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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1372138
審判番号 不服2020-5891  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-30 
確定日 2021-03-15 
事件の表示 特願2016-160537「情報取得システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月22日出願公開、特開2018- 28807〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成28年8月18日の出願であって,令和1年8月6日付けで拒絶理由通知がされ,同年10月2日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,令和2年1月31日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,令和2年4月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ,令和2年10月19日付けで上申書が提出されたものである。

第2.令和2年4月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年4月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所を示すために,請求人が付したものである。)

「【請求項1】
後記情報取得ルールでは情報取出しが単独では不能で,かつ所定のルールで構成される画像部分を複数取得するための画像部分取得部と,
複数取得される前記画像部分を合成した合成画像を生成するルールである合成画像生成ルールを保持する合成画像生成ルール保持部と,
取得した複数の画像部分を保持されている合成画像生成ルールを用いて合成して合成画像とする画像合成部と,
合成画像から情報を取得するルールである情報取得ルールを保持する情報取得ルール保持部と,
合成された合成画像と,情報取得ルールとを用いて情報取出しを行う情報取出部と,
を有し,
画像部分取得部は,複数の画像部分をそれぞれ1つは撮像カメラ機能により,他は通信機能により取得するように構成されているとともに,前記撮像カメラ機能により取得されるべき画像部分は商品に対して一度剥がすと再度貼り付けることが不可能なシールの内側に記される画像部分である
情報取得システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,令和1年10月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
後記情報取得ルールでは情報取出しが単独では不能で,かつ所定のルールで構成される画像部分を複数取得するための画像部分取得部と,
複数取得される前記画像部分を合成した合成画像を生成するルールである合成画像生成ルールを保持する合成画像生成ルール保持部と,
取得した複数の画像部分を保持されている合成画像生成ルールを用いて合成して合成画像とする画像合成部と,
合成画像から情報を取得するルールである情報取得ルールを保持する情報取得ルール保持部と,
合成された合成画像と,情報取得ルールとを用いて情報取出しを行う情報取出部と,
を有し,
画像部分取得部は,複数の画像部分をそれぞれ1つは撮像カメラ機能により,他は通信機能により取得するように構成されている
情報取得システム。」

2.補正の適否
本件補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「撮像カメラ機能により」「取得」される「画像部分」について,「撮像カメラ機能により取得されるべき画像部分は商品に対して一度剥がすと再度貼り付けることが不可能なシールの内側に記される画像部分である」との限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献,引用発明
ア.引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由において引用された,特開2006-195912号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は,当審において付加したものである。以下,同じ。)

a.「【0021】
以下,本発明を具体化した実施例について,図面を参照しながら説明する。
<1>第1の実施例
まず,本発明の第1の実施例について,図1ないし図7を参照して述べる。尚,本実施例においては,具体例として,秘密保持の必要がある部屋(或いは金庫等)を,許可を受けている複数人の者が揃うことによって解錠できるようにする際の認証システムに本発明を適用したものである。また,本実施例では,二次元コードとして,「QRコード」を採用するようにしている。
【0022】
図2は,本実施例に係る認証システムの構成を概略的に示している。ここで,この認証システムは,認証情報生成装置1と,認証装置2とを含んで構成される。そのうち認証情報生成装置1は,マイコンを主体として構成され全体を制御する制御装置3,及び,これに接続された,電子データ配信装置4,カード発行装置5,入力操作装置6,記憶装置7,前記認証装置2との間で通信を行なうための通信装置8等を備えて構成されている。
【0023】
一方,前記認証装置2は,マイコンを主体として構成され全体を制御する制御装置9,及び,これに接続された,二次元コード読取装置10,入力操作装置11,記憶装置12,前記認証情報生成装置1との間で通信を行なうための通信装置13などを備えて構成されている。そして,この認証装置2(制御装置9)は,秘密保持の必要がある部屋の施解錠を制御する施解錠制御装置14に接続されている。
【0024】
より詳細には,前記認証情報生成装置1においては,システムの管理者により,入力操作装置6が操作されることに基づいて,制御装置3は,図1等に示すように,認証情報の二次元コードC(周知のQRコード)のパターンを生成し,これと共に,その二次元コードCのパターンを複数この場合2個の分割コード片Sa,Sbに分割するようになっている。また,前記認証情報は,記憶装置7に記憶され,さらには,通信装置8を介して認証装置2に送られるようになっている。
【0025】
そして,前記分割コード片Sa,Sbは,カード発行装置5により,紙等の媒体としてのカードに印刷され,分割コード片Sa,Sbが印刷されたカードは,図1(c)に示すように,夫々利用者A,利用者Bに配布(手渡し,宅配,郵送など)されるようになっている。また,前記分割コード片Sa,Sbを電子データ(イメージデータ)として電子データ配信装置4により利用者の端末装置に配信することも可能とされている。
【0026】
従って,制御装置3が,生成手段及び分割手段として機能し,また,カード発行装置5及び電子データ配信装置4が配布手段として機能する。尚,前記電子データの配信については,電子メール,インターネット等のネットワークを通じたダウンロード,汎用プロトコル(TCP/IP)などによる端末間通信,ピアツーピア(IrDA,USB)などによる端末間通信,メモリや光磁気記憶媒体などの記憶媒体を介して配布する等の様々な手段を採用することができる。
【0027】
ここで,二次元コードCとしての「QRコード」について,簡単に述べておく。図1(a)や図7(d)に示すように,QRコードは,全体として正方形状をなし,右上,左上,左下の3つの角部にデータ配列方向を示す特定パターン(切出しシンボル)Pを有すると共に,残りの部分が白黒のデータセルを縦横に配列したデータ領域とされている。本実施例では,このデータ領域には,認証情報として,ID番号,パスワード,日付などのデータが記録されるようになっている。尚,周知のように,このQRコードは,リードソロモン符合による誤り訂正(データ復元)機能を有しており,最高レベルで面積の30%が汚れていたり破損したりしていても,データを復元でき,読取りが可能とされている。
【0028】
本実施例では,認証情報生成装置1の制御装置3は,二次元コードCを分割するにあたって,縦に(左右に)2分割するのであるが,各分割コード片Sa,Sbは,共に3個の特定パターンPが含まれた形態とされる。そして,図1(b)及び図3に示すように,データ領域部分のみが面積でほぼ2等分されるように左右に分割されると共に,その接合部(分断された部分)が凹凸形状をなすように分割されるようになっている。このとき,1個の分割コード片Sa,Sbでは,データ領域の面積でほぼ50%が欠落しているため,誤り訂正機能によっても解読が不可能とされる。
【0029】
一方,前記認証装置2においては,前記認証情報生成装置1(通信装置8)から送信され通信装置13により受信した認証情報が,前記記憶装置12に記憶されるようになっている。前記二次元コード読取装置10は,例えばCCDイメージセンサを備えて構成され,二次元コードを光学的に読取ることが可能とされている。本実施例では,分割コード片Sa,Sbが二次元コード読取装置10により順次読取られるようになっており,読取ったデータ(イメージデータ)は,前記制御装置9に入力される。
【0030】
そして,制御装置9は,2つの分割コード片Sa,Sbのイメージデータを,元の二次元コードCのパターンに戻す(2分割されていたデータ領域を足し合わせて1つに戻す)ように合成し,合成された二次元コードCを解読して正当性を評価するようになっている。従って,二次元コード読取装置10が読込手段として機能し,制御装置9が合成手段及び評価手段として機能する。さらに,この認証装置2(制御装置9)は,正規に認証が行われたときに,施解錠制御装置14に解錠信号を出力するようになっている。施解錠制御装置14は,通常時は部屋の扉を施錠しており,その解錠信号に従って解錠を行なうようになっている。尚,前記入力操作装置11は,表示装置を含んで構成され,照合不可時における報知等も行うようになっている。
【0031】
このとき,詳しくは次の作用(フローチャート)説明でも述べるように,制御装置9は,そのソフトウエア的構成(認証プログラムの実行)により,分割コード片Sa,Sbのイメージデータを合成するにあたって,各イメージデータを順に記憶した後,夫々の特定パターンPの検出を行い,各特定パターンPの位置に基づいて,各特定パターンPを一致させるように各分割コード片Sa,Sbのサイズ及び位置(向きを含む)を自動で調整しながら合成を行う。
【0032】
また,この際に,分割コード片Sa,Sbの接合部の凹凸が噛合わなかったときには照合不可と判断される。さらに,制御装置9は,合成された二次元コードCを解読(デコード)し,解読できない場合に照合不可と判断する。そして,制御装置9は,合成された二次元コードCが解読されたときに,その解読された情報(認証情報)を,前記記憶装置12に予め記憶されている認証情報と比較し,一致した場合に認証成功と判断するようになっている。
【0033】
次に,上記構成の認証システムの動作について述べる。図1は,本実施例の認証システムにおける処理の一連の流れを概略的に示している。即ち,上述のように,認証情報生成装置1(制御装置3)においては,まず,図1(a)に示すように,入力された所定の情報に基づいて認証情報が生成され,その認証情報をデータ領域に記録した二次元コードCのパターンが生成される。次に,図1(b)及び図3に示すように,その二次元コードCのパターンを2分割した分割コード片Sa,Sbが生成される。
【0034】
次いで,それら分割コード片Sa,Sbが印刷された2枚のカードがカード発行装置5により発行され,図1(c)に示すように,二人が揃うことにより部屋への入室が許可される利用者A,利用者Bに,それらカードがそれぞれ配布される。このとき,各カードに印刷された分割コード片Sa,Sbは,単独ではデータの解読が不可能とされているので,どちらか一方の分割コード片Sa,Sbから認証情報(他方のデータ)が推測されるといった虞はなくなり,セキュリティ性の高いものとなる。
【0035】
そして,利用者A及び利用者Bが,秘密保持の必要がある部屋に入室したい場合には,夫々の所持するカードを持ち寄り,図1(d)に示すように,認証装置2の二次元コード読取装置10に対し,各カードに印刷された分割コード片Sa,Sbを順に読取らせる操作を行う。すると,認証装置2の制御装置9により,図1(e)に示すように,読込んだデータの合成の処理が実行され,図1(f)に示すように,合成されたデータの正当性の評価が行われる。
【0036】
図4のフローチャートは,その際に認証装置2の制御装置9が実行する,分割コード片Sa,Sbの読込みから解読までの処理手順(メインルーチン)を示している。また,図5及び図6のフローチャートは,図4のフローチャートにおける,二次元コードの読取処理(ステップS1),及び,二次元コードの合成処理(ステップS3)の詳細な処理手順を示すものである。さらに,図7は,二次元コードの合成処理における流れを概略的に示している。
【0037】
図4のフローチャートにおいて,まずステップS1では,二次元コード読取装置10による二次元コード(分割コード片)の読取処理が実行される。次のステップS2では,全ての二次元コードの読取りが完了したかどうかが判断され,完了していない場合には(No),ステップS1の処理が繰返される。ここで,上記ステップS1の読取処理においては,その詳細を図5のフローチャートに示すように,まず,二次元コード(分割コード片)をイメージとして読込み(ステップS11),次いで,読込んだイメージデータを記憶装置に保存する処理が実行される(ステップS12)。
【0038】
図4に戻り,全ての二次元コードの読取りが完了すれば(ステップS2にてYes),ステップS3の二次元コードの合成処理に進む。この合成処理は,詳細には図6のフローチャートに示す手順にて実行される。即ち,まずステップS21では,1つの二次元コード(分割コード片)のイメージデータが読出され,次のステップS22にて,イメージデータ中の3個の特定パターンPの位置が検出される。ステップS23では,特定パターンPのサイズ(隣合う特定パターンP間の距離)が求められ,保存される。上記の処理が,全ての二次元コード(分割コード片)に関して終了するまで順に行われる(ステップS24)。
【0039】
ここで,例えば図7(a)に示すように,読取距離の相違により,2つの分割コード片Sa,Sbについてのイメージデータの大きさが異なり,また,読取方向によってイメージデータの向きも異なってくる事情がある。そこで,次のステップS25では,まず各分割コード片Sa,Sbのイメージデータのサイズの調整が行われる。本実施例では,図7(b)に示すように,ステップS23にて求められたサイズの比に応じて,小さい方のイメージデータが大きい方に一致するように拡大される。大きい方を小さい方に併せて縮小するようにしても良いことは勿論である。
【0040】
次のステップS26では,図7(c)にも示すように,特定パターンPの位置に基づいて,各イメージデータの上下左右方向を合わせるように,イメージデータを回転させる処理が実行される。そして,ステップS27にて,2つのイメージデータの論理和をとることによって,図7(d)に示すように,2つのイメージデータが合成される。尚,図6では図示していないが,この合成時に,2つのイメージの接合部の凹凸が噛合わなかった場合には,照合不可と判断され,表示等によりその旨が報知される。
【0041】
この合成処理が終了すると,図4に戻って,ステップS4にて合成データの解読が実行される。合成データが解読できた場合には(ステップS5にてYes),ステップS6にて解読されたデータが表示されてこの処理が終了する。一方,合成データが解読できなかった場合には(ステップS5にてNo),ステップS7にて,解読が失敗した旨の表示がなされるようになっている。尚,上述のように,合成データが解読された場合には,解読された認証情報と,予め記憶されている認証情報との照合が行われ,照合結果が一致した場合に部屋の解錠がなされるようになる。一致しなかった場合には,やはりその旨の報知知がなされる。
【0042】
このように本実施例の認証システムによれば,二次元コードC(QRコード)を用いて利用者の正当性を確認するものにあって,分割コード片Sa,Sbの1個が欠落しても解読不能となるように構成したので,高いセキュリティ性を得ることができる。また,特に本実施例では,二次元コードCを分割するにあたり,全ての分割コード片Sa,Sbに特定パターンが含まれるように構成したので,合成時における分割コード片のイメージデータのサイズ及び位置の自動調整を容易に行なうことができるものである。さらに,特に本実施例では,分割コード片Sa,Sbの合成時において接合部が合致するかの照合を行い,合成後に解読できるかどうかの判断を行い,解読後に正規の認証情報と一致するかの判断を行うという,いわば3段階での照合を行うようにしたので,不正防止に極めて有効となるものである。」

b.「【0052】
尚,上記実施例では,分割コード片をいわば部屋の鍵として使用する場合を具体例としてあげたが,本発明の認証システムは,様々な用途に利用可能である。例えば,認証情報に加えて,重要な情報(例えば土地の登記情報等)を二次元コード化して分割コード片Sa,Sbとしておき,一方を自分が管理し,他方を銀行の貸金庫に預けておくといった使い方ができる。これによれば,両方の分割コードがないと,重要情報を得ることが不可能となる。
【0053】
更に別の用途として,例えば,割引チケットの半分の分割コード片を店側に保存(データベースに記憶)しておき,購入した利用者側の残り半分の分割コード片を読取ることに基づいて,正規の購入者かどうかを判定するようなシステムに適用することができる。あるいは,個人の証明書(免許証,保険証など)において,証明書を発行する側が半分の分割コード片を保存しておき,残り半分の分割コード片をその証明書に印刷しておくことにより,証明書の正当性を確認するようなシステムに適用することができる。
【0054】
そして,上記実施例では,物理的に印刷された分割コード片を光学的に読取るように構成したが,分割コード片のイメージデータが電子データ化されている場合には,読込み手段が,電子データとして通信やネットワークを介して取得するようにしても良い。あるいは,例えば携帯電話機などの携帯端末機の画面に分割コード片を表示させ,それを光学的に読取るようにしても良い。」

c.「図1



d.「図2



(イ)上記a.の段落【0021】の記載から,引用文献1には,「二次元コードとして,QRコードを採用する認証システム」が記載されていると認められる。

(ウ)上記a.の段落【0022】?【0024】の記載から,引用文献1には,「前記認証システムは,認証情報生成装置1と,認証装置2とを含んで構成され,
前記認証装置2は,マイコンを主体として構成され全体を制御する制御装置9,及び,これに接続された,二次元コード読取装置10,入力操作装置11,記憶装置12,前記認証情報生成装置1との間で通信を行なうための通信装置13などを備えて構成され,
前記認証情報生成装置1は,認証情報の二次元コードC(周知のQRコード)のパターンを生成し,その二次元コードCのパターンを,2個の分割コード片Sa,Sbに分割するようになって」いることが記載されていると認められる。

(エ)上記a.の段落【0027】の記載から,引用文献1には,「QRコードは,全体として正方形状をなし,右上,左上,左下の3つの角部にデータ配列方向を示す特定パターン(切出しシンボル)Pを有すると共に,残りの部分が白黒のデータセルを縦横に配列したデータ領域とされて」いることが記載されていると認められる。

(オ)上記a.の段落【0028】の記載から,引用文献1には,「前記認証情報生成装置1の制御装置3は,二次元コードCを分割するにあたって,縦に(左右に)2分割し,各分割コード片Sa,Sbは,共に3個の特定パターンPが含まれた形態とされ,データ領域部分のみが面積でほぼ2等分されるように左右に分割されると共に,その接合部(分断された部分)が凹凸形状をなすように分割されるようになっており,このとき,1個の分割コード片Sa,Sbでは,データ領域の面積でほぼ50%が欠落しているため,誤り訂正機能によっても解読が不可能とされ」ることが記載されていると認められる。

(カ)上記aの段落【0029】,【0030】及び【0032】の記載から,引用文献1には,「前記認証装置2においては,前記認証情報生成装置1(通信装置8)から送信された認証情報が,前記記憶装置12に記憶されるようになっており,
前記二次元コード読取装置10は,CCDイメージセンサを備えて構成され,二次元コードを光学的に読取ることが可能とされており,
制御装置9は,2つの分割コード片Sa,Sbのイメージデータを,元の二次元コードCのパターンに戻す(2分割されていたデータ領域を足し合わせて1つに戻す)ように合成し,合成された二次元コードCを解読して正当性を評価するようになっており,
さらに,制御装置9は,合成された二次元コードCを解読(デコード)し,合成された二次元コードCが解読されたときに,その解読された情報(認証情報)を,前記記憶装置12に予め記憶されている認証情報と比較し,一致した場合に認証成功と判断するようになって」いることが記載されていると認められる。

(キ)上記a.の段落【0035】,【0037】の記載から,引用文献1には,「前記認証装置2の二次元コード読取装置10に対し,印刷された分割コード片Sa,Sbを順に読取らせる操作を行うと,認証装置2の制御装置9により,二次元コード読取装置10による二次元コード(分割コード片)の読取処理が実行され」ることが記載されていると認められる。

(ク)上記a.の段落【0038】?【0040】の記載から,引用文献1には,「全ての二次元コードの読取りが完了すれば,二次元コードの合成処理に進み,この合成処理は,まずステップS21では,1つの二次元コード(分割コード片)のイメージデータが読出され,次のステップS22にて,イメージデータ中の3個の特定パターンPの位置が検出され,ステップS23では,特定パターンPのサイズ(隣合う特定パターンP間の距離)が求められ,保存され,上記の処理が,全ての二次元コード(分割コード片)に関して終了するまで順に行われ(ステップS24),次のステップS25では,まず各分割コード片Sa,Sbのイメージデータのサイズの調整が行われ,ステップS26では,特定パターンPの位置に基づいて,各イメージデータの上下左右方向を合わせるように,イメージデータを回転させる処理が実行され,ステップS27にて,2つのイメージデータの論理和をとることによって,2つのイメージデータが合成され」ることが記載されていると認められる。

(ケ)上記a.の段落【0041】の記載から,引用文献1には,「この合成処理が終了すると,合成データの解読が実行され,合成データが解読できた場合には解読されたデータが表示される一方,合成データが解読できなかった場合には,解読が失敗した旨の表示がなされ」ることが記載されていると認められる。

(コ)上記b.の段落【0053】の記載から,引用文献1には,「用途として,割引チケットの半分の分割コード片を店側に保存(データベースに記憶)しておき,購入した利用者側の残り半分の分割コード片を読取ることに基づいて,正規の購入者かどうかを判定するようなシステムに適用することができ」ることが記載されていると認められる。

(サ)上記b.の段落【0054】の記載から,引用文献1には,「分割コード片のイメージデータが電子データ化されている場合には,読込み手段が,電子データとして通信やネットワークを介して取得するようにしても良い」ことが記載されていると認められる。

(シ)したがって,引用文献1の上記各記載及び図面の記載を総合すると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「二次元コードとして,QRコードを採用する認証システムであって,
前記認証システムは,認証情報生成装置1と,認証装置2とを含んで構成され,
前記認証装置2は,マイコンを主体として構成され全体を制御する制御装置9,及び,これに接続された,二次元コード読取装置10,入力操作装置11,記憶装置12,前記認証情報生成装置1との間で通信を行なうための通信装置13などを備えて構成され,
前記認証情報生成装置1は,認証情報の二次元コードC(周知のQRコード)のパターンを生成し,その二次元コードCのパターンを,2個の分割コード片Sa,Sbに分割するようになっており,
前記QRコードは,全体として正方形状をなし,右上,左上,左下の3つの角部にデータ配列方向を示す特定パターン(切出しシンボル)Pを有すると共に,残りの部分が白黒のデータセルを縦横に配列したデータ領域とされており,
前記認証情報生成装置1の制御装置3は,二次元コードCを分割するにあたって,縦に(左右に)2分割し,各分割コード片Sa,Sbは,共に3個の特定パターンPが含まれた形態とされ,データ領域部分のみが面積でほぼ2等分されるように左右に分割されると共に,その接合部(分断された部分)が凹凸形状をなすように分割されるようになっており,このとき,1個の分割コード片Sa,Sbでは,データ領域の面積でほぼ50%が欠落しているため,誤り訂正機能によっても解読が不可能とされ,
前記認証装置2においては,前記認証情報生成装置1(通信装置8)から送信された認証情報が,前記記憶装置12に記憶されるようになっており,
前記二次元コード読取装置10は,CCDイメージセンサを備えて構成され,二次元コードを光学的に読取ることが可能とされており,
前記制御装置9は,2つの分割コード片Sa,Sbのイメージデータを,元の二次元コードCのパターンに戻す(2分割されていたデータ領域を足し合わせて1つに戻す)ように合成し,合成された二次元コードCを解読して正当性を評価するようになっており,
さらに,前記制御装置9は,合成された二次元コードCを解読(デコード)し,合成された二次元コードCが解読されたときに,その解読された情報(認証情報)を,前記記憶装置12に予め記憶されている認証情報と比較し,一致した場合に認証成功と判断するようになっており,
前記認証装置2の二次元コード読取装置10に対し,印刷された分割コード片Sa,Sbを順に読取らせる操作を行うと,認証装置2の制御装置9により,二次元コード読取装置10による二次元コード(分割コード片)の読取処理が実行され,
全ての二次元コードの読取りが完了すれば,二次元コードの合成処理に進み,この合成処理は,まずステップS21では,1つの二次元コード(分割コード片)のイメージデータが読出され,次のステップS22にて,イメージデータ中の3個の特定パターンPの位置が検出され,ステップS23では,特定パターンPのサイズ(隣合う特定パターンP間の距離)が求められ,保存され,上記の処理が,全ての二次元コード(分割コード片)に関して終了するまで順に行われ(ステップS24),次のステップS25では,まず各分割コード片Sa,Sbのイメージデータのサイズの調整が行われ,ステップS26では,特定パターンPの位置に基づいて,各イメージデータの上下左右方向を合わせるように,イメージデータを回転させる処理が実行され,ステップS27にて,2つのイメージデータの論理和をとることによって,2つのイメージデータが合成され,
この合成処理が終了すると,合成データの解読が実行され,合成データが解読できた場合には解読されたデータが表示される一方,合成データが解読できなかった場合には,解読が失敗した旨の表示がなされ,
用途として,割引チケットの半分の分割コード片を店側に保存(データベースに記憶)しておき,購入した利用者側の残り半分の分割コード片を読取ることに基づいて,正規の購入者かどうかを判定するようなシステムに適用することができ,
前記分割コード片のイメージデータが電子データ化されている場合には,読込み手段が,電子データとして通信やネットワークを介して取得するようにしても良い,
認証システム。」

イ.参考文献1
(ア)当審において新たに引用する,特開2010-250752号公報(以下,「参考文献1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は,当審において付加した。以下,同じ。)

e.「【0031】
QRコード81は指定商品のパッケージや添付シールに印刷する。これとともに,そのQRコード81に商品購入確認ページURLとともに含められたシリアルID(IDs)を,その生成日時とともに,シリアルID照会モジュールのデータベースDB2に記録する。
【0032】
ここで,QRコード81については,正当な購入者以外によるQRコード81の盗み読み取り,いわゆるデジタル万引きを防止するため,購入して開封しなければ確認できないよう,商品パッケージの内側や,一度剥がすと再度貼付できないシールの裏側などに印刷する。」

(イ)上記e.の段落【0031】?【0032】の記載から,参考文献1には,「QRコードを商品のパッケージや添付シールに印刷する際,正当な購入者以外によるQRコードの盗み読み取り,いわゆるデジタル万引きを防止するため,購入して開封しなければ確認できないよう,一度剥がすと再度貼付できないシールの裏側などに印刷する」という周知技術が記載されていると認められる。

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア.引用発明の「認証システム」は,「2つの分割コード片Sa,Sbのイメージデータ」を「元の二次元コードCのパターンに戻す」「ように合成し」,「合成された二次元コードC」から「情報(認証情報)」を「解読」するものであるから,“情報”を“取得”する“情報取得システム”である点で,本件補正発明の「情報取得システム」に対応するものといえる。

イ.引用発明の「認証情報生成装置1」が生成する「二次元コードC」は,「QRコード」であって,当該「QRコード」は,“情報”が,“所定の符号化アルゴリズム”に従って符号化されたものであるから,「QRコード」は,“所定の復号化アルゴリズム”,すなわち“所定の復号化ルール”に従って“情報”が復号化されるものであるということができる。
一方,引用発明の「二次元コードCのパターン」を,「分割」した「分割コード片」である「Sa」及び「Sb」のそれぞれは,「CCDイメージセンサ」によって「光学的に読取」られる「二次元コード」を分割したものであるから,本件補正発明の「画像部分」に相当するものであり,また,「1個の分割コード片Sa,Sb」では,「データ領域の面積でほぼ50%が欠落しているため,誤り訂正機能によっても解読が不可能とされ」ているものである。
そうすると,引用発明の「QRコード」を復号化するための“所定の復号化ルール”は,本件補正発明の「画像」から「情報取出し」を行うための「情報取得ルール」に相当し,当該「QRコード」を復号化するための“所定の復号化ルール”では,「誤り訂正機能によっても解読が不可能とされ」ている「分割コード片Sa」及び「Sb」のそれぞれは,本件補正発明の「情報取得ルールでは情報取出しが単独では不能」な「画像部分」に相当する。

引用発明の「各分割コード片Sa,Sb」は,「共に3個の特定パターンPが含まれた形態とされ,データ領域部分のみが面積でほぼ2等分されるように左右に分割されると共に,その接合部(分断された部分)が凹凸形状をなすように分割されるようになって」いるから,“所定のルールで”で分割されることによって“構成され”たものであるといえる。

引用発明は,「用途として,割引チケットの半分の分割コード片を店側に保存(データベースに記憶)しておき,購入した利用者側の残り半分の分割コード片を読取ることに基づいて,正規の購入者かどうかを判定するようなシステムに適用することができ」るものであるところ,このような用途とした場合には,「店側」の「データベース」に「保存された」「割引チケットの半分の分割コード片」は,“電子データ”として“取得”され,「利用者側の残り半分の分割コード片」は,「二次元コード読取装置10」によって「読取」られるものと認められるから,このような用途とした場合の,引用発明の「店側」の「データベース」に「保存された」「割引チケットの半分の分割コード片」を“電子データ”として“取得”する“機能”と,「利用者側の残り半分の分割コード片」を「光学的」に「読取」り“取得”する「二次元コード読取装置10」の“機能”とを合わせた“取得機能”は,本件補正発明の「画像部分取得部」の「画像部分を複数取得する」“機能”に相当する。
以上のことから,引用発明の「認証システム」と本件補正発明の「情報取得システム」とは,「情報取得ルールでは情報取出しが単独では不能で,かつ所定のルールで構成される画像部分を複数取得するための画像部分取得部」を有している点で一致する。

ウ.引用発明の「制御装置9」は,「2つの分割コード片Sa,Sbのイメージデータを,元の二次元コードCのパターンに戻す(2分割されていたデータ領域を足し合わせて1つに戻す)ように合成」するものであるから,本件補正発明の「取得した複数の画像部分」を「合成して合成画像とする画像合成部」に対応する。
ここで,引用発明の「合成処理」は,「まずステップS21では,1つの二次元コード(分割コード片)のイメージデータが読出され,次のステップS22にて,イメージデータ中の3個の特定パターンPの位置が検出され,ステップS23では,特定パターンPのサイズ(隣合う特定パターンP間の距離)が求められ,保存され,上記の処理が,全ての二次元コード(分割コード片)に関して終了するまで順に行われ(ステップS24),次のステップS25では,まず各分割コード片Sa,Sbのイメージデータのサイズの調整が行われ,ステップS26では,特定パターンPの位置に基づいて,各イメージデータの上下左右方向を合わせるように,イメージデータを回転させる処理が実行され,ステップS27にて,2つのイメージデータの論理和をとることによって,2つのイメージデータが合成され」るというものであるところ,これらの処理は,「縦に(左右に)2分割し,各分割コード片Sa,Sbは,共に3個の特定パターンPが含まれた形態とされ,データ領域部分のみが面積でほぼ2等分されるように左右に分割されると共に,その接合部(分断された部分)が凹凸形状をなすように分割される」という“分割ルール”によって分割された「分割コード片」を“合成”するために,前記“分割ルール”に対応する“所定の合成画像生成ルール”を用いて“合成”しているということができる。
また,当該“所定の合成画像生成ルール”は,「制御装置9」がこれを利用するものであるから,そのために,認証装置2内の所定の“記憶部”,すなわち,“合成画像生成ルール保持部”に“保持されている”といえる。
してみれば,引用発明の「認証システム」と本件補正発明の「情報取得システム」とは,「複数取得される前記画像部分を合成した合成画像を生成するルールである合成画像生成ルールを保持する合成画像生成ルール保持部」を有している点で一致しているといえる。
また,引用発明の「認証システム」と本件補正発明の「情報取得システム」とは,「取得した複数の画像部分を保持されている合成画像生成ルールを用いて合成して合成画像とする画像合成部」を有している点で一致しているといえる。

エ.引用発明の「制御装置9」は,「2つの分割コード片Sa,Sbのイメージデータを,元の二次元コードCのパターンに戻す(2分割されていたデータ領域を足し合わせて1つに戻す)ように合成し」,「合成された二次元コードC」である「QRコード」を「解読(デコード)」するところ,当該「解読(デコード)」は,“所定の復号化アルゴリズム”,すなわち,“情報取得ルール”によって,“情報を取得する”処理が実行されるものとみることができるから,そのような処理を実行するために,引用発明の「認証システム」は,“合成画像から情報を取得するルールである情報取得ルールを保持”しているといえる。
そして,当該“合成画像から情報を取得するルールである情報取得ルール”は,「制御装置9」がこれを利用して,「合成された二次元コードC」である「QRコード」を「解読(デコード)」するものであるから,前記“情報取得ルール”は,認証装置2内の所定の“記憶部”,すなわち, “情報取得ルール保持部”に“保持されている”といえる。
してみれば,引用発明の「認証システム」と本件補正発明の「情報取得システム」とは,「合成画像から情報を取得するルールである情報取得ルールを保持する情報取得ルール保持部」を有している点で一致しているといえる。
また,引用発明の「認証システム」と本件補正発明の「情報取得システム」とは,
「合成された合成画像と,情報取得ルールとを用いて情報取出しを行う情報取出部」を有している点で一致しているといえる。

オ.引用発明は,「用途として,割引チケットの半分の分割コード片を店側に保存(データベースに記憶)しておき,購入した利用者側の残り半分の分割コード片を読取ることに基づいて,正規の購入者かどうかを判定するようなシステムに適用することができ」るものであり,このような用途とした場合には,「店側」の「データベース」に「保存された」「割引チケットの半分の分割コード片」は,“電子データ”として“取得”され,「利用者側の残り半分の分割コード片」は,「二次元コード読取装置10」によって「光学的」に「読取」られるものと認められるところ,「光学的」な読み取りを実行する引用発明の「CCDイメージセンサ」は本件補正発明の「撮像カメラ機能」に相当し,また,引用発明は,「前記分割コード片のイメージデータ」が「電子データ」化されている場合には,「電子データ」として「通信やネットワークを介して取得するようにしても良い」ものであることからすると,引用発明の「店側」の「データベース」に「保存された」「割引チケットの半分の分割コード片」を“電子データ”として“取得”する“機能”には,“通信機能により取得する”ことも含まれているものと認められる。
以上の検討と,上記ア.の「画像部分取得部」についての検討を踏まえると,引用発明と本件補正発明とは,「画像部分取得部は,複数の画像部分をそれぞれ1つは撮像カメラ機能により,他は通信機能により取得するように構成されている」点で一致しているといえる。


したがって,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。

(一致点)

「後記情報取得ルールでは情報取出しが単独では不能で,かつ所定のルールで構成される画像部分を複数取得するための画像部分取得部と,
複数取得される前記画像部分を合成した合成画像を生成するルールである合成画像生成ルールを保持する合成画像生成ルール保持部と,
取得した複数の画像部分を保持されている合成画像生成ルールを用いて合成して合成画像とする画像合成部と,
合成画像から情報を取得するルールである情報取得ルールを保持する情報取得ルール保持部と,
合成された合成画像と,情報取得ルールとを用いて情報取出しを行う情報取出部と,
を有し,
画像部分取得部は,複数の画像部分をそれぞれ1つは撮像カメラ機能により,他は通信機能により取得するように構成されている
情報取得システム。」

(相違点1)
本件補正発明の「前記撮像カメラ機能により取得されるべき画像部分」は「商品に対して一度剥がすと再度貼り付けることが不可能なシールの内側に記される画像部分である」のに対して,引用発明の「購入した利用者側の残り半分の分割コード片」は,どのような態様で「記され」ているのかについて特定されていない点。

(4)判断

上記相違点について検討する。

(相違点1)について
例えば,上記参考文献1に記載されているように,「QRコードを商品のパッケージや添付シールに印刷する際,正当な購入者以外によるQRコードの盗み読み取り,いわゆるデジタル万引きを防止するため,購入して開封しなければ確認できないよう,一度剥がすと再度貼付できないシールの裏側などに印刷する」ことは,商品に付帯させるコード情報を,商品を購入していない者に不正に読み取られないようにするための周知技術であるものと認められるところ,引用発明の「割引チケット」も,利用者が購入するものである点で“商品”といえるものであり,そこに付帯される「コード情報」を,当該「割引チケット」を購入していない者に不正に読み取られないようにするために,上記周知技術を採用して,「商品に対して一度剥がすと再度貼り付けることが不可能なシールの内側」に印刷するように構成することは,当業者が必要に応じて適宜採用しうる設計的事項であると認められる。
したがって,引用発明及び周知技術に基づいて,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本件補正発明の作用効果も,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上検討したとおり,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明
令和2年4月30日付けの手続補正(本件補正)は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし6に係る発明は,令和1年10月2日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,上記第2の[理由]1.(2)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,引用文献1(特開2006-195912号公報)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3.引用文献,引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は,上記第2の[理由]2.(2)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は,上記第2の[理由]2.で検討した本件補正発明の発明特定事項である「撮像カメラ機能により」「取得」される「画像部分」についての限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,上記第2の[理由]2.(4)に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-12-25 
結審通知日 2021-01-12 
審決日 2021-01-29 
出願番号 特願2016-160537(P2016-160537)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山澤 宏
須田 勝巳
発明の名称 情報取得システム  
代理人 工藤 一郎  

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