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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02F
管理番号 1372294
審判番号 不服2020-12432  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-04 
確定日 2021-04-06 
事件の表示 特願2016-113259「波長可変光源」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月14日出願公開、特開2017-219668、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成28年6月7日の出願であって、その後の主な手続きの経緯は、以下のとおりである。

平成31年 2月27日 :出願審査請求書の提出
令和元年12月19日付け:拒絶理由通知
令和2年 3月 6日 :意見書の提出
同年 6月 3日付け:拒絶査定
同年 9月 4日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1は、次のとおりのものである。
また、本願の願書に添付した明細書を、図面を含めて「本願明細書」という。

「【請求項1】
半導体光増幅器と、
前記半導体光増幅器とともに波長可変レーザを構成する共振器と、
前記半導体光増幅器および前記共振器と光学的に結合され、前記波長可変レーザ内の光の一部を2つの出力光に分岐する2×2型の光分岐器と、
前記光分岐器で分岐された前記2つの出力光の内、一方の出力光が入力される光強度モニタと、
前記光分岐器で分岐された前記2つの出力光の内、他方の出力光が入力される波長ロッカーと
を有する波長可変光源。」
なお、本願発明2ないし本願発明5は、本願発明1を減縮したものである。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。

【理由その1】(新規性)
この出願の請求項1、2、4に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

【理由その2】(進歩性)
この出願の請求項1ないし5に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献:特開2005-045048号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献に記載された事項
引用文献には、図面とともに、以下の記載がある。
(1)「【請求項1】
ラダー型波長フィルタと、一定周波数間隔で透過率の変化する波長ロック用フィルタと、半導体光アンプとを組み合わせた半導体波長可変レーザにおいて、
前記ラダー型波長フィルタは、一対の入出力導波路と、一定の間隔で前記入出力導波路に配置された複数の光結合器と、この光結合器を介して二本の入出力導波路間を接続する複数の接続導波路とから構成され、入射端から出射端までの長さが入射端側の接続導波路を通る経路から順番に同じ長さの差で増加あるいは減少しており、
更に、前記ラダー型波長フィルタの前記入出力導波路の屈折率を変化させることにより発振波長を一定周波数間隔で可変にする第1の屈折率変化手段を持つことを特徴とする半導体波長可変レーザ。

「【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の半導体波長可変レーザにおいて、
前記ラダー型波長フィルタ、前記波長ロック用フィルタ、前記半導体光アンプが光結合器を含むリング共振器構成となることを特徴とする半導体波長可変レーザ。」

「【請求項8 】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の半導体波長可変レーザの一方の出力端に、一定周波数間隔で透過率が変化する波長フィルタと受光素子とを配置してなることを特徴とする波長可変レーザモジュール。」

(2)「【0015】
最後に請求項8は、温度変化による波長変化に関するものである。本発明の素子では出力周波数間隔は波長ロック用フィルタのFSRにより決定されるが半導体で作製した場合は温度変動による屈折率変化が大きく、所望の出力周波数間隔と異なってくる。
請求項8では、片側の出力端に屈折率の温度変動の少ない例えば誘電体などで作製した同じFSRを持つエタロンなどを配置し、その透過光強度をモニターする事により発振波長のずれを補正可能な波長可変レーザモジュールを作製する事が可能となる。」

(3)「【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の請求項1,2 に関係する実施例1を図1に示す。図1に示されるように、実施例1の半導体波長可変レーザ100は、ラダー型波長フィルタ110と、波長ロック用フィルタ120と、半導体光アンプ130を主要部材として構成される。そして、ラダー型波長フィルタ110と、波長ロック用フィルタ120と、半導体光アンプ130とが、光学的にこの順に直列的に接続されている。なお、100a,100bはレーザ共振器である。」

「【0026】
このような構成になっているため、ラダー型波長フィルタ110では、『入射端から出射端までの長さが入射端の接続導波路を通る経路から順番に同じ長さの差(ΔS)で増加あるいは減少している』状態になる。」

「【0028】
なお図1に示す実施例では、ラダー型波長フィルタ110の入出力導波路111,112は「ハの字状」に配置されているが、一対の入出力導波路111,112を離間して平行に配置すると共に、接続導波路113-1?113-Nを湾曲させて、接続導波路113-1?113-Nの長さを、左側(つまり接続導波路113-1側)から右側(つまり接続導波路113-N側)にずれるにつれて、ΔSずつ増加させるようにしてもよい。即ち、相対的に入射端側の接続導波路に対して、これに隣接する接続導波路の長さが、予め決めた長さΔSだけ増加あるいは減少するようにしておけばよい。
【0029】
ラダー型波長フィルタ110には、更に、屈折率制御用電極116a,116bが備えられており、屈折率制御用電極116a,116bを介して入力した電流が、配線電線117a,117bを介して入出力導波路111,112に入力されるようになっている。
【0030】
ラダー型波長フィルタ110は、波長可変領域すべてで動作可能な大きな波長可変範囲を持つ波長フィルタであり、屈折率制御用電極116a,116bを介して入力する電流値を変化させて、入出力導波路111,112および接続導波路113の屈折率を変化させることにより、このラダー型波長フィルタ110を通過する光の透過ピーク波長を変化させることができる。
【0031】
本実施例では、入出力導波路111に複数の光結合器114が一定間隔で配置されると共に、入出力導波路112に複数の光結合器115が一定間隔で配置されているので、図1に示されるように接続導波路113-1?113-Nの長さが左から順次ΔSずつ増加していく。このように接続導波路113の長さが左側(入射端側)から右側(出射端側)に向かうに従い順次ΔSずつ増加していくとすると、次式を満足する波長で、ラダー型波長フィルタ110の透過率が最も大きくなる。
【0032】
【数1】

【0033】
ここで、mは回折次数であり任意の正の整数、neffは導波路の実効屈折率である。」

「【0035】
計算で求めたラダー型波長フィルタ110とリング共振器120の部分の透過特性を、図3に示す。リング共振器120はFSR100GHzに設定した。図中の実線が両方のフィルタを接続した時の透過特性であるが1550nmで最も大きな透過率を得る事ができ、その両側の透過率は1.5dBほど小さくなっている。このようなフィルタ特性をレーザ共振器100a,100bの内部に持つため、図1に示した実施例では一つの波長のみでレーザ発振が得られる。
【0036】
図4に実際に作製した素子での発振スペクトルを示す。図4に示されるようにサイドモード抑圧比が30dB以上の良好な発振スペクトルが得られている。
【0037】
図5 に、ラダー型波長フィルタ110の屈折率制御用電極116a,116bに印加する電流を変化させた場合の波長チューニング特性を示す。100GHz間隔、24nmの波長範囲で波長可変動作が確認できた。これらの発振波長では、素子端面により形成されるレーザの縦モード間隔の透過ピークとも一致している。本素子の場合、素子長は約4mmとなっているため縦モード間隔は10GHz間隔になっている。従ってこの場合は100GHz間隔で出力光を得る事ができたが、縦モード間隔がずれると正確には100GHz間隔とはならないという問題が生じ、その結果、波長ロック用フィルタ120のFSRから縦モード間隔の半分が追加した値の周波数精度で発振波長を制御可能となる。
【0038】
なお、屈折率制御用電極116a,116bを介して入力する電流値が増加すると、入出力導波路111,112および接続導波路113の屈折率が増加する特性になっている。」

(4)「【実施例7】
【0063】
請求項8に関連する実施例7に係る波長可変レーザモジュール600を、図14に示す。この波長可変レーザモジュール600は、半導体波長可変レーザ610と,レンズ620と、エタロン型フィルタ630と、レンズ640と、受光素子650と、制御回路660とで構成されている。
【0064】
本実施例に示される波長可変レーザモジュール600では、半導体波長可変レーザ610の一方の出力端からの光出力強度を、外部の受光素子650でモニターする際に、レーザ610と受光素子650の間にエタロン型フィルタ630を挿入しているのが特徴である。なお波長可変レーザモジュール600は、ラダー型波長フィルタ611と、波長ロック用フィルタ612と、位相調整領域613と、半導体光アンプ614と、位相調整領域615と、光結合器616と、導波路617と、光変調器618とで構成したリング共振器構成のレーザである。
【0065】
本提案素子(半導体波長可変レーザ610)では波長ロック用フィルタ612のFSRにより発振波長は決定されるが、半導体で作製した場合には、温度変動による屈折率変化が大きく所望のFSRと異なってくることがある。この場合、レーザ610の片側の出力端に温度変動による屈折率変化の小さい例えば誘電体などで作製した同じFSRを持つエタロンフィルタ630などを配置する事により、その透過光強度をモニターする事により発振波長のずれを補正できる。この場合、発振波長はリングレーザの位相調整領域613の電流量を調整する事でフィードバックをかけている。もちろん素子全体をヒータにより温度調整したりする事でも波長の調整は可能である。
【0066】
この動作の詳細を示したのが図15である。例えば素子温度の上昇によりリング共振器のFSRが100GHzよりも大きくなった場合は、波長を高周波側にスイッチングした場合には所望の発振周波数よりも若干高周波側で発振する。この時、エタロンフィルタ630の透過率は大きくなるので受光素子650の電流量は増加する。従って、受光素子650の電流量が減少するように制御回路660にて位相調整領域613の屈折率を制御するフィードバック制御をかける事により、所望の周波数に波長を安定化可能となる。
【0067】
最後に、本実施例ではInP系の化合物半導体を用いたがGaAs系やSiとSiO2やポリイミドなどで構成されるシリコン細線導波路でもゲイン媒質をハイブリッド接続すれば同様に実現できる事を付記しておく。
【0068】
また、本実施例では電流注入による屈折率変化を用いたが、電圧や熱や圧力による屈折率変化を用いても、波長可変動作を得る事ができる。
【0069】
以上の方法により本発明では動作の簡便な波長可変レーザおよび波長可変レーザモジュールを低コストで実現可能となる。」

(5)実施例1に関する図1、図3ないし図5は、以下のものである。
図1

図3

図4

図5

(6)実施例7に関する図14は、以下のものである。

2 引用文献に記載された発明
(1)上記1(1)の記載からして、引用文献には、
「ラダー型波長フィルタと、一定周波数間隔で透過率の変化する波長ロック用フィルタと、半導体光アンプとを組み合わせた半導体波長可変レーザ(【請求項1】)の一方の出力端に、一定周波数間隔で透過率が変化する波長フィルタと受光素子とを配置してなる波長可変レーザモジュールであって(【請求項8】)、
前記半導体波長可変レーザは、前記ラダー型波長フィルタ、前記波長ロック用フィルタ、前記半導体光アンプが光結合器を含むリング共振器構成となり(【請求項6】)、
さらに、前記ラダー型波長フィルタの入出力導波路の屈折率を変化させることにより発振波長を一定周波数間隔で可変にする第1の屈折率変化手段を備えた(【請求項1】)、波長可変レーザモジュール。」が記載されていると認められる。
なお、参考のために、括弧内に段落番号を付した。

(2)上記1(2)ないし(4)の記載を踏まえて、実施例8に関する図14を見ると、上記(1)の「波長可変レーザモジュール」に関して、以下のことが理解できる。
ア 当該「波長可変レーザモジュール」の「半導体波長可変レーザ」は、
ラダー型波長フィルタ611、波長ロック用フィルタ612、位相調整領域613、半導体光アンプ614、位相調整領域615、光結合器616と、導波路617、及び光変調器618からなるリング共振器構成のレーザであること(【0064】)。

イ 当該「波長可変レーザモジュール」の「半導体波長可変レーザ」は、導波路617及び光変調器618を含み(上記ア)、上記アのリング共振器構成及び図14からして、導波路617の(光結合器616の側とは反対側の)端面と、光変調器618から(光結合器616の側とは反対側に)延びた導波路617の端面の2つにより共振器端面を構成していると解されること。

ウ 上記アの「光結合器616」を経由した光のうち、一部の光(以下、「第1の光」という。)が導波路617及びエタロン型波長フィルタ630を経て受光素子650に入力され、一部の光(以下、「第2の光」という。)が位相調整領域615及びラダー型波長フィルタ611を経て波長ロックフィルタ612に入力され、一部の光(以下、「第3の光」という。)が半導体光アンプ614、位相調整領域613及び波長ロックフィルタ612を経てラダー型波長フィルタ611及び位相調整領域615に入力されること(図14、【0064】)。

エ 上記ウの「受光素子650」は、半導体波長可変レーザの一方の出力端からの光出力強度の状態をモニターするためのものであること(【0064】)。
以下、「受光素子650」を「光出力強度モニター用受光素子650」という。

(3)上記(1)及び(2)の検討からして、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ラダー型波長フィルタ611、波長ロックフィルタ612、位相調整領域613、半導体光アンプ614、位相調整領域615、光結合器616、導波路617、及び光変調器618からなるリング共振器構成の半導体波長可変レーザの一方の出力端に、エタロン型波長フィルタ630と光出力強度モニター用受光素子650とを配置してなる、波長可変レーザモジュールであって、
半導体波長可変レーザは、導波路617の(光結合器616の側とは反対側の)端面と、光変調器618から(光結合器616の側とは反対側に)延びた導波路617の端面の2つにより共振器端面を構成しており、
前記光結合器616を経由した光のうち、第1の光が前記導波路617及び前記エタロン型波長フィルタ630を経て前記光出力強度モニター用受光素子650に入力され、第2の光が前記位相調整領域615及び前記ラダー型波長フィルタ611を経て前記波長ロックフィルタ612に入力され、第3の光が半導体光アンプ614及び位相調整領域613を経て波長ロックフィルタ612に入力され、
さらに、前記ラダー型波長フィルタ611の入出力導波路の屈折率を変化させることにより発振波長を一定周波数間隔で可変にする第1の屈折率変化手段を備えた、波長可変レーザモジュール。」

第5 対比・判断
1 対比
(1)本願発明1と引用発明を対比すると、以下のことがいえる。
ア(ア)引用発明の「半導体光アンプ614」及び「半導体波長可変レーザ」は、それぞれ、本願発明1の「半導体光増幅器」及び「波長可変レーザ」に相当する。

(イ)引用発明の「ラダー型波長フィルタ611、波長ロックフィルタ612、位相調整領域613、半導体光アンプ614、位相調整領域615、光結合器616、導波路617、及び光変調器618からなるリング共振器構成」からなる共振器は、本願発明1の「共振器」に相当する。
引用発明は、そのような共振器からなる「半導体波長可変レーザ」を有しているから、「半導体波長可変レーザ」を構成する共振器を有しているといえる。
引用発明の「半導体光アンプ614」は、「リング共振器構成」に属するものであるから、「半導体波長可変レーザ」を構成しているものといえる。

(ウ)よって、本願発明1と引用発明とは、
「半導体光増幅器と、
前記半導体光増幅器とともに波長可変レーザを構成する共振器と、を有する」点で一致する。

イ(ア)引用発明では、前記光結合器616を経由した光のうち、第3の光が半導体光アンプ614等に入力されるから、引用発明の「光結合器616」は、「半導体光アンプ614」に光学的に結合するといえる。
よって、引用発明の「光結合器616」は、本願発明1の「2×2型の光分岐器」とは、「半導体光増幅器に光学的に結合された分岐器」である点で一致する。

(イ)引用発明の「エタロン型波長フィルタ630と光出力強度モニター用受光素子650」は、本願発明1の「光強度モニタ」に相当する。
また、引用発明の「エタロン型波長フィルタ630と光出力強度モニター用受光素子650」には、「前記光結合器616を経由した光のうち、第1の光」が入力されるから、本願発明1でいう「前記光分岐器」を経由した「光が入力される」といえる。

(ウ)よって、本願発明1と引用発明とは、
「前記半導体光増幅器と光学的に結合された分岐器と、
前記光分岐器を経由した光が入力される光強度モニタと、を有する」点で一致する。

ウ 引用発明の「波長ロックフィルタ612」は、本願発明1の「波長ロッカー」に相当する。
また、引用発明の「波長ロックフィルタ612」には、「前記光結合器616を経由した光のうち、」「第2の光」及び「第3の光」が入力されるから、本願発明1でいう「前記光分岐器」を経由した「光が入力される」といえる。
よって、本願発明1と引用発明とは、「光分岐器を経由した光が入力される波長ロッカーと、を有する」点で一致する。

エ 引用発明の「波長可変レーザモジュール」は、本願発明1の「波長可変光源」に相当する。

(2)上記(1)の検討からして、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「半導体光増幅器と、
前記半導体光増幅器とともに波長可変レーザを構成する共振器と、
前記半導体光増幅器と光学的に結合された光分岐器と、
前記光分岐器を経由した光が入力される光強度モニタと、
前記光分岐器を経由した光が入力される波長ロッカーと、
を有する波長可変光源。」

(3)一方、両者は、以下の各点で相違する。
<相違点1>
光分岐器が、
本願発明1は、「半導体光増幅器および共振器と光学的に結合され、波長可変レーザ内の光の一部を2つの出力光に分岐する2×2型の光分岐器」であるのに対して、
引用発明は、半導体光アンプ614と光学的に結合されており、(ラダー型波長フィルタ611、波長ロックフィルタ612、位相調整領域613、半導体光アンプ614、位相調整領域615、光結合器616、導波路617、及び光変調器618からなる)リング共振器構成に含まれる光結合器616である点。

<相違点2>
波長ロッカーに入力される、前記光分岐器を経由した光が、
本願発明1は、「光分岐器で分岐された2つの出力光の内、他方の出力光」であるのに対して、
引用発明は、前記位相調整領域615及び前記ラダー型波長フィルタ611を経て前記波長ロックフィルタ612に入力される第2の光と、半導体光アンプ614、位相調整領域613を経て波長ロックフィルタ612に入力される第3の光である点。

<相違点3>
光強度モニタに入力される、前記光分岐器を経由した光が、
本願発明1は、「光分岐器で分岐された2つの出力光の内、一方の出力光」であるのに対して、
引用発明は、前記導波路617及び前記エタロン型波長フィルタ630を経て前記光出力強度モニター用受光素子650に入力される第1の光である点。

2 判断
(1)事案に鑑みて、まず、上記<相違点2>について検討する。
ア(ア)相違点2に係る構成について、本願発明1では、「波長ロッカー」に「入力される」光が、「前記光分岐器から分岐された2つの出力光の内、他方の出力光」であるとされているところ、当該「出力光」につき、本願発明1は、「前記波長可変レーザ内の光の一部を2つの出力光に分岐する2×2型の光分岐器」と特定している。そして、当該特定によれば、「出力光」とは、「波長可変レーザ」の「出力光」であると解するのが自然であり、この理解は、本願明細書【0017】の「・・・波長可変レーザ1の出力光の一部を分岐する2×2型の光分岐器4と、・・・」との記載における「出力光」の意味からも裏付けられ、また、この理解に反する本願明細書の記載は存在しない。

(イ)他方、引用発明の「波長ロックフィルタ612」に入力される光は、前記位相調整領域615及び前記ラダー型波長フィルタ611を経て前記波長ロックフィルタ612に入力される第2の光と、半導体光アンプ614及び位相調整領域613を経て波長ロックフィルタ612に入力される第3の光である。
そこで、まず、第2の光についてみると、第2の光は、「光結合器616を経由した光のうち」、「位相調整領域615及びラダー型波長フィルタ611を経て」波長ロックフィルタ612に入力されるものであるところ、この光は、「ラダー型波長フィルタ611、波長ロックフィルタ612、位相調整領域613、半導体光アンプ614、位相調整領域615、光結合器616、導波路617、及び光変調器618からなるリング共振器構成」の内部に存在する光であるといえる。換言すれば、引用発明の「波長ロックフィルタ612」に入力される第2の光は、引用発明の半導体波長可変レーザを構成する共振器の外部に取り出された光ではないから、「半導体波長可変レーザ」からの出力光ではない。
以上については、第3の光についても同様である。

イ してみると、上記<相違点2>は、実質的な相違点であるから、本願発明1は引用発明であるとはいえない。

ウ そして、引用発明においては、「リング共振器構成」を構成する「ラダー型波長フィルタ611」を経た光を「波長ロックフィルタ612」に入力することにより発振波長が決定されることから(【0065】)、引用発明の「波長ロックフィルタ612」を「リング共振器構成」の外部に配置するように変更する動機があるとはいえない。

エ よって、引用発明において、上記<相違点2>に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。
なお、原査定は、引用発明の「波長ロッカーに入力される出力光は、光分岐器で分岐された2つの出力光の内、半導体光増幅器側から出力された出力光である」として、上記<相違点2>を一致点と認定しているものと解されるが、上記のとおり、採用できない。

オ そして、引用文献に記載された他の技術的事項(例えば、図13に示された実施例6等)を踏まえても、上記の認定判断を左右するものではない。

(2)してみると、本願発明1は、引用文献に記載された発明ではなく、また、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし本願発明5について
本願発明2ないし本願発明5も、上記<相違点2>に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献に記載された発明でなく、また、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 まとめ
本願発明1ないし本願発明5は、引用文献に記載された発明ではなく、また、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし本願発明5は、引用文献に記載された発明ではなく、また、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-19 
出願番号 特願2016-113259(P2016-113259)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G02F)
P 1 8・ 121- WY (G02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井部 紗代子  
特許庁審判長 山村 浩
特許庁審判官 星野 浩一
松川 直樹
発明の名称 波長可変光源  
代理人 眞鍋 潔  
代理人 林 恒徳  
代理人 土井 健二  

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