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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G08B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08B |
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管理番号 | 1372299 |
審判番号 | 不服2020-6281 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-05-08 |
確定日 | 2021-04-06 |
事件の表示 | 特願2015-189860「光信号装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月 9日出願公開、特開2016- 71891、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)9月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年9月29日 ドイツ)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 元年 8月15日付け 拒絶理由通知書 12月 2日 意見書・手続補正書 令和 2年 1月16日付け 拒絶査定 5月 8日 審判請求書・手続補正書 10月22日付け 拒絶理由通知書 12月23日 意見書・手続補正書 第2 本願発明 本願の請求項1?10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明10」といい、これらを総称して「本願発明」という。)は、令和2年12月23日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲に記載される以下のとおりのものであると認める。 「 【請求項1】 光信号装置、具体的には信号灯又はモジュール式柱状信号灯(1)等であって、 機械、設備等の技術的装置(30)の1つ又は複数の異なる動作状態を光学的に表示するための、少なくとも1つの発光素子(20)を備える、少なくとも1つの発光ユニット(2)と、 少なくとも前記技術的装置(30)と接続又は接触させるために設けられた、少なくとも1つの電気的及び/又は電子的接続ユニット(27)と、 前記接続ユニット(27)を前記発光ユニット(2)に電気的及び/又は電子的に連結するために前記接続ユニット(27)と前記発光ユニット(2)との間に設けられた、少なくとも1つの電気的及び/又は電子的連結ユニット(12)とを備えており、 前記連結ユニット(12)が、前記発光ユニット(2)と前記接続ユニット(27)との間において電気的及び/又は電子的連結を確立及び/又は遮断するための、少なくとも2つの電気的及び/又は電子的スイッチング素子(21、22)を有し、前記少なくとも2つの電気的及び/又は電子的スイッチング素子(21、22)のうち少なくとも1つが、前記技術的装置(30)とは別個のアクチュエータ(8)の駆動要素(28)を切り替えるためのアクチュエータスイッチ(22)の形態をとっており、前記アクチュエータ(8)は、電気信号又はエネルギーを機械的運動又は他の物理的変数に変換するコンバータであることを特徴とする、光信号装置。 【請求項2】 前記信号装置を動作位置に支持するための支持要素(4)及び/もしくはベース部(4)、ならびに/又は工具を用いずに交換することが可能な連結ユニット(12)が、少なくとも前記スイッチング素子(21、22)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の信号装置。 【請求項3】 前記少なくとも2つの電気的及び/又は電子的スイッチング素子(21、22)のうちの1つが、前記技術的装置(30)のアクチュエータ(8)の駆動要素(28)を切り替えるためのアクチュエータスイッチ(22)の形態をとっていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の信号装置。 【請求項4】 電気エネルギーを供給するための給電ライン(24)を有する少なくとも1つの分岐点(25)が、前記2つの電気的及び/又は電子的スイッチング素子(21、22)の間に配置されているため、別々に切り替え可能な2つの電気回路又は電源回路が形成され得ることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載の信号装置。 【請求項5】 前記2つの電気的及び/又は電子的スイッチング素子(21、22)が、少なくとも1つの切替位相において閉切替位置にあり、その結果、前記発光ユニット(2)と前記接続ユニット(27)との間における前記電気的及び/又は電子的連結が電気的に導通状態であることを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載の信号装置。 【請求項6】 前記電気的及び/又は電子的スイッチング素子(21、22)を監視/制御するために、及び/又は駆動するために、少なくとも1つの監視ユニット(26)が設けられていることを特徴とする、請求項1?5のいずれか1項に記載の信号装置。 【請求項7】 前記支持要素(4)及び/もしくは前記ベース部(4)、ならびに/又は工具を用いずに交換することが可能な前記連結ユニット(12)が、少なくとも監視ユニット(26)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の信号装置。 【請求項8】 前記発光ユニット(2)及び前記連結ユニット(12)が交換可能なモジュールとして形成される請求項1?7のいずれか1項に記載の信号装置(1)であって、 第1のモジュールとしての前記発光ユニット(2)又は前記連結ユニット(12)は、 第1端部において、前記信号装置を動作位置に支持するためのベース部(4)もしくは支持要素(4)、又は第2のモジュールとしての前記発光ユニット(2)もしくは前記連結ユニット(12)を工具を用いずに固定及び解放可能であり、かつ、 第2端部において、第3のモジュールとしての前記発光ユニット(2)もしくは前記連結ユニット(12)、又は蓋部(3)を工具を用いずに固定及び解放可能である、信号装置。 【請求項9】 請求項1?8のいずれか1項に記載の信号装置(1)を有し、かつ、少なくとも前記技術的装置(30)及び/又は少なくとも1つのアクチュエータ(8)を有する、信号装置ネットワークシステム。 【請求項10】 請求項1?8のいずれか1項に記載の信号装置(1)を有する信号装置ネットワークシステムであって、少なくとも前記技術的装置(30)を有するとともに、少なくとも前記技術的装置(30)を備える建築物を有し、前記建築物は、少なくとも1つのアクチュエータ(8)を備え、加熱システム(83)及び/又は換気システム及び/又は空調システム及び/又は製造機械(30)の少なくとも1つの要素が前記アクチュエータ(8)の形態である、信号装置ネットワークシステム。」 第3 引用文献 1 引用文献1の記載事項 令和2年1月16日付け拒絶査定(以下、単に「拒絶査定」という。)で引用された特開2004-6291号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(以下、下線は当審にて付したものである。) (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、自動機械、生産ライン、駐車場、危険な場所などに設置され、材料の不足、ワークの詰まり、満車、危険等の各種の状態を信号報知するための信号表示灯およびこれに用いられる外部出力ユニットに関する。」 (2)「【0013】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の第1実施形態の信号表示灯を図1を参照して説明する。 本信号表示灯1は、自動機械等の装置本体2(一部のみ図示)の構造部材3に装着され、装置本体2の制御回路4からの信号に応じて光源42により放光する。信号表示灯1は、複数のリード線5を介して制御回路4に接続され、装置本体2から信号を伝達され、また、電力を供給される。装置本体2としては、自動機械の他、生産ライン、駐車場等のための設備や、危険な場所などに設置される装置や設備を例示でき、装置本体2からの信号としては、装置本体2の各種の状態を示す電気信号を例示できる。例えば、信号表示灯は、後述するように異なる色の光を放光でき、装置本体2の通常運転時は緑色に点灯、材料切れ時やメンテナンス必要時は黄色に点灯、異常時や緊急時は赤色に点灯する。 【0014】 信号表示灯1は、発光して信号を表示するための複数の、例えば、3つの表示ユニット11と、装置本体2からの信号に応じた信号を外部へ出力するための外部出力ユニット12と、回路基板21等を有する基部ユニット13と、信号表示灯1の頂部側端部52に配置されるカバー14とを有している。なお、表示ユニット11の数は、少なくとも一つがあればよい。また、本実施の形態での、各ユニット11,12,13を互いに連結する連結構造の構成と、表示ユニット11および基部ユニット13の構成は、特開平7-282605号公報に記載された構成と同様のものであるが、公知の他の構成を利用することもできる。 【0015】 表示灯本体50は、複数の表示ユニット11、外部出力ユニット12、および基部ユニット13を有する。これら各ユニット11,12,13は、それぞれ別体とされ、この順序で上下方向に沿って並び、上下に積層されている。カバー14、表示ユニット11、および外部出力ユニット12は、例えば、これらを貫通する長尺ねじ(図示せず)により基部ユニット13に固定されて、表示灯本体50、カバー14および長尺ねじは一体的に扱えるようにされる。また、長尺ねじを緩めて、固定を解除することで、各ユニット11,12,13を互いに分離できる。」 (3)「【0023】 基部ユニット13は、上述の回路基板21と、この回路基板21を収容し支持する筒状のケース20とを有している。回路基板21は、装置本体2からの信号をリード線5を通して受け、何らの処理も施さずに、表示ユニット11、外部出力ユニット12に伝達する。なお、回路基板21は、受けた信号を適当な形に変換して、変換された信号を他のユニット11,12に伝達することも考えられる。回路基板21には、表示ユニット11の光源42を点滅させるための回路等が構成されていて、この他、ブザー等を設けてもよい。また、基部ユニット13の上端部は、一方の導電部材27と、一方の係合部25とを有する。 【0024】 外部出力ユニット12は、図3に示すように、装置本体2からの信号に応じた信号を外部へ出力するための外部出力インタフェース32と、回路基板31と、この回路基板31および外部出力インタフェース32を支持する筒状のケース30とを有している。外部出力ユニット12の上端部は一方の係合部25と、一方の導電部材27とを有する。外部出力ユニット12の下端部は他方の係合部26と、他方の導電部材28とを有する。回路基板31は、上端部および下端部の2つの連結構造の導電部材27,28を支持する。また、この2つの導電部材27,28は一体に形成され、外部出力ユニット12の両側に隣接するユニット13,11同士を電気的に接続できるようにされている。」 (4)「【0026】 図2に示す例では、外部のコネクタ6には、外部のケーブル7を介して外部の装置としての無線装置8が接続されている。この無線装置8は、外部出力ユニット12からの信号を 無線により、例えば、遠隔して配置される外部の装置としての生産ラインの統括管理装置9の操作パネルやコンピュータ等に伝達する。なお、無線装置8を省略して、ケーブル7を装置9に有線で接続してもよい。また、外部の装置としては、音声信号を出力するスピーカを含む報知装置8A、文字、図形等の情報を表示する表示装置8B等(図6参照)を用いてもよい。」 (5)「【0028】 各表示ユニット11は、ほぼ同様に構成されている。その中の一つの表示ユニット11を例に図3を参照して説明する。各表示ユニット11は、光を発する光源42と、この光源42を支持する回路基板41と、光源42からの光を反射する反射部材43と、これら各部41,42,43を覆いつつ光を透過するグローブ44とを有している。表示ユニット11は、略円柱形状をなし、その外周面はグローブ44により形成され、その外周面のほぼ全体に信号の表示面を有している。表示ユニット11では、光源42からの光が反射部材43により反射されて、グローブ44を透過し放光される。」 (6)「【0058】 なお、外部出力ユニット12,12Aが、対応する外部の受信部に無線で信号を出力するための発信部を有するようにしてもよい。この場合には、外部出力ユニット12,12Aと外部の装置9とを有線で接続する手間を簡略化したり省略したりすることができ、また、上述のコネクタ33を省略することもできる。 また、外部出力ユニット12,12Aは、信号線29または光検知センサ60からの信号を受けて処理するコンピュータ等の情報処理装置を有することも考えられる。この場合、信号の情報をデータ処理し、処理により得られた情報を示す信号を外部に出力するようにしてもよい。」 (7)図1 図1によれば、信号表示灯1は、柱状であることが見て取れる。 (8)引用発明 前記(1)?(7)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「自動機械、生産ライン、駐車場、危険な場所などに設置され、材料の不足、ワークの詰まり、満車、危険等の各種の状態を信号報知するための信号表示灯であって(【0001】)、 本信号表示灯1は、自動機械等の装置本体2の構造部材3に装着され(【0013】)、 信号表示灯1は、柱状であり(図1)、 信号表示灯1は、発光して信号を表示するための複数の、例えば、3つの表示ユニット11と、装置本体2からの信号に応じた信号を外部へ出力するための外部出力ユニット12と、回路基板21等を有する基部ユニット13と、信号表示灯1の頂部側端部52に配置されるカバー14とを有し(【0014】)、 これら各ユニット11,12,13は、それぞれ別体とされ、この順序で上下方向に沿って並び、上下に積層され、カバー14、表示ユニット11、および外部出力ユニット12は、例えば、これらを貫通する長尺ねじにより基部ユニット13に固定されて、また、長尺ねじを緩めて、固定を解除することで、各ユニット11,12,13を互いに分離でき(【0015】)、 各表示ユニット11は、光を発する光源42を有し(【0028】)、 異なる色の光を放光でき、装置本体2の通常運転時は緑色に点灯、材料切れ時やメンテナンス必要時は黄色に点灯、異常時や緊急時は赤色に点灯し(【0013】)、 信号表示灯1は、複数のリード線5を介して制御回路4に接続され、装置本体2から信号を伝達され、また、電力を供給され(【0013】)、 基部ユニット13は、上述の回路基板21と、この回路基板21を収容し支持する筒状のケース20とを有し、回路基板21は、装置本体2からの信号をリード線5を通して受け、何らの処理も施さずに、表示ユニット11、外部出力ユニット12に伝達し、回路基板21には、表示ユニット11の光源42を点滅させるための回路等が構成され(【0023】)、 外部出力ユニット12の上端部は一方の導電部材27を有し、外部出力ユニット12の下端部は他方の導電部材28を有し、この2つの導電部材27,28は一体に形成され、外部出力ユニット12の両側に隣接するユニット13,11同士を電気的に接続できるようにされている(【0024】) 信号表示灯1。」 2 引用文献2の記載事項 拒絶査定で引用された特開2004-62653号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0013】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。 図1は、本発明の信号表示灯の分解正面図である。信号表示灯は、ヘッドカバー1、表示ユニット2とともに、従来のベースユニットの機能を4つに分解して、ブザーユニット3、点滅ユニット4、電源ユニット5、ベースユニット6を備えている。表示ユニット2は、図1では3段描かれているが、実際には、信号端子の数に相当する段数を用意することができる。」 (2)「【0017】 このように、この連結構造によれば、特別の工具がなくても、ユニットを自由に追加して積層することができる。また一部ユニットを自由に取り外すこともできる。また、この連結構造は飛び出しがないので、外形のデザインを損なわないという利点もある。 図1に戻り、ベースユニット6は信号線接続機能、電源ユニット5は電源変換機能、点滅ユニット4は点滅機能、ブザーユニット63は警報機能をそれぞれ実現するためのものである。」 (3)「【0019】 電源ユニット5は、商用電源を低圧(AC/DC24V)に落とす電源回路51を備えている。この他にAC/DC12V対応のものもある。また、AC100V,120V,220V,90?250Vなどに対応する高圧電源ユニットもある。 点滅ユニット4は、表示ユニットにおける表示を点滅させる場合に必要な接点オンオフ信号を生成する点滅回路41を備えている。 ブザーユニット3は、警報発生回路31を備えている。警報発生回路31は、単音、あるいは複数種類の音色を発生する。入力端子は、音色に応じて2種類あり、いずれかを信号端子1?6に接続する。 【0020】 表示ユニット2は、LED、電球、フラッシュ等からなる表示回路21を備えている。表示回路21の2入力端子のうちの1つは、前記点滅回路41を通す端子又は通さない端子のいずれかに選択的に接続される。他の1つは、信号端子1?6のいずれかに接続される。 この表示ユニット2は、前述したように、信号端子の数(6)に相当する段数を用意することができる。」 (4)「【0023】 本発明の信号表示灯は、工場などさまざまな場所における機械、設備の動作や状態を表示する表示器として単独で用いることもできるが、ASiやDevice NETなどのネットワークに対応したユニット(対応する回路基板を含む)を作り、このユニットを信号表示灯に組み込めば、当該ネットワークに信号表示灯を接続して、当該ネットワークからの情報を解析して表示ユニットに供給する環境をもたらすことができる。」 (5)文献2記載技術 前記(1)?(4)によれば、引用文献2には以下の技術(以下、「文献2記載技術」という。)が記載されている。 「ヘッドカバー1、表示ユニット2とともに、ブザーユニット3、点滅ユニット4、電源ユニット5、ベースユニット6を備えている信号表示灯であって(【0013】)、 特別の工具がなくても、ユニットを自由に追加して積層することができ(【0017】)、 点滅ユニット4は、表示ユニットにおける表示を点滅させる場合に必要な接点オンオフ信号を生成する点滅回路41を備え(【0019】)、 表示ユニット2は、LED、電球、フラッシュ等からなる表示回路21を備え(【0020】)、 信号表示灯は、工場などさまざまな場所における機械、設備の動作や状態を表示する表示器として単独で用いることもでき(【0023】)、 ネットワークに対応したユニットを作り、このユニットを信号表示灯に組み込めば、当該ネットワークに信号表示灯を接続して、当該ネットワークからの情報を解析して表示ユニットに供給する環境をもたらすことができる(【0023】) 信号表示灯。」 第4 本願発明1と引用発明との対比 1 引用発明の「信号表示灯1」は、「信号灯」といえる。 引用発明の「信号表示灯1」は、「柱状であり」、「3つの表示ユニット11」、「外部出力ユニット12」、「基部ユニット13」及び「カバー14」を有しており、「これら各ユニット11,12,13は、それぞれ別体とされ」、「カバー14、表示ユニット11、および外部出力ユニット12は、例えば、これらを貫通する長尺ねじにより基部ユニット13に固定されて、また、長尺ねじを緩めて、固定を解除することで、各ユニット11,12,13を互いに分離でき」るから、モジュール式柱状信号灯といえる。 引用発明の「信号表示灯1」の「表示ユニット11」は、「発光して信号を表示するための」ものであるから、該「信号表示灯1」は光信号装置であるといえる。 以上によれば、本願発明1と引用発明とは、「光信号装置、具体的には信号灯又はモジュール式柱状信号灯(1)等であ」る点で共通する。 2 引用発明の「光を発する光源42」は、本願発明1の「少なくとも1つの発光素子(20)」に相当する。 そして、引用発明の「表示ユニット11」は、「光源42」を有し、「発光して信号を表示するための」ものであるから、本願発明1の「発光ユニット(2)」と引用発明の「表示ユニット11」とは「少なくとも1つの発光素子(20)を備える、少なくとも1つの発光ユニット(2)」である点で共通する。 引用発明の「信号」は「自動機械、生産ライン、駐車場、危険な場所などに設置され、材料の不足、ワークの詰まり、満車、危険等の各種の状態を信号報知する」ものと認められる。前記「材料の不足、ワークの詰まり、満車、危険の各種の状態」はそれぞれ動作状態の一種であって、さらには、装置本体2の通常運転時は緑色に点灯、材料切れ時やメンテナンス必要時は黄色に点灯、異常時や緊急時は赤色に点灯するから、「複数の異なる動作状態を光学的に表示」しており、引用発明の「自動機械、生産ライン、駐車場、危険な場所など」は本願発明1の「機械、設備等の技術的装置(30)」に相当するから、本願発明1の「発光ユニット(2)」と引用発明の「表示ユニット11」とは「機械、設備等の技術的装置(30)の1つ又は複数の異なる動作状態を光学的に表示するための」ものである点で共通する。 以上によれば、本願発明1と引用発明とは「機械、設備等の技術的装置(30)の1つ又は複数の異なる動作状態を光学的に表示するための、少なくとも1つの発光素子(20)を備える、少なくとも1つの発光ユニット(2)」を備える点で一致する。 3 引用発明の「装置本体2」は、「自動機械等の装置本体」であるから、「自動機械、生産ライン、駐車場、危険な場所など」の一種であると認められ、本願発明1の「機械、設備等の技術的装置(30)」に相当する。 引用発明の「信号表示灯1」は、「複数のリード線5を介して制御回路4に接続され、装置本体2から信号を伝達され、また、電力を供給され」るところ、「信号表示灯1」の「基部ユニット13」が有する「回路基板21」は、「装置本体2からの信号をリード線5を通して受け、何らの処理も施さずに、表示ユニット11、外部出力ユニット12に伝達」するのである。よって、該「基部ユニット13」は、「装置本体2」と電気的及び/又は電子的に接続又は接触させるものであると認められ、この点において、本願発明1の「少なくとも1つの電気的及び/又は電子的接続ユニット(27)」に相当する。 以上によれば、本願発明1と引用発明とは「少なくとも前記技術的装置(30)と接続又は接触させるために設けられた、少なくとも1つの電気的及び/又は電子的接続ユニット(27)」を備える点で一致する。 4 引用発明において「これら各ユニット11,12,13は、それぞれ別体とされ、この順序で上下方向に沿って並び、上下に積層され」ているから、「外部出力ユニット12」は、「表示ユニット11」と「基部ユニット13」との間に設けられている点で、本願発明1の「少なくとも1つの電気的及び/又は電子的連結ユニット(12)」に対応する。 また、引用発明の「外部出力ユニット12」は、導電部材27及び導電部材28を有し「この2つの導電部材27,28は一体に形成され、外部出力ユニット12の両側に隣接するユニット13,11同士を電気的に接続できるようにされている」から、「基部ユニット13」を「表示ユニット11」と電気的及び/又は電子的に連結していると認められる。 以上によれば、本願発明1と引用発明とは「前記接続ユニット(27)を前記発光ユニット(2)に電気的及び/又は電子的に連結するために前記接続ユニット(27)と前記発光ユニット(2)との間に設けられた、少なくとも1つの電気的及び/又は電子的連結ユニット(12)」を備える点で一致する。 5 前記1?4によれば、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 〈一致点〉 「 光信号装置、具体的には信号灯又はモジュール式柱状信号灯(1)等であって、 機械、設備等の技術的装置(30)の1つ又は複数の異なる動作状態を光学的に表示するための、少なくとも1つの発光素子(20)を備える、少なくとも1つの発光ユニット(2)と、 少なくとも前記技術的装置(30)と接続又は接触させるために設けられた、少なくとも1つの電気的及び/又は電子的接続ユニット(27)と、 前記接続ユニット(27)を前記発光ユニット(2)に電気的及び/又は電子的に連結するために前記接続ユニット(27)と前記発光ユニット(2)との間に設けられた、少なくとも1つの電気的及び/又は電子的連結ユニット(12)とを備えている 光信号装置。」である点。 〈相違点〉 本願発明1の「前記連結ユニット(12)」は「前記発光ユニット(2)と前記接続ユニット(27)との間において電気的及び/又は電子的連結を確立及び/又は遮断するための、少なくとも2つの電気的及び/又は電子的スイッチング素子(21、22)を有し」ているのに対し、引用発明の「外部出力ユニット12」はそのようなスイッチング素子を有していない点。 上記に伴い、本願発明1は「前記少なくとも2つの電気的及び/又は電子的スイッチング素子(21、22)のうち少なくとも1つが、前記技術的装置(30)とは別個のアクチュエータ(8)の駆動要素(28)を切り替えるためのアクチュエータスイッチ(22)の形態をとっており、前記アクチュエータ(8)は、電気信号又はエネルギーを機械的運動又は他の物理的変数に変換するコンバータである」ことが特定されているが、引用発明はこのようなことは特定されておらず、アクチュエータスイッチもアクチュエータも駆動要素も有していない点。 第5 判断 上記相違点について判断する。 1 引用文献1の記載 引用発明の「外部出力ユニット12」(本願発明1の「連結ユニット(12)」に対応。)について、引用文献1には、「表示ユニット11」との間の電気的・電子的連結を確立・遮断するためのスイッチング素子を有することは記載も示唆もない。 さらに、引用文献1には、「外部出力ユニット12」が「外部出力インタフェース32」を有すること(【0024】)、「外部出力ユニット12」から「生産ラインの統括管理装置9」、「スピーカを含む報知手段8A」及び「文字、図形等の情報を表示する表示装置8B等」に信号を出力すること(【0026】)、並びに、「外部出力ユニット12」が「コンピュータ等の情報処理装置」を有すること(【0058】)が記載されているが、「装置本体2」とは別個のアクチュエータに信号を送信することについては記載も示唆もないし、アクチュエータの駆動要素を切り替えるためのアクチュエータスイッチについても記載も示唆もない。 また、引用発明は「回路基板21」に「表示ユニット11の光源42を点滅させるための回路」が構成されているが、「回路基板21」は、「基部ユニット13」に設けられており、「外部出力ユニット12」に設けることは、引用文献1に記載も示唆もない。 2 引用文献2の記載 前記第3、2(5)のとおり、文献2記載技術の「点滅ユニット4」は、「表示ユニットにおける表示を点滅させる場合に必要な接点オンオフ信号を生成する点滅回路41を備え」るものであるが、引用文献2には、アクチュエータの駆動要素を切り替えるためのアクチュエータスイッチについては記載も示唆もない。 さらに、文献2記載技術の「ネットワークに対応したユニット」については、「当該ネットワークからの情報を解析して表示ユニットに供給する環境をもたらす」に過ぎず、引用文献2には、機械、設備とは別個のアクチュエータについて記載も示唆もなく、したがって、「ネットワークに対応したユニット」が、該アクチュエータの駆動要素を切り替えるためのアクチュエータスイッチを備えることについても記載も示唆もない。 3 相違点の容易想到性 前記1及び2によれば、引用文献1及び引用文献2のいずれにも、引用発明の「外部出力ユニット12」に対して、「表示ユニット11」と「基部ユニット13」との間において電気的及び/又は電子的連結を確立及び/又は遮断するための、少なくとも2つのスイッチング素子を設け、前記スイッチング素子のうち少なくとも1つが、「装置本体2」とは別個のアクチュエータの駆動要素を切り替えるためのアクチュエータスイッチの形態をとらせることについて、何らの記載も示唆もないから、仮に引用発明及び文献2記載技術を組み合わせることができたとしても、本願発明1の相違点に係る構成には至らない。 4 小括 前記3によれば、本願発明1は、引用発明及び文献2記載技術から容易に想到し得るものではない。 第6 本願発明2?10についての判断 本願発明2?10は、いずれも、本願発明1の従属発明であり、前記相違点に係る本願発明1と同一の構成を発明特定事項として含むため、前記第5に示したとおり、引用発明及び文献2記載技術から容易に想到し得るものではない。 第7 当審拒絶理由の概要及び該拒絶理由に対する判断 1 理由1(明確性) 当審拒絶理由の理由1は、請求項1?10に係る発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができない、というものである。 しかしながら、令和2年12月23日の手続補正により解消された。 2 理由2(サポート要件) 当審拒絶理由の理由2は、請求項2?10に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができない、というものである。 しかしながら、令和2年12月23日の手続補正により解消された。 3 理由3(進歩性) 当審拒絶理由の理由3は、本願の請求項8に係る発明は、引用発明及び文献2記載技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 しかしながら、前記第5及び第6のとおりであるから、当審拒絶理由の理由3により本願を拒絶することはできない。 第8 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定の理由は、本願の請求項1?10に係る発明は、引用発明及び文献2記載技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 しかしながら、前記第5及び第6のとおりであるから、原査定を維持することはできない。 第9 むすび 前記第5及び第6のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び文献2記載技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 前記第8のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-03-18 |
出願番号 | 特願2015-189860(P2015-189860) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G08B)
P 1 8・ 537- WY (G08B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 西巻 正臣 |
特許庁審判長 |
吉田 隆之 |
特許庁審判官 |
谷岡 佳彦 丸山 高政 |
発明の名称 | 光信号装置 |
代理人 | 名古屋国際特許業務法人 |