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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1372328
審判番号 不服2020-3177  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-06 
確定日 2021-04-13 
事件の表示 特願2015-165831「偏光子」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 2日出願公開、特開2017- 44793、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2015-165831号(以下、「本件出願」という。)は、平成27年8月25日を出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 元年 5月23日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 7月23日 :意見書
令和 元年 7月23日 :手続補正書
令和 元年12月 9日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 2年 3月 6日 :審判請求書
令和 2年 3月 6日 :手続補正書
令和 2年10月28日付け:拒絶理由通知書
令和 2年12月 2日 :意見書
令和 2年12月 2日 :手続補正書
(この手続補正書による補正を、以下「本件補正」という。)

2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1,3?5係る発明(令和元年7月23日にした手続補正後のもの)は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用例1:特表2014-527203号公報
引用例6:国際公開第2015/060941号
引用例7:国際公開第2015/060943号
引用例8:特開2015-118369号公報
引用例9:特開2014-197189号公報
引用例10:国際公開第2015/108075号
(引用例1は、請求項1、3?5に係る発明についての主引用例である。引用例6、あるいは引用例7は、請求項1、3、5に係る発明についての主引用例である。引用例8?10は、周知技術を示すために挙げられたものである。なお、拒絶査定においては、原査定の理由ではないとしつつ、請求項2に対して、引用文献10を主引用例とした29条2項の拒絶の理由がある旨の付記がある。)

3 当合議体が通知した拒絶の理由
令和2年10月28日付け拒絶理由通知書において当合議体が通知した拒絶の理由は、概略、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、というものである。

4 本願発明
本件出願の請求項1?3に係る発明(以下、「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「 【請求項1】
透明基板と、
この透明基板上に互いに平行に設けられた複数の細線とを備え、
前記複数の細線は、所望数の細線毎に単位細線領域を形成し、各単位細線領域内において、各細線の間隙が増減し、かつ各細線の幅が増減し、各細線の間隙および各細線の幅の両者が同時に変化し、
前記複数の細線はモリブデンシリサイドを含有する材料から構成されていることを特徴とする偏光子。
【請求項2】
前記複数の細線は偏光領域を構成し、前記透明基材上における前記偏光領域の外周にはモリブデンシリサイドを含有する材料から構成されている遮光膜が設けられている、請求項1記載の偏光子。
【請求項3】
各単位細線領域は、互いに同一の領域幅を有することを特徴とする請求項1または2記載の偏光子。」

第2 当合議体の判断
1 引用例1を主引用例とする場合
(1) 引用例1の記載及び引用発明
ア 引用例1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1(特表2014-527203号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す。
(ア) 「【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ナノメートルサイズの素子(たとえば、ワイヤグリッド偏光子)は、隣接するフィーチャ間の距離、または、フィーチャ間のピッチによってパフォーマンスが制約を受ける。たとえば、電磁放射を効果的に偏光するためには、ワイヤグリッド偏光子のピッチは、電磁放射の波長の半分未満とするべきである。可視光の波長の半分未満のピッチをもつワイヤグリッド偏光子が、既に開示されている。・・・略・・・より高い偏光のコントラスト、および、より小さい波長の偏光を実現するためには(たとえば紫外線光およびX線の偏光)、より小さいピッチが必要となる。
・・・略・・・
【0002】
ワイヤグリッド偏光子の望ましい特徴は、1つの偏光子をもつ電磁放射の幅広いスペクトルを偏光することである。ワイヤグリッド偏光子は、通常、同じ高さのワイヤで形成される。多くの波長用にワイヤグリッド偏光子を調節して、より滑らかなTs曲線を作成するためには、ワイヤの高さが可変であるワイヤグリッド偏光子を形成すると有用だと思われる。異なる高さのワイヤをもつワイヤグリッド偏光子のための方法が提案されている。
・・・略・・・
【0003】
ワイヤグリッド偏光子は、通常、1つの平面沿いに設けられた複数のワイヤで形成される。複数の平面沿いに設けられた複数のワイヤをもつワイヤグリッド偏光子を形成すると有用であると思われる。複数の平面沿いに設けられたワイヤをもつワイヤグリッド偏光子は、複数の波長用の調節が可能であり、より滑らかなTs曲線の作成のために有用である。
・・・略・・・
【0004】
通常、ワイヤグリッド偏光子は、全体が1つの材料からなるワイヤで形成される。複数の波長用にワイヤグリッド偏光子を調節するためには、一部のワイヤが1つの材料からなり、他のワイヤが別の材料からなるワイヤグリッド偏光子が有用であると思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
隣接するフィーチャ同士の間の間隔が非常に小さい(つまりピッチが小さい)ナノメートルサイズの素子(ワイヤグリッド偏光子など)を作成すると有利であることが認識されている。高さが可変のワイヤをもち、複数の平面に設けられた複数のワイヤをもち、および/または、ワイヤが隣接するワイヤと異なる材料からなっていてよいワイヤアレイをもつ、ナノメートルサイズの素子(ワイヤグリッド偏光子など)を作成すると有利であることが認識されている。
【0006】
ここに記載する発明は、複数の用途を持っていてよいが、主要な用途はワイヤグリッド偏光子としての用途である。簡略にするために、主に、「ワイヤグリッド偏光子」または「偏光子」という用語が利用されているが、本発明は他の用途にも利用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は、基板上に設けられた、平行で細長いワイヤのアレイを含むワイヤグリッド偏光子に関しており、ワイヤは、80ナノメートル未満のピッチを有している。このような小さいピッチをもつこのワイヤグリッド偏光子は、ここに記載する様々な方法で作成可能である。
・・・略・・・
【0009】
別の実施形態として、本発明は、基板の上に設けられた複数群の平行で細長いワイヤの繰り返しパターンをもつ偏光子を対象としている。細長いワイヤの各群は、少なくとも3つのワイヤを含む。各群内の少なくとも1つのワイヤは、各群の最も外側のワイヤよりも3ナノメートル("nm")を超える値分、高い。各群の最も外側のワイヤ間の距離は、約1マイクロメートル未満である。本実施形態は、あるワイヤが他のワイヤより高い、高さが可変のワイヤの利点をもつ。ワイヤは、非常に精細なピッチを有することもできる。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、基板の上に設けられ、エッチング反応の副産物である材料を含む、平行で細長いワイヤ群のアレイをもつ偏光子に関している。各群の最も外側のワイヤ間の距離は、約1マイクロメートル未満である。本実施形態は、エッチング反応により形成されるワイヤの利点を有している。ワイヤは、非常に精細なピッチを有することもできる。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、偏光子の製造方法にも関している。方法は、ベースの上にレジストを形成し、次に、レジストをパターニングして、レジスト幅を生成する。次にベースを等方性エッチングして、レジストの外側の横方向においてベース内へ垂直方向に、且つ、レジストの下に水平方向に、エッチングを行って、レジストの下に脚部を残す。脚部の垂直側壁に、エッチング再堆積を行うことで、エッチング再堆積ワイヤを作成する。レジスト外のベースも、垂直にエッチングして、ベースの下部ステップを残すことができる。エッチング再堆積が、ベースの下部ステップの垂直側壁に形成されてよく、これにより、さらなるエッチング再堆積ワイヤが形成される。本実施形態は、エッチング反応が生成するワイヤという利点を有する。ワイヤは、非常に精細なピッチを有することもできる。
・・・略・・・
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態におけるワイヤグリッド偏光子の概略断面側面図である。
・・・略・・・
【図5】本発明の一実施形態におけるワイヤグリッド偏光子の概略断面側面図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるワイヤグリッド偏光子の製造の一ステップを示す概略断面側面図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるワイヤグリッド偏光子の製造の一ステップを示す概略断面側面図である。
【図8】本発明の一実施形態におけるワイヤグリッド偏光子の製造の一ステップを示す概略断面側面図である。
【図9】本発明の一実施形態におけるワイヤグリッド偏光子の製造の一ステップを示す概略断面側面図である。
【図10】本発明の一実施形態におけるワイヤグリッド偏光子の製造の一ステップを示す概略断面側面図である。
【図11】本発明の一実施形態におけるワイヤグリッド偏光子の概略断面側面図である。」

(イ) 「【発明を実施するための形態】
【0015】
<定義>
この明細書および添付請求項では、「電磁放射」という用語は、電磁スペクトルの赤外線、可視光、紫外線、および、x線領域を含む。
・ここで利用される、ワイヤ、ロッド、レール、およびリブという用語は、長さが幅または高さよりも実質的に大きい様々な細長い構造のことを示す。ワイヤ、ロッド、レール、およびリブは、様々な断面形状を有してよい。ワイヤ、ロッド、およびレールは、ワイヤグリッド偏光子の偏光構造のことを示し、リブは、ワイヤの細長い支持構造のことを示してよい。
・ここで利用される「実質的」という用語は、動作、特徴、特性、状態、構造、アイテム、または結果が、完全なまたは略完全な程度または度合いであることを示す。たとえば、「実質的に」囲まれているオブジェクトという表現は、該オブジェクトが、完全に囲まれている、または略完全に囲まれていることを示す。絶対的に完全な状態からの許容される厳密なずれの程度は、場合によって、文脈に応じて変化してよい。しかし、一般的には、完全さに近い程度は(nearness of completion)、絶対的かつ全体的な完全さが得られた場合と、全体的な結果が同じであるようなものである。「実質的」という用語の利用は、動作、特徴、特性、状態、構造、アイテム、または結果が完全にない、または略完全にないこと、といった否定的な意味でも利用可能である。
・・・略・・・
【0017】
<精細なピッチのワイヤグリッド偏光子>
図1に示す偏光子10は、基板11に設けられた、平行で細長いワイヤ12のアレイを含む。基板11は、利用される電磁放射の波長を透過することができる。ワイヤは、80ナノメートル未満のピッチを有していてよい。・・・略・・・一実施形態では、ワイヤは55ナノメートル未満の幅wを有してよい。・・・略・・・ピッチが8-85ナノメートルである偏光子は、約16-170ナノメートルの波長を有する電磁放射の偏光に利用されてよい。この電磁放射を偏光するためには、ワイヤ12の材料としては、バナジウムおよびハフニウムが望ましいと思われる。
【0018】
ワイヤ12は、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、三酸化アンチモン、硫化アンチモン、酸化ベリリウム、酸化ビスマス、フッ化ビスマス、窒化ホウ素、酸化ホウ素、硫化カドミウム、テルル化カドミウム、フッ化カルシウム、セリウム酸化物、チオライト、氷晶石、酸化第二銅、塩化第二銅、塩化第一銅、硫化物、ゲルマニウム、二酸化ハフニウム、フッ化ランタン、酸化ランタン、塩化鉛、フッ化鉛、テルル化鉛、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、フッ化ネオジム、酸化ネオジム、酸化ニオブ、酸化プラセオジム、酸化スカンジウム、シリコン、酸化ケイ素、二ケイ酸三酸化物(disilicon trioxide)、シリコンカーバイド、二酸化ケイ素、フッ化ナトリウム、窒化ケイ素、酸化タンタル、五酸化タンタル、テルル、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、炭化チタン、塩化タリウム、タングステン、酸化イットリウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、二酸化ジルコニウム、およびこれらの組み合わせから形成されてよい。
【0019】
<第1のワイヤグリッド偏光子の製造方法>
・・・略・・・
【0024】
<エッチング再堆積によるワイヤグリッド偏光子>
図5に示す偏光子50は、利用される電磁放射の波長を透過することができる基板11を含む。たとえばゲルマニウムを赤外線には利用して、可視光にはシリコンを利用して、水晶を紫外線には利用することができるだろう。平行で細長いワイヤ52の群53の繰り返しパターンを、基板上に設けることができる。ワイヤ52は、入射する電磁放射を偏光することができる材料を含んでいてよい。細長いワイヤ52の各群53が、少なくとも3つのワイヤを含んでよい。各群が、1以上の内側ワイヤ52c(たとえば1以上の中央ワイヤ)と最も外側のワイヤ52oとを含んでよい。内側または中央のワイヤ52cは、最も外側のワイヤ52oよりも、たとえばあるアスペクトでは3nmより高くてよく、別のアスペクトでは、約10nmより高くてよく、別のアスペクトでは、約20nmより高くてよく、別のアスペクトでは、約50nmより高くてよい。最も外側のワイヤ52oの間の距離、したがって、各群53の幅d3は、あるアスペクトでは1マイクロメートル未満であってよく、別のアスペクトでは、約150nm未満であってよく、別のアスペクトでは、約100nm未満であってよく、または、別のアスペクトでは、約50nm未満であってよい。ワイヤ52は、エッチング反応の副産物であってよく、この材料が、用途によっては望ましい場合がある。各群53の幅d3は、後述するようにレジストの幅であってよく、複数のワイヤを1つのレジスト幅について形成することができるので、非常に精細なピッチのワイヤグリッド偏光子を製造することができるようになる。
【0025】
図5は、各グループが4つのワイヤを含む、ワイヤ53aおよび53bの2つの群を示している。各群53の中央の2つのワイヤ52cは、高さが略等しく、両方とも、各群の最も外側のワイヤ52oよりも高くてよい(h1<h2)。一群のワイヤ53の中央のワイヤ52cは、最初の等方性エッチング(1回または複数回)中に最初に形成されることから、中央のワイヤ52cは、グループの外側のワイヤ52cの高さh1より高い高さh2であってよい。それぞれ異なる高さhをもつワイヤをもつことで、それぞれ異なる波長用に偏光子を調節することができるようになり、透過した電磁放射のs分極方位を、入射された電磁放射のスペクトルまたはTs曲線において、平滑化することができるようになる。ワイヤの一部の高さをより高くすることで、偏光子のコントラストを上げ、かつ、他のワイヤの高さを低くすることで、透過率を向上させることができる。
【0026】
一実施形態では、化学機械研磨、フィル・アンド・ポリッシュ(fill and polish)、スピン・オン・バック・エッチ(spin on back etch)、その他の公知の平坦化法によって、中央のワイヤ52cおよび外側のワイヤ52oが、同じ高さhとされてよい(つまりh2=h1)。したがって、中央ワイヤ52cと外側のワイヤ52oとの間の高さの差は、エッチングの強度、期間、および種類、作成するワイヤの高さ、および、ワイヤが平坦化されているか、に応じて、約0nmから約150nmの間であってよく、あるアスペクトでは約3nmを超える値であってよく、別のアスペクトでは約20nmを超える値であってよく、別のアスペクトでは約50nmを超える値であってよい。
【0027】
図5には、ワイヤ幅wが示されている。ワイヤ幅は、該ワイヤ52、薄膜材料および/または基板材料の作成中のエッチングの種類によって、および、隣接するワイヤ同士が組み合わせられて、図11の説明で後述するような1つのワイヤを形成するか、に応じて、決定されてよい。偏光子10のすべてのワイヤ52の最大ワイヤ幅は、あるアスペクトでは約150nm未満であってよく、別のアスペクトでは約50nm未満であってよく、別のアスペクトでは約20nm未満であってよく、別のアスペクトでは約10nm未満であってよい。あるワイヤのワイヤ幅は、隣接するワイヤのワイヤ幅wから、あるアスペクトでは、5nmを超える値分異なっていてよく、別のアスペクトでは、10nmを超える値分異なっていてよく、別のアスペクトでは、20nmを超える値分異なっていてよく、別のアスペクトでは、50nmを超える値分異なっていてよい。
【0028】
ワイヤ群53のワイヤdの間の距離は、レジストの幅およびエッチングの性質および長さに応じて変化してよい。たとえば、最初の等方性エッチングが、横方向に長く(more lateral)、より強固な場合、図5に示すように、群53内の中央ワイヤ52cの間の距離がより短くなる(d2)。中央ワイヤ52cおよび外側のワイヤ52oの間の距離d1は、図6に示すレジスト幅R、中央ワイヤ52c間の距離d2、およびワイヤ幅wに応じていてよい。したがって、上述したパラメータを調節することで、中央ワイヤ52c間の距離d2が最も外側のワイヤと隣接する中央ワイヤとの間の距離d1から、あるアスペクトで約3nmを超える値分異なっていてよく、別のアスペクトでは約10nmを超える値分異なっていてよく、別のアスペクトでは約20nmを超える値分異なっていてよい。言い換えると、d2からd1を差し引いた値の絶対値が、あるアスペクトでは約3nmを超える値であってよく、別のアスペクトでは約10nmを超える値であってよく、別のアスペクトでは約20nmを超える値であってよい。隣接するワイヤ間の最少距離dは、あるアスペクトでは約150nm未満であってよく、別のアスペクトでは約50nm未満であってよく、別のアスペクトでは約20nm未満であってよい。
【0029】
図5に示すように、ピッチPは、1つのワイヤのエッジと、隣接するワイヤの対応するエッジとの間の距離である。隣接するワイヤ間の最小ピッチは、あるアスペクトでは約300nm未満であってよく、別のアスペクトでは約100nm未満であってよく、別のアスペクトでは約50nm未満であってよく、別のアスペクトでは約30nm未満であってよく、別のアスペクトでは約20nm未満であってよい。したがってワイヤのピッチは、レジストのピッチよりずっと小さくてよい(レジストのピッチの約1/4であってもよい)。
【0030】
隣接する群53間の距離d4は、グループの隣接するレジスト61の間の距離d5と最も外側のワイヤ52oの幅w(図6参照)によって決定することができる。この距離d4は、所望の波長用に偏光子を調節するために変更することができる。
【0031】
図6に示すように、本発明の偏光子は、レジスト61をベース63に設けることで形成することができる。ベース63は、単一の材料を含んでもよいし、複数の材料からなる複数の層であってもよい。たとえば一実施形態では、ベース63は、基板11の上に設けられた薄膜層62を含んでよい。薄膜62は、化学気相成長法または物理気相成長法等の方法によって基板11に設けられてよい。薄膜は、単一材料からなる単一の層であってもよいし、それぞれ異なる材料からなる複数の層であってもよい。基板11は、水晶、シリコン、またはゲルマニウム等の可撓性のない材料(rigid material)であってよい。基板11はさらに、ポリマー等の可撓性の材料であってもよい。
【0032】
レジスト61は、パターニングされて、レジスト幅Rが提供されてよい。レジスト幅Rは、あるアスペクトでは約1マイクロメートル未満であってよく、別のアスペクトでは約100ナノメートル未満であってよく、別のアスペクトでは約75ナノメートル未満であってよく、別のアスペクトでは約55ナノメートル未満であってよい。レジスト幅Rは、群の最も外側のワイヤ52c間の距離d3程度(approximate distance d3)であってよい。
【0033】
次に、図7に示すように、等方性エッチングを行い、レジストの外側の横方向においてベース63内へ垂直方向71に、且つ、レジストの下に水平方向72に、エッチングを行って、レジスト61の下に、垂直側壁をもつ脚部73が残る。上述した等方性エッチング、または、後で行われる等方性エッチングは、化学エッチング(etching chemistry)によってエッチング再堆積のために最適化され、脚部73の垂直側壁沿いにエッチング再堆積を行って、エッチング再堆積ワイヤ74を作成することができる。エッチング再堆積ワイヤ74は、偏光ワイヤであってよいので、偏光ワイヤは、エッチング反応の副産物として形成することができる。
【0034】
次に、図8に示すように、異方性エッチングを行って、ベース63内のレジストの外側に、垂直にエッチングを行い71、垂直側壁を持つ下部ステップ83をベース63内に残す。上述した異方性エッチング、または、後で行われる異方性エッチングは、エッチング再堆積のために最適化され、下部ステップの垂直側壁に沿ってエッチング再堆積を行い、さらなるエッチング再堆積ワイヤ84を作成する。
【0035】
ベースおよび/または薄膜の材料およびエッチングの種類に応じて、エッチング再堆積ワイヤ74および84が、金属酸化物、金属合金、金属ハロゲン化物、金属炭化物、および有機金属、またはこれらの組み合わせからなっていてよい。異方性エッチングの前に複数の等方性エッチングを行い、各後続する等方性エッチングに、本質的に前の等方性エッチングよりも少ない等方性を持たせることで、全てのレジスト幅Rについて4を超える数のワイヤが製造される。
【0036】
図9から図10に示すように、異方性エッチングを続け、レジストを除去して、91とワイヤとの間のベース63をエッチングして、101とエッチング再堆積ワイヤ74および84との間のベース63を実質的にまたは完全に除去して、元のレジスト幅Rそれぞれについて、少なくとも4つの別個のエッチング再堆積ワイヤ74および84を残す。
【0037】
図11に示すように、1つのワイヤ群は、中央ワイヤ112cと外側のワイヤ112oとを含む3つのワイヤを有してよい。この構造の製造方法は、脚部73が2つの中央ワイヤが望ましい場合より小さいことを除いて、上述したものに類似している。したがって、脚部73の両側からエッチング再堆積を始めるが、図5に示すように2つの中央ワイヤ52cではなくて、1つの中央ワイヤ112cを残して、脚部73が実質的にまたは完全にエッチングにより除去される。1つの中央ワイヤ112cは、少なくとも4つのワイヤをもつ構造について上述したように、外側のワイヤ112oより高くてもよいし、または、外側のワイヤと実質的に同じ高さであってもよい。中央ワイヤが収束して、異方性エッチングの前に複数の等方性エッチングを行う場合には、各群に少なくとも5つの奇数の数のワイヤを持つ構造があってよい。
【0038】
群のワイヤの幅の間に大きな差があることが望ましい場合には、各群の中央に1つのワイヤをもつ構造が有利だろう。図11に示すように、中央ワイヤ72cの幅w1は、群の外側のワイヤ72oの幅w2より実質的に広い。
【0039】
<マルチステップのワイヤグリッド偏光子>
・・・略・・・
【0057】
リブを作成した後に、レジストを除去して、構造の表面を被膜Cで覆う(図22参照)。被膜は等角、非等角、分割、原子層堆積法、スピンオン法(spin on)、またはエッチング再堆積法(etch redeposition)であってよい。
・・・略・・・
【0063】
上述した構成は、本発明の原理の適用を例示したに過ぎない。複数の変形例および変更例である構成が、本発明の範囲および精神を逸脱しない範囲で可能である。本発明は図面に示し、上で、現在最も現実的と思われるものおよび本発明の好適な実施形態を参照して完全に詳述したが、当業者には、複数の変形例が、ここに記載した本発明の原理および思想を逸脱せずに可能である。」

(ウ) 「【図1】



(エ) 「【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】



イ 引用発明
(ア) 引用例1の【0024】?【0038】には、【図5】?【図11】と共に、「エッチング再堆積によるワイヤグリッド偏光子」及び当該「ワイヤグリッド偏光子の製造」方法が記載されている。

(イ) 【図5】に示された「ワイヤグリッド偏光子」について、引用例1の【0025】には、「一群のワイヤ53の」「中央のワイヤ」は「外側のワイヤ」「の高さ」「より高い高さ」「であってよい」ことが記載されている。
また、【図5】に示された「ワイヤ幅w」について、引用例1の【0027】には、「ワイヤ幅は、該ワイヤ52、薄膜材料および/または基板材料の作成中のエッチングの種類によって」「決定されてよい」ことが記載されている。
さらに、引用例1の【0028】には、「ワイヤ群53のワイヤdの間の距離は、レジストの幅およびエッチングの性質および長さに応じて変化してよい」ことが記載されている。

(ウ) 上記ア(ア)?(エ)、上記(ア)、(イ)及び引用例1の【0031】?【0036】の「エッチング再堆積によるワイヤグリッド偏光子」の製造に係る記載からみて、引用例1には、【0031】?【0036】に記載の各工程によって形成された「ワイヤグリッド偏光子」の発明(以下、「引用発明」という。)として、次の発明が記載されていると認められる。

「 レジスト61をベース63に設ける工程、ここで、ベース63は、基板11の上に設けられた薄膜層62を含み、
レジスト61をパターニングして、レジスト幅Rを提供する工程、
等方性エッチングを行い、レジストの外側の横方向においてベース63内へ垂直方向71に、かつ、レジストの下に水平方向72に、エッチングを行って、レジスト61の下に、垂直側壁をもつ脚部73を残し、脚部73の垂直側壁沿いにエッチング再堆積を行って、エッチング再堆積ワイヤ74を作成する工程、
異方性エッチングを行って、ベース63内のレジストの外側に、垂直にエッチングを行い、垂直側壁を持つ下部ステップ83をベース63内に残し、下部ステップの垂直側壁に沿ってエッチング再堆積を行い、さらなるエッチング再堆積ワイヤ84を作成する工程、
異方性エッチングを続け、レジストを除去し、エッチング再堆積ワイヤ74及び84との間のベース63を完全に除去して、元のレジスト幅Rそれぞれについて、4つの別個のエッチング再堆積ワイヤ74及び84を残す工程によって形成されたワイヤグリッド偏光子であって、
ワイヤ群53の中央のワイヤは、外側のワイヤの高さより高い高さであってよく、
ワイヤ幅は、ワイヤ、薄膜材料及び/又は基板材料の作成中のエッチングの種類によって決定されてよく、
ワイヤ群53のワイヤの間の距離は、レジストの幅及びエッチングの性質及び長さに応じて変化してよい、
ワイヤグリッド偏光子。」
(当合議体注:「一群のワイヤ53」及び「ワイヤ群53」との記載を、「ワイヤ群53」に統一して記載している。)

(2) 対比
ア 対比
本願発明1と引用発明を対比すると以下のとおりとなる。
(ア) 透明基板
引用発明の「基板11」と、本願発明1の「透明基板」とは、「基板」である点で共通する。

(イ)複数の細線、単位細線領域
a 引用発明の形成工程は、上記(1)イ(ウ)に記載のとおりである。

b 引用発明の形成工程からみて、引用発明においては、「異方性エッチングを続け、レジストを除去し、エッチング再堆積ワイヤ74及び84との間のベース63を完全に除去して、元のレジスト幅Rそれぞれについて、4つの別個のエッチング再堆積ワイヤ74及び84を残す工程」により、(「ベース63を完全に除去し」た)「基板11」上に、(「除去」される前の)「元のレジスト幅Rそれぞれについて」、「4つの別個のエッチング再堆積ワイヤ74及び84」がそれぞれ設けられていると理解できる(当合議体注:【図10】からも理解できることである。)。

c 引用例1でいう「ワイヤ」は、「長さが幅または高さよりも実質的に大きい様々な細長い構造のことを示す」(引用例1の【0015】)。
そうすると、引用発明の、「基板11」上に「元のレジスト幅Rそれぞれについて」設けられている、「4つの別個のエッチング再堆積ワイヤ74及び84」のそれぞれは、本願発明1の「細線」に相当する。
また、上記(ア)より、引用発明の「ワイヤグリッド偏光子」と、本願発明1の「偏光子」は、「この」「基板上に」「設けられた複数の細線とを備え」ている点で共通する。

d 上記bとcより、引用発明においては、「元のレジスト幅Rそれぞれ」に対応して、「ワイヤ群53」として、「基板上11」に設けられた「4つの別個のエッチング再堆積ワイヤ74及び84」(4本のエッチング再堆積ワイヤ)毎に、個々の単位ワイヤ(細線)領域を形成しているということができる(当合議体注:【0024】の「平行で細長いワイヤ52の群53の繰り返しパターンを、基板上に設けることができる。」との記載、【図10】からも確認できる。)。
そうすると、引用発明の「ワイヤグリッド偏光子」と、本願発明1の「偏光子」は、「前記複数の細線は、所望数の細線毎に単位細線領域を形成し」ている点で共通する。

(ウ) 偏光子
上記(ア)及び(イ)の対比結果並びに「ワイヤグリッド偏光子」という用語から理解される機能より、引用発明の「ワイヤグリッド偏光子」は、本願発明1の「偏光子」に相当する。また、引用発明の「ワイヤグリッド偏光子」と、本願発明1の「偏光子」とは、「透明基板と」、「この」「基板上に」「設けられた複数の細線とを備え」ている点で共通する。

イ 一致点及び相違点
(ア) 一致点
本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。
「 基板と、
この透明基板上に設けられた複数の細線とを備え、
前記複数の細線は、所望数の細線毎に単位細線領域を形成した、
偏光子。」

(イ) 相違点
本願発明1と引用発明は、次の点で相違する、又は一応相違する。
(相違点1)
「基板」が、本願発明1は、「透明」であるのに対して、引用発明は、この点が、一応、明らかでない点。

(相違点2)
「複数の細線」が、本願発明1は、「互いに平行に設けられ」ているのに対して、引用発明は、この点が、一応、明らかでない点。

(相違点3)
「複数の細線」が、本願発明1は、「各単位細線領域内において、各細線の間隙が増減し、かつ各細線の幅が増減し、各細線の間隙および各細線の幅の両者が同時に変化」するものであるのに対し、引用発明は、「ワイヤ幅は、ワイヤ、薄膜材料及び/又は基板材料の作成中のエッチングの種類によって決定されてよく」、「ワイヤ群53のワイヤの間の距離は、レジストの幅及びエッチングの性質及び長さに応じて変化してよい」点。

(相違点4)
「複数の細線」が、本願発明1は、「モリブデンシリサイドを含有する材料から構成されている」のに対して、引用発明は、「エッチング再堆積」された材料から構成されている点。

(3) 判断
ア 事案に鑑み、相違点3についてまず検討する。
(ア)引用例1の【0001】、【0002】、【0004】及び【0005】等の記載からみて、引用発明の発明が解決しようとする課題は、[A]隣接するフィーチャ同士の間の間隔が非常に小さいナノメートルサイズのワイヤグリッド偏光子(素子)を作成すること、及び、[B]高さが可変のワイヤ、あるいは、異なる材料からなるワイヤにより、ワイヤグリッド偏光子(素子)を、複数の波長用の調節を可能とする、より滑らかなTs曲線を作成する(すなわち、広帯域化する)ことにあると認められる。

(イ)ここで、引用発明は、「ワイヤ幅は、ワイヤ、薄膜材料及び/又は基板材料の作成中のエッチングの種類によって決定されてよ」いものである。そして、引用例1の【0027】には、「ワイヤ幅」に関し、「あるワイヤのワイヤ幅は、隣接するワイヤのワイヤ幅wから、あるアスペクトでは、5nmを超える値分異なっていてよく、別のアスペクトでは、10nmを超える値分異なっていてよく、別のアスペクトでは、20nmを超える値分異なっていてよく、別のアスペクトでは、50nmを超える値分異なっていてよい。」と記載されている。
また、引用発明は、「ワイヤの間の距離は、レジストの幅及びエッチングの性質及び長さに応じて変化してよい」ものである。そして、引用例1の【0028】には、「ワイヤの距離」に関し、「たとえば、最初の等方性エッチングが、横方向に長く(more lateral)、より強固な場合、図5に示すように、群53内の中央ワイヤ52cの間の距離がより短くなる(d2)。中央ワイヤ52cおよび外側のワイヤ52oの間の距離d1は、図6に示すレジスト幅R、中央ワイヤ52c間の距離d2、およびワイヤ幅wに応じていてよい。」及び「したがって、上述したパラメータを調節することで、中央ワイヤ52c間の距離d2が最も外側のワイヤと隣接する中央ワイヤとの間の距離d1から、あるアスペクトで約3nmを超える値分異なっていてよく、別のアスペクトでは約10nmを超える値分異なっていてよく、別のアスペクトでは約20nmを超える値分異なっていてよい。言い換えると、d2からd1を差し引いた値の絶対値が、あるアスペクトでは約3nmを超える値であってよく、別のアスペクトでは約10nmを超える値であってよく、別のアスペクトでは約20nmを超える値であってよい。隣接するワイヤ間の最少距離dは、あるアスペクトでは約150nm未満であってよく、別のアスペクトでは約50nm未満であってよく、別のアスペクトでは約20nm未満であってよい。」と記載されている。

(ウ)引用発明の形成工程からみて、引用発明の「4つの別個のエッチング再堆積ワイヤ74及び84」は、「エッチング再堆積ワイヤ84」、「エッチング再堆積ワイヤ74」、「エッチング再堆積ワイヤ74」及び「エッチング再堆積ワイヤ84」の配列順序となっている(当合議体注:このことは【図10】からも理解できることである。以下、これらの4本のワイヤを区別するため、【図10】の向かって左から順に「ワイヤA」、「ワイヤB」、「ワイヤC」及び「ワイヤD」という。)。
そして、上記(イ)によれば、引用例1には、引用発明において、隣接するワイヤ間でワイヤ幅を異ならせること(【0027】)や、中央の2本のワイヤ間の距離(d2)を、中央ワイヤとその外側のワイヤと距離(d1)よりも小さくすること(【0028】)が示唆されている。また、当業者であれば、引用発明において、このようにワイヤ間で幅を変化させること、ワイヤ間の距離を変化させることは、上記(ア)で述べた課題の解決に資するものと理解できる。
そうすると、引用発明の「エッチング再堆積ワイヤ74」の幅と「エッチング再堆積ワイヤ84」の幅を、再堆積エッチングの条件により異なるものとして、最終的に得られる、外側の「ワイヤA」及び「ワイヤD」の幅と中央の「ワイヤB」及び「ワイヤC」の幅が異なる構成とすることまでは、当業者が容易になし得たことである。しかしながら、引用発明の形成工程及び引用例1の記載からみて、引用発明における「等方性エッチング」及び「エッチング再堆積」は、「レジスト幅R」の幅方向に垂直な軸に対して対称に反応が進むと理解される。そうすると、引用発明においては、「ワイヤA」及び「ワイヤD」の幅(wo)と「ワイヤB」及び「ワイヤC」の幅(wi)を異なる幅とすることはできるものの、「ワイヤB」の幅と「ワイヤC」の幅を異なる幅とすること、あるいは、「ワイヤA」の幅と「ワイヤD」の幅とを異なる幅とすることは、対称に反応が進むと理解される形成工程の原理上、無理と考えられる。
してみると、仮に、引用例1の上記(イ)の示唆に基づき、引用発明において、再堆積エッチングの条件を変えたとしても、「ワイヤ幅」については、「wo」、「wi」、「wi」及び「wo」と変化するにとどまるといえる(相違点3に係る本願発明1の、「各細線の間隙が増減し、かつ各細線の幅が増減し、各細線の間隙および各細線の幅の両者が同時に変化し」という構成に到らない。)。
そして、相違点3に係る本願発明1の構成は、拒絶査定の拒絶の理由において引用された他の引用例のいずれにも記載されておらず、また、本件出願前の当業者における周知技術や技術常識でもない。
そうしてみると、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明1の構成とすることが、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

(エ) 引用例1の【0027】の「隣接するワイヤ同士が組み合わせられて、図11の説明で後述するような1つのワイヤを形成する」との記載・示唆(及び【0037】?【0038】、【図11】)を考慮して検討したとしても同様である。
すなわち、この態様では、中央のワイヤとその両側のワイヤとの距離は同じとなるから、各ワイヤ(細線)の間隙及び各ワイヤ(細線)の幅の両者が同時に変化する構成には到らない。

オ 引用例1の【0035】の記載に基づき、引用発明において、「4を超える」「別個のエッチング再堆積ワイヤ」が製造される場合を検討しても、上記(ウ)と同様な理由により、各ワイヤ(細線)の間隙及び各ワイヤ(細線)の幅の両者が同時に変化する構成には到らない。

カ さらに進んで相違点4についても検討する。
拒絶査定の拒絶の理由において引用された特開2015-118369号公報、特開2014-197189号公報及び国際公開第2015/108075号(以下、それぞれを、「引用例8」、「引用例9」及び「引用例10」という。)には、紫外線領域のワイヤグリッド材料として、モリブデンシリサイドを用いることが記載されている。しかしながら、モリブデンシリサイドが、引用発明の「エッチング再堆積ワイヤ74を作成する工程」及び「エッチング再堆積ワイヤ84を作成する工程」において必要とされる「エッチング再堆積」(あるいは、「etch redeposition」)が可能なものであるのかどうか不明である。そして、モリブデンシリサイドがエッチング再堆積性を有することは、本件出願前の当業者における周知技術や技術常識でもない。
そうしてみると、引用発明において、上記相違点4に係る本願発明1の構成とすることが、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

キ 小括
以上のとおりであるから、相違点1及び相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、たとえ当業者といえども、引用例1に記載された発明及び引用例8?10に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるということができない。

(4) 本願発明2及び本願発明3について
本願発明2及び本願発明3は、本願発明1の構成に対して、さらに他の発明特定事項を付加してなる「偏光子」である。
そうしてみると、上記(3)で示した理由と同様な理由により、これら発明についても、たとえ当業者といえども、引用例1に記載された発明及び引用例8?10に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるということができない。

2 引用例6を主引用例とする場合
(1) 引用例6、引用発明6及び対比
本願発明1と、当審拒絶理由で引用された国際公開第2015/060941号(以下、「引用例6」という。)の14頁25行?17頁26行及び図12?図17に記載された「作成方法」によって形成された、10頁2行?14頁23行及び図1に記載された「ワイヤグリッド偏光子10」の発明(以下、「引用発明6」という。)とを対比すると、両者は、少なくとも、以下の相違点6において相違する。
(相違点6)
本願発明1は、「各細線の間隙が増減し、かつ各細線の幅が増減し、各細線の間隙および各細線の幅の両者が同時に変化し」しているのに対して、引用発明6は、そのような特定がなされていない点。

(2) 判断
上記相違点6について検討する。
ア 引用例6には、ワイヤグリッド偏光子の設計に関し、複数のワイヤ(細線)の幅を異ならせること、変化させることは記載も示唆もされていない。
また、引用発明6の形成工程からみて、引用発明6においては、複数のワイヤ(細線)の幅は同一となることから、引用発明6において、複数のワイヤ(細線)間)で幅を異ならせる構成とすることはできない。
たとえ引用例1に、複数のワイヤ間で幅を異ならせることが記載されているとしても、同様である。
さらに、相違点6に係る本願発明1の構成は、拒絶査定の拒絶の理由において引用された他の引用例(引用例7?10)のいずれにも記載されておらず、また、本件出願前の当業者における周知技術や技術常識でもない。
そうしてみると、引用発明6において、相違点6に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

イ 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、たとえ当業者といえども、引用例6に記載された発明及び引用例8?10に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるということができない。

(3) 本願発明2及び本願発明3について
本願発明2及び本願発明3は、本願発明1の構成に対して、さらに他の発明特定事項を付加してなる「偏光子」である。
そうしてみると、上記(2)で示した理由と同様な理由により、これら発明についても、たとえ当業者といえども、引用例6に記載された発明及び引用例8?10に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるということができない。

3 引用例7を主引用例とする場合
(1) 引用例7、引用発明7及び対比
本願発明1と、当審拒絶理由で引用された国際公開第2015/060943号(以下、「引用例7」という。)の12頁5行13頁27行及び図4?図10に記載された「ワイヤグリッド偏光子の作成方法」によって形成された、10頁11行?12頁3行及び図1に記載された「ワイヤグリッド偏光子10」の発明(以下、「引用発明7」という。)とを対比すると、両者は、少なくとも、以下の相違点7において相違する。
(相違点7)
本願発明1は、「各細線の間隙が増減し、かつ各細線の幅が増減し、各細線の間隙および各細線の幅の両者が同時に変化し」しているのに対して、引用発明7は、そのような特定がなされていない点。

(2) 判断
上記相違点7について検討する。
ア 引用例7には、ワイヤグリッド偏光子の設計に関し、複数のワイヤ(細線)の幅を変化させることは記載も示唆もされていない。
また、引用発明7の形成工程からみて、引用発明7においては、複数のワイヤ(細線)の幅は同一となることから、引用発明7において、複数のワイヤ(細線)間)で幅を異ならせる構成とすることはできない。
たとえ引用例1に、複数のワイヤ間で幅を異ならせることが記載されているとしても、同様である。
さらに、相違点7に係る本願発明1の構成は、拒絶査定の拒絶の理由において引用された他の引用例(引用例6、8?10)のいずれにも記載されておらず、また、本件出願前の当業者における周知技術や技術常識でもない。
そうしてみると、引用発明7において、相違点7に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

イ 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、たとえ当業者といえども、引用例7に記載された発明及び引用例8?10に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるということができない。

(3) 本願発明2及び本願発明3について
本願発明2及び本願発明3は、本願発明1の構成に対して、さらに他の発明特定事項を付加してなる「偏光子」である。
そうしてみると、上記(2)で示した理由と同様な理由により、これら発明についても、たとえ当業者といえども、引用例7に記載された発明及び引用例8?10に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるということができない。

第3 原査定の拒絶の理由について
前記「第2」で述べたとおりであるから、原査定の拒絶の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。

第4 当合議体が通知した拒絶の理由について
本件補正により、当合議体が通知した拒絶の理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由及び当合議体が通知した拒絶の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-29 
出願番号 特願2015-165831(P2015-165831)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山▲崎▼ 和子  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 井亀 諭
河原 正
発明の名称 偏光子  
代理人 永井 浩之  
代理人 朝倉 悟  
代理人 中村 行孝  
代理人 堀田 幸裕  
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