みであれば、平滑化層により段差を良好に吸収することができる。さらに、印刷層12は、厚み3μm?5μmにおける全光線透過率が好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.008%以下である。全光線透過率がこのような範囲であれば、ベゼルを用いることなく画像表示装置の非表示領域を良好に隠蔽することができる。さらに、後述するように、位相差フィルムの好ましい実施形態によれば色付きのない非常に良好な黒表示を実現できるので、当該実施形態との組み合わせにより、黒表示時に表示領域および非表示領域ともに色付きのない(すなわち、真っ黒な)状態とすることができる。その結果、表示領域と非表示領域との境界が目立たない、きわめて優れた外観を有する画像表示装置を実現することができる。」

(2)図1(a)は、以下のものである。

第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。

(1)
本願発明の「第1領域および前記第1領域のそばにある第2領域を有する表示パネルであって、前記表示パネルが、」との特定事項について

引用発明における「表示装置」、「表示領域」、「非表示領域」は、それぞれ、本願発明の「表示パネル」、「第2領域」、「第1領域」に相当する。
したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備えている。

(2)
本願発明の「外表面を有する支持板と、前記支持板の前記外表面に配置され、且つ前記第1領域において消失するパターン化反射防止層と、前記支持板の前記外表面に配置され、且つ前記第1領域内に設置されたパターン化遮光層と、を含む上部基板と、」との特定事項について

引用発明における「透明基板20」、「反射防止膜30」、「意匠層10」、「表示用前面板40」は、それぞれ、本願発明における「支持板109」、「パターン化反射防止層110」、「パターン化遮光層103」、「上部基板」に相当する。

本願発明における「支持板」の「外表面」は、いかなる面を示すのか、すなわち、「表示パネル」における「最外層」の面という意味を有するかどうか、念のため検討すると、明細書中に特段の定義はなく、「外表面」の上に「パターン化反射防止層」と「パターン化遮光層」を備えるものであるから、単に「支持板」の「外」側の「表面」を意味するものと認められる。
そうすると、引用発明における「透明基板20」の「観察者側」の面は、「反射防止膜30」と「意匠層10」を備えており、「外表面」であるといえる。

そして、「反射防止膜30」は、「透明基板20における非表示領域に位置する部分以外の全面に形成される」から、本願発明でいう「支持板」の「外表面」に配置され、かつ「第1領域において消失する」ものといえる。
また、「意匠層10」は、「透明基板20の周縁部に位置して非表示領域を形成」するから、本願発明でいう、「支持板」の「外表面」に配置され、かつ「第1領域内に設置された」ものといえる。

したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備えている。

(3)
本願発明の「底部基板と、前記上部基板と前記底部基板の間に配置された表示媒体層と、」との特定事項について
引用発明は「LCDなどの表示部50」を備えているから、「表示媒体層」を有するといえるところ、本願発明のように「前記上部基板と前記底部基板の間に配置され」ることは特定されていない。

(4)
本願発明の「前記上部基板が、さらに、前記支持板に配置され、前記パターン化遮光層を覆う保護層とを含み」との特定事項について
引用発明は、「表示用前面板40が、接着層100や保護層105をさらに備え」ることが特定されている。
ここで、引用発明における「保護層105」は、本願発明の「保護層」に相当する。
そうすると、引用発明は、本願発明の「前記上部基板が、さらに、保護層を含」む点で一致する。

(5)
本願発明の「前記パターン化遮光層は、良好な直線性を有するシャープなエッジを表すことができる」との特定事項について
引用発明は、上記特定事項を備えるか不明である。


2 以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
「第1領域および前記第1領域のそばにある第2領域を有する表示パネルであって、前記表示パネルが、
外表面を有する支持板と、
前記支持板の前記外表面に配置され、且つ前記第1領域において消失するパターン化反射防止層と、
前記支持板の前記外表面に配置され、且つ前記第1領域内に設置されたパターン化遮光層と、
を含む上部基板と、
表示媒体層と
前記上部基板が、さらに、保護層と
を含む
表示パネル。」

3 一方、両者は以下の各点で相違する。
(相違点1)
本願発明は、「底部基板」を有し、「表示媒体層」が「上部基板と底部基板の間に配置され」ているのに対し、引用発明は「LCDなどの表示部50」がいかなる構成により配置されているか特定されていない点。
(相違点2)
「保護層」が、本願発明は「支持板に配置され」、「パターン化遮光層を覆う」ことが特定されているのに対し、引用発明は、「保護層105」は「表示用前面板40」のうちどこに配置されるか不明であり、「意匠層10」を覆うものであるかは不明である点。
(相違点3)
本願発明は、「前記パターン化遮光層は、良好な直線性を有するシャープなエッジを表すことができる」と特定されているのに対し、引用発明は、そのような構成を備えるか不明である点。

第6 判断
1 相違点1について

(ア)
相違点1に係る「前記上部基板と前記底部基板の間に配置された表示媒体層と」との特定事項が、どのような構造を包含するかについて検討すると、本願明細書の【0035】には、「本発明の開示において、『素子Aは、素子Bの上に配置される』という語法は、位置的関係を説明するために使用するものであり、素子Aと素子Bの間に配置された1つ、または複数の他の素子の可能性を含むと同時に、素子Aと素子Bの間に他の素子が存在しない場合も含む」と記載されているから、上記特定事項は「上部基板」と「表示媒体層」との間に、「表示媒体層」以外の他の素子が配置される場合を含むと解される。
(イ)
次に、引用発明の「表示部50」が「LCD」である場合について検討すると、LCDは通常、2枚の透明な液晶基板(第1液晶基板、第2液晶基板)の間に液晶材料が封入されている構成であり、この構成を引用発明の「表示部50」に、「第1液晶基板」を「透明基板20」に接する側とし、「第2液晶基板」を「透明基板20」と反対側の基板として、当てはめると、以下の図のものとなる。


ここで、「第2液晶基板」、「液晶材料」は、本願発明の「底部基板」、「表示媒体層」に相当する。
そして、上記(ア)のとおりだから、「液晶材料」は「透明基板20」と「第2液晶基板」との間に配置されたといえる。
(ウ)
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

(エ)
仮に(ア)の点を考慮せず、本願明細書の【図1B】に示されているように、本願発明が「表示媒体層」が「上部基板」及び「電極層」と「底部基板」とにより直接封入されている場合を検討する。
本願の明細書【0003】の記載によれば、本願の【図1B】の構造は、一般的な液晶表示パネルであることを前提としており、また、引用発明の「表示部50」も一般的な液晶表示パネルでよいものであるから、本願発明と引用発明とにおいて、液晶材料を封止する構造は同じである蓋然性が高く、この場合、相違点1は実質的な相違点ではない。
仮に、同じでないとしても、「LCD」であれば、液晶を制御するための電極が必要であることは当然のことであり、その配置位置を液晶材料のいずれの側とするかは、当業者が適宜選択すべき事項であるし、上記(イ)において図で示した構成において、「透明基板20」と「第1液晶基板」とは、いずれも透明な基板であるから、これを単一の透明基板とすることは、当業者が適宜なしえる設計事項といえる。
したがって、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成を得ることは当業者にとって容易になしえることである。

2 相違点2について
(1)
上記第4の1(3)イで示したとおり、引用文献1の図17から、「保護層105」は、「表示用前面板40」の「表示領域」及び「非表示領域」を覆うことが見て取れる。
ここで、図17は、引用文献1における第1の実施の形態に、「保護層105」を設ける際の図であるところ、引用文献1における第2の実施の形態である引用発明が「表示用前面板40が、接着層100や保護層105をさらに備え」る(【0140】)のであれば、第1の実施の形態と同様に、「保護層105」は、表示用前面板40の観察者側である「透明基板20」において、「反射防止膜30の観察者側に設けられた接着層100の観察者側に、さらに保護層105が予め設け」られ(【0136】)、表示領域及び非表示領域を覆うものとなるのが自然である。
そして、引用発明の「透明基板20」は本願発明の「支持板」に相当するから(上記第5の1(2)を参照のこと。)、「保護層105」は、本願発明でいう「支持板に配置」されるものである。
また、引用発明は、「非表示領域」を形成する「意匠層10」の観察者側に「接着層100」を設け、「接着層100」の観察者側に「保護層105」が設けられる構成となるものである。

(2)
次に、引用発明において、「意匠層10」に「接着層100」を介して設けられた「保護層105」が、「意匠層10」を覆うものといえるかどうか判断する。
まず、「覆う」の意味について検討すると、「覆う」とは、「露出するところがないように、全体にかぶせてしまう意」であり「1:一面に広がって全体を包み込む。2:下の物が隠れるように上からかぶせる。」(広辞苑第5版)などの意味である。
そして、上記(1)のとおりであるから、引用発明において「保護層105」は、観察者側から観たときに、「意匠層10」が「保護層105」を介してのみ見えるようかぶせられて備えるものであるから、上記の「覆う」の意味にあてはまるといえる。
そうすると、「接着層100」が介在するとしても「保護層105」は「意匠層10」を覆うものであるといえる。

(3)
したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。

3 相違点3について
(1)
引用発明において、「意匠層10」は「透明基板20の周縁部に位置して非表示領域を形成する」ためのものである。また、表示装置の「表示領域」と「非表示領域」とは、大部分において直線状に区切られているのが通常である(必要であれば、引用文献2の図1を参照のこと。)。
そうすると、「意匠層10」は、直線状の「表示領域」と「非表示領域」との境界に沿って直線状に設けられるものであって、ここで仮に、「意匠層10」が「良好な直線性」を有していない場合は、「表示領域」にまで、はみ出して設けられ、この場合は「表示領域」に表示される内容がはみ出した部分で「意匠層10」により隠れ表示が観察者から見えない状態となる場合があり、又は、「非表示領域」が「意匠層10」により明確に形成されないことになるから、「意匠層10」は「良好な直線性」を有する必要があるものといえる。
(2)
「意匠層10」には遮光性が求められるものである(必要であれば、引用文献3の「印刷層12」についての記載を参照のこと。)ところ、そのためには、使用する遮光インクに基づいた相応の厚み(層厚)が必要であることは、技術常識である。
ここで、「表示領域」と「非表示領域」との境界となる「意匠層10」の端部において、緩やかに厚みが減少するような形状では、薄くなった部分においては必要な遮光性が維持されないため、「意匠層10」端部においても遮光性を有するだけの十分な厚みが維持されることが望ましいといえる。このことは、引用文献1の図9において、「意匠層10」が「反射防止膜30」より厚く描かれており、「意匠層10」と「反射防止膜30」との境界では、「意匠層10」が垂直になるよう描かれていることからも理解できるものである。
一方で、上記(1)のとおり「意匠層10」は、「表示領域」にはみ出すことは許されないものである。
(3)
そうすると、「意匠層10」は、「非表示領域」において、十分な遮光性を実現するための厚みを有し、特に、「表示領域」と「非表示領域」との境界においても、その厚みが維持され、そして「表示領域」にはみ出すことがないよう形成されるべきものであり、すなわち、「意匠層10」の形状は、端部が垂直に切り立つよう形成されるべきものであるといえる。
(4)
そして相違点3に係る「シャープなエッジ」の意味について検討すると、「シャープ」は、「鋭い、とがっている、鮮明、鋭敏」(広辞苑第5版)という意味であり、「エッジ」は「端部」という意味であるから、上記(3)で示した「意匠層10」の端部の、垂直に切り立つ形状は「シャープなエッジ」であるといえる。
(5)
したがって、引用発明において、「意匠層10」を「良好な直線性を有するシャープなエッジ」を有するよう構成することで、相違点3に係る本願発明の構成を得ることは、当業者にとって容易になしえることである。

4 効果
本願発明の効果は、当業者にとって、引用発明の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。

5 小活
以上検討したとおり、引用発明において、相違点1ないし3に係る本願発明の構成を備えることは、いずれも当業者にとって容易に想到し得たことである。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6 請求人の主張について
(1)
請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(d)本願発明と引用発明との対比」において「引用文献1を参照した当業者が、図17に示される意匠層10と反射防止層30とを透明基板20の反対側に配置した構成から、意匠層10と反射防止層30とを透明基板20の同じ側に配置し、さらにその上に保護層105を設けるように改変することには、発想の飛躍があるものと思料する。」と主張している。
しかしながら、上記第6の2のとおりであるから、請求人の主張は採用されない。
(2)
請求人は「引用文献1の保護層105を、意匠層10の観察者側に設けようとした場合も、意匠層10と保護層105との間には接着層100が介在することになるので、保護層105が意匠層10を覆うものとはならない。」と主張している。
しかしながら、上記第6の2のとおりであるから、請求人の主張は採用されない。
(3)
請求人は「このような本願の保護層は、透明基板20の破片の飛散を防ぐことを目的として設けられた樹脂等により形成される引用文献1の保護層105とは、全く異なるものである。」と主張している。
しかしながら、請求項には、「保護層」の材質や目的は記載されておらず、この主張は請求項の記載に基づいた主張とはなっていない。
(4)
上記(2)及び(3)について、仮に、請求項に「保護層はパターン化遮光層に直接接しており、TiO_(2)、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、ITO、ZnO等により形成される」などと特定されたとしても、印刷された「意匠層10」が剥がれないよう、「意匠層10」に直接、酸化膜の保護層を備えるよう構成することは、当業者にとって容易になしえることであるから、この場合においても、請求人の主張は採用されない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-09-30 
結審通知日 2020-10-06 
審決日 2020-10-21 
出願番号 特願2018-95154(P2018-95154)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 昌夫  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 野村 伸雄
田中 秀直
発明の名称 表示パネル及び表示パネルの上部基板を製造する方法  
代理人 杉村 憲司  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 下地 健一  
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