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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1372227
審判番号 不服2020-10191  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-20 
確定日 2021-04-06 
事件の表示 特願2016-213375「食道温度測定用カテーテル」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月10日出願公開、特開2018- 68744、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成28年10月31日の出願であって、令和元年8月1日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月9日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年12月25日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年2月25日に意見書が提出され、同年4月16日付けで拒絶査定(原査定)(送達日:4月21日)がされ、これに対し、同年7月20日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同年11月2日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月25日に意見書が提出されるとともに手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年4月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献A-Fに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2016-129637号公報
B.国際公開第2016/159999号
C.特表2012-513873号公報(周知技術を示す文献)
D.特表2014-508547号公報
E.実願昭57-168693号(実開昭59-073901号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
F.実願平01-084097号(実開平03-024102号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
1 (サポート要件)許法第36条第6項第1号について
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)測定用電極について
請求項1に係る発明は、「前記先端可撓部分に配置された少なくとも1個の温度測定用電極」と特定されている。なお、下線は当審にて付与する。以下、同様。
しかしながら、該「温度測定用電極」の「電極」は、特許請求の範囲の記載を摘記した段落【0007】および【0008】に記載されているのみであって、本件出願明細書の他の段落には記載・示唆されていない。
そうすると、本件出願明細書には、上記「前記先端可撓部分に配置された少なくとも1個の温度測定用電極」が、発明の特定事項として、記載されているとはいえない。
してみると、特許を受けようとする発明である請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。また、請求項1を引用する請求項2?4に係る発明も同様である。

(2)長さについて
請求項1に係る発明は、「前記回転板の前記回転軸から前記ハンドルの基端までの長さが、2?11cmであり」と特定されているが、この2?11cmの長さはしっかりとした保持ができない長さを包含しているといえる。
そうすると、上記特定では、本件出願明細書の段落【0006】に記載された課題を解決しない発明を含んでいるといえる。
してみると、特許を受けようとする発明である請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。また、請求項1を引用する請求項2?4に係る発明も同様である。

(3)手のひら固定部について
請求項1に係る発明は、「前記ハンドル本体は、前記操作者の前記片手の手のひらが押し当てられる、手のひら固定部を有する」と特定されている。
しかしながら、上記特定では、上記段落【0039】?【0040】に記載された「ハンドルを手のひらで固定する」形態以外の本件出願明細書に記載されていない形態を含んでいることが明らかである。
してみると、特許を受けようとする発明である請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。また、請求項1を引用する請求項2?4に係る発明も同様である。

2 (明確性)特許法第36条第6項第2号について
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1)測定用電極について
請求項1に係る発明は、「前記先端可撓部分に配置された少なくとも1個の温度測定用電極」と特定されている。
しかしながら、該特定の「温度測定用電極」が、技術的にどの様な構成のものであるのか、本件出願明細書に具体的に全く記載されておらず、技術常識を考慮しても、その構成を把握することができない(なお、上記特定は、段落【0022】?【0024】に記載された「温度センサ」を適確に表現したものとはいえない)。
してみると、特許を受けようとする発明である請求項1に係る発明は、明確でない。また、請求項1を引用する請求項2?4に係る発明も同様である。

(2)手のひら固定部について
請求項1に係る発明では「前記ハンドル本体は、前記操作者の前記片手の手のひらが押し当てられる、手のひら固定部を有する」と特定されている。
しかしながら、該特定の「手のひらが押し当てられる」とは、「親指と人差し指以外の指と手のひらとの間に挟持する」ことを意味していると解されるものの、上記特定では、「固定部」という技術用語にて、「ハンドル本体」のどの様な範囲あるいは構成のものを特定しようとしているのか不明であり、その技術的意味を把握することができない。
してみると、特許を受けようとする発明である請求項1に係る発明は、明確でない。また、請求項1を引用する請求項2?4に係る発明も同様である。

(3)中空部分について
請求項3に係る発明では「前記カテーテルシャフトの基端部から取り出された前記操作用ワイヤを通すための中空部分」と特定されている。
しかしながら、該特定では、「カテーテルシャフトの基端部」と「中空部分」との関係が不明であり、その構成を把握することができない。すなわち、本件出願明細書の段落【0038】に「また、図9(a)、図9(b)に示すように、スナップフィット部材230には、カテーテルシャフト100を差し込み可能な中空部分234を有している。中空部分234は、スナップフィット部材230の軸に沿って延在し、スナップフィット部材230を貫通してい。・・・・・カテーテルシャフト100から引き出された操作用ワイヤ300a、300bは、中空部分234を経由してハンドル200内部に導入される。」と記載されているものの、上記特定は、該記載と整合しておらず、該記載の構成を適確に表現しておらず、その構成を把握することができない。
してみると、特許を受けようとする発明である請求項3に係る発明は、明確でない。また、請求項3を引用する請求項4に係る発明も同様である。

3 (進歩性)許法第29条第2項について
本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
引用文献1:特開2016-129637号公報(原査定時の引用文献A)
引用文献2:特表2012-513873号公報(原査定時の引用文献C)
引用文献3:特表2014-508547号公報(原査定時の引用文献D)

第4 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-3は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
食道の温度を測定するための食道温度測定用カテーテルであって、
先端可撓部分を有するカテーテルシャフトと、
カテーテルシャフトの基端側に接続されており、少なくとも2つの部材に分割されているハンドルと、
前記先端可撓部分を撓ませるために前記カテーテルシャフトの内部に延在し、その基端側を引張操作することができる操作用ワイヤと、
前記ハンドルに設けられると共に、前記操作用ワイヤの基端側が固定された留め具を有しており、操作者の片手の指によって回転軸を中心とした回転操作が行われる、単一の回転板と、
前記先端可撓部分に配置された少なくとも1個の温度センサと、
を備え、
前記回転板の前記回転軸から前記ハンドルの基端までの長さが、5?7cmであり、
前記ハンドル本体は、前記操作者の前記片手の手のひらが押し当てられる、ハンドル基端部を有しており、
前記ハンドルの先端側に設けられたスナップフィット部材において、
前記カテーテルシャフトを差し込み可能であると共に、前記スナップフィット部材の軸に沿って貫通するように延在している中空部分と、
前記カテーテルシャフトの基端部から引き出され、前記温度センサに電気的に接続された導線を、前記中空部分から前記スナップフィット部材の側面に通すための経路と、
が形成されており、
前記カテーテルシャフトの基端部から引き出された前記操作用ワイヤが、前記中空部分を経由して、前記ハンドルの内部に導入されている
食道温度測定用カテーテル。
【請求項2】
前記少なくとも2つの部材の先端側および基端側がそれぞれ、スナップフィット構造により固定されている
請求項1に記載の食道温度測定用カテーテル。
【請求項3】
前記ハンドルにクリップが取り付けられている
請求項1または請求項2に記載の食道温度測定用カテーテル。」

第5 当審の判断
1 (サポート要件)特許法第36条第6項第1号について
(1)測定用電極について
上記第3 当審拒絶理由の概要で述べた1(1)については、本件補正によって、「温度測定用電極」は、「温度センサ」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(2)長さについて
上記第3 当審拒絶理由の概要で述べた1(2)については、本件補正によって、「2?11cmの長さ」は、「5?7cmの長さ」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(3)手のひら固定部について
上記第3 当審拒絶理由の概要で述べた1(3)については、本件補正によって、「手のひら固定部」は、「ハンドル基端部」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

2 (明確性)特許法第36条第6項第2号について
(1)測定用電極について
上記第3 当審拒絶理由の概要で述べた2(1)については、本件補正によって、「温度測定用電極」は、「温度センサ」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(2)手のひら固定部について
上記第3 当審拒絶理由の概要で述べた2(2)については、本件補正によって、「手のひら固定部」は、「ハンドル基端部」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(3)中空部分について
上記第3 当審拒絶理由の概要で述べた2(3)については、本件補正によって、
「前記ハンドルの先端側に設けられたスナップフィット部材において、前記カテーテルシャフトの基端部から取り出された前記操作用ワイヤを通すための中空部分と、前記カテーテルシャフトの基端部から取り出され、前記温度測定用電極に電気的に接続された導線を、前記中空部分から前記スナップフィット部材の側面に通すための経路と、が形成されている」との記載が、
「前記ハンドルの先端側に設けられたスナップフィット部材において、前記カテーテルシャフトを差し込み可能であると共に、前記スナップフィット部材の軸に沿って貫通するように延在している中空部分と、前記カテーテルシャフトの基端部から引き出され、前記温度センサに電気的に接続された導線を、前記中空部分から前記スナップフィット部材の側面に通すための経路と、が形成されており、前記カテーテルシャフトの基端部から引き出された前記操作用ワイヤが、前記中空部分を経由して、前記ハンドルの内部に導入されている」
と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

3 (進歩性)特許法第29条第2項について
(1)引用文献、引用発明等
ア 引用文献1について
本件出願前に頒布され、原審及び当審の拒絶理由において引用された刊行物である引用文献1(引用文献A)には、「カテーテル」について、図1?9とともに、以下の事項が記載されている。
(1-ア)
「【0016】
<実施の形態>[概略構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係るカテーテル(カテーテル1)の概略構成例(Z-X上面構成例)を、模式的に表したものである。このカテーテル1は、患者における不整脈等の治療(例えば左房アブレーション術)の際に、その患者の体内の中空器官(例えば食道等)の内部温度(内壁の温度)に関する情報を測定するために用いられるカテーテル(いわゆる食道カテーテル)である。具体的には、詳細は後述するが、このカテーテル1は、鼻を通して(経鼻的アプローチにて)患者の食道等に挿入されるようになっている。
【0017】
このカテーテル1は、図1に示したように、カテーテル本体(長尺部分)としてのカテーテルチューブ11(カテーテルシャフト)と、このカテーテルチューブ11の基端側に装着されたハンドル12とを有している。【0018】(カテーテルチューブ11) カテーテルチューブ11は、可撓性を有する管状構造(中空のチューブ状部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延伸する形状となっている。具体的には、カテーテルチューブ11の軸方向の長さは、ハンドル12の軸方向(Z軸方向)の長さと比べて数倍?数十倍程度に長くなっている。なお、このカテーテルチューブ11は、その軸方向に向かって同じ特性のチューブで構成されていてもよいが、本実施の形態のように、以下の構成となっているのが好ましい。すなわち、カテーテルチューブ11が、比較的可撓性に優れた先端部分(先端可撓部分11A)と、この先端部分に対して軸方向に一体に形成されると共に先端部分よりも比較的に剛性のある基端部分と、を有するようにするのが好ましい。」
(1-イ)
「【0020】
このうち、一対の操作用ワイヤ40a、40b(引張りワイヤ)はそれぞれ、カテーテルチューブ11内を延伸してハンドル12内へと引き出されており、後述するカテーテルチューブ11の先端部分(先端可撓部分11A)の偏向動作の際に用いられるものである。換言すると、これらの操作用ワイヤ40a、40bはそれぞれ、カテーテルチューブ11の先端付近を撓ませるために用いられるものである(例えば図1中の矢印d2a、d2b参照)。これらの操作用ワイヤ40a、40bにおける各先端は、カテーテルチューブ11内の先端付近において、アンカーおよびはんだ等によって固定されている。また、操作用ワイヤ40a、40bの各基端側は、上記したように、カテーテルチューブ11内からハンドル12内へと延伸され、ハンドル12内で留め具(図示せず)により固定されている。これらの操作用ワイヤ40a、40bはそれぞれ、例えばSUS(ステンレス鋼)やNiTi(ニッケルチタン)等の超弾性金属材料により構成されており、その径は約100?500μm程度(例えば200μm)である。ただし、必ずしも金属材料で構成されていなくともよく、例えば高強度の非導電性ワイヤ等で構成されていてもよい。
【0021】
このようなカテーテルチューブ11は、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド等の合成樹脂により構成されている。また、カテーテルチューブ11の軸方向の長さは、500?1200mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば800mmである。カテーテルチューブ11の先端可撓部分11Aの軸方向の長さは、40?100mmであることが好ましく、更に好ましくは50?80mmである。カテーテルチューブ11の外径(X-Y断面の外径)は、1.3?4.0mmであることが好ましく、好適な一例を示せば2.4mmである。」
(1-ウ)
「【0024】
(ハンドル12)
図1に示したハンドル12は、カテーテル1の使用時に操作者(医師)が掴む(握る)部分である。このハンドル12は、図1に示したように、カテーテルチューブ11の基端側に装着されたハンドル本体121と、回転操作部122とを有している。
【0025】
ハンドル本体121は、操作者が実際に握る部分(把持部)に相当し、その軸方向(Z軸方向)に沿って延在する形状となっている。このようなハンドル本体121は、例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)等の合成樹脂により構成されている。
【0026】
回転操作部122は、詳細は後述するが、前述した一対の操作用ワイヤ40a、40bとともに、カテーテルチューブ11の先端付近(先端可撓部分11A)を撓ませる偏向動作の際に用いられる部分である。具体的には、このような偏向動作の際に、回転操作部122が操作(回転操作)されるようになっている。つまりこの例では、ハンドル12(回転操作部122)および一対の操作用ワイヤ40a、40bが、本発明における「偏向機構」の一具体例に対応している。このような回転操作部122は、図1に示したように、回転板41および調整摘み42を含んで構成されている。
【0027】
回転板41は、ハンドル本体121に対して、その長手方向(Z軸方向)に垂直な回転軸(Y軸方向)を中心として回転自在に装着された部材である。この回転板41は、前述した回転操作の際に操作者が実際に操作を行う部分に相当し、略円盤状の形状からなる。具体的には、この例では図1中の矢印d1a、d1bで示したように、ハンドル本体121に対し、回転板41をZ-X平面内で双方向に回転させる操作(回転軸を回転中心とした回転操作)が可能となっている。
【0028】
この回転板41の側面には、一対の摘み41a、41bが回転板41と一体的に設けられている。この例では図1に示したように、回転板41の回転軸を中心として、摘み41aと摘み41bとが互いに点対称となる位置に配置されている。これらの摘み41a、41bはそれぞれ、操作者が回転板41を回転操作させる際に、例えば片手の指で操作される(押される)部分に相当する。なお、このような回転板41は、例えば前述したハンドル本体121と同様の材料(合成樹脂等)により構成されている。
【0029】
調整摘み42は、Z-X平面内で回転可能に構成されており、回転板41の回転位置(カテーテルチューブ11の先端付近の湾曲状態)を固定化(保持)するための部材である。すなわち、操作者がこの調整摘み42をねじって回転板41をハンドル本体121に固定することで、この回転板41の回転位置が固定化されるようになっている。」
(1-エ)
「【0044】
(温度センサ51?55)
ここで図3中に模式的に示したように、カテーテルチューブ11における先端可撓部分11Aには、各金属リング111?115の近傍(例えば、各金属リング111?115の対向位置)に、これらと対応付けられた5つの温度センサ51?55が内蔵されている。すなわち、この例では、5つの金属リング111?115と5つの温度センサ51?55とが、1対1の対応関係にて複数組(この例では5組)設けられている。なお、この例では、先端チップ110の近傍には、これと対となる(電気的接続された)温度センサは設けられていない。
【0045】
これらの温度センサ51?55はそれぞれ、例えば前述した左房アブレーション術中において、食道等の内部温度を測定するためのセンサであり、各金属リング111?115と個別に電気的接続されている。具体的には、図3に示したように、温度センサ51は、金属リング111の近傍に内蔵されており、この金属リング111に対して電気的に接続されている。同様に、温度センサ52は、金属リング112の近傍に内蔵されており、この金属リング112に対して電気的に接続されている。温度センサ53は、金属リング113の近傍に内蔵されており、この金属リング113に対して電気的に接続されている。温度センサ54は、金属リング114の近傍に内蔵されており、この金属リング114に対して電気的に接続されている。温度センサ55は、金属リング115の近傍に内蔵されており、この金属リング115に対して電気的に接続されている。なお、これらの電気的接続はそれぞれ、例えば、金属リング111?115の内周面上に温度センサ51?55が個別にスポット溶接されることで、実現されるようになっている。
【0046】
このような温度センサ51?55はそれぞれ、例えば熱電対(熱電対の測温接点)を用いて構成されている。また、これらの温度センサ51?55に個別に電気的接続された導線L1?L5(リード線)はそれぞれ、例えば図3?図6に示したように、その熱電対を構成する異種同士の金属線からなる。なお、これらの導線L1?L5はそれぞれ、前述したように、カテーテルチューブ11におけるルーメン内(この例では、図4において前述したルーメン61A内)に挿通され、ハンドル12内へ引き出されるようになっている。」
(1-オ)
「【0059】
(ハンドル12の取付工程)
続いて、このようにして製造された先端可撓部分11Aを含むカテーテルチューブ11の基端側に、前述した構成のハンドル12を装着する。この際、カテーテルチューブ11内からハンドル12内へ、操作用ワイヤ40a、40bおよび導線L1?L5の基端側をそれぞれ、引き通して延伸させておくようにする。また、これら操作用ワイヤ40a、40bの基端をそれぞれ、ハンドル12内で留め具(図示せず)により固定させる。以上により、図1?図6に示したカテーテル1が完成する。」
(1-カ)
「【0062】
具体的には、例えば、操作者がハンドル12を片手で掴み、その片手の指で摘み41aを操作することにより、回転板41を図1中の矢印d1a方向(右回り)に回転させた場合、以下のようになる。すなわち、カテーテルチューブ11内で、前述した操作用ワイヤ40aが基端側へ引っ張られる。すると、このカテーテルチューブ11の先端付近が、図1中の矢印d2aで示した方向に沿って湾曲する(撓む)。
【0063】
また、例えば、操作者が摘み41bを操作することにより、回転板41を図1中の矢印d1b方向(左回り)に回転させた場合、以下のようになる。すなわち、カテーテルチューブ11内で、前述した操作用ワイヤ40bが基端側へ引っ張られる。すると、このカテーテルチューブ11の先端付近が、図1中の矢印d2bで示した方向に沿って湾曲する。
【0064】
このように、操作者が回転板41を回転操作することにより、カテーテルチューブ11の首振り偏向動作を行うことができる。なお、ハンドル本体121を軸回りに(XY平面内で)回転させることで、カテーテルチューブ11が患者9の体内(食道E内)に挿入された状態のまま、カテーテルチューブ11の先端付近の湾曲方向の向きを自由に設定することができる。このようにしてカテーテル1では、先端可撓部分11Aを偏向させるための偏向機構が設けられているため、カテーテルチューブ11をその先端付近(先端可撓部分11A)の形状を変化させながら挿通させることができる。したがって、複雑な構造を有する鼻腔内をスムーズにカテーテルチューブ11を通過させ、容易に食道まで挿通させることが可能になる。」

イ 本件出願前に頒布され、原審及び当審の拒絶理由において引用された刊行物である引用文献2(引用文献C)には、「血管内の熱誘発腎神経変調療法を達成するための装置、システム、および方法」について、図1?29とともに、以下の事項が記載されている。
(2-ア)
「【0042】
システム10は、血管内の治療デバイス12を含む。治療デバイス12は、図6Aに示されるようなそれぞれの腎動脈に繋がる血管内経路14を通じて腎臓の神経叢(RP)にアクセスを提供する。
【0043】
図5に示されるように、治療デバイス12は、近位端領域18および遠位端領域20を有する長尺状のシャフト16を含む。
【0044】
長尺状のシャフト16の近位端領域18は、ハンドルアセンブリ200を含む。ハンドルアセンブリ200は、血管内経路14の外で(例えば、図6A参照)、治療者により、しっかりとまたは人間工学的に保持され操作されるよう寸法決定および構成される(例えば、図16A参照)。血管内経路14の外からハンドルアセンブリ200を操作することにより、治療者は、血管内経路14の蛇行を通じて、長尺状のシャフト16を進展させ、遠位端領域20を離れて操作するか、発動させることができる。画像ガイダンス、例えば、CT、X線検査の、または別の適したガイダンス様式、またはその組み合わせは、治療者の操作を助けるために使用され得る。」
(2-イ)
図16Aには、「ハンドルアセンブリ200の基端部を左手の手のひらに押し当て、よりしっかりと手のひらに保持する」ことが図示されている。
(2-ウ)
「【0209】
図24の分解組立図に見られるように、ハンドルアセンブリ200は、近位歪逃がし部材202、遠位歪逃がし部材204、内側制限リング210、外側制限リング220、回転子230、上部ハウジング242および下部ハウジング244を有するハウジングアセンブリ240、アクチュエータ260および担持体280、ならびに任意のOリング275を備えてもよい。上部および下部のハウジングは、ハンドルハウジングアセンブリ240を形成するように、(例えば、摩擦固定式の雄雌の係合特徴を介して、ならびに/または接着剤を介して)一緒に連結する1つ以上の係合特徴246を備える。アクチュエータ、Oリングおよび担持体は、ハウジングアセンブリ240の組み立て構成で、上部ハウジング242と下部ハウジング244との間に配置される。
【0210】
以下により詳細に説明されるように、組み立て構成において、アクチュエータ260および担持体280は、アクチュエータの協調した角回転およびキャリアの線形並進を促進するように、ハウジングアセンブリ240内に拘束される。同じく以下により詳細に説明されるように、治療者のアクチュエータ260の近位回転を介した、担持体280の近位線形並進は、長尺状のシャフト16の遠位端領域20の中間撓曲ゾーン34の周囲に熱的加熱要素24の撓曲を生じる。アクチュエータ260と下部ハウジング244との間に配置される任意のOリング275は、このような治療者によるアクチュエータの回転中、治療者に感覚的フィードバックまたは抵抗性を提供し、かつ/または近位に回転した位置にアクチュエータを維持してもよい。
【0211】
ハウジング240の組み立て後、内側制限リング210は、ハウジングアセンブリ240の遠位端部に渡って同心状に配置され、外側制限リング220は、内側制限リング210に渡って同心状に配置され、回転子は、外側制限リング220に渡って同心状に配置される。遠位歪逃がし部材204は、回転子230の遠位端部に装着される一方、近位歪逃がし部材202は、ハウジングアセンブリ240の近位端部に装着される。以下により詳細に記載されるように、内側制限リング210、外側制限リング220、および回転子230は、ハウジングアセンブリ240と共同して作用し、ハンドルアセンブリ200の回転なしに長尺状のシャフト16の回転を促進し、また長尺状のシャフトの回転を制限する。」

ウ 本件出願前に頒布され、原審及び当審の拒絶理由において引用された刊行物である引用文献3(引用文献D)には、「アブレーション及び温度測定装置」について、図1?19図とともに、以下の事項が記載されている。
(3-ア)
「【0071】
装置100は、1以上の安定化部を含むことができ、これらは、典型的にではないが、シャフト110の近位端付近に、又はケーブル112に沿って配置され、装置100を位置決めし、且つ/又は、装置100の望ましくない動きを防止するように構成されている。典型的な安定化部は、クリップ、口金(例えば、シャフト110を患者の食道内に配置するために用いる口金)、吸引組立体、及び、これらの組合せを含み得る。」
(3-イ)
「【0081】
システム10は、臨床医により患者Pの食道に挿入された装置100を含む。システム10は、患者Pの食道内での複数の部位の温度マップ156を提示するディスプレイ155を含む。温度マップ156、及び、ディスプレイ155若しくは別のディスプレイ装置(図示せず)上で提供されるその他の情報は、温度又はその他の情報を区別するために、様々な英数字又はその他の図形特性を利用し得る。好ましい実施形態において、異なる温度は、色、色合い、コントラスト、色相、彩度、及び輝度のうちの1つ以上の変化により区別される。或いは、又は、さらに、英数字による情報は、ボールド(太字)性(boldness)、フォントタイプ及びサイズの1つ以上を変更することにより区別され得る。温度情報のような情報は、1以上の特徴(例えば、色)と相関され得る。特定の実施形態において、相関アルゴリズムが臨床医により調整される。例えば、臨床医は、赤色の特定の色合いを特定の温度レベルに設定し得る。或いは、又は、さらに、温度情報を示すために、音声(例えば、温度が変化するとピッチ又は音量が変化する音声)を用いてもよく、温度レベルと音声パラメータとの相関関係は臨床医により調整可能であり得る。」

エ 本件出願前に頒布され、原審の拒絶理由において引用された刊行物である引用文献Bには、「OCULAR DELIVERY SYSTEMS AND METHODS(眼送達システムおよび方法)」について、親指等で操作する駆動部材214と、グリップ部204と、ハウジング206とを備えた片手操作可能な医療機器のハンドル202において、ハンドルの長さは2.5cmから20.8cmの間に設定することが記載されており、また、10.2cmとすることが一例として記載されている(特に、段落[0085]、[0087]、[0089]、[0110]、図2を参照。)。

オ 本件出願前に頒布され、原審の拒絶理由において引用された刊行物である引用文献Eには、「内視鏡の彎曲操作装置」について、以下の事項が記載されている。
(E-ア)
「内視鏡における先端硬質部の指向方向の設定用に供せられる彎曲部操作装置として、内視鏡における手許操作部本体内に彎曲部操作用の溝付プーリーを設置し、この溝付きプーリーに各別のワイヤーを異なる方向より巻込み、その各基端部を溝付きプーリーの上面等に取着した彎曲操作装置が使用されている。」(明細書第2頁第1行ー7行)

(E-イ)第1図及び第5図


カ 本件出願前に頒布され、原審の拒絶理由において引用された刊行物である引用文献Fには、「内視鏡のアングル操作装置」について、以下の事項が記載されている。
(F-ア)
「このアングル操作機構としては、第6図に示したように、アングル操作時に押引される一対の操作ワイヤ3a,3bを有する構成となっている。ここで、アングル部2bを上下のみに湾曲させる構造のものにあっては、操作ワイヤは上下に一対のみ設けられ、また上下・左右に湾曲させることができる構造のものにあっては、操作ワイヤも上下及び左右に各一対設けられる。これら各操作ワイヤ3a,3bは、それぞれその先端部分が先端のアングルリングまたは先端硬質部に止着され、基端部分は本体操作部1内にまで延在させて、その先端部分は弛み吸収器4a,4bに装着されている。またこの弛み吸収器4a,4bには連結ワイヤ5a,5bが連結されており、該各連結ワイヤ5a,5bは溝付きプーリ4に装着されている。この溝付きプーリ6にはその外周面に円環状の溝部6a,6bが 形成されており、操作ワイヤ3a,3bはそれぞれ各溝部6a,6bに巻き付けられて、 ガイドされるようになっている。この溝付きプーリ6に連結した回転軸7を本体操作部1 の外部にまで延在させて、該回転軸7にアングルノブ8を取り付けて、このアングルノブ 8を手指で操作することによりプーリ6を回転させて、連結ワイヤ5a,5bの一方を溝 部4aまたは4bに巻き取り、他方を巻き戻しすることによって、操作ワイヤ3a,3b が押し引きされる。」(明細書第3頁第5行ー第4頁第11行)

(F-イ)第6図


2 引用発明
(1)引用文献1の上記記載事項(1-ア)の「【0016】・・・・・このカテーテル1は、患者における不整脈等の治療(例えば左房アブレーション術)の際に、その患者の体内の中空器官(例えば食道等)の内部温度(内壁の温度)に関する情報を測定するために用いられるカテーテル(いわゆる食道カテーテル)である」からみて、引用文献1には、「食道の内壁の温度を測定するための食道カテーテル」が記載されているといえる。

(2)引用文献1の上記記載事項(1-ア)の「【0018】・・・・・カテーテルチューブ11が、比較的可撓性に優れた先端部分(先端可撓部分11A)と、この先端部分に対して軸方向に一体に形成されると共に先端部分よりも比較的に剛性のある基端部分と、を有するようにするのが好ましい。」からみて、引用文献1には、「先端可撓部分を有するカテーテルチューブ」が記載されているといえる。

(3)引用文献1の上記記載事項(1-ア)の「【0017】・・・・・このカテーテルチューブ11の基端側に装着されたハンドル12とを有している」からみて、引用文献1には、「カテーテルチューブの基端側に装着されたハンドル」が記載されているといえる。

(4)引用文献1の上記記載事項(1-イ)の「【0020】このうち、一対の操作用ワイヤ40a、40b(引張りワイヤ)はそれぞれ、カテーテルチューブ11内を延伸してハンドル12内へと引き出されており、後述するカテーテルチューブ11の先端部分(先端可撓部分11A)の偏向動作の際に用いられるものである。換言すると、これらの操作用ワイヤ40a、40bはそれぞれ、カテーテルチューブ11の先端付近を撓ませるために用いられるものである(例えば図1中の矢印d2a、d2b参照)。」及び同「(1-カ)の「すなわち、カテーテルチューブ11内で、前述した操作用ワイヤ40aが基端側へ引っ張られる。すると、このカテーテルチューブ11の先端付近が、図1中の矢印d2aで示した方向に沿って湾曲する(撓む)。」からみて、引用文献1には、「先端可撓部分を撓ませるためにカテーテルチューブ内を延伸し、その基端側を引張操作することができる操作用ワイヤ」が記載されているといえる。

(5)引用文献1の上記記載事項(1-イ)の「【0020】・・・・・また、操作用ワイヤ40a、40bの各基端側は、上記したように、カテーテルチューブ11内からハンドル12内へと延伸され、ハンドル12内で留め具(図示せず)により固定されている。」および同(1-ウ)の「【0027】回転板41は、ハンドル本体121に対して、その長手方向(Z軸方向)に垂直な回転軸(Y軸方向)を中心として回転自在に装着された部材である。この回転板41は、前述した回転操作の際に操作者が実際に操作を行う部分に相当し、略円盤状の形状からなる。」並びに「【0028】この回転板41の側面には、一対の摘み41a、41bが回転板41と一体的に設けられている。この例では図1に示したように、回転板41の回転軸を中心として、摘み41aと摘み41bとが互いに点対称となる位置に配置されている。これらの摘み41a、41bはそれぞれ、操作者が回転板41を回転操作させる際に、例えば片手の指で操作される(押される)部分に相当する。」からみて、技術常識を考慮すると、「回転板の回転操作により操作用ワイヤを基端側へ引張っている」のであるから、該「操作用ワイヤの基端側」が「留め具」により「回転板」へ固定されているといえるから、引用文献1には、「ハンドルに装着されると共に、操作用ワイヤの基端側が固定された留め具を有しており、操作用の片手の指によって回転軸を中心とした回転操作が行われる、回転板」が記載されているといえる。

(6)引用文献1の上記記載事項(1-エ)の「【0044】(温度センサ51?55)ここで図3中に模式的に示したように、カテーテルチューブ11における先端可撓部分11Aには、各金属リング111?115の近傍(例えば、各金属リング111?115の対向位置)に、これらと対応付けられた5つの温度センサ51?55が内蔵されている。」からみて、引用文献1には、「先端可撓部分に配置された複数の温度センサ」が記載されているといえる。

(7)引用文献1の上記記載事項(1-ア)の「【0018】・・・・・カテーテルチューブ11の軸方向の長さは、ハンドル12の軸方向(Z軸方向)の長さと比べて数倍?数十倍程度に長くなっている」及び同(1-イ)の「カテーテルチューブ11の軸方向の長さは、500?1200mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば800mmである」からみて、技術常識を考慮すると(例えば、3cmを数十倍(例えば、三十倍)あるいは30cmを数倍(例えば、三倍)すれば、「900mm」となる)、引用文献1には、「ハンドルの長さが、数cm?数十cmである」ことが記載されているといえる。

(8)引用文献1の上記記載事項(1-ウ)の「【0024】(ハンドル12)図1に示したハンドル12は、カテーテル1の使用時に操作者(医師)が掴む(握る)部分である。」ならびに「【0025】ハンドル本体121は、操作者が実際に握る部分(把持部)に相当し、その軸方向(Z軸方向)に沿って延在する形状となっている。」及び同(1-カ)の「【0062】具体的には、例えば、操作者がハンドル12を片手で掴み、その片手の指で摘み41aを操作する」からみて、引用文献1には、「ハンドル本体は、片手の親指および人差し指以外の指と手のひらとの間に挟持される把持部を有する」ことが記載されているといえる。

(9)上記(1)?(8)を総合すると、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「食道の内壁の温度を測定するための食道カテーテルであって、
先端可撓部分を有するカテーテルチューブと、
該カテーテルチューブの基端側に装着されたハンドルと、
前記先端可撓部分を撓ませるために前記カテーテルチューブ内を延伸し、その基端側を引張操作することができる操作用ワイヤと、
前記ハンドルに装着されると共に、前記操作用ワイヤの基端側が固定された留め具を有しており、操作用の片手の指によって回転軸を中心とした回転操作が行われる、回転板と、
前記先端可撓部分に配置された複数の温度センサと、
を備え、
前記ハンドルの長さが、数cm?数十cmであり、
前記ハンドルのハンドル本体は、片手の親指および人差し指以外の指と手のひらとの間に挟持される把持部を有する
食道カテーテル。」(以下「引用発明」という。)

(2)本願発明1について
ア 対比
(ア)引用発明と本願発明1とを対比すると、その機能・構造からみて、引用発明の「食道の内壁の温度を測定するための食道カテーテル」が本願発明1の「食道温度測定用カテーテル」に相当することは明らかである。以下同様に、前者の「カテーテルチューブ」が後者の「カテーテルシャフト」に、前者の「複数の温度センサ」が後者の「少なくとも1個の温度センサ」に、それぞれ、相当するといえる。

(イ)「延伸」と「延在」とは技術的に同義であるから、引用発明の「カテーテルチューブ内を延伸し」と本願発明1の「カテーテルシャフトの内部に延在し」に相当するといえる。

(ウ)そうすると、両発明は、下記の点で一致し、以下の点で相違する。

(一致点)
「食道の温度を測定するための食道温度測定用カテーテルであって、
先端可撓部分を有するカテーテルシャフトと、
カテーテルシャフトの基端側に接続されたハンドルと、
前記先端可撓部分を撓ませるために前記カテーテルシャフトの内部に延在し、その基端側を引張操作することができる操作用ワイヤと、
前記ハンドルに設けられると共に、前記操作用ワイヤの基端側が固定された留め具を有しており、操作者の片手の指によって回転軸を中心とした回転操作が行われる、回転板と、
前記先端可撓部分に配置された少なくとも1個の温度測定用電極と、
を備える、
食道温度測定用カテーテル。」

(相違点1)
「回転板」が、本願発明1では「単一」であるのに対して、引用発明1では不明である点。

(相違点2)
「ハンドル」について、本願発明1では、「前記回転板の前記回転軸から前記ハンドルの基端までの長さが、5?7cmであ」るのに対し、引用発明では、「ハンドルの長さが、数cm?数十cmである」ものの、「回転板の回転軸からハンドルの基端までの長さ」が不明である点。

(相違点3)
「ハンドル本体」について、本願発明1では、「前記操作者の前記片手の手のひらが押し当てられる、ハンドル基端部を有する」のに対し、引用発明では「片手の親指および人差し指以外の指と手のひらとの間に挟持される把持部を有する」点。

(相違点4)
本願発明1では、「前記ハンドルの先端側に設けられたスナップフィット部材において、
前記カテーテルシャフトを差し込み可能であると共に、前記スナップフィット部材の軸に沿って貫通するように延在している中空部分と、
前記カテーテルシャフトの基端部から引き出され、前記温度センサに電気的に接続された導線を、前記中空部分から前記スナップフィット部材の側面に通すための経路と、
が形成されており、
前記カテーテルシャフトの基端部から引き出された前記操作用ワイヤが、前記中空部分を経由して、前記ハンドルの内部に導入されている」のに対して、引用発明1では、ハンドル先端部分にスナップフィットが設けられているか不明であり、更にスナップフィット内部の導線と操作用ワイヤの配置構成が不明である点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2及び4について検討する。

引用文献2に記載されている(ハウジングアセンブリ240の遠位端部に配置される)回転子230の遠位端部に装着される「遠位歪逃がし部材204」は、本願発明1の相違点4に係る「ハンドルの先端側に設けられたスナップフィット部材」に相当するといえるものの、「遠位歪逃がし部材204」に、「前記温度センサに電気的に接続された導線を、前記中空部分から前記スナップフィット部材の側面に通すための経路」(以下「導線経路」という。)を「形成」することまでは記載されていない。

引用文献3には、「装置100の望ましくない動きを防止するように」「クリップ」を含むことが記載され、引用文献Bには、親指等で操作する駆動部材214と、グリップ部204と、ハウジング206とを備えた片手操作可能な医療機器のハンドル202において、ハンドルの長さは2.5cmから20.8cmの間に設定することが記載され、引用文献E及びFには、内視鏡すなわち人体に対して挿入する医療器具において、その先端を湾曲操作する、手元側の操作機構として、操作ワイヤの連結されたプーリーを用いることが記載されているものの、スナップフィット部材に「導線経路」を形成するという構成について記載されていない。

以上のとおり、いずれの文献にも、本願発明1の相違点4に係るスナップフィット部材に「導線経路」を形成するという構成は記載されておらず、仮に相違点4に係る構成が周知技術であるとしても、相違点2に係る構成である「前記回転板の前記回転軸から前記ハンドルの基端までの長さが、5?7cm」というコンパクト化されたハンドルにおいて、相違点4に係るスナップフィット部材に「導線経路」を形成するという構成を採用することまで、本願出願前において周知技術であるとはいえず、本願発明1は、この相違点2及び相違点4に係る構成により、「コンパクト化されたハンドル200内において、操作用ワイヤ300a、300bと導線L1?L5とが干渉することが抑制され、食道温度測定用カテーテル10の動作信頼性を向上させることができる」(本願明細書段落【0038】参照。)との効果を奏するものであるから、相違点2及び相違点4に係る構成は、単なる設計事項であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3、B、E及びFに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)本願発明2、3について
本願発明2、3も、本願発明1の相違点2及び相違点4に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3、B、E及びFに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
本件補正により、補正後の請求項1ないし3は、相違点2及び相違点4に係る構成を有するものとなった。当該相違点2及び相違点4に係る構成は、原査定における引用文献A-F(引用文献A、C及びDは、当審拒絶理由における引用文献1、2及び3に相当。)には記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1ないし3は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Fに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定及び当審の拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-03-17 
出願番号 特願2016-213375(P2016-213375)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼原 悠佑  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 伊藤 幸仙
森 竜介
発明の名称 食道温度測定用カテーテル  
代理人 特許業務法人つばさ国際特許事務所  

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