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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A63F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A63F
管理番号 1372662
異議申立番号 異議2020-700278  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-21 
確定日 2021-02-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6595043号発明「ゲームプログラム、方法、および情報処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6595043号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10、12、13〕、11について訂正することを認める。 特許第6595043号の請求項1ないし10、12及び13に係る特許を維持する。 特許第6595043号の請求項11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6595043号の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、平成30年5月29日に出願され、令和1年10月4日に特許権の設定登録がされ、同年10月23日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年4月21日に特許異議申立人粟野浩により請求項1ないし9及び11ないし13に係る特許に対して特許異議の申立て(以下「粟野の特許異議申立て」という。)がされ、同年4月22日に特許異議申立人財前直樹によりいずれも全請求項に係る特許に対して2件の特許異議の申立て(以下、特開2000-24318号公報を甲第1号証とする特許異議の申立てを「財前1の特許異議申立て」といい、「ポペぺポペ、「FFxiv GMに救助された」、[online]、公知日2015年11月30日、[令和2年4月17日検索]、インターネット<https://www.youtube.com/watch?v=A342_HqWeWM>」を甲第1号証とする特許異議の申立てを「財前2の特許異議申立て」という。)がされ、当審は、同年6月30日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年8月31日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)を行い、それに対して、特許異議申立人財前直樹は、同年10月27日付けで意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし13について訂正することを求める、というものであり、本件訂正による訂正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「ユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(以下、NPC)」と記載されているのを、「ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(以下、NPC)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?10、12、13も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記第2動作指図データは、前記NPCを演じる演者の入力したモーションデータと、前記NPCを演じる演者の入力した音声データと、を含むデータである」と記載されているのを、「前記第2動作指図データは、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力したモーションデータと、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力した音声データと、を含むデータである」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?10、12、13も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項11を削除する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1ないし10、12及び13に係る発明について、本件訂正前の記載では、「ノンプレイヤキャラクタ」を操作しない「ユーザおよび他のユーザ」及び「第1パートを進行させる」「入力操作」を行う「前記ユーザ」が、ゲームプレイヤであるのか否か明らかでなかったところ、「ゲームプレイヤである」ことを特定して明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、願書に添付した明細書の段落【0010】における「本開示に係るゲームシステムは、複数のユーザにゲームを提供するためのシステムである。」との記載、段落【0011】における「ゲームシステム1は図示の通り、複数のユーザ端末100と、サーバ200とを含む。」との記載、段落【0039】における「ゲームシステム1は、あらゆるプレイ形態のゲームを実行し得る。例えば、単一のユーザによるシングルプレイゲーム、および、複数のユーザによるマルチプレイゲーム、また、マルチプレイゲームの中でも、複数のユーザが対戦する対戦ゲーム、および、複数のユーザが協力する協力プレイゲームなどであってもよい。」との記載、段落【0071】における「ゲーム進行部115は、ゲームを進行させる。本実施形態では、ゲーム進行部115は、本ゲームを、操作受付部111を介して入力されるユーザの入力操作に応じて進行させる。」との記載、段落【0072】における「本ゲームが、第1パート、第2パート・・・というように複数のパートに分かれて構成されている場合、ゲーム進行部115は、パートごとの仕様にしたがってゲームを進行させる。」との記載、段落【0096】における「ユーザ端末100は、ユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないNPCの動作を指定する動作指図データであって、メモリ11に予め記憶されている第1動作指図データに基づいてNPCを動作させ、操作部(入出力IF14、タッチスクリーン15、カメラ17、測距センサ18)を介して入力されたユーザの入力操作に応じて第1パートを進行させるステップ」との記載等に基づけば、「ユーザおよび他のユーザ」が「ゲームプレイヤ」であることは明らかであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるといえるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
さらに、訂正事項1は、請求項1ないし10、12及び13に係る発明について、「ノンプレイヤキャラクタ」を操作しない「ユーザおよび他のユーザ」及び「第1パートを進行させる」「入力操作」を行う「前記ユーザ」が、「ゲームプレイヤである」ことを特定して明確にするという明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1ないし10、12及び13に係る発明について、本件訂正前の記載では、「第2パート」において「モーションデータ」及び「音声データ」を「入力」する「前記NPCを演じる演者」が、「ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザ」を含むものであるのか、あるいは、「ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザ」を含まない第三者であるのか、明らかでなかったところ、「前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であ」ることを特定して明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、願書に添付した明細書の段落【0025】における「本実施形態では、ゲームシステム1は、さらに、動作指図装置300を含む。動作指図装置300は、サーバ200およびユーザ端末100のそれぞれと、ネットワーク2を介して接続する。」との記載、段落【0030】における「動作指図装置300に備えられた操作部または動作指図装置300と通信可能に接続された各種の入力機構を用いて、動作指図装置300に対して、何らかの入力操作を行う人をオペレータと称する。オペレータには、入力部351、コントローラ3030などを用いて動作指図装置300を操作する人も含まれるし、マイク3010を介して音声を入力する声優も含まれるし、モーションキャプチャ装置3020を介して動きを入力するモデルも含まれる。」との記載、段落【0123】における「本実施形態では、ゲーム進行部115は、外部の装置(以下、動作指図装置300とする)から供給された動作指図データに含まれているモーションキャプチャデータが示す動きをキャラクタ802の動きに反映させる。」との記載、段落【0124】における「本実施形態では、ゲーム進行部115は、動作指図装置300から供給された動作指図データに含まれている音声データ801を、キャラクタ802が発した音声として、キャラクタ802の動きと同期して出力する。」との記載、段落【0125】における「上述の構成によれば、動作指図装置300の設置場所において、実在する声優701およびモデル702の音声および動きが、そのまま、キャラクタ802の音声および動きに反映される。」との記載、段落【0146】 における「ステップS116にて、ゲーム進行部115は、解析部116によって解析された動画指図データに基づいてキャラクタを動作させることにより、ライブ配信パートを進行させる。具体的には、ゲーム進行部115は、図9に示す動画再生画面800などを表示部152に表示させる。ゲーム進行部115は、声優701、モデル702などのアクターが動作指図装置300の設置場所で、声を出したり、動いたりしているのとほぼ同時に、リアルタイムで、その音声および動きを、動画再生画面800におけるキャラクタ802の発言および動きに反映させる。」との記載等に基づけば、「第2パート」において「モーションデータ」及び「音声データ」を「入力」する「前記NPCを演じる演者」が、「前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であ」ることは明らかであるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるといえるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
さらに、訂正事項2は、請求項1ないし10、12及び13に係る発明について、「第2パート」において「モーションデータ」及び「音声データ」を「入力」する「前記NPCを演じる演者」が、「前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であ」ることを特定して明確にするという明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、請求項11を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
さらに、訂正事項3は、請求項11を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)一群の請求項について
訂正前の請求項2ないし10、12及び13は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし10、12及び13は一群の請求項である。
そして、訂正事項1及び2は、訂正前の請求項1ないし10、12及び13に係る事項を訂正するものであるから、一群の請求項に対して請求されたものである。
また、訂正前の請求項11は、独立項であって、訂正事項3は、単独の請求項11に対して請求されたものである。

(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定及び同法第120条の5第4項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし10、12、13〕、11について訂正することを認める。

第3 訂正後の請求項1ないし10、12及び13に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし10、12及び13に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10、12及び13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
ゲームプログラムであって、
前記ゲームプログラムは、プロセッサ、メモリおよび操作部を備えるコンピュータにより実行されるものであり、
前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに、
ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(以下、NPC)の動作を指定する動作指図データであって、前記メモリに予め記憶されている第1動作指図データに基づいて前記NPCを動作させ、前記操作部を介して入力された前記ユーザの入力操作に応じて第1パートを進行させるステップと、
外部装置から受信した第2動作指図データに基づいて前記NPCを動作させることにより第2パートを進行させるステップと、
を実行させ、
前記第2動作指図データは、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力したモーションデータと、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力した音声データと、を含むデータである、ゲームプログラム。

【請求項2】
前記第2パートを進行させるステップは、前記第2動作指図データに含まれる音声データに基づいて前記NPCに発話させ、前記第2動作指図データに含まれるモーションデータに基づいて前記NPCを動かす、請求項1に記載のゲームプログラム。

【請求項3】
前記第2パートを進行させるステップは、前記外部装置から前記第2動作指図データを受信したことをトリガにして、該第2動作指図データに基づいて前記NPCを動作させる、請求項1または2に記載のゲームプログラム。

【請求項4】
前記第2パートを進行させるステップは、前記外部装置または他の装置から予め指定された時刻に、前記第2動作指図データを受信する、請求項3に記載のゲームプログラム。

【請求項5】
前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに、
前記第2パートの進行中に、前記操作部を介して前記コンピュータに入力された前記ユーザの入力操作の内容を、前記外部装置に送信するステップと、
前記入力操作の内容を前記外部装置に送信した後、該外部装置から第2動作指図データを受信するステップと、
を実行させる、請求項1から4のいずれか1項に記載のゲームプログラム。

【請求項6】
前記受信するステップは、前記入力操作の内容を前記外部装置が受信した後、前記NPCを演じる演者の入力した音声データを、前記第2動作指図データとして受信する、請求項5に記載のゲームプログラム。

【請求項7】
前記受信するステップは、前記入力操作の内容を前記外部装置が受信した後、前記NPCを演じる演者の入力したモーションデータを、前記第2動作指図データとして受信する、請求項5または6に記載のゲームプログラム。

【請求項8】
前記受信するステップは、前記入力操作の内容を前記外部装置が受信した後、該外部装置に入力された入力操作により特定された、前記NPCの動作を指示するコマンドを1以上含むモーションコマンド群を、前記第2動作指図データとして受信する、請求項5または6に記載のゲームプログラム。

【請求項9】
前記受信するステップは、前記ユーザの入力操作の内容に応じて生成された音声データおよびモーションデータを含む第2動作指図データを受信し、
前記第2パートを進行させるステップは、受信された前記第2動作指図データに含まれる前記音声データに基づいて前記NPCに発話させるとともに、前記モーションデータに基づいて前記NPCを動かすことにより、前記ユーザの入力操作に対する前記NPCの反応を前記ユーザに提示する、請求項5から8までのいずれか1項に記載のゲームプログラム。

【請求項10】
前記第1パートを進行させるステップは、前記ユーザの入力操作に基づいて、前記第1パートのプレイ結果を決定し、
前記第2パートを進行させるステップは、前記第1パートのプレイ結果に応じた表示態様にて、前記第2動作指図データに基づいて動作させる前記NPCを表示部に表示させる、請求項1から9のいずれか1項に記載のゲームプログラム。

(【請求項11】は削除された。)

【請求項12】
コンピュータがゲームプログラムを実行する方法であって、
前記コンピュータは、プロセッサ、メモリおよび操作部を備え、
前記プロセッサが請求項1に記載の各ステップを実行する方法。

【請求項13】
情報処理装置であって、
前記情報処理装置は、
請求項1に記載のゲームプログラムを記憶する記憶部と、
操作部と、
該ゲームプログラムを実行することにより、情報処理装置の動作を制御する制御部と
を備えている、情報処理装置。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし13に係る特許に関して、令和2年6月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)理由1(明確性)本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

ア 請求項1の「ユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(以下、NPC)」、「前記操作部を介して入力された前記ユーザの入力操作に応じて第1パートを進行させる」との記載だけでは、ユーザおよび他のユーザがゲームプレイヤであるのか否か不明であり、「ユーザおよび他のユーザ」が何を意味するのか明確でなく、したがって、ノンプレイヤキャラクタの定義が明確でない。

イ 請求項1の「外部装置から受信した第2動作指図データに基づいて前記NPCを動作させることにより第2パートを進行させる」との記載は、「前記NPC」が、第1パートにおいてユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(NPC)を意味するだけで、第2パートにおいてユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(NPC)であるのか否か不明であり、したがって、第2パートにおける「前記NPCを演じる演者」が、「ユーザおよび他のユーザ」を含むものであるのか、あるいは、「ユーザおよび他のユーザ」を含まない第三者、例えば、ゲームを提供する側の第三者であるのか、明確でない。

ウ 請求項11において、「キャラクタの動作内容」と、「ユーザおよび他のユーザのいずれもが操作対象としないノンプレイヤキャラクタ(以下、NPC)の動作内容」との異同及び関係が不明であり、明確でない。

エ 請求項11において、「ユーザおよび他のユーザのいずれもが操作対象としないノンプレイヤキャラクタ(以下、NPC)」との記載の他に、「ユーザおよび他のユーザ」についての記載がなく、例えば、ユーザや他のユーザがゲームプレイヤであることが記載されていないので、「ユーザおよび他のユーザ」が何を意味するのかが明確でない。

したがって、請求項1及び11に係る発明並びに請求項1を引用する請求項2ないし10、12及び13に係る発明は明確でない。

なお、この理由1は、財前1の特許異議申立て及び財前2の特許異議申立てにおける請求項1ないし13に係る特許に対する特許法第36条第6項第2号違反の主張と同趣旨である。

(2)理由2(進歩性)請求項11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

ア 財前2の特許異議申立ての甲第1号証:ポペペポペ、「FFxiv GMに救助された」、[online]、公知日2015年11月30日、[令和2年4月17日検索]、インターネット<https://www.youtube.com/watch?v=A342_HqWeWM>

イ 財前2の特許異議申立ての甲第6号証:作者不明、「FF14 Online Wiki/GM」、[online]、保存日2017年7月6日、[令和2年4月20日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20170706112511/http:/ff14wiki.info/?GM>(技術常識を示す引用例)

ウ 財前2の特許異議申立ての甲第7号証:復帰勢、「FF11のゲーム内での問題はGMコールで解決!」、[online]、公知日2017年1月16日、[令和2年4月20日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20171207141439/https://www.ffreturn.net/entry/2017/01/16/210000>(技術常識を示す引用例)

エ 特開2012-40055号公報(周知技術を示す引用例)

なお、この理由2は、財前2の特許異議申立てにおける請求項11に係る特許に対する特許法第29条第2項違反の主張と同趣旨である。

2 当審の判断
(1)理由1(特許法第36条6項2号)について
ア 訂正事項1によって、請求項1ないし10、12及び13に係る発明の「ノンプレイヤキャラクタ」を操作しない「ユーザおよび他のユーザ」及び「第1パートを進行させる」「入力操作」を行う「前記ユーザ」が、「ゲームプレイヤである」ことが特定され、明確な記載となった。

イ 訂正事項2によって、請求項1ないし10、12及び13に係る発明の「第2パート」において「モーションデータ」及び「音声データ」を「入力」する「前記NPCを演じる演者」が、「ユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であ」ることが特定され、明確な記載となった。

ウ 訂正事項3によって、特許法第36条第6項第2号に係る取消理由の対象であった請求項11は削除された。

したがって、請求項1ないし10、12及び13に係る発明は、取消理由において指摘した理由により明確でないとはいえず、請求項1ないし10、12及び13に係る本件特許は、理由1によって取り消すことはできない。
また、請求項11は削除されたから、請求項11に対する理由1は、存在しないものとなった。

(2)理由2(特許法第29条第2項)について
訂正事項3によって、特許法第29条第2項に係る取消理由の対象であった請求項11は削除されたから、理由2は存在しないものとなった。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立て理由について
1 粟野の特許異議申立てについて
(1)申立理由
特許異議申立人粟野浩は、粟野の特許異議申立てに係る特許異議申立書において、以下の甲第1号証ないし甲第12号証(以下「粟野の甲第1号証ないし粟野の甲第12号証」などという。)を提示し、訂正前の請求項1、2、12及び13に係る特許発明は粟野の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第6号証に記載された事項に基づいて、訂正前の請求項3に係る特許発明は粟野の甲第1号証に記載された発明及び第2号証ないし甲第7号証に記載された事項に基づいて、訂正前の請求項4に係る特許発明は粟野の甲第1号証に記載された発明及び第2号証ないし甲第10号証に記載された事項に基づいて、訂正前の請求項5ないし9に係る特許発明は粟野の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第12号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、よって、請求項1ないし9、12及び13に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、請求項1ないし9、12及び13に係る特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである旨主張する。

・粟野の甲第1号証:maaai0813、“ときめきレストラン:料理を作ってイケメンをおびき寄せろ!ムフフなスキンシップもできちゃうゾ☆無料。|AppBank”、[online]、公知日:平成25年4月7日、保存日:平成28年5月21日、インターネットアーカイブ、ウェイバックマシン、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20160521155402/http://www.appbank.net/2013/04/07/iphone-application/571652.php>

・粟野の甲第1号証の1:AppBank.netチャンネル、“ときめきレストラン/iPhoneアプリ-YouTube”、[online]、公開日:平成25年3月27日、Google LLC、You Tube、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://www.youtube.com/watch?v=UU4TTdj4zAg>

・粟野の甲第1号証の2:甲第1号証で示すWebページのソース(抜粋)、出力日:令和2年4月16日、出力者:異議申立人粟野浩

・粟野の甲第2号証:コーエーテクモゲームス、“「ときめきレストラン☆☆☆」で“VSライブ More Than Sound”が開催中-4gamer.net”、[online]、公知日:平成30年4月3日、保存日:平成30年4月8日、インターネットアーカイブ、ウェイバックマシン、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20180408072359/http://www.4gamer.net/games/194/G019406/20180403092/>

・粟野の甲第3号証:MzL、“【ときめきレストラン☆☆☆】More Than Sound ピクトリーライブ-YouTube”、[onliene]、公開日:平成30年4月21日、Google LLC、YouTube、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://www.youtube.com/watch?v=QrtsUEnAxTw>

・粟野の甲第4号証:作者不明、“ときめきレストラン攻略|フレンドシステムについて”、[online]、保存日:平成29年6月15日、インターネットアーカイブ、ウェイバックマシン、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20170615082329/http://xn--w8ja3fveylra9h7lya7a6b6664j85ub914c.net/friendsystem.html>

・粟野の甲第5号証:内山育海、“ライブで歌い踊る2次元キャラ「AR Performers」の舞台裏|日経クロステック”、[online]、公開日:平成29年1月27日、株式会社日経BP、日経クロステック、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/feature/15/122200045/012400008/>

・粟野の甲第6号証:阿部美香、“ついに2ndライブが決定した注日のARアイドル「AR performers」の真価を問う一価格.comマガジン”、[online]、公知日:平成29年6月3日、保存日:平成29年6月3日、インターネットアーカイブ、ウェイバックマシン、[令和2年4月16日検索].インターネット<https://web.archive.org/web/20170603025531/https:/kakakumag.com/hobby/?id=10257>

・粟野の甲第7号証:ギャルソン屋城、“二次元のアイドルとリアルなコミュニケーション! 『AR Performers』ライブイベント“β LIVE”リポート-ファミ通.com”、[online]、公知日:平成28年4月18日、保存日:平成28年4月19日、インターネットアーカイブ、ウェイバックマシン、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20160419203041/https:/www.famitsu.com/news/201604/18103919.html>

・粟野の甲第8号証:作者不明、“ファンタシースターオンライン2-Wikipedia”、[online]、公知日:平成29年10月4日、保存日:平成29年10月4日、インクーネットアーカイブ、ウェイバックマシン、[令和2年4月16日検索]、インターネット <https://web.archive.org/web/20171004162013/https:/ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B32>

・粟野の甲第9号証:株式会社セガゲームス、“ゲーム内イベント ステージライブ&ブーストイベント|アークスオータムファンクション|『ファンタシースターオンライン2』|SEGA”、[online]、保存日:平成29年9月29日、インターネットアーカイプ、ウェイバックマシン、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20170929230939/http:/pso2.jp/players/event/autumn/ingame/live/>

・粟野の甲第9号証の1:粟野の甲第9号証で示すWebページのソース(抜粋)、出力日:令和2年4月16日、出力者:異議申立人粟野浩

・粟野の甲第10号証:株式会社セガゲームス、“ブースト&予告イベント情報|『ファンタシースターオンライン2』プレイヤーズサイト|SEGA”、[online]、保存日:平成29年10月9日、インターネットアーカイブ、ウェイバックマシン、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20171009082309/http:/pso2.jp:80/players/boost>

・粟野の甲第10号証の1:粟野の甲第10号証で示すWebページのソース(抜粋)、出力日:令和2年4月16日、出力者:異議申立人粟野浩

・粟野の甲第11号証:株式会社セガ、“大型アップデート2014:「Mission:EPISODE3」|『ファンタシースターオンライン2』プレイヤーズサイト”、[onlene]、保存日:平成26年10月23日、インターネットアーカイブ、ウェイバックマシン、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20141023184939/https://pso2.jp/players/update/20140827/06/>

・粟野の甲第12号証:NAOKI、“PSO2 クーナステージライブ。終わりなき物語。アンコールOur Fighting有り。2014年09月23日ファンタジースターオンライン2 Phantasy Star Online 2-YouTube”、[online]、公開日:平成26年9月23日、Google LLC、YouTube、[令和2年4月16日検索]、インターネット<http://www.youtube.com/watch?v=3-u7UCRVsBI>

(2)粟野の各甲号証の記載
ア 粟野の甲第1号証、甲第1号証の1、甲第1号証の2
粟野の甲第1号証には、以下の記載がある。
(ア)「APPBANK
・・・
Home>iPhoneアプリ>iPhoneアプリ-ゲーム
ときめきレストラン:料理を作ってイケメンをおびき寄せろ!ムフフなスキンシップもできちゃうゾ☆無料。
・・・
美味しい料理でカレのハートをゲットしていくゲーム、ときめきレストランのご紹介です。
・・・
レストランのマスターを務める事になったアナタ。でもそのレストランには常連のアイドルたちがいて・・・!?美味しい料理でカレ達のハートをつかみましよう!
流れは簡単、料理を作ってじっと待っていれはアイドルたちが訪れます。ハートが浮かんだらすかさずゲット!シナリオを進めたその先は、アナタの目で確かめて下さい!
動画で見る、「ときめきレストラン」」(ホームページ冒頭)

(イ)「名前と誕生日を入力します。」
・・・
お店を開いているとお客さんがやってきます。」(「ときめきレストランをはじめよう!」の欄)

(ウ)「ときめきレストランをはじめよう!」の欄の2枚目の画面写真内に「プロフィールを入力してください。(名前は他のプレイヤーに公開されます。)」が表示されている。

(エ)「お店にやってくる「カレ達」
アイドルグループ「3Majesty」のリーダー、霧島 司。
・・・
「3Majesty」の音羽 慎之介。
・・・
「3Majesty」の辻 魁斗。」(「イケメン達のハートをつかもう!」の欄)

(オ)「カレ達が来店すると、たまに頭上にハートが表示される事があります。このハートをタップすると、シナリオモードへ移動します。」(「ハートを集めてスキンシップモードへ!」の欄)

(カ)「ハートを集めてスキンシップモードへ!」の欄の2枚目の画面写真には、キャラクタの上半身の絵と、画面下部のウィンドウにキャラクタの名前「神崎 透」とセリフ「付き合ってやってもいーよ。ヒマだし。お前、面白そうだし。」が表示されている。

すなわち、粟野の甲第1号証には、
「「ときめきレストラン」はiPhoneのゲームアプリであり、
「ときめきレストラン」において、アイドルグループ「3Majesty」の霧島司、音羽慎之介、辻魁斗というキャラクタが登揚し、シナリオモードでは、キャラクタの上半身の絵とともにキャラクタの名前とセリフがウィンドウ内に表示される」
という技術事項が記載されている。

また、粟野の甲第1号証の1には、以下の記載がある。
(ア)「YouTube」(動画表示画面の上)

(イ)「ときめきレストラン/iPhoneアプリ
・・・
料理を作ってイケメンをおびき寄せろ!ムフフなスキンシップもできちゃうゾ☆」(動画表示画面の下)

また、粟野の甲第1号証の1の動画からは以下の点が看取できる。
(ウ)動画の0:00には、スマートフォンの画面に「ときめきレストラン」のロゴが表示されている。
(エ)動画の0:18?0:25では、ユーザがメニューからアルバム>霧島司を選択し、霧島司のイベントの中から「腕をどうぞ、お嬢様」を選択する様子が表示されている。
(オ)動画の0:27?1:14では、ユーザがスマートフォンの両面をタップすると画面下部のウィンドウに次のセリフが表示される様子が表示されている。
(カ)動画の0:39?1:14では、スマートフォンの両面にキャラクタの上半身の絵が表示され、画面下部のウィンドウには「霧島 司」という名前とセリフが表示され、シナリオの進行とともにキャラクタの表情や姿勢がアニメーションで変化する様子が表示されている。

すなわち、粟野の甲第1号証の1から
「iPhoneアプリ「ときめきレストラン」はスマートフォン上で動作し、
「ときめきレストラン」の霧島司のイベント「腕をどうぞ.お嬢様」において、スマートフォンの画面にキャラクタ「霧島司」の上半身の絵が表示されるとともに画面下部のウィンドウにはキャラクタの名前とセリフが表示され、ユーザがスマートフォンの画面をタップするとウィンドウに次のセリフが表示されることでシナリオが進行し、シナリオの進行とともにキャラクタの表情や姿勢がアニメーションで変化する」
という技術事項が認められる。

さらに、粟野の甲第1号証の2(粟野の甲第1号証で示すWebページのソース(抜粋))には以下の記載がある(なお、Webページのソースの記載を引用する際に、半角の「"」は、全角の「”」で記載した。以下同様。)。
「<h2>動画で見る、「ときめきレストラン」</h2>
<p class=”iframe-responsive”><iframe width=”240” height=”360” src=”https://web.archive.org/web/20160521155402if_/http://www.youtube.com/embed/UU4TTdj4zAg” frameborder=”0” allowfullscreen></iframe></p>」

そして、粟野の甲第1号証の上記(ア)の「動画で見る、「ときめきレストラン」」の記載の下にはスペースがあることが見てとれる。粟野の甲第1号証の2は粟野の甲第1号証で示すWebページのソースの抜粋であるところ、粟野の甲第1号証の2から、粟野の甲第1号証の当該スペースにはYouTube動画が埋め込まれており、当該動画の実体を示すURLがhttp://www.youtube.com/embed/UU4TTdj4zAgであることが把握できる。当該URLは甲第1号証の1のURLと同一であり、甲第1号証はインターネットアーカイブが運営するデジタルアーカイブ閲覧サービスのウェイバックマシンに保管されたWebページであるから、甲第1号証で示すWebページに保管された元々のWebページ(http://www.appbank.net/2013/04/07/ipone-application/571652.php)では粟野の甲第1号証の1の動画が再生できることが把握できる。したがって、粟野の甲第1号証には実質的に粟野の甲第1号証の1の内容が含まれるから、粟野の甲第1号証には以下の発明(以下「粟野の甲1発明」という。)が記載されている。

「iPhoneアプリ「ときめきレストラン」はスマートフォン上で動作し、
「ときめきレストラン」において、アイドルグループ「3Majesty」の霧島司、音羽慎之介、辻魁斗というキャラクタが登場し、シナリオモードではキャラクタの上半身の絵とともにキャラクタの名前とセリフがウィンドウ内に表示され、霧島司のイベント「腕をどうぞ、お嬢様」において、スマートフォンの画面にキャラクタ「霧島司」の上半身の絵が表示されるとともに両面下部のウィンドウにはキャラクタの名前とセリフが表示され、ユーザがスマートフォンの画面をタップするとウィンドウに次のセリフが表示されることでシナリオが進行し、シナリオの進行とともにキャラクタ「霧島司」の表情や姿勢がアニメーションで変化する、ゲームプログラム。」

イ 粟野の甲第2号証
粟野の甲第2号証には、以下の記載がある。
(ア)「・・・4Gamer.net
・・・
トップ>女子部>iPhone/iPad/Android>シミュレーション>ときめきレストラン☆☆☆
・・・
「ときめきレストラン☆☆☆」で“VSライブ More Than Sound”が開催中
・・・
女性向け恋愛アプリゲーム『ときめきレストラン☆☆☆』につきまして、ゲーム内イベント「VSライブ More Than Sound」を、2018年4月2日(月)より開始いたしました。VSライブとは、ゲーム内で獲得できる「エールポイント」を用いて自分の好きなアイドルグループに投票ができる大型イベントです。
後日ゲーム内で開催される「ビクトリーライブ」では、より多くの「エールスコア」を集めて勝利したグループによるライブが披露されます。」(ホームページ冒頭)

(イ)「開催期間:
4月2日(月)メンテナンス終了?4月11日(水)14:00
※2ステージ制ですo
1st STAGE:4月2日(月)メンテナンス終了?4月6日(金)14:00.
2nd STAGE:4月6日(金)メンテナンス終了?4月11日(水)14:00
・・・
イベント新曲:
今回のイベントでは以下の新曲が登場します。
・3Majesty「Jasmine?月光の花?」」(「イベント「VSライブ More Than Sound」開催概要」の欄)

(ウ)また、「イベント「VSライブ More Than Sound」開催概要」の欄の画像内に「More Than Sound」のロゴが表示されている。

すなわち、粟野の甲第2号証には、
「iPhoneアプリ「ときめきレストラン」において、2018年4月2日からゲーム内イベント「VSライブ More Than Sound」が開催され、VSライブは自分の好きなアイドルグループに投票できるイベントであり、後日ゲーム内で開催される「ビクトリーライブ」では勝利したグループによるライブが披露され、「More Than Sound」の1st STAGEは4/2?4/6に行われ、2nd STAGEは4/6?4/11に行われ、3Majestyの新曲は「Jasmine?月光の花?」であった」
という技術事項が記載されている。

ウ 粟野の甲第3号証
粟野の甲第3号証には、以下の記載がある。
(ア)「YouTube」(ホームページ冒頭)

(イ)「【ときめきレストラン☆☆☆】More Than Sound ビクトリーライブ
・・・
3Majesty優勝、新曲「Jasmine?月光の花」釋出」(動画表示画面の下)

また、粟野の甲第3号証の動画からは以下の点が看取できる。
(ウ)動画の0:02で、画面に「3Majesty」と表示されている。

(エ)動画の0:04で、画面に「Jasmine?月光の花?」と表示されている。

(オ)動画の0:07?3:25で、ステージ上で3人のキャラクタが歌いながら踊り、歌に合わせてキャラクタの口が動く様子が表示されている。

(カ)動画の1:30で、画面左上に「More Than Sound」、画面右上に「1st STAGE(4/2?4/6)」と表示されている。

(キ)動画の 1:58で、画面左上に「MoreThanSound」、両面右上に「2ndSTAGE(4/6?4/11)」と表示されている。

すなわち、粟野の甲第3号証から、
「「ときめきレストラン」のビクトリーライブの動画において、3人のキャラクタが歌いながら踊り、歌に合わせてキャラクタの口が動き、動画内で「3Majesty」、「Jasmine?月光の花?」、「More Than Sound」、「1st STAGE(4/2?4/6)」及び「2nd STAGE(4/6?4/1 1)」と表示される」
という技術事項が認められる。

エ 粟野の甲第4号証
粟野の甲第4号証には、以下の記載がある。
(ア)「本作には「フレンド」というシステムがあります。
フレンドシステムとはプレイヤー同士のお気に入り登録のようなものです。
自分の店に来てくれた他プレイヤーや、おでかけ時に見かけた他プレイヤーとフレンドになることで、フレンドになったプレイヤーのお店を選んで遊びに行くことができます。
気になった他プレイヤーには是非「フレンド申請」をしてみましょう。
相手の承認がおりればお互いにフレンド登録がされます。
フレンド承認がおりたら、フレンドのお店に自分が客として行ってみましょう。
フレンドのお店に行くと、お店に並んでいる料理を食べることができます。」(「ときめきレストラン攻略|フレンドシステムについて」の欄)

(イ)「フレンド申請をするには、自分がおでかけするか、自分のお店に来た「名前付きのアバター(他プレイヤーが操作するアバター)」をクリックします。
するとウィンドウに相手の名前、レベル、お店の名前が出てきて、その中に「フレンド申請する」という項目がありますのでそれをクリックします。これでフレンド申請ができます。」(「フレンド申請の方法について」の欄)

すなわち、粟野の甲第4号証には、
「「ときめきレストラン」にはフレンドシステムがあり、自分の店に来てくれた他プレイヤーや、おでかけ時に見かけた他プレイヤーとフレンドになることで、フレンドになったプレイヤーの店を選んで遊びに行くことができる」
という技術事項が記載されている。

オ 粟野の甲第5号証
粟野の甲第5号証には、以下の記載がある。
「・・・日経XTECH・・・
・・・
ライブで歌い踊る2次元ギャラ「AR Performers」の舞台裏
・・・
AR(拡張現実感)技術の可能性を広げる新たなライブ・エンターテインメントが誕生した。モーションキャプチャーや映像技術を駆使したデジタルアイドル「AR Performers」である(関連記事「ARの熱気が雪を吹き飛ばした日」)。アニメ調のいわゆる“2次元”キャラクターが、観客の声援に応えて手を振ったり、即興の歌を披露したりと、生身の人間顔負けのパフォーマンスを見せる。
・・・
2016年4月にデビューイベント「AR Perfomers β LIVE」を開催し、2017年1月14?15日に実施した本格ライブイベント「AR Performers 1st A’LIVE」では6回公演で約2400人を動員。・・・
・・・
歌うデジタルアイドルとして有名なのは、ヤマハが開発した歌声合成技術「VOCALOID」から生まれた「初音ミク」だ。初音ミクのライブイベントでは、透明スクリーンに初音ミクのCG映像を投影し、あたかも現実にいるかのように見せる演出が人気を博している。AR Performersは透明スクリーンを用いる点などは同じものの、ステージごとに異なるパフォーマンスを見せる“生”のライブを特徴としている。観客ともリアルタイムに交流する。
・・・
こうした演出を支えるのは、キャラクタの体の動きを担当する「アクターキャスト」や声と歌唱を担当する「ボイスキャスト」をはじめとする裏方だ。具体的には、舞台裏でアクターキャストの姿勢や動きをモーションキャプチャーで認識し、CGのキャラクタに反映してリアルタイムにレンダリングしている。ボイスキャストは曲に合わせて歌うだけでなく、アクターキヤストと連携しながら曲の合間に生のトークを繰り広げる。
CGの体に加え、口の動きや表情、視線も変化する。ボイスキャストの声の母音を音声認識し、その結果に応じて自動的に口を動かす。表情はあらかじめいくつかのパターンを用意し、担当スタッフが台詞や状況にあわせて随時選択するという。」

これらの記載によれば、粟野の甲第5号証には、
「デジタルアイドル「AR Performers」のライブイベンドにおいて、
キャラクタが手を振ったり歌を披露したりし、
ボイスキャストの声の母音を音声認識した結果に応じてギャラクタの口が自動的に動き、キャラクタの表情はあらかじめ用意されたいくつかのパターンの中から担当スタッフがセリフや状況に合わせて随時選択することによって変化し、
キャラクタの動きを担当するアクターキャストの姿勢や動きをモーションキャプチャーで認識し、CGのキャラクタに反映してリアルタイムにレンダリングし、
声と歌唱を担当するボイスキャストは曲に合わせて歌うだけでなく、アクターキャストと連携しながら曲の合間に生のトークを繰り広げる」
という技術事項が記載されている。

カ 粟野の甲第6号証
粟野の甲第6号証には、以下の記載がある。
(ア)「価格.comマガジン
・・・
ついに2ndライブが決定した注日のARアイドル「AR performers」の真価を問う
・・・
・・・その中でも強いこだわりを持って作られている「AR Performers」について、生みの親である内田明理プロデューサーにインタビューするとともに、その真価を堀り下げていきます。」(ホームページ冒頭)

(イ)「AR Performersは、4人の男性キャラクターで構成されるデジタルアイドル。ネーミングに“AR” を掲げていることからもわかるように“AR”(拡張現実)技術を応用し、2Dアニメライクに3Dモデリングされた仮想キャラクターたちがステージで華やかに歌い、踊るライブを披露します。このように聞くと初音ミクが思いだされますが、初音ミクのライブコンテンツは機械的なプログラミングを制御して再生しているだけに過ぎません。AR Performersはただ歌い、踊るだけではなく、リアルタイムで観客とやり取りができてしまう、2次元の枠を超え、限りなく3次元に近い臨場感を携えた“新たな2.5次元”なのです。その注目度はビジネス面においても顕著。2017年1月に開催された1stライブと同タイミングで、大手レコード会社・エイベックスとのアーティスト契約が発表されるやいなや、AR Performersを手がけるゲームメーカー「ユークス」の株式は連日ストップ高を記録。」(「「AR performers」とは?」の欄)

(ウ)「・・・特に、僕の構想に賛同してくださったユークスは海外のプロレスゲームなどで名を馳せている開発会社。」(「「AR performers」実現への道のり」の欄)

(エ)「・・・AR performersはただ映像を再生し、機械的なプログラミングを制御するデジタルコンテンツとは異なり、その場で創出しているのがポイント。しかも、踊りや動きを担当する「Aキャスト」、歌とトークを担当する「Vキャスト」、そして情報を制御するテクニカルスタッフの3人が三位一体となり、バックステージでひとりのキャラクターを演じているのです。
・・・
-演者や技術スタッフは、会場のどこにいらっしゃるのですか?
内田:実は、通信環境さえ整えば場所はどこでもかまわないのですが、現段階では会場にモーションキャプチャーができるスタジオを作り、会場モニターやステージモニターを並べて、アクターさんたちがステージ上の自分の姿と客席を見ながら演じています。その芝居をリアルタイムでCGレンダリングし、ホログラフィックモデルとして出力していくというアクロバティックな職人技が裏で繰り広げられているのですよ(笑)。ただ、CGにくわしい方はおわかりでしょうが、生のキャプチャーデータでそのままCGモデルを動かしてしまうと、情報密度の違いから必要以上にぐにゃぐにゃしたり、目線とカラダの動きが合わずにかなり不気味な動きになってしまうもの。そこを独自のプログラムで機械的に制御し、ノイズを省いて自然な動きを実現しているのです。顔の表情も、視線制御プログラムを使って自然な目線を実行し、口の動きは、あらかじめボイスアクターの音の波形データを採取しておいて、それに合わせてリップジンクさせています。」(「プロフェッショナルな個々のチカラが1つの命を生み出す」の欄)

すなわち、粟野の甲第6号証には、
「「AR performers」は、キャラクタがステージで歌い踊るライブを披露し、機械的なプログラミングで制御しているのではなく、演者や技術スタッフがいる場所は通信環境が整えばどこでもよく、生のキャプチャーデータを機械的に制御してノイズを省いて自然な動きを実現し、口の動きはボイスアクターの音の波形データに合わせてリップジンクしている」こと、「AR performers」を手掛けているのはゲーム開発会社のユークスである」こと、「踊りや動きを担当するAキャスト、歌とトークを担当するVキャストがいる」こと、及び、「アクターの芝居をリアルタイムでCGレンダリングし、ホログラフィックモデルとして出力する」
という技術事項が記載されている。

キ 粟野の甲第7号証
粟野の甲第7号証には、以下の記載がある。
(ア)「ファミ通.com
・・・
二次元のアイドルとリアルなコミュニケーション! 『AR Performers』ライブイベント“β LIVE”リポート」(ホームページ冒頭)

(イ)「2016年4月16日、東京都千代田区のベルサール秋葉原にて、ユークスの内田明理氏が手掛けるプロジェクト『AR Performers』の初となるライブイベント“β LIVE”が開催された。
このイベントでは、AR(仮想現実)の世界からやって来た3人のパフォーマー、“シンジ”ど“REBEL CROSS (レベルクロス)”のふたり(レイジ、ダイヤ)が出演。ステージ上で歌とトークを披露し、3公演合計1000人もの観客を熱狂させた。・・・
・・・
・・・先陣を切ってシンジがスクリーン上に登場すると、ボルテージは急上昇。・・・
・・・
シンジは、甘く、爽やかなビジュアルや言動で、まさに“王子様”を体現したようなキャラクター。会場中から送られてくる黄色い声援に少しはにかみながら、司会の一丁さんの質問に答えていた。
何気なく文字にしているが、リアルタイムで会話をしているのは、スクリーンに映し出された、二次元のキャラクターなのである。しかも、彼らの反応はあらかじめプログラミングされたものではなく、その場の会話や声援に対して“生”でコミュニケーションを取っているのだ。
・・・
パフォーマンス後はトークコーナーへ。ここでは、「皆の愛が感じられた。気持ちよかった!」というシンジに、観客からいくつかの質問が寄せられた。「もし、自分の彼女が元気をなくしていたら、どんな声をかけますか?」という質問に、「元気出して。君のために、歌うから」とナチュラルに答えるなど、会場では数分おきに黄色い悲鳴が飛び交うこととなった。
さらに、観客からの「踏んでほしい!」という難度の高いリクエストに応えて、足を高く上げて振り下ろすというアクションをしたり、王子様っぽいお辞儀をするなど、アドリブもバッチリ。」(「・ARのアイドルが現実世界に!」の欄)

すなわち、粟野の甲第7号証には、
「「AR Performers」のライブイベントにおいて、キャラクターの反応はあらかじめプログラムされたものではなく、その場の会話や声援に対して“生”でコミュニケーションを取っている」こと、
観客からの「もし、自分の彼女が元気をなくしていたら、どんな声をかけますか?」という質問に、キャラクターが「元気出して。君のために、歌うから」と答え、観客からの「踏んでほしい!」というリクエストに応えて、足を高く上げて振り下ろすというアクションをしたり、王子様っぽいお辞儀をしたりする」
という技術事項が記載されている。

ク 粟野の甲第8号証
粟野の甲第8号証には、以下の記載がある。
(ア)「ファンタシースターオンライン2
・・・
『ファンタシースターオンライン2』(ファンタシースターオンラインツー、PHANTASY STAR ONLINE 2)は、セガゲームス(旧セガ)が開発・運営するオンライングーム。
『PSO2』と略される。2012年7月4日、正式サービスが開始された。」(ホームページ冒頭)

(イ)「ゲームサーバー(シップ)
主人公はアークスの一員として、船団『オラクル』を構成する宇宙船のシップ(Ship、ゲームサーバーのこと)に乗船し、そこを活動拠点としている。」(「ゲームサーバー(シップ)」の欄)

(ウ)「各シップには複数のブロック(ゲームロビー)があり、ここでプレイヤー同士の交流やアイテムの売買などが行える。」(「ブロック」の欄)

(エ)「共通シップ
異なるシップのプレイヤーが集まることのできる唯一のサーバー。」(「共通シップ」の欄)

(オ)「ステージライブ
2013年2月28日のPS Vita版サービス開始に伴い実装されたイベント。公式サイトにおいて告知された時間に、アークスロビーのショップエリアにあるステージ広場にて、NPC歌手のミニライブが開催されるというもの。ミニライブは1ステージにつき1曲、約5分程度。ライブ中は、キャラクタがステージ付近にいる場合のみ、「ライブカメラ視点」への切り替えが可能となる。また、ライブ時にロビーにいたキャラクター全員に時限ボーナスが付与される、ライブ開始から30分後には必ず緊急クエストが発生する(ため、ユーザーには事実上の緊急クエスト予告と見做されている)という特徴がある。また、2014年9月10日にアンコール機能が追加され、チャット発言による「アンコール」が一定数に達するとアンコール曲が流れるようになった。
ライブ曲は、NPCアイドル歌手「クーナ」のJ-POP曲『Our Fighting』、およびバラード曲『永遠のencore』。2014年9月10日には和風ロック調『終わりなき物語』とアンコール曲『Our Figthing (MIYABIver.)』が実装された。」(「ステージライブ」の欄)

すなわち、粟野の甲第8号証には、
「オンラインゲーム「ファンタシースターオンライン2」において、ステージライブと呼ばれるイベントとして、公式サイトにおいて告知された時間にアークスロビーのショップエリアにあるステージ広場にてNPC歌手のミニライブが開催され、ライプ中は「ライブカメラ視点」への切り替えが可能であり、ライブ曲にはNPCアイドル歌手「クーナ」の和風ロック調『終わりなき物語』とアンコール曲『Our Figthing(MIYBIver.)』がある」こと、
「シップ(ゲームサーバ)や共通シップ(異なるシップのプレイヤーが集まることのできる唯一のサーバ)が存在し、ライプイベンドにおいてチャット発言による「アンコール」が一定数に達するとアンコール曲が流れる」
という技術事項が記載されている。

ケ 粟野の甲第9号証、甲第9号証の1
粟野の甲第9号証には、以下の記載がある。
(ア)「SEGA
アークスオータムファンクション
・・・
ゲーム内イベント PHANTASY STAR ONLINE 2
・・・
ステージライブ&ブーストイベント実施!
アークスオータムファンクションでは、4つのステージライブを開催!
・・・
開催期間
ライブイベント第1弾 2017年10月4日(水)定期メンテナンス後?10月11日(水)定期メンテナンス前まで
・・・
●イベントのスケジュール確詔はこちら!
ブースト&予告イベント情報!
キャラクターの育成をガッチリサポート!緊急クエストが発生する日時を予告!」(ホームページ冒頭)

(イ)「Our Figthing/永遠のencore
終わりなき物語/Our Fightingver.MIYABI
クーナ
オラクルの人気アイドル「クーナ」によるステージライブ「Our F ighting」「永遠のencore」「終わりなき物語」「Our Fighting ver.MIYABI」を開催!
チャットで一定数「アンコール」と発言することで、2つ目のステージライブが開催されるので、みんなでライブを盛り上げよう!」(「イベント紹介」の欄)

すなわち、粟野の甲第9号証には、
「「ファンタジースターオンライン2」において、2017年10月4日(水)?10月11日(水)にステージライブイベントが行われ、クーナによるステージライブ「終わりなき物語」「Our Fighting ver.MIYABI」が開催される」こと、
「チャットで一定数「アンコール」と発言することで、2つ目のステージライブが開催される」
という技術事項が記載されている。

また、粟野の甲第9号証の1(甲第9号証で示すWebページのソース(抜粋))には以下の記載がある。
「<h5>●イベントのスケジュール確認はこちら!</h5>
<div class=”boostEvent”><a href=”/web/20170929230939/http://pso2.jp/players/boost/”><img src=”/web/20170929230939im_/http://pso2.jp/players/event/autumn/ingame/live/img/boostevent.jpg” alt=”キャラクターの育成をガッチリサポート!緊急クエストが発生する日時を予告!ブースト&予告イベント情報!” width=”647” height=”160”></a>
</div>」

コ 粟野の甲第10号証、甲第10号証の1
粟野の甲第10号証には、以下の記載がある。
「SEGA
・・・
PHANTASY STAR ONLINE 2
・・・
ブースト&予告イベント情報
・・・2017/10/04?2017/10/11
・・・
10/4(水)定期メンテナンス終了?10/11(水)定期メンテナンス開始まで ライブ 【アークスオータムファンクション】」(ホームページ冒頭)

また、スケジュール表の中の金6の13:00にカーソルを合わせると、「ライブ 10/06 13:00?10/06 13:30 クーナスペシャルライブ「終わりなき物語」」と表示される。

すなわち、粟野の甲第10号証には、
「「ファンタジースターオンライン2」において、予告イベント情報として、2017/10/04?10/11にライブがあり、10/06の13:00?13:30にクーナスペシャルライブ「終わりなき物語」が行われることがイベントのスケジュール表で確認できる」
という技術事項が記載されている。

また、粟野の甲第10号証の1(粟野の甲第10号証で示すWebページのソース(抜粋))には以下の記載がある。
「<td class=”day-friday”>
<div class=”cell-H01 cell-W01 event-live”><span>ライブ</span><dl><dt>ライブ</dt><dd><strong class=”start”>10/06</strong>13:00?<strong class=”end”>10/06</strong>13:30</dd><dd>クーナスペシャルライブ「終わりなき物語」</dd></dl></div>
</td>」

サ 粟野の甲第11号証
粟野の甲第11号証には、以下の記載がある。
(ア)「PHANTASY STAR ONLINE 2
・・・
ステージライブ拡張
新曲&アンコール機能追加」(左欄)

(イ)「和風衣装のクーナが新曲「終わりなき物語」をお披露目!
・・・
アンコールでライブをもっと楽しもう!
・・・
アイドル「クーナ」が和風の新衣装と新曲でライブを開催!
ライブイベントが発生すると、ショップエリアに和風の祭舞台が登場!
アイドル「クーナ」が新たな和風の装いで現れ、和風ロックの新曲「終わりなき物語」を披露するぞ!!
・・・
さらに、新たにアンコール機能を追加!アンコールを叫ぶことで、ふたつめの新曲「Our Fighting」の和風バージョンを楽しめるぞ!盛り上がりたい時は、みんなでアンコールを叫ぼう!」(右欄)

すなわち、粟野の甲第11号証には、
「「ファンタシースターオンライン2」において、ステージライブが拡張されて新曲とアンコール機能が追加され、ライプイベントが発生するとショップエリアに和風の祭舞台が登場し、和風衣装のアイドル「クーナ」が新曲「終わりなき物語」を披露し、アンコールを叫ぶことでふたつめの新曲「Our Fighting」の和風バージョンが楽しめる」
という技術事項が記載されている。

シ 粟野の甲第12号証
粟野の甲第12号証には、以下の記載がある。
(ア)「YouTube」(冒頭)

(イ)「PSO2 クーナステージライブ。終わりなき物語。アンコールOur Fighting有り。2014年09月23日ファンタシースターオンライン2 Phantasy Star Online 2」(動画表示画面下)

また、粟野の甲第12号証の動画からは以下の点が看取できる。
(ウ)動画の0:31で、両面右奥に祭舞台のステージが表示されている。

(エ)動画の0:33で、カメラがステージ上に切り替わり、画面中央下に「[E]キーでカメラ切り替え」と表示されている。

(オ)動画の0:37?5:26で、和風衣装のクーナが「終わりなき物語」を歌いながら踊っている様子が表示されている。画面左下には「終わりなき物語」「クーナ」と表示されている。

(カ)動画の5:54?6:46で、「終わりなき物語」を歌い終わり、クーナが退場した後、画面にチャット発言で複数の「アンコール」が表示されている。

(キ)動画の6:43?6:45で、カメラがプレイヤキャラクタの後方に切り替わり、クーナの「みんなー」との音声が流れた後、再度カメラがステージ上に切り替わっている。

(ク)動画の6:48?11:02で、クーナが再登場し、アンコール曲として「Our Fighting ver.MIYABI」を歌いながら踊っている様子が表示されている。両面左下に「Our Fighting ver.MIYABI」「クーナ」と表示されている。

すなわち、粟野の甲第12号証から、
「「ファンタジースターオンライン2」において、祭舞台のステージで和風衣装のクーナが「終わりなき物語」を歌いながら踊り、「終わりなき物語」を歌い終わってクーナが退場すると、画面にチャット発言で複数の「アンコール」が表示された後に、クーナが再登場し、アンコール曲として「Our Fighting ver.MIYABI」を歌いながら踊っている」こと、「ライブイベント中はキー操作によってカメラを切り替えることができる」
という技術事項が認められる。

(3)当審の判断
ア 訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)について
(ア)対比
本件発明と粟野の甲1発明とを対比する。
(a)粟野の甲1発明において、「ときめきレストラン」はiPhoneのゲームアプリであるからスマートフォン上で動作するゲームプログラムであり、スマートフォンはプロセッサ、メモリ及び操作部であるタッチパネルを備えるコンピュータであることは技術常識である。
したがって、粟野の甲1発明の「ゲームプログラム」である「iPhoneアプリ「ときめきレストラン」」が、「スマートフォン上で動作」することは、本件発明の「ゲームプログラムであって、前記ゲームプログラム」が、「プロセッサ、メモリおよび操作部を備えるコンピュータにより実行されるものであ」ることに相当する。

(b)粟野の甲1発明において、「ユーザがスマートフォンの画面をタップするとウィンドウに」「表示される」「セリフ」や、「シナリオの進行とともに」「表情や姿勢がアニメーションで変化する」「キャラクタ「霧島司」」が、「スマートフォン」のコンピュータのメモリに予め記憶されている動作指図データに基づいて動作する、ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタであることは明らかである。
また、粟野の甲1発明において、「ユーザがスマートフォンの画面をタップするとウィンドウに次のセリフが表示されることでシナリオが進行」することは、操作部を介して入力されたユーザの入力操作に応じてパートを進行させるものといえる。
したがって、粟野の甲1発明の「ゲームプログラム」である「「ときめきレストラン」において、アイドルグループ「3Majesty」の霧島司、音羽慎之介、辻魁斗というキャラクタが登場し、シナリオモードではキャラクタの上半身の絵とともにキャラクタの名前とセリフがウィンドウ内に表示され、霧島司のイベント「腕をどうぞ、お嬢様」において、スマートフォンの画面にキャラクタ「霧島司」の上半身の絵が表示されるとともに両面下部のウィンドウにはキャラクタの名前とセリフが表示され、ユーザがスマートフォンの画面をタップするとウィンドウに次のセリフが表示されることでシナリオが進行し、シナリオの進行とともにキャラクタの表情や姿勢がアニメーションで変化する」ことは、本件発明の「前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに、ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクク(以下、NPC)の動作を指定する動作指図データであって、前記メモリに予め記憶されている第1動作指図データに基づいて前記NPCを動作させ、前記操作部を介して入力された前記ユーザの入力操作に応じて第1パートを進行させるステップを実行させる」ことに相当する。

したがって、両者は、
「ゲームプログラムであって、
前記ゲームプログラムは、プロセッサ、メモリおよび操作部を備えるコンピュータにより実行されるものであり、
前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに、
ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクク(以下、NPC)の動作を指定する動作指図データであって、前記メモリに予め記憶されている第1動作指図データに基づいて前記NPCを動作させ、前記操作部を介して入力された前記ユーザの入力操作に応じて第1パートを進行させるステップ
を実行させるゲームプログラム。」
の点で一致し、以下の点(以下「粟野の相違点」という。)で相違する。

(粟野の相違点)
本件発明は、「前記ゲームプログラム」が「前記プロセッサに」、「外部装置から受信した第2動作指図データに基づいて前記NPCを動作させることにより第2パートを進行させるステップを実行させ、前記第2動作指図データは、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力したモーションデータと、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力した音声データと、を含むデータである」のに対して、粟野の甲1発明ではそのようなものか否か不明な点。

(イ)判断
(粟野の相違点について)
粟野の甲第2号証には、粟野の甲1発明と共通するiPhoneアプリ「ときめきレストラン」において、開催されたゲーム内イベント「VSライブ More Than Sound」の結果を受けて、勝利したグループによるライブが披露される「ビクトリーライブ」がゲーム内で開催されること、「More Than Sound」の1st STAGEは4/2?4/6に行われ、2nd STAGEは4/6?4/11に行われ、3 Majestyの新曲は「Jasmine?月光の花?」であることが記載されている。
また、粟野の甲第3号証の動画の「More Than Sound」、「1st STAGE(4/2?4/6)」及び「2nd STAGE(4/6?4/11)」との表示が、粟野の甲第2号証に記載された「More Than Sound」の開催期間と一致していることから、当該動画は「More Than Sound」のビクトリーライブにおいて「3Majesty」が新曲「Jasmine?月光の花?」を歌いながら踊っているライブの動画であることが把握できる。
さらに、粟野の甲第3号証のビクトリーライブにおいて、「3Majesty」との表示があることや、3人のキャラクタの顔と、甲第1号証の「イケメン達のハートをつかもう!」「お店にやってくるカレ達」の欄に記載されたキャラクタの顔を比較することで、粟野の甲第3号証の動画に表示された3人のキャラクタが、粟野の甲1発明の「アイドルグループ「3Majesty」の「霧島司」、「音羽慎之介」、「辻魁斗」」であることが把握できる。
これらを総合すると、粟野の甲1発明において進行するシナリオと、粟野の甲第2号証及び粟野の甲第3号証により開示されるビクトリーライブは、いずれもiPhoneアプリ「ときめきレストラン」において行われるゲームにおける互いに異なるモードであることが把握でき、粟野の甲第2号証及び甲第3号証における「ビクトリーライブ」は、本件発明における「第2パート」に相当するといえる。
したがって、粟野の甲1発明に、粟野の甲第2号証及び甲第3号証の記載事項を適用して、粟野の相違点に係る本件発明の構成のうち、「前記ゲームプログラム」が「前記プロセッサに」、「前記NPCを動作させることにより第2パートを進行させるステップを実行させ」るものとすることまでは、当業者が容易になし得たことといえる。

しかし、粟野の相違点に係る本件発明の構成は、さらに、「第2パート」における「前記NPC」の「動作」を「外部装置から受信した第2動作指図データに基づいて動作させる」ものであり、「前記第2動作指図データは、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力したモーションデータと、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力した音声データと、を含むデータである」ことを含むものであるのに対し、粟野の甲第2号証及び甲第3号証の記載事項からは、ビクトリーライブにおいて歌い踊る3人のキャラクタがどのようなデータに基づいて動作されるのかが明らかでない。

異議申立人粟野浩は、粟野の甲第5号証は、「AR Performers」のライブイベントにおいて、アクターキャストの姿勢や動きをモーションキャプチャーで認識してキャラクタにリアルタイムで反映し、ボイスキャストの声に合わせてキャラクタの口が自動的に動き、キャラクタの表情は予め用意されたいくつかのパターンの中から担当スタッフがセリフや状況に合わせて随時選択することによって変化するものであり、この粟野の甲第5号証におけるアクターキャストのモーションキャプチャーデータやボイスキャストの音声データが、本件発明における「動作指図データ」に相当し、同様に、アクターキャストの姿勢や動きをモーションキャプチャーで認識してモーションキャプチャーデータを生成する装置やボイスキャストの音声を収録して音声データを生成する装置が、「外部装置」に相当する旨主張する。また、粟野の甲第6号証には、粟野の甲第5号証と共通する「AR Performers」において、演者や技術スタッフがいる場所は通信環境が整えばどこでもよく、生のキャプチャーデータを機械的に制御してノイズを省いて自然な動きを実現していることが記載され、粟野の甲第5号証及び甲第6号証の記載から、「AR Performers」において、アクターキャストの姿勢や動きがキャラクタに反映され、ボイスキャストの声に応じてキャラクタの口が自動的に動き、担当スタッフが随時選択することによってキャラクタの表情が変化するが、アクターキャスト、ボイスキャスト及び担当スタッフのいる場所は通信環境さえ整っていればどこでもかまわない、つまりアクターキャストやボイスキャストが生成する動作指図データを通信によってコンピュータが受信し、受信したデータをプログラムで制御してキャラクタに反映させることができることが把握できるから、相違点に係る本件発明の「外部装置から受信した第2動作指図データに基づいて前記NPCを動作させることにより第2パートを進行させる」点は、粟野の甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証及び甲第6号証に開示されている旨主張する。
さらに、特許異議申立人粟野浩は、粟野の甲第5号証は、「AR Peformers」において、アククーキャストの姿勢や動きをモーションキャプチャーで認識してキャラクタをリアルタイムにレンダリングし、ボイスキャストが曲に合わせて歌ったりトークをしたりするのに応じてキャラクタの口が自動的に動くもので、アクターキャストとボイスキャストはキャラクタを演じており、本件特許の特許査定時の明細書には「演者」に関して記載はないものの、「演者」とは一般的に「演じる者」を意味するから、甲第5号証におけるアクターキャストとボイスキャストは本件発明における「演者」に相当する旨主張する。また、甲第6号証には、「AR Performers」において、演者がいる場所は通信環境さえ整っていればどこでもいいことが記載されているから、アクターキャストやボイスキャストのいる場所から通信によって送信される動作指図データには、アククーキャストのモーションキャプチャーデータとボイスキャストの音声データが含まれていることが把握でき、したがって、相違点に係る本件発明の「前記第2動作指図データは、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力したモーションデータと、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力した音声データと、を含むデータである」点は、粟野の甲第5号証及び甲第6号証に開示されている旨主張する。

しかしながら、ユーザがタップするとシナリオが進行するゲームプログラムに係る粟野の甲1発明はライブを示唆するものではないから、粟野の甲第5号証及び甲第6号証により導き出されるアクターキャストやボイスキャストに係る事項を粟野の甲1発明に直接適用する動機付けは見いだせない。また、粟野の甲1発明に、ビクトリーライブに係る事項を開示する粟野の甲第2号証及び甲第3号証の記載事項を適用して、ユーザがタップするとシナリオが進行するパートとビクトリーライブが行われるパートを実行するゲームプログラムとしたうえで、さらに、そのユーザがタップするとシナリオが進行するパートとビクトリーライブが行われるパートを実行するゲームプログラムに対して、粟野の甲第5号証及び甲第6号証により導き出されるアクターキャストやボイスキャストに係る事項を適用して、ユーザがタップするとシナリオが進行するパートとビクトリーライブをアクターキャストやボイスキャストにより行うパートを実行するゲームプログラムとすることは、甲1発明から2段階の推考を経る必要があり、いわゆる容易の容易であって、当業者にとって容易になし得たこととはいえないというべきである。

なお、粟野の甲第7号証を考慮しても、これは、粟野の甲第5号証及び甲第6号証と共通する「AR Performers」のライブイベントにおけるキャラクターの動作の具体例を開示するものであって、粟野の甲1発明のようなユーザがタップするとシナリオが進行するゲームと、粟野の甲第5号証及び甲第6号証により導き出されるようなアクターキャストやボイスキャストに係る事項を何ら関連付けるものではないので、粟野の甲第5号証及び甲第6号証により導き出される事項を粟野の甲1発明に適用する動機付けは見いだすことはできないという上記判断を覆すことはできず、また、粟野の甲1発明に、粟野の甲第2号証及び甲第3号証の記載事項を適用して、さらに、粟野の甲第5号証及び甲第6号証により導き出される事項を適用するという2段階の推考が当業者にとって容易になし得たこととはいえないという上記判断を覆すことはできない。
また、粟野の甲第8号証ないし甲第12号証を考慮しても、これらは、いずれも、オンラインゲーム「ファンタシースターオンライン2」におけるステージライブと呼ばれるイベントを開示するものであって、粟野の甲1発明のようなユーザがタップするとシナリオが進行するゲームと、粟野の甲第5号証及び甲第6号証により導き出されるようなアクターキャストやボイスキャストに係る事項を何ら関連付けるものではないので、粟野の甲第5号証及び甲第6号証により導き出される事項を粟野の甲1発明に適用する動機付けは見いだせないという上記判断を覆すことはできず、また、粟野の甲1発明に、粟野の甲第2号証及び甲第3号証の記載事項を適用して、さらに、粟野の甲第5号証及び甲第6号証により導き出される事項を適用するという2段階の推考が当業者にとって容易になし得たこととはいえないという上記判断を覆すことはできない。

したがって、本件発明は、粟野の甲1発明及び甲第2号証ないし甲第6号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 訂正後の請求項2ないし9、12及び13に係る発明について
訂正後の請求項2ないし9に係る発明は、本件発明の特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものであり、訂正後の請求項12及び13に係る発明は、本件発明とカテゴリーが相違するのみであって実質的に同一の発明であるから、これらについて主張する異議申立理由の具体的内容は、本件発明に対するものと異なるものではないことから、訂正後の請求項2ないし9、12及び13に係る発明は、上記アと同様の理由により、粟野の甲1発明及び甲第2号証ないし甲第12号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

ウ 小括
よって、訂正後の請求項1ないし9、12及び13に係る発明は、粟野の甲第1号証ないし甲第12号証に記載された発明ないし技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反するものとすることはできない。
したがって、粟野の特許異議申てにおける異議申立理由によっては、訂正後の請求項1ないし9、12及び13に係る特許を取り消すことはできない。

2 財前1の特許異議申立てについて
(1)申立理由
特許異議申立人財前直樹は、財前1の特許異議申立てに係る特許異議申立書おいて、以下の甲第1号証ないし甲第8号証(以下「財前1の甲第1号証ないし財前1の甲第8号証」などという。)を提示し、訂正前の請求項1、12及び13に係る発明は財前1の甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、訂正前の請求項2及び3に係る発明は財前1の甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに周知技術に基づいて、訂正前の請求項5ないし7に係る発明は財前1の甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、訂正前の請求項8、9に係る発明は財前1の甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、よって、請求項1ないし3、5ないし9、12及び13に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、請求項1ないし10、12及び13に係る特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである旨主張する。

・財前1の甲第1号証:特開2000-24318号公報

・財前1の甲第2号証:特開2012-110670号公報

・財前1の甲第3号証:空白ナツメ-Natsume Ch-、「【PUBG】JP鯖で敵にVCで喋りかけてみた結果≪面白い結末に≫- YouTube」、[online]、公知日2018年3月30日、YouTube、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://www.youtube.com/watch?v=f9BV2zX7P50>

・財前1の甲第4号証:DMM GAMES、「遊び方 - PUBG公式 - DMM GAMES」、[online]、公知日2017年9月23日、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20170923230216/http://pubg.dmm.com/gameguide/manual/>

・財前1の甲第5号証:特許第6321247号公報(平成30年5月9日発行)

・財前1の甲第6号証:佐藤和也、「VR空間でコミュニケーション、「スペチャン」うららに感動??KDDIのVRコンテンツを体験」、[online]、公知日2016年9月15日、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://japan.cnet.com/article/35089076/>

・財前1の甲第7号証:特開2003-181136号公報

・財前1の甲第8号証:作者不明、「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」、[online]、公知日2017年8月13日、[令和2年4月16日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20170902151539/https:/ja.wikipedia.org/wiki/PLAYERUNKNOWN’S_BATTLEGROUNDS>

(2)財前1の各甲号証の記載
ア 財前1の甲第1号証
財前1の甲第1号証には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。
(ア)「【0012】
・・・本発明は、複数のプレーヤが共通のゲーム空間でプレイできるゲームシステムであって、先行プレーヤがエントリーしているゲーム空間へ後発プレーヤがエントリーし先行プレーヤと共通のゲーム空間で後発プレーヤがプレイできるように、ゲーム空間へのプレーヤのエントリーを随時受け付ける手段と、後発プレーヤがエントリーした場合に、制御プログラムにより操作されている移動体を後発プレーヤに割り当てる手段と、後発プレーヤからの操作データに基づいて、後発プレーヤに割り当てられた移動体を移動させる演算を行う手段とを含むことを特徴とする。」

(イ)「【0014】そして、本発明では、後発プレーヤがエントリーした場合に、制御プログラム(コンピュータ)により操作されている移動体(以下、C移動体と呼ぶ)が、後発プレーヤに割り当てられる。」

(ウ)「【0031】ホスト装置100は、処理部110、ワークメモリ120、情報記憶媒体130、画像生成部140、音生成部150及び通信部160を含む。
【0032】ここで処理部110は、プレーヤからの操作データや所与のプログラムなどに基づいて、ゲーム演算(ゲームモードの設定、ゲームの進行、移動体の位置や方向の決定、視点位置や視線方向の決定、オブジェクト空間へのオブジェクトの配置等)、ホスト装置全体の制御、ホスト装置内の各ブロックへの命令の指示などの各種の処理を行う。この処理部110の機能は、CPU(CISC型、RISC型)やASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや所与のプログラム(ゲームプログラム)により実現できる。
【0033】処理部110は、受け付け部112、割り当て部114、移動体演算部116を含む。
【0034】ここで受け付け部112は、ゲーム空間へのプレーヤのエントリーを随時受け付けるための処理を行う。これにより、先行プレーヤがエントリーしているゲーム空間へ後発プレーヤが随時エントリーし、先行プレーヤと共通のゲーム空間で後発プレーヤがプレイできるようになる。即ちオールタイムエントリー方式が可能になる。
【0035】また割り当て部114は、後発プレーヤがエントリーした場合に、制御プログラムにより操作されている移動体を後発プレーヤに割り当てる処理を行う。
【0036】また移動体演算部116は、プレーヤにより入力される操作データや所与のプログラムに基づき、プレーヤにより操作される移動体や所与の制御プログラム(コンピュータ)により操作される移動体を移動させるための演算を行う。」

(エ)「【0045】ゲーム機200は、処理部210、ワークメモリ220、情報記憶媒体230、通信部240、操作部250、表示部260、音出力部270及び撮影部280を含む。」

(オ)「【0054】なお図2では、ホスト装置100が画像や音を生成しているが、ゲーム機200に画像や音を生成させるようにしてもよい。この場合には、図3に示すように、ゲーム機200が画像生成部140、音生成部150を含むようになる。
【0055】また図2では、ホスト装置100の処理部110が受け付け部112、割り当て部114、移動体演算部116を含んでいるが、図3に示すように、これらをゲーム機200の処理部210に含ませてもよい。」

(カ)「【0057】ホスト装置やゲーム機の接続(ネットワーク)構成も図2、図3に示すものに限られるものではない。例えばゲーム機やホスト装置の接続形態としては、図4(A)、(B)、(C)に示すようなリング型、ツリー型、スター型などの種々の接続形態を考えることができる。」

(キ)「【0074】また、プレーヤ側に選択権を与えるようにしてもよい。例えば、マルチプレーヤ型のサッカーゲームに本実施形態を適用した場合を考える。そして、図7に示すように、キャラクタ(移動体)22、23、24、25、26、27、28はコンピュータ(制御プログラム)により操作されており(以下、これらのキャラクタをCキャラクタと呼ぶ)、キャラクタ29、30、31、32は先行プレーヤにより操作されているとする(以下、これらのキャラクタを先行プレーヤキャラクタと呼ぶ)。」

(ク)「【0084】また図10(A)では、先行プレーヤがキャラクタ60を操作している。そして、後発プレーヤが参入し、キャラクタ62がCキャラクタから後発プレーヤキャラクタに切り替わると、図10(B)に示すように、マーカ64の表示が変わると共にキャラクタ62の画像も変化する。
【0085】即ち、図10(B)では、マーカ64に、後発プレーヤの識別画像がテクスチャマッピングされる。・・・
【0086】また、図10(B)では、操作主体が切り替わったキャラクタ62の画像が変更される(キャラクタ62が点滅する)。・・・
【0087】「この場合、キャラクタ62の画像の変更手法としては種々のものを考えることができる。例えばキャラクタ62の色、輝度、テクスチャ、半透明率などを変えてもよい。」

(ケ)「【0099】特に遠隔地通信を行うゲームシステムにおいては、プレーヤがゲーム空間に随時エントリーできるオールタイムエントリー方式が有効である。即ち、遠隔地通信を行うゲームシステムでは、例えば東京のプレーヤと大阪のプレーヤとが同時にエントリーするという事は事実上困難である。これに対して、オールタイムエントリー方式によれば、東京のプレーヤと大阪のプレーヤは、同時にゲーム空間にエントリーしなくても、共通のゲーム空間に随時エントリーしてマルチプレーヤ型ゲームを楽しむことができる。」

(コ)「【0119】また本発明は、本実施形態で説明したゲームに限定されず種々のゲーム(競争ゲーム、スポーツゲーム、対戦ゲーム、格闘ゲーム、ロールプレイングゲーム、シューティングゲーム等)に適用できる。」

以上の記載から、財前1の甲第1号証には、次の発明(以下「財前1の甲1発明」という。)が記載されている。
「処理部、ワークメモリ、情報記録媒体、および、操作部を備えるゲーム機により実行されるゲームプログラムであって、
ゲーム機に、後発プレーヤがエントリーする前までは、コンピュータ(制御プログラム)によりCキャラクタを動作させ、先行プレーヤの操作に応じてゲームを進行させるステップと、
後発プレーヤがエントリーした場合に、Cキャラクタを後発プレーヤに割り当て、後発プレーヤからの操作データに基づいて、後発プレーヤに割り当てられた、Cキャラクタであったキャラクタを移動させ、ネットワークを利用したマルチプレーヤ型のゲームを進行させるステップを実行させる、遠隔地通信が可能で後発プレーヤが随時エントリー可能なゲームプログラム。」

イ 財前1の甲第2号証
財前1の甲第2号証には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。
(ア)「【0037】
[1.ゲームシステムの全体構成]
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るゲームシステム1について説明する。図1は、ゲームシステム1の外観図である。図1において、ゲームシステム1は、テレビジョン受像器等に代表される据置型のディスプレイ装置(以下、「テレビ」と記載する)2、据置型のゲーム装置3、光ディスク4、コントローラ5、マーカ装置6、および、端末装置7を含む。ゲームシステム1は、コントローラ5を用いたゲーム操作に基づいてゲーム装置3においてゲーム処理を実行し、ゲーム処理によって得られるゲーム画像をテレビ2および/または端末装置7に表示するものである。」

(イ)「【0044】
CPU10は、光ディスク4に記憶されたゲームプログラムを実行することによってゲーム処理を実行するものであり、ゲームプロセッサとして機能する。CPU10は、システムLSI11に接続される。システムLSI11には、CPU10の他、外部メインメモリ12、ROM/RTC13、ディスクドライブ14およびAV-IC15が接続される。システムLSI11は、それに接続される各構成要素間におけるデータ転送の制御、表示すべき画像の生成、外部装置からのデータの取得等の処理を行う。なお、システムLSI11の内部構成については後述する。揮発性の外部メインメモリ12は、光ディスク4から読み出されたゲームプログラムや、フラッシュメモリ17から読み出されたゲームプログラム等のプログラムを記憶したり、各種データを記憶したりするものであり、CPU10のワーク領域やバッファ領域として用いられる。ROM/RTC13は、ゲーム装置3の起動用のプログラムが組み込まれるROM(いわゆるブートROM)と、時間をカウントするクロック回路(RTC:Real Time Clock)とを有する。ディスクドライブ14は、光ディスク4からプログラムデータやテクスチャデータ等を読み出し、後述する内部メインメモリ11eまたは外部メインメモリ12に読み出したデータを書き込む。」

(ウ)「【0052】
また、ゲーム装置3は、コントローラ5からの操作データを受信することが可能である。すなわち、入出力プロセッサ11aは、コントローラ5から送信される操作データをアンテナ23およびコントローラ通信モジュール19を介して受信し、内部メインメモリ11eまたは外部メインメモリ12のバッファ領域に記憶(一時記憶)する。」

(エ)「【0056】
また、ゲーム装置3は、端末装置7から各種データを受信可能である。詳細は後述するが、本実施形態では、端末装置7は、操作データ、画像データ、および音声データを送信する。端末装置7から送信される各データはアンテナ29を介して端末通信モジュール28によって受信される。ここで、端末装置7からの画像データおよび音声データは、ゲーム装置3から端末装置7への画像データおよび音声データと同様の圧縮処理が施されている。したがって、これら画像データおよび音声データについては、端末通信モジュール28からコーデックLSI27に送られ、コーデックLSI27によって伸張処理が施されて入出力プロセッサ11aに出力される。一方、端末装置7からの操作データに関しては、画像や音声に比べてデータ量が少ないので、圧縮処理が施されていなくともよい。また、必要に応じて暗号化がされていてもよいし、されていなくともよい。したがって、操作データは、端末通信モジュール28で受信された後、コーデックLSI27を介して入出力プロセッサ11aに出力される。入出力プロセッサ11aは、端末装置7から受信したデータを、内部メインメモリ11eまたは外部メインメモリ12のバッファ領域に記憶(一時記憶)する。」

(オ)「【0102】
なお、端末装置7は、音声入力手段であるマイク(図10に示すマイク69)を備えている。ハウジング50の表面には、マイクロフォン用孔60が設けられる。マイク69はこのマイクロフォン用孔60の奥のハウジング50内部に設けられる。マイクは、ユーザの音声等、端末装置7の周囲の音を検出する。」

(カ)「【0122】
また、端末装置7は、端末装置7の動き(位置や姿勢、あるいは、位置や姿勢の変化を含む)を算出するためのセンサとして、磁気センサ62、加速度センサ63、およびジャイロセンサ64を備えるが、他の実施形態においては、これらのセンサのうち1つまたは2つのみを備える構成であってもよい。また、他の実施形態においては、これらのセンサに代えて、または、これらのセンサとともに、他のセンサを備える構成であってもよい。」

(キ)「【0134】
端末操作データ97は、端末装置7に対するユーザの操作を表すデータである。端末操作データ97は、端末装置7から送信されてゲーム装置3において取得され、メインメモリに記憶される。端末操作データ97は、第2操作ボタンデータ98、スティックデータ99、タッチ位置データ100、第2加速度データ101、第2角速度データ102、および方位データを含む。」

(ク)「【0141】
なお、端末操作データ97は、端末装置7を操作するユーザの操作を表すものであればよく、上記各データ98?103のいずれか1つのみを含むものであってもよい。・・・なお、本実施形態のように端末装置7自体の動きをゲーム操作として用いる場合には、端末操作データ97は、第2加速度データ101、第2角速度データ102、または方位データ103のように、端末装置7自体の動きに応じて値が変化するデータを含むようにする。」

(ケ)「【0143】
マイク音データ105は、端末装置7のマイク69によって検出された音声(マイク音)を表すデータである。マイク音データ105は、端末装置7から送信されてくる圧縮された音声データがコーデックLSI27によって伸張された音声データであり、入出力プロセッサ11aによってメインメモリに記憶される。
【0144】
処理用データ106は、後述するゲーム処理(図12)において用いられるデータである。処理用データ106は、制御データ107、コントローラ姿勢データ108、端末姿勢データ109、画像認識データ110、および音声認識データ111を含む。なお、図11に示すデータの他、処理用データ106は、ゲームに登場する各種オブジェクトに設定される各種パラメータを表すデータ等、ゲーム処理において用いられる各種データを含む。」

(コ)「【0147】
端末姿勢データ109は、端末装置7の姿勢を表すデータである。」

(サ)「【0157】
ステップS3において、CPU10は、端末装置7から送信されてくる各種のデータを取得する。端末装置7は、端末操作データとカメラ画像データとマイク音データとをゲーム装置3へ繰り返し送信するので、ゲーム装置3はこれらのデータを逐次受信する。」

(シ)「【0173】
上記ステップS23の次に、ステップS24の処理が実行される。ステップS24においては、CPU10は、端末装置7の姿勢を算出する。すなわち、端末装置7から取得される端末操作データ97には、第2加速度データ101、第2角速度データ102、および方位データ103が含まれるので、CPU10は、これらのデータに基づいて端末装置7の姿勢を算出する。」

(ス)「【0179】
ステップS27において、CPU10は、ゲーム入力に応じたゲーム処理を実行する。ここで、ゲーム入力とは、コントローラ5または端末装置7から送信されてくるデータ、あるいは、当該データから得られるデータであればどのようなものであってもよい。具体的には、ゲーム入力は、コントローラ操作データ92および端末操作データ97に含まれる各データの他、当該各データから得られるデータ(コントローラ姿勢データ108、端末姿勢データ109、画像認識データ110、および音声認識データ111)であってもよい。また、ステップS27におけるゲーム処理の内容はどのようなものであってもよく、例えば、ゲームに登場するオブジェクト(キャラクタ)を動作させる処理、仮想カメラを制御する処理、または、画面に表示されるカーソルを移動する処理であってもよい。また、カメラ画像(またはその一部)をゲーム画像として用いる処理、または、マイク音声をゲーム音声として用いる処理等であってもよい。なお上記ゲーム処理の例については後述する。ステップS27においては、例えば、ゲームに登場するキャラクタ(オブジェクト)に設定される各種パラメータのデータや、ゲーム空間に配置される仮想カメラに関するパラメータのデータや、得点のデータ等、ゲーム制御処理の結果を表すデータがメインメモリに記憶される。ステップS27の後、CPU10はステップS4のゲーム制御処理を終了する。」

(セ)「【0209】
(第3のゲーム例)
以下、図16および図17を参照して、第3のゲーム例について説明する。第3のゲーム例は、2人のプレイヤが対戦する形式の野球ゲームである。すなわち、第1プレイヤは、コントローラ5を用いて打者を操作し、第2プレイヤは端末装置7を用いて投手を操作する。また、テレビ2および端末装置7には各プレイヤにとってゲーム操作が行いやすいゲーム画像が表示される。」

以上の記載から、財前1の甲第2号証には、次の発明(以下「財前1の甲2発明」という。)が記載されている。
「ゲームプログラムであって、
ゲームプログラムは、プロセッサ、メモリおよび操作部(コントローラ5)を備えるコンピュータ(ゲーム装置3)により実行されるものであり、
ゲームプログラムは、プロセッサに、
操作部を介してコンピュータに入力されたユーザの入力操作に応じてゲームに登場するキャラクタを動作させるステップと、
音声入力手段であるマイクや、端末装置7の動きを算出するためのセンサを備えたプレイヤの端末装置7から受信した、端末操作データやマイク音データを含むキャラクタの動作を指定するデータに基づいてゲームに登場するキャラクタを動作させるステップと、
を実行させる、ゲームプログラム。」


ウ 財前1の甲第3号証
財前1の甲第3号証の動画映像から、次の事項が看取できる。
(ア)「【PUBG】JP鯖で敵にVCで喋りかけてみた結果≪面白い結末に≫」(タイトル)

(イ)字幕で「VCオン」と表示されるとともに、「頼む」と表示され、プレイヤが「頼む」と発言している。(タイムカウントが0:23/2:16の表示画面中の記載と音声)

(ウ)「はいはいはい」と表示され、敵プレイヤが「はいはいはい」と発言している。(タイムカウントが0:25/2:16の表示画面中の記載と音声)

(エ)「素手で戦うか」と表示され、プレイヤが「素手で戦うか」と発言している。(タイムカウントが0:37/2:16の表示画面中の記載と音声)

(オ)「素手で戦おう」と表示され、敵プレイヤが「素手で戦おう」と発言している。(タイムカウントが0:39/2:16の表示画面中の記載と音声)

(カ)字幕で「試合開始」と表示される。(タイムカウントが0:41/2:16の表示画面中の記載と音声)

(キ)「おお?!?」と表示され、敵プレイヤが「おお?」と発言しながら敵プレイヤのキャラクタが移動している。(タイムカウントが1:02/2:16の表示画面中の記載と音声)

(ク)「あーあと一ミリしかない」と表示され、敵プレイヤが「あーあと一ミリしかない」と発言しながら敵プレイヤのキャラクタが移動している。(タイムカウントが1:12/2:16の表示画面中の記載と音声)

(ケ)「えあれ(敵)一緒に殺しに行きます?」と表示され、敵プレイヤが「えあれ一緒に殺しに行きます」と発言している。(タイムカウントが1:36/2:16の表示画面中の記載と音声)

(コ)「それはチーミングだ」と表示され、プレイヤが「それはチーミングだ」と発言している。(タイムカウントが1:37/2:16の表示画面中の記載と音声)

以上から、財前1の甲第3号証は、複数のプレイヤがリアルタイムで対戦を行うゲーム「PUBG」に関する動画であり、「PUBG」はVC(ボイス・チャット)が可能であることが把握できる。また、動画の内容から、「PUBG」は、一人のプレイヤ(A)が操作するキャラクタ(A)の操作内容と発言内容が他のプレイヤ(B)に伝わり、その後、これに応じて他のプレイヤ(B)が操作するキャラクタ(B)の操作内容と発言内容が前記一人のプレイヤ(A)に伝わる対戦ゲームであることが把握できる。

したがって、財前1の甲第3号証には、
「複数のプレイヤがリアルタイムで対戦が可能な対戦ゲーム「PUBG」であって、一人のプレイヤ(A)が操作するキャラクタ(A)の操作内容と発言内容が他のプレイヤ(B)に伝わり、その後、これに応じて他のプレイヤ(B)が操作したキャラクタ(B)の操作内容と発言内容が前記一人のプレイヤ(A)に伝わる対戦ゲーム「PUBG」。」
という技術事項が記載されているものと認められる。

エ 財前1の甲第4号証
財前1の甲第4号証には、次の記載がある。
(ア)「PUBGとは」(ホープページ上部)

(イ)「ゲームの遊び方
マウスとキーボードのみのマウス照準による操作方法を説明します。その他の操作方法に関しては、ゲーム内よりご確認ください。」(キーボードとマウスの図の上方)

(ウ)

(キーボードとマウスの図の下方の左欄)

上記(ウ)から、「射撃」、「ADS(スコープを覗く)」、「武器を構える」、「歩く」、「ダッシュ」、「しゃがむ」、「伏せ」は、それぞれキャラクタの動作を指示する命令(コマンド)であることは明らかである。

したがって、以上の記載から、財前1の甲第4号証には、
「キーボードの操作によって、キャラクタの動作を指示するためのコマンドを指定できるゲーム「PUBG」。」
という技術事項が記載されている。

オ 財前1の甲第5号証
財前1の甲第5号証には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。
(ア)「【0011】
HMDシステム100は、ネットワーク19を介して、遠隔地にある他のHMDシステム100N,100Xと通信することができる。HMDシステム100Nは、ユーザ190Nによって使用され得る。HMD100Xは、ユーザ190Xによって使用され得る。HMDシステム100N,100Xの構成は、HMDシステム100の構成と同様である。HMDシステム100の構成要素と同様の構成要素には、符号N,Xが付されている。したがって、以下、適宜、HMDシステム100の構成を参照して、各HMDシステムを説明する。」
【0012】
HMDシステム100は、HMD110と、HMDセンサ120と、コントローラ160と、コンピュータ200とを備える。HMD110は、モニタ112と、スピーカ115と、マイク119と、注視センサ140とを含む。コントローラ160は、モーションセンサ130を含み得る。」

(イ)「【0014】
HMD110は、ユーザ190の頭部に装着され、動作中に仮想空間をユーザ190に提供し得る。より具体的には、HMD110は、右目用の画像および左目用の画像をモニタ112にそれぞれ表示する。ユーザ190の各目がそれぞれの画像を視認すると、ユーザ190は、両目の視差に基づき当該画像を3次元の画像として認識し得る。」

(ウ)「【0016】
ある局面において、コンピュータ200,200N,200Xは、各々のユーザ190,190N,190Xの動作に基づく信号を他のコンピュータとの間で通信する。
【0017】
ある実施の形態において、コンピュータ200,200N,200Xが、仮想空間を介して通信するためのVR(Virtual Reality)チャットアプリケーションを実行している時、コンピュータ200,200N,200Xは、各HMD110,110N,110Xによって提示される仮想空間を介した通信を実現する。仮想空間を介した通信では、映像と音声とが通信される。この時、各ユーザに対応するアバターオブジェクトが、仮想空間に提示される。例えば、ユーザ190が他のユーザ190N,190Xと通信しているとき、ユーザ190が装着したHMD110は、ユーザ190N,190Xに対応するアバターオブジェクトを提示する。ユーザ190は、仮想空間に没入した状態で、アバターオブジェクトを介して他のユーザ190N,190Xと通信することができる。」

(エ)「【0021】
スピーカ115は、コンピュータ200から受信した音声データに対応する音声(発話)を外部に出力する。マイク119は、ユーザ190の発話に対応する音声信号をコンピュータ200に出力する。ユーザ190は、マイク119を用いて他のユーザ190N,190Xに向けて発話でき、スピーカ115を用いて他のユーザ190N,190Xの発話を聞くことができる。
【0022】
HMDセンサ120は、複数の光源(図示しない)を含む。各光源は、たとえば、赤外線を発するLED(Light Emitting Diode)により実現される。HMDセンサ120は、HMD110の動きを検出するためのポジショントラッキング機能を有する。HMDセンサ120は、この機能を用いて、現実空間内におけるHMD110の位置および傾きを検出する。」

(オ)「【0026】
サーバ150は、コンピュータ200にプログラムを送信し得る。他の局面において、サーバ150は、他のユーザによって使用されるHMD110に仮想現実を提供するための他のコンピュータ200と通信し得る。たとえば、アミューズメント施設において、複数のユーザが参加型のゲームを行なう場合、各コンピュータ200は、各ユーザの動作に基づく信号を他のコンピュータ200と通信して、同じ仮想空間において複数のユーザが対話(VR(Virtual Reality)チャット)を楽しむことを可能にする。
【0027】
コントローラ160は、ユーザ190からコンピュータ200への命令の入力を受け付ける。ある局面において、コントローラ160は、ユーザ190によって把持可能に構成される。・・・他の局面において、コントローラ160は、仮想現実を提供する空間に配置されるオブジェクトの位置や動きを制御するためにユーザ190によって与えられる操作を受け付ける。
【0028】
モーションセンサ130は、ある局面において、ユーザ190の手に取り付けられて、ユーザ190の手の動きを検出する。たとえば、モーションセンサ130は、手の回転速度、回転数などを検出する。モーションセンサ130によって得られたユーザ190の手の動きの検出結果を示すデータは、コンピュータ200に送られる。」

(カ)「【0038】
ストレージ12は、プログラムおよびデータを永続的に保持する。ストレージ12は、たとえば、ROM(Read-Only Memory)、ハードディスク装置、フラッシュメモリ、その他の不揮発記憶装置として実現される。ストレージ12に格納されるプログラムは、HMDシステム100において仮想空間を提供するためのプログラム、シミュレーションプログラム、ゲームプログラム、ユーザ認証プログラム、他のコンピュータ200との通信を実現するためのプログラムを含む。ストレージ12に格納されるデータは、仮想空間を規定するためのデータおよびオブジェクトなどを含む。」

(キ)「【0043】
ある局面において、プロセッサ10は、ストレージ12にアクセスし、ストレージ12に格納されている1つ以上のプログラムをメモリ11にロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行する。当該1つ以上のプログラムは、コンピュータ200のオペレーティングシステム、仮想空間を提供するためのアプリケーションプログラム、遠隔地を結ぶリモート会議を実現するためのソフトウェア、コントローラ160を用いて仮想空間で実行可能なゲームソフトウェアなどを含み得る。プロセッサ10は、入出力インターフェイス13を介して、仮想空間を提供するための信号をHMD110に送る。HMD110は、その信号に基づいてモニタ112に映像を表示する。」

(ク)「【0081】
図8Bは、右コントローラ800を把持するユーザ190の右手に対応して仮想空間に配置されるハンドオブジェクト810の一例を示す。例えば、ユーザ190の右手に対応するハンドオブジェクト810に対して、ヨー、ロール、ピッチの各方向が規定される。例えば、入力操作が、右コントローラ800のボタン34に対して行なわれると、ハンドオブジェクト810の人差し指を握りこんだ状態とし、入力操作がボタン34に対して行なわれていない場合には、図8Bに示されるように、ハンドオブジェクト810の人差し指を伸ばした状態とすることもできる。」

(ケ)「【0134】
図10に示されるように、コンピュータ200,200N,200Xは、それぞれ、ネットワーク19を介してサーバ150と通信可能である。コンピュータ200,200N,200Xは、それぞれに接続されているHMD110,110N,110Xを介して、仮想空間画像22,22N,22Xを提供する。仮想空間画像22,22N,22Xは、コンピュータ200,200N,200Xの各ユーザに対応するアバターオブジェクト1010,1010N,1010Xをそれぞれ提示する。
【0135】
たとえば、アバターオブジェクト1010,1010N,1010Xは、ユーザ190,190N,190Xにそれぞれ対応する。例えば、ユーザ190が視認する仮想空間画像22には、ユーザ190の通信相手として、アバターオブジェクト1010N,1010Xが提示される。ユーザ190Nが視認する仮想空間画像22Nには、ユーザ190Nの通信相手として、アバターオブジェクト1010,1010Xがそれぞれ提示される。ユーザ190Xが視認する仮想空間画像22Xには、ユーザ190Xの通信相手として、アバターオブジェクト1010,1010Nがそれぞれ提示される。
【0136】
HMD110,110N,110Xは、コンピュータ200,200N,200Xを介して、ユーザ190,190N,190Xの位置および傾きに対応する動き検知データをサーバ150にそれぞれ送信する。動き検知データはアイトラッキングデータを含み得る。サーバ150は、HMD110から受信した動き検知データを、HMD110N,110Xにそれぞれ送信する。HMD110N,110Xは、当該動き検知データに応じて、仮想空間2に提示されるチャット相手のアバターオブジェクトの表示態様(たとえば、アバターオブジェクトの位置および傾き)を変更する。
【0137】
ある局面において、HMD110,110N,110Xは、ユーザ190,190N,190Xの発話に対応する音声データをサーバ150にそれぞれ送信する。サーバ150は、例えば、HMD110から受信した音声データおよびアイトラッキングデータを、コンピュータ200N,200Xに送信する。コンピュータ200N,200Xは、当該アイトラッキングデータに応じて、アバターオブジェクトの表示態様(たとえば、目や頭のの向き等)を変更する。HMD110N,110Xは、当該音声データに基づく音声をスピーカ115から出力する。」
【0138】
以上より、HMD110を装着したユーザ190が目を動かし、また発話すると、HMD110と通信可能な状態にある他のHMD110N,110Xによって提示される仮想空間2では、ユーザ190に対応するアバターオブジェクトの表示態様が変わるとともに、音声がスピーカ115から出力される。表示態様が変化するタイミングと音声が出力されるタイミングとが同期するので、仮想空間2を介した通信において、各通信相手は、音声とアバターオブジェクトとを用いたコミュニケーションを違和感なく行うことができる。」

以上の記載から、財前1の甲第5号証には、次の発明が記載されている。
「コンピュータ200Nにより実行されるゲームプログラムにおいて、
コンピュータ200Nは、ユーザ190の操作にしたがって、ユーザ190に対応したアバターオブジェクト1010の動作内容を示す動き検知データおよび音声データを生成するコンピュータ200と通信可能に構成されており、
ゲームプログラムは、コンピュータ200Nのプロセッサに、コンピュータ200から配信される、アバターオブジェクト1010の動作内容を示す動き検知データと音声データを受信するステップと、
受信した動き検知データと音声データに基づいてアバターオブジェクト1010に対話を含む動作をさせるステップと、を実行させ、
受信した動き検知データと音声データは、ユーザ190の入力した動き検知データと、ユーザ190の入力した音声データと、を含むデータである
ゲームプログラム。」

カ 財前1の甲第6号証
財前1の甲第6号証には、次の記載がある。
(ア)「Linked-doorは、KDDIが“次世代VRマルチコミュニケーションとうたって開発を進めているコンテンツ。複数の人がそれぞれ異なる場所から通信を使って同じVR空間で出会い、一緒に歩きながら音声で会話したり、ダーツで遊んだりと新感覚のマルチコミュニケーションが体験できるというもの。3月に米国オースティンで開催された「South by Southwest 2016」へ初期作品を出展。さらに進化したものをTGS2016では投入している。」(動画画面の上方)

(イ)「VRデバイスはHTCとValveが共同開発した「Vive」を使用。ルームスケールのエリアを感知することが特徴で、一定のスペースの中でプレーヤーの位置や向きを感知し、VR空間内のコンテンツに反映することができる。
TGS2016においては2つのブースを使用し、体験者1人ずつがViveを装着。これにガイド役のスタッフの計3名が、VR空間上で一緒にいる形となって、ゲームなどのコミュニケーションを楽しむ。
・・・
筆者も実際に体験した。最初はガイドも交えて海辺の景色を眺めたり、子犬をなでたり……と、なんとなくその場にいる者同士という感覚もあったが、場所を変えて夕暮れ時のパーティ会場風の場所でダーツをしたり、グラスを手に乾杯をすると、不思議と場を共有している楽しさもわいてくる。会話を直接するなどの積極的なコミュニケーションはなかったが、緩い感じのつながりを楽しめそうな感覚はあった。」(動画画面の下方)

(ウ)上記(b)の記載の下方に、グラスを持った手と、ガイドのキャラクタとヒカルのキャラクタが表示された画像が掲載されており、画像の下には「VR空間内で乾杯。なんとなく“そこにいる”感覚が出てくる」と記載されている。

以上の記載から、財前1の甲第6号証には、
「複数の人がそれぞれ異なる場所から通信を使って同じVR空間で出会い、一緒に歩きながら音声で会話したり、ダーツで遊んだりするというマルチコミュニケーションが体験できるLinked-doorというVRコンテンツにおいて、
一定のスペースの中でプレーヤーの位置や向きを感知し、VR空間内のコンテンツに反映することができる「Vive」を使用し、
体験者2名とガイド役のスタッフの計3名が、VR空間上で一緒にいる形となって、ゲームなどのコミュニケーションを楽しむことができる」
という技術事項が記載されている。

キ 財前1の甲第7号証
財前1の甲第7号証には、次の記載がある。
(ア)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、対話のテキストデータを吹き出しで表示するより、音声出力によりキャラクタに直接しゃべらせるようにした方が、ネットワークゲームをよりリアルに行うことができる。」

(イ)「【0026】
このようなゲーム装置は、ネットワーク上のサーバと接続し、当該サーバと接続する他のゲーム装置との間で、ゲーム情報を互いに通信しあうことで、複数のゲーム装置が、共通のネットワークゲームを実行する。ゲーム装置間で送受信されるゲームデータは、例えば、プレイヤによるゲーム装置の操作データや各種設定データであり、本実施の形態では、さらに、プレイヤが発する音声データもゲームデータとして送受信される。」

(ウ)「【0028】
各ゲーム装置10A、10Bは、マイク装置を有し、マイク装置は、プレイヤが発した音声を音声データに変換する。例えば、ゲーム装置10Aは、プレイヤaの音声に対応する音声データを、後述する方法により変換し、変換された音声データを、ネットワークゲーム内に登場するプレイヤaに対応するキャラクタが話す言葉として音声出力する。また、ゲーム装置10Aは、その変換された音声データをゲームデータとして、サーバを介してゲーム装置10Bに送信する(ネットワークへ出力する)。ゲーム装置10Bは、ゲーム装置10Aからの変換された音声データを受信すると、同時に進行しているネットワークゲーム内に登場しているプレイヤaに対応するキャラクタが話す言葉として音声出力する。また、プレイヤbが発する音声についても、上記プレイヤaの場合と同様に、複数のゲーム装置で進行中のゲーム内に登場しているプレイヤbに対応するキャラクタの話す言葉として音声出力される。このように、プレイヤが発した音声を、あたかもキャラクタがしゃべっているように音声出力することで、ネットワークゲームのリアリティが向上する。」

以上の記載から、財前1の甲第7号証には、
「ネットワークゲームが可能なゲーム装置において、音声データをゲームデータとして受信し、音声データに基づいてネットワークゲーム内に登場しているキャラクタを発話させる」
という技術事項が記載されている。

ク 財前1の甲第8号証
財前1の甲第8号証には、次の記載がある。
(ア)「『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(プレイヤーアンノウンズ バトルグラウンズ、略称:PUBG)は、Blueholeが開発しているMMOFPS/TPSゲーム。」(ページ上方左欄)

(イ)「対応機種 Microsoft Windows7/8.1/10(Steam)/Xbox One」(ページ上方右欄の表の第2行目)

上記(イ)のMicrosoft Windowsは、プロセッサを有するパソコンで動くOSであり、Xbox Oneは、プロセッサを有するコンピュータであることは技術常識である。

したがって、財前1の甲第8号証には、
「対戦ゲーム「PUBG」が、プロセッサを有するコンピュータで動作する」
という技術事項が記載されている。

(3)当審の判断
ア 本件発明について
(ア)対比
本件発明と財前1の甲1発明とを対比する。
(a)財前1の甲1発明の「処理部」、「ワークメモリあるいは情報記録媒体」、「ゲーム機」、および「先行プレーヤ」は、それぞれ本件発明の「プロセッサ」、「メモリ」、「コンピュータ」、および「ゲームプレイヤであるユーザ」に相当する。

(b)財前1の甲1発明の「Cキャラクタ」は、本件発明の「ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(以下、NPC)」に相当する。

(c)財前1の甲1発明の「Cキャラクタ」は、コンピュータ(制御プログラム)により動作しており、キャラクタが動作(モーション)するためにはモーションデータなど動作を指図するデータが必要であることは明らかであるから、財前1の甲1発明の制御プログラムは、Cキャラクタの動作を指定する動作指図データを備えており、この動作指図データは、ワークメモリあるいは情報記録媒体等のメモリに予め記憶されていることも技術的にみて明らかである。
したがって、財前1の甲1発明の「ゲーム機に、後発プレーヤがエントリーする前までは、コンピュータ(制御プログラム)によりCキャラクタを動作させ、先行プレーヤの操作に応じてゲームを進行させるステップ」は、本件発明の「ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(以下、NPC)の動作を指定する動作指図データであって、前記メモリに予め記憶されている第1動作指図データに基づいて前記NPCを動作させ、前記操作部を介して入力された前記ユーザの入力操作に応じて第1パートを進行させるステップ」に相当する。

(d)財前1の甲1発明の「後発プレーヤがエントリーした場合に、Cキャラクタを後発プレーヤに割り当て、後発プレーヤからの操作データに基づいて、後発プレーヤに割り当てられたCキャラクタであったキャラクタを移動させる」ことは、ゲームプログラムが、後発プレーヤによって操作される、先行プレーヤが操作するゲーム機以外のゲーム機である外部装置から受信した指図データに基づいて、Cキャラクタであったキャラクタを動作させることに他ならない。
したがって、財前1の甲1発明の「後発プレーヤがエントリーした場合に、Cキャラクタを後発プレーヤに割り当て、後発プレーヤからの操作データに基づいて、後発プレーヤに割り当てられた、Cキャラクタであったキャラクタを移動させ、ネットワークを利用したマルチプレーヤ型のゲームを進行させるステップ」は、本件発明の「外部装置から受信した第2動作指図データに基づいて前記NPCを動作させることにより第2パートを進行させるステップ」に相当する。

してみれば、本件発明と財前1の甲1発明とは、
「ゲームプログラムであって、
前記ゲームプログラムは、プロセッサ、メモリおよび操作部を備えるコンピュータにより実行されるものであり、
前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに、
ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(以下、NPC)の動作を指定する動作指図データであって、前記メモリに予め記憶されている第1動作指図データに基づいて前記NPCを動作させ、前記操作部を介して入力された前記ユーザの入力操作に応じて第1パートを進行させるステップと、
外部装置から受信した第2動作指図データに基づいて前記NPCを動作させることにより第2パートを進行させるステップと、
を実行させる、ゲームプログラム。」
の点で一致し、次の点(以下「財前1の相違点」という。)で相違する。

(財前1の相違点)
外部装置から受信した動作指図データが、本件発明は、「前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力したモーションデータと、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力した音声データと、を含むデータである」のに対して、財前1の甲1発明は、Cキャラクタを割り当てられた後発プレーヤからの操作データである点。

(イ)判断
(財前1の相違点について)
特許異議申立人財前直樹は、財前1の特許異議申立てに係る特許異議申立書において、財前1の甲2発明では、操作部とは異なる外部装置(プレイヤの端末装置7)から受信した、端末操作データやマイク音データを含むキャラクタの動作を指定するデータに基づいてゲームに登場するキャラクタを動作させており、この動作を指定するデータは動作指図データに他ならず、また、外部装置であるプレイヤの端末装置7は、音声入力手段であるマイクや、端末装置7の動きを算出するためのセンサを備えているから、外部装置から受信するキャラクタの動作を指定するデータは、モーションデータと音声データを含んでおり、訂正前の本件発明と財前1の甲1発明の相違点に係る事項は、財前1の甲1発明に甲2発明を適用することにより、当業者が容易になし得たことである旨主張する。
しかしながら、本件訂正により、モーションデータと音声データを入力するNPCを演じる演者が、ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であることが明確にされ、財前1の甲1発明に甲2発明を適用したとしても、この点については相違することとなる。

この明確にされた点について、特許異議申立人財前直樹は、令和2年10月27日付けの意見書において、訂正により新たに生じた相違点であると主張して、ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であるオペレータが演者として演じるアバターを操作するデータが外部装置から受信され、このデータには、アバターにジェスチャをさせるために入力したモーションデータと、オペレータが入力した音声データが含まれていることは周知技術であるとして、参考資料1(特表2010-520537号公報)を提出し、本件発明は、財前1の甲1発明、甲2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであると主張するので、以下、検討する。
参考資料1には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。

(a)「【0008】
従って利点としては、例えば、あるエンタテインメント装置のユーザーが、通常、ユーザーの家にいて、全体のオンライン人口の中で比較的小さい比率を示す環境に接続している場合、このユーザーは、いずれにしても、アバターを選択する時点で、一つまたは複数のソフトウェア制御(自動)アバターにアクセスすることが可能であり、そのアバターがユーザーに対して適切に回答するよう装備できていない場合には、アバターがスムーズに人間のオペレータに制御を渡すようにすることができる。」

(b)「【0019】
本発明の実施例の概要において、ソニー(登録商標)プレイステーション3(登録商標)エンタテインメント装置のようなエンタテインメント装置のユーザーは、オンライン・サーバから入手可能な、非常に数多くの仮想三次元環境のうちの一つの環境内をナビゲートする。仮想三次元環境のそれぞれは、現在オンラインにいる他のユーザーの総数に対して比較的小さい比率のユーザーが集中している。この対話環境の中で、これらのユーザーは、人間のようなアバターにより描写され、ユーザー間の社会的対話を可能にしている。しかしながら、その他のユーザーに加えて、店主あるいは警官というような自動化されたアバターが、この環境内での地位と役割を占有している。これらのアバターは、単純な問合せに対して、基本的な自動レスポンスを提供できるが、直接答えられる問合せではない場合、プレイステーション3(PS3)上の環境を動かしているソフトウェアが、オンライン・サーバに対して通知を行い、サーバがその環境の管理組織体の代表者を選択してコンタクトをとる。サーバは、リンクを提供することにより、問合せまたは対話が生じている環境の具体的なインスタンスに代表者を切り換え、さらに、問い合わせまたは対話が提示された自動化されたアバターへと切り換えを行うことができる。それによって、自動化されたアバターは、代表者のアバターとなり、ユーザーおよびユーザーの問合せに対して途切れることなく直接携わることができる。実際に、ユーザーは、自動アバターから人格代表者へと変換が生じたこと(あるいは、そのアバターはそれまで人格代表者のアバター以外のものであったということ)を必ずしも知る必要はない。これによって、代表者は、ユーザーがたまたま選んだ環境の中で、いずれの自動アバターであってもそれを介して途切れることなくユーザーに携わることが可能になり、各ゲーム環境の中に一人または複数の代表者が継続して存在することを必要としない」

(c)「【0020】
図1は、ソニー(登録商標)プレイステーション3(登録商標)エンタテイメント装置の全体システム構造を概略的に示したものである。システムユニット10は、このシステムユニットに接続可能なさまざまな周辺機器を備える。
【0021】
システムユニット10は、セルプロセッサ100と、ランバス(Rambus、登録商標)ダイナミック・ランダムアクセスメモリ(XDRAM)ユニット500と、専用のビデオ・ランダムアクセスメモリ(VRAM)ユニット250を有するリアリティ・シンセサイザー・グラフィクス・ユニット(Reality Synthesizer graphics unit)200と、I/Oブリッジ700とを備える。」

(d)「【0024】
動作中、I/Oブリッジ700は、一台または複数台のゲーム・コントローラ751からのデータを含む、すべての無線、USB、およびイーサネット(登録商標)データを処理する。例えば、ユーザーがゲームをする際、I/Oブリッジ700は、ブルートゥース・リンクを介してゲーム・コントローラ751からのデータを受信し、そのデータをセルプロセッサ100へと導く。それに従い、セルプロセッサは、ゲームの現在の状態を更新する。」

(e)「【0028】
本実施例において、ゲーム・コントローラ751は、ブルートゥース・リンクを介して無線でシステムユニット10と通信するように動作可能である。しかし、ゲーム・コントローラ751は、その代わりにUSBポートに接続することが可能であり、これにより、ゲーム・コントローラ751のバッテリを充電する電力を供給できる。一つまたは複数のアナログ・ジョイスティックおよび従来の制御ボタンに加え、ゲーム・コントローラも各軸の並進および回転に対応して6自由度の動きに対して感度が高い。結果的に、ゲーム・コントローラのユーザーによるジェスチャおよび動きは、従来のボタンまたはジョイスティック・コマンドに加えて、またはその代わりに、ゲームに対する入力として変換できる。」

(f)「【0056】
ここで、ホーム環境の概念上のマップを表示する図4と、ホーム環境のオンライン・クライアント/サーバ構成の概略図である図5を参照すると、ユーザーのアバターは、デフォルトでロビー・ゾーン1010内に生じる。」

(g)「【0061】
ここで図6bを参照すると、ロビー・ゾーン1010はまた、ビリヤード台、ボウリング場、およびまたはゲームセンター等として機能する、一般的な娯楽施設1014を備えてもよい。ビリヤードやボウリングゲームは、アバターを介して実行することが可能であり、例えば、アバターが、ビリヤードのキューまたはボウリングのボールを手に持ち、このようなゲームに対する従来の方法で制御されるようにする。ゲームセンターでは、アバターがテレビゲーム機に取り組むと、ホーム環境は、選択されたテレビゲームをほぼフルスクリーンで表示するよう切換えをしてもよい。このようなゲームは、例えば、スペース・インベーダ(登録商標)、またはパックマン(登録商標)等のクラシックなゲームセンターのゲームまたはコンソールゲームであってもよい。

(h)「【0100】
アバターは、従来からあるサードパーティ・ゲーム方式(例えば、ゲーム・コントローラ751を使用するなど)でユーザーにより制御され、ホーム環境を歩き回れるようになっている。アバターの行為いくつかには前後関係がある。従って、例えば、座る、というオプションは、アバターが座席近くにいるときのみ利用可能となる。他のアバターの行為、例えば選択された感情やジェスチャの表現、あるいは、なんらかのコミュニケーション・オプションなどは、いつでも利用可能である。アバターの行動は、ゲーム・コントローラ751を使用することにより決定され、動作等のアクションに対して直接、あるいは、ゲーム・コントローラ751上の適切なキーを押すことにより呼び出されるポップアップメニューを介して、アクションの選択をすることによって決定される。
【0101】
このようなメニューを介して利用できるオプションはさらに、アバターの外観および衣類の更なる変更、感情、ジェスチャおよび動作の選択を含む。例えば、ユーザーがホーム環境内で知っている誰かに会ったときに、ユーザーは、アバターが笑ったり、手を振ったり、ジャンプで上下したりすることを選択できる。
【0102】
ユーザーはまた、テキストまたは発話を使用するアバターを介して、互いにコミュニケーションをとることができる。」

(i)「【0107】
発話によってやりとりするためには、ユーザーは、ブルートゥース・ヘッドセット757等の利用可能なマイクを持っている必要がある。本発明の実施例においては、ゲーム・コントローラ751上のボタンを押すことによって、発話オプションを選択することにより、または、ホーム環境を実現しているソフトウェア内の音声アクティビティ検出器を用いて、ホーム環境内でユーザーが話すことができる。話すときに、発話アイコンがアバターの頭上に現れ、例えば、必要に応じて音量設定を調節するように他のユーザーに注意を喚起する。」

(j)「【0130】
ユーザー駆動のアバターに加えて、一つまたは複数のゾーンにおいて、一つまたは複数の自動アバター3031、3032、3033がホーム環境内に存在する。
【0131】
これらの自動アバターは、異なる役割を表し、異なる実体を描写するものであってよい。
【0132】
例えば、ロビーのようなゾーンは、ツアーガイドや警備員に似ている自動アバターを備えることができる。これらのアバターは、ホーム環境の提供者を表し、ホーム環境サーバによって制御されてもよい。一方、商業ゾーンで、各々の仮想店舗では、店員に似せた、それぞれ店舗のユニフォームを着用した一人または複数の自動アバターを備えることができる。明らかに、これらのアバターは、店のオーナーを表す。本発明の実施例において、ホーム環境サーバ2010は、このようなアバターのための位置情報を生成することが可能であり、他のユーザーのアバターのための位置情報とともに送信できる。このような自動アバターのための位置情報は、通常、自動アバターが仮想環境内のある場所にとどまるようにさせるが、不自然に固まっているように見えないように多少はその周囲で移動させる。あるいは、例えば商業ゾーンにおいて、自動店員アバターは、店舗のあちこちに離れた位置で、ユーザーのアバターに付いていくようにしてもよい。」

(k)「【0134】
例えば、本発明の実施例においては、ツアーガイドと対話するとき、上位の会話オプションは、「どこで?」「いつ?」「どうやって私は?」等から成る。これらのオプションから一つを選択すると、適切なサブメニューへとつながる。例えば、「どこで?」>「映画館」、「ボウリング場」、「友人X」となる。これらのサブメニューからのオプションの一つをユーザーが選択すると(それによって、質問は完結する)、アバターは、関連する出口、エリア、または友人のアバターを適切に指し示し、または任意に、関連する出口、エリア、または友人のアバターにユーザーを案内することによって回答をする。
【0135】
同様に、「いつ」という質問の後には、そのロビーにおいて、または他のゾーンにおいて、その日に生じる予定されたイベントに対するオプションが続く(例えば、映画館で上映されている映画)。このようなスケジュールおよびコミュニケーション・オプションは、ホーム環境を初期化するときに、ホーム環境サーバからユーザーのPS3にダウンロードされ、それによって、一人または複数の関連する自動アバターの回答へと統合される最新の情報が提供される。」

(l)「【0139】
しかし、このようなコミュニケーション・メニューを介して利用できるオプションが不十分で、ユーザーのニーズを満たせないという状況が起こると、ユーザーは、発話などによる、もっと自然なメディアを介してアバターとコミュニケーションをとりたいと思う。
【0140】
PS3上のホーム環境を実行しているソフトウェアは、一つあるいは複数のイベントがトリガーとなって、ホーム環境サーバ2010に対して、アラート、または、いわゆる「遭難」信号3002を送るように装備されている。ユーザーがどの自動アバターと対話しているか、あるいは、その自動アバターの近くにいるかによって、あるいはユーザーのアバターがホーム環境内のどこにいるかによって、このイベントは変化してもよい。
【0141】
例えば、「このロビーに問題がある」というような、ある特定のコミュニケーション・メニューオプションが、警備員との対話に利用可能である。このオプション(または利用可能なオプションの定義済みセットまたはサブセット内の他のオプション)の選択が、アラート信号3002のトリガーとなる。他の例において、ユーザーは、自動アバターが認識することができないフリーテキストを入力し、それによって、アラート信号3002を生じさせる。第三の例において、アバターの付近、またはアバターが存在するエリア(例えば店舗)へ入ることにより、アラート信号3002が生じる。第四の例において、ユーザーは、ピア・ツー・ピア音声送信を使用しているアバターとの会話を初期化しようとすることが、アラート信号3002のトリガーとなる。
【0142】
アラート信号3002は、上に概説したようなトリガーイベントによって、ユーザーが対話している、近づいている、あるいは最も近くにいる自動アバターを特定する。」

(m)「【0148】
AAPDは、一つまたは複数のPS3、10Aから10Eに接続され、明確化のため、そのうち5つのみを図11に示す。各々のPS3には、コールセンターのオペレータがスタッフとしてついている(および任意に、一人のコールセンタースタッフが複数台のPS3につく)。
【0149】
ここで図12を参照すると、作動中、第一のステップS3100では、ホーム環境内でユーザーが動作を行い(具体的な方法で自動アバターと対話する等)、アラート信号のトリガーとなる。ステップS3102において、PS3 10は、ホーム環境サーバ2010にアラート信号3002を送信する。ステップS3104において、ホーム環境サーバ2010のアラート信号決定手段2012は、対応するアラートパッケージ3004を組み立て、AAPD3010に送信する。ステップS3106において、AAPDは、利用可能なコールセンターのオペレータをスキャンする(例えば、PS3 10Bのオペレータ)。一旦、利用可能なコールセンターのオペレータが見つかると、アラートパッケージがそのPS3に送信される。
【0150】
コールセンターPS3上のホーム環境ソフトウェアは、ここで記載されているユーザーのためのホーム環境ソフトウェアにかなり類似するものであるが、AAPD3010により転送されるアラートパッケージの受信に対してコール・オペレータに知らせるよう装備されている。このようにステップS3108では、コール・オペレータのPS3上のコールセンター・ホーム環境ソフトウェアが、オペレータに対してアラートパッケージの存在と、アバターの種類(そして、このアラートを受けたときにオペレータがとる役割)を知らせる。利用可能であれば、オペレータに知らせるために、ユーザーと自動アバターの間のそれまでの会話のオンスクリーン・サマリーも提供する。通常のユーザーにはオペレータ機能を提供しないようにすれば、任意に、ユーザーとオペレータは実質的に同じソフトウェアを使用してもよいことはいうまでもない。」

(n)「【0152】
ステップ3110において、オペレータがアラートパッケージを受け入れる場合は、ステップ3112aにおいて、彼らのPS3からAAPDを介して、メッセージ3012がホーム環境サーバ2010に送られ、ステップ3114において、ホーム環境サーバは、現行のユーザーと同じ特定のホーム環境インタンスにオペレータを切り換える。ホーム環境が実質的に同じであるので、コールセンターPS3に対して追加的にデータをロードする必要はほとんど、または全くないので、迅速な切り換えを可能にする。問合せを行ったユーザー以外のユーザーに対する位置データは重要でないので、次回の定期的更新の際(一般的には既に説明したように、2秒以内)に取得できる。さらに、ホーム環境サーバは、自動アバターのステータスが、ユーザーのホーム環境インタンスに参加している別のユーザーのステータスに変わったことを知らせる通知信号3014を、ユーザーのPS3に送信する。
【0153】
好ましくは、自動アバターの位置は、デフォルトでホーム環境サーバ上のソフトウェアによって制御される。その結果、ホーム環境内の全てのユーザーは、これらのアバターは恒常的に描写されているように見える。したがって、サーバによる制御からオペレータによる制御への、位置データのためのソースの切り換えはホーム環境サーバ上で起こる。しかし、自動アバターのための自動コミュニケーション・オプションの使用は、一般的に、ユーザーのPS3上のソフトウェアに対してローカルなものである。従って、他のいずれかの人間のユーザーに対するコミュニケーションであるように扱うために、アバターに対するコミュニケーション・オプションを変更するように通知信号がユーザーのPS3に知らせる。自動アバターの位置がユーザーのPS3により制御されている場合、オペレータからソースの位置データへの切り換えはまた、通知信号により知らされる。
コールセンター・オペレータのPS3は、その次に、上記のような従来の方法で、以前にソフトウェア制御されたアバターを制御するためのオペレータの入力を、ホーム環境サーバに中継する。
【0154】
ステップS3118において、コール・オペレータおよびユーザーが、必要に応じて、コミュニケーション・メニュー、フリーテキスト、または音声を通じて、また、その代わりにまたはそれに加え、ある特定の場所にユーザーを案内しているオペレータ、または、(態度の悪いユーザー間の)問題がある場所までユーザーについていくオペレータとともに環境内を歩いて通過させることによって、アバターを介して他のユーザー同士のペアのようにやりとりすることができる。」

(o)「【0166】
任意に、オペレータは、テキスト・インターフェース、または音声接続によってのみ提示されてもよく、それによって、ユーザーとやりとりをする。しかしながら、もしユーザーのアバターがオペレータによって見えるようにディスプレイ上で描写されていなければ、ユーザーのアバターのジェスチャまたは動作をオペレータが解釈することはできない。」

特許異議申立人財前直樹は、参考資料1には、PS3のホーム環境では、ユーザはアバターに発話させたりジェスチャをさせたりすることができ、ユーザとオペレータは実質的に同じソフトウェアを使用してよく、ユーザの動作によりアラートが発せられると、自動アバターの制御がオペレータに切り替わり、アバターの種類と役割を知らされたオペレータは、オペレータのPS3への入力によって、アバターを介してユーザと音声を通じてやり取りしたり、ユーザのアバターを特定の場所に案内するためにホーム環境内をオペレータのアバターを歩かせたりすることができることが記載されており、ここで、ユーザとオペレータは実質的に同じソフトウェアを使用してよく、オペレータによって制御されるアバターはホーム環境内を歩くことができるから、ユーザがアバターに発話させたりジェスチャをさせるように、オペレータもアバターに発話させたりジェスチャをさせることができると考えるのが自然であり、また、ユーザのPS3から見た場合、オペレータのPS3は、外部装置に他ならず、さらに、オペレータは、アバターの種類に応じてその役割を知らされ、そのアバターの役割を演じる演者に該当するから、したがって、参考資料1には、ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であるオペレータが演者として演じるアバターを操作するデータが外部装置から受信され、このデータには、アバターにジェスチャをさせるために入力したモーションデータと、オペレータが入力した音声データが含まれていることが実質的に開示されており、参考資料1に記載された技術は2010年に公知となっており周知技術であるから、本件発明は、財前1の甲1発明、甲2発明及びこの周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである旨、主張する。

しかしながら、参考資料1は、段落【0008】、【0019】及び【0139】に記載されているように、自動アバターがユーザに対して適切に回答できない場合に、自動アバターの制御がコールセンターのオペレータに切り替わるという技術を開示するものであって、コールセンターのオペレータはゲームの提供側の人間であり、ゲームのプレーヤとは性質が異なる人間であることから、財前1の甲1発明において、先行プレーヤと共通のゲーム空間でプレイできるように、制御プログラムにより動作されていたCキャラクタに割り当てられる後発プレーヤに代えて、ゲームのプレーヤとは性質の異なるゲーム提供側の人間であるコールセンターのオペレータを適用しようとする動機付けは見いだせない。
また、参考資料1の上記記載を上位概念化または一般化して、仮に、ゲームのプレーヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であるオペレータが演者として演じるアバターを操作するデータが外部装置から受信され、このデータには、アバターにジェスチャをさせるために入力したモーションデータと、オペレータが入力した音声データが含まれていることが周知技術であったとしても、オペレータはゲーム提供側の人間であり、ゲームのプレーヤとは性質が異なる人間であることから、財前1の甲1発明において、先行プレーヤと共通のゲーム空間でプレイできるように、制御プログラムにより動作されていたCキャラクタに割り当てられる後発プレーヤ代えて、ゲームのプレーヤとは性質の異なるゲーム提供側の人間であるオペレータを適用しようとする動機付けは見いだせない。

なお、財前1の甲第3号証ないし甲第8号証を考慮しても、これらは、いずれも、財前1の甲1発明が開示するような、先行プレーヤと共通のゲーム空間でプレイできるように、制御プログラムにより動作されていたCキャラクタに割り当てられる後発プレーヤに代えて、参考資料1に記載されるようなコールセンターのオペレータ、または、特許異議申立人財前直樹が周知技術と主張するようなオペレータを適用することについての開示や示唆をするものではないことから、財前1の甲1発明において、先行プレーヤと共通のゲーム空間でプレイできるように、制御プログラムにより動作されていたCキャラクタに割り当てられる後発プレーヤに代えて、コールセンターのオペレータを適用しようとする動機付けは見いだせないという上記判断、及び、財前1の甲1発明において、先行プレーヤと共通のゲーム空間でプレイできるように、制御プログラムにより動作されていたCキャラクタに割り当てられる後発プレーヤ代えて、特許異議申立人財前直樹が周知技術と主張するオペレータを適用しようとする動機付けは見いだせないという上記判断を覆すことはできない。

したがって、本件発明は、財前1の甲1発明、甲2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 訂正後の請求項2ないし10、12及び13に係る発明について
訂正後の請求項2ないし10に係る発明は、本件発明の特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものであり、訂正後の請求項12及び13に係る発明は、本件発明とカテゴリーが相違するのみであって実質的に同一の発明であるから、これらについて主張する異議申立理由の具体的内容は、本件発明に対するものと異なるものではないことから、訂正後の請求項2ないし10、12及び13に係る発明は、上記アと同様の理由により、財前1の甲第1号証ないし甲第8号証及び参考資料1に記載された発明ないし技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

ウ 小括
よって、訂正後の請求項1ないし10、12及び13に係る発明は、財前1の甲1号証ないし甲第8号証及び参考資料1に記載された発明ないし技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反するものとすることはできない。
したがって、財前1の特許異議申立てにおける異議申立理由によっては、訂正後の請求項1ないし10、12及び13に係る特許を取り消すことはできない。

3 財前2の特許異議申立てについて
(1)申立理由
特許異議申立人財前直樹は、財前2の特許異議申立てに係る特許異議申立書おいて、以下の甲第1号証ないし甲第7号証(以下「財前2の甲第1号証ないし財前2の甲第7号証」などという。)を提示し、訂正前の請求項1ないし3、5ないし9、12及び13に係る発明は財前2の甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。

・財前2の甲第1号証:ポペぺポペ、「FFxiv GMに救助された - YouTube」、[online]、公知日2015年11月30日、[令和2年4月17日検索]、インターネット<https://www.youtube.com/watch?v=A342_HqWeWM>

・財前2の甲第2号証:特開2005-296660号公報

・財前2の甲第3号証:まっくろけい、「ソーシャルVR『VRChat』4.5億円の資金調達|Mogura VR - 国内外のVR最新情報」、[online]、公知日2017年9月26日、[令和2年4月20日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20171006033241/https:/www.moguravr.com/social-vr-vrchat/>

・財前2の甲第4号証:特開2018-7828号公報

・財前2の甲第5号証:CarWatch、「SBドライブ、「ITSフォーラム2018」に関連し福岡空港で国内線と国際線をつなぐ自動運転バスをデモ」、[online]、公知日2018年4月26日、[令和2年4月17日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20180428012011/https:/car.watch.impress.co.jp/docs/news/1119377.html>

・財前2の甲第6号証:作者不明、「GM - FF14 Online Wiki」、[online]、保存日2017年7月6日、[令和2年4月20日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20170706112511/http:/ff14wiki.info/?GM>

・財前2の甲第7号証:復帰勢、「FF11のゲーム内での問題はGMコールで解決!| - Return to the FF11 ! !」、[online]、公知日2017年1月16日、[令和2年4月20日検索]、インターネット<https://web.archive.org/web/20171207141439/https://www.ffreturn.net/entry/2017/01/16/210000>

(2)財前2の各甲号証の記載
ア 財前2の甲第1号証
財前2の甲第1号証の動画から、次の事項が看取できる。
(ア)「FFxiv GMに救助された」(動画の下のタイトル)

(イ)画面中央にGm Nuhehinoと付したキャラクタが表示され、走りのモーションをしている。当該キャラクタの名前の左横にGMを示すアイコンが表示されている。チャットウインドウに「[GM]Gm Nuhehino:こんばんは、ゲームマスターです。」とメッセージが表示されている。(タイムカウント、0:00/3:04)

(ウ)チャットウインドウに「Ribon Heart:隣の人も同じ現象みたいです」とメッセージが表示されている。(タイムカウント、0:34/3:04)

(エ)チャットウインドウに「[GM]Gm Nuhehino:承知しました。」とメッセージが表示されている。(タイムカウント、0:36/3:04)

(オ)Gm Nuhehinoと付したキャラクタがジャンプしている。(タイムカウント、01:13/3:04)

(カ)チャットウインドウに「[GM]Gm Nuhehino:いかがでしょう、正常に動けますか?」とメッセージが表示されている。(タイムカウント、1:23/3:04)

(キ)画面の左下のSayの欄に、「問題ないです!」と入力されていることが表示されている。(タイムカウント、1:30/3:04)

(ク)チャットウインドウに「Softbank Mobile:問題ないです!」とメッセージが表示されている。(タイムカウント、1:31/3:04)

(ケ)チャットウインドウに「Gm Nuhehinoは敬礼した。」と表示され、Gm Nuhehinoと付したキャラクタが両足を閉じ胸に手をやる敬礼のモーションをしている。(タイムカウント、1:35/3:04)

(コ)プレイヤがメニューのエモート一覧から“抱き合う”エモートを指のアイコンで選択しており、チャットウインドウに「Softbank Mobileは愛情を込めて、Gm Nuhehinoを抱きしめた。」と表示され、画面中央の白色の服を着たSoftbank.M≪e!?≫と付したキャラクタが抱きしめるモーションをしている。(タイムカウント、1:40/3:04)

(サ)チャットウインドウに「[GM]Gm Nuhehino:安心しました。」とメッセージが表示されている。(タイムカウント、1:41/3:04)

(シ)チャットウインドウに「Gm Nuhehinoは照れた。」と表示され、Gm Nuhehinoと付したキャラクタが手を横に振るモーションをしている。(タイムカウント、1:52/3:04)

(ス)チャットウインドウに「Gm Nuhehinoは別れの挨拶をした。」と表示され、Gm Nuhehinoと付したキャラクタが手を振るモーションをしいている。(タイムカウント、2:43/3:04)

(認定事項)
「FFxiv」は、ファイナルファンタジーシリーズの14作目であって、ゲーム機やパソコンなどのコンピュータのプロセッサにより実行されるゲームプログラムであることは周知の事実であるから、「FFxiv」は、プロセッサ、メモリおよび操作部を備えるコンピュータにより実行されるFFxivというゲームのゲームプログラムであると認められる。

以上から、財前2の甲第1号証には、次の発明(以下「財前2の甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「プロセッサ、メモリおよび操作部を備えるコンピュータにより実行されるFFxivというゲームのゲームプログラムにおいて、
画面中央にGm Nuhehinoと付したキャラクタを表示し、走りのモーションをさせ、当該キャラクタの名前の左横にGMを示すアイコンを表示し、チャットウインドウに「[GM]Gm Nuhehino:こんばんは、ゲームマスターです。」とメッセージを表示し、
チャットウインドウに「Ribon Heart:隣の人も同じ現象みたいです」とメッセージを表示し、
チャットウインドウに「[GM]Gm Nuhehino:承知しました。」とメッセージを表示し、
Gm Nuhehinoと付したキャラクタをジャンプさせ、
チャットウインドウに「[GM]Gm Nuhehino:いかがでしょう、正常に動けますか?」とメッセージを表示し、
画面の左下のSayの欄に、「問題ないです!」と表示し、
チャットウインドウに「Softbank Mobile:問題ないです!」とメッセージを表示し、
チャットウインドウに「Gm Nuhehinoは敬礼した。」と表示し、Gm Nuhehinoと付したキャラクタが両足を閉じ胸に手をやる敬礼のモーションをさせ、
プレイヤがメニューのエモート一覧から“抱き合う”エモートを指のアイコンで選択すると、チャットウインドウに「Softbank Mobileは愛情を込めて、Gm Nuhehinoを抱きしめた。」と表示し、画面中央の白色の服を着たSoftbank.M≪e!?≫と付したキャラクタに抱きしめるモーションをさせ、
チャットウインドウに「[GM]Gm Nuhehino:安心しました。」とメッセージを表示し、
チャットウインドウに「Gm Nuhehinoは照れた。」と表示し、Gm Nuhehinoと付したキャラクタに手を横に振るモーションをさせ、
チャットウインドウに「Gm Nuhehinoは別れの挨拶をした。」と表示し、Gm Nuhehinoと付したキャラクタに手を振るモーションをさせる
ゲームプログラム。」

イ 財前2の甲第2号証
財前2の甲第2号証には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。
(ア)「【0003】
シングルプレイヤゲームでは、プレイヤは、共通ゲーム空間で敵および/または仲間キャラクタと対話する主要キャラクタの役割を演じることが多い。敵および仲間キャラクタ(以下では「ノンプレイヤキャラクタ」または「NPC」)の挙動は、通常、プログラムで定義された人工知能(AI)またはその他のプログラムルーチンによって制御される。
【0004】
以下の開示では、ゲームの開始時またはゲーム中にノンプレイヤキャラクタ(NPC)制御を人間のプレイヤに移行して、各ゲームセッションで新しい予測不可能なNPC挙動を導入するというオプションを含むゲームアーキテクチャについて述べる。一実施形態では、シングルプレイヤゲームが、インターネットなどのネットワークに接続されたホストプレイヤによってプレイされる。プレイ中、ホストプレイヤの知らないうちに、やはりネットワークに接続されたリモートプレイヤによって、ゲームはゲートクラッシュ(gatecrash、押しかけ)される。このゲートクラッシャ(gatecrasher)は、ホストプレイヤと戦う敵キャラクタ、またはホストプレイヤと協力する仲間キャラクタの役割を演じることができる。ゲートクラッシャは、ゲームの成り行きを変え、ホストプレイヤが以前のゲーム(プログラムで定義されたルーチンによってNPCが制御されていたゲーム)に基づいて予期することになったかもしれない挙動とは異なる仕方で挙動する。この驚きの要素は、通常なら反復的でつまらないかもしれないゲーム体験に、興奮および予測不可能性を加える。」

(イ)「【0007】
以下、ゲートクラッシュ方法およびシステムのいくつかの実施形態を、ゲームコンソールによってまたはパーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータによって実施されるコンピュータ実行可能命令のコンテキストで述べる。一実施形態では、例えばこれらのコンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、CD‐ROMなどのコンピュータ可読媒体に記憶することができる。
【0008】
図1は、本発明のいくつかの実施形態によりコンピュータゲーム、ビデオゲーム、および/またはその他の電子ゲームを実施するのに適したゲーミングシステム100を示す概略図である。この実施形態の一態様では、ゲーミングシステム100は、ゲームコンソール102に動作可能に接続された複数のコントローラ104(第1のコントローラ104aおよび第2のコントローラ104bとして個別に識別されている)を含む。・・・コントローラ104には、様々なユーザ対話機構が備わるものとすることができる。例えば図示の実施形態では、各コントローラ104は、2つのサムスティック132aおよび132b、Dパッド134、様々なボタン136、および対応するトリガ138を備える。」

(ウ)「【0012】
・・・同様に、ゲーミングシステム100はまた、ポータブル媒体ドライブ106に挿入されたDVDから、またはハードディスクドライブ上のファイル(例えばアクティブストリーミングフォーマットのファイル)から、またはオンラインストリーミングソースから、ディジタルオーディオ/ビデオゲームを再生することができる。
【0013】
・・・本発明の態様で使用するのに適すると考えられる周知のコンピューティングシステム、環境、および/または構成の例には、パーソナルコンピュータ(PC)、サーバコンピュータ、パーソナルディジタルアシスタント(PDA)やラップトップPCやタブレットPCなどのポータブルデバイスおよびハンドヘルドデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、セットトップボックス、プログラム可能な民生用電子機器、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、電子ゲームコンソール、ならびに、これらのシステムまたはデバイスの1つまたは複数を含む分散コンピューティング環境が含まれる。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態により構成されたゲーミングシステム100の機能コンポーネントを示すブロック図である。この実施形態の一態様では、ゲームコンソール102は、中央処理装置(CPU)200およびメモリコントローラ202を備える。メモリコントローラ202は、様々なタイプのメモリへのプロセッサアクセスを容易にすることができる。このようなメモリには、フラッシュ読取り専用メモリ(ROM)204、ランダムアクセスメモリ(RAM)206、ハードディスクドライブ208、ポータブル媒体ドライブ106を含めることができる。」

(エ)「【0019】
8つのメモリユニット140a?140hが、1コントローラ構成あたり2つのメモリユニット内の4つのコントローラ104a?104dに接続可能であるのが示されている。各メモリユニット140は、ゲーム、ゲームパラメータ、その他のデータを記憶することのできる追加の記憶域を提供する。メモリユニット140がコントローラに挿入されると、メモリコントローラ202からメモリユニット140にアクセスすることができる。」
【0020】
前述のゲームコンソール102は、様々な娯楽領域を通してユーザを移動させるための一貫したユーザインタフェースおよびナビゲーション階層を提供する一様メディアポータルモデルを実現することができる。このポータルモデルは、ポータブル媒体ドライブ106に挿入された媒体のタイプにかかわらず、ゲームデータ、オーディオデータ、ビデオデータを含めた異なる複数のタイプのメディアコンテンツにアクセスするための好都合な方法を提供する。」

(オ)「【0024】
本発明によりゲーミング環境300で実施することのできるシングルプレイヤモードのゲームのゲートクラッシュの一例は、次のとおりである。この例で、ホストプレイヤ320は、ホストプレイヤゲーミングシステム100a上でシングルプレイヤモードのゲームをしている。シングルプレイヤモードでは、ゲームにおけるNPCは、プログラムで定義されたAIおよび/またはその他のルーチンによって制御される。ゲーム中、ホストプレイヤ320の知らないうちに、ゲートクラッシャ322のうちの1人(例えばゲートクラッシャ322a)がネットワーク302を介してゲームに割り込み、NPCのうちの1つの制御を取る。このNPCは、主要キャラクタを助ける仲間キャラクタであってもよく、あるいは主要キャラクタと競う敵キャラクタであってもよい。」

(カ)「【0039】
図5は、本発明の一実施形態により進行中のシングルプレイヤモードのゲーム中にゲートクラッシュを実施するルーチン500を示す流れ図である。この実施形態の一態様では、ホストプレイヤ320がシングルプレイヤモードでゲームをプレイしている間に、ルーチン500の全部または一部を図3のホストプレイヤゲーミングシステム100aによって実施することができる。ブロック502で、ルーチン500は、ホストプレイヤ320から制御入力を受け取る。ブロック504で、ルーチン500は、ホストプレイヤ320からの制御入力に応答して、主要キャラクタなどの第1のゲームキャラクタを制御する。ブロック506で、ルーチン500は、事前定義済みルーチンに従って、NPCなどの第2のキャラクタを制御する。例えば、NPCは、典型的なFPSシナリオで主要キャラクタと戦うものとすることができる。ブロック508で、ゲームが進行する間に、ルーチン500は、ゲートクラッシャ322のうちの1人から、このゲートクラッシャ322がNPCの制御を取るという選択を受け取る。この時点から先は、このNPCは事前定義済みルーチンではなくこのゲートクラッシャ322によって制御される。ブロック510で、例えば、ルーチン500はゲートクラッシャ322から制御入力を受け取る。ブロック512で、ルーチン500は、ゲートクラッシャからの制御入力に応答してNPCを制御する。」

財前2の甲第2号証に開示されたノンプレイヤキャラクタ(NPC)の挙動は、プログラムで定義された人工知能(AI)および/またはその他のルーチンによって制御されるから、ノンプレイヤキャラクタ(NPC)はユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないキャラクタである。
また、NPCは、NPCの挙動を制御するための事前定義済みルーチンに基づいて制御されるが、ルーチンにしたがってNPCを制御するためには、当然、NPCの動作に必要なデータ(モーションデータ)が必要となることは技術的にみて明らかである。
そして、NPCの動作に必要なモーションデータは、コンピュータ実行命令と同様に、ハードディスク、フロッピーディスク、CD‐ROMなどのコンピュータ可読媒体、あるいは、ROM等などのメモリに予め記憶されていることも技術的にみて明らかである。

したがって、財前2の甲第2号証には、次の発明(以下「財前2の甲2発明」という。)が記載されている。
「プロセッサ(中央処理装置200)、メモリおよび操作部(コントローラ104)を備えるコンピュータにより実行されるゲームプログラムであって、
ゲームプログラムは、
シングルプレイヤモードにおいて、プロセッサに、ユーザ(ホストプレイヤ320)および他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(NPC)の動作(挙動)を制御するモーションデータであって、メモリに予め記憶されているモーションデータに基づいてNPCを動作させ、操作部を介して入力されたユーザからの制御入力に応答して主要キャラクタを制御してゲームを進行させるステップを有し、
ゲームが進行する間に、リモートプレイヤであるゲームクラッシャ322によって、ゲームがゲートクラッシュされ、前記NPCはリモートプレイヤであるゲートクラッシャ322からの制御入力に応答して制御される、
ゲームプログラム、および、コンピュータがゲームプログラムを実行する方法、並びに、ゲームプログラムを実行するプロセッサを備えたコンピュータ。」

ウ 財前2の甲第3号証
財前2の甲第3号証には、次の記載がある。
(a)「『VRChat』はソーシャルVRのプラットフォームで、『Facebook Spaces』や『AltspaceVR』のように、ユーザーはオンラインのバーチャル空間で他の参加者と交流することができます。ユーザーは人間やロボット、宇宙人や初音ミクなどの様々なアバターに扮して、会話したり、ゲームをプレイしたり、他のユーザーが製作した何百ものバーチャル世界を探検することができます。
(動画表示画面)
また、プレイヤーは参加者と会話するだけでなく、キャプチャ・ザ・フラッグやバトルディスク、ボーリングなどのゲームで遊ぶこともできます。使用するアバターは唇の動きが同期するリップシンク、視線の動きを反映させるアイトラッキング、まばたきなども再現が可能で、Unity対応のSDKを使用した独自のアバターや世界を制作して公開することもできます。」(「『VRChat』とは」の欄)

財前2の甲第3号証に開示された「VRChat」は、ユーザがオンラインのバーチャル空間でアバターに扮して、他の参加者と会話したり、ゲームで遊ぶことができるゲームプログラムであり、アイトラッキング、まばたきなども再現が可能であるから、ユーザが使用するアバターの動作を指定するためのデータには、ユーザが入力したアバターの動作を指示するためのモーションデータとしてのモーションキャプチャーデータ、および、音声データが含まれていると解される。さらに、アバターの動作はユーザに提示されていると解される。
また、使用するアバターは唇の動きが同期するリップシンクが可能であることから、使用するアバターに発話させていると解される。

以上から、財前2の甲第3号証には、次の発明(以下、「財前2の甲3発明」という。)が記載されている。
「コンピュータにより実行され、オンラインのバーチャル空間でユーザが他の参加者と交流することができるゲームプログラムであって、ユーザが使用するアバターの動作を指示するデータは、ユーザが入力したモーションデータとしてのモーションキャプチャーデータとユーザが入力した音声データを含むデータであり、アバターの動作を指示するデータに含まれる音声データに基づいて、アバターに発話させ、アバターの動作を指示するデータに含まれるモーションデータに基づいて、アバターを動かし、アバターの動きをユーザに提示する、ゲームプログラム。」

エ 財前2の甲第4号証
財前2の甲第4号証には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。
(ア)「【0044】
図1は、本実施形態におけるゲームシステム1000の構成の一例を示す図である。本実施形態のゲームシステム1000は、VR体験(仮想現実体験)をユーザに提供する仮想現実体験提供装置である。換言すると、ゲームシステム1000は、ユーザすなわちプレーヤ2がヘッドトラッキング機能付きのVR(VirtualReality)型のVR-HMD1200を装着して、VRゲームを実行するためにデザインされたコンピュータシステムである。
【0045】
具体的には、ゲームシステム1000は、通信回線9に接続することで相互にデータ通信が可能なサーバシステム1100とVR-HMD1200とを含む。」

(イ)「【0047】
サーバシステム1100は、本体装置1101と、キーボード1106と、タッチパネル1108と、ストレージ1140とを有するコンピュータシステムであり電子機器である。」

(ウ)「【0053】
ユーザ端末1500は、プレーヤである登録済ユーザがゲームプレイのために個別に使用するコンピュータシステムであって、通信回線9を介してサーバシステム1100にアクセスしてオンラインゲームを実行できる電子機器である。本実施形態のユーザ端末1500は、ユーザ端末1500をケース1520に装着することで、VR-HMD1200としてプレーヤ2の頭部に装着可能になる。」

(エ)「【0055】
ユーザ端末1500は、方向入力キー1502と、ボタンスイッチ1504と、画像表示デバイス兼接触位置入力デバイスとして機能するタッチパネル1506と、スピーカ1510と、内蔵バッテリー1509と、マイク1512と、制御基板1550と、コンピュータ読み出し可能な記憶媒体であるメモリカード1540からデータを読み書きできるメモリカード読取装置1542と、を備える。」

(オ)「【0065】
[ゲームの説明]
図2は、本実施形態のVR体験としてのゲームの概要を説明するための図である。VR空間(仮想3次元空間)として構築されたゲーム空間には、ライブステージの演技場であるステージ4と、複数の観覧席6とが用意され、NPC(ノンプレーヤキャラクタ)の演技キャラクタであるアイドルキャラクタ8(8a,8b,…)がステージ4で演技する。
【0066】
ライブステージの内容は、楽曲の歌唱や、楽器の演奏、ダンス、大道芸などのライブパフォーマンスを適宜設定可能である。本実施形態では、振り付けをつけた歌唱曲を歌うものとする。」

(カ)「【0115】
[機能構成の説明]
図11は、本実施形態におけるサーバシステム1100の機能構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態におけるサーバシステム1100は、操作入力部100sと、サーバ処理部200sと、音出力部390sと、画像表示部392sと、通信部394sと、サーバ記憶部500sとを備える。」

(キ)「【0117】
サーバ処理部200sは、例えばCPUやGPU等のマイクロプロセッサや、ASIC、ICメモリなどの電子部品によって実現され、操作入力部100sやサーバ記憶部500sを含む各機能部との間でデータの入出力制御を行う。
【0118】
そして、本実施形態のサーバ処理部200sは、ユーザ管理部202と、ゲーム進行制御部210と、計時部280sと、音生成部290sと、画像生成部292sと、通信制御部294sとを含む。」

(ク)「【0121】
そして、本実施形態のゲーム進行制御部210は、・・・音楽出力制御部218と、演技キャラクタ動作制御部220と、・・・を有する。」

(ケ)「【0126】
音楽出力制御部218は、プレイ中に所与の音楽を出力させる制御を行う。本実施形態では、選択設定されたライブステージに演目として予め設定されている歌唱曲の出力制御を行う。
【0127】
演技キャラクタ動作制御部220は、演技キャラクタ毎にその動作を制御する。本実施形態では、アイドルキャラクタ8(8a,8b,…)毎にステージ振り付けをさせつつ、振り付け正面方向の変更制御を行う。」

(コ)「【0147】
図12は、本実施形態におけるサーバ記憶部500sが記憶するプログラムやデータの例を示す図である。本実施形態におけるサーバ記憶部500sは、サーバシステムプログラム501と、サーバプログラム503と、配信用ゲームクライアントプログラム505と、ライブステージ初期設定データ508と、アイドルキャラクタ初期設定データ510と、歌唱曲別音声データ550と、アイテム初期設定データ560と、観覧席ポイントテーブル562と、身支度ポイントテーブル564と、視線ポイントテーブル566と、を記憶する。」

(サ)「【0153】
アイドルキャラクタ初期設定データ510は、アイドルキャラクタ8(8a,8b,…:図2参照)別に用意され、当該アイドルキャラクタを定義する各種データを格納する。1つのアイドルキャラクタ初期設定データ510は、例えば図13に示すように、1)固有のアイドルキャラクタID512と、2)歌唱曲別のステージ衣装を着用したアイドルキャラクタの姿を定義する歌唱曲別基本モデルデータ516と、3)歌唱曲別第1パート用モーションデータ518と、・・・を含む。」

(シ)「【0185】
図19は、本実施形態におけるユーザ端末1500の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態のユーザ端末1500は、操作入力部100と、端末処理部200と、音出力部390と、画像表示部392と、通信部394と、端末記憶部500とを備える。」

(ス)「【0190】
端末処理部200は、例えばCPUやGPU等のマイクロプロセッサや、ASIC、ICメモリなどの電子部品によって実現され、操作入力部100や端末記憶部500を含む各機能部との間でデータの入出力制御を行う。そして、所定のプログラムやデータ、操作入力部100からの操作入力信号、サーバシステム1100から受信した各種データに基づいて各種の演算処理を実行して、ユーザ端末1500の動作を制御する。」

(セ)「【0193】
ゲーム画面表示制御部262は、サーバシステム1100から受信した各種データに基づいてゲーム画面を表示するための制御を行う。当該構成では、ゲーム空間画像(例えば、3DCG画像など)をサーバシステム1100にて生成する構成とするが、ゲーム空間画像をユーザ端末1500で生成する構成も可能である。その場合、ゲーム画面表示制御部262は、例えば3DCGを生成するための仮想3次元空間に配置されたオブジェクトの制御を含むこととなる。」

(ソ)「【0215】
サーバシステム1100は、第1パートの進行制御の開始とともに、当該ライブステージの演目とされる歌唱曲に対応するの再生制御を開始する。そして、アイドルキャラクタ8(8a,8b,…)を、それぞれの歌唱曲別第1パート用モーションデータ518(図13参照)に従ってモーション制御する(ステップS22)。」

以上から、財前2の甲第4号証には、次の発明が記載されている。
「ユーザ端末1500のコンピュータにより実行されるゲームプログラムであって、
コンピュータは、アイドルキャラクタ8の動作を指図するデータ(歌唱曲別音声データ550や歌唱曲別第1パート用モーションデータ518)を記憶するサーバシステム1100と通信可能に構成されており、
ゲームプログラムは、端末処理部200におけるコンピュータのマイクロプロセッサに
サーバシステム1100から配信される、NPC(ノンプレーヤキャラクタ)であるアイドルキャラクタ8の動作を指示するデータを受信するステップと、
受信した、アイドルキャラクタ8の動作を指図するデータに基づいて、アイドルキャラクタ8を動作させるステップを実行させる、ゲームプログラム。」

オ 財前2の甲第5号証
財前2の甲第5号証には、次の記載がある。
(a)「車内に声優によるバーチャルバスガイドが登場したSBドライブの自動運転バス。SpiralMindの「アバターテレポーテーション」技術を活用」と題したバーチャルバスガイドによるアバターを示す画像(1枚目の女性の画像)

(b)「車内に声優によるバーチャルバスガイドが登場したSBドライブの自動運転バス。SpiralMindの「アバターテレポーテーション」技術を活用」(1枚目の女性の画像の下のタイトル)

(c)「ソフトバンクグループのSBドライブは4月26日、九州の福岡空港で国内線と国際線をつなぐ自動運転バスのデモ走行を行なった。」(1枚目の女性の画像の下)

(d)「自動運転「ポンチョ」は、羽田空港でANA(全日本空輸)とレベル4自動運転、レベル3自動運転を行なったものと同じ個体。今回のレベル3自動運転ではSpiralMindの「アバターテレポーテーション」技術を活用し、バス内の映像・音声を東京渋谷に通信網を用いて送信。本職の声優が、車内でバーチャルバスガイドとして自動運転を解説してくれる。SpiralMindのスタッフによると、この技術は声優の表情をiPhone Xの顔認証技術を用いて読み取り、まばたきや顔の向きなどを3Dで連動再現。3DエンジンにはUnityが用いられていた。」(動画面の下)

以上の記載から、財前2の甲第5号証には、次の発明が記載されている。
「東京にいる声優の表情をiPhoneXの顔認証技術を用いて読み取り、表情と声を通信網を介して福岡のバス内に伝え、バス車内でバーチャルバスガイドの表情と声に連動させる連動再現方法。」

カ 財前2の甲第6号証には、次の記載がある。
(ア)「・ゲームマスターとは、一般的にオンラインゲーム内で発生するプレイヤーに関する問題を対処するための組織名称である。またGMの職に就いている個々メンバーもGMと呼ぶ。
・具体的には、スタックなどゲームを正常に続けることができなくなってしまったプレイヤーの救済、外部プログラムなど不正行為の取り締まり、アイテムデータの復活などを行う。
・GMの活動方針はGMポリシーとして公開されており、FF11でのGMポリシーは公式サイトのこちらのページで確認できる。」(「GM(Game Master/ゲームマスター)」の欄)

(イ)「・ゲーム内で連絡が必要な場合、tellを使って連絡する場合がある。
・その際には次のように表示される。
[GM]Gm Bylects>>こんにちは。」(「GMからのtell」の欄)

(ウ)「・GMキャラクターは、通常のプレイヤーのバザー/LSアイコンの位置に特殊なアイコンが表示されている。」(「GMアイコン」の欄)

(エ)「・CEDEC2009において、FF11の運営拠点が東京、ロサンゼルス、ロンドンの3箇所に設置されており、時差を利用して全サーバーを監視、インゲームを含むサポート業務を行っていることが報告されている。
・FF11では2007年時点でGMチームが200名を超える規模であることが明らかにされている。
・なお、インゲームのGMコールも年間10万件あるという。
電話、メール、Webチャットが10万件、インゲームのGMコールが10万件、合わせて20万件のコールを1年間に捌いているという。(GAME Watch参考記事)」(「GMチームの実態」の欄)

(認定事項)
上記「GMチームの実態」の記載から、GMは、ゲーム提供者側の人であって、ゲームを楽しむプレイやでないことは明らかである。

以上から、財前2の甲第6号証には、
「GMは、スタックなどのゲームを正常に続けることができなくなってしまったプレイヤーの救済、外部プログラムなどの不正行為の取り締まり、アイテムデータの復活などを行うゲーム提供者側の人であって、ゲームを楽しむプレイヤではない」
という技術事項が記載されている。

キ 財前2の甲第7号証には、次の記載がある。

「MMO等、管理者の存在する世界においてのゲームの進行を妨げる様々な障害、不具合に関しプレイヤーをサポートする特殊な権限を持つスタッフのこと。またスタッフが権限を行使する際に用いる専用キャラ。主な仕事はスタック(PCの移動不可状態)の解除、ハラスメント行為に対する警告など。リアルで言えば警官と似ている。プレイヤーがヴァナ快適に遊ぶために影で支えてくれるスタッフなのである。」(「GMとは?」の欄)

以上から、財前2の甲第7号証には、
「GMは、管理者の存在する世界においてのゲームの進行を妨げる様々な障害、不具合に関しプレイヤーをサポートする特殊な権限を持つスタッフである」
という技術事項が記載されている。

(3)当審の判断
ア 本件発明について
(ア)対比
本件発明と財前2の甲1発明とを対比する。
(a)財前2の甲1発明の「プロセッサ、メモリおよび操作部を備えるコンピュータにより実行されるFFxivというゲームのゲームプログラム」は、本件発明の「ゲームプログラムであって、前記ゲームプログラムは、プロセッサ、メモリおよび操作部を備えるコンピュータにより実行されるものであ」ることに相当する。

(b)GMはゲームマスターのことであり、ゲームの進行を妨げる様々な障害、不具合に関しプレイヤーをサポートするスタッフであって、ゲームのユーザではないことは技術常識であること(財前2の甲第6号証及び甲第7号証)に鑑みれば、財前2の甲1発明において、「Gm Nuhehinoと付したキャラクタ」の「走りのモーション」、「ジャンプ」、「両足を閉じ胸に手をやる敬礼のモーション」、「手を横にフルモーション」及び「手をフルモーション」の種々の「モーション」並びに「チャットウインドウ」の「[GM]Gm Nuhehino:こんばんは、ゲームマスターです。」、「[GM]Gm Nuhehino:承知しました。」、「[GM]Gm Nuhehino:いかがでしょう、正常に動けますか?」、「[GM]Gm Nuhehino:安心しました。」の種々の「メッセージ」の「表示」が、「FFxiv」が実行されるコンピュータと通信可能に構成された外部のGMの装置においてGMの操作にしたがって生成される、「Gm Nuhehinoと付したキャラクタ」に関する種々の「モーション」と種々の「メッセージ」に対応するデータに基づくものであり、「FFxiv」というゲームプログラムが、コンピュータのプロセッサに、このデータを受信させ、これに基づいて、「Gm Nuhehinoと付したキャラクタ」に関する種々の「モーション」と種々の「メッセージ」の「表示」という「Nuhehinoと付したキャラクタ」の動作をさせることによりゲームの一部分を進行させるステップを実行させるものであることは明らかである。ここで、「Nuheninoと付したキャラクタ」は、GMが操作対象とするキャラクタであり、ゲームのユーザが操作するキャラクタではないことから、ノンプレイヤキャラクタ(NPC)といえる。
したがって、財前2の甲1発明は、本件発明の「前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに」、「外部装置から受信した第2動作指図データに基づいてゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(以下、NPC)を動作させることにより第2パートを進行させるステップ」「を実行させ」ることに相当する構成を有するといえる。

(c)上記(b)で検討した、外部のGMの装置においてGMの操作にしたがって生成される、「Gm Nuhehinoと付したキャラクタ」の「走りのモーション」、「ジャンプ」、「両足を閉じ胸に手をやる敬礼のモーション」、「手を横にフルモーション」及び「手をフルモーション」の種々の「モーション」に対応するデータは、本件発明の「前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力したモーションデータ」に相当する。
また、本件発明の「前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力した音声データ」と、上記(b)で検討した、外部のGMの装置においてGMの操作にしたがって生成される、「[GM]Gm Nuhehino:こんばんは、ゲームマスターです。」、「[GM]Gm Nuhehino:承知しました。」、「[GM]Gm Nuhehino:いかがでしょう、正常に動けますか?」、「[GM]Gm Nuhehino:安心しました。」の種々の「メッセージ」に対応するデータとは、「前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力した発言データ」の点で共通する。

そうすると、本件発明と財前2の甲1発明とは、
「ゲームプログラムであって、
前記ゲームプログラムは、プロセッサ、メモリおよび操作部を備えるコンピュータにより実行されるものであり、
前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに、
外部装置から受信した第2動作指図データに基づいてゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(NPC)を動作させることにより第2パートを進行させるステップ、
を実行させ、
前記第2動作指図データは、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力したモーションデータと、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力した発言データと、を含むデータである、ゲームプログラム。」
の点で一致し、次の点(以下「財前2の相違点1」及び「財前2の相違点2」という。)で相違する。

(財前2の相違点1)
本件発明は、「前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに、ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(NPC)の動作を指定する動作指図データであって、前記メモリに予め記憶されている第1動作指図データに基づいて前記NPCを動作させ、前記操作部を介して入力された前記ユーザの入力操作に応じて第1パートを進行させるステップ」「を実行させ」るのに対して、財前2の甲1発明では、この点が不明である点。

(財前2の相違点2)
「前記第2動作指図データ」に「含」まれる、「前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力した」発言データについて、本件発明は、「音声データ」であるのに対して、財前2の甲1発明は、チャットウインドウにおける表示データであって、音声データではない点。

(イ)判断
(財前2の相違点1について)
特許異議申立人財前直樹は、財前2の特許異議申立てに係る特許異議申立書において、訂正前の請求項1に係る発明と財前2の甲1発明との相違点についての訂正前の請求項1に係る発明の構成である「前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに、ユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(NPC)の動作を指定する動作指図データであって、前記メモリに予め記憶されている第1動作指図データに基づいて前記NPCを動作させ、前記操作部を介して入力された前記ユーザの入力操作に応じて第1パートを進行させるステップ」「を実行させ」る点について、財前2の甲2発明に開示されたゲームプログラムは、プロセッサに、シングルプレイヤモードにおいて、操作部を介して入力されたユーザの入力操作に応じてゲームのパートを進行させており、これは訂正前の請求項1に係る発明の第1のパートに対応し、そして、シングルプレイヤモードにおいて、ユーザ(ホストプレイヤ320)および他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(NPC)の動作(挙動)を制御するモーションデータであって、メモリに予め記憶されているモーションデータに基づいてNPCを動作させており、このノンプレイヤキャラクタ(NPC)の動作(挙動)を制御するモーションデータは、動作指図データに他ならず、してみると、財前2の甲1発明との相違点に係る訂正前の請求項1に係る発明の構成は、財前2の甲2発明に示されており、そして、財前2の甲1発明も財前2の甲2発明もユーザの操作によってキャラクタを動作させるゲームという共通分野に属するものであるから、財前2の甲1発明に財前2の甲2発明を適用し、ゲームプログラムが、プロセッサに、NPCの動作を指定する動作指図データであって、メモリに予め記憶されている動作指図データに基づいてNPCを動作させて第1パートを進行させるステップを有するものとすることは、当業者が容易になし得たことである旨、主張する。

しかしながら、財前2の甲2発明のNPCは、ゲームクラッシャ322であるプレイヤによって制御されることとなるNPCであり、財前2の甲1発明のGMはプレイヤとは性質の異なるゲーム提供側の人間であることから、財前2の甲2発明のプレイヤによって制御されることとなるNPCを、財前2の甲1発明の、プレイヤとは性質の異なるゲーム提供側の人間であるGMに対して適用しようとする動機付けは見いだせない。

特許異議申立人財前直樹は、令和2年10月27日付けの意見書において、上記2(3)ア(イ)に記載した参考資料1には、PS3はプロセッサ、メモリおよび操作部を備えるコンピュータであり、自動アバターはゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないNPCであり、自動アバターの動作はユーザのPS3が制御し、ユーザが操作するアバターはホーム環境を移動しゲームをしたりビリヤードやボウリングをしたりできることが記載され、ここで、自動アバターがユーザのPS3の制御により動作する際に、メモリに予め記憶されているモーションデータに基づいて動作していると考えるのが自然であることから、財前2の相違点1は、上記参考資料1に開示されている周知技術であり、財前2の甲1発明に甲2発明及び当該周知技術を適用して当業者が容易に想到し得る旨主張する。

しかしながら、仮に、上記意見書のとおり、財前2の相違点1が、上記参考資料1に開示されているような周知技術であって、この周知技術を参酌し得たとしても、財前2の甲2発明のプレイヤによって制御されることとなるNPCを、財前2の甲1発明のプレイヤとは性質の異なるゲーム提供側の人間であるGMに対して適用しようとする動機付けが見いだせないとした上記判断を左右するものではない。

なお、財前2の相違点1について、財前2の甲2発明に差し替えて、上記意見書で上記参考資料1に開示されているとする上記周知技術を財前2の甲1発明に適用することについては、実質的に新たな理由及び証拠を採用することとなり、公益に及ぼす影響や特許異議の申立ての期間が特許掲載公報発行の日から6月以内に制限されている趣旨を踏まえ、訂正により追加された事項についての見解など訂正の請求の内容に付随して生じる理由である場合や、適切な取消理由を構成することが一見して明らかな場合に該当するともいえないことから、採用しないこととした。

また、財前2の甲3発明である「コンピュータにより実行され、オンラインのバーチャル空間でユーザが他の参加者と交流することができるゲームプログラムであって、ユーザが使用するアバターの動作を指示するデータは、ユーザが入力したモーションデータとしてのモーションキャプチャーデータとユーザが入力した音声データを含むデータであり、アバターの動作を指示するデータに含まれる音声データに基づいて、アバターに発話させ、アバターの動作を指示するデータに含まれるモーションデータに基づいて、アバターを動かし、アバターの動きをユーザに提示する、ゲームプログラム。」は、オンラインのバーチャル空間で、ゲームのユーザ同士が、モーションデータ及び音声データに基づいてアバターの動作及び発話を実行させる技術を開示するものの、これを参酌しても、財前2の甲2発明のプレイヤによって制御されることとなるNPCを、財前2の甲1発明のプレイヤとは性質の異なるゲーム提供側の人間であるGMに対して適用しようとする動機付けが見いだせないとした上記判断を左右するものではない。

なお、財前2の甲第4号証ないし甲第7号証を考慮しても、これらは、いずれも、財前2の甲2発明に開示されるようなゲームクラッシャ322であるプレイヤによって制御されることとなるNPCを、財前2の甲1発明に開示されるようなGMに対して適用することについての開示や示唆をするものではないことから、財前2の甲2発明のプレイヤによって制御されることとなるNPCを、財前2の甲1発明のGMに対して適用しようとする動機付けは見いだせないという上記判断を覆すことはできない。

したがって、本件発明は、財前の相違点2について検討するまでもなく、財前2の甲1発明、甲2発明、甲3発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 訂正後の請求項2ないし3、5ないし9、12及び13に係る発明について
訂正後の請求項2ないし3、5ないし9に係る発明は、本件発明の特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものであり、訂正後の請求項12及び13に係る発明は、本件発明とカテゴリーが相違するのみであって実質的に同一の発明であるから、これらについて主張する異議申立理由の具体的内容は、本件発明に対するものと異なるものではないことから、訂正後の請求項2ないし3、5ないし9、12及び13に係る発明は、上記アと同様の理由により、財前2の甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明ないし技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

ウ 小括
よって、訂正後の請求項1ないし3、5ないし9、12及び13に係る発明は、財前2の甲1号証ないし甲第7号証に記載された発明ないし技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反するものとすることはできない。
したがって、財前2の特許異議申立てにおける異議申立理由によっては、訂正後の請求項1ないし3、5ないし9、12及び13に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び粟野の特許異議申立て、財前1の特許異議申立て及び財前2の特許異議申立ての特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし10、12及び13に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1ないし10、12及び13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項11は、訂正により削除された。これにより、請求項11に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲームプログラムであって、
前記ゲームプログラムは、プロセッサ、メモリおよび操作部を備えるコンピュータにより実行されるものであり、
前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに、
ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれもが操作しないノンプレイヤキャラクタ(以下、NPC)の動作を指定する動作指図データであって、前記メモリに予め記憶されている第1動作指図データに基づいて前記NPCを動作させ、前記操作部を介して入力された前記ユーザの入力操作に応じて第1パートを進行させるステップと、
外部装置から受信した第2動作指図データに基づいて前記NPCを動作させることにより第2パートを進行させるステップと、
を実行させ、
前記第2動作指図データは、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力したモーションデータと、前記ゲームプレイヤであるユーザおよび他のユーザのいずれとも異なる者であって前記NPCを演じる演者の入力した音声データと、を含むデータである、ゲームプログラム。
【請求項2】
前記第2パートを進行させるステップは、前記第2動作指図データに含まれる音声データに基づいて前記NPCに発話させ、前記第2動作指図データに含まれるモーションデータに基づいて前記NPCを動かす、請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記第2パートを進行させるステップは、前記外部装置から前記第2動作指図データを受信したことをトリガにして、該第2動作指図データに基づいて前記NPCを動作させる、請求項1または2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】
前記第2パートを進行させるステップは、前記外部装置または他の装置から予め指定された時刻に、前記第2動作指図データを受信する、請求項3に記載のゲームプログラム。
【請求項5】
前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに、
前記第2パートの進行中に、前記操作部を介して前記コンピュータに入力された前記ユーザの入力操作の内容を、前記外部装置に送信するステップと、
前記入力操作の内容を前記外部装置に送信した後、該外部装置から第2動作指図データを受信するステップと、
を実行させる、請求項1から4のいずれか1項に記載のゲームプログラム。
【請求項6】
前記受信するステップは、前記入力操作の内容を前記外部装置が受信した後、前記NPCを演じる演者の入力した音声データを、前記第2動作指図データとして受信する、請求項5に記載のゲームプログラム。
【請求項7】
前記受信するステップは、前記入力操作の内容を前記外部装置が受信した後、前記NPCを演じる演者の入力したモーションデータを、前記第2動作指図データとして受信する、請求項5または6に記載のゲームプログラム。
【請求項8】
前記受信するステップは、前記入力操作の内容を前記外部装置が受信した後、該外部装置に入力された入力操作により特定された、前記NPCの動作を指示するコマンドを1以上含むモーションコマンド群を、前記第2動作指図データとして受信する、請求項5または6に記載のゲームプログラム。
【請求項9】
前記受信するステップは、前記ユーザの入力操作の内容に応じて生成された音声データおよびモーションデータを含む第2動作指図データを受信し、
前記第2パートを進行させるステップは、受信された前記第2動作指図データに含まれる前記音声データに基づいて前記NPCに発話させるとともに、前記モーションデータに基づいて前記NPCを動かすことにより、前記ユーザの入力操作に対する前記NPCの反応を前記ユーザに提示する、請求項5から8までのいずれか1項に記載のゲームプログラム。
【請求項10】
前記第1パートを進行させるステップは、前記ユーザの入力操作に基づいて、前記第1パートのプレイ結果を決定し、
前記第2パートを進行させるステップは、前記第1パートのプレイ結果に応じた表示態様にて、前記第2動作指図データに基づいて動作させる前記NPCを表示部に表示させる、請求項1から9のいずれか1項に記載のゲームプログラム。
【請求項11】(削除)
【請求項12】
コンピュータがゲームプログラムを実行する方法であって、
前記コンピュータは、プロセッサ、メモリおよび操作部を備え、
前記プロセッサが請求項1に記載の各ステップを実行する方法。
【請求項13】
情報処理装置であって、
前記情報処理装置は、
請求項1に記載のゲームプログラムを記憶する記憶部と、
操作部と、
該ゲームプログラムを実行することにより、情報処理装置の動作を制御する制御部とを備えている、情報処理装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-01-19 
出願番号 特願2018-102679(P2018-102679)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A63F)
P 1 651・ 121- YAA (A63F)
P 1 651・ 851- YAA (A63F)
P 1 651・ 853- YAA (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前地 純一郎  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤本 義仁
藤田 年彦
登録日 2019-10-04 
登録番号 特許第6595043号(P6595043)
権利者 株式会社コロプラ
発明の名称 ゲームプログラム、方法、および情報処理装置  
代理人 特許業務法人 東和国際特許事務所  
代理人 白井 宏紀  
代理人 吉田 玲子  
代理人 特許業務法人 東和国際特許事務所  
代理人 吉田 玲子  
代理人 白井 宏紀  

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