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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61B
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61B
管理番号 1372692
異議申立番号 異議2020-700070  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-02-07 
確定日 2021-02-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6557229号発明「断層像撮影装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6557229号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。 特許第6557229号の請求項1、2、4、5に係る特許を維持する。 特許第6557229号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6557229号の請求項1?5に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)6月30日(国内優先権主張 平成26年7月1日)を国際出願日とする出願であって、令和元年7月19日にその特許権の設定登録がされ、同年8月7日に特許掲載公報が発行されたところ、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和2年2月7日に特許異議申立人小林勝(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年4月1日付けで取消理由が通知され、同年6月4日付けで意見書の提出及び訂正請求がされ、同年7月22日付けで、申立人から意見書が提出され、さらに、同年8月21日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年10月22日付けで意見書の提出及び訂正請求がされ、同年12月2日付けで申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和2年10月22日付けの訂正請求(以下「本件訂正請求」という。また、その訂正を「本件訂正」という。)は、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし5について訂正することを求めるものであって、以下の訂正事項1ないし訂正事項4からなる(なお、下線は、請求人が付したものである。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「光源からの光を測定光と参照光に分割して対象物体と参照物体に入射させ、対象物体で反射された測定光と参照物体で反射された参照光を重畳させて生成される干渉光に基づき対象物体の断層像を撮影する断層像撮影装置であって、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第1撮影モードと、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第2撮影モードと、を備え、
前記第2撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、前記第1撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短く、
前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて、前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行った後、前記第1撮影モードで断層像の撮影が行われ、
前記第1撮影モードにおける二次元走査がラスタ走査であり、
前記第2撮影モードにおける二次元走査が、前記第1撮影モードにおけるラスタ走査を間引きした走査であることを特徴とする断層像撮影装置。」
と記載されているのを、
「光源からの光を測定光と参照光に分割して対象物体と参照物体に入射させ、対象物体で反射された測定光と参照物体で反射された参照光を重畳させて生成される干渉光に基づき対象物体の断層像を撮影し、撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を表示手段によって表示する断層像撮影装置であって、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第1撮影モードと、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第2撮影モードと、を備え、
前記第2撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、前記第1撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短く、
前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて、前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行った後、前記第1撮影モードで断層像の撮影が行われ、
前記第1撮影モードにおける二次元走査がラスタ走査であり、
前記第2撮影モードにおける二次元走査が、前記第1撮影モードにおけるラスタ走査を間引きした走査であり、
前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整が、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみに基づいて行われる第1調整操作と、前記第1調整操作を行った後、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像に基づいて行われる第2調整操作と、を含むことを特徴とする断層像撮影装置。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、4及び5も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、
「撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を表示する表示手段を更に備え、
前記表示手段が、前記第2撮影モードにおいて、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみを表示する第1表示モードと、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像を順に表示する第2表示モードとを切り替え可能に構成されており、
前記第1表示モードで表示された断層画像に基づいて第1調整操作を行った後、前記第2表示モードで表示された断層画像に基づいて第2調整操作が行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の断層像撮影装置。」
と記載されているのを、
「 前記表示手段が、前記第2撮影モードにおいて、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみを表示する第1表示モードと、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像を順に表示する第2表示モードとを切り替え可能に構成されており、
前記第1表示モードで表示された断層画像に基づいて前記第1調整操作を行った後、前記第2表示モードで表示された断層画像に基づいて前記第2調整操作が行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の断層像撮影装置。」
に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記第2撮影モードで撮影された断層像を記憶する記憶手段を更に備えることを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載の断層像撮影装置。」
と記載されているのを、
「前記第2撮影モードで撮影された断層像を記憶する記憶手段を更に備えることを特徴とする、請求項1、2及び4のいずれか1項に記載の断層像撮影装置。」
に訂正する。

2 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正前の請求項1に係る特許発明は、「光源からの光を測定光と参照光に分割して対象物体と参照物体に入射させ、対象物体で反射された測定光と参照物体で反射された参照光を重畳させて生成される干渉光に基づき対象物体の断層像を撮影する断層像撮影装置」について、「測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第1撮影モード」と、「測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第2撮影モード」とを備え、「前記第2撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、前記第1撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短」いこと、「前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて、前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行った後、前記第1撮影モードで断層像の撮影が行われ」ること、「前記第1撮影モードにおける二次元走査がラスタ走査であ」ること、「前記第2撮影モードにおける二次元走査が、前記第1撮影モードにおけるラスタ走査を間引きした走査である」ことを特定している。
これに対し、訂正後の請求項1は、「光源からの光を測定光と参照光に分割して対象物体と参照物体に入射させ、対象物体で反射された測定光と参照物体で反射された参照光を重畳させて生成される干渉光に基づき対象物体の断層像を撮影し、撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を表示手段によって表示する断層像撮影装置であって、」との記載により、「断層像撮影装置」の内容をより具体的に特定し、さらに限定するとともに、「前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整が、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみに基づいて行われる第1調整操作と、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像に基づいて行われる第2調整操作と、を含む」との記載により、「前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整」の内容をより具体的に特定し、さらに限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

イ 新規事項の有無について
訂正前の請求項4に
「撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を表示する表示手段を更に備え、
前記表示手段が、前記第2撮影モードにおいて、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみを表示する第1表示モードと、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像を順に表示する第2表示モードとを切り替え可能に構成されており、
前記第1表示モードで表示された断層画像に基づいて第1調整操作を行った後、前記第2表示モードで表示された断層画像に基づいて第2調整操作が行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の断層像撮影装置。」
との記載があり、この記載は、訂正事項1に係る構成を含む記載である。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明における「断層像撮影装置」が「表示手段」を備えていることを具体的に特定し、また、「前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整」について具体的に特定するものであり、特許請求の範囲を拡張するものでなく、当該訂正により訂正前の請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。また、訂正前の請求項1を引用する2、4及び5に係る発明についても同様である。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲を拡張するものでなく、当該訂正により訂正前の請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項3は、訂正事項1によって請求項1が訂正されたことに伴い、訂正後の請求項1と重複する記載を訂正後の請求項4から削除するとともに、訂正後の請求項4における「第1調整操作」及び「第2調整操作」を訂正後の請求項1で特定した「第1調整操作」及び「第2調整操作」を引用した記載とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項3は、上記アのとおり、訂正後の請求項1と重複する記載を訂正後の請求項4から削除するとともに、訂正後の請求項4における「第1調整操作」及び「第2調整操作」が訂正後の請求項1で規定した「第1調整操作」及び「第2調整操作」を引用するものであり、何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は、上記アのとおり、訂正後の請求項1と重複する記載を訂正後の請求項4から削除するとともに、訂正後の請求項4における「第1調整操作」及び「第2調整操作」が訂正後の請求項1で特定した「第1調整操作」及び「第2調整操作」を引用するものであり、特許請求の範囲を拡張するものでなく、当該訂正により訂正前の請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1?4の記載を引用する記載であるところ、請求項3を引用しないものとするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項4は、上記アのとおり、何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は、上記アのとおり、何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、特許請求の範囲を拡張するものでなく、当該訂正により訂正前の請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(5)一群の請求項について
訂正前の請求項1?5について、請求項2?5はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであるから、請求項1?5は一群の請求項である。そして、上記訂正事項1?4は、その一群の請求項に対してなされているものであるから、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。

(6)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1?5について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1?4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。

3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第4項の規定、並びに、同条第9項で準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1?5〕について訂正を認める。

第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正の訂正事項1ないし4による訂正を認めるから、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下順に「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、本件訂正により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、その本件発明1ないし5は以下に記載したとおりのものである。なお、下線部は、訂正箇所を示す。

【請求項1】
光源からの光を測定光と参照光に分割して対象物体と参照物体に入射させ、対象物体で反射された測定光と参照物体で反射された参照光を重畳させて生成される干渉光に基づき対象物体の断層像を撮影し、撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を表示手段によって表示する断層像撮影装置であって、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第1撮影モードと、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第2撮影モードと、を備え、
前記第2撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、前記第1撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短く、
前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて、前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行った後、前記第1撮影モードで断層像の撮影が行われ、
前記第1撮影モードにおける二次元走査がラスタ走査であり、
前記第2撮影モードにおける二次元走査が、前記第1撮影モードにおけるラスタ走査を間引きした走査であり、
前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整が、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみに基づいて行われる第1調整操作と、前記第1調整操作を行った後、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像に基づいて行われる第2調整操作と、を含むことを特徴とする断層像撮影装置。
【請求項2】
前記第2撮影モードにおける走査領域が、前記第1撮影モードにおける走査領域中の注目領域を含む領域であることを特徴とする、請求項1に記載の断層像撮影装置。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記表示手段が、前記第2撮影モードにおいて、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみを表示する第1表示モードと、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像を順に表示する第2表示モードとを切り替え可能に構成されており、
前記第1表示モードで表示された断層画像に基づいて前記第1調整操作を行った後、前記第2表示モードで表示された断層画像に基づいて前記第2調整操作が行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の断層像撮影装置。
【請求項5】
前記第2撮影モードで撮影された断層像を記憶する記憶手段を更に備えることを特徴とする、請求項1、2及び4のいずれか1項に記載の断層像撮影装置。


第4 取消理由の概要
1 令和2年8月21日付け取消理由(決定の予告)の概要
令和2年6月4日付け訂正請求で訂正された請求項1?5に係る特許に対して、同年8月21日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

(1)(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)(実施可能要件)本件特許は、その発明の詳細な説明が同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

ア 第1調整操作と第2調整操作の関係について(サポート要件)
第1調整操作と第2調整操作について、本件発明1では、第1調整操作は第2調整操作に含まれる関係であるのに対し、発明の詳細な説明の記載では、別々の調整操作であり、食い違いを生じている。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
本件発明2、5についても本件発明1と同様に、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

イ 表示について(サポート要件)(実施可能要件)
本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されていない、選択表示モードや連続表示モードを使うことなく調整操作することを含む発明であるといえるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
本件発明2、5についても本件発明1と同様に、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
また、表示に関する構成が特定されていない本件発明1に対し、発明の詳細な説明には、選択表示モードや連続表示モードを使うことなく調整操作することは記載されていない。
してみると、発明の詳細な説明は、本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
また、発明の詳細な説明は、本件発明1と同様に本件発明2、5についても、実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

ウ 順番について(サポート要件)
本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されていない、第1調整操作及び第2調整操作を同時に行ったり、逆の順番で行う態様を含む発明であるといえるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
本件発明2、5についても本件発明1と同様に、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

2 令和2年4月1日付け取消理由の概要
訂正前の請求項1?5に係る特許に対して、当審が令和2年4月1日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)(新規性)29条1項3号
本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(2)(進歩性)29条2項
本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

ア 本件発明
本件の請求項1ないし5に係る発明を、以下それぞれ請求項の番号に応じて「本件発明1」などという。
(なお、ここで「本件発明1」などとは、上記訂正前の発明のことである。)
イ 引用文献等
甲第1号証:特開2008-267891号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2012-192260号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2014-87581号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開2008-154939号公報(以下「甲4」という。)

ウ(新規性進歩性:本件発明1,2,5:甲1)
本件発明1,2,5と甲1発明との間に相違点はなく、本件発明1,2,5は甲1発明である。または、本件発明1,2,5は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

エ(進歩性:本件発明3:甲1ないし甲4)
本件発明3は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができた発明である。

オ(新規性進歩性:本件発明1,2,5:甲2)
本件発明1,2,5と甲2発明との間に相違点はなく、本件発明1,2,5は甲2発明である。または、本件発明1,2,5は、甲2発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

第5 甲号証の記載
1 甲1について
(1)甲1には、以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。以下同じ。
(甲1-ア)
「【0032】
[全体構成]
眼底観察装置1は、図1に示すように、眼底カメラユニット1A、OCTユニット150及び演算制御装置200を含んで構成される。眼底カメラユニット1Aは、眼底表面の2次元画像を撮影する従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有している。OCTユニット150は、光画像計測装置として機能する光学系を格納している。演算制御装置200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。」

(甲1-イ)
「【0058】
OCTユニット150は、従来の光画像計測装置とほぼ同様の光学系を備えている。すなわち、OCTユニット150は、低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、被検眼を経由した信号光と参照物体を経由した参照光とを重畳させて干渉光を生成してこれを検出する。この検出結果(検出信号)は演算制御装置200に入力される。演算制御装置200は、この検出信号を解析して被検眼の断層画像を形成する。
【0059】
低コヒーレンス光源160は、低コヒーレンス光L0を出力するスーパールミネセントダイオード(SLD:Super Luminescent Diode)や発光ダイオード(LED:Light Emitted Diode)等の広帯域光源により構成される。低コヒーレンス光L0は、たとえば、近赤外領域の波長の光を含み、かつ、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する光とされる。
【0060】
低コヒーレンス光L0は、眼底カメラユニット1Aの照明光(波長約400nm?800nm)よりも長い波長、たとえば約800nm?900nmの範囲に含まれる波長を有する。
【0061】
低コヒーレンス光源160から出力された低コヒーレンス光L0は、光ファイバ161を通じて光カプラ162に導かれる。光ファイバ161は、たとえばシングルモードファイバないしはPMファイバ(Polarization maintaining fiber;偏波面保持ファイバ)等によって構成されている。光カプラ162は、低コヒーレンス光L0を参照光LRと信号光LSとに分割する。」

(甲1-ウ)
「【0096】
(制御部)
眼底観察装置1の制御系は、演算制御装置200の制御部210を中心に構成される。制御部210は、マイクロプロセッサ201、RAM202、ROM203、ハードディスクドライブ204(制御プログラム204a)、通信インターフェイス209等を含んで構成される。
【0097】
制御部210は、制御プログラム204aに基づいて動作するマイクロプロセッサ201により前述の制御を行う。制御部210には、主制御部211、記憶部212、走査設定部213及びキャプチャ部214が設けられている。制御部210は、この発明の「制御手段」の一例である。」

(甲1-エ)
「【0102】
キャプチャ部214は、表示部240Aに表示された画像等の表示情報をキャプチャ(capture)する。たとえば、キャプチャ部214は、眼底Efの断層動画像が表示部240Aに表示されているときに、この断層動画像のフレーム(静止画像)を選択的に記録するように動作する。キャプチャ部214は、この発明の「記録手段」の一例である。」

(甲1-オ)
「【0119】
図6(A)に示すように、信号光LSは、あらかじめ設定された矩形の走査領域R内を走査される。走査領域R内には、x方向に複数(m本)の走査線R1?Rmが設定されている。各走査線Ri(i=1?m)に沿って信号光LSが走査されるときに、干渉光LCの検出信号が生成されるようになっている。」
なお、上記「図6(A)」は、「図7(A)」の誤記である。

(甲1-カ)図7として、以下の図が記載されている。



(甲1-キ)
「【0142】
[使用形態]
眼底観察装置1の使用形態について説明する。図9のフローチャートは、眼底
観察装置1の使用形態の例を表している。
【0143】
まず、被検眼Eを所定の計測位置(対物レンズ113に対峙する位置)に配置させ、被検眼Eと装置とのアライメントを行う(S1)。アライメントが完了したら、オペレータは、操作部240Bを操作して検査の開始を要求する(S2)。このとき、主制御部211は、必要に応じてLCD140を制御し、被検眼Eに対して内部固視標を呈示させる。
【0144】
この要求を受けた主制御部211は、観察光源101及び撮像装置12(又は、撮影光源103及び撮像装置10)を制御し、眼底Efの眼底画像Ef′を撮影させるとともに(S3)、撮影された眼底画像Ef′を表示部240Aに表示させる(S4)。
【0145】
オペレータは、操作部240Bを操作し、表示された眼底画像Ef′上に断面位置を指定する(S5)。ここで指定される断面位置は、眼底Efの断層静止画像の計測位置である。断層静止画像とは、眼底Efの診断において参照される断層画像である。なお、前述の断層動画像は、断層静止画像の計測条件(計測位置や分解能等)の設定に利用される断層画像である。
【0146】
ステップ5において、オペレータは、眼底Efの注目部位や観察方法等に応じて、断面位置を指定できる。たとえば、眼底Efの注目部位の3次元画像を観察したいときには、3次元スキャンを指定できる。また、注目部位を通過する断面を観察したいときには、水平スキャンや垂直スキャンや十字スキャンや放射スキャンに相当する断面位置を指定できる。また、眼底の或る注目点(中心窩や乳頭中心等)の周囲の状態を観察したいときには、円スキャンや同心円スキャンや螺旋スキャンに相当する断面位置を指定できる。なお、同心円スキャンや螺旋スキャンは、走査線の間隔を小さくすることにより、3次元画像を形成するために適用することができる。
【0147】
また、ステップ5において、断面位置を設定する代わりに走査線の本数やスキャン態様を指定するようにしてもよい。また、断面位置等とともに、走査線の間隔や走査点の間隔など、信号光LSの走査に関する各種の条件を設定することも可能である。なお、画像形成用の断面位置が決定されることは、図7にも示したように、信号光LSが照射される走査点を決定することと同義と言える。
【0148】
さて、断層静止画像の計測用の断面位置が指定されると、走査設定部213は、眼底Efの断層動画像を取得するための断面位置を設定する(S6)。
【0149】
ステップ6の具体例を説明する。走査設定部213は、断層動画像計測用の走査点の個数を、断層静止画像計測用の走査点の個数よりも少なく設定する。たとえば、走査設定部213は、断層静止画像計測用の走査点を間引きすることにより、断層動画像計測用の走査点を設定する。
【0150】
また、ステップ5で2つ以上の断面位置(走査線)が指定された場合、走査設定部213は、それより少ない本数の走査線を断層動画像計測用として設定することができる。たとえば、断層静止画像計測用に放射スキャンが指定された場合、水平スキャンや垂直スキャンや十字スキャンを設定できる。このとき、スキャンの中心位置は同じとされる。
【0151】
また、断層静止画像計測用の断面位置と、断層動画像計測用の断面位置は、一方が他方を含んでいる必要はない。たとえば、前者として十字スキャンを適用し、後者として3次元スキャンを適用することも可能である。
【0152】
オペレータは、操作部240Bを操作して断層動画像の計測を要求する(S7)。この要求を受けた主制御部211は、低コヒーレンス光源160やミラー駆動機構241、242を制御し、ステップ6で設定された各断面位置に沿って信号光LSを反復走査させる。CCD184は、各走査点に対応する干渉光LCを検出して検出信号を出力する。画像形成部220は、CCD184からの検出信号に基づいて、各断面位置の断層画像を反復して形成する。それにより、各断面位置について、所定の時間間隔毎に断層画像が得られる。主制御部211は、各断面位置について反復して形成される断層画像を所定のフレームレートで表示部240Aに表示させることにより、各断面位置における断層動画像を表示させる(S8)。
【0153】
ステップ8の具体例を説明する。この例では、図7に示す3次元スキャンにおいて、奇数番号の走査線R1、R3、R5、・・・に沿って信号光LSを走査する(偶数番号の走査線R2、R4、・・・は間引きされる)。主制御部211は、走査線R1、R3、R5、・・・の順に信号光LSを走査させる。走査線Rmまで(mが奇数の場合:mが偶数の場合は走査線R(m-1)まで)信号光LSを走査させたら、主制御部211は、信号光LSの照射位置を走査開始位置RSに戻し、再び走査線R1、R3、R5、・・・の順に信号光LSを走査させる。このような走査を実行することにより、走査線R1に沿った断層画像、走査線R3に沿った断層画像、走査線R5に沿った断層画像、・・・を逐次にかつ反復して取得できる。主制御部211は、このように取得される断層画像を、各走査線Ri(i=1、3、5、・・・)毎に所定のフレームレート(たとえば各走査線Riを走査する時間間隔)で更新表示させることにより、各走査線Riにおける断層動画像を表示させる。なお、このように2つ以上の断面位置(走査線)を巡回的に走査する代わりに、任意の順序及び頻度で2つ以上の断面位置を走査することができる。
【0154】
オペレータは、表示部240Aに表示される断層動画像を観察する。そして、オペレータは、操作部240Bを操作し、断層静止画像の計測範囲や計測タイミングを指定する(S9)。ここで、計測範囲の指定は、たとえば、表示されている断層動画像中の画像領域を、ドラッグ操作等により指定することで行う。なお、指定される画像領域としては、たとえば注目部位に対応する注目領域などがある。また、計測タイミングの指定は、たとえば、表示されている断層動画像を観察し、所望のタイミングになったときに当該断層動画像をクリックすることにより行う。また、計測範囲と計測タイミングの双方を指定する場合、たとえば、先に計測範囲を指定しておくとともに、或る断層動画像が所望のタイミングになったときにその断層動画像をクリックするようにすればよい。
【0155】
眼底観察装置1は、ステップ9で指定された計測範囲や計測タイミングに応じた断層静止画像を計測する(S10)。計測範囲が指定された場合、主制御部211は、低コヒーレンス光源160やミラー駆動機構241、242を制御し、この計測範囲を含むように当該断面位置に沿って信号光LSを走査させる。CCD184は、信号光LSが照射された各走査点に対応する干渉光LCを検出して検出信号を出力する。画像形成部220は、この検出信号に基づいて断層画像を形成する。この断層画像には、指定された計測範囲の画像が含まれている。なお、2つ以上の断面位置が指定された場合、主制御部211は、これらの断面位置を任意の順序で走査することができる。また、3次元スキャンを実施する場合、画像処理部230は、画像形成部220により形成された複数の断層画像に基づいて、眼底Efの3次元画像を形成する。
【0156】
ステップ10の具体例を説明する。上記のステップ8の具体例が適用された場合、信号光LSは、たとえば各走査線R1?Rmに沿って走査される。なお、計測範囲が指定された場合には、その計測範囲を含む領域のみを走査することができる。画像形成部220は、各走査線Riに沿った断層画像Giを形成する(i=1?m)。更に、画像処理部230は、これらの断層画像Giに基づいて眼底Efの3次元画像を形成する。
【0157】
主制御部211は、ステップ10で取得された断層静止画像を表示部240Aに表示させる(S11)。なお、眼底Efの3次元画像が形成された場合、画像処理部230は、レンダリング処理を施して擬似的な3次元画像を形成し、この擬似的な3次元画像が表示される。また、3次元画像が形成された場合、所定の断面位置における断層画像が表示される。この所定の断面位置としては、たとえば、前述の断層動画像の断面位置や、オペレータが新たに指定した断面位置などがある。
【0158】
オペレータは、表示された断層静止画像を観察して診断等を行う。また、この断層静止画像は、記憶部212等に格納される。
【0159】
この使用形態のステップ5では任意個数の断面位置を指定できるが、その指定個数は余り多くない方が望ましい(たとえば数本程度であることが望ましい)。その理由としては、たとえば、多数の断面位置を指定した場合、表示部240Aに多数の断層画像が表示され、各断層画像の表示サイズが小さくなったり、表示される断層画像の数が多くなったりして、観察が困難になるおそれがある。また、多数の断面位置を指定すると、信号光LSで全断面位置を一通り走査するのに時間が掛かるため、各断層動画像のフレームレートが小さくなり、好適な動画像を得られないおそれがある。
【0160】
[作用・効果]
眼底観察装置1の作用及び効果について説明する。
【0161】
眼底観察装置1は、指定された各断面位置に沿って信号光LSを反復走査し、各断面位置における断層画像を反復して形成することにより、各断面位置における断層動画像を表示するように作用する。
【0162】
したがって、オペレータは、断層動画像を観察して被測定物体(眼底Ef)の計測範囲を指定することができる。それにより、眼底観察装置1によれば、被測定物体の計測範囲を高精度で設定することが可能である。
【0163】
また、オペレータは、断層動画像を観察して被測定物体の計測タイミングを指定できる。それにより、眼底観察装置1によれば、所望のタイミングで被測定物体の画像を取得することが可能である。
【0164】
更に、計測範囲や計測タイミングが指定されたことに対応し、眼底観察装置1は、その指定内容に応じて信号光LSを走査して断層静止画像を取得するようになっている。それにより、高精度で設定された計測範囲の画像を取得でき、また、所望の計測タイミングの画像を取得できる。
【0165】
また、眼底観察装置1によれば、断層動画像を計測するための走査点の個数を、断層静止画像を計測するための走査点の個数よりも少なく設定するようになっている。したがって、診断等に供される断層静止画像については高分解能で計測を行えるとともに、その準備作業に供される断層動画像については好適な表示サイズ及び好適なフレームレートを実現することができる。特に、断層動画像の走査線の本数を、断層静止画像の走査線の本数よりも少なく設定することにより、この効果は顕著となる。」

(甲1-ク)
「【0184】
眼底観察装置1のキャプチャ部214を用いた使用形態を説明する(図6参照)。表示部240Aに断層動画像が表示されているときに、オペレータは、所望のタイミングで操作部240Bを操作する。この操作を受けた主制御部211は、キャプチャ部214を制御し、操作時に表示されている断層動画像のフレームを記憶部212に記憶させる。このようなキャプチャ機能を設けることにより、オペレータは、断層動画像を詳細に観察できるとともに、重要な時相のフレームについては保存しておくことができる。また、断層動画像の分解能で十分な場合には、断層静止画像の計測を省略することが可能である。」

(2)甲1に記載された発明
ア 甲1の【0032】の「眼底観察装置1は、図1に示すように、眼底カメラユニット1A、OCTユニット150及び演算制御装置200を含んで構成される。」との記載から、
「眼底カメラユニット1A、OCTユニット150及び演算制御装置200を含んで構成される眼底観察装置1」の技術事項が読み取れる。

イ 甲1の【0058】の記載から、
「OCTユニット150は、低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、被検眼を経由した信号光と参照物体を経由した参照光とを重畳させて干渉光を生成してこれを検出し、この検出結果(検出信号)は演算制御装置200に入力され、演算制御装置200は、この検出信号を解析して被検眼の断層画像を形成する」との技術事項が読み取れる。

ウ 甲1の【0096】の「眼底観察装置1の制御系は、演算制御装置200の制御部210を中心に構成される。」、【0097】の「制御部210には、主制御部211、記憶部212、走査設定部213及びキャプチャ部214が設けられている。」及び【0184】の「主制御部211は、キャプチャ部214を制御し、操作時に表示されている断層動画像のフレームを記憶部212に記憶させる。」との記載から、
「演算制御装置200の制御部210には、主制御部211、記憶部212、走査設定部213及びキャプチャ部214が設けられ、主制御部211は、キャプチャ部214を制御し、操作時に表示されている断層動画像のフレームを記憶部212に記憶させる」との技術事項が読み取れる。

エ 甲1の【0119】の「信号光LSは、あらかじめ設定された矩形の走査領域R内を走査される。走査領域R内には、x方向に複数(m本)の走査線R1?Rmが設定されている」との記載から、
「信号光LSが走査されるあらかじめ設定された矩形の走査領域R内には、x方向に複数(m本)の走査線R1?Rmが設定されている」との技術事項が読み取れる。

オ 甲1の【0153】の記載から、
「奇数番号の走査線R1、R3、R5、・・・に沿って信号光LSを走査(偶数番号の走査線R2、R4、・・・は間引きされる)を実行することにより、走査線R1に沿った断層画像、走査線R3に沿った断層画像、走査線R5に沿った断層画像、・・・を逐次にかつ反復して取得し、取得される断層画像を、各走査線Ri(i=1、3、5、・・・)毎に所定のフレームレート(たとえば各走査線Riを走査する時間間隔)で更新表示させることにより、各走査線Riにおける断層動画像を表示させる」との技術事項が読み取れる。

カ 甲1の【0145】の記載から、
「断層動画像は、断層静止画像の計測条件(計測位置や分解能等)の設定に利用される断層画像である」との技術事項が読み取れる。

キ 甲1の【0154】の「計測範囲の指定は、たとえば、表示されている断層動画像中の画像領域を、ドラッグ操作等により指定することで行う。なお、指定される画像領域としては、たとえば注目部位に対応する注目領域などがある。」との記載から、
「表示されている断層動画像中の画像領域(注目部位に対応する注目領域)を指定することで、計測範囲の指定をする」との技術事項が読み取れる。

ク 甲1の【0155】の「眼底観察装置1は、ステップ9で指定された計測範囲や計測タイミングに応じた断層静止画像を計測する(S10)」、【0156】の「ステップ10の具体例を説明する。上記のステップ8の具体例が適用された場合、信号光LSは、たとえば各走査線R1?Rmに沿って走査される。」記載から、
「指定された計測範囲や計測タイミングに応じ、信号光LSは各走査線R1?Rmに沿って走査され、断層静止画像を計測する」との技術事項が読み取れる。

ケ 上記アないしクを踏まえると、甲1には、以下の甲1発明が記載されているものと認められる。

(甲1発明)
「眼底カメラユニット1A、OCTユニット150及び演算制御装置200を含んで構成される眼底観察装置1であって、
OCTユニット150は、低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、被検眼を経由した信号光と参照物体を経由した参照光とを重畳させて干渉光を生成してこれを検出し、この検出結果(検出信号)は演算制御装置200に入力され、
演算制御装置200は、この検出信号を解析して被検眼の断層画像を形成し、
演算制御装置200の制御部210には、主制御部211、記憶部212、走査設定部213及びキャプチャ部214が設けられ、主制御部211は、キャプチャ部214を制御し、操作時に表示されている断層動画像のフレームを記憶部212に記憶させ、
信号光LSが走査されるあらかじめ設定された矩形の走査領域R内には、x方向に複数(m本)の走査線R1?Rmが設定されており、
奇数番号の走査線R1、R3、R5、・・・に沿って信号光LSを走査(偶数番号の走査線R2、R4、・・・は間引きされる)を実行することにより、走査線R1に沿った断層画像、走査線R3に沿った断層画像、走査線R5に沿った断層画像、・・・を逐次にかつ反復して取得し、取得される断層画像を、各走査線Ri(i=1、3、5、・・・)毎に所定のフレームレート(たとえば各走査線Riを走査する時間間隔)で更新表示させることにより、各走査線Riにおける断層動画像を表示させ、
断層動画像は、断層静止画像の計測条件(計測位置や分解能等)の設定に利用される断層画像であり、
表示されている断層動画像中の画像領域(注目部位に対応する注目領域)を指定することで、計測範囲の指定をし、
指定された計測範囲や計測タイミングに応じ、信号光LSは各走査線R1?Rmに沿って走査され、断層静止画像を計測する、
眼底観察装置1。」

2 甲2について
(1)甲2には、以下の記載がある。
(甲2-ア)
「【0003】
図5に、眼底におけるOCTの計測範囲及び対応する網膜の断層像の模式図を示す。図5において、501は眼底像、RXYは眼底の平面(x軸:水平方向、y軸:垂直方向)におけるOCTの2次元の計測範囲を表す。図5の例では、RXYは矩形領域である。そして、T1?Tnは計測範囲RXYに対して網膜の奥行き方向を撮像して得られる黄斑部の2次元断層像(B-Scan像)である。一つの断層像は、複数の網膜の奥行き方向をスキャンするスキャンライン(以降A-スキャンラインと呼ぶ)で構成される。z軸は、このA-スキャンの方向を表し、RZはz軸方向におけるOCTの奥行き方向の1次元の計測範囲を表す。OCTの撮像では、眼底に対して設定された計測範囲RXYを順にラスタスキャンする(x軸方向のスキャンを主走査、y軸方向のスキャンを副走査と呼ぶ)ことで、これらの断層像群として3次元データを一度に取得できる。また、Mは中心窩、Aは内境界膜、Bは網膜色素上皮層境界を表す。内境界膜Aから網膜色素上皮層境界Bまでの間の網膜層の領域は、失明の主な原因である緑内障や加齢黄斑変性などの疾患の解剖的特徴が現れるため、OCTの断層像を用いた診断に非常に役立つ。そのため、断層像を撮像する際は、この領域が断層像の深さ方向の上端と下端から途切れないように撮像を行うことが重要である。」

(甲2-イ)
「【0015】
次に、図1のブロック図と、図3のフローチャートを参照して、本実施形態の断層像撮像装置10の構成、および断層像撮像装置10が実行する具体的な処理の手順を説明する。
【0016】
ステップS301において、計測範囲取得部101は、指示取得部100から被験者の眼底に対する2次元の計測範囲RXYを設定するための操作者による指示情報を取得し、計測範囲RXYを特定する。この指示情報は、断層像撮像装置10に備えられた不図示のキーボードやマウスを介して、操作者によって入力される。眼底上の計測範囲RXYの指示として、例えば、断層像取得対象の眼底上の部位や位置の指定などの指示(これを指示1と定義する)を取得する。そして、この指示1の内容に基づき矩形の計測範囲RXYを特定する。特定された計測範囲RXYは、断層像取得位置設定部102へと送信される。
【0017】
ステップS302において、断層像取得位置設定部102は、計測範囲取得部101から計測範囲RXYを取得し、この計測範囲の中から断層像を取得する位置(以降、断層像取得位置Pと呼ぶ)を設定する。断層像取得位置Pには、診断用の撮影よりも少ない予め定められた複数の位置が設定される。本ステップでは、断層像取得位置Pとして、例えば計測範囲RXYの中央と端部の位置を設定する。もちろん、断層像取得位置Pはこの組み合わせに限られるものではない。例えば、中央部と両端部の間に一つずつ取得位置を追加し、断層像取得位置Pを5つとしても良い。
【0018】
図6の(a)は、計測範囲RXYにおける断層像取得位置Pを示す図である。601は眼底像を表し、眼底像601内のRXYは2次元の計測範囲を表す。計測範囲RXY内のCは、計測範囲RXYの中心を通り図中のx軸に平行な線分(以降、中央部と呼ぶ)、Uは計測範囲RXYの上辺(以降、上端部と呼ぶ)、Lは計測範囲RXYの下辺(以降、下端部と呼ぶ)、をそれぞれ表す。本実施形態では、計測範囲RXYの中央部と両端部を示す位置として、計測範囲RXYの中央部C、上端部U、下端部Lの3つの位置を適用する。これらの位置は、図13の(a)に相当する(1302?1304)。以降で説明する断層像取得時には、中央部C、上端部U、下端部Lの位置に対して、z軸方向に計測範囲RZの領域をスキャンした断層像を取得することになる。しかし、前述の通り、計測範囲RXYの中央と端部の位置はこれに限定されず、図13の(b)?(f)のような位置であっても良い。こうして、設定された断層像取得位置P(中央部C、上端部U、下端部L)は、断層像取得部103へと送信される。
【0019】
ステップS303において、移動量設定部109は、指示取得部100から網膜の深度方向の計測位置を手動設定するための操作者による指示情報を取得する。この指示は、不図示のユーザーインターフェイスを用いて、操作者によって入力される。計測位置を設定するための指示として、ここでは、深度方向(z軸方向)への計測位置の移動量(以降、深度方向移動量Dと呼ぶ)を取得する。そして、設定した深度方向移動量Dの値は、断層像取得部103へと送信される。
【0020】
ステップS304において、断層像取得部103は断層像取得位置設定部102から取得した断層像取得位置P及び、移動量設定部109から取得した深度方向移動量Dに基づき、被験眼の断層像を撮像する。
【0021】
断層像取得部103は、本実施形態ではフーリエドメイン方式のOCTからなる。図2に、断層像取得部103の機能及び装置構成を示す。断層像取得部103は、断層像取得位置Pに従ってガルバノミラー駆動機構203を制御し、ガルバノミラー204を駆動する。ガルバノミラー駆動機構203は、信号光を主走査及び副走査方向(図6のx軸及びy軸方向)にスキャンするようにガルバノミラー204を駆動する。ここでは、図6の中央部C、上端部U、下端部Lの3箇所の位置を実時間で撮像するため、1回の主走査において、これらの3箇所を同時にスキャンするように制御する。具体的には、副走査方向において、スキャン位置を中央部C、上端部U、下端部Lの3箇所の間で高速に切り替えることで、副走査の位置を固定して主走査を行う場合の1/3のサンプリング間隔で主走査方向にスキャンするように制御する。また、断層像取得部103は、深度方向移動量Dに従って参照ミラー駆動機構209を制御し、参照ミラー202を駆動する。
【0022】
そして、低コヒーレンス光源200からの光ビームは、ハーフミラー201により、対物レンズ210を経由して被測定物体211に向かう信号光と参照ミラー202に向かう参照光とに分割される。次に、被測定物体211及び参照ミラー202によりそれぞれ反射された信号光及び参照光を重畳することにより干渉光が生成される。この干渉光は回折格子205によって波長λ1?λnの波長成分に分光され、各波長成分が1次元光センサアレイ206によって検出される。1次元光センサアレイ206を構成する各光センサは、検出した波長成分の光強度の検出信号を画像再構成部208に出力する。
【0023】
画像再構成部208は、1次元光センサアレイ206から出力された干渉光の各波長成分の検出信号に基づいて、この干渉光についての波長-光強度の関係、すなわち干渉光の光強度分布(波長スペクトル)を求める。求めた干渉光の波長スペクトルをフーリエ変換し、網膜の断層像を再構成する。
【0024】
図6の(b)は、中央部C、上端部U、下端部Lにおいて取得された断層像を示す図である。RZは図5と同様にz軸方向における1次元の計測範囲を表す。この計測範囲RZは、制御・移動された参照ミラー202の位置に基づいて決定される、断層像の深さ方向(奥行き方向)の範囲である。TCは図6の(a)の中央部Cに対応する断層像(以降、中央部断層像と呼ぶ)、TUは図6の(a)の上端部Uに対応する断層像(以降、上端部断層像と呼ぶ)、TLは図6の(a)の下端部Lに対応する断層像(以降、下端部断層像と呼ぶ)、を表す。撮像された断層像の画像データは、記憶部104へと送信される。」

(甲2-ウ) 図6として、以下の図が記載されている。


(甲2-エ)
「【0025】
次に、ステップS305において、表示方法設定部105は、記憶部104に記憶された断層像の画像データを取得し、断層像の画像データを並べて同時に表示する表示方法に設定する(これを表示方法1と定義する)。」

(甲2-オ)
「【0044】
ステップS312において、表示部106は、表示方法設定部105から表示方法1のデータを取得し、不図示のモニタ上に表示するよう表示制御する。そして、ステップS313において、指示取得部100は、断層像撮像装置10による断層像の解析・表示処理を終了するか否かの指示を外部から取得する。この指示は、不図示のユーザーインターフェイスを用いて、操作者によって入力される。処理を終了せずに、眼底像上の注目箇所の指定を行った場合、処理はステップS301に戻る。処理を終了する指示を取得した場合には、断層像撮像装置10はその処理を終了する。」
(甲2-カ)
「【0057】
以上、述べた構成によれば、網膜の3次元形状は楕円体に近似できるため、被験眼の計測範囲RXYにおける中央と端部の断層像を実時間で参照可能にすることで、撮像後に得られる3次元データ全体に網膜層が収まるかどうかを被験眼観察時に判断可能になる。そして、網膜層の途切れが検出された場合に警告提示することで、撮影者が網膜層の途切れを認識する支援を行うことができる。さらに、網膜層の途切れが検出された場合に、撮影者の指示により網膜層の途切れの状態を解析し、網膜層が断層像から途切れないように網膜の奥行き方向の計測深度を自動調整することで、撮影者が位置を調整する負担を軽減しかつ撮影ミスを防ぐことができる。
【0058】
一方、網膜層の途切れが検出された場合に、撮影者が自動調整の指示を与えないときは計測深度の手動入力を取得できるようにする。このように構成することで、撮影者は網膜層の途切れを示す警告表示を参照しながら、手動で計測深度の位置合わせ(参照ミラー202の位置合わせ)を行うことができる。このとき、参照ミラー202の位置合わせを行った結果はリアルタイムに表示方法2で表示され、網膜層の途切れが解消すると表示方法1による表示が実行される。」

(甲2-キ)
「【0064】
以上説明したように、上記実施形態によれば、被験眼の計測範囲における中央と端部の位置の断層像を実時間で並べて表示されるため、その後撮像する3次元データに網膜層が収まるかどうかを被験眼観察時に判別可能になる。或いは、断層像において深さ方向の撮影範囲から網膜層がはみ出さないように自動的に深度方向の撮影範囲が調整される。そのため、3次元データ撮像後の断層像において網膜層が途切れてしまうという撮影ミスを防ぐことができる。」

(2)甲2に記載された発明
ア 【0015】以降に、「断層像撮像装置10」の構成及び処理の具体的処理の手順が記載されている。

イ 【0016】の「ステップS301において、計測範囲取得部101は、指示取得部100から被験者の眼底に対する2次元の計測範囲RXYを設定するための操作者による指示情報を取得し、計測範囲RXYを特定する。」及び【0044】の「この指示は、不図示のユーザーインターフェイスを用いて、操作者によって入力される。処理を終了せずに、眼底像上の注目箇所の指定を行った場合、処理はステップS301に戻る。」との記載から、
「計測範囲取得部101は、指示取得部100から被験者の眼底に対する2次元の計測範囲RXYを設定するための操作者による眼底像上の注目箇所の指定の指示情報を取得し、計測範囲RXYを特定する」との技術事項が読み取れる。

ウ 【0017】の「断層像取得位置設定部102は、計測範囲取得部101から計測範囲RXYを取得し、この計測範囲の中から断層像を取得する位置(以降、断層像取得位置Pと呼ぶ)を設定する。断層像取得位置Pには、診断用の撮影よりも少ない予め定められた複数の位置が設定される。」、「断層像取得位置Pとして、例えば計測範囲RXYの中央と端部の位置を設定する。」との記載から、
「断層像取得位置設定部102は、計測範囲取得部101から計測範囲RXYを取得し、この計測範囲の中から診断用の撮影よりも少ない予め定められた複数の位置(以降、断層像取得位置Pと呼ぶ)として、計測範囲RXYの中央と端部の位置を設定する」との技術事項が読み取れる。

エ 【0019】の記載から、
「移動量設定部109は、指示取得部100から網膜の深度方向の計測位置を手動設定するための操作者による指示情報を取得(計測位置を設定するための指示として、深度方向(z軸方向)への計測位置の移動量(以降、深度方向移動量Dと呼ぶ)を取得)し、設定した深度方向移動量Dの値は、断層像取得部103へと送信される」との技術事項が読み取れる。

オ 【0020】の記載から、
「断層像取得部103は断層像取得位置設定部102から取得した断層像取得位置P及び、移動量設定部109から取得した深度方向移動量Dに基づき、被験眼の断層像を撮像する」との技術事項が読み取れる。

カ 【0021】、【0022】の記載から、
「断層像取得部103は、断層像取得位置Pに従ってガルバノミラー駆動機構203を制御し、信号光を主走査及び副走査方向(x軸及びy軸方向)にスキャンするように駆動し、低コヒーレンス光源200からの光ビームは、ハーフミラー201により、対物レンズ210を経由して被測定物体211に向かう信号光と参照ミラー202に向かう参照光とに分割され、被測定物体211及び参照ミラー202によりそれぞれ反射された信号光及び参照光を重畳することにより干渉光が生成され、干渉光は回折格子205によって波長λ1?λnの波長成分に分光され、各波長成分が1次元光センサアレイ206によって検出され、1次元光センサアレイ206を構成する各光センサは、検出した波長成分の光強度の検出信号を画像再構成部208に出力する」との技術事項が読み取れる。

キ 【0023】ないし【0025】の記載から、
「画像再構成部208は、中央部C、上端部U、下端部Lにおいて取得された断層像を再構成し、断層像の画像データは、記憶部104へと送信され、表示方法設定部105は、記憶部104に記憶された断層像の画像データを取得し、断層像の画像データを並べて同時に表示する」との技術事項が読み取れる。

ク 【0057】の「被験眼の計測範囲RXYにおける中央と端部の断層像を実時間で参照可能にすることで、撮像後に得られる3次元データ全体に網膜層が収まるかどうかを被験眼観察時に判断可能になる」との記載のうち「3次元データ」は、【0003】の「OCTの撮像では、眼底に対して設定された計測範囲RXYを順にラスタスキャンする(x軸方向のスキャンを主走査、y軸方向のスキャンを副走査と呼ぶ)ことで、これらの断層像群として3次元データを一度に取得できる」との記載を踏まえると、計測範囲RXYを順にラスタスキャンして取得する3次元データである。
よって、【0057】及び【0003】から、
「被験眼の計測範囲RXYにおける中央と端部の断層像を実時間で参照可能にすることで、撮像後に得られる計測範囲RXYを順にラスタスキャンして取得する3次元データ全体に網膜層が収まるかどうかを被験眼観察時に判断可能になり、網膜層の途切れが検出された場合に、網膜層が断層像から途切れないように網膜の奥行き方向の計測深度を自動調整、又は、手動で計測深度の位置合わせ(参照ミラー202の位置合わせ)を行う」との技術事項が読み取れる。

ケ 上記アないしクを踏まえると、甲2には、以下の甲2発明が記載されているものと認められる。

(甲2発明)
「断層像撮像装置10であって、
計測範囲取得部101は、指示取得部100から被験者の眼底に対する2次元の計測範囲RXYを設定するための操作者による眼底像上の注目箇所の指定の指示情報を取得し、計測範囲RXYを特定し、
断層像取得位置設定部102は、計測範囲取得部101から計測範囲RXYを取得し、この計測範囲の中から診断用の撮影よりも少ない予め定められた複数の位置(以降、断層像取得位置Pと呼ぶ)として、計測範囲RXYの中央と端部の位置を設定し、
移動量設定部109は、指示取得部100から網膜の深度方向の計測位置を手動設定するための操作者による指示情報を取得(計測位置を設定するための指示として、深度方向(z軸方向)への計測位置の移動量(以降、深度方向移動量Dと呼ぶ)を取得)し、設定した深度方向移動量Dの値は、断層像取得部103へと送信され、
断層像取得部103は断層像取得位置設定部102から取得した断層像取得位置P及び、移動量設定部109から取得した深度方向移動量Dに基づき、被験眼の断層像を撮像するものであり、
断層像取得部103は、断層像取得位置Pに従ってガルバノミラー駆動機構203を制御し、信号光を主走査及び副走査方向(x軸及びy軸方向)にスキャンするように駆動し、低コヒーレンス光源200からの光ビームは、ハーフミラー201により、対物レンズ210を経由して被測定物体211に向かう信号光と参照ミラー202に向かう参照光とに分割され、被測定物体211及び参照ミラー202によりそれぞれ反射された信号光及び参照光を重畳することにより干渉光が生成され、干渉光は回折格子205によって波長λ1?λnの波長成分に分光され、各波長成分が1次元光センサアレイ206によって検出され、1次元光センサアレイ206を構成する各光センサは、検出した波長成分の光強度の検出信号を画像再構成部208に出力し、
画像再構成部208は、中央部C、上端部U、下端部Lにおいて取得された断層像を再構成し、断層像の画像データは、記憶部104へと送信され、
表示方法設定部105は、記憶部104に記憶された断層像の画像データを取得し、断層像の画像データを並べて同時に表示し、
被験眼の計測範囲RXYにおける中央と端部の断層像を実時間で参照可能にすることで、撮像後に得られる計測範囲RXYを順にラスタスキャンして取得するする3次元データ全体に網膜層が収まるかどうかを被験眼観察時に判断可能になり、網膜層の途切れが検出された場合に、網膜層が断層像から途切れないように網膜の奥行き方向の計測深度を自動調整、又は、手動で計測深度の位置合わせ(参照ミラー202の位置合わせ)を行う、
装置。」

3 甲3について
(1)甲3には、以下の記載がある。
「【0080】
〔信号光の走査およびOCT画像について〕
ここで、信号光LSの走査およびOCT画像について説明しておく。
【0081】
眼科観察装置1による信号光LSのスキャンモードとしては、たとえば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋(渦巻)スキャンなどがある。これらのスキャンモードは、眼底の観察部位、解析対象(網膜厚など)、走査に要する時間、走査の精密さなどを考慮して適宜に選択的に使用される。
【0082】
水平スキャンは、信号光LSを水平方向(x方向)に走査させるものである。水平スキャンには、垂直方向(y方向)に配列された複数の水平方向に延びる走査線に沿って信号光LSを走査させる態様も含まれる。この態様においては、走査線の間隔を任意に設定することが可能である。また、隣接する走査線の間隔を十分に狭くすることにより、前述の3次元画像を形成することができる(3次元スキャン)。垂直スキャンについても同様である。」

「【0120】
(S13:OCT計測を開始する)
主制御部211は、OCTユニット100、光路長変更部41、ガルバノスキャナ42等を制御して、眼底EfのOCT計測を開始する。このOCT計測は、眼底Efの実質的に同一の断面に対して反復的に行われる。すなわち、このOCT計測は、OCT動画像を取得するための動作モードで行われる。
【0121】
(S14:OCT動画像を用いたフォーカス調整を行う)
ユーザまたは眼科観察装置は、OCT動画像を用いた詳細なフォーカス調整を行う。
【0122】
(S15:眼底の断層像を取得する)
ステップ14の詳細なフォーカス調整が完了したことを受けて、またはユーザによる所定の操作を受けて、主制御部211は、OCTユニット100、光路長変更部41、ガルバノスキャナ42等を制御して、眼底EfのOCT計測を行う。このOCT計測は、予め設定されたスキャンモードで実行される。それにより、診断に供される断層像が取得される。」

4 甲4について
(1)甲4には、以下の記載がある。
「【0219】
図15に示す処理を行う前の準備段階の処理を説明する。まず、眼底画像Ef′を撮影して表示部240Aに表示させる。眼底画像Ef′は、表示部240Aの表示画面2400の眼底画像表示部2401に表示される。
【0220】
次に、検者は、表示された眼底画像Ef′を観察しつつ、OCT画像を取得する領域(走査領域R)を設定する。走査領域Rは、たとえば、その中心位置が眼底Efの視神経乳頭(図16の眼底画像Ef′中に円形状に示す部分)の中心に配置されるように設定される。なお、図16に示す符号Rcは、走査線R1?Rmのうち視神経乳頭の中心位置を通過する走査線を表している。以下、図15に示す処理に移行する。
【0221】
検者は、操作部240Bを操作し、眼底画像Ef′上における視神経乳頭の中心位置(注目部位)を指定する。制御部210は、指定された位置を通過する走査線Rcを選択するとともに、この走査線Rcに沿って信号光LSを繰り返し走査させる。制御部210は、この繰り返し走査により順次に得られる断層画像Gc(図示せず)をリアルタイムで更新表示させる。断層画像Gcは、表示画面2400のOCT画像表示部2402に表示される。それにより、走査線Rcの位置における断層画像Gcのライブ画像が表示される(S31)。
【0222】
なお、OCT画像表示部2402の表示範囲は、フレームFと同じ範囲に設定されている。ただし、OCT画像を拡大表示させる場合などには、フレームF内の一部の範囲の画像のみがOCTが像表示部2402に表示されることとなる。
【0223】
次に、検者は、操作部240Bを操作して、フレームF内におけるOCT画像の位置を決定する(S32)。そのために、検者は、OCT画像表示部2402に表示される断層画像Gcの位置を確認しながら参照ミラー174の位置を調整することにより、OCTが像表示部2402内の所望の位置に断層画像Gcを表示させる。ここでは、断層画像Gcの所定の部分画像(層hや眼底表面等)を特定位置F0に配置させるように位置を調整する。
【0224】
このとき、OCT画像表示部2402における特定位置F0の位置を示す情報を表示して、位置調整を支援するようにしてもよい。また、前述の使用形態と同様に、OCT画像の位置合わせを自動的に行うようにしてもよい。
【0225】
OCT画像の位置合わせが終了したら、検者は、所定の操作を行って計測を開始させる(S33)。これを受けて、制御部210は、ミラー駆動機構241、242を制御し、信号光LSの照射位置を第1の走査線R1上(最初の走査点R11上)に移動させる。そして、制御部210は、低コヒーレント光源160及びミラー駆動機構241、242等を制御し、走査線R1上の各走査点R11?R1n上に信号光LSを順次に走査する。各信号光LSに基づく干渉光LCは、CCD184によって検出される。
【0226】
画像形成部220は、CCD184から順次に入力される検出信号に基づいて、各走査点R11?R1nにおける深度方向の画像G11?G1nを形成して断層画像G1を形成する(S35)。
【0227】
ここで、制御部210は、走査線R1?Rmに対する計測が終了したか判断する(S36)。」

第6 当審の判断
1 第1調整操作と第2調整操作の関係について(サポート要件)
第1調整操作と第2調整操作について、訂正前の本件発明1では、第1調整操作は第2調整操作に含まれる関係であるのに対し、発明の詳細な説明の記載では、別々の調整操作であり、食い違いを生じていたが、本件訂正により、それぞれの調整操作が、発明の詳細な説明に記載された別々の調整操作である「前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみに基づいて行われる第1調整操作」及び「前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像に基づいて行われる第2調整操作」と訂正されたことから、本件発明1、2及び5に対する、第1調整操作と第2調整操作の関係について(サポート要件)の取消理由は解消した。

2 表示について(サポート要件)(実施可能要件)
訂正前の本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されていない、選択表示モードや連続表示モードを使うことなく調整操作することを含む発明であるといえるから、訂正前の本件発明1、2及び5は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、また、表示に関する構成が特定されていない訂正前の本件発明1に対し、発明の詳細な説明には、選択表示モードや連続表示モードを使うことなく調整操作することは記載されていないという、表示について(サポート要件)(実施可能要件)の取消理由があったが、本件訂正により、「撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を表示手段によって表示する断層像撮影装置」と訂正されたことから、表示について(サポート要件)(実施可能要件)の取消理由は解消した。

3 順番について(サポート要件)
訂正前の本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されていない、第1調整操作及び第2調整操作を同時に行ったり、逆の順番で行う態様を含む発明であるといえるから、訂正前の本件発明1、2及び5は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないという、順番について(サポート要件)の取消理由があったが、本件訂正により、「前記第1調整操作を行った後、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像に基づいて行われる第2調整操作と、を含む」と訂正されたことから、順番について(サポート要件)の取消理由は解消した。

4(新規性進歩性:本件発明1,2,5:甲1)
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
(ア)甲1発明の「低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、被検眼を経由した信号光と参照物体を経由した参照光とを重畳させて干渉光を生成してこれを検出」することにおいて、「参照光」と「信号光」は、本件発明1の「光源からの光を測定光と参照光に分割」することにおける「参照光」と「測定光」に相当し、「被検眼」と「参照物」は、本件発明1の「対象物体」と「参照物体」に相当する。これらの相当関係を踏まえると、甲1発明の「低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、被検眼を経由した信号光と参照物体を経由した参照光とを重畳させて」「生成し」た「干渉光」は、本件発明1の「光源からの光を測定光と参照光に分割して対象物体と参照物体に入射させ、対象物体で反射された測定光と参照物体で反射された参照光を重畳させて生成される干渉光」に相当する。

(イ)甲1発明の「干渉光を生成してこれを検出し、この検出結果(検出信号)は演算制御装置200に入力され、演算制御装置200は、この検出信号を解析して被検眼の断層画像を形成」する「眼底観察装置1」は、本件発明1の「干渉光に基づき対象物体の断層像を撮影」「する断層像撮影装置」に相当する。
また、甲1発明の「眼底観察装置1」は、「走査線R1に沿った断層画像、走査線R3に沿った断層画像、走査線R5に沿った断層画像、・・・を逐次にかつ反復して取得し、取得される断層画像を、・・・断層動画像を表示させ」ているから、本件発明1の「撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を表示手段によって表示する断層像撮影装置」に相当する。

(ウ)甲1発明は、「信号光LSが走査されるあらかじめ設定された矩形の走査領域R内には、x方向に複数(m本)の走査線R1?Rmが設定されて」いる。
このことを踏まえると、甲1発明の「各走査線R1?Rmに沿って走査」は、本件発明1の「二次元走査」、「ラスタ走査」に相当し、甲1発明の「信号光LSは各走査線R1?Rmに沿って走査され、断層静止画像を計測する」ことは、本件発明1の「測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第1撮影モード」に相当する。
また、甲1発明の「奇数番号の走査線R1、R3、R5、・・・に沿って信号光LSを走査(偶数番号の走査線R2、R4、・・・は間引きされる)」は、本件発明1の「二次元走査」、「ラスタ走査」に相当し、甲1発明の「奇数番号の走査線R1、R3、R5、・・・に沿って信号光LSを走査(偶数番号の走査線R2、R4、・・・は間引きされる)を実行することにより、走査線R1に沿った断層画像、走査線R3に沿った断層画像、走査線R5に沿った断層画像、・・・を逐次にかつ反復して取得し、取得される断層画像を、各走査線Ri(i=1、3、5、・・・)毎に所定のフレームレート(たとえば各走査線Riを走査する時間間隔)で更新表示させることにより、各走査線Riにおける断層動画像を表示させ」ることは、本件発明1の「測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第2撮影モード」に相当する。
また、断層動画像の取得における「奇数番号の走査線R1、R3、R5、・・・に沿って信号光LSを走査(偶数番号の走査線R2、R4、・・・は間引きされる)」は、断層静止画像を計測する際の「走査線R1?Rm」と比べると、間引きした走査であるから、本件発明1の「前記第2撮影モードにおける二次元走査が、前記第1撮影モードにおけるラスタ走査を間引きした走査」に相当する。
また、甲1の【0159】の「・・・多数の断面位置を指定すると、信号光LSで全断面位置を一通り走査するのに時間が掛かるため、各断層動画像のフレームレートが小さくなり、好適な動画像を得られないおそれがある。」との記載があるように、断層動画像における指定する断面位置の多少が、走査するのに掛かる時間の多少に相関するものであり、間引きした二次元走査に要する時間は、間引きされない二次元走査に要する時間に比べ短くなることを踏まえると、甲1発明の断層動画像の取得における間引きした走査に要する時間は、断層静止画像を計測する際の走査に要する時間よりも短くなっているといえる。
してみると、甲1発明は、本件発明1の「前記第2撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、前記第1撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短く」なっているとの構成を有しているといえる。

(エ)甲1発明の「断層静止画像の計測条件(計測位置や分解能等)の設定」や「計測範囲の指定」は、本件発明1の「第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整」に相当するから、甲1発明の「断層動画像は、断層静止画像の計測条件(計測位置や分解能等)の設定に利用される断層画像であり、表示されている断層動画像中の画像領域(注目部位に対応する注目領域)を指定することで、計測範囲の指定をし、指定された計測範囲や計測タイミングに応じ、信号光LSは各走査線R1?Rmに沿って走査され、断層静止画像を計測する」ことは、本件発明1の「前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて、前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行った後、前記第1撮影モードで断層像の撮影が行われ」ることに相当する。

(オ)してみると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「光源からの光を測定光と参照光に分割して対象物体と参照物体に入射させ、対象物体で反射された測定光と参照物体で反射された参照光を重畳させて生成される干渉光に基づき対象物体の断層像を撮影し、撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を表示手段によって表示する断層像撮影装置であって、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第1撮影モードと、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第2撮影モードと、を備え、
前記第2撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、前記第1撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短く、
前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて、前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行った後、前記第1撮影モードで断層像の撮影が行われ、
前記第1撮影モードにおける二次元走査がラスタ走査であり、
前記第2撮影モードにおける二次元走査が、前記第1撮影モードにおけるラスタ走査を間引きした走査である、
断層像撮影装置。」

(相違点1)
第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整について、本件発明1は、「前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみに基づいて行われる第1調整操作と、前記第1調整操作を行った後、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像に基づいて行われる第2調整操作とを含む」のに対し、甲1発明は、「断層動画像を表示させ、」「断層静止画像の計測条件(計測位置や分解能等)の設定に利用」(「第2調整操作」に相当。)してはいるものの、「対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみに基づいて行われる第1調整操作」「を行った後」にすることまでは特定していない点。

イ 判断
(ア)相違点1についての判断
撮影条件の調整において、「前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみに基づいて行われる第1調整操作と、前記第1調整操作を行った後、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像に基づいて行われる第2調整操作とを含む」ようにすることは、甲2?甲4に開示も示唆も記載はなく、また周知技術でもない。
そして、本件特許明細書段落【0037】?【0039】に「本実施形態における予備撮影モードと本撮影モードの切替、選択表示モードと連続表示モードの切替を用いた撮影条件の調整の流れを説明する。図4(a)に示すように、まず第1調整操作を予備撮影モードにて行うが、第1調整操作は特定の一の断層画像のみに基づいて適切に調整可能なものである。そのため、このときディスプレイ18は選択表示モードに設定し、番号6の走査により撮影された断層像に基づいて生成された断層画像T6のみを繰り返し表示する。
選択表示モードにて第1調整操作を完了したら、続いて、図4(b)に示すように、撮影方式は予備撮影モードのまま、表示モード切替ボタンを押してディスプレイ18を連続表示モードに切り替え、二次元走査によって得られた複数の断層画像に基づいて調整した方がより適切に調整できる第2調整操作を行う。連続表示モードでは、断層画像T1?T11が順番に繰り返し表示される。
連続表示モードにて第2調整操作を完了したら、図4(c)に示すように、撮影モード切替ボタンを押して予備撮影モードから本撮影モードに切り替え、最適化された撮影条件のもと、走査領域全体を高速軸方向(x方向)に全部で256本のラスタ走査を行い、被検眼Eの眼底の断層像の撮影を行う。」と記載されているように、本件発明1における撮影条件の調整によって、最適化された撮影条件とすることができるものである。

(イ)小括
よって、本件発明1は、甲1発明ではない。また、本件発明1は、甲1発明、甲2?4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件発明1に係る特許は、甲1を主たる引用例とする新規性及び進歩性の取消理由により取り消すことはできない。

(2)本件発明2及び5について
本件発明2及び5は、本件発明1の構成を全て含むことから、本件発明1に係る特許と同様の上記理由により、本件発明2及び5に係る特許は、甲1を主たる引用例とする進歩性の取消理由により取り消すことはできない。

5(進歩性:本件発明3:甲1ないし甲4)
本件発明3は、本件訂正により削除された。
よって、進歩性についての取消理由の対象であった本件発明3は、存在しないものとなった。

6(新規性進歩性:本件発明1,2,5:甲2)
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲2発明との対比・判断
(ア)光学的構成について
甲2発明の「断層像撮像装置10であって、」「断層像取得部103は、断層像取得位置Pに従ってガルバノミラー駆動機構203を制御し、信号光を主走査及び副走査方向(x軸及びy軸方向)にスキャンするように駆動し、低コヒーレンス光源200からの光ビームは、ハーフミラー201により、対物レンズ210を経由して被測定物体211に向かう信号光と参照ミラー202に向かう参照光とに分割され、被測定物体211及び参照ミラー202によりそれぞれ反射された信号光及び参照光を重畳することにより干渉光が生成され、干渉光は回折格子205によって波長λ1?λnの波長成分に分光され、各波長成分が1次元光センサアレイ206によって検出され、1次元光センサアレイ206を構成する各光センサは、検出した波長成分の光強度の検出信号を画像再構成部208に出力し」と、本件発明1の「光源からの光を測定光と参照光に分割して対象物体と参照物体に入射させ、対象物体で反射された測定光と参照物体で反射された参照光を重畳させて生成される干渉光に基づき対象物体の断層像を撮影する断層像撮影装置」とを対比すると、以下のとおりである。

甲2発明の「低コヒーレンス光源200からの光ビーム」、「信号光」、「参照光」、「被測定物体211」、「参照ミラー202」は、それぞれ、本件発明1の「光源からの光」、「測定光」、「参照光」、「対象物体」、「参照物体」に相当し、「低コヒーレンス光源200からの光ビームは、ハーフミラー201により、対物レンズ210を経由して被測定物体211に向かう信号光と参照ミラー202に向かう参照光とに分割され」ることは、本件発明1の「光源からの光を測定光と参照光に分割して対象物体と参照物体に入射させ」ることに相当する。
甲2発明の「被測定物体211及び参照ミラー202によりそれぞれ反射された信号光及び参照光を重畳することにより干渉光が生成され」ることにおける「干渉光」は、本件発明1の「対象物体で反射された測定光と参照物体で反射された参照光を重畳させて生成される干渉光」に相当する。
甲2発明の「干渉光は回折格子205によって・・・検出した波長成分の光強度の検出信号を画像再構成部208に出力」する「断層像撮像装置10」は、本件発明1の「干渉光に基づき対象物体の断層像を撮影」「する断層像撮影装置」に相当する。
よって、光学的構成において、本件発明1と甲2発明に相違するところはない。

(イ)表示手段について
甲2発明の「表示方法設定部105は、記憶部104に記憶された断層像の画像データを取得し、断層像の画像データを並べて同時に表示」するものであり、甲2発明の「断層像撮像装置10」は、表示手段を有しているといえるから、本件発明1の「撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を表示手段によって表示する断層像撮影装置」に相当する。

(ウ)第1撮影モードについて
甲2発明の「計測範囲RXYを順にラスタスキャンして取得する3次元データ」における「計測範囲RXYを順にラスタスキャン」は、本件発明1の「ラスタ走査」に相当し、甲2発明の「計測範囲RXY」の「3次元データ」を取得は、本件発明1の「測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第1撮影モード」であるといえる。
よって、甲2発明は、「測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第1撮影モード」を備え、また、「前記第1撮影モードにおける二次元走査がラスタ走査であ」るとの構成を有している。

よって、第1撮影モードについて、本件発明1と甲2発明に相違するところはない。

(エ)第2撮影モードについて
a 甲2発明の「計測範囲の中から診断用の撮影よりも少ない予め定められた複数の位置」「として、計測範囲RXYの中央と端部の位置を設定し」「被験眼の断層像を撮像する」ことにおいて、「計測範囲」とは、上記「計測範囲RXYを順にラスタスキャンして取得する3次元データ」の計測範囲であるから、その計測範囲の中から診断用の撮影よりも少ない予め定められた複数の位置として、計測範囲RXYの中央と端部の位置を設定し被験眼の断層像を撮像することは、本件発明1の「測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第2撮影モード」であり、「前記第2撮影モードにおける二次元走査が、前記第1撮影モードにおけるラスタ走査を間引きした走査である」ことに相当する。
そして、甲2発明の「計測範囲の中から診断用の撮影よりも少ない予め定められた複数の位置」での撮影は、その後に取得される「3次元データ」よりも少ない位置での撮影であるから、時間的にも短い撮影であるといえる。
よって、甲2発明は、本件発明1の「前記第2撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、前記第1撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短く」なっているという構成を有しているといえる。

b 甲2発明の「被験眼の計測範囲RXYにおける中央と端部の断層像を実時間で参照可能にすることで、撮像後に得られる計測範囲RXYを順にラスタスキャンして取得するする3次元データ全体に網膜層が収まるかどうかを被験眼観察時に判断可能になり、網膜層の途切れが検出された場合に、網膜層が断層像から途切れないように網膜の奥行き方向の計測深度を自動調整、又は、手動で計測深度の位置合わせ(参照ミラー202の位置合わせ)を行う」ことにおいて、
甲2発明の「被験眼の計測範囲RXYにおける中央と端部の断層像を実時間で参照可能にすること」は、本件発明1の「前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて」に相当し、
甲2発明は、「中央と端部の断層像」の「撮影後に」「3次元データ」を取得するものであり、甲2発明の「3次元データ全体に網膜層が収まるかどうか」「判断」され、「網膜層の途切れが検出された場合に、網膜層が断層像から途切れないように網膜の奥行き方向の計測深度を自動調整、又は、手動で計測深度の位置合わせを行う」ことは、本件発明1の「前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行った後、前記第1撮影モードで断層像の撮影が行われ」ることに相当する。

(オ)してみると、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「光源からの光を測定光と参照光に分割して対象物体と参照物体に入射させ、対象物体で反射された測定光と参照物体で反射された参照光を重畳させて生成される干渉光に基づき対象物体の断層像を撮影し、撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を表示手段によって表示する断層像撮影装置であって、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第1撮影モードと、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第2撮影モードと、を備え、
前記第2撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、前記第1撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短く、
前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて、前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行った後、前記第1撮影モードで断層像の撮影が行われ、
前記第1撮影モードにおける二次元走査がラスタ走査であり、
前記第2撮影モードにおける二次元走査が、前記第1撮影モードにおけるラスタ走査を間引きした走査である、
断層像撮影装置。」

(相違点2)
第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整について、本件発明1は、「前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみに基づいて行われる第1調整操作と、前記第1調整操作を行った後、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像に基づいて行われる第2調整操作とを含む」のに対し、甲2発明は、「中央と端部の断層像を実時間で参照可能にすることで、撮像後に得られる計測範囲RXYを順にラスタスキャンして取得するする3次元データ全体に網膜層が収まるかどうかを被験眼観察時に判断可能になり、網膜層の途切れが検出された場合に、網膜層が断層像から途切れないように網膜の奥行き方向の計測深度を自動調整、又は、手動で計測深度の位置合わせ」(「第2調整操作」に相当。)することはしているものの、「対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみに基づいて行われる第1調整操作」「を行った後」にすることまでは特定していない点。

イ 判断
(ア)相違点2についての判断
相違点2は、実質的に上記相違点1と同じであり、相違点1についての判断は上述のとおりである。

(イ)小括
よって、本件発明1は、甲2発明ではない。また、本件発明1は、甲2発明、甲1、3及び4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件発明1に係る特許は、甲2を主たる引用例とする新規性及び進歩性の取消理由により取り消すことはできない。

(2)本件発明2及び5について
本件発明2及び5は、本件発明1の構成を全て含むことから、本件発明1に係る特許と同様の上記理由により、本件発明2及び5に係る特許は、甲2を主たる引用例とする進歩性の取消理由により取り消すことはできない。

第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1(進歩性:本件発明4:甲1?甲4)
申立人は、本件発明4に係る特許に対して、甲1を主たる引用例とする進歩性の取消理由及び甲2を主たる引用例とする進歩性の取消理由を申し立てている。
しかしながら、本件発明4は、本件発明1の構成を全て含むことから、本件発明1に係る特許と同様の上記理由により、本件発明4に係る特許は、甲1を主たる引用例とする進歩性の取消理由及び甲2を主たる引用例とする進歩性の取消理由により取り消すことはできない。

第8 令和2年12月2日付け意見書(以下「意見書」という。)について
申立人は、意見書においてサポート要件及び明確性について主張しているので以下検討する。
1 サポート要件について
(1)本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
(本1)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮影条件の調整時においても断層像の撮影時と同様にラスタ走査エリア全体の走査を行えば、全ての撮影部位の断層画像を撮影条件の調整中に観察することができ、最適な撮影条件を決定することができるため、理想的ともいえる。しかしながら、走査エリア全体のラスタ走査には時間がかかり、撮影条件の調整にかかる時間も長くなる。実際の断層像の撮影は撮影条件の調整を行って撮影条件の最適化を行った後になるので、一連の撮影動作に時間がかかってしまい、撮影完了までに被検者に長時間の我慢を強いることによって固視微動等の外乱影響も受け易くなってしまう。大きな固視微動が発生した場合には再び撮影条件の調整が必要となってしまうため、撮影時間がより長くかかってしまう悪循環へとつながる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、短時間で撮影条件の調整を完了させて最適な撮影条件を決定することができる断層像撮影装置を提供することを目的とする。」

(本2)「【課題を解決するための手段】
・・・
【0009】
上記発明(発明1)によれば、第1撮影モードより走査に要する時間が短い二次元走査によって断層像を撮影する第2撮影モードが設けられているため、当該第2撮影モードにおいて第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行うことにより、短時間で撮影条件の調整を完了させることができる。また、第2撮影モードにおける断層像の撮影を、従来のように一次元的にラスタ走査の中心位置等を走査するものではなく、二次元走査によって行うことにより、撮影部位のほぼ全体をカバーする断層画像を撮影条件の調整中に観察することができるため、最適な撮影条件を決定することができる。
・・・
【0016】
上記発明(発明7,8)によれば、特定の一の断層画像のみに基づいて適切に調整可能な第1調整操作と、二次元走査によって得られた複数の断層画像に基づいて調整した方がより適切に調整できる第2調整操作とを、それぞれ別々に行うことができるため、短時間により最適な撮影条件を決定することができる。」

(本3)「【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
・・・
【0036】
本実施形態においては、撮影条件の調整を第1調整操作及び第2調整操作の二段階に分け、前述の選択表示モードを使って第1調整操作を、連続表示モードを使って第2調整操作を行う。・・・このように、特定の一の断層画像のみに基づいて適切に調整可能な第1調整操作と、二次元走査によって得られた複数の断層画像に基づいて調整した方がより適切に調整できる第2調整操作とをそれぞれ別々に行うことにより、短時間により最適な撮影条件を決定することができる。
・・・
【0042】
以上述べたように、本実施形態の断層像撮影装置によれば、本撮影モードより走査密度の粗い二次元走査によって断層像を撮影する予備撮影モードが設けられており、予備撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、本撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短くなるため、当該予備撮影モードにおいて本撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行うことにより、短時間で撮影条件の調整を完了させることができる。また、予備撮影モードにおける断層像の撮影を、従来のように一次元的にラスタ走査の中心位置等を走査するものではなく、走査密度は粗いものの二次元走査によって行うことにより、撮影部位のほぼ全体をカバーする断層画像を撮影条件の調整中に観察することができるため、最適な撮影条件を決定することができる。」

上記(本1)の記載から、本件発明の課題は、「短時間で撮影条件の調整を完了させて最適な撮影条件を決定することができる断層像撮影装置を提供すること」であると認められる。

そして、「短時間で撮影条件の調整を完了させ」るための手段に関連して以下の記載がある。
「第1撮影モードより走査に要する時間が短い二次元走査によって断層像を撮影する第2撮影モードが設けられているため、当該第2撮影モードにおいて第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行うことにより、短時間で撮影条件の調整を完了させることができる」(本2)、「本撮影モードより走査密度の粗い二次元走査によって断層像を撮影する予備撮影モードが設けられており、予備撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、本撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短くなるため、当該予備撮影モードにおいて本撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行うことにより、短時間で撮影条件の調整を完了させることができる」(本3)

また、「最適な撮影条件を決定する」ための手段に関連して以下の記載がある。
「二次元走査によって行うことにより、撮影部位のほぼ全体をカバーする断層画像を撮影条件の調整中に観察することができるため、最適な撮影条件を決定することができる」(本2)、「走査密度は粗いものの二次元走査によって行うことにより、撮影部位のほぼ全体をカバーする断層画像を撮影条件の調整中に観察することができるため、最適な撮影条件を決定することができる」(本3)

さらに「短時間により最適な撮影条件を決定する」ための手段に関連して以下の記載がある。
「特定の一の断層画像のみに基づいて適切に調整可能な第1調整操作と、二次元走査によって得られた複数の断層画像に基づいて調整した方がより適切に調整できる第2調整操作とをそれぞれ別々に行うことにより、短時間により最適な撮影条件を決定することができる」(本2)、「撮影条件の調整を第1調整操作及び第2調整操作の二段階に分け、前述の選択表示モードを使って第1調整操作を、連続表示モードを使って第2調整操作を行う・・・このように、特定の一の断層画像のみに基づいて適切に調整可能な第1調整操作と、二次元走査によって得られた複数の断層画像に基づいて調整した方がより適切に調整できる第2調整操作とを、それぞれ別々に行うことができるため、短時間により最適な撮影条件を決定することができる」(本3)

(2)本件発明1と発明の詳細な説明の記載との関係について
本件発明1の
「測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第1撮影モードと、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第2撮影モードと、を備え、
前記第2撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、前記第1撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短く、
前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて、前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行った後、前記第1撮影モードで断層像の撮影が行われ、
前記第1撮影モードにおける二次元走査がラスタ走査であり、
前記第2撮影モードにおける二次元走査が、前記第1撮影モードにおけるラスタ走査を間引きした走査であり、」との構成は、
発明の詳細な説明に記載された「短時間で撮影条件の調整を完了させ」るための手段及び「最適な撮影条件を決定する」ための手段に対応するものであり、
「前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整が、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみに基づいて行われる第1調整操作と、前記第1調整操作を行った後、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像に基づいて行われる第2調整操作と、を含む」との構成は、
発明の詳細な説明に記載された「短時間により最適な撮影条件を決定する」ための手段に対応するものであるから、
本件発明1は、課題を解決する手段が反映された発明であり、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

(3)意見書第2頁第1行?第3頁第12行の主張について
申立人は、訂正発明1及び4において、表示モード切替ボタンを押してディスプレイを連続表示モードに切り替えることは何ら特定されておらず、第1調整操作の後に自動的に画面の切り替えが行われることを含みうる構成となっていることから、サポート要件に違反している旨主張している。

まず、本件発明1は、「第1調整操作」と、「第1調整操作を行った後」の「第2調整操作」を含むものである。
一方、発明の詳細な説明には、「短時間により最適な撮影条件を決定する」との課題を解決する手段に関連する「第1調整操作」と「第2調整操作」について、
「特定の一の断層画像のみに基づいて適切に調整可能な第1調整操作と、二次元走査によって得られた複数の断層画像に基づいて調整した方がより適切に調整できる第2調整操作とを、それぞれ別々に行うことができるため、短時間により最適な撮影条件を決定することができる」(【0036】)との記載がある。
この記載からすると、短時間により最適な撮影条件を決定するとの課題を解決するための手段は、「第1調整操作」と「第2調整操作」をそれぞれ別々に行うことであり、本件発明1は、「第1調整操作」と、「第1調整操作を行った後」の「第2調整操作」を含む発明であり、別々に行うことが反映された発明であるから、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
してみると、本件発明1は、「第1調整操作」と、第1調整操作を行った後」の「第2調整操作」をどのようにして切り替えるかまで特定されていないからといって、発明の詳細な説明に記載された発明ではないとまではいえない。

(4)意見書第第3頁第13行?第4頁第10行の主張について
申立人は、「訂正発明1の構成BBにおいて、「前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像に基づいて行われる第2調整操作」が特定されているところ、当該記載は、「前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像を異なる領域に同時に表示し、それに基づいて行われる第2調整操作」と、「前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像を順に同一領域で繰り返し表示し、それに基づいて行われる第2調整操作」とのいずれも含みうる記載となっている。
しかしながら、当該特定事項に関して、本件特許明細書で具体的に記載されているのは、・・・複数の断層画像を順に同一領域で繰り返し表示するモード)のみである。
したがって、訂正発明1は・・・複数の断層像を異なる領域に同時に表示することを含みうる訂正発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。」と主張している。

まず、本件発明1の「前記第1調整操作を行った後、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像に基づいて行われる第2調整操作」において、第2調整操作は表示手段によって表示された複数の断層画像に基づいて行われるものである。
一方、発明の詳細な説明において、第2調整操作について、
「二次元走査によって得られた複数の断層画像に基づいて調整した方がより適切に調整できる第2調整操作」(【0016】【0036】参照。)との記載がある。
「短時間により最適な撮影条件を決定する」との課題に関連する、「複数の断層画像に基づいて調整した方がより適切に調整できる」か否かの観点からすると、第2調整操作で用いられる「表示手段によって表示された複数の断層画像」は、調整に用いられるものであればよく、複数の画像の表示形態(同時に表示か、順に表示か)の違いによって調整に用いることができなくなるものであるとまではいえない。また、複数の画像を表示する形態として、同時に表示する形態も順に表示する形態も、当業者が技術常識として認識しうる形態である。
よって、申立人の上記主張を採用することはできない。

(5)意見書第4頁第11行?第5頁第7行の主張について
申立人は、「構成A’において「撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を表示手段によって表示」することが特定された。・・・
一方、本件特許明細書では、段落0021および図1において、断層像撮影装置の全体構成にディスプレイ18が含まれることが開示されており、ディスプレイ18が断層画像撮影装置に含まれず、装置外に設けるようなことは何ら開示されていない。
構成A’では、断層像撮影装置が表示手段を備えていない構成まで含まれうる記載となっており、したがって、訂正発明1は特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に違反している。」と主張している。

しかしながら、本件発明1は、表示手段によって「撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を」「表示する」構成を有するものであるところ、上記課題を解決する手段として、表示手段が断層像撮影装置に含まれるか、装置外に設けられるか特定されていないことが影響するものとはいえない。
また、ディスプレイが装置本体に一体に設けられるか、コード等による接続により設けられるかは、どちらもディスプレイを設ける形態として当業者が技術常識として認識しうる形態である。
よって、申立人の上記主張を採用することはできない。

2 明確性について
(1)意見書第5頁第7行?第18行の主張について
申立人は、訂正発明1、4において、第1調整操作を行った後、表示手段によって第2調整操作のための表示を行うことが特定されていると考えられるところ、何をトリガにして表示が切り替わるのか明確ではないと主張する。

まず、本件発明1は、「第1調整操作」と、「第1調整操作を行った後」の「第2調整操作」を含むものである。
そして、「第1調整操作」と「第2調整操作」の間には、「第1調整操作」の完了や「第2調整操作」の開始のイベントがあることは明らかであり、これらのイベントをトリガとして、「第1調整操作」の際の表示から「第2調整操作」の際の表示に切り替えることは当業者が理解し得ることである。
してみると、表示を切り替えるトリガについての記載がないからといって、本願発明1は明確ではないとはいえない。

(2)意見書第5頁第19行?第6頁第11行の主張について
申立人は、「訂正発明1の構成BBにおいて、「前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみに基づいて行われる第1調整操作」が特定されているところ、当該記載では、表示手段により表示される対象が「生成された断層画像」なのか「一の断層画像」なのか明確ではない。」と主張する。
しかしながら、特定されている事項から、第1調整操作が、表示された、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみに基づいて行われることは、当業者は理解し得るので明確でないとはいえない。

(3)意見書第6頁第12行?第18行の主張について
申立人は、「訂正発明1の構成BBにおいて、「前記第1調整操作を行った後、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像に基づいて行われる第2調整操作」が特定されているところ、当該記載では、表示手段により表示される対象が「第2撮影モードで撮影された断層像」なのか「複数の断層画像」なのか明確ではない。」と主張する。

しかしながら、特定されている事項から、第2調整操作が、表示された、第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像に基づいて行われることは、当業者は理解し得るので明確でないとはいえない。

第9 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知及び取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、4及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件請求項3に係る特許は、訂正により削除された。これにより本件特許の請求項3に対してなされた特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を測定光と参照光に分割して対象物体と参照物体に入射させ、対象物体で反射された測定光と参照物体で反射された参照光を重畳させて生成される干渉光に基づき対象物体の断層像を撮影し、撮影された断層像に基づいて生成された対象物体の断層画像を表示手段によって表示する断層像撮影装置であって、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第1撮影モードと、
測定光を二次元走査して対象物体に入射させ、対象物体の断層像を撮影する第2撮影モードと、を備え、
前記第2撮影モードにおける二次元走査に要する時間が、前記第1撮影モードにおける二次元走査に要する時間よりも短く、
前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて、前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整を行った後、前記第1撮影モードで断層像の撮影が行われ、
前記第1撮影モードにおける二次元走査がラスタ走査であり、
前記第2撮影モードにおける二次元走査が、前記第1撮影モードにおけるラスタ走査を間引きした走査であり、
前記第1撮影モードで断層像の撮影をするために必要な撮影条件の調整が、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみに基づいて行われる第1調整操作と、前記第1調整操作を行った後、前記表示手段によって表示された、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された複数の断層画像に基づいて行われる第2調整操作と、を含むことを特徴とする断層像撮影装置。
【請求項2】
前記第2撮影モードにおける走査領域が、前記第1撮影モードにおける走査領域中の注目領域を含む領域であることを特徴とする、請求項1に記載の断層像撮影装置。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記表示手段が、前記第2撮影モードにおいて、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像のうち、対象物体の所定の注目位置を含む一の断層画像のみを表示する第1表示モードと、前記第2撮影モードで撮影された断層像に基づいて生成された断層画像を順に表示する第2表示モードとを切り替え可能に構成されており、
前記第1表示モードで表示された断層画像に基づいて前記第1調整操作を行った後、前記第2表示モードで表示された断層画像に基づいて前記第2調整操作が行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の断層像撮影装置。
【請求項5】
前記第2撮影モードで撮影された断層像を記憶する記憶手段を更に備えることを特徴とする、請求項1、2及び4のいずれか1項に記載の断層像撮影装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-02-10 
出願番号 特願2016-531370(P2016-531370)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A61B)
P 1 651・ 536- YAA (A61B)
P 1 651・ 537- YAA (A61B)
P 1 651・ 121- YAA (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増渕 俊仁  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 磯野 光司
森 竜介
登録日 2019-07-19 
登録番号 特許第6557229号(P6557229)
権利者 興和株式会社
発明の名称 断層像撮影装置  
代理人 加藤 卓  
代理人 村雨 圭介  
代理人 村雨 圭介  
代理人 加藤 卓  
代理人 早川 裕司  
代理人 早川 裕司  
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