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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G06Q
管理番号 1372367
審判番号 無効2019-800033  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-04-15 
確定日 2021-04-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第6309504号発明「プログラム、情報処理装置及び情報処理方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件の特許第6309504号についての手続の経緯は,概略,以下のとおりである。

平成27年12月26日 特許出願(特願2015-255513号)
平成30年 3月23日 特許権設定登録(特許第6309504号)
平成31年 4月15日 本件無効審判請求
令和 元年 7月11日 答弁書
令和 元年10月 1日付け 審理事項通知
令和 元年11月19日 被請求人口頭審理陳述要領書
令和 元年11月20日 請求人口頭審理陳述要領書
令和 元年12月 4日 口頭審理

なお,関連する侵害事件につき,下記の事件が係属している。
東京地裁民事第46部 (平成31年(ワ)第2210号)


第2 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第6309504号の特許請求の範囲の請求項1ないし7に係る特許を無効とする,
審判費用は被請求人の負担とする,
との審決を求める。
(以下,特許第6309504号を「本件特許」という。)

2 答弁の趣旨
本件審判請求は成り立たない,
審判費用は請求人の負担とする,
との審決を求める。


第3 本件発明
本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下,請求項1に係る発明を「本件発明1」といい,その他の請求項に係る発明も同様に称する。また,まとめて「本件発明」ともいう。)は,特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。(なお,(1A)ないし(1F)の分説記号は,被請求人が提出した答弁書等において用いられているものを,また,(2A)ないし(7F)の分説記号は,合議体が便宜上付与したものである。)。

【請求項1】
(1A)患者を識別するための第1識別情報を端末装置より取得する第1取得部と,
(1B)前記第1識別情報と,患者を識別する情報として予め記憶部に記憶された第1識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定部と,
(1C)前記第1識別情報が一致すると判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記端末装置へ出力する第1出力部と,
(1D)前記第1識別情報が一致すると判定した場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部と,
(1E)前記第2識別情報と,前記記憶部に看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部と,
(1F)前記第2識別情報が一致すると判定した場合に,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を前記端末装置へ出力する第2出力部と,
を備える情報処理装置。

【請求項2】
(2A)前記入力画面から入力された,取得した前記状態情報の履歴に基づいて生成された前記患者の状態の変化を示すための変化情報を前記端末装置へ出力する第3出力部をさらに備えた請求項1に記載の情報処理装置。

【請求項3】
(3A)患者を識別するための第1識別情報を端末装置より取得する第1取得ステップと,
(3B)前記第1識別情報と,患者を識別する情報として予め記憶部に記憶された第1識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定ステップと,
(3C)前記第1識別情報が一致すると判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記端末装置へ出力する第1出力ステップと,
(3D)前記第1識別情報が一致すると判定した場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得ステップと,
(3E)前記第2識別情報と,前記記憶部に看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2識別情報とが一致するか否か判定する第2判定ステップと,
(3F)前記第2識別情報が一致すると判定した場合に,前記端末装置において前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を出力する第2出力ステップと,
を含む情報処理方法。

【請求項4】
(4A)患者を識別するための第1識別情報を端末装置より取得する第1取得ステップと,
(4B)前記第1識別情報と,患者を識別する情報として予め記憶部に記憶された第1識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定ステップと,
(4C)前記第1識別情報が一致すると判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記端末装置へ出力する第1出力ステップと,
(4D)前記第1識別情報が一致すると判定した場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得ステップと,
(4E)前記第2識別情報と,前記記憶部に看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2識別情報とが一致するか否か判定する第2判定ステップと,
(4F)前記第2識別情報が一致すると判定した場合に,前記端末装置において前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を出力する第2出力ステップと,
をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。

【請求項5】
(5A)患者を識別するための第1識別情報を取得する第1取得部と,
(5B)前記第1取得部で取得した前記第1識別情報を情報処理装置に送信する第1送信部と,
(5C)前記第1取得部で取得した前記第1識別情報と記憶部に予め記憶された第1識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する表示部と,
(5D)前記患者の医療情報が前記表示部に表示された場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を取得する第2取得部と,
(5E)前記第2取得部で取得した前記第2識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信部と,
を備え,
(5F)前記表示部は,前記第2取得部で取得した前記第2識別情報と記憶部に予め記憶された第2識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を表示する端末装置。

【請求項6】
(6A)患者を識別するための第1識別情報を取得する第1取得ステップと,
(6B)前記第1取得ステップで取得した前記第1識別情報を情報処理装置に送信する第1送信ステップと,
(6C)前記第1取得ステップで取得した前記第1識別情報と記憶部に予め記憶された第1識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,端末装置に表示する第1表示ステップと,
(6D)前記患者の医療情報が表示された場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を取得する第2取得ステップと,
(6E)前記第2取得ステップで取得した前記第2識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信ステップと,
(6F)前記第2取得ステップで取得した前記第2識別情報と記憶部に予め記憶された第2識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を表示する第2表示ステップと,
を含む端末装置の制御方法。

【請求項7】
(7A)患者を識別するための第1識別情報を取得する第1取得ステップと,
(7B)前記第1取得ステップで取得した前記第1識別情報を情報処理装置に送信する第1送信ステップと,
(7C)前記第1取得ステップで取得した前記第1識別情報と記憶部に予め記憶された第1識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,端末装置に表示する第1表示ステップと,
(7D)前記患者の医療情報が表示された場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を取得する第2取得ステップと,
(7E)前記第2取得ステップで取得した前記第2識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信ステップと,
(7F)前記第2取得ステップで取得した前記第2識別情報と記憶部に予め記憶された第2識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を表示する第2表示ステップと,
をコンピュータに実行させる端末装置の制御プログラム。


第4 無効理由

請求人が主張する無効理由は,以下のとおりである。
本件発明は,本件特許の出願日前に頒布された甲第1号証,甲第2号証に記載された発明及び本件特許の出願日当時の周知技術(甲第3号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,請求項1ないし7に係る本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。


第5 証拠方法
1 甲号証
甲第1号証 特開2005-275607号公報
甲第2号証 特開2014-97116号公報
甲第3号証 特開平10-323332号公報

2 乙号証
乙第1号証 特開2015-18461号公報
乙第2号証 厚生労働省,医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第4.2版(抄本),平成25年10月


第6 当事者の主張の概要
1 請求人の主張
(1)対比について
ア ベッドサイド端末識別子及び医療スタッフ識別子の取得と検索(構成要件1A,1D)について
甲第1号証【0107】【0108】【図5】の記載から,甲第1号証の電子カルテサーバ3は,患者を識別するためのベッドサイド端末識別子及び医療スタッフを識別するための医療スタッフ識別子をベッドサイド端末1から取得するベッドサイド端末識別部6及び医療スタッフ取得手段を備える。(審判請求書(以下,「請求書」という。)42頁)。
ベッドサイド端末識別子は,特定の患者を識別するものであるから,「患者を識別するための第1識別情報」に相当する。(請求人口頭審理陳述要領書(以下,「請陳述」という。)5頁)

イ ベッドサイド端末識別子に基づく患者判定(構成要件1B)について
甲第1号証【0108】の記載から,甲第1号証の電子カルテサーバ3は,前記ベッドサイド端末識別子と,予めベッドサイド端末情報記憶部に記憶されたベッドサイド端末識別子とが一致するか否かを判定するベッドサイド端末識別部6を備える。(請求書42頁)
甲第1号証の電子カルテサーバ3は,ベッドサイド端末1からベッドサイド端末識別子,及び,医療スタッフ識別子を受信すると,ベッドサイド端末識別部6を起動し,ベッドサイド端末識別子に対応する患者名をベッドサイド端末情報記憶部7から取得する(S8-3)。(【0108】)
ベッドサイド端末識別子は,特定の患者を識別するものであるから,「患者を識別するための第1識別情報」に相当する。ベッドサイド端末情報記憶部は,電子カルテサーバ3が備えるもので,ベッドサイド端末識別子と患者名とを対応させて記憶している。この記憶されたベッドサイド端末識別子は,「予め記憶部に記憶された第1識別情報」に相当する。ベッドサイド端末識別部は,取得した第1識別情報とあらかじめ記憶された第1識別情報とが一致するか否かを判定し,一致すると判定すると対応する患者名を取得するから,「第1判定部」に相当する(以下,「患者判定処理」ということがある)。(請陳述5頁)

ウ 患者の診療情報の出力(構成要件1C)について
甲第1号証【0027】?【0029】,【0118】の記載から,甲第1号証の電子カルテサーバ3は,前記ベッドサイド端末識別子が一致すると判定した場合,前記ベッドサイド端末識別子に対応する患者の診療情報を前記ベッドサイド端末1へ出力するカルテ情報送信部10を備える。(請求書42?43頁)
ベッドサイド端末識別部6は,患者名を取得すると,医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報が存在するか否かを判定する(S8-4)(【0109】)。ここで,S8-4は,(1)医療スタッフ識別子の判定,及び,(2)患者名に対応する状態情報が存在するか否か2つの判断処理を行うものであって,状態情報が不存在であると判定した場合(S8-4において,(2)が不存在であると判定した場合),電子カルテサーバ3は,対象患者の診療情報を取得し(S8-9),これをベッドサイド端末1に送信する(S8-10)。(請陳述5?6頁)

エ 医療スタッフ識別子の判定(構成要件1E)について
甲第1号証【0109】の記載から,S8-4は,(1)医療スタッフ識別子の判定,及び,(2)患者名に対応する状態情報が存在するか否か2つの判断処理を行うステップであるから,2つの処理に分離して記載すると以下のようになる。

したがって,甲第1号証の電子カルテサーバ3は,医療スタッフ識別子と,状態情報記憶部15に医療スタッフを識別する情報として予め記憶された医療スタッフ識別子とが一致するか否か判定する状態情報取得部16を備える。(請求書43?44頁)
甲第1号証のS8-4において,(1)医療スタッフ識別子の判定が行われ,この医療スタッフ識別子の判定は,これに先立つS8?3における患者識別子の判定に基づく患者名の取得,すなわち,患者の識別情報を取得し,判定する処理(患者判定)がなされることが前提条件である。(請陳述6頁)

オ 入力受付画面(構成要件1F)について
甲第1号証【0011】の記載から,甲第1号証の電子カルテサーバ3は,当該患者の状態に関する診療情報の入力を受け付けるためのベッドサイド端末1の入力画面用の診療情報を送信するカルテ情報送信部10を備える。(請求書44頁)
利用スタッフの認証が完了しているから,電子カルテアプリケーション5が起動され,患者の診療情報が表示される(S8-11)。【0061】に記載されるとおり,ベッドサイド端末1に対応付けられた患者の診療情報が表示されると,医療スタッフは,電子カルテアプリケーション5を利用して,当該患者に関する電子カルテデータを含む診療情報の参照又は更新をする事ができるようになる。つまり,S8-4ないしS8-11は,看護師または医師の識別情報を取得し,判定し,看護師または医師に対して必要な情報を提供する処理(手段)に相当する。(請陳述6?7頁)

カ 処方歴・病歴・検歴紹介(構成要件1F)について
甲1の「バイタルサイン及び検歴」(【0039】)は,患者に対する過去の検査結果の変化情報であり,患者の状態の変化を示す医療情報であり,バイタルサインに係る患者の血圧,体温,心拍及び呼吸数等の測定は,患者に対する一種の検査である。医療スタッフは,当該患者に対して新たな検査をしたときに,当該患者のベッドサイド端末1から,当該検査結果を更新することができる。
電子カルテシステムにおいて,患者の状態の変化を示す医療情報,例えば,血圧,体温,心拍及び呼吸数などを病床で測定してその結果を患者カルテに保存し,その変化の状態を病床に設置した病床用情報端末装置に表示することは,甲第3号証などから,当業者に広く知られたことであり,患者の血圧,体温,心拍数及び呼吸数などをベッドサイド端末1から電子カルテアプリケーションを用いて,電子カルテの医療情報として経過情報として記憶させることは,通常のことであるというべきである。
したがって,甲第1号証の電子カルテサーバ3は,ベッド端末の医療情報入力画面から入力された,取得した前記状態情報の履歴に基づいて生成された前記患者のバイタルサインなどの検歴を示すための診療情報をベッドサイド端末1へ出力するカルテ情報送信部10を備える。(請求書44?45頁)
医療スタッフの認証が完了しているから,電子カルテアプリケーションが起動され,患者の診療情報が表示されると(S8-11),【0061】に記載されているとおり,医療スタッフは,電子カルテアプリケーション5を利用して,当該患者に関する電子カルテデータを含む診療情報の参照又は更新をすることが出来るようになる。つまり,S8-4ないしS8-11は,看護師または医師の識別情報を取得し,判定し,看護師または医師による患者の状態情報の入力を受け付ける入力画面を出力する処理(手段)に相当する。(請陳述6?7頁)

キ 一致点について
甲1サーバ発明の(1)ベッドサイド端末識別子,(2)ベッドサイド端末1,(3)ベッドサイド端末識別部6,(4)ベッドサイド端末情報記憶部7,(5)診療情報,(6)カルテ情報送信部10,(7)医療スタッフ,(8)医療スタッフ識別子,(9)状態情報取得部16,及び(10)電子カルテサーバ3は,本件発明1の(1)第1識別情報,(2)端末装置,(3)第1取得部及び第1判定部,(4)記憶部,(5)医療情報,(6)第1出力部,第2出力部及び第3出力部,(7)看護師または医師,(8)第2識別情報,(9)第2判定部及び(10)情報処理装置にそれぞれ相当する。
したがって,本件発明1と甲1サーバ発明は,
「患者を識別するための第1識別情報を端末装置より取得する第1取得部と,
前記第1識別情報と,患者を識別する情報として予め記憶部に記憶された第1識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定部と,
前記第1識別情報が一致すると判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記端末装置へ出力する第1出力部と,
看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部と,
前記第2識別情報と,前記記憶部に看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部と,
前記第2識別情報が一致すると判定した場合に,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための情報を前記端末装置へ出力する第2出力部と
を備える情報処理装置。」
の点で一致する。(請求書50?51頁)

ク 相違点について
本件発明1と甲1サーバ発明1の相違点は以下のとおりであり,本件発明2と甲1サーバ発明2,本件発明3と甲1方法発明,本件発明4と甲1プログラム発明,本件発明5と甲1端末発明,本件発明6と甲1端末方法発明,本件発明7と甲1端末プログラム発明も同様である(請求書51?54頁)
(ア)相違点1
「【相違点1】
第2識別情報の取得について,本件発明では,第1識別情報が一致すると判定した場合であるのに対し,甲1記載の発明では,第1識別情報が一致すると判定する前である点。」

(イ)相違点2
「【相違点2】
第2出力部が出力する情報について,本件発明では,患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面であるのに対し,甲1記載の発明では,患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面用の医療情報である点。」

(2)相違点の判断について
ア 相違点1について
(ア)本件発明は,入院中の患者が自身に対して行われる処置,検査または手術等の医療情報を知りたい場合に,医療情報をピクトグラム等で表示した端末装置で確認することがあり,データを更新することで容易に表示を変更することができるが,セキュリティを従来より向上させることができるプログラム等を提供することを課題としている。
甲第1号証に記載されたベッドサイド端末1を利用した医療情報システムは,当該患者に関する医療情報に限定して参照又は更新する事ができるから,患者に関する診療情報を他人に見られる可能性を軽減することができるものである(【0014】)。
また,甲第2号証のナースコールシステムにおいては,ベッドサイド端末5はベッド番号に関連付けられており(患者に関連付けられており),ナースコールサーバ9に蓄積されている電子カルテや診療結果等を閲覧する場合は,操作する患者に関する情報以外を閲覧することができないようナースコールサーバ9が制御している(【0019】)。
したがって,本件発明と甲第1号証および甲第2号証は,医療情報システムのセキュリティを向上させるプログラム等を提供することを課題とする点で共通しており,医療情報システムのセキュリティ向上を目的とする当業者は,甲第1号証に甲第2号証を適用する動機が極めて強く存在することは明らかである。(請求書54?55頁)

(イ)患者操作モードから看護師操作モードへの変更について,甲第2号証【0019】によれば,ベッドサイド端末5は,ベッド番号に関連付けられており,当該ベッドに患者が指定されて入院しているから,ベッドサイド端末5と入院患者は,ベッド番号を介して一意に対応づけられており,他の患者の情報は閲覧できずに,自身の電子カルテや診療結果を閲覧することができるから,患者がナースコールサーバ9にアクセスする際には(患者操作モード:【0021】),ベッド番号による当該入院患者の認証(判定)が行われていることが明らかである。
この患者操作モードから,看護師が使用するデータを入力することができる看護師操作モード状態へは,患者操作モード状態のベッドサイド端末5のタッチパネルを操作して看護師IDを入力することで変更できると説明されている(【0021】)とおりである。患者操作モード及び看護師操作モードは,ナースコースシステムにおけるプログラムの進行状態であり,リアルタイムでその状態情報が保持されていると解される。
つまり,ナースコールサーバ9において,一旦,ベッド番号で患者を認証(判定)したという患者操作モードは,プログラム状態情報としてナースコールサーバ9において保持され,患者操作モードにあるベッドサイド端末5で看護師IDを入力し,ナースコールサーバ9がこれを取得すると,同サーバは,受信した看護師IDを送信したベッドサイド端末5の患者認証が終了しているから,当該患者について認証済みであり,その患者操作モードを基礎として看護師の認証(判定)を行って看護師操作モードに変更するものであると解される。(請求書55?56頁,請陳述10頁・第4)

(ウ)甲第1号証の医療情報システムに甲第2号証のナースコールシステムを適用することによって,相違点1は容易想到であることについて,甲第1号証の医療情報システムでは,ベッドサイド端末識別子に基づく判定(【図8】S8-1?S8-3)に示されているように,ベッドサイド端末識別子が一致すると判定した場合に,医療スタッフ識別子の認証を行っているから,医療スタッフ識別子の取得を,甲第2号証を適用して,ベッドサイド端末識別子が一致すると判定した場合に行うように構成することは,当業者に容易であることは明らかである。(請求書56頁)

(エ)甲第2号証では患者認証の後,スタッフ識別情報を取得することについて,甲第2号証記載の発明は,ナースコールサーバ9において,一旦,ベッド番号で患者を認証(判定)したという患者操作モードは,プログラム状態情報としてナースコールサーバ9において保持され,患者操作モードにあるベッドサイド端末5で看護師IDを入力し,ナースコールサーバ9がこれを取得し看護師の認証(判定)が行われると,看護師操作モードに変更する。つまり,患者識別情報に基づく患者認証の後,スタッフ識別情報を取得することが開示されている。したがって,【相違点1】は単なる設計事項にすぎないだけでなく,甲第2号証に明記されていることから,当業者に容易想到である。(請陳述8頁)

(オ)ベッドサイド端末5は,ベッド番号に関連付けられており,当該ベッドに患者が指定されて入院しているから,ベッドサイド端末5と入院患者は,ベッド番号を介して一意に対応づけられている。ベッドサイド端末5を用いてナースコールサーバ9に患者がアクセスすることにより,患者は特定され(【0022】),他の患者の情報は閲覧できずに,自身の電子カルテや診療結果を閲覧することができるから,患者がナースコールサーバ9にアクセスする際には,「患者操作モード」が用いられる(【0019】)。
つまり,患者操作モードと入院患者は,ベッド番号を介して一意に対応付けられているため,患者がベッドサイド端末5を操作するときには,電子カルテサーバ3に対してベッド番号が通知されて,患者認証が行われ,当該患者の電子カルテや診療結果を閲覧することができるから,患者操作モードにおける医療情報の表示は,患者の識別情報を取得し,判定し,患者に対応する医療情報を出力する一連の処理(手段)に相当する。(請陳述9頁)

イ 相違点2について
端末装置(ベッドサイド端末1)側で,医療情報(診療情報)に基づき表示画面を生成することを,医療用サーバ(情報処理装置:電子カルテサーバ3)側で,端末装置の表示用画面を生成することに置換することは,格別なことではないから,相違点2は実質的な相違点ではない。(請求書56?57頁)

2 被請求人の主張
(1)本件発明及び甲1発明の技術思想について
ア 本件発明は,患者識別情報が正しいことを情報処理装置で確認してから,その患者の医療情報を,端末装置を用いて出力しているため,端末装置を利用する患者と,端末装置から出力される医療情報とを間違いなく確実に対応させることができる。(答弁書8頁)

イ 本件発明においては,患者識別情報と医師等識別情報との双方が正しいことを情報処理装置で確認してから,その患者の医療情報を更新している。(答弁書10頁)

ウ 本件発明と甲1発明は,医療システムのセキュリティを向上させる技術として共通しているが,本件発明は患者の取り違えを防止することを主たる目的とするものである一方,甲1発明は,患者の医療情報の漏洩を防止するものであり,そもそも技術思想が異なる発明である。(答弁書22頁)

エ 本件発明が,端末装置を通じた患者識別情報の使用認証をセキュリティの向上に積極的に選択した理由としては,端末装置を通じた患者識別情報の取得という手間が増えても,他の患者との取り違えという致命的な事故を防ぐことを最重要視した結果である。逆に,甲1発明は,端末装置を通じて患者から患者識別子の情報を取得するという手間を無くしてベッドサイド端末識別子のみを用いた結果,患者の取り違えのリスクはもちろん,他の患者への診療情報の漏洩のリスクまで招来することになってしまう。(答弁書23頁)

(2)対比について
ア 構成要件1A?1Cについて
甲1発明の「ベッドサイド端末識別子」と,本件発明の患者を識別するための情報である「第1識別情報」とは異なるものであり,両者を混同した請求人の主張には理由が無いのであって,正しくは,本件発明と甲1発明との間には後記相違点Aが存在する。(答弁書25頁)

イ 構成要件1Dについて
甲1発明では,そもそも第1識別情報である患者識別情報が,サーバに格納された患者識別情報と一致するか否かの判定は行っていないのであるから,「甲1記載の発明では,第1識別情報が一致すると判定する前である」とする,請求人の相違点1の認定は明らかな誤りであって,正しくは,本件発明と甲1発明との間には,後記相違点Bが存在する。(答弁書24頁)

ウ 構成要件1Eについて
甲1発明では,【0109】?【0111】の電子カルテサーバ3の処理としては,[ベッドサイド端末識別子+医療スタッフ識別子受信]→[ベッドサイド端末識別子に対応する患者名取得]→[医師及び患者の組み合わせに対応する状態情報取得・送出]という流れで処理される。サーバでは,患者IDの判定はもちろんのこと,医療スタッフIDの判定も行われていない。医師及び患者の組み合わせに対応する状態情報が有るか否かが判定されているだけである。取得した患者IDまたは医師IDが誤っていることを示しているわけではない。このように,患者名及び医療スタッフ識別子に対応する状態情報が存在するか否かを判定し,存在する場合に状態情報を取得しているのであり(甲第1号証【0109】及び【0110】),医療スタッフ識別子の正誤の判定(医療スタッフの認証)を行っているものではないから,構成要件1Eの「前記第1医師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部」に一致せず,後記相違点Cが存在する。(答弁書19?20,25頁)

エ 構成要件1Fについて
甲1発明には,「第2判定部」に一致する構成が無いのであるから,構成要件1Fにおける「前記第2判定部が一致すると判定した場合」に一致する構成も無く,後記相違点Dが存在する。(答弁書25頁)

オ 一致点について
看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部と,
前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を前記端末装置へ出力する第2出力部と,を備える情報処理装置。(答弁書23頁)

カ 相違点について
(ア)相違点A
甲1発明には,「患者を識別するための第1識別情報を端末装置より取得する第1取得部(構成要件1A),「前記第1識別情報と,患者を識別する情報として予め記憶部に記憶された第1識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定部」(構成要件1B),「前記第1識別情報が一致すると判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記端末装置へ出力する第1出力部」(構成要件1C)が無い点。(答弁書23頁)

(イ)相違点B
甲1発明には,「前記第1識別情報が一致すると判定した場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部」(構成要件1D)における「前記第1識別情報が一致すると判定した場合に」との条件が無い点。(答弁書23?24頁)

(ウ)相違点C
甲1発明には,「前記第2識別情報と,前記記憶部に看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部」(構成要件1E)が無い点。(答弁書24頁)

(エ)相違点D
甲1発明には,「前記第2識別情報が一致すると判定した場合に,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を前記端末装置へ出力する第2出力部と,を備える情報処理装置」(構成要件1F)における「前記第2識別情報が一致すると判定した場合に」との条件が無い点。(答弁書24頁)

(3)相違点の判断について
ア 甲第2号証について
(ア)本件発明と甲2発明との根本的な技術思想の相違を踏まえてみても,前述した本件発明と甲1発明との相違点AないしDは,甲2発明にも開示されていない。(答弁書30頁)

(イ)甲第2号証の構成について
甲2発明には,構成要件1A?1Cが含まれてない。また,甲2発明には,構成要件1Dにおける「前記第1識別情報が一致すると判定した場合に」との条件が無く,構成要件1Eも無い。そして,甲2発明には,構成要件1Fにおける「前記第2識別情報が一致すると判定した場合に」との条件が無い。(答弁書30?31頁)
甲第2号証には,患者操作モードの条件として,【0021】の記載をもっても,「患者を認証した」ことは何ら開示されておらず,ベッドサイド端末5はベッド番号に関連付けられているのみであるため,請求人の主張は明らかに誤りである。甲2発明において,ベッドサイド端末5をベッド番号に関連付けると,そのベッド番号に対応する患者のための患者操作モードになっており,端末装置を通じた患者認証を行うことはないため,実際にそのベッドサイド端末5を操作する患者のための表示が行われる保証はないのである。(答弁書31頁)
甲第1号証には,入院患者のID,PASSWORDを入力することでベッドサイド端末1にて患者の情報が表示される構成と,看護師または医師の識別情報を取得し,判定し看護師または医師に対して必要な情報を提供する処理と,が開示されている。また,審理事項通知書記載のとおり,甲1発明において,「患者の識別情報を取得し,判定し,患者に対応する医療情報を出力する一連の処理(手段)」と「看護師または医師の識別情報を取得し,判定し,看護師または医師に対して必要な情報を提供する処理(手段)」はそれぞれ独立しており,本件発明では,前記「看護師または医師の識別情報を取得し,判定し,看護師または医師に対して必要な情報を提供する処理(手段)」の前提として前記「患者の識別情報を取得し,判定し,患者に対応する医療情報を出力する一連の処理(手段)」がある。そして,甲第2号証において,この点についての開示も示唆も一切ない。この点,甲第2号証には,「患者操作モード」が開示されているが(【0019】等),これはあくまでも患者が操作できるモードであって,必ずしも「患者識別情報でのログイン」を前提とするものではない。甲第1号証のように,患者識別情報ではなくベッドサイド端末識別子によってバックグラウンドでログインしたことにより患者操作モードに遷移することも考えられる。なお,他の可能性が排除されるものではない。さらに,甲第2号証の【0021】には,「以下,具体的に説明する。まずベッドサイド端末5は,患者が操作して患者に対して様々な情報を表示する患者操作モード状態にあるため,看護師が使用する際には処置等のデータを入力することができる看護師操作モードに状態を変更する。この操作は,例えば看護師IDをタッチパネルから入力することで変更される。」と記載されている。ここで,「まず,ベッドサイド端末5は,…患者操作モード状態にある」とは,患者識別情報の入力を待つことなく,患者操作モード状態にあることを意味している。すなわち,同号証には,本件発明における「患者を識別するための第1患者識別情報を端末装置より取得する第1取得部」は開示されていない。(被請求人口頭審理陳述要領書(以下,「被陳述」という。)3?4頁,第1回口頭審理調書「被請求人」4)

(ウ)甲第1号証と甲第2号証の組み合わせについて
また,請求人は,「甲第1号証の医療情報システムでは,ベッドサイド端末識別子に基づく判定(【図8】S8-1?S8-3)に示されているように,ベッドサイド端末識別子が一致すると判定した場合に,医療スタッフ識別子の認証を行っているから,医療スタッフ識別子の取得を,甲第2号証を適用して,ベッドサイド端末識別子が一致すると判定した場合に行うように構成することは,当業者に容易であることは明らかである」(審判請求書56頁7行?14行)と主張するが,ベッドサイド端末識別子と,患者を識別するための情報である「第1識別情報」とは異なるものであり,両者を混同した前記主張は失当である。(答弁書31?32頁)
そもそも,甲第2号証は,「ナースコールシステム」に関する発明であるため,患者が入院するタイミングにおいて,既に端末と患者とが一対一に関連付けられていることが前提となっている。同号証の具体的な記載内容から,技術的に想起し得ることは,次のとおりである。まず,ナースコール端末を設置するにあたり,ナースコール端末にベッド番号を入力し,サーバに接続する。サーバは,そのベッド番号に対応付けて記憶されている患者の情報をナースコール端末に送信し,表示させる。この状態が患者操作モードである。サーバ側で患者とベッドとの関連付けが行われるが,これが誤っていれば,現場で違う患者の情報がナースコール端末に表示されることになるため,実際にそのベッドサイド端末5を操作する患者と,ベッドサイド端末5に表示される内容(例えば患者名)が一致している保証はない。このように,患者操作モードの条件として「患者を認証した」ことは甲第2号証には何ら開示されておらず,甲第1号証と如何に組み合わせようとも,本件発明を構成することは不可能である。(被陳述4?5頁)

イ 甲第3号証について
仮に,甲3発明から「電子カルテシステムにおいて,患者の状態の変化を示す医療情報,例えば,血圧,体温,心拍及び呼吸数などを病床で測定してその結果を患者カルテに保存し,その変化の状態を病床に設置した病床用情報端末装置に表示することは,・・・当業者に広く知られたことである」という技術事項が認定されたとしても,その組み合わせによって相違点AないしDが埋められることにならない。
甲3発明には,患者の生体情報データを表示する構成が含まれているのみであり,本件発明1の「第1取得部」,「第1判定部」,「第1出力部」,「第2取得部」及び「第2判定部」は含まれていない。(答弁書32頁)


第7 甲号証の記載
1 甲第1号証
甲第1号証(特開2005-275607号公報,以下,「甲1」という。)は,平成17年10月6日に出願公開された公開特許公報であり,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審で付与した。)。

「【請求項4】
前記患者の診療情報の参照又は更新をする第一の電子カルテアプリケーションを備えたベッドサイド端末と,前記患者の診療情報の参照又は更新をする第二の電子カルテアプリケーションを備えた情報処理端末とをネットワークで接続した医療情報システムにおける患者の診療情報を記憶する電子カルテデータベースを備えた電子カルテサーバであって,
前記第二の電子カルテアプリケーションで前記患者の診療情報を参照又は更新している際の状態情報を前記患者毎に記憶する状態情報記憶部と,
前記状態情報を前記情報処理端末から受信し,当該状態情報を前記状態情報記憶部に格納する状態情報受信処理手段と,
ベッドサイド端末と患者とを対応付けて記憶したベッドサイド端末情報記憶部と,
前記ベッドサイド端末情報記憶部を参照して,前記ベッドサイド端末に対応する患者を特定するベッドサイド端末識別手段と,
前記特定した患者に対応する状態情報を前記状態情報記憶部から取得し,前記ベッドサイド端末に送出する状態情報取得手段と,
を備える事を特徴とする医療システムにおける電子カルテサーバ。」

「【0009】
上記の課題を解決する為に,患者のベッドサイド端末において,当該患者に関する診療情報のみ参照出来れば,他人に診療情報を見られる事を防ぐ事が出来る点に着目した。
【0010】
即ち,本発明の医療情報システムは,患者の診療情報を記憶する電子カルテデータベースを備えた電子カルテサーバと,当該診療情報の参照又は更新をする電子カルテアプリケーションを備えたベッドサイド端末とをネットワークで接続した医療情報システムにおい
て,前記ベッドサイド端末と前記患者とを対応付けて記憶したベッドサイド端末情報記憶部と,前記ベッドサイド端末情報記憶部を参照して,ベッドサイド端末に対応する患者を特定するベッドサイド端末識別手段と,前記患者に対応する診療情報を前記電子カルテデータベースから取得するカルテ情報取得手段と,当該診療情報に基づき前記電子カルテアプリケーションを起動するベッドサイド端末制御手段と,を備える事を特徴とする。
【0011】
本発明は,上記のように,患者のベッドサイド端末では,当該患者に関する診療情報に限定して参照又は更新する事が出来る。従って,医療スタッフは,当該ベッドサイド端末を利用して,当該患者以外の診療情報を参照又は更新する事は出来ない。
【0012】
また,本発明の医療情報システムは,患者の診療情報を記憶する電子カルテデータベースを備えた電子カルテサーバと,前記患者の診療情報の参照又は更新をする第一の電子カルテアプリケーションを備えたベッドサイド端末と,前記患者の診療情報の参照又は更新をする第二の電子カルテアプリケーションを備えた情報処理端末とをネットワークで接続した医療情報システムにおいて,前記情報処理端末は,前記第二の電子カルテアプリケーションで前記患者の診療情報を参照又は更新している際の状態情報を前記電子カルテサーバに送出する状態情報登録処理手段を備え,前記電子カルテサーバは,前記患者毎に前記状態情報を記憶する状態情報記憶部と,ベッドサイド端末と患者とを対応付けて記憶したベッドサイド端末情報記憶部と,前記状態情報を前記情報処理端末から受信し,当該状態情報を前記状態情報記憶部に格納する状態情報受信処理手段と,前記ベッドサイド端末情報記憶部を参照して,前記ベッドサイド端末に対応する患者を特定するベッドサイド端末識別手段と,前記患者に対応する状態情報を前記状態情報記憶部から取得し,前記ベッドサイド端末に送出する状態情報取得手段とを備え,前記ベッドサイド端末は,前記状態情報を前記電子カルテサーバから受信し,当該状態情報に基づき前記第一の電子カルテアプリケーションを起動するベッドサイド端末制御手段を備える事を特徴とする。
【0013】
本発明は,上記のように,医師がナースステーションや診察室で行っていた電子カルテアプリケーションでの作業を引き続き患者のベッドサイド端末で,しかも当該患者の診療情報に係る作業に限定して行う事が出来る。従って,医療スタッフは,患者のベッドサイド端末の電子カルテアプリケーションを利用して当該患者の診療情報の参照又は更新する手間を大幅に短縮する事が出来,当該患者の診療情報を他人に見られる可能性を減らす事が出来る。
【発明の効果】
【0014】
本発明の医療情報システムによれば,患者のベッドサイド端末では,当該患者に関する診療情報に限定して参照又は更新する事が出来る。従って,患者に関する診療情報を他人に見られる可能性を軽減する事が出来る。」

「【0016】
以下,本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例に係る医療情報システムの処理態様を,図1乃至図5を用いて説明する。
【0018】
図1は,本実施例に係る医療情報システムの概要を示す全体構成図である。
【0019】
図1に示すように,本実施例に係る医療情報システムは,ベッドサイド端末1,ネットワーク2,電子カルテサーバ3で構成されている。
【0020】
ベッドサイド端末1は,一般的なベッドサイド端末の事であり,ベッドサイド端末専用ハードウェアだけでなく,パーソナルコンピュータ,ノートパソコン,PDA(Personal Data Assistants)等,一般的な情報処理端末でも良い。また,図1に例示するように,ベッドサイド端末1は,ベッドサイド端末制御部4,電子カルテアプリケーション5を備えている。
【0021】
ベッドサイド端末制御部4は,ベッドサイド端末1の識別子を取得し,電子カルテサーバ3に送信するものである。
【0022】
電子カルテアプリケーション5は,患者に関する電子カルテデータを含む診療情報の参照又は更新をする為のアプリケーションである。ここで,電子カルテアプリケーション5は,ベッドサイド端末1専用のアプリケーションであっても良く,ナースステーション,診察室等で利用される医療情報システムのアプリケーションと同一のものを利用しても良く,患者に関する診療情報の参照又は更新が出来るものであれば,何でも良い。」

「【0024】
電子カルテサーバ3は,ベッドサイド端末識別部6,ベッドサイド端末情報記憶部7,カルテ情報取得部8,電子カルテデータベース9,カルテ情報送信部10で構成されている。
【0025】
ベッドサイド端末情報記憶部7は,ベッドサイド端末識別子に患者識別子を対応付けて記憶するものである。
【0026】
ベッドサイド端末識別部6は,ベッドサイド端末1からベッドサイド端末識別子を受信し,当該ベッドサイド識別子に対応する患者識別子をベッドサイド端末情報記憶部7から取得するものである。
【0027】
電子カルテデータベース9は,患者に関する電子カルテデータを含む診療情報を記憶するデータベースである。
【0028】
カルテ情報取得部8は,ベッドサイド端末識別部6で取得した患者識別子に対応する診療情報を電子カルテデータベース9から取得するものである。
【0029】
カルテ情報送信部10は,カルテ情報取得部8で取得した診療情報をベッドサイド端末1に送信するものである。」

「【0032】
図2は,医療情報システムの処理をフローチャートで示したものである。
【0033】
ベッドサイド端末1の備える表示装置には,ベッドサイド端末制御部4の処理で,図3に例示するメニュー画面が表示される。
【0034】
本実施例におけるメニュー画面は,患者向け診療情報ボタン,医療スタッフ向け診療情報ボタン,ID入力フィールド,及びPASSWORD入力フィールドで構成されている。
【0035】
患者向け診療情報ボタンは,入院患者のID及びPASSWORDでログインされた場合,「病院スタッフの紹介」,「診療予定」,「食事メニュー」,「経過情報」,「アンケート」等,患者向けの診療情報をベッドサイド端末1の表示装置に表示する処理を実行するものである。また,テレビ,ビデオ,インターネット等,の娯楽情報を患者に提供するものであっても良い。尚,患者向けの診療情報を参照する処理は,公知である為,説明を省略する。
【0036】
医療スタッフ向け診療情報ボタンは,医療スタッフのID及びPASSWORDでログインされた場合,後述する図4に例示する医療スタッフ向け診療情報メニューをベッドサイド端末1の表示装置に表示する。
【0037】
ID入力フィールド,及び,PASSWORD入力フィールドには,ベッドサイド端末1の操作者,即ち,患者又は医療スタッフのID,及び,PASSWORDが入力されるフィールドであり,本フィールドにID,及び,PASSWORDを入力すると,前述した患者向け診療情報ボタン,又は医療スタッフ向け診療情報ボタンの選択が可能となる。
【0038】
医療スタッフ向け診療情報ボタンが選択され,入力されたID,及び,PASSWORDが医療スタッフのものであるとベッドサイド端末制御部4で判断されると,図4に例示する医療スタッフ向け診療情報メニューをベッドサイド端末1の表示装置に表示する。
【0039】
医療スタッフ向け診療情報メニューは,バイタルサイン照会ボタン,処方歴・病歴・検歴照会ボタン,及び,電子カルテアプリケーション起動ボタンで構成されている。本実施例における医療スタッフ向け診療情報メニューは,電子カルテアプリケーション起動ボタンさえ備えていれば良く,他のボタンは,公知のベッドサイドシステムで用いるボタン,例えば,クリニカルパス照会等,を用いても良い。また,本実施例では,患者に関わる人物を総称して医療スタッフとしているが,医師,看護師,等,職種毎に医療スタッフ向け診療メニューを異なるものにしても良い。例えば,看護師であれば,看護アプリケーション起動ボタン,セラピストであれば,リハビリアプリケーション起動ボタン等にしても良い。」

「【0043】
医師により,電子カルテアプリケーション起動ボタンが選択されると,ベッドサイド端末制御部4は,ベッドサイド端末1の識別子を取得し,ネットワーク2を介して,電子カルテサーバ3に当該ベッドサイド端末1の識別子を送出する(S2-1,及び,S2-2)。
【0044】
ここで,ベッドサイド端末1の識別子は,ベッドサイド端末1の端末名,MACアドレス(Media Access Control Address),IPアドレス(Internet Protocol Address)等,ベッドサイド端末1を一意に識別出来るものであれば何でも良い。本実施例では,ベッドサイド端末1の識別子は,IPアドレスを用いており,「10.103.57.101」であるものとして以下,説明をする。
【0045】
電子カルテサーバ3は,ベッドサイド端末1からベッドサイド端末1の識別子を受信すると,ベッドサイド端末識別部6を起動する。
【0046】
ベッドサイド端末識別部6は,ベッドサイド端末情報記憶部7を参照して,ベッドサイド端末1の識別子に対応する患者識別子を取得する(S2-3)。
【0047】
ここで,図5にベッドサイド端末情報記憶部7の例を示す。
【0048】
図5に例示したベッドサイド端末情報記憶部7は,ベッドサイド端末識別子フィールド,及び,患者名フィールドで構成されている。尚,図5に示した構成例は,本実施例を説明するのに最低限必要な例を示したものに過ぎず,これに限定するものではない。
【0049】
ベッドサイド端末識別子フィールドは,前述したベッドサイド端末の識別子が記憶されるフィールドである。
【0050】
患者名フィールドは,患者名が記憶されるフィールドである。尚,患者名フィールドに記憶される患者名は,患者を一意に識別出来るものであれば何でも良く,例えば,病院内で患者を識別する為に割り振られている患者IDでも良く,患者名に限定するものではない。
【0051】
図5に例示したベッドサイド端末情報記憶部7は,ベッドサイド端末識別子が「10.103.57.101」であるベッドサイド端末は,「病院太郎」の利用するものであり,「10.103.57.102」であるベッドサイド端末は,「病院次郎」の利用するものである事を示している。即ち,本実施例におけるベッドサイド端末は,一人の入院患者に対して,一台割り当てられている事になる。
【0052】
また,本実施例におけるベッドサイド端末識別部6及びベッドサイド端末情報記憶部7をベッドサイド端末1に備えるようにし,ベッドサイド端末1側の処理で,患者名を取得し,取得した患者名を電子カルテサーバ3に送出するように構成しても良い。
【0053】
本実施例における電子カルテサーバ3では,「10.103.57.101」というベッドサイド端末識別子をベッドサイド端末1から受信しており,ベッドサイド端末識別部6は,ベッドサイド端末識別子に対応する患者名,「病院太郎」をベッドサイド端末情報記憶部7から取得する。
【0054】
ここで,入院患者は,転棟,転室等,移動する事が多い。従って,図5に例示したベッドサイド端末情報記憶部7は,頻繁に管理者によりメンテナンスされているが,メンテナンス漏れが発生する事が考えられる。そこで,医師により電子カルテアプリケーション5の起動を指示された際,患者を識別する識別子,例えば患者名を入力し,ベッドサイド端末情報記憶部7に記憶された内容と整合性チェックをしても良い。また,患者の診療情報には,患者の移動情報を保持している為,当該患者に移動が発生した場合,ベッドサイド端末情報記憶部7を更新するようにしても良い。
【0055】
ベッドサイド端末識別部6で患者名を取得すると,カルテ情報取得部8が起動される。
【0056】
カルテ情報取得部8は,電子カルテデータベース9を参照して,取得した患者名に関する診療情報を取得する(S2-4)。
【0057】
ここで,電子カルテデータベース9は,患者に関わる電子カルテデータを含む診療情報を記憶するデータベースであり,本実施例では,一般的な電子カルテデータベースを利用している為,詳細な説明を省略する。
【0058】
カルテ情報取得部8で診療情報を取得すると,カルテ情報送信部10は,取得した診療情報をベッドサイド端末1に送出する(S2-5)。
【0059】
ベッドサイド端末1は,電子カルテサーバ3から診療情報を受信すると,電子カルテアプリケーション5を起動する。
【0060】
電子カルテアプリケーション5は,受信した診療情報に基づき,ベッドサイド端末1に対応付けられた患者に関する診療情報をベッドサイド端末1の表示装置に表示する(S2-6)。
【0061】
ベッドサイド端末1に対応付けられた患者の診療情報が表示されると,医療スタッフは,電子カルテアプリケーション5を利用して,当該患者に関する電子カルテデータを含む診療情報の参照又は更新をする事が出来るようになる。
【0062】
このように,本実施例における患者に関する電子カルテデータを含む診療情報の参照又は更新をするベッドサイド端末1の電子カルテアプリケーション5は,ベッドサイド端末1の患者に関する診療情報のみ参照又は更新が出来るようになっている。従って,医療スタッフは,ベッドサイド端末1の患者とは別の患者に関する診療情報を当該ベッドサイド端末1で参照又は更新する事が出来ず,医療スタッフがベッドサイド端末1の備える電子カルテアプリケーション5を利用して,患者の診療情報を参照又は更新をする際に,他人に当該患者の診療情報を覗き見される事を防ぐ事が出来る。」

「【実施例2】
【0063】
以下,本発明の医療情報システムの他の実施例について,図6乃至図12を用いて簡単に説明をする。
【0064】
実施例1では,ベッドサイド端末に対応付けられた患者に関する診療情報のみをベッドサイド端末の電子カルテアプリケーションで参照又は更新可能とした。
【0065】
ところで,入院患者の病室を訪問して診察する,所謂,回診をする際,医療スタッフは,ナースステーション,診察室等に設置された医療情報システムと接続された情報処理端末の電子カルテアプリケーションを利用して,診察予定である患者に関する診療情報,治療計画に基づく経過情報を予め確認している。そして,診察対象となる患者の経過情報に基づき,注目すべき検査歴データや指示すべき事項を検討している。
【0066】
本実施例では,医療スタッフが回診前にナースステーションや診察室等で,電子カルテアプリケーションを用いて検討した時の電子カルテアプリケーションの状態を,ベッドサイド端末で再現させる処理について説明をする。
【0067】
本実施例における医療情報システムの概要を図6に例示する。尚,実施例1と同様である構成要素は,図1で示したものと同一の符号を付している。
【0068】
図6に示すように,本実施例に係る医療情報システムは,ベッドサイド端末1,ネットワーク2,電子カルテサーバ3,情報処理端末11で構成されている。」

「【0071】
電子カルテサーバ3は,実施例1で説明したものと同様のものであり,新たに状態情報受信処理部14,状態情報記憶部15,状態情報取得部16,及び,状態情報送信部17が追加されている。
【0072】
状態情報記憶部15は,医療スタッフ識別子,患者識別子,電子カルテアプリケーション種別,アプリケーションデータを含む状態情報を記憶するものである。
【0073】
状態情報受信処理部14は,状態情報を状態情報記憶部15に記憶するものである。
【0074】
状態情報取得部16は,状態情報記憶部15を参照して,状態情報を取得するものである。
【0075】
状態情報送信部17は,状態情報取得部16で取得した状態情報をベッドサイド端末1に送出するものである。
【0076】
情報処理端末11は,電子カルテアプリケーション5,状態情報登録処理部12,及び,アプリケーションデータ記憶部13で構成される。電子カルテアプリケーション5,及び,アプリケーションデータ記憶部13は,ベッドサイド端末1に備えるものとレコード構成は同様であるが,一患者のデータのみ記憶するものである。」

「【0084】
本実施例における電子カルテアプリケーション5は,複数患者の診療情報の参照や更新の出来るものであり,図9(a)及び図9(b)に例示するように情報処理端末11の表示装置に複数患者の診療情報を表示する事が出来る。
【0085】
図9では,医師Aは,病院太郎,及び,病院次郎の診療情報を参照している事を示し,図9(a)では,病院太郎の診療情報が情報処理端末11の表示装置に表示されている事を示している。ここで,患者の切り替えは,タブの切り替えで出来るようになっており,図9(a)に示す病院次郎タブを選択すると,図9(b)に例示する画面に切り換わる。図9(b)に例示する画面は,病院次郎に関する診療情報が表示されている事を示すものである。
【0086】
図9(a)では,医師Aは,病院太郎の2003年7月30日,及び2004年3月2日の検査結果,即ち検査歴情報を参照している事が分かる(検査歴フィールド)。また,処方オーダを作成中であり,BBBBという薬品を選択し,1日3回という用法の臨時処方を編集中である(処方オーダフィールド)。更に,AAA剤3回分,BBB剤3回分を含む処方オーダ,アレルギーA,アレルギーB,アレルギーCを含む検査オーダを編集済みである事が分かる(今回カルテ記述フィールド)。
【0087】
同様に,図9(b)では,医師Aは,病院次郎の実施状況を参照しており(実施状況フィールド),ガーゼ交換を含む処置オーダ,X線撮影を含む放射線オーダを編集済み(今回カルテ記述フィールド)である事が分かる。ここで,図9(a)及び図9(b)で,医師がカルテ保存ボタンを選択した場合,今回カルテ記述フィールドに入力された編集済みのオーダは,電子カルテデータとして,電子カルテデータベース9に格納される。従って,編集中のオーダについては,カルテ保存ボタンが選択された場合でも電子カルテデータベース9に格納されない。即ち,カルテ保存ボタンが選択された場合には,今回カルテ記述フィールドに記載された編集済みのオーダのみ電子カルテデータベース9に格納される。また,終了ボタンが選択されると,今回カルテ記述フィールドに編集済みのオーダが記載されていたとしても,電子カルテデータベース9を更新せず,電子カルテアプリケーション5を停止する。」

「【0091】
図10に例示したアプリケーションデータ記憶部13は,利用者IDフィールド,患者名フィールド,アプリケーション種別フィールド,及び,アプリケーションデータフィールドで構成されている。尚,図10に示した構成例は,本実施例を説明するのに最低限必要な例を示したものに過ぎず,これに限定するものではない。また,本実施例では,上記利用者ID,患者名,アプリケーション種別,及びアプリケーションデータを総称して,状態情報と定義する。
【0092】
利用者IDフィールドは,医療スタッフの識別子が記憶されるフィールドである。」

「【0102】
電子カルテサーバ3は,情報処理端末11から状態情報を受信すると,状態情報受信処理部14を起動する。
【0103】
状態情報受信処理部14は,受信した状態情報を状態情報記憶部15に格納し,正常に格納した旨,情報処理端末11に通知する(S7-3)。本実施例における状態情報記憶部15のレコードレイアウトは,アプリケーションデータ記憶部13と同様のものであり,利用者ID及び患者名をキーとして構成されている。また,状態情報記憶部15は,各医師,各患者に対する状態情報を記憶している。ここで,受信した状態情報を状態情報記憶部15に格納する際,利用者ID及び患者名に対応する状態情報が既に存在する場合には,上書き更新をするようにしても構わない。」

「【0106】
次に,医師Aが病院太郎のベッドサイド端末11の電子カルテアプリケーション5を用いて,病院太郎の診療情報を参照又は更新する際の処理について説明をする。
【0107】
医師Aが病院太郎のベッドサイド端末11で,実施例1で説明した手順で,電子カルテアプリケーション5を起動すると,ベッドサイド端末識別子,及び,医療スタッフ識別子を電子カルテサーバ3に送出する(S8-1,S8-2)。尚,医療スタッフ識別子は,図3に例示したメニュー画面のIDフィールドに入力されたIDを取得して,送出している。
【0108】
電子カルテサーバ3は,ベッドサイド端末識別子,及び,医療スタッフ識別子を受信すると,実施例1と同様に,ベッドサイド端末識別部6を起動し,ベッドサイド端末識別子に対応する患者名をベッドサイド端末情報記憶部7から取得する(S8-3)。
【0109】
ベッドサイド端末識別部6は,患者名を取得すると,状態情報取得部16を起動し,状態情報取得部16は,状態情報記憶部15を参照して,医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報が存在するか否か判定する(S8-4)。即ち,「医師A」,及び「病院太郎」に対応する状態情報が状態情報記憶部15に記憶されているか否か判定する。
【0110】
図10に示す例では,「医師A」,及び「病院太郎」に対応する状態情報は存在しており,状態情報取得部16は,当該状態情報を状態情報記憶部15から取得する(S8-5)。
【0111】
そして,状態情報送信部17は,取得した状態情報をベッドサイド端末1に送出する(S8-6)。
【0112】
ベッドサイド端末1は,状態情報を受信すると,ベッドサイド端末制御部4を起動し,ベッドサイド端末制御部4は,当該状態情報をアプリケーションデータ記憶部18に格納する(S8-7)。
【0113】
本実施例では,図11に例示するように,ベッドサイド端末1のアプリケーションデータ記憶部18に格納される事になる。図11では,病院太郎に関わる状態情報のみ格納されている。
【0114】
ベッドサイド端末制御部4は,受信した状態情報をアプリケーションデータ記憶部18に格納すると,電子カルテアプリケーション5を起動する。
【0115】
電子カルテアプリケーション5は,起動する際,アプリケーションデータ記憶部18を参照し,格納されている状態情報に基づいて,診療情報を表示する(S8-8)。
【0116】
そして,電子カルテアプリケーション5が起動されると,状態情報受信処理部14は,ベッドサイド端末1に送出した状態情報に該当する状態情報を状態情報記憶部15から削除する。
【0117】
本実施例では,電子カルテアプリケーション5が起動すると,図12に例示するようにベッドサイド端末1の表示装置に表示画面が表示される。図12では,病院太郎の診療情報のみ表示されている。また,病院太郎に関して,医師Aが情報処理端末11で状態情報登録ボタンを選択した時と同じ表示がベッドサイド端末1でもなされる為,情報処理端末11で中断していた作業をベッドサイド端末1で再開するように,電子カルテアプリケーション5を利用する事が出来る。ここで,医師Aが病院次郎のベッドサイド端末1で電子カルテアプリケーション5を起動した場合には,病院次郎に関して,医師Aが情報処理端末11で状態情報登録ボタンを選択した時と同じ表示が病院次郎のベッドサイド端末1でなされる事になる。
【0118】
また,S8-4で,対応する状態情報が存在しない場合には,実施例1と同様に,電子カルテデータベース9からベッドサイド端末1に対応する患者の診療情報を取得して,電子カルテアプリケーション5で表示する事になる(S8-9乃至S8-11)。従って,ベッドサイド端末1の電子カルテアプリケーション5では,ベッドサイド端末1に対応付けられた患者の診療情報のみ参照又は更新出来る事になる。
【0119】
このように,本実施例における医療情報システムでは,ナースステーション等で,医療スタッフが利用していた電子カルテアプリケーションの状態を記憶しておき,ベッドサイド端末で電子カルテアプリケーションを起動した際,ナースステーション等での状態を再現する事が出来る。しかも,ベッドサイド端末に対応付けられた患者に関する状態情報のみ再現する事が出来る。従って,医療スタッフがベッドサイドで診察する時に,回診予定の入院患者に関して事前に検討した事項を素早く想起させる事や,当該入院患者の診療情報への入力作業を素早くする事が出来る。更に,ベッドサイド端末では,当該ベッドサイド端末に対応付けられた患者以外の診療情報の参照や更新が出来ない為,患者のプライバシに関わる診療情報を他人に見られる事を防止する。」

なお,上記【0106】【0107】中の「ベッドサイド端末11」は,「ベッドサイド端末1」の明らかな誤記である。

2 甲第2号証
甲第2号証(特開2014-97116号公報,以下,「甲2」という。)は,平成26年5月29日に出願公開された公開特許公報であり,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審で付与した。)。

「【請求項1】
ベッド毎に設置されて患者が看護師を呼び出すためのナースコール子機と,ナースステーションに設置されて患者からの呼び出しに応答するためのナースコール親機と,看護師が携行して患者からの呼び出しに応答するための携帯端末と,機器間の通信を制御する制御機とを有し,更に患者に各種情報を提供するための表示部及び表示を操作する操作部を有するベッドサイド端末をベッド毎に配置して成るナースコールシステムにおいて,
前記ベッドサイド端末は,看護師がベッド上の患者に対する処置記録の入力を行う看護情報入力部を備え,
前記制御機は,前記ベッドサイド端末から入力された処置記録をベッドサイド端末に関連付けられている携帯端末に送信する通信制御部を有することを特徴とするナースコールシステム。
【請求項2】
看護記録を蓄積する看護情報記憶部を有し,
前記制御機は,前記ベッドサイド端末から処置記録が入力されたら,前記看護情報記憶部の処置した患者に関する看護記録を更新する看護情報制御部を有することを特徴とする請求項1記載のナースコールシステム。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように,ベッドサイド端末は患者が使用するために設置されるもので,表示される情報はナースコール親機から入力された情報であったり,別途設けられているオーダリングシステムで入力された電子カルテ情報等であった。
しかし,ベッドサイド端末を看護師も利用できるよう例えば患者の処置記録の入力等に利用できれば,看護師は処置した場所で直ぐに看護記録を入力できるため,ナースステーションに戻って記録する必要が無くなるし,記録忘れも防止でき好ましい。また,患者の看護に関連する新規情報,特に目の前の患者の看護に関する新しい情報をベッドサイド端末に表示させて看護師が処置する度に確認できるよう構成すれば,看護に関する新しい情報を看護師間で共有する作業を無くすことができ好ましい。
【0005】
そこで,本発明はこのような問題点に鑑み,ベッドサイド端末から看護師が処置記録等の入力を可能とし,更に患者や看護師に通知すべき事項が発生したら,ベッドサイド端末にその情報を表示可能とすることで,ベッドサイド端末の利便性の向上を図ったナースコールシステムを提供することをを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に,請求項1の発明は,ベッド毎に設置されて患者が看護師を呼び出すためのナースコール子機と,ナースステーションに設置されて患者からの呼び出しに応答するためのナースコール親機と,看護師が携行して患者からの呼び出しに応答するための携帯端末と,機器間の通信を制御する制御機とを有し,更に患者に各種情報を提供するための表示部及び表示を操作する操作部を有するベッドサイド端末をベッド毎に配置して成るナースコールシステムにおいて,ベッドサイド端末は,看護師がベッド上の患者に対する処置記録の入力を行う看護情報入力部を備え,制御機は,ベッドサイド端末から入力された処置記録をベッドサイド端末に関連付けられている携帯端末に送信する通信制御部を有することを特徴とする。
この構成によれば,処置した場所で看護記録を入力できるため,ナースステーションに戻って看護記録を作成すること必要がなくなり看護師の負担を軽減できる。また,担当看護師に処置した記録が通知されるため,後から処置を確認できるし,担当ではない看護師が処置した場合であっても担当看護師は処置内容を把握できる。」

「【0019】
ベッドサイド端末5は,基本動作としてオーダリングシステム10において作成された電子カルテの情報や診察結果,服薬情報,更には食事のメニューや娯楽情報をタッチパネル53を操作することで閲覧可能となっている。但し,ベッドサイド端末5はベッド番号に関連付けられており(患者に関連付けられており),ナースコールサーバ9に蓄積されている電子カルテや診察結果等を閲覧する場合は,操作する患者に関する情報以外を閲覧することはできないようナースコールサーバ9が制御している。
【0020】
最初に,処置記録を入力して看護履歴を更新する流れを説明する。例えば,点滴が終了した場合を例にとると,看護師により処置記録として「点滴が終了しました」と入力されると,入力された情報が看護履歴としてナースコールサーバ9に蓄積される一方,関係付けられている携帯端末6に「点滴が終了しました」がメール送信される。
【0021】
以下,具体的に説明する。まずベッドサイド端末5は,患者が操作して患者に対して様々な情報を表示する患者操作モード状態にあるため,看護師が使用する際には処置等のデータを入力することができる看護師操作モードに状態を変更する。この操作は,例えば看護師IDをタッチパネルから入力することで変更される。その後は,タッチパネル53を操作して所定の入力操作を行い,「点滴が終了しました」を入力する。入力が完了すると,ベッドサイド端末CPU55の制御により,メッセージから成る処置記録が制御機4に送信される。尚,看護師操作モード状態は,所定の時間が経過したら患者操作モードへ移行する。
【0022】
この処置記録を受信した制御機4は,制御機CPU44の制御により受信した情報が特定の患者に対する処置記録であることを認識して,合わせて送信されたベッドサイド端末5のID情報を基に,ベッドサイド端末5に関連付けられている患者情報を情報記憶部43から読み取り患者を特定する。そして,特定した患者情報と合わせて処置記録をナースコールサーバ9に送信する。
この処置記録を受信したナースコールサーバ9は,看護情報記憶部9aに記憶されている看護記録を受信した処置記録を追加して更新する。この結果,ベッドサイド端末5から入力された患者の処置記録は,ナースコールサーバ9に記録されている看護記録に追加記録され,看護記録が一元管理される。」

3 周知技術の認定にかかる甲第3号証
甲第3号証(特開平10-323332号公報)は,以下,「甲3」という。)は,平成10年12月8日に出願公開された公開特許公報であり,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審で付与した。)。

「【0030】医療データサーバ装置30は,ナースステーション等に設置されるものであって,患者に関する情報及び看護業務に関する情報及び医療業務に関する情報よりなる医療データのデータベースを有している。患者に関する情報には,個人データに相当する生体情報データや個人の氏名,住所等のデータ,看護内容や看護予定のデータ等が含まれる。看護業務に関する情報には,医師から看護婦への指示であるオーダリングのデータ,個人データに相当する看護婦の看護スケジュールのデータ等が含まれる。医療業務に関する情報は,オーダリングのデータ,個人データに相当する医師のスケジュールのデータ等が含まれる。」

「【0049】まず,図3に示すような待機画面を表示している状態において,看護婦が自己のカード32を使用者識別手段17に近接させると,使用者識別手段17が該カード32からID番号を獲得する。
【0050】プログラム実行選択部11aは,使用者識別手段17の獲得したID番号に基づいて現在の使用者の名前,及び使用者の属性である医師・看護婦・患者の別を判断する。この場合,看護婦のカードであるから,プログラム実行選択部11aは,看護婦用プログラム実行部11bに看護婦用プログラムを実行させる。従って,看護婦用プログラム実行部11bは,図4に示す看護婦用の画面を表示する。」

「【0053】図5は,ボタン112が押された場合の看護婦用プログラムの画面であり,病床の患者の生体情報データが表示される。看護婦用プログラム実行部11bは,ナースステーションに設置された医療データサーバ装置30のデータベースから,利用者である看護婦のID番号,病床用情報端末装置の病床ID番号,をもとにアクセスすることにより,患者の生体情報データを取り出す。
【0054】患者の生体情報データは画面中の表141とグラフ142に表示される。表141の横にはスクロールバー143があり,医療データサーバ装置30に蓄積されている患者の生体情報データの全てを閲覧することができる。グラフ142には表示される生体情報データの表示選択ボタンとして血圧表示144,体温表示145,心拍表示146,呼吸数表示147等があり,表示選択ボタンを押すことにより,選択された生体情報データをグラフに重ねて表示する。また,最新の生体情報データは最新データ表示フィールド148に表示される。
【0055】図6は,ボタン113が押された場合の看護婦用プログラムの画面であり,看護スケジュールを表示する。看護婦用プログラム実行部11bは,利用者である看護婦のID番号,病床用情報端末装置の病床ID番号,をもとに,ナースステーションに設置された医療データサーバ装置30のデータベースから,使用者である看護婦の看護スケジュールデータを取り込む。看護婦は,日付選択フィールド151で日付を選択し,選択された日付に該当するスケジュールデータを時刻スケジュール表示フィールド152に表示する。」


第8 当審の判断

1 甲1に記載された発明及び甲2記載事項
(1)甲1に記載された発明
上記第7の1から甲1には,実施例2の電子カルテサーバ3及びベッドサイド端末1に係る,次の発明(以下,電子カルテサーバ3について「甲1発明1」,ベッドサイド端末1について「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。なお,実施例2において,実施例1と同様等とされる構成は,実施例2の構成に含まれるものと解釈する。

ア 電子カルテアプリケーション5の起動について
実施例2【0107】の「医師Aが病院太郎のベッドサイド端末11で,実施例1で説明した手順で,電子カルテアプリケーション5を起動すると」について,電子カルテアプリケーション5の起動は,実施例1【0034】【0036】【0043】を参照すると,患者向け診療情報ボタン,医療スタッフ向け診療情報ボタン,ID及びPASSWARD入力フィールドを含むメニュー画面において,医療スタッフのID及びPASSWORDでログインすることで,電子カルテアプリケーション起動ボタンを含む医療スタッフ向け診療情報メニューがベッドサイド端末1の表示装置に表示され,医師による電子カルテアプリケーション起動ボタンの選択により行われるものである。

イ 患者名の取得について
実施例2【0108】の「電子カルテサーバ3は,ベッドサイド端末識別子,及び,医療スタッフ識別子を受信すると,実施例1と同様に,ベッドサイド端末識別部6を起動し,ベッドサイド端末識別子に対応する患者名をベッドサイド端末情報記憶部7から取得する(S8-3)」について,患者名の取得は,実施例1【0045】【0046】【0053】を参照すると,電子カルテサーバ3が,ベッドサイド端末1からベッドサイド端末1の識別子を受信すると,ベッドサイド端末識別部6を起動し,ベッドサイド端末識別部6は,ベッドサイド端末情報記憶部7を参照して,ベッドサイド端末1の識別子に対応する患者識別子を取得し,患者を識別する患者識別子として,患者名を用いてもよく,ベッドサイド端末識別子に対応する患者名をベッドサイド端末情報記憶部7から取得することで行われるものである。

(甲1発明1)
電子カルテサーバ3であって,
電子カルテサーバ3は,ベッドサイド端末識別部6,ベッドサイド端末情報記憶部7,カルテ情報取得部8,電子カルテデータベース9,カルテ情報送信部10,状態情報受信処理部14,状態情報記憶部15,状態情報取得部16,及び,状態情報送信部17で構成され(【0024】【0071】),電子カルテデータベース9は,患者に関する電子カルテデータを含む診療情報を記憶するデータベースであり(【0027】),状態情報記憶部15のレコードレイアウトは,アプリケーションデータ記憶部13と同様のものであり,利用者ID及び患者名をキーとして構成されており,また,状態情報記憶部15は,各医師,各患者に対する状態情報を記憶しており(【0103】),
電子カルテサーバ3は,ベッドサイド端末1において,医療スタッフのID及びPASSWORDでログインされた場合に表示される医療スタッフ向け診療メニューにおいて表示される電子カルテアプリケーション起動ボタンの選択により起動される,電子カルテアプリケーション5が起動されると送出されるベッドサイド端末識別子,及び,医療スタッフ識別子を受信し(【0032】?【0039】【0043】【0106】?【0119】図2,図3,図4,図8),
電子カルテサーバ3のベッドサイド端末識別部6は,ベッドサイド端末識別情報を受信すると,ベッドサイド端末識別子に対応する患者名である患者識別子をベッドサイド端末情報記憶部7から取得し((S8-3),【0108】),
ベッドサイド端末識別部6が患者名を取得することで起動された状態情報取得部16が,状態情報記憶部15を参照して,医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報が存在するか否か判定し((S8-4),【0109】),
医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報が存在しない場合,カルテ情報取得部8が,ベッドサイド端末識別部6で取得した患者識別子(患者名)に基づき,診療情報を電子カルテデータベース9から取得し,カルテ情報取得部8で診療情報を取得すると,カルテ情報送信部10が,取得した診療情報をベッドサイド端末1に送出し(【0028】【0053】?【0056】【0058】【0109】【0118】),
医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報が存在する場合,医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報を取得し,状態情報送信部17は,取得した状態情報をベッドサイド端末1に送出し((S8-6),【0075】【0109】?【0111】),
ベッドサイド端末1において,診療情報又は状態情報に基づいた診療情報が電子カルテアプリケーション5で表示されると,医療スタッフは,電子カルテアプリケーション5を利用して,当該患者に関する電子カルテデータを含む診療情報の参照又は更新をする事が出来(【0061】【0062】【0118】),医師が参照している診療情報の今回カルテ記述フィールドに入力された編集済みのオーダは,電子カルテデータとして,電子カルテデータベース9に格納される(【0084】?【0087】),
電子カルテサーバ3。

(甲1発明2)
ベッドサイド端末1であって,
ベッドサイド端末1は,ベッドサイド端末制御部4,電子カルテアプリケーション5を備え(【0020】),
ベッドサイド端末1の備える表示装置には,患者向け診療情報ボタン,医療スタッフ向け診療情報ボタン,ID入力フィールド,及びPASSWORD入力フィールドで構成されているメニュー画面が表示され(【0033】【0034】),医療スタッフ向け診療情報ボタンが選択され,入力されたID,及び,PASSWORDが医療スタッフのものであるとベッドサイド端末制御部4で判断されると,バイタルサイン照会ボタン,処方歴・病歴・検歴照会ボタン,及び,電子カルテアプリケーション起動ボタンで構成される医療スタッフ向け診療情報メニューがベッドサイド端末1の表示装置に表示され(【0038】【0039】),
電子カルテデータベース9は,患者に関する電子カルテデータを含む診療情報を記憶するデータベースであり(【0027】),
電子カルテアプリケーション起動ボタンが選択されると,ベッドサイド端末制御部4は,ベッドサイド端末1の識別子を取得し(【0021】【0043】),
医師Aが病院太郎のベッドサイド端末1で,電子カルテアプリケーション5を起動すると,ベッドサイド端末識別子,及び,医療スタッフ識別子を電子カルテサーバ3に送出し(【0043】【0107】),電子カルテアプリケーション5は,患者に関する電子カルテデータを含む診療情報の参照又は更新をする為のアプリケーションであり(【0022】),ベッドサイド端末識別子,及び,医療スタッフ識別子が電子カルテサーバ3で受信されると,ベッドサイド端末識別子に対応する患者名が取得され(【0108】),
電子カルテサーバ3が,状態情報記憶部15を参照して,医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報が存在しないと判定する場合,電子カルテデータベース9からベッドサイド端末1に対応する患者の診療情報を取得して,取得した診療情報をベッドサイド端末1に送出し,ベッドサイド端末1は,電子カルテサーバ3から診療情報を受信すると,電子カルテアプリケーション5は診療情報を表示装置に表示し(【0058】?【0060】【0109】【0118】),
電子カルテサーバ3が,状態情報記憶部15を参照して,医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報が存在すると判定する場合,ベッドサイド端末1は,電子カルテサーバ3の状態情報送信部により送出された状態情報を受信し,状態情報に基づいて診療情報を表示装置に表示し(【0058】?【0060】【0109】?【0115】),
ベッドサイド端末1に対応付けられた患者の診療情報又は状態情報に基づいた診療情報が表示されると,医療スタッフは,電子カルテアプリケーション5を利用して,当該患者に関する電子カルテデータを含む診療情報の参照又は更新ができる(【0061】【0062】【0118】),
ベッドサイド端末1。

(2)甲2に記載された事項
上記第7の2から甲2には次の事項が記載されているといえる(以下,「甲2記載事項」という。)。

オーダリングシステム10において作成された電子カルテの情報や診察結果,服薬情報等を閲覧可能であるベッドサイド端末5がベッド番号に関連付けられており(患者に関連付けられており),ナースコールサーバ9に蓄積されている電子カルテや診察結果等を閲覧する場合は,操作する患者に関する情報以外を閲覧することはできないようにナースコールサーバ9が制御しており(【0019】),
まず,ベッドサイド端末5は,患者が操作して患者に対して様々な情報を表示する患者操作モード状態にあり,看護師が使用する際には,例えば看護師IDをタッチパネルで入力することにより,処置等のデータを入力することができる看護師操作モードに状態が変更され(【0021】),
処置記録を受信した制御器4は,受信した情報が特定の患者に対する処置記録であることを認識し,合わせて送信されたベッドサイド端末5のID情報を元に,ベッドサイド端末5に関連付けられている患者情報を,ベッドと患者の関連付けやベッドサイド端末5とベッド番号の関連付け等を記憶する情報記録部43から読み取って患者を特定し,特定した患者情報と合わせて処置記録をナースコールサーバ9に送信し(【0022】),
この処置記録を受信したナースコールサーバ9は,記憶されている看護記録を受信した処置記録を追加して更新し,この結果,ベッドサイド端末5から入力された患者の処置記録がナースコールサーバ9に記録されている看護記録に追加記録され,看護記録が一元管理される(【0022】),
ナースコールシステム。

2 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明1との対比
ア 甲1発明1の「電子カルテサーバ3」は,後述する相違点は別にして,本件発明1の「情報処理装置」に相当する。

イ 甲1発明1の「患者の診療情報」は,本件発明1の「患者の医療情報」に相当する。

ウ 甲1発明1の「ベッドサイド端末識別子」は,ベッドサイド端末識別子に対応する患者名を取得するために用いられる情報であって,患者名に基づき診療情報を電子カルテデータベース9から取得するために用いられ,患者識別子である患者名を介して診療情報に対応付けられていることから,甲1発明1の「ベッドサイド端末識別子」と,本件発明1の「患者を識別するための第1識別情報」とは,「患者の医療情報取得情報」で共通する。

エ 甲1発明1の「医療スタッフ識別子」は,本件発明1の「看護師または医師を識別するための第2識別情報」に相当する。

オ 甲1発明1の「ベッドサイド端末1」は,ベッドサイド端末識別子,及び,医療スタッフ識別子を電子カルテサーバ3に送出し,電子カルテサーバ3から受信した診療情報を表示し,患者の医療情報の参照及び更新を可能にする機能を有する端末装置である点で,本件発明1の「端末装置」に相当する。

カ 構成要件1A
甲1発明1の電子カルテサーバ3のベッドサイド端末識別部6は,ベッドサイド端末1からベッドサイド端末1の識別子を受信する手段を備えることは明らかであり,この手段と,本件発明1の「患者を識別するための第1識別情報を端末装置より取得する第1取得部」とは,「患者の医療情報取得情報を端末装置より取得する第1取得部」で共通する。

キ 構成要件1Bについて
甲1発明1の「ベッドサイド端末識別部6は,ベッドサイド端末識別情報を受信すると,ベッドサイド端末識別子に対応する患者名である患者識別子をベッドサイド端末情報記憶部7から取得」することと,本件発明1の「前記第1識別情報と,患者を識別する情報として予め記憶部に記憶された第1識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定部」とは,「前記患者の医療情報取得情報と,予め記憶部に記憶された患者の医療情報取得情報とが一致するか否かを判定する第1判定部」で共通する。

ク 構成要件1Cについて
甲1発明1において,患者識別子(患者名)に基づき電子カルテデータベース9から取得される診療情報は,患者名に対応するベッドサイド端末識別子(患者の医療情報取得情報)にも対応するものであるから,甲1発明1の,「医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報が存在しない場合,カルテ情報取得部8が,ベッドサイド端末識別部6で取得した患者識別子(患者名)に基づき,診療情報を電子カルテデータベース9から取得し,カルテ情報取得部8で診療情報を取得すると,」「取得した診療情報をベッドサイド端末1に送出」する「カルテ情報送信部10」と,本件発明1の「前記第1識別情報が一致すると判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記端末装置へ出力する第1出力部」とは,「前記患者の医療情報取得情報が一致すると判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記端末装置へ出力する第1出力部」で共通する。

ケ 構成要件1Dについて
甲1発明1の電子カルテサーバ3は,医療スタッフ識別子に対応する状態情報が存在するか否かを判定するものであって,甲1発明の電子カルテサーバ3は医療スタッフ識別子を受信しているから,甲1発明1の電子カルテサーバ3は,本件発明1の「看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部」に相当する構成を有しているといえる。

コ 構成要件1Eについて
甲1発明1の電子カルテサーバ3の「ベッドサイド端末識別部6が患者名を取得することで起動された状態情報取得部16が,状態情報記憶部15を参照して,医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報が存在するか否か判定」する手段は,医療スタッフ識別子に基づき判定を行っており,医療スタッフ識別子が「前記第1識別情報が一致すると判定した場合に」取得されるとの条件とは無関係であるとの限度で,本件発明1の「前記第2識別情報と,前記記憶部に看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部」に相当する。

サ 構成要件1Fについて
甲1発明1の電子カルテサーバ3の「医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報が存在する場合,医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報を取得し,状態情報送信部17は,取得した状態情報をベッドサイド端末1に送出」するための手段は,送出された状態情報について,ベッドサイド端末1において,「診療情報又は状態情報に基づいた診療情報が電子カルテアプリケーション5で表示されると,医療スタッフは,電子カルテアプリケーション5を利用して,当該患者に関する電子カルテデータを含む診療情報の参照又は更新をする事が出来」,「医師が参照している診療情報の今回カルテ記述フィールドに入力された編集済みのオーダは,電子カルテデータとして,電子カルテデータベース9に格納される」ものであり,「医療スタッフ識別子」が「前記第1識別情報が一致すると判定した場合に」取得されるとの条件とは無関係であるとの限度で,甲1発明1の電子カルテサーバ3は,本件発明1の「前記第2識別情報が一致すると判定した場合に,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を前記端末装置へ出力する第2出力部」に相当する構成を有しているといえる。

シ そうすると,本件発明1と甲1発明1との,一致点,相違点は次のとおりである。

<一致点>
患者の医療情報取得情報を端末装置より取得する第1取得部と,
前記患者の医療情報取得情報と,予め記憶部に記憶された患者の医療情報取得情報とが一致するか否かを判定する第1判定部と,
前記患者の医療情報取得情報が一致すると判定した場合,前記患者の医療情報取得情報に対応する患者の医療情報を前記端末装置へ出力する第1出力部と,
看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部と,
前記第2識別情報と,前記記憶部に看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部と,
前記第2識別情報が一致すると判定した場合に,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を前記端末装置へ出力する第2出力部と,
を備える情報処理装置。

<相違点>
(相違点1)
本件発明1では,患者の医療情報取得情報が「患者を識別するための第1識別情報」であって,予め記憶部に記憶される患者の医療情報取得情報が「患者を識別する情報として」記憶されるのに対し,甲1発明1では,患者の医療情報取得情報が「ベッドサイド端末識別子」であって「患者を識別するための第1識別情報」でなく,予め記憶部に記憶される患者の医療情報取得情報は「患者を識別する情報として」記憶されるものでない点。

(相違点2)
第2取得部における「看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する」条件について,本件発明1は,「前記第1識別情報が一致すると判定した場合に,」取得するのに対し,甲1発明1は,そのような条件はなく,
「第2判定部」における「前記記憶部に看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2識別情報と」「一致するか否か判定する」「前記第2識別情報」が,本件発明1は,「第2取得部」で取得された「第2識別情報」であるのに対し,甲1発明1は,そのような条件で取得されたものではなく,
「第2出力部」における「前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を前記端末装置へ出力する」条件について,本件発明1は,「第2判定部」で判定された「前記第2識別情報が一致すると判定した場合に,」出力するのに対し,甲1発明は,そのような条件ではない点。

ス 当事者の主張について
(ア)請求人は,甲1発明1のベッドサイド端末識別子は,本件発明1の「患者を識別するための第1識別情報」に相当し,また,甲1発明のベッドサイド端末情報記憶部7に記憶されたベッドサイド端末識別子は,「予め記憶部に記憶された第1識別情報」に相当する,と主張している。
しかし,甲1発明1では,ベッドサイド端末識別子を取得する一方で,患者の診療情報の特定にあたってはベッドサイド端末識別子ではなく,患者識別子(患者名)を用いているから,甲1発明1のベッドサイド端末識別子が,本件発明1の「患者を識別するための第1識別情報」に相当するということはできない。また,甲1発明1のベッドサイド端末情報記憶部7は,「ベッドサイド端末識別子」と「患者識別子(患者名)」を記憶するところ,このうち,「患者を識別する情報」として記憶されているのは「患者識別子(患者名)」であり,「ベッドサイド端末識別子」は,「患者識別子(患者名)」と対応するように記憶されることで患者の医療情報取得情報として機能するにすぎない。
よって,この点の請求人の主張は,採用できない。
なお,被請求人は,相違点Aとして,本件発明1の1Aないし1Cは全部相違点であると主張するが,上記のとおり,本件発明1の「患者を識別するための第1識別情報」と甲1発明1の「ベッドサイド端末識別子」とは,患者の医療情報を出力するために取得されて記憶部に記憶されたものと一致判定が行われる「患者の医療情報取得情報」である点においては対応しているから,本件発明1の1Aないし1Cは,上記一致点で認定した限度において一致点である。

(イ)請求人は,甲1の実施例2における「状態情報が不存在の場合の処理手順」を甲1記載の発明として主張しており,さらに,甲1の【0108】【0109】図8の記載を根拠として,甲1の実施例2のフローチャート中,S8-3(「ベッドサイド端末情報記憶部から対象患者情報取得」)に後続するS8-4の判断(「状態情報が存在するか?」)は,「医療スタッフ識別子が存在するか?」の判断(S8-4(1))と「状態情報が存在するか?」の判断(S8-4(2))からなり,甲1発明1の状態情報取得部が,前者の判断を行うものであって,本件発明1の「第2判定部」に相当し,医療スタッフの認証が完了すると,電子カルテアプリケーションが起動され,患者の診療情報が表示され(S8-11),医療スタッフは,電子カルテアプリケーション5を利用して,当該患者に関する電子カルテデータを含む診療情報の参照又は更新をすることが出来るように,カルテ情報送信手段10がベッドサイド端末の入力画面用の診療情報を送信するものであって,本件発明1の「第2出力部」に相当する旨主張する。
しかし,甲1【0032】?【0043】【0106】?【0109】,図2,図3,図4,図8の記載によれば,ナースステーションや診察室等で利用され,診療情報を参照又は更新する為に利用される電子カルテアプリケーションを起動するための電子カルテアプリケーション起動ボタンが,「医療スタッフのID及びPASSWORDでログインされた場合」に表示される医療スタッフ向け診療情報メニューにおいて示され,これが選択されるとベッドサイド端末1から「ベッドサイド端末識別子」と「医療スタッフ識別子」が電子カルテサーバ3に送出され,このうち「ベッドサイド端末識別子」に対応する「患者名」がベッドサイド識別情報記憶部7から取得され,「医療スタッフ識別子,及び,患者名」に対応する状態情報が存在するか否かが判定されるものであり,「医療スタッフのID及びPASSWORD」によるログインがサーバにおけるログインを伴うものである旨の明示はない。仮にこのログインがサーバにおけるログイン処理を伴うとしても,医療スタッフ向け診療情報メニューを表示するためのログイン処理は,医療スタッフ以外の者による電子カルテデータベース9の患者の診療情報の参照を不可能とするものとして,実施例1と実施例2において共通するものであって,遅くとも電子カルテアプリケーションの起動により送信されたベッドサイド端末識別子を用いた処理であるS2-3又はS8-3と同時に行われる必要がある。さらに,甲1【0103】の記載によれば,状態情報記憶部15のレコードレイアウトは,「利用者ID及び患者名」をキーとして構成されているのであるから,S8-3(「ベッドサイド端末情報記憶部から対象患者情報取得」)に後続するS8-4の判断(「状態情報が存在するか?」)は,利用者IDである医療スタッフ識別子と患者名の組み合わせをキーとする状態情報が存在するか否かの判断処理であることが明確に示されている。
以上を踏まえれば,甲1【0109】のS8-4についての記載は,状態情報記憶部15に記憶されている状態情報のレコードの構成を考慮すると,「医療スタッフ識別子,及び,患者名」に対応する「状態情報」が「存在するか否かを判定する」旨を示しているのであって,S8-3(「ベッドサイド端末情報記憶部から対象患者情報取得」)と「状態情報が存在するか?」の判断(S8-4(2))の間に「医療スタッフ識別子が存在するか?」の判断(S8-4(1))が介在していると認定することはできない。そのため,甲1の実施例2について,S8-3と「状態情報が不存在の場合の処理手順」(S8-9(「電子カルテデータベースから対象患者の診療情報取得」),S8-10(「ベッドサイド端末に診療情報を送信」),S8-11(「ベッドサイド端末の電子カルテアプリケーションで診療情報を表示」))との間において「状態情報が存在するか否か」と区別される「医療スタッフ識別子が存在するか?」の判断(S8-4(1))がなされていると認定することはできない。
そして,上記のとおり,電子カルテアプリケーション5の起動のための医療スタッフの認証は,S8-4において行われるものではないものの,医療スタッフ識別子を使用して診療情報を表示させるための処理は,S8-4において,「医療スタッフ識別子,及び,患者名」に対応する「状態情報」が存在する場合であり,本件発明1の「前記第2識別情報が一致すると判定した場合」に対応するものであるから,上記一致点及び相違点2のとおり認定する。

(ウ)請求人は,本件発明1の1Fの「第2出力部」が出力する「入力画面」について,甲1発明1では「入力画面用の医療情報」であるとして相違点(請求人による相違点2)としつつ,これを「実質的な相違でない」としており,他方,被請求人はこの点を相違点でないとしているが,当審は上記のとおり一致点と認定する。
また,請求人は,甲3の記載に基づいて周知技術について主張しているが,この点は,次の(2)イ(イ)bにおいて後述する。

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
甲1には,患者の転棟,転室等の移動に伴うベッドサイド端末情報記憶部7のメンテナンス漏れの発生の可能性と,そのことを踏まえて,電子カルテアプリケーションの起動の指示の際,患者名のような患者を識別する識別子を入力して,ベッドサイド端末情報記憶部7に記憶された内容と整合性チェックをしても良い旨及び患者の移動情報によりベッドサイド端末情報記憶部7を更新しても良い旨の記載があり(【0054】),この記載は,甲1発明1が,ベッドサイド端末1において患者名を入力できない事情を踏まえたものでないこと及びベッドサイド端末識別子を患者の医療情報取得情報として用いる場合にはメンテナンスが必要となる反面これを用いない場合にはメンテナンスが必要でなくなることを示している。いうなれば,甲1発明1の「ベッドサイド端末識別子」は,メンテナンスが必要というデメリットを前提として医師によって入力される患者名の代替情報として用いられているのであって,患者名を用いれば患者名の入力の手間は掛かるデメリットがあるものの,上記のメンテナンスが必要となるというデメリットは解消するものとなっており,患者の医療情報取得情報として「ベッドサイド端末識別子」と患者名のいずれを用いるかは,双方のメリットとデメリットを勘案して当業者が適宜選択すべき選択事項にすぎず,当業者が容易になし得たことである。
してみると,甲1発明1の患者の医療情報取得情報として「ベッドサイド端末識別子」に代えて患者名つまり「患者を識別するための第1識別情報」を用いることとし,それに伴って,診療情報特定に係る判定のために予め記憶部に記憶される患者の医療情報取得情報を「患者を識別する情報として」記憶されるようにすることは,当業者が容易になし得たことである。なお,甲1では,【0043】ないし【0053】及び図5に示されているようにベッドサイド端末識別子と患者名が一対一対応づけられるものであるから,その観点からも「ベッドサイド端末識別子」に代えて「患者を識別するための第1識別情報」を用いるように構成することは当業者が容易になし得たことであるともいえる。

イ 相違点2
(ア)動機付けについて
上記(1)ス(イ)において上述したように,甲1発明1の状態情報記憶部15のレコードレイアウトは,「利用者ID及び患者名」をキーとして構成されており,S8-3(「ベッドサイド端末情報記憶部から対象患者情報取得」)に後続するS8-4の判断(「状態情報が存在するか?」)は,利用者IDである医療スタッフ識別子と患者名の組み合わせをキーとする状態情報が存在するか否かの判断処理であるところ,S8-4において用いる「医療スタッフ識別子」はS8-3に先だってベッドサイド端末識別子とともにS8-1又はS8-2において取得されているから,S8-3の後に改めて取得する必要がなく,さらに,これらの処理は,医療スタッフによりログインされた「医療スタッフ向け診療情報メニュー」において,医療スタッフが「電子カルテアプリケーション起動」ボタンを選択することで実行されるものであるから,S8-4では,S8-1又はS8-2において取得された「ベッドサイド端末識別子」と「医療スタッフ識別子」を一体不可分に用いるものであると解するのが自然である。
よって,甲1発明1において,相違点2の構成を採用する動機はない。

(イ)副引例及び周知例について
a 甲2記載事項について
甲2記載事項は,上記のとおり「ベッドサイド端末5は,患者が操作して患者に対して様々な情報を表示する患者操作モード状態にあり,看護師が使用する際には,例えば看護師IDをタッチパネルで入力することにより,処置等のデータを入力することができる看護師操作モードに状態が変更」される(甲2【0021】)ものであるとしても,上記(ア)のとおり,甲1発明1において,S8-3の後に「医療スタッフ識別子」をベッドサイド端末3から取得する構成としようとする動機はないから,甲1発明1に甲2記載事項を適用することはできない。

b 甲3に記載された技術的事項及び周知技術について
上記第7の3に摘記したところによれば,甲3には,本件発明1の「前記第1識別情報が一致すると判定した場合」に「第2識別情報」を「取得」することに対応する技術的事項は記載されていない。また,この点は,周知技術であるともいえない。

(ウ)よって,甲1発明1において,相違点2の構成を採用することは,当業者が容易に想到することができた事項ではない。


(3) まとめ
以上のとおり,本件発明1は,甲1発明1,甲2記載事項及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本件発明2?4について
(1)本件発明2について
本件発明2は,本件発明1の従属請求項に係る発明であり,上記2と同様の理由により,本件発明2は,上記甲1発明1,甲2記載事項及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明3,4について
本件発明3,4は,それぞれ,情報処理装置である本件発明1に対応する情報処理方法,情報処理プログラムに係る発明である。甲第1号証に記載された発明は,装置発明だけではなく,方法及びプログラム発明としても認定をすることができる。そして,このように認定した甲第1号証に記載された方法及びプログラム発明と,本件発明3及び4との相違点は,実質的に,上記2(1)で認定した相違点1及び2と同じである。そうすると,上記2(2)及び(3)のとおり,本件発明3及び4は,甲第1号証に記載された発明,甲2記載事項及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本件発明5について
(1)本件発明5と甲1発明2との対比
ア 甲1発明2の「ベッドサイド端末1」は,後述する相違点は別にして,本件発明5の「端末装置」に相当する。

イ 甲1発明2の「ベッドサイド端末識別子」は,「ベッドサイド端末識別子に対応する患者名が取得され」る情報であるから,甲1発明2の「ベッドサイド端末識別子」と,本件発明5の「患者を識別するための第1識別情報」とは,「患者の医療情報取得情報」で共通する。

ウ 甲1発明2の「医療スタッフ識別子」は,本件発明5の「看護師または医師を識別するための第2識別情報」に相当する。

エ 甲1発明2の「電子カルテサーバ3」は,後述する相違点は別にして,本件発明5の「情報処理装置」に相当する。

オ 構成要件5Aについて
甲1発明2の,ベッドサイド端末1の識別子を取得する「ベッドサイド端末制御部4」は,患者の医療情報取得情報を取得する第1取得部である点で,本件発明5の「患者を識別するための第1識別情報を取得する第1取得部」と共通する。

カ 構成要件5Bについて
甲1発明2は,医師Aが病院太郎のベッドサイド端末1で,「電子カルテアプリケーション5を起動すると,ベッドサイド端末制御部4が取得したベッドサイド端末識別子を電子カルテサーバ3に送出」することから,ベッドサイド端末1はベッドサイド端末識別子を送出する手段を備えており,甲1発明2の,ベッドサイド端末1のベッドサイド端末制御部4が取得したベッドサイド端末識別子を送出する手段と,本件発明5の「前記第1取得部で取得した前記第1識別情報を情報処理装置に送信する第1送信部」とは,「前記第1取得部で取得した前記患者の医療情報取得情報を情報処理装置に送信する第1送信部」で共通する。

キ 構成要件5Cについて
甲1発明2において,患者識別子(患者名)に基づき電子カルテデータベース9から取得される診療情報は,患者名に対応するベッドサイド端末識別子にも対応するものとなっており,甲1発明2のベッドサイド端末1は,「電子カルテサーバ3が,状態情報記憶部15を参照して,医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報が存在しないと判定する場合,電子カルテデータベース9からベッドサイド端末1に対応する患者の診療情報を取得して,取得した診療情報をベッドサイド端末1に送出し,ベッドサイド端末1は,電子カルテサーバ3から診療情報を受信」し表示装置に表示するものであるから,ベッドサイド端末識別子に対応する患者の医療情報を電子カルテサーバ3から受信し,表示する手段を有することは明らかであり,この表示する手段と,本件発明5の「前記第1取得部で取得した前記第1識別情報と記憶部に予め記憶された第1識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第1識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する表示部」とは,「前記第1取得部で取得した前記患者の医療情報取得情報と記憶部に予め記憶された患者の医療情報取得情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記患者の医療情報取得情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する表示部」で共通する。

ク 構成要件5Dについて
甲1発明2は,「医療スタッフ向け診療情報ボタンが選択され,入力されたID,及び,PASSWORDが医療スタッフのものであるとベッドサイド端末制御部4で判断される」から,ベッドサイド端末1は,ID及びPASSWORDを取得する取得部を有することは明らかであり,この取得部は,本件発明5の「看護師または医師を識別するための第2識別情報を取得する第2取得部」に相当する。

ケ 構成要件5Eについて
甲1発明2は,医師Aが病院太郎のベッドサイド端末1で,「電子カルテアプリケーション5を起動すると,入力された医療スタッフ識別子を電子カルテサーバ3に送出」することから,ベッドサイド端末1は医療スタッフ識別子を送出する手段を備えており,この送出する手段は,医療スタッフ識別子の入力が「前記患者の医療情報が前記表示部に表示された場合に」との条件とは無関係であるとの限度で,本件発明5の「前記第2取得部で取得した前記第2識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信部」に相当する。

コ 構成要件5Fについて
甲1発明2のベッドサイド端末1は,「電子カルテサーバ3が,状態情報記憶部15を参照して,医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報が存在すると判定する場合」,「電子カルテサーバ3の状態情報送信部により送出された状態情報を受信し,状態情報に基づいて診療情報を表示装置に表示し」,これにより「ベッドサイド端末1に対応付けられた患者の診療情報又は状態情報に基づいた診療情報が表示されると,医療スタッフは,電子カルテアプリケーション5を利用して,当該患者に関する電子カルテデータを含む診療情報の参照又は更新ができる」ことは,「医療スタッフ識別子,及び,患者名に対応する状態情報が存在すると判定する場合」との判定に使用される「医療スタッフ識別子」が,「前記患者の医療情報が前記表示部に表示された場合に」取得されるとの条件とは無関係であるとの限度で,本件発明5の「前記表示部は,前記第2取得部で取得した前記第2識別情報と記憶部に予め記憶された第2識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を表示する」に相当する構成を有しているといえる。

サ そうすると,本件発明5と甲1発明2との,一致点,相違点は次のとおりである。

<一致点>
患者の医療情報取得情報を取得する第1取得部と,
前記第1取得部で取得した前記患者の医療情報取得情報を情報処理装置に送信する第1送信部と,
前記第1取得部で取得した前記患者の医療情報取得情報と記憶部に予め記憶された患者の医療情報取得情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記患者の医療情報取得情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する表示部と,
看護師または医師を識別するための第2識別情報を取得する第2取得部と,
前記第2取得部で取得した前記第2識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信部と,を備え,
前記表示部は,前記第2取得部で取得した前記第2識別情報と記憶部に予め記憶された第2識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を表示する
端末装置。

<相違点>
(相違点1)
本件発明5では,患者の医療情報取得情報が「患者を識別するための第1識別情報」であるのに対し,甲1発明2では,患者の医療情報取得情報が「ベッドサイド端末識別子」である点。

(相違点2)
第2取得部における「看護師または医師を識別するための第2識別情報を取得する」条件について,本件発明5は,「前記患者の医療情報が前記表示部に表示された場合に,」取得するのに対し,甲1発明2は,そのような条件はなく,
「第2送信部」で送信される「前記第2識別情報」が,本件発明5は,「前記第2取得部」で取得された「第2識別情報」であるのに対し,甲1発明2は,そのような条件で取得されたものではなく,
「表示部」における「前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面を表示する」条件である「記憶部に予め記憶された第2識別情報と」「一致すると前記情報処理装置が判定」する「前記第2識別情報」が,本件発明5は,「前記第2取得部で取得した前記第2識別情報」であるのに対し,甲1発明2は,そのような条件で取得されたものではない点。

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
甲1には,患者の転棟,転室等の移動に伴うベッドサイド端末情報記憶部7のメンテナンス漏れの発生の可能性と,そのことを踏まえて,電子カルテアプリケーションの起動の指示の際,患者名のような患者を識別する識別子を入力して,ベッドサイド端末情報記憶部7に記憶された内容と整合性チェックをしても良い旨及び患者の移動情報によりベッドサイド端末情報記憶部7を更新しても良い旨の記載があり(【0054】),この記載は,甲1が,ベッドサイド端末1において患者名を入力できない事情を踏まえたものでないこと及びベッドサイド端末識別子を患者の医療情報取得情報として用いる場合にはメンテナンスが必要となる反面これを用いない場合にはメンテナンスが必要でなくなることを示している。いうなれば,甲1の「ベッドサイド端末識別子」は,メンテナンスが必要というデメリットを前提として医師によって入力される患者名の代替情報として用いられているのであって,患者名を用いれば患者名の入力の手間は掛かるデメリットがあるものの,上記のメンテナンスが必要となるというデメリットは解消するものとなっており,患者の医療情報取得情報として「ベッドサイド端末識別子」と患者名のいずれを用いるかは,双方のメリットとデメリットを勘案して当業者が適宜選択すべき選択事項にすぎず,当業者が容易になし得たことである。なお,甲1では,【0043】ないし【0053】及び図5に示されているようにベッドサイド端末識別子と患者名が一対一対応づけられるものであるから,その観点からも「ベッドサイド端末識別子」に代えて「患者を識別するための第1識別情報」を用いるように構成することは当業者が容易になし得たことであるともいえる。

イ 相違点2について
この相違点2は,本件発明1と甲1発明1における相違点2と実質的に同じである。そうすると,上記2(2)イのとおり,甲1発明2において,相違点2の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たものではない。

(3) まとめ
以上のとおり,本件発明5は,甲1発明2,甲2記載事項及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 本件発明6,7について
本件発明6,7は,それぞれ,端末装置である本件発明5に対応する端末装置の制御方法,端末装置の制御プログラムに係る発明である。甲第1号証に記載された発明は,端末装置発明だけではなく,方法及びプログラム発明としても認定をすることができる。そして,このように認定した甲第1号証に記載された方法及びプログラム発明と,本件発明6及び7との相違点は,実質的に,上記4(1)で認定した相違点1及び2と同じである。そうすると,上記4(2)及び(3)のとおり,本件発明6及び7は,甲第1号証に記載された発明,甲2記載事項及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 小括
以上によれば,本件発明1ないし7についての特許は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものではなく,同法123条1項2号が規定する無効理由を有するものではない。
よって,請求人が主張する無効理由には,理由がない。


第9 むすび
以上のとおりであって,請求人が主張する無効理由には理由がないから,本件特許の請求項1ないし7に係る発明についての特許は,無効とすべきものではない。
審判費用については,特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人の負担とする。

 
審理終結日 2020-04-09 
結審通知日 2020-04-13 
審決日 2020-04-28 
出願番号 特願2015-255513(P2015-255513)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 緑川 隆  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 相崎 裕恒
松田 直也
登録日 2018-03-23 
登録番号 特許第6309504号(P6309504)
発明の名称 プログラム、情報処理装置及び情報処理方法  
代理人 安國 忠彦  
代理人 加藤 卓士  
代理人 飯田 秀郷  
代理人 若山 俊輔  
代理人 清水 紘武  
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