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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1372378
審判番号 不服2019-2282  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-19 
確定日 2021-04-14 
事件の表示 特願2017-112038「操作ジェスチャの入力中に,及び,仮想装置の操作に関連して,複雑な触覚刺激を提供するシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 9日出願公開、特開2017-201533、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)7月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年7月22日、米国)を国際出願日とする特願2012-521762号の一部を平成27年10月8日に新たな特許出願とした特願2015-200105号の一部を平成29年6月6日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 3月29日付け:拒絶理由通知書
平成30年10月 3日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年10月15日付け:拒絶査定(原査定)
平成31年 2月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 5月 7日付け:拒絶理由(当審第1拒絶理由)通知書
令和 2年11月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年11月25日付け:拒絶理由(当審第2拒絶理由)(最後)通知書
令和 3年 2月24日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成30年10月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

[理由1](新規性)
本願請求項8に係る発明は、以下の引用文献A又はBに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

[理由2](進歩性)
本願請求項8に係る発明は、以下の引用文献A又はBに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、原査定においては、なお書きとして、本願請求項1ないし7及び9ないし21に係る発明について、以下の引用文献A又は引用文献Bに記載された発明に基いて、以下の引用文献Cに記載された周知技術を参酌することにより、当業者が容易に発明をすることができた旨の示唆がなされている。

[引用文献等一覧]
A 特開2005-332063号公報
B 特開2004-021528号公報
C 特開2008-299866号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審第1拒絶理由の概要
当審第1拒絶理由の概要は次のとおりである。

[理由1](サポート要件)
本願請求項1ないし21に係る発明は、以下の点において発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)本願請求項1に記載の「ユーザインタフェース装置から受信したユーザの体の一部の動作をセンサにより監視する」、本願請求項8に記載の「該ユーザインタフェース装置から受信したユーザの体の一部の動作を監視するように構成されたモーションセンサ」、及び、請求項15に記載の「ユーザインタフェース装置から受信したユーザの体の一部の動作をセンサにより監視し」は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2)請求項15を引用する請求項18に係る発明は、「センサ」が、「ユーザインタフェース装置に加えられる圧力」を検出することによって「体の一部」である「ユーザの頭」の動作を監視するものであるが、そのような態様は、発明の詳細な説明には記載されていない。

[理由2](新規性)
本願請求項1、3及び8ないし10に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

[理由3](進歩性)
本願請求項1ないし21に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
1 特開2008-299866号公報(原査定の引用文献C)
2 特開平8-14911号公報(当審において新たに提示された文献)
3 特開2005-332063号公報(原査定の引用文献A)

第4 当審第2拒絶理由の概要
当審第2拒絶理由の概要は次のとおりである。

(進歩性)
本願請求項1ないし21に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
1 特開2008-299866号公報(当審第1拒絶理由の引用文献1、原査定の引用文献C)
2 特開平8-14911号公報(当審第1拒絶理由の引用文献2)
3 特開2005-332063号公報(当審第1拒絶理由の引用文献3、原査定の引用文献A)

第5 本願発明
本願請求項1ないし21に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明21」という。)は、令和3年2月24日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし21は、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
触覚効果を生成する方法であって、
ユーザの体の一部の動き又は動作を示す、ユーザインタフェース装置の出力信号を監視する工程と、
該体の一部の動き又は動作を、プロセッサにより実行可能なジェスチャモジュールの操作ジェスチャと比較し、前記体の一部の動き又は動作による前記操作ジェスチャの実行を決定する工程と、
前記操作ジェスチャの前記実行に基づくと共に、前記プロセッサにより実行可能なコンテンツモジュールによって前記ユーザインタフェース装置を介して前記ユーザに提供されているコンテンツに基づいて、パラメータによって定義された触覚刺激効果を決定する工程であって、前記パラメータは、前記操作ジェスチャの進行が成功している旨を示すために変更されることと、
触覚出力装置で前記触覚刺激効果を生成する工程と、
前記監視された出力信号に基づいて前記ユーザによる前記操作ジェスチャの実行が失敗したと判断された場合に、該触覚出力装置で該触覚刺激効果と異なる触覚効果を生成する工程と、を備える、方法。
【請求項2】
前記動作が、前記体の一部の動作の方向を変更することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記体の一部が付属品とともに移動する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記体の一部が前記ユーザの頭である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記体の一部の動作が前記体の一部の向きを変更することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記体の一部の動作が前記体の一部を加速させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パラメータは、周期、力、指向性及び位置の、一又は複数を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
触覚効果を生成可能なシステムであって、
ユーザインタフェース装置と、
ユーザの体の一部の動作を監視するように構成されたモーションセンサと、
第一の触覚効果を生成するように構成された触覚アクチュエータと、
前記ユーザインタフェース装置、前記モーションセンサ及び前記触覚アクチュエータと動作可能に通信するプロセッサと、
を備え、
前記ユーザインフェース装置は、前記体の一部の動作を示す信号を出力するように構成され、
該プロセッサは、該モーションセンサに電気的に接続されたジェスチャモジュールを備え、該ジェスチャモジュールは、操作ジェスチャと前記体の一部の動作とを比較するよう構成され、
該プロセッサは、該ジェスチャモジュール及び前記触覚アクチュエータに電気的に接続された刺激モジュールを備え、当該刺激モジュールは、前記体の一部の動作による該操作ジェスチャの実行を決定すると共に、前記操作ジェスチャの前記実行に基づくと共に、前記プロセッサにより実行可能なコンテンツモジュールによって前記ユーザインタフェース装置を介して前記ユーザに提供されているコンテンツに基づいて、前記触覚アクチュエータにより生成される第一の触覚効果のパラメータを決定するように構成され、前記パラメータは、前記操作ジェスチャの進行が成功している旨を示すために変更される、
システム。
【請求項9】
前記刺激モジュールは、さらに、前記出力された信号に基づいて前記ユーザによる前記操作ジェスチャの実行が失敗したと判断された場合に、前記第一の触覚効果と異なる第二の触覚効果であって前記触覚アクチュエータによって生成される第二の触覚効果を決定するよう構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記体の一部が付属品とともに移動し、前記ユーザインタフェース装置が該ユーザの付属品によって収容されるように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記体の一部が前記ユーザの頭であり、前記ユーザインタフェース装置が該ユーザの頭に着用されるように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記体の一部の動作が前記体の一部の動作の方向を変更することを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記体の一部の動作が前記体の一部の向きを変更することを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記モーションセンサが前記体の一部の加速度を監視するように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
触覚効果を生成するためのプロセッサにより実行可能な命令を含むコンピュータ可読媒体であって、該プロセッサにより実行可能な命令によって、プロセッサは、
ユーザの体の一部の動き又は動作を示す、ユーザインフェース装置の出力信号を監視し、
該体の一部の動き又は動作を、プロセッサにより実行可能なジェスチャモジュールの操作ジェスチャと比較し、前記体の一部の動き又は動作による前記操作ジェスチャの実行を決定し、
前記操作ジェスチャの前記実行に基づくと共に、前記プロセッサにより実行可能なコンテンツモジュールによって前記ユーザインタフェース装置を介して前記ユーザに提供されているコンテンツに基づいて、パラメータによって定義された触覚刺激効果を決定し、
触覚出力装置で前記触覚刺激効果を生成し、
前記監視された出力信号に基づいて前記ユーザによる前記操作ジェスチャの実行が失敗したと判断された場合に、該触覚出力装置で該触覚刺激効果と異なる触覚効果を生成し、
前記パラメータは、前記操作ジェスチャの進行が成功している旨を示すために変更される、コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記動作が、前記体の一部の動作の方向を変更することを含む、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記体の一部が前記ユーザの付属品である、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記体の一部が前記ユーザの頭である、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記体の一部の動作が前記体の一部の向きを変更することを含む、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記体の一部の動作が前記体の一部を加速させることを含む、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項21】
前記パラメータは、周期、力、指向性及び位置の、一又は複数を含む、請求項15から20のいずれか一項に記載のコンピュータ可読媒体。」

なお、本願発明2ないし7は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明9ないし14は、本願発明8を減縮した発明であり、また、本願発明16ないし21は、本願発明15を減縮した発明である。

第6 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
当審第1拒絶理由及び当審第2拒絶理由の引用文献1(原査定の引用文献C)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、強調のため当審が付与した。以降の記載についても同様。)

「【0004】
本発明では、モーションインターフェースを備えた携帯装置が使用される。」

「【0011】
図1は特定の実施例によるモーションインターフェース機能を備えた携帯装置10を示す。携帯装置10は、携帯装置の動き(モーション)を認識することができ、そのようなモーションに対応する様々な機能を実行することができる。そして装置のモーションは装置の入力をなすように機能する。そのようなモーション入力は、装置のディスプレイに表示されるものを直接的に変えてもよいし、或いは他の機能を実行してもよい。携帯装置10は、移動電話、パーソナルディジタルアシスタント(PDA)、スチールカメラ、ビデオカメラ、携帯用計算機、携帯用のラジオその他の音楽又は映像プレーヤ、ディジタル温度計、ゲーム装置、携帯用電子装置、腕時計等から構成されてもよいし、或いはユーザが携帯する又は身に付けることの可能な他の如何なる装置から構成されてもよい。上記に列挙されているように、携帯装置10は腕時計のような身に付けることが可能な携帯装置をも含んでよい。腕時計はユーザの手首の回りに携えた如何なるコンピュータ装置をも含んでよい。」

「【0012】
携帯装置10はディスプレイ12、入力14、プロセッサ16、メモリ18、コンピュータインターフェース20及びモーション検出器22を含む。…(中略)…
【0013】
プロセッサ16はマイクロプロセッサ、コントローラ又は適切な他の如何なるコンピュータ装置若しくはリソースでもよい。プロセッサ16は、携帯装置10のシステム内で利用可能な機能を実行するための様々なコンピュータ言語で様々なタイプのコンピュータ命令を実行するように構成される。プロセッサ16は携帯装置10の管理及び動作を制御する適切な如何なるコントローラを含んでもよい。」

「【0015】
モーション検出器22は、或る機能を実行するための或る形式の入力として使用される携帯装置10の動きを追跡する。そのような入力モーションは、以下で更に説明されるように所望のタスクを実行するために、ユーザが所望の形式で装置を動かすことで生じる。
【0016】
特定の実施例による携帯装置10は、ここで説明されるような機能を実行する適切な如何なる処理モジュール及び/又はメモリモジュール(例えば、制御モジュール、モーション追跡モジュール、映像分析モジュール、モーション応答モジュール、表示制御モジュール及び署名検出モジュール等)を含んでもよいことが理解されるべきである。」

「【0019】
図2は本発明の特定の実施例による図1のモーション検出器22を示す。この例では、モーション検出器22は加速度計24a,24b,24cと、カメラ26a,26b,26cと、ジャイロ28a,28b,28cと、レンジファインダ30a,30b,30cと、プロセッサ32とを含む。
【0020】
加速度計24a,24b,24cは各自の検出軸に沿う加速度を検出することで装置の運動を検出する。装置の特定の動きは、加速度計により検出される一連の、連続的な又はパターン的な加速度を含んでよい。携帯装置が特定の加速度系の検出軸に沿って傾けられると、その検出軸に沿う重力加速度が変化する。重力加速度のこの変化は、加速度計により検出され、装置の傾きに反映する。同様に、回転も傾斜も伴わない携帯装置の並進又は装置の運動も、加速度計で検出される検出軸に沿う加速度の変化を生み出す。」

「【0079】
上述したように、特定の実施例は、特定の機能又は動作を実行するために或るジェスチャーに従ってユーザが携帯装置を動かすことを許容する。しかしながら場合によっては、ユーザは、意図される特定のジェスチャーに従って装置を動かしていないかもしれない。その結果装置はその動きを意図されるジェスチャーとして認識できないかもしれない。ユーザによる装置の特定の動きが特定のジェスチャーとして認識されることを示すため、或る実施例の携帯装置はその動きが実際にジェスチャーとして認識されたことをユーザに通知するフィードバックを用意する。
【0080】
このフィードバックは、音声、ビープ、トーン又は音楽のような音声フォーマット、装置ディスプレイ上の指標のような視覚的フォーマット、振動型のフォーマット、又は適切な他の何らかのフィードバックフォーマットを含んでもよい。音声フィードバックはユーザインターフェースのスピーカ又は装置10のヘッドフォンジャックを通じて用意されてもよいし、バイブレーションフィードバックは装置10のユーザインターフェースバイブレーション生成モジュールを介して用意されてもよい。聴覚的な、視覚的な及び振動的なフィードバックは複数のフィードバックインジケータに機能を提供するように変形されてよい。一例として、振動フィードバックは、或る持続期間にわたって周波数及び振幅を単独に又は様々な組み合わせで時間と共に変化させてもよい。フィードバックの豊富さ及び複雑さは、音声フィードバックと組み合わせて振動フィードバックを使用するように、様々なタイプの組み合わせで次々とフィードバックを使用することで拡張されてもよい。場合によっては、1以上の認識されたジェスチャーがそれら自身の各自のフィードバックを有するように、フィードバックはジェスチャー固有でもよい。例えば、或るジェスチャーが認識された場合、装置は特定のトーンで又は特定の回数だけビープ音を鳴らしてもよく、1以上の他のジェスチャーが認識される場合、ビープ音又はビープ回数は異なってもよい。オーディオフィードバックを用いることは、速やかな視覚的な画面での表明や機能を有しないジェスチャー(例えば、セルラ電話で何らかの電話番号を呼び出すこと等)にとって特に有意義かもしれない。或る実施例では、別のタイプのフィードバックがコンテキスト又はアプリケーション固有でもよい。様々な状況(コンテキスト)は、装置状態(何のアプリケーションが着目され又は使用されているか、バッテリレベル、利用可能なメモリ、(静かな又はサイレントモードのような)ユーザにより規定された状態等)を含んでよい。例えば、携帯装置はジェスチャー入力に応じて振動的なフィードバックを利用してもよいし、オーディオフィードバックでサイレントモードではそれ以外が使用されてもよい。このフィードバックプロセスは、コンピュータ又は他の素子の携帯モーション入力装置により使用されてもよい。
【0081】
上述のジェスチャー認識に関するフィードバックと同様に、特定の実施例での携帯装置は、装置がジェスチャー入力モードにあった場合において、特定のユーザの動きがジェスチャーとして認識されなかった場合にユーザにフィードバックを与える。例えば、或る動きがジェスチャーであることを意図するように見えるが、装置に既知の特定のジェスチャーに決めることができなかった場合、失敗を示す音を鳴らしてもよい。これは、所望の動作又は機能を実行するために、その装置に意図されるジェスチャーに従って装置を更に動かす必要のあることをユーザに通知する。或る動きが認識されなかったことをユーザに通知するフィードバックは、音声で、視覚に、振動で又は他の適切なフォーマットでなされてもよく、特定の動きが特定のジェスチャーとして装置により認識される場合に通知されるものと異なるフィードバックである。ユーザの意向がジェスチャーを入力することであったか否かを確認するために、携帯装置10は、動きがジェスチャーであるように意図されることを示す或る動きの特徴を調べてもよい。そのような特徴は、例えば、動きの振幅、閾値を上回る運動の経過時間、加速の回数及び間隔等を含んでもよい。特定のジェスチャーが装置により認識されなかったならば、ジェスチャーによるフィードバックのシステムが、意図されるジェスチャーを決めるのに使用される。例えば、音声フィードバックは携帯装置で決定される見込みを示し、ユーザは意図されるジェスチャーを選択するために音声メニューをナビゲートするようにジェスチャーを利用してもよい。」

「【0099】
図15は、装置10のモーション入力を通じて複数の他の装置を携帯装置10が制御するシステム例220を示す。システム220は、無線又は有線リンクを通じて結合された携帯装置10、ラップトップ222及び遠隔装置224を有し、通信ネットワーク226を介して携帯装置10に結合される。携帯装置10は、加速度計、カメラ、距離測定器及び/又はジャイロのようなモーション検出素子を通じて、装置の特定の動きに関する未処理モーションデータを受信する。未処理モーションデータは携帯装置で処理される。ジェスチャーデータベース及びジェスチャーマッピングデータベースのような特定のデータベースは、装置の制御モジュールにより追跡される運動に基づいて、合致するジェスチャー及び意図される機能を決定するためにアクセスされる。…(後略)」

「【0114】
図18は先在するシンボルジェスチャー(文字”O”)をモーション入力とする利用例を示すフローチャートである。ステップ272に示されるように、ユーザは携帯装置を文字”O”の形に動かす。ステップ274では、携帯装置はモーション検出素子から”O”の動きに関する未処理モーションデータを受信し、ステップ276でそのような未処理モーションデータを処理し、装置の実際のモーションを判定する。ステップ278では携帯装置10はジェスチャーデータベース280にアクセスし、そのデータベースは、そのモーションとジェスチャー”O”とを対応付けるために、装置により認識可能な複数のジェスチャーを含む。ジェスチャーデータベースの複数のジェスチャーはそれぞれ一連の加速運動により規定されてもよい。装置の実際のモーションは、ジェスチャーデータベースのジェスチャーの1つの一連の加速運動と照合される。ステップ282では、携帯装置10は昨日データベース284(又はジェスチャーマッピングデータベース)にアクセスすることでジェスチャー”O”を特定の機能に対応付け、機能データベースは装置で動作する1以上のアプリケーションで実行される複数の機能を含む。特定の実施例では、ジェスチャー及び機能データベースは装置のメモリ18内で構成されてもよい。ジェスチャー”O”に対応付けられた特定の機能は、その時点でユーザにより使用されている又は着目する特定のアプリケーションに依存してもよい。例えば、或るアプリケーションでは”O”はファイルを開くコマンドを構成するが、別のアプリケーションでは或る番号を呼び出すコマンドを構成してもよい。場合によっては、1つのジェスチャーが装置の全てのアプリケーションに対して同じ機能に対応付けられてもよい。ステップ286では、ファイルを開くことのような対応付けられた機能に従って装置が動作する。」

なお、【0114】に記載の「昨日データベース284」は「機能データベース284」の誤記と認められる。

(2)引用発明
前記(1)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 モーションインターフェースを有する携帯装置10であって、
携帯装置10は、携帯装置の動き(モーション)を認識することができ、そのようなモーションに対応する様々な機能を実行することができ、
携帯装置は、音楽又は映像プレーヤ、ゲーム装置から構成されてもよく、
携帯装置10はディスプレイ12、入力14、プロセッサ16、メモリ18、コンピュータインターフェース20及びモーション検出器22を含み、
携帯装置のプロセッサは、携帯装置のシステム内で利用可能な機能を実行するためのコンピュータ命令を実行するように構成され、
携帯装置は、各種の機能を実行する適切な処理モジュール(制御モジュール、モーション追跡モジュール、映像分析モジュール、モーション応答モジュール等)を含んでもよく、
携帯装置のモーション検出器は、携帯装置の動き(入力モーション)を追跡するものであり、
モーション検出器は、加速度計、カメラ、ジャイロを含み、
特定の機能又は動作を実行するために或るジェスチャーに従ってユーザが携帯装置を動かすことを許容し、
ユーザによる装置の特定の動きが特定のジェスチャーとして認識されることを示すため、携帯装置は、その動きが実際にジェスチャーとして認識されたことをユーザに通知するフィードバックを用意し、
フィードバックは、振動型のフォーマットを含んでよく、バイブレーションフィードバックは携帯装置10のユーザインターフェースバイブレーション生成モジュールを介して用意されてもよく、
振動フィードバックは、或る持続期間にわたって周波数及び振幅を単独に又は様々な組み合わせで時間と共に変化させてもよく、フィードバックの豊富さ及び複雑さは、音声フィードバックと組み合わせて振動フィードバックを使用するように、様々なタイプの組み合わせで次々とフィードバックを使用することで拡張されてもよく、
特定のユーザの動きがジェスチャーとして認識されなかった場合にユーザにフィードバックを与え、
例えば、或る動きがジェスチャーであることを意図するように見えるが、装置に既知の特定のジェスチャーに決めることができなかった場合、失敗を示す音を鳴らしてもよく、
動きが認識されなかったことをユーザに通知するフィードバックは、音声で、視覚に、振動で又は他の適切なフォーマットでなされてもよく、特定の動きが特定のジェスチャーとして装置により認識される場合に通知されるものと異なるフィードバックであり、
ジェスチャーデータベース及びジェスチャーマッピングデータベースのような特定のデータベースは、装置の制御モジュールにより追跡される運動に基づいて、合致するジェスチャー及び意図される機能を決定するためにアクセスされ、
携帯装置は、モーション検出素子から、動きに関する未処理モーションデータを受信し、
複数のジェスチャーがそれぞれ一連の加速運動により規定されるジェスチャーデータベースの1つの一連の加速運動と照合され、
携帯装置10は、装置で動作する1以上のアプリケーションで実行される複数の機能を含む機能データベースにアクセスすることでジェスチャーを特定の機能に対応付け、
或るアプリケーションではジェスチャー”O”はファイルを開くコマンドを構成するが、別のアプリケーションでは或る番号を呼び出すコマンドを構成してもよく、場合によっては、1つのジェスチャーが装置の全てのアプリケーションに対して同じ機能に対応付けられてもよい、
携帯装置10。」

2 引用文献2について
当審第1拒絶理由及び当審第2拒絶理由の引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0015】
【実施例】実施例について、図面を参照して以下に説明する。図1は、本発明によるジャイロセンサを用いた対象物の動作認識装置の一実施例(実施例1)を説明するためのシステムブロック図で、図中、1a?1cはセンサ、2はA/Dコンバータ、3は計算部、4は補正用センサ(補正を必要とする場合)である。
【0016】センサ1a?1cは、対象物である人間の動作を認識するための複数個のジャイロセンサである。A/Dコンバータ2は、前記ジャイロセンサ1a?1cから得られるアナログ値をディジタル値に変換する。計算部3は、前記A/Dコンバータ2により変換されたデータを処理し、人間の動き(頭の動き)を認識する。前記ジャイロセンサ1a?1cの誤差を補正する場合には、補正用センサ4から得られたアナログ値を前記A/Dコンバータ2によりディジタル値に変換し、計算部3でデータ処理する。
【0017】実施例1として、バーチャルリアリティで用いられるヘッドマウントディスプレイに本装置を搭載し、頭の振りの動きを認識させる例について説明する。但し、バーチャルリアリティにおける人間の見た方向をセンシングし、その向き情報に応じてコンピュータグラフィック表示を変えるという技術についての詳細は、本発明と直接関係しないので省略してある。
【0018】図2に示すように、頭の3方向の振りをセンシングするために、互いに直行する3軸方向にジャイロセンサ5a?5cを配置する。該ジャイロセンサ5a?5cは、図3に示すように、決まった方向の回転運動の速度を値として出力するものを用いた。頭の横振りに対しては、図4に示すように、センサ5aが反応し、頭の縦の振りに対しては、図5に示すように、センサ5bが反応し、頭の回転の振りに対しては、図6に示すように、センサ5cが反応する。
【0019】図7は、本発明による動作認識装置における頭の動きに応じて映像を変化させるフローチャートである。以下、各ステップ(S)に従って順に説明する。まず、ジャイロセンサからの値を入力する(S1)。次に、センサの入力をセンサの数だけ順々にみていく(S2)。全てのセンサ入力の値を調べたら、その値に対応した映像をコンピュータにより計算し、向きに応じた映像をヘッドマウントディスプレイに出力し、センサ入力に戻る(S3)。全てのセンサ入力を調べていなければ、次のセンサ入力を調べる(S4)。次に、センサの値がある一定の範囲内かどうかを調べ(S5)、センサの値が一定の範囲内にある場合は前記ステップS2に戻り、一定範囲を越えている場合は、データの値分だけセンサに対応するデータの値を変化させ(S6)、前記ステップS2に戻る。」

「【0024】次に、実施例3について説明する。実施例3として、例えば、頭や手や足に本装置を取り付け、ジェスチャーの認識をさせるといった例を説明する。ここでは、説明のため最も簡単な例として、頭の首振りをセンスし、「YES」と「NO」のジェスチャーを認識する例について説明する。システムブロック図は、前述した実施例1の図1と同様であり、ジェスチャー認識のフローチャートは実施例1の図7に示すフローチャートのステップS3の箇所を「センサデータにより首振りの動作認識を行う」に変更する。
【0025】図12は、動作の認識を行う方法として、「YES」と「NO」のジェスチャーを認識する場合のフローチャートである。以下、各ステップ(S)に従って順に説明する。なお、ジャイロセンサ入力は行われたとし、センサ入力データの遍歴をある一定の数だけセンサ毎に持っているとする。まず、縦振りの動作計測用センサの入力を調べる。それには、縦振り動作計測用センサの遍歴を、一番新しいデータからあらかじめ決めておいた数分さかのぼり、それらを1つのデータ列とする(S11)。
【0026】そして、そのデータ列と「YES」の動作パターン(うなずく縦の首振り動作)とを比較し(S12)、近い動作パターンを示したら「YES」の動作を行ったと判定し(S13)、新たに読み出したデータの処理に戻る。パターンが近くなかったら、今度は回転方向の動作に対応したセンサ入力を調べる(S14)。これも一定量の遍歴をさかのぼり、「NO」の動作パターン(回転の首振り動作)と比較し(S15)、近い動作パターンであれば「NO」の動作を行ったと判断し、最初に戻る(S16)。パターンが近くなかったら、何も行わず最初に戻る。」

よって、引用文献2には、次の事項が記載されているといえる。

「 動作認識装置は、対象物である人間の動作を認識するための複数個のジャイロセンサを備え、
ヘッドマウントディスプレイに動作認識装置を搭載し、頭の縦の振り、頭の回転の振り等の頭の動きに応じて映像を変化させ、
頭や手や足に動作認識装置を取り付け、頭の首振りをセンスし、「YES」と「NO」のジェスチャーを認識すること。」

3 引用文献3について
当審第1拒絶理由及び当審第2拒絶理由の引用文献3(原査定の引用文献A)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、表示画面上の入力検出面を摺動接触操作して情報を入力するデジタルカメラや、情報処理装置、携帯電話機、情報携帯端末装置等に適用して好適な触覚機能付き入力装置、情報入力方法及び電子機器に関する。詳しくは、表示画面上の入力検出面における操作体の押下操作に対して触覚を与える場合に、その入力検出面における操作体の押下位置の加圧力に対応した振動パターンに基づいて当該入力検出面を振動する振動手段を備え、操作体となる操作者の指等による押下操作に対応した振動パターン(振幅と周波数と振動回数)により複数種類の振動を発生できるようにしたものである。」

「【0039】
制御情報Dcには、表示手段29におけるアプリケーション(3次元的な表示や、各種表示内容)に同期した複数の異なった触覚を発生でき、その触覚を発生せしめる複数の具体的な振動波形、及び、アプリケーション毎の具体的な触覚発生モードを設定するアルゴリズムが含まれる。記憶手段35には、EEPROMや、ROM、RAM等が使用される。」

「【0053】
A/Dドライバ31にはCPU32が接続される。CPU32はシステムプログラムに基づいて当該電話機全体を制御するようになされる。記憶手段35には当該電話器全体を制御するためのシステムプログラムデータが格納される。」

「【実施例5】
【0227】
図36は、第5の実施例に係るゲーム機能付きの携帯電話機500の構成例を示す概念図である。
この実施例では、携帯電話機500にゲーム機能が備えられる。例えば、ゲーム機能として、「なでなでゲームモード」が選択可能となされる。このゲームモードでは、表示手段29にキャラクタ操作入力画面が表示され、この操作入力画面を強くタッチしたり、柔らかくタッチしたりするようになされる。
【0228】
図36に示す携帯電話機500は、3次元触覚入力映像表示機能を有しており、図2?図6に示した携帯電話機100の構成がそのまま応用される。携帯電話機500の表示手段29には、「なでなでゲームモード」選択時に、「モグラ」等のキャラクタ操作入力画面が表示される。このキャラクタ操作入力画面では、立体表示されたモグラ等のキャラクタをなでると、そのなで方によって、そのモグラの表情が変化するようになされる。
【0229】
この「なでなでゲームモード」では、例えば、優しくモグラの頭をなでると「なでられて嬉しい」表現をする。また、頭を強く押したり、キャラクタ操作入力画面を強く押した状態でなでると「お、重い・・・!」あるいは「痛い!」等の表情をする。
【0230】
つまり、操作者の指30aをキャラクタ操作入力画面(入力検出面)のX方向及びY方向を摺動するように接触操作される場合であって、入力検出手段45は、キャラクタ操作入力画面における操作者の指30aの移動速度を検出すると共に、押下位置のZ方向の加圧力Fを検出し、CPU32は、操作者の指30aの移動速度及び押下位置の加圧力Fに基づいてアクチュエータ25a?25d及び表示手段29の出力を制御する。例えば、CPU32は、入力検出手段45で検出された入力検出情報D2と予め設定された押下判定閾値とを比較し、当該比較結果に基づいて入力検出面を振動するようにアクチュエータ駆動回路37を制御する。
【0231】
図37は、第5の実施例に係る振動パターン、入力情報内容、振動条件及び具体的波形例を示す表図である。この例で、CPU32は、押下操作位置における「モグラ」等のキャラクタ操作入力画面で表示及び振動制御を実行するが、「なでなでゲームモード」が選択された場合に、その摺動接触操作(なで方)によって、そのモグラの表情が変化するようになされる。
【0232】
図37に示す表図によれば、ゲーム機能付きの携帯電話機500において、その記憶手段35には、6通りの振動パターンP13,P23,P33,P43,P53,P63が予め準備され格納される。
【0233】
振動パターンP13は、入力情報内容として「なでられて嬉しい」を表現する場合であって、その摺動接触操作をする際に右欄に示す触覚波形を与える。「なでられて嬉しい」の摺動接触操作では、入力検出面を判定閾値Kth以下の移動速度HtでZ方向に操作体を押下し、その第1の押下判定領域内で検出される加圧力Fに応じて、「なでられて嬉しい」の入力が確定される。その際の振動条件は、周波数fx[Hz]、振幅Ax[μm]及び回数Nx[回]に関して[fx Ax Nx]=[50 30 1]である。
【0234】
振動パターンP23は、入力情報内容として「正常反応(1)」を表現する場合であって、その摺動接触操作をする際に右欄に示す触覚波形を与える。「正常反応(1)」の摺動接触操作では、入力検出面を判定閾値Kth以下の移動速度HtでZ方向に操作体を押下し、第2の押下判定領域内で検出される加圧力Fに応じて、「正常反応(1)」を表現する入力が確定される。その際の振動条件は、[fx Ax Nx]=[200 30 1]、[250 5 4]及び、[400 30 1]である。
【0235】
振動パターンP33は、入力情報内容として「お、重い・・・」を表現する場合であって、その摺動接触操作をする際に右欄に示す触覚波形を与える。「お、重い・・・」の摺動接触操作では、入力検出面を判定閾値Kth以下の移動速度HtでZ方向に操作体を押下し、第3押下判定閾値を越える加圧力Fに応じて、「お、重い・・・」を表現する入力が確定される。その際の振動条件は、[fx Ax Nx]=[500 15 連続]である。
【0236】
振動パターンP43は、入力情報内容として「あれ、誰かさわったかな?」を表現する場合であって、その摺動接触操作をする際に右欄に示す触覚波形を与える。「あれ、誰かさわったかな?」の摺動接触操作では、入力検出面を判定閾値Kthを越える移動速度HtでZ方向に操作体を押下し、第1の押下判定領域内で検出される加圧力Fに応じて、「あれ、誰かさわったかな?」を表現する入力が確定される。その際の振動条件は、[fx Ax Nx]=[400 30 1]、[450 5 1]、[500 10 2]、[600 20 4]及び[800 30 8]である。
【0237】
振動パターンP53は、入力情報内容として「正常反応(2)」を表現する場合であって、その摺動接触操作をする際に右欄に示す触覚波形を与える。「正常反応(2)」の摺動接触操作では、入力検出面を判定閾値Kthを越える移動速度HtでZ方向に操作体を押下し、第2の押下判定領域内で検出される加圧力Fに応じて、「正常反応(2)」を表現する入力が確定される。その際の振動条件は、[fx Ax Nx]=[80 15 4]、[280 30 4]、空白期間85ms(無振動)、[fx Ax Nx]=[280 30 4]及び[160 15 4]である。
【0238】
振動パターンP63は、入力情報内容として「痛い!」を表現する場合であって、その摺動接触操作をする際に右欄に示す触覚波形を与える。「痛い!」の摺動接触操作では、入力検出面を判定閾値Kthを越える移動速度HtでZ方向に操作体を押下し、第3の押下判定領域内で検出される加圧力Fに応じて、「痛い!」を表現する入力が確定される。その際の振動条件は、[fx Ax Nx]=[1000 30 1]、空白期間300ms(無振動)、[fx Ax Nx]=[2000 30 1]及び空白期間700ms(無振動)であって、これらを連続する。
【0239】
このような振動パターンP13,P23,P33,P43,P53,P63は記憶手段35に格納され、これらの振動パターンP13,P23,P33,P43,P53,P63に基づく振動制御信号Sa?Sfがアクチュエータ駆動回路37からアクチュエータ25a?25fに供給される。これにより、「なでなでゲームモード」が選択された場合に、その摺動接触操作(なで方)によって、そのモグラの表情が変化し、しかも、操作者の指30aに触覚を与えることができる。」

「【0273】
このように、第5の実施例に係るゲーム機能付きの携帯電話機500によれば、キャラクタ操作入力画面のX方向及びY方向に、操作者の指30aを摺動する場合であって、キャラクタ操作入力画面における操作者の指30aの単位時間当たりの移動量(移動速度)を検出すると共に、押下位置のZ方向の加圧力Fを検出し、操作者の指30aの移動速度及び押下位置の加圧力Fに基づいて入力検出面を振動及び入力情報を表示制御するようになされる。
【0274】
従って、表示手段29に表示されたキャラクタ操作入力画面を強くタッチしたり、柔らかくタッチしたりする毎に、アクチュエータ駆動回路37では振動パターンP13,P23,P33,P43,P53,P63に基づく振動制御信号Sa?Sfがアクチュエータ駆動回路37からアクチュエータ25a?25fに供給される。これにより、操作者の指30aの摺動接触操作を停止した位置におけるZ方向(奥行)の入力検出情報D2に基づいて、3次元表示されたモグラ等のキャラクタから、「なでられて嬉しい」、「お、重い・・・」「あれ、誰かさわったかな?」、「あお、痛い」等の表情映像と共に、あたかも、そのモグラからの触覚を得ることができ、キャラクタ操作情報を触覚を伴って入力することができる。」

「【図36】



「【図37】



よって、引用文献3には、以下の事項が記載されているといえる。

「 表示画面上の入力検出面を摺動接触操作して情報を入力するデジタルカメラや、情報処理装置、携帯電話機、情報携帯端末装置等に適用して好適な触覚機能付き入力装置であって、
操作体となる操作者の指等による押下操作に対応した振動パターン(振幅と周波数と振動回数)により複数種類の振動を発生でき、
制御情報Dcには、表示手段29におけるアプリケーション(3次元的な表示や、各種表示内容)に同期した複数の異なった触覚を発生でき、その触覚を発生せしめる複数の具体的な振動波形、及び、アプリケーション毎の具体的な触覚発生モードを設定するアルゴリズムが含まれ、
CPU32はシステムプログラムに基づいて当該電話機全体を制御するようになされ、記憶手段35には当該電話器全体を制御するためのシステムプログラムデータが格納され、
携帯電話機500にゲーム機能が備えられ、例えば、ゲーム機能として、「なでなでゲームモード」が選択可能となされ、「なでなでゲームモード」選択時に、「モグラ」等のキャラクタ操作入力画面が表示され、このキャラクタ操作入力画面では、立体表示されたモグラ等のキャラクタをなでると、そのなで方によって、そのモグラの表情が変化するようになされ、
ゲーム機能付きの携帯電話機500において、その記憶手段35には、6通りの振動パターンP13,P23,P33,P43,P53,P63が予め準備され格納され、
振動パターンP13は、入力情報内容として「なでられて嬉しい」を表現する場合であって、その際の振動条件は、周波数fx[Hz]、振幅Ax[μm]及び回数Nx[回]に関して[fx Ax Nx]=[50 30 1]であり、
振動パターンP23は、入力情報内容として「正常反応(1)」を表現する場合であって、その際の振動条件は、[fx Ax Nx]=[200 30 1]、[250 5 4]及び、[400 30 1]であり、
振動パターンP33は、入力情報内容として「お、重い・・・」を表現する場合であって、その際の振動条件は、[fx Ax Nx]=[500 15 連続]であり、
振動パターンP43は、入力情報内容として「あれ、誰かさわったかな?」を表現する場合であって、その際の振動条件は、[fx Ax Nx]=[400 30 1]、[450 5 1]、[500 10 2]、[600 20 4]及び[800 30 8]であり、
振動パターンP53は、入力情報内容として「正常反応(2)」を表現する場合であって、その際の振動条件は、[fx Ax Nx]=[80 15 4]、[280 30 4]、空白期間85ms(無振動)、[fx Ax Nx]=[280 30 4]及び[160 15 4]であり、
振動パターンP63は、入力情報内容として「痛い!」を表現する場合であって、その際の振動条件は、[fx Ax Nx]=[1000 30 1]、空白期間300ms(無振動)、[fx Ax Nx]=[2000 30 1]及び空白期間700ms(無振動)であって、これらを連続し、
従って、表示手段29に表示されたキャラクタ操作入力画面を強くタッチしたり、柔らかくタッチしたりする毎に、アクチュエータ駆動回路37では振動パターンP13,P23,P33,P43,P53,P63に基づく振動制御信号Sa?Sfがアクチュエータ駆動回路37からアクチュエータ25a?25fに供給され、これにより、操作者の指30aの摺動接触操作を停止した位置におけるZ方向(奥行)の入力検出情報D2に基づいて、3次元表示されたモグラ等のキャラクタから、「なでられて嬉しい」、「お、重い・・・」「あれ、誰かさわったかな?」、「あお、痛い」等の表情映像と共に、あたかも、そのモグラからの触覚を得ることができ、キャラクタ操作情報を触覚を伴って入力することができる、こと。」

4 引用文献Bについて
原査定の引用文献Bには、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0002】
さらに詳しくは、本発明は、複雑な入力オペレーションを比較的簡単なユーザ動作で実現する携帯情報機器に係り、特に、ユーザの物理的なジェスチャを受容する物理的なユーザ・インターフェースを備えて入力操作を簡単にした携帯情報機器に関する。」

「【0048】
同図に示すように、携帯型機器100は、メイン・コントローラとしてのプロセッサ・ユニット108と、ユーザ入力を行なうインターフェースとして力センサ101、撓みセンサ102、圧力センサ103、回転センサ104、並びにユーザが2次元位置を入力するためのタッチ・センサ105と、ユーザ出力を行なうインターフェースとしての視覚的ディスプレイ106並びに力覚的(Tactile)ディスプレイ109を備えている。」

「【0052】
力覚的ディスプレイ109は、プロセッサ・ユニット108における処理結果を力覚的にフィードバックするためのデバイスである。力覚的ディスプレイ109に任意の制御信号を印加することにより、力覚パターンを自由に変更することができる。プロセッサ・ユニット108は処理結果データに従って電圧の時間関数である制御信号を生成すればよい。例えば、多層ピエゾ可撓性アクチュエータで力覚的ディスプレイ109を構成することができる。多層ピエゾ・アクチュエータは、上層ピエゾ・アクチュエータと、下層ピエゾ・アクチュエータからなり、上層及び下層の各ピエゾ・アクチュエータに対して逆方向の電圧を印加することによって、上層を収縮させると同時に下層を拡張させて、多層ピエゾ可撓性アクチュエータ全体としては、上方あるいは下方に撓ませることができる。なお、力覚的ディスプレイに関しては、本出願人に既に譲渡されている特願2002-18228号明細書に記述されている。
【0054】
データ取得部107は、これらのセンサ出力をデジタライズしてプロセッサ・ユニット108に供給する。そして、プロセッサ・ユニット108においては、タッチ・センサ105からの2次元位置の入力と、データ取得部107を介したジェスチャ入力とを同時で透過的に処理することにより、相違する直交性の情報に関するインタラクションを単一のジェスチャだけで実現することができる。プロセッサ・ユニット108は、例えば、市街地の地図をスクロールしながら同時に縮尺を変えていくといったインタラクションを提供する。ジェスチャを基調とするインタラクションは、直感的で効率的であり、また楽しい。」

「【0087】
例えば、視覚的ディスプレイ106上に地図を表示して、機器100本体背面のタッチ・パネル105を利用して地図上の場所を指示すると同時に、ユーザの物理的インタラクションを力センサ101で検出して、このセンサ出力に従って地図の縮尺をコントロールする。そして、機器100本体に印加された撓み量が小さければ視覚的ディスプレイ106上の地図表示を拡大又は縮小する。また、機器100が剛体で力を加えても実際には変形しない場合には、どれだけのアナログ値が機器100本体に入力されたかを力覚的ディスプレイ109を用いてユーザにフィードバックするようにしてもよい。」

「【0090】
(3)座標指示入力とジェスチャ・ベースの力制御:
機器100本体に印加された力のパターンを認識して、特定のコマンドとして取り扱う。
【0091】
例えば、ユーザは視覚的ディスプレイ106上で表示されている地図上で所望の位置をタッチ・パネル105を介して走査して、さらに、機器100本体を垂直方向に2回だけ瞬時に撓ませることによって、画面表示を切り替える。
【0092】
このような場合、例えば機器100本体を同じ方向又は逆方向に撓ませたり、異なる時刻に撓ませたり、所定の間隔を置いて撓ませたりすることによって、さまざまなジェスチャを作ることができる。そして、機器100本体に印加した物理的インタラクションの認識並びに該当するコマンドの実行が成功したことを、例えば力覚的ディスプレイ109を用いてユーザに通知するようにしてもよい。」

よって、引用文献Bには、次の事項が記載されているといえる。

「 ユーザの物理的なジェスチャを受容する物理的なユーザ・インターフェースを備えて入力操作を簡単にした携帯情報機器において、
携帯型機器100は、メイン・コントローラとしてのプロセッサ・ユニット108と、ユーザ入力を行なうインターフェースとして力センサ101、撓みセンサ102、圧力センサ103、回転センサ104、並びにユーザが2次元位置を入力するためのタッチ・センサ105と、ユーザ出力を行なうインターフェースとしての視覚的ディスプレイ106並びに力覚的(Tactile)ディスプレイ109を備え、
力覚的ディスプレイ109は、プロセッサ・ユニット108における処理結果を力覚的にフィードバックするためのデバイスであり、
データ取得部107は、これらのセンサ出力をデジタライズしてプロセッサ・ユニット108に供給し、そして、プロセッサ・ユニット108においては、タッチ・センサ105からの2次元位置の入力と、データ取得部107を介したジェスチャ入力とを同時で透過的に処理することにより、相違する直交性の情報に関するインタラクションを単一のジェスチャだけで実現することができ、
例えば、視覚的ディスプレイ106上に地図を表示して、機器100本体背面のタッチ・パネル105を利用して地図上の場所を指示すると同時に、ユーザの物理的インタラクションを力センサ101で検出して、このセンサ出力に従って地図の縮尺をコントロールし、そして、機器100本体に印加された撓み量が小さければ視覚的ディスプレイ106上の地図表示を拡大又は縮小し、また、機器100が剛体で力を加えても実際には変形しない場合には、どれだけのアナログ値が機器100本体に入力されたかを力覚的ディスプレイ109を用いてユーザにフィードバックするようにしてもよく、
例えば、ユーザは視覚的ディスプレイ106上で表示されている地図上で所望の位置をタッチ・パネル105を介して走査して、さらに、機器100本体を垂直方向に2回だけ瞬時に撓ませることによって、画面表示を切り替える場合、例えば機器100本体を同じ方向又は逆方向に撓ませたり、異なる時刻に撓ませたり、所定の間隔を置いて撓ませたりすることによって、さまざまなジェスチャを作ることができ、機器100本体に印加した物理的インタラクションの認識並びに該当するコマンドの実行が成功したことを、例えば力覚的ディスプレイ109を用いてユーザに通知するようにしてもよいこと。」

第7 当審第2拒絶理由について
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(ア)本願発明1の「触覚効果」は、本願明細書の【0004】の記載「触覚効果(例えば,振動)」からすると、少なくとも「振動」を含む概念である。
一方、引用発明は、「携帯装置」は、「ユーザインターフェースバイブレーション生成モジュール」により「振動型のフォーマット」である「バイブレーションフィードバック」を生成するものであるから、「バイブレーションフィードバック」を生成する方法を含むものである。
また、前述のように、本願発明1の「触覚効果」は、振動を含む概念であるから、引用発明の「振動型のフォーマット」である「バイブレーションフィードバック」は、本願発明1の「触覚効果」に含まれる。
よって、引用発明は、以下の相違点に係る事項を除いて、本願発明1の「触覚効果を生成する方法」に相当する。

(イ)引用発明は、「携帯装置のモーション検出器は、携帯装置の動き(入力モーション)を追跡するものであり」、「特定の機能又は動作を実行するために或るジェスチャーに従ってユーザが携帯装置を動かすことを許容し」、及び「ユーザによる装置の特定の動きが特定のジェスチャーとして認識される」との構成を備えることから、引用発明において、「ユーザ」は、特定の機能又は動作を実行するために、特定のジェスチャーに従って携帯装置を動かすことを前提としているから、そのようなユーザによる装置の動きを検出する「モーション検出器」を備える「携帯装置」は、特定の機能又は動作を実行するための入力装置、すなわち、「ユーザインタフェース装置」として機能しているといえる。

(ウ)引用発明は、「携帯装置のモーション検出器は、携帯装置の動き(入力モーション)を追跡するものであり」および「携帯装置は、モーション検出素子から、動きに関する未処理モーションデータを受信し」との構成を備えることから、「モーション検出素子」(「モーション検出器」と同一視できる。)は、「未処理モーションデータ」を出力するものと理解することができ、また、当該「携帯装置の動き(入力モーション)を追跡する」機能を備える「モーション検出素子」から出力される「未処理モーションデータ」も「携帯装置の動き」を追跡するものであるから、「携帯装置の動き」を示すものといえる。
また、「携帯装置の動き」は、例えば「ユーザ」が「携帯装置」を持つ手、すなわち、「ユーザの体の一部」の「動き又は動作」と同一視できるから、結局、「未処理モーションデータ」は、「ユーザの体の一部の動き又は動作を示す」ものといえる。
また、「携帯装置」が、「未処理モーションデータを受信」することは、「未処理モーションデータ」を「監視」することを含む。

(エ)前記(イ)及び(ウ)より、引用発明は、本願発明1の「ユーザの体の一部の動き又は動作を示す、ユーザインタフェース装置の出力信号を監視する工程」を備える。

(オ)引用発明は、「携帯装置10は、携帯装置の動き(モーション)を認識することができ、そのようなモーションに対応する様々な機能を実行することができ」及び「携帯装置は、モーション検出素子から、動きに関する未処理モーションデータを受信し、複数のジェスチャーがそれぞれ一連の加速運動により規定されるジェスチャーデータベースの1つの一連の加速運動と照合され、携帯装置10は、装置で動作する1以上のアプリケーションで実行される複数の機能を含む機能データベースにアクセスすることでジェスチャーを特定の機能に対応付け」との構成を備えること、並びに、前記(エ)から、「携帯装置10」は、「ユーザの体の一部の動き又は動作」を示す「未処理モーションデータ」によるジェスチャが、「ジェスチャーデータベース」の1つの「一連の加速運動」と照合する(比較の結果一致する)場合に、対応する特定の機能を実行するものであるから、引用発明においては、当該「ユーザによる動き又は動作」を示す「未処理モーションデータ」によるジェスチャが、「ジェスチャーデータベース」の1つの「一連の加速運動」と照合する場合に、当該「未処理モーションデータ」によるジェスチャが有効な操作入力として決定され、その結果、操作入力に対応する機能が実行されているといえる。
そうすると、引用発明において、「ジェスチャーデータベース」の「一連の加速運動」は、「未処理モーションデータ」により特定される「ジェスチャ」と比較されるものであるから、本願発明1の「操作ジェスチャ」に対応し、また、比較の結果、前記「未処理モーションデータ」によるジェスチャが、1つの「一連の加速運動」に照合すると決定することは、本願発明1の「前記体の一部の動き又は動作による前記操作ジェスチャの実行を決定する」ことに相当する。

(カ)引用発明は、
「携帯装置のプロセッサは、携帯装置のシステム内で利用可能な機能を実行するためのコンピュータ命令を実行するように構成され、
携帯装置は、各種の機能を実行する適切な処理モジュール(制御モジュール、モーション追跡モジュール、映像分析モジュール、モーション応答モジュール等)を含んでもよく、」及び「ジェスチャーデータベース及びジェスチャーマッピングデータベースのような特定のデータベースは、装置の制御モジュールにより追跡される運動に基づいて、合致するジェスチャー及び意図される機能を決定するためにアクセスされる」
との構成を備えることから、引用発明においては、「ジェスチャーデータベース」の「一連の加速運動」(「操作ジェスチャ」)にアクセスし、「未処理モーションデータ」と照合(比較)するための、「プロセッサ」により実行可能な「コンピュータ命令」又は「処理モジュール」を備えるものと認められ、これを「ジェスチャモジュール」と称することは任意である。
よって、前記(オ)を参酌すると、引用発明は、本願発明1の「該体の一部の動き又は動作を、プロセッサにより実行可能なジェスチャモジュールの操作ジェスチャと比較し、前記体の一部の動き又は動作による前記操作ジェスチャの実行を決定する工程」との構成を備える。

(キ)本願発明1の「触覚刺激効果」は、本願明細書の【0032】に記載の「本明細書において,「触覚刺激」という用語は,ユーザに作用する触知性フィードバックを意味する。」を参酌すると、「ユーザに作用する触知性フィードバック」を意味する用語である。
よって、引用発明の「振動型のフォーマット」による「バイブレーションフィードバック」は、「触知性フィードバック」に含まれるから、本願発明1の「触覚刺激効果」に相当する。

(ク)引用発明は、「ユーザによる装置の特定の動きが特定のジェスチャーとして認識されることを示すため、携帯装置は、その動きが実際にジェスチャーとして認識されたことをユーザに通知するフィードバックを用意し」との構成を備えるが、「ユーザによる装置の特定の動きが特定のジェスチャーとして認識されることを示すため」の「フィードバック」は、前記(キ)を参酌すると「触覚刺激効果」といい得るものであり、「フィードバック」を「用意する」ことは、「触覚刺激効果を決定する」ことといえる。
さらに、また、当該「フィードバック」は、「ユーザによる動き又は動作」を示す「未処理モーションデータ」によるジェスチャが、「ジェスチャーデータベース」の1つの「一連の加速運動」と照合することにより「特定のジェスチャー」として認識された場合になされるから、前記(オ)を参酌すると、「前記体の一部の動き又は動作による前記操作ジェスチャの実行」に基づくものといえる。
よって、引用発明と本願発明1の「前記操作ジェスチャの前記実行に基づくと共に、前記プロセッサにより実行可能なコンテンツモジュールによって前記ユーザインタフェース装置を介して前記ユーザに提供されているコンテンツに基づいて、パラメータによって定義された触覚刺激効果を決定する工程」とは、「前記操作ジェスチャの前記実行に基いて、触覚刺激効果を決定する工程」を備える点において共通する。

(ケ)引用発明は、「フィードバックは、振動型のフォーマットを含んでよく、バイブレーションフィードバックは携帯装置10のユーザインターフェースバイブレーション生成モジュールを介して用意されてもよく」との構成を備えることから、前記(キ)を参酌すると、引用発明の「携帯装置」は、「振動」を「触覚刺激効果」として出力する行程を備え、また、そのための装置、すなわち「触覚出力装置」を備えるものといえる。
よって、引用発明は、本願発明1の「触覚出力装置で前記触覚刺激効果を生成する工程」を備える。

(コ)引用発明の
「特定のユーザの動きがジェスチャーとして認識されなかった場合にユーザにフィードバックを与え、
動きが認識されなかったことをユーザに通知するフィードバックは、音声で、視覚に、振動で又は他の適切なフォーマットでなされてもよく、特定の動きが特定のジェスチャーとして装置により認識される場合に通知されるものと異なるフィードバックであり、
例えば、或る動きがジェスチャーであることを意図するように見えるが、装置に既知の特定のジェスチャーに決めることができなかった場合、失敗を示す音を鳴らしてもよく、」
との構成において、「特定のユーザの動きがジェスチャーとして認識されなかった場合」の「フィードバック」は、「振動で」「のフォーマット」である場合を含むから、前記(ア)及び(オ)ないし(ケ)を参酌すると、「触覚効果」といい得るものである。また、この場合(すなわち、失敗したと判断された場合)の「フィードバック」は、「特定の動きが特定のジェスチャーとして装置により認識される場合に通知されるものと異なるフィードバック」であるから、前記(ク)及び(ケ)を参酌すると、「該触覚出力装置で該触覚刺激効果と異なる触覚効果」といい得るものである。
よって、引用発明は、本願発明1の「前記監視された出力信号に基づいて前記ユーザによる前記操作ジェスチャの実行が失敗したと判断された場合に、該触覚出力装置で該触覚刺激効果と異なる触覚効果を生成する工程」を備える。

(2)一致点・相違点
以上から、本願発明1と引用発明とは、以下の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 触覚効果を生成する方法であって、
ユーザの体の一部の動き又は動作を示す、ユーザインタフェース装置の出力信号を監視する工程と、
該体の一部の動き又は動作を、プロセッサにより実行可能なジェスチャモジュールの操作ジェスチャと比較し、前記体の一部の動き又は動作による前記操作ジェスチャの実行を決定する工程と、
前記操作ジェスチャの前記実行に基づいて、触覚刺激効果を決定する工程と、
触覚出力装置で前記触覚刺激効果を生成する工程と、
前記監視された出力信号に基づいて前記ユーザによる前記操作ジェスチャの実行が失敗したと判断された場合に、該触覚出力装置で該触覚刺激効果と異なる触覚効果を生成する工程と、を備える、方法。」

[相違点]
<相違点1>
「触覚刺激効果を決定する工程」に関し、本願発明1は、「触覚刺激効果」が、「パラメータによって定義された」ものであり、かつ、「前記プロセッサにより実行可能なコンテンツモジュールによって前記ユーザインタフェース装置を介して前記ユーザに提供されているコンテンツ」に基づくものであるのに加え、「前記パラメータは、前記操作ジェスチャの進行が成功している旨を示すために変更されること」との構成を備えるのに対し、引用発明は、「振動フィードバックは、或る持続期間にわたって周波数及び振幅を単独に又は様々な組み合わせで時間と共に変化させてもよく」との構成を備えるものの、「(振動)フィードバック」が、「周波数」及び「振幅」を「パラメータ」として定義されていることまでは具体的に特定するものではなく、また、引用発明の「フィードバック」は、「操作ジェスチャの前記実行」のみならず「コンテンツ」にも基づく点について具体的に特定するものではなく、また、仮に、前記「周波数」及び「振幅」を「パラメータ」として定義されているとしても、これらが「前記操作ジェスチャの進行が成功している旨を示すために変更される」ものであることを具体的に特定するものではない点。

(3)相違点についての判断
上記相違点について検討するに、相違点に係る本願発明1の構成のうち「前記パラメータは、前記操作ジェスチャの進行が成功している旨を示すために変更されること」は、上記引用文献1ないし3には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7も、本願発明1の「前記パラメータは、前記操作ジェスチャの進行が成功している旨を示すために変更される」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明8ないし21について
本願発明8及び15は、いずれも本願発明1の「前記パラメータは、前記操作ジェスチャの進行が成功している旨を示すために変更される」と同一の構成を備え、本願発明9ないし14は、本願発明8を減縮した発明であり、本願発明16ないし21は、本願発明15を減縮した発明であって、これらも前記の構成を備えるものである。
よって、本願発明8ないし21は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

以上より、当審第2拒絶理由は、解消した。

第8 当審第1拒絶理由について
1 理由1(サポート要件)について
(1)本件補正後の本願請求項1に記載の「ユーザの体の一部の動き又は動作を示す、ユーザインタフェース装置の出力信号を監視する」、本件補正後の本願請求項8に記載の「ユーザの体の一部の動作を監視するように構成されたモーションセンサ」及び本件補正後の本願請求項15に記載の「ユーザの体の一部の動き又は動作を示す、ユーザインフェース装置の出力信号を監視し」は、いずれも、発明の詳細な説明に記載されたものである。
(2)本件補正後の本願請求項18に記載の「前記体の一部が前記ユーザの頭である」は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

2 理由2(新規性)及び理由3(進歩性)について
本件補正により、本願発明1ないし21は、「前記パラメータは、前記操作ジェスチャの進行が成功している旨を示すために変更される」との構成を備えるものとなり、当該構成は、引用文献1には記載も示唆もされていないから、本願発明1ないし21は、引用文献1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号には該当しない。
また、前記第7(当審第2拒絶理由について)で述べたように、本願発明1ないし21は、当業者が、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

以上のとおり、当審第1拒絶理由は、解消した。

第9 原査定についての判断
本件補正により、補正後の請求項1ないし21(本願発明1ないし21)は、「前記パラメータは、前記操作ジェスチャの進行が成功している旨を示すために変更される」との構成を備えるものとなり、当該構成は、原査定の引用文献AないしC(当審第1拒絶理由及び当審第2拒絶理由の引用文献1及び3を含む。)には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもない。
なお、引用文献Bには、「力覚的ディスプレイ109は、プロセッサ・ユニット108における処理結果を力覚的にフィードバックするためのデバイスであり」及び「該当するコマンドの実行が成功したことを、例えば力覚的ディスプレイ109を用いてユーザに通知するようにしてもよい」との技術事項が記載されているが、当該技術事項は、本願発明1ないし21に係る「前記パラメータは、前記操作ジェスチャの進行が成功している旨を示すために変更される」に相当するものではなく、また、そのような構成を採用し得ることが当業者にとって自明又は容易であるともいえない。
よって、本願発明1ないし21は、原査定における引用文献A又はBに記載された発明ではなく、また、当業者であっても、原査定における引用文献A又はB(「なお書き」を考慮すると引用文献AないしC)に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第10 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-30 
出願番号 特願2017-112038(P2017-112038)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼瀬 健太郎  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 林 毅
北川 純次
発明の名称 操作ジェスチャの入力中に,及び,仮想装置の操作に関連して,複雑な触覚刺激を提供するシステム及び方法  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 江口 昭彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 内藤 和彦  

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