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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1372255 |
審判番号 | 不服2019-10292 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-08-05 |
確定日 | 2021-03-18 |
事件の表示 | 特願2017-224296「ゲームサーバ及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月 5日出願公開、特開2018- 51339〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年12月2日に出願した特願2010-268905号(以下、「原々々出願」という。)の一部を、新たな特許出願として平成25年4月4日に出願した特願2013-078844号(以下、「原々出願」という。)の一部を、さらに新たな特許出願として平成27年6月10日に出願した特願2015-117691号(以下、「原出願」という。)の一部を、さらにもう一度新たな特許出願として平成29年11月22日に出願した特願2017-224296号(以下、「本願出願」という。)であって、平成30年10月30日付けで拒絶の理由が通知され、平成31年1月15日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和1年5月8日付けで、平成30年10月30日付けで通知された拒絶の理由(以下「原査定の理由」という。)による拒絶査定がなされ、その謄本は同年5月14日に請求人に送達された。 これに対し、同年8月5日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、それと同時に手続補正がされたものである。 第2 令和1年8月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和1年8月5日にされた手続補正(以下「本願補正」という。)を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 本願補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、その補正の一部には、本願補正前の請求項1の記載を本願補正前のとおりに補正する補正事項(以下、「本願補正事項」という。)を含むものである。 1 本願補正前の請求項1の記載 「【請求項1】 通信回線を介して接続された複数の端末にゲームを提供するゲームサーバであって、 複数の端末により構成されるグループが実行すべきクエストの選択要求であって、当該クエストを協力プレイとして受注する要求を端末から受け付けた場合、当該クエストの実行を許可するか否かを判定する判定手段と、 該判定手段により前記クエストの実行を許可しないと判定された際、前記端末に前記クエストの実行を許可しないものとして所定の情報を送出する送出手段と、を有し、 前記判定手段は、 前記端末を含む複数の端末のうち少なくとも一部の端末が前記クエストの実行条件を充足している場合に、当該複数の端末に当該クエストの実行を許可すると判定し、 前記端末をグループとして前記クエストを受注する要求を、前記クエストに対応する所定数の他の端末から受け付けていない場合に、前記端末に前記クエストの実行を許可しないと判定し、 前記送出手段は、前記判定手段が前記端末に前記クエストの実行を許可しないと判定した場合に、前記所定の情報として、前記クエストの実行条件を充足しているか否かを報知するための情報ではなく、他の端末と協力して当該クエストを受注することを報知するための情報を送出し、 前記クエストの実行条件は、当該クエストより前に実行することが規定されているクエストを実行していることに関する ことを特徴とするゲームサーバ。」 2 本願補正後の請求項1の記載 「【請求項1】 通信回線を介して接続された複数の端末にゲームを提供するゲームサーバであって、 複数の端末により構成されるグループが実行すべきクエストの選択要求であって、当該クエストを協力プレイとして受注する要求を端末から受け付けた場合、当該クエストの実行を許可するか否かを判定する判定手段と、 該判定手段により前記クエストの実行を許可しないと判定された際、前記端末に前記クエストの実行を許可しないものとして所定の情報を送出する送出手段と、を有し、 前記判定手段は、 前記端末を含む複数の端末のうち少なくとも一部の端末が前記クエストの実行条件を充足している場合に、当該複数の端末に当該クエストの実行を許可すると判定し、 前記端末をグループとして前記クエストを受注する要求を、前記クエストに対応する所定数の他の端末から受け付けていない場合に、前記端末に前記クエストの実行を許可しないと判定し、 前記送出手段は、前記判定手段が前記端末に前記クエストの実行を許可しないと判定した場合に、前記所定の情報として、前記クエストの実行条件を充足しているか否かを報知するための情報ではなく、他の端末と協力して当該クエストを受注するように当該端末のユーザに報知するための情報を送出し、 前記クエストの実行条件は、当該クエストより前に実行することが規定されているクエストを実行していることに関する ことを特徴とするゲームサーバ。」(下線は、補正箇所を示すために当審で付した。) 3 本願補正の目的について 本願補正事項は、具体的には、本願補正前の請求項1の発明特定事項の「他の端末と協力して当該クエストを受注することを報知するための情報」を本願補正後の請求項1の発明特定事項の「他の端末と協力して当該クエストを受注するように当該端末のユーザに報知するための情報」と変更するものであり、上記本願補正前の請求項1の発明特定事項の「報知する」対象を「当該端末のユーザ」に限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、本願補正事項は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 4 独立特許要件についての検討 本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は上記2において摘示したとおりの発明特定事項により特定されるものである。 (2)本願の分割遡及日についての検討 本願の分割原出願である原出願(特願2015-117691号)に対して、「分割要件を満たさないものであるから、出願日の遡及は認められず、現実の出願日である平成27年6月10日に出願したものとして取り扱う」旨の拒絶理由の通知(平成28年12月8日付拒絶理由通知)がなされた後、平成29年2月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年7月31日付けで前記手続補正書が却下されるとともに上記拒絶理由による拒絶査定がなされ(発送日平成29年8月22日)、上記拒絶査定に対する拒絶査定不服審判は請求期間内に請求されず、上記拒絶査定は確定している。 審判請求人は、審判請求書において、原出願に対する上記拒絶理由(平成28年12月8日付拒絶理由通知)における分割要件を満たさないとの理由は不当であるから、原出願は分割要件を満たすものであり、本願の出願日は原々々出願の出願日に遡及する旨主張している。 しかしながら、上記のとおり原出願の手続において、原出願が分割要件を満たさない事を理由として特許法第44条第2項が適用されない結果、その出願日が原出願日の現実の出願日である平成27年6月10日とした判断を前提にした拒絶査定は既に確定しており、本願の手続きにおいて、その確定した拒絶査定における原出願の分割出願の適否を判断することは、既に確定している処分を別個の手続きによって覆すことを認めることになるから許されないものと解される(最高裁昭和63年(行ツ)第164号平成2年7月20日第二小法廷判決参照)。 そうすると、原出願は確定した拒絶査定の効力により不適法な分割出願であることが確定しており、その出願日は原々々出願の出願日に遡及せず、現実の出願日である平成27年6月10日となるから、原出願を分割出願した本願の出願日は、原出願の出願日である平成27年6月10日であると認められる。 (3)引用例及び引用発明 ア 原査定の拒絶の理由の引用文献1として引用され、上記(2)で検討したとおり本願の出願日とみなされる原出願の出願日(平成27年6月10日)前に頒布された刊行物である特開2012-115534号公報(上記原々々出願の公開特許公報であり、以下、「引用文献」という。)には、つぎの事項が記載されている。(上記引用文献には「,」と「、」の記載が混在しているので「、」に統一した。) (ア)「【0019】 図1には、複数のゲーム端末1A、1B、1C……(図1には、例示的に3個のゲーム端末1を示すが、実際には極めて多数のゲーム端末1が存在する)及び該ゲーム端末1A、1B、1Cにインターネット、公衆電話網などの公衆通信回線2を介して接続されるゲームサーバ3を示している。各ゲーム端末1A、1B、1C……はコンピュータを内蔵する本体1aを有しており、本体1aには、入力装置としてのコントローラ1bがそれぞれ接続している。」(下線は強調のために当審で付した。以下同じ。) (イ)「【0022】 ゲーム端末1及びゲームサーバ3は以上のような構成を有するので、MMORPGなどのオンラインゲームをプレーヤが行なう場合には、各プレーヤは自己のゲーム端末1を操作して公衆通信回線2を介してゲームサーバ3に接続し、ゲームサーバ3内のメモリ内に形成された仮想空間内で各プレーヤに対応して設定された操作キャラクタをそれぞれ移動操作して、ゲームサーバ3が制御する所定のシナリオに沿って行動させることで、ゲームを実行してゆく。ゲームサーバ3が実行するゲームプログラムは、ゲームサーバ3内のプログラムメモリ10に格納され、オンラインゲームの主要な制御を行うが、各ゲーム端末1には、ゲームサーバ3に接続して所望するオンラインゲームを実行するための端末制御用ゲームプログラムが所定のメモリに格納されている。」 (ウ)「【0025】 クエストの中には、複数のプレーヤが協力して行わなければならない、「協力プレイ」であるものも設定されており、以後、図5で示す連続クエストAは、3人のプレーヤが協力して行う「協力プレイ」としてゲームプログラムにより規定されている。従ってゲーム進行制御部8は、連続クエストAをプレーヤが実行することを選択した場合、即ち、あるゲーム端末(例えばゲーム端末1A)から連続クエストAの受注がゲームサーバ3に対して通知(受注通知)された場合には、他のゲーム端末1(プレーヤ)から、ゲーム端末1Aをグループとする連続クエストの受注通知がなされていないかを判定し、他のゲーム端末(例えば、ゲーム端末1B、1C)から、連続クエストの受注通知がなされている場合には、直ちにクエスト管理メモリ11を検索して、クエストの受注通知が出力されたゲーム端末1A、1B、1Cに対応する各プレーヤIDのクエスト実行管理テーブルから、連続クエストの達成状態を示す達成情報を各プレーヤ毎に読み出す。 【0026】 なお、他のゲーム端末1(プレーヤ)から、ゲーム端末1Aをグループとするクエストの受注通知がなされていない場合には、ゲーム進行制御部8は、当該受注通知を出力したゲーム端末1Aに対して、他のゲーム端末1と協力してクエストを受注するようにメッセージを送出して、適正なシナリオ進行を担保する。 【0027】 クエストの受注通知がゲーム端末1A、1B、1Cのゲーム端末グループからゲームサーバ3に対して出力され、対応する連続クエストの達成情報がクエスト実行管理テーブルから読み出されたところで、クエスト進行制御9は、ゲームプログラムに基づいて、クエスト管理メモリ11内に、連続クエストAの受注通知をゲームサーバ3に対して出力したゲーム端末1A、1B、1Cに対応する各プレーヤIDについて、図2に示すように、連続クエスト管理テーブルQCTを作成する。連続クエスト管理テーブルQCTは、クエスト実行管理テーブルから読み出された各プレーヤIDについて、連続クエストAを構成する部分クエストの達成情報を編集したものであり、クエスト進行制御部9は、連続クエスト管理テーブルQCTに示された部分クエストの達成状況を参照しながら、各ゲーム端末1A、1B、1Cのクエストの実行を制御する。 【0028】 即ち、クエスト進行制御9は、連続クエストAの受注通知を出力した各ゲーム端末1のプレーヤIDら(図2の場合、ゲーム端末1AのプレーヤのプレーヤIDは、「12345」で、ゲーム端末1BのプレーヤのプレーヤIDは、「23456」で、ゲーム端末1CのプレーヤのプレーヤIDは、「78901」とする)、連続クエストAにける各ゲーム端末1(プレーヤ)の部分クエスト1?5の達成状態を参照し、今回ゲーム端末1A、1B、1Cが出力された受注通知が、連続クエストAの中のどの部分クエストを受注するものなのかを判定する。各ゲーム端末1からの受注通知には、今回受注する部分クエスト及び一緒に当該部分クエスト2を受注する(協力プレイを行う)他のゲーム端末1を特定する情報が協力プレイを行う協力プレイ実行フラグと共に格納されているので、当該判定は容易に行うことが出来る。 【0029】 また、クエスト進行制御部9は、連続クエスト管理テーブルQCTから、各ゲーム端末1A、1B、1Cが受注可能な部分クエストを判定する。部分クエストは1から順番に実行しなければならず、既にクリアした部分クエストは、再度実行することが出来ないように、ゲームプログラムによりクエスト進行制御部9が制御するが、他のプレーヤと共に協力プレイを行う部分クエストについては、既にクリアした部分クエストであってもその実行を一時的に許可する、協力プレイ処理がゲームプログラム内に規定されている。 【0030】 例えば、図2の場合、通常の制御では、ゲーム端末1A(プレーヤIDが「12345」)では、プレーヤは部分クエスト5を受注中であり、通常は新たな部分クエストの受注を連続クエストA内で行うことは出来ず、受注中の部分クエスト5のみを実行することが出来。また、ゲーム端末1B(プレーヤIDが「23456」)では、部分クエスト1のみをクリアした状態なので、次には部分クエスト2のみが受注可能であり、ゲーム端末1C(プレーヤIDが「78901」)では、部分クエスト1?3をクリアした状態なので、次には部分クエスト4のみが受注可能となるように制御される。 【0031】 仮に、ゲーム端末1A、1B、1Cから出力された受注通知が、部分クエスト2を協力プレイとして受注する通知であった場合に、クエスト進行制御部9は、本来、部分クエスト2を受注する資格が、受注通知を出力したゲーム端末1A、1B、1Cの内、いずれかに有るか否かを連続クエストAの部分クエストの達成情報から判定する。この場合、ゲーム端末1Bが部分クエスト2を受注(実行)可能であり、他のゲーム端末1A、1Cは、部分クエスト2を受注(実行)することは出来ないものと判定される。しかし、受注通知が協力プレイを行う旨の通知を含み、更に少なくとも一つのゲーム端末1について、受注通知に示された部分クエストを受注する資格が有ると判定された場合には、クエスト進行制御部9は、各受注通知に示された協力プレイ実行フラグに基づいて、協力プレイ処理を開始する。」 (エ)上記「【0019】・・・複数のゲーム端末1A、1B、1C……(図1には、例示的に3個のゲーム端末1を示す」との記載をふまえて、上記「【0022】・・・各プレーヤは自己のゲーム端末1を操作して公衆通信回線2を介してゲームサーバ3に接続」の記載をみると上記「各プレーヤは自己のゲーム端末1を操作して」とは、「各プレーヤは複数のゲーム端末1A、1B、1Cのいずれかを操作して」の意味であると解される。 (オ)上記「【0025】・・・他のゲーム端末(例えば、ゲーム端末1B、1C)」の記載からみて、「【0025】・・・他のゲーム端末1(プレーヤ)」及び上記「【0026】・・・なお、他のゲーム端末1(プレーヤ)から、・・・他のゲーム端末1と協力してクエストを受注するようにメッセージを送出」に記載された各「他のゲーム端末1」とは、「ゲーム端末1B、1C」のことであると解される。 (カ)上記(エ)の検討をふまえると、上記「【0031】・・・更に少なくとも一つのゲーム端末1」とは、「更に少なくともゲーム端末1A、1B、1Cのうちの1つ」の意味であると解される。 (キ)「【0031】・・・ゲーム端末1A、1B、1Cから出力された受注通知が、部分クエスト2を協力プレイとして受注する通知であった場合に、クエスト進行制御部9は、本来、部分クエスト2を受注する資格が、受注通知を出力したゲーム端末1A、1B、1Cの内、いずれかに有るか否かを連続クエストAの部分クエストの達成情報から判定する。この場合、ゲーム端末1Bが部分クエスト2を受注(実行)可能であり、」の記載について検討すると、ゲーム端末1Bが部分クエスト2を受注する資格があるといえる。 イ 上記ア(ア)ないし(ウ)の摘記事項及び同(エ)ないし(キ)の検討事項から、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「各プレーヤが自己の複数のゲーム端末1A、1B、1Cのいずれかを操作することにより公衆通信回線2を介して接続されるゲームサーバ3であって、 ゲーム端末1Aから、3人のプレーヤが協力して行う連続クエストAの受注がされた場合には、ゲーム端末1B、1Cから、ゲーム端末1Aをグループとする連続クエストの受注通知がなされていないかを判定し、 ゲーム端末1B、1Cから、ゲーム端末1Aをグループとするクエストの受注通知がなされていない場合には、当該受注通知を出力したゲーム端末1Aに対して、ゲーム端末1B、1Cと協力してクエストを受注するようにメッセージを送出し、 ゲームサーバ3に対して、クエストの受注通知がゲーム端末1A、1B、1Cのゲーム端末グループから出力され、 ゲーム端末1A、1B、1Cから出力された受注通知が、部分クエスト2を協力プレイとして受注する通知であった場合に、 クエスト進行制御部9は、本来、部分クエスト2を受注する資格が、受注通知を出力したゲーム端末1A、1B、1Cの内、いずれかに有るか否かを連続クエストAの部分クエストの達成情報から判定し、 部分クエスト1のみをクリアした状態であって、次には部分クエスト2のみが受注可能なゲーム端末1Bが部分クエスト2を受注する資格があり、 受注通知が協力プレイを行う旨の通知を含み、更に少なくともゲーム端末1A、1B、1Cのうちの1つについて、受注通知に示された部分クエストを受注する資格が有ると判定された場合には、協力プレイ処理を開始するゲームサーバ。」 (4) 本願補正発明と引用発明との対比 ア 引用発明の「複数のゲーム端末1A、1B、1C」、「公衆通信回線2」、「ゲームサーバ3」、「連続クエストA」及び「クエスト」、「協力プレイ」は、それぞれ、本願補正発明の「複数の端末」、「通信回線」、「ゲームサーバ」、「クエスト」、「協力プレイ」に相当する。 イ 引用発明の「ゲーム端末1Aから、3人のプレーヤが協力して行う連続クエストAの受注」は、本願補正発明の「複数の端末により構成されるグループが実行すべきクエストの選択要求」に相当する。 ウ 引用発明は「ゲーム端末1Aから、3人のプレーヤが協力して行う連続クエストAの受注がされた場合に」、「ゲーム端末1A、1B、1Cから出力された受注通知が、部分クエスト2を協力プレイとして受注する通知であった場合」(以下「場合1」という。)と、「受注通知が協力プレイを行う旨の通知を含み、更に少なくともゲーム端末1A、1B、1Cのうちの1つについて、受注通知に示された部分クエストを受注する資格が有ると判定された場合」(以下「場合2」という。)には、「協力プレイ処理を開始する」ものであるから、場合1または場合2ではない状況では、協力プレイ処理は開始されないと解され、引用発明において、「ゲーム端末1Aから、3人のプレーヤが協力して行う連続クエストAの受注がされた場合に」、「協力プレイ処理」を開始するか否か判定する判定手段を有するのは明らかであって、当該判定手段は本願補正発明の「当該クエストを協力プレイとして受注する要求を端末から受け付けた場合、当該クエストの実行を許可するか否かを判定する判定手段」に相当する。 エ 上記ウの検討のとおり、引用発明は、「ゲーム端末1B、1Cから、ゲーム端末1Aをグループとするクエストの受注通知がなされていない場合」(審判註:「場合1」ではない状況。)では協力プレイ処理は開始されず、「当該受注通知を出力したゲーム端末1Aに対して、ゲーム端末1B、1Cと協力してクエストを受注するようにメッセージを送出」するものであり、このことは、本願補正発明の「該判定手段により前記クエストの実行を許可しないと判定された際、前記端末に前記クエストの実行を許可しないものとして所定の情報を送出する」こと及び、「前記端末をグループとして前記クエストを受注する要求を、前記クエストに対応する所定数の他の端末から受け付けていない場合に、前記端末に前記クエストの実行を許可しないと判定し、 前記送出手段は、前記判定手段が前記端末に前記クエストの実行を許可しないと判定した場合に、前記所定の情報として、前記クエストの実行条件を充足しているか否かを報知するための情報ではなく、他の端末と協力して当該クエストを受注することを報知するための情報を送出」することに相当する。 また、上記「メッセージを送出」する引用発明が「送出手段」を備えていることは明らかであり、当該「送出手段」は本願補正発明の「所定の情報を送出する送出手段」に相当する。 オ 引用発明の「受注通知が協力プレイを行う旨の通知を含み、更に少なくともゲーム端末1A、1B、1Cのうちの1つについて、受注通知に示された部分クエストを受注する資格が有ると判定された場合には、協力プレイ処理を開始する」ことは、本願補正発明の「前記端末を含む複数の端末のうち少なくとも一部の端末が前記クエストの実行条件を充足している場合に、当該複数の端末に当該クエストの実行を許可すると判定」することに相当する。 カ 引用発明の「部分クエスト1のみをクリアした状態であって、次には部分クエスト2のみが受注可能なゲーム端末1Bが部分クエスト2を受注する資格」との発明特定事項は、本願補正発明の「クエストの実行条件は、当該クエストより前に実行することが規定されているクエストを実行していること」に相当する。 キ してみると、本願補正発明と引用発明とは、全ての点で一致し、相違するところはない。 ク 小括 上記で検討したとおり、本願補正発明は、引用文献に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 よって、本願補正発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。 (4)補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、上記で検討したように、本願補正発明は特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成31年1月15日にされた手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1において説示したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由の概要 本願発明に対する原査定の拒絶の理由の一部は、本願発明は、原出願日前に日本国内において、頒布された引用文献(特開2012-115534号公報)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないというものである。 3 引用例及びその記載事項 原査定で引用された引用文献に記載の発明(引用発明)は、それぞれ、上記第2 4(3)イにおいて説示し、認定したとおりである。 4 本願発明と引用発明との対比・判断 上記第2 3で説示したとおり、本願発明は、本願補正発明の発明特定事項である「他の端末と協力して当該クエストを受注するように当該端末のユーザに報知するための情報」から「受注するように当該端末のユーザ」との発明特定事項を削除して、「他の端末と協力して当該クエストを受注することを報知するための情報」としたものである。 そして上記第2 4の本願補正発明と引用発明との対比の検討に照らせば、本願発明と引用発明とは、全ての点で一致し、相違するところはない。 以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献に記載された発明(引用発明)であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 5 むすび 上記で検討したとおり、本願発明は、原出願日前に頒布された刊行物である引用文献に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 したがって、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-01-05 |
結審通知日 | 2021-01-12 |
審決日 | 2021-01-26 |
出願番号 | 特願2017-224296(P2017-224296) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 奈良田 新一 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
藤田 年彦 畑井 順一 |
発明の名称 | ゲームサーバ及びプログラム |
代理人 | 上田 侑士 |
代理人 | 浅見 浩二 |
代理人 | 須藤 浩 |
代理人 | 海田 浩明 |