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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1372604
審判番号 不服2020-9769  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-13 
確定日 2021-03-29 
事件の表示 特願2015-108871「偏光板および液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月28日出願公開、特開2016-224182〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2015-108871号(以下「本件出願」という。)は、平成27年5月28日の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成31年 2月12日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月15日提出:意見書
令和 元年 9月27日付け:拒絶理由通知書
令和 元年11月20日提出:意見書
令和 2年 4月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 2年 7月13日提出:審判請求書
令和 2年 7月13日提出:手続補正書


第2 令和2年7月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
令和2年7月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 ポリビニルアルコール系偏光子の両面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板であって、
一方の面の第1透明保護フィルムは、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および一般式(1)で表わされるグルタルイミド単位を有する(メタ)アクリル系樹脂であって、イミド化率が2.5?5.0%、酸価が0.10?0.50mmol/gの範囲であり、かつ、アクリル酸エステル単位が1重量%未満である(メタ)アクリル系樹脂を含有し、かつ、紫外線吸収剤を有し、
他方の面の第2透明保護フィルムは、シクロオレフィン系樹脂を含有してなる偏光板。
【化1】


(ここで、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、水素または炭素数1?8のアルキル基を示し、R^(3)は炭素数1?18のアルキル基、炭素数3?12のシクロアルキル基、または炭素数6?10のアリール基を示す。)」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は当合議体が付与したものであり、補正箇所を示す。
「 ポリビニルアルコール系偏光子の両面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板であって、
一方の面の第1透明保護フィルムは、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および一般式(1)で表わされるグルタルイミド単位を有する(メタ)アクリル系樹脂であって、イミド化率が2.5?5.0%、酸価が0.10?0.50mmol/gの範囲であり、かつ、アクリル酸エステル単位が1重量%未満である(メタ)アクリル系樹脂を含有し、かつ、紫外線吸収剤を有し、
他方の面の第2透明保護フィルムは、シクロオレフィン系樹脂を含有してなり、
前記第2透明保護フィルムは位相差を有し、
前記第2透明保護フィルム側が液晶セル側になるように配置される偏光板。
【化1】


(ここで、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に、水素または炭素数1?8のアルキル基を示し、R^(3)は炭素数1?18のアルキル基、炭素数3?12のシクロアルキル基、または炭素数6?10のアリール基を示す。)」

2 補正の適否について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するための必要な事項である「第2透明保護フィルム」について、本件出願の出願当初の明細書の【0079】の記載に基づき、「第2透明保護フィルム」を「位相差を有し」たものに限定する補正を含むものである。また、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野(【0001】)及び解決しようとする課題(【0005】?【0007】)が同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしているとともに、同条第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正後発明
本件補正後発明は、上記「1」「(2)本件補正後の特許請求の範囲」に記載したとおりのものである。

(2)引用文献及び引用発明
ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2013-11872号公報(以下、同じく「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差層付偏光板に関する。より詳細には、本発明は、パターン化された位相差層を有する位相差層付偏光板に関する。
・・・省略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、立体画像表示のクロストークを低減し得る位相差層付偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の位相差層付偏光板は、厚み15μm?25μmの偏光子と、該偏光子の片側に配置された位相差層とを有し、該位相差層が、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を所定のパターンで有する。
好ましい実施形態においては、上記位相差層の面内位相差Re(590)が、90nm?190nmである。
好ましい実施形態においては、上記位相差層の上記所定パターンが、異なる方向に遅相軸を有する2つの領域が交互に配置されたストライプ状である。
好ましい実施形態においては、上記異なる方向に遅相軸を有する2つの領域が、それぞれ、液晶セルの1ラインに対応する。
好ましい実施形態においては、上記偏光子が、連続的に供給される親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端を把持手段により把持し、該把持手段を該親水性ポリマーフィルムの長手方向に進行させると共に、該親水性ポリマーフィルムの両端を把持する該把持手段の少なくとも一方を該親水性ポリマーフィルムの幅方向の外側にも移動させることで該親水性ポリマーフィルムを幅方向に延伸して得られる。
好ましい実施形態においては、上記幅方向延伸工程において、気相中で、上記親水性ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に液を接触させる。
好ましい実施形態においては、上記偏光子が、少なくとも一対の圧延ロールの間隙に親水性ポリマーフィルムを通過させる圧延工程を経て得られる。
本発明の別の局面によれば、液晶パネルが提供される。この液晶パネルは、上記位相差層付偏光板を有する。
本発明の別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、上記液晶パネルを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の偏光子とパターン化された位相差層とを組み合わせることにより、立体画像表示のクロストークを低減し得る位相差層付偏光板を得ることができる。」

(イ)「【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
・・・省略・・・
【0011】
A.位相差層付偏光板
図1は、本発明の好ましい実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。位相差層付偏光板200は、偏光子20と、偏光子20の片側(代表的には、視認側)に配置された位相差層30と、偏光子20のもう片側に配置された保護層41と、偏光子20と位相差層30との間に配置された保護層42とを有する。位相差層30は、接着層60を介して保護層42に積層されている。保護層41の偏光子20が配置されていない側には、接着層50が設けられている。代表的には、位相差層付偏光板200は、その接着層50が貼り合わされて、液晶セル(代表的には、視認側)に積層される。
【0012】
図2は、本発明の別の好ましい実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。位相差層付偏光板300は、偏光子20と、偏光子20の片側(代表的には、視認側)に配置された位相差層30と、偏光子20のもう片側に配置された保護層41とを有する。保護層41の偏光子20が配置されていない側には、接着層50が設けられている。代表的には、位相差層付偏光板300は、その接着層50が貼り合わされて、液晶セル(代表的には、視認側)に積層される。位相差層30は、偏光子20の保護層として機能し得る。」

(ウ)「【0078】
D.保護層
上記保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0079】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル-スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル-メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C_(1-6)アルキルが挙げられる。より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50?100重量%、好ましくは70?100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0080】
上記(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10000?500000である。重量平均分子量が小さすぎると、フィルムにした場合の機械的強度が不足する傾向がある。重量平均分子量が大きすぎると、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
【0081】
上記(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは110℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。ガラス転移温度がこのような範囲であれば、耐久性および耐熱性に優れ得る。ガラス転移温度の上限は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0082】
上記所望の特性が得られるという点で、上記(メタ)アクリル系樹脂として、グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
・・・省略・・・
【0083】
第1の局面において、好ましくは、グルタルイミド樹脂は、下記一般式(1)で表される単位(以下、グルタルイミド単位とも称する)と、下記一般式(2)で表される単位(以下、(メタ)アクリル酸エステル単位とも称する)とを含む。
【化1】

式(1)において、R^(1)およびR^(2)は、それぞれ独立して、水素または炭素数1?8のアルキル基であり、R^(3)は、炭素数1?18のアルキル基、炭素数3?12のシクロアルキル基、または炭素数5?15の芳香環を含む置換基である。式(2)において、R^(4)およびR^(5)は、それぞれ独立して、水素または炭素数1?8のアルキル基であり、R^(6)は、炭素数1?18のアルキル基、炭素数3?12のシクロアルキル基、または炭素数5?15の芳香環を含む置換基である。
【0084】
グルタルイミド樹脂は、必要に応じて、下記一般式(3)で表される単位(以下、芳香族ビニル単位とも称する)をさらに含んでいてもよい。
【化2】


式(3)において、R^(7)は、水素または炭素数1?8のアルキル基であり、R^(8)は、炭素数6?10のアリール基である。
【0085】 上記一般式(1)において、好ましくは、R^(1)およびR^(2)は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R^(3)は水素、メチル基、ブチル基、またはシクロヘキシル基であり、さらに好ましくは、R^(1)はメチル基であり、R^(2)は水素であり、R^(3)はメチル基である。
【0086】
上記グルタルイミド樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(1)におけるR^(1)、R^(2)、およびR^(3)が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0087】
グルタルイミド単位は、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位をイミド化することにより、形成することができる。また、グルタルイミド単位は、無水マレイン酸等の酸無水物、または、このような酸無水物と炭素数1?20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸等をイミド化することによっても、形成することができる。
【0088】
上記一般式(2)において、好ましくは、R^(4)およびR^(5)は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R^(6)は水素またはメチル基であり、さらに好ましくは、R^(4)は水素であり、R^(5)はメチル基であり、R^(6)はメチル基である。
【0089】
上記グルタルイミド樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(2)におけるR^(4)、R^(5)、およびR^(6)が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0090】
上記グルタルイミド樹脂は、上記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位として、好ましくはスチレン、α-メチルスチレン等を含み、さらに好ましくはスチレンを含む。このような芳香族ビニル構成単位を有することにより、位相差を小さくすることができる。
【0091】
上記グルタルイミド樹脂は、芳香族ビニル構成単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、R^(7)およびR^(8)が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0092】
上記グルタルイミド樹脂における上記グルタルイミド単位の含有量は、例えばR^(3)の構造等に依存して変化させることが好ましい。グルタルイミド単位の含有量は、グルタルイミド樹脂の総繰り返し単位を基準として、好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは20重量%?95重量%であり、さらに好ましくは40重量%?90重量%であり、特に好ましくは50重量%?80重量%である。グルタルイミド単位の含有量がこのような範囲であれば、位相差を小さくすることができる。
【0093】
上記グルタルイミド樹脂における上記芳香族ビニル単位の含有量は、目的や所望の特性に応じて適切に設定され得る。用途によっては、芳香族ビニル単位の含有量は0であってもよい。芳香族ビニル単位が含まれる場合、その含有量は、グルタルイミド樹脂の総繰り返し単位を基準として、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは10重量%?40重量%であり、さらに好ましくは15重量%?30重量%であり、特に好ましくは15重量%?25重量%である。芳香族ビニル単位の含有量がこのような範囲であれば、耐熱性および機械的強度に優れ得る。
【0094】
上記グルタルイミド樹脂には、必要に応じて、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位以外のその他の単位がさらに共重合されていてもよい。その他の単位としては、例えば、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体から構成される単位が挙げられる。これらのその他の単位は、上記グルタルイミド樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
【0095】
第2の局面において、好ましくは、グルタルイミド樹脂は、下記一般式(4)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含み、2.5?5.0%のイミド化率、0.10?0.50mmol/gの酸価、および1重量%未満のアクリル酸エステル単位含有量を有する。
【0096】
【化3】

式(4)において、R^(9)およびR^(10)はそれぞれ独立に、水素または炭素数1?8のアルキル基を示し、R^(11)は炭素数1?18のアルキル基、炭素数3?12のシクロアルキル基、または炭素数6?10のアリール基を示す。
【0097】
上記一般式(4)において、R^(9)およびR^(10)は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R^(11)は水素、メチル基、ブチル基、またはシクロヘキシル基であることが好ましく、R^(9)はメチル基であり、R^(10)は水素であり、R^(11)はメチル基であることがより好ましい。
【0098】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(4)におけるR^(9)、R^(10)、およびR^(11)が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0099】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂は、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂を加熱溶融し、ポリメタクリル酸メチル樹脂100重量部に対して0.5?10重量部のイミド化剤で処理する工程を含む製造方法によって得られ得る。使用されるポリメタクリル酸メチル樹脂中のアクリル酸エステル単位は、好ましくは1重量%未満である。
【0100】
上記ポリメタクリル酸メチル樹脂は、メタクリル酸メチルを重合させることによって製造される。当該重合工程においては、メタクリル酸メチル以外にも、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等を併用することができる。この場合、アクリル酸エステル単位は、好ましくは1重量%未満である。アクリル酸メチル単位が0.5重量%未満であることがより好ましい。
【0101】
上記ポリメタクリル酸メチル樹脂を加熱溶融して、イミド化剤と処理する方法としては、従来公知の任意の方法を用いることができ、例えば、特開2010-284840号に記載の方法が好ましく用いられ得る。当該方法によれば、グルタルイミド単位、メタクリル酸メチル単位、カルボン酸またはカルボン酸無水物単位の比率が所望に制御されたグルタルイミド樹脂が容易に得られ得る。
【0102】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂におけるイミド化率は、グルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位との比で表される。この比は、例えば、グルタルイミド樹脂のNMRスペクトル、IRスペクトル、あるいはその他の方法により測定することが可能である。本明細書におけるイミド化率は次のようにして求められる。すなわち、^(1)H-NMRBRUKERAvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂の^(1)H-NMR測定を行った。3.5から3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO-CH_(3)プロトン由来のピーク面積Aと、3.0から3.3ppm付近のグルタルイミドのN-CH_(3)プロトン由来のピークの面積Bより、次式で求められる。
【0103】
Im%=B/(A+B)×100
なお、ここで、「イミド化率」とは全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
【0104】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂のイミド化率は、好ましくは2.5%?5.0%、より好ましくは2.5%?4.5%、さらに好ましくは3.0%?4.5%である。イミド化率が当該範囲であれば、耐熱性、透明性、成形加工性、およびフィルムに加工したときの機械的強度に優れたグルタルイミド樹脂が得られ得る。
【0105】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂の酸価は、樹脂中でのカルボン酸単位、カルボン酸無水物単位の含有量を表す。酸価は、例えばWO2005/054311および特開2005-23272号公報に記載の滴定法などにより算出することが可能である。
【0106】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂の酸価は、好ましくは0.10?0.50mmol/g、より好ましくは0.15?0.45mmol/gである。酸価が当該範囲内であれば、耐熱性、機械物性、成形加工性のバランスに優れたグルタルイミド樹脂が得られ得る。
【0107】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂におけるアクリル酸エステル単位の含有量は、好ましくは1重量%未満であり、より好ましくは0.5重量%未満である。アクリル酸エステル単位の含有量が当該範囲内であれば、熱安定性に優れたグルタルイミド樹脂が得られ得る。
・・・省略・・・
【0109】
偏光子20と位相差層30との間に配置された保護層42は、好ましくはセルロース系樹脂で構成され、さらに好ましくはTACで構成される。保護層42としてセルロース系樹脂(特に、TAC)を用いることにより、偏光子の寸法変化による位相差層の寸法変化が顕著に抑制され、結果として、立体画像表示のクロストークが良好に低減され得る。保護層42は、光学的に等方性を有することが好ましい。特に、面内位相差Reが小さいことが好ましい。偏光子を通過した直線偏光は代表的には位相差層30によって円偏光に変換されるところ、保護層42の面内位相差が小さいほど良好な円偏光への変換が実現でき、結果として、優れた立体画像表示が実現できる。具体的には、保護層42の面内位相差Re(590)は、好ましくは0nm以上20nm以下、さらに好ましくは0nm以上10nm以下、特に好ましくは0nm以上6nm以下である。保護層42の厚み方向の位相差Rth(590)は、好ましくは-100nm?+100nm、さらに好ましくは-70nm?+70nm、特に好ましくは-50nm?+50nmである。さらに、保護層42の光弾性係数(590)は、好ましくは5.0×10^(-11)m/N以下、さらに好ましくは3.0×10^(-11)m/N以下である。光弾性係数がこのような範囲であれば、立体画像表示への悪影響を抑制することができる。
【0110】
保護層41は、好ましくは、上記(メタ)アクリル系樹脂で構成される。保護層41として上記(メタ)アクリル系樹脂を用いることにより、画像表示装置の表示特性への悪影響を抑制することができる。この場合、保護層41の面内位相差Re(590)は、好ましくは0nm以上10nm以下、さらに好ましくは0nm以上7nm以下、特に好ましくは0nm以上5nm以下である。保護層41の厚み方向の位相差Rth(590)は、好ましくは-15nm?+15nm、さらに好ましくは-10nm?+10nm、特に好ましくは-5nm?+5nmである。また、保護層41は、延伸フィルムであっても未延伸フィルムであってもよいが、好ましくは延伸フィルムである。」

(エ)「【実施例】
【0127】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
1.厚み
デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
2.位相差
王子計測機器(株)製、商品名「KOBRA-CCD」を用いて測定した。
【0128】
[実施例1]
(PVAフィルムの準備)
重合度2400のPVAからなる厚み75μm、幅0.13m、長さ50mのロールに巻き回した原反PVAフィルム(クラレ社製、商品名「VF-PS」)を準備した。この原反PVAフィルムを順次繰り出し、PVAフィルムの幅方向の両端を把持手段(テンタークリップ)により把持し、テンター延伸機で速度1m/分でPVAフィルムの長手方向に搬送した。この際、把持手段(テンタークリップ)によるつかみしろの長さは15mm、幅は50mmとした。また、PVAフィルムの長手方向に隣接する把持手段(テンタークリップ)の間の距離は5mmとした。
【0129】
(偏光子の作製)
(1)膨潤工程および幅方向延伸工程
30m/分で上記PVAフィルムの幅方向に往復運動する噴霧装置(スプレー)を用いて、16mL/分の流量で、PVAフィルムの両面に、気相中で、30℃の水(膨潤液)を30秒噴霧した。この際、把持手段(テンタークリップ)により、PVAフィルムを原反の2.2倍の長さになるように幅方向に延伸した。
(2)染色工程および幅方向延伸工程
上記噴霧装置(スプレー)を用いて、膨潤後のPVAフィルムの片面に、気相中で、0.2重量%のヨウ素を含む30℃の水溶液(染色液)を25秒噴霧した。この際、把持手段(テンタークリップ)により、PVAフィルムを原反の3.3倍の長さになるように幅方向に延伸した。
(3)架橋工程および幅方向延伸工程
上記噴霧装置(スプレー)を用いて、染色処理後のPVAフィルムの片面に、気相中で、3重量%のホウ酸と3重量%のヨウ化カリウムとを含む30℃の水溶液(架橋液)を10秒噴霧した。この際、把持手段(テンタークリップ)により、PVAフィルムを原反の3.6倍の長さになるように幅方向に延伸した。
(4)幅方向延伸工程
上記噴霧装置(スプレー)を用いて、架橋後のPVAフィルムの片面に、4重量%のホウ酸と5重量%のヨウ化カリウムとを含む60℃の水溶液(延伸液)を60秒噴霧した。この際、把持手段(テンタークリップ)により、PVAフィルムを原反の5.9倍の長さになるように幅方向に延伸した。
(5)調整工程
上記噴霧装置(スプレー)を用いて、延伸処理後のPVAフィルムの片面に、4重量%のヨウ化カリウムを含む30℃の水溶液(調整液)を10秒噴霧した。
(6)乾燥工程
PVAフィルムに60℃で1分間乾燥処理を施し、厚み17μmの偏光子を得た。
【0130】
(位相差層の作製)
遅相軸方向が異なる2つの領域をストライプパターンで有する位相差フィルムを以下のようにして作製した。ノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名「ZEONOR」)の上に光配向膜を形成し、偏光露光法を用いて液晶セルの1ライン毎にストライプの方向に対して+45°、-45°の配向規制力を与え、当該光配向膜上に所定の複屈折率と膜厚とを有する光硬化型液晶ポリマー層を形成した。次いで、紫外線を照射して光硬化型液晶ポリマーを硬化させ、その配向状態を固定することにより、遅相軸方向が異なる2つの領域をストライプパターンで有する、λ/4板に対応する位相差フィルム(パターンリターダーフィルム)を作製した。
【0131】
((メタ)アクリル系フィルムの作製)
特開2009-161744号公報の製造例1に記載のイミド化MS樹脂100重量部およびトリアジン系紫外線吸収剤(アデカ社製、商品名:T-712)0.62重量部を、2軸混練機にて220℃にて混合し、樹脂ペレットを作製した。得られた樹脂ペレットを、100.5kPa、100℃で12時間乾燥させ、単軸の押出機にてダイス温度270℃でTダイから押出してフィルム状に成形した(厚み160μm)。さらに当該フィルムを、その搬送方向に150℃の雰囲気下に延伸し(厚み80μm)、次いでフィルム搬送方向と直交する方向に150℃の雰囲気下に延伸して、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの面内位相差Re(590)は0.4nm、厚み方向位相差Rth(590)は0.78nmであった。
【0132】
上記で得られた偏光子の一方の面に、内側(液晶セル側)保護層として上記で得られた(メタ)アクリル系フィルムを、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を介して貼り合わせた。
次いで、偏光子のもう一方の面には、視認側保護層としてTACフィルム(富士フイルム社製、商品名「TD80UL」、厚み80μm、Re(590)=4nm、Rth(590)=45nm)を、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を介して貼り合わせた。次いで、視認側保護層表面に、アクリル系粘着剤(厚み23μm)を介して、上記で得られたパターンリターダーフィルムを貼り合わせた。このとき、パターンリターダーフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が実質的に±45°となるように貼り合わせた。
さらに、内側保護層表面に、アクリル系粘着剤層(厚み23μm)を形成した。
このようにして、粘着剤層/(メタ)アクリル系フィルム/偏光子/TACフィルム/粘着剤層/位相差層の構成を有する位相差層付偏光板を得た。」

(オ)図1


(カ)図2


イ 上記アの記載に基づけば、引用文献2には、実施例1の位相差層付偏光板として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、引用文献2の【0131】の「イミド化MS樹脂」は、その製造方法からみて、「一般式(4)においてR^(9)及びR^(11)がメチル基、R^(10)が水素で表されるグルタルイミド単位と、メタクリル酸メチル単位とスチレン単位を有する樹脂」である。

また、「パターンリターダーフィルム」及び「位相差層」を「位相差フィルム」に、「二軸延伸フィルム」を「(メタ)アクリル系フィルム」に、それぞれ用語を統一した。

「 原反PVAフィルムを準備し、PVAフィルムの両面に、気相中で、膨潤液を噴霧し、この際、把持手段により、PVAフィルムを幅方向に延伸し、膨潤後のPVAフィルムの片面に、気相中で、ヨウ素を含む染色液を噴霧し、この際、把持手段により、PVAフィルムを幅方向に延伸し、染色処理後のPVAフィルムの片面に、気相中で、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む架橋液を噴霧し、この際、把持手段により、PVAフィルムを幅方向に延伸し、架橋後のPVAフィルムの片面に、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む延伸液を噴霧し、この際、把持手段により、PVAフィルムを幅方向に延伸し、延伸処理後のPVAフィルムの片面に、ヨウ化カリウムを含む調整液を噴霧し、PVAフィルムに乾燥処理を施し、偏光子を得、
ノルボルネン系樹脂フィルムの上に光配向膜を形成し、偏光露光法を用いて液晶セルの1ライン毎にストライプの方向に対して+45°、-45°の配向規制力を与え、当該光配向膜上に所定の複屈折率と膜厚とを有する光硬化型液晶ポリマー層を形成し、次いで、紫外線を照射して光硬化型液晶ポリマーを硬化させ、その配向状態を固定することにより、遅相軸方向が異なる2つの領域をストライプパターンで有する、λ/4板に対応する位相差フィルムを作製し、
一般式(4)においてR^(9)及びR^(11)がメチル基、R^(10)が水素で表されるグルタルイミド単位と、メタクリル酸メチル単位とスチレン単位を有する樹脂及びトリアジン系紫外線吸収剤を混合し、樹脂ペレットを作製し、得られた樹脂ペレットを乾燥させ、単軸の押出機にてTダイから押出してフィルム状に成形し、さらに当該フィルムを、その搬送方向に延伸し、次いでフィルム搬送方向と直交する方向に延伸して、(メタ)アクリル系フィルムを得、

上記で得られた偏光子の一方の面に、内側(液晶セル側)保護層として上記で得られた(メタ)アクリル系フィルムを、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤を介して貼り合わせ、次いで、偏光子のもう一方の面に、視認側保護層としてTACフィルムを、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤を介して貼り合わせ、次いで、視認側保護層表面に、アクリル系粘着剤を介して、上記で得られた位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が実質的に±45°となるように貼り合わせ、さらに、内側保護層表面に、アクリル系粘着剤層を形成して得た、粘着剤層/(メタ)アクリル系フィルム/偏光子/TACフィルム/粘着剤層/位相差フィルムの構成を有する位相差層付偏光板。」

(3)対比
本件補正後発明と引用発明とを対比する。
なお、本件補正後発明の一般式(1)と引用文献2の【0096】における一般式(4)の記載は省略した。以下の「(4)一致点及び相違点」、及び「(5)判断」においても同様である。

ア 偏光子
引用発明の「偏光子」は、「原反PVAフィルムを準備し、PVAフィルムの両面に、気相中で、膨潤液噴霧し、この際、把持手段により、PVAフィルムを幅方向に延伸し、膨潤後のPVAフィルムの片面に、気相中で、ヨウ素を含む染色液を噴霧し、この際、把持手段により、PVAフィルムを幅方向に延伸し、染色処理後のPVAフィルムの片面に、気相中で、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む架橋液を噴霧し、この際、把持手段により、PVAフィルムを幅方向に延伸し、架橋後のPVAフィルムの片面に、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む延伸液を噴霧し、この際、把持手段により、PVAフィルムを幅方向に延伸し、延伸処理後のPVAフィルムの片面に、ヨウ化カリウムを含む調整液を噴霧し、PVAフィルムに乾燥処理を施し」て得たものである。
上記製法及び組成からみて、引用発明の「偏光子」は、その文言どおり、本件補正後発明の「偏光子」に相当する。また、引用発明の「偏光子」は、本件補正後発明の「偏光子」の「ポリビニルアルコール系」との要件を満たす。

イ 接着剤層
引用発明の「ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤」は、技術的にみて、本件補正後発明の「接着剤」に相当する。

ウ 透明保護フィルム
引用発明の「(メタ)アクリル系フィルム」は、「得られた偏光子の一方の面に、内側(液晶セル側)保護層として」、「貼り合わせ」られたものである。また、引用発明の「TACフィルム」は、「偏光子のもう一方の面に、視認側保護層として」、「貼り合わせ」られたものである。
ここで、引用発明の「(メタ)アクリル系フィルム」及び「TACフィルム」が透明であることは、明らかである。また、「保護層」としての「フィルム」は、「保護フィルム」といえる。
そうしてみると、引用発明の「(メタ)アクリル系フィルム」及び「TACフィルム」は、本件補正後発明の「透明保護フィルム」に相当する。

エ 偏光板
引用発明の「位相差層付偏光板」は、「得られた偏光子の一方の面に、内側(液晶セル側)保護層として上記で得られた(メタ)アクリル系フィルムを、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤を介して貼り合わせ、次いで、偏光子のもう一方の面には、視認側保護層としてTACフィルムを、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤を介して貼り合わせ、次いで、視認側保護層表面に、アクリル系粘着剤を介して、上記で得られた位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が実質的に±45°となるように貼り合わせ、さらに、内側保護層表面に、アクリル系粘着剤層を形成して得た」ものであり、「粘着剤層/(メタ)アクリル系フィルム/偏光子/TACフィルム/粘着剤層/位相差フィルムの構成を有する」ものである。
上記製法及び構成からみて、引用発明の「位相差層付偏光板」は、本件補正後発明の「偏光板」に相当する。
また、上記製法及び構成からみて、引用発明の「偏光子」の両面には、「水溶性接着剤」を介して「(メタ)アクリル系フィルム」及び「TACフィルム」が設けられているものである。ここで、引用発明の「水溶性接着剤」が層をなすことは明らかである。
そうしてみると、引用発明の「位相差層付偏光板」は、本件補正後発明の「偏光板」の「ポリビニルアルコール系偏光子の両面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている」との要件を満たす。

オ 第1透明保護フィルム
引用発明の「位相差層付偏光板」は、「粘着剤層/(メタ)アクリル系フィルム/偏光子/TACフィルム/粘着剤層/位相差フィルムの構成を有する」。また、引用発明の「(メタ)アクリル系フィルム」は、「一般式(4)においてR^(9)及びR^(11)がメチル基、R^(10)が水素で表されるグルタルイミド単位と、メタクリル酸メチル単位とスチレン単位を有する樹脂及びトリアジン系紫外線吸収剤を混合し、樹脂ペレットを作製し、得られた樹脂ペレットを乾燥させ、単軸の押出機にてTダイから押出してフィルム状に成形し、さらに当該フィルムを、その搬送方向に延伸し、次いでフィルム搬送方向と直交する方向に延伸して」得たものである。
ここで、引用発明の「メタクリル酸メチル単位」は、その名のとおり、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位である。また、引用発明の「一般式(4)においてR^(9)及びR^(11)がメチル基、R^(10)が水素で表されるグルタルイミド単位」は、本願発明の一般式(1)において、R^(1)及びR^(3)が炭素数1のアルキル基、R^(2)が水素であるものに該当する。そして、偏光子の両面のいずれを一方の面、他方の面とするかは随意であり、また、引用発明における保護層としての「(メタ)アクリル系フィルム」及び「TACフィルム」のいずれを第1、第2とするかは随意である。
そうしてみると、引用発明の「(メタ)アクリル系フィルム」及び「トリアジン系紫外線吸収剤」は、それぞれ、本件補正後発明の「第1透明保護フィルム」及び「紫外線吸収剤」に相当する。また、引用発明の「(メタ)アクリル系フィルム」は、本件補正後発明の「第1透明保護フィルム」の「一方の面の」との要件、及び「不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および一般式(1)で表わされるグルタルイミド単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を含有し、かつ、紫外線吸収剤を有」するとの要件を満たす。

カ 第2透明保護フィルム
上記オで述べたとおり、引用発明の「(メタ)アクリル系フィルム」を、本件補正後発明の「第1透明保護フィルム」に相当するものとしたから、引用発明の「TACフィルム」は、本件補正後発明の「他方の面の」という要件を満たす「第2透明保護フィルム」に相当する。
また、引用発明の「TACフィルム」が樹脂であることは明らかである。そうしてみると、引用発明の「TACフィルム」と本件補正後発明の「第2透明保護フィルム」は、「樹脂を含有してなり」との点で共通する。

(4)一致点及び相違点
ア 一致点
以上の対比結果を踏まえると、本件補正後発明と引用発明は、以下の点で一致する。
「 ポリビニルアルコール系偏光子の両面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板であって、
一方の面の第1透明保護フィルムは、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および一般式(1)で表わされるグルタルイミド単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を含有し、かつ、紫外線吸収剤を有し、
他方の面の第2透明保護フィルムは、樹脂を含有してなる偏光板。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は、以下の点で相違するか、又は一応相違する。

(相違点1)
「第1透明保護フィルム」が、本件補正後発明は、「イミド化率が2.5?5.0%、酸価が0.10?0.50mmol/gの範囲であり、かつ、アクリル酸エステル単位が1重量%未満である(メタ)アクリル系樹脂を含有」するのに対して、引用発明の「(メタ)アクリルフィルム」は、一応、そのような特定がなされていない点。

(相違点2)
「第2透明保護フィルム」が、本件補正後発明は、「シクロオレフィン系樹脂を含有してなり」、「位相差を有」するのに対して、引用発明は、「シクロオレフィン系樹脂を含有して」おらず、また、「位相差を有」するとは特定されていない点。

(相違点3)
「偏光板」が、本件補正後発明は、「第2透明保護フィルム側が液晶セル側になるように配置される」のに対して、引用発明は、一応、このように特定されたものではない点。

(5)判断
上記相違点について検討する。

ア 相違点1について
引用文献2の【0095】に「第2の局面において、好ましくは、グルタルイミド樹脂は、下記一般式(4)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含み、2.5?5.0%のイミド化率、0.10?0.50mmol/gの酸価、および1重量%未満のアクリル酸エステル単位含有量を有する。」と記載されている。そして、引用発明の「(メタ)アクリル系フィルム」に含まれる「一般式(4)においてR^(9)及びR^(11)がメチル基、R^(10)が水素で表されるグルタルイミド単位と、メタクリル酸メチル単位とスチレン単位を有する樹脂」は、上記【0095】に記載のグルタルイミド樹脂の具体例と理解される。
そうしてみると、相違点1に係る本件補正後発明の構成は、引用発明も具備する構成である。
仮にそうでないとしても、引用文献2の上記記載に接した当業者であれば、引用発明の「(メタ)アクリル系フィルム」を上記相違点1に係る本件補正後発明の構成とすることは、容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
引用文献2の【0012】には、「図2は、本発明の別の好ましい実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。位相差層付偏光板300は、偏光子20と、偏光子20の片側(代表的には、視認側)に配置された位相差層30と、偏光子20のもう片側に配置された保護層41とを有する。保護層41の偏光子20が配置されていない側には、接着層50が設けられている。代表的には、位相差層付偏光板300は、その接着層50が貼り合わされて、液晶セル(代表的には、視認側)に積層される。位相差層30は、偏光子20の保護層として機能し得る。」と記載されている。また、偏光板について、薄型化や低コスト化のために積層する層を少なくすることは、周知の課題である。さらに、層を積層するにあたって接着剤を用いることは周知慣用技術である。
そうしてみると、引用文献2の【0012】、図2の記載に接した当業者であれば、薄型化や低コスト化のために、引用発明において、「TACフィルム」及び「粘着剤層」を取り除いて、「偏光子」に「位相差フィルム」を接着剤を用いて積層することに、何ら困難性はない。そして、引用発明の「位相差フィルム」の「ノルボルネン系樹脂フィルム」が、透明保護フィルムとして機能することは明らかである(当合議体注:このことは、引用文献2の【0078】の「上記保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては・・・ポリノルボルネン系・・・の透明樹脂等が挙げられる。」との記載からも確認できる。)。
したがって、引用発明において引用文献2に記載された事項を適用して上記相違点2に係る本件補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、引用文献2の【0109】には、「偏光子20と位相差層30との間に配置された保護層42は、好ましくはセルロース系樹脂で構成され、さらに好ましくはTACで構成される。保護層42としてセルロース系樹脂(特に、TAC)を用いることにより、偏光子の寸法変化による位相差層の寸法変化が顕著に抑制され、結果として、立体画像表示のクロストークが良好に低減され得る。」と記載されていて、偏光子と位相差層との間に保護層を配置することが記載されている(当合議体注:引用発明は、この態様のものであり、図でいえば、図1のものである。)。
しかしながら、引用文献2には、図1に関する【0011】の記載に続いて、上述の図2に関する【0012】の実施形態が、「本発明の別の好ましい実施形態」として記載されているのであるから、引用文献2には、引用発明において、TACフィルムを取り除いて偏光子に位相差フィルムを設ける構成とすることを動機付ける記載が明示されているといえる。

ウ 相違点3について
「第2透明保護フィルム側が液晶セル側になるように配置される」ことは、「偏光板」という物の発明である本件補正後発明おいて、物としての「偏光板」の構成を何ら特定するものではない。
したがって、上記相違点3は実質的な相違点ではない。

仮に、相違するとしても、位相差を有する保護フィルムを液晶セル側に配置することは、本件出願前に周知技術(例えば、特開2009-139720号公報の【0160】、図2、特開2009-139735号公報の【0153】、図2参照。)であり、当業者にとって適宜選択可能な設計変更にすぎない。

(6)効果について
本件補正後発明に関して、本件明細書の【0010】?【0013】には、それぞれ、「当該偏光板では、偏光板の一方の面の第1透明保護フィルムとして、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位およびグルタルイミド単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を含有してなるものを用いる。この(メタ)アクリル系樹脂は、透湿度が低く、高温環境下における耐熱性、高湿環境下における耐湿性等の耐久性を満足することができ、偏光板を液晶パネルに適用した場合にも表示ムラを小さく抑えることができる。」、「また、当該偏光板では、第1透明保護フィルムが紫外線吸収剤を有しているので、野外環境下での影響の大きい黄変を好適に防止することができる。」、「さらに、当該偏光板では、第1透明保護フィルムの形成材料として不飽和カルボン酸アルキルエステル単位およびグルタルイミド単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を採用し、かつこの(メタ)アクリル系樹脂のイミド化率、酸価およびアクリル酸エステル単位の含有量を所定範囲としているので、紫外線吸収剤の添加によるフィルム製膜時のコゲの発生を抑制し、偏光板の外観を良好なものとすることができる。」、「加えて、当該偏光板では他方の面側の第2透明保護フィルムをシクロオレフィン系樹脂により形成しているので、偏光板の透湿度を低減して高温高湿下での表示ムラを抑制することができる。」と記載されている。
しかしながら、このような効果は、引用発明及び引用文献2に記載された事項から予測できる範囲内のものである。

(7)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和元年11月20提出の意見書において、「引用文献2には、保護層として、グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂とシクロオレフィン系樹脂の組合せについては何ら開示されておらず、かつ、本願発明1は、引用文献2に記載された発明によって奏される効果とは異質の効果を奏するものであって、本願発明1は、引用文献2に対して新規性進歩性を有するものと確信致します。」と主張している。また、審判請求人は、令和2年7月13日提出の審判請求書において、「位相差層と視認側偏光板のさらに視認側に配置することを必須とする引用発明において、位相差層を液晶セル側に配置しますと、立体画像表示技術としての成立性が否定されてしまうのに加え、位相差層が保護層としても機能し得なくなりますので、引用発明において上記相違点に係る構成を採用することには阻害要因があるといえます。」と主張している。
しかしながら、上記(5)及び(6)で示したとおり、審判請求人の上記主張を採用することはできない。

(8)小括
本件補正後発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正却下の決定のむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記「第2 令和2年7月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定」[結論]のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3 引用文献及び引用発明
引用文献2の記載及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)ア及びイに記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正後発明から、上記第2[理由]1の補正事項に係る限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定した本件補正後発明も、上記第2[理由]2に記載したとおり、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-01-15 
結審通知日 2021-01-19 
審決日 2021-02-10 
出願番号 特願2015-108871(P2015-108871)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 井亀 諭
井口 猶二
発明の名称 偏光板および液晶表示装置  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
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