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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C10L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C10L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C10L
管理番号 1372085
審判番号 不服2020-8910  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-26 
確定日 2021-03-11 
事件の表示 特願2018- 32921「汚泥燃料化装置、汚泥燃料化システム、汚泥燃料活用型工場および固形燃料の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月 5日出願公開、特開2019-147881〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)2月27日を出願日とする出願であって、令和2年1月9日付けの拒絶理由が通知され、同年3月16日に意見書の提出とともに手続補正がされ、同年3月23日付けで拒絶査定がされ(謄本送達は同月31日)、同年6月26日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がされ、同年10月15日に上申書の提出がなされたものである。

第2 令和2年6月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正前(令和2年3月16日付け手続補正)の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正により、請求項1に記載された次のとおりに補正された。
「汚泥乾燥部、造粒部、搬送部および固形燃料ボイラーをこの順で一体化して備え、
前記造粒部が少なくとも前記汚泥乾燥部で得られる乾燥汚泥を固形燃料に成型し、
前記搬送部が少なくとも前記固形燃料を前記固形燃料ボイラーに搬送し、前記搬送部が前記造粒部および前記固形燃料ボイラーの間を密閉できる、汚泥燃料化装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年3月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「汚泥乾燥部、造粒部、搬送部および固形燃料ボイラーをこの順で一体化して備え、
前記造粒部が少なくとも前記汚泥乾燥部で得られる乾燥汚泥を固形燃料に成型し、
前記搬送部が少なくとも前記固形燃料を前記固形燃料ボイラーに搬送する、汚泥燃料化装置。」

2 補正の適否について
(1)本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「搬送部」について、「前記搬送部が前記造粒部および前記固形燃料ボイラーの間を密閉できる」ことを特定したものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、同法第29条第2項(進歩性)の観点から、以下、検討する。

(3)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載のとおりである。

(4)引用文献の記載事項
ア 原査定の理由に引用された引用文献3には、汚泥の固形燃料化プラント(発明の名称)について次の記載がある。
摘記3a:【0061】
「本実施形態の汚泥の固形燃料化プラントは、可燃物と不燃物が混合して存在する廃棄物と、汚泥とを処理して、固形燃料を製造するものであり、図1は、固形燃料化プラントの全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、固形燃料化プラント1は、廃棄物を処理する混合廃棄物処理ライン2と、汚泥を処理する汚泥処理ライン3と、木質廃棄物処理ライン4と、固形燃料を製造する固形燃料製造ライン5と、汚泥処理ライン3に蒸気を供給するボイラ6を備える。」
摘記3b:【0062】
「混合廃棄物処理ライン2は、家庭や事務所等から排出された主に一般廃棄物を処理するものであり、可燃物と不燃物とが混在した状態で投入される。ここで、可燃物とは、例えば古紙や天然繊維や廃木材等の植物由来の廃棄物と、例えば化繊布や食品トレイやビニル袋や玩具や文具等の廃プラスチックとを含む。また、不燃物とは、例えば金属製品や陶器やガラス瓶等である。なお、可燃物と不燃物は、互いに分別収集された状態で投入されてもよく、或いは、混合されて収集された状態で投入されてもよい。廃棄物が分別されている場合、可燃物のうちの植物由来廃棄物と廃プラスチックとが、さらに分別されていてもよく、又は、混在していてもよい。この混合廃棄物処理ライン2は、投入された可燃物と不燃物を分別し、可燃物を清浄及び乾燥して抽出する。混合廃棄物処理ライン2で抽出された植物由来廃棄物と廃プラスチックを含む可燃物は、固形燃料製造ライン5で製造する固形燃料の材料に用いられる。」
摘記3c:【0063】
「汚泥処理ライン3は、水分量が概ね80質量%を越える汚泥を処理するものであり、例えば水分量が98質量%程度の活性汚泥や、例えば水分量が85質量%程度の建設汚泥や、例えば食品工場から排出されて水分量が95質量%程度の食品残渣等を処理することができる。なお、汚泥処理ライン3には、汚泥と共に生ごみが投入されてもよい。この汚泥処理ライン3は、汚泥や生ごみを減圧環境下で発酵及び乾燥させて、水分量が重量比で概ね50質量%以下の発酵乾燥汚泥を生成する。汚泥処理ライン3で生成された発酵乾燥汚泥は、固形燃料製造ライン5で製造する固形燃料の材料に用いられる。」
摘記3d:【0065】
「固形燃料製造ライン5は、混合廃棄物処理ライン2で抽出された植物由来の廃棄物及び廃プラスチックを含む可燃物と、汚泥処理ライン3で生成された発酵乾燥汚泥を材料に用いて固形燃料を製造するものであり、固形燃料としてのRPF(廃紙廃プラスチック燃料)を製造する。固形燃料製造ライン5で製造されたRPFは、一部がボイラ6の燃料として用いられる。」
摘記3e:【0088】?【0089】
「【0088】
図7は、汚泥処理ライン3の構成を示す模式図である。汚泥処理ライン3は、下水処理施設で生成された活性汚泥やし尿等の有機汚泥や、各種の工場や建設現場で生成された無機汚泥に対して、発酵及び乾燥処理を行う。
【0089】
汚泥が有機汚泥である場合、水分量が98質量%を超える汚泥が、受入ホッパ41に受け入れられ、受入ホッパ41の下部の切り出し装置から搬送コンベヤ42で搬送される。また、揺動型分別機24で軽量物を洗浄して生成された汚水が、受入ホッパ41へ投入され、汚泥に混合されて搬送コンベヤ42で搬送される。搬送コンベヤ42で搬送される汚泥には、搬送コンベヤ42の途中に設置された木屑供給装置43によって木屑が添加される。木屑供給装置43には、後述する木質廃棄物処理ライン4で生成された木屑が供給される。汚泥に対する木屑の添加は、汚泥の窒素成分の含有量が高いときに、窒素成分の割合を低減させるために行うのが好ましい。なお、汚泥への木屑の添加は、行わなくてもよい。木屑が添加された汚泥は、減圧発酵乾燥装置44に送られる。」
摘記3f:【0123】
「固形燃料製造ライン5では、混合廃棄物処理ライン2で抽出されて定量供給機50に貯蔵された廃プラスチックを含む可燃物が定量供給機50から巻き出され、スクリューコンベヤ70で搬送される。スクリューコンベヤ70で搬送される廃プラスチックを含む可燃物に、汚泥処理ライン3の定量供給機46から発酵乾燥汚泥が供給されて合流する。また、このスクリューコンベヤ70に、木質廃棄物処理ライン4の定量供給機47から木質チップが添加される。さらに、スクリューコンベヤ70に、オゾンや脱臭酵素等の脱臭剤が添加される。なお、スクリューコンベヤ70への木質チップの添加は行わなくてもよく、すなわち、木質チップは固形燃料の材料に用いなくてもよい。」
摘記3g:【0125】
「図11に示すように、固形燃料製造ライン5では、スクリューコンベヤ70により、発酵乾燥汚泥と、廃プラスチックと、植物由来廃棄物との混合材料がRPF成形機71に供給される。RPF成形機71は、材料の混合、混練、加熱及び押し出し工程を行い、廃プラスチックの溶融成分をバインダとして、可燃物である紙、繊維及び木質成分を固形化してRPFを製造する。RPF成形機71には、スクリュー式成形機やリングダイ式成形機を用いることができる。」
摘記3h:【0145】
「このように、スクリュー式成形機72やリングダイ式成形機74等で構成されるRPF成形機71で製造されたRPFは、冷却機72で冷却されて貯蔵サイロ73に貯蔵される。貯蔵サイロ73に貯蔵されるRPFは、ボイラ用や暖房用等の種々の用途の燃料として販売される。また、貯蔵サイロ73のRPFの一部は、燃料としてボイラ6に供給される。」
摘記3i:【図1】



摘記3j:【図7】




イ 新たに引用する本願出願前の技術常識を示す引用文献7(特開2001?157899号公報)には、「底泥の処理装置」(発明の名称)について次の記載がある。

摘記7a:【0013】、【0028】、【図1】
「【0013】〔第1実施形態〕図1に本発明の第1実施形態に係る底泥の処理装置の概略構成を示す。…
【0028】また、地上側では、凝集タンク28、脱水機29、搬送コンベヤ38、投入機49、粒状化装置30、搬出コンベヤ52が密閉式であるため、大気に触れることがなくなって臭気が外部に漏れることはない。更に、底泥11の脱水処理を濃縮タンク23、凝集タンク28、脱水機29と3工程に分割して実施したことで、各装置の小型軽量化が可能となる。…
【図1】



(5)引用発明の認定
ア 摘記3a(【0061】)には、「図1は、固形燃料化プラントの全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、固形燃料化プラント1は、廃棄物を処理する混合廃棄物処理ライン2と、汚泥を処理する汚泥処理ライン3と、木質廃棄物処理ライン4と、固形燃料を製造する固形燃料製造ライン5と、汚泥処理ライン3に蒸気を供給するボイラ6を備える。」と記載されており、摘記3i(図1)には、混合廃棄物処理ラインから可燃物と廃プラスチック、汚泥処理ラインから発酵乾燥汚泥が固形燃料製造ラインに送られ、固形燃料製造ラインからRPFがボイラに送られることが図示されている。
また、一体化とは、別々のものが1つのものとなることを意味するところ、混合廃棄物処理ライン2と、汚泥を処理する汚泥処理ライン3と、木質廃棄物処理ライン4と、固形燃料を製造する固形燃料製造ライン5と、汚泥処理ライン3に蒸気を供給するボイラ6を1つのものとした固形燃料化プラントは、混合廃棄物処理ライン2と、汚泥を処理する汚泥処理ライン3と、木質廃棄物処理ライン4と、固形燃料を製造する固形燃料製造ライン5と、汚泥処理ライン3に蒸気を供給するボイラ6がこの順で一体化して備えられたものであると認められる。
また、摘記3c(【0063】)には、「この汚泥処理ライン3は、汚泥や生ごみを減圧環境下で発酵及び乾燥させて、水分量が重量比で概ね50質量%以下の発酵乾燥汚泥を生成する。」ことが記載されており、摘記3e、3j(【図7】、【0088】?【0089】)には、汚泥処理ライン3には、減圧発酵乾燥装置44が含まれていることが記載されている。
そして摘記3d(【0065】)には、「固形燃料製造ライン5は、混合廃棄物処理ライン2で抽出された植物由来の廃棄物及び廃プラスチックを含む可燃物と、汚泥処理ライン3で生成された発酵乾燥汚泥を材料に用いて固形燃料を製造するものであり、固形燃料としてのRPF(廃紙廃プラスチック燃料)を製造する。」ことがそれぞれ記載されている。
また、摘記3h(【0145】)には、「…RPF成形機71で製造されたRPFは、冷却機72で冷却されて貯蔵サイロ73に貯蔵される。…また、貯蔵サイロ73のRPFの一部は、燃料としてボイラ6に供給される。」ことが記載されている。

そうすると、引用文献3の摘記3i(図1)に記載された固形燃料化プラントについて、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

イ 引用発明
「廃棄物を処理する混合廃棄物処理ライン2、減圧発酵乾燥装置を含む汚泥を処理する汚泥処理ライン3と、木質廃棄物処理ライン4と、固形燃料を製造する固形燃料製造ライン5と、汚泥処理ライン3に蒸気を供給するボイラ6をこの順で一体化して備える固形燃料化プラントであって、固形燃料製造ライン5では、混合廃棄物処理ライン2で抽出された植物由来の廃棄物及び廃プラスチックを含む可燃物と、汚泥処理ライン3で生成された発酵乾燥汚泥とを材料に用いてRPF(廃紙廃プラスチック燃料)を製造し、製造したRPFを冷却機72で冷却して貯蔵サイロ73に貯蔵し、貯蔵されたRPFの一部を燃料としてボイラ6に供給する、固形燃料化プラント」

(6)対比・判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「汚泥処理する汚泥処理ライン」に含まれる「減圧発酵乾燥装置」は、汚泥を乾燥処理するためのものであるから、本件補正発明の「汚泥乾燥部」に相当する。
また、固形燃料製造ラインは「スクリューコンベヤ70により、発酵乾燥汚泥と、廃プラスチックと、…がRPF成形機71に供給される。RPF成形機71は、材料の混合、混練、加熱及び押し出し工程を行い、廃プラスチックの溶融成分をバインダとして、可燃物である紙、繊維及び木質成分を固形化してRPFを製造する。」(摘記3g【0125】)ものであるところ、本願明細書【0025】において、造粒する方法として、RPFを製造する際に適用される公知の方法が挙げられていることからも明らかであるようにRPFは粒状のものであるから、引用発明の「固形燃料製造ライン」は本件補正発明の「造粒部」に相当する。
また、引用発明において、固形燃料製造ライン5で製造したRPFを冷却機72で冷却して貯蔵サイロ73に貯蔵し、貯蔵されたRPFの一部を燃料としてボイラ6に供給することが記載されているところ、当該RPFの供給(搬送)に用いられるものは、本件補正発明の「搬送部」に相当するものであるといえる。
また、引用発明の「固形燃料化プラント」は汚泥を固形燃料とするものであり、プラントは、複数の装置などを組み合わせた設備、装置を指すものであるから、本件補正発明の「汚泥燃料化装置」に相当する。
また、引用発明の「ボイラ6」は摘記3d(【0065】)に記載されるように固形燃料を固形燃料製造ライン5で製造されたRPFを燃料として使用するものであるから、本件補正発明の「固形燃料ボイラー」に相当する。

イ 一致点
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、
「汚泥乾燥部、造粒部、搬送部、固形燃料ボイラーをこの順で一体化して備え、
前記造粒部が少なくとも前記汚泥乾燥部で得られる乾燥汚泥を固形燃料に成型する、汚泥燃料化装置。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。

ウ 相違点
(相違点1):本件補正発明は、搬送部が造粒部および固形燃料ボイラーの間を密閉できるものであるのに対して、引用発明において、固形燃料製造ラインで製造されたRPFをボイラに供給するための手段が密閉できるものであると明記されていない点

エ 以下、上記相違点について検討する。
「搬送部が造粒部および固形燃料ボイラーの間を密閉できる」とは、通常、搬送部が造粒部および固形燃料ボイラーの間を実際に密閉していることと狭く解されるものではなく、単に密閉することができることを規定するものであるところ、搬送部の搬送手段が具体的にどのようなものであれ、例えば、装置を全て共通の建物の中に設けたり、搬出コンベアとして密閉式のものを用いるなどして、「密閉できる」ものとすることが可能であり、むしろ、密閉不可能な搬送手段は想定しにくいから、上記「搬送部が造粒部および固形燃料ボイラーの前を密閉できる」ことは、実質的な相違点とはならない。
してみれば、上記の相違点は、実質的な相違であるということはできず、本件補正発明と引用発明とは同一であると認めることができる。

(7)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、令和2年6月26日付けの審判請求書において、本件補正発明は「前記搬送部が前記造粒部および前記固形燃料ボイラーの間を密閉できる」という構成Xを備えていること、この構成Xにより、造粒部と固形燃料ボイラーの間が密閉されるため、「密閉状態で固形燃料を固形燃料ボイラーに投入することにより、乾燥汚泥を搬送する場合の臭気および粉じんの抑制をよりしやすくなる」という特有の効果を得ることができることを主張している。上記の主張によれば、「前記搬送部が前記造粒部および前記固形燃料ボイラーの間を密閉できる」なる記載は、前記搬送部が前記造粒部および前記固形燃料ボイラーの間を実際に密閉しているものであることを意図しているとも考えられる。
そこで、以下、「前記搬送部が前記造粒部および前記固形燃料ボイラーの間を密閉できる」という記載が、前記搬送部が前記造粒部および前記固形燃料ボイラーの間を実際に密閉しているものであることを意図するものであると解釈した場合の上記相違点についても予備的に検討する。

引用文献7の摘記7aに、底泥(汚泥)の処理装置において、搬送コンベアとして密閉式のものを用いることで、大気に触れることがなくなって臭気が外部に漏れることがないことが記載されているように、汚泥の処理装置において、搬送手段である搬送コンベアを密閉式のものとすることによって汚泥の臭気を外部に漏らさないようにすることができることは、当該技術分野における技術常識である。
また、摘記3f(【0123】)には、固形燃料製造ライン5において、オゾンや脱臭酵素等の脱臭剤が固形燃料に添加されることが記載されており、引用発明は、固形燃料の臭気を低減し、外部に漏らさないようにすることが意図するものであると認められるところ、固形燃料の臭気を低減するために、固形燃料に脱臭剤を添加するのに換えて、あるいは、固形燃料に脱臭剤を添加するのに加えて、搬送手段を密閉式の搬送コンベアなどとすることで、臭気を外部に漏らさないようすることは、当業者が容易に想到しうることである。
また、搬送手段を密閉式の搬送コンベアなどとすることで、粉じんの抑制が可能であることは、その構造から当業者が当然に予測可能なものである。

したがって、「前記搬送部が前記造粒部および前記固形燃料ボイラーの間を密閉できる」という記載が、前記搬送部が前記造粒部および前記固形燃料ボイラーの間を実際に密閉しているものであることを意図するものであると解釈した場合においても、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

イ また、審判請求人は、上記審判請求書および令和2年3月16日に提出の意見書で、引用文献3には、RPFのボイラ6への供給方法として、RPF成形機で製造されたものが冷却機で冷却されて貯蔵サイロに貯蔵された後に、一部が燃料としてボイラに供給されることが記載されているものの、ペレット固形燃料の固形燃料ボイラーへの搬送部の構造は何も記載されておらず、図1では、固形燃料製造ライン5とボイラ6は明らかに別の機械として記載されており、図11には、ボイラ6が記載されていないので、貯蔵サイロとボイラを一体化することは示唆されていないと主張する(引用文献3には、引用文献2とほぼ同じ内容が、引用文献2と同じ番号の図面および段落に記されてされている、という内容を上記のように解釈した)。
しかしながら、RPF成形機で製造されたものが冷却機で冷却されて貯蔵サイロに貯蔵された後に、一部が燃料としてボイラに供給されるのであれば、特に具体的な構造が明示されておらずともRPF成形機と冷却機、冷却機と貯蔵サイロの間に何らかの搬送手段が存在するのは明らかである。また、先にも述べたように、一体化とは、別々のものが1つのものとなることを意味するところ、固体燃料製造ラインと、ボイラが何らかの搬送手段によって、1つの固形燃料化プラントとされている(一体化されている)のであるから、固形燃料製造ラインとボイラが別の機械であれば、一体化されていないという審判請求人の主張を受け入れることはできない。

ウ また、審判請求人は、上記審判請求書において、本願発明は汚泥乾燥部、造粒部、搬送部および固形燃料ボイラーをこの順で一体化して備えた上で、造粒部と固形燃料ボイラーとの間を密閉できるようにすることにより、乾燥汚泥および固形燃料の搬送距離を短くして、搬送コストの削減、CO_(2)排出量の削減を可能にするとともに、乾燥汚泥搬送に際して臭気および粉じんの抑制を図ることができるという本願発明特有の効果が得られる旨主張する。
しかしながら、汚泥乾燥部、造粒部、搬送部および固形燃料ボイラーをこの順で一体化することや、造粒部と固形燃料ボイラーとの間を密閉できるようにすることは、各部間の搬送距離を規定するものではないから、搬送距離を短くすることを意味するものとは必ずしもいえず、審判請求人の主張を受け入れることはできない。

エ また、審判請求人は、令和2年10月15日提出の上申書において、
<意見1>として、「固形燃料ボイラーで固形燃料を燃焼して生成した蒸気を汚泥乾燥部で汚泥の乾燥に利用するものである」なる記載事項から、「少なくとも、汚泥乾燥部、造粒部、搬送部および固形燃料ボイラーは、相互に接続されている」なる記載事項を導出するのには、進歩性を否定する論理付けが不十分であること、
<意見2>として、「固形燃料の搬送手段として、密閉可能な搬送手段は通常のものである」なる記載事項から、「引用文献1?4に記載された発明は、搬送部が造粒部と固形燃料ボイラーの間を密閉できるものといえるか、そうとまでいえないとしても、・・・当業者が適宜に為し得ることである」なる記載事項を導出するのには、具体的な引用文献あるいは周知技術が挙げられることなく記されていることから、論拠が欠如していること、
<意見3> として、「前記搬送部がプラスチック、紙およびペーパースラッジのうち少なくとも1種類を含むRPF、または石炭を、前記固形燃料に混合して、前記RPF、または前記石炭、および、前記固形燃料を前記固形燃料ボイラーに搬送する」なる構成を本願の独立項に特定する補正を施す用意があることを主張する。

しかしながら、第2の2の(6)および後記する第3の4の判断は、「固形燃料ボイラーで固形燃料を燃焼して生成した蒸気を汚泥乾燥部で汚泥の乾燥に利用するものである」なる記載事項から、「少なくとも、汚泥乾燥部、造粒部、搬送部および固形燃料ボイラーは、相互に接続されている」なる記載事項を導出することによって、進歩性を否定するものではないし、「固形燃料の搬送手段として、密閉可能な搬送手段は通常のものである」ことについては、具体的な周知技術として引用文献7が挙げられるため、上記の意見1、2はいずれも受け入れることはできない。
また、意見3は、「前記搬送部がプラスチック、紙およびペーパースラッジのうち少なくとも1種類を含むRPF、または石炭を、前記固形燃料に混合して、前記RPF、または前記石炭、および、前記固形燃料を前記固形燃料ボイラーに搬送する」なる構成を追加する補正案を提示するものと理解されるが、当該補正案が本件補正前(令和2年3月16日付け手続補正)の特許請求の範囲の独立項に上記構成を追加する補正であるのか、それとも本件補正後の特許請求の範囲の独立項に上記構成を追加する補正であるのかは上申書の内容からは不明である。
また、仮に、上記の補正が、より構成の限定された本件補正後の特許請求の範囲の独立項に上記構成を追加する補正であると解釈したとしても、摘記3b【0062】に「混合廃棄物処理ライン2は、家庭や事務所等から排出された主に一般廃棄物を処理するものであり、可燃物と不燃物とが混在した状態で投入される。ここで、可燃物とは、例えば古紙や天然繊維や廃木材等の植物由来の廃棄物と、例えば化繊布や食品トレイやビニル袋や玩具や文具等の廃プラスチックとを含む。…混合廃棄物処理ライン2で抽出された植物由来廃棄物と廃プラスチックを含む可燃物は、固形燃料製造ライン5で製造する固形燃料の材料に用いられる。」と記載されているように、引用発明の固形燃料は廃プラスチックや古紙などを混合してなるものであるし、固形燃料に廃プラスチックや古紙をどのラインで混合するかは当業者が適宜決定するべきことに過ぎないから、依然として、上記補正案による本願請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、上記意見3についても受け入れることはできない。

4 補正の却下の決定のむすび
よって、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明
令和2年6月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年3月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?4、6、10、12?15、17、22、23に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1?4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、この出願の請求項1?23に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1?6に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

<引用文献等一覧>
1.特開平11-80763号公報
2.特開2013-67803号公報
3.特開2011-105816号公報
4.特開2013-224810号公報
5.特開2015-44919号公報
6.特開2015-25054号公報

3 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3の記載事項は、前記第2の[理由]2(4)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記搬送部が、前記造粒部および前記固形燃料ボイラーの間を密閉できる」点を削除するものであるから、本件補正発明が、前記第2の[理由]2(6)に記載したとおり、引用発明と同一のものであるのと同様の理由により、本願発明も、引用発明と同一のものである。

第4 むすび
上記のとおりであるから、本願発明は、引用発明であるか、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-12-22 
結審通知日 2021-01-05 
審決日 2021-01-20 
出願番号 特願2018-32921(P2018-32921)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C10L)
P 1 8・ 113- Z (C10L)
P 1 8・ 575- Z (C10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森 健一  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 瀬下 浩一
古妻 泰一
発明の名称 汚泥燃料化装置、汚泥燃料化システム、汚泥燃料活用型工場および固形燃料の製造方法  
代理人 真田 有  
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