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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01M
管理番号 1372455
審判番号 不服2020-1949  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-12 
確定日 2021-04-13 
事件の表示 特願2017-248126「非水電解液二次電池用セパレータフィルム製造方法および非水電解液二次電池用セパレータフィルム洗浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月24日出願公開、特開2018- 81924、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成27年11月13日を出願日とする特願2015-223428号(以下、「原出願」という。)の一部を、特許法第44条第1項の規定に基づき、平成29年12月25日に分割して新たな特許出願としたものであって、令和1年6月26日付けで拒絶理由が通知され、同年8月23日付けで意見書が提出され、同年11月11日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和2年2月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1?20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」等といい、総称して「本願発明」ということがある。)は、令和2年2月12付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち独立形式で記載された本願発明1及び本願発明11は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
第1洗浄槽において非水電解液二次電池用セパレータフィルムを洗浄する洗浄工程と、
上記第1洗浄槽から搬出された上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムに第1ローラー、第2ローラー、および第3ローラーを順に接触させて、上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムを第2洗浄槽に搬送する搬送工程とを含み、
上記搬送工程では、
上記第1ローラーおよび上記第3ローラーが上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムの一方の面に接触し、かつ、上記第1ローラーと上記第3ローラーとの間において上記第2ローラーが上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムの他方の面に接触することにより、上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムから洗浄液を除去したうえで、上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムを第2洗浄槽に搬送し、
上記第1洗浄槽に満たされた洗浄液と、上記第2洗浄槽に満たされた洗浄液とが、同じ種類である非水電解液二次電池用セパレータフィルム製造方法。」

「【請求項11】
非水電解液二次電池用セパレータフィルムを洗浄する、第1洗浄槽および第2洗浄槽と、
上記第1洗浄槽から搬出された上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムに順に接触し、かつ、上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムを第2洗浄槽に搬送する、第1ローラー、第2ローラー、および第3ローラーとを備え、
上記第1ローラーおよび上記第3ローラーが上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムの一方の面に接触し、かつ、上記第1ローラーと上記第3ローラーとの間において上記第2ローラーが上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムの他方の面に接触することにより、上記第2ローラーは、上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムから洗浄液を除去したうえで、上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムを第2洗浄槽に搬送し、
上記第1洗浄槽に満たされた洗浄液と、上記第2洗浄槽に満たされた洗浄液とが、同じ種類である非水電解液二次電池用セパレータフィルム洗浄装置。」

第3.原査定の概要
原査定(令和1年11月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1?3、8?13、18?20に係る発明は、原出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1(特開2003-253556号公報)に記載された発明、引用文献2(特開2001-228594号公報)に記載された技術的事項、及び引用文献3(特開2014-001373号公報)に記載された周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項4?10、14?20に係る発明は、原出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1(特開2003-253556号公報)に記載された発明、引用文献2(特開2001-228594号公報)、及び引用文献4(特開2015-018722号公報)に記載された技術的事項、並びに引用文献3(特開2014-001373号公報)に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4.引用文献の記載、及び引用発明
1 引用文献1(特開2003-253556号公報)の記載、及び引用発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、「シート状物の親水化処理装置および方法(発明の名称)」について、次の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】シート状物を連続的にスルホン化処理剤を入れたスルホン化処理槽に含浸させることによってスルホン化処理する装置において、該シート状物を含浸することによって該シート状物と一緒に持ち出されるスルホン化処理剤を真空の力を用いて吸引回収して、そのままスルホン化処理槽に返送し、さらに該スルホン化処理剤より高濃度のスルホン化処理剤を該スルホン化処理槽に添加することで、スルホン化処理槽の濃度管理をすることを特徴とする親水化処理装置。」

イ 「【0008】
【発明が解決しようとする課題】アルカリ電池用セパレータとして用いるシート状物のスルホン化処理をするにあたり、その処理後のシート状物に残存するスルホン化処理剤の回収・再利用と、発煙硫酸の添加にて、スルホン化処理浴の濃度・液面管理できスルホン化処理の効率を向上させる装置を提供する。近年開発が進められている電気自動車(EV)、ハイブリット自動車(HEV)を普及させるためには、これらに使用されている二次電池を低コストで製造する必要があり、この二次電池に使用されているセパレータを低コストで効率よく生産する必要がある。」

ウ 「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、自己放電が少なく容量保持率が良好であって、低コストでセパレータを生産できることを目的に、シートが持出す硫酸を回収し再利用する検討を進めてきた。
【0010】上記の結果、本発明者らは、ポリオレフィン系不織布からなる電池用セパレータを処理するにあたり、(1)シート状物を連続的にスルホン化処理剤を入れたスルホン化処理槽に含浸させることによってスルホン化処理する装置において、該シート状物を含浸することによって該シート状物と一緒に持ち出されるスルホン化処理剤を真空の力を用いて吸引回収して、そのままスルホン化処理槽に返送し、さらに該スルホン化処理剤より高濃度のスルホン化処理剤を該スルホン化処理槽に添加することで、スルホン化処理槽の濃度管理をすることを特徴とする親水化処理装置からなり、(2)スルホン化処理槽に添加する高濃度スルホン化処理剤の量を該処理槽内の濃度から決定し、該スルホン化処理剤の濃度を一定に保つことを特徴とし、さらに(3)シート状物に含浸され持ち出されるスルホン化処理剤を真空の力を用いて吸引除去し、スルホン化処理槽への送液量を該処理槽の液面レベルと該処理槽に添加される高濃度スルホン化処理剤の量から決定し、調整することを特徴とした上記1乃至2のいずれかに記載の親水化処理装置であり、(4)上記1乃至3のいずれかに記載の装置を用いること特徴とする親水化処理方法からなる。」

エ 「【0011】
【発明の実施の形態】本発明に用いるシート状物の形態としては、繊維状シート、不織布、フィルムなどの形態からなるものなら何でも良い。またその素材としては、熱可塑性樹脂たとえばポリオレフィン系樹脂、ポリメチルペンテンなどが用いられ、特にスルホン化処理剤を用いる場合は、ポリオレフィン系樹脂であるポリプロピィレンからなる不織布が特に好ましい。」

オ 「【0013】上記スルホン化処理の後、図1の硫酸浴で処理後、洗浄工程で水による洗浄を行い、処理された不織布をロールで絞った後に真空処理するものである。本発明による真空処理とは、図2に示したバキュームロールを不織布表面に密着させて、このバキュームロール中を真空にして不織布表面および内部の残存する濃硫酸を吸い取る処理である。真空度としては、-100?-500mmHg、好ましくは-300?-400mmHgである。-100mmHg以上であれば、吸引効果はなく、濃硫酸はまだ残存する。また逆に-500mmHg以下の真空で処理すれば、吸引力が強すぎで不織布がバキュームロールに吸い付いてしまい、次の工程に移行することができなくなる。」

カ 「【0017】以下各部について詳細に説明する。1は巻上がり状態のシートであり、一定速度で駆動するニップロール11,12によって引き出される。シート2は搬送ロール3によって硫酸浴4へ導入され、設定した浸漬長を経由して、駆動モーター13により回転するニップロール11,12によって表面に付着する硫酸を除去し、水洗浴I15に搬送される。
【0018】ニップロール11、12により除去された硫酸はそのまま硫酸槽に落下し、スルホン化処理剤として使用される。ニップロールが槽外にある場合にはポリテトラフロロエチレン製コーティングもしくはポリテトラフロロエチレン板で製作された傾斜板を設けて落下した硫酸を傾斜を利用してスルホン化槽に戻しても良い。
【0019】ニップロール11、12によって表面に付着する硫酸を除去した後に、シート内に残留する硫酸をハステロイB-2製バキュームロール14により真空ポンプ35に代表される真空の力を利用し除去した後に、回収タンク34に所定量回収した時点でスルホン化槽に送液ポンプ36によって送液し、スルホン化処理剤として再利用する。送液するポンプ能力が高い場合には、真空引きをしながら逐次スルホン化槽へ送液してもかまわない。」

キ 「【0023】水洗浴I15中に搬送されたシートは水洗浴I15中の洗浄水16によりシート中に残留する硫酸根を洗浄され、駆動モーター19で回転するニップロール17、18によって含有する水分を概ね除去し、中和浴20へ搬送される。
【0024】中和浴20中に搬送されたシートは中和浴20中のアルカリ溶液21によりシート中に残留する硫酸根を中和し、駆動モーター24で回転するニップロール22、23によって含有するアルカリ溶液を概ね除去し、水洗浴II25へ搬送される。
【0025】水洗浴II25中に搬送されたシートは水洗浴II25中の洗浄水26によりシート中に残留する塩とアルカリを洗浄され、駆動モーター29で回転するニップロール27、28によって含有する水分を概ね除去し、乾燥機へ搬送される。」

ク 「【符号の説明】
1.巻上がり状態のシート、
2.引き出されたシート、
3.搬送ロール、
4.硫酸浴、
5.硫酸、
6.熱媒ポンプ、
7.電気式熱媒ヒータ、
8.温度センサー、
9. 熱媒循環ライン、
10.熱媒ジャケット、
11.ニップロール、
12.駆動ニップロール、
13.駆動モーター、
14.バキュームロール、
15.水洗浴I、
16.洗浄水、
17.ニップロール、
18.駆動ニップロール、
19.駆動モータ、
20.中和浴、
21.アルカリ、
22.ニップロール、
23.駆動ニップロール、
24.駆動モータ、
25.水洗浴II、
26.洗浄水、
27.ニップロール、
28.駆動ニップロール、
29.駆動モータ、
30.乾燥機、
31.コンタクトロール駆動モーター、
32.コンタクトロール、
33.巻き取られたシート、
34.回収タンク、
35.真空ポンプ、
36.送液ポンプ、
37.ストックタンク、
38.?41.自動弁」

ケ 「【図1】


(なお、【図1】は、見易さの観点から、当審において90°回転するとともに拡大表示したものを示す。)

コ 上記キ、クの【図1】【0025】から、水洗浴II25中に搬送されたシートは、当該水洗浴II25中での洗浄後に水洗浴II25中から搬出され、駆動モーター29で回転する二つのニップロール27、28によって、シートが含有する水分が概ね除去されるものであることが理解できる。

(2)上記(1)ア?コの記載事項を総合勘案し、特に、【0008】、【0025】及び【図1】を勘案し、「水洗浴II25」での「シート」の洗浄に着目し、本願発明1及び本願発明11の記載に則してそれぞれ記載を整理すると、引用文献1には、次の2つの発明(以下、「引用発明1」、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明1>
「水洗浴II25においてアルカリ電池用セパレータとして用いるシートを洗浄する洗浄工程と、
上記水洗浴II25から搬出された上記シートを駆動モーター29で回転する二つのニップロール27、28によって搬送する搬送工程とを含み、
上記搬送工程では、
上記ニップロール27、28により、上記シートが含有する水分を概ね除去する
アルカリ電池用セパレータとして用いるシートの製造方法。」

<引用発明2>
「アルカリ電池用セパレータとして用いるシートを洗浄する水洗浴II25と、
上記水洗浴II25から搬出された上記シート搬送する、駆動モーター29で回転する二つのニップロール27、28とを備え、
上記ニップロール27、28により、上記シートが含有する水分を概ね除去する
アルカリ電池用セパレータとして用いるシートの洗浄装置。」

2 引用文献2(特開2001-228594号公報)の記載
(1)また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、「ロール状フイルムの搬送装置および洗浄装置、並びにロール状フイルムの搬送方法および回収方法(発明の名称)」について、次の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のローラーを並べた第1ローラー列と、第1ローラー列の下に配置されている複数のローラーを並べた第2ローラー列とからなり、ロール状フイルムを第1ローラー列のローラーと第2ローラー列のローラーとに交互に接触させながら搬送するロール状フイルムの搬送装置であって、第1ローラー列の上に第2ローラー列が配置される状態から第1ローラー列の下に第2ローラー列が配置される状態まで、第2ローラー列を上下に昇降させる昇降装置が設けられていることを特徴とするロール状フイルムの搬送装置。」

イ 「【0002】
【従来の技術】ロール状フイルム(ロール状のプラスチックフイルムや金属フイルム)は、そのまま使用するよりも、支持体としてその上に様々な機能層を設けて使用する場合が多い。ロール状フイルムの表面に設けられる層については、特開昭52-138131号および特開平8-146560号の各公報に記載がある。使用済みのロール状フイルムを回収するためには、ロール状フイルムの表面に設けられる層を洗浄によって除去する必要がある。従来の洗浄装置(例えば、特開平5-8228号公報記載)は、ロール状フイルムをチップに裁断し、チップを洗浄槽内で処理液と共に攪拌するための装置であった。洗浄後のチップは、さらに水洗および乾燥して回収する。ロール状フイルムを再生するためには、回収したチップを再び溶解または溶融して、ロール状フイルムを形成する。」

ウ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】使用済みロール状フイルムを、チップに裁断することなく洗浄して、ロール状フイルムのまま回収できれば、非常に効率が良い。しかし、それを実現するためには解決すべき課題がある。まず、ロール状フイルムの洗浄において、チップを洗浄槽内で攪拌する場合と同様の洗浄効果を得るためには、洗浄槽内でロール状フイルムを長い距離をかけて搬送する必要がある。洗浄槽内で長い距離をかけて搬送するためには、一般に、洗浄槽内に多数のローラーを配置して、ロール状フイルムを屈曲させながらローラー間を搬送する。具体的には、複数のローラーを並べた第1ローラー列と同様の第2ローラー列とを平行に配置して、ロール状フイルムを第1ローラー列のローラーと第2ローラー列のローラーとに交互に接触させながら搬送する。
【0004】しかし、搬送装置を稼動させる前に、ロール状フイルムを屈曲させながら多数のローラー間を通しておく必要がある。このロール状フイルムの設定は、手動か半自動で行う必要がある。そして、ロール状フイルムには様々な種類があるため、ロール毎に設定し直す(一つのロールの洗浄処理が終了後、別のロールを設定し、それから改めて洗浄処理を開始する)必要がある。従って、ロール状フイルムの搬送装置への設定には、多くの手間と時間を要する。さらに、ロール状フイルムには、サイズが大きいもの(例えば、印刷版用リスフイルム)もあり、手動あるいは半自動では取り扱いも困難であった。以上の理由から、ロール状フイルムの回収は、フイルムを裁断しチップにして行うことが好ましい考えられており、実際にもチップとして洗浄処理する以外の方法は採用されていなかった。
【0005】本発明の目的は、使用済みロール状フイルムをチップ状に裁断することなく回収することである。別の本発明の目的は、ロール状フイルムをチップ状に裁断することなく洗浄することである。さらに別の本発明の目的は、ロール状フイルムを屈曲させながら複数のローラー間を搬送する方法を改善することである。さらにまた別の本発明の目的は、ロール状フイルムを屈曲させながら多数のローラー間を通す設定を、自動的に行うことである。」

エ 「【0008】
【発明の効果】本発明者は研究の結果、上記(1)のロール状フイルムの搬送装置の作製に成功した。上記(1)の搬送装置を用いると、自動的にロール状フイルムを屈曲させながら多数のローラー間を通すことができる。すなわち、上記(5)のロール状フイルムの搬送方法として定義したように、ロール状フイルムからその先端を引き出し、複数のローラーを並べた第1ローラー列の上を通してから、先端を固定し、次に、ロール状フイルムからフイルムを引き出しながら、第1ローラー列の上に配置されている複数のローラーを並べた第2ローラー列を、第1ローラー列の下に第2ローラー列が配置される状態まで下降させることにより、フイルムを第1ローラー列のローラーと第2ローラー列のローラーとに交互に接触させることができる。自動的にロール状フイルムを屈曲させながら多数のローラー間を通す手段(装置および方法)が得られたことで、使用済みロール状フイルムをチップ状に裁断することなく洗浄して、ロール状フイルムを回収することが可能になった。チップ状に裁断する必要がないため、(1)裁断するための設備と工数、(2)裁断設備の動力および(3)粉砕によって生じる損失(チップ・ロス)が全て解消された。
【0009】また、洗浄効率の観点でも、ロール状フイルムのまま洗浄する方が、チップに裁断して洗浄するよりも良好な結果が得られた。ロール状フイルムの状態で洗浄すると、洗浄剤が作用する対象は実質的にフイルムの表側または裏側の面に限られる。一方、チップの状態では、側面部分の面積の割合が大きく、側面から洗浄剤がフイルム内部に浸透する可能性がある。そのため、チップの状態の方が、より多くの洗浄剤が必要である。また、チップの側面から浸透した洗浄剤は、除去が難しく、回収後の再利用により得られる製品の品質を低下させる可能性があった。ロール状フイルムのまま洗浄することにより、これらの問題も解消された。さらに、回収したチップからロール状フイルムを再生するためには、回収したチップを再び溶解または溶融して、ロール状フイルムを形成する必要がある。本発明では、ロール状フイルムの状態で回収することできるため、回収したロール状フイルムをそのまま再利用することが可能になった。」

オ 「【0015】図2?図4(第2ローラー列が駆動ローラーで、第1ローラー列が搬送ローラーである場合)に示す各ローラーの回転速度について、好ましい相対関係を下記第1表に示す。
【0016】
【表1】



カ 「【0021】図6は、図5の装置の第1ローラー列上にロール状フイルムを引き出した状態を示す断面図である。駆動ローラー(3a)を回転させて、ロール状フイルムセット装置(6)からフイルムを引き出す。ロール状フイルムは、搬送ローラー(5a?5b)から第1ローラー列の各ローラー(1a?1h)の上を誘導ベルト(10a、10b)に誘導されて通り、さらに搬送ローラー(5c?5e)に誘導されて、回転を停止している停止可能駆動ローラー(4a)とその下のローラー(5f)との間に先端が挟み込まれる。その状態で、ロール状フイルムの先端が固定される。
【0022】図7は、図5の装置の第1ローラー列の下まで、第2ローラー列を下降させた状態を示す断面図である。図7に示すように、ロール状フイルムセット装置(6)からフイルムを引き出しながら、第2ローラー列を第1ローラー列の下まで下降させ、これによりフイルムを第1ローラー列のローラーと第2ローラー列のローラーとに交互に接触させることができる。図6と同様に、駆動ローラー(3a)を回転させて、ロール状フイルムセット装置(6)からフイルムを引き出す。それと同時に、第2ローラー列の各ローラー(2a?2f)を、全体として下降させる。第1ローラー列の各ローラー(1a?1h)は、フイルムの搬送方向にのみ回転するように制御されている。図7では、第2ローラー列の各ローラーを駆動ローラーとして、それぞれ回転させている。各ローラーの速度調節については、図3について説明した通りである。駆動ローラーの代わりに、自由に回転できる搬送ローラーを第2ローラー列に用いてもよい。なお、第2ローラー列の下降速度についても、各ローラーの回転速度との関係で調節することが好ましい。第2ローラー列の下降速度と、各ローラーの回転速度は、シーケンサを用いて厳密に自動制御することが望ましい。
【0023】図8は、図5の装置を用いてロール状フイルムを洗浄している状態を示す断面図である。ロール状フイルムを第1ローラー列のローラーと第2ローラー列のローラーとに交互に接触させた後、図8に示すように固定されていたフイルムの先端を解放し、ロール状フイルムからフイルムを引き出しながら、フイルムを第1ローラー列のローラーと第2ローラー列のローラーとに交互に接触させながら、洗浄槽(7a、7b)内を搬送する。これにより、ロール状フイルムをそのまま洗浄することができる。フイルムの先端を固定していた停止可能駆動ローラー(4a)を回転させることにより、フイルムの先端を固定状態から解放できる。図8に示すフイルムの搬送段階には、全ての駆動ローラー(3a、2a?2f、4a、3b)の回転速度は一定である。」

キ 「【符号の説明】
1 第1ローラー列
1a?1j 第1ローラー(搬送ローラー)
2 第2ローラー列
2a?2h 第2ローラー(速度可変駆動ローラー)
3a、3b 駆動ローラー
4a 停止可能駆動ローラー
5a?5l 他の搬送ローラー
6 ロール状フイルムセット装置
7a、7b 洗浄槽
7c 水洗槽
8a、8b ヒーター
9a、9b 洗浄液循環装置
9c 洗浄水排出装置
10a、10b 誘導ベルト
RF ロール状フイルム」

ク 「【図2】



ケ 「【図3】



コ 「【図4】



サ 「【図5】



シ 「【図6】



ス 「【図7】



セ 「【図8】



3 引用文献3(特開2014-001373号公報)の記載
(1)また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、「非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法、及びエポキシ樹脂多孔質膜の製造方法(発明の名称)」について、次の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を調製する工程(i)と、
エポキシ樹脂シートが得られるように、前記エポキシ樹脂組成物の硬化体をシート状に切削する又は前記エポキシ樹脂組成物のシート状成形体を硬化させる工程(ii)と、
ハロゲンフリーの溶剤を用いて前記エポキシ樹脂シートから前記ポロゲンを除去してエポキシ樹脂多孔質膜とする工程(iii)と、
前記エポキシ樹脂多孔質膜に赤外線を照射して前記エポキシ樹脂多孔質膜の赤外線吸収特性を測定する工程(iv)と、
前記赤外線吸収特性に基づいて前記エポキシ樹脂多孔質膜の膜厚及び/又は平均孔径を算出する工程(v)と、を含む、エポキシ樹脂多孔質膜を備えた非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法。」

イ「【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハロゲンフリーの溶剤を用いてエポキシ樹脂シートからポロゲンが除去され、これにより、エポキシ樹脂多孔質膜が得られる。従って、環境に対する負荷が大きい溶剤の使用を回避できる。また、本発明によれば、平均孔径、膜厚等のパラメータを容易に制御することができる。」

ウ 「【0040】
ポロゲンを除去するための洗浄装置も特に限定されず、公知の洗浄装置を使用できる。エポキシ樹脂シート16を溶剤に浸漬することによってポロゲンを除去する場合には、洗浄槽を複数備えた多段洗浄装置を好適に使用できる。洗浄の段数としては、3段以上がより好ましい。また、カウンターフローを利用することによって、実質的に多段洗浄を行ってもよい。さらに、各段の洗浄で、溶剤の温度を変えたり、溶剤の種類を変えたりしてもよい。」

エ 「【0063】
図3に示された製造システム200は、上記の方法(a)の実施に好適な製造システムである。製造システム200は、混合装置21;押出機22;エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物のシート状成形体を硬化させるための装置として基材搬送装置23及び加熱装置24;エポキシ樹脂シートからポロゲンを除去するための装置として、ポロゲンを除去するためのハロゲンフリーの溶剤を保持する洗浄槽25;乾燥機26;並びに巻取装置27を備えている。各装置は上記の順に接続されている。混合装置21で混合されたエポキシ樹脂組成物が、押出機22より基材上にシート状に押し出されて、シート状成形体へと成形される。基材は、1対の駆動ロールを有する基材搬送装置23によって回転可能に支持されているエンドレスベルトである。基材によって、シート状成形体は、加熱装置24内に搬送され、加熱装置24内で加熱されて硬化して、エポキシ樹脂シート(エポキシ樹脂架橋体)16が生成する。エポキシ樹脂シート16は、洗浄槽25に搬送される。洗浄槽25は、ポロゲンを除去するためのハロゲンフリーの溶剤で満たされており、エポキシ樹脂シート16が洗浄槽25を通過して、ポロゲンが除去される。ポロゲンが除去されたエポキシ樹脂シート(多孔質膜)17は、乾燥機26内で乾燥され、巻取装置27によってロール状に巻き取られる。」

オ 「【符号の説明】
【0103】
2 カソード3 アノード4 セパレータ12 硬化体16 エポキシ樹脂シート17 エポキシ樹脂多孔質膜18 切削刃21 混合装置22 押出機23 基材搬送装置24 加熱装置25、34 洗浄槽26、35 乾燥機27、36 巻取装置28、38 赤外線吸収特性測定装置(センサ)32 硬化体33 切削装置100 非水電解質電池200、300 製造システム」

カ 「【図3】



4 引用文献4(特開2015-018722号公報)の記載
(1)また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、「リチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法(発明の名称)」について、次の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を基材として、無機粒子または有機粒子を含む塗工液を基材に付与してなるリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法であって、基材に塗工液が担持された後、少なくとも基材片面にロッドをあてて担持された塗工液を均一に絞る工程(A)と、塗工液が担持された基材表面を平滑にする工程(B)とを有することを特徴としたリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、塗工液の付着量分布が均一で電池特性が良好なセパレータを、基材が薄い場合でも、長尺で安定的に生産することができるリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法を提供することにある。」

ウ 「【0012】
以下、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータ(以下、「セパレータ」ともいう)の製造方法を、図面を用いつつ説明する。
【0013】
まず、基材9を巻き取った基材ロール8から、基材9を引き出して搬送しつつ、塗工液を含浸担持する。基材9に塗工液を担持する方法については特に制限はなく、例えば、図1に示すように、塗工液を入れた含浸パッド5中に基材9を通過させる等の方法を用いることができる。図1において、符号4は含浸ロールであり、点線矢印は基材9の搬送方向を示している。
【0014】
次に、絞りロール1の前後に絞りロール1を挟み込むように基材9の表面及び裏面に接触するように設置されたロッド2により、基材9の塗工液の担持量を必要な量を残して均一に調整する(工程(A))。ロッド2は基材9の幅方向に対してクリアランス及びテンションをコントロールすることが可能であり、塗工液の担持量の微調整をすることができる。余剰塗工液は含浸パッド5に落ち、循環使用される。ロッド2は、基材9の表面及び裏面に少なくとも1回ずつ接触するように設置することが好ましい。
【0015】
次に、基材9の表面及び裏面に少なくとも1回ずつ接触するように設置したスムージングロール3により基材9の極表面の塗工面を均一かつ平滑にならす(工程(B))。これにより、基材9の細かい穴を埋め、ピンホールの発生を抑制することが可能となった。スムージングロール3の作用によって、基材9の幅方向に均一にテンションをかけることが可能であるため、シワの発生が抑制され、イオン透過性の悪化や塗工剥がれによる電池特性の悪化が抑制されたリチウムイオン二次電池用セパレータを長尺で得ることが可能となった。次に、表面が平滑化された基材9は搬送ロール6を通ってドライヤー7により乾燥され、リーラーで巻き取られる。」

「【0019】
本発明において、絞りロールの材質に特に制限はないが、SUS、鉄、アルミ等の金属もしくはゴムまたは樹脂等の材料を、使用する塗工液の種類に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、水系塗工液の場合、親水性の高い材質が好ましい。ロールの表面形状は平滑であっても、溝を彫刻する、ワイヤーを巻きつける等で表面に凹凸を形成してあってもよく、塗工液の種類や粘度、使用される基材に応じて適宜設定できる。また、必要により、ロール表面に親水化処理、DLC加工を施し、塗工液との親和度を上げることにより、塗工液の付着量分布の均一化、平滑化が向上する。本発明の絞りロールは、軸受けに保持される部分とロール本体が一体に形成されていても、別部材として形成されていてもよい。」

「【0061】
表2について詳細に説明を行う。実施例1?10では、塗工液を含浸後、絞りロール及びロッドにて基材に過剰に担持された塗工液を適性量にかき落とし、片面につき少なくとも1回ずつスムージングロールに接触させていることから、シワが発生しにくく、イオン透過性にムラが少なく、ピンホールも少ないセパレータを製造することができた。」

「【符号の説明】
【0070】
1 絞りロール
2 ロッド
3 スムージングロール
4 含浸ロール
5 含浸パッド
6 搬送ロール
7 ドライヤー
8 アンリーラー
9 基材」

「【図1】



第5.対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「水洗浴II25」及び「シートが含有する水分」は、それぞれ、本願発明1の「第1洗浄槽」及び「洗浄液」に相当する。

イ また、引用発明1の「水分を概ね除去」することは、本願発明1の「洗浄液を除去」することに相当する。

ウ また、引用発明1の「アルカリ電池用セパレータとして用いるシート」と本願発明1の「非水電解液二次電池用セパレータフィルム」とは、どちらも「電池用セパレータフィルム」の点において共通している。

エ さらに、引用発明1では「駆動モーター29で回転する二つのニップロール27、28」が、「電池用セパレータフィルム」の洗浄液を除去する機能を果たしているのに対し、本願発明1では、「第1ローラー」、「第2ローラー」及び「第3ローラー」が、「電池用セパレータフィルム」の洗浄液を除去する機能を果たしており、両者は、複数のローラーにより「電池用セパレータフィルム」から洗浄液を除去する点において共通している。

オ そうすると、本願発明1と引用発明1とは、次の点で一致する。
[一致点]
「第1洗浄槽において電池用セパレータフィルムを洗浄する洗浄工程と、
上記第1洗浄槽から搬出された上記電池用セパレータフィルムを複数のローラーにより搬送する搬送工程とを含み、
上記搬送工程では、
上記複数のローラーが電池用セパレータフィルムから洗浄液を除去する
電池用セパレータフィルムの製造方法。」

カ また、その一方、本願発明1と引用発明1とは、次の点で相違する。
[相違点1]
洗浄される電池用セパレータフィルムが、本願発明1では「非水電解液二次電池用セパレータフィルム」であるのに対し、引用発明1では「アルカリ電池用セパレータとして用いるシート」である点。

[相違点2]
「電池用セパレータフィルム」を搬送し洗浄液を除去する複数のローラーが、本願発明1では、上記「電池用セパレータフィルム」に順に接触する「第1ローラー」、「第2ローラー」、及び「第3ローラー」であって、上記「第1ローラー」及び上記「第3ローラー」が上記「電池用セパレータフィルム」の一方の面に接触し、かつ、上記「第1ローラー」と上記「第3ローラー」との間において上記「第2ローラー」が上記「電池用セパレータフィルム」の他方の面に接触するものであるのに対し、引用発明1では、「駆動モーター29で回転する二つのニップロール27、28」とされている点。

[相違点3]
「上記第1洗浄槽から搬出された上記電池用セパレータフィルムをローラーにより搬送する搬送工程」において、本願発明1では、上記「電池用セパレータフィルム」が、「第1洗浄槽」に満たされた洗浄液と同じ種類の洗浄液が満たされた「第2洗浄槽」に搬送されるのに対し、引用発明1では、「第2洗浄槽」が存在せず、「第2洗浄槽」に「電池用セパレータフィルム」を搬送するものではない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。

ア 引用文献1には、上記第4.1(1)で摘記した記載とその他の記載を検討しても、上記相違点2に係る本願発明1のような第1ローラー、第2ローラー、及び第3ローラーによる電池用セパレータフィルムの搬送及び該フィルムからの洗浄液の除去について、記載も示唆もされていない。

イ また、引用文献2にも、上記相違点2に係る本願発明1のような第1ローラー、第2ローラー、及び第3ローラーによる電池用セパレータフィルムの搬送及び該フィルムからの洗浄液の除去について、記載も示唆もされていない。(上記第4.2(1)参照)
なお、引用文献2の図7、図8には、第2ローラー列(2a?2f)を第1ローラー列(1a?1h)の下まで下降させ、これによりフィルムの表面又は裏両を第1ローラーの列と第2ローラー列のローラーとに交互に接触させた状態で当該フィルムを搬送することは記載されているが、搬送中のフィルムは洗浄槽(7a、7b)内の洗浄液と接触しているため、上記ローラーによってフィルムから洗浄液が除去されるものではない。また、3つの搬送ローラー5c?5eもフィルムの表面又は裏両と交互に接触させた状態で当該フィルムを搬送するものではあるが、上記搬送ローラー5c?5eによって洗浄液の除去を行う点については記載も示唆もされていない。

ウ さらに、引用文献3及び4の内容を検討しても、上記相違点2に係る本願発明1のような第1ローラー、第2ローラー、及び第3ローラーによる電池用セパレータフィルムの搬送及び該電池用セパレータフィルムからの洗浄液の除去について、記載も示唆もされていない。(上記第4.3(1)及び上記第4.4(1)参照)

エ そうすると、引用文献1?4のいずれにも、電池用セパレータフィルムを搬送するとともにその両面から洗浄液を除去する3つのローラーについて記載されていないから、引用発明1において、搬送及び洗浄液を除去する機能を有するニップロール27,28を、上記相違点2に係る本願発明1のような第1ローラー、第2ローラー、及び第3ローラーに置換する動機付けを見いだすことができない。

オ また、上記相違点2に係る本願発明1の第1ローラー、第2ローラー、及び第3ローラーの役割に関し、本願明細書には、
「【0077】
ローラーm、aは、耐熱セパレータSにおける一方の面Smに接触する。ローラーmおよびローラーaの間において、ローラーnは耐熱セパレータSにおける他方の面Snに接触する。ローラーm、aが耐熱セパレータSの一方側(下側)を支持し、ローラーnが耐熱セパレータSの他方側(上側)から耐熱セパレータSを押さえ付ける。ローラーnを境に、耐熱セパレータSの搬送方向は下降から上昇に変わる。耐熱セパレータSは、ローラーmの軸方向から見て、M字状の搬送経路を通る。ローラーmが接触することにより、耐熱セパレータSの面Sm側に付着した洗浄水Wが耐熱セパレータSから除去される。また、ローラーnが接触することにより、耐熱セパレータSの面Sn側に付着した洗浄水Wが耐熱セパレータSから除去される。洗浄槽15から搬出された耐熱セパレータSに付着していた洗浄水Wは、洗浄槽15に満たされた洗浄水Wと同等の汚染度合(同等の除去対象物の濃度)である。」との記載がある。
本願明細書のかかる記載箇所のローラーm、n及びaは、本願発明1の第1ローラー、第2ローラー、及び第3ローラーに対応しており、電池用セパレータフィルムの搬送をしながら、その両面の洗浄液を協働して除去する機能を有していることが理解できる。
そして、本願明細書には、
「【0080】
これにより、洗浄槽15から搬出された耐熱セパレータSの両面に付着した水分は、耐熱セパレータSから除去され、洗浄槽15に落とされる。これにより、洗浄槽15より下流側の洗浄槽16?19に、この洗浄槽15に満たされた洗浄水W(洗浄槽16?19に満たされた洗浄水Wより汚れている)が持ち込まれる量を低減することができる。従って、洗浄槽16?19に満たされた洗浄水Wの汚染(除去対象物濃度の上昇)を防ぐことが可能となる。また、耐熱セパレータSの表面に付着した除去対象物濃度の高い液体を、洗浄槽間において耐熱セパレータSの表面から除去することにより、下流の洗浄槽において、より効率的に耐熱セパレータSから除去対象物を拡散させることができる。」とも記載されている。
さらに、本願明細書【0077】及び【0080】におけるこれらの記載に加え、本願発明1において、第1ローラー、第2ローラー、及び第3ローラーを用いた電池用セパレータフィルムの搬送が、第1洗浄槽から搬出された上記電池用セパレータフィルムを、第1洗浄槽に満たされた洗浄液と同じ種類の洗浄液が満たされた第2洗浄槽に搬送するものであることが併せて特定されている(上記相違点3にも関連)ことも踏まえると、本願発明1においては、第1ローラー、第2ローラー、及び第3ローラーは、第1洗浄槽から搬出された電池用セパレータフィルムの表面に付着した除去対象物濃度の高い洗浄液液体を除去することにより、第1洗浄槽と同じ種類の洗浄液が満たされた第2洗浄槽に当該液体が持ち込まれる量を低減して汚染を防ぎ、第2洗浄槽においてより効率的に電池用セパレータフィルムから除去対象物を拡散させることができる効果をもたらすものであるといえる。
しかし、引用文献1?4には、同じ種類の洗浄液が満たされた第1洗浄槽と第2洗浄槽との間の搬送を担っている3つのローラーの組み合わせによりもたらされる第2洗浄槽の汚染防止効果については、何ら記載も示唆もなく、本願発明1における第1ローラー、第2ローラー、及び第3ローラーによってもたらされる効果は、これら引用文献に記載された効果とは異質なものであり、当業者にとって予期しえない有利な効果といえる。

カ したがって、本願発明1は、他の上記相違点について検討するまでもなく、引用発明、引用文献2及び引用文献4に記載された技術的事項、並びに引用文献3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2?10について
本願発明2?10は、本願発明1を引用することによって、本願発明1と同じ発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様に、引用発明1、引用文献2及び引用文献4に記載された技術的事項、並びに引用文献3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明11?20について
本願発明11?20は、それぞれ本願発明1?10の方法発明に対応する装置発明であり、上記相違点2に係る本願発明1の特定事項と同様の、第1ローラー、第2ローラー、および第3ローラーによる電池用セパレータフィルムの搬送及び該フィルムからの洗浄液の除去に関する発明特定事項を備えるものである。
そして、本願発明11?20と引用発明2とを対比すると、上記相違点2と同様の相違点で相違し、当該相違点については、いずれの引用文献の記載からも当業者が容易になし得たことであるとはいえない。したがって、本願発明11?20も、引用発明2、引用文献2及び引用文献4に記載された技術的事項、並びに引用文献3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明1?20は、引用文献1に記載された発明、引用文献2及び引用文献4に記載された技術的事項、並びに引用文献3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-29 
出願番号 特願2017-248126(P2017-248126)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 森 透  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 市川 篤
中澤 登
発明の名称 非水電解液二次電池用セパレータフィルム製造方法および非水電解液二次電池用セパレータフィルム洗浄装置  
代理人 長谷川 和哉  

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